投写型ディスプレイ装置及びスペックル低減素子
技術分野
[0001] 本発明は、レーザ光を用いる投写型ディスプレイ装置、及びスペックルノイズを低減 するスペックル低減素子に関するものである。
背景技術
[0002] 近年、高出力の青色半導体レーザが商用化されてきたことで、赤色半導体レーザ や第 2高調波発生 (以下 SHGと略記する)による緑色レーザと合わせて、 3原色のレ 一ザ光源を用いた投写型ディスプレイ装置の開発が進んでいる。光源として単色光 であるレーザを用いることにより、再現できる色範囲が広ぐかつ消費電力も小さい投 写型ディスプレイ装置を得ることができる。このようにレーザ光源を用いた投写型ディ スプレイ装置においてはスペックルノイズが問題となっている。スペックルノイズは、干 渉性の高い光であるレーザ光を用いてスクリーン上に像を形成した時に、微細な凹 凸を有するスクリーン力 反射したレーザ光が干渉し合うことによって生じるランダム な干渉パターンである。従来の投写型ディスプレイ装置においては、拡散板を機械 的に運動させることにより干渉パターンをスクリーン上で高速に運動させ、スペックル ノイズが人の目に検知されないようにしている。 (例えば、特許文献 1参照)。
[0003] 図 12は、特許文献 1に記載された従来の投写型ディスプレイ装置の構成を示す図 である。図 12において、赤色レーザ 101と青色レーザ 103と緑色レーザ 105とから出 射したレーザ光は、ダイクロイツクミラー 102、 104、 106で波長選択的にそれぞれ反 射され、同一光軸上に合成される。合成されたレーザ光は、すりガラスなどで構成さ れる拡散素子 107で拡散された後、レンズ 109によって空間光変調素子 110を照明 する。空間光変調素子 110により変調されたレーザ光は、投射レンズ 111によってス クリーン 112に結像される。拡散素子 107をモータ 108によって回転させることにより 、スクリーン 112上で前述した干渉パターンが高速に運動し、スペックルノイズが消失 する。
[0004] し力しながら、従来の投写型ディスプレイ装置の構成では、拡散素子を機械的に運
動させる必要があるため、モータ 108などのァクチユエータが必要であり、装置が大 型化したり、機械部の摩耗などにより信頼性が低下するといつた問題があった。
特許文献 1:特開平 6— 208089号公報
発明の開示
[0005] 本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、小型化することができる とともに、信頼性を向上させることができ、さらに、スペックルノイズを低減することがで きる投写型ディスプレイ装置及びスペックル低減素子を提供することを目的とするも のである。
[0006] 本発明の一局面に係る投写型ディスプレイ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光 源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子と、前記空間光変調素子により 変調された光をスクリーンに投射する投射レンズと、前記レーザ光源と前記空間光変 調素子との間に光軸に沿って並べられ、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散 度合 、を変化させる複数の拡散素子とを備える。
[0007] この構成によれば、レーザ光源力 レーザ光が出射され、レーザ光源から出射した レーザ光が空間光変調素子により変調され、空間光変調素子により変調された光が 投射レンズによりスクリーンに投射される。そして、レーザ光源と空間光変調素子との 間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子により、時間的かつ電気的にレーザ 光の拡散度合!、が変化される。
[0008] したがって、従来技術のようにァクチユエータを用いて機械的に拡散度合いを変化 させるのではなぐ電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができると ともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを 変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
[0009] 本発明の他の局面に係るスペックル低減素子は、レーザ光を出射するレーザ光源 と、前記レーザ光源力 出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸 に沿って並べられた複数の拡散素子と、前記複数の拡散素子に周期的に変化する 電圧を印加し、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる駆動 部とを備える。
[0010] この構成によれば、複数の拡散素子が、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ
光源力 出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べら れている。そして、駆動部により、複数の拡散素子に周期的に変化する電圧が印加さ れ、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
[0011] したがって、従来技術のようにァクチユエータを用いて機械的に拡散度合いを変化 させるのではなぐ電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができると ともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを 変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
図面の簡単な説明
[0012] [図 1]実施の形態 1における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。
[図 2]実施の形態 1における拡散素子の駆動回路の構成を示す模式図である。
[図 3]電源電圧の時間変化と、 2つの拡散素子に印加される電圧の時間変化とを示 す図である。
[図 4]第 1の拡散素子の印加電圧が 0であり、第 2の拡散素子の印加電圧が Vである 場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
[図 5]第 1の拡散素子の印加電圧が V'であり、第 2の拡散素子の印加電圧が V—V' である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
[図 6]第 1の拡散素子の印加電圧力 であり、第 2の拡散素子の印加電圧が 0である 場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
[図 7]実施の形態 2における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。
[図 8]実施の形態 2における拡散素子を示す側面図である。
[図 9]実施の形態 2における拡散素子の電極を示す平面図である。
[図 10]各拡散素子に独立して電圧を印加する場合における拡散素子の構成を示す 図である。
[図 11]2つの拡散素子にそれぞれ印加される電圧の時間変化を示す図である。
[図 12]従来の投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
[0013] 以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明 はその要点を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
[0014] (実施の形態 1)
図 1は、実施の形態 1における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。図 1 において、投写型ディスプレイ装置は、青色レーザ 1、赤色レーザ 2、緑色レーザ 3、 ミラー 4、ダイクロイツクミラー 5, 6、集光レンズ 7、第 1の拡散素子 8、第 2の拡散素子 9、駆動回路 10、ロッドインテグレータ 11、レンズ 12、偏光ビームスプリッタ 13、空間 光変調素子 14及び投射レンズ 15を備える。なお、スペックル低減素子は、第 1の拡 散素子 8、第 2の拡散素子 9及び駆動回路 10を備えて構成される。
[0015] 青色レーザ 1は、青色レーザ光を出射し、赤色レーザ 2は、赤色レーザ光を出射し、 緑色レーザ 3は、緑色レーザ光を出射する。青色レーザ 1と赤色レーザ 2としては、半 導体レーザが好適に利用可能である。緑色レーザ 3としては、 SHGを用いた固体レ 一ザが好適に利用可能である。
[0016] ミラー 4は、青色レーザ光を反射させる。ダイクロイツクミラー 5は、赤色レーザ光を選 択的に反射させ、それ以外の波長の光を透過させる。ダイクロイツクミラー 6は、緑色 レーザ光を選択的に反射させ、それ以外の波長の光を透過させる。集光レンズ 7は、 青色レーザ 1、赤色レーザ 2及び緑色レーザ 3から出射した各レーザ光をロッドインテ グレータ 11の入射面に集光する。
[0017] 第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は、液晶を分散させた透明フィルムを 2枚の透明電極 で挟んで構成され、本実施の形態では日本板硝子製「ゥムフィルム」を用いている。 第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は、両電極間に電圧が印加されない時には不透明であ り、電圧が印加されると、印加電圧の大きさに応じて拡散度が減少し、最終的には透 明になる。第 1及び第 2の拡散素子 8, 9の拡散度の最大値は略同一である。駆動回 路 10は、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9に電圧を印加することにより、第 1及び第 2の 拡散素子 8, 9を駆動する。ロッドインテグレータ 11は、直方体の硝子部材から構成さ れ、入射したレーザ光の光量分布を均一化する。
[0018] レンズ 12は、ロッドインテグレータ 11の出射端面の像を空間光変調素子 14上に結 像する。偏光ビームスプリッタ 13は、入射したレーザ光を、直交する 2つの偏光成分 に分離する。本実施の形態における偏光ビームスプリッタ 13は、 P偏光成分を透過さ せ、 S偏光成分を反射させる。空間光変調素子 14は、本実施の形態においては反
射型液晶パネルで構成され、ロッドインテグレータ 11の出射端面の像を変調する。投 射レンズ 15は、スクリーン 16上に空間光変調素子 14によって変調された像を投射す る。
[0019] 以下、図 1を用いて実施の形態 1における投写型ディスプレイ装置の動作について 説明する。青色レーザ 1から出射した青色レーザ光は、ミラー 4によって反射され、赤 色レーザ 2及び緑色レーザ 3から出射した赤色レーザ光及び緑色レーザ光は、それ ぞれダイクロイツクミラー 5, 6によって波長選択的に反射され、各レーザ光は、同一 光軸上に合成される。合成されたレーザ光は、集光レンズ 7によりロッドインテグレー タ 11の入射端面に集光される。合成されたレーザ光は、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9を透過する際に、駆動回路 10から第 1及び第 2の拡散素子 8, 9に印加される電圧 の大きさに応じて拡散される。
[0020] 第 1及び第 2の拡散素子 8, 9で拡散されたレーザ光は、ロッドインテグレータ 11に 入射する。ロッドインテグレータ 11に入射したレーザ光は、内部で多重反射するので 、出射端面でほぼ均一な光量分布が得られる。ロッドインテグレータ 11から出射した レーザ光は、レンズ 12と偏光ビームスプリッタ 13とを通って空間光変調素子 14に照 射される。レンズ 12は、ロッドインテグレータ 11の出射端面と空間光変調素子 14とが 共役関係となるように配置される。また、偏光ビームスプリッタ 13に入射するレーザ光 は、 S偏光であり、偏光ビームスプリッタ 13の反射面で反射して空間光変調素子 14 に入射する。
[0021] 空間光変調素子 14は、図示しない制御回路力もの信号に基づき照射された光を 空間変調し、偏光ビームスプリッタ 13に対して P偏光となるように変調光を反射する。 P偏光となった変調光は、偏光ビームスプリッタ 13を透過した後、投射レンズ 15によ つてスクリーン 16に結像される。青色レーザ 1と赤色レーザ 2と緑色レーザ 3とは順次 、パルス発光し、空間光変調素子 14が該パルス発光に同期して各色の成分情報に 基づいてレーザ光を空間変調することにより、カラー映像が得られることとなる。
[0022] 次に、図 2〜図 6を用いて第 1及び第 2の拡散素子 8, 9の動作について説明する。
図 2は、拡散素子の駆動回路の構成を示す模式図である。なお、図 2において図 1と 同一物は同一番号を附して説明を省略する。図 2において、第 1の拡散素子 8は、透
明電極 8a, 8cと、透明電極 8a, 8cにより挟まれた液晶分散フィルム 8bとで構成され る。第 2の拡散素子 9は、透明電極 9a, 9cと、透明電極 9a, 9cにより挟まれた液晶分 散フィルム 9bとで構成される。
[0023] 第 1の拡散素子 8の一方の透明電極 8aは接地されており、他方の透明電極 8cは、 第 2の拡散素子 9の一方の透明電極 9aに接続されるとともに交流電源 10aに接続さ れている。また、第 2の拡散素子 9の一方の透明電極 9cは、第 1の拡散素子 8の他方 の透明電極 8cに接続されるとともに交流電源 10aに接続され、他方の透明電極 9cは 、交流電源 10aの出力電圧の最大値と同じ電圧を出力する直流電源 10bに接続さ れている。
[0024] 透明電極 9cは、直流電源 10bから電圧 Vが印加されている。透明電極 8cと透明電 極 9aとは接続されており、それぞれ 0から Vまでの交流電圧が交流電源 10aから印加 される。電圧変化の周期は例えば 60Hzである。透明電極 8cと透明電極 9aとの電圧 が 0の時には、第 1の拡散素子 8の印加電圧は 0であり、第 1の拡散素子 8は散乱体と なる。同時に、第 2の拡散素子 9の印加電圧は Vとなり第 2の拡散素子 9は透明体とな る。一方、透明電極 8cと透明電極 9aとの電圧力 の時には、第 1の拡散素子 8の印 加電圧は Vであり、第 1の拡散素子 8は透明体となる。同時に、第 2の拡散素子 9の印 加電圧は 0となり第 2の拡散素子 9は散乱体となる。
[0025] 図 3は、電源電圧の時間変化と、 2つの第 1及び第 2の拡散素子 8, 9に印加される 電圧の時間変化とを示す図である。図 3に示すように、交流電源 10aの電源電圧は、 0から Vまで変化し、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は、 1周期に 1回ずつ散乱状態と透 過状態とを繰り返す。第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は、最大となる交流電圧値 Vが印 加された場合、透過状態となり、最小となる交流電圧値 0が印加された場合、最大散 乱状態となる。そして、電圧値が Vから 0に変化する場合、第 1及び第 2の拡散素子 8 , 9は、透過状態 (最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化し、電圧値が 0から Vに 変化する場合、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は、最大散乱状態から透過状態 (最小 散乱状態)へ変化する。また、第 1の拡散素子 8の電圧波形と、第 2の拡散素子 9の 電圧波形とは 1Z2周期ずれている。すなわち、第 1の拡散素子 8が透明体の場合、 第 2の拡散素子 9が散乱体となり、第 1の拡散素子 8が散乱体の場合、第 2の拡散素
子 9が透明体となる。
[0026] 図 4〜図 6に拡散素子での散乱の様子を示す。図 4は、第 1の拡散素子 8の印加電 圧が 0であり、第 2の拡散素子 9の印加電圧が Vである場合における各拡散素子の散 乱の様子を示す図であり、図 5は、第 1の拡散素子 8の印加電圧が V'であり、第 2の 拡散素子 9の印加電圧が V— V'である場合における各拡散素子の散乱の様子を示 す図であり、図 6は、第 1の拡散素子 8の印加電圧力 であり、第 2の拡散素子 9の印 加電圧が 0である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。なお、電 圧 V,は 0〜Vの間の値である。
[0027] 図 4〜図 6に示すように透明電極 8cと透明電極 9aとに印加する交流電圧が 0から V に変化する間に、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9での光の散乱の様子は、図 4、図 5及 び図 6の順に変化する。すなわち、図 4に示すように、交流電圧が 0である場合、第 1 の拡散素子 8は、入射したレーザ光を散乱させ、第 2の拡散素子 9は、第 1の拡散素 子 8によって散乱されたレーザ光を透過させる。また、図 5に示すように、交流電圧が V (0〜Vの間の値)である場合、第 1の拡散素子 8は、入射したレーザ光を散乱させ 、第 2の拡散素子 9は、第 1の拡散素子 8によって散乱されたレーザ光をさらに散乱さ せる。さらに、図 6に示すように、交流電圧が Vである場合、第 1の拡散素子 8は、入 射したレーザ光を透過させ、第 2の拡散素子 9は、第 1の拡散素子 8によって透過さ れたレーザ光を散乱させる。
[0028] このように、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9が交互に散乱及び透過を繰り返すので、 レーザ光を散乱する位置が第 1及び第 2の拡散素子 8, 9の間を移動するのと同じ作 用を及ぼすこととなる。従って、図 1において空間光変調素子 14の各画素を照明す る光の角度が高速に変化するため、スクリーン 16上での干渉パターン、すなわちス ペックルノイズ力 人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックル ノイズが低減できる。
[0029] さらに、比視感度を考慮すると赤色レーザ光や青色レーザ光のスペックルノイズに 比べて緑色レーザ光のスペックルノイズの方が検出されやすい。そこで、緑色レーザ 3が発光している時の第 1及び第 2の拡散素子 8, 9に印加する電圧 VIを、青色レー ザ 1と赤色レーザ 2とが発光している時の第 1及び第 2の拡散素子 8, 9に印加する電
圧 V2よりも小さくすることで、緑色レーザ光の拡散度を青色レーザ光及び赤色レー ザ光の拡散度よりも大きくし、緑色レーザ光のスペックルノイズを減少させ、かつ青色 レーザ光及び赤色レーザ光の拡散による光利用効率の損失を低減することができる
[0030] なお、本実施の形態では、電圧変化の周期は例えば 60Hzとしている力 本発明は 特にこれに限定されず、 10Hz以上であればよい。人の目が画像のちらつきを検知 する周波数 (臨界フリツ力周波数)は、年齢ゃ視環境に応じて変化するが、一般的に 60Hz程度と言われている。この画像のちらつきは、画面全体が明滅する場合の知 覚であり、スペックルノイズのような画面内での輝度差の知覚においては、さらに検知 できる周波数は下がる。輝度変化が 0%の時には画像のちらつきは存在しない(臨界 フリツ力周波数 =OHz)。また、輝度変化が 100%に達する画面全体の明滅を 60Hz 程度の周波数で知覚できるとするならば、スペックルノイズのような 20〜30%程度の 輝度変化の場合、 10〜20Hz以上の周波数で第 1及び第 2の拡散素子 8, 9を駆動 すれば充分である。
[0031] また、 2つの拡散素子のうちの投射レンズ側の第 2の拡散素子 9をロッドインテグレ ータ 11に近接して設置し、ロッドインテグレータ 11の開口径を Aとし、光源側の第 1の 拡散素子 8と投射レンズ側の第 2の拡散素子 9との間隔を Lとし、第 1及び第 2の拡散 素子 8, 9の最大拡散角を Θ (rad)とする場合、拡散素子の間隔 Lは、下記の(1)式 で表される。
[0032] L<A/ (2 0 ) - - - - (l)
[0033] 上記の(1)式に示すように拡散素子の間隔 Lを設定することにより、光源側の第 1の 拡散素子 8が最大拡散角でレーザ光を拡散したとしても、レーザ光は全てロッドイン テグレータ 11の開口内に入射するので、光量損失が無ぐかつ最大の光拡散効果 が得られ、スペックルノイズの除去効果も最大とすることができる。
[0034] なお、拡散素子が 3つ以上ある場合であっても、最もレーザ光源に近い拡散素子と 、最も投射レンズに近い拡散素子との間隔 Lを上記の(1)式を満たすように設定する ことが好ましい。
[0035] 力かる構成によれば、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9を光軸方向に並べて配置し、
第 1及び第 2の拡散素子 8, 9の拡散度の変化の周期を半周期ずらすことで、スペック ルノイズが低減できることとなる。また、レーザ光の波長に応じて第 1及び第 2の拡散 素子 8, 9の拡散度を変えることで、波長毎にスペックルノイズ低減の最適化を行うこと ができる。更に、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9が集光レンズ 7の収束光路中に設けら れているので、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9によって拡散された拡散光を投射レンズ 15の物側 NA (開口数)よりも小さくすることができ、拡散光が投射レンズ 15の物側 N Aよりも大きくなることによる利用効率の低下を防止することができる。
[0036] なお、本実施の形態において、ロッドインテグレータ 11の代わりに内部が中空のラ イトパイプを用いても力まわない。また、拡散素子は 3個以上の複数個であっても構 わない。また、空間光変調素子として反射型液晶素子を用いたが、デジタルマイクロ ミラーデバイスなどの空間光変調素子を用いても構わない。また、ロッドインテグレー タ 11は光量分布を均一化するために用 、て 、るだけであり、スペックルノイズの低減 とは無関係である。そのため、光量分布に多少のムラがあつたとしても許されるような 場合にはロッドインテグレータ 11を省くことも可能である。また、本実施の形態におい て第 1及び第 2の拡散素子 8, 9の拡散度は略同一であるとしたが、拡散度は異なつ ていても良い。例えば、第 1の拡散素子 8の拡散度を第 2の拡散素子 9の拡散度より も小さくすることで、ロッドインテグレータ 11の入射端面での光量損失を小さくすること も可能である。
[0037] (実施の形態 2)
次に、実施の形態 2における投写型ディスプレイ装置について説明する。図 7は、 実施の形態 2における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。図 7において 、図 1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
[0038] 図 7において、投写型ディスプレイ装置は、青色レーザ 1、赤色レーザ 2、緑色レー ザ 3、凹レンズ 17a〜17cゝ凸レンズ 18a〜18cゝ拡散素子 19a〜19cゝ駆動回路 20a 〜20c、レンズ 21a〜21c、空間光変調素子 22a〜22c、色合成プリズム 23及び投 射レンズ 15を備える。
[0039] 凹レンズ 17a〜17cと凸レンズ 18a〜18cとは、それぞれビームエキスパンダー光学 系をなしており、凹レンズ 17a〜17cは入射したレーザ光を拡大し、凸レンズ 18a〜l
8cは入射したレーザ光を平行光に変換する。拡散素子 19a〜19cは、入射したレー ザ光を拡散させる。なお、拡散素子 19a〜19cについては後述する。駆動回路 20a 〜20cは、拡散素子 19a〜19cに電圧を印加することにより、拡散素子 19a〜19cを 駆動する。レンズ 21a〜21cは、拡散素子 19a〜19cによって拡散された各レーザ光 を空間光変調素子 22a〜22c上に結像する。空間光変調素子 22a〜22cは、本実 施の形態にお 、ては透過型液晶パネルで構成され、拡散素子 19a〜 19cによって 拡散された各レーザ光を変調する。色合成プリズム 23は、空間光変調素子 22a〜22 cによって変調された各レーザ光を合成する。
[0040] 続いて、図 7を用いて実施の形態 2における投写型ディスプレイ装置の動作につい て説明する。なお、青色レーザ 1から出射するレーザ光の受ける作用は、赤色レーザ 2及び緑色レーザ 3から出射するレーザ光の受ける作用と同じであるので、図 7にお V、て青色レーザ 1から出射するレーザ光にっ 、てのみ説明し、他のレーザ光にっ ヽ ては説明を省略する。
[0041] 青色レーザ 1から出射したレーザ光は、凹レンズ 17aと凸レンズ 18aと力もなるビー ムエキスパンダー光学系により拡大され拡散素子 19aに入射する。拡散素子 19aは、 駆動回路 20aによって時間的及び空間的に拡散度が変調され、透過するレーザ光 を拡散させる。拡散素子 19aによって拡散されたレーザ光は、レンズ 21aを透過して 空間光変調素子 22aを照明する。空間光変調素子 22aは、投影画像の青色成分の 色信号を基にレーザ光を空間変調する。空間変調されたレーザ光は、色合成プリズ ム 23によって他の色のレーザ光と同一光軸上に合成される。色合成プリズム 23によ つて合成されたレーザ光は、投射レンズ 15によって図示しないスクリーン上に結像さ れる。
[0042] 拡散素子 19aの構成及び動作について図 8及び図 9を用いて説明する。図 8及び 図 9は、拡散素子 19aの構成を示す図であり、図 8は、実施の形態 2における拡散素 子 19aを示す側面図、図 9は、実施の形態 2における拡散素子 19aの電極を示す平 面図である。なお、拡散素子 19b, 19cの構成は、拡散素子 19aの構成と同じである
[0043] 図 8において、拡散素子 19aは、第 1の拡散素子 25と、第 2の拡散素子 26と、共通
基板 24とで構成される。第 1の拡散素子 25は、透明電極 25a, 25cと、透明電極 25a , 25cにより挟まれた液晶分散フィルム 25bとで構成される。第 2の拡散素子 26は、 透明電極 26a, 26cと、透明電極 26a, 26cにより挟まれた液晶分散フイノレム 26bとで 構成される。共通基板 24は、第 1の拡散素子 25によって透過又は拡散されたレーザ 光を第 2の拡散素子 26に導く。第 1の拡散素子 25の透明電極 25cと、第 2の拡散素 子 26の透明電極 26aとが対向するように、第 1の拡散素子 25と第 2の拡散素子 26と が共通基板 24に貼り合わされている。
[0044] 図 9において、環状透明電極 27は、光軸を中心とする複数の環状領域に透明電極 26cを分割することで構成されている。図 9では、環状透明電極の一つだけを図示し ているが、環状透明電極 27はレーザ光が通過する領域全体に、同軸上に複数個形 成されている。すなわち、透明電極 25aは、透明電極 26cと同様に、複数の環状領域 に分割され、環状透明電極 27が形成されている。
[0045] 実施の形態 2における拡散素子 19aの動作について、実施の形態 1における第 1及 び第 2の拡散素子 8, 9の動作と異なるのは、環状透明電極 27を形成したことであり、 空間的にも拡散度を異ならせることを可能にした点である。すなわち、環状透明電極 27を形成する複数の環状領域にそれぞれ異なる電圧を印加する。例えば、環状透 明電極 27の中心部分では拡散度が大きくなるように電圧を印加し、周辺部分では拡 散度が小さくなるように電圧を印加する。レーザ光の光強度分布は、中心部分の光 強度が高ぐ周辺部分の光強度が小さいため、光強度の高い領域は大きく拡散させ 、光強度の小さい領域は小さく拡散させることにより、拡散素子 19aを透過した後のレ 一ザ光の光強度分布を均一化することができる。
[0046] なお、本実施の形態における環状領域は、光軸を中心とする円形状の領域だけで なぐ光軸を中心とする楕円形状の領域も含む。
[0047] このように、図 9に示したような環状透明電極 27を第 1の拡散素子 25の透明電極 2 5aと第 2の拡散素子 26の透明電極 26cとに設け、各々異なる電圧を印加すると共に 透明電極 25cと透明電極 26aに交流電圧を印加することで、レーザ光の拡散度合!/、 を時間的及び空間的に変調し、スペックルノイズの低減と強度分布の均一化を行うこ とができる。力かる構成によれば、拡散素子の拡散度を時間的及び空間的に変調す
ることで、レーザ光の強度分布を均一化することができる共に、スペックルノイズを低 減することができる。
[0048] また、複数の領域は、光軸を中心とする複数の環状領域を含むので、レーザ光のビ ーム断面形状に応じて拡散度合いを空間的に変化させることができ、レーザ光の強 度分布を均一化することができる。また、複数の環状領域は、中心部分の環状領域 力も周辺部分の環状領域に向けて、レーザ光の拡散度合いを小さくしてもよい。すな わち、レーザ光の強度分布は、中心部分の強度が高ぐ周辺部分の強度が小さい。 そのため、強度の高い領域は大きく拡散させ、強度の小さい領域は小さく拡散させる ことにより、拡散素子 19aを透過した後のレーザ光の強度分布をより均一化すること ができる。さらに、透明な通基板 24の光軸に垂直な面に第 1の拡散素子 25及び第 2 の拡散素子 26をそれぞれ対向して形成したことにより、第 1の拡散素子 25と第 2の拡 散素子 26との間隔が共通基板 24により予め決められ、拡散素子相互の位置合わせ が不要になり、薄型化も可能となる。
[0049] なお、実施の形態 1, 2では、 2つの第 1及び第 2の拡散素子 8, 9の共通電極 (透明 電極 8c, 9a)に交流電圧を印加している力 本発明は特にこれに限定されず、 2つの 第 1及び第 2の拡散素子 8, 9それぞれに単独で電圧を印力!]してもよい。
[0050] 図 10は、各拡散素子に独立して電圧を印加する場合における拡散素子の構成を 示す図である。第 1の拡散素子 8の透明電極 8a, 8cは、 Vから +Vまで周期的に 変化する交流電圧を印加する第 1の交流電源 31に接続され、第 2の拡散素子 9の透 明電極 9a, 9cは、—Vから +Vまで周期的に変化する交流電圧を印加する第 2の交 流電源 32に接続されている。第 1及び第 2の拡散素子 8, 9の印加電圧が +V及び Vである場合、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は散乱体となり、第 1及び第 2の拡散 素子 8, 9の印加電圧が 0である場合、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は透明体となる。
[0051] 図 11は、 2つの拡散素子にそれぞれ印加される電圧の時間変化を示す図である。
図 11に示すように、第 1の拡散素子 8の電圧波形 33と、第 2の拡散素子 9の電圧波 形 34とは 1Z4周期ずれている。そのため、第 1の拡散素子 8の印加電圧が +Vであ る場合、第 1の拡散素子 8は散乱体となる。このとき、第 2の拡散素子 9の印加電圧は 0であり、第 2の拡散素子 9は透明体となる。また、第 1の拡散素子 8の印加電圧が 0
である場合、第 1の拡散素子 8は透明体となる。このとき、第 2の拡散素子 9の印加電 圧は +Vであり、第 2の拡散素子 9は散乱体となる。さらに、第 1の拡散素子 8の印加 電圧が Vである場合、第 1の拡散素子 8は散乱体となる。このとき、第 2の拡散素子 9の印加電圧は 0であり、第 2の拡散素子 9は透明体となる。
[0052] 第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は、交流電圧値士 Vが印加された場合、最大散乱状 態となり、交流電圧値 0が印加された場合、透過状態となる。そして、電圧値が +Vか ら 0に変化する場合、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は、最大散乱状態から透過状態( 最小散乱状態)へ変化し、電圧値が 0から Vに変化する場合、第 1及び第 2の拡散 素子 8, 9は、透過状態 (最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化する。また、電圧 値が Vから 0に変化する場合、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9は、最大散乱状態から 透過状態 (最小散乱状態)へ変化し、電圧値が 0から +Vに変化する場合、第 1及び 第 2の拡散素子 8, 9は、透過状態 (最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化する。
[0053] このように、第 1及び第 2の拡散素子 8, 9それぞれに単独で電圧を印力!]した場合も 、空間光変調素子 14の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スクリー ン 16上での干渉パターン、すなわちスペックルノイズ力 人の目で追従できないほど の速さで変動し、結果としてスペックルノイズが低減できる。
[0054] なお、上記の投写型ディスプレイ装置は、 2つの拡散素子を設け、各拡散素子に単 独で電圧を印加しているが、本発明は特にこれに限定されず、 3つ以上の拡散素子 を設け、各拡散素子に単独で電圧を印力 tlしてもよい。特に、 n (nは自然数)個の拡散 素子を設け、各拡散素子に単独で電圧を印加する場合、各拡散素子に印加する電 圧の位相差は lZ (2n)周期となるように設定する。これにより、 n個の拡散素子にそ れぞれ単独で電圧を印加した場合も、空間光変調素子 14の各画素を照明する光の 角度が高速に変化するため、スクリーン 16上での干渉パターン、すなわちスペックル ノイズが、人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズが 低減できる。
[0055] さらに、本実施の形態における 2つの拡散素子は、アナログ的に拡散度合いを変化 させているが、本発明は特にこれに限定されず、拡散素子を 3つ以上設ける場合、こ れらの拡散素子の拡散度合いをデジタル的に変化させてもよい。この場合、拡散素
子を駆動する駆動回路として安価で回路ノイズに強いデジタル回路を用いることがで きる。なお、拡散素子の数を増加させることで、より高い精度で拡散度合いを変化さ せることができる。また、拡散素子の数が 2つであっても、アナログ的に(多値で)駆動 することにより、拡散素子の数を増加させた場合と同様に、より高い精度で拡散度合 いを変化させることができる。
[0056] さらにまた、本実施の形態における拡散素子の印加電圧は正弦波である力 本発 明は特にこれに限定されず、例えば三角波であってもよぐ各印加電圧が相補的に キャンセルする波形であればよ 、。
[0057] なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている
[0058] 本発明の一局面に係る投写型ディスプレイ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光 源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子と、前記空間光変調素子により 変調された光をスクリーンに投射する投射レンズと、前記レーザ光源と前記空間光変 調素子との間に光軸に沿って並べられ、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散 度合 、を変化させる複数の拡散素子とを備える。
[0059] この構成によれば、レーザ光源力 レーザ光が出射され、レーザ光源から出射した レーザ光が空間光変調素子により変調され、空間光変調素子により変調された光が 投射レンズによりスクリーンに投射される。そして、レーザ光源と空間光変調素子との 間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子により、時間的かつ電気的にレーザ 光の拡散度合!、が変化される。
[0060] したがって、従来技術のようにァクチユエータを用いて機械的に拡散度合いを変化 させるのではなぐ電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができると ともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを 変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
[0061] また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、それぞれ 周期的に拡散度合いが変化し、前記拡散素子毎の周期的な拡散度合いの変化の 位相がずれて 、ることが好まし!/、。
[0062] この構成によれば、複数の拡散素子は、それぞれ周期的に拡散度合いが変化し、
拡散素子毎の周期的な拡散度合 、の変化の位相がずれて 、るので、スペックルノィ ズを時間的に変動させることができる。
[0063] また、上記の投写型ディスプレイ装置にお!、て、前記複数の拡散素子は、収束光 路中に設けられていることが好ましい。この構成によれば、複数の拡散素子が収束光 路中に設けられているので、複数の拡散素子によって拡散された拡散光を投射レン ズの物側開口数よりも小さくすることができ、拡散光が投射レンズの物側開口数よりも 大きくなることによる利用効率の低下を防止することができる。
[0064] また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、散乱状 態力 透明状態に 1周期に 1回変化する 2つの拡散素子を含み、前記 2つの拡散素 子の位相差は半周期であることが好まし 、。
[0065] この構成によれば、散乱状態力 透明状態に 1周期に 1回変化する 2つの拡散素子 の位相差は半周期であるので、一方の拡散素子が散乱状態であれば、他方の拡散 素子は透明状態であり、空間光変調素子の各画素を照明する光の角度が高速に変 化するため、スペックルノイズが人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果とし てスペックルノイズを低減することができる。
[0066] また、上記の投写型ディスプレイ装置にお!、て、前記複数の拡散素子は、液晶を分 散させた透明フィルムと、前記透明フィルムを挟む 2つの透明電極とをそれぞれ備え る第 1の拡散素子及び第 2の拡散素子を含み、第 1の拡散素子の一方の透明電極は 接地され、他方の透明電極は、第 2の拡散素子の一方の透明電極に接続されるとと もに交流電源に接続され、第 2の拡散素子の一方の透明電極は、第 1の拡散素子の 他方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続され、他方の透明電極は、前 記交流電源の出力電圧の最大値と同じ電圧を出力する直流電源に接続されることが 好ましい。
[0067] この構成によれば、第 1の拡散素子及び第 2の拡散素子は、液晶を分散させた透 明フィルムと、透明フィルムを挟む 2つの透明電極とをそれぞれ備える。そして、第 1 の拡散素子の一方の透明電極は接地され、他方の透明電極は、第 2の拡散素子の 一方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続される。また、第 2の拡散素子 の一方の透明電極は、第 1の拡散素子の他方の透明電極に接続されるとともに交流
電源に接続され、他方の透明電極は、交流電源の出力電圧の最大値と同じ電圧を 出力する直流電源に接続される。
[0068] すなわち、第 1の拡散素子の他方の透明電極と第 2の拡散素子の一方の透明電極 とにそれぞれ 0から Vまでの交流電圧が交流電源から印加される場合、交流電圧が 0 の時には、第 1の拡散素子への印加電圧は 0であり、第 1の拡散素子は散乱体となる 。同時に、第 2の拡散素子への印加電圧は Vとなり第 2の拡散素子は透明体となる。 一方、交流電圧力 の時には、第 1の拡散素子への印加電圧は Vであり、第 1の拡散 素子は透明体となる。同時に、第 2の拡散素子の印加電圧は 0となり第 2の拡散素子 は散乱体となる。したがって、 2つの拡散素子に交流電圧を印加するという簡単な構 成で、 2つの拡散素子を散乱状態と透過状態とに切り替えることができる。
[0069] また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、散乱状 態力 透明状態に 1周期に 2回変化する n個の拡散素子を含み、各拡散素子の位相 差は、 lZ (2n)周期であることが好ましい。
[0070] この構成によれば、散乱状態力 透明状態に 1周期に 2回変化する n個の拡散素子 のそれぞれの位相差は、 lZ (2n)周期であるので、例えば、拡散素子が 2つであれ ば、一方の拡散素子が散乱状態であれば、他方の拡散素子は透明状態となり、空間 光変調素子の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スペックルノイズ が人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズを低減す ることがでさる。
[0071] また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記拡散素子は、液晶を分散させ た透明フィルムと、前記透明フィルムを挟む 2つの透明電極とを含み、各拡散素子の 2つの透明電極は、交流電源に接続されることが好ましい。
[0072] この構成によれば、拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、透明フィルムを 挟む 2つの透明電極とを含む。そして、各拡散素子の 2つの透明電極は、交流電源 に接続される。したがって、各拡散素子には、それぞれ個別に交流電圧が印加され るので、複数の拡散素子を散乱状態と透過状態とに個別に切り替えることができ、よ り細かく拡散度合 ヽを変化させることができる。
[0073] また、上記の投写型ディスプレイ装置にお!、て、前記レーザ光源は、赤色レーザ光
を出射する赤色レーザ光源と、青色レーザ光を出射する青色レーザ光源と、緑色レ 一ザ光を出射する緑色レーザ光源とを含み、前記複数の拡散素子は、前記赤色レ 一ザ光、前記青色レーザ光及び前記緑色レーザ光の波長に応じて拡散度合 、を変 化させることが好ましい。
[0074] この構成によれば、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光の波長に応じ て拡散度合 、が変化されるので、レーザ光の波長毎にスペックルノイズ低減の最適 化を行うことができる。
[0075] また、上記の投写型ディスプレイ装置にお!、て、前記複数の拡散素子は、前記緑 色レーザ光源から出射された緑色レーザ光が入射される時に拡散度合いが最大に なることが好ましい。
[0076] 比視感度を考慮すると赤色や青色の光のスペックルノイズに比べて緑色の光のス ペックルノイズの方が検出されやすい。そのため、複数の拡散素子は、緑色レーザ光 源から出射された緑色レーザ光が入射される時に拡散度合いが最大になるので、緑 色レーザ光の拡散度合 、を青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散度合 、よりも大 きくすることができ、緑色レーザ光のスペックルノイズを減少させ、かつ青色レーザ光 及び赤色レーザ光の拡散による光利用効率の損失を低減することができる。
[0077] また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、拡散度 合いが略同一であることが好ましい。この構成によれば、複数の拡散素子の拡散度 合いが略同一であるので、各拡散素子に印加する電圧の最大値を略同一にすること ができ、構成を簡略ィ匕することができる。
[0078] また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、複数の 領域に分割され、前記複数の領域毎に拡散度合いを時間的かつ電気的に変化させ ることが好ましい。
[0079] この構成によれば、複数の拡散素子は、複数の領域に分割され、複数の領域毎に 拡散度合いが時間的かつ電気的に変化されるので、レーザ光の拡散度合いを空間 的に変化させることができ、レーザ光の強度分布を均一化することができる。
[0080] また、上記の投写型ディスプレイ装置にお!、て、前記複数の領域は、前記光軸を中 心とする複数の環状領域を含むことが好ましい。この構成によれば、複数の領域は、
光軸を中心とする複数の環状領域を含むので、レーザ光のビーム断面形状に応じて 拡散度合いを空間的に変化させることができ、レーザ光の強度分布を均一化すること ができる。
[0081] また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、透明な 共通基板の光軸に垂直な面にそれぞれ対向して形成されていることが好ましい。こ の構成によれば、複数の拡散素子は、透明な共通基板の光軸に垂直な面にそれぞ れ対向して形成されているので、各拡散素子の間隔が共通基板により予め決められ 、拡散素子相互の位置合わせが不要になり、薄型化も可能となる。
[0082] また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子のうちの前記 投射レンズに最も近い拡散素子に近接しており、入射したレーザ光の光量分布を均 一化するホモジナイザーをさらに備え、前記レーザ光源に最も近い拡散素子と前記 投射レンズに最も近い拡散素子との間隔 Lと、各拡散素子の最大拡散角 Θと、前記 ホモジナイザーの入射面の開口径 Aとの関係は、 L<AZ (2 0 )であることが好まし い。
[0083] この構成によれば、ホモジナイザーは、複数の拡散素子のうちの投射レンズに最も 近い拡散素子に近接しており、入射したレーザ光の光量分布を均一化する。そして、 レーザ光源に最も近い拡散素子と投射レンズに最も近い拡散素子との間隔 Lと、各 拡散素子の最大拡散角 Θと、ホモジナイザーの入射面の開口径 Aとの関係は、 L< AZ (2 0 )である。
[0084] したがって、レーザ光源に最も近い拡散素子が最大拡散角でレーザ光を拡散した としても、レーザ光は全てホモジナイザーの開口内に入射するので、光量損失が無く 、かつ最大の光拡散効果が得られ、スペックルノイズの除去効果も最大とすることが できる。
[0085] 本発明の他の局面に係るスペックル低減素子は、レーザ光を出射するレーザ光源 と、前記レーザ光源力 出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸 に沿って並べられた複数の拡散素子と、前記複数の拡散素子に周期的に変化する 電圧を印加し、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる駆動 部とを備える。
[0086] この構成によれば、複数の拡散素子が、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ 光源力 出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べら れている。そして、駆動部により、複数の拡散素子に周期的に変化する電圧が印加さ れ、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
[0087] したがって、従来技術のようにァクチユエータを用いて機械的に拡散度合いを変化 させるのではなぐ電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができると ともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを 変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
産業上の利用可能性
[0088] 本発明に係る投写型ディスプレイ装置及びスペックル低減素子は、小型化すること ができるとともに、信頼性を向上させることができ、さらに、スペックルノイズを低減する ことができ、レーザ光を用いる投写型ディスプレイ装置及びスペックルノイズを低減す るスペックルノイズ低減素子として有用である。
[0089] また、本発明に係る投写型ディスプレイ装置は、スペックルノイズが低減されるレー ザ光学系を有し、フロントプロジェクタやリアプロジェクタ等としても有用である。またそ の照明光学系だけを利用して照明装置や液晶ディスプレイのバックパネル等の用途 にも応用できる。