WO2006123515A1 - 歩行補助装置 - Google Patents

Description

歩行補助装置

技術分野

[0001] 本出願は、 2005年 5月 17日に出願された特願 2005— 143423に基づき、且つそ の優先権を主張するものであり、ここで参照したことによりこの文献の開示内容全体 が本願明細書の一部となる。

[0002] 本発明は、下肢機能が低下した人の筋力を補助する力を発生する動力発生装置 を備えた歩行補助装置に関し、特に動力発生装置からの補助力を伝達するための アームの遊端部を大腿部に快適に固定可能な大腿部装具を備えた歩行補助装置 用に関する。

背景技術

[0003] 筋力が低下して自力歩行が困難となった人のために、股関節や膝関節の近くに電 動モータ等の動力発生装置を装着し、動力発生装置が発生する駆動力で下肢の運 動を補助するようにした歩行補助装置が種々提案されている (例えば、特開平 7— 16 3607号公報を参照された 、)。

[0004] 特開平 7— 163607号公報に記載された歩行補助装置においては、使用者の大 腿部に大腿用装着部を装着し、動力発生装置の駆動力を、大腿用装着部を介して 大腿部に伝達するように構成されている。この大腿用装着部は、大腿部にしつ力りと 固定できるように、大腿部の全周を覆うような円筒形をなすと共に、伸縮性のある布、 皮革、合成樹脂製シート等の軟質材料にて製作されており、その周方向の一部を開 閉して大腿部に着脱し得るように構成されて 、る。

発明の開示

発明が解決しょうとする課題

[0005] しかるに、特開平 7— 163607号公報に記載の大腿用装着部は、大腿部の殆ど全 体に巻き付けるように構成されている。これによると、人の身体の中でも特に太い筋 肉があり、筋肉の牽引収編こよる断面積 (周囲長)の変化が大きい大腿部の場合、筋 肉が伸びて!/、る立位で丁度良!、ように装具を締め付けると、筋肉が収縮するしやが んだ時には大腿部に強い圧迫感を覚えることとなり、この逆にしゃがんだ時に丁度良 V、ように装具を締め付けると、立った時には弛みを生じてしまうことが考えられる。

[0006] 上記特許文献には、伸縮性のある材質を選ぶことが示唆されている力 実際のとこ ろ、筋肉の動きを阻害せず、違和感や苦痛を使用者に全く感じさせることのないよう に、動力発生装置の力を大腿部に伝達する装具を構成することは極めて困難であつ た。

[0007] 本発明は、このような従来技術の問題点を解消すべく案出されたものであり、その 主な目的は、使用者自身の筋肉の運動を妨げることがなぐしかも装着状態がずれる ことのない歩行補助装置用大腿部装具を提供することにある。

課題を解決するための手段

[0008] 本発明によれば、このような課題を解決するために、使用者の腰部に装着された腰 部装具と、前記腰部装具に取り付けられ、駆動軸を有する動力発生装置と、前記駆 動軸カゝら半径方向に延出する補助力伝達アームと、前記補助力伝達アームの遊端 部を使用者の大腿部に固定するための大腿部装具とを有する歩行補助装置に於い て、前記大腿部装具が、袋体に空気を充填してなるエアパッドを介して前記大腿部 に接触することを特徴とする歩行補助装置が提供される。

[0009] このようにすれば、エアパッドによる空気ばね作用によって例えば蹲踞姿勢をとつた 時などの大腿部の変形に対しても、エアパッドは容易に大変位し得る。

[0010] 特に、動力発生装置と大腿部装具との間を、その回転方向について実質的にリジ ッドなトルクアームで連結するものとすれば股関節の近くに装着した動力発生装置と 大腿部装具との間の寸法が変化しないので、大腿部装具が運動中にずり落ちること もない。

[0011] 前記大腿部装具が、前記パッドを前記補助力伝達アーム遊端部に支持するための

、前記大腿部を少なくとも部分的に外囲するステーを更に有するものとすれば、大腿 部を安定に補助力伝達アーム遊端部に支持することができる。特に、前記大腿部装 具力 前記大腿部の前面に対向するように前記ステ一に取り付けられたフロントサボ ート板と、前記大腿部の後面に対向するように前記ステ一に取り付けられたリアサボ ート板とを有し、前記エアパッドが前記フロントサポート板に設けられていることにより 、前記フロントサポート板が、前記エアパッドを介して前記大腿部の対応部分に係合 するようにされているものとすれば、大腿部の受圧面積を最大化することができる。人 体の解剖学的特徴を考慮すると、前記フロントサポート板が、前記リアサポート板より も縦長に形成されていたり、前記リアサポート板が前記フロントサポート板よりも幅広 に形成されていると良い。

[0012] 大腿部の運動を好適に許容するためには、前記サポート板が前記ステ一に対して 回転可能に取り付けられていたり、前記各サポート板がばね継手を介して前記ステ 一に取り付けられて 、ると良 、。

前記エアパッドが、袋体とその内部に充填された転動粒体とを含むパッドを介して 前記大腿部に接触する身体との接触部に半流動体を充填したパッドを当てたりする ことにより、動力発生装置及び動力伝達装置の身体に対する固定点と身体の運動軸 (関節中心）との位置が不一致であることに起因して生ずる装具と身体との間のズレ が許容されるので、下肢の自然な運動を阻害せずに済む。

前記エアパッドに空気を補充するためのポンプを更に有するものとすれば、適宜に エアを出し入れすることができるので、高 、装着性を容易に維持することができる。 発明を実施するための最良の形態

[0013] 以下に添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。

[0014] 図 1は、本発明に基づいて構成された歩行補助装置の概略構成図である。この歩 行補助装置 1は、腰部装具 2と、大腿部装具 3と、腰部装具 2に結合された補助動力 発生用ァクチユエータ 4とから構成されており、腰部装具 2を腰部に装着することでァ クチユエータ 4を使用者の股関節の側方に固定すると共に、大腿部装具 3を大腿部 T に装着することでァクチユエータ 4の駆動軸力 左右の大腿部 Tの各外側面に沿うよ うに延出された一対のトルクアーム 5の遊端に作用する補助力を大腿部 Tに伝達する ことができるようになって!/、る。

[0015] トルクアーム 5の遊端に結合された大腿部装具 3は、図 2に示すように、フラットバー を上面視略 U字形に曲折してなるステー 21と、ステー 21の両端の対向内面に固定さ れた薄板からなる一対のサポート板 22F' 22Rと、両サポート板 22F' 22Rの対向内 面、つまり大腿部 Tとの接触面に被着されるパッド 23とからなっている。ステー 21その 回転方向について実質的にリジッドであるが、内外方向には多少橈むことができる。 両サポート板 22F' 22Rの外面には、ヒンジ及び板ばねの両機能を発揮する可撓連 結板 24がその上下両端を固定されており、対向するサポート板 22F' 22Rに対して 離隔するその上下方向中間部に、ステー 21の各端が結合されている。これらのステ 一 21、両サポート板 22F' 22R、及び可撓連結板 24は、高剛性ィ匕と軽量ィ匕との両立 を企図して例えばカーボンゃケブラーなどの繊維で強化した合成樹脂材 (FRP)で 形成されている。なお、トルクアーム 5とステー 21との結合部並びにステー 21と両サ ポート板 22F' 22Rとの結合部は、例えば、ボルト Zナットを用い、ボルト孔を適宜な ピッチで複数設ける等、使用者の体格の違いに応じてその結合位置が調節可能なよ うに構成しておくと良い。

[0016] 一対のサポート板 22F' 22Rは、パッド 23が被着された対向内面間に大腿部 Tを前 後から挟み込むように設けられており、大腿部 Tの前面に当たるフロントサポート板 2 2Fの方が後面に当たるリアサポート板 22Rに比して縦長に形成され、且つリアサボ ート板 22Rの方がフロントサポート板 22Fに比して幅広に形成されている。そして図 3 に示すように、両サポート板 22F- 22Rと共に大腿部 Tの周囲にウェブベルト 25を卷 き付け、そのウェブベルト 25の端部を例えば平面ファスナを用いて止め付けることに より、大腿部装具 3が大腿部 Tに固定されるようになっている。

[0017] ここでリアサポート板 22Rは、大腿二頭筋を中心としたハムストリングスに当接し、フ ロントサポート板 22Fは、大腿四頭筋に当接する。リアサポート板 22Rは、しゃがんだ 時に膝裏と干渉しないように、その下端縁を上方へ持ち上げ、その分だけ、上下寸 法を短くしている。通常、体重を支えるのに発揮すべき筋力は、大腿四頭筋がハムス トリンダスの 1. 6倍くらい大きいので、フロントサポート板 22Fの高さ寸法をより大きくし て支持荷重を大きくすると共に、力学的な力の伝達中心を大腿骨と平行にレイアウト することにより、トルクアーム 5からの力の伝達効率を高められる。

[0018] 大腿部 Tに当接するパッド 23は、シート材を縫製してなる袋体内に合成樹脂製発 泡粒子 (ビーズ)を充填してなって 、る。

[0019] 袋体を形成するシート材としては、柔軟性に富み滑り易い材質のものが好ましぐ特 に容易に保形性が得られる点に鑑み、例えば、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレ ン等の熱可塑性合成樹脂が適して ヽる。これらの合成樹脂材を繊維化したものを、 不織布やニット地もしくは織物の形態として用いると良い。なお、発汗に対する好まし い特性を得るためには吸湿性も重要である力 このパッド 23は、一般的に着衣の上 力も装着されるので、最低限、高い通気性が得られるように形成することが好ましい。

[0020] 袋体内に充填するビーズは、合成樹脂材を発泡させながら造粒するか、あるいは 適度に発泡させた粒径の大きなものを更に粉砕して微粒ィ匕することによって容易に 得ることができる。その材質としては、例えばポリスチレン、ポリプロピレン等のような分 子に極性基がなぐ低摩擦なものが好ましい。また、これらの粒径は、過度な微粒で あると弾性変形し難いために硬く感じられて装着感が悪くなり、過度に粗粒であると 外面に凹凸が目立つようになって外観を損ねるので、一般的には 0. 2〜2mm程度 の範囲が好ましい。

[0021] 袋体内へのビーズの充填量は、過度に少ないと大腿部 Tの外表面に対する形状追 従性が損なわれるので、ビーズが袋体内で円滑に移動でき、し力も大腿部 Tにパッド 23を圧接した際に、ビーズの層が過度に薄くなる部分ができない程度の量を充填す れば良い。

[0022] ごく軽いビーズと言えども非装着時には自重で下方に落ちてしまうので、図 3に示し たように、袋体内を適宜な数の小部屋に縫製で仕切り、ビーズを適度に分散させると 良い。こうすることにより、大腿部装具 3を大腿部 Tに装着した際に、各小部屋の下方 に溜まって 、たビーズが装着者の大腿部 Tの形状に応じて上方へ移動し、且つ強 ヽ 圧力が加わる所から弱い所へ流動的に移動するので、パッド 23の全体が大腿部丁に 均等に密接することとなる。このようにして、屈身時にも両サポート板 22F' 22Rと大腿 部 Tとの接触面積が維持され、大腿部に対する圧力が分散されるため、違和感を払 拭できる。

[0023] また、大腿部 Tの運動によって大腿部装具 3と大腿部 Tとの間にズレが生じた場合、 パッド 23内のビーズ同士が互いに転がり接触しているためにパッド 23内をビーズが 自由に移動し得る。従って、大腿部 Tにパッド 23が密着していても、両サポート板 22 F' 22Rと大腿部 Tとの間の接触摩擦がビーズの転動によって減少するので、大腿部 装具 3と大腿部 Tとの間の位置ズレが許容される。これにより、大腿部 Tの特に内外転 運動および内外旋運動が阻害されずに済む。

[0024] フロントサポート板 22Fの内面には、フロントサポート枚 22Fと概ね同一形状のバッ クアップ板 26で保持されたエアパッド 27が取り付けられて!/、る。このエアパッド 27は 、軟質なエラストマ材で形成された扁平なブリスタ状をなし、図 4に示すように、その適 所にエアホース 28を介して、トルクアーム 5に取り付けられたハンドポンプ 29が接続 されている。これにより、ウェブベルト 25を締め付けた後に、ハンドポンプ 29でエアパ ッド 27にエアを送り込むことにより、大腿部装具 3が大腿部 Tにより一層しつかりと結 合される。このようにして大腿部装具 3は、可撓連結板 24及びエアパッド 27の弾性を 伴って大腿部 Tに結合されるようになって 、る。

[0025] このエアパッド 27による空気ばね作用により、例えば蹲踞姿勢 (squat)をとつた時な どの筋肉の隆起に起因した大腿部 Tの外表面の変形に対しても、エアパッド 27が容 易に大変位し得る上、必要に応じてエアを出し入れすることで締め付け力を容易に 調節することができるので、高い装着性を維持することができる。し力も簡単な構造で 大きな寸法差に追従し得るので、例えば S、 M、 Lなど、幾つかのサイズ違いを用意し ておけば、万人の体格に対応可能となる。従って、大量生産が可能となるので、従来 の使用者の体格に合わせた一品製作に比して、製造コストを大幅に低減することが できる。

図面の簡単な説明

[0026] [図 1]本発明装置の全体構成を示す斜視図である。

[図 2]大腿部装具の上面図である。

[図 3]大腿部装具の斜視図である。

圆 4]大腿部装具の前部サポートの斜視図である。

符号の説明

[0027] 1 歩行補助装置

3 大腿部装具

4 ァクチユエータ

5 トルクアーム

22F- 22R サポート板 パッド 可撓連結板 エアパッド 腿部

Claims

請求の範囲

[1] 使用者の腰部に装着された腰部装具と、前記腰部装具に取り付けられ、駆動軸を 有する動力発生装置と、前記駆動軸から半径方向に延出する補助力伝達アームと、 前記補助力伝達アームの遊端部を使用者の大腿部に固定するための大腿部装具と を有する歩行補助装置に於いて、

前記大腿部装具が、袋体に空気を充填してなるエアパッドを介して前記大腿部に 接触することを特徴とする歩行補助装置。

[2] 前記補助力伝達アームが、その回転方向について実質的にリジッドな部材カもなる ことを特徴とする請求項 1に記載の歩行補助装置。

[3] 前記大腿部装具が、前記エアパッドを前記補助力伝達アーム遊端部に支持するた めの、前記大腿部を少なくとも部分的に外囲するステーを更に有することを特徴とす る請求項 1に記載の歩行補助装置。

[4] 前記大腿部装具が、前記大腿部の前面に対向するように前記ステ一に取り付けら れたフロントサポート板と、前記大腿部の後面に対向するように前記ステ一に取り付 けられたリアサポート板とを有し、前記エアパッドが前記フロントサポート板に設けられ ていることにより、前記フロントサポート板が、前記エアパッドを介して前記大腿部の 対応部分に係合するようにされていることを特徴とする請求項 3に記載の歩行補助装 置。

[5] 前記各サポート板が前記ステ一に対して回転可能に取り付けられていることを特徴 とする請求項 4に記載の歩行補助装置。

[6] 前記各サポート板がばね継手を介して前記ステ一に取り付けられて 、ることを特徴 とする請求項 5に記載の歩行補助装置。

[7] 前記エアパッドが、袋体とその内部に充填された転動粒体とを含むパッドを介して 前記大腿部に接触することを特徴とする請求項 4に記載の歩行補助装置。

[8] 前記エアパッドに空気を補充するためのポンプを更に有することを特徴とする請求 項 4に記載の歩行補助装置。