明 細 書 ミラタリンを発現する遺伝子組換え植物の作成方法 技術分野
本発明は、 ミラタリンを発現する遺伝子組換え植物の作成とその利用に関する。 背景技術
ミラクリンは、 ミラクルフルーツ U chadella dulcified) 果実中に含まれ る食味修飾タンパク質である。 ミラクリンは、 1968 年にミラクルフルーツの機 能性成分であることが同定された (Kurihara and Bei dler, Science (1968) 161 (847) p. 1241-1243) 。 その後、 ミラクリンタンパク質の全アミノ酸配列が決定 され (Theeras i lpet al. , J Biol Chem. (1989) 264 (12) , p. 6655- 6659) 、 その 遺伝子の塩基配列が決定された (Masuda et al. , Gene (1995) 161 , p. 175- 17 7) 。 ミラクリン遺伝子の完全長 c D N A配列は、 Masuda et al. , Gene (1995) 161, p. 175-177 に報告されている。 ミラクリンには食品中の酸味を甘味に変え る働きがあり、 例えば、 ミラクルフルーツを食べたあとにレモン果実を食べると、 オレンジ果実のような甘みを感じる。 このような効果からこの果実はミラクルフ ルーツと呼ばれている。 ミラクルフルーツは、 熱帯地方の西アフリカ原産の植物 であり、 現地ではヤシ酒やトウモロコシパンなど酸味のある飲料や食品を食べる 前に伝統的に食されている。
このようなミラクリンの機能を利用して、 ミラクルフルーツを、 体重制限のた めのダイエツトゃ糖尿病治療のための食事制限を無理なく行い、 食事における力 口リー摂取を低減するための補助食品として利用することが試みられている。 食 事をする前にミラクルフルーツを食べておけば、 糖分を減らし、 酸味を添加した 食品でも十分に満腹感が得られ、 無理なく食事量を減らすことができる。 その結 果、 精神的なス トレスを感じずにダイエツトゃ食事療法を行うことが可能となる。 ミラクルフルーツをこれらの用途に供するには、 果実を安定して生産供給する必 要がある。
しかしながら、 現在までのところ十分な量のミラクルフルーツは安定して生産 供給されておらず、 これらの目的には十分に供されていない。 ミラクルフルーツ は、 熱帯原産の植物であるために、 熱帯地域以外で栽培するには周年を通した高 温栽培条件が必要になる。 そのため、 暖房装置など重装備した温室等で栽培され ている。 また、 この機能成分であるミラクリンは、 果実中で分解され易く、 熱帯 地域で生産してそれ以外の地域に十分量を供給するのは技術的 · コスト的に困難 である。 ミラクルフルーツの持つミラクリンの活性を効果的に活用するには、 安 定して低コストで周年的に供給する技術の開発が是非とも必要である。 ミラタリ ン自体についても、 ダイエツトゃ糖尿病治療の食事療法の補助食品などへの利用 が期待されているが、 上記の通り十分量の供給は現状では難しい。
栗原らは、 ミラクリン遺伝子を導入し発現させた酵母においてミラクリン特異 的抗体と反応するタンパク質を産生させることができたこと、 しかしそのタンパ ク質に甘味誘導活性はなかったことを報告している (Kurihara et al. , Foods a nd Food Ingredients Journal Japan No. 174 (1997) 「甘味を誘導する物質 (ミ ラクリン、 クルクリン、 ストロジン) 及ぴ耐熱性甘味タンパク質マビンリンの構 造と活性」 ) 。 この栗原らのレビューには、 ミラクリン遺伝子をタバコ細胞で発 現させることにより、 ミラクリン特異的抗体と反応するタンパク質を産生させる ことができたことも報告されている。 しかし、 タバコで発現されたそのミラクリ ン遺伝子産物が甘味誘導活性をもっかどうかについての報告はされておらず、 ミ ラクリン遺伝子を植物に導入して発現させることにより甘味誘導活性を有するミ ラクリンを生産することに成功した例は、 現在まで知られていない。 発明の開示
本発明は、 上記のような状況に鑑みてなされたものであり、 その目的は、 ミラ クリンを生産する有用遺伝子組換え植物の作成とその利用方法を提供することに あ
本発明者等は、 これまで、 世界中の殆どの地域で周年栽培が可能な有用植物、 例えばレタスやトマト、 また長期間果実収穫が可能な有用植物、 例えばイチゴに おいて外来遺伝子を導入して発現させる研究に取り組んできた。
そこで本発明者等は、 植物分子育種技術を用いて、 周年生産や栽培が容易な有 用植物にミラクリン遺伝子の導入を試みた結果、 ミラクリンを発現する遺伝子組 換え植物の作製に成功した。
作製した組換え植物をミラクリン特異抗体を用いて分析した結果、 組換え植物 はミラク リンをミラクルフルーツに匹敵する濃度で、 機能できる型 (二量体) で 発現していた。
このようにして完成された本発明は、 ミラタリンを発現する植物及ぴその作成 方法、 並びにその利用法に関するものである。
本発明の 1つの態様は、 植物にミラクリン遺伝子を導入しミラクリンを発現さ せる遺伝子組換え植物の作製方法である。 ミラクルフルーツからミラクリン c D N Aを単離しミラクリン遺伝子として使用する事ができる。 また、 ミラクリン遺 伝子をベクターに挿入し、 ァグロパクテリゥムに導入し、 これを植物細胞への遺 伝子導入に使用する事ができる。 本発明では、 このような方法で作製された遺伝 子組換え植物が生産するミラクリンを、 食品添加物あるいは医薬品、 特に糖尿病 治療薬として利用することができる。
本発明の別の態様は、 ミラクリン遺伝子が導入された、 食味修飾活性を有する トランスジェユック植物である。 ミラクリン遺伝子としては、 以下の(a)〜(f)の うち少なくとも 1つのミラタリン遺伝子が好ましい:
(a) 配列番号 1に示す塩基配列からなる遺伝子;
(b) 配列番号 1に示す塩基配列からなる DNAとストリンジヱントな条件下でハ イブリダィズし、 かつ食味修飾を有するタンパク質をコードする DNAからなる遺 伝子;
(c) 配列番号 2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(d) 配列番号 2に示すアミノ酸配列において 1若しくは数個のアミノ酸が欠失 、 置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、 かつ食味修飾活性を有するタ ンパク質をコードする遺伝子;
(e) 配列番号 1に示す塩基配列と 7 0 %以上の同一性を示す塩基配列からなり 、 かつ食味修飾活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;及び
(f) 配列番号 2に示すァミノ酸配列と 8 5 %以上の同一性を示すァミノ酸配列
からなり、 かつ食味修飾活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
ここで食味修飾活性とは、 典型的には、 酸味を甘味に変える活性である。
また上記植物は、 レタス、 トマト、 イチゴ又はシロイヌナズナであることが好 ましい。 さらに本発明においては、 上記トランスジエニック植物は 2倍体植物で あることが特に好ましい。
本発明の別の態様は、 上記トランスジエニック植物からミラクリンを抽出する ことを含む、 ミラク リンの製造方法である。
本発明のさらなる態様は、 上記のトランスジエニック植物において産生された ミラクリンを含む食品添加物である。 あるいは本発明の態様は、 上記のトランス ジエニック植物において産生されたミラク リンを含む飲食品である。 この飲食品 は、 糖尿病患者用のものであることがより好ましい。 本発明の別の態様は、 上記 のトランスジェニック植物において産生されたミラクリンを含む糖尿病治療薬で ある。
ミラクリンを発現した有用植物は、 産業上、 様々な有用性がある。 1つは、 ダ イエット食品の添加物としての利用である。 糖分を加えることによって甘味を与 えている食品に対して、 糖分の代わりに酸とミラクリンを添加することで、 カロ リーをおさえた状態でも甘味を添加することができる。 1つは、 糖尿病患者の食 事療法への利用である。 糖尿病患者は、 糖分の過剰摂取を抑える目的で食事制限 が行われる。 この食事制限は、 食事療法の中で最もス トレスのかかる場面である。 しかし、 ミラクリンを含む飲食品を食事の時に摂取することで無理なく満腹感が 得られ、 食事療法時のこのようなストレスを解消することができる。 それにより、 糖尿病治療がスムーズに行われる。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願 2004-230205号の明細書 及ぴ Z又は図面に記載される内容を包含する。 図面の簡単な説明
図 1は、 ミラクリン遺伝子を植物細胞に導入するためのミラクリン発現べクタ 一の構造を示す図である。 p B I E L 2 Q M I Rは高発現ベクターを示し、 p B
I 3 5 SMI Rは通常のベクターを示す。 RBはTーDNAの右端、 NP T I I はネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子、 T n o sはノパリンシンター ゼ遺伝子ターミネータ一、 3 5 S Pは C aMV 3 5 Sプロモーター、 M I Rは ミラタリン遺伝子を表す。
図 2は、 組換え体中のミラクリン遺伝子の組込みを調べるサザン解析の結果を 示す写真である。 非組換え体と 40系銃の組換え体からゲノム DNAを抽出し、 サザン解析を行った。 (A) 及ぴ (B) は、 調製したメンプレンを B' ASにより 検出した画像、 (C) 及び (D) は、 同じメンプレンについてオートラジオグラ フィ一により検出した X線フィルム像である。 WTは非組換え体、 左側の写真 (A) 及び (C) のレーン 1〜 2 0は、 バイナリ一ベクター p B I E L2QM I Rを導入した組換え体、 右側の写真 (B) 及び (D) のレーン 1〜2 0は、 p B I 3 5 SMI Rを導入した組換え体を示す。
図 3は、 組換え体中のミラクリン遺伝子の転写を調べるノーザン解析の結果を 示す写真である。 非組換え体と 1 9系統の組換え体から全 RNAを抽出し、 ノー ザン解析を行った。 WTは非組換え体、 左側の写真の 9レーンは、 p B' I E L2 ΩΜ I Rを導入した組換え体、 右側の写真の 1 0レーンは、 p Β' I 3 5 SM I R を導入した組換え体を示す。
図 4は、 組換え体中のミラクリンの発現を調べるウェスタン解析の結果を示す 図である。 非組換え体と 1 8系統の組換え体から全タンパク質を抽出し、 ウェス タン解析を行った。 WTは非組換え体、 左側の写真の 9レーンは、 p B I E L2 ΩΜ I Rを導入した組換え体、 右側の写真の 9レーンは、 p B I 35 SMI Rを 導入した組換え体を示す。 Mは、 ミラクリンフルーツから単離精製されたミラク リンタンパク質を示す。
図 5は、 ミラクリン遺伝子を導入した組換え (トランスジエニック) トマトの 葉におけるミラクリン遺伝子の発現を調べたサザンプロット解析の結果を示す写 真である。 「野生型」 はミラクリン遺伝子を導入していないトマトを示す。 他の 1 4レーンには、 p B I 3 5 SMI Rを導入して作製された各組換え体の名称の 略称を記載した。
図 6は、 ミラクリン遺伝子が導入された組換え (トランスジエニック) トマト
個体の葉からのタンパク質抽出物を、 非還元条件下で SD S— PAGEにより展 開し、 ミラクリンを検出したウェスタンブロット解析の結果を示す写真である。
「マーカー」 は、 タンパク質分子量マ カー、 「ミラクリン」 は、 ミラクリンフ ルーツから単離されたミラクリンタンパク質を示す。 「野生型」 はミラクリン遺 伝子を導入していないトマトを示す。 「 1コピー」 のレーン 2— 1、 5— 2、 7 C、 1 1 A、 1 4— 3、 21— 4、 5 6 B、 5 8— 1、 64— 2は、 1コピーの ミラクリン遺伝子が導入された形質転換体の名称である。 「2コピー」 のレーン 4A、 20— 1及び 22 Aは、 2コピーのミラクリン遺伝子が導入された形質転 換体の名称である。 「多コピー」 のレーン 1 5 Aは、 2個を上回るコピー数のミ ラク リン遺伝子が導入された形質転換体の名称である。 レーン 3— 1は、 ミラク リン遺伝子によって形質転換されなかった個体 (非形質転換体) である。 レーン 1 1 A、 20— 1、 1 4- 3以外のレーンのサンプルは、 全て 2倍体トマトであ る。 矢印は、 二量体サイズのミラクリンタンパク質の存在を示している。
図 7は、 還元条件下で SD S— PAGEにより展開した、 組換え (トランスジ エニック) トマトの葉からのタンパク質抽出物について、 ミラクリンを検出した ウェスタンプロット解析の結果を示す写真である。 Wtは野生型トマト (ミラク リン遺伝子を導入していないトマト) を示す。 Mは、 ミラクリンフルーツから単 離精製されたミラク リンタンパク質を示す。 2A、 3A、 6A、 14 Cは、 p B I 3 5 SM I Rを導入して作製された各組換え体の名称である。
図 8は、 ミラク リ ン遺伝子を増幅するためのプライマーを設計した位置を示す 図である。 ミラク リ ン遺伝子の c DN A配列 (ァクセッショ ン番号 D 38 5 9 8) 上に、 各プライマーがハイブリダィズする位置を矢印で示している。 矢印の 折れ曲がった尾部は、 プライマーの 5 ' 末端に含まれるアダプター配列を示す。 枠で囲った配列は、 ミラタリンタンパク質のシグナル様ぺプチド部分をコードす る配列 (シグナル様ペプチドコード配列) である。
図 9は、 ミラクリン遺伝子の P C R増幅産物の電気泳動写真である。 図 9
(A) は、 プライマーセッ ト Ml (シグナル様ペプチドコード配列を増幅する) で增幅した PCR産物、 図 9 (B) は、 プライマーセット M2 (シグナル様ぺプ チドコ一ド配列を増幅しない) で増幅した P C R産物の結果である。
図 1 0は、 ミラタリン遺伝子の P C R増幅断片を挿入した p B i g s 2 1 1 3 S Fベクターのマップである。
図 1 1は、 シグナル様ペプチドコード配列を含む増幅産物を導入した M l群の 組換えシロイヌナズナの T 2個体におけるミラクリン発現を示す、 ウェスタンブ ロッ ト解析の結果を示す写真である。 ウェスタンプロッ ト解析は、 非還元条件下 で展開した葉サンプルからのタンパク質抽出物について行った。 P Mは、 予備染 色されたタンパク質マーカー、 M I Rは、 ミラクリンフルーツから単離精製され たミラクリンを示す。 W tは、 ミラクリン遺伝子を導入していないシロイヌナズ ナを示す。 M 1— 1—:!〜 M 1— 9— 2は、 M 1群の T 2個体の名称である。 写 真の右側の矢印は、 二量体のミラクリンを示すバンド及ぴ単量体のミラクリンを 示すバンドを明示する。
図 1 2は、 シグナル様ぺプチドコード配列を含む増幅産物を導入した M 1群、 又はシグナル様ぺプチドコード配列を含まない増幅産物を導入した M 2群の組換 ぇシロイヌナズナにおけるミラタリン発現を示す、 ウェスタンブロッ ト解析の結 果を示す写真である。 ウェスタンプロッ ト解析は、 非還元条件下で展開した葉サ ンプルからのタンパク質抽出物について行った。 P Mは、 予備染色されたタンパ ク質マーカー、 M I Rは、 ミラクリンフルーツから単離精製されたミラクリンを 示す。 W tは、 野生型シロイヌナズナ (ミラクリン遺伝子を導入していないシロ ィヌナズナ) を示す。 M 1— 4一 4及び M 1— 9— 4は、 シグナル様ペプチドコ ード配列を含む増幅産物を導入した個体、 M 2— 1〜M 2— 6は、 シグナル様ぺ プチドコード配列を含まない増幅産物を導入した個体の名称である。
発明を実施するための最良の形態
1 . ミラク リ ン遺伝子とその単離
現在、 ミラクルフルーツ Richadella dulcifica) 果実に含まれるミラクリ ンが産業利用されている。 しかし、 ミラクルフルーツは熱帯原産の植物であり熱 帯地域以外での栽培が非常に困難であるため、 十分な量のミラクリンが供給され ていない。 本発明者等は、 この問題を解決する有効な手段は、 栽培技術が確立さ れており、 広く世界中で栽培できる植物にミラクリン遺伝子を導入し、 ミラクリ
ンタンパク質を生産させることであると考えた。
本発明者等は、 一般に公開されている D N Aデータベースに登録されているミ ラクリン遺伝子の塩基配列情報に基づいて、 ミラクルフルーツからミラクリン c D N Aを単離した。 本発明に使用したミラクリン遺伝子の c D N Aは、 例えば、 国際塩基配列データベースにおいてァクセッション番号 D 3 9 5 9 8により入手 できる c D N A配列、 又は配列表に示された配列番号 1の塩基配列の情報を元に プライマーを調製し、 ミラクルフルーツの全 R N Aを鎵型に R T— P C Rを行な うことにより増幅し、 調製することができる (実施例 1を参照) 。
しかしながら本発明で用いるミラクリン遺伝子は、 そのような方法で得られる c D' N Aに限定されず、 ミラクリンタンパク質をコードする単離された任意の核 酸であってよい。 本発明における 「ミラクリン」 とは、 最初にミラクルフルーツ の果実から単離された、 いわゆる食味修飾活性を有するタンパク質である。 ミラ クリンの有する 「食味修飾活性 (味覚修飾活性とも呼ぶ) 」 とは、 主として、 酸 味を甘味に変える活性、 すなわち、 ミラクリンの後に口に含んだ酸味のある素材 について甘味を感じるように味覚を変化させる活性を言う。 本発明のミラクリン 遺伝子としては、 ミラクルフルーツ Richadella dulcifica) 由来の、 ミラク リンをコ一ドする核酸が好ましく、 例えば、 配列番号 1で示される塩基配列から なる遺伝子、 そして配列番号 2のァミノ酸配列 (配列番号 1の塩基配列によって コードされているアミノ酸配列) をコードする遺伝子がより好ましい。 また本発 明のミラクリン遺伝子は、 ミラクルフルーツ以外の植物由来のミラクリン遺伝子 ホモログも含むものとする (ィ列えば、 トマト [_Lycopersicon esculentum^ の L e M i r ( D D B J Z E M B L Z G e n B a n kァクセッション番号 U 7 0 0 7 6 ) 、 ダイズのダイズトリプシンインヒビター A及び C (Kuni tz) など) 。 本発明に使用するミラクリン遺伝子は、 ミラクリンの食味修飾活性 (ミラクリン活性) を有するタンパク質をコードする限り、 天然のミラクリン遺 伝子の塩基配列 (例えば、 配列番号 1 ) に 1若しくは複数個の置換、 欠失、 付加 及び Z揷入などの変異が生じた配列からなる遺伝子であってもよい。 本発明のミ ラクリン遺伝子はまた、 食味修飾活性を有する,天然のミラクリンのアミノ酸配列
(例えば、 配列番号 2のアミノ酸配列) において 1若しくは数個 (2〜9個、 好
ましくは≥〜 5個) のアミノ酸が欠失、 置換若しくは付加された配列からなり、 かつ食味修飾活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。 さら に本発明のミラクリン遺伝子は、 配列番号 1の塩基配列を有する DNAとストリ ンジェントな条件下でハイブリダィズし、 かつ食味修飾活性を有するタンパク質 をコードする DNAからなる遺伝子であってもよい。 あるいは、 本発明のミラク リン遺伝子は、 配列番号 1に示す塩基配列と少なくとも 85 %以上、 好ましくは 90%以上の同一性を示す塩基配列からなり、 かつ食味修飾活性を有するタンパ ク質をコードする遺伝子であってもよい。 本発明のミラク リン遺伝子はまた、 配 列番号 2に示すアミノ酸配列と少なくとも 60%以上、 好ましくは 70%以上、 さらに好ましくは 85%以上の同一性を示すアミノ酸配列からなり、 かつ食味修 飾活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
本発明において 「ストリンジェントな条件」 とは、 特異的な核酸ハイプリッド が形成される条件を言い、 具体的には、 例えば、 ナトリウム塩濃度が 1 5〜75 0 mM、 好ましくは 50〜 750 mM、 より好ましくは 300〜 750 mM、 温 度が 25〜70°C、 より好ましくは 55〜65°C、 ホルムアミ ド濃度が 0〜50 %、 より好ましくは 35〜45%となる反応条件をいう。 ス トリンジェントな条 件では、 さらに、 ハイプリダイゼーション後のフィルターの洗浄条件を、 ナトリ ゥム塩濃度が ί 5〜 600 mM、 好ましくは 50〜 600 mM、 より好ましくは 300〜 600 πιΜ、 温度が 50〜 70 °C、 好ましくは 55〜 70 °C、 より好ま しくは 60〜65°Cとすることが好適である。
上記のような様々なミラク リ ン遺伝子は、 当業者であれば、 例えば、 部位特異 的変異導入 (Ausubel ら, 1999, Currennt Protocols in Molecular Biolog y) など周知の技術を利用して既存のミラタリン遺伝子に変異を導入することに よって得ることもできる。
本発明において 「遺伝子」 は、 DNAであっても RNAであってもよい。 DN
Aには少なくともゲノム DNA、 c DNAが含まれ、 RNAには、 mRNAなど が含まれる。 本発明のミラクリ ン遺伝子は、 ミラク リン遺伝子の CD S配列 (開 始コドンから終止コドンまで) 以外に非翻訳領域 (UTR) などを含んでもよレ、。 以上のような本発明のミラクリン遺伝子を含む DNAなどの核酸断片は、 当業
者であればミラクリン遺伝子の既知配列を利用して、 ミラクリン遺伝子を有する 生物から抽出した核酸から常法に従って得ることができる。
一実施形態としては、 本発明のミラクリン遺伝子を含む DN A断片は、 ミラク リンを発現しうる植物の組織から常法により抽出した mRNAを鎳型として、 ミ ラクリン遺伝子の開始コドンから終止コドンまでの全長を増幅可能なように設計 したプライマーを用いた RT— P CRによる核酸増幅によって、 c DNAとして 取得することができる。
こうして得られたミラクリン遺伝子を含む DNA断片は、 ベクター中にクロー ニングしておくことが好都合である。 例えば、 ミラタリン遺伝子を公知の発現べ クタ一、 例えば p UC 1 9などの大腸菌発現ベクターに挿入し、 それを宿主、 例 えば B L 2 1株などの大腸菌に導入して、 宿主内で発現させることができる。 ミ ラクリン遺伝子を含む DNA断片は、 植物用過剰発現 (高発現) プロモーターの 下流に連結した状態で組換え発現ベクターに組み込んでもよい。 ミラクリン遺伝 子を含む DNA断片を、 ェンハンサ一と植物用過剰発現 (高発現) プロモーター の下流に導入した組換え発現ベクターも好適である。 その場合、 例えば、 ミラク リン遺伝子を含む DN A断片の両末端を適当な制限酵素で切断し、 その切断断片 をベクター中の過剰発現プロモーター下流の適当な制限酵素部位にイン · フレー ムとなるように揷入して連結すればよい。 植物に遺伝子導入するためにァグロバ クテリゥム法を用いる場合には、 ァグロパクテリゥム由来のプラスミ ドベクター (例えば p B I 1 0 1若しくは p B I 1 2 1) 又はそれを改変した発現ベクター などのァグロバタテリゥム法に適したベクターに、 ミラクリン遺伝子を組み込む ことが好ましい。 例えば、 植物発現用に開発された公知のベクター (汎用されて 'いる p B I 1 21や p B I 22 1など) のマーカー遺伝子部分を制限酵素を用い て切り出し、 これに代えてミラクリン遺伝子を挿入することによって、 ァグロバ クテリゥム法のためのベクターを構築することができる。 この方法により、 ミラ クリン遺伝子は、 通常、 過剰発現 (高発現) プロモーターの制御下に置かれる。 なお、 得られたミラク リン遺伝子を含む DNA断片については、 塩基配列決定 によりその配列を確認することが好ましい。 塩基配列決定はマキサム-ギルバー トの化学修飾法、 ジデォキシヌクレオチド鎖終結法等の公知手法により行うこと
ができるが、 通常は自動塩基配列決定装置 (例えば A B I社製 D N Aシークェン サー P R I S M 3 7 7 X L ) を用いて行えばよレヽ。
本発明において用いる ni R N Aの調製、 c D N Aの作製 (R T— P C R ) 、 P C R、 ベクター中へのライゲーシヨン、 細胞の形質転換、 D N Aの塩基配列決定 、 プライマーの合成、 タンパク質の抽出などの分子生物学的 .生化学的実験法は 、 通常の実験書の記載に従って行うことができる。 そのような実験書としては、 例 ば、 Sambrookらの Molecular Cloning, A laboratory manual, 2001, Eds., Sarabrook, J. & Russell, DW. Cold Spring Harbor Laboratory Pressを拳げる ことができる。
2 . ミラクリン遺伝子を導入した組換え植物の作製
本発明では、 上記のようにして得たミラクリン遺伝子を植物に導入することに より、 食味修飾活性を有するトランスジヱニック植物を作製することができる。 例えば、 後述の実施例 2のようにして、 ミラク リン遺伝子を組み込んだァグロ パクテリゥム法用の発現ベクターをァグロバクテリゥムに導入し、 それをァグロ バタテリゥム法による植物細胞への遺伝子導入に使用すればよい。 本発明では、 ァグロパクテリゥム法に、 p B I 1 2 1由来のベクターを好適に用いることがで きる。 ベクターを導入する植物細胞の形態は、 組織、 器官、 カルスなどの任意の 形態であってよい。
本発明においてミラクリン遺伝子を導入する植物は、 限定するものではなレ、が、 単細胞藻類、 裸子植物、 双子葉植物若しくは単子葉植物であってよい。 本発明で は、 ミラクリ ン遺伝子を導入する植物として、 レタス、 トマト、 イチゴ、 シロイ ·.ヌナズナ等の作物植物がより好ましい。 遺伝子導入効率の高低はあるものの、 ァ グロパクテリゥム法による遺伝子導入は、 イネ、 トマト、 メロン、 レタスなど広 く植物において用いられていることが報告されている。 なお本発明では、 後述の ように、 ミラクリン遺伝子を 2倍体植物に導入することが特に有用である。
植物細胞へのミラクリン遺伝子の導入法としては、 ァグロバタテリゥム法に限 らず、 エレク トロポレーシヨン法やパーティクルガン法などの直接法も用いるこ とができる。 これらの植物形質転換法の詳細は、 『島本功、 岡田清孝 監修
「新版 モデル植物の実験プロ トコール 遺伝学的手法からゲノム解析まで」
(2001) 秀潤社』 などの一般的な教科書の記載や、 Hiei Y. et al. , "Efficien t transformation of rice (Oryza sativa L. ) mediated by Agrobacteriura and sequence analysis of the boundaries of the T - DNA. " Plant J. (1994) 6, 2 71- 82等の文献を参照すればよい。
ァグロパクテリゥム法によりベクターを導入した植物細胞は、 一般に、 形質転 換細胞を選抜する抗生物質とァグロバタテリゥムを除菌するための抗生物質、 及 び植物体再生用の植物ホルモン (オーキシン、 サイ トカイニンなど) を含む組織 培養用の培地で培養することにより、 植物体の再生を行うことができる。 エレク トロポレーション法及びパーティクルガン法でベクターを導入した植物細胞は、
—般に、 形質転換細胞を選抜する抗生物質と植物体再生用の植物ホルモン (ォー キシン、 サイ トカイニンなど) を含む組織培養用の培地で培養することにより、 植物体の再生を行うことができる。
例えば、 レタスでは、 次の方法を用いることができる。 ァグロパクテリゥム G V2260 を用いてリーフディスク法により、 レタスにミラクリン遗伝子を導入でき る。 ミラクリン遺伝子を保持したァグロパクテリゥムを 1 0 Omg/Lカナマイ シンを含んだ LB培地中でー晚振とう培養し、 遠心洗浄の後、 ァセトシリンゴン
200 とメルカプトエタノール 1 0 1^を含む]^3液体培地に006。。力 S 0.
1になるように懸濁する。 このァグロパクテリゥム菌液に種まきして 5日目の無 菌のレタス葉切片を浸漬する。 ァグロパクテリゥムを感染させたレタス葉切片は、
1 m g/Lベンジルアデニン (BA) 、 0. l mg/Lナフタレン酢酸 (NA
A) を含む MS培地で 3日間共存培養する。 その後、 0. lmgZL BA、 0. l mg/L NAA、 1 00 m g Z Lカナマイシンを含む選抜 M S培地に移し、
2週間ごとに培地を交換しながら培養する。 分化してきたシュートを 0. 0 1m g/L BA、 0. 05 m g / L NAA、 50 m g Lカナマイシンを含む M
S培地に移し、 1〜3 cmぐらいに伸びたシユートを 5 OmgZLカナマイシン を含む発根 MS培地に移す。 得られた再生個体について、 導入遺伝子の確認を行 レ、、 形質転換体を確認する。
また、 トマトでは、 例えば、 文献 (Ohyama ら, 1995, Plant Cell Physiolog
y, 36:369 - 376) に記載の方法を用いることができる。 具体的には、 トマトの種 子を M S培地上に無菌播種し、 2 5 ° (:、 1 6時間照明 (約 4 , 0 0 0ルクス) で 発芽させる。 発芽してきた実生の子葉を 2分割し、 導入したい遺伝子を持つァグ ロノくクテリゥム Agrobacteriwn tumefaciens) ( L B A 4 4 0 4株など)を接種 する。 ゼァチン 1 m g/Lを含む MS培地上で 2日間共存培養する。 続いて、 ゼ ァチン l'mgZL カルべニシリン 2 0 Omg/Lを含む MS培地上で 1週間除 菌のための培養を行う。 更に、 ゼァチン l mgZL カルペニシリン 2 0 Omg ZL、 カナマイシン 1 0 0 mg/Lを含む MS培地上で 2週間毎に継代培養する c ィ 長してきたシユートをカノレべニシリン 2 0 Omg/L, カナマイシン 5 Omg ZLを含む MS培地に継代して発根させる。 得られた再生個体について、 導入遺 伝子の確認を行い、 形質転換体を確認する。
導入遺伝子の確認は、 次の方法で行える。 ゲノム DNAに対するサザン解析に より、 導入遺伝子が核内に組み込まれたかどうかを、 ノーザン解析により核内に ,袓み込まれた遺伝子が mRNAに転写されているかどうかを、 ウェスタン解析に より mRN Aがミラクリンに翻訳されているかどうか確認できる (実施例 4を参 照) 。 ウェスタン解析に使用するミラクリン認識特異抗体は、'大腸菌で発現させ たミラタリンを抗原として公知の方法により作製できる (実施例 5を参照) 。 本発明のミラクリン遺伝子を導入した組換え植物にて産生されたミラクリンタ ンパク質は、 二量体を形成する。 このことは、 非還元条件下で S D S _ P AGE ' により展開したタンパク質溶液についてのミラクリン特異抗体を用いたゥエスタ ン解析によって確認される (例えば図 1 1を参照) 。 ミラクリンタンパク質の二 量体は活性を有している (Kurihara, 1992, Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 32(3) : 231-252) 力 ミラクリンタンパク質の単量体は活性を 有しないことから、 本発明の組換え植物に導入したミラクリン遺伝子は、 活性の あるミラクリンを蓄積できることが示された。
ミラクリン遺伝子を導入した本発明の組換え植物は、 ミラクリンを産生し、 そ れにより、 食味修飾活性を有する。 すなわち、 被験者 (好ましくはヒ ト) が本発 明の組換え植物を口に含み (そして好ましくはよく嚙み) 、 その後、 酸味のある 素材を口に入れると、 酸味の代わりに甘味を感じる。
従って、 組換え植物が生産するミラク リンの活性 (食味修飾活性) は、 実施例
6〜8に示すようなバイオアツセィ法により評価できる。 直接法では、 人がミラ クリンを生産している組換え植物を直接口に含み、 続いて酸味材料 (タエン酸ゃ レモン汁など) を口に含むことにより効果を評価できる。 抽出法では、 組換え植 物からミラク リンを公知の方法で抽出し、 その抽出液を口に含み、 続いて酸味材 料 (タエン酸ゃレモン汁など) を口に含むことにより効果を評価できる。 それら のアツセィでは、 口に含んだ酸味材料に対して甘味が感じられた場合、 その組換 え植物において産生されたミラクリンは活性を有すると判断することができる。 レタスやトマトなどは、 栽培技術や流通技術が非常に発達しており、 世界中の どこの地域でも安定して周年生産が可能である。 従ってこれらは、 ミラクリンを 生産する組換え植物の宿主としては極めて適している。 逆に言うと、 栽培の容易 さの点では、 ミラタリン遺伝子を導入する植物は、 ミラクノレフルーッ iichadel la dulcifica) のように特定の地域以外では栽培が難しい植物ではない方がよ い。 しかしながら、 ミラクリン遺伝子を導入して発現させる有用植物は、 これら に制限されず、 食材となりうる全ての植物を含める。
ところで本発明者らは、 後述の実施例にも示される通り、 ミラクリン遺伝子を 2倍体植物に導入して得られる 2倍体の形質転換 (トランスジエニック) 植物が、 特に高いミラクリン産生能を有することも見出した。 本発明者らは、 ミラクリン 遺伝子が導入された 2倍体植物が、 活性のある二量体形態でミラクリンを蓄積す ること、 及びそのミラクリンが甘味誘導活性を有することを確認した。 さらに本 発明者らは、 ミラクリン遺伝子が導入された 2倍体植物細胞では、 発現量の低下 が起こりにくいことも見出した。 このことから、 2倍体の植物が、 ミラクリン遺 伝子を高発現させるために特に適していることが判明した。 ミラクリン遺伝子が 導入された 2倍体のトランスジエニック植物は、 活性のあるミラクリンを安定的 に大量に産生できるため、 ミラク リ ンの大規模生産用には特に有用である。
栽培の容易性の点からは、 ミラクリン遺伝子を導入する 2倍体植物として、 2 倍体の作物植物 (栽培種) を用いることがなお好適である。 上記 2倍体植物とし ては、 限定するものではないが、 例えばトマト、 キャベツ、 ハクサイ、 イネ、 ト ゥモロコシ、 ダイズ等の 2倍体が挙げられる。
動物では、 2倍体よりも多い染色体数を有する倍数体は、 両生類や魚類の一部 の例を除いてほとんど知られていない。 しかし植物では、 同一種内で複数種の倍 数体が存在することがしばしば知られている。 植物の倍数体は、 果実が大きくな るなどの栽培上有利な形質を生じうるため、 作物として有利に用いられているも のが多い。 現在利用されている倍数体の作物植物には天然のものもあれば人為的 に作製されたものもある。 作物植物の倍数性の例としては、 コムギの 2倍体品種 (染色体のセッ トを 2組もつ) の他に、 4倍体品種 (染色体のセッ トを 4組も つ) 、 6倍体品種 (染色体のセットを 6組もつ) がある。 一方、 サッマイモの栽 培種は 6倍体、 栽培タバコは異質 4倍体 (異種のゲノム 2セットずつが組み合わ さって生じた倍数体;複 2倍体とも呼ばれる) である。 しかしながら、 本発明に おいて、 ミラクリンの高効率な組換え生産を行う目的では、 ミラクリン遺伝子を 導入する植物は、 上記の通り、 倍数体 (例えば、 4倍体、 6倍体ゃ複 2倍体) で はなく、 2倍体であることが好ましい。 本発明において 「2倍体」 とは、 ゲノム ( 1セットの染色体) を 2組有する植物を意味する。
本発明では、 ミラクリン高発現性トランスジエニック植物を作製する上では、 2倍体植物にミラクリン遺伝子を導入し、 さらに 2倍体植物を選抜することによ り、 確実に 2倍体のトランスジエニック植物を得ることがより好ましい。 これは、 ミラクリン遺伝子を 2倍体植物細胞に導入しても、 継代培養などの細胞培養工程 において染色体が 4倍体などに自然倍加してしまうことがしばしばあるためであ る (実施例参照) 。 2倍体植物を選抜するためには、 ミラクリン遺伝子が導入さ れた細胞をマーカー選択などにより選択的に増殖させ、 場合によっては植物体ま で生長させて、 その植物細胞 (植物体の場合は、 葉、 根などの細胞が好ましい) について、 当業者に公知の倍数性検定法によって倍数性を判定し、 2倍体である 細胞を選択することが好ましい。 限定するものではないが、 例えば、 目的の植物 体の葉由来の細胞について、 フローサイ トメーター (例えば、 パルテック社のフ ローサイ トメーター) を用いて倍数性の検定を行うことができる。 この場合、 倍 数性が既知である植物体由来のサンプルをコントロールとしてそのピークと比較 することにより、 ミラクリン遺伝子を導入した植物体の倍数性を判定することが できる。 このような、 2倍体植物にミラクリン遺伝子を導入し、 遺伝子導入され
た植物体から 2倍体植物を選抜することを含むミラクリン高発現性のトランスジ エニック植物の製造方法も、 本発明には含まれる。
本明細書において用語 「トランスジエニック植物」 、 「組換え植物」 及ぴ 「 ( 植物の) 形質転換体」 は、 ミラクリン遺伝子が外来遺伝子として導入されている 植物を指すために互換的に使用される。 本明細書において 「トランスジヱニック 植物」 、 「組換え植物」 及び 「 (植物の) 形質転換体」 は、 植物体だけでなく、 導入遺伝子を発現しているか又は発現しうる状態で保持している植物細胞、 並ぴ にその植物細胞を含む器官 [例えば葉、 花、 茎、 根、 種子等] 、 組織 [例えば表 皮、 師部、 柔組織、 木部、 維管束、 柵状組織、 海綿状組織等] 、 及び培養細胞 ( 例えばカルス) なども意味する。 本発明の 「トランスジエニック植物」 、 「組換 え植物」 及ぴ 「 (植物の) 形質転換体」 には、 遺伝子導入した植物細胞又はそれ を含むカルスから再生させた植物体の、 子孫個体及びその一部も包含される。 一旦、 ミラクリンを生産する組換え植物が作出されれば、 その繁殖材料 (例え ば、 果実、 種子など) は容易に得ることができる。 さらに、 得られた繁殖材料を 基にミラクリンを生産する組換え植物を量産することが可能となる。 また、 ミラ クリンを生産する組換え植物からは、 当業者には周知のタンパク質抽出精製法を 用いて、 大量のミラクリンタンパク質を取得することができる。 従って本発明は、 組換え植物からミラクリンを含むタンパク質を抽出し、 好ましくはさらにミラク リンを分離することにより、 ミラタリンを大量生産する方法にも関する。
3 . 飲食品及び医薬品
本発明は、 本発明の組換え植物が生産したミラクリンを含有する飲食品、'食品 添加物にも関する。 本発明はまた、 本発明の組換え植物が生産したミラクリンを 有効成分として含む医薬品にも関する。
本発明の組換え植物が生産するミラクリンは、 食味修飾活性として酸味を甘味 に変える活性を有する。 従って、 本発明の組換え植物が生産するミラクリンを含 有する飲食品、 食品添加物、 又は医薬品 (治療薬、 予防薬又は生活改善薬など) は、 限定するものではないが、 例えば、 糖尿病の予防や糖尿病患者の治療効果の 促進のため (例えば、 食事療法におけるス トレス緩和のため) に有用である。
本発明の導入されたミラクリン遺伝子が発現している組換え植物は、 その植物 体自体を食品として利用してもよいし、 植物体の一部を食品又は食品添加物とし て使用してもよいし、 植物体若しくは植物体の一部 (葉など) から抽出したミラ ク リ ン若しくはミラタリンを含むタンパク質画分を飲食品、 食品添加物又は医薬 品として使用してもよレ、。 本発明の組換え植物が生産するミラクリンを含有する 飲食品、 食品添加物及ぴ医薬品に関する本発明の 1つの態様は、 ミラクリンを発 現している本発明の組換え植物の植物体、 その組換え植物の植物体の一部 (葉や 種子など) 、 又はその植物体若しくは植物体の一部から抽出したミラクリン含有 タンパク質を含む、 飲食品、 食品添加物又は医薬品である。
本明細書において 「飲食品」 とは、 限定するものではないが、 飲料、 食品及び 機能性食品を包含する。 本発明の飲食品には、 本発明の組換え植物が生産するミ ラクリンに加えて、 酸味材料 (レモン汁、 クェン酸など) を添加することが好ま しい。 ミラクリンは酸味を甘味に変える性質を持っていることから、 本発明の飲 食品は、 酸味材料を添加する代わりに、 糖分含量を減らしたものであることが好 ましい。 本発明の組換え植物が生産するミラクリンを添加する飲食品は、 特に限 定されない。 例えば飲料として果物 ·野菜系飲料 (オレンジ、 りんご、 ぶどうな どの果汁や、 トマト、 ニンジンなどの野菜汁を含む飲料) 、 アルコール性飲料 ( ビール、 発泡酒、 ワインなど) 、 炭酸飲料及び清涼飲料、 発酵乳 (ヨーグルトな 'ど) 、 乳酸菌飲料、 乳飲料 (コーヒー牛乳、 フルーツ牛乳など) 、 お茶系飲料 ( 緑茶、 紅茶及びウーロン茶など) 等の飲料を例示することができる。 各種飲料の 製造法等については、 既存の参考書、 例えば 「最新 · ソフ ト ドリンクス」 (2003) (株式会社光琳) 等を参考にすることができる。
本発明の組換え植物が生産するミラクリンを添加する食品は、 特に限定されず
、 生鮮食品であってもよいし、 加工食品であってもよい。 例えば、 プリン、 ゼリ 一、 アイスクリーム類、 ケーキ、 キャンディ、 パスタ、 うどん、 かまぼこ、 ハム
、 しょう油、 ドレッシング、 マヨネーズ、 豆腐、 スープ、 パン、 魚の切り身、 カロ ェ肉、 野菜、 きのこなどの様々な食品を例示することができる。
本発明の組換え植物が生産するミラタリンを含有する飲食品として、 機能性食 品はとりわけ好ましい。 本発明の 「機能性食品」 は、 生体に対して一定の機能性
を有する食品を意味し、 ί列えば、 特定保健用食品 (条件付きトクホ [特定保健用 食品]を含む) 及び栄養機能食品を含む保健機能食品、 特別用途食品、 栄養補助 食品、 健康補助食品、 サプリメント (例えば、 錠剤、 被覆錠、 糖衣錠、 カプセル 及び液剤などの各種剤形のもの) 及び美容食品 (例えばダイエット食品) などの いわゆる健康食品全般を包含する。 本発明の機能性食品はまた、 コーデックス ( FA0/WH0合同食品規格委員会) の食品規格に基づく健康強調表示 (Health claim ) が適用される健康食品を包含する。
本発明の機能性食品として好ましいより具体的な例には、 病者用食品、 妊産婦 •授乳婦用粉乳、 高齢者用食品等の特別用途食品がある。
本発明の組換え植物が生産するミラタリンを含有する機能性食品の好ましい例 として、 保健機能食品が拳げられる。 保健機能食品制度は、 通常の食品のみなら ず錠剤、 カプセル等の形状をした食品を対象としている。 この制度の下、 保健機 能食品は、 特定保健用食品 (個別許可型) と栄養機能食品 (規格基準型) の 2種 類の類型からなる。 さらに、 条件付きトクホ [特定保健用食品]等の新たな類型も ある。
本発明の機能性食品は、 酸味を甘味に変える活性を有する。 従って本発明の機 能性食品は、 肥満に悩む人や糖尿病を患う人が食事療法を行う際に糖分を摂取し なくても甘味を味わえるようにするため、 肥満や糖尿病の治療効果を生活面から 促進する効果がある。 本発明の機能性食品 (好ましくは、 特定保健用食品又は条 件付きトクホ [特定保健用食品] ) は、 糖分摂取を無理なく抑制できることについ て、 記載又は表示したものであってよい。 そのような記载又は表示は、 保健機能 食品制度において定められた規定に基づいて表示承認されたものであり うる。 例 えば本発明の機能性食品においては、 「糖分摂取量の抑制に役立つ」 「痩せたい 人の食生活改善に役立つ」 などの記載が考えられる。 ' 本発明の機能性食品は、 錠剤、 顆粒剤、 散剤、 丸剤、 カプセル剤などの固形製 剤、 液剤、 懸濁剤、 シロップ剤などの液体製剤、 あるいはジエル剤などの製剤の 形状であってもよいし、 通常の飲食品の形状 (例えば、 飲料、 粉状茶葉、 菓子な ど) であってもよい。
本発明の組換え植物が生産するミラタリンの飲食品における含量は特に限定さ
れず、 場合に応じて様々であってよい。 具体的な含量は、 飲食品の種類や求める 味や食感を考慮して、 当業者が適宜定めることができる。 しかし通常は、 本発明 の組換え植物が生産するミラク リンの量が、 0 . 0 0 1〜 1 0 0重量0 /0、 特に 0 . :!〜 1 0 0重量%となるような含量が適当である。
本発明の飲食品の製造においては、 飲食品に慣用的に使用されるような各種添 加物を使用してもよい。 添加物としては、 限定するものではないが、 発色剤、 着 色料、 香料、 保存料、 乳化剤、 酸化防止剤、 p H調整剤、 化学調味料、 増粘剤、 消泡剤、 結着剤等が挙げられる。 さらに、 ォタネニンジンエキス、 ェゾゥコギェ キス、 ユーカリエキス、 杜仲茶エキス等の機能性素材をさらに添加してもよい。 本発明の飲食品は、 糖分の摂取を無理なく低減させたいヒ ト、 家畜、 愛玩動物
、 実験 (試験) 動物等を含む哺乳動物が摂取するためのものであることが好まし レ、。 特に、 痩せたい人、 肥満の人、 及ぴ糖尿病患者などの、 糖分の摂取を無理な く低減させることが望まれる人が、 本発明の飲食品を摂取する対象として好まし レ、。 太りやすい人及び糖尿病予備軍なども、 本発明の飲食品を摂取する対象とし て好ましい。
本発明は、 本発明の組換え植物が生産するミラタリンを含む食品添加物にも関 する。 本発明の食品添加物には、 ミラク リ ンの他に、 慣用的に使用されている各 種添加物がさらに添加されていてもよい。 本発明の食品添加物は、 上記のような 本発明の組換え植物が生産するミラクリンを含む飲食品を製造するために使用で きる。
本発明は、 本発明の組換え植物が生産するミラクリンを有効成分として含有す る、 医薬品にも関する。
本発明の医薬品には、 製薬上許容される担体又は添加物を配合してもよい。 こ のような担体及び添加物の例として、 水、 製薬上許容される有機溶剤、 コラーゲ ン、 ポリ ビュルアルコール、 ポリ ビュルピロリ ドン、 ぺクチン、 キサンタンガム 、 アラビアゴム、 カゼイン、 グリセリ ン、 プロピレングリ コーノレ、 ポリエチレン ダリコール、 パラフィン、 ステアリルアルコール、 ヒ ト血清アルブミン、 マンニ トール、 ラタ トース、 医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、 リポゾ ームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。 使用される添加物は、 製剤の剤形
に応じて適宜又は組み合わせて選択される。 本発明の医薬品は、 さらに他の薬理 成分を含有していてもよい。
本発明の医薬品は、 基本的には経口製剤である。 本発明の医薬品は、 口腔内で 作用させる必要があることから、 錠剤、 顆粒剤、 散剤、 丸剤、 バッカル剤、 トロ ーチ剤などの固形製剤、 ジエル剤、 あるいは液剤、 懸濁剤、 シロップ剤などの液 体製剤等の剤形であってよい。
上記経口固形製剤には、 製薬上一般に使用される結合剤、 賦形剤、 滑沢剤、 崩 壊剤、 湿潤剤などの添加剤を含有してもよい。 また、 経口液体製剤は、 製薬上一 般に使用される安定剤、 緩衝剤、 矯味剤、 保存剤、 芳香剤、 着色剤などの添加剤 を含有してもよい。
本発明の医薬品の投与量は、 投与対象の年齢及び体重、 投与経路、 投与回数に より異なり、 当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。
本発明の医薬品を投与する対象は、 糖分の摂取を無理なく低減させたいヒ ト、 家畜、 愛玩動物、 実験 (試験) 動物等を含む哺乳動物であることが好ましい。 特 に、 痩せたい人、 肥満の人、 及び糖尿病患者などの、 糖分の摂取を無理なく低減 させることが望まれる人が、 対象として好ましい。 太りやすい人及ぴ糖尿病予備 軍なども対象として好ましい。
本発明の 「医薬品」 の好適な 1つの具体例としては、 糖尿病治療薬が挙げられ る。 この糖尿病治療薬には、 例えば糖尿病予防改善剤が含まれる。 この糖尿病予 防改善剤には、 食事療法におけるス トレスを緩和する糖尿病患者のための生活改 善剤を包含する。 あるいは、 本発明の 「医薬品」 の好適な別の具体例としては、 肥満治療薬が挙げられる。 この肥満治療薬には、 例えば肥満予防改善剤が含まれ る。 この肥満予防改善剤には、 食事療法におけるス トレスを緩和する肥満患者の ための生活改善剤を包含する。 本明細書において 「予防改善剤」 とは、 当該疾患 の発症を予防する効果及ぴノ又は疾患の症状等を改善する効果の両方を示す医薬 品を意味する。 実施例
以下、 本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、 本発明はこれら実施例
に制限されるものではない。
実施例 1 : ミラクリン遺伝子のクローエングとシークェンス解析
本実験では、 ミラタリン遺伝子をクローニングする材料としてミラクルフルー ッとその葉を用い、 以下の方法により遺伝子を獲得した。 ミラクルフルーツとそ の葉からフエノールー SD S法を用いて全 RNAを抽出し、 RT—P CRハイキ ット (Toyobo)を用いて c DNAを合成した。 得られた c D N Aを鏡型にして、 ミラクリン遺伝子の c DNA情報(Matuda et al. , 1995)に基づいて設計した 2 つの特異的プライマー (制限酵素 Xb a Iサイ トを付加したセンスプライマー 5' - TTTTCTAGAATGAAGGAATTAACAATGCT-3 ' (配列番号 3 ) と制限酵素 S a c Iサ ィ トを付加したアンチセンスプライマー 5' -TTTGAGCTCTTAGAAGTATACGGTTTTGT- 3' (配列番号 4) ) を用い、 ミラクリン c DNAを P CRによって増幅した。 P CRは、 9 5 °Cで 5分間の熱変性のあと、 95°Cで 1分間、 5 7°Cで 1分間、 72 °Cで 2分間を 1サイクルとして 40サイクル行った。 P C R産物は、 X b a I と S a c Iで切断し、 p UC 1 9にサプクローニングした (p UCMR L 1 9) 。 クローン化した断片は、 DNAシークェンサ一 AB I 3 1 0と DNA Seq uencing Kit Big Dye Terminator cycle sequencing Ready Reaction (.Applied Biosyste MS , Tokyo)を用いて、 塩 ·基配列の決定を行い、 データベース上の 登録配列 (D D B Jァクセッション番号 D 3 95 98) と同一であることを確認 した。 クローン化断片の塩基配列上の、 ミラクリン遺伝子の開始コドンから終止 コドンまでの配列を配列番号 1に示す。 配列番号 1の塩基配列にコードされるミ ラクリンタンパク質のアミノ酸配列を配列番号 2に示す。 実施例 2 :植物発現ベクターの構築とァグロパクテリゥムへの導入
pUCMRL 1 9プラスミ ドを保持する大腸菌 (JM1 09) からプラスミ ド を常法に従って抽出した。 このプラスミ ドからミラクリン遺伝子部分を制限酵素
X b a I と S a c Iで切り出し、 植物癸現用のバイナリーベクター p B I 1 2 1 と p B I 1 2 1の C a MV 3 5 Sプロモーター領域を改変したベクター (高発現 ベクター) の GU S遺伝子部分にクローニングした。 このプラスミ ドを p B 1 3
5 SM I Rと p B I E L2QM I Rとした (図 1 ) 。 このプラスミ ドを保持する
大腸菌 JMl 09は、 抗生物質カナマイシン 10 OmgZLを含む LB培地で培 養して維持した。 続いて、 この 2つのプラスミ ドをそれぞれァグロパクテリゥム GV 2260にエレクトロポレーション法により形質転換した。 この形質転換し たァグロパクテリゥム GV2260 (p B I 35 SMI R又は p B I E L2QM I Rを導入) は、 カナマイシン 1 0 Omg/Lを含む LB培地で培養して維持し た。 実施例 3 : レタス組換え体の作成
p B I 35 SMI R又は p B I EL2QMI Rを保持するァグロバタテリゥム GV 2260を用いてリーフディスク法により、 レタス (品種:カイザー、 2倍 体品種) にミラクリン遺伝子を導入した。 形質転換したァグロパクテリゥムを 1 0 OmgZLカナマイシンを含んだ LB培地中でー晚振とう培養し、 遠心洗浄の 後、 ァセトシリンゴン 200 μ Mとメルカプトェタノール 10 μΜを含む MS液 体培地に OD6。。 が 0. 1になるように懸濁した。 このァグロバタテリゥム菌液 には種蒔して 5日目の無菌のレタス葉切片を浸漬させた。 ァグロパクテリゥムを 感染させたレタス葉切片は、 1 mgZLベンジルアデニン (B A) 、 0. lmg ZL 1—ナフタレン酢酸 (NAA) を含む MS培地で 3日間共存培養した。 そ の後、 0. 1 mg/L BA、 0. lmg/L NAA、 100mg/Lカナマ ィシンを含む選抜 M S培地に移し、 2週間ごとに培地を交換しながら培養した。 分化してきたシユートを 0. 0 lmg/L BA、 0. 05mg/L NAA, 50 m gノ Lカナマイシンを含む MS培地に移し、 1〜 3 c mぐらいに伸びたシ ユートを 5 OmgZLカナマイシンを含む発根 MS培地に移した。 この培地で根 を形成した個体から形質転換個体を選抜した。 実施例 4 :組換えレタスの解析
発根培地で根を形成した 40個体の形質転換体の葉からゲノム D N Aを抽出し た。 得られたゲノム DN A 1 0 / gを X b a Iで切断し、 ミラクリンコード領 域の P CR増幅断片を32 P標識したプローブを用いてサザンプロット解析を行 つた。 その結果、 いずれの個体からもシグナルが見られ、 ミラクリン遺伝子が導
入されていることが確かめられた (図 2)。 続いて、 ミラクリン遺伝子の導入が 確認された個体から 1 9個体をランダムに選びノーザン解析を行った (図 3) 。 その結果、 調べた 1 9個体のうち 1 3個体でミラクリン遺伝子が発現しているこ とが確認された。 次に、 ノーザン解析を行った結果ミラク リン遺伝子からの mR N A発現の確認された個体について、 実施例 5で作成したミラクリン認識特異抗 体を用いてウェスタン解析を行った (図 4) 。 その結果、 ノーザン解析で強い発 現をしていた組換え体ではタンパク質レベルでもミラタリンが強く発現している ことが確かめられた。 実施例 5 : ミラクリン認識特異抗体の作成
抗原用のタンパク質を調製するために制限酵素 B a mH Iサイ トを付加したセ ンスプライマー 5, -TAGGATCCGATTCGGCACCCAATCCGGTT-3 ' (配列番号 5 ) と制限 酵素 S a c Iサイトを付加したアンチセンスプライマー 5, -TTTGAGCTCTTAGAAGT ATACGGTTTTGT-3' (配列番号 4) を用いて、 p U C 1 9にサブクローニングした 全長のミラクリン cDN A (pUCMRL 1 9) を鎳型にして P C Rを行った。 その P CR産物 (ァクセッション番号 D 38 5 9 8で得られるミラタリン遺伝子 の c D NA配列の 94— 6 6 9番目の塩基を含む) を制限酵素 B a mH Iと S a c Iで処理し、 同じ制限酵素で処理した N末に 6 XH i sタグをコードする配列 を付加することができる大腸菌発現用ベクター P QE 30 (Qiagen, Chatsworth, Calif) にクローニングした (p QEMRL 30) 。 I PTG (イソプロピル一 jS— D—チォガラクトビラノシド) により発現を誘導した融合タンパク質は H i s— T r a pカラム (Amersham Pharmacia Biotech, UK) で精製した。 この精 製した融合タンパク質を抗原としゥサギに免疫して抗血清を得た (Scrum, Tokyo, Japan) 。 抗血清から抗原特異的抗体を精製するために制限酵素 B a mH Iサイ トを付加したセンスプライマー 5 ' 一 TAGGATCCGATTCGGCACCCAATCCGGTT-3, (配 列番号 5) と制限酵素 X h o Iサイ トを付加したアンチセンスプライマー 5' - T
TCTCGAGGAACGCCGAGAAATTGATGTT-3, (配列番号 6 ) を設計し、 p U C 1 9にサブ クローニングした (pUCMRL 1 9) 全長のミラクリン c DNAを鍚型にして
P CRを行った。 その P C R産物 (ミラクリン遺伝子の 94一 3 60番目の塩基
を含む) を制限酵素 B a inH I と X h o Iで処理し、 同じ制限酵素で処理した N 末に G S T (ダルタチオン S— トランスフェラーゼ) をコードする配列を付加す る大腸菌発現用ベクター p GE X 4 T— 1 (Araersham Pharmacia Biotech, UK) にク口一エングした ( p GE XMR L) 。 I P T G (イソプロピル一 β— D—チ ォガラタ トピラノシド) により発現を誘導した融合タンパク質は G S Τ—トラッ プカラム (Amersham Pharmacia Biotech, UK) で精製した。 この精製した融合タ ンノ ク¾を CNB r —activated Sepharose 4 Fast Flow column (Amersham Pha rmacia Biotech, UK) にカップリングさせたァフィ二ティカラムを用いて抗血清 から抗原特異的抗体を精製した。 実施例 6 :組換えレタスが生産するミラクリンのバイオアツセィ
実施例 4でミラクリンの発現が確認された組換えレタスの葉 1 0 gを水でよく 洗浄し、 口の中でよく嚙んで 5分間舌になじませてから吐き出し、 脱イオン水で 口の中を洗って、 0. 0 2Mのクェン酸を味わい、 その甘さと 0. 1〜1Mのシ ョ糖標準液の甘さを比較することによりバイオアツセィを行った。 また、 ミラク リンの発現が確認された組換えレタスの葉 1 0 gに 0. 5M N a C 1 1 0 m Lを加えてタンパク質を抽出し、 0. 0 1 M N a HC 03溶液に透析した溶液 をテストに用いた。 甘味誘導活性の評価は、 5 mLのタンパク質溶液を口の中で 5分間含み舌によくなじませた後吐き出し、 脱イオン水で口をすすいで 0. 0 2 Mのクェン酸を味わい、 その甘味の強さを 0. 1〜 1 Mのショ糖標準液の甘さと 比較することにより行った。
さらに、 実施例 4においてミラクリンの発現が確認された組換えレタス及ぴミ ラクリン遺伝子を導入していない非組換えレタスのそれぞれの葉 2 gを、 上 f己と 同様に、 水でよく洗浄し、 口の中でよく嚙んで、 5分間舌になじませてから吐き 出し、 脱イオン水で口の中を洗って、 0. 0 2Mのクェン酸を味わい、 その甘さ と 0. 1〜1 Mのショ糖標準液の甘さを比較することによりバイオアツセィを行 つた。 比較のために、 ミラクルフルーツ 1個の皮を剥きその果実を 5分間舌にな じませてから吐き出し、 脱イオン水で口の中を洗ってから、 0. 0 2Mのクェン 酸を味わい、 その甘さと 0. 1〜 1 Mのショ糖標準液の甘さを比較した。 この結
果を表 1に示す。
表 1 :組換えレタスの甘味誘導活性の評価
表 1中、 被験者が同等の甘さであると感じたショ糖の濃度が大文字 oで示され ている。 このように、 レタスで発現させたミラク リンは、 ミラクルフルーツに含 まれるミラクリンと同程度の強さの甘味誘導活性を示した。 なお組換えレタスで は、 世代が進むと、 ミラクリンの発現量が低下する傾向にあった。 実施例 Ί :組換えトマトの作製
実施例 1及び 2で作製した p B I 35 SMI Rと、 p B I EL2QM I Rを保 持するァグロバタテリゥム GV 2260を用いて、 リーフディスク法により、 ト マ ト (品種: M o n e y m a k e r、 2倍体品種) にミラクリン遺伝子を導入し た。 形質転換したァグロバタテリゥムを 1 00 mgZL カナマイシンを含ん だ LB培地中で一晩振とう培養し、 遠心洗浄の後、 ァセトシリンゴン 200 μΜ
とメルカプトエタノール 1 0; Μを含む MS液体; ¾地に OD6。。が 0. 1になる ように懸濁した。 このァグロバタテリゥム菌液に種まきして 7日目の無菌のトマ ト子葉切片を浸漬させた。 ァグロパクテリゥムを感染させたトマト葉切片は、 1 5 m g/L ゼァチン (Z e a t i n) を含む M S培地で 3日間共存培養した。 その後、 lmgノ L ゼァチン、 1 0 OmgZLカナマイシンを含む選抜 MS培 地に移し、 2週間ごとに培地を交換しながら培養することにより伸びたシユート を 5 Omg/Lカナマイシンを含む発根 MS培地に移した。 この培地で根を形成 した個体から形質転換個体を選抜した。
発根 M S培地で根を形成した形質転換個体の葉からゲノム D' N Aを抽出しサザ ン解析を行い、 導入遺伝子を検定した (図 5) 。 その結果、'調べたいずれの個体 からもシグナルが見られ、 ミラタ リン遺伝子が導入されていることが確かめられ た。 ミラクリン遺伝子が導入されたトランスジエニック トマトについては、 フロ 一サイトメーター (パルテック社) を用いて、 倍数性の検定を行った。
続いて、 ミラクリン遺伝子の導入が確認された個体の葉からタンパク質を抽出 し、 実施例 5で作製したミラクリン特異抗体を用いて、 常法によりウェスタン解 析を行った。 非還元条件下で S D S一 PAGEを行った後にウェスタンブロット 解析を行った結果を図 6に示す。 図 6中、 レーン 1 1 A、 20— 1、 及び 14— 3は、 フローサイトメ一ターでの測定により 4倍体であることが示された個体由 来のサンプルであった。 それ以外のレーンのサンプルは、 いずれも 2倍体個体由 来の.サンプルであった。 そして、 2倍体のトランスジエニックトマト由来のサン プル全てについて、 活性型とされる二量体のサイズのミラクリンタンパク質が検 出された。 一方、 4倍体のトランスジエニックトマトである系統 1 1 A及び 20 一 1にそれぞれ由来するサンプルについては、 ミラタリンは全く検出されなかつ た。 4倍体のトランスジェニック トマトである系統 14 - 3由来のサンプ につ いてはミラクリンの発現自体は確認されたが、 その発現量は 2倍体の場合と比較 して半分以下であり、 大幅に少なかった。 一方、 2倍体のトランスジェニック ト マト由来のサンプルについて、 還元条件下で SDS— PAGEを行った後にゥヱ スタンブロット解析を行った結果を図 7に示す。 図 Ίでは単量体のサイズのミラ クリンが検出された。 還元条件下では二量体が分離して単量体になると考えられ
ることから、 図 7からは、 二量体を形成したミラクリンがトランスジエニック ト マトで産生されたことが示された。 これらの結果に示されるように、 組換え (ト ランスジエニック) トマトでの強いミラクリンの発現が確認された。
上記でミラクリンの発現が確認されたトランスジエニック トマト及ぴミラクリ ン遺伝子を導入していない非組換えトマトのそれぞれの果実 2 gを水でよく洗浄 し、 口の中でよく嚙んで 5分間舌になじませてから吐き出し、 脱イオン水で口の 中を洗って、 0 . 0 2 Mのクェン酸を味わい、 その甘さと 0 . 1〜1 Mのショ糖 標準液の甘さを比較することによりバイオアツセィを行った。 さらなる比較のた めに、 ミラクルフルーツ 1個の皮を剥きその果実を 5分間舌になじませてから吐 き出し、 脱イオン水で口の中を洗ってから、 0 . 0 2 Mのクェン酸を味わい、 そ の甘さと 0 . 1〜1 Mのショ糖標準液の甘さを比較した。 この結果の一例を表 2 に示す。 表 2 :組換えトマトの甘味誘導活性の評価
ショ糖の濃度 (M)
被験者 サンプル
0 0. 1 0. 2 0. 3 0. 4 0. 5 0. 6 0. 7 0. 8 0. 9 1. 0
A ミラクルフルーツ o
非組換えトマト O
龃換えトマト(2倍体) o
B ミラクルフルーツ o
非組換えトマト o
組換えトマト(2倍体) o
C ミラクルフルーツ o
非組換えトマト o
組換えトマト(2倍体) o
D ミラクルフルーツ o
非組換えトマト o
組換えトマト(2偌体) o
表 2中、 被験者が同等の甘さであると感じたショ糖の濃度が大文字〇で示され ている。 このように、 トマト (ここでは 2倍体) で発現させたミラクリンは、 ミ ラクルフルーツに含まれるミラクリンと同程度の強さの甘味誘導活性を示した。 一方、 4倍体に倍加したトランスジヱニック (組換え) トマト系統 1 4— 3の 果実を用いた場合には、 クェン酸について感じた甘味はごく弱いものであり、 そ の甘味誘導活性はかなり低いと考えられた。 実施例 8 :組換ぇシロイヌナズナの作製
ミラクルフルーツから、 Dynabeads mRNA DIRECT Kit (DYNAL社製; Prod No.61 0.11&610.12)を使用して mRNAを抽出し、 それを铸型として、 Super Script F irst-Strand Synthesis System for RT - PCR(Imdtrogen社製; Cat. No.11904-018 ) を使用して逆転写反応により c DNAを作製した。
得られた c DNAを铸型とし、 P CRによりミラタリン遺伝子を含む DNA断 片を増幅した。 具体的には、 P CR用のプライマーセットとして、 シグナル様配 列を含めたミラクリンタンパク質をコードする領域を増幅するプライマーセット Ml、 及びシグナル様配列を含まないが、 メチォニンをコードする AT Gを付加 したミラクリンタンパク質部分をコードする領域を増幅するプライマーセット M 2の 2セットを設計した (図 8) 。 これらのプライマーにはクローニング用ァダ プターを付加した (図 8) 。
•プライマーセット Ml :下線部はシグナル様ぺプチドコード配列の 5 ' 末端側 配列、 増幅サイズは 753 b p)
フォワードプライマー MN 1 : 5'- ATTACATTTTACATTCTACAACTACATCTAGAGGCCA AATCGGCCatgaaggaattaac aatgctctct -3' (配列番号 7 ) [大文字: アダプタ 一配列]
リバースプライマー MC 1 : 5,- CGAGCTCGCGGCCGCCCCGGGGATCCTCTAGAGGCCCTT ATGGCCttagaagtatacggttttgttgaac -3' (配列番号 8 ) [大文字:アダプター 配列]
•プライマーセット M2 (シグナル様ぺプチドコード配列を含まない;増幅サイ
ズは 6 6 9 b p)
フォワードプライマー MN2 : 5' - ATTACATTTTACATTCTACAACTACATCTAGAGGCCA AATCGGCCATGgattcgg cacccaatccggt _3' (配列番号 9 ) [大文字:アダプタ 一配列]
リバースプライマ一 MC 1 : 5に CGAGCTCGCGGCCGCCCCGGGGATCCTCTAGAGGCCCTT
ATGGCCttagaagtatacggttttgttgaac -3' (配列番号 8) [大文字:アダプター 配列]
用いた P CR反応液組成は、 総量 3 0 μ 1当たり、 プライマーセット Ml又は M 2の各プライマー 1 5 pM、 cDNA 3 μ 1、 1 0 X P CRバッファー 3 μ 1 、 d NT P s 3 し ポリメラーゼ酵素 0. 3 μ 1、 滅菌水 2 0. 4 μ 1 (1 O XP CRバッファー、 dNTP s、 ポリメラーゼ酵素は T0Y0B0 rTaq DNA Poly raerase Code; TAP- 211を使用) であった。 P CR反応は、 95°Cで 5分の熱変性 の後、 94 で0. 5分の変性、 6 1でで0. 5分のアニーリング、 72¾で1 分の伸長を 1サイクルとして 40サイクル行った。
得られた PCR産物を電気泳動し、 増幅産物の大きさを確認した。 図 9に示す通 り、 プライマーセット Ml、 M2とも、 上記增幅サイズに適合するバンドを確認 できた。 次いで、 これらのバンドの PCR増幅断片を切り出し、 常法により精製 を行った。 精製後のこれら.の P CR断片は、 それぞれ、 発現ベクター p B i g s 2 1 1 3 S F (p B I G 2 1 1 3Nに2っのS f i Iサイ トを付加したもの。 Ta ji et al. , Plant J29, 417- 426参照) 中へ挿入した (図 1 0) 。 得られた組換 え発現ベクターを、 次にエレクト口ポレーシヨンにより、 大腸菌コンビテントセ ル (DH10B株) に遺伝子導入した。 5 Omg/Lカナマイシン存在下で陽性コロ ニーを単離し、 それを鐃型にプライマーセット Ml又は M2を用いたコロニー P CRを行い、 P CR産物を電気泳動した。 プライマーセット M 1及ぴ M2のそれ ぞれについて、 それらの増幅サイズと一致するサイズのインサートが挿入された 発現ベクターを有するコロニーが確認された。
目的のサイズのィンサートが揷入されていたコロニーを搔き取り、 培地でサブ カルチャーした後、 常法により大腸菌プラスミ ドを抽出した。 これらのプラスミ ドのインサートを配列決定したところ、 プライマーセット Ml、 M2ともに、 ミ
ラクリン遺伝子の塩基配列から予測される増幅断片の配列と一致することが確認 された。
これらの大腸菌プラスミ ドを、 エレクト口ポレーシヨンにより、 ァグロパクテ リウム GV 3 101株中に形質転換した。 この形質転換体は、 50mgZL 力 ナマイシンを含む L B培地で選択的に培養した。
続いて、 得られたァグロバタテリゥム形質転換体を用いて、 フローラルデイツ ビング法により、 ァグロパクテリゥムを介してシロイヌナズナヘ遣伝子を導入し た。 具体的には、 文献 (Cloughら, 1995, Plant J 16, 735-743) に記載の方法 に従い、 形質転換したァグロバタテリゥムを 50 m g Lカナマイシンを含んだ L B培地中で一晚振とう培養した後、 菌を遠心して回収し、 5%ショ糠を含む M S液体培地に懸濁後、 その懸濁液に、 播種して約 1. 5ヶ月経過したシロイヌナ ズナ野生型 C o 1ー0 (2倍体) の地上部全体を浸して感染させた。 その後、 ジ ッパー付の袋にシロイヌナズナを入れ、 密封して 1 日、 ジッパーを開封して 1日 置き、 その後袋から出し、 種子が収穫できるまで生育させた。
こうして処理したシロイヌナズナから種子 (T 1) を収穫し、 これを B AM培 地に播種し、 20 m g Lハイグロマイシン及ぴ 10 Omg/Lセフオタキシム ナトリウムによる薬剤選抜を行った。 その結果、 プライマーセット Mlによる増 幅産物を用いた形質転換体 (以下、 Ml群と称する) が 9個体 (Ml— 1、 Ml 一 2、 Ml— 3、 Ml— 4、 Ml— 5、 Ml— 6、 Ml— 7、 Ml— 8、 Ml— 9 ) 、 プライマーセット M2による増幅産物を用いた形質転換体 (M2群と称す る) が 6個体 (M2— 1、 M2— 2、 M2— 3、 M2— 4、 M2— 5、 M2— 6 ) 得られた。 これらの形質転換体 (T 1個体) は、 その後、 土へ移植し、 生育さ せた。
葉が大きくなるまで生長させた後、 各個体から 2〜3枚の葉 (l O Omg程度 ) をサンプリングした。 Ml群由来の葉サンプル及び M2群由来の葉サンプルは
、 群毎にひとまとめにし、 それを用いて、 6人の被験者により味覚試験を行った
。 被験者はレモン汁を口に含んでその酸味を確認した。 その後被験者は、 口内を 洗浄した後、 葉サンプルを口の中で約 1分間よく嚙んで吐き出し、 再度レモン汁 を舐めた。 その結果、 6人の被験者は、 全員一致して同じ味覚の変化を確認した
。 Ml群の T 1個体については、 全員が、 葉サンプルを嚙んだ後に舐めたレモン 汁に甘味を感じた。 対照的に、 Μ 2群の Τ 1個体については、 全員が、 葉サンプ ルを嚙んだ後に舐めたレモン汁の味に変^を感じなかった。 従って、 Ml群の植 物体には多量のミラクリンタンパク質が活性状態で含まれていることが確認され た。 一方、 M2群の植物体には、 味覚の変化での確認ができなかったため、 ミラ クリンタンパク質は含量が少ないか、 活性が弱いかのどちらかと考えられた。 次に、 上記で得られた Ml群の形質転換体について、 個体毎に種子を収穫し、 各個体 (ライン) 当たり 50粒ずつの種子を含む B' AM培地に播種し、 20mg /Lハイグロマイシン及び 10 OmgZLセフオタキシムナトリゥムによる薬剤 選抜を行った。 選抜された形質転換体 (T2個体) を、 各ライン当たり 4〜 9個 体ずつ土に移植し、 生育させた。
葉が大きくなるまで生長させた後、 これらの T 2個体から、 2〜3枚の葉 (1 O Omg程度) をサンプリングした。 サンプリングした葉は、 ライン毎に 1つに まとめて、 味覚の変化を確認した。 確認には酸味材料としてレモン汁を使用し、 上記と同様にして行った。
この結果、 ライン Ml— 4、 Ml— 9、 Ml— 2、 Ml— 5由来のサンプルに ついて、 被験者は、 葉サンプルを嚙んだ後に舐めたレモン汁に甘味を感じた。 特 にライン M— 4由来のサンプルについては強い甘味が感じられた。 従って、 Ml 群の植物体における活性のあるミラクリンタンパク質の発現能は、 T 1個体から 後代へ受け継がれたことが示された。
さらに、 上記で作製した Ml群の T 2個体 (下記の表 3に示すサンプリングし た個体) 、 及び M2群の T 1個体 (M2— 1〜M2— 6の 6個体) の葉サンプル から常法によりタンパク質を抽出し、 それを非還元条件下で SDS— PAGEに かけ、 それをメンブレンに転写した後、 実施例 5で作製したミラタリン認識特異 抗体を用いて、 ウェスタンプロット法によりサンプル中のミラクリンタンパク質 を検出した。
表 3 :生育させた M l群の T 2個体と葉のサンプリング状況
*各ラインの上段は、 T 2個体の名称を示す。 〇は、 ウェスタンブロット解析の ために葉をサンプリングした個体を示す。 この結果の代表例を、 図 1 1及ぴ図 1 2に示す。 図 1 1に示すように、 M l群 では、 調べた全ラインの T 2個体について、 精製したミラク リンタンパク質 (二 量体) と同じ移動度のバンドが観察された。
—方、 図 1 2では、 M 1群の M l— 4一 4及ぴ M l— 9一 4個体については、 精製したミラクリンタンパク質 (二量体) と同じ移動度のバンドが観察された。 しかし M 2群の個体については、 精製したミラクリンタンパク質 (二量体) と同 じ移動度のバンドはごく薄いものしか観察されなかった。
以上の味覚試験及ぴゥュスタンブロットの結果から、 シグナル様ペプチド配列
を含むミラクリンタンパク質をコードする D N Aを導入したトランスジエニック シロイヌナズナ (M l群) では、 ミラクリンタンパク質が発現され、 活性のある 二量体状態で存在していることが示された。 通常ミラクルフルーツ 1個の重量は 1 . 5 g程度であるのに対し、 シロイヌナズナの葉わずか約 1 0 O m g程度でミ ラクリンタンパク質が発現され活性が確認できた。 一方、 シグナル様ペプチド配 列を含まないミラクリンタンパク質部分をコードする D N Aを導入したトランス ジエニックシロイヌナズナ (M 2群) では、 ごく僅かのミラクリンタンパク質し か生産されないことが示された。 従ってミラタリン遺伝子の発現にはシグナル様 ぺプチド配列をコードする塩基配列が必要だと考えられた。 産業上の利用可能性
本発明において提供されたミラクリン遺伝子を導入した組換え植物を利用する ことにより、 ミラクリンを安定的に大量に供給できるようになる。 本発明では、 食用となる汎用農作物でミラクリンを発現させるので、 日常的な食材としてミラ クリンを発現する植物を利用できるようになる。 また、 ミラクルフルーツと同レ ベルで発現させることができるため、 発現させたミラクリンを抽出して食品添加 物として利用することも可能である。 ミラクリン遺伝子を導入した組換え植物や その植物材料を用いれば、 ミラタリンのダイエツトゃ医療目的での利用が容易に なる。 本明細書で引用した全ての刊行物、 特許及び特許出願は、 そのまま参考として 本明細書にとり入れるものとする。