JP2003000082A - 選択マーカーを含まない組換え植物の作出方法、ならびに該方法により作出される組換え植物 - Google Patents
選択マーカーを含まない組換え植物の作出方法、ならびに該方法により作出される組換え植物Info
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Abstract
な作出方法の提供。 【解決手段】 選択マーカーを含まない組換え植物の作
出方法であって、目的遺伝子および選択マーカーを植物
に導入し、該遺伝子導入植物を自殖させ、自殖後代のD
NA分析により目的遺伝子を含みかつ選択マーカーを含
まない植物個体を選抜し、さらに選抜した植物個体を用
いて目的遺伝子による形質の発現を検定する、ことを含
んでなる前記方法。
Description
り除くことで安全性に配慮した組換え植物、特に経済的
に重要なイネ品種「コシヒカリ」組み換え体の作出方法
に関する。また本発明は、該方法により作出された組換
え植物に関する。
イズやトウモロコシがアメリカなどから輸入され始めた
が、一般消費者はこれらに漠然とした不安感を抱き敬遠
している。組換え作物の安全性論議の中で指摘されるの
は、これらの輸入組換え作物が抗生物質抵抗性遺伝子を
残存させている点である。これらに使われているカナマ
イシン抵抗性遺伝子は十分な安全性評価が行われている
にもかかわらず、この点が最も問題視されている。さら
に、イネの遺伝子組換えにおいて選択マーカーとして最
も使われているハイグロマイシン抵抗性遺伝子について
は安全性に関するデータの蓄積が十分なされていない。
そのため、イネにおいてはこの遺伝子を除去した組換え
体を作出することが望ましい。しかし、抗生物質抵抗性
遺伝子の除去に主眼をおいた有用な遺伝子組換え作物の
開発方法についての報告はまだ少ない。
の有用遺伝子が微生物に由来することも不安感をかき立
てる一因となっていることから、植物本来が持つ有用遺
伝子を用いることが望ましい。イネにおいては、植物本
来が持つ有用遺伝子としてイネの核由来キチナーゼを再
導入したイネがいもち病抵抗性を向上させた報告(Nish
izawa Y.ら、1999. Theoret. and Appl.Genet.,99,383:
383-390)はあるものの、イネの花器由来キチナーゼを
再導入したイネでそのことを実証した報告はない。これ
まで、遺伝子組換えにより有用形質を付与したイネにつ
いての報告はみられるが、実用レベルにまで至ったもの
はほとんど知られていない。
えられる。従来、イネの形質転換においてはエレクトロ
ポレーション法(Harms,C.T.ら、1978. Theor.Appl.Gen
et.,53:57-63)、ポリエチレングリコール法(Hayashim
oto,A.ら、1990. Plant Physiol.,93:857-863)、パー
ティクルガン法(Christou,P.ら、1991. Bio/technolog
y,9:957-962)などの直接導入法が用いられていたが、
これらの方法では一般にアグロバクテリウム法のような
間接導入法に比べ、完全長の遺伝子導入が困難であった
り、導入遺伝子のコピー数が多くなる傾向がある。その
ため、発現そのものが不安定であったり、再分化当代に
は一過性の高い形質の発現がみられるものの、自殖後代
にはジーンサイレンシング等により発現が抑制されてし
まう場合が多い。その後、単子葉植物にアグロバクテリ
ウム法を用いることが可能となり、イネにおいてもコピ
ー数を低く抑え、インタクトな状態で安定して導入でき
るようになった(特許第2649287号、Hiei,Y.ら、1994.
Plant J.,6:271-282)。
当代から目的形質の発現の高さにばかりに目が向けられ
た選抜方法が採られていることが多い。そのため、例え
ば再分化当代において高い病害抵抗性を示す個体が得ら
れても、それが偶発的に低コピーのものでなければ、上
記のように自殖後代でその高い病害抵抗性を均一に維持
した集団を得ることができない。さらに、植物の病害抵
抗性のような生物検定は評価にばらつきが生じやすく、
再分化当代1株のみで行えばエスケープが出たり、逆に
貴重な有望個体を失うことになる。一方、DNA分析
は、PCR等を用いた導入遺伝子の検出により客観的で正
確な判定を下すことができる。したがって、遺伝子組換
えによる病害抵抗性等の付与を目標とする場合、遺伝的
に固定した系統の選抜を優先させ、形質の均一な後代を
複数個体用いて検定した方が、結果として精度が高く、
効率的な選抜方法といえる。
は、導入した遺伝子が植物の染色体上のどの位置に組み
込まれたかよって発現量が異なり、必ずしも目的とする
形質を十分に発揮するとは限らないが、植物の染色体上
の特定位置に遺伝子を導入する方法は確立されていな
い。さらに、上述した理由から、導入した遺伝子が低コ
ピー数でなければならないが、そのように調整できる方
法はこれまでに知られていない。従って、低コピー数
で、目的形質を十分に発現する組換え体を得るには、あ
らかじめ多数の組換え体を作出しその中から選抜してい
かなければならない。
すいイネ品種である「日本晴」、「キヌヒカリ」、「サ
サニシキ」などを材料として有用な組換えイネを開発し
た報告は多い。しかしながら、日本で最も作付け面積が
多い「コシヒカリ」については、遺伝子導入効率が低い
ため、その遺伝子組換え体を得ることが困難であった。
そのため、経済的に重要なイネ品種である「コシヒカ
リ」の組換え体を効率よく作出できる方法が必要とされ
る。
を有し、かつ抗生物質抵抗性遺伝子等の選択マーカーを
除去した植物、特に前記特徴を有するイネ品種「コシヒ
カリ」を効率よく作出する方法を提供することを課題と
する。
を解決すべく鋭意検討した。その結果、所望の形質に関
する目的遺伝子と選択マーカーとをコ・トランスフォー
メーションにより対象とする植物に導入し、該植物の自
殖後代をDNA分析により選抜し、選抜個体をさらに目
的遺伝子による形質の発現について検定することで、所
望の形質が付与され、かつ選択マーカーを含まない遺伝
的に固定した植物系統を高精度かつ効率的に作出できる
ことを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成され
たものである。
い組換え植物の作出方法であって、以下(a)〜(d)
の工程を含む前記作出方法である; (a)目的遺伝子および選択マーカーを植物に導入する
工程、(b)(a)の植物を自殖させる工程、(c)自
殖後代のDNA分析により、目的遺伝子を含み、かつ選
択マーカーを含まない植物個体を選抜する工程、(d)
(c)で選抜した植物個体を用いて、目的遺伝子による
形質の発現を検定する工程。また本発明は、前記の組換
え植物の作出方法により作出された組換え植物である。
ない組換え植物の作出方法であって、以下(a)〜
(d)の工程を含む前記作出方法であることを特徴とす
る; (a)目的遺伝子および選択マーカーを植物に導入する
工程、(b)(a)の植物を自殖させる工程、(c)自
殖後代のDNA分析により、目的遺伝子を含み、かつ選
択マーカーを含まない植物個体を選抜する工程、(d)
(c)で選抜した植物個体を用いて、目的遺伝子による
形質の発現を検定する工程。
「本発明の方法」と記す)を適用し得る植物としては、
特に限定するものではないが、例えば単子葉植物、具体
的にはイネを挙げることができる。また、イネ品種とし
ては、例えば「日本晴」、「キヌヒカリ」、「ササニシ
キ」および特に経済的に重要なイネ品種である「コシヒ
カリ」を挙げることができるが、これらに限定されな
い。以下、各工程について詳しく説明する。
物へ導入する工程 目的遺伝子および選択マーカーの植物への導入は、目的
遺伝子および選択マーカーを対象植物にコ・トランスフ
ォーメーションすることにより実施する。
ではないが、例えば植物がイネの場合、病害抵抗性、出
穂性や収量性等、量的形質に関与する遺伝子を用いるこ
とができる。特に植物がイネ品種「コシヒカリ」である
場合、限定するものではないが、目的遺伝子として、イ
ネのいもち病に対する抵抗性を向上させることが知られ
ているキチナーゼをコードする遺伝子、コメの食味に影
響を及ぼす因子の一つであるデンプン合成酵素をコード
するwaxy遺伝子(この遺伝子をアンチセンス方向に導入
し、胚乳中のアミロース含量を低下させると、コメの粘
りがよくなり、一般に食味が良くなるとされる)、コメ
のアレルゲンをコードする遺伝子(この遺伝子をアンチ
センス方向に導入し、そのアレルゲンを抑えることによ
り、コメにアレルギーのある人でも食べられるような低
アレルゲン米を開発し得ると考えられている)を用いる
ことができる。ここで、キチナーゼをコードする遺伝子
としてイネの花器由来キチナーゼをコードするcDNA(WO
98/29542[(株)オリノバ]、該cDNAと相同な遺伝子が三
重大学および京都大学の共同研究により単離された)
を、waxy遺伝子としてpWX15A((株)三井業際植物バイ
オ研究所)を具体例として挙げることができるが、これ
らに限定されず、前記遺伝子と同機能を有することが知
られている遺伝子であれば、公知のデータベースから入
手してこれを用いてもよい。また、コメのアレルゲンを
コードする遺伝子は5,6種類あると推定されており、
このうち現在までに単離されているもののなかから、例
えばアレルゲンRA-17をコードする遺伝子や、解毒酵素
・アミラーゼインヒビターの一種であると同定されてい
る遺伝子(既知の小麦のアレルゲンとアミノ酸配列で93
%の相同性を有する)を用いることができる。
安感に配慮するという目的から、微生物などに由来する
ものではなく、植物由来のものが望ましい。また、発現
効率の点からは同種植物由来であることが望ましい。従
って、例えば植物がイネである場合、目的遺伝子はイネ
由来のもの、例えばイネの花器由来キチナーゼをコード
するcDNA(前掲)やwaxy遺伝子のアンチセンス遺伝子
(前掲)を挙げることができる。
する遺伝子(配列)であった場合には、本発明の方法を
用いて該遺伝子を導入した組換え植物を作出することに
より、前記遺伝子の機能が解明されるだけでなく、同時
に選択マーカーが付与された組換え植物を得ることがで
きる。
が、例えば抗生物質抵抗性遺伝子を挙げることができ
る。抗生物質抵抗性遺伝子としては、限定するものでは
ないが、例えば植物がイネである場合、ハイグロマイシ
ン抵抗性遺伝子、ビアラフォス抵抗性遺伝子等を挙げる
ことができる。ただし、これらの選択マーカーは形質転
換細胞の効率的な選抜にのみ必要な遺伝子であり、その
後は植物細胞内に残存させる意味のないものである。こ
れらの安全性に関するデータ蓄積もまだ十分とはいえ
ず、開発された組換え作物を一般消費者に少しでも理解
してもらえるようにするには、このような不安要因を取
り除くことが重要である。本発明の方法を用いて組換え
植物を作出することにより、こうした問題点を解決する
ことができる。
対象植物へのコ・トランスフォーメーションは、限定す
るものではないが、例えばエレクトロポレーション等に
よる直接的導入法、またはアグロバクテリウム属細菌を
介する間接的導入法を用いて実施することができる。し
かしながら、遺伝子導入効率を考慮すると、後者のアグ
ロバクテリウム属細菌を介する導入法が好適である。
導入法を用いる場合、前記コ・トランスフォーメーショ
ンは、当業者に公知の手法に従い、例えば目的遺伝子お
よび選択マーカーを挿入したベクターを構築し、該ベク
ターを含むアグロバクテリウム属細菌を対象植物に感染
させることにより実施できる。
ベクターとしては、限定するものではないが、例えば、
1つのアグロバクテリウム属細菌内に接続されていない
2つのT-DNAを配置したベクター(以下、「コ・トラン
スフォーメーション用ベクター」と記す)を用いること
ができる。このコ・トランスフォーメーション用ベクタ
ーを用いることにより、遺伝子導入した植物の自殖後代
において選抜マーカーを分離・除去することが可能とな
る。
ターは更に、スーパーバイナリー型のベクター(アグロ
バクテリウム・ツメファシエンス[Agrobacterium tumef
aciens]菌系のうち、感染能力の強い病原性の菌系のVir
領域の一部を、T-DNAを有するプラスミド中に配置する
ことにより目的遺伝子の導入効率を高めたバイナリーベ
クター。詳細はHiei,Y.ら、1994. Plant J., 6:271-282
を参照されたい)であってもよく、かかるベクターとし
ては、例えばオリノバ(株)により開発されたpSBシリー
ズのベクター(WO95/16031、Komari,T.ら、1996. Plant
J.,10:165-174)を挙げることができる。
ターは、限定するものではないが、例えば、T-DNA領域
に目的遺伝子を含む中間ベクターと、T-DNA領域に選択
マーカーを含むアクセプターべクターとをそれぞれ構築
し、これらをアグロバクテリウム属細菌中での相同組換
えによって調整することにより構築することができる。
これにより、2つのT-DNA領域をもったハイブリッドベ
クター(すなわち前記コ・トランスフォーメーション用
ベクター)が形成される。具体的には、後述の実施例1
および2の工程(a)に記載した通りにして、目的遺伝
子を含むコ・トランスフォーメーション用ベクターを構
築する。
ベクターを用いると一般に遺伝子導入効率が低くなるこ
とが知られているが、本発明の方法によれば、該ベクタ
ーを導入する植物の培養条件等の改良(後述)により、特
に遺伝子導入効率が低いとされるイネ品種「コシヒカ
リ」においても遺伝的に安定した組換え体を高頻度で得
ることができる。前記ベクターは、前記目的遺伝子およ
び前記選択マーカーの他に、例えばプロモーター等の他
の配列を有していてもよい。
モーターを導入した植物の細胞内で機能するものであれ
ば特に制限はないが、目的とする導入形質が有効に発揮
されるものを適宜使用するのがよい。例えば、植物とし
てイネを用いていもち病に対する抵抗性の導入を目的と
する場合、葉茎あるいは穂で組織特異的に働くプロモー
ター、あるいは病原菌の感染により誘導されるプロモー
ターが適している。また、安全性配慮の観点からは目的
遺伝子と同様に、植物に由来するものが望ましい。しか
し、植物の形質転換に通常よく用いられるカリフラワー
モザイクウイルス35Sプロモーター等でも十分形質を
発現させることが可能である。
細菌としては、例えば、アグロバクテリウム・ツメファ
シエンス(Agrobacterium tumefaciens)を用いることが
好ましいが、これに限定されない。アグロバクテリウム
属細菌を感染させる植物の形態としては、限定するもの
ではないが、例えばカルス、葉、胚軸、根、種子、懸濁
培養細胞、プロトプラスト等があり、当業者であれば、
当該植物の再分化系に応じて適宜選択することができ
る。植物がイネである場合、通常はイネの胚盤由来カル
スを用いるが、安定した高い遺伝子導入効率を求めるに
は、完熟種子から誘導後概ね3週間以内の前記カルスを
用いることが好ましい。尚、従来の培養方法では、培養
細胞の生育の遅いイネ品種「コシヒカリ」で3週間以内
にカルスを誘導することは困難であったが、本発明の方
法においては「コシヒカリ」のカルスの培養条件に工夫
を加えることにより、3週間以内で分裂活性が高く、遺
伝子導入に適したカルスを誘導することを可能とした。
従って、本発明の方法により、従来遺伝子導入効率が低
かったイネ品種「コシヒカリ」においても、その組換え
体を効率的に作出することが可能である。
ルスを、以下に示す培養条件下で培養する。すなわち、
カルス誘導培地として、N6基本培地の窒素濃度を抑制
し、適当なアミノ酸を添加した培地(例えば、KSP培
地[津川ら、1993.育種学雑誌43巻(別2)、121])を使用
する。また、植物ホルモンとして2mg/Lの2,4-ジクロロ
酢酸(2,4-D)、糖として30g/Lマルトース、凝固剤とし
て0.8%アガロースを使用する。表面殺菌したイネ品種
「コシヒカリ」の玄米をこのカルス誘導培地に植え込
む。この際、胚乳部分は培地中に完全に埋め込み、胚部
分だけを露出させる。容器はシャーレを使い、ふたを粘
着力の弱いビニルテープ等で覆って、緩やかな乾燥を促
す。培養環境は28〜30℃の明室とする。このように培養
することで、イネ品種「コシヒカリ」の完熟種子から、
遺伝子導入に適した細かい粒状のカルスを3週間以内に
誘導することができる。
細菌の感染、共存培養、植物の除菌、遺伝子導入された
植物の選抜・増殖、選抜された植物からの植物体再分化
は、当業者に公知の手法に従って実施することができ
る。しかしながら、植物がイネ品種「コシヒカリ」であ
る場合には、本発明者らが以前に開発した方法(Hashizu
meら、1999. Plant Biotechnology,16:397-401)を用い
ることが好ましい。具体的には、後述の実施例1(a)
中に記載した通りにして、イネ品種「コシヒカリ」のカ
ルスに遺伝子を導入する。その結果、再分化当代
(T0)には、目的遺伝子と選択マーカーの両方を有す
る遺伝子導入植物が作出される。
0)の植物を、当業者に公知の手法に従って順化、栽培
し、自殖後代を得る。例えば植物がイネである場合に
は、後述の実施例1(b)中に記載した通りにして自殖
第1世代、T1を採取する。
物の再分化当代(T0)、自殖第1世代(T1)、自殖第
2世代(T2)のDNAをそれぞれ分析し、最終的に選
択マーカーを含まず、目的遺伝子を優性ホモの形で持つ
遺伝的固定系統を選抜する。
物がイネである場合、幼苗の葉)からの簡易法によるD
NA抽出と、適切なDNA増幅・検出法との組み合わせ
で、導入した遺伝子の有無を調査することにより実施す
る。これにより多数の個体を取り扱うことができるう
え、早期に検定するため不要な系統を栽培する無駄を省
くこともできる。
限定するものではないが、例えばSDS簡易抽出法を挙
げることができる。尚、葉を抽出液に浸して砕く操作は
従来手作業により行っているが、この方法では時間と労
力がかかる上に、イネ等の繊維が発達した単子葉植物の
葉では効率が悪い。したがって、DNA抽出は適切な粉
砕機(例えばQIAGN社のMixer Mill MM 300)を用いて、
機械的に粉砕する方法が効率の点で望ましい。
するものではないが、例えばPCR法、LAMP法、I
-CAN法を挙げることができる。特に、LAMP法(T.
Notomi et al., Nucleic Acids Res., 20,1691-1696,e6
3(2000))は、増幅効率が高く、検出も簡便であるため、
本工程の効率化という点では好ましい。DNA分析によ
る選抜は、例えば以下のようにして実施することができ
る。まず、再分化当代(T0)では目的遺伝子と選択マ
ーカーの両方を持つ個体を選抜する。
1因子遺伝・選抜マーカー分離型のT0を系統群として
選抜し、その中から選択マーカーを含まないT1を新た
な系統として選抜する。ここでいう1因子遺伝・選抜マ
ーカー分離型とは、選択マーカーと分離した独立型の目
的遺伝子が植物の染色体上の1座位にのみ組み込まれ、
それ以外の座位(独立型の選択マーカーが入った座位、
目的遺伝子と選択マーカーが連鎖した座位)が1ないし
2であることをいう。
選択マーカーを含まないことの確認と、すべての個体で
目的遺伝子のみ持つ遺伝的固定系統(T1)を選抜す
る。例えば、独立型の選択マーカーと独立型の選択マー
カー(または連鎖した遺伝子)がそれぞれ1座位のT0
を選抜した場合、3/16の確率で目的遺伝子のみを含むT
1個体が得られ、そのうちの1/3から優性ホモ系統を得ら
れる。具体的には、DNA分析による選抜は、後述の実
施例1中工程(c)に記載した通りにして実施すること
ができる。
を用いて、目的遺伝子による形質の発現を検定する工程 上記のようにして選抜した優性ホモのT2個体を、当業
者に公知の手法に従って、目的遺伝子による形質の発現
検定に供する。
いもち病等の病害に対する抵抗性である場合、かかる病
害抵抗性検定は、例えば、遺伝子導入イネにいもち病菌
の胞子懸濁液を接種し、一定期間経過した後に前記イネ
の罹病率(抵抗性の程度)を調べて、その結果得られる
抵抗性の程度を元品種と比較し、発病の抑制程度の大き
い系統を選抜することにより実施する。ここでいもち病
菌を接種するイネの部位としては、限定するものではな
いが、例えば葉、茎、穂、穂首を選択することができ
る。また、いもち病の接種法としては、限定するもので
はないが、例えば針で接種部位に胞子懸濁液を注入する
手法を用いることができる。具体的には、病害抵抗性検
定は、後述の実施例1(d)中に記載した通りにして実施
することができる。
選抜マーカーを含まず、また該植物に導入した目的遺伝
子により所望の形質を付与された、遺伝的に固定した組
換え植物系統である。
れた組換え植物であることを特徴とする。本発明の組換
え植物は、選択マーカーが除去されていることから、一
般消費者の組換え作物に対する不安感を軽減するもので
ある。ここで植物とは、上記方法によって得られた植物
体だけでなく、この植物体から得られる栄養繁殖物およ
び種子等を含む概念である。
に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるもの
ではない。 〔実施例1〕 選択マーカーを含まない、いもち病抵抗
性イネ組換え体の作出(a)遺伝子の導入コ・トランスフォーメーション用ベクターの構築 コ・トランスフォーメーション用ベクターとして、スー
パーバイナリーベクターpSB424(WO95/16031、Komari,
T.ら、1996. Plant J.,10:165-174)を用いた。これ
は、中間ベクターpSB24とアクセプターベクターpSB4
(いずれもオリノバ(株)から契約分譲により入手)の
相同組換えによるハイブリッドベクターである。目的遺
伝子として、イネの花器由来キチナーゼをコードするcD
NA(WO98/29542[(株)オリノバ]、該遺伝子と相同な遺伝
子を三重大学より入手)を用いた。また、そのプロモー
ターとして、プラスミドpBE7131-GUS(Mitsuhara,I.
ら、1996. Plant Cell Physiol.,37:47-59)に含まれる
高発現を示すプロモーター領域を用いた。
スミドpBE7131-GUSを制限酵素HindIIIとBamHIで消化し
た後、電気泳動にかけ、Prep-A-Gene DNA Purification
Matrix Kit(BIO RAD)を用いて2.2Kbの高発現プロモー
ター領域を含む断片を回収した。このDNAを同じ制限酵
素の組合せで消化した中間ベクターpSB24とDNA Ligatio
n kit(Takara Co.)を使って連結させ、プロモーター領
域を置換したサブクローンpSB25を得た。このサブクロ
ーンDNAを制限酵素BamHIとSacIで消化し、8.7Kbのベク
ター部分を回収した。このDNAをKlenow酵素(Boehringer
Mannheim)を用いて平滑化し、アルカリホスファターゼ
(ウシ小腸由来)(Takara Co.)を用いて脱リン酸化した。
一方、イネの花器由来キチナーゼをコードするcDNAを含
むプラスミドを制限酵素SmaIとEcoRVで消化し、1.3Kbの
該cDNAを含む断片を回収し、平滑化した。
片と高発現プロモーターに置換した中間ベクターをDNA
Ligation kit(Takara Co.)を用いて連結し、クローンpS
B25Chiを得た。挿入の方向性は、両者に存在するSphIサ
イトを利用して確認した。
グロバクテリウム属細菌LBA4404、中間ベクターpSB25Ch
iを含む大腸菌LE392、およびヘルパープラスミドpRK201
3を含む大腸菌HB101の3種の菌をNutrient Agar(Difco)
上で混合し、一晩28℃で共存培養した。
ノマイシンと50mg/Lのハイグロマイシンを含むAB培地
(Chilton,M.-D.ら、1974. Proc.Natl.Acad.Sci. ,USA,
71:3672-3676)上に薄く条播する操作を数回繰り返
し、両抗生物質に抵抗性のクローンを選抜した。このク
ローンは、pSB4由来のハイグロマイシン抵抗性とpSB25C
hiに由来するスぺクチノマイシン抵抗性を合わせ持った
ハイブリッドベクターを含むアグロバクテリウム属細菌
で、LBA4404/pSB425Chiと命名した。ベクターpSB425Ch
iの構造を図1に示す。
ikari)の完熟種子を表面殺菌後、KA-1培地(KSP培地を
基本とし、2mg/Lの2,4-D、30g/Lのマルトース、0.8%の
アガロース)に植え込み、シャーレを野菜結束テープ
(日東電工)で封をして28℃明室で培養した。3週間
後、分裂活性の高い、細かい粒状のカルスが多数誘導さ
れた。
で作製したアグロバクテリウム属細菌LBA4404/pSB42
5Chi に感染させ、Hashizumeら(1999)の方法に従って、
共存培養、カルスの除菌、遺伝子導入カルスの選抜・増
殖および、カルスからの植物体再分化を行った。具体的
な操作を以下に示す。
培地(Chilton,M.-D.ら、1974. Proc.Natl.Acad.Sci.,
USA, 71:3672-3676)上で増殖させアグロバクテリウム
の菌体をミクロスパーテルで1さじとり、10mg/Lのアセ
トシリンゴンを含むKA-1液体培地(KSP培地を基本と
し、2,4-Dを2mg/Lに、シュークロースをマルトース30g/
Lに改変、pH5.8)20mLに、菌の塊がほぐれ、均一になる
まで十分に懸濁した。この懸濁液を9cmのガラスシャー
レに移した。次に、誘導したカルスをかごの形にしたス
テンレスメッシュ(網の大きさ:20メッシュ)に入れ、
このメッシュごとカルス全体が浸るように1分30秒間菌
懸濁液に漬けた。菌懸濁液を除去し、カルスを滅菌した
濾紙の上に移し、余分な水分を取り除いた。KA-1co培地
(KA-1培地に10g/Lのグルコース、10mg/Lのアセトシリ
ンゴンを添加、1.5%バクトアガー、pH5.2)上に2枚の
滅菌した濾紙を重ね置き、その上にカルスを互いに重な
らないように置いた。28℃、暗室で3日間共存培養した
後、滅菌水で液が透明になるまで余分な菌体をカルスか
ら洗い落とし、250mg/Lのカルベニシリンを含むKA-1液
体培地でリンスした。滅菌した濾紙で水切りし、カルス
をKA-1se培地(KA-1培地に250mg/Lのカルベニシリン、5
0mg/Lのハイグロマイシンを添加、0.8%アガロース、pH
5.8)に置床した。28-30℃、14時間日長の明室で3週間
培養した後、すべてのカルスを新鮮なKA-1se培地に移植
した。2〜3週間後、ハイグロマイシンによる選抜で生
き残り、増殖してきたカルスをKA-2培地(KA-1培地に30
g/Lのソルビトール、2g/Lのカザミノ酸、125mg/Lのカル
ベニシリン、50mg/Lのハイグロマイシンを添加、植物ホ
ルモンを0.4mg/Lの2,4-D、0.5mg/Lのアブシシン酸(AB
A)、0.1mg/Lのカイネチンに改変、0.8%アガロース、pH
5.8)に1週間置いた後、KA-3培地(KA-2培地の植物ホル
モンを0.5mg/Lの6-ベンジルアミノプリン(BAP)、0.2mg/
Lのインドール酢酸(IAA)に、ハイグロマイシン濃度を25
mg/Lに改変、0.8%アガロース、pH5.8)に移植し、3〜
4週間で植物体に再分化させた。
植物体(T0)を119個体得た。これらの再分化させた幼
苗を、個体別に育苗用培土(製品名「くみあい粒状培土
クリーン2号」;成分:1kg当たり窒素0.27g、燐酸0.
40g、カリ0.33g;製造:全農;販売:(株)三菱化学)
を入れた1粒播き用多穴ポット(製品名「みのる式ポッ
ト」)に植えた。次に、このポットを密閉のできる容器
(製品名「クリスタル・コンテナー」)に入れ、十分な
湿度を保ち、25℃、14時間日長で1〜2週間順化、活着
させた。その後、密閉容器から出し、個体別に220mL容
量のプラスチックカップに鉢上げし、25〜35℃、14時間
日長で栽培した。4〜5ヶ月後、88系統から成熟した種
子(自殖第1世代、T1)を個体別に採取した。
り、ゲノムDNAを抽出した。具体的には下記の通り行っ
た。
ーズと共に2.0mLマイクロチューブに入れた。硬質ビー
ズは、発達した硬い葉の場合はタングステンビーズ(QI
AGEN、比重14.9g/mL)を、幼苗の柔らかい葉の場合はジ
ルコニアビーズ(アズワン、比重5.5g/mL)を用いた。
これに、120μLのSDS抽出液を入れ、ミキサーミルMM
300(QIAGEN社製)を用いて、20Hz/sで2分間、さら
にサンプルの向きを変えて20Hz/sで2分間振動させた。
サンプルは15,000rpm、5分間遠心分離し、水層を採取す
る操作を2回繰り返し、夾雑物を除去した。これに100μ
Lのイソプロパノールを加えて、さらに15,000rpm、10分
間遠心分離し、水層を除去した。沈殿を70%エタノール
で洗浄し、乾燥させた後、30μLの1/10TE(20μg/mLの
リボヌクレアーゼ(Wako)含む)に溶解した。
てPCRを行い、導入遺伝子に特異的な領域の増幅を図っ
た。プライマーとして、以下の2つのオリゴヌクレオチ
ド:5'-gacacccgcaagcgtga-3'(配列番号1)および5'-
ttgaacgccaccgtcgggtccgtt-3'(配列番号2)を用いて
イネ花器由来キチナーゼをコードするcDNA(PCR産物300
b)を、また以下の2つのオリゴヌクレオチド:5'-atgaa
aaagcctgaactcaccgcga-3' (配列番号3)および5'-tcc
atcacagtttgccagtgataca-3'(配列番号4)を用いてハ
イグロマイシン抵抗性遺伝子(同500b)の検出を行った。
Co.)を用い、MgCl2濃度は1.0mMとし、他は添付マニュア
ルに従って10μL/本の反応液を調整した。これをPCR T
hermal Cycler MP(Takara Co.)にかけ、94℃-30秒を1
回の後、[94℃-20秒、55℃-1分、72℃-2分]を1サイ
クルとして35回繰り返して増幅反応を行った。次いで、
PCR産物を3.0%アガロースゲル電気泳動にかけて、T0
個体における前記各遺伝子の存在を調べた。結果を下記
表1に示す。
するcDNA、あるいはハイグロマイシン抵抗性遺伝子に特
異的なDNAバンドが確認された。このバンドパターンの
有無により、再分化当代(T0)119個体のうち、119個
体(100%)すべてにハイグロマイシン抵抗性遺伝子が、1
02個体(85.7%)に花器由来キチナーゼをコードするcDNA
が組み込まれていることが確認された。また、種子(T
1)を採取できた88個体に限れば、78個体(88.6%)にキ
チナーゼをコードするcDNAが組み込まれていた。
を用いて機械的に行ったが、この方法は従来の手作業に
よる方法(メスで細断し、抽出液になじませながらマイ
クロチップでたたいてつぶす)に比較して、作業時間を
半分以下(従来6時間要した工程を2〜2.5時間程度)に
短縮することが可能であった。
つ1本植え用の多穴ポットに播種し、1週間後に幼苗の
葉片を採取した。上記と同様の方法でDNAを抽出し、こ
れをテンプレートとしてPCRによりDNAの1次分析を
行った。有望な系統については1系統当たり30〜50粒に
種子数を増やして、2次分析を行った。2次分析を終え
た12系統のうち、5系統を1因子遺伝・選抜マーカー分
離型のT0として選抜した。結果を下記表2に示す。ま
た、これらのT1を個体ごとに1つの系統として、前記
工程(b)と同様に自殖第2世代(T2)を育成してそ
の種子を採取した。
カーを含まないT1系統のT2種子を1系統当たり30〜60
粒播種し、同様に3次分析を行った。結果を下記表3に
示す。
のうち、2系統群2系統が優性ホモであり、ハイグロマ
イシン抵抗性遺伝子を含んでいないことが確認された。
当たり10個体鉢上げし、4〜5葉期にイネいもち病菌
(Magnaporthe grisea)に対する病害抵抗性検定を行っ
た。
07)を9cmシャーレに20mL注いだオートミール培地(50g
/Lのオートミール、20g/Lのショ糖、12.5%バクトアガ
ー)に移植し、28℃、暗室で培養した。2週間後に気中
菌糸を除去し、BLBランプを1週間照射して、形成され
た胞子を収集した。検定は精度を高めるため、以下の異
なる接種方法で2回行った。
で、上記で得られたT2ホモ系統のイネ組換え体および
元品種のイネ(非組換え体)にまんべんなく噴霧接種
し、26℃の接種箱に24時間静置した。その後日陰で
乾かし、温室に移して2ヶ月後に罹病により枯死した茎
の数を調査した。
その部分に胞子を密集させた素寒天片を塗り付ける針接
種法を行った。接種後は同様に処理し、1週間後に以下
に示す畑苗代における圃場抵抗性調査基準(浅賀、198
1)(下記表4)により発病調査を行った。茎および葉
における結果を併せて下記表5に示す。
品種「コシヒカリ」と比較して、茎での発病は20%減少
し、葉での発病は病斑面積換算で対照40%に対し10%に
まで減少した(表5)。噴霧接種した元品種「コシヒカ
リ」(図2右側)には著しい褐変症状を示し枯死する茎
がしばしばみられるのに対し、コシヒカリ組換え体(図
2左側)では枯死する茎が少なく、生き残った茎の生長
も良好であった。これらのことにより、コシヒカリの大
きな欠点であるいもち病に対する抵抗性を向上させた組
換え体の遺伝的固定系統を作出できたことが確認でき
た。
(キチナーゼ遺伝子)に起因していること、および後代
で病害抵抗性形質が固定されていることの確認を試み
た。
(アマシャムファルマシア)を用いて、mRNAを抽出し
た。このmRNA(5-10 ng/μL)を鋳型として、SuperScri
pt One-step RT-PCR System (GIBCOBRL)を用いてRT-PCR
を行った。プライマーはゲノムDNAのPCRと同じキチナー
ゼcDNA特異的なものを使った。反応液はサーマルサイク
ラーPC-700(アステック)にかけ、50℃で30分間cDNAを
合成を行い、次に、94℃、2分間プレヒートした後、94
℃、15秒−55℃、30秒−68 ℃、2分の反応を25回繰り返
し、増幅した。増幅産物は3 %アガロースゲルで電気泳
動した。結果を図4に示す。
% SDS、8M 尿素、 7.5 % 2-メルカプトエタノール)で
粗タンパク質を抽出した。150 mgのサンプルに対し、50
0 mLの抽出液を加え、ミキサーミルMM300(QIAGE
N)で粉砕した。15,000 rpmで10分間遠心分離し、水層
を新しいチューブに移し、3分間煮沸した。再度遠心分
離し、上澄み液を回収した。それぞれのサンプルのタン
パク濃度をプロテインアッセイキットII(BIO-RAD)で
定量した。
ルアミドゲルにサンプル(20μg相当量)をのせ、20 mA
の定電流で16時間電気泳動した。次にセミドライブロッ
ティングによって、タンパク質を電気泳動転写膜(クリ
アブロットメンブレンP、ATTO)に転写した。ECLウエ
スタンブロット検出システム(アマシャムファルマシ
ア)により、キチナーゼタンパク質の検出を行った。1
次抗体((株)オリノバから分譲)は1000倍希釈、HRP標
識2次抗体は5000倍希釈して用いた。結果を図5に示
す。
非形質転換イネおよびキチナーゼ遺伝子を含まないhomo
zygousな T1イネではキチナーゼ遺伝子特異的増幅産物
は認められなかったのに対し、キチナーゼ遺伝子を含む
イネではキチナーゼ遺伝子特異的増幅産物が確認でき
た。キチナーゼ遺伝子を含むイネの間で比較すると、he
terozygousなT0 およびT1イネに比べ、homozygousな T1
イネではキチナーゼ遺伝子の発現量が大きかった。ま
た、その自殖第2世代(T2)集団での発現はhomozygous
な T 1イネと同程度で、病害抵抗性形質の安定した遺伝
が確認された。
に、非形質転換イネに比べ、キチナーゼ遺伝子を含むイ
ネでは目的のタンパク質が強く検出され、homozygousな
T1イネとその後代集団(T2)では同程度の大きさであ
った。このことから、病害抵抗性はキチナーゼ遺伝子の
導入により誘導されたことが裏付けられた。以上より、
本発明の遺伝性分析に基づいた固定系統選抜法は、安定
した遺伝子発現をする後代集団の作出に有効であること
が確認できた。
waxy遺伝子を導入したイネ組換え体の作出 (a)遺伝子の導入コ・トランスフォーメーション用ベクターの構築 コ・トランスフォーメーション用ベクターとして、スー
パーバイナリーベクターpSB424(WO95/16031、Komari,
T.ら、1996. Plant J.,10:165-174)を用いた。これ
は、中間ベクターpSB24とアクセプターベクターpSB4
(いずれもオリノバ(株)から契約分譲により入手)の
相同組換えによるハイブリッドベクターである。目的遺
伝子として、イネのデンプン合成酵素をコードするcDNA
を含むプラスミド、pWX15A((株)三井業際植物バイオ
研究所から分譲により入手)を用いた。また、そのプロ
モーターとして、プラスミドpBE7131-GUS(Mitsuhara,
I.ら、1996. Plant Cell Physiol.,37:47-59)に含まれ
る高発現を示すプロモーター領域を用いた。
のデンプン合成酵素をコードするcDNAを含むプラスミ
ド、pWX15A(前掲)を制限酵素EcoRIで消化した後、電気
泳動にかけ、Prep-A-Gene DNA Purification Matrix Ki
t(BIO RAD)を用いて2.0Kbの該cDNAを含む断片を回収
し、Klenow酵素(Boehringer Mannheim)を用いて平滑化
した。
に置換した中間ベクターを作成し、これと前記のcDNAを
含む断片とをDNA Ligation kit(Takara Co.)を使って連
結した。これを大腸菌LE392に形質転換し、得られたク
ローンの中からアンチセンス方向に1コピーのみ導入さ
れたものを選抜し、pSB25Wxaとした。挿入の方向性およ
びコピー数は、制限酵素HindIIIとXhoIを同時処理して
得られる断片の長さを利用して確認した。
グロバクテリウム属細菌LBA4404、中間ベクターpSB25Wx
aを含む大腸菌LE392、およびヘルパープラスミドpRK201
3を含む大腸菌HB101の3種の菌をNutrient Agar(Difco)
上で混合し、一晩28℃で共存培養した。
ノマイシンと50mg/Lのハイグロマイシンを含むAB培地
(Chilton,M.-D.ら、1974. Proc.Natl.Acad.Sci. ,USA,
71:3672-3676)上に薄く条播する操作を数回繰り返
し、両抗生物質に抵抗性のクローンを選抜した。このク
ローンは、pSB4由来のハイグロマイシン抵抗性とpSB25W
xaに由来するスぺクチノマイシン抵抗性を合わせ持った
ハイブリッドベクターを含むアグロバクテリウム属細菌
で、LBA4404/pSB425Wxaと命名した。ベクターpSB425Wx
aの構造を図3に示す。該ベクター中では、2.0Kbのwaxy
遺伝子がアンチセンス方向に挿入されてる。
「コシヒカリ」(Oryza sativa L.var Koshihikari)の
完熟種子から誘導したカルスを上記アグロバクテリウム
属細菌LBA4404/pSB425Wxa に感染させて、感染カルス
からの植物体再分化を行った。 (b)自殖 その結果、ハイグロマイシン抵抗性を示す再分化当代の
植物体(T0)を77個体得た。
に、DNA分析による選抜を行った。アンチセンスwaxy
cDNA遺伝子の検出には、以下の2つのオリゴヌクレオ
チド:5'-ttggcggtgatgtacttgtcc -3'(配列番号5)、
5'- aggcagcactcgaggctccta-3'(配列番号6)をプライ
マーとして用いた。1次分析は省き、2次分析(T1集団
の分析)から開始した。1系統あたり15〜20粒供試した
DNA分析の結果、3つの1因子遺伝・選抜マーカー分
離型T0の候補系統を選抜した。
に3つの候補T0から、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子
を含まないT1を新たな系統として育成し、T2種子を採
取した。その種子(胚乳部分)を1個体当たり10粒用い
て、フリアーノの方法に準じてアミロース含量を求め
た。なお、検量線はポテトアミロース(タイプIII、シ
グマ)を標本として作成した。結果を表6に示す。
換イネに比べてアミロース含量が低い個体が6系統みら
れ、最もアミロース含量が低いT51-3-4では、非形質転
換イネの85 %程度の含有量だった(表6)。以上より、
本発明の方法を用いてアンチセンス waxy cDNA 遺伝子
を導入することにより、イネの胚乳中のアミロース含量
を低下させ、食味の向上が期待できるコメを作出しうる
ことが確認できた。
去された組換え植物を作出することができる。とりわ
け、本発明の方法により、経済的に重要品種であるが、
従来遺伝子導入効率が低かったイネ品種「コシヒカリ」
を含む広範なイネ品種に対して、遺伝的に固定した実用
性の高い組換え体を効率よく作出することができる。
チナーゼをコードするcDNAを検出する為に使用したプラ
イマー。配列番号2:イネ花器由来キチナーゼをコード
するcDNAを検出する為に使用したプライマー。配列番号
3:ハイグロマイシン抵抗性遺伝子を検出する為に使用
したプライマー。配列番号4:ハイグロマイシン抵抗性
遺伝子を検出する為に使用したプライマー。配列番号
5:アンチセンスwaxy遺伝子cDNAを検出する為に使用し
たプライマー。配列番号6:アンチセンスwaxy遺伝子cD
NAを検出する為に使用したプライマー。
25Chiの構造を示す図である。
の様子を示す写真である。
25Wxaの構造を示す図である。
である。
ある。
Claims (7)
- 【請求項1】 選択マーカーを含まない組換え植物の作
出方法であって、以下(a)〜(d)の工程を含む前記
作出方法; (a)目的遺伝子および選択マーカーを植物に導入する
工程、(b)(a)の植物を自殖させる工程、(c)自
殖後代のDNA分析により、目的遺伝子を含み、かつ選
択マーカーを含まない植物個体を選抜する工程、(d)
(c)で選抜した植物個体を用いて、目的遺伝子による
形質の発現を検定する工程。 - 【請求項2】 工程(a)において、目的遺伝子および
選択マーカーの植物への導入がアグロバクテリウム属細
菌を介して行われる、請求項1記載の組換え植物の作出
方法。 - 【請求項3】 工程(c)において、DNA分析が目的
遺伝子および選択マーカーそれぞれに特異的にハイブリ
ダイズするプライマーを用いて行われる、請求項1また
は2に記載の植物の作出方法。 - 【請求項4】 組換え植物がイネである、請求項1〜3
のいずれか1項に記載の植物の作出方法。 - 【請求項5】 イネがイネ品種「コシヒカリ」であり、
かつ工程(a)において目的遺伝子および選択マーカー
が「コシヒカリ」の完熟種子から誘導開始後3週間以内
のカルスに導入される、請求項4記載の組換え植物の作
出方法。 - 【請求項6】 目的遺伝子がイネの花器由来キチナーゼ
をコードする遺伝子またはwaxy遺伝子のアンチセンス遺
伝子である、請求項4または5記載の組換え植物の作出
方法。 - 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか1項に記載の組
換え植物の作出方法により作出された組換え植物。
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