明 細 書
電子写真シームレスベルトの製造方法および電子写真装置
技術分野
[0001] 本発明は、電子写真方式を用いた複写機やカラープリンターなどの画像形成装置
、いわゆる電子写真装置に用いるシームレスベルト、すなわち電子写真シームレスべ ルトの製造方法に関する。また、本発明は、該製造方法により得られた電子写真シー ムレスベルトを有する電子写真装置に関する。
背景技術
[0002] 中間転写ベルトや転写材搬送ベルトなどの電子写真シームレスベルトを使用した 電子写真装置は、カラー画像情報の複数の成分色画像を順次積層転写してカラー 画像を合成再現した画像形成物を出力するカラー電子写真装置として有効である。
[0003] 現在、電子写真シームレスベルトの製造方法としては、チューブ押し出し成形方法 、インフレーション成形方法、遠心成形方法、ブロー成形方法、射出成形方法などが 挙げられる。
[0004] これら各種方法の中でも、ブロー成形方法は、金型を使用するため、外形寸法が安 定ィ匕するという利点がある。また、ブロー成形方法の中でも、延伸ブロー成形方法は 、延伸によって分子配向が起こるため、成形品の強度が向上するという利点がある。 また、延伸ブロー成形方法は、繰り返し再現性が高いので、均質な品質の製品が安 定して成形でき、また、高速で成形できるため、コストダウンが可能となる成形技術で ある。
[0005] このような延伸ブロー成形よる電子写真シームレスベルトは、いくつか提案されてい る(例えば、特開平 05— 061230号公報(特許文献 1 )および特開 2001— 018284 号公報 (特許文献 2)参照)。
[0006] し力しながら、本発明者らの検討によれば、この成形方法で作製される電子写真シ ームレスベルトについては以下のような課題が存することを認識した。
[0007] 中間転写ベルトや転写材搬送ベルトなどの電子写真シームレスベルトにお 、て、そ の膜厚ムラがある場合、ベルト内における転写の均一性が損なわれ画像の色ずれを
起こしたり、ベルト内においての一様な転写効率が得られな力つたりすることがある。 さらには、走行が不安定となり、ベルトの耐久性が低下するおそれがある。また、電子 写真シームレスベルトを中間転写ベルトとして用いた場合、張力と繰り返しの曲げ伸 ばし応力を常に受けており、長期間使用すると中間転写ベルトが破断したり亀裂を生 じたりする場合がある。さらに電子写真シームレスベルトを中間転写ベルトとして用い た場合、上記応力により経時的に徐々に周方向に伸びる、いわゆるクリープを生じや すい。クリープによるサイズ変化が大きいと、当初の設計との差異を生じて色ずれを 助長したり、ハーフトーン画像のムラなどの画像不良が発生したりする。また、中間転 写ベルトの回転に支障をきたすこともあり、中間転写ベルトの寿命を短縮する大きな 要因となっている。
[0008] 一般に、延伸ブローによって得られる成形品の外形寸法は、成形用金型(以下、「 ブロー金型」ともいう)の使用により、精度が高くなる。その反面、プリフォームに高圧 の気体を流入させて膨張ー賦形するという製法上、ブロー成形時に均一にブローを することは非常に難しいため、厚さのムラが生じやすい。前記したように極めて高い精 度の厚さの均一性が求められている電子写真シームレスベルトにおいては、そのよう な厚さのムラは是非とも解決した 、課題である。
しかし、従来の延伸ブロー成形方法では、膜厚ムラのない電子写真シームレスベル トを形成するのは困難であった。
[0009] 特許文献 1 :特開平 05— 061230号公報
特許文献 2:特開平 2001— 018284号公報
発明の開示
[0010] そこで、本発明は、膜厚が均一でかつ寸法精度及び耐久性にも優れ、繰り返し使 用しても画像特性に優れた電子写真シームレスベルトを安定してかつ低コストで製造 することができる方法を提供するものである。
また、本発明は高品位な電子写真画像を安定して提供することのできる電子写真装 置を提供するものである。
[0011] 本発明者らは、上記課題に対し種々の検討を重ねた。その結果、延伸ブロー成形 品の厚さのムラは、プリフォームを延伸ブローさせている過程において該プリフォーム
内に生じている内力である応力に起因して形成されることを確認した。延伸ブローに おいては、プリフォームの延伸ブロー過程において、成形品または成形途中品が破 裂したり裂けたりすることを防ぐ必要がある。そのため、従来の延伸ブロー成形法に おいては、プリフォームが最終的に金型内面に接触する状態にまでブローされたとき にお 、ても、榭脂が伸縮性に富んだ状態を維持して 、るように榭脂材料や延伸プロ 一成形条件が経験的に設定されていた。ここで、榭脂が伸縮性に富んだ状態とは、 すなわち、プリフォームに生じる応力は低い状態ということである。つまり、延伸倍率 の大小に関わらず、成形途中品に生じる応力は極めて低い状態に設定されていた のである。この場合、上記したように延伸ブロー時に成形品が裂けたり、破裂したりす ることは抑えられる。し力しながら、延伸ブローされている途中に成形途中品に厚さの ムラが生じたとしても、プリフォームに生じる応力は低い状態に設定されているため、 厚い部分と薄い部分の間での応力差はほとんどない。そのため、その厚さのムラが維 持されたまま膨らんでしまい、その結果、成形途中に生じた厚さのムラがそのまま反 映された成形品となってしまう。
そこで本発明者らは、榭脂材料及び延伸ブローの条件を適宜選択することにより、 延伸ブローの倍率が大きくなつたときに成形途中品に生じる応力が大きくなるように 設定してみた。その結果、厚さの均一性に極めて優れた成形品を得ることができた。 この現象について、図 16を用いて説明する。プリフォーム 301は延伸棒 303により延 伸されたのち、エアを吹き込みことにより膨らみシームレスベルト成形用金型(シーム レス状のベルトを成形するための金型)内で成形される。プリフォーム 301が伸ばされ 始めるときは、アモルファス状態の熱可塑性榭脂(例えば、ポリエチレンナフタレート( 以下「PEN」 t 、う)榭脂)が Tg以上に加熱された状態 (例えば、 145°C)であるので プリフォームに生じる応力は低い。したがって、プリフォーム 301は、自由に膨らもうと する。プリフォーム 301が自由に膨らみ始めると、大きく膨らむ部分 304と小さく膨ら む部分 305ができてくる(膨らみムラが発生している状態)。ところが、プリフォームが 大きく膨らんだ部分 304 (膜厚も薄くなつている状態)は応力が高い状態であるので、 エアによって膨らませられているプリフォームは、これ以上は膨らみにくい。それに対 して、小さく膨らんでいる部分 305 (膜厚が厚い部分)は応力が低い状態にある。ここ
で、エア圧力はプリフォーム内部に均一に作用しているから、小さく膨らんでいる部 分が今度は膨らみ始め厚さが薄くなつてくるのである。このように膜厚の厚いプリフォ ーム力 ブローされて膜厚が薄くなつていく状態において、常に膜厚を均一化させよ うとする状態となっていく。この状態が図 17であり、このように最初は膨らみムラがあつ ても最終的に均等な厚さに膨らむようになってくる。このような効果を有することにより 延伸ブローを行ったときに膨らみのムラが解消され最終的に厚さが均一の成形品が 得られるのである。つまり、成形品が破裂しないよう榭脂材料及び延伸ブロー条件を 選択することを前提に、さらに延伸ブローの延伸倍率によって成形途中品に生じる応 力が大きくなるよう延伸ブロー時の条件を設定する。それにより、均一な膜厚の成形 品が得られることを本発明者らは見出した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1) (i)熱可塑性榭脂を含む熱可塑性榭脂混合物カゝらなる外径 aの略円筒形状のプ リフォームを、内径 bの円筒形状のキヤビティを有するシームレスベルト成形用金型に 装着し、所定の延伸温度 T1で延伸ブロー成形を行い、延伸ブロー成形物を得るェ 程と、
(ii)前記工程 (i)によって得られた延伸ブロー成形物を切断してシームレス状のベル トを得る工程と、を有する電子写真シームレスベルトの製造方法であり、
前記熱可塑性榭脂混合物は、該熱可塑性榭脂混合物カゝらなるシート状の試験片を J ISK7161に準拠した加熱引つ張り試験に供することによって得られる引っ張り応力 · ひずみ曲線から求めたパラメータ SZPが、 2. 0以上 15. 0以下となる温度 T2を有す る熱可塑性榭脂混合物であり、かつ
前記工程 (i)において、前記所定の延伸温度 T1を前記温度 T2とすることを特徴とす る、電子写真シームレスベルトの製造方法。
(ただし、 Pは、引っ張り応力 ·ひずみ曲線において、ひずみ量 0を延伸倍率 1倍とし たときの、試験片の延伸倍率が 0. 6 X (b/a)に相当するときの応力であり、 Sは、試 験片の延伸倍率が 1. 6 X (bZa)に相当するときの応力である。また、 (b/a)≥l . 7 である。 )
(2)前記 (bZa)が 3. 1〜5. 0の範囲にある(1)に記載の電子写真シームレスベルト
の製造方法。
(3)前記 (bZa)が 3. 8〜4. 5の範囲にある(2)に記載の電子写真シームレスベルト の製造方法。
(4)支持体を有する電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電するための帯電 手段と、前記帯電された電子写真感光体上に静電潜像を形成するための潜像形成 手段と、該静電潜像を現像剤で顕在化する現像手段と、顕在化された画像を中間転 写ベルトに転写する一次転写手段と該中間転写ベルトに転写された画像をさらに転 写材に転写する二次転写手段を有する転写手段とを有する電子写真装置において 前記中間転写ベルトは、 (1)〜(3)のいずれかの製造方法によって製造された電子 写真シームレスベルトであることを特徴とする電子写真装置。
(5)前記転写手段は、前記中間転写ベルト上に残留した現像剤を一次転写時と逆 の極性に帯電させ、該中間転写ベルト上力 一次転写と同時に前記電子写真感光 体に戻すクリーニング手段を有することを特徴とする (4)に記載の電子写真装置。
(6)支持体を有する電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電するための帯電 手段と、前記帯電された電子写真感光体上に静電潜像を形成するための潜像形成 手段と、該静電潜像を現像剤で顕在化する現像手段と、顕像化された画像を色ごと に転写材に転写しながら搬送する転写材搬送ベルトを有する転写手段とを有する電 子写真装置において、
前記転写材搬送ベルトは、 (1)〜(3)の 、ずれかの製造方法によって製造された電 子写真シームレスベルトであることを特徴とする電子写真装置。 図面の簡単な説明
[図 1]本発明の製造方法で得られた電子写真シームレスベルトを中間転写ベルトとし て用いた 4プロセスのフルカラー電子写真装置の概略構成を示す図である。
[図 2]本発明の製造方法で得られた電子写真シームレスベルトを中間転写ベルトとし て用いた 4連電子写真感光体方式のフルカラー電子写真装置の概略構成を示す図 である。
[図 3]本発明の製造方法で得られた電子写真シームレスベルトを転写材搬送ベルトと
して用いたフルカラー電子写真装置の概略構成を示す図である。
[図 4]応力,延伸倍率曲線の一例を示す図である。
[図 5]応力,延伸倍率曲線の温度による変化を示す図である。
[図 6]射出成形によるプリフォーム作製の概略図である。
[図 7]ヒーターによるプリフォーム均一加熱の概略図である。
[図 8]均一延伸ブロー成形の説明図である。
[図 9]均一延伸ブロー成形の説明図である。
[図 10]射出延伸ブロー成形品取り出しの概略図である。
[図 11]射出延伸ブロー成形品の両端部除去の概略図である。
[図 12]径方向の延伸倍率と縦方向の延伸倍率の説明図である。
[図 13]実施例における応力,延伸倍率曲線図である。
[図 14]比較例における応力,延伸倍率曲線図である。
[図 15]応力,延伸倍率曲線を得るために用いる試験片をシート状に成形するために 用いた Tダイ成形装置を示す図である。
[図 16]図 4のパターン 1における延伸倍率 4〜6と同様の応力を示すようなシームレス ベルト成形用金型を用いた場合を説明するための図である。
[図 17]図 4のパターン 1における延伸倍率 4〜6と同様の応力を示すようなシームレス ベルト成形用金型を用いた場合を説明するための図である。
[図 18]図 4のパターン 1における延伸倍率 2〜3と同様の応力を示すようなシームレス ベルト成形用金型を用いた場合を説明するための図である。
発明を実施するための最良の形態
[0015] 以下に、本発明の電子写真シームレスベルトの製造方法における、延伸ブロー成 形時の温度と延伸倍率について説明する。
[0016] 本発明に係る「引っ張り応力 ·ひずみ曲線」は、次のようにして得られる。すなわち、 本発明に使用されるプリフォームと同一の熱可塑性榭脂混合物を溶融押し出し装置 にてシート状に成形したシートサンプル (以下「試験片」)を得る。次に、この試験片を
JIS K7161— 1994に係るプラスチックの弓 I張試験に準拠した加熱弓 Iつ張り試験に 供することによって「引っ張り応力 'ひずみ曲線」は得られる。
[0017] 本発明においては、試験片を複数用意し、当該試験片の各々を異なる温度に加熱 して上記加熱引つ張り試験を行 、、異なる温度に加熱した各々の試験片につ 、て引 つ張り応力'ひずみ曲線を得る。後述の実施例においては、 80〜300°Cの範囲内で 5°Cおきに温度を変化させ、各々の引っ張り応力'ひずみ曲線を得る。
[0018] この曲線について図 4のパターン 1を用いて説明する。図 4において、縦軸は試験 片の応力、横軸は試験片のひずみ、すなわち伸びを示し、ここでは試験片の延伸倍 率として記した。したがって、原点では、延伸倍率が 1となる。
[0019] 同図に示した応力'延伸倍率曲線は、次のようにして得られる。ガラス転移点 118 °Cを有する結晶性榭脂である PEN榭脂を図 15に示される Tダイ成形装置でシート状 に成形した試験片を複数用意する。各々の試験片を、ガラス転移点(以下、「Tg」と いう)以上の異なる温度に加熱する。次に、上記の JIS規格に準拠して、引っ張り試験 機により 1軸方向に加熱引っ張り試験を行うことによって応力,延伸倍率曲線が得ら れる。
[0020] そして温度を 145°Cとした試験片に関する引っ張り応力 ·ひずみ曲線のプロフアイ ルが図 4のパターン 1である。パターン 1において、延伸倍率が 2〜3の範囲にあると きは PENの温度が Tg (= 118°C)以上となっているのでアモルファス状態の分子運 動が活発になっており、フィルムが軟ィ匕し、加熱引っ張り試験をしても応力が増加し ない状態となっている。次に延伸倍率力 〜 6の範囲にあるときの応力をみると、徐々 に応力が高くなつてきて 、ることがわ力る。これは PENの分子鎖が弓 Iき延ばされた方 向に並びはじめることで、分子同士の距離が縮まり分子の結晶化が起こっていること を表している。すなわち、分子配向が起こり結晶化することで榭脂が硬化していきつ つある状態にある。
[0021] 延伸倍率の増大によって応力が急激に増加する特性を示す樹脂でプリフォームを 成形し、プリフォームの加熱温度を 145°Cとした温度条件で、シームレスベルト成形 用金型のサイズ (延伸倍率)を変えて延伸ブローを行った場合、以下のような現象が 発生する。なお、 145°Cとは、図 4のパターン 1の関係が得られる温度である。
[0022] この現象にっ 、て、まず、最終的なブロー成形後の延伸倍率 (bZa)が図 4のパタ ーン 1における延伸倍率 4〜6と同様の応力を示すようなシームレスベルト成形用金
型を用いた場合を、図 16を用いて説明する。まず、プリフォーム 301は、延伸棒 303 により延伸される。延伸されたプリフォーム 301は、エアの吹き込みにより膨らみ、シ ームレスベルト成形用金型内で成形される。プリフォーム 301が伸ばされ始めるとき は、アモルファス状態の PEN榭脂が Tg以上に加熱された状態(145°C)であるので プリフォームに生じる応力は低い。したがって、プリフォーム 301は、自由に膨らもうと する。 自由に膨らみ始めると、大きく膨らむ部分 304と小さく膨らむ部分 305ができて くる (膨らみムラが発生している状態)。ところが、プリフォームが大きく膨らんだ部分 3 04 (膜厚も薄くなつている状態)が前述の図 4のパターン 1の延伸倍率が 4〜6の範囲 の部分に相当した延伸状態となった場合、延伸され結晶化してくる状態となってくる。 この状態は応力が大きい状態であるので、エアによって膨らませられているプリフォ ームにおいては、膨らみにくい状態となるということである。それに対して、小さく膨ら んでいる部分 305 (膜厚が厚い部分)は図 4のパターン 1の延伸倍率が低い状態 (例 えば延伸倍率 2〜3)であるから応力が小さい状態にある。ここで、エア圧力はプリフ オーム内部に均一に作用して 、るから、小さく膨らんで 、る部分が今度は膨らみ始め 厚さが薄くなつてくるのである。このように膜厚の厚 、プリフォーム力もブローされて膜 厚が薄くなつていく状態において、常に膜厚を均一化させようとする状態となっていく 。この状態が図 17であり、このように最初は膨らみムラがあっても最終的に均等な厚 さに膨らむようになってくる。このような効果を有することにより延伸ブローを行ったとき に膨らみのムラが解消され最終的にブローされた成形品の厚さが均一となるのである 本発明において、シート状のサンプルを加熱引っ張り試験することにより得たパラメ ータ SZPを用いる理由を説明する。ここでシート状サンプルに施す加熱引っ張り試 験では、引っ張り方向は 1方向のみ、すなわち 1軸延伸である。それに対し、実際の 延伸ブローを行う場合にはプリフォームは縦方向と横方向の両方に膨らむので 2軸 延伸となっている。この 2軸方向で延伸時の応力測定をすることは、例えば、東洋精 機製作所製の二軸延伸試験装置を用いて測定可能であるが、測定が複雑で、サン プルセッティングなどに時間がかかる。これに対して 1軸延伸測定はサンプルセッティ ングが容易であり、多くのサンプルを短時間で測定することができる。そこで、本発明
者らは、シート状のサンプルを 1軸方向に延伸したときの延伸倍率と応力との関係、 並びに 2軸方向の延伸となる延伸ブロー成形物の延伸倍率と応力の関係について 検討した。
[0024] その結果、 1軸延伸と 2軸延伸(延伸ブロー)では、例えば、 1軸方向で 5. 0倍で破 断する材料、温度であった場合に、延伸ブローの倍率 (bZa)が、例えば径方向 3. 7 、縦 3. 0 (これを乗じた倍率では 11. 1)のときは成形可能であった。し力しながら、例 えば径方向 4. 4、縦 2. 2 (乗じると 9. 68)のときは破裂し、成形不可能であった。こ のように、 1軸延伸倍率とブロー成形時の径方向延伸倍率または縦の延伸倍率の値 は同一ではなぐさらにシートサンプルの 1軸方向延伸倍率は縦延伸よりも横延伸( 径方向の延伸)の影響度が大であることが、本発明者らによって見出された。
[0025] そこで、本発明者らは、 1軸方向延伸倍率とブロー成形時の径方向の延伸倍率の 関係について鋭意検討した結果、以下のことを見出した。
1) 1軸延伸を行ったときの応力の低い状態となっているときの倍率は、ブロー成形を 行ったときの径方向(横)延伸倍率 (bZa)が 0. 6のときに相当する。
2)ブロー成形してブロー金型内壁に当接するまで延伸された状態の倍率は、ブロー 成形の径方向 (横)延伸倍率 (bZa)が 1. 6のときに相当する。
3)ブロー成形の際の延伸の前後で、プリフォームの径方向に生じる応力の比を 2以 上 15以下としたときに、延伸過程で部分的に生じる応力差により膜厚の均一化が図 られる。
[0026] ところで、例えば図 4のパターン 1の PEN榭脂を用いて延伸ブロー成形を行ったと しても、延伸の前後において、プリフォームの径方向に生じる応力に十分な差がない 場合について説明する。この場合には、均一な膜厚の成形品は得られないが、この ことを図 18を用いて具体的に説明する。 306はプリフォームである力 図 16のプリフ オームと比較すると、その径は大きい。このプリフォーム径が大きいということはブロー 時の径方向延伸倍率が低い(例えば延伸倍率が 2)ということである。この場合、プリ フォームのサイズと金型のサイズが近いものとなっている。したがって、図 18のように ブローされるとき、大きくブロー(大きく延伸)されていない状態でブロー金型に接触 する状態 307になる。つまり、図 4のパターン 1の 2〜3倍の状態で分子配向による膜
厚の均一化がされる前にブローが終了してしまうので、膜厚が不均一になってしまう。 また、ブロー時の径方向の延伸倍率が高過ぎる (例えば延伸倍率が 6超)場合、すな わち、延伸されるプリフォームのサイズに対しブロー金型のサイズが非常に大きいサ ィズとした場合、試験片は裂けてしまって応力は 0となってしまう。その結果、本発明 を満足し得ないものとなる。
[0027] 一方、 PEN榭脂からなる試験片の加熱温度を 145°Cより上げていくと、図 4のバタ ーン 2に示したような引張応力 'ひずみ曲線のプロファイルが得られる。そして、前記 図 16を用いて説明した一連の延伸ブローのプロセスにおいて、プリフォーム 301の 加熱温度を図 4のパターン 2のプロファイルが得られる温度にした場合には次のよう になる。延伸倍率 4〜6においてもプリフォームに生じる応力の上昇はほとんどみられ な 、ため、ブローにより膨らんだ状態でブロー金型に接触した時点にぉ 、てもプリフ オームに生じる応力は上昇しない。また、膜厚が薄く(大きく延伸)なってもさらにまだ 膨らむことができる状態となっているので、応力差により膜厚を均一にしょうとする作 用は生じない。このような状態で延伸ブロー成形しても、膜厚ムラの大きい成形品し か得ることができない。
[0028] このように、膜厚を均一化するためには最適な熱可塑性榭脂混合物の延伸特性が 存在する。熱可塑性榭脂混合物の延伸特性は、熱可塑性榭脂の分子量や熱可塑 性榭脂混合物中に配合されるその他の材料によっても変化するし、また温度によつ ても変化する。その一例を図 5に示す。図 5の応力 ·延伸倍率曲線は同一材料 (ポリ エチレンテレフタレート榭脂(商品名:三井 PET J125) )であるが、その加熱温度に よって曲線に違いが見られる。 90°Cでは 100°Cよりも延伸倍率が低い状態、この図 では 6倍程度で破断して 、る。 90°Cの温度条件で延伸倍率 6以上のブロー金型で成 形を行った場合、破裂する場合がある。一方、 105°Cでは 11倍程度で破断している 力 100°Cで破断する倍率と同一の倍率のときの 105°Cにおける応力(この図では 7 . 5倍程度)は 100°Cのものよりも低ぐ延伸倍率 2〜3のときと変化していない。この 図より、 100°Cで延伸することが適切である熱可塑性榭脂混合物およびブロー金型 であるにも関わらず、 105°Cの温度条件で成形した場合、熱可塑性榭脂混合物の破 裂は起こらないものの、応力の上昇がないため成形品の膜厚にムラが発生してしまう
。このように同一の材料および金型を用いた場合であっても、延伸倍率に対して適切 な温度でない場合、膜厚ムラが発生することになる。
[0029] 従って本発明では、熱可塑性榭脂材料や延伸ブロー条件 (温度、倍率等)を考慮 しつつ、熱可塑性榭脂混合物力 なるプリフォームを SZPが 2. 0以上 15. 0以下と なる加熱温度で延伸ブロー成形することが必要である。 SZPが 2未満である場合に は、実際の径方向の延伸倍率に対し、該熱可塑性榭脂混合物の延伸による分子の 配向が不十分となり、膜厚の均一化および強度の向上が困難となる。これは傾きの 小さい応力 ·延伸倍率曲線で示されるものである。また、 15より大きい場合には延伸 ブロー成形時に縦裂けや破裂などが発生しやすぐブロー成形が困難となる。
[0030] 本発明において、 SZPの調整方法としては、ブロー成形時の温度調整、径方向の 延伸倍率調整、熱可塑性榭脂混合物の延伸特性の調整 (熱可塑性榭脂の分子量 や添加する材料などを適宜選択する)などが挙げられる。
[0031] ブロー成形時の温度の調整は以下のようにして行う。熱可塑性榭脂混合物をシート 状に成形する。その後、 JIS K7161に準拠した加熱引っ張り試験を 80〜300°Cの 範囲内で 5°Cおきに行う。そして、各温度に対応して得られる引っ張り応力 'ひずみ 曲線から、最適な SZPとなる温度を見出すことによって、ブロー成形時の温度を調 整する。
[0032] 径方向の延伸倍率は、任意の温度における引っ張り応力 ·ひずみ曲線を用い、プリ フォーム外径とシームレスベルト成形用金型内径を、 SZPが 2以上 15以下となるよう に調整する。なお、任意の温度における引っ張り応力 'ひずみ曲線において、プリフ オーム外径とシームレスベルト成形用金型内径の調整のみでは SZP値を満足でき ない場合は、延伸時の温度や用いる熱可塑性榭脂混合物の延伸特性を適宜変える ことが必要である。延伸特性とは、後述のとおり、組成、固有粘度、溶融混練条件な どである。
[0033] 径方向の延伸倍率は、図 12で示すプリフォームの外径 aとシームレスベルト成形用 金型内径 bの比 bZaであり、それぞれ全高さの中央の位置を測定する。また、縦方向 の延伸倍率はプリフォームの縦方向延伸部 cに対するシームレスベルト成形用金型 の縦方向延伸部 dの比 dZcとする。
[0034] なお、本発明では、延伸による可塑性榭脂混合物の分子の配向を十分なものとし、 均一な厚さを有する電子写真シームレスベルトを得るという本発明の効果を発揮する には、径方向の延伸倍率 (bZa)は 1. 7以上であることが必要である。この延伸倍率 は 3. 1〜5. 0の範囲にあることが好ましい。 3. 1未満の場合、引っ張り応力'ひずみ 曲線において、延伸倍率が低い状態においてもプリフォームに生じる応力が高くなる よう、熱可塑性榭脂混合物の延伸特性を適宜選択し、または延伸ブロー時の温度条 件を設定すればよい。しかしながら、延伸倍率が少ないので、延伸されている部分と 延伸されていない部分の伸び量の差がわずかに変化するだけでプリフォームに生じ る応力の差は大きくなる。したがって、プリフォームとシームレスベルト成形用金型の 形状の精度を非常に高いものにする必要がある。また、本発明においては、電子写 真シームレスベルトとして成り立たせるために成形品の膜厚は、 300 m以下にする 必要がある。しかし、延伸倍率 (bZa)が 3. 1未満の場合、プリフォームの厚さを薄く しなければならず、射出成形の際に熱可塑性榭脂混合物が流れにくくなる場合が生 じる。射出成形の際に熱可塑性榭脂混合物が流れにくくなると、均質なプリフォーム の成形が困難となる。これらのことから、径方向の延伸倍率は 3. 1以上であることが 好ましい。
[0035] 一方、延伸倍率 (bZa)を 5. 0より大きくした場合においては、熱可塑性榭脂混合 物の場合、主となる熱可塑性榭脂の延伸特性において伸びが大きいものを使用した としても、延伸特性が十分に得られずに破裂する場合がある。なぜならば、熱可塑性 榭脂混合物に配合される他の添加剤が延伸特性を阻害することが多いからである。 また、 5. 0より大きい場合、プリフォームは大きく伸ばされるため、アモルファス状態と なっている延伸倍率の区間、すなわち応力が低い状態での延伸倍率の区間を大きく する必要がある。しかしながら、そのためにはプリフォーム温度を高くする場合があり 、温度を高くすると延伸でない結晶ィ匕、すなわち球晶が発生しやすくなる場合があり 、延伸が不安定になることがある。これらのことから、径方向の延伸倍率は 5. 0以下 であることが好ましい。なお、特に好ましい径方向の延伸倍率は 3. 8〜4. 5の範囲で ある。この範囲内であれば、より膜厚精度の向上 (膜厚ムラの抑制)が期待できる。
[0036] なお、本発明のシームレスベルトの製造方法において、縦方向の延伸倍率(dZc)
は、 1. 5〜3. 5の範囲が好ましい。 1. 5未満ではプリフォームの厚さが薄くなり、成形 が困難になる場合がある。 3. 5より大きいと、縦方向の収縮力が強くなるので成形性 が安定しない場合がある。この延伸倍率 (dZc)は、好ましくは、 2. 0〜3. 0の範囲で ある。径方向の延伸倍率 (bZa)と縦方向の延伸倍率 (dZc)を乗した値は、 7〜15 の範囲になるのが好ましい。 7未満では、プリフォームの厚さが薄くなり、成形が困難 になる場合がある。 15より大きい場合には、全体の伸びが大きくなるので破裂しにく い引っ張り応力'ひずみ曲線を有する材料設計が困難になる場合がある。
[0037] 本発明で使用する熱可塑性榭脂混合物に使用される熱可塑性榭脂としては、前記 SZPが 2. 0〜15. 0の範囲になる特性を示す熱可塑性榭脂混合物を与えるもので あれば特に限定されな 、が、プリフォーム成形の時点でアモルファスの状態となる榭 脂が特に好ましい。例えば、 PEN, PET、 MXナイロンなどが挙げられる。これらの榭 脂は、プリフォームをインジェクション成形などで得る際に、急速に冷却されることでァ モルファス状態を保つことができ、延伸ブローを行った際に延伸による結晶化が可能 であることで、延伸時の応力上昇を得ることができる。
[0038] 熱可塑性榭脂混合物のこのような特性の調整としては、例えば、熱可塑性榭脂混 合物の主となる熱可塑性榭脂が PENまたは PETの場合には固有粘度 [ 7? ]を調整 する方法がある。例えば SZPの値が 15より大きくなる場合には、固有粘度 [ r? ]の値 が小さい(例えば、 0. 6以下の) PENまたは PETを使用するとよい。そうすることで、 P ENまたは PETの分子量が低くなり、延伸時の応力の上昇を抑えることができ SZP の値を 15以下とすることができる。
[0039] SZPの値が 2未満となる場合には、固有粘度 [ η ]の値が大きい (例えば、 0. 8以 上の) PENまたは PETを使用するとよい。この場合分子量が高くなることになり、延伸 時の応力が上昇し SZPの値を 2以上とすることができる。
[0040] 前記 PENまたは PET榭脂の固有粘度 [ r? ]は 0. 5以上 2. 0以下であることが好ま しい。これは、固有粘度 [ r? ]が 0. 5以上 2. 0以下であると、延伸温度時の引っ張り応 力がブロー圧力に対し適正となるため、均一な延伸が可能となるからである。固有粘 度 [ τ? ]が 0. 5未満である場合、引っ張り応力が高くなりすぎるため、延伸成形自体が 困難となり好ましくない。また固有粘度 [ r? ]が 2. 0より大きい場合、延伸した際の熱
可塑性榭脂混合物の応力が低くなるので、十分な分子配向が得られず、均一な延伸 が困難となり好ましくない。
[0041] PENまたは PETの固有粘度は、重合時の時間調整や重合時の温度調節を行うこ とで固有粘度を調整することができる。重合終了したものについては、コンパウンドす る際のスクリュー回転数を高くする、温度を低くするなどの方法により強混練を行うこと によって固有粘度の調整を行う。
[0042] 固有粘度 [ τ? ]の測定方法 «JIS K 7367に準拠して行う。
[0043] PETの固有粘度 [ η ]の測定は、例えば、次のようにして行うことができる。まず、フ ェノールと 1, 1, 2, 2—テトラクロロェタンとの質量比が 60:40の混合溶媒を用いて Ρ ΕΤを希釈する(溶解させる)。次に、ウベローデ型粘度計によって 25°Cの条件で希 釈サンプルの粘度 ηおよび溶媒の粘度 η 0を求める。次に、比粘度( η sp)を下記式 (2)より求め、さらに式(3)により固有粘度 [ 7? ]を求める。
[0044] η = ( η - η ) / η
sp 0 0…(2)
[数 1] c - D c ここで cは溶媒の希釈濃度 c (g/100ml)とする。
[0045] PENや PETなどの結晶性の熱可塑性榭脂を含む熱可塑性榭脂混合物の延伸特 性の調整方法としては他に、メルトフローレートの値が高い榭脂を用いることによって も SZPの値を 15以下とすることができる。さらに熱可塑性榭脂混合物をコンパゥンド するときの混練条件を変えることでも、 SZPの値を 15以下とすることができる。例え ば、コンパゥンドする際のスクリュー回転数を高くする、温度を低くするなどの方法に より強混練を行うことによって分子量を低下させることができ、結果として SZPの値を 15以下とすることができる。
[0046] SZPの値を 2以上とするには、メルトフローレートの値が低い榭脂を用いることによ つても SZPの値を 2以上とすることができる。さらに熱可塑性榭脂混合物をコンパゥ ンドするときの混練条件を変えることでも、 SZPの値を 2以上とすることができる。例え ば、コンパゥンドする際のスクリュー回転数を低くする、温度を高くするなどの方法に
より弱混練を行うことによって分子量の低下を防止させることができ、結果として SZP の値を 2以上とすることができる。
[0047] 以上、 PENや PETなどの結晶性榭脂の場合にっ 、て説明したが、非結晶性榭脂 においても各種添加剤を混合することにより、 SZPが 2以上 15以下の範囲となる温 度 T2を見つけ、延伸温度 T1を T2で行えば、本発明の効果を得ることができる。
[0048] この他、結晶性榭脂にぉ 、て、ポリプロピレンやポリアセタール、ポリブチレンテレフ タレートは、プリフォーム成形された時点において結晶化している。これらの榭脂の結 晶は PENや PETの結晶よりは変形しやすいものであるため、アモルファス状態では なく結晶化していても、延伸倍率は、プリフォーム成形時にアモルファス状態である P ENや PETと同等である。し力しながらこれら熱可塑性榭脂単独では P時点 (試験片 の延伸倍率が 0. 6 X (bZa))での応力が高いため、 SZPが 2以上 15以下の範囲を 満たすことができず均一な膜厚のベルトを作ることは困難である。し力しながら、ポリ プロピレンやポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性榭脂に熱可 塑性エラストマ一を混合して熱可塑性榭脂混合物として用いることで、 P時点での応 力を低くすることができる。このように、熱可塑性エラストマ一を熱可塑性榭脂混合物 に含有させることで、プリフォームの時点で結晶化している結晶性榭脂を用いたとし ても、ポリプロピレンやポリアセタール、ポリブチレンテレフタレートは膜厚の均一な成 形が可能である。なお、熱可塑性エラストマ一として、例えば、以下のものが挙げられ る。
ポリスチレン系エラストマ一,ポリオレフイン系エラストマ一,ポリエステノレ系エラストマ 一,ポリウレタン系エラストマ一,ポリアミド系エラストマ一,フッ素ポリマー系エラストマ
[0049] 本発明において、プリフォームに用いるその他の熱可塑性榭脂としては、例えば、 以下のものが挙げられる。
ォレフィン系榭脂,ポリスチレン系榭脂,アクリル榭脂, ABS榭脂, PBTや PARなど のポリエステル榭脂,ポリカーボネート榭脂,ポリサルホンやポリエーテルサルホンや ポリフエ-レンサルファイドなどの硫黄含有榭脂,ポリフッ化ビ-リデンゃポリエチレン 一四フッ化工チレン共重合体などのフッ素原子含有榭脂,ポリウレタン榭脂,ケトン榭
脂,ポリ塩ィ匕ビユリデン,ポリアミド榭脂,変性ポリフエ-レンオキサイド榭脂,これらの 変性榭脂,これらの共重合体
[0050] プリフォームに用いるその他の熱可塑性榭脂は、 1種類または 2種類以上を使用す ることがでさる。
[0051] 本発明に使用される「熱可塑性榭脂混合物」とは、榭脂混合物として熱可塑性を有 するものであり、例えば熱可塑性榭脂と熱硬化性榭脂粉体を混合したものであっても 最終的な榭脂混合物が熱可塑性を有して!/ヽれば、熱可塑性榭脂混合物と称する。
[0052] 本発明における電子写真シームレスベルトの弾性率は lOMPa以上であることが好 ましい。 lOMPa以上の場合には、ベルトが回転駆動された場合にも伸びが少ないた め、画像のズレが少なくなり画像の濃淡ムラが少なくなるからである。
[0053] 本発明における電子写真シームレスベルトは用途に応じて体積抵抗率を制御して もよい。体積抵抗率を制御する方法としては、プリフォームに用いる熱可塑性榭脂混 合物中に導電性榭脂を含有させることが好ま Uヽ。導電性榭脂は主となる熱可塑性 榭脂と均一に混合しやすぐその結果、体積抵抗率が安定しやすくなる。本発明で使 用される導電性榭脂としては、ポリエーテルエステルアミドやその混合物、ポリエーテ ルエステルなどが挙げられるが、これらに限らない。また、導電性榭脂の代わりに、導 電性を出すための材料として、例えば、以下のものを熱可塑性榭脂混合物に含有さ せてもよい。
テトラアルキルアンモ-ゥム塩, トリアルキルベンジル,アンモ-ゥム塩,スルホン酸塩 ,アルキルサルフェート,ダルセリン脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリ ォキシエチレンアルキルァミン,ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル,アルキ ルべタイン,過塩素酸リチウム
[0054] 特に導電性とブリード性を両立できることから、スルホン酸塩であるパーフルォロブ タンスノレホン酸カリウムが特に好ましい。
[0055] 電子写真シームレスベルトの体積抵抗率の範囲としては、中間転写ベルトの場合、 良好な画像が得られる体積抵抗率の範囲は 1 X 106〜8 Χ 1013 Ω 'cmが好ましい。 体積抵抗率が 1 X 106 Ω 'cm未満では体積抵抗率が低過ぎて十分な転写電界が得 られず、画像の抜けやガサツキを生じる。一方、体積抵抗率が 8 X 1013 Ω 'cmより高
いと転写電圧も高くする必要があり、電源の大型化やコストが増大する場合がある。 転写材搬送ベルトの場合、紙などの転写材を吸着、搬送する必要があるため、好まし い体積抵抗率の範囲は 1 X 108〜5 Χ 1014 Ω 'cmの間である。ただし、転写プロセス によっては、この範囲外であっても転写可能となる場合もあるため、抵抗は必ずしも 上記の範囲に限定されない。電子写真感光体の支持体の場合は、好ましい体積抵 抗率の範囲は 1 X 104 Ω 'cm以下である。ただし、電子写真感光体の支持体の場合 1 X 1015 Ω 'cm以上であっても、表面に金属蒸着や導電塗料を塗布することで、体 積抵抗率を 1 X 104 Ω 'cm以下に下げれば、体積抵抗率は 1 X 1015 Ω 'cm以上であ つても構わない。
[0056] 中間転写ベルトおよび転写材搬送ベルトにする際の電子写真シームレスベルトの 膜厚 (厚さ)は 40〜250 μ mの範囲が好まし 、。 40 μ m未満では成形安定性に欠け 、膜厚ムラを生じやすぐ耐久強度も不十分で、ベルトの破断や割れが発生する場合 がある。一方でその膜厚が 250 mを超えると、材料が増えコストが高くなる上に、プ リンターなどの架張軸部位での内面と外面の周速差が大きくなり、外面の収縮による 画像飛び散りなどの問題が発生しやすくなる。また、屈曲耐久性の低下やベルトの剛 性が高くなりすぎて駆動トルクが増大し、本体の大型化やコスト増加を招くといった問 題ち生じる。
[0057] 電子写真感光体の支持体の膜厚は 40〜250 μ mの範囲が好まし!/、。 40 μ m未満 では成形安定性に欠け、膜厚ムラを生じやすぐ耐久強度も不十分で、ベルトの破断 や割れが発生する場合がある。一方でその膜厚が 250 mを超えると、材料が増え コストが高くなる上に、ベルトの剛性が高くなりすぎて駆動トルクが増大し、本体の大 型化やコスト増加を招くといった問題も生じる。
[0058] 本発明で用いられる電子写真シームレスベルトの膜厚ムラは 10%以内が好ましい 。 10%を越えると、ベルト走行時に走行速度ムラが発生し、画像の濃淡ムラが発生す る場合がある。またより好ましい範囲としては 5%以内である。電子写真感光体が並 列に複数ならんだタイプの電子写真装置における転写材搬送ベルトにぉ 、ては、わ ずかな速度差でも画像の濃淡ムラが発生する。よって、特に転写材搬送ベルトにお Vヽては膜厚ムラが 5%以内であることが好ま 、。
[0059] 本発明の電子写真シームレスベルトの製造方法における延伸ブロー成形方法の一 例を図 6〜図 11を用いて説明する。
図 6は、延伸ブロー成形に用いるプリフォームを射出成形する工程を示したものであ る。まず射出成形により、図中では試験管型の成形物であるプリフォーム 104を成形 する。
すなわち、熱可塑性榭脂と導電材料を含む熱可塑性榭脂混合物をあらかじめ均一 に混練、分散したベルト材料を押し出し機 101により射出成形金型 102に射出しプリ フォーム 104を得る。射出成形金型 102は上下に移動が可能である。
[0060] 上記のようにして射出成形してプリフォームを得た後、該プリフォームは延伸ブロー 成形時の加熱温度まで加熱される。具体的には、図 7に示された加熱工程において 、プリフォーム 104は加熱炉 107内を連続的に移動しつつ加熱され所望の温度に加 熱される。加熱温度は、ブロー金型構成 (径方向の延伸倍率)および Zまたはベルト 材料 (熱可塑性榭脂混合物の延伸特性)に応じて適宜設定することができる。
[0061] 加熱炉 107は両側、または片側に 1本または複数の加熱ヒーターを配設したもので もよぐまたは熱風炉、温風炉でもよい。好ましくは加熱ヒーターを配設した加熱炉で ある。加熱ヒーターは、熱線加熱、ハロゲンヒーター加熱、赤外線加熱、電磁誘導カロ 熱などを用いることができるが、ハロゲンヒーター加熱、赤外線加熱、電磁誘導加熱 が低 、設備コストで加熱することができ好まし 、。
[0062] プリフォームの成形、プリフォームの加熱後、図 8、 9、 10に示されるように延伸ブロ 一成形が行われる。プリフォーム 104は加熱後、図 8に示すようにブロー金型(円筒 形状のキヤビティを有する)内に配置され、図 9に示すように、延伸ロッド 109と一次ェ ァ圧により縦方向に延伸され、さらに二次エア圧により、ブロー金型内面に沿って膨 張するよう成形される。なお、図 8に示すように、延伸ブロー成形する際、シームレス 状のベルトの表面に凹凸のないようにブロー金型は円筒状の金型 200を有すること が好ましい。
[0063] 次に図 10に示すように、ブロー金型 108を開き、円筒状の金型 200を外し、延伸ブ ロー成形物 112を取り出す。最終的に、図 11のように得られた延伸ブロー成形物 11 2の上下を切断して、本発明における電子写真シームレスベルト 115を得ることがで
きる。
[0064] このとき、得られる電子写真シームレスベルトの膜厚を所望の範囲とするには、プリ フォームの厚さを調整すればよい。すなわち、プリフォーム厚さを厚くすればベルトの 厚さは厚くなり、プリフォーム厚さを薄くすればベルトの厚さは薄くなる。また、延伸倍 率を調整することで、ベルトの厚さを調整することもできる。これはプリフォームの厚さ が一定である場合には延伸倍率が大きければベルトの厚さは薄くなり、延伸倍率が 小さければベルトの厚さは厚くなるということである。
[0065] 次に、本発明の製造方法により得られた電子写真シームレスベルトを有する電子写 真装置について、具体例をあげて説明する。
本発明における電子写真シームレスベルトを中間転写ベルトとして用いた 4プロセス のフルカラー電子写真装置の概略構成を図 1に示す。
[0066] 図 1において、円筒状の電子写真感光体 1は、矢印 X方向に所定の周速度 (プロセ ススピード)をもって回転駆動される。電子写真感光体 1は回転過程で、一次帯電器 2により所定の極性 '電位に一様に帯電処理される。次いで、電子写真感光体 1は、 潜像形成手段としての露光手段 (不図示)カゝら出力される露光 (画像露光) 3を受ける ことにより、目的のカラー画像の第 1の色成分像 (例えば、イェロー色成分像)に対応 した静電潜像が形成される。露光手段としては、スリット露光、レーザービーム走査露 光、 LED露光などが挙げられる。
[0067] 次いで、その静電潜像が第 1の現像器 (イェロー色現像器 4Y)により、第 1色である イェロートナー γにより現像される。このとき第 2〜第 4の現像器 (マゼンタ色現像器 4 M、シアン色現像器 4Cおよびブラック色現像器 4K)の各現像器は作動 オフにな つていて電子写真感光体 1には作用せず、上記第 1色のイェロートナー画像は上記 第 2〜第 4の現像器により影響を受けない。
[0068] 中間転写ベルト 5は矢印 Z方向に電子写真感光体 1とほぼ同じ周速度 (例えば電子 写真感光体 1の周速度に対して 97〜103%)で回転駆動される。電子写真感光体 1 上に形成担持された上記第 1色のイェロートナー画像が、電子写真感光体 1と中間 転写ベルト 5との二ップ部を通過する過程で、中間転写ベルト 5の外周面に一次転写 されていく。この一次転写は、一次転写部材 (一次転写ローラー) 6から中間転写べ
ルト 5に印加される一次転写バイアスにより形成される電界により行われる。一次転写 バイアスは、トナーとは逆極性でありバイアス電源 30から印加される。その印加電圧 は例えば + 100V〜2kVの範囲である。中間転写ベルト 5に対応する第一色のイエ ロートナー画像の転写を終えた電子写真感光体 1の表面は、クリーニング部材 13に より清掃される。
[0069] 以下、同様に第 2色のマゼンタトナー画像、第 3色のシアントナー画像、第 4色のブ ラックトナー画像が順次中間転写ベルト 5上に重ね合わせて転写され、目的のカラー 画像に対応した合成力ラートナー画像が形成される。
[0070] 二次転写部材(二次転写ローラー) 7は、二次転写対向ローラー 8に対応し平行に 軸受させて中間転写ベルト 5の下面部に離間可能な状態に配設してある。 12は張架 ローラーである。電子写真感光体 1から中間転写ベルト 5への第 1〜第 3色のトナー 画像の一次転写工程において、二次転写部材 7は中間転写ベルト 5から離間するこ とも可能である。
中間転写ベルト 5上に転写された合成力ラートナー画像は、中間転写ベルト 5の回転 に同期して給紙ローラー 11から転写材ガイド 10を通って中間転写ベルト 5と二次転 写ローラー 7との当接-ップに所定のタイミング給送される転写材 Pに二次転写される 。二次転写は、二次転写部材 7から印加される二次転写バイアスによって行われる。 二次転写バイアスの印加電圧は例えば + 100V〜2kVの範囲である。
[0071] トナー画像の転写を受けた転写材 Pは定着器 14へ導入され加熱定着され画像出 力される。転写材 Pへの画像転写終了後、中間転写ベルト 5にはクリーニング用帯電 部材 9が当接される。クリーニング用帯電部材 9には、電子写真感光体 1とは逆極性 のバイアスが印加される。それによつて、転写材 Pに転写されずに中間転写ベルト 5 上に残留しているトナー (転写残トナー)に電子写真感光体 1と逆極性の電荷が付与 される。 32はバイアス電源である。前記転写残トナーは、電子写真感光体 1との-ッ プ部およびその近傍において電子写真感光体 1に静電的に転写されることにより、中 間転写ベルト 5がクリーニングされる。
[0072] また、本発明の電子写真シームレスベルトを転写材搬送ベルトとして用いたフル力 ラー電子写真装置の概略構成を図 2に示す。
[0073] 図 2に示された電子写真装置は、電子写真プロセス手段として 4つの画像形成部を 並設しており、各画像形成部は、電子写真感光体 1、一次帯電器 2、現像器 4および クリーニング部材 13を含んで構成されている。なお、現像器 4Y、 4M、 4C、 4Kには それぞれイェロー (Υ)、マゼンタ(Μ)、シアン(C)、ブラック(ΒΚ)のトナーが収容さ れている。
[0074] 各画像形成部においては、電子写真感光体 1が矢印の方向に所定の速度で回転 駆動され、これらは一次帯電器 2により所定の極性'電位にそれぞれ一様に帯電処 理される。このように帯電処理された各電子写真感光体 1は露光手段 (不図示)から 出力される露光 3を受けることによって、目的のカラー画像の各色の色成分像に対応 した静電潜像が形成される。そして、各静電潜像は各現像器 4Y、 4M、 4C、 4Kによ つて現像されて、イェロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像およびブラック トナー像としてそれぞれ顕像化される。
[0075] 電子写真感光体 1上に形成担持された上記各色トナー画像は、転写材 Ρが各画像 形成部を通過する際に、イェロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各トナー像が重 ねて転写され、目的のカラー画像に対応した合成力ラートナー画像が形成される。転 写は、転写部材 (転写ローラー) 18から印加される転写バイアスによって行われる。ま た、転写材 Ρは、給紙ローラー 11から転写材ガイド 10を通って転写材搬送ベルト 16 に吸着され、これと共に移動して各画像形成部を通過する。転写バイアスは、トナー とは逆極性でバイアス電源 33から印加される。その印加電圧は例えば + 100V〜2k Vの範囲である。
[0076] 上述のように各カラートナー像の転写を受けた記録紙 Pは、分離帯電器 21によって 除電されて転写材搬送ベルト 16から分離された後、定着器 14に搬送されてカラート ナー像の加熱定着を受け画像出力される。
[0077] 本発明における電子写真シームレスベルトを中間転写ベルトとして用いた 4連電子 写真感光体方式のフルカラー電子写真装置の概略構成を図 3に示す。
[0078] 図 3に示された電子写真装置は、電子写真プロセス手段として 4つの画像形成部を 並設しており、各画像形成部は、電子写真感光体 1、一次帯電器 2、現像器 4および クリーニング部材 13を含んで構成されている。なお、現像器 4Y、 4M、 4C、 4Kには
それぞれイェロー (Y)、マゼンタ(Μ)、シアン(C)、ブラック(ΒΚ)のトナーが収容さ れている。
[0079] 各画像形成部においては、電子写真感光体 1が矢印の方向に所定の速度で回転 駆動され、これらは一次帯電器 2により所定の極性'電位にそれぞれ一様に帯電処 理される。このように帯電処理された各電子写真感光体 1は露光手段 (不図示)から 出力される露光 3を受けることによって、目的のカラー画像の各色の色成分像に対応 した静電潜像が形成される。そして、各静電潜像は各現像器 4Y、 4M、 4C、 4Kによ つて現像されてイェロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像およびブラックト ナー像としてそれぞれ顕像化される。
[0080] 中間転写ベルト 5は時計方向に電子写真感光体 1とほぼ同じ周速度 (例えば電子 写真感光体 1の周速度に対して 97〜103%)で回転駆動される。
[0081] 電子写真感光体 1上に形成担持された上記各色トナー画像は、電子写真感光体 1 と中間転写ベルト 5との-ップ部を通過する過程で、中間転写ベルト 5の外周面に重 ねて転写 (一次転写)され、目的のカラー画像に対応した合成力ラートナー画像が形 成される。一次転写は、一次転写部材 (一次転写ローラー) 6から中間転写ベルト 5に 印加される一次転写バイアスによって行われる。一次転写ノ ィァスは、トナーとは逆 極性でバイアス電源 30から印加される。その印加電圧は例えば + 100V〜2kVの範 囲である。
[0082] 二次転写部材(二次転写ローラー) 7は、二次転写対向ローラー 8に対応し平行に 軸受させて中間転写ベルト 5の下面部に離間可能な状態に配設してある。 12はテン シヨンローラーである。
[0083] 中間転写ベルト 5上に転写された合成力ラートナー画像は、中間転写ベルトの回転 に同期して給紙ローラー 11から転写材ガイド 10を通って中間転写ベルト 5と二次転 写ローラー 7との当接-ップに所定のタイミング給送される転写材 Pに、二次転写部 材 7から印加される二次転写ノ ィァスによって転写(二次転写)される。二次転写バイ ァスの印加電圧は例えば + 100V〜2kVの範囲である。
[0084] トナー画像の転写を受けた転写材 Pは定着器 14へ導入され加熱定着され画像出 力される。中間転写ベルトに残留したトナーは、図 1と同様にクリーニング用帯電部材
9により回収される。
[0085] 以下に、本発明に係わる諸物性の測定方法を示す。
<引っ張り応力'ひずみ曲線測定方法 >
[0086] · シートサンプル作製方法
熱可塑性榭脂混合物を図 15に示される単軸の Tダイ押し出し装置 201のホッパーに 投入し、単軸溶融押し出しし、 Tダイ力 シート状に溶融押し出しを行う。溶融状態で 押し出された熱可塑性榭脂混合物は冷却ロール 202に接触することで、急速冷却さ れる。冷却ロール温度については、熱可塑性榭脂混合物によって異なるが、結晶性 榭脂の場合、結晶化を防ぐため 20°C以下で成形することが望ましい。この冷却され たシートを巻き取りローラー 203で巻き取る。本発明で使用するシートの膜厚は 70〜 190 μ mが好ましいが、厚さの調整は押し出し量と巻き取りローラー 203の速度で制 御する。以上の方法で得られたシートサンプルについて以下の寸法、条件で加熱引 つ張り試験を行う。
[0087] · 加熱引っ張り試験条件
本発明における加熱引っ張り試験 ίお IS K7161に基づいて測定されたものである。 具体的には以下のとおりである。
評価装置: UCT— 500 ( (株)オリエンテック製)
炉内温度:上限 300°C
シートサンプル寸法:厚さ70〜190 !!1、幅 20mm、高さ 100mm
チャック間距離: 20mm
弓 Iつ張り速度: 500mmZmin
なお、成形品の膜厚は上記範囲でなければ、加熱引っ張り試験の正確な測定が困 難となる。
[0088] (1)評価装置立ち上げと同時に、 80〜300°Cの範囲で 5°C間隔のいずれかの温度 に炉内温度を設定し、炉内が所定温度に達した後 5分間予熱する。
(2)その後サンプルをチャックにはさみ、再び所定温度まで上げ、昇温後 5分間加熱 する。
(3)加熱引つ張り試験を開始する。
[0089] 以上の加熱引っ張り試験により、引っ張り応力 ·ひずみ曲線を得る。なお、本発明 においてはこの曲線を応力 ·延伸倍率曲線として示し、延伸倍率は延伸後のチャック 間距離 Nと、延伸前のチャック間距離 Mの比 NZMで示すものとする。
[0090] 温度範囲については 300°Cを上限とする力 測定されるサンプルにより、ひずみ量 が最大となった温度から + 10°Cまで測定し、それ以上は測定を行わない。
<中間転写ベルトの弾性率測定方法 >
[0091] 中間転写ベルトからサンプルを幅 20mm、長さ 100mmで周方向に切り出し、厚さ を測定した後、引っ張り試験機 (テンシロン UCT— 500、(株)オリエンテック製)に装 着する。厚さはサンプル内 5点の平均とする。測定間隔は 50mm、試験速度は 5mm Zminとして加熱引っ張り試験を行い、伸びと応力をレコーダーで記録し、 1%時の 応力を読み取とり、下式で弾性率を計算する。この測定を 5回行い、平均した値が本 発明における弾性率である。
[0092] 弹性率= ( (fZ (20 X t) ) X 1000[MPa]
(式中、 fは 1%伸びの応力 [N]、 tはサンプルの厚さ [mm])
<体積抵抗測定方法 >
[0093] 測定装置として、抵抗計に超高抵抗計 R8340A ( (株)アドバンテスト製)、試料箱 に超高抵抗測定用試料箱 TR42 ( (株)アドバンテスト製)を使用するが、主電極は直 径 50mm、ガード'リング電極は内径 70mm、外径 75mmとする。
[0094] サンプルは次のように作製する。まず、打ち抜き機または鋭利な刃物で電子写真シ ームレスベルトを直径 56mmの円形に切り抜く。切り抜いた円形片の片面はその全 面を Pt—Pd蒸着膜により電極を設け、もう一方の面は Pt—Pd蒸着膜により直径 25 mmの主電極と内径 38mm、外径 50mmのガード電極を設ける。 Pt—Pd蒸着膜は、 マイルドスパッタ E1030 ( (株)日立製作所製)で蒸着操作を 2分間行うことにより得ら れる。蒸着操作が終了したものを測定サンプルとする。
[0095] 測定雰囲気は 23°CZ55%RHとし、測定サンプルは予め同雰囲気下に 12時間以 上放置しておく。測定はデイスチャージ 10秒、チャージ 30秒、メジャー 30秒とし、印 加電圧 100Vで測定を行う。
<電子写真シームレスベルトの膜厚の測定方法 >
[0096] 電子写真シームレスベルトの膜厚は、以下のように測定する。最低値 1 μ mのダイ アルゲージにおいて、電子写真シームレスベルトの両端部から 50mm、中央につい て周方向に等間隔で 4点、全周にわたって測定し、中間転写ベルトの場合 1本につ き合計 15点を測定し平均値をそのベルトの膜厚とする。また、電子写真シームレスべ ルトの膜厚ムラは下記式
( (中央の周方向測定データ最大値 最小値) Z2) Zベルトの平均膜厚) X 100 で得られた値を ±%で表す。
実施例
[0097] 以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する力 本発明はこれらの実 施例のみに限定されるものではない。
〈実施例 1〉
[0098] [プリフォーム用金型]
プリフォーム用金型は、図 12において、プリフォーム外径 aが 38. 4mmであり、プリ フォーム縦方向延伸部長さ cが 96mmであるプリフォーム(104)を形成できる形状の ものを用意した。
[ブロー用金型]
[0099] 図 12において、内径 bが 142mmであり、縦方向延伸部 dが 288mmであるブロー 用金型(200)を用意した。
すなわち、本実施例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 3. 7となり、 縦方向の延伸倍率 dZcは 3. 0であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた全体の 延伸倍率は 11. 1であった。
[熱可塑性榭脂混合物の調製]
[0100] 'ポリエチレンナフタレート榭脂 81%
(TN 8065S:帝人化成 (株)製)
•イオン導電榭脂 17%
(ィルガスタツト P18:チバスペシャルティケミカルズ (株)製)
'パーフルォロブタンスルホン酸カリウム 2%
(三菱マテリアル (株)製)
[0101] 上記材料を φ 30mmの 2軸の押し出し機 (日本製鋼所製 TEX30 a、 L/D =42 )を用いて下記の条件にて溶融混練して各材料を混合し、直径 2mm程度のストラン ドで押し出してカットし、ペレットを得た。これを成形用原料 1とした。
(2軸押し出し機による混練条件)
[0102] 'スクリュー: 2条タイプ、ニーデイングゾーン 2箇所
'スクリュー回転数: 200rpm
•加熱温度:シリンダ 2 250°C、
シリンダ 3 260。C、
シリンダ 4〜 11 270。C、
ダイヘッド 270。C
•吐出量: 15kgZh
[0103] なお、本明細書の実施例では上記押し出し条件を標準混練条件とし、「混練条件 1 」という。
[0104] 上記成形用原料 1を φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 280°Cで厚さ 150 μ mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5°C間隔で JISK7 161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力 ·延伸倍率曲線を検討したと ころ、図 13に示すような 145°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が得られた。この応力 · 延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 3. 10〜4. 10 (4. 10より大きい倍率で は、引っ張り応力 'ひずみ曲線によると破断しているので、実際にブローした場合破 裂する)の範囲であれば、 SZPが 2. 0以上 15. 0以下となることが分力つた。本実施 例においては、径方向の延伸倍率が 3. 7である。従って、径方向の延伸倍率に 0. 6 を乗じた 3. 7 X 0. 6に相当するときの応力 Pは 2. 40MPaである。また、径方向の延 f申倍率に 1. 6を乗じた 3. 7 X 1. 6にネ目当するときの応力 Sは、 9. 80MPaである。従 つて、 SZPは 4. 08である。
[0105] なお、熱可塑性榭脂混合物の組成および延伸特性は、用いる材料を以下のように 選択して調整した。抵抗調整として添加したパーフルォロブタンスルホン酸カリウムは 、結晶核となりやすくより応力,延伸倍率曲線の応力の増加を大きくする影響がある。 そのため、熱可塑性榭脂は結晶化速度の遅 ヽ PEN榭脂 (帝人化成 (株)製のテオネ
ックス TN— 8065S (固有粘度 [ 7? ] =0. 65) )を選択した。
[電子写真シームレスベルトの製造]
[0106] 図 6に示す射出成形機を用いて、成形用原料 1からなるプリフォームの作製を行つ た。なお、使用される射出成形機は図 6に示されるものに限られるものではない。成 形用原料 1を 275°Cで溶融し、溶融完了後、射出スクリューによる計量 Z圧縮 Z射出 が実行されて、プリフォーム成形用金型に射出され、保圧後、金型内での冷却工程 を経た後、成形品を取り出しプリフォームを得た。
[0107] 得られたプリフォームを、ハロゲンヒーターにより、先にシートの加熱引っ張り試験か ら得られた SZPが 5となる条件である温度と同一温度である 145°Cに均一に加熱し た後、延伸ブロー成形工程に移行した。ここで、プリフォームの加熱温度は、ブロー 成形開始 (プリフォームが金型内部に入り、金型が閉じられた時点) 5秒前に測定した プリフォーム表面中央部温度とする。そして、延伸ブロー成形を行い所望のボトル状 延伸ブロー成形体を得た。その後、ボトル状延伸ブロー成形体を所望のサイズにより 超音波カッターによりベルト巾 250mmで切断し、シームレス状の中間転写ベルトを 得た。これを電子写真シームレスベルト(1)とした。得られた電子写真シームレスベル ト(1)の最終的な形状寸法は、軸方向長さ 250mm、直径 140mm、膜厚 140 /z mで めつに。
[0108] 電子写真シームレスベルト(1)の 100V印加時の電気抵抗は 8. 7 Χ 109 Ω 'cmで あった。また、加熱引っ張り試験による弾性率は 18MPaであり、高い弾性率を示した 。電子写真シームレスベルト(1)の周方向 15点の膜厚を最低値 1 μ mのダイアルゲ ージにて測定した結果、ベルト膜厚は 140 m± 2. 8%と膜厚ムラが少なぐ良好で あった。また、左右開口部の周長差 (以後、左右差と称す)は 0. 53mmと良好なもの であった。
[0109] 電子写真シームレスベルト(1)を、図 1に示されるフルカラー電子写真装置に中間 転写ベルトとして装着し、 40°C/90%の環境下で毎分 4枚のスピードで A4フルカラ 一画像の連続 2万枚プリントアウトの連続耐久試験を行った。なお、用いたフルカラ 一電子写真装置は、キャノン株式会社製の LBP2410 (商品名)である。 LBP2410 に用いられるトナーカートリッジは EP— 87トナーカートリッジ (イェロー、マゼンタ、シ
アン、ブラックの 4色))である。連続耐久試験時のテンションローラーのパネ圧は、左 右合計で 20N、スライド量は 2. 5mm、テンションローラーおよび駆動ローラーの直 径は 28mmであった。耐久後、 80gZm2紙にシアンとマゼンタ、シアンとイェローの それぞれ 2色を使用してブルーとグリーンの文字画像およびライン画像をプリントした 。それぞれの画像を目視で観察したところ、色ズレはみられず、走行性も良好であつ た。
[評価方法および評価基準]
[0110] なお、評価方法および評価基準は以下のとおりである。
(電子写真シームレスベルトの膜厚ムラの測定)
[0111] シームレスベルトの膜厚ムラは以下のように測定した。ベルト周方向および、軸方向 にそれぞれ 12点の膜厚を最低値 1 μ mのダイアルゲージにて測定した。測定値の最 大値および最小値と膜厚平均値との差が、その平均膜厚に対し 3%以内を◎、 5% 以内を〇、 5%超、 8%以下を△、 8%より大を Xとして、膜厚精度の評価を行った。 尚、評価基準の中、◎が最も良好な結果を示している。また、 Xへ向力 ほど結果が 悪くなることを示している。結果を表 1に示す。
[0112] 測定箇所は周方向はベルト中央、軸方向は周方向測定開始点力 の測定とした。
(電子写真シームレスベルトの周長差 (左右差)の測定方法)
[0113] 延伸ブロー成形後に得られたシームレス状のベルトの上下両端を切り取って得たシ ームレス状のベルトの両端から中心に向かって 5mmの箇所の周長を測定して、周長 差を算出する。左右周長差が 0. 5mm以内が◎、 0. 5mm超、 1. Omm未満が〇、 1 . Omm以上、 2. Omm未満が△、 2. 0以上を Xとした。表 1に評価結果を示す。
(耐久画像特性)
[0114] 電子写真シームレスベルトを図 1、図 2または図 3に示されるフルカラー電子写真装 置に装着し、 40°CZ90%で A4サイズで 2万枚、連続耐久試験を行った。その後、 8 OgZm2紙にシアンとマゼンタ、シアンとイェローのそれぞれ 2色を使用してブルーと グリーンの文字画像およびライン画像をプリントした。耐久試験後のそれぞれの画像 を目視で判断し、色ずれについて評価を行い、〇:良好、△:概ね良好、 X:不良とし た。表 1に評価結果を示す。
〈実施例 2〉
[0115] [プリフォーム用金型およびブロー用金型]
プリフォーム用金型は、図 12において、プリフォーム外径 aが 33. 8mmであり、プリ フォーム縦方向延伸部長さ cが 92mmであるプリフォーム(104)を形成できる形状の ものを用意した。また、ブロー用金型は、実施例 1で用いたものと同様のものとした。
[0116] すなわち、本実施例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 4. 2となり
、縦方向の延伸倍率 dZcは 3. 0であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた全体の 延伸倍率は 12. 6であった。
[熱可塑性榭脂混合物の調製]
[0117] 'ポリエチレンナフタレート榭脂 78%
(TN 8065S:帝国化成 (株)製)
'ポリエーテルエステル榭脂 19%
(4047X08:東レ ·デュポン (株)製)
'パーフルォロブタンスルホン酸カリウム 3%
(三菱マテリアル (株)製)
[0118] 上記材料を φ 30mmの 2軸の押し出し機 (日本製鋼所製 TEX30 a、 L/D =42 )を用いて上記混練条件 1にて溶融混練して各材料を混合し、直径 2mm程度のスト ランドで押し出してカットし、ペレットとした。これを成形用原料 2とした。
[0119] 上記成形用原料 2を φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 280°Cで厚さ 150 mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5°C間隔で JIS K 7161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力 ·延伸倍率曲線を検討した 。すると、図 13に示すような 145°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が得られた。この応 力'延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 3. 39〜5. 10 (5. 10より大きい倍 率では、引っ張り応力 'ひずみ曲線によると破断しているので、実際にブローした場 合破裂する)の範囲であれば、 SZPが 2. 0以上 15. 0以下となること分力つた。本実 施例においては、径方向の延伸倍率が 4. 2である。よって、径方向の延伸倍率に 0. 6を乗じたときの応力 Pは 1. 50MPaであり、径方向の延伸倍率に 1. 6を乗じたときの 応力 S iま 7. OOMPaであり、 S/Piま 4. 67であった。
[電子写真シームレスベルトの製造および評価]
[0120] 上記成形用原料 2を用い、プリフォーム加熱温度を 145°Cとして、実施例 1と同様の 方法により延伸ブロー成形を行い、最終的な形状寸法が軸方向長さ 250mm、直径 140mm,膜厚 150 μ mである電子写真シームレスベルト(2)を得た。得られた電子 写真シームレスベルト(2)を用いて、実施例 1と同様に耐久試験および評価を行った 。電子写真シームレスベルト(2)の成形に用いた熱可塑性榭脂組成物の 145°Cにお ける応力 ·延伸倍率曲線を図 13に、評価結果を表 1に、それぞれ示す。
〈実施例 3〉
[0121] [プリフォーム用金型]
プリフォーム用金型は、図 12において、プリフォーム外径 aが 63. 5mmであり、プリ フォーム縦方向延伸部長さ cが 120mmであるプリフォーム(104)を形成できる形状 のものを用意した。
[ブロー用金型]
[0122] 図 12において、内径 bが 216mmであり、縦方向延伸部 dが 288mmであるブロー 用金型(200)を用意した。
[0123] すなわち、本実施例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 3. 4となり 、縦方向の延伸倍率 dZcは 2. 4であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた全体の 延伸倍率は 8. 2であった。
[電子写真シームレスベルトの製造および評価]
[0124] 実施例 2で用いた成形用原料 2を、 φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 28 0°Cで厚さ 150 μ mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5 °C間隔で JIS K7161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力'延伸倍 率曲線を検討したところ、図 13に示すような 140°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が 得られた。この応力'延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 2. 7〜3. 9 (3. 9 より大きい倍率では、引っ張り応力 'ひずみ曲線によると破断しているので、実際にブ ローした場合破裂する)の範囲であれば、 SZPが 2. 0以上 15. 0以下となることが分 かった。本実施例においては、径方向の延伸倍率が 3. 4である。よって、径方向の 延伸倍率に 0. 6を乗じたときの応力 Pは 1. 50MPaであり、径方向の延伸倍率に 1.
6を乗じたときの応力 Sは、 9. 20MPaであり、 SZPは 6. 13であった。
[0125] 上記成形用原料 2を用い、プリフォームの加熱温度を 140°Cに変更した以外は、実 施例 1と同様の方法により延伸ブロー成形を行い、最終的な形状寸法が軸方向長さ 250mm,直径 214mm、膜厚 110 μ mの電子写真シームレスベルト(3)を得た。次 に、得られた電子写真シームレスベルト(3)を、転写材搬送ベルト 16として図 2に示 すフルカラー電子写真装置 (キャノン株式会社製 LBP5500)に組み込み、実施例 1 と同様の耐久試験および評価を行った。このとき使用したトナーは EP— 85トナー力 ートリッジ (イェロー、マゼンタ、シアン、ブラックの 4色)である。電子写真シームレス ベルト(3)の成形に用いた熱可塑性榭脂組成物の 140°Cにおける応力'延伸倍率曲 線を図 13に、評価結果を表 1に、それぞれ示す。
〈実施例 4〉
[0126] [プリフォーム用金型]
プリフォーム用金型は、図 12において、プリフォーム外径 aが 61. Ommであり、プリ フォーム縦方向延伸部長さ cが 146. 4mmであるプリフォーム(104)を形成できる形 状のものを用意した。
[ブロー用金型]
[0127] 図 12において、内径 bが 31 lmmであり、縦方向延伸部 dが 410mmであるブロー 用金型(200)を用意した。
すなわち、本実施例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 5. 1であり 、縦方向の延伸倍率 dZcは 2. 8であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた全体の 延伸倍率は 14. 28であった。
[熱可塑性榭脂混合物の調製]
[0128] 'ポリエチレンテレフタレート榭脂 77. 5%
(三井 PET J125 :三井化学 (株)製)
'ポリエーテルエステル榭脂 20%
(4047X08:東レ ·デュポン (株)製)
'パーフルォロブタンスルホン酸カリウム 2. 5%
(三菱マテリアル (株)製)
[0129] 上記材料を φ 30mmの 2軸の押し出し機 (日本製鋼所製 TEX30 a、 L/D =42 )を用いて上記混練条件 1にて溶融混練して各材料を混合し、直径 2mm程度のスト ランドで押し出してカットし、ペレットを得た。これを成形用原料 3とした。
[0130] 上記成形用原料 3を φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 280°Cで厚さ 150 mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5°C間隔で JIS K 7161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力 ·延伸倍率曲線を検討した 。すると、図 13に示すような 100°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が得られた。この応 力 ·延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 4. 75-5. 21 (5. 21より大きい倍 率では、引っ張り応力 'ひずみ曲線によると破断しているので、実際にブローした場 合破裂する)の範囲であれば、 SZPが 2. 0以上 15. 0以下となることが分力つた。本 実施例においては、径方向の延伸倍率が 5. 1である。よって、径方向の延伸倍率に 0. 6を乗じたときの応力 Pは 1. 50MPaであり、径方向の延伸倍率に 1. 6を乗じたと きの応力 Siま、 4. 09MPaであり、 S/Piま 2. 73であった。
[電子写真シームレスベルトの製造および評価]
[0131] 上記成形用原料 3を用い、プリフォームの加熱温度を 100°Cに変更した以外は、実 施例 1と同様の方法により延伸ブロー成形を行い、最終的な形状寸法が軸方向長さ 350mm,直径 309mm、膜厚 80 μ mの電子写真シームレスベルト(4)を得た。得ら れた電子写真シームレスベルト (4)を、中間転写ベルトとして図 3に示すフルカラー 電子写真装置に組み込み、実施例 1と同様に耐久試験および評価を行った。用いた フルカラー電子写真装置は日本ヒューレット 'パッカード株式会社製の HP Color L aserjet 9500hdn (商品名)である。 HP Color LaserJet 9500hdnに用いられ るトナーカートリッジは C8550A (黒)、 C8551A (シアン)、 C8552A (イェロー)、 C8 553A (マゼンタ)の 4色である。電子写真シームレスベルト(4)の成形に用いた熱可 塑性榭脂組成物の 100°Cにおける応力'延伸倍率曲線を図 13に、評価結果を表 1 にそれぞれ示す。
〈実施例 5〉
[0132] [プリフォーム用金型およびブロー用金型]
プリフォーム用金型は、図 12において、プリフォーム外径 aが 100. 3mmであり、プ
リフォーム縦方向延伸部長さ cが 21 1. 3mmであるプリフォーム(104)を形成できる 形状のものを用意した。また、ブロー用金型は、実施例 4で用いたものと同様のものと した。
[0133] すなわち、本実施例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 3. 1であ り、縦方向の延伸倍率 dZcは 1. 94であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた全 体の延伸倍率は 6. 01であった。
[熱可塑性榭脂混合物の調製]
[0134] 'ポリアミド榭脂 80%
(MXナイロン S6121:三菱ガス化学 (株)製)
'ポリエーテルエステル榭脂 15%
(4047X08:東レ ·デュポン (株)製)
[0135] 上記材料を φ 30mmの 2軸の押し出し機 (日本製鋼所製 TEX30 a、 L/D =42 )を用いて下記の条件にて溶融混練して各材料を混合し、直径 2mm程度のストラン ドで押し出してカットし、ペレットを得た。これを成形用原料 4とした。
[0136] (2軸押し出し機条件)
'スクリュー: 2条タイプ、ニーデイングゾーンなし
'スクリュー回転数: 200rpm
•加熱温度:シリンダ 2 240°C、
シリンダ 3 250。C、
シリンダ 4〜 11 260。C、
ダイヘッド 260。C
•吐出量: 25kgZh
[0137] なお、上記押し出し条件を「混練条件 2」(弱混練)とする。
[0138] 上記成形用原料 4を φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 270°Cで厚さ 150 μ mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5°C間隔で JISK7 161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力 ·延伸倍率曲線を検討したと ころ、図 13に示すような 110°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が得られた。この応力 · 延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 2. 36-3. 10の範囲であれば、 SZP
が 2. 0以上 15. 0以下となることが分力つた。本実施例においては、径方向の延伸倍 率が 3. 10である。よって、径方向の延伸倍率に 0. 6を乗じたときの応力 Pは 1. OOM Paであり、径方向の延伸倍率に 1. 6を乗じたときの応力 Sは、 15. OOMPaであり、 S ZPは 15. 00であった。本実施例では成形用原料 4の混練条件を弱混練とすること で、得られたシートの応力 ·延伸倍率曲線の応力の増加がより大きくなるように調整し た。
[電子写真シームレスベルトの製造および評価]
[0139] 上記成形用原料 4を用い、プリフォームの加熱温度を 110°Cに変更した以外は、実 施例 1と同様の方法により延伸ブロー成形を行い、最終的な形状寸法が軸方向長さ 350mm,直径 309mm、膜厚 105 μ mの電子写真シームレスベルト(5)を得た。得 られた電子写真シームレスベルト(4)を、中間転写ベルトとして図 3に示すフルカラー 電子写真装置に組み込み、実施例 1と同様に耐久試験および評価を行った。用いた フルカラー電子写真装置は日本ヒューレット 'パッカード株式会社製の HP Color L aserjet 9500hdn (商品名)である。 HP Color LaserJet 9500hdnに用いられ るトナーカートリッジは C8550A (黒)、 C8551A (シアン)、 C8552A (イェロー)、 C8 553A (マゼンタ)の 4色である。電子写真シームレスベルト(5)の成形に用いた熱可 塑性榭脂組成物の 110°Cにおける応力'延伸倍率曲線を図 13に、評価結果を表 1 に、それぞれ示す。
〈比較例 1〉
[0140] [プリフォーム用金型およびブロー用金型]
プリフォーム用金型は、図 12において、プリフォーム外径 aが 47. 3mmであり、プリ フォーム縦方向延伸部長さ cが 96. Ommであるプリフォーム(104)を形成できる形状 のものを用意した。また、ブロー用金型は、実施例 1で用いたものと同様のものとした
[0141] すなわち、本比較例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 3. 0となり 、縦方向の延伸倍率 dZcは 3. 0であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた全体の 延伸倍率は 9. 0であった。
[熱可塑性榭脂混合物の調製]
[0142] 'ポリエチレンテレフタレート榭脂 77. 5%
(三井 PET J135 :三井化学 (株)製)
'ポリエーテルエステル榭脂 20%
(4047X08:東レ ·デュポン (株)製)
'パーフルォロブタンスルホン酸カリウム 2. 5%
(三菱マテリアル (株)製)
[0143] 上記材料を φ 30mmの 2軸の押し出し機 (日本製鋼所製 TEX30 a、 L/D =42 )を用いて上記混練条件 1にて溶融混練して各材料を混合し、直径 2mm程度のスト ランドで押し出してカットし、ペレットとした。これを成形用原料 5とした。
[0144] 上記成形用原料 5を φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 280°Cで厚さ 150 mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5°C間隔で JIS K 7161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力 ·延伸倍率曲線を検討した 。すると、図 14に示すような 1 10°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が得られた。この応 力'延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 3. 66以下であれば、 SZPが 2以 下となることがわ力つた。したがって、本比較例における延伸倍率(3. 0)は SZPが 2 以上 15以下の範囲外であった。本比較例における径方向の延伸倍率に 0. 6を乗じ たときの応力 Pは 2. 42MPaであり、径方向の延伸倍率に 1. 6を乗じたときの応力 S ίま、 3. 63MPaであり、 S/Piま 1. 5であった。
[電子写真シームレスベルトの製造および評価]
[0145] 上記成形用原料 5を用い、プリフォームの加熱温度を 110°Cに変更した以外は、実 施例 1と同様の方法により延伸ブロー成形を行い、最終的な形状寸法が軸方向長さ 250mm,直径 139mm、膜厚 32 μ mの電子写真シームレスベルト(6)を得た。得ら れた電子写真シームレスベルト (6)を用いて、実施例 1と同様の耐久試験および評価 を行った。電子写真シームレスベルト(6)の成形に用いた熱可塑性榭脂組成物の 11 0°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線を図 14に、評価結果を表 1に、それぞれ示す。 〈比較例 2〉
[0146] [プリフォーム用金型およびブロー用金型]
プリフォーム用金型は、図 12において、プリフォーム外径 aが 47. 3mmであり、プリ
フォーム縦方向延伸部長さ cが 172. 5mmであるプリフォーム(104)を形成できる形 状のものを用意した。また、ブロー用金型は、実施例 1で用いたものと同様のものとし た。
[0147] すなわち、本比較例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 3. 0であ り、縦方向の延伸倍率 dZcは 1. 7であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた全体 の延伸倍率は 5. 10であった。
[電子写真シームレスベルトの製造および評価]
[0148] 比較例 1で用いた成形用原料 5を φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 280 °Cで厚さ 150 μ mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5°C 間隔で JIS K7161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力'延伸倍率 曲線を検討した。すると、図 14に示すような 110°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が得 られた。この応力'延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 3. 66以下であれば 、 SZPが 2以下となることが分力つた。したがって、本比較例における延伸倍率(3. 0 )は SZPが 2以上 15以下の範囲外であった。本比較例における径方向の延伸倍率 に 0. 6を乗じたときの応力 Pは 2. 42MPaであり、径方向の延伸倍率に 1. 6を乗じた ときの応力 Sは、 3. 63MPaであり、 S/Pは 1. 5であった。
[0149] 上記成形用原料 5を用い、比較例 1と同様の方法により延伸ブロー成形を行い、最 終的な形状寸法が軸方向長さ 250mm、直径 140mm、膜厚 38 mの電子写真シ ームレスベルト(7)を得た。得られた電子写真シームレスベルト(7)を用いて、実施例 1と同様の耐久試験および評価を行った。電子写真シームレスベルト (7)の成形に用 いた熱可塑性榭脂組成物の 150°C応力 ·延伸倍率曲線を図 14に、評価結果を表 1 に、それぞれ示す。
〈比較例 3〉
[0150] [プリフォーム用金型およびブロー用金型]
プリフォーム用金型は、図 12において、プリフォーム外径 aが 23. 7mmであり、プリ フォーム縦方向延伸部長さ cが 127. 4mmであるプリフォーム(104)を形成できる形 状のものを用意した。また、ブロー用金型は、実施例 1で用いたものと同様のものとし
[0151] すなわち、本比較例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 6. 0であ り、縦方向の延伸倍率 dZcは 2. 3であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた全体 の延伸倍率は 13. 80であった。
[熱可塑性榭脂混合物の調製]
[0152] 'ポリエチレンテレフタレート榭脂 77. 5%
(三井 PET J125 :三井化学 (株)製)
'ポリエーテルエステル榭脂 20%
(4047X08:東レ ·デュポン (株)製)
'パーフルォロブタンスルホン酸カリウム 2. 5%
(三菱マテリアル (株)製)
[0153] 上記材料を φ 30mmの 2軸の押し出し機 (日本製鋼所製 TEX30 a、 L/D =42 )を用いて下記の条件にて溶融混練して各材料を混合し、直径 2mm程度のストラン ドで押し出してカットし、ペレットを得た。これを成形用原料 6とした。
[0154] (2軸押し出し機条件)
'スクリュー: 2条タイプ、ニーデイングゾーン 4箇所
'スクリュー回転数: 300rpm
•加熱温度:シリンダ 2 250°C、
シリンダ 3 260。C、
シリンダ 4〜 11 270。C、
ダイヘッド 270。C
'吐出量: 7kgZh
[0155] なお上記押し出し条件を「混練条件 3」(強混練)とした。
[0156] 上記成形用原料 6を φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 280°Cで厚さ 150 mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5°C間隔で JIS K 7161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力 ·延伸倍率曲線を検討した 。すると、図 14に示すような 1 10°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が得られた。この応 力.延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 6以上であっても SZPが 2以下であ つた。これは、本比較例では実施例 4と同一の熱可塑性榭脂混合物を使用している
1S 加熱温度が実施例 4より 10°C高ぐ混練条件が強混練であったので、熱可塑性 榭脂混合物の分子量低下が起こったためと考えられる。本比較例においては、径方 向の延伸倍率が 6. 0である。よって、径方向の延伸倍率に 0. 6を乗じたときの応力 P は 1. 36MPaであり、径方向の延伸倍率に 1. 6を乗じたときの応力 Sは、 1. 88MPa であり、 SZPは 1. 4であった。
[電子写真シームレスベルトの製造および評価]
[0157] 上記成形用原料 6を用い、プリフォームの加熱温度を 110°Cに変更した以外は、実 施例 1と同様の方法により延伸ブロー成形を行い、最終的な形状寸法が軸方向長さ 250mm,直径 140mm、膜厚 260 μ mの電子写真シームレスベルト(8)を得た。得 られた電子写真シームレスベルト(8)を用いて、実施例 4と同様の耐久試験および評 価を行った。電子写真シームレスベルト(8)の成形に用いた熱可塑性榭脂組成物の 110°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線を図 14に、評価結果を表 1に、それぞれ示す。
〈比較例 4〉
[0158] プリフォーム用金型およびブロー用金型は、実施例 5で用いたものと同様のものとし た。すなわち、本比較例におけるプリフォームの径方向の延伸倍率 (bZa)は 3. 1で あり、縦方向の延伸倍率 dZcは 1. 94であり、径方向と縦方向の延伸倍率を乗じた 全体の延伸倍率は 6. 01であった。
[0159] 実施例 5で用いた成形用原料 4を φ 50単軸 Tダイ押し出し装置にて加熱温度 280 °Cで厚さ 150 μ mのシート状に成形した。得られたシートに対して 80〜300°Cの 5°C 間隔で JIS K7161に準拠した加熱引っ張り試験を行い、得られた応力'延伸倍率 曲線を検討したところ、図 14に示すような 95°Cにおける応力 ·延伸倍率曲線が得ら れた。この応力'延伸倍率曲線において径方向の延伸倍率が 1. 58-2. 63の範囲 であれば、 SZPが 2以上 15以下となることが分かった力 本比較例においては、実 施例 5で用いたものと同一の金型を使用した。このとき、径方向の延伸倍率に 0. 6を 乗じたときの応力 Pは 0. 78MPaであり、径方向の延伸倍率に 1. 6を乗じたときの応 力 Sは、破断しており測定できず、このため SZPを出すことができな力つた。しかしな がら、応力が破断時 (延伸倍率 4. 70)で 16. 5MPaあり、破断時の SZPは 21であつ たので、本比較例の SZPは 15より大きい値になると考えられる。
[0160] 上記成形用原料 4を用い、プリフォームの加熱温度を 95°Cに変更した以外は、実 施例 5と同様の方法により延伸ブロー成形を行った力 破裂して成形することができ なかった。このため画像評価することができな力つた。比較例 4の評価結果を表 1に 示す。本例に用いた熱可塑性榭脂組成物の 95°Cにおける応力'延伸倍率曲線を図 14に、評価結果を表 1に、それぞれ示す。
[0161] [表 1]
表 1
産業上の利用可能性
[0162] 本発明によれば、膜厚が均一で、寸法精度及び耐久性に優れ、繰り返し使用して も画像特性に優れた電子写真シームレスベルトを安定してかつ低コストで製造するこ とができる方法を提供できる。また、該製造方法により得られた電子写真シームレス ベルトを電子写真装置に用いることで、繰り返し使用しても環境による変動も少ない 優れた画像を形成できる装置を提供できる。
[0163] この出願は、 2004年 9月 8曰に出願した日本語特許出願(出願番号 2004— 2614
64)に基づく優先権を主張するものとしてここに記載する。