明 細 書
ハニカム構造体成形用口金の製造方法及びハニカム構造体成形用口金 技術分野
[0001] 本発明は、ハ-カム構造体成形用口金の製造方法及びハ-カム構造体成形用口 金に関する。更に詳細には、高度な成形性を実現するとともに、耐摩耗性に優れた ハ-カム構造体成形用口金の製造方法及びハ-カム構造体成形用口金に関する。 背景技術
[0002] セラミック質のハ-カム構造体の製造方法としては、従来から、成形原料 (坏土)を 導入する裏孔と、この裏孔に連通する格子状等のスリットとが形成された口金基体を 備えたハニカム構造体成形用口金を用いて押出成形する方法が広く行われている。
[0003] この口金は、通常、口金基体の一方の面に、ハ-カム構造体の隔壁厚さに対応す る幅のスリットが格子状等に設けられており、その反対側の面 (他方の面)に、スリット と連通する裏孔が設けられている。そして、この裏孔は、通常、格子状等のスリットが 交差する位置に対応して設けられ、両者は、口金基体内部で連通している。従って、 裏孔から導入されたセラミック原料等の成形原料は、比較的内径の大きな裏孔から、 幅の狭いスリットへと移行して、このスリットの開口部力 ハ-カム構造の成形体として 押出される。
[0004] 上記口金基体の製造方法の一例は、金属ブロックの一面で複数の裏穴をドリルカロ ェなどにより形成し、金属ブロックの他面で裏穴に連通するスリットを研削加工や放 電力卩ェなどにより形成することが行われている。尚、セル断面が正方形のハ-カム構 造体の場合は、正方向の輪郭に沿ってスリットを設けることすなわちスリットを互いに 直角に交差させることで、セル断面が六角形の場合は六角形の輪郭に沿ってスリット を形成している。そして、スリットの交差部が裏穴に対応するよう形成されている。
[0005] このようなハ-カム構造体成形用口金を構成する口金基体としては、例えば、ステ ンレス合金や超硬合金等の一種類の合金から構成された板状の部材(口金前駆体) や、異なる二種類の板状の部材を接合して形成された板状の部材(口金前駆体)が 用いられている(例えば、特許文献 1、 2を参照)。
[0006] まず、ステンレス等を使用した口金基体は、その耐摩耗性が低いために、連続した 押出成形によりスリットが摩耗し、押出成形するハニカム成形体の形状が徐々に変化 してしまうという問題があり、これを防止するため、通常、上記口金基体の表面に、コ 一ティング層(例えば、めっき層(電解めつき)やチタン系膜 (CVD又は PVD) )が形 成されたものが使用されている。
[0007] 上記口金基体は、コーティング層が形成されることにより、スリットの交点部に適度な 曲面部 (R形状部)が形成され、且つ押出成形時にコーティング層が徐々に摩耗する ことにより、押出成形時におけるハニカム成形体の所定形状を保持することができる ものである。
[0008] コーティング層が規定以上に摩耗した場合、新しい口金基体と交換し、コーティン グ層が摩耗した口金基体は、残存のコーティング層を完全に除去した上で、口金基 体の表面にコーティング層を形成し、パターン調整を行うことにより、口金基体の再生 が行われている。しかしながら、上記口金基体の再生には、非常に手間と時間がか かるだけでなぐ再生回数にも限度があり、コスト高であるという問題があった。
[0009] 一方、超硬合金を使用した口金基体は、耐摩耗性に優れていることから、スリットの 摩耗を大幅に軽減することはできるため、一度作製すれば、メンテナンスをほとんど することなく長期に渡り使用することができる。
[0010] しカゝしながら、上記口金基体のスリットを研削加工や放電加工で形成した場合、スリ ットの交差部(交点部)に適度な曲面部 (R形状部)がなぐ図 12 (b)に示すように、ス リットの交点部 Dの角が鋭 、角隅部 30があるため、押出成形時における成形性 (キレ 等の発生)や得られたハニカム成形体の特性 (ァイソスタティック強度)が低下すると いう問題があった。
[0011] また、超硬合金は、脆性材料であるため、押出成形時のスリットの交点部に角隅部 があると、応力集中により口金が割れてしまう可能性もあった。また、ステンレス等を 使用した口金基体のようにコーティング層を形成した場合、主に電解めつきで行われ るが、超硬合金を使用した場合は、口金基体がめっき液や洗浄工程に使用される酸 やアルカリで劣化し、超硬合金の表面に脆化層が形成されるため、耐摩耗性が劣化 し、超硬化の効果が得られな力つた。たとえ他の手法で現実ィ匕されたとしても非常に
手間と時間がかかり、高コストとなるため、超硬合金を使用した口金基体を使用する 利点が得られな 、と 、う問題があった。
[0012] 以上の問題点を解消するため、例えば、電解加工にて口金基体の個々のスリット角 隅部に R部を形成する手法がある(例えば、特許文献 3参照)。しかし、電解加工機は 加工液の種類によらず世の中一般の金型メーカーには、放電力卩工機ほど普及してお らず、広く適用することは、困難であることや、スリット部が超硬合金の場合には炭化 タングステンや結合材である Coが含まれており、特に炭化タングステンはイオンィ匕し にくいために、電解カ卩ェ時に切り粉として電極とスリットの間に蓄積し、加工不能とな ることが容易に考えられる。また、電解加工液としては、強アルカリや強酸を使用する ため、超硬部の劣化や、加工機の取り扱いが危険であり、設備安全対策などで、非 常に高価であることから、広く適用することは困難である。一方、放電カ卩ェでは、加工 液が油類を使え、取り扱いがし易ぐ超硬合金の腐食も最小限に抑えられるため、上 記放電電極 (放電加工用リブ電極)の個々のリブに適度な曲面部(逆 R部や丸)を形 成し、上記超硬合金を使用した口金基体の交点部に転写することが検討されている 力 上記放電電極 (放電加工用リブ電極)のリブが多数 (例えば、 2万箇所)であること に加え、電極も電解加工と異なり、放電カ卩ェ時のジュール熱により消耗していくことか ら、非現実的であった。
特許文献 1 :特開 2000— 326318号公報
特許文献 2:特開 2003 - 285308号公報
特許文献 3:特許第 3080563号公報
発明の開示
[0013] 本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、低コストでかつ高度な成形 性を実現するとともに、耐摩耗性に優れたハ-カム構造体成形用口金の製造方法及 びハニカム構造体成形用口金を提供するものである。
[0014] 上述の目的を達成するため、本発明は、以下のハ-カム構造体成形用口金の製造 方法及びハニカム構造体成形用口金を提供するものである。
[0015] [1] 二つの面を有し、一方の面にハ-カム形状のスリットが形成されるとともに、他 方の面に前記スリットと連通し、成形原料を導入するための裏孔が形成された口金基
体を備え、少なくともスリット部が超硬合金で形成されたハ-カム構造体成形用口金 の製造方法であって、前記スリットを研削加工または放電加工により形成した後、スリ ット交差部近傍に断面角型形状の放電電極を配置し、スリット上面部よりスリット深さ 方向に放電加工を行う、ハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0016] [2] 前記放電電極が、スリット交差部の対角線長さより、一辺の長さが同じ力または 大きな略四角形状の電極であり、その放電電極の対角線方向とスリット交差部の対 角線方向を略直角になるように前記放電電極を配置し、スリット上面部よりスリット深さ 方向に放電加工を行う、前記 [1]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0017] [3] 放電加工のパルス電流値、印加電圧、印加時間、放電カ卩ェ回数のうち、少なく とも一つの設定条件を選定することにより、スリットの角隅部を R形状に形成する、前 記 [1]又は [2]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0018] [4] 前記スリットの角隅部の曲率半径力 0. 03〜0. 7mmである前記 [1]〜[3]の いずれかに記載のハ-カム構造体成形用口金の製造方法。
[0019] [5] 前記口金の少なくともスリット部が超硬合金であり、少なくとも炭化タングステン を含む炭化タングステン基超硬合金である前記 [1]〜 [4]の 、ずれかに記載のハ- カム構造体成形用口金の製造方法。
[0020] [6] スリット上面部よりスリット深さ方向に放電加工を行う際に、前記放電加工の第 1 の放電加工を行って、前記スリットの角隅部を除去した後、第 2の放電加工を少なくと も 1回以上行うことにより、前記スリットの角隅部を R形状化する前記 [1]〜 [5]の 、ず れかに記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0021] [7] 第 1の放電加工力 放電加工に未使用の放電電極を用いる [6]に記載のハニ カム構造体成形用口金の製造方法。
[0022] [8] 第 2の放電加工力 少なくとも第 1の放電加工後の放電電極を用いる前記 [6] 又は [7]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0023] [9] 前記第 1の放電加工後の放電電極が、前記スリット交差部における放電加工後 の外観が転写された形状であり、且つ転写された部分が面取りされている前記 [6]〜 [8]の 、ずれかに記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
[0024] [10] 前記スリット交差部における放電加工後の外観が転写された形状であり、且
つ転写された部分が面取りされている放電電極を、前記スリット交差部に寄せながら
、放電加工を行う前記 [6]〜 [9]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金の 製造方法。
[0025] [11] 前記放電電極を、その断面が前記口金のスリット形成範囲の断面よりも小さく 形成し、前記放電電極が、スリットの交差方向と 45° 方向に 2分割または 4分割され て構成されて 、る前記 [ 1]〜 [ 10]の 、ずれかに記載のハ-カム構造体成形用口金 の製造方法。
[0026] [12] 前記 [1]〜 [11]のいずれかに記載の製造方法で得られたノ、二カム構造体成 形用口金。
[0027] [13] スリット幅が 0. 05mm〜0. 5mmである前記 [12]に記載のハ-カム構造体成 形用口金。
[0028] 本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法は、低コストでかつ高度な成形性 を実現するとともに、それにより得られたハニカム構造体成形用口金は、耐摩耗性に 優れているため、メンテナンスをほとんどすることなく長期に渡り使用することができる 図面の簡単な説明
[0029] [図 1]本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法の一例を示すものであり、最 初の放電加工 (第 1の放電加工)におけるスリット交点部の状態を示す模式的な正面 図である。
[図 2]本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法の一例を示すものであり、最 初の放電加工 (第 1の放電加工)後の放電加工 (第 2の放電加工)におけるスリット交 点部の状態を示す模式的な正面図である。
[図 3]放電電極によるスリット交点部 (スリットブロック)の放電加工の状態を説明する説 明図である。
[図 4]本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法の他の例を示すものであり、 最初の放電加工 (第 1の放電加工)後の放電加工 (第 2の放電加工)におけるスリット 交点部の状態を示す模式的な正面図である。
[図 5]本発明のハ-カム構造体成形用口金の一例を示すものであり、図 5 (a)は模式
的な正面図、図 5 (b)は図 5 (a)の A部の模式的な拡大図である。
[図 6]四角セル対応の口金のスリット幅と放電電極の幅との関係を示す説明図である
[図 7]六角セル対応の口金のスリット幅と放電電極の幅との関係を示す説明図である 圆 8]分割された放電電極の例を示す概略図である。
圆 9]本発明のハニカム構造体成形用口金の模式的な拡大断面図である。
[図 10]ハニカム構造体成形用口金によって押出成形されたハニカム構造体を示す概 略斜視図である。
圆 11]放電電極 (放電加工用リブ電極)の一例を示す概略斜視図である。
[図 12]従来のハ-カム構造体成形用口金の一例を示すものであり、図 9 (a)は模式 的な正面図、図 9 (b)は図 9 (a)の C部の模式的な拡大図である。
[図 13]本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法で得られた放電加工(1回) におけるスリット交点部の表面形状を示す写真である(実施例 1)。
[図 14]本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法で得られた放電加工 (20回
)におけるスリット交点部の表面形状を示す写真である(実施例 2)。
[図 15]本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法で得られた放電加工(100 回)におけるスリット交点部の表面形状を示す写真である(実施例 3)。
[図 16]本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法で得られた放電加工 (500 回)におけるスリット交点部の表面形状を示す写真である(実施例 4)。
[図 17]本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法で得られた放電加工 (900 回)におけるスリット交点部の表面形状を示す写真である(実施例 5)。
[図 18]従来のハニカム構造体成形用口金の製造方法で得られた放電加工(1回)に おけるスリット交点部の表面形状を示す写真である(比較例 1)。
圆 19]実施例 6で用いる放電電極のリブ先端の表面形状を示す写真である。
[図 20]実施例 6における放電加工前のスリットの交点部 (スリットブロック)の表面形状
(C面形状)を示す写真である。
[図 21]実施例 6における放電加工後のスリットの交点部 (スリットブロック)の表面形状
(R形状化)を示す写真である。
[図 22]実施例にぉ 、て、パルス電流値と放電繰り返し数と得られたスリットの角隅部 の R寸法との関係を示すグラフである。
符号の説明
[0030] 1:ハニカム構造体成形用口金、 2:口金基体、 3:第一部材 (板状部材)、 4:第二部 材 (板状部材)、 5 :スリット、 6 :裏孔、 7 :面 (一方の面)、 8 :面 (他方の面)、 9 :接合面 、 12 :ハ-カム構造体、 13 :隔壁、 14 :セル、 17a〜17d:スリットブロック、 21 :ハ-カ ム構造体成形用口金、 22 :口金前駆体、 23 :第一部材、 24 :第二部材、 25, 25a :ス リット、 26 :裏孔、 27 :面(一方の面)、 28 :面 (他方の面)、 30 :エッジ部(ピン力ド)、 3 2:角取部 (C面形状部) , 33 :面取部 (R形状部)、 40:電極 (放電加工前)、 42:電極 (放電加工後)、 50 :放電電極 (放電加工用リブ電極)、 52 :基部、 54 :リブ (リブ電極) 、 60 :エッジ部への集中放電、 70 :放電電極。
発明を実施するための最良の形態
[0031] 以下、本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法とそれにより得られるハ- カム構造体成形用口金を具体的な実施形態に基づき詳細に説明するが、本発明は 、これに限定されて解釈されるものではなぐ本発明の範囲を逸脱しない限りにおい て、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。
[0032] 本発明は、二つの面を有し、一方の面にハ-カム形状のスリットが形成されるととも に、他方の面にスリットと連通し、成形原料を導入するための裏孔が形成された口金 基体を備え、少なくともスリット面が超硬合金で形成されたハ-カム構造体成形用口 金の製造方法であって、スリットを研削加工または放電加工により形成した後、スリツ ト交差部近傍に断面角型形状の放電電極を配置し、スリット上面部よりスリット深さ方 向に放電加工を行うことにより、スリット交差部の角隅部を R形状に除去するものであ る。
なお、上記スリットは、研削加工または放電カ卩ェによって、スリットにより包囲された、 互いに独立したセル形状を有するように形成されて!、る。
[0033] 本発明に係るハ-カム構造体成形用口金の製造方法の主な特徴は、例えば、図 1 に示すように、スリット 5を研削加工した後、放電加工で角隅部 30の加工を行う際、放
電力卩ェのパルス電流値を高く設定することにより、スリット 5の交差部 (スリットブロック 1 7a〜17d参照)の角隅部 30を、 R形状に除去することにある。一般的に、放電加工 位置は、電圧が同じであれば、距離により決定されるため、図 3のように、電極 40から 一定距離への放電 60により、スリットブロック 17a〜17dは C面化する力 C面のエツ ジ部は電位傾度が高いため、あり一定以上の電流値の投入で、放電力 面エッジ部 へ集中し (集中放電 60)、ー且加工された場所にも飛ぶため、徐々に R形状化されて いき、加工面を R形状化することができる。尚、パルス電流値や印加電圧を制御する ことは、 R形状や R寸法を制御することにもなる。
[0034] これにより、本発明に係るハ-カム構造体成形用口金の製造方法は、図 1に示すよ うに、スリット 5の交差部(交点部) Dの角隅部 30 (図 12参照)が取れ、スリット 5の交差 部 Dに適度な曲面部(C面形状部:図 5 (b)の 33、又は R形状部:図 1の 32を参照)を 精度良く形成することができるため、押出成形時における成形性 (キレ等の発生)や 得られたハニカム成形体の特性 (ァイソスタティック強度)が低下すると ヽぅ問題を解 消することができる。
[0035] 本発明に係るハ-カム構造体成形用口金の製造方法にお!、て、放電加工のパル ス電流値は、好ましくは 2〜20A、より好ましくは、 2〜15A、更に好ましくは、 2〜10 Aである。パルス電流値が 2A未満である場合、スリットの交点部を十分 R形状ィ匕する ことが困難である。一方、パルス電流値が 20Aを超過する場合、放電電極のリブが破 損する可能性が高くなつてしまう。尚、従来のハニカム構造体成形用口金の製造方 法においては、放電力卩ェのパルス電流値力 0. 5〜: LA程度であり、図 18に示すよう に R形状ィ匕して ヽなかった。
[0036] また、本発明に係るハ-カム構造体成形用口金の製造方法において、スリットの交 点部の曲率半径は、リブ厚さが 50 μ mで 1平方インチ当たりのセル数が 900個の担 体では、好ましくは 0. 03mm〜0. 15mm,より好ましくは 0. 03mm〜0. 12mm,更 に好ましくは 0. 03〜0. 1mmである。またリブ厚さが 500 mで 1平方インチ当たり のセル数が 100個の担体では、好ましくは 0. 03mm〜l. 2mm、より好ましくは 0. 0 3mm〜: Lmm、更に好ましくは 0. 03〜0. 8mmである。これは、曲率半径が 0. 03m m未満となると、ハニカム構造体の、特に外壁付近で、リブ切れが発生した場合、応
力が集中し易ぐァイソスタティック強度が低下する。一方、リブ厚さが 50 /z mで 1平 方インチ当たりのセル数が 900個の担体において、曲率半径が 0. 15mmを超過す る場合や、リブ厚さが 500 μ mで 1平方インチ当たりのセル数が 100個の担体におい て曲率半径が 1. 2mmを超過する場合には、交点部に坏土が集中し過ぎて、特に、 裏穴部が 1ケ飛びに配列された口金だと、交差部の寸法が大き過ぎて、坏土の供給 ノランスが崩れ、リブ部が成形の際に大きく変形し、ァイソスタティック強度低下の原 因となる。また、気孔率が大きな担体では、リブ部の坏土圧着が十分されず、押出成 形時にリブのキレが発生するなど、問題を解消するまでの効果が得ることができな 、 力 である。
[0037] また、本発明で用いる放電電極 40としては、図 6に示すような四角セル対応の口金 に関しては、スリット交差部 Dの対角線長さ xlより、その一辺の長さ x2が同じ力または 大きな略四角形状の電極であり、その放電電極 40の対角線方向とスリット交差部 D の対角線方向を略直角になるように配置することが好ましい。ここで、スリット交差部 D の対角線長さ xlと、放電電極 40の一辺の長さ x2の関係としては、 l≤x2Zxl≤3、 であることが好ましぐ 1. 414≤x2/xl≤3,であることがより好ましい。 x2/xl = l . 414で放電電極 40とスリット交差部 Dが接することになり、放電電極 40はその断面 がそれより大き 、ことがその寿命の観点から望ま 、。
[0038] 図 7は、六角セル対応の口金と放電電極 40の関係について示しており、用いる放 電電極 40の断面は略正三角形状である。ここで、スリット交差部 Dの対角線長さ xlと 、放電電極 40の一辺の長さ x2の関係としては、 l≤x2Zxl≤3、であることが好まし く、 2≤x2Zxl≤3、であることがより好ましい。この場合には、 x2Zxl = 2で放電電 極 40とスリット交差部 Dが接することになり、放電電極 40はその断面がそれより大き V、ことがその寿命の観点から望ま 、。
[0039] 次に、本発明に係るハ-カム構造体成形用口金の製造方法においては、スリット上 面部よりスリット深さ方向に放電加工を行う際に、第 1の放電加工を行って、スリットの 角隅部を除去した後、第 2の放電加工を少なくとも 1回以上行うことにより、スリットの 角隅部を R形状ィ匕することが好まし 、。
このように、第 1の放電加工を行って、スリットの角隅部を除去した後、第 2の放電加
ェを、少なくとも 1回以上行うことにより、スリット交差部の R加工をより高精度に行うこ とがでさる。
[0040] 上記したハ-カム構造体成形用口金の製造方法においては、スリットを研削加工 又は放電加工した後、放電加工で仕上げ加工を行なう際、まず第 1の放電加工を行 い(図 1参照)、スリット 5の交点部の角隅部 30を除去した後、第 2の放電加工を、多 数回を行うことにより、より高精度にスリットの交点部の面取りを行う(図 2参照)ことに ある。ここで、放電力卩ェのノ ルス電流値、印加電圧、印加時間、放電カ卩ェ回数のうち 、少なくとも一つの設定条件を選定することにより、 R形状や R寸法を制御することが できる。
[0041] したがって、上記の製造方法によれば、先に説明した製造方法における効果に加 え、繰り返し放電力卩ェを行うことによって、電気条件 (例えばパルス電流値)を先に説 明した製造方法よりも低減させることができるので、放電電極のリブが破損する可能 性を低減させつつ、繰り返し放電加工を行うことで残留ノ リなどを除去でき、より高精 度に角隅部の R加工を行うことができる、更に図 5 (b)に示すように、スリットの交点部 Bの面取りを確実に、行うことができるため、押出成形時に発生する応力集中により口 金が割れてしまうことも低減することができる。また、放電加工初期から放電加工の終 了時まで加工屑の排出性も良好となる。
[0042] 上記の製造方法にお!、て、第 1および第 2の放電力卩ェのパルス電流値は、好ましく は 1A〜20A、より好ましくは 1〜15A、更に好ましくは 1〜10Aである。
[0043] また、この製造方法においては、第 2の放電加工を、少なくとも 1回以上、好ましくは 20〜: LOOO回、より好まし <は 200〜800回、更に好まし <は 500〜700回行う。これ は、回数が 20回未満である場合、スリットの角隅部に適度な曲面部 (R形状部)にな るように、面取りすることが比較的困難であるからである。一方、 1000回を超過する 場合、加工時間が長くなり、生産性の向上の妨げとなる。
[0044] 更に、この製造方法においては、また、本発明に係るハ-カム構造体成形用口金 の製造方法において、スリットの交点部の曲率半径は、リブ厚さが 50 /z mで 1平方ィ ンチ当たりのセル数が 900個の担体では、好ましくは 0. 03mm〜0. 15mm,より好 ましく ίま 0. 03mm〜0. 12mm,更に好ましく ίま 0. 03〜0. 1mmである。またリブ厚
さが 500 /z mで 1平方インチ当たりのセル数が 100個の担体では、好ましくは 0. 03m m〜l. 2mm、より好ましくは 0. 03mm〜: Lmm、更に好ましくは 0. 03〜0. 8mmで ある。これは、曲率半径が 0. 03mm未満となると、ハ-カム構造体の、特に外壁付近 で、リブ切れが発生した場合、応力が集中し易ぐァイソスタティック強度が低下する。 一方、リブ厚さが 50 μ mで 1平方インチ当たりのセル数が 900個の担体で曲率半径 が 0. 15mmを超過する場合や、リブ厚さが 500 mで 1平方インチ当たりのセル数 力 S100個の担体で曲率半径が 1. 2mmを超過する場合には、交点部に坏土が集中 し過ぎて、特に、裏穴部カ^ケ飛びに配列された口金だと、交差部の寸法が大き過ぎ て、坏土の供給バランスが崩れ、リブ部が成形の際に大きく変形し、ァイソスタティック 強度低下の原因となる。また、気孔率が大きな担体だと、リブ部の坏土圧着が十分さ れず、押出成形時にリブのキレが発生するなど、問題を解消するまでの効果が得るこ とができないからである。
[0045] 尚、本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法においては、最初の放電カロ ェ (第 1の放電力卩ェ)には、図 6や図 7に示された形状の放電加工前の電極 40として 図 11に示すような構成の放電力卩ェ用リブ電極を用いることが好ましい。これは、電極 が四角形や三角形であり直線の組み合わせ加工で製造可能なるため、研削加工等 で低コストかつ高精度に製作でき、何万箇所もある角隅部の R形状をばらつきなぐ 放電加工することに極めて有効な電極形状であることと、スリットの交点部の角隅部 3 0を R形状ィ匕する最初の動作として、 C面形状 32に精度良く除去するために必要不 可欠であるからである。
[0046] 図 2に示すように、最初の放電加工 (第 1の放電加工)後に得られた放電電極 42は 、スリットの交点部における放電カ卩ェ後の外観 (スリットブロック 17a〜17d参照)が転 写された形状であり、且つ転写された部分が面取りされている。
[0047] 本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法において、第 2の放電力卩ェには、 第 1の放電加工時に使用されることで、四角形状(図 1の電極 40参照)から、図 2に示 す放電電極 42に変化した電極を用いることが、リサイクルの面や精度良く R形状を製 造する上力も好ましい。
[0048] また、本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法においては、図 4に示すよ
うに、最初の放電加工 (第 1の放電加工)後に得られた放電電極を、スリットの交点部 の角取部 32に寄せながら、放電力卩ェを行うことが更に好ましい。これにより、スリットの 交点部の面取部における適度な曲面化 (R形状化)の高精度化及び安定化に寄与 することができる。
[0049] 更に、本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法で得られたハ-カム構造 体成形用口金(図 5 (a) (b)参照)は、スリット幅の精度が、少なくとも ± 10 m以下、 好ましくは ± 3 m以下、より好ましくは ± 2 m以下、更に好ましくは ± 1 m以下あ り、且つスリットピッチの精度力 少なくとも ± 10 m以下、好ましくは ± 3 m以下、 より好ましくは ± 2 m以下、更に好ましくは ± 1 m以下であることが好ましい。これ は、上記ハニカム構造体成形用口金が高精度であれば、それだけ品質の高いハニ カム構造体を押出成形することができるからである。
[0050] 尚、本発明のハニカム構造体成形用口金 1は、例えば、図 9に示すように、使用さ れている口金基体 2が、二つの板状部材 3, 4を積層して接合した口金前駆体に、上 述したスリット 5と裏孔 6とが形成されたものである。この口金前駆体を構成する二つの 板状部材 3, 4は、口金基体 2の一方の面 7側となる、少なくとも炭化タングステンを含 む炭化タングステン基超硬合金から構成された第一部材 3と、口金基体 2の他方の 面 8側となる、オーステナイト相の冷却によってマルテンサイト変態、ベイナイト変態、 及びパーライト変態の三つの相変態のうちの少なくとも一つの相変態を起こし得る金 属体力 構成された第二部材 4とであり、この口金前駆体を構成する二つの板状部 材 3, 4の、互いの接合面における引張、及び圧縮応力が lOOOMPa以下(より好まし くは 500MPa以下)である。
[0051] このように、本発明のハ-カム構造体成形用口金 1に用いられる口金基体 2は、押 出成形の精度 (成形精度)に直接関係する部位であるスリット 5が形成されて ヽるー 方の面 7側は、耐摩耗性に優れた炭化タングステン基超硬合金から構成された第一 部材 3を使用しており、スリット 5の摩耗を軽減することができる。また、裏孔が形成さ れている他方の面 8側は、オーステナイト相の冷却によってマルテンサイト変態、べィ ナイト変態、及びパーライト変態の三つの相変態のうち少なくとも一つの相変態を起 こし得る金属体から構成された第二部材 4を使用しており、成形原料を導入するため
の裏孔 6を比較的に簡便に形成することができるとともに、押出成形用口金として少 なくとも十分な機械的強度を有している。
[0052] 尚、本発明のハ-カム構造体成形用口金 1によって押出成形されるハ-カム構造 体は、例えば、図 10に示すように、多孔質の隔壁 13を備え、この隔壁 13によって流 体の流路となる複数のセル 14が区画形成されたものである。このようなハ-カム構造 体 12は、内燃機関、ボイラー、化学反応機器及び燃料電池用改質器等の触媒作用 を利用する触媒用担体や、排気ガス中の微粒子捕集フィルタ一等に好適に用いるこ とがでさる。
[0053] 尚、本発明のハ-カム構造体成形用口金の製造方法において、スリットの交点部 における放電カ卩ェは、同時に複数のスリットの交点部(図 5 (b)の 33)をまとめて放電 カロェできるように、例えば、図 11に示すような、微細なリブ 54 (例えば、電極リブ幅: 約100〜500 111) ^^山状に形成された放電電極(放電カ卩ェ用リブ電極)50が用 いられている。
[0054] また、本発明に用いる放電電極としては、図 8に示すように、その断面がハニカム構 造体成形用口金のスリット形成範囲 Yの断面よりも小さくまたは等しく形成し、スリット の交差方向と 45° 方向に 2分割または 4分割されて構成されている放電電極 70が 好ましい。分割して放電電極を製造するのは、口金の R加工範囲は、 φ 30πιπι〜φ 300mmと範囲が非常に大きい口金も存在するため、一度に R加工範囲を除去する ための電極を製造使用とすると、例えば φ 300mmでは、四角形状の電極を 4〜9万 箇所程度加工しなければならない。この際、加工時間が非常に長くなり、またストロー クの大きな設備を使わなければならず、精度劣化の可能性や破損リスクが高くなり、 非現実的であるためである。 φ 150mmを超える電極については分割して製造する のが望ましい。
[0055] ここで、本発明で用いる放電電極は、例えば、図 11に示すように、ハ-カム構造体 成形用口金のスリットの交点部に、スリット深さまで挿入することができる多数のリブ (リ ブ電極) 54が、スリットの交点部のピッチに合うように基部 52に立設されたものである
[0056] 本発明で用いる放電電極は、幅力 ハニカム構造体成形用口金のスリット幅の 1. 5
〜3. 0倍であることが好ましい。
[0057] また、本発明で用いる放電電極としては、リブ幅 dの精度が、 ± 5 m以下であり、 且つリブピッチ eの精度が、 ± 5 m以下であることが、放電加工後のハ-カム構造体 成形用口金の精度を保持する上で望ましい。
[0058] このとき、上記放電電極の製造方法は、初めに研削加工することにより、ワークであ る基部からリブ (リブ電極)の切り出しを行うが、リブが微細で且つ密集して 、るため、 研削液を当てるとリブが折れ易ぐまた、研削液をかけないと砲石が目詰まりを起こし 易かった。
[0059] 上記の問題点を解消するため、本発明で用いる放電電極の製造方法は、研削液を かける方向と反対側にワークの位置を移動させながら、砲石の回転数を (例えば、 80 00〜 13000rpmに)上げて加ェ屑を飛ばす方向に回転させることにより、高ァスぺク ト比の例えばグラフアイト製の放電電極 (放電加工用リブ電極)を得ることができる。
[0060] また、本発明で用いる放電電極は、最初の放電加工 (第 1の放電加工)をすることに より、多数且つ微細なリブに、スリットの交点部における放電加工後の外観 (スリットブ ロック 17a〜 17d参照)が転写 ·面取りされた形状にカ卩ェすることができる(図 2、及び 図 19を参照)。この放電電極 42は、放電加工のパルス電流値を低めに設定した多 数回放電加工の際に好適に用いることができる。
実施例
[0061] 本発明を実施例に基づいて、更に詳細に説明する力 本発明はこれらの実施例に 限られるものではない。
[0062] (放電電極の製造方法)
ワークから多数のリブを研削加工で切り出すことにより、 50mm X 50mmの断面が 正方形の放電加工用電極を作製した(図 11参照)。上記研削加工には、電極には銅 タングステン合金や銀タングステン合金やグラフアイトを用い、砥石には外周部が鋸 刃状の砥石やダイヤモンド砥石を用いて作製した。尚、得られた放電電極は、リブの 幅 dが 200 /z m (後述する実施例 2のみ 170 /z m)、リブピッチ eが 1. 5mmであり、リブ の高さ fが 2. 4mmである口金仕様のものを作製した。尚、上記放電電極の電極リブ 幅の精度は ± 3 m、リブピッチ精度は ± 3 mであった。
[0063] (口金基体の製造方法)
二つの面を有し、一方の面にハニカム形状のスリットが形成されるとともに、他方の 面にスリットと連通し、成形原料を導入するための裏孔が形成された口金基体を製造 した。この口金基体となる口金前駆体としては、 WC— 20質量%以下 Coの超硬合金 力 構成された第一部材と、析出硬化型マルテンサイト系ステンレス鋼力 構成され た第二部材とが、互いの接合面における引張、及び圧縮応力が 500MPaとなるよう に積層して接合されたものを用いた。
[0064] 尚、第一部材の形状は、その面の大きさが 100mm X 100mmの正方形で、厚さ 2 . 5mmであり、第二部材の形状は、その面の大きさが 100mm X 100mmの正方形 で、厚さが 15mmであった。また、この口金基体は、第二部材を構成する合金に約 0 . 1mmの深さで浸透したろう材層を有している。本実施例においては、第一部材と第 二部材を接合する前に、第二部材に裏孔とスリットの一部を形成し、第一部材と第二 部材を接合した後に第一部材にスリットを形成することにより、口金基体を製造した。
[0065] 裏孔は、格子状のスリットの交点に位置するように、開口径 lmmで第二部材に形 成した。また、スリットは、スライサー加工 (使用砲石:ダイヤモンド砲石)で四角形の格 子状に形成した。スリットの幅は 120 m、深さは 2. 5mmとし、隣接するスリット相互 の間隔は約 1. 5mm、スリットの角隅部の対角線長さは約 170 /z mとなった。尚、上 記口金基体のスリットピッチ精度は、 ± 10 mであった。
[0066] (実施例 1〜2:ハニカム構造体成形用口金の製造方法 1)
上記で得られた口金基体を、上記放電電極を用いて、口金スリット範囲 φ 86mmに おけるスリットの交点部を、パルス電流値を実施例 1では 8A、実施例 2では 2A、パル ス幅 2 sec、スリット加工深さ 2. 4mm (図 9の t参照)で、同時に複数部のスリット交 点部をまとめて、 1回のみ所定深さまで電極を降下させる放電加工を行った。放電カロ ェ後におけるハニカム構造体成形用口金のスリット交点部の表面形状を顕微鏡で測 定した。その結果を表 1、及び実施例 1で実施した結果を図 13、図 22に示す。
[0067] (実施例 3〜6:ハニカム構造体成形用口金の製造方法 2)
上記で得られた口金基体を、上記放電電極を用いて、口金スリット範囲 φ 86mmに おけるスリットの交点部を、電流値 4A、パルス幅 2 /z sec、スリット加工深さ 2. 4mm (
図 9の t参照)で、同時に複数部のスリット交点部をまとめて放電加工を行った (第 1の 放電加工)。次に、上記放電電極を交換することなぐスリットの交点部を、第 1の放電 加工と同様に、電流値 4A、パルス幅 2 sec、スリットカロ工深さ 2. 4mm (図 9の t参照 )で放電カ卩ェ(第 2の放電力卩ェ)をそれぞれ行った(20回、 100回、 500回、 900回) 。放電加工後におけるハ-カム構造体成形用口金のスリット交点部の表面形状及び 曲率半径を顕微鏡で測定した。その結果を表 1、及び図 14〜17、図 22に示す。な お、図 22【こお!ヽて、ライン Είま、 x2/xl = l. 7で、繰り返しカロ工 20回以上の場合の パルス電流値と R寸法の関係を示す。
[0068] (比較例 1:ハニカム構造体成形用口金の製造方法 3)
上記で得られた口金基体を、上記放電電極を用いて、口金スリット範囲 φ 86mmに おけるスリットの交点部を、電流値 1A、パルス幅 2 /z sec、スリット加工深さ 2. 4mm ( 図 9の t参照)で、ある程度 (例えば、図 12 (a)に示すように、 4分割)のスリットの交点 部をまとめて 1回のみ所定深さまで電極を降下させる放電加工を行った。放電加工 後におけるハ-カム構造体成形用口金のスリット交点部の表面形状及び曲率半径を 顕微鏡で測定した。その結果を表 1及び図 18に示す。
[0069] [表 1]
[0070] (考察:実施例 1〜6)
表 1の結果から、実施例 1では、放電力卩ェのパルス電流値を 8 Aと高めに設定し、ま
た実施例 2では、ノ ルス電流値を 2Aと設定し、最初に放電カ卩ェすることにより、スリツ トの交点部がほぼ R形状ィ匕することを確認した (実施例 1 :図 13参照)。また、実施例 3〜5では、パルス電流値 4Aでエッジ部への集中放電を複数回行うことにより、徐々 に R形状化されて ヽき、加工面の曲率半径も向上して ヽることを確認した(図 14〜 17 参照)。比較例 1では、最初の放電力卩ェのパルス電流値が 1Aと低く充分でないため 、スリットの交点部の R形状ィ匕することができな力つた(図 18参照)。また、図 22に示 す「繰り返し力卩ェ」からわ力るように、パルス電流値が 2Aから 4Aに増加したのみで,放 電繰り返しカ卩ェ回数が 20回以上であれば、加工面の曲率半径が向上していることが 確認できた。
[0071] (実施例 7 :ハニカム構造体成形用口金の製造方法 4)
最初の放電加工後に得られた放電電極の断面形状を測定顕微鏡 (ォリンパス社製 )で測定した。その結果を図 19に示す。次に、図 19に示す放電電極を、図 4に示す ように、スリットの交点部の角取部(C面形状部) 32に寄せながら、放電加工を行った 。その放電加工前後におけるスリットの交点部 (スリットブロック)の表面形状を測定顕 微鏡 (ォリンパス社製)で測定した。その結果を図 20及び図 21に示す。図 20では、ス リットの交点部 (スリットブロック)が C面形状であったものが、上記放電加工後は、図 2 1に示すように、スリットの交点部 (スリットブロック)の R形状ィ匕が高精度(曲率半径:約 100 μ m)且つ安定して行われて!/ヽることを確認した。
[0072] アルミナ、カオリン、及びタルクを主成分とするセラミックスと水とを主に含む成形原 料を混合して得られた素地の混練を行 、ノ、二カム成形用坏土を得た。その坏土を油 圧押し出し成形機に挿入し、下記口金 [1]〜[5]をそれぞれ、前記成形機に取り付 けてハニカム構造体を成形した。その際、成形は各口金で成形不具合が発生するま で長時間実施した。また押し出し成形でノヽ-カム構造体を得るに際しては、アイソス タティック強度の評価が正確に行えるようにハ-カム構造体の外壁厚さも 0. 5±0. 0 5mmとし、かつハ-カム構造体を構成するリブ部に切れや湾曲が無いものを選定し た。
[0073] 口金 [1]:炭化タングステン基超硬合金製の口金基体であり、図 18に示すように、スリ ットの交点部に C面エッジ部とバリがある超硬口金 (比較例 1)
口金 [2]:ステンレス製口金基体にコーティング層(めっき層(電解めつき)が形成され た通常口金(比較例 2)で、 R寸法は 60 μ m。
口金 [3]:炭化タングステン基超硬合金製の口金基体であり、図 12 (a) (b)に示すよ うに、スリットの交点部の角が鋭いエッジ部がある超硬口金で、 R無し (比較例 3)。 口金 [4]:炭化タングステン基超硬合金製の口金基体であり、図 5 (a) (b)に示すよう に、スリットの交点部に適度な曲面部 (R形状部)が形成された超硬口金で、実施例 2 の R寸法 30 μ mの口金を使用。
口金 [5]:炭化タングステン基超硬合金製の口金基体であり、図 5 (a) (b)に示すよう に、スリットの交点部に適度な曲面部 (R形状部)が形成された超硬口金で、実施例 7 の R寸法 100 μ mの口金を使用。
口金 [6]:炭化タングステン基超硬合金製の口金基体であり、図 5 (a) (b)に示すよう に、スリットの交点部に適度な曲面部 (R形状部)が形成された超硬口金で、実施例 4 の R寸法 83 μ mの口金を使用。
[0074] 得られたハ-カム成形体を熱風乾燥及びマイクロ波乾燥を行った後、それぞれの ハ-カム成形体のアイソスタティック強度を測定した。尚、ァイソスタティック強度を測 定する方法としては、 JASO規格 M505— 87に基づき静水圧下でハ-カム構造体を 圧縮してセルが破損したときの強度を評価したものとした。以下の結果を表 2に示す
[0075] [表 2] ハニカム構造体の
ァイソスタティック
(MP a)
実施例 2 7. 3
実施例 4 7. 8
実施例 7 7. 4
比翻 1 4. 2
比棚 2 7. 6
比翻 3 3. 5
[0076] 表 2の結果から、 R寸法 30 μ m以上では、得られたハ-カム成形体のアイソスタティ ック強度が、通常のコート口金を用いた比較例 2とほぼ同等であった。一方、 Rがない 比較例 3では、 R寸法 30 m以上の口金と比較してかなりァイソスタティック強度が低 減していることを確認した。また、口金の寿命については、比較例 2の口金と比較して 、スリット部が超硬合金である口金の方力 20倍以上長寿命であることを確認した。
[0077] (実施例 8)
実施例 2のように、 x2/xl = l . 41として、各パルス電流値で放電加工を 1回行つ た場合にっ 、て、パルス電流値と得られたスリットの角隅部の R寸法との関係を測定 した。結果を図 22のライン Fに示した。この結果から、高い電流を投入しても、電極破 損頻度が増大する割(20A以上で破損した。)には、大きな R寸法が得られないこと がわかった。また、電流値を低めにし、繰り返し加工することや寄せ加工をすることで 、適当な R寸法が得られることもわ力つた。
産業上の利用可能性
[0078] 本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法は、高度な成形性を実現するとと もに、長寿命且つ耐摩耗性に優れており、高度な成形性を実現することができる。特 に、口金基体のスリットが形成された部分の耐摩耗性に優れていることから、成形す るハ-カム構造体の低コストィ匕を実現することができる。また、本発明のハ-カム構造 体成形用口金の製造方法は、上述したハニカム構造体成形用口金を簡便に製造す ることがでさる。
また、スリット部が超硬合金以外であっても、導電性材料であれば本技術を適用す ることがでさる。