JP4581098B2 - 植物でのペプチドの発現・集積方法 - Google Patents

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Description

本発明は、低分子ペプチドを植物、特に種子中で安定かつ大量に発現・集積させる方法、そのためのベクター、及び該ベクターで形質転換された植物に関する。
心疾患、高血圧、アレルギーなどの食源性疾患が増大している今日、質の高い、機能的に優れたタンパク質の供給が求められている。こうした課題に対し、健康の維持・増進に役立つ生理的機能を持ったペプチドの探索や、その高活性化設計が試みられている。さらにこうした生理的機能を有するタンパク質やペプチドを高度に蓄積した作物を開発する試みも行われている(特許文献1参照)。
しかしながら、一般に大腸菌、酵母、動物細胞を利用して生産されたペプチドや組換え植物を食品や医薬品として利用する場合、その安全性の確保と大量培養・精製などにかかるコスト高が問題となる。
組換え作物の安全性で指摘されるのは、これらの組換え作物が選択マーカーである抗生物質抵抗性遺伝子を残存させている点にある。例えば、イネの組換えで最も汎用されているハイグロマイシン抵抗性遺伝子については、その安全性に関して十分なデータの蓄積がなされていない。また、カナマイシン抵抗性遺伝子は十分な安全性評価が行われているが、その安全性は未だ問題視されている。
組換え植物を用いた目的タンパク質の大量発現については、これまで活性の高いプロモーターの選択や翻訳産物の安定化などの工夫がなされてきたが、宿主植物ゲノムに導入された目的遺伝子のコピー数もまた目的タンパク質の発現量を規定する重要な因子である。この際、研究目的で再分化固体等を用いて一過性に発現させる場合には、多コピーの目的遺伝子が植物ゲノム上に散在していても問題はない。しかしながら、商業用組換え植物の場合には、多コピーの目的遺伝子が植物ゲノム上に散在していると、世代を超えて遺伝的に安定な高発現(多コピー)系統を選抜・維持することが困難となる。つまり、宿主ゲノムの狭い領域(単一遺伝子座)に多コピーの遺伝子をまとめて導入できれば、遺伝的に安定で、かつ多コピーの目的遺伝子を有する組換え植物系統を容易に得られることになる。しかしながら、従来の技術では宿主ゲノム上における遺伝子の導入位置はランダムであり、人為的に制御することは困難であるため、高発現の多コピー系統を取得することは容易ではなかった。
一方、一般に植物を宿主として用いる場合、ペプチドのような低分子化合物は種子中では容易に分解されてしまうため、安定して大量に発現・集積させることが困難である。実際、低分子ペプチド(AMY,29アミノ酸残基)をユビキチンとの融合タンパクとしてタバコ植物体で発現させた報告(非特許文献1参照)があるが、種子でのペプチドの発現・集積については触れられていない。
前述した選択マーカーの問題については、所望の形質を有し、かつ抗生物質抵抗性遺伝子等の選択マーカーを除去した植物を効率よく作出する方法が発明者によって開発され報告されている(特許文献2参照)。しかしながら、植物、特に植物種子中における低分子ペプチドの安定した発現と集積性の問題については未だ十分な解決法は示されていない。
特開2004−321079号 特開2003−82号 Hondred D.,et al.,Plant Physiol.1999 Feb;119(2):713−24.
本発明の課題は、低分子ペプチドを植物で効率よく大量に発現し、集積させる方法を開発し、その生理的機能性が強化された新規な組換え作物を提供することにある。
上記課題を解決するため、発明者らは、形質転換する植物で最も頻繁にみられるコドンを用いて目的とするペプチドを翻訳した人工合成遺伝子を設計し、単独、又は複数連結させ、これらを種子貯蔵タンパク質遺伝子と融合させた。この融合遺伝子を種子特異的プロモーターの下流に連結してイネに導入し、種子(胚乳)に融合タンパク質として大量に発現させたところ、単独で導入した場合よりも複数連結して導入した場合のほうが、当該ペプチドを高発現・集積している系統がより多くみられることを確認した。
すなわち本発明は、プロモーター支配下に、グルテリンファミリーをコードする遺伝子と該遺伝子の下流に連結された2コピー以上の3〜40アミノ酸残基からなる目的ペプチドをコードする遺伝子(以下、「目的遺伝子」という)とを含む融合タンパク質発現ベクターを提供する。
前記グルテリンファミリーとしては、例えばグルテリンA、グルテリンBを挙げることができ、特に好適な一例として、本発明ではグルテリンBを用いた実施例を示す。
前記プロモーターは植物で機能しうるものであれば特に限定されないが、プロモーター活性の強いグルテリンプロモーター(例えば、GluB−1プロモーターやGluPF2プロモーター)等が好ましい。
前記目的ペプチドは、3〜40アミノ酸残基、好ましくは3〜30アミノ酸残基、より好ましくは3〜20アミノ酸残基程度の低分子ペプチドである。本発明のベクターは、このような低分子ペプチドをコードする遺伝子を2コピー以上、好ましくは2〜20コピー程度タンデムに連結して含み、グルテリンファミリーと目的ペプチドとの融合タンパク質を発現させる。
目的遺伝子を2コピー以上連結して含む本発明のベクターは、当該遺伝子を単独で含むベクターよりも、高い確立で高発現系統をもたらす。これは、ベクターが単一遺伝子座に多重感染して、2コピー以上連結された目的遺伝子を単一遺伝子座に多重導入するためである。
本発明のベクター中、発現される融合タンパク質中の各ペプチド連結部(グルテリンファミリーと目的ペプチドとの連結部、目的ペプチドと目的ペプチドとの連結部)がチロシン又はフェニルアラニンとなるように設計されることが好ましい。これにより、消化酵素の作用を受けた融合タンパク質より各構成ペプチドがすみやかに遊離されるようになるからである。
本発明のベクターに含まれる目的ペプチドの好適な一例としては、II型コラーゲンエピトープペプチドを挙げることができる。
本発明のベクターの好ましい一形態として、2つのT−DNA領域を有するバイナリー型のハイブリッドベクターを挙げることができる。前記ハイブリッドベクターは、第1のT−DNA領域にグルテリンファミリーをコードする遺伝子に連結された2コピー以上の3〜40アミノ酸残基からなる目的ペプチドをコードする遺伝子を含み、第2のT−DNA領域に選択マーカーを含む。
本発明はまた、本発明のベクターで形質転換された組換え植物、ならびに当該植物の細胞、組織、器官、種子、及びその培養物も提供する。前記植物の好ましい一例としては、イネを挙げることができる。特に、本発明のベクターは形質転換が困難であり、かつ商品的価値の有用品種「コシヒカリ」にも好適に利用できる。
本発明はまた、本発明のベクターで植物を形質転換し、当該植物の種子中で前記ベクターを発現させることを特徴とする、植物、特に植物の種子における目的ペプチドの発現集積方法を提供する。前記方法は、DNA分析により形質転換した植物の自殖後代より、選択マーカーを含まない植物個体を選抜する工程をさらに含んでいてもよい。
さらに本発明は、本発明のベクターで植物を形質転換することにより、前記2コピー以上の目的遺伝子を単一遺伝子座に多重導入されて含む多コピー系統の育種方法を提供する。
本発明によれば、宿主ゲノムの狭い領域(単一遺伝子座)に多コピーの遺伝子を導入することが可能となり、遺伝的に安定で、かつ多コピーの目的遺伝子を有する高発現系統を容易に育種することができる。これにより、免疫寛容原性ペプチドなど、人への経口投与を目的とした低分子のペプチドを植物種子中で安全に、安定的に、安価で大量産生することができる。また、それを食品の一部として継続的に経口摂取することで、ペプチドの有する機能性(免疫寛容原性等)を最大限に発揮させることができる。
図1は、GluA cDNAとHuCII cDNAを含むイネ形質転換用ベクターの構築スキームを示す。
図2は、GluA cDNAとHuCII cDNAを含む酵母分泌発現用ベクターの構造を示す。
図3は、酵母での抗HuCII抗体のアフィニティー精製結果(A)と、この抗体を用いた酵母培養上清におけるHuCIIのウェスタンブロット分析の結果を示す電気泳動写真である。
図4は、ベクターpSB426Glu−C4の構造を示す。
図5は、T1種子におけるGluA−HuCII融合タンパク質の検出結果を示すウェスタン分析写真である(参考:Glutelin:54kDa(33kDa+21kDa)、[HuCII]X1:3kDa,X4:11kDa,X8:22kDa)。
図6は、半粒分析の結果(A:幼苗葉のDNAのPCR分析結果、B:ウェスタン分析結果)を示す。
図7は、選択マーカーを含まない系統の出現率を示す(上:[HuCII]X8、中:[HuCII]X4、下:[HuCII]X1)。
図8は、GluA−HuCII融合タンパク質のプロテインボディー(高密度画分)での集積を示す。
図9は、選択マーカーを含まないT1固定系統におけるタンパク分析結果を示す。
図10は、選択マーカーを含むが、目的遺伝子が多重に挿入され、極めて高発現の、T1、T2およびT3固定系統におけるサザンブロット解析結果を示す。多重に挿入された目的遺伝子が欠落することなく3世代にわたって安定に遺伝している。
図11は、HuCII含有TG米の摂取によるコラーゲンに対する免疫抑制効果を評価した結果である。AはTG米を含む飼料を摂取した群、Bは対照の野生型米を摂取した群を示す。グラフの横軸の数字は、それぞれ、1:4回X2投与翌日、2:4回X2投与後7日目、3:4回X3投与翌日を示し、縦軸は血清抗コラーゲン抗体価を示す。
本明細書は、本願の優先権の基礎である特願2005−62996号の明細書に記載された内容を包含する。
1.グルテリンファミリー
本発明にかかる「グルテリン」とは、種子の貯蔵タンパクの一種で、水、塩溶液、70%アルコールに溶けない難溶性のタンパク質の総称である。イネでは、グルテリンは可食性タンパクの大部分を占め、オリゼニンとも呼ばれる。グルテリンは、コムギ、オオムギにも多量に含まれ、これらはグルテニンとも呼ばれる。本発明にかかる「グルテリンファミリー」は、その起源やその俗称に限定されることなく、これらグルテリン類のすべてを含むものとする。
イネのグルテリンは、分子量37000と22000〜23000の2種のサブユニット(塩基性サブユニット:グルテリンA及び酸性サブユニット:グルテリンB)からなるタンパクで、その貯蔵タンパクの70〜80%を占める。グルテリン遺伝子は胚乳特異的に発現し、その組織特異性はかなり厳密で、葉や、根など他の組織には発現しない。イネのグルテリン遺伝子群はハプロイドゲノムあたり約10個の遺伝子より構成され、塩基性サブユニットをコードするGluAと酸性サブユニットをコードするGluBのサブファミリーに分類される。
グルテリンファミリーをコードする遺伝子の塩基配列は既に公知であり、公共データベースであるGenBank等を通じて容易に入手することができる。例えば、イネのグルテリンであるGluA及びGluBのcDNAは、それぞれアクセッション番号:X05662,X05661,E01546(いずれもGluA)、及びX15833,AK107343,X14568(いずれもGluB)等としてGenBankに登録されている。なお、本発明で用いたGluAのORF全領域をカバーするcDNA配列を配列番号1に示す。
2.目的ペプチド
本発明にかかる「目的ペプチド」とは、宿主植物中で発現・集積させる対象となるペプチドであって、その種類は限定されない。本発明の方法を用いれば、通常植物、特に植物の種子中では安定して発現・集積させることが困難な低分子ペプチドを効率よく大量に発現・集積させることができる。本発明で用いられる低分子ペプチドとは、アミノ酸数で3〜40、好ましくは3〜30、より好ましくは3〜20のペプチドである。
目的ペプチドをコードする遺伝子(以下、「目的遺伝子」という)は、グルテリンファミリーをコードする遺伝子の下流に連結され、グルテリンとの融合タンパク質として発現される。本発明のベクターにおいて、前記目的ペプチドをコードする遺伝子は、2コピー以上、特に2〜20コピー反復して連結されることが望ましい。なお、機能しうる態様とは、宿主において導入遺伝子が所望の機能を発現することを意味し、本発明の場合は、植物中で目的ペプチドがグルテリンとの融合タンパク質として発現されることを意味する。
本発明で用いられる目的ペプチドの好適な例としては、アレルギーや自己免疫疾患の抗原タンパク質のT細胞エピトープペプチド(例えば、関節炎でのII型コラーゲンと39kDa軟骨糖タンパク質、花粉症での花粉アレルゲンCry j1、喘息でのダニアレルゲンDelI、糖尿病での膵β細胞抗原)、抗菌性ペプチド(例えばデフェンシン、ラクトフェリシン)、血圧降下ペプチド(ACE阻害ペプチド)、オイオイドペプチド、を挙げることができる。
3.ベクターの構築
本発明のベクターは、プロモーター支配下に、グルテリンファミリーをコードする遺伝子と該遺伝子に連結された2コピー以上の目的ペプチドをコードする遺伝子とを含む。
本発明で用いられる「ベクター」は、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、プラスミドDNAやファージDNAなどを用いることができる。プラスミドDNAとしては、例えばpBR322、pBR325、pUC118、pUC119などの大腸菌宿主用プラスミド、pUB110、pTP5などの枯草菌用プラスミド、YEp13、YEp24、YCp50などの酵母宿主用プラスミド、pBI221、pBI121などの植物細胞宿主用プラスミドなどが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージなどが挙げられる。また、ベクターはバイナリー型のものであってもよく、これは後述するように形質転換植物において選択マーカーを含まない個体を選抜するために好適である。
本発明で用いられる「プロモーター」は、宿主植物の細胞内で機能し、目的とする導入形質が有効に発揮されるものであれば特に限定されず、カリフラワーモザイクウイルスの35S RNAプロモーター、rd29A遺伝子プロモーター、rbcSプロモーター、グルテリンAプロモーター、グルテリンBプロモーターなどが挙げられる。なかでも、プロモーター活性が強いグルテリンプロモーター(例えば、GluB−1プロモーター(GenBank Accession No.AY427569)、GluB−2プロモーター(GenBank Accession No.AY427570)、GluB−4プロモーター(GenBank Accession No.AY427571)やGluPF2プロモーター(配列番号7))が好ましい。
ベクターには、目的ペプチドが適切に発現されるため、前記プロモーターのほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを連結することができる。
「ターミネーター配列」としては、例えばカリフラワーモザイクウイルス由来やノパリン合成酵素遺伝子由来のターミネーターなどが挙げられるが、植物体内で機能するものであればこれらに限定されるものではない。
「選択マーカー」としては、例えば薬剤抵抗性遺伝子を用いることができ、植物がイネである場合、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子やビアラフォス抵抗性遺伝子等を用いることができる。選択マーカーは、組換え植物の安全性の面で常に問題とされるものであるが、形質転換細胞の効率的な選抜にのみ必要な遺伝子であり、その後は植物細胞内に残存させる意味のないものである。そこで、発明者らが既に報告した方法(特開2003−82号参照)にしたがい、コ・トランスフォーメーション用ベクターを用いて形質転換された植物の自殖後代において選択マーカーを分離・除去することが望ましい。
既報のとおり、コ・トランスフォーメーション用ベクターとしては、2つのT−DNA領域を有するバイナリー型のハイブリッドベクターを用いることができる。該ベクターは、T−DNA領域(第1のT−DNA領域)に目的遺伝子を含む中間ベクターと、T−DNA領域(第2のT−DNA領域)に選択マーカーを含むアクセプターベクターから構築される。本発明の場合、第1のT−DNA領域には、グルテリンファミリーをコードする遺伝子に連結された2コピー以上の3〜40アミノ酸残基からなる目的ペプチドをコードする遺伝子が含まれることになる。
なお、コ・トランスフォーメーション用ベクターの構築にあたっては、アグロバクテリウム・ツメファシエンス菌系のうち、感染能力の強い病原性の菌系のVir領域の一部を、T−DNAを有するプラスミド中に配置することにより目的遺伝子の導入効率を高めたスーパーバイナリー型のベクター(Hiei,Y.ら、1994.Plant J.,6:271−282)を用いることが好適である。このようなスーパーバイナリー型ベクターとしては、例えばpSBシリーズのベクター((株)JT:WO95/16031、Komari,T.ら、1996.Plant J.,10:165−174)を挙げることができる。
4.植物の形質転換
本発明で用いられる「植物」は特に限定されないが、種子の食物としての汎用性が高いという点で、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ナタネ、トマト、バナナ等が好適である。特に、本発明のベクターは形質転換が難しく、商品的価値の高い有用品種「コシヒカリ」にも用いることができる。
ベクターは、エレクトロポレーション等による直接的導入法、又はアグロバクテリウム属細菌を介する間接的導入法等、常法にしたがって宿主植物に導入されるが、導入効率の点から、後者のアグロバクテリウム属細菌を介する導入法が好適である。
アグロバクテリウム属細菌を感染させる植物の形態は特に限定されず、カルス、葉、胚軸、根、種子、懸濁培養細胞、プロトプラスト等、当該植物の再分化系に応じて適宜選択することができる。植物がイネである場合、通常はイネの胚盤由来カルスを用いるが、安定した高い遺伝子導入効率を求めるには、完熟種子から誘導後概ね3週間以内のカルスを用いることが好ましい。
具体的には、イネ品種「コシヒカリ」のカルスを、以下に示す培養条件下で培養する。すなわち、カルス誘導培地として、N6基本培地の窒素濃度を抑制し、適当なアミノ酸を添加した培地(例えば、KSP培地[津川ら、1993.育種学雑誌43巻(別2)、121])を使用する。また、植物ホルモンとして2mg/Lの2,4−ジクロロ酢酸(2,4−D)、糖として30g/Lマルトース、凝固剤として0.8%アガロースを使用する。表面殺菌したイネ品種「コシヒカリ」の玄米をこのカルス誘導培地に植え込む。この際、胚乳部分は培地中に完全に埋め込み、胚部分だけを露出させる。容器はシャーレを使い、ふたを粘着力の弱いビニルテープ等で覆って、緩やかな乾燥を促す。培養環境は28〜30℃の明室とする。このように培養することで、イネ品種「コシヒカリ」の完熟種子から、遺伝子導入に適した細かい粒状のカルスを3週間以内に誘導することができる。
前記形態の植物へのアグロバクテリウム属細菌の感染、共存培養、植物の除菌、遺伝子導入された植物の選抜・増殖、選抜された植物からの植物体再分化は、当業者に公知の手法にしたがって実施することができる。しかしながら、植物がイネ品種「コシヒカリ」である場合には、本発明者らが以前に開発した方法(Hashizumeら、1999.Plant Biotechnology,16:397−401)を用いることが好適である。
5.選択マーカーを含まない組換え植物系統の選抜
以上の結果、再分化当代(T0)には、目的遺伝子(グルテリンファミリーをコードする遺伝子に連結された2コピー以上の3〜40アミノ酸残基からなる目的ペプチドをコードする遺伝子)と選択マーカーの両方を有する遺伝子導入植物が作出される。次に、得られた再分化当代(T0)の植物を、当業者に公知の手法にしたがって順化、栽培し、自殖後代(T1及びT2)を得る。そして、これら再分化当代(T0)、自殖第1世代(T1)、自殖第2世代(T2)のDNAをそれぞれ分析し、最終的に選択マーカーを含まず、目的遺伝子を優性ホモの形で持つ組換え植物系統を選抜する。
6.グルテリンと目的ペプチドとの融合タンパク質の発現・集積
前項で選抜された組換え植物系統は、目的ペプチドに特異的な抗体を用いて、グルテリンと目的ペプチドとの融合タンパク質の発現・集積を検定することができる。
抗体を利用した蛋白質の検出方法は特に限定されないが、ウェスタンブロット法、ドットブロット法、スロットブロット法、ELISA法、及びRIA法から選ばれるいずれかの方法であることが好ましい。
抗体は、公知の方法にしたがって調製してもよいし、市販のものを用いてもよい。抗体は、常法により、抗原となる目的ペプチド、あるいはそのアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを用いて動物を免疫し、該動物生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein,Nature 256,495−497,1975、Kennet,R.ed.,Monoclonal Antibody p.365−367,1980,Prenum Press,N.Y.)にしたがって、目的ペプチドに対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによりハイブリドーマを樹立し、これよりモノクローナル抗体を得ることもできる。
抗体作製用の抗原としては、目的ペプチドもしくはその少なくとも6個の連続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、あるいはこれらに任意のアミノ酸配列や担体(例えば、N末端付加するキーホールリンペットヘモシアニン)が付加された誘導体を挙げることができる。
前記抗原ポリペプチドは、目的ペプチドを遺伝子操作により宿主細胞に産生させることによって得ることができる。具体的には、目的ペプチドを発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させればよい。得られた抗体は、それを直接標識するか、又は該抗体を一次抗体とし、該一次抗体を特異的に認識する(抗体を作製した動物由来の抗体を認識する)標識二次抗体と協同で検出に用いられる。
前記標識の種類として好ましいものは、酵素(アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼ)又はビオチン(ただし二次抗体のビオチンにさらに酵素標識ストレプトアビジンを結合させる操作が加わる)であるが、これらに限定されない。標識二次抗体(又は標識ストレプトアビジン)としては、予め標識された抗体(又はストレプトアビジン)が、各種市販されている。なお、RIAの場合は125I等の放射性同位元素で標識された抗体を用い、測定は液体シンチレーションカウンター等を用いて行う。これら標識された酵素の活性を検出することにより、抗原の発現量が測定される。アルカリホスファターゼ又は西洋ワサビペルオキシダーゼで標識する場合、これら酵素の触媒により発色する基質や発光する基質が市販されている。
発色する基質を用いた場合、ウェスタンブロット法やドット/スロットブロット法を利用すれば、目視で検出できる。ELISA法では、市販のマイクロプレートリーダーを用いて各ウェルの吸光度(測定波長は基質により異なる)を測定し、定量することが好ましい。また上述の抗体作製に使用した抗原の希釈系列を調製し、これを標準抗原試料として他の試料と同時に検出操作を行い、標準抗原濃度と測定値をプロットした標準曲線を作成することにより、他の試料中の抗原濃度を定量することも可能である。
一方、発光する基質を使用した場合は、ウェスタンブロット法やドット/スロットブロット法においては、X線フィルム又はイメージングプレートを用いたオートラジオグラフィーや、インスタントカメラを用いた写真撮影により検出することができる。また、デンシトメトリーやモレキュラー・イメージャーFxシステム(バイオラッド社製)等を利用した定量も可能である。さらに、ELISA法で発光基質を用いる場合は、発光マイクロプレートリーダーを用いて酵素活性を測定する。
以上の方法により、発明者らは、本発明の組換え植物の種子中には、グルテリンと目的ペプチドとの融合タンパク質が高度に発現、集積していることを確認した。本発明は、上記組換え植物のみならず、当該植物の細胞、組織、もしくは器官、又はその培養物も提供する。
前記細胞、組織、器官は、植物のあらゆる分化過程における全ての細胞、組織、器官を含む。すなわち、細胞は単一であっても集合体(細胞塊)であってもよく、プロトプラスト、スフェロプラストも含まれる。組織も単一であっても集合体であってもよく、表皮組織、柔組織、師管・師部繊維等の師部組織、道管・仮道管・木部繊維等の木部組織など、あらゆる組織が含まれる。また器官には、茎、塊茎、葉、根、塊根、穂木、蕾、花、花弁、雌ずい、雄ずい、葯、花粉、子房、果実、さや、さく果、種子、繊維、胚珠などあらゆる器官が含まれる。なかでも、目的ペプチドとグルテリンとの融合タンパク質が集積する種子は、後述するように機能性食品として高い利用価値を有しうる。
また、前記細胞、組織、器官の培養物、例えば、胚培養物、胚珠培養物、子房培養物、葯培養物、茎頂培養物、花粉培養物等は、常法にしたがい、当該培養物から本発明の植物個体を再生することができる。
7.単一遺伝子座への目的遺伝子の多重導入
目的遺伝子を2コピー以上連結して含む本発明のベクターは、当該遺伝子を単独で含むベクターよりも、高い確立で高発現系統をもたらす。これは、単にベクターに含まれる目的遺伝子のコピー数が多いからではなく、ベクターが単一遺伝子座に多重感染することで、2コピー以上連結された目的遺伝子を単一遺伝子座にさらに多重導入するためである。詳しいメカニズムは不明であるが、ベクター中に含まれる目的遺伝子のコピー数(反復数)が増加するにつれ、多重感染の確立は高くなり、高発現系統の出現率は増加することから、ベクター中の反復配列が何らかの寄与をしていることが示唆される。
宿主ゲノム上における遺伝子の導入位置は一般にランダムで、これを人為的に制御することは困難であるため、従来の技術では高発現の多コピー系統を取得することは容易ではなかった。本発明のベクターを用いれば、宿主ゲノムの狭い領域(単一遺伝子座)に多コピーの遺伝子をまとめて導入することが可能となり、遺伝的に安定な高発現の多コピー系統を容易に作出することができる。
8.本発明の組換え植物の利用
本発明によれば、通常植物、特に植物の種子中では安定して発現・集積させることが困難な低分子ペプチドを安定かつ高度に発現・集積させることができる。よって、目的ペプチドとして、健康の維持・増進に役立つ生理的機能を持ったペプチドを選択し、これらが高度に発現・集積した植物の種子を開発すれば、それは心疾患、高血圧、アレルギーなどの食源性疾患の予防や治療を補助するための医薬品や機能性食品として利用できる。そのようなペプチドとしては、例えば、アレルゲンや自己免疫疾患原因抗原のT細胞エピトープペプチド(例えば、II型コラーゲンエピトープ)、抗菌性ペプチド(デフェンシン、ラクトフェリシンなど)、ACE阻害ペプチド(一部は既に特保にも登録)、オピオイドペプチド(沈痛ペプチド)を挙げることができる。
このような医薬品あるいは機能性食品の一例として、本発明ではヒトII型コラーゲン免疫寛容原性(エピトープ)ペプチド発現イネの作製例を記載する。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
実施例1:II型コラーゲンペプチド発現用融合遺伝子の構築
1.II型コラーゲンペプチド発現用ベクターの構築
ヒトII型コラーゲンのT型細胞認識エピトープ領域ペプチド(HuCII)のアミノ酸配列(配列番号3)を基に、イネで最適コドンを用いた塩基配列(配列番号4)に変換した。この配列を基に、HuCIIの上流側にSalIサイトが、下流側にチロシン(Tyr)配列、及びXhoIサイトが付加されるように、下記のプライマーを設計し、Klenow fragmentを用いてアニーリングさせ、HuCII単体を人工合成した。このHuCII単体の配列が正しいことはシーケンシングにより確認した。SalIサイトとXhoIサイトの結合部分は共にTCGAで、連結可能である。HuCII単体をライゲーションし、SalIサイト同士、XhoIサイト同士が結合したクローンはSalI−XhoI処理で分断され単体となるが、これらは逆方向に連結したクローンと判断できるので淘汰した。一方、両制限酵素で分断されないクローンは正方向に連結したクローンとして選抜した。この操作を繰り返し、HuCIIが4、8、16個連結したcDNAを合成した。これらの連結方向、配列が正しいことはシーケンシングによって確認した。なお、クローニングはいずれもpBluescriptを利用して行った。
Forward primer:5’−ATgTCgACggCCCAAAgggCCAgACCggCAAgCCAggCATCgCCggCTTCA−3’(配列番号5)
Reverse primer:5’−ATCTCgAgATACTTTgggCCCTgCTCgCCCTTgAAgCCggCgATgCCTggC−3’(配列番号6)
Pyrobest DNA polymerase(TaKaRa BIO)を用いたInversePCRによって、グルテリンA cDNA(GluA(配列番号1:JT(株)より供与))の下流にSalIサイト−XhoIサイト−Stopコドン−SacIサイトを挿入した。改変領域が正しく挿入されていること、及びグルテリンA cDNAの配列に変化がないことはシーケンシングにより確認した。このグルテリンA cDNAの下流のSalIサイト−XhoIサイトに1、4、8個のHuCIIを連結した融合遺伝子を作成した(図1の前段)。SalI−XhoI処理でグルテリンA cDNAとHuCIIが分離されることで正方向の挿入を確認した。また、8及び16個連結したHuCII cDNAを単独、又はグルテリンと融合した8個連結したHuCII cDNAを酵母での分泌用ベクターYEpFLAG(Sigma)に挿入した(図2)。
2.酵母によるII型コラーゲンペプチドの調製、及び特異抗体の作製
作成したベクターで酵母を形質転換し、細胞外に分泌されたHuCIIを抗FLAG抗体により免疫化学的に検出・確認した。高発現する株を選択して大量培養し、培養液を濃縮して、抗FLAG抗体アフィニティークロマトグラフィーにより精製した(図3)。精製した組み換えHuCIIを抗原としてマウスを免疫して特異抗体を作成した。
形質転換酵母の培養上清800mlから抗FLAG抗体アフィニティークロマトグラフィーにより約0.5mgの[HuCII]X8を精製した。精製した組み換え[HuCII]X8を抗原としてマウスを免疫し、特異抗体を得た。
次に、この抗体を用いてウェスタン分析を行った。すなわち、Laemmli法にしたがい、12.5%のSDSポリアクリルアミドゲルにサンプル(20μg相当量)をのせ、40mAの定電流で45分間電気泳動した。次にセミドライブロッティングによって、タンパク質を電気泳動転写膜(クリアブロットメンブレンP、ATTO)に転写した。ECLウェスタンブロット検出システム(アマシャムバイオサイエンス)により、[HuCII]の検出を行った。その結果、培養上清の[HuCII]X8及び酵母菌体内の[HuCII]X8、[HuCII]X16が高感度に検出された。
3.コ・トランスフォーメーション用ベクターの構築
スーパーバイナリーベクターpSB424(WO95/16031、Komari,T.ら、1996.Plant J.,10:165−174:JT(株)より供与)を用いて、特開2003−82に記載の方法にしたがい、[HuCII]X1、[HuCII]X4、又は[HuCII]X8を含む3種類のコ・トランスフォーメーション用ベクターを作製した。pSB424は、中間ベクターpSB24とアクセプターベクターpSB4(いずれもJT(株)から契約分譲により入手)の相同組換えによるハイブリッドベクターである。
中間ベクターpSB24をHindIII−XbaIで消化し、この間にあるCaMV35Sプロモーターを、同制限酵素で消化したグルテリンプロモーターGluPF2(配列番号7)に置換した(このベクターをpSB26とする)。pSB26をBamHI−SacIで消化し、この間にあるGUSレポーター遺伝子を同制限酵素で消化したグルテリンA cDNA−[HuCII]×1,4,8融合遺伝子に置換した(pSB26−GluA−Cn,n=1,4,8)(図1)。
次に、アクセプターベクターpSB4を含むアグロバクテリウム属細菌LBA4404、中間ベクターpSB26Glu−CNを含む大腸菌LE392、及びヘルパープラスミドpRK2013を含む大腸菌HB101の3種の菌をNutrient Agar(Difco)上で混合し、一晩28℃で共存培養した。培養後、混合した菌を50mg/Lのスペクチノマイシンと50mg/Lのハイグロマイシンを含むAB培地(Chilton,M.−D.ら、1974.Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,71:3672−3676)上に薄く条播する操作を数回繰り返し、両抗生物質に抵抗性のクローンを選抜した。このクローンは、pSB4由来のハイグロマイシン抵抗性とpSB26Glu−Cnに由来するスペクチノマイシン抵抗性を合わせ持ったハイブリッドベクターpSB426Glu−Cnを含むアグロバクテリウム属細菌で、LBA4404/pSB426Glu−Cn(n=1,4,8)と命名した。ベクターpSB426Glu−C4の構造を図4に示す。
実施例2:形質転換イネの取得
1.pSB426Glu−Cnによるイネの形質転換
イネ品種「コシヒカリ」(Oryza sativa L.var Koshihikari)の完熟種子を表面殺菌後、KA−1培地(KSP培地を基本とし、2mg/Lの2,4−D、30g/Lのマルトース、0.8%のアガロース)に植え込み、シャーレを野菜結束テープ(日東電工)で封をして28℃明室で培養した。3週間後、分裂活性の高い、細かい粒状のカルスが多数誘導された。
このカルスにLBA4404/pSB426Glu−Cn(n=1,4,8)を感染させ、Hashizumeら(1999)の方法にしたがって、薬剤選抜、再分化させ、各々100株のイネ形質転換体(T0)を得た。具体的な操作を以下に示す。
まず、50mg/Lのハイグロマイシンを含むAB培地(Chilton,M.−D.ら、1974.Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,71:3672−3676)上で増殖させアグロバクテリウムの菌体をミクロスパーテルで1さじとり、10mg/Lのアセトシリンゴンを含むKA−1液体培地(KSP培地を基本とし、2,4−Dを2mg/Lに、シュークロースをマルトース30g/Lに改変、pH5.8)20mLに、菌の塊がほぐれ、均一になるまで十分に懸濁した。この懸濁液を9cmのガラスシャーレに移した。次に、誘導したカルスをかごの形にしたステンレスメッシュ(網の大きさ:20メッシュ)に入れ、このメッシュごとカルス全体が浸るように1分30秒間菌懸濁液に漬けた。菌懸濁液を除去し、カルスを滅菌した濾紙の上に移し、余分な水分を取り除いた。KA−1co培地(KA−1培地に10g/Lのグルコース、10mg/Lのアセトシリンゴンを添加、1.5%バクトアガー、pH5.2)上に2枚の滅菌した濾紙を重ね置き、その上にカルスを互いに重ならないように置いた。28℃、暗室で3日間共存培養した後、滅菌水で液が透明になるまで余分な菌体をカルスから洗い落とし、250mg/Lのカルベニシリンを含むKA−1液体培地でリンスした。滅菌した濾紙で水切りし、カルスをKA−1se培地(KA−1培地に250mg/Lのカルベニシリン、50mg/Lのハイグロマイシンを添加、0.8%アガロース、pH5.8)に置床した。28−30℃、14時間日長の明室で3週間培養した後、すべてのカルスを新鮮なKA−1se培地に移植した。2〜3週間後、ハイグロマイシンによる選抜で生き残り、増殖してきたカルスをKA−2培地(KA−1培地に30g/Lのソルビトール、2g/Lのカザミノ酸、125mg/Lのカルベニシリン、50mg/Lのハイグロマイシンを添加、植物ホルモンを0.4mg/Lの2,4−D、0.5mg/Lのアブシシン酸(ABA)、0.1mg/Lのカイネチンに改変、0.8%アガロース、pH5.8)に1週間置いた後、KA−3培地(KA−2培地の植物ホルモンを0.5mg/Lの6−ベンジルアミノプリン(BAP)、0.2mg/Lのインドール酢酸(IAA)に、ハイグロマイシン濃度を25mg/Lに改変、0.8%アガロース、pH5.8)に移植し、3〜4週間で植物体に再分化させた。
T0個体はPCRにより導入遺伝子の存在を確認した後、葉からDNAを抽出し、以下のHuCII検出用プライマーを用いたPCR分析により導入遺伝子欠損株を淘汰し、さらに、開花後、稔実株(50粒以上のT1種子が取得できたもの)を選抜した。
Forward primer:5’−CTCAGAGGCTCAAGCATAATAGAGG−3’(配列番号8)
Reverse primer:5’−GAGCTCCTACTCGAGATACTTTGGG−3’(配列番号9)
その結果、自殖第1世代(T1)として、73個体のGluA−[HuCII]X1、33個体の[HuCII]X4、及び63個体の[HuCII]X8が得えられた。
2.GluA−[HuCII]融合タンパク質の検出
開花後、自殖第1世代(T1)の種子から塩可溶性及び不溶性タンパク質を抽出し、そこに含まれるHuCIIを先に作製した組換えHuCIIに対する抗体を用いたウェスタン法により解析した。
まず、サンプル米を200μl PBS溶液(pH7.5)を加えて、粉砕機(Quiagen社MM−300:振動数30rpm、1分間x2回)にかけ、4℃、100rpmで5分振とう後、遠心分離(15,000rpm、3分間)にかけて上清を廃棄した。得られた沈澱に400μL 2×sample bufferを加えて、100℃、3分間処理し、タンパクを抽出した。抽出したタンパク(各4μL)は、SDS−PAGE(アトー社製泳動槽AE−6500;15%ゲル;40mA、35分泳動)にかけて分離後、電気泳動転写膜(クリアブロットメンブレンP、ATTO)に転写し、HuCIIに対する特異抗体と酵素標識二次抗体で免疫染色した後、ECLウェスタンブロット検出システム(アマシャムバイオサイエンス)で解析した。
その結果、GluA−[HuCII]はいずれの株のT1種子においても胚乳の不溶性タンパク質画分にのみ検出された。GluA−[HuCII]X4及びX8では約60kDaの前駆体及び約35kDaの成熟型と推定されるバンドが検出され、一方、GluA−[HuCII]X1では20kDa以下の分解断片と推定されるバンドが検出された(図5)。
実施例3:形質転換植物における選択マーカーの除去
1.再分化個体の自殖第1世代(T1)の種子タンパク質分析
ヒトII型コラーゲンペプチド特異的抗体を用いたウェスタン分析法によりT1種子のタンパク質を一粒ごとに分析し、HuCII・グルテリン融合タンパク質を発現する粒が高頻度で見つかる再分化当代(T0)系統を選抜した。すなわち、1次スクリーニングにより、42個体のGluA−[HuCII]×1、14個体のGluA−[HuCII]×4、35個体のGluA−[HuCII]×8を選抜した。さらに、2次スクリーニングにより、15個体のGluA−[HuCII]×1、12個体のGluA−[HuCII]×4、21個体のGluA−[HuCII]×8を選抜した。
2.T1種子の半粒タンパク質分析と半粒種子由来自殖第2世代(T2)の遺伝子解析
T1種子全体を材料にしてウェスタン分析すると、その分析結果の得られた種子から植物(T1)を育てることができない。そこで、種子を半分(半粒)に分割し、それぞれ半粒を用いてウェスタン分析を行うとともに、幼苗の遺伝子解析を行い、両遺伝子が分離して1因子遺伝すると推定されるT0系統を絞り込んだ(図6)。この半粒分析方法を用いれば、次世代植物を残せるだけでなく、PCR分析、ウェスタン分析を併用して選抜の効率化が図れる。
具体的には、T1種子(1系統あたり50〜80粒)の胚を含む側半粒を発芽させてT1個体の幼苗からDNAを抽出し、HuCII及びHPT遺伝子の有無をPCRにより分析することで、HuCII遺伝子+/HPT遺伝子の種子を判別した。また、胚の無い側の半粒を用いてウェスタン分析を行い、HuCIIの発現を確認し、3種類([HuCII]X1、X4、X8)の遺伝子について、4系統のGluA−[HuCII]×1、3系統のGluA−[HuCII]×4、3系統のGluA−[HuCII]×8の有望T0系統を得た。表1にT1幼苗分析によるT0系統の遺伝性推定結果を纏めて示す。
表中、GluA−C1、GluA−C4、GluA−C8は、それぞれGluA−[HuCII]X1、GluA−[HuCII]X4、GluA−[HuCII]X8を示す。
有望T03系統のT1種子について、HuCII遺伝子陽性系統の半粒ウェスタン分析を行ったところ、HuCIIは全ての粒で発現しているが、発現量は粒ごとに差があり、ホモ・ヘテロT1の存在が推定された。
3.マーカー遺伝子分離型系統の出現率の比較解析
3種類([HuCII]X1、X4、X8)の遺伝子を導入した形質転換イネ(再分化当代、T0)についてHuCII遺伝子と薬剤耐性遺伝子の2つの遺伝子が連鎖型か分離型かをT1世代への遺伝様式を基に推定し、それらの出現率を比較した。2つの遺伝子が分離型で組み込まれていると推定される系統の割合は、[HuCII]X1(C1)で最も高く、ペプチドをコードする遺伝子の連結数が4、8と増すほど分離型の占める割合は低下した(図7)。すなわち、[HuCII]X1(C1)導入系統では、理論通りhuCIIと薬剤耐性遺伝子が異なる遺伝子座に導入された「分離型」が多く、[HuCII]X8(C8)では、逆に薬剤耐性遺伝子と連鎖して遺伝する「連鎖型」が多いという対照的な結果となった。
さらに、HuCIIX4およびHuCIIX8系統についてHuCIIペプチドの発現量を比較したところ、分離型よりも連鎖型の方が顕著に高い結果となり、連鎖型にはHuCIIX4あるいはHuCIIX8が多重導入されていると考えられた。これらの結果は、通常の遺伝子では分離型、すなわち一遺伝子座に単一遺伝子が導入される頻度が高く、繰り返し配列を持つ遺伝子(HuCIIX4、HuCIIX8)では、一遺伝子座に複数の遺伝子が一度に多重導入される頻度が高いことを示唆している。
[HuCII]X8系統に関して、分析したT2個体全てにおいてHuCII遺伝子が検出されるような、HuCII遺伝子ホモT1系統が複数得られた。また、T1種子の半粒タンパク質分析の結果とT2集団の遺伝子解析の結果との比較から、種子でのタンパク質の発現量から、HuCII遺伝子についてのT1種子のホモ・ヘテロが比較的高い精度で推定できることが明らかとなった(表2)。
以上の結果を基に、HuCII遺伝子をホモで含み、かつ薬剤抵抗性遺伝子(選択マーカー)を含まない系統を選抜することができた。
実施例4:グルテリン・HuCII融合タンパク質の種子中での集積
1.発現したHuCII融合タンパク質の胚乳プロテインボディーへの集積
発現したグルテリン・HuCII融合タンパク質が胚乳中でプロテインボディーに集積しているか否かを明らかにするために、登熟期種子の胚乳をショ糖密度勾配超円心分離で展開し、各画分についてグルテリン・HuCII融合タンパク質の有無をウェスタン分析により判定した。その結果、目的のグルテリン・HuCII融合タンパク質は、内因性のグルテリンと同じ高密度画分にのみ検出され、融合タンパク質もプロテインボディーに集積していることが確認された(図8)。
2.発現したHuCII融合タンパク質の種子中での含量の推定
GluA−[HuCII]X8のホモ個体に稔った種子から粒ごとにタンパク質を定量的に抽出し、SDS−PAGE及びウェスタンブロット法により半定量した。大腸菌で発現させた[HuCII]X8を精製し、BCAアッセイ法によりタンパク質濃度を決定した溶液を標準品に用いた。一粒から抽出したタンパク質と標準品とを同一のゲルで泳動し、同一のPVDF膜に転写後、[HuCII]X8特異抗体を用いてECL法により検出した。各バンドのシグナル強度をデンシトグラフ(ATTO)により数値化し、濃度既知の標準品を基準にして抽出液中の[HuCII]X8濃度を算出した。その結果、粒あたりの[HuCII]X8含量は0.5−1.0microgramのレベルと推定された。
この粒あたりの発現量から一回の食事(茶碗一杯のご飯=4000粒とする)で摂取可能なHuCII量を計算すると約2−4mgとなる。過去の臨床報告によれば、1日microgramレベルのII型コラーゲンの経口摂取により、リウマチ患者で免疫寛容の傾向が見られたという(Choy EH,et al.,Arthritis Rheum,2001 Sep;44(9):1993−7,Barnett ML.,Arthritis Rheum.1998 Feb;41(2):290−7)。つまり、上記実施例で作製されたイネは、通常の食事摂取で抗リウマチ効果(免疫寛容)を発揮できるだけのグルテリン・HuCII融合タンパク質をその胚乳中に集積させていることが確認された。
実施例5:マーカー遺伝子分離型高発現系統のサザンブロット解析
実施例3で得られた、マーカーを含まないT1固定系統のうち、特にペプチドの発現量が高い系統([HuCII]X1(C1)導入系統:No.322−31、及び[HuCII]X4(C4)導入系統:No.527−41、No.808−36、No.102−28)について、その種子中に発現するタンパクを、実施例2の手順に従いウェスタン法により解析した。なお、既に確立した高発現T1系統及び非発現T1系統を、それぞれポジティブコントロール(PC)及びネガティブコントロール(NG)として用いた。
結果を図9に示す。図中、C1 PrecursorはグルテリンAと[HuCII]X1との融合タンパクでプロセシング(限定分解)を受けていないもの(前駆体)、C4 PrecursorはグルテリンAと[HuCII]X4との融合タンパクでプロセシング(限定分解)を受けていないもの(前駆体)、C1 MaturedはグルテリンAと[HuCII]X1融合タンパクでプロセシング(限定分解)を受けたもの(成熟型)、C4 MaturedはグルテリンAと[HuCII]X4融合タンパクでプロセシング(限定分解)を受けたもの(成熟型)、Wild type Acid subunitは内因性グルテリンの酸性サブユニット(限定分解を受けた成熟型グルテリン)を示す。この結果、[HuCII]X4を導入した529−41および808−36系統は、いずれも薬剤耐性遺伝子は分離されており、[HuCII]X1を導入した322−31系統よりも顕著に多量のHuCIIペプチドを発現・集積していることが明らかとなった。この発現量の差は4倍以上であり、単に4連結のためによるものではなく、目的遺伝子の一遺伝子座への多重挿入によるものと考えられた。さらに、102−28系統では、マーカー連鎖型ではあるが、同じ[HuCII]X4を導入した系統であるにもかかわらず、他の2系統(529−41および808−36)よりもはるかに高い発現・蓄積量を示した。
さらに、上記T1固定系統のうち、HuCIIペプチドの発現量が異常に高いNo.102−28、及びこれの後代であるT2、T3系統についてサザンブロット解析を行った。サザンブロット解析は、ロッシュ社DIGアプリケーションマニュアルに従い、以下の手順で行った。まず、200〜300mgのイネ葉からNucleon Phytopure(アマシャム社)を用いてゲノムDNAを抽出した。抽出したDNA10μgをHindIIIで消化し、電気泳動(ハイベイド社製電気泳動装置Electro−4;0.6%アガロースゲル(8.5×12cm);25V、1晩(16〜24hr)泳動)にかけ、キャピラリートランスファー法によりナイロンメンブレン・ポジティブチャージ(ロッシュ社)に転写し、120℃、30分固定した。つぎに、ロッシュ社DIG Labeling & Detection Kitを用いて、CuHIIX4ペプチド検出用プローブを調製した。すなわち、10×DIG dNTP Labeling Mixture(ロッシュ社)、1Unit Ex Taq Polymerase(タカラバイオ社)、10×Ex Taq Buffer、各0.4μMの実施例1で用いたForward及びReverse primer(配列番号5及び6)、プラスミドDNA・GluA−C4(20ng/μL)を混合し、全体を20μLとした。これを、Mastercycler(エッペンドルフ社)を用いて、96℃・2分−[94℃・30秒−62℃・1分−72℃・2分]×35回PCR増幅し、DIGラベルされたCuHIIX4ペプチド検出用プローブを調製した。得られたプローブは1時間のプレハイブリダイゼーション後、68℃、1晩かけてハイブリダイゼーション(2XSSC,0.1%SDS,68℃,15分X2回)を行い、洗浄後、Hyperfilm ECL(アマシャム社)を用いて検出を行った。
結果を図10に示す。この結果、超高発現系統では目的遺伝子が5−6個重複して導入されており、しかも一因子として後代に安定して遺伝していることが明らかとなった。これらの結果から、この系統では5−6個の目的遺伝子が一染色体の狭い領域(一遺伝子座)に固まって挿入されているために、一因子として後代に安定して遺伝していることが示唆された。
以上のとおり、ペプチドをコードする遺伝子の連結数が増すと薬剤マーカーとの分離型の割合は低下するものの、繰り返し配列を持つ遺伝子を導入することで、世代を超えて遺伝的に安定な高発現(多コピー)系統であって、しかも薬剤マーカーを含まない系統を育種しうることが示された。
実施例6:II型コラーゲンに対する自己免疫応答のマウスモデル実験(経口免疫寛容誘導実験)
DBA/1マウスを精製ウシII型コラーゲンとアジュバンド(FCA)で免疫し、血清中のコラーゲン特異的IgG抗体の変動をELISAにより解析した。免疫した全ての個体においてII型コラーゲンに対する血清抗体応答と四肢での軽度の関節炎が、また、一部の個体においては炎症に伴う腫脹が観察され、用いた条件で実験的関節炎を誘導できることを確認した。
このマウスモデル実験系を用いて、グルテリン・HuCII融合タンパク質導入コメの経口投与による免疫寛容誘導の陽性対象実験を実施し、効果を評価した。
1.方法
(1) マウス
DBA/1J(9週齢、♀、日本SLC)を24匹用いた。8匹ずつ2群に分け、パンチで耳に穴を開けることによって個体を識別した。マウスは、魚粉に含まれるコラーゲンを摂取することによってコラーゲンに対する免疫寛容が誘導されないように、魚粉を含まない市販の特殊固形飼料(CLEA diet No.012、日本クレア)を自由摂取させることによって飼育した。
(2) 経口免疫寛容の誘導のために使用した餌
実施例4で行った半定量的解析により、C4 Rice(No.808−55)には1粒あたり1μgのHuCII.250−270が含まれていることが示された。マウス1匹が1日あたり5gの餌を摂取すると仮定し、マウス1匹が1日あたり25μgのHuCII.250−270を摂取できるようにした餌の組成を下に示した。コメ1粒を18mgとして計算した。 18mg×25粒=450mg 450mg/5g=9%
組換えイネ(C4 TG−Rice(No.808−55))と野生型親株であるコシヒカリの2種類のコメを用いて作製した。マウスに与えるときは、粉状の餌に水を加えてだんごにし、食べた量がわかりやすいようにした。だんごは、粉状の餌5gあたり3mlの水を加えて作製した。ただし、「コメなし」を作るときは水の代わりにBovine CII溶液(25μg/3ml)を用いた。
(3) 経口免疫寛容の誘導
経口投与は2週間行い、1群あたり1週間で80g(1匹平均20g)の餌を与えた。すなわち、2週間で1匹あたり200μgのHuCII.250−270、コシヒカリ及びBovine CIIを摂取させた。
(4) 免疫
経口投与終了後から1、4、7、10日後に、抗原としてBovine CIIを腹腔内に投与した。Bovine CIIは酢酸に溶かしてあったものにNaOHを加えて中性にしてから使用した。1匹あたり1回の投与で10μg/100μlを用いた。
(5) 採血及び血清調製
経口投与が終了した日(0日目)、11日目、21日目に尾静脈から約100μl採血した。室温で30分程度静置した後、4℃で一晩静置した。血餅を除去した後、17,500×gで15分間遠心分離した。生じた上清を採取し、これを血清とした。血清は−20℃で保存した。
(6) ELISA法による抗体価の測定
ELISAは常法に従い、以下の手順で実施した。ELISAプレートのコーティングは10μg/mlのBovineCII溶液を用いた。一次抗体には、マウスの血清を1%BSA/PBS−Tweenで100倍希釈したものを用いた。二次抗体には、POD−conjugated goat anti−mouse IgG(Cell Signaling Technology)、POD−conjugated goat anti−mouse IgG1、Rabbit anti−mouse IgG2aをそれぞれ1%BSA/PBS−Tweenで10,000倍希釈したものを用いた。Rabbit anti−mouse IgG2aを用いた場合は、三次抗体としてPOD−conjugated goat anti−rabbit IgG(Cell Signaling Technology)を1%BSA/PBS−Tweenで10,000倍希釈したものを用いた。発色時間は45分とした。
2.結果
結果を図11に示す。図11のグラフから明らかなように、野生型親株イネを摂取したマウスの中には高い血清抗コラーゲン価を示すものがみられたが、組換えイネを摂取したマウスでは血清抗コラーゲン価はいずれの時点においても極めて低かった。このことから、組換えイネの摂取によりマウスに免疫寛容が誘導されることが示された。
本明細書中で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書中にとり入れるものとする。
本発明によれば、単一遺伝子座に多コピーの遺伝子を導入することが可能となり、遺伝的に安定な高発現の多コピー系統を容易に作出することができる。これにより、植物、特に植物の種子中に低分子ペプチドを高効率に発現集積することができる。よって、本発明は生理的機能性が強化された新規な組換え作物の開発に有用である。
配列番号1−イネ由来GluA cDNA(pBluescript KSのBamHI(5’)及びEcoRI(3’)サイト間に挿入されている)
配列番号2−イネ由来GluA
配列番号3−ヒトII型コラーゲンエピトープ領域ペプチド(HuCII)
配列番号4−コドン最適化HuCII塩基配列
配列番号5−人工配列の説明:HuCII増幅用プライマー(Forward)
配列番号6−人工配列の説明:HuCII増幅用プライマー(Reverse)
配列番号7−GluPF2プロモーター(pBluescript KSのBamHI(5’)及びEcoRI(3’)サイト間に挿入されている)
配列番号8−人工配列の説明:HuCII検出用プライマー(Forward)
配列番号9−人工配列の説明:HuCII検出用プライマー(Reverse)
[配列表]

Claims (14)

  1. プロモーター支配下に、グルテリンファミリーをコードする遺伝子と該遺伝子の下流に連結された2コピー以上の3〜40アミノ酸残基からなる目的ペプチドをコードする遺伝子とを含む融合タンパク質発現ベクターであって、多重感染により前記2コピー以上の遺伝子を単一遺伝子座に多重導入しうることを特徴とする前記ベクター。
  2. グルテリンファミリーが、グルテリンA又はグルテリンBである、請求項1に記載のベクター。
  3. プロモーターがグルテリンプロモーターである、請求項1又は2に記載のベクター。
  4. 融合タンパク質中の各ペプチド連結部がチロシン又はフェニルアラニンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のベクター。
  5. 目的ペプチドがII型コラーゲンエピトープペプチドである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のベクター。
  6. ベクターが2つのT−DNA領域を有するバイナリー型のハイブリッドベクターであって、第1のT−DNA領域にグルテリンファミリーをコードする遺伝子に連結された2コピー以上の3〜40アミノ酸残基からなる目的ペプチドをコードする遺伝子を含み、第2のT−DNA領域に選択マーカーを含むものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のベクター。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のベクターで形質転換された組換え植物。
  8. 植物がイネである、請求項7に記載の組換え植物。
  9. イネがイネ品種「コシヒカリ」である、請求項8に記載の組換え植物。
  10. 前記2コピー以上の目的ペプチドをコードする遺伝子が単一遺伝子座に多重導入されていることを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項に記載の組換え植物。
  11. 請求項7〜10のいずれか1項に記載の組換え植物の細胞、組織、器官もしくは種子、又はその培養物。
  12. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のベクターで植物を形質転換し、当該植物の種子中で前記ベクターを発現させることを特徴とする、植物の種子における目的ペプチドの発現集積方法。
  13. DNA分析により形質転換した植物の自殖後代より、選択マーカーを含まない植物個体を選抜する工程を含む、請求項12に記載の方法。
  14. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のベクターで植物を形質転換することにより、前記2コピー以上の目的ペプチドをコードする遺伝子を単一遺伝子座に多重導入されて含む多コピー系統の育種方法。
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