明 細 書
植物生長調整剤
技術分野
[0001] 本発明は、果樹又は果菜類の果実の成熟を促進するための植物生長調整剤に関 する。
背景技術
[0002] 酵母を農作物に利用した技術としては、酵母に酵母細胞壁分解酵素と蛋白質分解 酵素とを作用させて得られる分解物または酵母の自己消化物に夫々 0.5〜20%のプ 口リン、ゥラシノレを添加したものを禾穀類の幼穂形成前後より出穂までの期間に或い は果菜、根菜、花卉、果樹などへの肥料として施用することを特徴とする禾穀類、果 菜、根菜、花卉、果樹などの増収方法 (例えば、特許文献 1参照。)がある。しかしな がら、この技術は収穫個数を増加させるのみで、農作物 1個当たりの重量の増加や、 収穫を早めるには至らなかった。
[0003] 特許文献 1 :特公平 5— 67121号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] 農産物の品質に対する消費者の要求は高まる一方であり、果実にとっても一段とそ の傾向を強めている。より品質の高い、即ち、色つやが良ぐ風味の優れた、食味の 良い果実に対する購買意欲は生産者の意識の変革を推進し、品質の高い果実の生 産意欲も高まっている。生産者は、そのために施肥、土壌改良、灌水制限栽培など 各種の方法を駆使している。施肥は品質に対する重要な要因であるが、施肥法は高 度の栽培技術を要すことから十分な効果を得られていない場合が多い。土壌改良は 主に土壌水分条件の改善をねらう方法として考えられるが、そのための深耕には労 力や大型の農業機械が必要となる。灌水制限栽培は、果実の肥大期以降の果実へ の水の移行を抑制し果実の甘味の向上を図ったものである力 樹勢の落ち込みが大 きぐその後の継続的な生産に支障が残り収穫量の減少することが知られている。こ のように、高品質果実の生産のためには高度の栽培技術や大型農業機械が必要で
あり、あるいは収穫量の減少を諦めて灌水制限をする必要がある。本発明が解決しよ うとする課題は、いかに容易に、収穫量を減らさずに果実の成熟を促進し、品質を向 上させるかである。さらに、果実の成熟が早まることは、高価格で市場へ出荷でき、生 産者の収入に大きく寄与することが知られていることから、いかに収穫期を早めるか が課題となる。
課題を解決するための手段
[0005] 本発明者らは、生産者の高度な栽培技術を必要としない簡便な方法、すなわち養 液栽培の養液中に資材を混入するという極めて簡便な方法で果実の成熟促進につ いて鋭意検討した。その結果、酵母細胞壁酵素分解物が目的に合致し、作物に薬 害もなぐ養液栽培の養液中に混入することによって、果実の収穫個数の増加、果実 1個当たりの重量の増加、および成熟促進効果等の著しい植物生長調整作用を示 すことを見いだして本発明を完成した。
すなわち、本発明は酵母細胞壁分解物を含む植物生長調整剤を提供する。
また、本発明は果樹又は果菜類の果実の成熟を促進するための酵母細胞壁分解 物の使用を提供する。
また、本発明は、植物生長調整剤に酵母細胞壁分解物を添加することを特徴とす る、該植物生長調整剤の果樹及び果菜類の果実の成熟を促進する効果を向上させ る方法を提供する。
また、本発明は、前記植物生長調整剤を果樹又は果菜類に与えることを含む栽培 方法を提供する。
発明の効果
[0006] 本発明の植物生長調整剤を果樹'果菜類に施用することにより、果実の増収、品質 向上、熟期の促進を可能にする。
発明を実施するための最良の形態
[0007] 本発明の植物生長調整剤は酵母細胞壁分解物を含む。
酵母細胞壁分解物は、例えば酵母細胞壁を、酵素等で処理することによって得るこ とができる。酵母細胞壁として、酵母そのものを用いてもよぐ又は自己消化法 (酵母 菌体内に本来あるタンパク質分解酵素等を利用して菌体を可溶化する方法)、酵素
分解法 (微生物や植物由来の酵素製剤を添加して可溶化する方法)、熱水抽出法( 熱水中に一定時間浸漬して可溶化する方法)、酸あるいはアルカリ分解法 (種々の 酸あるいはアルカリを添加して可溶化する方法)、物理的破砕法 (超音波処理や、高 圧ホモジヱナイズ法、グラスビーズ等の固形物と混合して混合'磨砕することにより破 砕する方法)、凍結融解法 (凍結 ·融解を 1回以上行うことにより破砕する方法)等によ り得られた細胞壁、あるいは酵母から酵母エキスを抽出した後の残渣を用いてもよい 本発明で使用する酵母としては、分類学上あるいは工業利用上酵母と称されるもの であれば特に制限はなぐビール酵母、パン酵母、清酒酵母、ウィスキー酵母、焼酎 酵母、その他アルコール発酵用酵母等が挙げられる。中でも、果実 1個当たりの重量 の増加及び成熟促進効果の点で、ビール酵母、パン酵母、清酒酵母などが好ましく 、ビール醸造後の酵母がより好ましい。
酵母細胞壁を分解する酵素としては、ダルカナーゼ、 α アミラーゼ、 β アミラー ゼ、ダルコアミラーゼ、プルラナーゼ、トランスダルコシダーゼ、デキストラナーゼ、グ ノレコースイソメラーゼ、セノレラーゼ、ナリンギナーゼ、ヘスペリジナーゼ、キシラナーゼ 、へミセ/レラーゼ、マンナナーゼ、ぺクチナーゼ、インべ/レターゼ、ラタターゼ、キチナ ーゼ、リゾチーム、ィヌリナーゼ、キトサナーゼ、 α _ガラクトシダーゼ、プロテアーゼ、 パパイン、ぺプチダーゼ、アミノぺプチダーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、フイターゼ 、酸性フォスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、カタラーせ、グルコースォキシダーゼ 、 ぺノレオキシダーゼ、タンナーゼ、ポリフエノーノレオキシダーゼ、デァミナーゼ、ヌクレ ァーゼなどの工業的に利用できる酵素を用いることができる。例えばダルカナーゼを 含む任意の酵素を用いることができる。例えば、市販されているツユカーゼ(大和化 成 (株)製)、 YL-NL及び YL-15 (レ、ずれも天野ェンザィム (株)製)等を用いることがで きる。酵母細胞壁を分解する酵素の添加量は、酵母細胞壁乾物質量に対し、一般に 0.00001〜100質量%、好ましくは 0.01〜10質量%、より好ましくは 0.1〜2質量%であ る。
前記酵素により酵母細胞壁を分解する際の条件は、使用する酵素の種類、酵素の 添加量等に応じて、当業者によって適宜決定すればよい。
一方、酵母細胞壁の分解には、酵素分解法以外に、 50MPaの高圧ホモジナイザー での分解や、熱水抽出、酵母細胞壁分解菌(例えば Pseudomonas paucimobilis, Art hrobacter luteusなど)を接種し酵母細胞壁分解物を得ることができる。
前記酵母細胞壁酵素分解物を果樹又は果菜類に与えることにより、果実の収穫個 数の増加、果実 1個当たりの重量の増加、および成熟促進効果等の著しい植物生長 調整作用を示す。本明細書において、「成熟促進効果」とは、果実の形成時期を早 め、収穫可能になるまでの期間を短縮することを意味する。
[0008] 前記酵母細胞壁分解物は、単独で用いてもよぐまた農薬、肥料、園芸用培養土 等と組み合わせて用いてもよい。また、特定防除資材に添加して用いてもよい。近年 では天然由来から得られた病害虫'雑草防除作用又は植物生理機能を増進する成 分について特定防除資材として認可する政策もとられている。この特定防除資材とは 特定農薬とも呼ばれ、農薬取締法に基づき指定された農業用資材である。特定防除 資材 (特定農薬)は原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすお それがないことが明らかであると確認された農薬でなければならず、(1 )病害虫や雑 草に対する防除効果又は農作物等の生理機能の増進若しくは抑制の効果が確認さ れること、(2)農作物等、人畜及び水産動植物への安全性が確認されることが満たさ れていなければならない。
また、本発明の植物生長調整剤の形態は、液状、粉状、顆粒状等のいずれの形態 で製品化してもよい。また、散布に関しては、蒸気製品を直接散布しても、あるいは 水等で適当な濃度になるように希釈して散布してもよい。さらに、散布方法も特に限 定されず、例えば、植物の種子、葉、茎等に直接散布する方法、植物を栽培する培 養期や土壌中に散布する方法等のいずれであってもよい。なお、肥料中に配合する 場合、肥料としては、窒素、燐酸、カリウムを含有する化学肥料、油カス、魚カス、骨 粉、海藻粉末、アミノ酸、糖類、ビタミン類などの有機質肥料等、その種類は限定され ない。
[0009] 本発明の植物生長調整剤には、酵母細胞壁分解物の果実の収穫個数の増加、果 実 1個当たりの重量の増カロ、および成熟促進効果を妨げない範囲で、水溶性溶剤、 界面活性剤等の成分を配合することができる。
水溶性溶剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレンダリ コール、プロピレングリコールなどの 2価アルコールや、グリセリンのような 3価アルコ ール等が挙げられる。
[0010] 界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性 剤及び陰イオン界面活性剤等水に溶解するものが使用できる。
非イオン界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソ ルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸ェ ステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステ ル、ポリオキシアルキレンポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、樹脂 酸エステル、ポリオキシアルキレン樹脂酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルェ 一テル、ポリオキシアルキレンアルキルフエニルエーテル、アルキル(ポリ)グリコシド、 ポリオキシアルキレンアルキル (ポリ)グリコシド等が挙げられる。好ましくは、窒素原子 を含まないエーテル基含有非イオン界面活性剤及びエステル基含有非イオン界面 活性剤が挙げられる。特に好ましくは、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステ ル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸ェ ステル、ポリオキシアルキレンポリグリセリン脂肪酸エステル等のォキシアルキレン基 を含むエステル基含有非イオン界面活性剤や、アルキル (ポリ)グリコシド等の糖骨格 を有する窒素原子を含まないエーテル基含有非イオン界面活性剤が挙げられる。
[0011] 陰イオン界面活性剤としては、カルボン酸系、スルホン酸系、硫酸エステル系及び リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。好ましくは、カルボン酸系及びリン酸ェ ステル系界面活性剤である。カルボン酸系界面活性剤としては、例えば炭素数 6〜3 0の脂肪酸又はその塩、多価カルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル カルボン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルアミドエ一テルカルボン酸塩、ロジン酸 塩、ダイマー酸塩、ポリマー酸塩、トール油脂肪酸塩等が挙げられる。スルホン酸系 界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩 、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、ジフエニルエーテルス ルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸の縮合物塩、ナフタレンスルホン酸の縮 合物塩等が挙げられる。硫酸エステル系界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸
エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンァ ルキルフエニルエーテル硫酸エステル塩、トリスチレン化フヱノール硫酸エステル塩、 ポリオキシアルキレンジスチレン化フエノール硫酸エステル塩、アルキルポリグリコシド 硫酸塩等が挙げられる。リン酸エステル系界面活性剤として、例えばアルキルリン酸 エステル塩、アルキルフヱニルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルリン 酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフエニルリン酸エステル塩等が挙げら れる。前記塩としては、例えば金属塩(Na、 K、 Ca、 Mg、 Zn等)、アンモニゥム塩、ァ ルカノールアミン塩、脂肪族ァミン塩等が挙げられる。
[0012] 両性界面活性剤としては、アミノ酸系、ベタイン系、イミダゾリン系、ァミンオキサイド 系が挙げられる。アミノ酸系としては、例えばァシルアミノ酸塩、ァシルサルコシン酸 塩、ァシロイルメチルァミノプロピオン酸塩、アルキルアミノプロピオン酸塩、ァシルァ ミドエチルヒドロキシェチルメチルカルボン酸塩等が挙げられる。ベタイン系としては、 アルキルジメチルベタイン、アルキルヒドロキシェチルベタイン、ァシルアミドプロピル ヒドロキシプロピルアンモニアスルホベタイン、ァシルアミドプロピルヒドロキシプロピル アンモニアスルホベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルジメチルカルボキシメチルァ ンモニアベタイン等が挙げられる。イミダゾリン系としては、アルキルカルボキシメチル ヒドロキシェチルイミダゾリニゥムベタイン、アルキルエトキシカルボキシメチルイミダゾ リウムべタイン等が挙げられる。ァミンオキサイド系としては、アルキルジメチルァミン オキサイド、アルキルジエタノールァミンオキサイド、アルキルアミドプロピルアミンォキ サイド等が挙げられる。
上記界面活性剤は、単独で、又は二種以上混合して使用してもよい。
[0013] 本発明の植物生長調整剤は、更に、ペプチド、多糖類、糖タンパク質及び脂質力 選ばれるェリシター活性を有する物質の一種以上を含有するものを添加することもで きる。ェリシター活性とは、植物体内におけるファイトァレキシン等の抗菌性物質の合 成を誘発する作用である。
ェリシター活性を有する物質は、植物に固有の物質が種々知られており、対象とす る植物に応じて適宜選定すればよいが、グルカンオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサン オリゴ糖、ヘプタ一 β—ダルコシド、システミン、カゼインタンパクのキモトリブシン分
解物などの外因性ェリシター、オリゴガラクチュロン酸、へキソース、ゥロン酸、ベント ース、デォキシへキソースなどの内因性ェリシター、その他に、ショ糖エステル、カル ボキシメチルセルロース(CMC)、カラギーナン、真菌類の菌糸分解物、海藻抽出物 などが挙げられ、水溶性で安定供給可能なものが好ましい。
[0014] 本発明の植物生長調整剤は、更に、植物生長調節剤を添加することもできる。植物 生長調節剤としては、オーキシン拮抗剤としては、マレイン酸ヒドラジド剤、ゥニコナゾ ール剤等、オーキシン剤としては、インドール酪酸剤、 1_ナフチルァセトアミド剤、 4- CPA剤等、サイトカイニン剤としては、ホルクロルフエニュロン剤等、ジベレリン剤とし てはジベレリン剤等、その他のわい化剤としては、ダミノジット剤等、蒸散抑制剤とし ては、パラフィン剤等、その他の植物生長調節剤としては、コリン剤等、生物由来の 植物生長調節剤としては、クロレラ抽出物剤等、エチレン剤としては、ェテホン剤等が 挙げられる。
[0015] 本発明の植物生長調整剤は、酵母細胞壁分解物を乾物として 0.00001〜30質量% 、特に 0.001〜0.1質量%含有することが好ましい。また、本発明の植物生長調整剤は 、好ましくは酵母細胞壁分解物を乾物として 10アール当たり 10〜800gで与えられ、よ り好ましくは 10アール当たり 50〜250gで与えられる。上記範囲内で与えることで、より 有効な果樹及び果菜類の果実の成熟を促進する効果を得ることができる。
本発明の植物生長調整剤の適応作物は、果樹又は果菜類であり特に限定されるも のではないが、例えば果樹類ではミカン類、リンゴ、ナシ、ブドウ、カキ、モモ、ォゥトウ 、ビヮ、タリ、ウメなどであり、果菜類ではトマト、ナス、ピーマン、イチゴ、キユウリ、メロ ン、スイカ、カボチヤなどである。本発明の植物生長調整剤の施肥回数は、特に限定 されるものではなレ、が、通常 1回から 20回までである。本発明の植物生長調整剤の施 肥時期は、作物によって異なるものであって、特に限定されるものではない。例えば 果菜類では育苗時期から収穫期までである。
実施例
[0016] (ビール酵母細胞壁液の調製)
ビール醸造後の酵母を原料とし、酵素分解法により得られた、乾物濃度 15質量% の酵母液 1.5Lから遠心分離により上清を除去し、酵母細胞壁スラリー 1000gを得た。
水 500gを加え、 pHを 5.5に調整後、乾物質量に対し 0.5%の YL-15 (天野ェンザィム) を添加し、 55°Cで 18時間反応させ、酵母細胞壁液 1500gを得た。
(パン酵母細胞壁液の調製)
パン酵母を原料とし、酵素分解法により得られた、乾物濃度 15質量%の酵母液 1.5 Lから遠心分離により上清を除去し、酵母細胞壁スラリー 1000gを得た。水 500gを加え 、 pHを 5.5に調整後、乾物質量に対し 0.5%の YL_15 (天野ェンザィム)を添加し、 55 °Cで 18時間反応させ、 80°Cで 10分間処理した後に酵母細胞壁液 1500gを得た。
[0017] (海洋酵母細胞壁液の調製)
海洋酵母を原料とし、酵素分解法により得られた、乾物濃度 15質量%の酵母液 1.5 Lから遠心分離により上清を除去し、酵母細胞壁スラリー 1000gを得た。水 500gを加え 、 pHを 5.5に調整後、乾物質量に対し 0.5%の YL_15 (天野ェンザィム)を添加し、 55 °Cで 18時間反応させ、 80°Cで 10分間処理した後に酵母細胞壁液 1500gを得た。
[0018] (トルラ酵母細胞壁液の調製)
トルラ酵母 (Candida utilis)を原料とし、酵素分解法により得られた、乾物濃度 15質 量%の酵母液 1.5Lから遠心分離により上清を除去し、酵母細胞壁スラリー 1000gを得 た。水 500gを加え、 pHを 5.5に調整後、乾物質量に対し 0.5%の YL_15 (天野ェンザィ ム)を添加し、 55°Cで 18時間反応させ、 80°Cで 10分間処理した後に酵母細胞壁液 15 00gを得た。
[0019] (実施例 1)
イチゴ(品種:ペチ力)苗を定植し、 EC0.6に調整した養液土耕 1号 (大塚化学)を施 肥し、 1週間後に、養液土耕 1号 (EC0.6、大塚化学)に酵母細胞壁固形分を lOppm 混入した液肥を施肥した。定植後、 60、 70、 80、 90、 100、 110日目に果実の収穫を行 レ、、果実の個数、重量及び等級の決定を行った。
[0020] (実施例 2)
イチゴ(品種:ペチ力)苗を定植し、 EC0.6に調整した養液土耕 1号 (大塚化学)を施 肥し、 1週間後に、養液土耕 1号 (EC0.6、大塚化学)に酵母細胞壁固形分を lOOppm 混入した液肥を施肥した。定植後、 60、 70、 80、 90、 100、 110日目に果実の収穫を行 い、果実の個数、重量及び等級の決定を行った。
[0021] (実施例 3)
イチゴ(品種:ペチ力)苗を定植し、 EC0.6に調整した養液土耕 1号 (大塚化学)を施 肥し、 1週間後に、養液土耕 1号 (EC0.6、大塚化学)に酵母細胞壁固形分を ΙΟΟΟρρ m混入した液肥を施肥した。定植後、 60、 70、 80、 90、 100、 110日目に果実の収穫を 行い、果実の個数、重量及び等級の決定を行った。
[0022] (比較例 1)
イチゴ(品種:ペチ力)苗を定植し、 EC0.6に調整した養液土耕 1号 (大塚化学)を施 肥した。定植後、 60、 70、 80、 90、 100、 110日目に果実の収穫を行い、果実の個数、 重量及び等級の決定を行った。
実施例:!〜 3及び比較例 1の結果を表:!〜 3、図 1及び 2に示す。
[0023] [表 1]
表 1
上物: 7g以上、下物 : 4g以上 7g未満、屑果: 4g未満、障害:障害のある果実
[0024] [表 2]
表 2 イチ (上物) 収量累計
[0025] [表 3]
[0026] (結果)
イチゴ養液栽培時の養液に混入することにより、収穫時期を早め、収穫個数、及び 1粒当たりの重量を増加させ、また、ランナー数を減少させることができる。酵母細胞 壁にダルカナーゼを作用させて得られた資材 (酵母細胞壁酵素分解物)を植物体に 与えることにより、植物体が花芽形成 ·果実形成状態となり、収穫時期を早め、収穫 個数、及び 1粒当たりの重量を増加させることができる。
また、ランナーの刈り取り作業は農家にとって非常に手間の力かる作業であるが、 本発明の資材を用いることによりランナー数を減少させることができ、農家の作業を 大幅に軽減することができる。
[0027] (実施例 4)
育苗用ポッドにハツカダイコン種子(品種:レッドチャイム)を播種し、播種後 10日目 に乾物濃度 250ppmに調整した上記ビール酵母細胞壁液に根を浸漬させた。 1回目 の処理後 10日目に、乾物濃度 250ppmに調整した上記ビール酵母細胞壁液に根を 浸漬させ、 2回目の処理を行った。播種後 38日目に収穫し、無作為に選抜した 10株 について湿重量、乾燥重量を調査した。
[0028] (実施例 5)
育苗用ポッドにハツカダイコン種子(品種:レッドチャイム)を播種し、播種後 10日目 に乾物濃度 250ppmに調整した上記トルラ酵母細胞壁液に根を浸漬させた。 1回目の 処理後 10日目に、乾物濃度 250ppmに調整した上記トルラ酵母細胞壁液に根を浸漬
させ、 2回目の処理を行った。播種後 38日目に収穫し、無作為に選抜した 10株につ いて湿重量、乾燥重量を調査した。
[0029] (比較例 2)
育苗用ポッドにハツカダイコン種子(品種:レッドチャイム)を播種し、播種後 10日目 に水道水に根を浸漬させた。 1回目の処理後 10日目に、水道水に根を浸漬させ、 2 回目の処理を行った。播種後 38日目に収穫し、無作為に選抜した 10株について湿 重量、乾燥重量を調査した。
[0030] [表 4コ
[0031] (結果)
表 4の結果から、本発明の植物生長調整剤を適用することにより、比較例 2と比べる と、植物体の重量、特に可食部である地下部の植物体重量を増加させることが明ら かとなつた。
[0032] (実施例 6)
育苗用ポッドにハツカダイコン種子(品種:雪小町)を播種し、播種後 7日目に乾物 濃度 250ppmに調整した上記ビール酵母細胞壁液に根を浸漬させた。 1回目の処理 後 10日目に、乾物濃度 250ppmに調整した上記ビール酵母細胞壁液に根を浸漬させ 、 2回目の処理を行った。播種後 31日目に収穫し、無作為に選抜した 5株について 湿重量、乾燥重量を調査した。
[0033] (実施例 7)
育苗用ポッドにハツカダイコン種子(品種:雪小町)を播種し、播種後 7日目に乾物 濃度 250ppmに調整した上記海洋酵母細胞壁液に根を浸漬させた。 1回目の処理後 10日目に、乾物濃度 250ppmに調整した上記海洋酵母細胞壁液に根を浸漬させ、 2 回目の処理を行った。播種後 31日目に収穫し、無作為に選抜した 5株について湿重 量、乾燥重量を調査した。
[0034] (実施例 8)
育苗用ポッドにハツカダイコン種子(品種:雪小町)を播種し、播種後 7日目に乾物 濃度 250ppmに調整した上記パン酵母細胞壁液に根を浸漬させた。 1回目の処理後 1 0日目に、乾物濃度 250ppmに調整した上記パン酵母細胞壁液に根を浸漬させ、 2回 目の処理を行った。播種後 31日目に収穫し、無作為に選抜した 5株について湿重量 、乾燥重量を調査した。
[0035] (実施例 9)
育苗用ポッドにハツカダイコン種子(品種:雪小町)を播種し、播種後 7日目に乾物 濃度 250ppmに調整した上記トルラ酵母細胞壁液に根を浸漬させた。 1回目の処理後 10日目に、乾物濃度 250ppmに調整した上記トルラ酵母細胞壁液に根を浸漬させ、 2 回目の処理を行った。播種後 31日目に収穫し、無作為に選抜した 5株について湿重 量、乾燥重量を調査した。
[0036] (比較例 3)
育苗用ポッドにハツカダイコン種子(品種:雪小町)を播種し、播種後 7日目に水道 水に根を浸漬させた。 1回目の処理後 10日目に、水道水に根を浸漬させ、 2回目の 処理を行った。播種後 31日目に収穫し、無作為に選抜した 5株について湿重量、乾 燥重量を調査した。
[0037] [表 5]
表 5
[0038] (結果)
表 5の結果から、本発明の植物生長調整剤を適用することにより、比較例 3と比べる と、地上部ならびに地下部の植物体重量を増加させることが明らかとなった。
図面の簡単な説明
[0039] [図 1]イチゴ上物時期別収量の変化を示すグラフである。
[図 2]ランナー数発生に対する調整剤添カ卩の効果を示すグラフである。