本発明は、レーザ光を用いる投写型ディスプレイ装置、及びスペックルノイズを低減するスペックル低減素子に関するものである。
近年、高出力の青色半導体レーザが商用化されてきたことで、赤色半導体レーザや第2高調波発生(以下SHGと略記する)による緑色レーザと合わせて、3原色のレーザ光源を用いた投写型ディスプレイ装置の開発が進んでいる。光源として単色光であるレーザを用いることにより、再現できる色範囲が広く、かつ消費電力も小さい投写型ディスプレイ装置を得ることができる。このようにレーザ光源を用いた投写型ディスプレイ装置においてはスペックルノイズが問題となっている。スペックルノイズは、干渉性の高い光であるレーザ光を用いてスクリーン上に像を形成した時に、微細な凹凸を有するスクリーンから反射したレーザ光が干渉し合うことによって生じるランダムな干渉パターンである。従来の投写型ディスプレイ装置においては、拡散板を機械的に運動させることにより干渉パターンをスクリーン上で高速に運動させ、スペックルノイズが人の目に検知されないようにしている。(例えば、特許文献1参照)。
図12は、特許文献1に記載された従来の投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。図12において、赤色レーザ101と青色レーザ103と緑色レーザ105とから出射したレーザ光は、ダイクロイックミラー102、104、106で波長選択的にそれぞれ反射され、同一光軸上に合成される。合成されたレーザ光は、すりガラスなどで構成される拡散素子107で拡散された後、レンズ109によって空間光変調素子110を照明する。空間光変調素子110により変調されたレーザ光は、投射レンズ111によってスクリーン112に結像される。拡散素子107をモータ108によって回転させることにより、スクリーン112上で前述した干渉パターンが高速に運動し、スペックルノイズが消失する。
しかしながら、従来の投写型ディスプレイ装置の構成では、拡散素子を機械的に運動させる必要があるため、モータ108などのアクチュエータが必要であり、装置が大型化したり、機械部の摩耗などにより信頼性が低下するといった問題があった。
特開平6−208089号公報
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができ、さらに、スペックルノイズを低減することができる投写型ディスプレイ装置及びスペックル低減素子を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る投写型ディスプレイ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子と、前記空間光変調素子により変調された光をスクリーンに投射する投射レンズと、前記レーザ光源と前記空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられ、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる複数の拡散素子とを備える。
この構成によれば、レーザ光源からレーザ光が出射され、レーザ光源から出射したレーザ光が空間光変調素子により変調され、空間光変調素子により変調された光が投射レンズによりスクリーンに投射される。そして、レーザ光源と空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子により、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
したがって、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
本発明の他の局面に係るスペックル低減素子は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子と、前記複数の拡散素子に周期的に変化する電圧を印加し、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる駆動部とを備える。
この構成によれば、複数の拡散素子が、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられている。そして、駆動部により、複数の拡散素子に周期的に変化する電圧が印加され、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
したがって、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
実施の形態1における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。
実施の形態1における拡散素子の駆動回路の構成を示す模式図である。
電源電圧の時間変化と、2つの拡散素子に印加される電圧の時間変化とを示す図である。
第1の拡散素子の印加電圧が0であり、第2の拡散素子の印加電圧がVである場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
第1の拡散素子の印加電圧がV’であり、第2の拡散素子の印加電圧がV−V’である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
第1の拡散素子の印加電圧がVであり、第2の拡散素子の印加電圧が0である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
実施の形態2における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。
実施の形態2における拡散素子を示す側面図である。
実施の形態2における拡散素子の電極を示す平面図である。
各拡散素子に独立して電圧を印加する場合における拡散素子の構成を示す図である。
2つの拡散素子にそれぞれ印加される電圧の時間変化を示す図である。
従来の投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はその要点を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。図1において、投写型ディスプレイ装置は、青色レーザ1、赤色レーザ2、緑色レーザ3、ミラー4、ダイクロイックミラー5,6、集光レンズ7、第1の拡散素子8、第2の拡散素子9、駆動回路10、ロッドインテグレータ11、レンズ12、偏光ビームスプリッタ13、空間光変調素子14及び投射レンズ15を備える。なお、スペックル低減素子は、第1の拡散素子8、第2の拡散素子9及び駆動回路10を備えて構成される。
青色レーザ1は、青色レーザ光を出射し、赤色レーザ2は、赤色レーザ光を出射し、緑色レーザ3は、緑色レーザ光を出射する。青色レーザ1と赤色レーザ2としては、半導体レーザが好適に利用可能である。緑色レーザ3としては、SHGを用いた固体レーザが好適に利用可能である。
ミラー4は、青色レーザ光を反射させる。ダイクロイックミラー5は、赤色レーザ光を選択的に反射させ、それ以外の波長の光を透過させる。ダイクロイックミラー6は、緑色レーザ光を選択的に反射させ、それ以外の波長の光を透過させる。集光レンズ7は、青色レーザ1、赤色レーザ2及び緑色レーザ3から出射した各レーザ光をロッドインテグレータ11の入射面に集光する。
第1及び第2の拡散素子8,9は、液晶を分散させた透明フィルムを2枚の透明電極で挟んで構成され、本実施の形態では日本板硝子製「ウムフィルム」を用いている。第1及び第2の拡散素子8,9は、両電極間に電圧が印加されない時には不透明であり、電圧が印加されると、印加電圧の大きさに応じて拡散度が減少し、最終的には透明になる。第1及び第2の拡散素子8,9の拡散度の最大値は略同一である。駆動回路10は、第1及び第2の拡散素子8,9に電圧を印加することにより、第1及び第2の拡散素子8,9を駆動する。ロッドインテグレータ11は、直方体の硝子部材から構成され、入射したレーザ光の光量分布を均一化する。
レンズ12は、ロッドインテグレータ11の出射端面の像を空間光変調素子14上に結像する。偏光ビームスプリッタ13は、入射したレーザ光を、直交する2つの偏光成分に分離する。本実施の形態における偏光ビームスプリッタ13は、P偏光成分を透過させ、S偏光成分を反射させる。空間光変調素子14は、本実施の形態においては反射型液晶パネルで構成され、ロッドインテグレータ11の出射端面の像を変調する。投射レンズ15は、スクリーン16上に空間光変調素子14によって変調された像を投射する。
以下、図1を用いて実施の形態1における投写型ディスプレイ装置の動作について説明する。青色レーザ1から出射した青色レーザ光は、ミラー4によって反射され、赤色レーザ2及び緑色レーザ3から出射した赤色レーザ光及び緑色レーザ光は、それぞれダイクロイックミラー5,6によって波長選択的に反射され、各レーザ光は、同一光軸上に合成される。合成されたレーザ光は、集光レンズ7によりロッドインテグレータ11の入射端面に集光される。合成されたレーザ光は、第1及び第2の拡散素子8,9を透過する際に、駆動回路10から第1及び第2の拡散素子8,9に印加される電圧の大きさに応じて拡散される。
第1及び第2の拡散素子8,9で拡散されたレーザ光は、ロッドインテグレータ11に入射する。ロッドインテグレータ11に入射したレーザ光は、内部で多重反射するので、出射端面でほぼ均一な光量分布が得られる。ロッドインテグレータ11から出射したレーザ光は、レンズ12と偏光ビームスプリッタ13とを通って空間光変調素子14に照射される。レンズ12は、ロッドインテグレータ11の出射端面と空間光変調素子14とが共役関係となるように配置される。また、偏光ビームスプリッタ13に入射するレーザ光は、S偏光であり、偏光ビームスプリッタ13の反射面で反射して空間光変調素子14に入射する。
空間光変調素子14は、図示しない制御回路からの信号に基づき照射された光を空間変調し、偏光ビームスプリッタ13に対してP偏光となるように変調光を反射する。P偏光となった変調光は、偏光ビームスプリッタ13を透過した後、投射レンズ15によってスクリーン16に結像される。青色レーザ1と赤色レーザ2と緑色レーザ3とは順次、パルス発光し、空間光変調素子14が該パルス発光に同期して各色の成分情報に基づいてレーザ光を空間変調することにより、カラー映像が得られることとなる。
次に、図2〜図6を用いて第1及び第2の拡散素子8,9の動作について説明する。図2は、拡散素子の駆動回路の構成を示す模式図である。なお、図2において図1と同一物は同一番号を附して説明を省略する。図2において、第1の拡散素子8は、透明電極8a,8cと、透明電極8a,8cにより挟まれた液晶分散フィルム8bとで構成される。第2の拡散素子9は、透明電極9a,9cと、透明電極9a,9cにより挟まれた液晶分散フィルム9bとで構成される。
第1の拡散素子8の一方の透明電極8aは接地されており、他方の透明電極8cは、第2の拡散素子9の一方の透明電極9aに接続されるとともに交流電源10aに接続されている。また、第2の拡散素子9の一方の透明電極9cは、第1の拡散素子8の他方の透明電極8cに接続されるとともに交流電源10aに接続され、他方の透明電極9cは、交流電源10aの出力電圧の最大値と同じ電圧を出力する直流電源10bに接続されている。
透明電極9cは、直流電源10bから電圧Vが印加されている。透明電極8cと透明電極9aとは接続されており、それぞれ0からVまでの交流電圧が交流電源10aから印加される。電圧変化の周期は例えば60Hzである。透明電極8cと透明電極9aとの電圧が0の時には、第1の拡散素子8の印加電圧は0であり、第1の拡散素子8は散乱体となる。同時に、第2の拡散素子9の印加電圧はVとなり第2の拡散素子9は透明体となる。一方、透明電極8cと透明電極9aとの電圧がVの時には、第1の拡散素子8の印加電圧はVであり、第1の拡散素子8は透明体となる。同時に、第2の拡散素子9の印加電圧は0となり第2の拡散素子9は散乱体となる。
図3は、電源電圧の時間変化と、2つの第1及び第2の拡散素子8,9に印加される電圧の時間変化とを示す図である。図3に示すように、交流電源10aの電源電圧は、0からVまで変化し、第1及び第2の拡散素子8,9は、1周期に1回ずつ散乱状態と透過状態とを繰り返す。第1及び第2の拡散素子8,9は、最大となる交流電圧値Vが印加された場合、透過状態となり、最小となる交流電圧値0が印加された場合、最大散乱状態となる。そして、電圧値がVから0に変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、透過状態(最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化し、電圧値が0からVに変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、最大散乱状態から透過状態(最小散乱状態)へ変化する。また、第1の拡散素子8の電圧波形と、第2の拡散素子9の電圧波形とは1/2周期ずれている。すなわち、第1の拡散素子8が透明体の場合、第2の拡散素子9が散乱体となり、第1の拡散素子8が散乱体の場合、第2の拡散素子9が透明体となる。
図4〜図6に拡散素子での散乱の様子を示す。図4は、第1の拡散素子8の印加電圧が0であり、第2の拡散素子9の印加電圧がVである場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図であり、図5は、第1の拡散素子8の印加電圧がV’であり、第2の拡散素子9の印加電圧がV−V’である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図であり、図6は、第1の拡散素子8の印加電圧がVであり、第2の拡散素子9の印加電圧が0である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。なお、電圧V’は0〜Vの間の値である。
図4〜図6に示すように透明電極8cと透明電極9aとに印加する交流電圧が0からVに変化する間に、第1及び第2の拡散素子8,9での光の散乱の様子は、図4、図5及び図6の順に変化する。すなわち、図4に示すように、交流電圧が0である場合、第1の拡散素子8は、入射したレーザ光を散乱させ、第2の拡散素子9は、第1の拡散素子8によって散乱されたレーザ光を透過させる。また、図5に示すように、交流電圧がV’(0〜Vの間の値)である場合、第1の拡散素子8は、入射したレーザ光を散乱させ、第2の拡散素子9は、第1の拡散素子8によって散乱されたレーザ光をさらに散乱させる。さらに、図6に示すように、交流電圧がVである場合、第1の拡散素子8は、入射したレーザ光を透過させ、第2の拡散素子9は、第1の拡散素子8によって透過されたレーザ光を散乱させる。
このように、第1及び第2の拡散素子8,9が交互に散乱及び透過を繰り返すので、レーザ光を散乱する位置が第1及び第2の拡散素子8,9の間を移動するのと同じ作用を及ぼすこととなる。従って、図1において空間光変調素子14の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スクリーン16上での干渉パターン、すなわちスペックルノイズが、人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズが低減できる。
さらに、比視感度を考慮すると赤色レーザ光や青色レーザ光のスペックルノイズに比べて緑色レーザ光のスペックルノイズの方が検出されやすい。そこで、緑色レーザ3が発光している時の第1及び第2の拡散素子8,9に印加する電圧V1を、青色レーザ1と赤色レーザ2とが発光している時の第1及び第2の拡散素子8,9に印加する電圧V2よりも小さくすることで、緑色レーザ光の拡散度を青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散度よりも大きくし、緑色レーザ光のスペックルノイズを減少させ、かつ青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散による光利用効率の損失を低減することができる。
なお、本実施の形態では、電圧変化の周期は例えば60Hzとしているが、本発明は特にこれに限定されず、10Hz以上であればよい。人の目が画像のちらつきを検知する周波数(臨界フリッカ周波数)は、年齢や視環境に応じて変化するが、一般的に60Hz程度と言われている。この画像のちらつきは、画面全体が明滅する場合の知覚であり、スペックルノイズのような画面内での輝度差の知覚においては、さらに検知できる周波数は下がる。輝度変化が0%の時には画像のちらつきは存在しない(臨界フリッカ周波数=0Hz)。また、輝度変化が100%に達する画面全体の明滅を60Hz程度の周波数で知覚できるとするならば、スペックルノイズのような20〜30%程度の輝度変化の場合、10〜20Hz以上の周波数で第1及び第2の拡散素子8,9を駆動すれば充分である。
また、2つの拡散素子のうちの投射レンズ側の第2の拡散素子9をロッドインテグレータ11に近接して設置し、ロッドインテグレータ11の開口径をAとし、光源側の第1の拡散素子8と投射レンズ側の第2の拡散素子9との間隔をLとし、第1及び第2の拡散素子8,9の最大拡散角をθ(rad)とする場合、拡散素子の間隔Lは、下記の(1)式で表される。
L<A/(2θ)・・・・(1)
上記の(1)式に示すように拡散素子の間隔Lを設定することにより、光源側の第1の拡散素子8が最大拡散角でレーザ光を拡散したとしても、レーザ光は全てロッドインテグレータ11の開口内に入射するので、光量損失が無く、かつ最大の光拡散効果が得られ、スペックルノイズの除去効果も最大とすることができる。
なお、拡散素子が3つ以上ある場合であっても、最もレーザ光源に近い拡散素子と、最も投射レンズに近い拡散素子との間隔Lを上記の(1)式を満たすように設定することが好ましい。
かかる構成によれば、第1及び第2の拡散素子8,9を光軸方向に並べて配置し、第1及び第2の拡散素子8,9の拡散度の変化の周期を半周期ずらすことで、スペックルノイズが低減できることとなる。また、レーザ光の波長に応じて第1及び第2の拡散素子8,9の拡散度を変えることで、波長毎にスペックルノイズ低減の最適化を行うことができる。更に、第1及び第2の拡散素子8,9が集光レンズ7の収束光路中に設けられているので、第1及び第2の拡散素子8,9によって拡散された拡散光を投射レンズ15の物側NA(開口数)よりも小さくすることができ、拡散光が投射レンズ15の物側NAよりも大きくなることによる利用効率の低下を防止することができる。
なお、本実施の形態において、ロッドインテグレータ11の代わりに内部が中空のライトパイプを用いてもかまわない。また、拡散素子は3個以上の複数個であっても構わない。また、空間光変調素子として反射型液晶素子を用いたが、デジタルマイクロミラーデバイスなどの空間光変調素子を用いても構わない。また、ロッドインテグレータ11は光量分布を均一化するために用いているだけであり、スペックルノイズの低減とは無関係である。そのため、光量分布に多少のムラがあったとしても許されるような場合にはロッドインテグレータ11を省くことも可能である。また、本実施の形態において第1及び第2の拡散素子8,9の拡散度は略同一であるとしたが、拡散度は異なっていても良い。例えば、第1の拡散素子8の拡散度を第2の拡散素子9の拡散度よりも小さくすることで、ロッドインテグレータ11の入射端面での光量損失を小さくすることも可能である。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2における投写型ディスプレイ装置について説明する。図7は、実施の形態2における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。図7において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図7において、投写型ディスプレイ装置は、青色レーザ1、赤色レーザ2、緑色レーザ3、凹レンズ17a〜17c、凸レンズ18a〜18c、拡散素子19a〜19c、駆動回路20a〜20c、レンズ21a〜21c、空間光変調素子22a〜22c、色合成プリズム23及び投射レンズ15を備える。
凹レンズ17a〜17cと凸レンズ18a〜18cとは、それぞれビームエキスパンダー光学系をなしており、凹レンズ17a〜17cは入射したレーザ光を拡大し、凸レンズ18a〜18cは入射したレーザ光を平行光に変換する。拡散素子19a〜19cは、入射したレーザ光を拡散させる。なお、拡散素子19a〜19cについては後述する。駆動回路20a〜20cは、拡散素子19a〜19cに電圧を印加することにより、拡散素子19a〜19cを駆動する。レンズ21a〜21cは、拡散素子19a〜19cによって拡散された各レーザ光を空間光変調素子22a〜22c上に結像する。空間光変調素子22a〜22cは、本実施の形態においては透過型液晶パネルで構成され、拡散素子19a〜19cによって拡散された各レーザ光を変調する。色合成プリズム23は、空間光変調素子22a〜22cによって変調された各レーザ光を合成する。
続いて、図7を用いて実施の形態2における投写型ディスプレイ装置の動作について説明する。なお、青色レーザ1から出射するレーザ光の受ける作用は、赤色レーザ2及び緑色レーザ3から出射するレーザ光の受ける作用と同じであるので、図7において青色レーザ1から出射するレーザ光についてのみ説明し、他のレーザ光については説明を省略する。
青色レーザ1から出射したレーザ光は、凹レンズ17aと凸レンズ18aとからなるビームエキスパンダー光学系により拡大され拡散素子19aに入射する。拡散素子19aは、駆動回路20aによって時間的及び空間的に拡散度が変調され、透過するレーザ光を拡散させる。拡散素子19aによって拡散されたレーザ光は、レンズ21aを透過して空間光変調素子22aを照明する。空間光変調素子22aは、投影画像の青色成分の色信号を基にレーザ光を空間変調する。空間変調されたレーザ光は、色合成プリズム23によって他の色のレーザ光と同一光軸上に合成される。色合成プリズム23によって合成されたレーザ光は、投射レンズ15によって図示しないスクリーン上に結像される。
拡散素子19aの構成及び動作について図8及び図9を用いて説明する。図8及び図9は、拡散素子19aの構成を示す図であり、図8は、実施の形態2における拡散素子19aを示す側面図、図9は、実施の形態2における拡散素子19aの電極を示す平面図である。なお、拡散素子19b,19cの構成は、拡散素子19aの構成と同じである。
図8において、拡散素子19aは、第1の拡散素子25と、第2の拡散素子26と、共通基板24とで構成される。第1の拡散素子25は、透明電極25a,25cと、透明電極25a,25cにより挟まれた液晶分散フィルム25bとで構成される。第2の拡散素子26は、透明電極26a,26cと、透明電極26a,26cにより挟まれた液晶分散フィルム26bとで構成される。共通基板24は、第1の拡散素子25によって透過又は拡散されたレーザ光を第2の拡散素子26に導く。第1の拡散素子25の透明電極25cと、第2の拡散素子26の透明電極26aとが対向するように、第1の拡散素子25と第2の拡散素子26とが共通基板24に貼り合わされている。
図9において、環状透明電極27は、光軸を中心とする複数の環状領域に透明電極26cを分割することで構成されている。図9では、環状透明電極の一つだけを図示しているが、環状透明電極27はレーザ光が通過する領域全体に、同軸上に複数個形成されている。すなわち、透明電極25aは、透明電極26cと同様に、複数の環状領域に分割され、環状透明電極27が形成されている。
実施の形態2における拡散素子19aの動作について、実施の形態1における第1及び第2の拡散素子8,9の動作と異なるのは、環状透明電極27を形成したことであり、空間的にも拡散度を異ならせることを可能にした点である。すなわち、環状透明電極27を形成する複数の環状領域にそれぞれ異なる電圧を印加する。例えば、環状透明電極27の中心部分では拡散度が大きくなるように電圧を印加し、周辺部分では拡散度が小さくなるように電圧を印加する。レーザ光の光強度分布は、中心部分の光強度が高く、周辺部分の光強度が小さいため、光強度の高い領域は大きく拡散させ、光強度の小さい領域は小さく拡散させることにより、拡散素子19aを透過した後のレーザ光の光強度分布を均一化することができる。
なお、本実施の形態における環状領域は、光軸を中心とする円形状の領域だけでなく、光軸を中心とする楕円形状の領域も含む。
このように、図9に示したような環状透明電極27を第1の拡散素子25の透明電極25aと第2の拡散素子26の透明電極26cとに設け、各々異なる電圧を印加すると共に透明電極25cと透明電極26aに交流電圧を印加することで、レーザ光の拡散度合いを時間的及び空間的に変調し、スペックルノイズの低減と強度分布の均一化を行うことができる。かかる構成によれば、拡散素子の拡散度を時間的及び空間的に変調することで、レーザ光の強度分布を均一化することができる共に、スペックルノイズを低減することができる。
また、複数の領域は、光軸を中心とする複数の環状領域を含むので、レーザ光のビーム断面形状に応じて拡散度合いを空間的に変化させることができ、レーザ光の強度分布を均一化することができる。また、複数の環状領域は、中心部分の環状領域から周辺部分の環状領域に向けて、レーザ光の拡散度合いを小さくしてもよい。すなわち、レーザ光の強度分布は、中心部分の強度が高く、周辺部分の強度が小さい。そのため、強度の高い領域は大きく拡散させ、強度の小さい領域は小さく拡散させることにより、拡散素子19aを透過した後のレーザ光の強度分布をより均一化することができる。さらに、透明な通基板24の光軸に垂直な面に第1の拡散素子25及び第2の拡散素子26をそれぞれ対向して形成したことにより、第1の拡散素子25と第2の拡散素子26との間隔が共通基板24により予め決められ、拡散素子相互の位置合わせが不要になり、薄型化も可能となる。
なお、実施の形態1,2では、2つの第1及び第2の拡散素子8,9の共通電極(透明電極8c,9a)に交流電圧を印加しているが、本発明は特にこれに限定されず、2つの第1及び第2の拡散素子8,9それぞれに単独で電圧を印加してもよい。
図10は、各拡散素子に独立して電圧を印加する場合における拡散素子の構成を示す図である。第1の拡散素子8の透明電極8a,8cは、−Vから+Vまで周期的に変化する交流電圧を印加する第1の交流電源31に接続され、第2の拡散素子9の透明電極9a,9cは、−Vから+Vまで周期的に変化する交流電圧を印加する第2の交流電源32に接続されている。第1及び第2の拡散素子8,9の印加電圧が+V及び−Vである場合、第1及び第2の拡散素子8,9は散乱体となり、第1及び第2の拡散素子8,9の印加電圧が0である場合、第1及び第2の拡散素子8,9は透明体となる。
図11は、2つの拡散素子にそれぞれ印加される電圧の時間変化を示す図である。図11に示すように、第1の拡散素子8の電圧波形33と、第2の拡散素子9の電圧波形34とは1/4周期ずれている。そのため、第1の拡散素子8の印加電圧が+Vである場合、第1の拡散素子8は散乱体となる。このとき、第2の拡散素子9の印加電圧は0であり、第2の拡散素子9は透明体となる。また、第1の拡散素子8の印加電圧が0である場合、第1の拡散素子8は透明体となる。このとき、第2の拡散素子9の印加電圧は+Vであり、第2の拡散素子9は散乱体となる。さらに、第1の拡散素子8の印加電圧が−Vである場合、第1の拡散素子8は散乱体となる。このとき、第2の拡散素子9の印加電圧は0であり、第2の拡散素子9は透明体となる。
第1及び第2の拡散素子8,9は、交流電圧値±Vが印加された場合、最大散乱状態となり、交流電圧値0が印加された場合、透過状態となる。そして、電圧値が+Vから0に変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、最大散乱状態から透過状態(最小散乱状態)へ変化し、電圧値が0から−Vに変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、透過状態(最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化する。また、電圧値が−Vから0に変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、最大散乱状態から透過状態(最小散乱状態)へ変化し、電圧値が0から+Vに変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、透過状態(最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化する。
このように、第1及び第2の拡散素子8,9それぞれに単独で電圧を印加した場合も、空間光変調素子14の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スクリーン16上での干渉パターン、すなわちスペックルノイズが、人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズが低減できる。
なお、上記の投写型ディスプレイ装置は、2つの拡散素子を設け、各拡散素子に単独で電圧を印加しているが、本発明は特にこれに限定されず、3つ以上の拡散素子を設け、各拡散素子に単独で電圧を印加してもよい。特に、n(nは自然数)個の拡散素子を設け、各拡散素子に単独で電圧を印加する場合、各拡散素子に印加する電圧の位相差は1/(2n)周期となるように設定する。これにより、n個の拡散素子にそれぞれ単独で電圧を印加した場合も、空間光変調素子14の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スクリーン16上での干渉パターン、すなわちスペックルノイズが、人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズが低減できる。
さらに、本実施の形態における2つの拡散素子は、アナログ的に拡散度合いを変化させているが、本発明は特にこれに限定されず、拡散素子を3つ以上設ける場合、これらの拡散素子の拡散度合いをデジタル的に変化させてもよい。この場合、拡散素子を駆動する駆動回路として安価で回路ノイズに強いデジタル回路を用いることができる。なお、拡散素子の数を増加させることで、より高い精度で拡散度合いを変化させることができる。また、拡散素子の数が2つであっても、アナログ的に(多値で)駆動することにより、拡散素子の数を増加させた場合と同様に、より高い精度で拡散度合いを変化させることができる。
さらにまた、本実施の形態における拡散素子の印加電圧は正弦波であるが、本発明は特にこれに限定されず、例えば三角波であってもよく、各印加電圧が相補的にキャンセルする波形であればよい。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る投写型ディスプレイ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子と、前記空間光変調素子により変調された光をスクリーンに投射する投射レンズと、前記レーザ光源と前記空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられ、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる複数の拡散素子とを備える。
この構成によれば、レーザ光源からレーザ光が出射され、レーザ光源から出射したレーザ光が空間光変調素子により変調され、空間光変調素子により変調された光が投射レンズによりスクリーンに投射される。そして、レーザ光源と空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子により、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
したがって、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、それぞれ周期的に拡散度合いが変化し、前記拡散素子毎の周期的な拡散度合いの変化の位相がずれていることが好ましい。
この構成によれば、複数の拡散素子は、それぞれ周期的に拡散度合いが変化し、拡散素子毎の周期的な拡散度合いの変化の位相がずれているので、スペックルノイズを時間的に変動させることができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、収束光路中に設けられていることが好ましい。この構成によれば、複数の拡散素子が収束光路中に設けられているので、複数の拡散素子によって拡散された拡散光を投射レンズの物側開口数よりも小さくすることができ、拡散光が投射レンズの物側開口数よりも大きくなることによる利用効率の低下を防止することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、散乱状態から透明状態に1周期に1回変化する2つの拡散素子を含み、前記2つの拡散素子の位相差は半周期であることが好ましい。
この構成によれば、散乱状態から透明状態に1周期に1回変化する2つの拡散素子の位相差は半周期であるので、一方の拡散素子が散乱状態であれば、他方の拡散素子は透明状態であり、空間光変調素子の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スペックルノイズが人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズを低減することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、前記透明フィルムを挟む2つの透明電極とをそれぞれ備える第1の拡散素子及び第2の拡散素子を含み、第1の拡散素子の一方の透明電極は接地され、他方の透明電極は、第2の拡散素子の一方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続され、第2の拡散素子の一方の透明電極は、第1の拡散素子の他方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続され、他方の透明電極は、前記交流電源の出力電圧の最大値と同じ電圧を出力する直流電源に接続されることが好ましい。
この構成によれば、第1の拡散素子及び第2の拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、透明フィルムを挟む2つの透明電極とをそれぞれ備える。そして、第1の拡散素子の一方の透明電極は接地され、他方の透明電極は、第2の拡散素子の一方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続される。また、第2の拡散素子の一方の透明電極は、第1の拡散素子の他方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続され、他方の透明電極は、交流電源の出力電圧の最大値と同じ電圧を出力する直流電源に接続される。
すなわち、第1の拡散素子の他方の透明電極と第2の拡散素子の一方の透明電極とにそれぞれ0からVまでの交流電圧が交流電源から印加される場合、交流電圧が0の時には、第1の拡散素子への印加電圧は0であり、第1の拡散素子は散乱体となる。同時に、第2の拡散素子への印加電圧はVとなり第2の拡散素子は透明体となる。一方、交流電圧がVの時には、第1の拡散素子への印加電圧はVであり、第1の拡散素子は透明体となる。同時に、第2の拡散素子の印加電圧は0となり第2の拡散素子は散乱体となる。したがって、2つの拡散素子に交流電圧を印加するという簡単な構成で、2つの拡散素子を散乱状態と透過状態とに切り替えることができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、散乱状態から透明状態に1周期に2回変化するn個の拡散素子を含み、各拡散素子の位相差は、1/(2n)周期であることが好ましい。
この構成によれば、散乱状態から透明状態に1周期に2回変化するn個の拡散素子のそれぞれの位相差は、1/(2n)周期であるので、例えば、拡散素子が2つであれば、一方の拡散素子が散乱状態であれば、他方の拡散素子は透明状態となり、空間光変調素子の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スペックルノイズが人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズを低減することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、前記透明フィルムを挟む2つの透明電極とを含み、各拡散素子の2つの透明電極は、交流電源に接続されることが好ましい。
この構成によれば、拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、透明フィルムを挟む2つの透明電極とを含む。そして、各拡散素子の2つの透明電極は、交流電源に接続される。したがって、各拡散素子には、それぞれ個別に交流電圧が印加されるので、複数の拡散素子を散乱状態と透過状態とに個別に切り替えることができ、より細かく拡散度合いを変化させることができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ光源は、赤色レーザ光を出射する赤色レーザ光源と、青色レーザ光を出射する青色レーザ光源と、緑色レーザ光を出射する緑色レーザ光源とを含み、前記複数の拡散素子は、前記赤色レーザ光、前記青色レーザ光及び前記緑色レーザ光の波長に応じて拡散度合いを変化させることが好ましい。
この構成によれば、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光の波長に応じて拡散度合いが変化されるので、レーザ光の波長毎にスペックルノイズ低減の最適化を行うことができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、前記緑色レーザ光源から出射された緑色レーザ光が入射される時に拡散度合いが最大になることが好ましい。
比視感度を考慮すると赤色や青色の光のスペックルノイズに比べて緑色の光のスペックルノイズの方が検出されやすい。そのため、複数の拡散素子は、緑色レーザ光源から出射された緑色レーザ光が入射される時に拡散度合いが最大になるので、緑色レーザ光の拡散度合いを青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散度合いよりも大きくすることができ、緑色レーザ光のスペックルノイズを減少させ、かつ青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散による光利用効率の損失を低減することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、拡散度合いが略同一であることが好ましい。この構成によれば、複数の拡散素子の拡散度合いが略同一であるので、各拡散素子に印加する電圧の最大値を略同一にすることができ、構成を簡略化することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、複数の領域に分割され、前記複数の領域毎に拡散度合いを時間的かつ電気的に変化させることが好ましい。
この構成によれば、複数の拡散素子は、複数の領域に分割され、複数の領域毎に拡散度合いが時間的かつ電気的に変化されるので、レーザ光の拡散度合いを空間的に変化させることができ、レーザ光の強度分布を均一化することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の領域は、前記光軸を中心とする複数の環状領域を含むことが好ましい。この構成によれば、複数の領域は、光軸を中心とする複数の環状領域を含むので、レーザ光のビーム断面形状に応じて拡散度合いを空間的に変化させることができ、レーザ光の強度分布を均一化することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、透明な共通基板の光軸に垂直な面にそれぞれ対向して形成されていることが好ましい。この構成によれば、複数の拡散素子は、透明な共通基板の光軸に垂直な面にそれぞれ対向して形成されているので、各拡散素子の間隔が共通基板により予め決められ、拡散素子相互の位置合わせが不要になり、薄型化も可能となる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子のうちの前記投射レンズに最も近い拡散素子に近接しており、入射したレーザ光の光量分布を均一化するホモジナイザーをさらに備え、前記レーザ光源に最も近い拡散素子と前記投射レンズに最も近い拡散素子との間隔Lと、各拡散素子の最大拡散角θと、前記ホモジナイザーの入射面の開口径Aとの関係は、L<A/(2θ)であることが好ましい。
この構成によれば、ホモジナイザーは、複数の拡散素子のうちの投射レンズに最も近い拡散素子に近接しており、入射したレーザ光の光量分布を均一化する。そして、レーザ光源に最も近い拡散素子と投射レンズに最も近い拡散素子との間隔Lと、各拡散素子の最大拡散角θと、ホモジナイザーの入射面の開口径Aとの関係は、L<A/(2θ)である。
したがって、レーザ光源に最も近い拡散素子が最大拡散角でレーザ光を拡散したとしても、レーザ光は全てホモジナイザーの開口内に入射するので、光量損失が無く、かつ最大の光拡散効果が得られ、スペックルノイズの除去効果も最大とすることができる。
本発明の他の局面に係るスペックル低減素子は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子と、前記複数の拡散素子に周期的に変化する電圧を印加し、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる駆動部とを備える。
この構成によれば、複数の拡散素子が、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられている。そして、駆動部により、複数の拡散素子に周期的に変化する電圧が印加され、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
したがって、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
本発明に係る投写型ディスプレイ装置及びスペックル低減素子は、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができ、さらに、スペックルノイズを低減することができ、レーザ光を用いる投写型ディスプレイ装置及びスペックルノイズを低減するスペックルノイズ低減素子として有用である。
また、本発明に係る投写型ディスプレイ装置は、スペックルノイズが低減されるレーザ光学系を有し、フロントプロジェクタやリアプロジェクタ等としても有用である。またその照明光学系だけを利用して照明装置や液晶ディスプレイのバックパネル等の用途にも応用できる。
本発明は、レーザ光を用いる投写型ディスプレイ装置、及びスペックルノイズを低減するスペックル低減素子に関するものである。
近年、高出力の青色半導体レーザが商用化されてきたことで、赤色半導体レーザや第2高調波発生(以下SHGと略記する)による緑色レーザと合わせて、3原色のレーザ光源を用いた投写型ディスプレイ装置の開発が進んでいる。光源として単色光であるレーザを用いることにより、再現できる色範囲が広く、かつ消費電力も小さい投写型ディスプレイ装置を得ることができる。このようにレーザ光源を用いた投写型ディスプレイ装置においてはスペックルノイズが問題となっている。スペックルノイズは、干渉性の高い光であるレーザ光を用いてスクリーン上に像を形成した時に、微細な凹凸を有するスクリーンから反射したレーザ光が干渉し合うことによって生じるランダムな干渉パターンである。従来の投写型ディスプレイ装置においては、拡散板を機械的に運動させることにより干渉パターンをスクリーン上で高速に運動させ、スペックルノイズが人の目に検知されないようにしている。(例えば、特許文献1参照)。
図12は、特許文献1に記載された従来の投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。図12において、赤色レーザ101と青色レーザ103と緑色レーザ105とから出射したレーザ光は、ダイクロイックミラー102、104、106で波長選択的にそれぞれ反射され、同一光軸上に合成される。合成されたレーザ光は、すりガラスなどで構成される拡散素子107で拡散された後、レンズ109によって空間光変調素子110を照明する。空間光変調素子110により変調されたレーザ光は、投射レンズ111によってスクリーン112に結像される。拡散素子107をモータ108によって回転させることにより、スクリーン112上で前述した干渉パターンが高速に運動し、スペックルノイズが消失する。
特開平6−208089号公報
しかしながら、従来の投写型ディスプレイ装置の構成では、拡散素子を機械的に運動させる必要があるため、モータ108などのアクチュエータが必要であり、装置が大型化したり、機械部の摩耗などにより信頼性が低下するといった問題があった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができ、さらに、スペックルノイズを低減することができる投写型ディスプレイ装置及びスペックル低減素子を提供することを目的とするものである。
本発明の一局面に係る投写型ディスプレイ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子と、前記空間光変調素子により変調された光をスクリーンに投射する投射レンズと、前記レーザ光源と前記空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられ、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる複数の拡散素子とを備える。
この構成によれば、レーザ光源からレーザ光が出射され、レーザ光源から出射したレーザ光が空間光変調素子により変調され、空間光変調素子により変調された光が投射レンズによりスクリーンに投射される。そして、レーザ光源と空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子により、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
したがって、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
本発明の他の局面に係るスペックル低減素子は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子と、前記複数の拡散素子に周期的に変化する電圧を印加し、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる駆動部とを備える。
この構成によれば、複数の拡散素子が、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられている。そして、駆動部により、複数の拡散素子に周期的に変化する電圧が印加され、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
したがって、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
本発明によれば、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明はその要点を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。図1において、投写型ディスプレイ装置は、青色レーザ1、赤色レーザ2、緑色レーザ3、ミラー4、ダイクロイックミラー5,6、集光レンズ7、第1の拡散素子8、第2の拡散素子9、駆動回路10、ロッドインテグレータ11、レンズ12、偏光ビームスプリッタ13、空間光変調素子14及び投射レンズ15を備える。なお、スペックル低減素子は、第1の拡散素子8、第2の拡散素子9及び駆動回路10を備えて構成される。
青色レーザ1は、青色レーザ光を出射し、赤色レーザ2は、赤色レーザ光を出射し、緑色レーザ3は、緑色レーザ光を出射する。青色レーザ1と赤色レーザ2としては、半導体レーザが好適に利用可能である。緑色レーザ3としては、SHGを用いた固体レーザが好適に利用可能である。
ミラー4は、青色レーザ光を反射させる。ダイクロイックミラー5は、赤色レーザ光を選択的に反射させ、それ以外の波長の光を透過させる。ダイクロイックミラー6は、緑色レーザ光を選択的に反射させ、それ以外の波長の光を透過させる。集光レンズ7は、青色レーザ1、赤色レーザ2及び緑色レーザ3から出射した各レーザ光をロッドインテグレータ11の入射面に集光する。
第1及び第2の拡散素子8,9は、液晶を分散させた透明フィルムを2枚の透明電極で挟んで構成され、本実施の形態では日本板硝子製「ウムフィルム」を用いている。第1及び第2の拡散素子8,9は、両電極間に電圧が印加されない時には不透明であり、電圧が印加されると、印加電圧の大きさに応じて拡散度が減少し、最終的には透明になる。第1及び第2の拡散素子8,9の拡散度の最大値は略同一である。駆動回路10は、第1及び第2の拡散素子8,9に電圧を印加することにより、第1及び第2の拡散素子8,9を駆動する。ロッドインテグレータ11は、直方体の硝子部材から構成され、入射したレーザ光の光量分布を均一化する。
レンズ12は、ロッドインテグレータ11の出射端面の像を空間光変調素子14上に結像する。偏光ビームスプリッタ13は、入射したレーザ光を、直交する2つの偏光成分に分離する。本実施の形態における偏光ビームスプリッタ13は、P偏光成分を透過させ、S偏光成分を反射させる。空間光変調素子14は、本実施の形態においては反射型液晶パネルで構成され、ロッドインテグレータ11の出射端面の像を変調する。投射レンズ15は、スクリーン16上に空間光変調素子14によって変調された像を投射する。
以下、図1を用いて実施の形態1における投写型ディスプレイ装置の動作について説明する。青色レーザ1から出射した青色レーザ光は、ミラー4によって反射され、赤色レーザ2及び緑色レーザ3から出射した赤色レーザ光及び緑色レーザ光は、それぞれダイクロイックミラー5,6によって波長選択的に反射され、各レーザ光は、同一光軸上に合成される。合成されたレーザ光は、集光レンズ7によりロッドインテグレータ11の入射端面に集光される。合成されたレーザ光は、第1及び第2の拡散素子8,9を透過する際に、駆動回路10から第1及び第2の拡散素子8,9に印加される電圧の大きさに応じて拡散される。
第1及び第2の拡散素子8,9で拡散されたレーザ光は、ロッドインテグレータ11に入射する。ロッドインテグレータ11に入射したレーザ光は、内部で多重反射するので、出射端面でほぼ均一な光量分布が得られる。ロッドインテグレータ11から出射したレーザ光は、レンズ12と偏光ビームスプリッタ13とを通って空間光変調素子14に照射される。レンズ12は、ロッドインテグレータ11の出射端面と空間光変調素子14とが共役関係となるように配置される。また、偏光ビームスプリッタ13に入射するレーザ光は、S偏光であり、偏光ビームスプリッタ13の反射面で反射して空間光変調素子14に入射する。
空間光変調素子14は、図示しない制御回路からの信号に基づき照射された光を空間変調し、偏光ビームスプリッタ13に対してP偏光となるように変調光を反射する。P偏光となった変調光は、偏光ビームスプリッタ13を透過した後、投射レンズ15によってスクリーン16に結像される。青色レーザ1と赤色レーザ2と緑色レーザ3とは順次、パルス発光し、空間光変調素子14が該パルス発光に同期して各色の成分情報に基づいてレーザ光を空間変調することにより、カラー映像が得られることとなる。
次に、図2〜図6を用いて第1及び第2の拡散素子8,9の動作について説明する。図2は、拡散素子の駆動回路の構成を示す模式図である。なお、図2において図1と同一物は同一番号を附して説明を省略する。図2において、第1の拡散素子8は、透明電極8a,8cと、透明電極8a,8cにより挟まれた液晶分散フィルム8bとで構成される。第2の拡散素子9は、透明電極9a,9cと、透明電極9a,9cにより挟まれた液晶分散フィルム9bとで構成される。
第1の拡散素子8の一方の透明電極8aは接地されており、他方の透明電極8cは、第2の拡散素子9の一方の透明電極9aに接続されるとともに交流電源10aに接続されている。また、第2の拡散素子9の一方の透明電極9aは、第1の拡散素子8の他方の透明電極8cに接続されるとともに交流電源10aに接続され、他方の透明電極9cは、交流電源10aの出力電圧の最大値と同じ電圧を出力する直流電源10bに接続されている。
透明電極9cは、直流電源10bから電圧Vが印加されている。透明電極8cと透明電極9aとは接続されており、それぞれ0からVまでの交流電圧が交流電源10aから印加される。電圧変化の周期は例えば60Hzである。透明電極8cと透明電極9aとの電圧が0の時には、第1の拡散素子8の印加電圧は0であり、第1の拡散素子8は散乱体となる。同時に、第2の拡散素子9の印加電圧はVとなり第2の拡散素子9は透明体となる。一方、透明電極8cと透明電極9aとの電圧がVの時には、第1の拡散素子8の印加電圧はVであり、第1の拡散素子8は透明体となる。同時に、第2の拡散素子9の印加電圧は0となり第2の拡散素子9は散乱体となる。
図3は、電源電圧の時間変化と、2つの第1及び第2の拡散素子8,9に印加される電圧の時間変化とを示す図である。図3に示すように、交流電源10aの電源電圧は、0からVまで変化し、第1及び第2の拡散素子8,9は、1周期に1回ずつ散乱状態と透過状態とを繰り返す。第1及び第2の拡散素子8,9は、最大となる交流電圧値Vが印加された場合、透過状態となり、最小となる交流電圧値0が印加された場合、最大散乱状態となる。そして、電圧値がVから0に変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、透過状態(最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化し、電圧値が0からVに変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、最大散乱状態から透過状態(最小散乱状態)へ変化する。また、第1の拡散素子8の電圧波形と、第2の拡散素子9の電圧波形とは1/2周期ずれている。すなわち、第1の拡散素子8が透明体の場合、第2の拡散素子9が散乱体となり、第1の拡散素子8が散乱体の場合、第2の拡散素子9が透明体となる。
図4〜図6に拡散素子での散乱の様子を示す。図4は、第1の拡散素子8の印加電圧が0であり、第2の拡散素子9の印加電圧がVである場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図であり、図5は、第1の拡散素子8の印加電圧がV’であり、第2の拡散素子9の印加電圧がV−V’である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図であり、図6は、第1の拡散素子8の印加電圧がVであり、第2の拡散素子9の印加電圧が0である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。なお、電圧V’は0〜Vの間の値である。
図4〜図6に示すように透明電極8cと透明電極9aとに印加する交流電圧が0からVに変化する間に、第1及び第2の拡散素子8,9での光の散乱の様子は、図4、図5及び図6の順に変化する。すなわち、図4に示すように、交流電圧が0である場合、第1の拡散素子8は、入射したレーザ光を散乱させ、第2の拡散素子9は、第1の拡散素子8によって散乱されたレーザ光を透過させる。また、図5に示すように、交流電圧がV’(0〜Vの間の値)である場合、第1の拡散素子8は、入射したレーザ光を散乱させ、第2の拡散素子9は、第1の拡散素子8によって散乱されたレーザ光をさらに散乱させる。さらに、図6に示すように、交流電圧がVである場合、第1の拡散素子8は、入射したレーザ光を透過させ、第2の拡散素子9は、第1の拡散素子8によって透過されたレーザ光を散乱させる。
このように、第1及び第2の拡散素子8,9が交互に散乱及び透過を繰り返すので、レーザ光を散乱する位置が第1及び第2の拡散素子8,9の間を移動するのと同じ作用を及ぼすこととなる。従って、図1において空間光変調素子14の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スクリーン16上での干渉パターン、すなわちスペックルノイズが、人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズが低減できる。
さらに、比視感度を考慮すると赤色レーザ光や青色レーザ光のスペックルノイズに比べて緑色レーザ光のスペックルノイズの方が検出されやすい。そこで、緑色レーザ3が発光している時の第1及び第2の拡散素子8,9に印加する電圧V1を、青色レーザ1と赤色レーザ2とが発光している時の第1及び第2の拡散素子8,9に印加する電圧V2よりも小さくすることで、緑色レーザ光の拡散度を青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散度よりも大きくし、緑色レーザ光のスペックルノイズを減少させ、かつ青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散による光利用効率の損失を低減することができる。
なお、本実施の形態では、電圧変化の周期は例えば60Hzとしているが、本発明は特にこれに限定されず、10Hz以上であればよい。人の目が画像のちらつきを検知する周波数(臨界フリッカ周波数)は、年齢や視環境に応じて変化するが、一般的に60Hz程度と言われている。この画像のちらつきは、画面全体が明滅する場合の知覚であり、スペックルノイズのような画面内での輝度差の知覚においては、さらに検知できる周波数は下がる。輝度変化が0%の時には画像のちらつきは存在しない(臨界フリッカ周波数=0Hz)。また、輝度変化が100%に達する画面全体の明滅を60Hz程度の周波数で知覚できるとするならば、スペックルノイズのような20〜30%程度の輝度変化の場合、10〜20Hz以上の周波数で第1及び第2の拡散素子8,9を駆動すれば充分である。
また、2つの拡散素子のうちの投射レンズ側の第2の拡散素子9をロッドインテグレータ11に近接して設置し、ロッドインテグレータ11の開口径をAとし、光源側の第1の拡散素子8と投射レンズ側の第2の拡散素子9との間隔をLとし、第1及び第2の拡散素子8,9の最大拡散角をθ(rad)とする場合、拡散素子の間隔Lは、下記の(1)式で表される。
L<A/(2θ)・・・・(1)
上記の(1)式に示すように拡散素子の間隔Lを設定することにより、光源側の第1の拡散素子8が最大拡散角でレーザ光を拡散したとしても、レーザ光は全てロッドインテグレータ11の開口内に入射するので、光量損失が無く、かつ最大の光拡散効果が得られ、スペックルノイズの除去効果も最大とすることができる。
なお、拡散素子が3つ以上ある場合であっても、最もレーザ光源に近い拡散素子と、最も投射レンズに近い拡散素子との間隔Lを上記の(1)式を満たすように設定することが好ましい。
かかる構成によれば、第1及び第2の拡散素子8,9を光軸方向に並べて配置し、第1及び第2の拡散素子8,9の拡散度の変化の周期を半周期ずらすことで、スペックルノイズが低減できることとなる。また、レーザ光の波長に応じて第1及び第2の拡散素子8,9の拡散度を変えることで、波長毎にスペックルノイズ低減の最適化を行うことができる。更に、第1及び第2の拡散素子8,9が集光レンズ7の収束光路中に設けられているので、第1及び第2の拡散素子8,9によって拡散された拡散光を投射レンズ15の物側NA(開口数)よりも小さくすることができ、拡散光が投射レンズ15の物側NAよりも大きくなることによる利用効率の低下を防止することができる。
なお、本実施の形態において、ロッドインテグレータ11の代わりに内部が中空のライトパイプを用いてもかまわない。また、拡散素子は3個以上の複数個であっても構わない。また、空間光変調素子として反射型液晶素子を用いたが、デジタルマイクロミラーデバイスなどの空間光変調素子を用いても構わない。また、ロッドインテグレータ11は光量分布を均一化するために用いているだけであり、スペックルノイズの低減とは無関係である。そのため、光量分布に多少のムラがあったとしても許されるような場合にはロッドインテグレータ11を省くことも可能である。また、本実施の形態において第1及び第2の拡散素子8,9の拡散度は略同一であるとしたが、拡散度は異なっていても良い。例えば、第1の拡散素子8の拡散度を第2の拡散素子9の拡散度よりも小さくすることで、ロッドインテグレータ11の入射端面での光量損失を小さくすることも可能である。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2における投写型ディスプレイ装置について説明する。図7は、実施の形態2における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。図7において、図1と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。
図7において、投写型ディスプレイ装置は、青色レーザ1、赤色レーザ2、緑色レーザ3、凹レンズ17a〜17c、凸レンズ18a〜18c、拡散素子19a〜19c、駆動回路20a〜20c、レンズ21a〜21c、空間光変調素子22a〜22c、色合成プリズム23及び投射レンズ15を備える。
凹レンズ17a〜17cと凸レンズ18a〜18cとは、それぞれビームエキスパンダー光学系をなしており、凹レンズ17a〜17cは入射したレーザ光を拡大し、凸レンズ18a〜18cは入射したレーザ光を平行光に変換する。拡散素子19a〜19cは、入射したレーザ光を拡散させる。なお、拡散素子19a〜19cについては後述する。駆動回路20a〜20cは、拡散素子19a〜19cに電圧を印加することにより、拡散素子19a〜19cを駆動する。レンズ21a〜21cは、拡散素子19a〜19cによって拡散された各レーザ光を空間光変調素子22a〜22c上に結像する。空間光変調素子22a〜22cは、本実施の形態においては透過型液晶パネルで構成され、拡散素子19a〜19cによって拡散された各レーザ光を変調する。色合成プリズム23は、空間光変調素子22a〜22cによって変調された各レーザ光を合成する。
続いて、図7を用いて実施の形態2における投写型ディスプレイ装置の動作について説明する。なお、青色レーザ1から出射するレーザ光の受ける作用は、赤色レーザ2及び緑色レーザ3から出射するレーザ光の受ける作用と同じであるので、図7において青色レーザ1から出射するレーザ光についてのみ説明し、他のレーザ光については説明を省略する。
青色レーザ1から出射したレーザ光は、凹レンズ17aと凸レンズ18aとからなるビームエキスパンダー光学系により拡大され拡散素子19aに入射する。拡散素子19aは、駆動回路20aによって時間的及び空間的に拡散度が変調され、透過するレーザ光を拡散させる。拡散素子19aによって拡散されたレーザ光は、レンズ21aを透過して空間光変調素子22aを照明する。空間光変調素子22aは、投影画像の青色成分の色信号を基にレーザ光を空間変調する。空間変調されたレーザ光は、色合成プリズム23によって他の色のレーザ光と同一光軸上に合成される。色合成プリズム23によって合成されたレーザ光は、投射レンズ15によって図示しないスクリーン上に結像される。
拡散素子19aの構成及び動作について図8及び図9を用いて説明する。図8及び図9は、拡散素子19aの構成を示す図であり、図8は、実施の形態2における拡散素子19aを示す側面図、図9は、実施の形態2における拡散素子19aの電極を示す平面図である。なお、拡散素子19b,19cの構成は、拡散素子19aの構成と同じである。
図8において、拡散素子19aは、第1の拡散素子25と、第2の拡散素子26と、共通基板24とで構成される。第1の拡散素子25は、透明電極25a,25cと、透明電極25a,25cにより挟まれた液晶分散フィルム25bとで構成される。第2の拡散素子26は、透明電極26a,26cと、透明電極26a,26cにより挟まれた液晶分散フィルム26bとで構成される。共通基板24は、第1の拡散素子25によって透過又は拡散されたレーザ光を第2の拡散素子26に導く。第1の拡散素子25の透明電極25cと、第2の拡散素子26の透明電極26aとが対向するように、第1の拡散素子25と第2の拡散素子26とが共通基板24に貼り合わされている。
図9において、環状透明電極27は、光軸を中心とする複数の環状領域に透明電極26cを分割することで構成されている。図9では、環状透明電極の一つだけを図示しているが、環状透明電極27はレーザ光が通過する領域全体に、同軸上に複数個形成されている。すなわち、透明電極25aは、透明電極26cと同様に、複数の環状領域に分割され、環状透明電極27が形成されている。
実施の形態2における拡散素子19aの動作について、実施の形態1における第1及び第2の拡散素子8,9の動作と異なるのは、環状透明電極27を形成したことであり、空間的にも拡散度を異ならせることを可能にした点である。すなわち、環状透明電極27を形成する複数の環状領域にそれぞれ異なる電圧を印加する。例えば、環状透明電極27の中心部分では拡散度が大きくなるように電圧を印加し、周辺部分では拡散度が小さくなるように電圧を印加する。レーザ光の光強度分布は、中心部分の光強度が高く、周辺部分の光強度が小さいため、光強度の高い領域は大きく拡散させ、光強度の小さい領域は小さく拡散させることにより、拡散素子19aを透過した後のレーザ光の光強度分布を均一化することができる。
なお、本実施の形態における環状領域は、光軸を中心とする円形状の領域だけでなく、光軸を中心とする楕円形状の領域も含む。
このように、図9に示したような環状透明電極27を第1の拡散素子25の透明電極25aと第2の拡散素子26の透明電極26cとに設け、各々異なる電圧を印加すると共に透明電極25cと透明電極26aに交流電圧を印加することで、レーザ光の拡散度合いを時間的及び空間的に変調し、スペックルノイズの低減と強度分布の均一化を行うことができる。かかる構成によれば、拡散素子の拡散度を時間的及び空間的に変調することで、レーザ光の強度分布を均一化することができる共に、スペックルノイズを低減することができる。
また、複数の領域は、光軸を中心とする複数の環状領域を含むので、レーザ光のビーム断面形状に応じて拡散度合いを空間的に変化させることができ、レーザ光の強度分布を均一化することができる。また、複数の環状領域は、中心部分の環状領域から周辺部分の環状領域に向けて、レーザ光の拡散度合いを小さくしてもよい。すなわち、レーザ光の強度分布は、中心部分の強度が高く、周辺部分の強度が小さい。そのため、強度の高い領域は大きく拡散させ、強度の小さい領域は小さく拡散させることにより、拡散素子19aを透過した後のレーザ光の強度分布をより均一化することができる。さらに、透明な通基板24の光軸に垂直な面に第1の拡散素子25及び第2の拡散素子26をそれぞれ対向して形成したことにより、第1の拡散素子25と第2の拡散素子26との間隔が共通基板24により予め決められ、拡散素子相互の位置合わせが不要になり、薄型化も可能となる。
なお、実施の形態1,2では、2つの第1及び第2の拡散素子8,9の共通電極(透明電極8c,9a)に交流電圧を印加しているが、本発明は特にこれに限定されず、2つの第1及び第2の拡散素子8,9それぞれに単独で電圧を印加してもよい。
図10は、各拡散素子に独立して電圧を印加する場合における拡散素子の構成を示す図である。第1の拡散素子8の透明電極8a,8cは、−Vから+Vまで周期的に変化する交流電圧を印加する第1の交流電源31に接続され、第2の拡散素子9の透明電極9a,9cは、−Vから+Vまで周期的に変化する交流電圧を印加する第2の交流電源32に接続されている。第1及び第2の拡散素子8,9の印加電圧が+V及び−Vである場合、第1及び第2の拡散素子8,9は散乱体となり、第1及び第2の拡散素子8,9の印加電圧が0である場合、第1及び第2の拡散素子8,9は透明体となる。
図11は、2つの拡散素子にそれぞれ印加される電圧の時間変化を示す図である。図11に示すように、第1の拡散素子8の電圧波形33と、第2の拡散素子9の電圧波形34とは1/4周期ずれている。そのため、第1の拡散素子8の印加電圧が+Vである場合、第1の拡散素子8は散乱体となる。このとき、第2の拡散素子9の印加電圧は0であり、第2の拡散素子9は透明体となる。また、第1の拡散素子8の印加電圧が0である場合、第1の拡散素子8は透明体となる。このとき、第2の拡散素子9の印加電圧は+Vであり、第2の拡散素子9は散乱体となる。さらに、第1の拡散素子8の印加電圧が−Vである場合、第1の拡散素子8は散乱体となる。このとき、第2の拡散素子9の印加電圧は0であり、第2の拡散素子9は透明体となる。
第1及び第2の拡散素子8,9は、交流電圧値±Vが印加された場合、最大散乱状態となり、交流電圧値0が印加された場合、透過状態となる。そして、電圧値が+Vから0に変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、最大散乱状態から透過状態(最小散乱状態)へ変化し、電圧値が0から−Vに変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、透過状態(最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化する。また、電圧値が−Vから0に変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、最大散乱状態から透過状態(最小散乱状態)へ変化し、電圧値が0から+Vに変化する場合、第1及び第2の拡散素子8,9は、透過状態(最小散乱状態)から最大散乱状態へ変化する。
このように、第1及び第2の拡散素子8,9それぞれに単独で電圧を印加した場合も、空間光変調素子14の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スクリーン16上での干渉パターン、すなわちスペックルノイズが、人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズが低減できる。
なお、上記の投写型ディスプレイ装置は、2つの拡散素子を設け、各拡散素子に単独で電圧を印加しているが、本発明は特にこれに限定されず、3つ以上の拡散素子を設け、各拡散素子に単独で電圧を印加してもよい。特に、n(nは自然数)個の拡散素子を設け、各拡散素子に単独で電圧を印加する場合、各拡散素子に印加する電圧の位相差は1/(2n)周期となるように設定する。これにより、n個の拡散素子にそれぞれ単独で電圧を印加した場合も、空間光変調素子14の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スクリーン16上での干渉パターン、すなわちスペックルノイズが、人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズが低減できる。
さらに、本実施の形態における2つの拡散素子は、アナログ的に拡散度合いを変化させているが、本発明は特にこれに限定されず、拡散素子を3つ以上設ける場合、これらの拡散素子の拡散度合いをデジタル的に変化させてもよい。この場合、拡散素子を駆動する駆動回路として安価で回路ノイズに強いデジタル回路を用いることができる。なお、拡散素子の数を増加させることで、より高い精度で拡散度合いを変化させることができる。また、拡散素子の数が2つであっても、アナログ的に(多値で)駆動することにより、拡散素子の数を増加させた場合と同様に、より高い精度で拡散度合いを変化させることができる。
さらにまた、本実施の形態における拡散素子の印加電圧は正弦波であるが、本発明は特にこれに限定されず、例えば三角波であってもよく、各印加電圧が相補的にキャンセルする波形であればよい。
なお、上述した具体的実施形態には以下の構成を有する発明が主に含まれている。
本発明の一局面に係る投写型ディスプレイ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子と、前記空間光変調素子により変調された光をスクリーンに投射する投射レンズと、前記レーザ光源と前記空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられ、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる複数の拡散素子とを備える。
この構成によれば、レーザ光源からレーザ光が出射され、レーザ光源から出射したレーザ光が空間光変調素子により変調され、空間光変調素子により変調された光が投射レンズによりスクリーンに投射される。そして、レーザ光源と空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子により、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
したがって、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、それぞれ周期的に拡散度合いが変化し、前記拡散素子毎の周期的な拡散度合いの変化の位相がずれていることが好ましい。
この構成によれば、複数の拡散素子は、それぞれ周期的に拡散度合いが変化し、拡散素子毎の周期的な拡散度合いの変化の位相がずれているので、スペックルノイズを時間的に変動させることができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、収束光路中に設けられていることが好ましい。この構成によれば、複数の拡散素子が収束光路中に設けられているので、複数の拡散素子によって拡散された拡散光を投射レンズの物側開口数よりも小さくすることができ、拡散光が投射レンズの物側開口数よりも大きくなることによる利用効率の低下を防止することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、散乱状態から透明状態に1周期に1回変化する2つの拡散素子を含み、前記2つの拡散素子の位相差は半周期であることが好ましい。
この構成によれば、散乱状態から透明状態に1周期に1回変化する2つの拡散素子の位相差は半周期であるので、一方の拡散素子が散乱状態であれば、他方の拡散素子は透明状態であり、空間光変調素子の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スペックルノイズが人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズを低減することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、前記透明フィルムを挟む2つの透明電極とをそれぞれ備える第1の拡散素子及び第2の拡散素子を含み、第1の拡散素子の一方の透明電極は接地され、他方の透明電極は、第2の拡散素子の一方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続され、第2の拡散素子の一方の透明電極は、第1の拡散素子の他方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続され、他方の透明電極は、前記交流電源の出力電圧の最大値と同じ電圧を出力する直流電源に接続されることが好ましい。
この構成によれば、第1の拡散素子及び第2の拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、透明フィルムを挟む2つの透明電極とをそれぞれ備える。そして、第1の拡散素子の一方の透明電極は接地され、他方の透明電極は、第2の拡散素子の一方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続される。また、第2の拡散素子の一方の透明電極は、第1の拡散素子の他方の透明電極に接続されるとともに交流電源に接続され、他方の透明電極は、交流電源の出力電圧の最大値と同じ電圧を出力する直流電源に接続される。
すなわち、第1の拡散素子の他方の透明電極と第2の拡散素子の一方の透明電極とにそれぞれ0からVまでの交流電圧が交流電源から印加される場合、交流電圧が0の時には、第1の拡散素子への印加電圧は0であり、第1の拡散素子は散乱体となる。同時に、第2の拡散素子への印加電圧はVとなり第2の拡散素子は透明体となる。一方、交流電圧がVの時には、第1の拡散素子への印加電圧はVであり、第1の拡散素子は透明体となる。同時に、第2の拡散素子の印加電圧は0となり第2の拡散素子は散乱体となる。したがって、2つの拡散素子に交流電圧を印加するという簡単な構成で、2つの拡散素子を散乱状態と透過状態とに切り替えることができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、散乱状態から透明状態に1周期に2回変化するn個の拡散素子を含み、各拡散素子の位相差は、1/(2n)周期であることが好ましい。
この構成によれば、散乱状態から透明状態に1周期に2回変化するn個の拡散素子のそれぞれの位相差は、1/(2n)周期であるので、例えば、拡散素子が2つであれば、一方の拡散素子が散乱状態であれば、他方の拡散素子は透明状態となり、空間光変調素子の各画素を照明する光の角度が高速に変化するため、スペックルノイズが人の目で追従できないほどの速さで変動し、結果としてスペックルノイズを低減することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、前記透明フィルムを挟む2つの透明電極とを含み、各拡散素子の2つの透明電極は、交流電源に接続されることが好ましい。
この構成によれば、拡散素子は、液晶を分散させた透明フィルムと、透明フィルムを挟む2つの透明電極とを含む。そして、各拡散素子の2つの透明電極は、交流電源に接続される。したがって、各拡散素子には、それぞれ個別に交流電圧が印加されるので、複数の拡散素子を散乱状態と透過状態とに個別に切り替えることができ、より細かく拡散度合いを変化させることができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記レーザ光源は、赤色レーザ光を出射する赤色レーザ光源と、青色レーザ光を出射する青色レーザ光源と、緑色レーザ光を出射する緑色レーザ光源とを含み、前記複数の拡散素子は、前記赤色レーザ光、前記青色レーザ光及び前記緑色レーザ光の波長に応じて拡散度合いを変化させることが好ましい。
この構成によれば、赤色レーザ光、青色レーザ光及び緑色レーザ光の波長に応じて拡散度合いが変化されるので、レーザ光の波長毎にスペックルノイズ低減の最適化を行うことができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、前記緑色レーザ光源から出射された緑色レーザ光が入射される時に拡散度合いが最大になることが好ましい。
比視感度を考慮すると赤色や青色の光のスペックルノイズに比べて緑色の光のスペックルノイズの方が検出されやすい。そのため、複数の拡散素子は、緑色レーザ光源から出射された緑色レーザ光が入射される時に拡散度合いが最大になるので、緑色レーザ光の拡散度合いを青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散度合いよりも大きくすることができ、緑色レーザ光のスペックルノイズを減少させ、かつ青色レーザ光及び赤色レーザ光の拡散による光利用効率の損失を低減することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、拡散度合いが略同一であることが好ましい。この構成によれば、複数の拡散素子の拡散度合いが略同一であるので、各拡散素子に印加する電圧の最大値を略同一にすることができ、構成を簡略化することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、複数の領域に分割され、前記複数の領域毎に拡散度合いを時間的かつ電気的に変化させることが好ましい。
この構成によれば、複数の拡散素子は、複数の領域に分割され、複数の領域毎に拡散度合いが時間的かつ電気的に変化されるので、レーザ光の拡散度合いを空間的に変化させることができ、レーザ光の強度分布を均一化することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の領域は、前記光軸を中心とする複数の環状領域を含むことが好ましい。この構成によれば、複数の領域は、光軸を中心とする複数の環状領域を含むので、レーザ光のビーム断面形状に応じて拡散度合いを空間的に変化させることができ、レーザ光の強度分布を均一化することができる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子は、透明な共通基板の光軸に垂直な面にそれぞれ対向して形成されていることが好ましい。この構成によれば、複数の拡散素子は、透明な共通基板の光軸に垂直な面にそれぞれ対向して形成されているので、各拡散素子の間隔が共通基板により予め決められ、拡散素子相互の位置合わせが不要になり、薄型化も可能となる。
また、上記の投写型ディスプレイ装置において、前記複数の拡散素子のうちの前記投射レンズに最も近い拡散素子に近接しており、入射したレーザ光の光量分布を均一化するホモジナイザーをさらに備え、前記レーザ光源に最も近い拡散素子と前記投射レンズに最も近い拡散素子との間隔Lと、各拡散素子の最大拡散角θと、前記ホモジナイザーの入射面の開口径Aとの関係は、L<A/(2θ)であることが好ましい。
この構成によれば、ホモジナイザーは、複数の拡散素子のうちの投射レンズに最も近い拡散素子に近接しており、入射したレーザ光の光量分布を均一化する。そして、レーザ光源に最も近い拡散素子と投射レンズに最も近い拡散素子との間隔Lと、各拡散素子の最大拡散角θと、ホモジナイザーの入射面の開口径Aとの関係は、L<A/(2θ)である。
したがって、レーザ光源に最も近い拡散素子が最大拡散角でレーザ光を拡散したとしても、レーザ光は全てホモジナイザーの開口内に入射するので、光量損失が無く、かつ最大の光拡散効果が得られ、スペックルノイズの除去効果も最大とすることができる。
本発明の他の局面に係るスペックル低減素子は、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられた複数の拡散素子と、前記複数の拡散素子に周期的に変化する電圧を印加し、時間的かつ電気的に前記レーザ光の拡散度合いを変化させる駆動部とを備える。
この構成によれば、複数の拡散素子が、レーザ光を出射するレーザ光源と、レーザ光源から出射したレーザ光を変調する空間光変調素子との間に光軸に沿って並べられている。そして、駆動部により、複数の拡散素子に周期的に変化する電圧が印加され、時間的かつ電気的にレーザ光の拡散度合いが変化される。
したがって、従来技術のようにアクチュエータを用いて機械的に拡散度合いを変化させるのではなく、電気的に拡散度合いを変化させるので、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができる。さらに、時間的にレーザ光の拡散度合いを変化させるので、スペックルノイズを低減することができる。
本発明に係る投写型ディスプレイ装置及びスペックル低減素子は、小型化することができるとともに、信頼性を向上させることができ、さらに、スペックルノイズを低減することができ、レーザ光を用いる投写型ディスプレイ装置及びスペックルノイズを低減するスペックルノイズ低減素子として有用である。
また、本発明に係る投写型ディスプレイ装置は、スペックルノイズが低減されるレーザ光学系を有し、フロントプロジェクタやリアプロジェクタ等としても有用である。またその照明光学系だけを利用して照明装置や液晶ディスプレイのバックパネル等の用途にも応用できる。
実施の形態1における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。
実施の形態1における拡散素子の駆動回路の構成を示す模式図である。
電源電圧の時間変化と、2つの拡散素子に印加される電圧の時間変化とを示す図である。
第1の拡散素子の印加電圧が0であり、第2の拡散素子の印加電圧がVである場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
第1の拡散素子の印加電圧がV’であり、第2の拡散素子の印加電圧がV−V’である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
第1の拡散素子の印加電圧がVであり、第2の拡散素子の印加電圧が0である場合における各拡散素子の散乱の様子を示す図である。
実施の形態2における投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。
実施の形態2における拡散素子を示す側面図である。
実施の形態2における拡散素子の電極を示す平面図である。
各拡散素子に独立して電圧を印加する場合における拡散素子の構成を示す図である。
2つの拡散素子にそれぞれ印加される電圧の時間変化を示す図である。
従来の投写型ディスプレイ装置の構成を示す図である。