ピぺリジン誘導体及びその製造法
技術分野
[0001] 本発明は、医薬、殊にジぺプチジルぺプチダーゼ -IV (以下、 DPP-IVと言う。 )阻害 剤として知られる、 2-シァノ -4-フルォロピロリジン誘導体の製造法、及びその中間体 、並びに該中間体の製造法に関する。
背景技術
[0002] 下記式(IV)で示される、 4-フルォロ -1-({[4-メチル - 1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン -4-ィル]アミノ}ァセチル)ピロリジン- 2-カルボ-トリル(以下、化合物 Aと言う。)は、 DP P-IV阻害剤として知られる化合物であり(特許文献 1)、 1型糖尿病、 2型糖尿病、イン スリン抵抗性疾患及び肥満等の治療及び Z又は予防に有用な化合物であることが 知られている。
[化 1]
[0003] 化合物 Aにつ!/、ては、 4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ァミン(以下、化 合物 Bと言う。)若しくはその塩酸塩を原料化合物とした、以下の製造法 Xが具体的に 知られている(特許文献 1)。
[0004] (a)化合物 Aの製造法「製造法 X」
B A
若しくはその塩酸塩
[式中、 Msはメタンスルホ-ルを、 Meはメチルを示す。以下同様。 ]
[0005] また、製造法 Xにおける原料ィ匕合物である化合物 B若しくはその塩酸塩は、以下の 製造法 Y若しくは製造法 Zで製造されることが知られて ヽる (特許文献 1)。
[0006] (b)化合物 Bの塩酸塩の製造法「製造法 Y」
Y-1 旦
[式中、 Bocは tert-ブチルォキシカルボ-ルを、 Et Nはトリエチルァミンを、 MsCIはメ
3
タンスルホ-ルクロリドを、 CH C1は塩化メチレンを、 DMFは Ν,Ν-ジメチルホルムアミ
2 2
ドを、 4Μ HC卜 EtOAcは 4 mol/L塩酸の酢酸ェチル溶液を、 EtOAcは酢酸ェチルを 示す。以下同様。 ]
[0007] (c)化合物 Bの製造法「製造法 Z」
Z-1 Z-0 旦
[式中、 Cbzはべンジルォキシカルボ-ルを、 10% Pd/Cは 10%パラジウム担持炭素を、 MeOHはメタノールを示す。以下同様。 ]
[0008] 但し、上記製造法 Y及び製造法 Zで使用される原料化合物は、公知化合物ではあ
るが、商業的に安価かつ容易に入手できる化合物ではなぐこれらの原料化合物を 入手するためには、以下の公知の製造法で別途製造する必要があり、その製造工程 は以下の通りである。
(d)化合物 Y-1の製造法 (特許文献 2、非特許文献 1、非特許文献 2)
[化 5]
[式中、 Bnはべンジルを、 BnNHはベンジルァミンを、 Acはァセチルを示す。以下同
2
様。 ]
(e)化合物 Z-1の製造法 (特許文献 3)
Z-6 Z-5 Z-4
[式中、 CO Etはエトキシカルボ-ルを示す。以下同様。 ]
2
[0011] 即ち、化合物 Aを製造するに当たっての有用な中間体である化合物 Bを、安価で入 手容易な化合物を出発原料として製造するには、以下に示す (A)、(B)又は (C)の 方法で製造する必要があり、それぞれの方法における総工程数及び全収率は以下 に示すとおりである。
(A) Y_8を出発原料として、 Y-5及び Y-1を経由し、 B又はその塩を製造する方法 総工程数: 9工程
全収率:全 9工程のうち、先行技術文献の記載力 具体的に収率が導けるのは 4ェ 程であるが、この 4工程だけでも通算収率は 30.0%であり、残る具体的収率が不明の 5 工程を含めれば 30.0%以下であることは明らかである。
(B) Y-9を出発原料として、 Y-5及び Y-1を経由し、 B又はその塩を製造する方法 総工程数: 7工程
全収率:全 7工程のうち、先行技術文献の記載力 具体的に収率が導けるのは 5ェ 程であるが、この 5工程だけでも通算収率は 17.7%であり、残る具体的収率が不明の 2 工程を含めれば 17.7%以下であることは明らかである。
(C) Z-6を出発原料とし、 Z-1を経由し、 B又はその塩を製造する方法
総工程数: 7工程
全収率:全 7工程のうち、先行技術文献の記載力 具体的に収率が導けるのは 4ェ 程であるが、この 4工程だけでも通算収率は 47.6%であり、残る具体的収率が不明の 3 工程を含めれば 47.6%以下であることは明らかである。
[0012] 特許文献 1:国際公開第 WO 2004/009544号パンフレット
特許文献 2:特許出願公開特開平 7-165754号公報
特許文献 3 :国際公開第 WO 99/40070号パンフレット
非特許文献 1:ジャーナル ·ォブ ·アメリカン'ケミカル ·ソサイエティ (Journal of America n Chemical Society)ゝ 1985年、第 107卷、 pp.1768- 1769
非特許文献 2 :テトラへドロン(Tetrahedron)、 1970年、第 26卷、 pp.5519- 5527 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0013] 従って、工業生産上、安価で入手容易な化合物を出発原料として、より総工程数の 短縮された、かつ全収率の向上した化合物 B又はその塩の製造法の開発が望まれて いた。
課題を解決するための手段
[0014] 本発明者らは、 DPP-IV阻害薬として、 1型糖尿病、 2型糖尿病、インスリン抵抗性疾 患、及び肥満の治療及び Z又は予防に有用な化合物 Aの別途製造法にっ 、て鋭意 検討した結果、以下に示す製造法 1及び製造法 2の方法により、化合物 Aを効率よく 製造できることを見出し、本発明を完成させた。
[0015] 即ち、本発明によれば、後述する製造法 2に示す化合物 Aの製造法を採用するに 当たり、有用な中間体となる下記式 (I)で示されるピぺリジン誘導体又はその塩が提 供される。
[0016] [化 7]
[式中、 R1は- H、ハロゲン又は- OHを示す。 ]
なお、 R1として好ましくはハロゲンであり;さらに好ましくはクロ口又はブロモである。 また、上記式 (I)で示されるピぺリジン誘導体又はその塩から、 R1を有するァセチル 基を脱離させることを含む、式 (Π)で示される化合物 Bの製造法が提供される。
[化 8]
なお、この製造法において、 R
1を有するァセチル基を脱離させる反応としては、酸 を用いた加水分解反応が好ましぐその中でも塩酸、臭化水素酸、トリフルォロ酢酸、 硫酸、メタンスルホン酸、並びに P-トルエンスルホン酸及びその水和物力 なる群より 選択される 1種若しくは 2種以上の酸を用いた加水分解反応が好ま Uヽ。
[0018] また、式 (ΠΙ)で示される 4-ヒドロキシピペリジン誘導体又はその塩を用いた、本発 明化合物である式 (I)で示されるピぺリジン誘導体又はその塩の製造法が提供される
[化 9]
なお、この製造法において適用される反応としては、クロロアセトニトリル、プロモア セトニトリル、ァセトニトリル、シアンィ匕水素及びグリコ口-トリルカ なる群より選択され るシァノ基を有する化合物を、酸性条件下に作用させる反応を用いることが好ましぐ 特にクロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル及びァセトニトリル力 なる群より選択さ れるァセトニトリル誘導体と式 (III)の化合物を、メタンスルホン酸及び硫酸力 なる群 より選択される酸の存在下に反応させることが好まし 、。
また、上記式 (I)で示されるピぺリジン誘導体又はその塩から、 R1を有するァセチル 基を脱離させることを含む製造法により製造されたィ匕合物 Bを用いた、式 (IV)で示さ れる化合物 Aの製造法が提供される。
[化 10]
[0020] (1)製造法 1
[化 11]
HCI
本製造法は、式 (III)で示される化合物を経由した、本発明化合物である式 (I)で示 される化合物の製造法である。
(第 1工程)
本工程は、化合物 1-2のァミノ基に対してメタンスルホ二ル基を付加させる工程であ る。
反応は、当業者にとって自明の方法、あるいはグリーン (Greene)及びウッツ (Wuts) 着、 [Protective uroups in Organic Synthesis (third editionノ」に己载の方法で行つこ とがでさる。
なお、化合物 1-1は国際公開第 WO 98/57862号パンフレットに記載の方法で製造 することちでさる。
(第 2工程)
本工程は、化合物 1-1のカルボニル基に対してメチル基を付加させる工程である。 反応試剤としては、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムプロミド等のメチ ルマグネシウムハライド、メチルリチウム、トリメチルアルミニウム、リチウムジメチルクー プラート、メチルトリクロ口チタニウム等を挙げることができる。また、メチルマグネシウム ノ、ライド、メチルリチウムを使用する際には、セリウムトリクロリド等の添カロにより、化合 物 1-1のエノールイ匕を抑制し、収率の向上を期待することができる。反応は、使用す る反応試剤によっても異なる力 トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ェチル エーテル、イソプロピルエーテル、ジ n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジ ォキサン等のエーテル類;ジクロロメチレン、クロ口ホルム、ジクロロエタン、トリクロロェ
タン、四塩ィ匕炭素等のハロゲンィ匕炭化水素類;又はこれらの混合溶媒等の反応に不 活性な溶媒中、冷却下、冷却下乃至室温下又は室温下乃至加熱下に行うことができ 、反応温度は反応条件に応じて適宜選択することができる。
(第 3工程)
本工程は、化合物 (III)に対してシァノ基を有する化合物を酸性条件下に付加させ る工程である。
反応試剤としては、クロロアセトニトリル、ブロモアセトニトリル、ァセトニトリル、シアン 化水素、グリコ口-トリルを挙げることができる。また、用いられる酸としては、メタンス ルホン酸、 P-トルエンスルホン酸等のスルホン酸若しくはその水和物;硫酸;トリフル ォロ酢酸;過塩素酸;リン酸;ポリリン酸;ギ酸;三フッ化ホウ素エーテラート、トリメリル シリルトリフラート等のルイス酸を挙げることができる。反応は、使用する反応試剤によ つても異なるが、無溶媒若しくは反応に不活性な溶媒中に行うことができ、反応に不 活性な溶媒としては酢酸;無水酢酸;エーテル類;へキサン、ペンタン、ヘプタン等の 脂肪族炭化水素類;ハロゲンィ匕炭化水素類;ニトロベンゼン等を挙げることができる。 反応温度は反応条件に応じて適宜選択することができるが、冷却下、冷却下乃至室 温下又は室温下乃至加熱下に行うことができる。
[0022] (2)製造法 2
[化 12]
(I) (II) (IV)
[0023] 本製造法は、式 (I)で示される本発明化合物を用いた、式 (II)で示される化合物 B の製造法、及び式 (IV)で示される化合物 Aの製造法である。
(第 1工程)
本工程は、本発明化合物 (I)から R1を有するァセチル基を脱離させる工程である。 好ましくは酸を用いた加水分解反応を挙げることができる力 その酸としては、塩酸 、臭化水素酸、トリフルォロ酢酸、硫酸、メタンスルホン酸、又は P-トルエンスルホン酸
若しくはその水和物を挙げることができ、これらのうち 1種の酸を使用することも、 2種 以上の酸を使用することもできる。反応は、化合物 (I)における R1で示される基によつ ても異なるが、メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、 1-プロパノール、 2-プロパノ ール(iPrOH)、 1-ブタノール(nBuOH)等のアルコール類と水の混合溶媒中(なお、 水は濃塩酸や硫酸等にもともと含まれる水分で代用することもできる)、冷却下、冷却 下乃至室温下又は室温下乃至加熱下に行うことができ、反応温度は反応条件に応 じて適宜選択することができる。
(第 2工程)
本工程は、化合物 (II)と、国際公開第 WO 2004/009544号パンフレットに記載の方 法、若しくはそれに準じた方法で製造される 1-クロロアセチル -4-フルォロピロリジン- 2-カルボ-トリル、又はその類縁体(例えば、 1-ブロモアセチル -4-フルォロピロリジン -2-カルボ-トリルを挙げることができる。 )とを縮合させる工程である。
塩基を添加したり、化合物 (Π)を過剰に用いることで有利に反応を進行させることが でき、その塩基としては、トリエチルァミン、 N-ェチルジイソプロピルァミン、ピリジン等 の有機塩基;炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水酸ィ匕カリウム等の 無機塩基を挙げることができる。反応は、化合物 (Π)に縮合させる化合物の反応性 等によっても異なるが、無溶媒あるいは溶媒を用いて反応を行うことができ、用いられ る溶媒としては、ァセトニトリル、 Ν,Ν-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、芳 香族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、ハロゲンィ匕炭化水素類、メチルェチ ルケトンやアセトンのようなケトン類、水、あるいはこれらの混合溶媒を挙げることがで きる。反応は、冷却下、冷却下乃至室温下又は室温下乃至加熱下に行うことができ、 反応温度は反応条件に応じて適宜選択することができる。
発明の効果
即ち、本発明の製造法によれば、安価でかつ入手容易な原料ィ匕合物であるピペリ ジン- 4-オン塩酸塩水和物から、わずカゝ 4工程でィ匕合物 (Π)を製造することができる。 また、後述する実施例 4乃至 6に示すように、その全収率は 43.7%である。
一方、化合物 (Π)を製造するに当たり、公知製造法においては上述の (Α)、(Β)及 び (C)の通りである。総工程数の点では、公知製造法 (Α)では 9工程、公知製造法(
B)及び (C)では 7工程必要であったもの力 本発明の製造法によれば 4工程で製造 できる。この総工程数の短縮は、工業生産上、経済性や効率性、安定供給面等にお いて非常に有利な効果をもたらすことはよく知られているところである。
また、全収率の点では、公知製造法 (A)、(B)及び (C)にそれぞれ収率不明のェ 程があるが、公知製造法 (A)では、収率不明の 5つの工程の収率をすベて 100%と仮 定したとしても 30.0%であり、公知製造法 (B)では、収率不明の 2つの工程の収率をす ベて 100%と仮定したとしても 17.7%である。また、公知製造法 (C)に関しては、収率不 明の工程が 3工程あるが、そのうち、 Z-1から Z-0を製造する工程について 3回の追試 を行ったところ、その平均収率は 68.7%であり、 Z-0から Bを製造する工程について 2回 の追試を行ったところ、その平均収率は 98.5%であった。従って、公知製造法 (C)の 全収率に関して、これらの追試結果をカ卩味すれば、いまだ収率不明の工程が 1工程 残るが、その工程の収率を 100%と仮定したとしても、全収率は 32.2%である。本発明の 製造法の全収率力 3.7%であることから、本発明の製造法は、公知製造法 (A)、 (B) 及び (C)に対して、全収率が格段に向上したと言える。全収率の向上は、工業生産 上、経済性や効率性、安定供給面力 の有利な効果をもたらすことはよく知られてい るところである。
また、公知製造法 (C)においては、ピぺリジン 4位のメチル基を導入するに当たり、リ チウムジイソプロピルアミドを使用して 、るが、この試薬は非常に低 、温度での反応 を要求し、特許文献 3においては- 78 °Cもの低温を必要としている。工業的生産にお いては、このような非常に低い温度の制御は困難を伴うことが多ぐ経済性や効率性 の面で工業的生産には適さない。さらに、公知製造法 (C)においては、ピぺリジン 4 位のカルボキシル基をべンジルォキシカルボ-ルァミノ基に変換するに当たり、いわ ゆる Curtius転移反応を使用しているが、この反応は反応系中で発生した中間体が水 によって容易に分解するため、厳密に反応系中の水分管理を行う必要があり、工業 的生産にぉ 、ては経済性や効率性の面で適さな 、反応である。
従って、本発明の製造法は、公知の製造法と比較して、(1)総工程数が格段に短 縮されている上、(2)全収率が格段に向上している点、及び(3)非常に低い温度を 必要とする反応や、水分の存在により反応の進行が妨げられるおそれのある反応等
の、工業的生産にあまり適さない反応を不要とし、工業的生産に適した反応のみで 構成されている点で優れた製造法であり、非常に有用かつ簡便な製造法である。即 ち、化合物 (Π)の製造、さらには化合物 (IV)の製造に当たっては、本発明化合物 (I
)を製造中間体として採用することがきわめて有利であり、その効果は上述の通りであ る。
発明を実施するための最良の形態
本発明をさらに説明すると以下の通りである。
本明細書中、「ハロゲン」とはクロ口、ブロモ、ョード、フルォロを挙げることができ、好 ましくはクロ口若しくはブロモである。
また、「式 (I)で示されるピぺリジン誘導体又はその塩」、「式 (Π)で示される 4-ァミノ ピぺリジン誘導体又はその塩」、「式 (ΠΙ)で示される 4-ヒドロキシピペリジン誘導体又 はその塩」又は「2-シァノ -4-フルォロピロリジン誘導体又はその塩」における塩とは、 式 (I)で示されるピぺリジン誘導体、式 (Π)で示される 4-アミノビペリジン誘導体、式 (I II)で示される 4-ヒドロキシピペリジン誘導体、又は 2-シァノ -4-フルォロピロリジン誘 導体の酸付加塩を意味し、その酸としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸 、硝酸、リン酸等の鉱酸;メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、 トルエンスルホン酸、トリフルォロメタンスルホン酸等のスルホン酸;ギ酸、酢酸、プロ ピオン酸、シユウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒 石酸、クェン酸等の有機酸;ァスパラギン酸、グルタミン酸等の酸性アミノ酸;等を挙 げることができる。また、「その塩」としては、それぞれの化合物及びその塩の、各種の 水和物や溶媒和物及び結晶多形の物質をも包含する。
また、化合物 (IV)は不斉炭素を有しているため、以下の 4つの光学異性体が存在 するが、好ましくは (IV— 1)で示される (2S,4S)-体である。
実施例
[0027] 以下、実施例により本発明を具体的に説明する力 本発明はこれらの実施例により 何ら制限されるものではな 、。
[0028] 実施例 1
メチルマグネシウムクロリドの 2 mol/Lの THF溶液 847.0 gに 4-[1- (メタンスルホ-ル)] ピぺリドン 150.0gを THF 1950 mLに溶解した溶液を、 10 °C以下で攪拌しながら加え、 THF 75 mLで洗いこんだ。 4時間攪拌後、水 75 mL、 20%(w/v)塩化アンモ-ゥム水溶 液 1000 mL、トルエン 750 mLを加え、有機層を分液した。有機層を 20%(w/v)食塩水 90 0 mLで洗浄し、この液を減圧濃縮し、トルエン 1050 mLを加え減圧濃縮を行う操作を さらに 2回繰り返した。残さにトルエン 450 mLをカ卩え、 80 °Cで加熱溶解した。攪拌下、 0 °cまで冷却し、析出した結晶を濾取し、トルエンで結晶を洗浄した後、減圧乾燥す ることにより、 4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-オール 127.1 gを白色結晶 として得た。
1H-NMR(DMSO-d ): 1.14(s,3H),1.47-1.58(m,4H),2.83(s,3H),3.00(dt,2H),3.25(dt,2
6
H),4.37(s,lH).
FAB-MS m/z : 194(M+l).
[0029] 実施例 2
メタンスルホン酸 740.5 gに 4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-オールを 20 0.0 g加え、メタンスルホン酸 148.1 gで洗いこんだ。得られた混合物にクロロアセトニト
リル 78.1 gを加え、室温下でー晚攪拌した。反応液に酢酸ェチル (EtOAc)を 1200 m L加え、 27%(w/v)炭酸カリウム水溶液 2700 mLへ攪拌しながら徐々に滴下した。有機 層を分液し、 10%(w/v)炭酸水素カリウム水溶液 600 mL、水 600 mLで洗浄した。溶媒 を減圧下留去することにより、 2-クロ口- N- [4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ィル]ァセトアミド 264.7 gを淡黄色結晶として得た。
1H-NMR(CDC1 ): 1.45(s,3H),1.74-1.81(m,2H),2.25-2.29(m,2H),2.81(s,3H),2.97-3.
3
04(m,2H),3.47-3.52(m,2H),4.00(s,2H),6.27(brs,lH).
FAB-MS m/z : 269(M+l).
[0030] 実施例 3
酢酸 15 mLに 4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-オールを 10.00 g加え、 1 0 °Cに冷却した。硫酸 10 mL、クロロアセトニトリル 5.08 gを 20°Cで攪拌しながらカロえ、 その後 9時間攪拌した。水 150 mL、炭酸リチウム 22.00 g、酢酸イソプロピル 100 mLの 混合液に反応液を 35 °C以下で加えた。有機層を分液し、水 20 mLで洗浄し、溶媒を 減圧下留去した。
2-クロ口- N- [4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ィル]ァセトアミドを含む濃 縮残渣に水 8 mL、濃塩酸 8 mLをカ卩え、 100 °Cで 24時間攪拌した。室温下冷却し、 2- プロパノール 50 mLを加え、結晶を析出させた。攪拌下、 0 °Cまで冷却し、結晶を濾 取し、 2-プロパノールで結晶を洗浄した後、減圧乾燥することにより、 4-メチル -ト(メ タンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ァミン一塩酸塩一水和物を白色結晶として得た。
[0031] 実施例 4
水 2500 mLにピペリジン- 4-オン一塩酸塩一水和物 500.0 g、炭酸カリウム 674.8 g、 ァセトニトリル 2400 mLを加え 10 °C以下に冷却した。メタンスルホユルクロリド 559.3 g を 35 °C以下で攪拌しながら加え、ァセトニトリル 100 mLで洗いこんだ。 24時間攪拌後 、炭酸カリウム 45.0 gを加えて中和し、トルエン 2500 mLを加えて抽出した。水層を分 液後、さらにァセトニトリル 500 mL、トルエン 1500 mLをカ卩えて抽出した。有機層を混 合し、減圧下、溶媒を留去した。さらにトルエンを 2500 mL加え、減圧下溶媒を留去し た。得られた残さにトルエンを 2500 mLカ卩え、 85 °Cで加熱溶解した。攪拌下、 0 °Cま で冷却し、析出した結晶を濾取し、トルエンで結晶を洗浄した後、減圧乾燥すること
により、 4-[l- (メタンスルホ-ル)]ピぺリドン 488.7 g (収率 84.7 %)を白色結晶として得 た。
1H-NMR(DMSO-d ) : 2.46(t,4H),2.97(s,3H),3.49(t,4H).
6
FAB-MS m/z : 178(M+l).
[0032] 実施例 5
メチルマグネシウムクロリドの 1 mol/LのTHF溶液21.02 gに、 4-[1- (メタンスルホ-ル )]ピペリドン 2.00 gを THF 26 mLに溶解した溶液を、 10 °C以下で攪拌しながら加え、 T HF 1 mLで洗いこんだ。室温で 2時間攪拌後、水 1 mL、 20%(w/v)塩化アンモニゥム水 溶液 13 mLを加え、有機層を分液した。有機層を 20%(w/v)食塩水 11 mLで洗浄した。 この有機層を 10 mLまで減圧濃縮し、トルエン 14 mLを加え、全量が 14 mLまで減圧 濃縮を行う操作を 4回繰り返した。析出した結晶を濾取し、減圧乾燥することにより、 4 -メチル- 1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-オール 1.84 g (収率 84.4%)を白色結晶と して得た。
[0033] 実施例 6
酢酸 15 mLに 4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-オールを 10.00 g加え、 1 0 °Cに冷却した。硫酸 10 mL、クロロアセトニトリル 5.08 gを 20 °C以下で攪拌しながら 加え、その後 3日間攪拌した。水 150 mL、炭酸リチウム 21.00 g、酢酸イソプロピル 100 mLの混合液に、反応液を 30 °C以下で加えた。有機層を分液し水 20 mLで洗浄し、 溶媒を減圧下留去した。
2-クロ口- N- [4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ィル]ァセトアミドを含む濃 縮残さに nBuOH 60 mL、水 10 mL、濃塩酸 10 mLを加え 100 °Cで 13時間攪拌した。 室温下冷却し iPrOH 200 mLを加えた。実施例 3の白色結晶を接種して、結晶を析出 させた後、攪拌下 0 °Cまで冷却した。結晶を濾取し、 iPrOHで結晶を洗浄した後、減 圧乾燥することにより、 4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ァミン一塩酸塩 一水和物 7.81 g (収率 61.2 %)を白色結晶として得た。
[0034] 即ち、本発明化合物を製造中間体として採用し、本発明の製造法により化合物 (II) を製造すれば、実施例 4乃至 6の結果から、安価でかつ入手容易な原料化合物であ るピペリジン- 4-オン塩酸塩水和物を出発原料とし、わずか 4工程、全収率 43.7%で化
合物 (π)を製造することができる。
[0035] 実施例 7
4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-オール 2.85 gにァセトニトリル 8.5 mLを 加え 10 °C以下に冷却した。硫酸 5.7 mLを 20 °C以下で攪拌しながら加え、その後 3時 間攪拌した。反応液を氷冷水 100 mLに注ぎ、炭酸ナトリウム 12.7 gを加えて中和した 。 EtOAc 80 mL、 EtOAc 50 mLでそれぞれ抽出し、有機層を減圧下濃縮し、溶媒を 留去した。得られた残さをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロ口ホルム: MeOH = 5 0 : 1)で精製することにより、 N- [4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ィル]ァ セトアミド 3.56 gを黄色油状物として得た。
- NMR(DMSO- d ): 1.27(s,3H),1.45-1.52(m,2H),1.81(s,3H),2.15-2.18(m,2H),2.85
6
(s,3H),2.88-2.97(m,2H),3.20-3.27(m,2H),7.36(brs,lH).
FAB-MS m/z : 235(M+l).
[0036] 実施例 8
実施例 6におけるクロロアセトニトリルをブロモアセトニトリルに代え、その他は同様 にして反応を行い、 4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ァミン一塩酸塩一 水和物を得た。
'H-NMRCDMSO-d ): 1.33(s,3H),1.73-1.77(m,2H),1.81-1.84(m,2H),2.90(s,3H),3.03
6
-3.09(m,2H),3.39-3.45(m,2H),8.33(brs,3H).
ESI-MS m/z: 193(M+l).
[0037] 実施例 9
国際公開第 WO 2004/009544記載の方法で製造した (2S,4S)-1- (クロロアセチル )-4 -フルォロピロリジン- 2-カルボ二トリル 2.00 gにァセトニトリル 14 mL、 4-メチル -1- (メタ ンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ァミン一塩酸塩一水和物 2.88 g、 N-ェチルジイソプロピ ルァミン 5.4 mLを加え、 80 °Cで 14時間加熱撹拌した。溶媒を減圧下留去し、 EtOH 1 4 mLを加え、さらに溶媒を留去した。水 2 mL、 EtOH 50 mL、 N-ェチルジイソプロピ ルァミン 0.54 mLを加え加熱溶解し、攪拌下冷却して結晶を析出させた。 0 °Cまで冷 却し、結晶を濾取し、 EtOHで結晶を洗浄した後、減圧乾燥することにより、 (2S,4S)-4 -フルォ口- 1-({[4-メチル -1- (メタンスルホ -ル)ピぺリジン- 4-ィル]アミノ}ァセチル)ピ
口リジン- 2-カルボ-トリル 3.04 gを白色結晶として得た。
1H-NMR(CDCl ) : 1.12,1.14(s,3H),1.66(brs,4H),2.26-2.72(m,2H),2.78(s,3H),3.16-4.
3
05(m,6H),3.33(ABq,2H),4.89,4.95(d,lH),5.36,5.44(dt,lH).
FAB-MS m/z : 347(M+l).
産業上の利用可能性
本発明によれば、医薬、殊に DPP-IV阻害剤として有用な化合物 A又はその塩の効 率的な製造法、特にその製造法を採用した場合の中間体である化合物 B又はその塩 、及びその製造法が提供される。