JP2004285315A - 多孔性配位不飽和金属錯体 - Google Patents

多孔性配位不飽和金属錯体 Download PDF

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浩史 山本
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Abstract

【課題】低分子のみならず一般的な化合物も反応基質として取り込むことができ、且つ触媒活性または分子保持機能の高い多孔性配位不飽和金属錯体を提供する。
また、本発明は、上記のような作用効果を享有する当該錯体の製造方法、当該錯体の触媒としての使用方法、並びに多孔性配位不飽和金属錯体を構成するための金属錯体ユニットおよび有機配位子を提供するものである。
【解決手段】本発明の多孔性配位不飽和金属錯体は、金属および有機配位子で構成された金属錯体ユニットが架橋金属を介して連結されたものであり、該連結によって一次元または三次元の空孔が形成されており、該空孔の孔径が10Å以上であり、且つ該金属錯体ユニット中の金属が配位不飽和状態にあるものである。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属錯体ユニットが架橋金属を介して連結されている多孔性配位不飽和金属錯体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
また、本発明は、上記多孔性配位不飽和金属錯体を構成するための金属錯体ユニットおよび有機配位子として有用な化合物に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
「金属錯体」とは配位子と金属との複合体であり、高い触媒作用を有し、また、好適な反応場を提供するという作用等を有する。斯かる特性は、反応性が高い反面、不安定であるという性質を示す金属が錯体内で安定に存在できることや、配位子が特定のコンフォメーションをとることによって発揮される。このように、金属錯体は高い有用性を示すことから、従来から多くの研究が行なわれてきた。
【0004】
例えば、複数配位能を有する金属が、本来あるべき箇所に配位子が配位していない状態である所謂「配位不飽和」状態のまま錯体内に保持されている「配位不飽和金属錯体」の研究が行なわれている。この配位不飽和金属錯体内の金属は、配位不飽和であるが故に高い反応性を示し、本来はその反応性故に安定に存在することが困難である。しかし、配位子を工夫することにより配位不飽和状態のまま錯体内で安定化せられ、高触媒活性を示すこととなる。
【0005】
非特許文献1および2には、この様な配位不飽和金属錯体であり且つ空孔を有するものが開示されており、特定化合物の貯蔵等に利用され得ることが示唆されている。
【0006】
しかし、非特許文献1の記載によれば、これら金属錯体はCHClを速やかに取り込むことができる一方で、C,CCl,C12は取り込みが遅い。即ち、これら非特許文献に記載されている金属錯体が基質として意図しているものは、低分子化合物の中でも小さいもののみであった。
【0007】
また、非特許文献3には、孔の頂点ではなく孔壁に配位不飽和金属が配置する多孔性の金属錯体が記載されている。
【0008】
しかし、非特許文献3に記載の金属錯体が有する孔の大きさは15×5Åであり、その形状は孔というよりもスリットというべきものである。これでは、低分子はともかく一般的な化合物を基質として取り込むことはできない。実際、非特許文献3に記載されている基質分子(錯体内に取り込まれる化合物)は、ジメチルホルムアミド(DMF)と水分子のみである。
【0009】
上述した様に、多孔性金属錯体に関しては、その形状の興味深さから主に学術的研究が為されてきた。しかし、斯かる金属錯体を実際に応用しようとした技術もある。例えば特許文献1には、特定の空隙を有することにより、特定分子を収納し保持することができる金属錯体が開示されている。この錯体は、一定構造を有する層が構成成分により連結されるという積層構造をとるが故に一定の空隙を有し、当該空隙に特定分子を取り込むことができるという特性を発揮する。しかしながら、この錯体が有する空隙は非常に狭いものであり、酸素やメタンガス等の小分子しか取り込むことができないという欠点を有する。また、構成成分である金属イオンは、所謂「配位飽和」状態にあるので、高い触媒活性は望めない。
【0010】
その上、従来の多孔性金属錯体では水素結合により形成されているものがあり、安定性など強度に問題があった。
【0011】
ところで、金属錯体の構成要素である有機配位子としては、サレンタイプのものが知られている。例えば、非特許文献4には、サレンタイプのルテニウム配位不飽和錯体が開示されており、この錯体が、過酸化水素と共にDNA鎖を切断することが記載されている。しかし、非特許文献4には、サレンタイプの有機配位子を用いて多孔性金属錯体を構築する旨は、記載も示唆もされていない。
【0012】
【非特許文献1】
チェンら,「Cu(ATC)・6HO:多孔性有機金属錯体におけるオープンメタルサイトのデザイン(ATC:1,3,5,7−アダマンタンテトラカルボキシレート)」,ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサェティ,第122巻,第11559−11560頁(2000年)(B.Chen, et al, 「Cu(ATC)・6HO : Design of Open Metal Sites in Porous Metal − Organic Crystals (ATC: 1,3,5,7−Adamantane Tetracarboxylate)」, J.Am.Chem.Soc., 122, pp.11559−11560(2000))
【非特許文献2】
エッダウディら,「モジュール化学:多孔性で且つ強固な金属有機カルボキシレート骨格のデザインのために用いられる二次的ビルディングユニット」,アカウンツ・オブ・ケミカル・リサーチ,第34巻,第319−330頁(2001年)(M.Eddaoudi, et al, 「Modular Chemstry : Secondary Building Units as a Basis for the Design of Highly Porous and Robust Metal − Organic Carboxylate Frameworks」, Acc.Chem.Res., 34, pp.319−330(2001))
【非特許文献3】
野呂真一郎ら,「基質の配位結合部位が孔壁に存在し得る新規な多孔性配位結合ポリマー」,ケミカル・コミュニケーションズ,第222−223頁(2002年)(S.Noro, et al, 「New microporous coordination polymer affording guest−coordination sites at channel walls」, Chem.Comm., pp.222−223(2002))
【特許文献1】
特開平9−227571号公報(請求項1)
【非特許文献4】
チェンら,「DNA鎖の切断に利用される新規な水溶性4,4−二置換ルテニウム(III)−サレン複合体」,ジャーナル・オブ・ザ・チャイニーズ・ケミカル・ソサイエティ,第45巻,第611−617頁(1998年)(C−C.Cheng, et al, 「Novel Water−Soluble 4,4−Disubstituted Ruthenium(III)−Salen Complexes in DNA Stranded Scission」, J.Chin.Chem.Soc., 45, pp.611−617(1998))
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
これら上記知見に関わらず、従来、低分子化合物のみならず一般的な化合物を基質とすることが可能であり、且つ高活性を発揮し得る様な多孔性の配位不飽和金属錯体は知られていなかった。
【0014】
そこで、本発明が解決すべき課題は、所定の大きさの空孔を有し低分子化合物のみならず一般的な化合物を基質とすることができ、且つ配位不飽和金属が充分にその機能を発揮できることから高活性を示し得る様な多孔性の配位不飽和金属錯体およびその製造方法を提供し、更に当該錯体の触媒としての使用方法と当該錯体を構築するための金属錯体ユニットおよび有機配位子を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、多孔性金属錯体中で金属の配位不飽和状態を安定に保ち、その触媒活性能を充分に発揮せしめることができ、且つ一定以上の大きさを有する空孔を構築できる条件について鋭意研究を重ねた。
【0016】
その結果、層状またはスリット状の空隙しか構築できず基質とされ得るのは小分子化合物のみ、或いは配位不飽和金属が充分にその触媒能を発揮できないという先行技術の欠点は、触媒能を発揮すべき金属と有機配位子を結合する金属の両方が、有機配位子中同一構造の部位に結合することに由来することを見出した。つまり、先ず、触媒能を発揮すべき配位不飽和金属を有機配位子内で担持し、次いで、架橋金属を用いて別構造を有する部位(配位ドナー部位)で有機配位子を結合すれば、配位不飽和金属が孔壁に存在し得、且つ有機配位子の大きさがそのまま空孔の大きさに反映できる様な多孔性配位不飽和金属錯体を容易に構築でき得ることを見出して、本発明を完成した。
【0017】
即ち、本発明に係る多孔性配位不飽和金属錯体は、
金属および有機配位子で構成された金属錯体ユニットが架橋金属を介して連結されたものであり、
該連結によって空孔が形成されており、
該空孔の孔径が10Å以上であり、且つ
該金属錯体ユニット中の金属が配位不飽和状態にあることを特徴とする。
【0018】
上記多孔性配位不飽和金属錯体にあっては、上記有機配位子中、上記金属に配位する部位の少なくとも1つが15族元素であるものが好ましい。窒素原子やリン原子等の周期律表中の15族元素は金属に対する配位能にすぐれており、有機配位子内で金属を配位不飽和状態で安定に保持できるからである。
【0019】
上記有機配位子としては、下記式(I)で表わされる化合物が好適である。当該化合物は金属に対する配位能に優れることから金属を配位不飽和状態で安定に担持することができ、また、当該化合物を使用すれば、孔径が10Å以上の空孔を有する金属錯体を容易に構築できることが、後述する実施例により実証されているからである。
【0020】
【化7】
Figure 2004285315
【0021】
[式中、
Aは、単結合若しくは二重結合を示すか、または存在せず、
Xは、C−C10単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基αを1〜4個有する)、または含窒素ヘテロアリール基を示し、
Yは、水酸基、アミノ基、チオール基、ジ(C−Cアルキル)アミノ基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、またはジアリールホスフィノ基を示し、
およびRは、同一または異なって、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、またはシアノ基を示すか、或いはR、R、それぞれに隣接した炭素原子およびAが一体となった下記部分構造が、C−C22単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)またはC−C環状炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)を示し、
【0022】
【化8】
Figure 2004285315
【0023】
αは、カルボキシル基、含窒素ヘテロアリール基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、ジアリールホスフィノ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、およびチオール基よりなる群から選択される基を示し、
βは、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、およびシアノ基よりなる群から選択される基を示す。]。
【0024】
また、本発明に係る多孔性配位不飽和金属錯体の製造方法は、
2つの配位ドナーを有し該ドナー間の距離が10Å以上である有機配位子と金属を反応させて、該金属が配位不飽和状態にある金属錯体ユニットを調製し、
該金属錯体ユニットまたはその溶液を、架橋金属またはその溶液と混合することによって、該架橋金属を介して該金属錯体ユニットを連結することを特徴とする。斯かる製造方法によれば、配位不飽和金属が孔壁に存在し、且つ所定の大きさを有する空孔が存在する本発明の多孔性配位不飽和金属錯体を容易に構築でき得る。
【0025】
更に、本発明に係る使用方法は、上記多孔性配位不飽和金属錯体を触媒として用いることを特徴とする。本発明の多孔性配位不飽和金属錯体は、低分子化合物のみならず一般的な化合物をも基質とし得、且つ高い触媒活性を発揮し得ることから、当該使用方法は非常に有用性が高い。
【0026】
本発明に係る金属錯体ユニットは、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体を構成するためのものであり、下記式(II)で表わされることを特徴とする。上述した様に、当該金属錯体ユニットを用いれば、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体を容易に構築することができる。
【0027】
【化9】
Figure 2004285315
【0028】
[式中、
AおよびXは、前述したものと同義を示し、
Mは、配位不飽和状態にある金属原子を示し、
Y’は、酸素原子、NH基、硫黄原子、ジ(C−Cアルキル)アミノ基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、またはジアリールホスフィノ基を示し、
’およびR’は、同一または異なって、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、またはシアノ基を示すか、或いはR、R、それぞれに隣接した炭素原子およびAが一体となった下記部分構造が、C−C22単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)またはC−C環状炭化水素基(βを1〜4個有していてもよい)を示す
【0029】
【化10】
Figure 2004285315
]。
【0030】
有機配位子中のYが水酸基,アミノ基またはチオール基である場合、有機配位子が金属に配位して金属錯体ユニットを形成するに際しては、水酸基等の水素原子が脱離して金属に配位すると考えられる。尚、ジ(C−Cアルキル)アミノ基,ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基およびジアリールホスフィノ基は、そのまま金属に配位することができる。
【0031】
上記のR’とR’の定義では、R’とR’の一方が水素原子である場合は、他方は水素原子でないことが好ましい。
【0032】
また、本発明の有機配位子は、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体を構成するためのものであり、下記式(III)で表わされることを特徴とする。上述した様に、当該有機配位子は、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体の構成成分として非常に有用である。
【0033】
【化11】
Figure 2004285315
【0034】
[式中、A,X,Y,R’およびR’は、前述したものと同義を示す。]。
【0035】
本願における用語の定義は、以下に示す通りである。
【0036】
金属の「配位不飽和」状態とは、当然あるべき箇所に配位子がないために、そのままでは不安定で直ちに反応基質等と結合する性質を示す金属が、「有機配位子」に配位されることによって、錯体内で配位座が残存しているままに保持されている状態をいう。従って、本発明における「金属錯体ユニット」とは、金属が特定の有機配位子に配位している金属錯体において、当該金属が「配位不飽和状態」となっているものをいう。
【0037】
本発明の「金属錯体ユニット」の構成成分である「金属」は、上記の「配位不飽和状態」となり得る特性を有する金属であれば特に限定されないが、このような金属の例としては、例えばV,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Nb,Mo,Ru,Rh,Pd,Cd,Ir,Pt,Ti,Zr,Al,Tl等を挙げることができる。
【0038】
但し、遷移金属の種類によっては、Vのように、酸素原子等がさらに配位することによって配位飽和の状態で有機配位子内に安定化されるものもある。しかし、この場合においても、金属−酸素等間のπ電子が当該酸素原子等に引き寄せられていることによって、金属は配位不飽和類似の状態に保たれており、その活性化状態は維持されている。本願に係る配位不飽和状態の「金属」には、この様な配位不飽和類似の特性を示すことができる金属も含まれる。
【0039】
また、当該配位不飽和金属に水やその他の溶媒等の低分子が配位することによって、見かけ上配位飽和の状態になる場合がある。この場合であっても、水や低分子溶媒は反応基質と交換することによって、本発明の錯体はその特性を発揮することができる。この様な配位不飽和類似の状態も、本発明範囲に含まれる。
【0040】
更に、含窒素ヘテロアリール溶媒などの電子的にリッチな化合物が、複数ある配位不飽和座の少なくとも一つへ一時的に配位することによって、錯体の活性が向上することも考えられる。
【0041】
「金属錯体ユニット」中の金属は、少なくともその一部が配位不飽和状態(上記配位不飽和類似の状態を含む)であればよく、好ましくはその20%以上(更に好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上、最適には90%以上)が配位不飽和状態にあることが好ましい。配位不飽和状態にある金属は、配位飽和状態の金属に比べて高い活性を有しているからである。
【0042】
「金属錯体ユニット」内での金属の状態は、イオンである場合と原子のままである場合が考えられるが、両場合とも本発明の範囲に含まれる。
【0043】
一般に「配位子」とは、錯体中で中心原子(金属または金属イオン)に配位できる分子または分子団のことをいう。本発明の「有機配位子」は、少なくとも1つ以上の有機化合物であって、金属(金属イオンを含む)に配位し、これを配位不飽和の状態で安定に保持することができるものをいう。
【0044】
本発明では、配位不飽和状態の金属と有機配位子とで構成されたものを「金属錯体ユニット」という。当該「金属錯体ユニット」中には、実質的に配位不飽和となり得る配位座が存在し、触媒活性等を発揮することができる。また、少なくとも2つ以上の化学結合が可能な原子または原子団(配位ドナー)が存在するので、後述の「架橋金属」を介して連結されることにより多孔性配位不飽和金属錯体を構成することができる。ここでいう「化学結合」は、配位結合,共有結合,またはイオン結合をいう。但し、これら結合に加えて水素結合等の脆弱な結合が付随的に形成された場合も、本願発明に含まれるものとする。
【0045】
本発明の「有機配位子」では、配位不飽和金属を担持する部位と、架橋金属に結合する配位ドナー部位の構造は異なっている。斯かる構成によって、有機配位子中の架橋部分と配位不飽和状態の金属を担持する部分との役割が明確になり、有機配位子の配位ドナー間の距離を多孔性配位不飽和錯体の空孔の孔径に反映させることが可能になると共に、触媒機能等を発揮すべき金属が有機配位子を架橋する必要がなくなることから、より一層の活性の向上を期待することができる。
【0046】
この様な「金属錯体ユニット」の概念図を図1に示すが、本発明の内容が、これに限定されるものではない。また、「金属錯体ユニット」において、反応基質が配位可能な残存配位座である「配位受容部位」と、後述の「架橋金属」により連結される部位である「配位ドナー部位」の模式図を図2として示す。
【0047】
本発明の「架橋金属」は、隣接する2以上の本発明に係る「金属錯体ユニット」を、配位結合やイオン結合により結合することができる金属をいう。斯かる「架橋金属」は、この様な作用効果を有するものであれば単独の金属や金属イオンに限らず、他の化合物と錯体を形成していてもよいし、また、クラスターを形成していてもよい。
【0048】
「金属錯体ユニット」が、このような「架橋金属」を介して連結され、「多孔性配位不飽和金属錯体」が構成される模式図を図3に示すが、本発明がこれによって限定されるものではない。
【0049】
また、本発明における「架橋金属」で結合機能を直接発揮する金属の例としては、例えばZn、Cuなどを挙げることができるが、一般的な金属を特に制限無く使用することができる。斯かる架橋金属は、配位不飽和金属と同一の金属元素を使用すれば錯体調製上の利便性が高いが、異なる金属元素を使用することにより、構造や反応等の多様性を享有させることができる。尚、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体の調製時には、「架橋金属」を構成する金属はイオンの状態で添加され、多孔性配位不飽和金属錯体内においてイオンの状態のままで有機配位子を架橋する場合と原子の状態で架橋する場合が考えられるが、いずれの場合も本発明の範囲に含まれる。このように多様な「架橋金属」を構成成分とすることによって、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体に様々な作用効果を享有させることが可能となる。また、「架橋金属」は、配位不飽和の状態にある場合も考えられるが、その様な場合も本発明範囲に含まれる。
【0050】
本発明の「多孔性配位不飽和金属錯体」は、上述の「金属錯体ユニット」が「架橋金属」を介して連結することで多孔性を享有する。
【0051】
この空孔の大きさは、「金属錯体ユニット」と「架橋金属」の種類や大きさによって定まり、この大きさが一定であることによって基質分子を選択的に錯体内へ取り込むことができるという効果が生じる。
【0052】
また、本発明の「多孔性配位不飽和金属錯体」では、「金属錯体ユニット」中の金属が規則的に配列していることが好ましい。金属が一定の間隔をもって配列していると、反応基質の当該金属への接近が一定方向に規制されることによって、酸化反応,還元反応,オレフィン類の重合反応等において、立体選択的な制御が可能となり得るからである。また、当該金属が一定以上の距離をもって配列していると、酸素等による金属−金属間の架橋による錯体の活性低下を防止できるという効果もあり得、或いはタンデム反応やカスケード反応など、基質−基質間に一定の距離が要求される反応に応用することができ得る。逆に、一定以内の距離で規則的に配列すれば、1つの反応基質に2つの金属が配位することによって、アミノ酸の炭素アルキル化反応等の特殊な反応を触媒することができ得る。
【0053】
尚、公知の構造体としては「結晶」として知られているものがあり、これは、空間的に周期的な原子配列をもった固体物質空間格子を有する。このような構造体における「格子空間」は、本発明における空孔とは呼ばない。
【0054】
「金属錯体ユニット」が「架橋金属」を介して連結されることにより形成される空孔の模式図を、図4として示す。図4に示すように、複数個の有機配位子によって矩形或いは略矩形が形成され、これが積層することによって更に空孔が形成される。ここで、空孔がトンネル状に一方方向のみに延びているものを「一次元」の空孔といい、当該方向に直交する方向にも空孔が形成されているものを「二次元」の空孔といい、更に二次元のいずれにも直交する方向にも空孔が形成されているものを「三次元」の空孔という。本発明では金属錯体ユニットおよび架橋金属をデザインすることで、一次元,二次元または三次元の空孔を有する多孔性金属錯体を、容易に形成することができる。
【0055】
つまり、本発明における「多孔性」とは、1つ以上の空孔を有することを意味するが、2つ以上の空孔が存在する場合には、これら空孔は一次元または三次元であることが好ましい。
【0056】
本発明の空孔の孔径は、10Å以上である。即ち、例えば直径10Å以上の球体が入り込めることが好ましい。当該空孔の断面形状は特に制限されないが、例えば矩形或いは略矩形である場合には、その最も短い一辺を10Å以上とする。従来、メタンガス等の小分子を基質とする層状の錯体は知られていたが、一般の化合物を基質とし且つ選択性を発揮できる程の大きさの空孔を有する多孔性金属錯体で実用レベルのものはなかった。従って、斯かる要件には、先行技術との技術的差異を明確にする意義がある。尚、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体では、実質的に全ての空孔の孔径が10Å以上であることが好ましい。
【0057】
本発明の「有機配位子」は、化合物(I)または(III)の2以上が、互いに隣接する有機配位子の基αを介して、基α上の水素原子がC−Cアルキレン基または−(C=O)−(C−Cアルキレン)−(C=O)−基で置換され、結合されることにより環状構造を有している環状有機配位子であってもよい。このような環状有機配位子は、例えば下に示すような化合物を示す。
【0058】
【化12】
Figure 2004285315
【0059】
また、本発明の「有機配位子」は、化合物(I)の誘導体である下記化合物(IV)であってもよい。
【0060】
【化13】
Figure 2004285315
【0061】
[式中、A、X、Y、RおよびRは、前述したものと同義を示す。]。
【0062】
本発明の「有機配位子」としては、化合物(I)および(III)の他に、下記に示す化合物(V),(VI)であってもよい。
【0063】
本発明の化合物(V)は、次の構造を示す。
【0064】
【化14】
Figure 2004285315
【0065】
[上記式中、αは前述したものと同義を示す。また、化合物(V)は基αを1〜4個有し、βを1〜4個有していてもよい。]
また、本発明の化合物(VI)は、次の構造を示す。
【0066】
【化15】
Figure 2004285315
【0067】
[式中、X,RおよびRは、前述したものと同義を示す。]。
【0068】
上記式中、各基の定義において、「単環若しくは縮合芳香族炭化水素基」とは、1価または2価の単環若しくは縮合している芳香族炭化水素環基をいい、C−C10単環若しくは縮合芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル(フェニレン),ペンタレニル(ペンタレニレン),インデニル(インデニレン),ナフチル(ナフチレン)およびアズレニル(アズレニレン)を挙げることができ、C−C22単環若しくは縮合芳香族炭化水素基としては、これらに加えて、例えばヘプタレニル(ヘプタレニレン),ビフェニレニル(ビフェニレニレン),フェナレニル(フェナレニレン),フェナンスレニル(フェナンスレニレン),アントラセニル(アントラセニレン),ピレニル(ピレニレン),ジベンゾフェナンスレニル(ジベンゾフェナンスレニレン)および9,10−ジヒドロジベンゾフェナンスレニル(9,10−ジヒドロジベンゾフェナンスレニレン)を挙げることができる。XがC−C10単環若しくは縮合芳香族炭化水素基である場合、フェニレンまたはナフチレンが好適であり、更に好適にはフェニレンである。R、R、それぞれに隣接した炭素原子およびAが一体となった部分構造、またはR’,R’、それぞれに隣接した炭素原子およびAが一体となった部分構造が、C−C22単環若しくは縮合芳香族炭化水素基である場合は、上述した芳香族炭化水素基の1,2−置換体をいい、好適にはC−C10単環若しくは縮合芳香族炭化水素基であり、更に好適には1,2−フェニレンまたは1,2−または2,3−ナフチレンが好適であり、最適には1,2−フェニレンである。
【0069】
「含窒素ヘテロアリール基」とは、ヘテロ原子として窒素原子を1〜4個含有する単環または縮合性の芳香族性を有する複素環基をいい、例えばピロリル,ピラゾリル,イミダゾリル,オキサゾリル,イソオキサゾリル,チアゾリル,イソチアゾリル,1,2,3−オキサジアゾリル,チアジアゾリル,トリアゾリル等の5員単環含窒素へテロアリール;ピリジル,ピリダジニル,ピリミジニル,ピラジニル等の6員単環含窒素へテロアリール;インドリジニル,イソインドリル,インドリル,ベンゾオキサゾリル,ベンゾチアゾリル等の9員縮合含窒素へテロアリール;およびイソキノリル,キノリル,キナゾリニル等の10員縮合含窒素へテロアリールを挙げることができる。Xまたはαが含窒素ヘテロアリール基である場合、5または6員単環含窒素へテロアリールが好適であり、更に好適には6員単環含窒素へテロアリールであり、最適にはピリジルである。
【0070】
「アルキル基」とは、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素基をいい、C−Cアルキル基としては、例えばメチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブチル,イソブチル,s−ブチル,t−ブチル,ペンチル,s−ペンチル,イソペンチル,2−メチルブチル,ネオペンチル,1−エチルプロピル,ヘキシル,4−メチルペンチル(イソヘキシル),3−メチルペンチル,2−メチルペンチル,1−メチルペンチル(s−ヘキシル),3,3−ジメチルブチル,2,2−ジメチルブチル,1,1−ジメチルブチル,1,2−ジメチルブチル,1,3−ジメチルブチル,2,3−ジメチルブチルおよび2−エチルブチルを挙げることができる。R,R,R’,R’またはβがC−Cアルキル基である場合、好適にはC−Cアルキル基であり、更に好適にはC−Cアルキル基であり、最適にはメチル基である。
【0071】
「ジ(C−Cアルキル)アミノ基」とは、上記C−Cアルキルにより二置換されたアミノ基をいい、例えばジメチルアミノ,ジエチルアミノ,ジイソプロピルアミノ,エチルメチルアミノ等を挙げることができ、YまたはY’がジ(C−Cアルキル)アミノ基である場合、好適にはジ(C−Cアルキル)アミノ基であり、更に好適にはジメチルアミノ基である。
【0072】
「ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基」とは、リン原子に上記C−Cアルキルが2つ置換した基をいい、例えばジメチルホスフィノ,ジエチルホスフィノ,ジイソプロピルホスフィノ,ジ−t−ブチルホスフィノ等を挙げることができ、Y,Y’またはαがジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基である場合、好適にはジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基であり、更に好適にはジ−t−ブチルホスフィノ基である。
【0073】
「ジアリールホスフィノ基」とは、リン原子に上記アリールが2つ置換した基をいい、例えばジフェニルホスフィノ,ジナフチルホスフィノ等を挙げることができ、Y,Y’またはαがジアリールホスフィノ基である場合、好適にはジフェニルホスフィノ基である。
【0074】
「アルケニル基」とは、直鎖状または分枝鎖状の不飽和炭化水素基をいい、C−Cアルケニル基としては、例えばエテニル,プロペニル,メチルプロペニル,エチルプロペニル,ブテニル,メチルブテニル,エチルブテニル,ペンテニル,メチルペンテニルおよびヘキセニルを挙げることができ、R,R,R’またはR’がC−Cアルケニル基である場合、好適にはC−Cアルケニル基であり、最適にはエテニル基である。但し、Aが二重結合である場合、R,R,R’,R’のうちAに隣接する炭素原子に直結する部分が二重結合である場合はない。
【0075】
「アルコキシ基」とは、直鎖状または分枝鎖状のアルコキシ基をいい、C−Cアルコキシ基としては、例えばメトキシ,エトキシ,プロポキシ,イソプロポキシ,ブトキシ,イソブトキシ,s−ブトキシ,t−ブトキシ,ペントキシ,イソペントキシ,2−メチルブトキシ,ネオペントキシ,1−エチルプロポキシ,ヘキシルオキシ,4−メチルペントキシ,3−メチルペントキシ,2−メチルペントキシ,3,3−ジメチルブトキシ,2,2−ジメチルブトキシ,1,1−ジメチルブトキシ,1,2−ジメチルブトキシ,1,3−ジメチルブトキシ,2,3−ジメチルブトキシおよび2−エチルブトキシを挙げることができる。R,R,R’,R’またはβがC−Cアルコキシ基である場合、好適にはC−Cアルコキシ基であり、更に好適にはC−Cアルコキシ基であり、最適にはメトキシ基である。
【0076】
「ハロゲン原子」としては、例えばフッ素原子,塩素原子,臭素原子およびヨウ素原子を挙げることができる。R,R,R’,R’またはβがハロゲン原子である場合、好適にはフッ素原子,塩素原子または臭素原子であり、更に好適にはフッ素原子である。
【0077】
「環状炭化水素基」とは、環状の飽和脂肪族炭化水素基をいい、C−C環状炭化水素基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルの1,2−置換体を挙げることができる。R、R、それぞれに隣接した炭素原子およびA、またはR’,R’およびそれぞれに隣接した炭素原子が一体となった部分構造が、C−C環状炭化水素基である場合、C−C環状炭化水素基が好適であり、更に好適には1,2−シクロヘキシルである。
【0078】
「アルキレン基」とは、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素からなる二価の基をいい、C−Cアルキレン基としては、例えばメチレン,エチレン,メチルメチレン,トリメチレン,メチルエチレン,ジメチルメチレン,テトラメチレン,メチルプロピレン,ペンタメチレン,ジメチルプロピレン,ヘキサメチレン,イソプロピルプロピレン等を挙げることができる。C−Cアルキレン基または−(C=O)−(C−Cアルキレン)−(C=O)−基中のC−Cアルキレンとして好適には、C−Cアルキレンであり、更に好適にはC−Cアルキレンである。
【0079】
化合物(I)において、Aが炭素−炭素間単結合を示す場合には、Aの隣接炭素には水素が1個(但し、R,Rが水素原子を示す場合には2個、1−C−Cアルケニル基を示す場合には0個)結合することとなる。また、Aが「存在しない」場合には、Aの隣接炭素はメチレン(R,Rが水素原子を示す場合にはメチル、1−C−Cアルケニル基を示す場合にはメチン)となる。
【0080】
化合物(I)〜(VI)等中のR,RおよびR’,R’は、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、有機配位子が対称形である場合の方が、錯体中の配位不飽和金属が規則的に配列し易いので、同一であることが好ましい。
【0081】
同一の理由から、化合物(I)〜(VI)中の基αの置換位置は、化合物中で左右対称となる位置か、または下図に示す様に点対称となる位置であることが好ましく、更に左右対称となる位置であることが好ましい。
【0082】
【化16】
Figure 2004285315
【0083】
当該基αは、本発明の錯体中で、架橋金属と配位することにより有機配位子を連結する作用を有する。従って、有機配位子ひいては配位不飽和金属が規則的に配列するためにも、これら基は、有機配位子中で対象となる位置に存在することが好ましい。また、それぞれ複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましく、その置換位置も、左右対称または点対称となる位置であることが好ましく、更に左右対称となる位置であることが好ましい。また、これら基の数は、芳香族炭化水素基1個当たり好適には1または2個であり、更に好ましくは1個である。
【0084】
同じく、化合物(I)〜(IV),(VI)中の基βが複数個存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。また、これら基の数は、好適には0〜2個である。
【0085】
本発明に係る化合物がカルボキシル基などの酸性基を有する場合、当該化合物には、その塩も含有される。本発明の錯体を製造する際においては、その原料は塩であってもよいからである。そのような塩としては、例えばナトリウム塩,カリウム塩,リチウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩,マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;鉄塩,亜鉛塩,銅塩,ニッケル塩,コバルト塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩;t−オクチルアミン塩,ジベンジルアミン塩,モルホリン塩,グルコサミン塩,フェニルグリシンアルキルエステル塩,エチレンジアミン塩,N−メチルグルカミン塩,グアニジン塩,ジエチルアミン塩,トリエチルアミン塩,ジシクロヘキシルアミン塩,N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩,クロロプロカイン塩,プロカイン塩,ジエタノールアミン塩,N−ベンジル−N−フェネチルアミン塩,ピペラジン塩,テトラメチルアンモニウム塩,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機アミン塩を挙げることができる。
【0086】
また、本発明に係る化合物が含窒素ヘテロアリール基などの塩基性基を有する場合にも、酸性基を有する場合と同様に、当該化合物にはその塩も含有される。そのような塩としては、例えばフッ化水素酸塩,塩酸塩,臭化水素酸塩,ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩;硝酸塩,過塩素酸塩,硫酸塩,リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩,トリフルオロメタンスルホン酸塩,エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸の塩;ベンゼンスルホン酸塩,p−トルエンスルホン酸塩等のようなアリールスルホン酸塩;オルニチン酸塩,グルタミン酸塩のようなアミノ酸塩;およびフマル酸,コハク酸,クエン酸,酒石酸,シュウ酸,マレイン酸のようなカルボン酸塩を挙げることができる。
【0087】
また、本発明に係る化合物は、その合成過程において或いはその保存中に、水分や溶媒を吸収・吸着して溶媒和物(水和物)となることがある。本発明の化合物は、そのような溶媒和物(水和物)も含む。更に本発明の化合物には、種々の異性体や互変異性体が存在する場合があるが、これらも全て本発明の範囲に含まれる。
【0088】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔性配位不飽和金属錯体が発揮する最大の特徴は、金属錯体ユニットが架橋金属を介して連結されることにより多孔性であることから選択的に基質分子を取り込むことができ、更に、構成要素である配位不飽和状態にある金属の作用により取り込んだ基質分子を反応基質として選択的に反応させることができ、或いは基質分子を空孔内にそのまま保持することができる点にある。
【0089】
本発明に係る多孔性配位不飽和金属錯体の空孔の大きさは、これを構成する金属錯体ユニットと架橋金属に依存する。このため、標的とする基質分子に応じた配位不飽和状態にある金属または金属イオン間の距離,向きや空孔の大きさを定めるべく、金属錯体ユニットと架橋金属の構造をデザインすることができる。つまり、従来の多孔性金属錯体のうち実用レベルにあるものでは、水やメタンガス等の低分子化合物しか基質とすることができなかったが、本発明によれば、所定の大きさの空孔を有することから一般的な化合物をも基質にすることができる多孔性金属錯体を容易に得ることができる。
【0090】
尚、本発明に係る錯体の製造時または保存時においては、溶媒や空気中分子などの不可避不純物が錯体内に混入する場合がある。本発明の範囲には、その効果を発揮することができる範囲で、不可避不純物が混入する場合も含まれる。しかし、金属と有機配位子で構成された金属錯体ユニット、並びに架橋金属を構成成分とする本発明の構成をとれば、たとえ不純物が混入しても、一般的に、本発明の特徴である空孔が形成されない程、その構造が乱れることはない。
【0091】
本発明の「多孔性配位不飽和金属錯体」は、以下の方法に従って製造することができる。
【0092】
(A法)
【化17】
Figure 2004285315
【0093】
A法は、金属または金属イオン、有機配位子および架橋金属から、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体を製造する方法である。即ち、一般的には有機配位子の溶液と複数配位能を有する金属塩の溶液を混合して金属錯体ユニットを得、当該金属錯体ユニットの溶液に架橋金属の原料となる化合物を加えることによって、多孔性配位不飽和金属錯体を得ることができる。
【0094】
本A法中A−1工程は、金属錯体ユニットを製造する方法であり、有機配位子の溶液と複数配位能を有する金属の塩の溶液を混合し、構成金属が配位不飽和状態にある有機配位子との錯体(本発明の金属錯体ユニット)を合成するものである。本法においては、錯体形成を進行させるために、反応系に熱や圧力をかけてもよい。
【0095】
有機配位子溶液および金属塩溶液に使用される溶媒は、これら原料化合物を適度に溶解することができるものであり、且つ当該反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、例えばジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド等のアミド;メチルエチルエーテル,ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル;メチルセロソルブ,エチルセロソルブ,ブチルセロソルブ等のC−Cグリコールエーテル;ピリジン等の水溶芳香族性有機溶媒;メタノール,エタノール,n−プロパノール,2−プロパノール,n−ブタノール,ヘキサノール,シクロヘキサノール等のアルコール;水;アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソプロピルケトン等のケトン類;およびこれらの2種以上の混合溶媒を挙げることができる。それぞれの溶液に使用される溶媒は、互いに異なるものを使用することもできるが、同一の溶媒を使用することが好ましい。
【0096】
反応は室温下で行なうことができるが、原料化合物を溶解するため或いは錯体形成をより進行させるために加温してもよい。好ましい反応温度は10〜200℃であり、更に好ましくは20〜100℃である。
【0097】
反応系に圧力をかける場合の圧力値は、特に限定されないが、例えば0.1〜1MPaで反応を進行させれば、効率的な合成が可能になると考えられる。
【0098】
反応時間は、特に限定されないが、滴下を十分ゆっくり行なうことによりその後の反応時間を省略することができる場合があり、また、滴下後に金属の配位が十分に進行していない場合には、そのまま一晩から数日間静置することが好ましい。
【0099】
反応終了後は、副生成物である沈殿物を濾別し、濾液に水や低級アルコールを加えることにより、目的物である金属錯体ユニットを析出させることができる。得られた金属錯体ユニットは、このままでも十分な純度を有するが、再結晶法等の公知精製法により、更に精製してもよい。
【0100】
また、金属錯体ユニット中の金属または金属イオンのみを変換することも可能である。即ち、金属錯体ユニットを溶媒に溶解し、これに所望の金属塩溶液を滴下することにより、配位不飽和金属を置換することができる場合がある。当該反応の使用溶媒、温度、時間、後処理等は、前述したA−1工程で使用した条件と同じものを採用することができる。
【0101】
更に、2種以上の金属を含む金属塩溶液を滴下することによって、全体として2種以上の配位不飽和金属が配位している金属錯体ユニットを、調製することもできる。
【0102】
A−2工程は、A−1工程で得られた金属錯体ユニットを架橋金属により連結し、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体を得る工程である。
【0103】
本工程は、一般的には金属錯体ユニットを溶媒に溶解し、架橋金属の塩を加えることにより行なわれる。本工程においては、錯体形成を促進するために、圧力をかけてもよい。
【0104】
使用される溶媒は、錯体形成を妨害しないものであれば特に限定されないが、例えばジメチルホルムアミド,ジメチルアセトアミド等のアミド;メチルエチルエーテル,ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル;メチルセロソルブ,エチルセロソルブ,ブチルセロソルブ等のC−Cグリコールエーテル;ピリジン等の水溶芳香族性有機溶媒;メタノール,エタノール,n−プロパノール,2−プロパノール,n−ブタノール,ヘキサノール,シクロヘキサノール等のアルコール;水;アセトン,メチルエチルケトン,メチルイソプロピルケトン等のケトン類;およびこれらの2種以上の混合溶媒を挙げることができる。
【0105】
反応は室温下で行なうことができるが、金属錯体ユニットおよび架橋金属の原料化合物を溶媒に溶解するために、或いは架橋形成をより進行させるために加温してもよい。好ましい反応温度は10〜200℃であり、更に好ましくは20〜150℃である。
【0106】
反応系に圧力をかける場合の圧力値は、特に限定されないが、A−1工程と同様に、例えば0.1〜1MPaで反応を進行させれば、効率的な合成が可能になると考えられる。
【0107】
反応時間は、特に限定されないが、数時間から数日間静置することが好ましい。
【0108】
目的物である多孔性配位不飽和金属錯体は、水および/または水溶性溶媒に不溶であるので、結晶が析出してくる。従って、反応終了後は目的物を濾別し、水系溶媒で洗浄後乾燥する。
【0109】
本発明の多孔性配位不飽和金属錯体は、2種以上の遷移金属が配位することによっても、触媒機能の多様性が生じると考えられる。
【0110】
本発明の多孔性配位不飽和金属錯体において、配位不飽和金属(M)は、例えば下に示すように配位する。
【0111】
【化18】
Figure 2004285315
【0112】
但し、化合物(I)において、Aが「存在しない」場合には、下に示すように配位する可能性もある。
【0113】
【化19】
Figure 2004285315
【0114】
しかし、配位不飽和金属が規則的に配列するためには、金属錯体ユニットの配位態様やコンフォメーションが一定であることが好ましいので、化合物(I)において、Aは存在する、即ち炭素−炭素間単結合または二重結合であることが好ましく、また、Aの位置において炭素−炭素間の自由回転の可能性が無い方が好ましい。
【0115】
有機配位子である化合物(I)は、例えば次のB法により製造することができる。
【0116】
(B法)
【化20】
Figure 2004285315
【0117】
上記式中、A、X、Y、RおよびRは、前述したものと同義を示す。
【0118】
B法は、有機配位子である化合物(I)を製造する工程である。
【0119】
B−1工程は、化合物(VII)から化合物(VIII)を製造する工程である。即ち、化合物(VII)は芳香族性を示すので、ライマー−ティーマン反応(Reimer−Tiemann反応)により、水酸基の隣接炭素にホルミル基を導入することができる。
【0120】
反応は、化合物(VII)の水酸化アルカリ溶液中、クロロホルムを加えることにより行なう。
【0121】
化合物(VII)の化学構造は、比較的簡単であるため、市販のものを購入するか、当業者公知の方法によって市販の化合物から合成することができる。
【0122】
使用される水酸化アルカリは、特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等を挙げることができる。
【0123】
使用される溶媒は、反応基質を溶解でき且つ反応を阻害するものでなければ特に限定されないが、例えば水、および水とアルコール等の水溶性有機溶媒との混合溶媒を挙げることができる。
【0124】
反応は適度な加温下に行なうことが好ましく、好適な反応温度は、室温〜100℃である。
【0125】
反応時間は、反応温度等により異なるが、通常、1〜8時間である。
【0126】
反応後は、公知の方法により抽出、乾燥し、有機溶媒を減圧留去することにより目的物である化合物(VIII)が得られる。得られた目的物は、更に再結晶、クロマトグラフィー等により精製することができる。
【0127】
B−2工程は、化合物(VIII)と化合物(IX)から、化合物(I)を製造する工程である。即ち、化合物(VIII)のホルミル基とアミン化合物である(IX)とでシッフ塩基を形成することにより、目的物である化合物(I)を合成することができる。
【0128】
反応は、化合物(VIII)の溶液に化合物(IX)の溶液を加えることにより達成される。
【0129】
使用される有機溶媒は、化合物(VIII)、(IX)を溶解することができ且つ反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えばメタノール,エタノール等のアルコール;ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド,ジエチルアセトアミド等のアミド;これら2種以上の混合溶媒を挙げることができる。
【0130】
反応温度は、使用される原料化合物、溶媒等により異なるが、通常は室温〜200℃であり、好適には室温〜100℃である。
【0131】
反応時間は、使用される原料化合物、溶媒等により異なるが、化合物(IX)の溶液をゆっくり滴下することにより反応はほぼ達成され、更に数時間静置することが好ましい。
【0132】
反応終了後は、目的物である化合物(I)が沈殿する場合にはそのまま濾過すればよいが、沈殿しない場合には、溶媒をある程度減圧留去してもよい。得られた目的物は、更に再結晶、クロマトグラフィー等により精製することができる。
【0133】
有機配位子である化合物(V)は、市販のものを用いるか、または1,10−フェナントロリンへの基αの導入若しくは1,10−フェナントロリン誘導体の置換反応を、当業者公知の方法により行なうことによって得ることができる。
【0134】
有機配位子である化合物(VI)は、例えば次のC法により製造することができる。
【0135】
(C法)
【化21】
Figure 2004285315
【0136】
上記式中、X,RおよびRは、前述したものと同義を示す。
【0137】
C法は、有機配位子である化合物(VI)を製造する工程である。
【0138】
C−1工程は、化合物(X)と化合物(XI)から、化合物(VI)を製造する工程である。即ち、化合物(X)のアミノ基と(XI)のカルボニル基とでシッフ塩基を形成することにより、目的物である化合物(VI)を合成することができる。
【0139】
反応は、化合物(X)の溶液に化合物(XI)の溶液を滴下することにより達成される。また、必要に応じてギ酸等の酸類を加えてもよい。
【0140】
使用される有機溶媒は、化合物(X)、(XI)を溶解することができ且つ反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えばメタノール,エタノール等のアルコール;ジエチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド;これら2種以上の混合溶媒を挙げることができる。
【0141】
反応温度は、使用される原料化合物、溶媒等により異なるが、通常は室温〜100℃であり、好適には室温である。
【0142】
反応時間は、使用される原料化合物、溶媒等により異なるが、化合物(XI)の溶液をゆっくり滴下することにより反応はほぼ達成され、更に数時間静置することが好ましい。
【0143】
反応終了後は、目的物である化合物(VI)が沈殿する場合にはそのまま濾過すればよいが、沈殿しない場合には、溶媒をある程度減圧留去してもよい。得られた目的物は、更に再結晶、クロマトグラフィー等により精製することができる。
【0144】
上記に示した有機配位子を使用すれば、多孔性配位不飽和金属錯体は、図7に示すように4個の有機配位子により矩形或いは略矩形が形成され、これが層状に配列することによって網目構造が層状に連通されて、所定の大きさを示す空孔を有する構造を構築することができる。即ち、空孔の一辺の長さは、使用する錯体ユニットおよび架橋金属に依存するので、有機配位子の構造をデザインすることによって所望の大きさの空孔を有する錯体を得ることができる。例えば、目的とする反応基質が酸素やメタンガス等の小分子である場合には、空孔の大きさを考慮する必要は無いが、反応基質が比較的大きな分子である場合には、その目的に応じた有機配位子を使用することによって、反応選択性を得ることができる。斯かる空孔の一辺の長さは10Å以上が好ましく、更に好ましくは11Å以上,12Å以上,13Å以上であり、最適には14Å以上である。この程度の空孔を有する金属錯体であれば、大抵の有機化学的反応における出発原料を基質として空孔内に取り込むことができる。
【0145】
多孔性配位不飽和金属錯体は、室温で固体であり、また水に不溶性若しくは難溶性であれば、合成系に水等を加えることによって容易に析出させることができ、再結晶を容易に行なうことができるなど、製造時の利便性が高い。また、保存中に環境中の水を吸着することによって不安定になるなどの不利を示さない。ここで一般的には、「不溶性」とは、1gの試料を溶解するために10,000g以上の水を必要とするものをいい、「難溶性」とは、1gの試料を溶解するために1,000〜10,000g未満の水を必要とするものをいうが、本発明の目的を達成することができる範囲であれば、多孔性配位不飽和金属錯体の溶解度は、これら以上であってもよい。
【0146】
本発明の多孔性配位不飽和金属錯体は、選択的に取り込んだ分子を再び放出することができる。例えば、錯体内に取り込まれ保持されている分子は、熱などを加えることにより錯体外に放出され、また、錯体の触媒作用によって反応に付された反応基質は、反応生成物と配位金属との低親和性によって、反応目的物として錯体外に放出されることが考えられる。
【0147】
以下に、実施例を示し、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0148】
【実施例】
(実施例1)
(実施例1−1)3−ホルミル−4−ヒドロキシ安息香酸
【0149】
【化22】
Figure 2004285315
【0150】
反応器に4−ヒドロキシ安息香酸20gおよび水酸化ナトリウム36gを入れ、室温にて10分間窒素置換を行なった。ここへ水100mlを加え、攪拌しつつ70℃にした。次いでクロロホルム20mlを滴下ロートから加えると、茶色の沈殿物が生じた。ここへ水300mlを加えて均一溶液とした後、酸性となるまで塩酸を加えた結果、白色の沈殿物が得られた。これをジエチルエーテルで抽出し、溶媒を減圧濃縮すると、茶色がかった白色の固体が得られた。
【0151】
(実施例1−2)サレンタイプの有機配位子
【0152】
【化23】
Figure 2004285315
【0153】
メタノール100mlに実施例1−1で得た3−ホルミル−4−ヒドロキシ安息香酸1.0839gを溶解し、ここへフェニレンジアミン0.3525gのメタノール溶液を室温にてゆっくり滴下しところ、オレンジ色の沈殿が生成した。そのまま1時間静置した後に濾過して、オレンジ色の固体1.1105gを得た。ジメチルスルホキシド−d中で測定したNMRデータを図5に示す。また、IRデータを図6に示す。
【0154】
(実施例1−3)銅が配位した金属錯体ユニット
【0155】
【化24】
Figure 2004285315
【0156】
実施例1−2で得たサレンタイプの有機配位子0.2022gをジメチルホルムアミドに溶解し、ここへ酢酸銅(II)0.0998gのジメチルホルムアミド溶液を室温にて滴下したところ、濃緑色の沈殿物が生成した。使用したジメチルホルムアミドの合計は150mlであった。濾過により沈殿物を取り除き、濾液にメタノールを加えたところ、茶色粉末0.15gが得られた。生成物について、IR測定およびマススペクトル測定を行なった。IRデータは、図6に示す。マススペクトルの分子イオンピークは465だった。
【0157】
(実施例1−4)バナジウムが配位した金属錯体ユニット
【0158】
【化25】
Figure 2004285315
【0159】
実施例1−3において、酢酸銅(II)の代わりに硫酸バナジウム(VOSO)0.1449gを用いて同様の実験を行ない、上記構造の金属錯体ユニットを得た。生成物について、IR測定およびマススペクトル測定を行なった。IRデータは図6に示す。マススベクトル測定での分子イオンピークは469だった。この結果より、有機配位子に配位しているのは、VOであることが明らかとなった。
【0160】
(実施例1−5)ニッケルが配位した金属錯体ユニット
【0161】
【化26】
Figure 2004285315
【0162】
実施例1−3において、酢酸銅の代わりに酢酸ニッケル0.100gを用いて同様の実験を行ない、ニッケルが配位した有機配位子ユニットを調製し、IR測定を行なった。結果を図6に示す。
【0163】
(実施例1−6)サレンタイプの有機配位子
【0164】
【化27】
Figure 2004285315
【0165】
実施例1−2において、フェニレンジアミンの代わりにエチレンジアミン0.1959gを用いて同様の実験を行ない、上記構造の有機配位子を得た。マススペクトル測定を行なったところ、分子イオンピークは(M−H)として355だった。
【0166】
(実施例1−7)サレンタイプの有機配位子
【0167】
【化28】
Figure 2004285315
【0168】
実施例1−2において、フェニレンジアミンの代わりに1,2−ジシアノエチレンジアミンを用いて同様の実験を行ない、上記構造の有機配位子を得た。マススペクトル測定を行なったところ、シアノ基が結合した炭素−炭素間で2つの水素原子が脱離した状態で、分子イオンピークは404だった。
【0169】
(実施例1−8)本発明の多孔性配位不飽和金属錯体
実施例1−3で得た銅(II)が配位した金属錯体ユニット0.101g(0.25mmol)を、ジメチルホルムアミド50mlに溶解した。室温にて約5時間攪拌した後に、ピリジン3.0mmolを追加した。ここへ、硝酸亜鉛(和光純薬製)0.25mmolのジメチルホルムアミド50ml溶液を加えた。更に水20mLを加えた後に65℃で静置すると、目的物の単結晶が得られた。
【0170】
この単結晶につき、IR測定(図6)、単結晶X線構造解析(図7)、粉末X線回折(図8)、熱重量測定(図9)を行った。
【0171】
図7中、「a,b,c」は、結晶最小単位のそれぞれの方向における長さを示し、βは、略矩形内の角度を表わす。「C2/m(#12)」は、結晶の空間群が第12番目のものであることを示し、「monoclinic Z=2」は、結晶が単斜晶系であり、単位胞中に2個の分子を含むことを表わす。その他の「R」因子は、解析結果の全体的な精度を示すものであり、構造解析結果から計算される構造因子と、実際の観測構造因子との残差である。
【0172】
図8中の「仮想パターン」は、単結晶X線構造解析の結果から算出される理想的なパターンを示す。当該結果によれば、粉末X線回折の仮想パターンと実測パターンはほぼ同一であり、実測と計算が整合していることが明確にされている。
【0173】
(実施例2−1)コバルトが配位した金属錯体ユニット
【0174】
【化29】
Figure 2004285315
【0175】
実施例1−2で得たサレンタイプの有機配位子1.0gをジメチルホルムアミド60mlに溶解させた溶液を、窒素雰囲気下室温で攪拌し、ここへ酢酸コバルト(II)0.6gをジメチルホルムアミド30mlに溶解させた溶液を滴下した。滴下後1時間攪拌した後、沈殿物を濾過により取り除き、濾液にメタノールを加えたところ、茶色固体1.0gが得られた。得られた生成物についてマススペクトル測定を行なったところ、分子イオンピークは461だった。
【0176】
(実施例2−2)本発明の多孔性配位不飽和金属錯体(コバルト錯体型)
銅(II)が配位した金属錯体ユニットの代わりに、実施例2−1で得たコバルト(II)が配位した金属錯体ユニット0.1gを用いた以外は、実施例1−8と同様に反応を行なった結果、標記目的物が得られた。この単結晶についてIR測定(図10)と粉末X線回折(図11)を行った。
【0177】
(実施例2−3)本発明の多孔性配位不飽和金属錯体(コバルト錯体型)第2法
実施例2−1で得たコバルト(II)が配位した金属錯体ユニット0.05gをジメチルホルムアミド2mlに溶解した。これに硝酸亜鉛(和光純薬製)0.16モル/Lジメチルホルムアミド溶液1mlを加え、更にトリエチルアミン50μlおよび水1mLを加えて内容量20mlのオートクレーブに封入し、系内をよく窒素置換した後に内圧を0.16MPaとし、110℃で5時間加熱した。放冷後、生成した固体の粉末X線結晶構造解析を行なったところ、実施例2−2と同様のピークが観察された。
【0178】
(実施例3)本発明の多孔性配位不飽和金属錯体を触媒として用いた酸化反応30mLSUS製オートクレーブに、実施例2−3で得られたコバルト(II)を含む多孔性配位不飽和金属錯体50mg,ハイドロキノン0.5gおよびベンゼン5mlを加え、窒素を1.47MPa,酸素を1.47MPa(共にゲージ圧)に加圧し、攪拌下50℃で3時間反応させた。室温まで放冷した後、ガスクロマトグラフィーにより反応液を分析した結果、ハイドロキノンの転化率は30.8モル%であり、ベンゾキノンが収率25.9%で得られた。
【0179】
(実施例4)本発明の多孔性配位不飽和金属錯体(ニッケル型)
実施例1−5で得たニッケル(II)が配位した金属錯体ユニット115.0mgを20mlのジメチルホルムアミド中に分散させた液と、硝酸亜鉛6水和物112.0mgをジメチルホルムアミド20mlに溶解させた溶液を混合し、更に水10mlを加え、耐圧容器に入れた。室温下10分間窒素をバブリングした後密閉して内圧を0.16MPaとし、100℃で8時間加熱した。反応後、得られた固体につき粉末X線結晶構造解析を行なったところ、実施例2−2と同様のピークが観察された。
【0180】
(比較例1)
コバルト(II)を含む多孔性配位不飽和金属錯体を用いなかった以外は実施例3と同様にして、ハイドロキノンの酸化反応を行なった。その結果、ベンゾキノンが収率4.8%で得られたのみであった。
【0181】
【発明の効果】
本発明の多孔性配位不飽和金属錯体は、配位不飽和金属が規則的に配列しているため、反応基質を選択することができ、これを選択的な反応に付すことができる。加えて、当該錯体が有する空孔は、比較的大きいことから、酸素やメタンガス等の小分子のみならず、これらより大きな分子を選択的に取り込むことが可能であり、且つ配位不飽和金属の作用によって取り込んだ分子に触媒作用を示し、或いは当該分子をそのまま保持することができる。
【0182】
従って、本発明の多孔性配位不飽和金属錯体は、反応基質特異性の高い触媒または保持機能化合物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】「金属錯体ユニット」の概念図
【図2】「金属錯体ユニット」における「配位受容部位」と「配位ドナー部位」
【図3】「多孔性配位不飽和金属錯体」が構成される模式図
【図4】多孔性配位不飽和金属錯体が有する空孔の模式図
【図5】サレンタイプ有機配位子(実施例1−2)のNMRチャート
【図6】実施例1−2〜5、8のIRチャート
【図7】多孔性配位不飽和金属錯体の単結晶X線構造解析の結果
【図8】多孔性配位不飽和金属錯体の粉末X線回折の結果
【図9】多孔性配位不飽和金属錯体の熱重量測定の結果
【図10】実施例2−2のIRチャート
【図11】実施例2−2の多孔性配位不飽和金属錯体の粉末X線回折結果

Claims (7)

  1. 金属および有機配位子で構成された金属錯体ユニットが架橋金属を介して連結されたものであり、
    該連結によって空孔が形成されており、
    該空孔の孔径が10Å以上であり、且つ
    該金属錯体ユニット中の金属が配位不飽和状態にあることを特徴とする多孔性配位不飽和金属錯体。
  2. 上記有機配位子中、上記金属に配位する部位の少なくとも1つが15族元素である請求項1に記載の多孔性配位不飽和金属錯体。
  3. 上記有機配位子が、下記式(I)で表わされる化合物である請求項1に記載の多孔性配位不飽和金属錯体。
    Figure 2004285315
    [式中、
    Aは、単結合若しくは二重結合を示すか、または存在せず、
    Xは、C−C10単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基αを1〜4個有する)、または含窒素ヘテロアリール基を示し、
    Yは、水酸基、アミノ基、チオール基、ジ(C−Cアルキル)アミノ基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、またはジアリールホスフィノ基を示し、
    およびRは、同一または異なって、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、またはシアノ基を示すか、或いはR、R、それぞれに隣接した炭素原子およびAが一体となった下記部分構造が、C−C22単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)またはC−C環状炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)を示し、
    Figure 2004285315
    αは、カルボキシル基、含窒素ヘテロアリール基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、ジアリールホスフィノ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、およびチオール基よりなる群から選択される基を示し、
    βは、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、およびシアノ基よりなる群から選択される基を示す。]
  4. 2つの配位ドナーを有し該ドナー間の距離が10Å以上である有機配位子と金属を反応させて、該金属が配位不飽和状態にある金属錯体ユニットを調製し、
    該金属錯体ユニットまたはその溶液を、架橋金属またはその溶液と混合することによって、該架橋金属を介して該金属錯体ユニットを連結することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性配位不飽和金属錯体の製造方法。
  5. 触媒として用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性配位不飽和金属錯体の使用方法。
  6. 下記式(II)で表わされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性配位不飽和金属錯体を構成するための金属錯体ユニット。
    Figure 2004285315
    [式中、
    Aは、単結合若しくは二重結合を示すか、または存在せず、
    Mは、配位不飽和状態にある金属原子を示し、
    Xは、C−C10単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基αを1〜4個有する)、または含窒素ヘテロアリール基を示し、
    Y’は、酸素原子、NH基、硫黄原子、ジ(C−Cアルキル)アミノ基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、またはジアリールホスフィノ基を示し、
    ’およびR’は、同一または異なって、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、またはシアノ基を示すか、或いはR’、R’、それぞれに隣接した炭素原子およびAが一体となった下記部分構造が、C−C22単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)またはC−C環状炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)を示し、
    Figure 2004285315
    αは、カルボキシル基、含窒素ヘテロアリール基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、ジアリールホスフィノ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、およびチオール基よりなる群から選択される基を示し、
    βは、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、およびシアノ基よりなる群から選択される基を示す。]
  7. 下記式(III)で表わされることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔性配位不飽和金属錯体を構成するための有機配位子。
    Figure 2004285315
    [式中、
    Aは、単結合若しくは二重結合を示すか、または存在せず、
    Xは、C−C10単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基αを1〜4個有する)、または含窒素ヘテロアリール基を示し、
    Yは、水酸基、アミノ基、チオール基、ジ(C−Cアルキル)アミノ基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、またはジアリールホスフィノ基を示し、
    ’およびR’は、同一または異なって、水素原子、C−Cアルキル基、C−Cアルケニル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、またはシアノ基を示すか、或いはR’、R’、それぞれに隣接した炭素原子およびAが一体となった下記部分構造が、C−C22単環若しくは縮合芳香族炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)またはC−C環状炭化水素基(後述する基βを1〜4個有していてもよい)を示し、
    Figure 2004285315
    αは、カルボキシル基、含窒素ヘテロアリール基、ジ(C−Cアルキル)ホスフィノ基、ジアリールホスフィノ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、およびチオール基よりなる群から選択される基を示し、
    βは、C−Cアルキル基、C−Cアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、およびシアノ基よりなる群から選択される基を示す。]
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