有機金属錯体構造体及びその製造方法、並びに、該有機金属錯体構造 体を用いた機能性膜、機能性複合材料、機能性構造体及び吸脱着センサー 技術分野
[0001] 本発明は、分子レベルの構造が制御され、ゲストの吸脱着 ·配列等を可能にするナ ノサイズの機能性細孔を規則的に配列した有機金属錯体構造体及びその製造方法 、並びに、該有機金属錯体構造体を用いた機能性膜、機能性複合材料、機能性構 造体及び吸脱着センサーに関する。
背景技術
[0002] 細孔を有する機能性材料としては、従来にお!ヽては活性炭ゃゼオライトが代表的 であったが、クリスタルエンジニアリングの急速な進歩により、近年では、金属と架橋 配位子とで構築された配位高分子によるナノサイズ細孔が注目されてきて ヽる(非特 許文献 1及び 2参照)。この配位高分子については、各種の有用な用途が考えられ、 その効率的な構築法が望まれている。この配位高分子は、金属錯体をナノレベルで 集積してなる構造を有するが、その効率的な構築法は未だ提供されて 、な 、のが現 状である。
前記配位高分子を得る方法としては、例えば、その構造体となる前記金属錯体の 材料である金属イオンと有機配位子とを混合する方法が考えられる。しかし、この場 合、固体結晶が一挙に形成されてしまい、前記配位高分子の結晶の成長 (サイズ、 次元等)を制御することができず、前記配位高分子の所望の結晶を得ることができな いという問題がある。
一方、近時、分子レベルでの吸着、配列等を利用したセンサー、新規材料の開発 などが注目されて 、るが、実用可能な技術は未だ提供されて 、な 、のが現状である
[0003] 非特許文献 1 : M. Kondo, S. Kitagawa, et. al:Angew. Chem. Int. Ed. , 36, 1725 (1997)
非特許文献 2 : S.— i. Noro, S. Kitagawa, M. Kondo and K. Seki:Angew.
Chem. Int. Ed. , 39, 2082 (2000)
発明の開示
[0004] 本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とす る。即ち、本発明は、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめと する各種分野における新規な材料、複合材料、膜、構造物等として好適に使用する ことができ、ゲストを効率的乃至選択的に吸着、脱離、配列等することができ、しかも その際に構造が破壊されることがなく極めて高機能な有機金属錯体構造体及びその 効率的な製造方法であってその結晶性 (サイズ、次元等)を容易に制御可能な製造 方法、並びに、該有機金属錯体構造体を用いたことにより、電子、磁気、吸着、触媒 、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野において好適に使用することが でき、高機能,高性能な、機能性膜、機能性複合材料、機能性構造体、及び、分子レ ベルでの検出乃至分析が可能であり高性能な吸脱着センサーを提供することを目的 とする。
[0005] 前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
< 1 > 金属イオンと、該金属イオンと結合可能な有機化合物と、該金属イオンと結 合可能なピラーリガンドと、該金属イオンと相互作用可能な有機ポリマーとを含有して なり、多孔質構造を有することを特徴とする有機金属錯体構造体である。該有機金属 錯体構造体においては、前記多孔質構造における細孔にゲストが吸着、脱離、配列 等される。その結果、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめと する各種分野における新規な材料、複合材料、膜、構造物等として、また、センサー 等の検知手段として好適である。該有機金属錯体構造体においては、前記金属ィォ ンと前記有機化合物と前記ピラーリガンドとにより構築される前記多孔質構造が、前 記有機ポリマーとコンポジットィ匕して、モルフォロジ一と大きさが制御される結果、前記 多孔質構造体における細孔の配向が制御されている。
< 2> 金属イオンと有機化合物とピラーリガンドとのモル比 (金属イオン:有機化合 物:ピラーリガンド)が、 2: 2: 1及び 1: 2: 1の 、ずれかである前記 < 1 >に記載の有 機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体にお!ヽては、 2: 2: 1及び 1: 2: 1 の!ヽずれかのモル比で含有されて!ヽる前記金属イオンと前記有機化合物と前記ビラ
一リガンドとにより、前記多孔質構造における細孔が規則正しく配列形成される。な お、前記ピラーリガンドカ 例えば 2つの分子が π— πスタッキングにより相互作用し ており、該 π— πスタッキングが解けた際に伸長可能である場合には、前記モル比が 1 : 2 : 1となる。
< 3 > 式: {[M Y L] ·χΗ 0}η及び {[MY L] ·χΗ 0}η (ただし、 Μは、金属イオン
2 2 2 2 2 2 2
を表し、 Υは、有機化合物を表し、 Lはピラーリガンドを表し、 X及び ηは、整数を表す 。;)、のいずれかで表される前記 < 1 >から < 2>のいずれかに記載の有機金属錯体 構造体である。該有機金属錯体構造体は、結晶水和物である。なお、前記ピラーリガ ンドが、例えば 2つの分子が π— πスタッキングにより相互作用しており、該 π— πスタ ッキングが解けた際に伸長可能である場合には、前記有機金属錯体構造体は、式 {[ MY L] ·χΗ 0}ηで表される。
2 2 2
<4> 多孔質構造が、一定の大きさの細孔が規則的に配列された構造である前記 く 1 >からく 3 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体 構造体においては、前記一定の大きさの細孔にゲストが選択的に吸着、脱離、配列 等される。その結果、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめと する各種分野における新規な材料、複合材料、膜、構造物等として、また、センサー 等の検知手段として好適である。
< 5 > 多孔質構造が、金属イオンと有機化合物とで形成された有機金属層の 2以 上の内の互いに隣接する 2つ力 長さ方向が略同向きにかつ略一定間隔で配列した ピラーリガンドにより連結された構造である前記 < 1 >から < 4 >のいずれかに記載 の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体においては、前記有機金属 層の複数が略並行に配置され、該有機金属層における互いに隣接する 2つが、これ らの層面に対して交差方向乃至略直交方向に長さ方向の向きが略配向した状態で 配列した前記ピラーリガンドにより、連結されている。その結果、前記有機金属層と前 記ピラーリガンドとにより画成された複数の細孔が規則的に配列されている。
< 6 > 多孔質構造において、互いに隣接する 2つのピラーリガンドと、該 2つのビラ 一リガンドに隣接しかつこれらと略平行に位置する 2つのピラーリガンドと、これら 4つ のピラーリガンドによって囲まれた有機金属層における領域とで画成されてなる複数
の細孔が、前記ピラーリガンドの配列方向に略平行な方向から見て略一定の大きさ である前記 < 5 >に記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体に おいては、複数の細孔が、前記ピラーリガンドの配列方向に略平行な方向から見て 略一定の大きさで開口しているため、この方向力 ゲストが該細孔に吸脱着、配列等 される。
< 7> 多孔質構造において、細孔が、刺激によりその大きさが変化可能な前記 < 1 >から < 6 >の ヽずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構 造体においては、該細孔の径よりもやや大きなゲストであっても該細孔に吸脱着、配 列等される。
< 8 > 有機金属層が、金属イオンと有機化合物とで形成される有機金属層構造単 位が架橋してなる構造を有してなり、
該有機金属層において、 2つの前記有機金属層構造単位における各金属イオンに 対し、これらの有機金属層構造単位とは別の一の前記有機金属層構造単位におけ る有機化合物と、別の他の前記有機金属層構造単位における有機化合物とが、それ ぞれ架橋して金属イオン二量体ユニットが形成された前記 < 4 >から < 7 >の 、ずれ かに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体においては、前記 金属イオン二量体ユニットにおいて前記有機金属層構造単位が互いに連結され、架 橋されてポリマー化し、その結果、前記有機金属層が形成される。
< 9 > 有機金属層の金属イオン二量体ユニットにおける、一の金属イオンに結合す る一のピラーリガンドの長さ方向の向きと、他の金属イオンに結合する他のピラーリガ ンドの長さ方向の向きと力 互いに異なる前記 < 5 >から < 8 >の!、ずれかに記載の 有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体においては、例えば、第一の 有機金属層における一方の面側に位置する第二の有機金属層と、該第一の有機金 属層とが前記一のピラーリガンドにより連結され、前記第一の有機金属層における他 方の面側に位置する第三の有機金属層と、該第一の有機金属層とが前記他のビラ 一リガンドにより連結されている。
< 10 > 金属イオンが、長周期型周期表における 6族元素から 12族元素の中から 選択される前記く 1 >からく 9 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体である。
該有機金属錯体構造体においては、該金属イオンに対し、前記有機化合物と、前記 ピラーリガンドとが結合して 、る。
< 11 > 金属イオンが、 2価の原子である前記 < 1 >から < 10>のいずれに記載の 有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体においては、該 2価の金属ィ オンに対し、前記有機化合物と、ピラーリガンドとが結合している。
< 12 > 金属イオンが、銅イオン、ロジウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、 パラジウムイオン及び亜鉛イオン力 選択される前記く 1 >からく 11 >のいずれに 記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体においては、これらの 金属イオンに対し、有機化合物と、ピラーリガンドとが結合している。
く 13 > 有機化合物が、金属イオンに架橋可能な架橋配位子である請前記く 1 > から < 12>のいずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造 体においては、該有機化合物がーの金属イオンに対して配位結合可能であると共に 、他の金属イオンに対して架橋可能である。
< 14 > 有機化合物が、ヘテロ芳香族化合物及びその誘導体から選択される前記 く 1 >からく 13 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯 体構造体においては、該有機化合物におけるヘテロ原子が一の金属イオンに対して 配位結合可能であると共に、該有機化合物における架橋性部が他の金属イオンに 対して架橋可能である。
く 15 > 有機化合物力 ピラジン 2, 3—ジカルボキシレートである前記く 1 >から < 14 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体 においては、該ピラジン 2, 3—ジカルボキシレートにおける窒素原子及び一の酸素 原子が一の金属イオンに対して配位結合可能であると共に、該ピラジン 2, 3—ジカ ルポキシレートにおける他の酸素原子が他の金属イオンに対して架橋可能である。 < 16 > 有機化合物及びピラーリガンドの親和性が、親水性及び疎水性から選択さ れる前記く 1 >からく 15 >に記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体 構造体においては、前記有機化合物及び前記ピラーリガンドの親和性が、共に親水 性であれば、これらにより形成される前記細孔の親和性も親水性となり、共に疎水性 であれば、前記細孔の親和性も疎水性となり、また、互いに異なる親和性であれば、
前記細孔の親和性は、前記有機化合物に近い領域と、前記有機化合物に近い領域 とで互いに逆の親和性を示す。
く 17 > 有機化合物及びピラーリガンドの親和性が、互いに親水性及び疎水性の いずれかである前記 < 1 >からく 16 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体で ある。該有機金属錯体構造体においては、前記有機化合物及び前記ピラーリガンド の親和性が、共に親水性であれば、これらにより形成される前記細孔の親和性も親 水性となり、共に疎水性であれば、前記細孔の親和性も疎水性となる。
< 18 > ピラーリガンド力 ヘテロ芳香族化合物を有してなる前記く 1 >からく 17 > の!ヽずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体にぉ ヽて は、該ピラーリガンドにおけるヘテロ芳香族化合物が前記金属イオンに対して相互作 用している。
< 19 > ピラーリガンド力 ヘテロ原子を両末端に有してなる前記く 1 >からく 18 > の!ヽずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体にぉ ヽて は、一端に位置する前記へテロ原子が一の金属イオンに対して相互作用し、他端に 位置する前記へテロ原子が他の金属イオンに対して相互作用している。
< 20 > ピラーリガンドが、ピラジン、ビビリジン、ァゾピリジン、ジピリジノレエチレン、 ジピリジルベンゼン、ジピリジルグリコール、ジピリジルェタン及びジピリジルプロパン から選択される前記く 1 >からく 19 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体で ある。該有機金属錯体構造体においては、これらのピラーリガンドにおける、一端に 位置する窒素原子が一の金属イオンに対して相互作用し、他端に位置する窒素原 子が他の金属イオンに対して相互作用している。
く 21 > ピラーリガンドが、伸縮可能及び変形可能の少なくとも 、ずれかである前記 < 1 >から < 20>いずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体 構造体においては、前記ピラーリガンドが伸縮可能及び変形可能の少なくともいず れかであるため、該有機金属錯体構造体の構造がフレキシブルであり、該有機金属 錯体構造体における細孔の大きさが増減可変である。
< 22 > ピラーリガンド力 刺激により伸縮可能である前記く 1 >からく 21 >のいず れかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体においては、前
記ピラーリガンドが刺激により伸縮可能及び変形可能の少なくともいずれかであるた め、該有機金属錯体構造体の構造がフレキシブルであり、該有機金属錯体構造体 における細孔に、例えば、該細孔の径よりもやや大きな径を有するゲストが吸着され ると、該ゲストの吸着による刺激により、前記細孔の大きさが増大する。
< 23 > ピラーリガンド力 2以上の有機ポリマーを有してなり、該 2以上の有機ポリ マーのうちの少なくとも 2つが互いに π— πスタッキングにより相互作用している前記 く 1 >からく 22>のいずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯 体構造体においては、前記ピラーリガンドが 2以上の有機ポリマーを有してなり、該 2 以上の有機ポリマーのうちの少なくとも 2つが互いに π— πスタッキングにより相互作 用しているため、該有機金属錯体構造体の構造がフレキシブルであり、例えば、該有 機金属錯体構造体における細孔に、該細孔の径よりもやや大きな径を有するゲスト が吸着されると、該ゲストの吸着による刺激により、前記 2つの有機ポリマー間の π— πスタツキングが解かれ、前記細孔の大きさが増大し、前記ゲストが前記細孔から脱 離すると、該ゲストの脱離による刺激により、前記 2つの有機ポリマーが再び互いに π πスタッキングにより相互作用し合い、前記細孔の大きさが元に戻る。
< 24 > 有機ポリマーが、イオン性ポリマー力も選択される前記く 1 >からく 23 >の ずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体にお!ヽては、 前記イオン性ポリマーが、該有機金属錯体構造体の構築時に前記金属イオンに相 互作用することにより、該金属イオンの前記有機化合物及び Ζ又は前記ピラーリガン ドとの反応性が変化する結果、その結晶性 (サイズ、次元等)が制御される。
< 25 > イオン性ポリマーが、カチオン性ポリマー、ァ-オン性ポリマー及び両性ポリ マーから選択される前記 < 24 >に記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属 錯体構造体においては、これらのイオン性ポリマーが、該有機金属錯体構造体の構 築時に前記金属イオンに相互作用して、該金属イオンの前記有機化合物及び Ζ又 は前記ピラーリガンドとの反応性が変化する結果、その結晶性 (サイズ、次元等)が制 御される。
< 26 > イオン性ポリマーが、ポリビュルスルホン酸ナトリウムである前記く 24>から < 25 >の!ヽずれかに記載の有機金属錯体構造体である。該有機金属錯体構造体
においては、前記ポリビュルスルホン酸ナトリウム力 該有機金属錯体構造体の構築 時に前記金属イオンに相互作用して、該金属イオンの前記有機化合物及び Z又は 前記ピラーリガンドとの反応性が変化する結果、その結晶性 (サイズ、次元等)が制御 される。
< 27 > 板状、粒状及びワイヤー状のいずれかの結晶である前記 < 1 >からく 26 >の 、ずれかに記載の有機金属錯体構造体である。
< 28 > ゲストの吸脱着及び配列の少なくともいずれかに用いられる前記 < 1 >から < 27 >の 、ずれかに記載の有機金属錯体構造体である。
< 29 > ゲストの選択的な吸脱着及び配列の少なくとも 、ずれかに用いられる前記 く 1 >からく 28 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体である。
く 30 > 前記く 1 >力らく 29 >の 、ずれかに記載の有機金属錯体構造体を含有 することを特徴とする機能性膜である。該機能性膜は、ゲストを吸脱着、配列等させる 機能を有する。
く 31 > 前記く 1 >からく 29 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体における 細孔に、ゲストを吸着乃至配列させたことを特徴とする機能性複合材料である。該機 能性複合材料においては、前記ゲストが規則的に配列されていることに起因する機 能、又は、前記ゲストが脱離することに起因する機能が付加されている。
< 32 > 前記く 1 >力 く 29 >の 、ずれかに記載の有機金属錯体構造体を基板 上に有してなることを特徴とする機能性構造体である。該機能性構造体にお!、ては、 前記有機金属錯体構造体が基板上に強い選択配向性を示す状態で配列されており 、高機能である。
< 33 > 有機金属錯体構造体における細孔に、ゲストが吸着乃至配列された前記 く 32 >に記載の機能性構造体である。該機能性構造体においては、前記ゲストが 規則的に配列されていることに起因する機能、又は、前記ゲストが脱離することに起 因する機能が付加されて 、る。
< 34 > 前記く 1 >からく 29 >のいずれかに記載の有機金属錯体構造体と、該有 機金属錯体構造体おける細孔にゲストが吸着されたことを検出する検出手段とを少 なくとも有してなることを特徴とする吸脱着センサーである。該吸脱着センサーにおい
ては、前記有機金属錯体構造体における細孔に検出標的である前記ゲストが吸脱 着すると、それを前記検出手段が検出し、その結果、該検出標的である前記ゲストの 存在が検出される。
< 35 > 金属イオンと、該金属イオンと結合可能な有機化合物と、該金属イオンと結 合可能なピラーリガンドと、該金属イオンと相互作用可能な有機ポリマーとを混合す ることを特徴とする有機金属錯体構造体の製造方法である。該有機金属錯体構造体 の製造方法においては、原料を単に混合するだけで、前記有機金属錯体が効率的 にかつその結晶性 (大きさ、次元等)が制御された状態で得られる。該有機金属錯体 構造体においては、前記金属イオンと前記有機化合物と前記ピラーリガンドとにより 構築される前記多孔質構造が、前記有機ポリマーとコンポジットィ匕して、モルフォロジ 一と大きさが制御される結果、小さな圧力等の刺激が加えられただけで、前記多孔 質構造体における細孔の配向が一定方向に容易に制御される。
く 36 > 混合が、 50°C以下で行われる前記く 35 >に記載の有機金属錯体構造体 の製造方法である。該有機金属錯体構造体の製造方法においては、高温に加熱す ることなく常温で原料を単に混合するだけで、前記有機金属錯体が効率的に得られ る。
< 37 > 混合が、攪拌により行われる前記く 35 >からく 36 >のいずれかに記載の 有機金属錯体構造体の製造方法である。該有機金属錯体構造体の製造方法にお いては、原料を単に攪拌するだけで、前記有機金属錯体が効率的に得られる。 < 38 > 有機ポリマーの混合時における配合量力 (有機ポリマーのモル Z金属ィ オンのモル)≥20、である前記く 35 >からく 38 >のいずれかである有機金属錯体 構造体の製造方法である。該有機金属錯体構造体の製造方法においては、前記有 機ポリマーと前記金属イオンとのモル比を 20以上にすると、一定の直径(100— 400 nm)の均一なナノワイヤ状の有機金属錯体構造体の結晶が効率的に得られる。 < 39 > 混合後に、得られた結晶乃至粉末に対し一方向から加圧する選択的配向 処理を行う前記 < 35 >から < 38 >の 、ずれかに記載の有機金属錯体構造体の製 造方法である。該選択配向処理を行うと、前記有機金属錯体構造体における細孔の 向きがランダムであっても、これが効果的に一定方向を向くように選択的に制御され
る。
<40 > 混合後に、得られた結晶乃至粉末に対し一方向から指で押して加圧する 選択的配向処理を行う前記く 35 >からく 38 >の 、ずれかに記載の有機金属錯体 構造体の製造方法である。該選択配向処理を指圧で行うと、前記有機金属錯体構 造体における細孔の向きがランダムであっても、これが効果的に一定方向を向くよう に選択的に制御される。
<41 > 金属イオンが、該金属イオンを含む化合物として配合される前記く 35 >か ら < 40 >の ヽずれかに記載の有機金属錯体構造体の製造方法である。該有機金 属錯体構造体の製造方法においては、前記金属イオンの原料供給、反応系での溶 解が容易である。
図面の簡単な説明
[図 1]図 1は、本発明の有機金属錯体構造体の反応式の一例を示す図である。
[図 2]図 2は、本発明の有機金属錯体構造体における細孔の一例を示す概念図であ る。
[図 3]図 3は、本発明の有機金属錯体構造体における細孔の一具体例を示す図であ る。
[図 4]図 4は、本発明の有機金属錯体構造体における細孔の一例(多孔質構造 CPL —1)を示す概念図である。
[図 5]図 5は、本発明の有機金属錯体構造体における細孔の一例(多孔質構造 CPL -1-5)を示す概念図である。
[図 6]図 6は、本発明の有機金属錯体構造体における有機金属層及びその連結状態 の一例を示す概念図である。
[図 7]図 7は、本発明の有機金属錯体構造体におけるピラーリガンドの一例を示す図 である。
[図 8A]図 8Aは、本発明の有機金属錯体構造体におけるピラーリガンドが伸長可能 な場合の一例の構造を示す概念図である。
[図 8B]図 8Bは、本発明の有機金属錯体構造体の細孔におけるメタンの吸脱着量とメ タンのガス圧を示すグラフである。
圆 9A]図 9Aは、本発明の有機金属錯体構造体におけるピラーリガンドが変形可能 な場合の一例の構造を示す概念図である。
圆 9B]図 9Bは、本発明の有機金属錯体構造体の細孔におけるメタノールの吸脱着 量とメタノールの圧力を示すグラフである。
[図 10]図 10は、本発明の有機金属錯体構造体 (図 3)の H O分子の吸脱着データを
2
示すグラフである。
[図 11]図 11は、本発明の有機金属錯体構造体 (図 3)の H O分子の吸脱着データを
2
示すグラフである。
[図 12]図 12は、本発明の有機金属錯体構造体 (図 3)のメタノール分子の吸脱着デ ータを示すグラフである。
[図 13]図 13は、前記有機ポリマーとしてポリビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量 (50当量)を変えて、かつ一日間攪拌して混合させた 後に得られた有機金属錯体構造体の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 1, 500) である。
[図 14]図 14は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量 (50当量)を変えて、かつ一日間攪拌して混合させた 後に得られた有機金属錯体構造体の結晶の TEM電子顕微鏡写真である。
[図 15]図 15は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量が 1当量の場合に得られた有機金属錯体構造体の結 晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 850)である。
[図 16]図 16は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量が 10当量の場合に得られた有機金属錯体構造体の 結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 1, 600)である。
[図 17]図 17は、前記有機ポリマーとしてポリビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量が 15当量の場合に得られた有機金属錯体構造体の 結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 900)である。
[図 18]図 18は、前記有機ポリマーとしてポリビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量が 20当量の場合に得られた有機金属錯体構造体の
結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 1, 500)である。
[図 19]図 19は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量が 0当量の場合 (比較例)に得られた有機金属錯体構 造体の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 7, 000)である。
[図 20]図 20は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量が 0当量の場合 (比較例)であって、一日間攪拌して混 合させた後に得られた有機金属錯体構造体の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 4, 000)である。
圆 21]図 21は、上述の多孔質構造 CPL-1を有する有機金属錯体構造体 (図 4)を 製造するためのスキームを表す図である。
[図 22]図 22は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量 (0当量、 1当量、 10当量、 15当量、 20当量、 30当量) を変えて、攪拌せずに混合させた後に得られた有機金属錯体構造体の結晶性の相 違について XRPDパターンを分析した結果のチャートである。
[図 23]図 23は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量 (0当量、 1当量、 10当量、 15当量、 20当量、 30当量) を変えて、かつ一日間攪拌して混合させた後に得られた有機金属錯体構造体の結 晶性の相違について XRPDパターンを分析した結果のチャートである。
[図 24]図 24は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量 (50当量)を変えて、かつ一日間攪拌して混合させた 後に得られた有機金属錯体構造体の結晶につ ヽて近赤外吸収スペクトルパターン を分析した結果のチャートである。
[図 25]図 25は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量 (50当量)を変えて、かつ一日間攪拌して混合させた 後に得られた有機金属錯体構造体の結晶につ 、て XRPDパターンを分析した結果 のチャートである。
[図 26]図 26は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量を 20当量として得られた有機金属錯体構造体の結晶
の SEM電子顕微鏡写真(左図が倍率: 11, 000、右図が倍率: 9, 000)である。
[図 27]図 27は、前記有機ポリマーとしてポリビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前 記金属イオンに対する添加量を 10当量として得られた有機金属錯体構造体の結晶 の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 8, 000)である。
発明を実施するための最良の形態
[0007] (有機金属錯体構造体)
本発明の有機金属錯体構造体は、金属イオンと、該金属イオンと結合可能な有機 化合物と、該金属イオンと結合可能なピラーリガンドと、該金属イオンと相互作用可能 な有機ポリマーとを含有してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の成分を有 してなり、多孔質構造を有する。
[0008] 前記有機金属錯体構造体にお!ヽては、前記金属イオンと前記有機化合物と前記ピ ラーリガンドとのモル比 (金属イオン:有機化合物:ピラーリガンド)が、略 2: 2: 1及び 略 1: 2: 1の!、ずれかであるのが好まし!/、。
前記モル比が略 2: 2: 1及び略 1: 2: 1の 、ずれかであると、前記多孔質構造にお いて、前記金属イオンと前記有機化合物とで形成される有機金属層の層面に対して 交差方向乃至略直交方向に前記ピラーリガンドが結合し、その結果、略均一な大き さ、形状等を有しかつ規則的に配列した多数の細孔を前記有機金属層と前記ピラー リガントとにより画成することができる。なお、前記ピラーリガンドカ 例えば 2つの分子 が π— πスタッキングにより相互作用しており、該 π— πスタッキングが解けた際に伸 長可能である場合には、前記モル比が略 1: 2 : 1となる。
[0009] 前記金属イオンと前記有機化合物と前記ピラーリガンドとのモル比 (金属イオン:有 機化合物:ピラーリガンド)の分析方法としては、特に制限はなぐ適宜選択した公知 の方法が挙げられるが、例えば、 X線構造解析法、元素分析法、などが好適に挙げ られる。
[0010] 前記有機金属錯体構造体としては、式: {[M Y L] ·χΗ 0}η、で表される結晶水
2 2 2 2
和物を含むのが好ましい。ただし、前記式において、前記 Μは、後述する金属イオン を表し、前記 Υは、後述する有機化合物を表し、前記 Lは、後述するピラーリガンドを 表し、前記 X及び前記 ηは、整数を表す。例えば、図 1上側に示す反応式のように、前
記金属イオンとして銅(Cu)を用い(原料としては、例えば Cu(C10 ) · 6Η Οを用い
4 2 2
)、前記有機化合物としてピラジン 2, 3—ジカルボキシレート (pydc)を用い (原料と しては、例えばピラジン 2, 3—ジカルボン酸ナトリウムを用い)、前記ピラーリガンドと してピラジン (Pyz)を用いた場合には、該有機金属錯体構造体は、式 {[Cu (pydc)
2 2
(pyz) ] ·χΗ 0}η、で表される。
2 2
なお、前記 Lが、 2以上の有機ポリマーのうちの少なくとも 2つが互いに π— πスタッ キング等により相互作用しており、伸長可能なピラーリガンドである場合、前記有機金 属錯体構造体は、式: {[MY L] ·χΗ 0}η、で表される結晶水和物を含むのが好ま
2 2 2
しい。ただし、前記式において、前記 M、 Y、 L、 x及び nは、上述した通りである。 前記有機金属錯体構造体が前記式で表される結晶水和物を含む場合には、該有 機金属錯体中に、大きさ、形状等が略均一な細孔が多数規則的に配列されてなる前 記多孔質構造が存在し、これらの細孔に所望のゲストを吸着、脱離、配列等させるこ とができる。その結果、該有機金属錯体構造体は、電子、磁気、吸着、触媒、発光、 医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野における新規な材料、複合材料、膜、構 造物等として好適に使用することができる。
[0011] 前記有機金属錯体の結晶の組成式の決定方法としては、特に制限はなぐ適宜選 択した公知の方法が挙げられるが、例えば、 X線構造解析法、元素分析法、などが 好適に挙げられる。
[0012] 多孔質構造
前記多孔質構造としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ る力 例えば、一定の大きさの細孔が規則的に配列された構造であるのが好ましい。 この場合、前記有機金属錯体構造体においては、前記一定の大きさの細孔に、任 意に又は選択的に所望のゲストを吸着、脱離、配列等させることができる。
[0013] 前記ゲストとしては、特に制限はなぐ用途や目的等に応じて適宜選択することがで き、例えば、原子、分子、などが挙げられる。前記原子としては、例えば、金属イオン などが挙げられる。前記分子としては、例えば、ガス (気体)分子、無機化合物分子、 有機化合物分子などが挙げられる。これらは、 1種単独で使用してもよいし、 2種以上 を併用してもよい。
前記ゲストとして、例えば、金属イオン等を選択すると、該ゲストが吸着乃至配列さ れた前記有機金属錯体構造体は電子分野、磁気分野、触媒分野、光学分野、医薬 分野、ドラッグデリバリーシステム分野等に好適に使用することができる。前記ゲストと して、例えば、ガス (気体)分子等を選択すると、前記有機金属錯体構造体はガス吸 蔵、ガスセンサー等に好適に使用することができる。
[0014] 前記多孔質構造の具体的構造としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択 することができるが、例えば、前記金属イオンと前記有機化合物とで形成された有機 金属の 2以上の内の互いに隣接する 2つ力 長さ方向が略同向きにかつ略一定間隔 で配列したピラーリガンドにより互いに連結された構造であるのが好ま U、。
このような具体的構造の概念図としては、図 2に示す通りであり、前記有機金属層( 図 2中の 2D sheetsとして示される層)と、前記ピラーリガント(図 2中の pillarとして示 される棒状分子)とにより、該有機金属層の複数どうしが互いに連結されて三次元の 多孔質構造(図 2中の 3D porous frameworkとして示される構造)などが挙げら れる。
[0015] 前記多孔質構造が前記有機金属錯体中に存在していることの分析方法としては、 特に制限はなぐ適宜選択した公知の方法が挙げられるが、例えば、 X線回折法、ガ ス吸着法、熱分析法 (重量、熱量)、などが好適に挙げられる。
[0016] 前記多孔質構造が、前記具体的構造である場合には、前記有機金属層の複数が 略並行に配置され、該有機金属層における互いに隣接する 2つが、これらの層面と 略直交方向に立設した状態で配列した前記ピラーリガンドにより連結されている結果 (図 2中段及び下段に示す構造単位参照)、前記有機金属層と前記ピラーリガンドと により囲まれて形成された細孔が複数規則的に配列されている。そして、該細孔の最 小単位は、隣接する 4つの前記ピラーリガンドと該ピラーリガンドで囲まれた前記有機 金属層の領域とで画成された空間となる(図 2中の 3D porous frameworkとして 示される構造及び図 3右の Porous Space per 2Cuとして示される直方体構造参 照)。
[0017] なお、前記多孔質構造が、図 3左及び図 6右に示す具体例の場合には、ピラーリガ ンド力 銅(Cu)及びピラジン 2, 3—ジカルボキシレート(pzdc)で形成された有機金
属層の層面と略直交方向に長さ方向が配向し、規則的に配列されており、その内の 隣接する 4つのピラーリガンドと、該ピラーリガンドで囲まれた前記有機金属層におけ る領域とで画成された空間が前記細孔の単位となる。
[0018] 前記多孔質構造がこのような具体的構造である場合、該多孔質構造における前記 細孔に、所望の前記ゲストを任意乃至選択的、かつ規則的に吸脱着乃至配列させる ことができ、該多孔質構造を有する前記有機金属錯体構造体を、分子 (ゲスト)吸着 剤、分子 (ゲスト)放出剤 (供給剤)、分子 (ゲスト)配列手段、分子 (ゲスト)を規則的に 配列させた複合材料等として、各種分野において好適に使用することができる。
[0019] 前記多孔質構造においては、互いに隣接する 2つのピラーリガンドと、該 2つのビラ 一リガンドに隣接しかつこれらと略平行に位置する 2つのピラーリガンドと、これら 4つ のピラーリガンドによって囲まれた前記有機金属層における領域とで画成されてなる 細孔の複数が、前記ピラーリガンドの配列方向に略平行な方向から見て略一定の大 きさであるのが好ましい。
[0020] 前記多孔質構造における細孔の大きさの具体例としては、図 5上段左側に示した 具体例 CPL— 1一 5においては、前記多孔質構造における複数の前記細孔が、前記 ピラーリガンドの配列方向に略平行な方向から見た場合に、以下の略一定の大きさ を有している。なお、これらの具体例においては、いずれも、前記金属イオンが銅(C u)であり、前記有機化合物がピラジン 2, 3—ジカルボキシレート (pydc)である。即 ち、図 4及び図 5上段左側に示した前記具体例 CPL— 1の場合、前記ピラーリガンド がピラジン(pyz)であり、約 4 X 6A2 (0. 4 X 0. 6nm2)であり、図 5上段中央に示した 具体例 CPL 2の場合、前記ピラーリガンドがビピリジン (bpy)であり、約 8 X 6A2 (0 . 8 X 0. 6nm2)であり、図 5上段右側に示した具体例 CPL— 3の場合、前記ピラーリ ガンドがジァザピレン(pyre)であり、約 8 X 3 A2 (0. 8 X 0. 3nm2)であり、図 5下段 左側に示した具体例 CPL— 4の場合、前記ピラーリガンドがァゾピリジン (azpy)であり 、約 10 X 6A2 (1 X 0. 6nm2)であり、図 5下段右側に示した具体例 CPL— 5の場合、 前記ピラーリガンドがジピリジルエチレン(dpe)であり、約 10 X 6A2 (1 X 0. 6nm2)で ある。
[0021] 前記細孔の大きさの測定方法としては、特に制限はなぐ適宜選択した公知の方法
が挙げられるが、例えば, X線回折法、ガス吸着法、などが好適に挙げられる。
[0022] 前記有機金属錯体構造体の前記多孔質構造における細孔の大きさが、前記ビラ 一リガンドの配列方向に略平行な方向から見て略一定の大きさであると、前記ゲスト の選択的な吸脱着や配列が可能となる。
[0023] 前記多孔質構造においては、前記細孔の大きさが、不変であってもよいし、可変で あってもよい。前記細孔が、刺激によりその大きさが変化可能な場合には、該有機金 属錯体構造体が硬 、結晶であっても、該結晶における細孔内をフレキシブル構造と なり、高機能となる。即ち、この場合、該有機金属錯体構造体においては、該細孔の 径よりもやや大きなゲストであっても該細孔に吸脱着、配列等が可能となるため、該 細孔の大きさの変化を公知の方法により検知乃至検出することにより、該細孔に対し て前記ゲストが吸脱着したこと、などを検知乃至検出可能となるため、該有機金属錯 体構造体をセンサー等の用途に好適に使用することができる。
[0024] 前記有機金属層としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ る力 例えば、前記金属イオンと前記有機化合物とで形成されているものが好適に挙 げられ、該金属イオンの 1つと該有機化合物の 1つとで形成された有機金属層構造 単位を複数有してなる(ポリマー化乃至架橋化した)ものが好適に挙げられる。
この場合、前記有機金属層においては、 2つの前記有機金属層構造単位における 各金属イオンに対し、これらの有機金属層構造単位とは別の一の前記有機金属層 構造単位における有機化合物と、別の他の前記有機金属層構造単位における有機 化合物とが、それぞれ架橋して金属イオン二量体ユニットが形成されて!ヽるのが好ま しい(図 6左の網目構造における Dcopper unit 参照)。前記有機金属錯体構造体 における前記有機金属層において、該複合ユニットが形成されていると、該複合ュ- ットにおいて、一の前記有機金属層構造単位における前記金属イオンと、他の前記 有機金属層構造単位における前記有機化合物(図 6左のビラジン 2, 3—ジカルボキ シレート (pzdc)参照)とが架橋 (ポリマー化)し、網目構造が形成される結果、所望の 広さの前記有機金属層を形成することができる。
[0025] 前記有機金属層の金属イオン二量体ユニットにおける 2つの前記金属イオンの内 の、一の金属イオンに結合する第一のピラーリガンドの長さ方向の向きと、他の金属
イオンに結合する第二のピラーリガンドの長さ方向の向きとが、略逆向きであるのが 好ましい。この場合、該有機金属錯体構造体においては、第一の前記有機金属層( 図 4及び図 6の 2D Layerと、これと平行して位置する層参照)における一方の面側 に位置する第二の有機金属層と、該第一の有機金属層とが前記一のピラーリガンド により連結され、前記一の有機金属層における他方の面側に位置する他の有機金 属層と、該一の有機金属層とが前記他のピラーリガンドにより連結されているため、該 有機金属層(図 5及び図 6中の 2D Layer参照)を、長さ方向が同向きに配向しかつ 規則的に配列した前記ピラーリガンドにより連結しつつ積層することができ、し力も該 有機金属層と前記ピラーリガンドとで画成される前記細孔の大きさも略均一にするこ とがでさる。
[0026] 金属イオン (金属原子)
前記金属イオン (金属原子)としては、特に制限はなぐ 目的に応じて適宜選択する ことができるが、例えば、長周期型周期表における 6族元素力 12族元素の中から 選択される元素のイオン (原子)が挙げられる。
これらは、 1種単独で使用してもよいし、 2種以上を併用してもよい。これらの中でも 、前記金属イオン二量体ユニットを形成可能とする観点からは、 2価以上の金属ィォ ンが好ましぐ規則的な有機金属層を形成する観点力 は、 2価の金属イオンがより 好ましぐ銅イオン、ロジウムイオン、クロムイオン、モリブデンイオン、パラジウムイオン 及び亜鉛イオン力 選択される金属イオンが更に好ましぐ入手が容易で、銅イオン が特に好ましい。
なお、前記金属イオンは、前記有機金属錯体構造体の製造の際の原料としては、 該金属イオンを含む塩等の化合物を使用してもよい。
[0027] 前記金属イオンが前記有機金属錯体構造体中に含まれて!/、ることの分析方法とし ては、特に制限はなぐ適宜選択した公知の方法が挙げられるが、例えば、吸収スぺ タトル測定、元素分析法、などが好適に挙げられる。
[0028] 有機化合物
前記有機化合物としては、特に制限はなぐ 目的に応じて適宜選択することができ るが、例えば、前記金属イオンに架橋可能な架橋配位子が好適に挙げられる。該有
機化合物が前記架橋配位子である場合には、前記金属イオンと前記有機化合物と で前記金属錯体層を形成することができる。
前記有機化合物の具体例としては、比較的安定で高強度な前記有機金属層を形 成する観点からは、環状構造を有する化合物が好適に挙げられる。
前記環状構造を有する化合物としては、例えば、脂環式化合物及びその誘導体、 芳香族化合物及びその誘導体、ヘテロ芳香族化合物及びその誘導体、などが挙げ られる。これらは、 1種単独で使用してもよいし、 2種以上を併用してもよい。これらの 中でも、ヘテロ芳香族化合物及びその誘導体から選択されるものが好ましい。この場 合、前記有機金属錯体構造体においては、該有機化合物におけるヘテロ原子が一 の金属イオンに対して配位結合可能であると共に、該有機化合物における架橋性部 が他の金属イオンに対して架橋可能である。
[0029] 前記有機化合物が、前記へテロ環式化合物及びその誘導体である場合、その具 体例としては、ピリジン 2, 3—ジカルボキシレート (pzdc)、などが好適に挙げられる これらは、 1種単独で使用してもよい、 2種以上を併用してもよい。これらの中でも、 ピリジン 2, 3—ジカルボキシレート(pzdc)が好ましい。この場合、該ピリジン 2, 3- ジカルボキシレート (pzdc)における窒素原子が一の金属イオンに対して配位結合可 能であると共に、該ピリジン 2, 3—ジカルボキシレート(pzdc)におけるカルボキシレ ート部が他の金属イオンに対して架橋可能である。
[0030] 前記有機化合物が前記有機金属錯体構造体中に含まれて!/ヽることの分析方法とし ては、特に制限はなぐ適宜選択した公知の方法が挙げられるが、例えば、元素分析 法、 X線回折法、などが好適に挙げられる。
[0031] ーピラーリガンドー
前記ピラーリガンドとしては、特に制限はなぐ 目的に応じて適宜選択することがで きるが、例えば、前記有機金属層間に安定な前記細孔を形成する観点からは、環状 構造を有する化合物が好適に挙げられる。これらは、 1種単独で使用してもよいし、 2 種以上を併用してもよい。
前記環状構造を有する化合物としては、例えば、脂環式化合物及びその誘導体、
芳香族化合物及びその誘導体、ヘテロ芳香族化合物及びその誘導体、などが挙げ られる力 これらの中でも、ヘテロ芳香族化合物及びその誘導体から選択されるもの が好まし!/、。前記ピラーリガンドが前記へテロ芳香族化合物及びその誘導体力 選 択される場合、該ヘテロ芳香族化合物等が前記金属イオンに対して相互作用乃至 架橋し、 3次元構造が形成され、前記多孔質構造が構築される。
また、前記ピラーリガンドとしては、ヘテロ原子を両末端に有してなる化合物が好ま しぐ該ピラーリガンドが前記へテロ環式ィ匕合物及びその誘導体である場合には、該 ヘテロ芳香族化合物におけるヘテロ原子が該ピラーリガンドの両末端に有する化合 物が好ましい。該ピラーリガンドが、該ヘテロ原子を両末端に有してなる化合物であ る場合、一端に位置する前記へテロ原子が一の金属イオンに対して相互作用乃至 架橋し、他端に位置する前記へテロ原子が他の金属イオンに対して相互作用乃至 架橋し、 3次元構造が形成され、前記多孔質構造が構築される。
[0032] 前記ピラーリガンドの具体例としては、ピラジン(図 7下段の pyz)、ビビリジン(図 7下 段の bpy)、ァゾピリジン(図 7下段の azpy)、ジピリジルエチレン(図 7下段の dpe)、ジ ピリジルベンゼン(図 7下段の dpb)、ジピリジルグリコール(図 7下段の dpyg)、ジピリ ジルェタン(図 7下段の dpetha)、ジピリジルプロパン(図 7下段の dppro)、ジヒドロキ シ安息香酸 (dhba)、エチレングリコールの両端にピリジンが結合したもの(dpyg)、 などが挙げられる。
なお、前記ピラーリガンドが前記ピラジン(図 7下段の pyz)である場合、前記有機金 属錯体構造体は、図 5上段左側に示した前記具体例 CPL - 1の構造を有し、平板結 晶として好適に得られる。前記ピラーリガンドがビピリジン(図 7下段の bpy)である場 合、前記有機金属錯体構造体は、図 5上段中央に示した具体例 CPL - 2の構造を有 し、ワイヤー状結晶として好適に得られる。
これらは、 1種単独で使用してもよいし、 2種以上を併用してもよい。前記ピラーリガ ンドがこれらの場合、これらのピラーリガンドにおける、一端に位置する窒素原子が一 の金属イオンに対して相互作用し、他端に位置する窒素原子が他の金属イオンに対 して相互作用乃至架橋し、 3次元構造が形成され、前記多孔質構造が構築される。
[0033] 本発明においては、図 2中段に示す通り、前記ピラーリガンドの分子長 (長さ方向の
長さ)を適宜変更し選択することにより、前記細孔の大きさ (容積、高さ、深さ)を自在 に変更することができ、該ピラーリガンドを目的に応じて、例えば該細孔に吸脱着等 させる前記ゲストの種類、大きさ等に応じて適宜選択することによって、所望の大きさ の細孔が規則的に配列した前記多孔質構造を設計することができる。また、同様に、 前記有機金属層における前記有機化合物の分子構造、分子長等によっても、前記 細孔の大きさ (容積、幅)を自在に変更することができ、該有機化合物を目的に応じ て、例えば該細孔に吸脱着等させる前記ゲストの種類、大きさ等に応じて適宜選択 することによって、所望の大きさの細孔を規則的に配列した前記多孔質構造を設計 することができる。し力も、前記有機金属錯体構造体においては、前記金属イオンと 前記有機化合物と前記ピラーリガンドとにより構築される前記多孔質構造が、前記有 機ポリマーとコンポジットィ匕して、モルフォロジ一と大きさが制御される結果、小さな圧 力等の刺激が加えられただけで、前記多孔質構造体における細孔の配向が一定方 向に容易に制御される。
[0034] なお、例えば、前記ピラーリガンドとして、分子長 (長さ方向の長さ)の異なる化合物 を 2種以上用いて前記有機金属錯体構造体を設計すると、ある前記有機金属層の 2 層は、分子長のより短いピラーリガンドによって連結し、別の前記有機金属層の 2層 は、分子長のより長いピラーリガンドによって連結することができ、前記有機金属錯体 構造体における前記金属層の層間距離を、使用した前記ピラーリガンドの種類数に 応じて変化乃至変更させることができる。
[0035] 前記ピラーリガンドは、通常、その長さは不変であるが、伸縮可能及び変形可能の 少なくとも 、ずれかであってもよ!/、。
前記ピラーリガンドが伸縮可能及び変形可能の少なくとも 、ずれかである場合、前 記有機金属錯体構造体が硬い結晶であるにも拘らず、その内部構造はフレキシブル なものとなり、該有機金属錯体構造体における前記細孔の大きさが増減可変となり、 高機能 ·高性能な前記有機金属錯体構造体が得られる。なお、伸長可能及び変形 可能の少なくともいずれかである前記ピラーリガンドの中でも、刺激により伸長可能及 び変形可能の少なくともいずれかであるものが好ましい。そして、該刺激としては、特 に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記細孔に前記
ゲストが吸脱着された際に該ゲストから受ける圧力、分子間力などが好適に挙げられ る。
前記ピラーリガンドが前記刺激により伸縮可能及び変形可能の少なくともいずれか である場合、前記細孔に、例えば、該細孔の径よりもやや大きな径を有する前記ゲス トが吸着されると、該ゲストの吸着による刺激 (前記ピラーリガンドに加えられる加圧力 •押圧力)により、該ピラーリガンドが伸長及び変形の少なくともいずれかする結果、 前記細孔の大きさが増大する。逆に、該ゲストが前記細孔から脱離すると、該ゲスト の脱離による刺激 (前記ピラーリガンドに加えられる加圧力 ·押圧力の解除)により、 前記ピラーリガンドが伸長状態から元の状態に戻る結果、前記細孔の大きさが元に 戻る。
[0036] 前記ピラーリガンドが伸長可能なものの具体例としては、 2以上の有機ポリマーを有 してなり、該 2以上の有機ポリマーのうちの少なくとも 2つが互いに、例えば、 π— πス タツキング、水素結合などにより相互作用しているものが好適に挙げられる。
この場合、前記ピラーリガンドにおける前記 π— πスタッキング、水素結合等の相互 作用の維持又は解除により、該有機金属錯体構造体における前記細孔の構造がフ レキシブルとなり、該細孔の大きさ (容積、高さ、深さ)が可変となる。そして、例えば、 前記細孔に、該細孔の径よりもやや大きな径を有する前記ゲストが吸着されると、該 ゲストの吸着による刺激により、前記 2つの有機ポリマー間の π— πスタツキング、水 素結合等の相互作用が解かれ、前記ピラーリガンドが伸長し、前記細孔の大きさ (容 積、高さ、深さ)が増大する。一方、前記ゲストが前記細孔力 脱離すると、前記 2つ の有機ポリマーが再び互いに π— πスタッキング、水素結合等により相互作用し合い 、前記ピラーリガンドが元の長さに戻り、前記細孔の大きさが元に戻る。
[0037] 図 8Α及び図 8Βは、前記有機金属錯体構造体における、前記ピラーリガンドが、 2 以上の有機ポリマーが π— πスタツキングにより相互作用してなる場合の例である。こ こでは、前記有機金属層は、前記金属イオンとしての銅 (II)と、前記有機化合物とし ての 4, 4' ビビリジンとで形成されている。該有機金属層のうちの隣接する 2層につ いて見てみると、そのうちの一の有機金属層に前記ピラーリガンドとしてのジヒドロキ シ安息香酸 (dhba)の一端が結合して 、るが、他の有機金属層には該ジヒドロキシ安
息香酸 (dhba)における他端は結合していない。一方、前記他の有機金属層には前 記ジヒドロキシ安息香酸 (dhba)とは別のジヒドロキシ安息香酸 (dhba)の一端が結合 して 、るが、前記一の有機金属層には該ジヒドロキシ安息香酸 (dhba)の他端は結合 していない。該一の有機金属層と該他の有機金属層との間で、該一の有機金属層に 結合した前記ジヒドロキシ安息香酸 (dhba)と、該他の有機金属層に結合した前記ジ ヒドロキシ安息香酸 (dhba)とが、入れ子構造になっており、互いのへテロ芳香族環 構造における π電子と π電子とがスタツキングした状態にある。図 8Αに示す有機金 属錯体構造体においては、前記ピラーリガンドが、 2つの前記ジヒドロキシ安息香酸( dhba)が互いに π— πスタツキングにより相互作用してなる、見かけ上 1つの構造体 である。このピラーリガンドは、前記細孔に刺激、例えば、該細孔にその径よりもやや 大きな径を有するゲストが吸着されることによる刺激が加えられると、前記 π— πスタッ キングの相互作用を解き、伸長することができる。その結果、前記細孔の大きさが可 変となる。なお、該有機金属錯体構造体の組成は、 [Cu (dhba) (4, 4' -bpy) ]、で
2
表される。
実際、図 8Aに示す有機金属錯体構造体に対し、温度 298Kで、ガス圧を徐々に上 げていきながらメタン (ガス)を吸脱着させてみると、図 8Bに示すようなグラフが得られ る。即ち、まず、前記有機金属錯体構造体に対し、ガス圧を上げていきながらメタン( ガス)を吸着させる。該有機金属錯体構造体における前記細孔の大きさは、該メタン の分子よりも小さいため、ガス圧が 8atm未満の低いうちは該メタンの分子は前記細 孔に吸着されない。ところが、ガス圧が 8atm以上となると、該メタンによる前記細孔へ の加圧力乃至押圧力の刺激により、前記ピラーリガンドを構成する 2つの前記ジヒドロ キシ安息香酸 (dhba)による π— πスタッキングの相互作用が解け、該ピラーリガンド が伸長する。その結果、前記細孔の大きさが前記メタンを吸着可能な大きさに増大し 、メタンの分子が前記細孔に急激に吸着される。一方、逆に、ガス圧を徐々に下げて いくと、前記メタンが前記細孔から徐々に脱離していくが、前記吸着の場合と異なり、 ガス圧 8atmを境に急激に前記メタンが脱離することはな 、。前記細孔における前記 メタンの吸着量とメタンのガス圧との関係を示す図 8Bのグラフでは、前記メタンの吸 着のトレンドと脱離のトレンドとがー致しておらず、ヒステリシスを示す力 このヒステリ
シスは、前記ピラーリガンドが伸長可能な構造を有しており、前記有機金属錯体構造 体における前記細孔の大きさが変化し、全体の結晶構造が変化したことに起因して いる。
[0039] 前記ピラーリガンドが変形可能なものの具体例としては、例えば、その構造の一部 に変形可能な柔らかい分子を有するものなどが好適に挙げられる。該分子としては、 特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、鎖状分子など が挙げられ、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられ る。これらは、 1種単独で使用してもよいし、 2種以上を併用してもよい。これらの中で も、エチレングリコールが好ましい。変形可能なピラーリガンドの具体例としては、両 端にピリジンが結合したエチレングリコール (dpyg)、などが好適に挙げられる。
この場合、前記ピラーリガンドにおける前記変形可能な柔らかい分子により、該有 機金属錯体構造体における前記細孔の構造がフレキシブルとなり、該細孔の大きさ( 容積、高さ、深さ)が可変となる。そして、例えば、前記細孔に、該細孔の径よりもやや 大きな径を有する前記ゲストが吸着されると、該ゲストの吸着による刺激により、前記 変形可能な柔らかい分子が屈曲構造力も伸長構造に変化し、その結果、前記ピラー リガンドが伸長し、前記細孔の大きさ (容積、高さ、深さ)が増大する。一方、前記ゲス トが前記細孔から脱離すると、前記変形可能な柔らかい分子が伸長構造から屈曲構 造に変化し、その結果、前記ピラーリガンドが元の長さに戻り、前記細孔の大きさが 兀こ民る
[0040] 図 9A及び図 9Bは、前記有機金属錯体構造体における、前記ピラーリガンドが、そ の構造の一部に変形可能な柔らかい分子を有してなる場合の例である。ここでは、前 記有機金属層は、前記金属イオンとしての銅 (II)と、前記有機化合物としての 4, 4' ビビリジンとで形成されている。該有機金属層のうちの隣接する 2層は、前記ピラーリ ガンドとしての、両端にピリジンが結合したエチレングリコール (dpyg)により連結され ている。図 9Aに示す有機金属錯体構造体においては、前記ピラーリガンドが、その 一部に変形可能なエチレングリコールを有して 、るため、該有機金属錯体構造体に おける前記細孔に刺激、例えば、該細孔にその径よりもやや大きな径を有するゲスト が吸着されることによる刺激が加えられると、前記エチレングリコールの分子が伸長し
、その結果、前記細孔の大きさが可変となる。
[0041] 実際、図 9Aに示す有機金属錯体構造体に対し、温度 298Kで、圧力 (P/P 0 )を徐 々に上げていきながらメタノール蒸気を吸脱着させてみると、図 9Bに示すようなダラ フが得られる。即ち、まず、前記有機金属錯体構造体に対し、圧力 (PZP 0 )を上げて
V、きながらメタノール蒸気を吸着させる。該有機金属錯体構造体における前記細孔 の大きさは、該メタノールの分子よりも小さいため、圧力(PZP )が
0 0. 2未満の低いう ちは該メタノールの分子は前記細孔に吸着されない。ところ力 圧力(PZP )が
0 0. 2 以上となると、該メタノールによる前記細孔への加圧力乃至押圧力の刺激により、前 記ピラーリガンドを構成するエチレングリコールが屈曲構造力 伸長構造に変化し、 該ピラーリガンドが伸長する。その結果、前記細孔の大きさが前記メタノールを吸着 可能な大きさに増大し、メタノールの分子が前記細孔に急激に吸着される。一方、逆 に、圧力(PZP )を徐々に下げていくと、前記メタノールが前記細孔から徐々に脱離
0
していくが、前記吸着の場合と異なり、圧力(PZP 0 )0. 2を境に急激に前記メタノー ルが脱離することはな 、。前記細孔における前記メタノールの吸着量とメタノールの 圧力(PZP )との関係を示す図 9Bのグラフでは、前記メタノールの吸着のトレンドと
0
脱離のトレンドとがー致しておらず、ヒステリシスを示す力 このヒステリシスは、前記ピ ラーリガンドが変形可能な構造を有しており、前記有機金属錯体構造体における前 記細孔の大きさが変化し、全体の結晶構造が変化したことに起因している。
[0042] 前記ピラーリガンドが前記有機金属錯体構造体中に含まれて 、ることの分析方法と しては、特に制限はなぐ適宜選択した公知の方法が挙げられるが、例えば、元素分 析法、 X線回折測定法、などが好適に挙げられる。
[0043] 前記有機化合物及び前記ピラーリガンドの親和性としては、特に制限はなぐ 目的 に応じて適宜選択することができ、親水性、疎水性のいずれであってもよい。
前記有機化合物及び前記ピラーリガンドの親和性が、共に親水性であれば、これら を構成要素とする前記細孔の内部の親和性も親水性となり、共に疎水性であれば、 前記細孔の内部の親和性も疎水性となり、また、互いに異なる親和性であれば、前 記細孔の内部の親和性は、前記有機化合物に近い領域と、前記有機化合物から離 れた領域とで互!ヽに逆の親和性を示す。
[0044] 後者の場合、即ち前記細孔の内部にお ヽて異なる親和性を示す領域が存在する 場合の例としては、例えば、図 3左に示すように、前記金属イオンとしての銅 (Cu)及 び前記有機化合物としてのピラジン 2, 3—ジカルボキシレート(pzdc)で形成された 前記有機金属層(図 3中の Cu— pzyc Layer)は、水素結合サイト(プロトンを受容体 )が存在し、親水性であり、互いに対向する該有機金属層どうしを連結する前記ビラ 一リガンドとしてのジピリジルェタン(dpe)は、疎水性である。このため、これらにより 画成された前記細孔にぉ 、ては、前記有機金属層側は親水性的な親和性を示し、 該有機金属層から離れた中央部付近では疎水性的な親和性を示す。
[0045] 図 3に示す細孔に対し、温度 298Kで、圧力(PZP )を徐々に上げていきながら水
0
蒸気を吸脱着させてみると、図 10及び図 11に示すようなグラフが得られる。即ち、ま ず、前記有機金属錯体構造体に対し、圧力 (PZP 0 )を上げていきながら水分子を吸 着させる。該水分子は、圧力(PZP 0 )が、 0. 19未満では前記細孔に吸着されず、 0
. 19付近で第一次の吸着が起こり、 0. 48付近で第二次の吸着が起こり、 0. 74付近 で第三次の吸着が起こる。
これは、水分子が親水性の極性分子であるのに対し、前記細孔が、前記有機金属 層側は親水性を示し、中央付近は疎水性を示す両親媒性を示すことから、前記第一 次の吸着時に前記水分子が前記細孔における親水性領域に吸着され、前記第二次 の吸着時に前記水分子が前記細孔における親水性領域と疎水性領域との境界領域 に吸着され、前記第三次の吸着時に前記水分子が前記細孔における疎水性領域に 吸着されたことを示して 、る。
[0046] 図 3に示す細孔に対し、温度 298Kで、圧力(PZP )を徐々に上げていきながらメ
0
タノール蒸気を吸脱着させてみると、図 12に示すようなグラフが得られる。即ち、まず 、前記有機金属錯体構造体に対し、圧力 (PZP 0 )を上げていきながらメタノール分 子を吸着させる。該メタノール分子は、圧力(PZP )が、 0. 2未満では前記細孔に吸
0
着されず、 0. 2付近で急激な吸着が起こり、前記細孔内へのメタノール分子の吸着 が完了する。
これは、上述の水分子の場合とは異なり、前記メタノール分子が、親水性を示す水 酸基部分と疎水性を示すメチル基部分とを有し、分子としては両親媒性を示すため、
吸着時に、該メタノール分子における、親水性を示す水酸基部分が前記細孔内で親 水性を示す側 (前記有機金属層側)に位置し、疎水性を示すメチル基部分が前記細 孔内で疎水性を示す中央付近に位置するように、前記細孔内で自己配列しつつ吸 着されたことを示している。
[0047] 一有機ポリマ一一
前記有機ポリマーとしては、前記金属イオンと相互作用(配位結合、静電相互作用 など)可能である限り、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ、例え ば、イオン性ポリマー、などが挙げられる。
本発明の有機金属錯体構造体においては、前記イオン性ポリマーが、該有機金属 錯体構造体の構築時に前記金属イオンに相互作用することにより、該金属イオンの 前記有機化合物及び Z又は前記ピラーリガンドとの反応性が変化する結果、その結 晶性 (サイズ、次元等)が制御される。
[0048] 前記イオン性ポリマーとしては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することが でき、例えば、カチオン性ポリマー、ァ-オン性ポリマー、両性ポリマーなどが挙げら れる。
前記カチオン性ポリマーとしては、アンモ-ゥム基を有するものが好適に挙げられ、 具体的には、ポリジァリルジメチルアンモ -ゥムなどが好適に挙げられる。
前記ァニオン性ポリマーとしては、例えば、アクリル酸基、スルホン酸基、カルボキ シレート基などを有するものが好適に挙げられ、具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム 、ポリスルホン酸、などが好適に挙げられる。
前記両性ポリマーとしては、例えば、両性界面活性剤、ベタインィ匕合物、などが挙 げられる。
これらは、 1種単独で使用してもよいし、 2種以上を併用してもよい。これらの中でも 、前記有機金属錯体構造体の結晶性 (サイズ、次元等)の制御性に優れる点で、前 記ァニオン性ポリマーが好ましぐ前記ポリビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)がより 好ましい。
前記有機ポリマーの分子量としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択する ことができ、例えば、重量平均分子量で、数万一数十万程度であるのが好ましい。
前記有機ポリマーの重量平均分子量が、前記数値範囲内にあると、前記有機金属 錯体分子の構築時に前記有機ポリマーが前記金属原子に効果的に相互作用して、 該金属原子の前記有機化合物及び Z又は前記ピラーリガンドとの反応性が変化す る結果、その結晶性 (サイズ、次元等)が所望に制御可能となる。
[0049] 前記有機ポリマーが前記有機金属錯体構造体中に含まれて 、ることの分析方法と しては、特に制限はなぐ適宜選択した公知の方法が挙げられるが、例えば、元素分 析法、 IR分析法、 X線光電子分光測定法、などが好適に挙げられる。
[0050] その他の成分
前記その他の成分としては、特に制限はなぐ本発明の効果を害さない範囲におい て、目的に応じて適宜選択し、使用することができる。
[0051] 結晶
本発明の有機金属錯体構造体は、結晶として得ることができ、該結晶としては、特 に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ、例えば、図 13及び図 14に示 すワイヤー状、図 15—図 20に示す板状、粒状、などが挙げられる。
前記結晶の大きさとしては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ る力 前記板状の場合には、例えば、その厚みが、 0. 1一 5 m程度であり、その板 面の最大径が、 2— 100 m程度であり、前記粒状の場合には、例えば、その平均 粒径が、 0. m程度であり、前記ワイヤー状の場合には、例えば、その長さが 、 2— 100 μ m程度であり、その直径が、 0. l—ΐ μ m程度である。
[0052] 用途
本発明の有機金属錯体構造体は、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分 析等をはじめとする各種分野における新規な材料、複合材料、膜、構造物等として 好適に使用することができ、ゲスト (標的)の効率的乃至選択的な吸着、脱離、配列 等に特に好適に使用することができ、後述する本発明の機能性膜、機能性複合材料 、機能性構造体、吸脱着センサーに特に好適に使用することができる。
[0053] (有機金属錯体構造体の製造方法)
本発明の有機金属錯体構造体は、本発明の有機金属錯体構造体の製造方法によ り特に好適に製造することができる。以下、本発明の有機金属錯体構造体の製造方
法について説明する。
本発明の有機金属錯体構造体においては、前記金属イオンと、該金属イオンと結 合可能な有機化合物と、該金属イオンと結合可能なピラーリガンドと、該金属イオンと 相互作用可能な有機ポリマーとを混合することを含み、好ましくは該混合後に生成し た結晶に選択配向処理することを含み、更に必要に応じて適宜選択したその他の処 理を含む。
[0054] —混合—
前記混合の温度としては、例えば、加熱のためのエネルギー、コスト、設備等が不 要であり、安全であり、産業上極めて有利な点で、 50°C以下が好ましぐ 40°C以下が より好ましぐ室温付近が特に好ましい。
前記混合の時間としては、特に制限はなぐ 目的に応じて適宜選択することができ る。
前記混合の方法としては、特に制限はなぐ 目的に応じて適宜選択することができ 、例えば、単なる原料の添加のみによる混合 (無攪拌混合)や、攪拌 (攪拌混合)、等 が挙げられる。該攪拌としては、例えば、エアフロー式、プロペラ式、スターラー式、 手動式などの 、ずれであってもよ 、が、エアフロー式が好まし!/、。
前記混合の際の原料の添加順序としては、特に制限はなぐ 目的に応じて適宜選 択することができ、例えば、全部を同時に添加してもよいし、順番をつけて添加しても よいが、始めに前記金属イオンの原料を添加し、次に前記有機ポリマーの原料を添 加し、次に前記ピラーリガンドの原料を添加し、最後に前記有機化合物の原料を添 加する態様などが挙げられる。前記混合の際の原料の添加順序、前記混合の方法 等によって、得られる前記有機金属錯体の結晶性 (大きさ、次元)を制御することがで きる。
[0055] 前記混合の際における原料の配合量としては、モル比(前記金属イオン:前記有機 化合物:前記ピラーリガンド)が 2: 2: 1及び 1: 2: 1の 、ずれかとなるように選択するの が好ましい。この場合、原料の無駄が少なくなり、収率良く前記有機金属錯体構造体 が得られる点で有利である。なお、前記原料のモル比を 1 : 2: 1となるように選択する と、前記ピラーリガンドが、 2つの分子が π— πスタッキングしてなる構造の前記有機
金属錯体構造体が得られる。
[0056] 前記混合の際における前記有機ポリマー(例えば、ポリビュルスルホン酸ナトリウム( PVSA)など)の配合量としては、特に制限はなぐ得られる結晶の形状等や目的に 応じて適宜選択することができるが、例えば、図 5上段中央に示した具体例 CPL— 1 の場合、即ち前記ピラーリガンドがピラジン (pyz)である場合などにおいては、前記ポ リビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)等の前記有機ポリマーの配合量を増やして!/ヽ くと、平板結晶が容易にかつ収率良く得られ、その結晶サイズ (板面の大きさ)が大き くなり、一方、図 5上段中央に示した具体例 CPL— 2の場合、即ち前記ピラーリガンド がビビリジン (bpy)である場合などにぉ 、て、前記ポリビニルスルホン酸ナトリウム(P VSA)等の前記有機ポリマーの配合量を増やしていき、特に、(有機ポリマーのモル Z金属イオンのモル)≥ 20であると、一定の直径(100— 400nm)の均一なナノワイ ャ状の結晶が容易にかつ収率良く得られる。
[0057] なお、前記混合の際、前記金属イオンの原料としては、反応系での溶解の容易等 の観点から、該金属イオンの塩などの該金属イオンを含む化合物などが好適に使用 することができる。該金属イオンの塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、ス ルホン酸塩、カルボン酸塩、などが挙げられる。これらは、 1種単独で使用してもよい し、 2種以上を併用してもよい。なお、前記有機化合物、前記ピラーリガンド、前記有 機ポリマーについては、そのものを原料として好適に使用することができる。
[0058] 選択配向処理
前記選択配向処理は、前記混合後に生成した結晶に対し、その配向に選択的配 向性を持たせる処理であり、その方法としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜 選択した方法が挙げられるが、例えば、前記混合後に得られた結晶乃至粉末に対し 一方向から加圧する方法などが好適に挙げられる。
前記混合後に得られた結晶乃至粉末に対する、一方向からの加圧は、例えば、前 記結晶乃至粉末を上力 手や指などで押す等して軽く加圧すること等により行うこと ができる。
前記加圧の大きさとしては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ る力 前記結晶乃至粉末を破壊しない程度である。
以上の選択配向処理を行うことにより、前記有機金属錯体構造体における細孔の 向きが当初はランダムであっても、これを効果的に一定方向を向くように選択的に制 御することができる。
[0059] その他の処理
前記その他の成分としては、特に制限はなぐ本発明の効果を害さない範囲におい て、目的に応じて適宜選択し、使用することができ、例えば、前記混合の後に行う遠 心分離処理、洗浄処理、乾燥処理などが挙げられる。
前記遠心分離処理としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することがで き、例えば、遠心分離機を用いた遠心分離処理などが挙げられる。
前記洗浄処理としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ、 例えば、水洗などが挙げられる。
前記乾燥処理としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ、 例えば、風乾、乾燥器による乾燥などが挙げられる。
[0060] 本発明の有機金属錯体の製造方法では、特に加熱等が不要であり、室温にて、該 有機金属錯体構造体の原料を単に攪拌等して混合するだけで、前記有機金属錯体 が効率的に得られるため、極めて省エネルギーで製造効率に優れる。本発明の有機 金属錯体の製造方法にぉ ヽては、前記混合により前記有機金属錯体構造体が生成 する際、前記金属イオンと前記有機化合物と前記ピラーリガンドとにより構築される前 記多孔質構造が、前記有機ポリマーとコンポジットィ匕することにより、モルフォロジ一と 大きさが制御される結果、小さな圧力等の刺激が加えられただけで、前記多孔質構 造体における細孔の配向が一定方向に容易に制御される。そして、前記混合後に前 記選択配向処理を行うと、前記有機金属錯体構造体における細孔の向きが一定方 向を向くように選択的に制御される。
[0061] (機能性膜)
本発明の機能性膜は、本発明の有機金属錯体構造体を含有してなり、更に必要に 応じて適宜選択したその他の成分を含有してなる。
前記その他の成分としては、本発明の機能性膜の機能を害さない範囲で使用する ことができ、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バイン
ダー榭脂、などが挙げられる。該バインダー榭脂としては、例えば、水溶性バインダ 一、水分散性バインダー、水不溶性バインダー、などが挙げられる。
前記機能性膜の製造方法としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択した 公知の方法に従って製造することができ、例えば、前記有機金属錯体構造体を含有 する塗布液を調製した後、該塗布液を基板上に塗布し、乾燥等することにより、製造 することができる。
本発明の機能性膜は、前記ゲスト (標的)を吸脱着、配列等させるのに好適に使用 することができる。
[0062] (機能性複合材料)
本発明の機能性複合材料は、本発明の前記有機金属錯体構造体における前記細 孔に、前記ゲスト (標的)を吸着乃至配列させてなり、更に必要に応じて適宜選択した その他の処理をしてなる。
前記ゲストの吸着乃至配列の方法としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選 択することができ、例えば、一定の温度条件下で、前記ゲスト分子 (好ましくは気体分 子の状態のもの、超臨界流体分子の状態のもの)の圧力を徐々に上昇させる方法、 などが挙げられる。
前記その他の処理としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することがで き、例えば、前記洗浄処理、前記乾燥処理、などが挙げられる。
本発明の機能性複合材料においては、前記ゲストが規則的に配列されていること に起因する機能、又は、前記ゲストが脱離することに起因する機能が付加されている ため、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野 において好適に使用することができる。
[0063] (機能性構造体)
本発明の機能性構造体は、本発明の前記有機金属錯体構造体を基板上に有して なり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
前記基板としては、その材料、大きさ、形状、構造等については特に制限はなぐ 目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコン基板等が好適に挙げられる
本発明の機能性構造体にお!ヽては、本発明の前記有機金属錯体構造体における 前記細孔内に前記ゲストが吸着乃至配列されて 、てもよ 、。
前記その他の部材としては、特に制限はなぐ該機能性構造体の用途等に応じて 適宜選択することができる。
本発明の機能性構造体にお!ヽては、前記有機金属錯体構造体が前記基板上に強 い選択配向性を示す状態で配列されているため、高機能であり、特にセンサー等の 分析用途等に好適に使用することができる。
本発明の機能性構造体は、前記有機金属錯体における前記細孔内に前記ゲスト が吸着乃至配列されている場合には、該ゲストが吸着乃至配列されていることに起 因する機能、又は、前記ゲストが脱離することに起因する機能が付加されているため 、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野にお いて好適に使用することができる。
[0064] (吸脱着センサー)
本発明の吸脱着センサーは、本発明の前記有機金属錯体構造体と、該有機金属 錯体構造体おける前記細孔にゲストが吸着されたことを検出する検出手段とを少なく とも有してなり、更に適宜選択したその他の手段を有してなる。
前記検出手段としては、特に制限はなぐ目的に応じて適宜選択することができ、 例えば、前記有機金属錯体構造体の電気抵抗値の変化等を検知することにより、前 記ゲストが該有機金属錯体構造体に吸着乃至そこから脱離したことを検出する手段 、などが挙げられる。
前記その他の手段としては、特に制限はなぐ用途等に応じて適宜選択することが できる。
本発明の吸脱着センサーにおいては、前記有機金属錯体構造体における細孔に 検出標的である他の分子が吸着する。すると、それを前記検出手段が検出する。そ の結果、該検出標的である他の分子の存在が検出される。
[0065] 以下、本発明の実施例について説明する力 本発明はこの実施例に何ら限定され るものではない。
図 21に示すような反応により、上述の多孔質構造 CPL— 1を有する有機金属錯体
構造体(図 4)を常温 (25°C)で製造した。即ち、まず、前記金属イオンとして銅 (II)を 用いるため、その原料として Cu(NO ) · 2. 5Η Οの 8. 3mMを用い、これに対し、
3 2 2
前記有機ポリマーとしてポリビニルスルホン酸ナトリウム (PVSA) (アルドリッチ社製) を添加した。次に、前記ピラーリガンドとしてのピラジン (pyz)の 0. 21Mを添加し、続 いて、前記有機化合物としてのピラジン 2, 3—ジカルボキシレート(pzdc)の 8. 3m Mを添加し、これを一日間静置させた状態で常温(25°C)にて混合させた。その後、 遠心分離を行い、結晶を 2回水洗することにより、前記多孔質構造 CPL— 1を有する 有機金属錯体構造体 (図 4)を製造した。
[0066] なお、得られた有機金属錯体構造体の結晶は、 X線回折測定法により、式: {[Cu (
2 pzdc) (pyz) ] ·χΗ 0}η 、で表されることを確認した。また、該有機金属錯体構造
2 2 2
体中に、前記ポリビュルスルホン酸ナトリウム (PVSA)が含まれていることを、 X線光 電子分光法、 IR測定法により確認した。また、得られた有機金属錯体構造体が、図 4 に示すような多孔質構造 (前記 CPL— 1)を有していることを、 X線回折測定法により 分析し、確認した。その結果、該多孔質構造においては、互いに隣接する 2つのビラ 一リガンドと、該 2つのピラーリガンドに隣接しかつこれらと略平行に位置する 2つのピ ラーリガンドと、これら 4つのピラーリガンドによって囲まれた有機金属層における領域 とで画成されてなる複数の細孔が、前記ピラーリガンドの配列方向に略平行な方向 から見て、図 4に示すような構造を有しており、該細孔が略一定の大きさ、 4 Χ 6Α (0 . 4 X 0. 6nm2)であった。
[0067] 図 22は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前記金 属イオンに対する添カ卩量 (0当量、 1当量、 10当量、 15当量、 20当量、 30当量)を変 えて、一日間攪拌して混合させた後に得られた有機金属錯体構造体の結晶性の相 違について XRPDパターンを分析した結果である。図 22の右欄の数値力 前記添加 量を意味する。なお、最下行の 30当量は、 1ヶ月間静置後のデータである。前記ポリ ビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の添カ卩量が、 1当量、 10当量、 15当量、 20当量 、及び 30当量の場合が、本発明の実施例に該当し、 0当量の場合が比較例に該当 する。得られた有機金属錯体構造体の平板結晶の粒径は、前記ポリビニルスルホン 酸ナトリウム(PVSA)の添カ卩量力^)当量の場合には 3 /z mであり、 1当量の場合には 1
であり、 10当量の場合には 50 /z mであり、 15当量の場合には 70 mであり、 2 0当量の場合には 80 μ mであった。
XRPDパターンのチャートにおいては、 OkOのピークが強調され、かつ他のピーク 力 、さくなつてくるほど、結晶内の前記細孔の配向が揃っていることを意味する。
[0068] 図 15は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前記金 属イオンに対する添加量が 1当量の場合 (実施例)に得られた有機金属錯体構造体 の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 850)である。図 16は、前記有機ポリマーとし てポリビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前記金属イオンに対する添カ卩量が 10当 量の場合 (実施例)に得られた有機金属錯体構造体の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 1, 600)である。図 17は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリ ゥム(PVSA)の前記金属イオンに対する添加量が 15当量の場合 (実施例)に得られ た有機金属錯体構造体の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 900)である。図 18 は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前記金属ィォ ンに対する添加量が 20当量の場合 (実施例)に得られた有機金属錯体構造体の結 晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 1, 500)である。前記ポリビニルスルホン酸ナトリ ゥム(PVSA)の前記金属イオンに対する添加量が多くなるほど、大きな板状結晶が 得られていた。
なお、図 19は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の 前記金属イオンに対する添加量が 0当量の場合 (比較例)に得られた有機金属錯体 構造体の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 7, 000)である。
[0069] また、図 23は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の 前記金属イオンに対する添加量 (0当量、 1当量、 10当量、 15当量、 20当量、 30当 量)を変えて、かつ一日間攪拌して混合させた後に得られた有機金属錯体構造体の 結晶性の相違にっ 、て XRPDパターンを分析した結果である。図 23の右欄の数値 1S 前記添加量を意味する。前記ポリビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の添カロ量 力 1当量、 10当量、 15当量、 20当量、及び 30当量の場合力 本発明の実施例に 該当し、 0当量の場合が比較例に該当する。
XRPDパターンのチャートにおいては、 OkOのピークが強調され、かつ他のピーク
力 、さくなつてくるほど、結晶内の前記細孔の配向が揃っていることを意味する。 なお、図 20は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の 前記金属イオンに対する添加量が 0当量の場合 (比較例)であって、一日間攪拌して 混合させた後に得られた有機金属錯体構造体の結晶の SEM電子顕微鏡写真倍率 :4, 000である。
[0070] 図 24は、前記ピラーリガンドとしてのピラジン (pyz)をビビリジン (bpy)に変え、前記 有機ポリマーとしてポリビニルスルホン酸ナトリウム (PVSA)の前記金属イオンに対す る添加量 (50当量)を変えて、かつ一日間攪拌して混合させた後、得られた有機金属 錯体構造体の結晶に対し、手で上カゝら軽く加圧したものにっ ヽて近赤外吸収スぺク トルパターンを分析した結果である。
[0071] 図 25は、同じ有機金属錯体構造体の結晶について粉末 X線回折パターンを分析 した結果である。図 25の下側のチャート (得られた有機金属錯体構造体の結晶に対 し、手で上力も軽く加圧した場合)では、 OkOのピークが強調されており、結晶内の前 記細孔の配向が揃って 、ることを意味して 、る。
[0072] 図 13は、同じ有機金属錯体構造体の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 1, 500 )であり、図 14は、同じ有機金属錯体構造体の結晶の TEM電子顕微鏡写真である。 前記ポリビニルスルホン酸ナトリウム (PVSA)を添加して攪拌して混合すると、ワイヤ 一状結晶が得られていた。そして、このワイヤー状結晶は、結晶成長が異方的である ために、前記ポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)を添加せずに得られたバルタ 結晶とは異なる近赤外吸収スペクトルパターンを示し(図 24参照)、また、このワイヤ 一状結晶は、前記ポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)を添加せずに得られたバ ルク結晶とは異なる XRPDパターンを示し(図 25中の下方に位置するグラフ)、平面 に沿って並び易!、と!/、う選択配向性を示す。
[0073] 図 26は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前記金 属イオンに対する添加量を 20当量として得られたワイヤー状の有機金属錯体構造体 の結晶の SEM電子顕微鏡写真 (左図が倍率: 11, 000、右図が倍率: 9, 000)であ る。図 27は、前記有機ポリマーとしてポリビュルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前記 金属イオンに対する添加量を 10当量として得られた有機金属錯体構造体の結晶の
SEM電子顕微鏡写真 (倍率: 8, 000)である。これらの SEM電子顕微鏡写真から、 前記有機ポリマーとしてポリビニルスルホン酸ナトリウム(PVSA)の前記金属イオンに 対する添加量が 20当量以上であると、ワイヤー状の有機金属錯体構造体の結晶が 得られていることが半 IJる。
[0074] 本発明によると、従来における問題を解決することができ、電子、磁気、吸着、触媒 、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野における新規な材料、複合材料 、膜、構造物等として好適に使用することができ、ゲストを効率的乃至選択的に吸着 、脱離、配列等することができ、し力もその際に構造が破壊されることがなく極めて高 機能な有機金属錯体構造体及びその効率的な製造方法であってその結晶性 (サイ ズ、次元等)を容易に制御可能な製造方法、並びに、該有機金属錯体構造体を用い たことにより、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各 種分野において好適に使用することができ、高機能'高性能な、機能性膜、機能性 複合材料、機能性構造体、及び、分子レベルでの検出乃至分析が可能であり高性 能な吸脱着センサーを提供することができる。
産業上の利用可能性
[0075] 本発明の有機金属錯体構造体は、電子、磁気、吸着、触媒、発光、医薬、担体、分 析等をはじめとする各種分野における新規な材料、複合材料、膜、構造物等として、 センサー等の検知手段として好適に利用可能である。
本発明の有機金属錯体構造体の製造方法は、本発明の有機金属錯体構造体を 効率的にその結晶性 (サイズ、次元等)を制御しつつ製造するのに好適に利用可能 である。
本発明の機能性膜、機能性複合材料、又は機能性構造体は、電子、磁気、吸着、 触媒、発光、医薬、担体、分析等をはじめとする各種分野における新規な材料、複合 材料、膜、構造物等として、ゲスト (標的)の吸着手段、ゲスト (標的)の配列手段、セ ンサ一等の検知手段として好適に利用可能である。
本発明の吸脱着センサーは、ゲスト (標的)の分子レベルでの分析、例えば、ガス検 出、不純物検出、毒性分子検出、診断装置などとして好適に利用可能である。