明 細 書
運動案内装置の製造方法、およびこの方法を用いて製造される運動案内 装置
技術分野
[0001] 本発明は、運動案内装置の製造方法、およびこの方法を用いて製造される運動案 内装置に係り、特に、加工の際に発生する摩擦面 (転動体の転走面を含む語である )上の不具合を無害化する技術を採用した運動案内装置の製造方法、およびこの方 法を用いて製造される運動案内装置に関するものである。
背景技術
[0002] 従来から、リニアガイドや直線案内装置、ボールスプライン装置、ボールねじ装置な どのような転動体を用いる運動案内装置においては、力かる装置を構成する部材が 転動体を介して繰り返し転動,摺動圧力を受けることから、転動体との摩擦面には、 高 、表面品質が求められて 、た。
[0003] そして、このような摩擦面は、砲石を用いた研削加工によって成形されるのが一般 的であるが、砥石研削においては、研削中に砥石から脱落する砲粒の嚙み込みによ つて、摩擦面の表面に疵を発生させてしまうことがあった。摩擦面上の疵は、運動案 内装置の装置寿命に重大な影響を及ぼすため、そのまま残留させてはならない。一 方、摩擦面は、転動体の転走路を形成するものであるから、研削加工によって成形さ れた許容寸法精度を維持しなければならないという制約もある。したがって、従来は、 ー且摩擦面上に疵が発生してしまうと、摩擦面の許容寸法精度を維持しながら疵を 除去することが困難であるため、不具合が発生した部材については、廃棄せざるを得 ないのが実態であった。
[0004] 特許文献 1 :特開平 05— 078859号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0005] ところで、摩擦面の許容寸法精度をある程度維持しながら金属表面の改質を行う技 術としては、ショットピーユングやハードショットピーユングと呼ばれる処理技術が知ら
れている。これらの処理技術は、疲労強度向上に有効なことから、ギアやパネなどの 機構部品の表面改質に用いられている (例えば、上記特許文献 1参照)。
[0006] しかしながら、ショットピーユングやハードショットピーユングに代表される従来の表 面改質技術は、金属表面の性質を変更 (あるいは制御)することを目的に開発された 手法であり、摩擦面上に発生した疵 (例えば、砲粒の嚙み込みによる数/ z m〜数十 μ m程度の疵)の除去を考慮したものではな力つた。
[0007] 本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、砥石を用いた研 削加工によって摩擦面もしくは転走面上に発生した疵を、摩擦面もしくは転走面の許 容寸法精度を維持した状態で無害化することができる、新たなピーニング処理技術 の提供を目的とするものである。また、本発明は、摩擦面もしくは転走面上の疵を無 害化するのみでなぐ疲労強度と摺動性を向上させ、さらには装置寿命をも向上させ ることができるという、従来技術では不可能であった効果を発揮することのできる新た なピー-ング処理技術の提供をも目的とするものである。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明に係る運動案内装置の製造方法は、転動体を用いる運動案内装置の転が り摩擦面および滑り摩擦面の少なくとも一部の摩擦面を、砲石を用いた研削加工によ つて成形する研削加工工程と、前記研削加工工程で発生した摩擦面上の不具合を 無害化するために、前記研削加工工程によって成形された摩擦面に対してピーニン グ処理を施す表面処理工程と、を含む処理を実行することを特徴とする。
[0009] また、本発明に係る別の運動案内装置の製造方法は、転動体転走面を備える軌道 部材と、前記転動体転走面に対向する負荷転動体転走面を備える移動部材と、前 記転動体転走面と前記負荷転動体転走面とによって構成される負荷転走路内に転 動自在に設置される複数の転動体と、を有することにより、前記移動部材が前記軌道 部材の軸線方向又は周方向に往復運動自在又は回転運動自在とされる運動案内 装置の製造方法であって、砲石を用いた研削加工によって前記移動部材に前記負 荷転動体転走面を成形する研削加工工程と、前記移動部材における少なくとも前記 負荷転動体転走面を含む領域に対してピーニング処理を施すことによって、前記研 削加工工程で発生した前記負荷転動体転走面上の不具合を無害化する表面処理
工程と、を含む処理を実行することを特徴とする。
[0010] 本発明に係る運動案内装置の製造方法では、前記表面処理工程において実施さ れるピーユング処理によって、前記負荷転動体転走面の表面粗さを Raで 0.
以下とすることができる。
[0011] また、本発明に係る運動案内装置の製造方法において、前記ピーユング処理は、 微粒子ピー-ング処理であることとすることができる。
[0012] さらに、本発明に係る運動案内装置の製造方法において、前記表面処理工程には
、前記ピーユング処理の後に実行されるバレル処理が含まれることとすることができる
[0013] 上述した方法を用いて製造される本発明に係る運動案内装置は、転動体転走面を 備える軌道部材と、前記転動体転走面に対向する負荷転動体転走面を備える移動 部材と、前記転動体転走面と前記負荷転動体転走面とによって構成される負荷転走 路内に転動自在に設置される複数の転動体と、を有することにより、前記移動部材が 前記軌道部材の軸線方向又は周方向に往復運動自在又は回転運動自在とされる 運動案内装置であって、前記転動体転走面および前記負荷転動体転走面の少なく とも一部の転走面力 ピーユング処理を受けており、且つ、表面粗さが Raで 0. 以下であることを特徴とする。
[0014] なお上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなぐこれ らの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
発明の効果
[0015] 本発明によれば、仮に、砲石を用いた研削加工によって摩擦面もしくは転走面上に 疵が発生したとしても、処理対象部材の許容寸法精度に影響を及ぼすことなく疵を 無害化することが可能な新たなピーユング処理技術を提供することができる。また、 力かるピー-ング処理技術によれば、摩擦面もしくは転走面上の疵を無害化するの みでなぐ疲労強度と摺動性を向上させ、さらには装置寿命をも向上させることができ る。
図面の簡単な説明
[0016] [図 1A]本発明に係る運動案内装置の製造方法によって製造されたリニアガイド装置
の一形態を例示する外観斜視図である。
[図 1B]図 1Aで示したリニアガイド装置が備える無限循環路を説明するための断面図 である。
[図 2]表 1で示した各実験条件で処理を受けたリニアガイド装置の走行距離試験の結 果を示す図である。
[図 3]表 1で示した実験条件ごとの微粒子ピーユング処理前後における表面粗さ Raを 示す図である。
[図 4]本発明に係る運動案内装置の製造方法によって製造されたスプライン装置の 一形態を例示する外観斜視図である。
[図 5A]本発明に係る運動案内装置を回転ベアリング装置として構成した場合の一形 態を例示する部分縦断斜視図である。
[図 5B]図 5Aに示す回転ベアリング装置の縦断面を示す図である。
符号の説明
[0017] 40 リニアガイド装置、 41 軌道レール、 41a 転動体転走面、 42, 62 ボール、 4 3 移動ブロック、 43a 負荷転動体転走面、 52 負荷転走路、 53 無負荷転走路、 55 方向転換路、 60 スプライン装置、 61 スプライン軸、 61a 転動体転走面、 63 外筒、 64 保持器、 70 回転ベアリング装置、 71 内輪、 72 内側軌道面、 73 外 輪、 74 外側軌道面、 75 軌道路、 77 ローラ。
発明を実施するための最良の形態
[0018] 以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する 。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなぐまた、実 施形態の中で説明されて!、る特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須で あるとは限らない。
[0019] なお、本明細書における「運動案内装置」は、例えば、工作機械などに用いられる 転がり軸受全般や真空中で使用される無潤滑軸受、リニアガイドや直線案内装置、 ボールスプライン装置、ボールねじ装置、ローラねじ装置、クロスローラリング等のよう な、あらゆる転動,摺動動作を伴う装置を含むものである。
[0020] 本実施形態に係る運動案内装置の製造方法は、図 1A及び図 1Bに示すようなリニ
ァガイド装置として構成される運動案内装置に対して適用することが可能である。ここ で、図 1Aは、本発明に係る運動案内装置の製造方法によって製造されたリニアガイ ド装置の一形態を例示する外観斜視図である。また、図 1Bは、図 1Aで示したリニア ガイド装置が備える無限循環路を説明するための断面図である。
[0021] まず、図 1A及び図 1Bに例示するリニアガイド装置 40の構成について説明すると、 本実施形態に係る運動案内装置としてのリニアガイド装置 40は、軌道部材としての 軌道レール 41と、軌道レール 41に多数の転動体として設置されるボール 42· · ·を介 してスライド可能に取り付けられた移動部材としての移動ブロック 43とを備えている。 軌道レール 41はその長手方向と直交する断面が概略矩形状に形成された長尺の部 材であり、その表面(上面及び両側面)にはボールが転がる際の軌道になる転動体 転走面 41a…が軌道レール 41の全長に渡って形成されている。
[0022] ここで軌道レール 41は、直線的に伸びるように形成されることもあるし、曲線的に伸 びるように形成されることもある。また、転動体転走面 41a…の本数は左右で 2条ずつ 合計 4条設けられているが、その条数はリニアガイド装置 40の用途等に応じて変更 することができる。
[0023] 一方、移動ブロック 43には、転動体転走面 41a…とそれぞれ対応する位置に負荷 転動体転走面 43a' ··が設けられて 、る。軌道レール 41の転動体転走面 41a' · ·と移 動ブロック 43の負荷転動体転走面 43a…とによって負荷転走路 52…が形成され、複 数のボール 42· · ·が挟まれている。さらに、移動ブロック 43には、各転動体転走面 41 a…と平行に伸びる 4条の無負荷転走路 53…と、各無負荷転走路 53· · ·と各負荷転 走路 52· ··とを結ぶ方向転換路 55…が設けられて 、る。 1つの負荷転走路 52及び無 負荷転走路 53と、それらを結ぶ一対の方向転換路 55との組み合わせによって、 1つ の無限循環路が構成される(図 1B参照)。
[0024] そして、複数のボール 42· · ·が、負荷転走路 52と無負荷転走路 53と一対の方向転 換路 55, 55とから構成される無限循環路に無限循環可能に設置されることにより、 移動ブロック 43が軌道レール 41に対して相対的に往復運動可能となっている。
[0025] 以上のような構成を備える本実施形態に係るリニアガイド装置 40においては、その 特徴的な点として、転動体転走面 41a…および負荷転動体転走面 43a…のうちの少
なくとも一部の転走面力 微粒子ピーユング処理を受けており、且つ、その微粒子ピ 一ユング処理を受けた転走面の表面粗さが Raで 0. 4 μ m以下であることが挙げられ る。
[0026] この微粒子ピーユング処理を含む本実施形態に係るリニアガイド装置 40の製造方 法について説明すると、まず、砲石を用いた研削加工によって、リニアガイド装置 40 を構成する部材に対して転動体が接触する摩擦面が成形される (研削加工工程)。 なお、この摩擦面は、図 1A及び図 1Bに例示するリニアガイド装置 40であれば、軌道 レール 41における転動体転走面 41a…や移動ブロック 43における負荷転動体転走 面 43a' ··などの転走面に相当する。
[0027] 次に、研削加工工程で成形された摩擦面に対して微粒子ピーユング処理が施され る(表面処理工程)。この微粒子ピーユング処理を行う装置については、従来のショッ トビー-ングゃハードショットピー-ング等で用いられて 、るブラスタ一装置を用いれ ば良ぐ軌道レール 41や移動ブロック 43などの部材に対して、粒径が 40 μ m〜80 /z m程度の非常に微細なショットを後述する本発明特有の処理条件で叩きつけるこ とになる。なお、微粒子ピーユング処理が施される領域は、少なくとも摩擦面を含んで いれば良ぐ軌道レール 41や移動ブロック 43全体に対して微粒子ピーユング処理を 行っても良い。この微粒子ピーユング処理の実行は、研削加工工程で発生する虞の ある砲粒嚙み込み疵などの不具合を無害化する役割を果たしている。
[0028] ここで、微粒子ピーユング処理が摩擦面上に発生した砲粒嚙み込み疵などの不具 合を無害化するメカニズムについては、 40 m〜80 m程度の非常に微細なショッ トの激突によって、(1)疵の有害部(凸部)がはじき飛ばされる、(2)ショットの激突によつ て瞬間的に熱が発生して疵周辺の金属を瞬間的に溶かし、その後の急冷によって疵 が消失してしまう、(3)ショットの激突による熱によって疵が完全に消失しないまでも、 転動体の転動 .摺動運動に影響がないまでに極小化し、無害化する、などが考えら れる。
[0029] また、本実施形態に係る微粒子ピーユング処理は、 40 μ m〜80 μ m程度の非常 に微細なショットを用いて摩擦面上を叩きならしているだけなので、その寸法変化は 数/ z mオーダーであり、転動体転走面 41a…や負荷転動体転走面 43a…などの転
走面が必要とする許容寸法精度を十分満足することが可能である。
[0030] なお、本実施形態に係る運動案内装置の製造方法において、上述した表面処理 工程には、微粒子ピーユング処理の後に実行されるバレル処理が含まれることとする ことも可能である。すなわち、微粒子ピーユング処理は、転動体転走面 41a…や負荷 転動体転走面 43a…などの転走面が必要とする許容寸法精度を十分満足した状態 で疵を無害化することができるのである力 ピーユング処理後の転走面は、研削面よ りも表面粗さが若干低下してしまうことは避けられない。そこで、微粒子ピー-ング処 理が行われた転走面に対してバレル処理を行うことによって、表面粗さの改善を行う ことが好適である。
[0031] バレル処理の具体的な内容としては、例えば、アルミ粉やマイ力(雲母片)、インパ タトメディア (金属球、砲石小片、砲粒、天然および人造の石塊、石英、砂、皮、おが くずなど)、工作液などが入ったバレル容器に処理対象となる軌道レール 41や移動 ブロック 43を入れて振動させ、撹拌すれば良い。力かる処理によって微粒子ピー- ング処理を受けた転走面表面の凹凸が一部除去され、滑らかな転走面を得ることが できる。また、バレル容器には、上述した物のほか、防鲭作用、研磨作用の促進のた めにコンパウンドをカ卩えることも好適である。
[0032] ちなみに、本実施形態に係る運動案内装置の製造方法において、バレル処理の 実施は必ずしも必須のものではなぐ製造対象となる運動案内装置の使用環境や製 品仕様などに応じて適宜採用 '非採用を決定すれば良い。
[0033] 次に、本実施形態に係る微粒子ピーユング処理の具体的な実施条件を説明する。
すなわち、本発明者らは、従来力も知られているショットピーニングゃノヽードショットピ 一二ング等の従来のピーニング処理を改良し、従来では不可能であった、許容寸法 精度を維持しながら摩擦面上に発生した疵などの不具合を無害化する新たなピーニ ング処理の処理条件を見出したのである。
[0034] 表 1は、発明者らが行った微粒子ピーニング処理の実験条件を示す表である。従 来のショットピーニングゃハードショットピーニングが採用するショット粒径約 800 μ m に対して πι〜80 /ζ m程度の非常に微細なショットを採用しており、疵を適切に 無害化するための処理が行われて 、る。
M9MC/900Zdf/X3d 8 ZZ ZWLOOZ OAV
表 1 実験条件
表 2は、表 1で示した実験条件ごとの結果を示している。また、図 2は、表 1で示した 各実験条件で処理を受けたリニアガイド装置 40の走行距離試験の結果を示す図で ある。表 2からも明らかな通り、粒度 #400のビーズを 15秒間叩きつけた (比較 1)以外 は、研削疵を無害化することができた。また、特に図 2で示すように、本実施形態に係 る微粒子ピー-ング処理を施されたリニアガイド装置 40は、 ヽずれも計算寿命である 400kmを大幅に超える走行距離を達成した。特に、(発明 1)の条件で行った微粒子 ピー-ング処理では、計算寿命 400kmの 2倍以上の 882kmと 、う走行距離を実現 することができた。このことは、本実施形態に係る微粒子ピーユング処理力 疵などの 不具合を無害化するだけではなぐ疲労強度と摺動性を向上させ、さらには装置寿 命をも改善することが可能であるという、従来技術では実現不可能であった効果を発 揮することを示している。なお、微粒子ピーユング処理が未処理であり疵が残存した 状態のリニアガイド装置と、本実施形態に係る微粒子ピー-ング処理を受けたリニア ガイド装置との走行距離の差は、歴然として ヽることは言うまでもな 、。
[表 2]
なお、図 3は、表 1で示した実験条件ごとの微粒子ピーユング処理前後における表 面粗さ Raを示す図であるが、疵を除去できな力つた (比較 1)の実験条件以外は、表 面粗さが若干悪ィ匕していることがわかる。このことは、疵などの不具合を無害化するた めには、若干の表面粗さを犠牲にしなければならないが、転動 '摺動動作を伴う運動 案内装置において一般に必要とされている表面粗さが Raで 0. 4 m以下の値を達 成する条件 (バレル処理の実施を含む)を採用すれば、本発明に係る微粒子ピーニ
ング処理がより大きな不具合の無害化をも可能であることを示している。
[0037] 以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上 記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は 改良を加えることが可能である。すなわち、本発明に係る運動案内装置の製造方法 の表面処理工程において実施される処理条件は、表 1に示される発明条件のみに限 定されるものではなぐ疵などの不具合を無害化することができ、且つ、表面粗さが R aで 0. 4 m以下の値を達成することができる条件であれば、処理対象となる金属材 料や運動案内装置に求められる性能などに応じて、適宜好適な条件を採用すること ができる。
[0038] また、本実施形態では、本発明に係る運動案内装置がリニアガイド装置 40として構 成される場合を例示して説明したが、例えば、図 4に示されるようなスプライン装置 60 に対しても本発明に係る運動案内装置の製造方法を適用することが可能である。
[0039] ここで、図 4に示されるスプライン装置 60の構成を簡単に説明すると、スプライン装 置 60は、軌道部材としてのスプライン軸 61と、そのスプライン軸 61に多数の転動体と してのボール 62…を介して移動自在に取り付けられた移動部材としての円筒状の外 筒 63とを有している。スプライン軸 61の表面には、ボール 62の軌道となり、スプライ ン軸 21の軸線方向に延びる転動体転走面 6 la' ··が形成されて 、る。スプライン軸 6 1に取り付けられる外筒 63には、転動体転走面 61aに対応する負荷転動体転走面が 形成される。これらの負荷転動体転走面には、転動体転走面 61a…が伸びる方向に 伸びる複数条の突起が形成されている。外筒 63に形成した負荷転動体転走面とス プライン軸 61に形成した転動体転走面 61aとの間で負荷転走路が形成される。負荷 転走路の隣には、荷重力も解放されたボール 62…が移動する無負荷戻し通路が形 成されている。外筒 63には、複数のボール 62…をサーキット状に整列'保持する保 持器 64が組み込まれている。そして、複数のボール 62· · ·が、外筒 63の負荷転動体 転走面とスプライン軸 61の転動体転走面 61aとの間に転動自在に設置され、無負荷 戻し通路を通って無限循環するように設置されることによって、外筒 63がスプライン 軸 61に対して相対的に往復運動可能となって!/、る。
[0040] このようなスプライン装置 60を構成する部材のうち、転動体転走面 6 la…と負荷転
動体転走面の少なくとも一方に対して、本発明に係るピーユング処理を施すことが可 能である。スプライン装置 60を本発明に係る運動案内装置の製造方法によって製造 することによって、疵の無い転動体転走面 61a…および負荷転動体転走面が実現し 、さらには、疲労強度と摺動性、装置寿命が向上したスプライン装置 60を得ることが できる。
[0041] さらに、本発明に係る運動案内装置の製造方法によって製造される運動案内装置 は、図 5A及び図 5Bに示すような回転ベアリング装置として構成することが可能であ る。ここで、図 5Aは、本発明に係る運動案内装置を回転ベアリング装置として構成し た場合の一形態を例示する部分縦断斜視図である。また、図 5Bは、図 5Aに示す回 転ベアリング装置の縦断面を示す図である。
[0042] 図 5A及び図 5Bに示すように、回転ベアリング装置 70として構成される運動案内装 置は、外周面に断面 V字形状の内側軌道面 72を有する(軌道部材又は移動部材と しての)内輪 71と、内周面に断面 V字形状の外側軌道面 74を有する (移動部材又は 軌道部材としての)外輪 73と、内側軌道面 72と外側軌道面 74とによって形成される 断面略矩形状の軌道路 75の間に転動可能にクロス配列される複数の転動体として のローラ 77…と、を有することにより、内輪 71及び外輪 73が周方向に相対的な回転 運動を行うものである。
[0043] このような回転ベアリング装置 70を構成する部材のうち、少なくとも内側軌道面 72 および外側軌道面 74の 、ずれか一方に対して、本発明に係るピーユング処理を施 すことが可能である。回転ベアリング装置 70を本発明に係る運動案内装置の製造方 法によって製造することにより、疵の無い内側軌道面 72および外側軌道面 74が実現 し、さらには、疲労強度と摺動性、装置寿命が向上した回転ベアリング装置 70を得る ことができる。
[0044] なお、本発明は、上述したリニアガイド装置、スプライン装置、回転ベアリング装置 だけでなぐ直線案内装置や転がり軸受などのあらゆる運動案内装置に適用すること が可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含ま れ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。