WO2007105643A1

WO2007105643A1 - 座席のリクライニング装置

Info

Publication number: WO2007105643A1
Application number: PCT/JP2007/054693
Authority: WO
Inventors: Satoru Fukuzawa; Hiroshi Niwa; Toshiaki Kato
Original assignee: Ntn Corporation
Priority date: 2006-03-10
Filing date: 2007-03-09
Publication date: 2007-09-20
Also published as: CN101400281B; KR20080113350A; CN101400281A

Abstract

　外歯車の滑り軸受圧入面の精密加工を省略することができ、またリクライニング装置の設計自由度が軸受ブッシュの標準規格で制約を受けることなく、低コストで製造可能な差動伝動機構（タウメル機構）による自動車シートなどの座席のリクライニング装置とすることを課題とする。　座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジの開き角度の調節のために所定の差動伝動機構を設けたリクライニング装置であり、その差動伝動機構は、内歯車１と、これより僅かに歯数の少ない外歯車２とを噛み合わせ、外歯車２の軸孔３と内歯車１の軸４と一体のカム５の小径部分の間に形成される弧状の間隙に、一対の楔形片６、６´をそれらの先細り端部６ａ、６´ａが互いに反対向きになるよう配置される。楔形片６、６´が内歯車１の軸４と一体に設けたカム５に押されて弧状の間隙内で摺動移動した際、楔形片６、６´の摩擦摺接面となる少なくとも外側面６ｂ、６´ｂを、低摩擦摺動材で形成する。

Description

座席のリクライニング装置

技術分野

[0001] この発明は、座席のリクライニング装置に関し、詳しくは自動車シートのリクライニング装置などに適する座席のリクライニング装置に関する。

背景技術

[0002] 一般に、座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジの開き角度の調節のために歯車の差動伝動機構を採用し、背もたれ傾斜角度を調整可能とした座席のリクライニング装置が周知である。

[0003] 従来の座席のリクライニング装置における歯車を用いた差動伝動機構を主として図 5に基づき、さらに部分的に図 1を利用して説明すると、これは座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジに歯車の差動伝動機構を設けたものである。

[0004] この差動伝動機構は、内歯車 1 (図 1参照）と、これより歯数の少ない外歯車 2とを嚙み合わせて外歯車 2の軸孔に嵌め入れている。そして、この差動伝動機構は、リング状の軸受ブッシュ 10と内歯車 1の軸 4とその滑り軸受 11との間に形成される弧状の間隙に、一対の楔形片 6、 6'をそれらの先細り端部 6a、 6 が互いに反対向きになるよう配置し、両楔形片が離れる方向に弾性力を付与する圧縮コイルパネ 7を設けて、る。

[0005] この機構によると、楔形片 6、 6'が、内歯車 1の軸 4に設けた滑り軸受 11とその突起部 11aの操作により、弧状の間隙内で摺動移動した際には、外歯車 2が、内歯車 1から離れて背もたれ傾斜角度が調整可能となる。

[0006] このような差動伝動機構は、タウメル機構とも別称され、これを用いた自動車シートのリクライニング装置には、上述のように外歯車 2の内部に軸受ブッシュ 10が設けられており、この軸受ブッシュ 10に楔形片 6、 6'が摩擦摺接する構造となっている (特許文献 1、 2)。

[0007] このような軸受ブッシュ 10に楔形片 6、 6'が摩擦摺接する構造の自動車シートのリクライニング装置は、いずれも軸受ブッシュ 10を外歯車 2の内部に圧入して、楔形片 6、 6'の動作を円滑にする必要があった。

[0008] 因みに、軸受ブッシュ 10は、摺動面が摺動性の良い榭脂で形成され、巻きブッシュとも称される場合があり、例えば図 4に示す積層構造からなり、裏金 10aと、その上に重ねて形成された多孔質焼結層 10bと、この多孔質焼結層 10bの細孔に一部が充填された摺動性榭脂組成物カゝらなる榭脂層 10cとからなる積層滑り軸受がある。

[0009] 特許文献 1 :特開平 3— 237904

特許文献 2：特開 2004— 33401

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0010] しかし、上記した従来の自動車などの座席のリクライニング装置は、圧入された軸受ブッシュの軸受面が圧入の際に変形しな、ように、外歯車の軸受ブッシュ圧入面を精度良く加工しなければならな！/、。

[0011] この場合、用いられる軸受ブッシュは、上記積層構造の軸受ブッシュを使用することが好ましいが、一般的に入手可能な積層構造の軸受ブッシュは、軸受メーカーによつて標準寸法が決められたものであり、これを用いるとリクライニング装置の設計の自由度が制約されることになる。

[0012] 因みに、積層構造の軸受ブッシュを標準寸法以外の特注品として使用した場合、軸受価格が非常に高価なものとなり、市場競争力が低くなり実用性を失することにもなる。

[0013] そこで、この発明の最初の課題は、外歯車の内部の軸受ブッシュを必要とせず、すなわち、外歯車の軸受ブッシュ圧入面の精密加工を省略することができ、またリクライニング装置の設計自由度が軸受ブッシュの標準規格で制約を受けることなぐ低コストで製造可能な差動伝動機構 (タウメル機構）による自動車シートなどの座席のリクライニング装置とすることである。

[0014] また、前記した従来の自動車などの座席のリクライニング装置には、摺動する楔形片と軸受ブッシュの榭脂層が繰り返し摩擦接触することにより、榭脂層が剥離する場合があるという問題点もあった。

[0015] そこで、この発明のさらなる課題は、上記した問題点を解決して、軸受ブッシュが取り付けられた外歯車を有する差動伝動機構における使用耐久性を改善し、外歯車内部の軸受ブッシュの榭脂層が表面力剥離せず、また層間剥離を起こさず、耐久性の良い差動伝動機構 (タウメル機構）による自動車シートなどに適用できる座席のリクライニング装置とすることである。

課題を解決するための手段

[0016] 上記の最初の課題を解決するため、この発明は、座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジの開き角度の調節のために差動伝動機構を設け、この差動伝動機構は、内歯車と、これより歯数の少ない外歯車とを嚙み合わせ、外歯車の軸孔と内歯車の軸との間に形成される弧状の間隙に、一対の楔形片をそれらの先細り端部が互いに反対向きになるよう配置すると共に、両楔形片が離れる方向に弾性力を付与するパネを設け、前記楔形片が内歯車の軸に設けたカムに押されて前記弧状の間隙内で摺動移動した際、外歯車が内歯車から離れてヒンジの開き角度が調整可能となる座席のリクライニング装置において、前記楔形片の摩擦摺接面が、低摩擦摺動材で形成されていることを特徴とする座席のリクライニング装置としたのである。

[0017] 上記したように構成されるこの発明の座席のリクライニング装置は、楔形片の摩擦摺接面が、低摩擦摺動材で形成されていることにより、楔形片が所定の弧状の間隙内で摺動移動するときに、外歯車の軸孔の内周面や内歯車の軸の外周面とは、低摩擦摺動材を介して接触する。

[0018] そのため、外歯車の軸孔の内周面や内歯車の軸の外周面に軸受ブッシュまたは滑り軸受を予め圧入しておく必要がなくなり、すなわち、外歯車の軸受ブッシュ圧入面を精度良く加工する必要がなぐ内歯車の軸の外周面に別途滑り軸受を組み付ける必要もなくなる。

[0019] また、従来使用されていた規定寸法の積層構造の軸受ブッシュを使用する必要がなくなるので、リクライニング装置の設計の自由度が高められる。

[0020] 特に、楔形片の摩擦摺接面が中間層を介して低摩擦摺動材を積層一体化したものを採用すると、低摩擦摺動材は中間層の物性の選択によって、基材との直接の接着力が低い場合にも接着力が高い状態で積層一体ィ匕が可能になる。

[0021] 低摩擦摺動材を基材と積層一体ィ匕する際に、密着性の好ましい中間層としては、金属溶射層が挙げられる。金属溶射層は、表面の多孔質性により低摩擦摺動材がァンカー効果を奏しやすぐ密着性が好ましい積層構造が得られる。

[0022] 榭脂などの低摩擦摺動材が、前記楔形片上に中間層を介して形成されたものであれば基材との密着強度が高くなる。特に、中間層が金属溶射層であれば楔形片の低摩擦摺動材を基材と強固に密着できるために好まし、。

[0023] また、金属溶射層が銅合金等の軟質金属からなるものであれば、低摩擦摺動材が摩耗した場合でも相手材を摩耗させることがなヽので、潤滑特性を保持するため望ましい。また、銅合金等の軟質金属は、熱伝導率が高く放熱効果が高いため、万が一にも異常摩耗した場合に楔形片が摩擦熱によって異常に昇温することも避けられる。

[0024] 前記低摩擦摺動材としては、低摩擦係数の榭脂を採用し、被膜として形成すれば、低摩擦摺動材の形成が容易である。

[0025] 特に、前記榭脂被膜がフッ素系榭脂であり、例えばバインダ榭脂にフッ素榭脂を添カロしたフッ素榭脂被膜であると低摩擦特性に優れるために好ましい。また、フッ素榭脂被膜が、黒鉛、二硫ィ匕モリブデンおよび金属酸ィ匕物カゝら選ばれる一種以上の固体潤滑剤を含有するフッ素榭脂被膜であるものでは、耐摩耗性および耐剥離性が高くなって好ましい。

[0026] 特にフッ素榭脂被膜が、フッ素榭脂 100重量部に対し、バインダ榭脂 60〜130重量部を配合すると共に、黒鉛、二硫ィ匕モリブデン、金属酸化物から選ばれる一種以上の固体潤滑剤を 5〜30重量部配合したフッ素榭脂組成物カゝらなるフッ素榭脂被膜であるものを採用すれば、より確実に低摩擦特性、耐摩耗性、耐剥離性が優れたものになる。

[0027] また、前記した第 2の課題を解決するために、上記の座席のリクライニング装置において、外歯車の軸孔に、滑り面が樹脂で形成された軸受ブッシュを固定して設け、さらに前記楔形片の摩擦摺接面は上記の低摩擦摺動材で形成されている構造としたのである。

[0028] 上記したように構成されるこの発明の座席のリクライニング装置は、楔形片の摩擦摺接面が、低摩擦摺動材で形成されていることにより、楔形片が所定の弧状の間隙内で摺動移動するときに、外歯車の軸孔内周面の軸受ブッシュの榭脂層や内歯車の軸の外周面に対して、低摩擦摺動材を介して接触する。

[0029] そのため、外歯車の軸孔内周面に設けられる軸受ブッシュの榭脂層には、楔形片力受ける摩擦力が低摩擦摺動材を有しない従来例に比べて小さくなり、それだけ軸受ブッシュの榭脂層の表面を剥ぎ取ろうとする力は小さくなり、軸受ブッシュの榭脂層は表面力も剥離することがなぐまた層内部からの剥離 (層間剥離現象)も起こし難くなる。

[0030] 楔形片の摩擦摺接面が中間層を介して低摩擦摺動材を積層一体化したものを採用すると、低摩擦摺動材は中間層の物性の選択によって、基材との直接の接着力が低い場合にも接着力が高い状態で積層一体ィ匕が可能になり、長期間の使用に耐久性よく楔形片は低摩擦摺動材を介して軸受ブッシュの榭脂層に接触する。

[0031] このような座席のリクライニング装置は、座席が自動車用シートである場合、すなわち自動車シートのリクライニング装置において、上記の作用が充分に奏されるものである。

発明の効果

[0032] この発明は、座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジの開き角度の調節のために差動伝動機構を設けた座席のリクライニング装置において、楔形片の摩擦摺接面が、低摩擦摺動材で形成されていることにより、楔形片が外歯車の軸孔における内周面や、内歯車の軸の外周面に対しても、常に低摩擦摺動材を介して接触するため、楔形片と摩擦摺接する部品に予め軸受ブッシュを設けておく必要がなくなり、従来の外歯車などにおける軸受ブッシュ圧入面の精密加工を省略することができ、またリクライニング装置の設計自由度が軸受ブッシュの標準規格で制約を受けることもなくなり、低コストで製造可能な自動車シートなどの座席のリクライニング装置となる禾 IJ点がある。

[0033] 特に、楔形片の摩擦摺接面が金属溶射層などの中間層を介して低摩擦摺動材を積層一体ィ匕したものを採用すると、低摩擦摺動材は中間層の物性の選択によって、基材との直接の接着力が低い場合にも接着力が高い状態で積層一体ィ匕が可能になる。

[0034] フッ素榭脂などの低摩擦摺動材が、前記楔形片上に中間層を介して形成されたものであれば基材との密着強度が高くなる。特に、中間層が金属溶射層であれば楔形片の低摩擦摺動材を基材と確実に強固に密着できるため好ましい。

特に、所定の固体潤滑剤を含有するフッ素榭脂被膜であるものは、耐摩耗性および耐剥離性が高くなる。

[0035] またこの発明は、座席のリクライニング装置において、楔形片の摩擦摺接面が、低摩擦摺動材で形成されていることにより、楔形片が外歯車の軸孔における軸受ブッシュに対して低摩擦摺動材を介して接触するため、楔形片と摩擦摺接する軸受ブッシュの榭脂層が剥離などを起こし難くなり、耐久性の良い差動伝動機構 (タウメル機構）による自動車シートなどの座席のリクライニング装置となる利点もある。

図面の簡単な説明

[0036] [図 1]第 1実施形態のリクライニング装置の一部切り欠き断面図

[図 2]楔形片の斜視図

[図 3]第 2実施形態のリクライニング装置の一部切り欠き断面図

[図 4]軸受ブッシュの拡大断面図

[図 5]従来のリクライニング装置の要部の一部切り欠き断面図

符号の説明

[0037] 1 内歯車

2 外歯車

3 軸孔

4 軸

5 カム

6, 6' 楔形片

6a, 6'a 先細り端部

6c 内側面

6d 先端面

6e パネ保持用凹部

6f 表 (裏)面

7 圧縮コイルパネ 10 軸受ブッシュ

10a 裏金

10b 多孔質焼結層

10c 榭脂層

11 滑り軸受

11a 突起部

発明を実施するための最良の形態

[0038] この発明の実施形態を以下に添付図面に基づいて説明する。

図 1、 2に示すように、第 1実施形態は、座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジの開き角度の調節のために所定の差動伝動機構を設けたリクライニング装置であり、その差動伝動機構は、内歯車 1と、これより僅かに歯数の少ない外歯車 2とを嚙み合わせ、外歯車 2の軸孔 3と内歯車 1の軸 4と一体のカム 5の小径部分の間に形成される弧状の間隙に、一対の楔形片 6、 6'をそれらの先細り端部 6a、 6 が互いに反対向きになるよう配置すると共に、両楔形片 6、 6'が離れる方向に弾性力を付与する圧縮コイルパネ 7を設け、楔形片 6、 6'が内歯車 1の軸 4と一体に設けたカム 5に押されて弧状の間隙内で摺動移動した際、外歯車 2が内歯車 1から離れて嚙み合わせが外れ、ヒンジの開き角度が調整可能となる座席のリクライニング装置であり、楔形片 6、 6'の摩擦摺接面となる少なくとも外側面 6b、が、低摩擦摺動材で形成されている。

[0039] 外歯車 2は、内歯車 1より 1以上歯数が少なければよぐ敢えて範囲を例示すれば 1

〜10、好ましくは 2〜5程度、通常 1〜3程度の歯数が少ないものであり、特にこのような歯数の関係は限定されるのもではない。

[0040] 楔形片 6、 6Ίま、図 2に示した実施形態のように、先細りの端部 6aがー端に形成されているものであればよぐその全体形状の細部や曲がりの程度などは特に設計によって適宜に変更できるものである。

[0041] 2つの楔形片 6、 6'が離れる方向に弾性力を付与するパネの形態は、圧縮コイルパネを図示したが、その他にも例示すれば、一部切り欠きのリング状パネ、またはダンパーやゴム、弾性榭脂などの弾性作用のある周知の部品を採用できるものである。 [0042] また、楔形片 6の摩擦摺接面としては、外歯車 2の軸孔 3と摺接する外側面 6bと、内歯車 1の軸 4と一体のカム 5と摺接する内側面 6cが主たる摩擦摺接面である力特に外側面 6bには耐摩耗性が要求される。その他の先端面 6d、パネ保持用凹部 6e、対向する一対の表 (裏）面 6fからなる 1以上の面に低摩擦摺動材を形成してもよい。

[0043] 浸漬法ゃ噴霧法を採用して、榭脂からなる低摩擦摺動材を楔形片 6、 6,の一部または全体に塗布し、乾燥し、または乾燥と共に加熱硬化することにより、楔形片の摩擦摺接面に低摩擦摺動材の被膜を形成できる。

[0044] 通常、楔形片 6、 6'の基材は、金属製であり、特に鉄系焼結材で形成されたものは、その表面に榭脂系の低摩擦摺動材製被膜を塗布して設けた際に密着性が良ぐ好ましいものである。

[0045] この発明に用いる低摩擦摺動材としては、 V、わゆる固体潤滑剤と称されるものが含まれ、例えば二硫ィ匕モリブデン、黒鉛、カーボン、フッ素榭脂等公知の低摩擦材を使用できる。

そのうち、フッ素榭脂は、低摩擦特性に優れ、耐焼付き性があると共に低コストであるために好まし、ものである。

[0046] フッ素榭脂は、摩擦熱に耐えられる耐熱性を有するものであればよぐ具体的には、 PTFE、テトラフルォロエチレン一へキサフルォロプロピレン共重合体、テトラフルォ口エチレンパーフルォロアルキルビュルエーテル共重合体、テトラフルォロェチレン一エチレン共重合体、ポリクロ口トリフルォロエチレン、エチレンクロ口トリフルォロエチレン共重合体等が挙げられる。これらは、それぞれ単独または 2種以上の共重合体や 3共重合体等であってもよ、。

[0047] このうち PTFEは、フッ素榭脂の中では最も耐熱性が優れており、また、常温でも優れた摺動性を示すので好適である。さら〖こ、 PTFEの中でも、滑剤級の粉末 PTFEを用いることが好ましぐ滑剤級の粉末 PTFEの巿販品としては、ポリフロン M15、ルブロン L— 2 (以上ダイキン工業社製商品名）、テフロン TLP— 10 (デュポン社製商品名 )、フルオン G163 (旭硝子社製商品名）等を挙げることができる。なお、滑剤級の粉末 PTFEとは、一度焼成した PTFEを粉砕した再生 PTFEや、 PTFEにガンマ線照射処理をして低分子量化した PTFE粉末を言ヽ、ガンマ線照射処理をした市販品の例としては、 KT400H (喜多村社製商品名）がある。

[0048] PTFEの形態は、成形用の粉末であっても、 V、わゆる固体潤滑剤用の微粉末であつてもよぐその平均粒径は 0. 1〜20 111、好ましくは0. 2〜10 /ζ πιの範囲にあるのがよい。平均粒径力この範囲内にあると、コーティング剤中で凝集し難ぐ被膜中に満遍なく均一に分散される。

[0049] フッ素榭脂被膜はバインダ榭脂を併用することによって耐摩耗性と耐剥離性が高くなるために好ましい。ノインダ榭脂は、フッ素榭脂被膜を熱劣化させることなく下地である焼結材製楔形片に強固に密着するとともに、粉末としたフッ素榭脂やその他の配合物を結着する役割をする。バインダ榭脂としては、ポリイミド系榭脂、エポキシ系榭脂、フエノール系榭脂、シリコーン系榭脂等を挙げることができ、中でもポリイミド系榭脂が耐熱性と密着性に最も優れて!/ヽる。

[0050] ポリイミド系榭脂の具体例としては、ポリイミド榭脂（ΡΙ)、ポリアミドイミド榭脂（ΡΑΙ)、ポリエステルイミド榭脂、ポリエステルアミドイミド榭脂等を挙げることができ、中でも ΡΙ と ΡΑΙが好適であり、さらに、イミド結合またはアミド結合が芳香族基を介して結合して V、る芳香族系ポリイミド榭脂や芳香族系ポリアミドイミド榭脂が特に好ま、。

[0051] ΡΑΙはイミド結合とアミド結合とを有する榭脂である。また、芳香族系ポリアミドイミド榭脂のイミド結合は、ポリアミド酸等の前駆体であっても、閉環したイミド環であってもよぐこれらが混在する状態でもよい。このような芳香族系ポリアミドイミド榭脂には、芳香族第一級ジァミン (例えば、ジフエ-ルメタンジァミン）と芳香族三塩基酸無水物（例えば、トリメット酸無水物のモノまたはジァシルノヽライド誘導体）とから製造されるもの、芳香族ジイソシァネートイ匕合物（例えば、ジフエ二ルメタンジイソシァネート）と芳香族三塩基酸無水物とから製造されるもの等がある。さらに、アミド結合に比べてイミド結合の割合を多くした ΡΑΙとして、芳香族、脂肪族または脂環族ジイソシァネートイ匕合物と芳香族四塩基酸二無水物および芳香族三塩基酸無水物とから製造されるもの等があり、いずれの ΡΑΙも使用することができる。

[0052] フッ素榭脂被膜は、その他の配合剤として、フッ素榭脂被膜に用いられる公知の配合剤を配合することができる。特に、黒鉛、二硫ィ匕モリブデンや、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物は、被膜の耐摩耗性の向上のために配合することが望ま U、。

[0053] フッ素榭脂被膜は、フッ素榭脂 100重量部に対し、バインダ榭脂 60〜 130重量部、黒鉛、二硫ィ匕モリブデンおよび金属酸ィ匕物力も選ばれる一種以上の固体潤滑剤を 5〜30重量部配合したフッ素榭脂組成物で構成することにより、下地である焼結材製楔形片との密着性と、被膜の耐摩耗性をより良好に発揮することができる。フッ素榭脂 100重量部に対して、バインダ榭脂が 60重量部未満の少量であると密着性が低下し、 130重量部を越える多量の配合では低摩擦特性が低下する。また、フッ素榭脂 100重量部に対して、黒鉛、二硫ィ匕モリブデン、金属酸化物等が 5重量部未満の少量を配合すると耐摩耗性が不足し、 30重量部を越えると密着性が低下するので好ましくない。

[0054] 次に、この発明における楔形片の摩擦摺接面に設ける低摩擦摺動材は、例えば鉄系焼結金属からなる基材上に中間層を介して形成し、楔形片基材と低摩擦摺動材との密着強度を高めて形成することができる。中間層は、表面に微細な凹凸が形成されたものであればどのようなものでも良いが、溶射によって形成されたものは、膜厚が大きくならずにアンカー効果が高、ために好ま U、ものである。

[0055] 特に、銅、ニッケル、アルミニウム等の軟質金属からなる金属溶射層を中間層として採用すると、低摩擦摺動材が摩耗した場合でも相手材を傷つけることが無、ため好ましいものになる。

[0056] 他の方法として、この発明における楔形片の摩擦摺接面に設ける低摩擦摺動材は、例えば鉄系焼結金属力もなる基材の表面にショットブラストをし、その「表面粗さ」を好ましくは Ral〜15 μ m、より好ましくは Ra2〜10 μ mにした粗面を形成しておき、その上にフッ素榭脂被膜を密着させて設け、所要の性能を確保しかつ低コストィ匕の要求に応じることもできる。なお、表面粗さは Rzでは 5〜50 /ζ πιの範囲である。

[0057] 図 3、 4に示すように、第 2実施形態は、第 1実施形態とほぼ同様に座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジの開き角度の調節のために所定の差動伝動機構を設けたリクライニング装置であり、その差動伝動機構は、外歯車 2の軸孔 3に滑り面が榭脂で形成された軸受ブッシュ 10を配置した点のみが第 1実施形態のものと異なつているものである。 [0058] すなわち、その差動伝動機構は、内歯車 1と、これより僅かに歯数の少ない外歯車 2とを嚙み合わせ、外歯車 2の軸孔 3に配置した滑り面が樹脂で形成された軸受ブッシュ 10と内歯車 1の軸 4と一体のカム 5の小径部分の間に形成される弧状の間隙に、一対の楔形片 6、 6'をそれらの先細り端部 6a、 6 が互いに反対向きになるよう配置されている。そして、楔形片 6、 6'の摩擦摺接面となる少なくとも外側面 6b、が、低摩擦摺動材で形成されて！ヽる。

[0059] 図 2に示す第 1実施形態と同様の構造である楔形片 6の摩擦摺接面としては、外歯車 2の軸受ブッシュ 10と摺接する外側面 6bと、内歯車 1の軸 4と一体のカム 5と摺接する内側面 6cが主たる摩擦摺接面であるが、特に外側面 6bには耐摩耗性が要求される。その他の先端面 6d、パネ保持用凹部 6e、対向する一対の表 (裏)面 6fからなる 1以上の面も低摩擦摺動材で形成する対象になる。

[0060] 図 4に示すように、この発明に用いる軸受ブッシュ 10は、滑り面が摺動性のある榭脂で形成されていればよぐ榭脂成形品（一体成形品）の他、複合成形等により周知の複層軸受を使用することができるものであり、例えば鋼や銅など力もなる裏金 10aと、その上に重ねて形成される銅合金粉末などの焼結成形体力なる多孔質焼結層 1 Obと、この多孔質焼結層 10bの細孔に一部が充填された摺動性榭脂組成物、例えば黒鉛粉末を 30〜50重量％含有するポリテトラフルォロエチレン榭脂からなる榭脂層 10cとからなる積層体力もなるものを使用できる。

[0061] また、軸受ブッシュ 10における多孔質焼結層 10bに代えて、銅、ニッケル、アルミ- ゥム等の軟質金属力もなる金属溶射層を採用することも榭脂層 10cとの密着強度が高くなつて好ましいことである。このように軸受ブッシュ 10は、滑り面が摺動性のある榭脂であり、榭脂と接着性のよい中間層 (バインダ層）を介して裏金を積層し一体ィ匕したものが適当である。

[0062] 滑り面を形成するための摺動性のある樹脂の具体例としては、前述した低摩擦摺動材と同じ材料を使用可能である。

[0063] 以上のように構成された座席のリクライニング装置は、座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジの開き角度の調節のために差動伝動機構を作用させる際、手動レバーなどによる軸 4の回転により、軸 4と一体に設けたカム 5に押されて楔形片 6 、 6'が弧状の間隙内で摺動移動し、前記角度調節を可能な状態または角度固定状態になるが、その状態の切換えの際に楔形片 6、 6'の外側面 6b、の低摩擦摺動材が軸受ブッシュ 10の榭脂層に摺接して差動伝動機構 (タウメル機構)を作用させる

[0064] その際、軸受ブッシュ 10の榭脂層 10cの表面を剥ぎ取ろうとする力は、榭脂製の滑り面と低摩擦摺動材とが接触することによって小さくなり、軸受ブッシュ 10の榭脂層は、その表面力も層状に剥離し難くなり、または基材である中間層（バインダ層)もしくは裏金から剥離し難くなる。

[0065] 〔実施例 1〕

実施例 1は、鉄系焼結材カもなる楔形片の表面全体にポリテトラフルォロエチレン（ PTFE) 100重量部、バインダ榭脂としてポリアミドイミド榭脂を 90重量部、配合剤として酸ィ匕鉄 10重量部力もなるコーティング材 (NTN精密榭脂社製:ベアリー FL7075) をスプレーコートした後、約 230°Cで焼成して厚さ 0. 025mmの PTFEからなるフッ素榭脂被膜を形成した。

[0066] 〔実施例 2〕

実施例 2は、鉄系焼結材カもなる楔形片の表面に銅 95%、錫 5%からなる銅溶射層を形成したのち、さらに表面全体にポリテトラフルォロエチレン (PTFE) 100重量部、ノインダ榭脂としてポリアミドイミド榭脂を 90重量部、配合剤として酸化鉄 10重量部からなるコーティング材 (NTN精密榭脂社製:ベアリー FL7075)をスプレーコートした後、約 230°Cで焼成して厚さ 0. 025mmの PTFE力もなるフッ素榭脂被膜を形成した。

[0067] 〔実施例 3〕

実施例 3は、鉄系焼結材カもなる楔形片の表面にニッケル溶射層を形成したのち、さらに表面全体にポリテトラフルォロエチレン (PTFE) 100重量部、バインダ榭脂としてポリアミドイミドを 100重量部、配合剤として黒鉛 20重量部力もなるコーティング材 ( NTN精密榭脂社製:ベアリー RCB)をスプレーコートした後、約 230°Cで焼成して厚さ 0. 025mmの PTFE力もなるフッ素榭脂被膜を形成した。

[0068] このようにして得られた楔形片を図 1、 2に示す座席のリクライニング装置に組み付けた実施例 1、 2、 3では、内歯車 1の軸の外周面に滑り軸受を予め圧入しておく必要がなぐし力も操作レバーの回転操作により、楔形片 6、 6'が内歯車の軸に設けた力ムに押された際に極めて滑らかに摺動移動することができ、外歯車 2は速やかに内歯車から離れてヒンジの開き角度が円滑に調整可能となった。

[0069] 〔実施例 4〕

実施例 4は、鉄系焼結材で成形された楔形片の基材の表面全体にテトラフルォロエチレンパーフルォロアルキルビュルエーテル共重合体（PFA)とポリイミド榭脂からなるプライマーを塗布し、乾燥させた後、 PFAを主成分とするコーティング材 (NT N精密榭脂社製:ベアリー FE7090)をスプレーコートした後、約 350°Cで焼成して厚さ 0. 040mmの PFAからなるフッ素榭脂被膜を形成した。

[0070] 〔実施例 5〕

実施例 5は、実施例 4と同様の鉄系焼結材からなる楔形片の表面に銅 95%、錫 5 %からなる銅溶射層を形成し、さらに表面全体にポリテトラフルォロエチレン (PTFE) 100重量部とバインダ榭脂としてポリアミドイミド榭脂 90重量部とからなるコーティング材 (NTN精密榭脂社製:ベアリー FE7030)をスプレーコートした後、約 230°Cで焼成して厚さ 0. 025mmの PTFE力もなるフッ素榭脂被膜を形成した。

[0071] 〔実施例 6〕

実施例 6は、実施例 4と同様の鉄系焼結材カもなる楔形片の表面にニッケル溶射層を形成し、さらに表面全体にポリテトラフルォロエチレン (PTFE) 100重量部、バインダ榭脂としてポリアミドイミドを 100重量部、配合剤として黒鉛 20重量部からなるコ一ティング材 (NTN精密榭脂社製:ベアリー RCB)をスプレーコートした後、約 230°C で焼成して厚さ 0. 025mmの PTFE力もなるフッ素榭脂被膜を形成した。

[0072] 〔比較例 1〕

比較例 1は、実施例 4と同様の鉄系焼結材カなる楔形片の表面を研摩加工して表面仕上げを行なった。

[0073] このようにして得られた楔形片を図 1、 2に示す座席のリクライニング装置に組み付けた実施例 4、 5では、操作レバーの回転操作により、楔形片 6、 6'が内歯車の軸に設けたカムに押された際に極めて滑らかに摺動移動することができ、外歯車 2は速や力に内歯車から離れてヒンジの開き角度が円滑に調整可能であった。

[0074] 耐久性試験として楔形片を図 3に示すリクライニング装置に組み付け無潤滑で軸受中心から 300mmの地点に荷重 20kgfをかけ、作動角 30° 、作動速度 2° Z秒の条件で 7000サイクルの往復試験を実施した。

[0075] なお、軸受ブッシュ 10は鉄系鋼板力もなるノックメタルに銅錫合金の溶射層を介しポリテトラフルォロエチレン (PTFE)を主成分とするコーティング材 (NTN精密榭脂社製:ベアリー FL7075)が被覆されたものである。

[0076] 耐久試験の結果、実施例 4、 5、 6では楔形片のフッ素榭脂被膜および軸受ブッシュの榭脂層に摩耗が認められた力軸受ブッシュの榭脂層の剥がれおよびトルクの上昇は起こらな力つた。比較例 1は、約 5500サイクル後に異常トルクによって試験を中断した。軸受ブッシュを確認すると榭脂層の摩耗及び剥がれが生じていた。

Claims

請求の範囲

[1] 座席の座面部分と背もたれ部分を結合するヒンジの開き角度の調節のために差動伝動機構を設け、この差動伝動機構は、内歯車と、これより歯数の少ない外歯車とを嚙み合わせ、外歯車の軸孔と内歯車の軸との間に形成される弧状の間隙に、一対の楔形片をそれらの先細り端部が互いに反対向きになるよう配置すると共に、両楔形片が離れる方向に弾性力を付与するパネを設け、前記楔形片が内歯車の軸に設けたカムに押されて前記弧状の間隙内で摺動移動した際、外歯車が内歯車から離れてヒンジの開き角度が調整可能となる座席のリクライニング装置において、

前記楔形片の摩擦摺接面が、低摩擦摺動材で形成されて!ヽることを特徴とする座席のリクライニング装置。

[2] 前記楔形片の摩擦摺接面は、基材上に中間層を介して低摩擦摺動材を積層一体化して形成されたものである請求項 1に記載の座席のリクライニング装置。

[3] 中間層が、金属溶射層である請求項 2に記載の座席のリクライニング装置。

[4] 低摩擦摺動材が、榭脂からなり被膜状に形成されている請求項 1または 2に記載の座席のリクライニング装置。

[5] 榭脂が、フッ素系榭脂である請求項 4に記載の座席のリクライニング装置。

[6] フッ素系榭脂が、バインダ榭脂にフッ素榭脂を添加したフッ素榭脂組成物である請求項 5に記載の座席のリクライニング装置。

[7] フッ素榭脂組成物が、黒鉛、二硫ィ匕モリブデンおよび金属酸ィ匕物力も選ばれる一種以上の固体潤滑剤を含有するフッ素榭脂組成物である請求項 6に記載の座席のリクライニング装置。

[8] フッ素榭脂組成物が、フッ素榭脂 100重量部に対し、バインダ榭脂 60〜 130重量部を配合すると共に、黒鉛、二硫ィ匕モリブデン、金属酸化物から選ばれる一種以上の固体潤滑剤を 5〜30重量部配合したフッ素榭脂組成物である請求項 7に記載の座席のリクライニング装置。

[9] 請求項 1〜8のいずれか 1項に記載の座席のリクライニング装置において、外歯車の軸孔に、滑り面が樹脂で形成された軸受ブッシュを固定して設けた座席のリクライニング装置。 [10] 請求項 1〜9のいずれか 1項に記載の座席のリクライニング装置において、座席が自動車用シートである自動車シートのリクライニング装置。