JP4455771B2 - プロジェクションスクリーン上のスペックル形成を低減するための方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロジェクションスクリーン上のスペックル形成を低減するための方法および装置に関する。
【0002】
【発明の背景】
スペックルパターンは、広げられたコヒーレント光、特にレーザ光を用いて、白壁、プロジェクションスクリーンおよび他の表面(以降、プロジェクションスクリーンと呼ぶ)を照明する際に生じる不規則で、細かい斑点状の光分布である。スペックルパターンは、プロジェクションスクリーン上の種々の点において散乱される光波の干渉によって引き起こされる高い可干渉性(コヒーレンス)に起因して、光のスポットがプロジェクションスクリーン上に結像される際に形成される。それゆえ干渉パターンは、反射スクリーンの統計的な微細構造を表す。スペックル斑点の平均サイズは、スクリーン上でコヒーレントに照明されるスポットの開口に依存する。光のスポットが大きくなると、スペックルパターンの粒状性は細かくなる。スペックル斑点のコントラストは、光源の可干渉性によって決定される。光のコヒーレンス長が視覚的にスクリーンの平均的な粗さ未満になるときに、スペックルパターンは見えなくなる。
【0003】
光学的に画像を再現するために、レーサによるプロジェクション方法が用いられる機会が増えている。陰極線管あるいは液晶ディスプレイを用いる画像の表現とは対照的に、レーザプロジェクション技術は、基本的に、画像サイズの制約を受けることなく高品質の画像を獲得することができるという利点を有する。この場合には、表現される画像を表示するためのレーザビームは、ブラウン管の電子ビームと同様に、プロジェクションスクリーンを介してラスター化される。
【0004】
レーザあるいは他のコヒーレント光源を用いるプロジェクション方法において直面するスペックルの形成は不都合である。スペックルは特に、画像がライン毎に個々の像点から形成され、これを達成するために、レーザビームがプロジェクションスクリーン上に集束する際に生じる。像点が小さいことに起因して、スペックルパターンは通常、粗い粒状をなし、個々の像点の分布する輝点として観測者によって視認される。
【0005】
スペックルの形成を抑制するために種々の基本的なアプローチが知られている。Toshiaki IwaiおよびToshimitsu Asakuraによる論文「Speckle Reduction in Coherent Information Processing」(Proceedings of the IEEE, vol.84, no.5, May 1996, pp.765-780)に概観が与えられる。記載される方法は、それぞれ光源を操作することにより実施される、空間的コヒーレンスを制御するための方法および時間的コヒーレンスを制御するための方法、空間的に走査するための方法、空間的に平均化するための方法、さらにデジタル画像処理によりスペックルを低減するための方法に細分することができる。
【0006】
たとえば、短いパルス長を有するパルスレーザ光源を利用して、それによりレーザ光のコヒーレンス長を低減し、スペックルの形成を最小限に抑えることが知られている。しかしながら、これによれば、外部あるいは内部から簡単に変調することができるレーザシステムしか使用することができない。さらに、レーザ光の空間的コヒーレンスは、レーザ光を、回転するすりガラススクリーンに通過させることにより、あるいは1つあるいは複数の光拡散器においてレーザ光を散乱させることにより低減することができる。また、コヒーレントレーザ光をマルチモード光ファイバに結合し、回転および振動をかけることによりファイバを変形させることも知られている。ファイバの端部では、局所的な空間において、それぞれ種々の光路を横断している多数のモードに分離され、それゆえ種々の位相状態を有している光が現れる。ファイバを振動あるいは回転させることにより、モード分布は経時的に変更される。こうして、時間および空間平均値が、形成される位相パターンにわたって生成され、マルチモードであっても非コヒーレントな光源が供給される。ここでの問題は、モードを完全に混合するためのこの機械的なアプローチが、全体的な構成の安定性に悪影響を及ぼすようになることである。
【0007】
レーザ光の時間的コヒーレンスを低減するために、レーザ光の波長を変更するか、あるいは複数の波長を同時に用いることが知られている。たとえば、スペックルを低減するために、モードジャンプによって引き起こされるレーザダイオードの波長の変化に基づく方法が提案されている。さらに、ランダムな変動を受ける他のレーザも、これを達成するために考慮に入れられる。スペックルの形成を低減するための別のアプローチは、ドイツ国特許196 45 976 C1によって記載される。その特許は、そのプロジェクション深度がコヒーレンス長より長いプロジェクションスクリーンを用いることを条件としており、その結果、反射あるいは透過される一連の光が非コヒーレントになる。これは、像点がスクリーンの表面構造によって拡散し、拡大するという問題、および画像表現のために常に特別に用意してスクリーンを用いなければならないという制約を含む。
国際特許96 21 833 Aより、プロジェクトスクリーン表面のフーリエスペクトルがスクリーン上に映し出される画素構造のフーリエスペクトルよりも高い周波数である様な、特に、スペックルの低減が目的で表面が不規則な形状をしているプロジェクションスクリーンは周知である。
ドイツ国特許195 08 754 A1より、伝播の方向と垂直な方向において、光を場所対して様々に偏光させ、コヒーレント光線の干渉を低減する方法は周知である。本願では、光の完全に互いに干渉することができない環境を利用している。例えば、LCD基質の介助により、必要な偏光状態を生ずることができる。
ドイツ国特許107 10 660 Aより、レーザイメージプロジェクションの走査の働きと同時にスクリーンスペックルを取り除く装置は周知であり、そのレーザ光線は密度波の回析が様々な異なる周波数の回析に変化することにより、密度波運動における超音波セルの介助により分割する。その光速成分はレンズを使用することにより重畳される。このように、干渉パターンシステムの動きはプロジェクションスクリーン上に生成され、よって、統合処理によって観測者の目の中で相互に他と重なりスペックルが生ずる、そして、時間と空間において平均化される。
米国特許39414546 Aはコヒーレント光線のような上級なものを使用して光情報を送信する場合に発生する造粒の低減のための装置について述べられている。光線は定常密度波または進行密度波の形で励振に依存しながら超音波セルの中を伝播する。密度波は局所的に屈折率に影響する、よって、光線は異なった屈折率を持つゾーンの中を伝わり、結果として造粒を低減する。
米国ニューヨークのIBM社のIBM技術公開広報「Perceived Speckle Reduction in Projection Display System」のvol.40、no.7、9〜11頁、XP 000728388、ISSN 0018−8689、1997年7月1日の刊行物により、光線が液晶の中を伝播するとスペックルが低減され、その屈折率は電界により影響されることは周知である。
米国特許4647158 Aより、制御可能な回析格子を使用してコヒーレント光線を非コヒーレント光線に変換する方法および装置は周知である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
それゆえ本発明の目的は、スペックルの形成を低減し、関連する技術の問題点を回避することにもなる方法および装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
その目的は、時間と共に変化し、空間的に不均一な屈折率を有している電気的に制御可能な光学素子を有するコヒーレント光源を使用したプロジェクションスクリーン上にスペックルの低減形成を作り出すための装置を本願に基づいて達成することであり、光源とプロジェクトスクリーンの間で形成されている光学素子は、時間的に様々に変化する電圧勾配を屈折率に依存した時間および空間を制御することに適用するために印加し、液晶を有した電気手に制御可能な光学素子として特徴づけられる。
【0010】
光源からの光線を特徴づける様な装置を制御するための方法は、プロジェクション前において、プロジェクション周期内に時間と共に様々な屈折率で、空間的に不均一な屈折率を有する電気的に制御可能に光学素子が衝突しそれを通過する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の方法および装置の有利な実施形態はさらに、従属請求項による特徴を有する。
【0012】
本発明の機能的な原理は以下の通りである。コヒーレント光源、特にレーザによって生成される光が、実際のプロジェクション装置の前に、実際に本発明の最も簡単な実施形態では、常に固定の入射角で光をプロジェクションスクリーンに向ける光学素子に衝当する。その光学素子は、経時的に変更されるように光を偏向する特性を有する。光学素子の屈折率は、照射される表面にわたって空間的に不均一であるので、入射ビームは、初期のビーム方向とは異なる方向に偏向される。所与の屈折率プロファイルが屈折率の最大差を示す際に、所望の効果を達成するために、そのビームは、光を偏向する光学素子に衝当する前に拡散され、その後、再び平行にされる場合がある。ビームのこの空間的な偏向は、経時的に屈折率プロファイルを変化させることにより変更される。ビーム方向において1°未満の最も小さい角度の変化であっても、これは、プロジェクションスクリーン上のスペックルパターンからの平均化につながる。しかしながら、本発明の最も簡単な変形形態では、スクリーン上の光スポットをわずかに広げることにもつながる。目が平均化された画像のみを視認することができるようにするために、屈折率の時間的な変動は、目の反応時間内で繰返し実行されることになる。すなわち、光学素子は、約100Hzの切替周波数で駆動されることになる。画像のラスター化されたプロジェクションの場合に、投射された光スポットが、ある一定時間、スクリーン上のプロジェクション位置に存在する場合には、屈折率は、この存在時間内に繰返し時間的に変更される場合がある。
【0013】
さらに別の1つの有利な実施形態では、スペックルの低減において達成された効果が、マルチモードの光源を用いることにより、および/または光源から到来する光を複数の空間モードに分離することにより強化される。こうして、光学素子に衝当する光は、それぞれ互いに重ね合わせられたビームプロファイルおよび出射角のような、特定の空間特性を有する複数のモードから構成される。不均一な屈折率のため、個々のモードは変更可能に空間的に偏向される。それらは、屈折率の時間的な変動に起因して空間的に混合される。それゆえ、スペックルパターンは平均化される。そのプロセスでは、光線の光路において振動子あるいは回転素子を用いることにより機械的に混合することが不要になる点で有利である。それでもなお概ね同じ効果が達成される。この状況において、屈折率の差は、投射される光スポットにおいてほとんど拡散を生じることのないように選択されることになる。
【0014】
プロジェクションスクリーン上にラスター化された光の像を結像させる場合、スペックルパターンを平均化するための、光学素子の屈折率の時間的の変動は、空間モードがプロジェクションスクリーン上の1つの画像スポットの存在時間内に、何度も、如何に少ない場合でも像間で1回、空間的に偏向されるように選択されることになる。
【0015】
シングルモードの光源によって放射される光を分割するために、第1のマルチモード光ファイバに結合されることが好ましい。結合状態によっては、およびファイバに機械的な応力がかかる場合には、オリジナルモード以外のモードが励起、かつ伝送され、その結果、ファイバを通って伝搬した後、光は複数の空間モードの重ね合わせからなる。その後、光は光学素子に衝当する。入射位置に応じて、個々の空間的な成分が、種々の屈折率に起因して、わずかに異なる方向に偏向される。
【0016】
付加的な光ファイバが光学素子に有利に結合され、その光がプロジェクションのために用いられる。光をこのファイバに結合することにより、その光を、実際のプロジェクション装置に、規定されたとおりに給送することができる。このようにして、スペックルを平均化する効果を保持しつつ、プロジェクションディスプレイ上の光スポットの「ぼやけ」が回避される。
【0017】
光学素子から下流に接続されるこのファイバはマルチモードファイバであり、場合によって、光学素子から上流に接続される第1のファイバに追加されることが好ましい。偏向の方向は光学素子によって変更されるため、この第2のマルチモードファイバの場合には、変更される度に異なるモードで励起され、伝送される。したがって、第2のファイバは、コヒーレンス効果をさらに混合し、平均化することを可能にする。
【0018】
光学素子として、液晶素子を用いることが有利である。液晶は、高分子からなる半液状の溶液あるいは混合体であり、その液状の高分子が互いに配向され、結果として複屈折液晶層を構成する。複屈折は、外部から加えられる電界によって影響を受けるようになる。そのプロセスでは、ある閾値電圧の場合に、電圧に比例した変動、および非線形の階段状の変動が生じる。これらの電気光学特性のため、液晶を用いて、その内部を通過する光波の位相を制御することができる。本発明を実用形態にするために、たとえば、液晶素子が用いられる。空間的に変更可能な電圧、たとえば電圧勾配が液晶素子に適用され、空間的に不均一な屈折率分布を生成する。電圧に比例した複屈折を有する素子で動作する際に、その複屈折は相応に変化する。こうして生成された複屈折勾配は、偏波方向に対する屈折率勾配として作用し、その屈折率勾配が、この偏波の光ビームを偏向する。既知の液晶セルの動作範囲および薄い層厚内で生成することができる小さな屈折率勾配で動作する際に、空間的な偏向はわずかであるが、本発明にしたがってモードを混合するには十分である。上記のように、その効果は、下流にマルチモードファイバを追加することにより増強される場合がある。
【0019】
特に有利であるさらに別の実施形態は、電圧を印加しても等方性を保持する光学素子を有する装置によって構成される。すなわち、その光学素子によって、複屈折を生じることなく、空間的に変化する屈折率を確立することができる場合がある。1つの液晶セルを有する簡単な液晶素子(部分素子)の複屈折特性により、その素子内を通過する際の偏光が変化する。しかしながら、大部分の応用形態の場合、偏波とは無関係に操作可能であることが有利であり、望ましい。
【0020】
電圧を印加しても等方性を保持する液晶素子は、早期公開されていない(non-prepublished)ドイツ国特許出願198 52 890.6によって提案されている。その素子は、部分素子として2つ以上の液晶層、詳細には、その複屈折が全ての印加された電圧の場合に補償されるように、互いに対して配向される、螺旋状のスメクティックな強誘電性液晶から構成される。たとえば、2つの層は、互いに直交して配列され、その結果、第1の層の遅軸が第2の層の速軸と垂直に配列され、第1の層の速軸が第2の層の遅軸と垂直に配列される。全体的な層配列の等方性の屈折は保持される。伝送される光の偏波は保持される。
【0021】
本発明によれば、ドイツ国特許198 52 890.6に記載される光学素子はさらに、定電圧の代わりに、セルの表面にわたって電圧勾配が生成されるように拡張される。光学素子からの上流および下流にある通過位置とは関係なく、光の偏波が同じになるように、空間的に依存性の電圧が光学素子の種々のセルにおいて選択されることになる。2つのそのような液晶層から構成される光学素子を使用し、第1の層の遅軸が第2の層の速軸と垂直に配列され、第1の層の速軸が第2の遅軸と垂直に配列されるようにすることは特に有利である。電圧勾配は、ある位置における電圧が、両方の層に対するビーム方向に直交する電圧より高くなるか、あるいは低くなるように両方の層に印加される。一般に、1つの空間的な方向において1つの電圧勾配を有するだけで十分である。しかしながら、電圧勾配がx方向およびy方向に交互に印加されるのが有利である。別法では、回転する電界を、液晶層に加えることができる。
【0022】
スペックルパターンを平均化するために、印加される電圧にわたって切り替えることにより、空間的に依存性の屈折率を変更することが必要とされる。これは、目の反応時間にわたって繰返し行われる。一般に、レーザプロジェクションシステムは、ラスター手順を用いて点毎に画像を生成する。そのような場合には、画像スポットは、屈折率変化の時間t2より長い、好ましくは少なくとも5×t2である時間t1の間、プロジェクションスクリーン上に存在しなければならない。
【0023】
したがって、たとえば、1000×1000の像点と、毎秒100個の個別の画像とを有するディスプレイの場合、液晶セルのために必要とされる切替時間は、約0.5GHzに相当するであろう。現時点では、そのような高速の切替周波数は、実際には電気光学結晶を用いて達成することができるが、液晶セルを用いて達成することはできない。さらに、スペックルの形成を低減することにより、そのような高い解像度のシステムの画質を改善するために、1つのレーザを用いるだけでなく、たとえば、列方向に複数のレーザを有する一連のレーザアレイを用いるプロジェクションシステムを用いることが有利である。そのようなシステムが用いられるとき、より多数の画像のラインを同時に構成し、投射することができる。このようにして、t1の時間が低減され、それに応じて、個々の各プロジェクションレーザが、本発明にしたがって、光学素子、詳細には液晶素子を設けられる際に、必要とされる切替時間t2が低減される。上記の例において、プロジェクションのために、100個のレーザが同時に用いられる場合には、約5MHzの切替周波数が必要とされる。これは既に、今日の液晶開発の範囲内にある。
【0024】
しかしながら、多くの場合には、概ねプロジェクションシステムの画像周波数と同程度の切替周波数によって、さらに十分なスペックル抑制を達成することができる。
【0025】
図1aは、モード混合を通してスペックルの形成を低減するための装置を備えるレーザプロジェクションシステムを示す。そのプロジェクションシステムは、光源としてレーザ1を備える。カラーディスプレイの場合には、種々の波長を有する複数のレーザが用いられる。そのレーザ光は、ここで概略的にレンズとして示される光学装置2によって、第1のマルチモード光ファイバM1に結合され、光ファイバM1の出力は、第2のマルチモード光ファイバM2の入力に割り当てられる。図1bと比較されたい。実際のプロジェクションユニット5は、第2のマルチモード光ファイバM2の出力に位置し、それを用いて、プロジェクションスクリーン6上に点毎にレーザビームを投射する。
【0026】
モード混合ユニット4が図1bに概略的に示される。第1のマルチモード光ファイバM1から出射する光は既に、複数のモードの重ね合わせから構成されている。その光は、空間的に不均一で、電気的に変更可能な屈折率を有する光学素子7に衝当する。素子7の電気的な駆動は、信号線8によって概略的に示される。光学素子7は、空間的に依存性を有するように、入射し、伝送される光を偏向することができる。これにより、結合状態の光の像は、素子7の出力、および第2のファイバM2の入力においてそれぞれ変化する。ファイバM1からの個々のモードは、空間的に変更されたモードとして、種々の場所および種々の角度で、第2のマルチモードファイバM2に結合され、結果として、M2において、オリジナルモードとは異なるモードを励起する。これはM2の出力に現れ、それゆえ、わずかに異なる位置において同様にプロジェクションスクリーン6上に現れる。光学素子7の光を偏向する特性が、目の反応時間内で素早く変更される場合には、結果として、個々のモードはプロジェクションスクリーン6上でスクランブルされる。各モードは異なる位相遅れを有するため、スペックルパターンは平均化され、プロジェクションスクリーン上でぼやけるようになる。この状況において、画像スポットは、屈折率変化の時間t2より長い、好ましくは少なくとも5×t2である時間t1の間、プロジェクションスクリーン上に存在する。
【0027】
種々の個別の画像の中のスペックルを平均化するには、目の反応時間内で、屈折率を何度も変更することだけが必要となる。このためには、約1000Hzで十分である。
【0028】
図2は、屈折率勾配を生成するための、補償されるかもしれない複屈折を有する切替可能な液晶素子9を示す。液晶素子9は2つのセルからなり、各セルは、2つの透明電極13、13’と14、14’との間にそれぞれ配置された液晶層10、11を有する。その分子はその層内で自発的に分極し、特定の電極間に印加された電圧によって電気光学的特性に影響を及ぼすことができる。2つの液晶層10、11の屈折率楕円体の向きは、ベクトルI1およびI2によって図示される。それらは互いに対して垂直な方向に、かつ入射光ビーム12のビーム方向に向けられる。本発明によれば、電圧勾配は、ビームの方向に垂直に、この場合にはy方向に、両方にセルに対して印加される。空間電圧特性は、この状況において、場所yにおける電圧V(y)が両方のセルの場合に同じになるように選択されることになる。結果として、その屈折率楕円体の直交配列は各y値の場合に保持され、層パケット(layer packet)10、11は等方性を保持する。電極の抵抗率を適当に選択することにより、電極内の電流は低電流に保持される。
【0029】
平均セル電圧を設定するために、場所y=y0において、両方のセルに電圧v0が印加される。電圧勾配を印加することにより、直角にセルに入射する光ビーム12がわずかにy方向に偏向される。概略的には、その出力方向は12’で、切替後には12”によってそれぞれ示される。この偏向は、たとえば図1によれば、2つのマルチモードグラスファイバ間でモードを混合するために、したがって本発明によるスペックルパターン形成の抑制のために用いられる。
【0030】
モード混合を強化することによるスペックル低減の改善は、より複雑な偏向特性を有する液晶素子を用いることにより達成される。そのような液晶素子9’のための例が図3に示される。2つの液晶装置10、11を含むその構造は、概ね図2の構造に対応する。図2の液晶素子とは対照的に、ここでは、電極15、15’および16、16’がそれぞれ付加的に設けられる。それらの電極を用いて、y方向に、およびそれと直交するx方向に同時に、あるいは交互に、特定のセルに対して電圧勾配を印加することができる。その方向は素早く変更されることが好ましい。結果として、電圧勾配の方向すなわち入射光の偏向方向を、モードを混合するために変更することができる。ここで、個々のセルの複屈折を補償するための同等化条件は、それぞれ照射された場所(x,y)における個々のセルの電圧を一致させることである。
【0031】
【発明の効果】
本発明は、スペックルパターンの抑制を通してレーザプロジェクションシステムの画質を改善するために、商用で利用するのに適している点で有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 スペックルの形成を低減するための装置を備えるレーザプロジェクションシステムを示す図である。
【図2】 屈折率勾配を生成するための切替可能な液晶素子を示す図である。
【図3】 屈折率勾配を生成するための切替可能な液晶素子を示す図である。
Claims (11)
- コヒーレント光源(1)を用いて、プロジェクションスクリーン(6)上のスペックル形成を低減する装置であって、
前記光源(1)と前記プロジェクションスクリーン(6)との間に配置される、経時的に変更可能な複屈折を有する電気的に制御可能な光学素子(4、7)を備え、前記光学素子(4、7)は液晶素子を備え、前記液晶素子に、時間的に変更可能な電圧勾配を印加して、前記液晶素子を通過する光を偏向する、装置。 - 前記液晶素子は少なくとも第1及び第2の液晶層(10、11)を備え、光線の経路において一方の液晶層が他方の液晶層の背後に配置され、その光軸の速軸および遅軸がそれぞれ当該層に平行に配置され、前記遅軸および前記速軸は、前記液晶素子から上流および下流への光の偏波が同じになるように互いに対して回転する、請求項1に記載の装置。
- 前記第1の液晶層(10)の前記遅軸は前記第2の液晶層(11)の前記速軸に垂直に配列され、前記第1の液晶層(10)の前記速軸は前記第2の液晶層(11)の前記遅軸に垂直に配列される、請求項2に記載の装置。
- 前記光源(1)から到来する光を複数の空間モードに分離する、前記光学素子(4、7)の上流に接続された第1のマルチモード光ファイバ(M1)をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の装置。
- 前記光学素子は、制御電圧に応じて、前記第1のマルチモード光ファイバ(M1)の個々のモードを変更可能に偏向する、請求項4に記載の装置。
- 前記光学素子(4、7)の下流に接続された第2のマルチモード光ファイバ(M2)をさらに備え、前記第1のマルチモード光ファイバ(M1)の前記個々のモードが、前記制御電圧に応じて、前記第2のマルチモード光ファイバ(M2)に変更可能に結合される、請求項5に記載の装置。
- 前記複屈折率が、前記プロジェクションを行う時間において経時的に変更される、請求項4に記載の装置を作動する方法。
- マルチモード光源が用いられる、請求項7に記載の方法。
- 前記光学素子(4、7)に衝当する前に、前記光源から到来する前記光は複数の空間モードに分離され、前記空間モードは、前記光が前記第1のマルチモードファイバ(M1)に結合され、その中を伝搬するという点で、互いに重ね合わせられる、請求項7に記載の方法。
- 前記プロジェクションスクリーン(6)上で前記光のラスター化された像形成を行う場合に、前記光学素子(4、7)の屈折率、すなわち屈折率プロファイルは、前記プロジェクションスクリーン(6)上の1つの画像スポットの存在時間内に何度も変更される、請求項7乃至9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記光学素子(4、7)を通って伝搬した後に、前記光は前記第2のマルチモードファイバ(M2)に結合される、請求項7乃至10のいずれか1項に記載の方法。
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