明 細 書
タイヤサイド部の外形異常検出方法および装置
技術分野
[0001] この発明は、空気入りタイヤのサイドウォール部、即ちタイヤサイド部における外形 異常を検出する検出方法および装置に関する。
背景技術
[0002] 従来のタイヤサイド部の外形異常検出方法 ·装置としては、例えば以下の特許文献 1に記載されて 、るようなものが知られて!/、る。
特許文献 1 :特開昭 64— 6715号公報
[0003] このものは、空気入りタイヤのサイドウォール部の凹凸を周方向に沿って測定する 工程と、前記測定結果の波形から意図的な凹凸、例えば文字、ラインに基づく影響 を除去する工程と、前記除去後の波形がいずれかの部位で規格値を超えているとき 、サイドウォール部が外形異常であると判定する工程とを備えたものである。このよう に従来のタイヤサイド部の外形異常検出方法 ·装置は、サイドウォール部に周上 1箇 所または複数箇所で不規則に生じた異常な凹凸を検出し、このような異常な凹凸を 有する空気入りタイヤを外形異常として排除するものである。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] ここで、空気入りタイヤを構成するタイヤ構成部材の折り返しには、従来、ブラダー を用いていたが、近年、機械的手法によってタイヤ構成部材の折り返しを行うことが 提案された。そして、このような機械的手法によってタイヤ構成部材の折り返しを行う と、意図的な凹凸が設けられていないサイドウォール部の平滑な部分に周方向に微 小凹凸が繰り返し形成されてしまうのである。ところが、近年、車両の高級化に伴って 空気入りタイヤの外観不良に対するユーザーの要求が厳しくなつてきたため、このよ うな繰り返しの微小凹凸に対してもクレームが寄せられるようになつてきた。
[0005] この発明は、前述のようなタイヤサイド部における繰り返しの微小凹凸、即ち外形異 常を検出することができるタイヤサイド部の外形異常検出方法および装置を提供する
ことを目的とする。
課題を解決するための手段
[0006] このような目的は、空気入りタイヤのサイドウォール部の凹凸を測定手段により周方 向に沿って測定する工程と、前記測定結果の波形を基に次数解析手段により高次の 次数解析を行って、該次数における凹凸の値を求める工程と、予め設定された許容 値と前記求めた凹凸の値とを比較し、凹凸の値が許容値を超えているとき、判定手 段によりサイドウォール部が外形異常であると判定する工程とを備えることにより、達 成することができる。
発明の効果
[0007] この発明においては、タイヤサイド部の凹凸を周方向に沿って測定した波形を基に 高次の次数解析を行って、該次数における凹凸の値を求めるとともに、該凹凸の値 が許容値を超えているとき、外形異常であると判定するようにしたので、該タイヤサイ ド部に許容値を超えたある次数の微小凹凸が周方向に繰り返し形成されている空気 入りタイヤは不良タイヤとして容易かつ確実に排除することができる。
[0008] また、請求項 2に記載のように構成すれば、構造簡単でありながら高精度の次数解 析を行うことができる。
さらに、前述した製造上の理由から、請求項 3、 4に記載のような次数範囲内で繰り 返しの微小凹凸が発生し易ぐしかも、この次数範囲内の微小凹凸は光の加減で目 立ち易 、ため、この次数範囲内で次数解析を行うようにすることが好ま 、。
図面の簡単な説明
[0009] [図 1]この発明の実施例を示す一部がブロックで示された正面断面図である。
[図 2]タイヤが 1回転したときのサイドウォール部における凹凸の測定波形を示す波形 図である。
符号の説明
[0010] 20 測定手段
24 次数解析手段
30 判定手段
T 空気入りタイヤ
S サイドウォール部
発明を実施するための最良の形態
[0011] 以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図 1、 2において、 11はタイヤ検査装置であり、このタイヤ検査装置 11は上下方向に 延びる回転可能な上部スピンドル 12を有する。この上部スピンドル 12の下端には上 側リム 13が固定され、この上側リム 13には検査が行われる横置き状態の空気入りタイ ャ Τの一側(上側)ビード部 Βが着座されている。また、前記タイヤ検査装置 11は上部 スピンドル 12の直下に該上部スピンドル 12と同軸である下部スピンドル 14を有し、この 下部スピンドル 14の上端には前記空気入りタイヤ Τの他側(下側)ビード部 Βが着座さ れて 、る下側リム 15が固定されて!、る。
[0012] また、この下部スピンドル 14には図示していないシリンダのピストンロッドが連結され るとともに、モータ 17の出力軸が連結され、この結果、前記シリンダのピストンロッドが 突出したり引っ込んだりすると、下部スピンドル 14、下側リム 15、モータ 17は一体とな つて昇降し、一方、モータ 17が作動すると、下、上部スピンドル 14、 12、下、上側リム 1 5、 13および空気入りタイヤ Τは一体となって垂直軸回りに回転する。
[0013] 20は前記空気入りタイヤ Τの一側(上側)サイドウォール部 Sの直上に設置された測 定手段としての非接触式レーザー変位計であり、このレーザー変位計 20は空気入り タイヤ Τの一側サイドウォール部 Sの外表面に対し直線状のレーザー光を照射する一 方、該レーザー光の一側サイドウォール部 Sでの反射光が入射される。このとき、前 記空気入りタイヤ Τがモータ 17の作動によりレーザー変位計 20に対して相対的に回 転して 、ると、レーザー変位計 20はレーザー光の反射光を基に空気入りタイヤ Τの一 側サイドウォール部 S外表面における凹凸を周方向に沿って測定する。なお、図 2に は空気入りタイヤ Τが 1回転したときの、一側サイドウォール部 Sの外表面における凹 凸(振幅)の波形が示されて 、る。
[0014] 23は前記レーザー変位計 20力 の測定信号 (測定結果)を増幅するアンプであり、 このアンプ 23により増幅された測定信号は、例えば FFT分析計 (高速フーリエ変換器 )を含む次数解析手段 24に出力される。 26は前記モータ 17の出力軸に取付けられた
エンコーダであり、このエンコーダ 26は前記モータ 17の出力軸の回転を検出し、その 検出結果を回転信号として前記次数解析手段 24に出力する。
[0015] そして、前述のように次数解析手段 24に測定信号、回転信号が入力されると、該次 数解析手段 24は、測定結果の波形を空気入りタイヤ Tの 1回転分だけ切り出すととも に、該切り出した測定結果の波形に対しフーリエ変換を施すことで、測定結果の波形 を基に高次の次数解析を行い、該次数における微小凹凸の値を求める。このように 測定結果の波形に対しフーリエ変換を施すことで次数解析を行うようにすれば、構造 簡単でありながら高精度の次数解析を行うことができる。ここで、高次とは、空気入り タイヤ Tが 1回転したとき、 2回以上周期的に変動することをいい、例えば 10次とは 10 回周期的に変動すること、 20次とは 20回周期的に変動することである。
[0016] そして、空気入りタイヤ Tが乗用車用タイヤであるときには、 40± 5次の内の少なくと も 1つの次数にぉ 、て前述の次数解析を行うようにすることが好ま 、。その理由は、 このような次数範囲内にお 、て前述した製造上の理由力 サイドウォール部 Sに繰り 返しの微小凹凸が発生し易ぐしかも、この次数範囲内の微小凹凸は光の加減で目 立ち易いためである。
[0017] 一方、前記空気入りタイヤ Tがトラック 'バス用タイヤであるとき、 60± 5次の内の少 なくとも 1つの次数において次数解析を行うようにすることが好ましい。その理由は、こ のような次数範囲内にお 、て前述した製造上の理由力 サイドウォール部 Sに繰り返 しの微小凹凸が発生し易ぐしかも、この次数範囲内の微小凹凸は光の加減で目立 ち易いためである。
[0018] そして、次数解析手段 24により次数解析された各次数の微小凹凸の値は、該次数 解析手段 24力 判定手段 30に出力される。 31は予め設定された各次数における許 容値、例えば乗用車用、トラック 'バス用タイヤではいずれの次数でも 0.1mm,が記 憶された設定手段であり、この設定手段 31から前記判定手段 30に適宜必要な次数 の許容値が出力される。そして、前述のように判定手段 30に各次数の微小凹凸の値 が入力されると、該判定手段 30は前記設定手段 31から入力された対応する次数の許 容値と前記微小凹凸の値とを比較し、少なくとも 1つの次数において微小凹凸の値が 許容値を超えて 、ると、サイドウォール部 Sが外形異常であると判定する。
[0019] なお、この実施例においては、各次数の微小凹凸の値を求め、これらの値を基に 外形異常を検出するようにしたが、前述したレーザー変位計 20による測定結果を基 にサイドウォール部 Sにおける不規則な異常凹凸あるいは異常なラテラルランナウト( 振れ)等の外形異常を同時に検出するようにしてもよ 、。このようにすれば 1台の既存 設備で複数種類の異常検出を行うことができる。
[0020] 次に、前記実施例の作用について説明する。
図示して!/、な 、搬送手段、例えばコンベアによって横置き状態の乗用車用空気入 りタイヤ Tが下側リム 15の直上まで搬送されてくると、シリンダのピストンロッドが突出し 、下部スピンドル 14は下側リム 15に空気入りタイヤ Tの他側(下側)ビード部 Bが着座 するまで上昇する。その後もシリンダのピストンロッドが突出するため、下部スピンドル 14、下側リム 15、空気入りタイヤ Tは一体となって上昇する力 このピストンロッドの突 出は、前記空気入りタイヤ Tの一側(上側)ビード部 Bが上側リム 13に着座したとき、停 止する。このようにして空気入りタイヤ Tはタイヤ検査装置 11に装着される。
[0021] 次に、モータ 17を作動して下、上部スピンドル 14、 12、下、上側リム 15、 13および空 気入りタイヤ Tを一体回転させるとともに、レーザー変位計 20によって一側サイドゥォ ール部 Sの外表面における凹凸を周方向に沿って測定する。このとき、レーザー変位 計 20から測定信号 (測定結果)がアンプ 23により増幅された後、次数解析手段 24に 出力され、一方、エンコーダ 26からの回転信号が前記次数解析手段 24に出力され、 これにより、次数解析手段 24は、測定結果の波形を空気入りタイヤ Tの 1回転分だけ 切り出すとともに、該切り出した測定結果の波形に対しフーリエ変換を施すことで、測 定結果の波形を基に高次、ここでは 40 ± 5次の全次数で次数解析を行い、各次数 における微小凹凸の値を求める。
[0022] このようにして求められた各次数における微小凹凸の値は次数解析手段 24力 判 定手段 30に出力されるが、このとき、判定手段 30には設定手段 31から各次数におけ る許容値( 0.1mm)が入力されるため、判定手段 30は前記微小凹凸の値と許容値と を各次数において比較し、少なくとも 1つの次数において微小凹凸の値が許容値を 超えていると、サイドウォール部 Sが外形異常であると判定する。このようにしてサイド ウォール部 Sに許容値を超えたある次数の微小凹凸が周方向に繰り返し形成されて
ヽる外形異常の空気入りタイヤ Tが発見されると、図示して ヽな ヽ表示器に表示され るとともに、該空気入タイヤ Τが不良タイヤとして容易かつ確実にライン力 排除され る。
[0023] なお、前述の実施例においては、空気入りタイヤ Τを回転させる一方、レーザー変 位計 20を静止させることで、両者を相対回転させ、これにより、サイドウォール部 Sの 凹凸
をレーザー変位計 20により周方向に沿って測定するようにしたが、この発明にお 、て は、空気入りタイヤを静止させる一方、測定手段を空気入りタイヤの軸線を中心とし て旋回させることで、両者を相対回転させ、これにより、サイドウォール部の凹凸を該 測定手段により周方向に沿って測定するようにしてもょ 、。
[0024] また、前述の実施例においては、測定手段として直線状のレーザー光を照射する ことができるレーザー変位計 20を用い、サイドウォール部 Sにおける単一円上での凹 凸を測定するようにしたが、この発明においては、扇状に拡がったカーテン(平面状) レーザー光を照射する二次元レーザー変位計を用いるようにしてもょ 、。この場合に は、サイドウォール部 Sにおける径の異なる複数の同心円上での凹凸を測定すること ができる。
[0025] さらに、前述の実施例においては、次数解析手段 24として FFT分析計を用いたが 、この発明においては、次数解析手段として、解析を行う次数毎に設けられたバンド パスフィルターを用いるようにしてもよい。また、前述の実施例においては、一側サイ ドウオール部 Sの凹凸のみをレーザー変位計 20によって測定するようにした力 この 発明においては、他側サイドウォール部 Sの凹凸のみを測定手段によって測定する ようにしてもよぐあるいは、一側、他側サイドウォール部 Sの凹凸を一対の測定手段 によって同時に測定するようにしてもよ!、。
[0026] また、前述の実施例においては、複数の次数 (40 ± 5次の全次数)において次数 解析を行い、該次数解析結果を基に外形異常を判定するようにしたが、この発明に おいては、最も頻繁に異常な微小凹凸が発生する単一の次数において次数解析し 、該次数解析結果を基に外形異常を判定するようにしてもよい。
[0027] なお、タイヤのサイドウォールに発生する高次の周期的凹凸は、機械的手法による
タイヤ構成部材の折り返し以外の原因によっても発生する可能性がある。例えば、タ ィャの一つの成型方法として、タイヤのカーカス部材ゃインナーライナ部材を、これら の部材の、製品タイヤ横断面における部材のペリフェリ長をタイヤ幅方向 1辺とし、 1ィ ンチの π (円周率)倍の長さ(+重ね代)をタイヤ周方向 1辺とする短冊状部材を、タイ ャ成型ドラム上で、そのタイヤの呼び径 (インチ)に相当する枚数分だけタイヤ周方向 に並べて形成する方法が知られており、この方法にあっては、タイヤ周方向に隣接す る短冊状部材同士のつなぎ目が周期的に現れ、これがタイヤ周方向の、タイヤ呼び 径 (インチ)に相当する次数の凹凸成分を生成する可能性がある。この場合、タイヤ 呼び径 (インチ)の次数でフーリエ解析することにより、この次数の凹凸成分を容易に 検査することができる。
[0028] また、機械的手法によるタイヤ構成部材の折り返しによって発生する高次成分の凹 凸の次数は、タイヤ周方向に配置された折り返し羽根の枚数に依存することになるの で、この場合も、その枚数に相当する次数でフーリエ解析を行えば、その次数の凹凸 成分を容易に検出することができる。
[0029] さらには、上記に記した個々の要因を組み合わせた次数の高次成分が支配的とな る可能性もあり、その場合、個々の要因に対応する次数の公倍数 (それぞれの要因 のピークのすべてが凹凸として現れる場合)として現れる可能性もあり、また、公約数 (それぞれの要因のピークが重なった場合のみ凹凸として現れる場合)として現れる 可能性もある。
産業上の利用可能性
[0030] この発明は、空気入りタイヤのサイドウォール部における外形異常を検出する産業 分野に適用できる。