明 細 書
脂質代謝改善物質のスクリーニング方法
技術分野
[0001] 本発明は、過剰発現により ABCA1の発現を制御する LXR転写共役因子を用いて LXR標的遺伝子の発現量を変動させる物質をスクリーニングする方法、前記 LXR転 写共役因子の発現量を変動させる物質をスクリーニングする方法、前記 LXR転写共 役因子と LXRとの結合を制御する物質をスクリーニングする方法等に関する。
背景技術
[0002] 核内受容体である肝臓 X受容体 (liver X receptor: LXR) a及び LXR β (以下 LXRと 記載)は生体内のコレステロール、及び脂肪酸のホメォスタシスを制御していると報告 されている(非特許文献 1参照)。生体内の過剰なコレステロール力 ォキシステロ一 ルが産生され、それがリガンドとして LXRを活性ィ匕する。 LXRはコレステロールの代謝 や輸送を担っている分子の遺伝子上流にある応答配列に結合し、それらの転写を制 御することで、生体内のコレステロールバランスを負の方向 (排出方向)に制御する。 例えば、肝臓ではコレステロールを小腸へ排出する律速酵素である胆汁酸合成酵素 CYP7Aの発現を促進する(非特許文献 2、 3参照)。小腸では LXRは ATP結合カセット 輸送担体 (ATP- binding cassette transporter: ABC)A1、 ABCG5、 ABCG8の発現を誘 導しコレステロールの排出や吸収抑制を行う(非特許文献 4参照)。動脈硬化巣では LXRは ABCA1やアポ蛋白質の発現を誘導し、コレステロール逆転送系を促進し、抗 動脈硬化作用を持つと報告されている (非特許文献 5-8参照)。さらに、 LXRは肝臓 で糖新生を促進する酵素の発現を抑制し、脂肪では糖代謝を促進する糖輸送担体 GLUT4の発現を誘導し、インスリン抵抗性を改善する可能性が報告されて 、る (非特 許文献 9参照)。
[0003] これらの知見より、 LXRが脂質代謝や糖代謝の改善に有用であることから、 LXRを 活性化する合成 LXRァゴ-ストの探索が盛んに行われて!/、るが、これまでの LXRとの 結合を指標にしたスクリーニングにより得られた合成 LXRァゴニストは、マウスへの投 与により血中、及び肝臓中のトリグリセリド (triglyceride:TG)含量を増加させるという望
ましくない作用を惹起する (非特許文献 10参照)。これは LXRが脂肪酸のホメォスタシ スの制御も担っており、合成 LXRァゴニストによりステロール制御因子結合蛋白 (sterol regulatory element-binding protein:SREBP)lcの発現が誘導され、 TG合成を 亢進したためと考えられる。また、ヒト肝癌由来 HepG2細胞においても合成 LXRァゴ- ストは SREBPlcの発現を増加させ、マウスのみならず、ヒトでも TG合成が亢進すると 考えられた。
[0004] LXRの転写誘導活性には他の核内受容体と同様に転写共役因子群との相互作用 が必要である。 ABCA1と SREBPlc遺伝子の LXRによる転写活性制御には異なる転写 共役因子が関与することが報告されている (非特許文献 11参照)。また、核内受容体 に結合する転写共役因子の種類はその核内受容体に結合しているァゴ-ストにより 変化し、どの転写共役因子が結合したかでその核内受容体が認識する応答配列 (応 答遺伝子)も変化することがペルォキシソーム増殖剤応答性核内受容体 (peroxisome proliferator- activated receptor:PPAR) aや PPAR yで報告されている(非特許文献 12 、 13参照)。
[0005] clone6は、その塩基配列が特許文献 1、非特許文献 14に記載されて 、るが、その機 能については不明である。
[0006] 特許文献 1:国際公開第 01/64834号パンフレット
特許文献 2:国際公開第 02/70539号パンフレット
非特許文献 1:「ネィチヤ一'メデイシン(Nature Medicine)」、(英国)、 2002年、第 8卷 、 p.1243-1248
非特許文献 2 :「ネイチヤー(Nature)」、(英国)、 1996年、第 383卷、 p.728-731 非特許文献 3 :「セル(Cell)」、(米国)、 1998年、第 93卷、 p.693- 704
非特許文献 4 :「サイエンス(Science)」、(米国)、 2000年、第 289卷、 p.1524- 1529 非特許文献 5:「プロシーディンダス ·ォブ ·ザ ·ナショナル ·アカデミー ·ォブ ·サイェン シズ ·ォブ ·ザ ·ユナイテッド ·ステイツ ·ォブ ·アメリカ(Proceedings of the National
Academy of Scineces of the United States of America)」、(米国)、 2003年、第 97卷、 p.12097-12102
非特許文献 6 :「モレキユラ一 ·セル(Molecular Cell) J , (米国)、 2001年、第 7卷、
p.161-171
非特許文献 7 :「フエブス'レターズ(FEBS Letters)」、(米国)、 2003年、第 536卷、 p.6-11
非特許文献 8:「プロシーディンダス ·ォブ ·ザ ·ナショナル ·アカデミー ·ォブ ·サイェン シズ ·ォブ ·ザ ·ユナイテッド ·ステイツ ·ォブ ·アメリカ(Proceedings of the National Academy of Scineces of the United States of America)」、(米国)、 2002年、第 99卷、 p.7604-7609
非特許文献 9:「プロシーディンダス ·ォブ ·ザ ·ナショナル ·アカデミー ·ォブ ·サイェン シズ ·ォブ ·ザ ·ユナイテッド ·ステイツ ·ォブ ·アメリカ(Proceedings of the National Academy of Scineces of the United States of America)」、(米国)、 2003年、第 100卷 ゝ p.5419-5424
非特許文献 10 :「ジーンズ'アンド'ディべロプメント(Genes and Development)」、(米 国)、 2000年、第 14卷、 p.2831-2838
非特許文献 11 :「モレキユラ一'アンド'セルラ一'バイオロジー(Molecular and Cellular Biology)」、(米国)、 2003年、第 23卷、 p.5780-5789
非特許文献 12 :「プログレス'イン'メディシン(Progress in Medicine) J , 1999年、第 19 卷、 ρ.2507-2513
非特許文献 13 :「モレキユラ一'アンド'セルラ一'エンドクリノロジー (Molecular and
Cellular Endocrinology)」、(米国)、 2001年、第 176卷、 p.49- 56
非特許文献 14 :「ディェヌエイ'リサーチ(DNA Resarch)」、 1998年、第 5卷、 p.31- 39 発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明の目的は、 LXRの転写共役因子を同定し、それらの作用を制御する物質を スクリーニングすることで、 TG合成亢進と 、つた副作用のな 、既存の合成 LXRァゴ- ストとは異なる効果を有する脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬を スクリーニングする方法を提供することである。 課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは、上述の知見から、 LXRに結合する転写共役因子が変われば LXRが
転写誘導する遺伝子群が変わることから、転写共役因子の活性又は発現を制御す れば、 TG合成亢進といった副作用のない多様な症状に対応した脂質代謝改善がで きると考えた。そしてこの目的は LXRに結合する転写共役因子を同定し、それらの LXRの転写誘導活性への影響を明らかにし、その転写共役因子の活性を脂質代謝 を改善する方向へ調節することで達成できると考えた。そこで LXRに結合する蛋白質 を、酵母ツーハイブリッド (Yeast Two Hybrid: Y2H)法により同定した (実施例 1)。その 結果、 LXRM (GenBankァクセッション番号 NM_032752)力 XRに結合することを見出 し、加えて、 LXRMと相同性の高い配列番号 2のアミノ酸配列力もなる clone6も LXRと 結合することを見出した (実施例 2-4)。
[0009] 従来の合成 LXRァゴ-ストは SREBPlc及び ABCA1の発現をともに亢進方向に制御 するが、脂質代謝を改善するためには、 TG合成を促進する SREBPlcは発現抑制方 向に、コレステロール排出作用ゃ抗動脈硬化症作用を有する ABCA1は発現亢進方 向に制御するのが好ましい。 clone6の過剰発現により、 SREBPlcの転写活性が亢進 し、 ABCA1の転写活性が抑制されたことから (実施例 5)、 clone6の作用を抑えることに より、 ABCA1の転写活性ィ匕を介してコレステロールの排出、代謝が亢進し、 SREBPlc の転写抑制を介して TGの産生が抑制され、 TG合成亢進という副作用を伴わずに脂 質代謝が改善されることが明らかになった。
[0010] そこで、 clone6存在下で、 ABCA1の発現が亢進、及び/又は SREBPlcの発現が抑 制するように LXRの転写活性を制御する物質、 clone6の発現を抑制し、及び/又は cl0ne6の LXRへの結合を抑制する物質、すなわち、脂質代謝改善薬、及び/又はイン スリン抵抗性改善薬のスクリーニング系を構築し、本発明を完成させた。
[0011] すなわち本発明は、以下のスクリーニング方法、スクリーニングにより得られた物質 を用いた脂質代謝改善、及び/又はインスリン抵抗性改善用医薬組成物の製造方法 等に関する。
[1] (1) (0配列番号 2で表されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号 2で表されるアミノ酸配列との同一性が 90%以上であるアミノ酸配列、或 いは
(m)配列番号 1で表されるポリヌクレオチド又はその相補配列にストリンジェントな条件
でノ、イブリダィズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列 を含み、かつ過剰発現により ABCA1の発現を制御するポリペプチド
をコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターにより形質転換された細胞に試験 物質を接触させる工程、並びに、
(2)試験物質依存的な LXRの転写活性の変化を分析する工程
を含む脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングする方 法。
[2] (1) (0配列番号 2で表されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号 2で表されるアミノ酸配列との同一性が 90%以上であるアミノ酸配列、或 いは
(m)配列番号 1で表されるポリヌクレオチド又はその相補配列にストリンジェントな条件 でノ、イブリダィズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列
を含み、かつ過剰発現により ABCA1の発現を制御するポリペプチドをコードするポリ ヌクレオチドを含む発現ベクター、並びに、
(2)配列番号 5で表される塩基配列、若しくは配列番号 5で表される塩基配列との相同 性が 90%以上である塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有する SREBPlcの プロモーター領域を含むポリヌクレオチド、又は
配列番号 6で表される塩基配列、若しくは配列番号 6で表される塩基配列との相同性 が 90%以上である塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有する ABCA1のプロ モーター領域を含むポリヌクレオチド
と融合されたレポーター遺伝子
により形質転換された細胞。
[3] LXRをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は RXRをコードす るポリヌクレオチドを含む発現ベクターにより形質転換された [2]に記載の細胞。
[4]レポーター遺伝子がルシフェラーゼ遺伝子である [2]又は [3]に記載の細胞。
[5] (1) [2]— [4]に記載の細胞に試験物質を接触させる工程、
(2)レポーター遺伝子の発現を指標として試験物質依存的な ABCA1、又は SREBPlc の転写活性の変化を分析する工程、並びに
(3)ABCA1の転写を活性ィ匕し、及び/又は SREBPlcの転写を抑制する試験物質を選 択する工程を含む、 ABCA1の転写を活性ィ匕し、及び/又は SREBPlcの転写を抑制す る物質をスクリーニングする方法。
[6] ABCA1の転写を活性ィ匕し、及び/又は SREBPlcの転写を抑制する物質が脂質代 謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬である [5]記載のスクリーニング方法。
[7] (1) (0配列番号 2で表されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号 2で表されるアミノ酸配列との同一性が 90%以上であるアミノ酸配列、或 いは
(m)配列番号 1で表されるポリヌクレオチド又はその相補配列にストリンジェントな条件 でノ、イブリダィズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列
を含み、かつ過剰発現により ABCA1の発現を制御するポリペプチドが発現して ヽる 細胞に試験物質を接触させる工程、並びに
(2)前記細胞内における前記ポリペプチドの試験物質依存的な発現量の変化を分析 する工程
を含む、前記ポリペプチドの細胞内における発現を抑制する物質力 なる脂質代謝 改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングする方法。
[8] (1) (0配列番号 2で表されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号 2で表されるアミノ酸配列との同一性が 90%以上であるアミノ酸配列、又 は
(iii)配列番号 1で表されるポリヌクレオチド若しくはその相補配列にストリンジェントな 条件でノ、イブリダィズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列
を含み、かつ過剰発現により ABCA1の発現を制御するポリペプチド、或いは該ポリべ プチドが発現して 、る細胞に試験物質を接触させる工程、並びに
(2) LXRと LXRに結合する物質の試験物質依存的な相互作用の変化を分析するェ 程
を含む、脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングする 方法。
[9] (1) (0配列番号 2で表されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号 2で表されるアミノ酸配列との同一性が 90%以上であるアミノ酸配列、又 は
(iii)配列番号 1で表されるポリヌクレオチド若しくはその相補配列にストリンジェントな 条件でノ、イブリダィズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列
を含み、かつ過剰発現により ABCA1の発現を制御するポリペプチド、或いは該ポリべ プチドが発現して 、る細胞に試験物質を接触させる工程、並びに、
(2)前記ポリペプチドと LXRとの結合を測定する工程
を含む、前記ポリペプチドと LXRとの結合を阻害する物質をスクリーニングする方法。
[10] [9]記載のポリペプチドと LXRとの結合を阻害する物質が、脂質代謝改善薬、及 び/又はインスリン抵抗性改善薬である [9]記載のスクリーニング方法。
[11] [5]— [10]に記載のスクリーニングする方法を用いてスクリーニングする工程、及 び、前記スクリーニングにより得られた物質を用いて製剤化する工程を含む、脂質代 謝改善、及び/又はインスリン抵抗性改善用医薬組成物の製造方法。
[0012] [1]、 [6]— [8]、及び [10]記載の脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善 薬をスクリーニングする方法は、脂質代謝改善作用分析工程、及び/又はインスリン 抵抗性改善作用分析工程を更に含むことがより好ましい。
本発明のスクリーニング方法で得られるインスリン抵抗性改善薬は、インスリン抵抗 性を伴う 2型糖尿病患者の 2型糖尿病改善薬として好ましい。
発明の効果
[0013] 本発明者らは clone6が LXRの転写共役因子であることを初めて明らかにした。また 、 clone6存在下で LXRの転写活性を制御する物質、 clone6の発現を抑制し、及び/又 は clone6の LXRへの結合を抑制する物質を探索するスクリーニング方法等は本発明 者らにより初めて提供された方法である。本方法により、 TG合成亢進といった副作用 のない、脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングするこ とがでさる。
図面の簡単な説明
[0014] [図 1]図 1は、 (A) RXR a存在下で LXRァゴ-スト T-0901317の濃度依存的な SREBPlc 遺伝子の転写活性、 (B) RXR a存在下で T-0901317の濃度依存的な ABCA1遺伝子
の転写活性、及び (C) RXR a非存在下で T-0901317の濃度依存的な ABCAl遺伝子 の転写活性を示す図である。縦軸は T-0901317非添加での SREBP1 c遺伝子又は ABCA1遺伝子の転写活性を 100としたときの相対値を示している。横軸は T-0901317 の濃度 M)を示している。 Dunnett検定で、 *は P〈0.05、 **は P〈0.01を示している。
[図 2]図 2は、(A) T-0901317存在下で clone6の発現量依存的な SREBPlc遺伝子の転 写活性、及び(B) T-0901317存在下で clone6の発現量依存的な ABCA1遺伝子の転 写活性を示す図である。縦軸は細胞を clone6発現ベクターで形質転換しな力つた時 の SREBPlc遺伝子又は ABCA1遺伝子の転写活性を 100としたときの相対値を示して V、る。横軸は細胞に形質移入した clone6発現ベクターの量 (ngZゥエル)を示して ヽ る。 Dunnett検定で、 *は P〈0.05を示している。
[図 3]図 3は、(A) T-0901317非存在下、及び Mevastatin存在下で clone6の発現量依 存的な SREBPlc遺伝子の転写活性、並びに(B) T-0901317非存在下、及び
Mevastatin存在下で clone6の発現量依存的な ABCA1遺伝子の転写活性を示す図で ある。縦軸は細胞に clone6を形質移入しなかった時の SREBPlc遺伝子又は ABCA1 遺伝子の転写活性を 100としたときの相対値を示して ヽる。横軸は細胞に形質移入し た clone6発現ベクターの量(ngZゥエル)を示している。 Dunnett検定で、 *は P〈0.05を 示している。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
[1] 本発明の細胞
本発明の細胞には、 i)機能的 clone6をコードするポリヌクレオチドを含む発現べクタ 一、及び ii)配列番号 5で表される塩基配列、若しくは配列番号 5で表される塩基配列 との相同性が 90%以上である塩基配列からなり、かつプロモーター活性を有する SREBPlcのプロモーター領域を含むポリヌクレオチド、又は配列番号 6で表される塩 基配列、若しくは配列番号 6で表される塩基配列との相同性が 90%以上である塩基 配列からなり、かつプロモーター活性を有する ABCA1のプロモーター領域を含むポリ ヌクレオチドと融合されたレポーター遺伝子により形質転換された細胞が含まれる。 必要に応じて、さらに、 LXRをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/
又は RXRをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで形質転換して作製する ことができる。
[0016] (1)配列番号 2で表されるアミノ酸配列を含み、かつ過剰発現により ABCA1の発現を 制御する、好ましくは抑制する、更に好ましくは 1/2倍以下に抑制するポリペプチド;
(2)配列番号 2で表されるアミノ酸配列との同一性が 90%以上、好ましくは 95%以上、 更に好ましくは 98%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含み、かつ過剰発現により ABCA1の発現を制御する、好ましくは抑制する、更に好ましくは 1/2倍以下に抑制す るポリペプチド(以下、相同 clone6と称する);、並びに、
(3)配列番号 1で表されるポリヌクレオチド又はその相補配列にストリンジヱントな条件 でノ、イブリダィズするポリヌクレオチドでコードされるアミノ酸配列
を含み、かつ過剰発現により ABCA1の発現を制御する、好ましくは抑制する、更に好 ましくは 1/2倍以下に抑制するポリペプチド(以下、ハイプリ clone6と称する); について、(1)一(3)を総称して、以下では「機能的 clone6」と称する。
[0017] なお、本明細書における前記「同一性」とは、 Clustal program (Higgins and Sharp, Gene 73, 237—244, 1998; Thompson et al. Nucl. Acids Res. 22, 4673—4680, 1994) ( Clustal V)検索によりデフォルトで用意されて 、るパラメータを用いて得られた値を意 味する。前記のパラメータは以下のとおりである。
Pairwise Alignment Parametersとし飞
K tuple 1
ap Penalty ύ
Window 5
Diagonals Saved 5
[0018] 本明細書における前記「ストリンジェントな条件」でのハイブリダィゼーシヨンとは、非 特異的な結合が起こらない条件を意味し、例えば Sambrookら、 "Molecular し loning— A Laboratory Manual 、し old bpnng Harbor Laboratory ^ NY、 1989年【こ ci 載の条件等が挙げられる。具体的には、2 33じ(1 33じの組成:0.15 M NaCl、 0.015 Mクェン酸ナトリウム、 pH7.0)、 0.5%SDS、 5 Xデンハート及び 100 mg/ml-シン 精子 DNAを含む溶液中でプローブとともに 50°Cでー晚保温するという条件であり、最
も好ましくは 6 X SSC、 0.5%SDS、 5 Xデンハート及び 100 mg/ml-シン精子 DNAを含 む溶液中でプローブとともに 65°Cでー晚保温するという条件である。
[0019] また、本明細書における前記「過剰発現により ABCA1の発現を制御する」とは、ある ポリペプチドを細胞に過剰発現させることによって、過剰発現させな!/、場合と比較し て、細胞内の ABCA1の発現量が増カロ、又は減少することをいう。増加する場合は、該 ポリペプチドが ABCA1の発現を促進すると、また、減少する場合は、該ポリペプチド が ABCA1の発現を抑制するということができる。促進、又は抑制の倍率は、該ポリべ プチドを過剰発現させなかった細胞に対する、過剰発現させた細胞の細胞内におけ る ABCA1の発現量の比によって求めることができ、 ABCA1の発現量力 1.2倍以上に 増カロ、又は 0.83倍以下に減少していることを確認することにより、該ポリペプチドは過 剰発現により ABCA1の発現を制御するということができる。
細胞に検討対象のポリペプチドを過剰発現させるには、例えば、該ポリペプチドを コードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターで細胞を形質転換させればよ!、。また 、比較に用いる過剰発現させない細胞は、形質転換させなくてもよいし、該ポリぺプ チドをコードするポリヌクレオチドを含まな 、発現ベクターで形質転換させてもょ 、。 ABCA1の発現の制御の検出は、具体的には、例えば実施例 5に記載の方法により実 施できる。
[0020] 形質転換により細胞に検討対象のポリペプチドが過剰発現したか否かを調べるに は、また、細胞内の ABCA1の発現量を調べるには、細胞抽出液を用い、検討対象の ポリペプチド又は ABCA1を検出できる抗体を使用したウェスタンブロッテイング、或 ヽ は、検討対象のポリペプチド又は ABCA1をコードするポリヌクレオチドを特異的に検 出するプライマーを使用したリアルタイム PCRなどにより確認することができる。過剰 発現させな力つた細胞と比較して、過剰発現させた細胞で検討対象のポリペプチド の発現量が多いこと、好ましくは 2倍以上になっていることを確認することにより、検討 対象のポリペプチドが過剰発現されたと判断することができる。
[0021] さらに、本明細書における前記「プロモーター活性」とは、 RNA重合酵素 (RNA
polymerase)が結合し RNA分子の合成を開始させる特定の DNA塩基配列であるプロ モーターが、下流遺伝子の mRNAの転写量を制御する活性のことを 、う。
プロモーター活性を有するか否かは、具体的には例えば、レポーター遺伝子アツセ ィ(田村ら、転写因子研究法、羊土社、 1993年)により測定することができる。レポータ 一遺伝子アツセィとはレポーター遺伝子の発現をマーカーとして遺伝子の発現調節 を検出する方法である。プロモーター活性を有すれば、プロモーター領域の下流に 配置されたレポーター遺伝子の転写が活性化する。レポーター遺伝子の転写が好ま しくは 2倍以上活性ィ匕すれば、プロモーター活性を有するということができる。レポ一 ター遺伝子アツセィは具体的には例えば実施例 5に記載の方法により実施できる。
[0022] 機能的 clone6をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドは、配列番号 2記載の アミノ酸配列で示されるポリペプチド、相同 clone6、及びハイブリ clone6をコードする塩 基配列を含むポリヌクレオチドならいずれでもよい。また、同じ分子種として同定され るもので、過剰発現により ABCA1の発現を制御するものであればいずれの種由来の ものであってもよぐ例えばヒト(WO2001/64834号)やマウスなどの哺乳動物由来のも のを用いることもできる。好ましくは、配列番号 2記載のアミノ酸配列をコードする塩基 配列を含むポリヌクレオチドであり、更に好ましくは、配列番号 1記載の塩基配列を含 むポリヌクレオチドである。
[0023] LXRは、 LXR aと LXR jSのいずれのサブタイプでもよぐまた同じ分子種として同定 されるもので、核内受容体としての生体内での機能を果たすものであれば 、ずれの 種由来のものであってもよい。「LXRをコードするポリヌクレオチド」としては、例えばヒ ト(GenBankァクセッション番号 U22662、 NM_007121)、マウス(GenBankァクセッション 番号 AF085745、 U09419)、ラット(GenBankァクセッション番号 U11685、 U14533)など 哺乳動物由来のものを用いることができる。好ましくは、配列番号 7、又は配列番号 9 で表されるヒト LXRの塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いることができる。
[0024] RXRは、 RXR a、 RXR β、 RXR yなど 、ずれのサブタイプであってもよぐまた同じ 分子種として同定されるもので、核内受容体としての生体内での機能を果すものであ ればいずれの種由来のものであってもよい。「RXRをコードするポリヌクレオチド」とし ては、例えばヒト(GenBankァクセッション番号 X52773、 NM_021976、 NM_006917)、マ ウス(GenBankァクセッション番号 M84817、 NM_011306、 NM_009107)など哺乳動物由 来のものを用いることができる。好ましくは、配列番号 11で表されるヒト RXR aの塩基
配列を含むポリヌクレオチドを用いることができる。
[0025] 機能的 clone6、 LXR、 RXRをコードするポリヌクレオチドは、既知のアミノ酸配列や塩 基配列の情報などをもとに設計し合成したプライマーやプローブを用いて、 PCR (Polymerase Chain reaction)法やハイブリダィゼーシヨンによるスクリーニングにより、 cDNAライブラリ一力も単離できる。具体的には実施例 1乃至実施例 3、及び実施例 5 に記載の方法により実施できる。
[0026] 「SREBPlcのプロモーター領域を含むポリヌクレオチド」は、下流の遺伝子の mRNA の転写量を制御する活性であるプロモーター活性を有するものであれば、 、ずれの 種由来のものであってもよぐ例えばマウス (GenBankァクセッション番号 AB046200)、 ラット、ヒトなどの哺乳動物由来の SREBPlcのプロモーターの一部、若しくは全部を含 むポリヌクレオチド、又は該ポリヌクレオチドと 90%以上の相同性を有するポリヌクレオ チドを用いることができる (Amemiya-Kudoら、 J. Biol. Chem.、第 275卷、第
31078-31085頁、 2000年)。好ましくは配列番号 5で表される塩基配列との相同性が 90 %以上、より好ましくは 95%以上、更に好ましくは 98%以上である塩基配列力 なり、 し力もプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを、また、更により好ましくは、配列 番号 5で表される塩基配列からなるポリヌクレオチドを SREBPlcのプロモーター領域を 含むポリヌクレオチドとして用いることができる。
[0027] 「ABCA1のプロモーター領域を含むポリヌクレオチド」は、下流の遺伝子の mRNAの 転写量を制御する活性であるプロモーター活性を有するものであれば、 、ずれの種 由来のものであってもよく、例えばヒト(GenBankァクセッション番号 AF287262)、マウ ス (GenBankァクセッション番号 AF287263)、ラットなどの哺乳動物由来の ABCA1のプ 口モーターの一部、若しくは全部を含むポリヌクレオチド、又は、該ポリヌクレオチドと
90%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを用いることができる(Langmannら、 J. Biol. Chem.、第 277卷、第 14443- 14450頁、 2002年; Yangら、 Journal of Lipid Research,第 43卷、第 297-306頁、 2002年)。好ましくは配列番号 6で表される塩基配 列との相同性が 90%以上、より好ましくは 95%以上、更に好ましくは 98%以上である 塩基配列からなり、し力もプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを、また、更によ り好ましくは、配列番号 6で表される塩基配列力もなるポリヌクレオチドを ABCA1のプ
口モーター領域を含むポリヌクレオチドとして用いることができる。
[0028] SREBPlcのプロモーター領域、及び ABCA1のプロモーター領域を含むポリヌクレオ チドは、既知の塩基配列の情報などをもとに設計し合成したプライマーやプローブを 用いて、 PCR法やハイブリダィゼーシヨンによるスクリーニングにより、染色体 DNAから 単離できる。具体的には実施例 5に記載の方法により実施できる。
前記のように単離されたポリヌクレオチドを含む断片は、適当な発現ベクターに組 み込むことにより、真核生物及び原核生物の宿主細胞に形質移入することができるよ うになり、宿主細胞において、形質移入したポリヌクレオチドによりコードされるポリべ プチドを発現させることが可能である。発現ベクターには、宿主細胞に応じて適宜選 択した公知の発現ベクターを用いることができる他、宿主細胞に応じて適宜選択した ベクタープラスミドに適当なプロモーター及び形質発現にかかわる配列を導入したも のを用いることができる。数種類のポリヌクレオチドで同時に一つの細胞を形質転換 する場合は、数種類のポリヌクレオチドが一つの発現ベクターに含まれるように構成 してもよく、または各々別々の発現ベクターに含まれるように構成してもよい。あるい は、このような構成が染色体 DNAに組み込まれた細胞を取得してこれを用いてもょ ヽ 。所望のポリヌクレオチドを導入した発現ベクターは、 DEAE-デキストラン法(Luthman ら、 Nucleic Acids Res.,第 11卷、第 1295- 1308頁、 1983年)、リン酸カルシウム- DNA 共沈殿法(Grahamら、 Virology,第 52卷、第 456-457頁、 1973年)、市販のトランスフエ クシヨン試薬である Lipofectamine 2000 (インビトロジェン社)や FuGENE 6 (Roche Molecular Biochemicals社)を用いた方法、及び電気パルス穿孔法(Neumannら、 EMBO 、第 1卷、第 841-845頁、 1982年)等により宿主細胞に取り込ませ、形質転換 させることがでさる。
[0029] プロモーター領域の下流に配置される「レポーター遺伝子」は、一般に用いられるも のであれば特に限定されないが、定量的測定が容易な酵素遺伝子などが好ましい。 例えば、バクテリアトランスポゾン由来のクロラムフエ-コールァセチルトランスフェラ ーゼ遺伝子 (CAT)、ホタル由来のルシフェラーゼ遺伝子 (Luc)、クラゲ由来の緑色蛍 光蛋白質遺伝子 (GFP)等が挙げられる。好ましくはルシフェラーゼ遺伝子である。レ ポーター遺伝子は、プロモーター領域に機能的に連結されているものが用いられる。
プロモーター領域に連結されたレポーター遺伝子も、一般的な遺伝子組み換え技術 を用いて構築し、この構成をベクタープラスミド中に組み込んだ上、得られた組み換 えプラスミドを前記の方法で宿主細胞中に形質移入することができる。
[0030] 具体的【こ i 、「Molecuiarし loningj「SamDrookり、 し old Spring Harbor Laboratory Press, 1989年」に記載の方法により、 LXR、 RXR、機能的 clone6をコードするポリヌク レオチドを単独、あるいは連結し、哺乳動物細胞用の発現ベクター pcDNA3.1に組み 込むことにより、所望の蛋白質の発現ベクターを得ることができる。また、 SREBPlc及 び ABCA1のプロモーター領域を含むポリヌクレオチドを単独でピツカジーンべーシッ クベクター 2(東洋インキ製造株式会社)に組み込むことでプロモーター領域にレポ一 ター遺伝子が融合した発現ベクターを得ることができる。
[0031] 前記のように作製した発現ベクターを用いて、具体的には、 0機能的 clone6をコー ドするポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び ii) SREBPlc,又は ABCA1のプロモ 一ター領域と融合されたレポーター遺伝子で、 NIH-3T3細胞を Lipofectamine 2000 ( インビトロジェン社)を用いて形質転換させることができる。さらに iii) LXRをコードする ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は iv) RXRをコードするポリヌクレオチド を含む発現ベクターも同時に、該 NIN-3T3細胞に、形質移入させることができる。内 在性の LXR及び RXRが豊富に存在する細胞、例えば肝臓由来細胞などを宿主細胞 として用いる場合は、 0機能的 clone6をコードするポリヌクレオチドを含む発現べクタ 一、及び ii) SREBPlc,又は ABCA1のプロモーター領域と融合されたレポーター遺 伝子を形質移入してもよい。また、内在性の RXRが豊富に存在する細胞、例えば脂 肪由来細胞などを宿主細胞として用いる場合には、 0機能的 cl0ne6をコードするポリ ヌクレオチドを含む発現ベクター、 ii) SREBPlc,又は ABCA1のプロモーター領域と融 合されたレポーター遺伝子、及び iii) LXRをコードするポリヌクレオチドを含む発現べ クタ一を形質移入してもよい。より具体的には、実施例 5に記載の方法により実施する ことができる。
[0032] 上記で得られる所望の形質転換細胞は、常法に従!、培養することができ、該培養 により所望の蛋白質が生産される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主 細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択できる力 核内受容体に作用するこ
とが報告されて 、るフエノールレッドを含まな 、培地を使用するほうが好まし 、。培地 に添加する血清は活性炭、及びデキストラン処理活性炭で血清中に含まれる微量成 分を吸着除去したものを使用するほうが好まし 、。例えば上記 NIH-3T3細胞であれ ば、活性炭、及びデキストラン処理活性炭で処理した牛胎児血清等の血清成分を添 加したフエノールレッド不含ダルベッコ修飾イーグル最小必須培地(DMEM)等の培 地を使用できる。
[0033] [2] 本発明のスクリーニング方法
本発明のスクリーニング方法には、機能的 clone6の作用及び/又は発現量を制御 する試験物質を、以下に挙げる活性や発現量を指標にスクリーニングする方法が含 まれる。
1.機能的 clone6存在下で、 LXRの転写活性として、
A) ABCA1、及び Z又は SREBPlcの転写活性
B) LXR応答配列に融合されたレポーター遺伝子の発現量
C) LXR標的遺伝子の発現量
を指標にスクリーニングする方法
2.機能的 Clone6の発現量を指標にスクリーニングする方法
3. LXRと LXRに結合する物質の相互作用の変化を指標にスクリーニングする方法 以下にこれらのスクリーニング方法について説明する。
[0034] 1.機能的 Clone6存在下で、 LXRの転写活性を指標にスクリーニングする方法
本発明の実施態様としては、機能的 clone6をコードするポリヌクレオチドを含む発現 ベクターにより形質転換された細胞に試験物質を接触させ、試験物質依存的な LXR の転写活性の変化を分析する工程を含む、脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン 抵抗性改善薬をスクリーニングする方法が挙げられる。 LXRの転写活性の変化を分 祈するには、具体的には、 A) ABCA1、若しくは SREBPlcの転写活性の変化を分析し てもよく、 B) LXR応答配列に融合されたレポーター遺伝子の発現量の変化を分析し てもよく、又は C)プロモーター領域に LXR応答配列を有する LXR標的遺伝子の発現 量の変化を分析してもよい。以下に A)、 B)及び C)の分析方法を用いたスクリーニング 方法について説明する。
[0035] A)機能的 clone6存在下で、 ABCA1、又は SREBPlcの転写活性を指標にスクリーニン グする方法
本発明の実施態様としては、前記の本発明の細胞に試験物質を接触させ、レポ一 ター遺伝子の発現を指標として試験物質依存的な ABCA1、又は SREBPlcの転写活 性の変化を分析する工程、並びに ABCA1の転写を活性ィ匕し、及び/又は SREBPlcの 転写を抑制する試験物質を選択する工程を含む、 ABCA1の転写を活性化し、及び/ 又は SREBPlcの転写を抑制する物質、すなわち脂質代謝改善薬、及び/又はインス リン抵抗性改善薬をスクリーニングする方法が挙げられる。
[0036] レポーター遺伝子アツセィ (田村ら、転写因子研究法、羊土社、 1993年)は、レポ一 ター遺伝子の発現をマーカーとして遺伝子の発現調節を検出する方法である。一般 に遺伝子の発現調節はその 5'上流域に存在するプロモーター領域と呼ばれる部分 で制御されており、転写段階での遺伝子発現量はこのプロモーターの活性を測定す ることで推測することができる。試験物質がプロモーターを活性ィ匕すれば、プロモータ 一領域の下流に配置されたレポーター遺伝子の転写を活性ィ匕する。このようにプロ モーター活性化作用すなわち発現亢進作用、又はプロモーター抑制作用すなわち 発現抑制作用をレポーター遺伝子の発現に置き換えて検出することができる。したが つて、 SREBPlcのプロモーター領域又は ABCA1のプロモーター領域を用いたレポ一 ター遺伝子アツセィにより、 SREBPlc又は ABCA1の発現調節に対する試験物質の作 用をレポーター遺伝子の発現に置き換えて検出することができる。 SREBPlcのプロモ 一ター領域又は ABCA1のプロモーター領域と融合されたレポーター遺伝子により形 質転換された細胞に試験物質を接触した場合と接触しなカゝつた場合のレポーター遺 伝子の発現量を比較することにより試験物質依存的な転写活性の変化を分析するこ とができる。上記工程を実施することにより、 ABCA1の転写を好ましくは 2倍以上に活 性化し、及び Z又は SREBPlcの転写を好ましくは 1/2倍以下に抑制する物質、すな わち脂質代謝及び Z又はインスリン抵抗性を改善する物質のスクリーニングを実施 できる。具体的には、例えば、実施例 5に記載の方法により、前記スクリーニングを実 施できる。
[0037] B) LXR転写共役因子存在下で、 LXR応答配列に融合されたレポーター遺伝子の発
現量を指標にスクリーニングする方法
本発明の実施態様としては、機能的 clone6をコードするポリヌクレオチドを含む発現 ベクターで形質転換された細胞に、 LXR応答配列を含むポリヌクレオチドに融合され たレポーター遺伝子を同時に形質移入し、そのレポーター遺伝子の発現量の変化を 分析する工程を含む脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリー ニングする方法が挙げられる。
[0038] 「LXR応答配列」とは、 LXRの DNA結合領域が結合し得る応答配列を含むポリヌクレ ォチドのことで、 LXRは RXRとへテロダイマーを形成し、 5,AG(G/T)TCA 3,のモチー フが間に 4塩基はさんで 2回繰り返す配列に結合することが知られている。例えば、マ ウス SREBPlc遺伝子のプロモーターでは、 -282—- 297の部位に LXR応答配列がある ことが知られている(Repaら、 Genes & Dev.、第 14卷、第 2819-2830頁、 2000年)。また 、ヒト、マウス、及びラットの ABCA1遺伝子のプロモーターでは、ェクソン 1の上流約 50 bpの部位に LXR応答配列があることが知られている(Yangら、 Genomics,第 73卷、第 66-76頁、 2001年)。 LXR応答配列は、遺伝子のプロモーターからその領域を切り出 して用いてもよいし、あるいはその配列をィ匕学的に合成してもよい。「応答配列」のより 詳しい定義と実例については、「分子細胞生物学第 4版」(丸山ら訳、東京化学同人 社、 2001年)に記載されている。
[0039] 本発明の一つの実施態様として、具体的には、機能的 clone6をコードするポリヌクレ ォチドを含む発現ベクターを形質移入した細胞に、更に、 0 LXR応答配列を含むポリ ヌクレオチドに融合されたレポーター遺伝子、並びに Z又は iOLXR及び RXRをコード するポリヌクレオチドを含む発現ベクターを形質移入し作製した細胞に試験物質を接 触させ、試験物質によるレポーター遺伝子の発現量の変化を分析することにより実施 できる。 0の LXR応答配列を含むポリヌクレオチドに融合されたレポーター遺伝子に、 例えば、 ABCA1遺伝子プロモーターの LXR応答配列を含むポリヌクレオチドに融合 されたレポーター遺伝子を用いた場合、レポーター遺伝子の発現量を好ましくは 2倍 以上に増加させる試験物質を選択することで、脂質代謝改善薬、及び Z又はインスリ ン抵抗性改善薬をスクリーニングすることができる。また、例えば、 SREBPlc遺伝子プ 口モーターの LXR応答配列を含むポリヌクレオチドに融合されたレポーター遺伝子を
用いた場合、レポーター遺伝子の発現量を好ましくは 1/2倍以下に減少させる試験 物質を選択することで、脂質代謝改善薬、及び Z又はインスリン抵抗性改善薬をスク リー-ングすることができる。
[0040] C)機能的 clone6存在下で、 LXR標的遺伝子の発現量を指標にスクリーニングする方 法
本発明の実施態様としては、機能的 clone6をコードするポリヌクレオチドを含む発現 ベクターにより形質転換された細胞に試験物質を接触させ、プロモーター領域に LXR応答配列を有する遺伝子の試験物質依存的な発現量の変化を分析する工程を 含む脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングする方法 が挙げられる。プロモーター領域に LXR応答配列を有する遺伝子としては、具体的 には SREBPlc遺伝子や ABCA1遺伝子が挙げられる。機能的 clone6をコードするポリ ヌクレオチドを含む発現ベクターにより形質転換された細胞に試験物質を接触させる には、細胞に試験物質を添加又は非添加して一定時間培養する方法がある。試験 物質依存的な SREBPlc、又は ABCA1の発現量の変化は、試験物質非添加の細胞と 試験物質添加の細胞で、 SREBPlc若しくは ABCA1遺伝子の転写産物である mRNA、 または、該 mRNAにより翻訳される蛋白質の量を測定し、比較することにより、分析す ることができる。細胞から回収した RNA中の SREBPlcや ABCA1の mRNA量を、例えば 、リアルタイム PCR法などにより検出することができる。また、 SREBPlc又は ABCA1の mRNAと特異的にハイブリダィゼーシヨンするプローブをあらかじめ固定したプレート を用いたアツセィシステム(HPSATM ;クロマジェン社)により、多数の試験物質をスクリ 一-ングすることが可能である。更に、回収した細胞抽出液中の SREBPlcや ABCA1 の蛋白量を、例えば、免疫化学的な方法 (ウェスタンブロッテイング法など)により検 出することができる。このようにして、試験物質依存的な SREBPlcや ABCA1の発現量 の変化を分析し、 ABCA1の発現量を好ましくは 2倍以上に増力!]させ、及び/又は SREBPlcの発現量を好ましくは 1/2倍以下に低下させる試験物質、すなわち、脂質代 謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングすることができる。
[0041] 2.機能的 clone6の発現量を指標にスクリーニングする方法
本発明の一つの実施態様として、 0細胞に試験物質を接触させる工程、及び、 ii)
試験物質依存的な機能的 Clone6の発現量の変化を分析する工程を含む、機能的 cl0ne6の細胞内における発現を抑制する物質、すなわち脂質代謝改善薬、及び/又 はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングすることができる。
本方法で使用する「細胞」としては、機能的 cl0ne6を発現して 、る細胞ならば!、ず れでも良い。具体的には、肝細胞、脂肪細胞、腎臓由来細胞が好ましぐより具体的 にはヒト肝癌由来細胞 HepG2細胞ゃヒト胎児腎臓由来細胞 HEK-293細胞、マウス由 来胚繊維芽細胞 NIH-3T3細胞が好まし ヽ。
細胞が機能的 clone6を発現して 、る力否かは、機能的 clone6をコードするポリヌクレ ォチドの一部、又は全部の塩基配列を利用した RT_PCR、ノーザンブロッテイング解 析、 in situノ、イブリダィゼーシヨンなどや、機能的 clone6に特異的な抗体を用いたゥ エスタンブロッテイング解析などにより特定することができる。
上記 1. C)で記載の方法と同様の方法で、細胞に試験物質を接触させ、試験物質 非添加の細胞と試験物質添加の細胞で機能的 cl0ne6の発現量の変化を分析し、機 能的 clonesの発現を好ましくは 1/2倍以下に抑制する物質、すなわち、脂質代謝改 善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングすることができる。
[0042] 3. LXRと LXRに結合する物質の相互作用の変化を指標にスクリーニングする方法 本発明の実施態様として、具体的には、 LXRに結合する物質が、 1)機能的 clone6で ある場合、及び 2) LXR応答配列を含むポリヌクレオチドである場合が挙げられる。以 下に 1)及び 2)のスクリーニング方法について説明する。
1)機能的 Clone6と LXRとの結合を指標に脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗 性改善薬をスクリーニングする方法
本発明の具体的な実施態様として、 0機能的 cl0ne6、又は機能的 Clone6が発現し ている細胞に試験物質を接触させる工程、及び ii)機能的 cl0ne6と LXRとの結合を測 定する工程を含む方法で、機能的 cl0ne6と LXRとの結合を阻害する物質、すなわち 脂質代謝改善薬、及び Z又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングすることがで きる。
[0043] 機能的 cl0ne6と試験物質を接触させるには、機能的 cl0ne6の一部、若しくは全領域 、又は機能的 clone6の一部、若しくは全領域にダルタチオン- S-トランスフェラーゼ(
GST)や FLAG、 Hisなどのタグを融合させたポリペプチドを発現させた細胞に試験物 質を添加又は非添加して一定時間培養する方法がある。あるいは、上述のポリぺプ チドを発現させた細胞の抽出液に試験物質を添加又は非添加して一定時間インキュ ペートしてもよい。
[0044] ポリペプチドを発現させる細胞には、 LXRを発現している細胞、 LXR又は GSTや
FLAG, Hisなどのタグを融合させた LXRの一部若しくは全領域を上記のように形質移 入して得られた細胞を用いることができる。具体的には、 LXRを発現している細胞とし ては肝細胞、脂肪細胞、腎臓由来細胞が好ましぐより具体的にはヒト肝癌由来細胞 HepG2細胞ゃヒト胎児腎臓由来細胞 HEK-293細胞が好まし 、。 LXR又はタグを融合 させた LXRの一部若しくは全領域を形質移入する細胞としては、 COS細胞、 CHO細 胞、 NIH-3T3細胞が好ましい。
[0045] 前記細胞力 抗 LXR抗体や融合させたタグに対する抗体を用いた免疫沈降により LXR蛋白質とそこに結合する蛋白質を濃縮することができる。この濃縮過程では反応 液中に上記で細胞の処理に用いた試験物質と同じ試験物質を含有させておくことが 望ましい。得られた LXR、及びその結合蛋白質の濃縮液を公知の方法によりポリアク リルアミドゲル電気泳動法により分離し、抗体を用いたウェスタンブロッテイングにより 機能的 clone6の蛋白量を測定することにより、機能的 clone6と LXRの結合を阻害する 試験物質を選択することができる。ここで用いる抗体は、機能的 cl0ne6の一部若しく は全領域に対する抗体 (例えば抗 cl0ne6抗体)、あるいは上記のタグを認識する抗体 を利用することができる。
[0046] また機能的 clone6の一部若しくは全領域、又は機能的 clone6—部若しくは全領域 に GSTや FLAG、 Hisなどのタグを融合させたポリペプチド、或いは該ポリペプチドを 発現させた細胞の抽出液に試験物質を添加又は非添加したものから、 LXR転写共 役因子とは異なるタグをつけて精製した LXRを用いた in vitroのプルダウン法 (松七五 三ら、実験工学、第 113卷、第 528頁、 1994年)と上述と同様のウェスタンブロッテイン グを組み合わせることによつても機能的 clone6と LXRの結合を阻害する試験物質を選 択することができる。これらの方法では 、ずれもポリアクリルアミド電気泳動を行わず に公知のスポットウェスタンブロッテイングを行うことにより多数の試験物質をスクリー
ユングすることが可能である。また上述と同様のタグを融合させて発現させた機能的 clone6の一部、若しくは全領域、及び LXRを同時に発現させた細胞の溶解液に試験 物質を添加すること力もなる公知の ELISA法に従っても機能的 clone6と LXRの結合を 阻害する試験物質を選択するスクリーニングが可能である。
[0047] また、別の実施態様としては酵母ツーハイブリッド (Y2H)法を用いた方法がある。
Y2H法は、レポーター遺伝子の発現をマーカーとして蛋白質 蛋白質相互作用を検 出する方法である。一般に転写因子は DNA結合領域と転写活性ィ匕領域と 、う機能の 異なる 2つの領域を有する力 Y2H法では、 2種類の蛋白質 Xと Yの相互作用を調べる ために、転写因子の DNA結合領域と Xからなる融合蛋白質、及び、転写因子の転写 活性ィ匕領域と Yからなる融合蛋白質の 2種類を同時に酵母細胞内で発現させる。
DNA結合領域に結合させた蛋白質 Xをバイト (bait)、転写活性化領域に結合させた 蛋白質 Yをプレイ (prey)という。蛋白質 Xと Yが相互作用すると 2種類の融合蛋白質が 1つの転写複合体を形成し、これが細胞の核内において該転写因子の応答配列と結 合してその下流に配置されたレポーター遺伝子の転写を活性ィ匕する。このように 2つ の蛋白質の相互作用をレポーター遺伝子の発現に置き換えて検出することができる 。具体的には、 GAL4の DNA結合領域と融合させた LXRと GAL4の転写活性ィ匕領域と 融合させた機能的 clonesを酵母に導入し、培地中に試験物質を添加し、 LXRと機能 的 cl0ne6の相互作用の強度を測定することができる。より具体的には実施例 4若しく は実施例 1に記載の手法により実施できる。
[0048] また公知の哺乳動物細胞におけるツーハイブリッドシステム(クロンテック社)を利用 して、 GAL4の DNA結合領域と融合させた LXRと、 VP16の転写促進領域を融合させ た機能的 cl0ne6を用いて、既存の CAT若しくはルシフェラーゼ活性の検出により機能 的 clone6と LXRの結合を阻害する試験物質を大多数の母集団からスクリーニングし選 択することが可能である。
このようにして、機能的 clone6と LXRとの結合を好ましくは 1/2倍以下に阻害する物 質、すなわち、脂質代謝改善薬、及び Z又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニン グすることができる。
[0049] 2)機能的 clone6存在下で、 LXR応答配列を含むポリヌクレオチドへの LXRの結合を
指標に脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングする方 法
機能的 clone6存在下で、試験物質添カ卩による、 LXR応答配列への LXRの結合量の 変化を分析することにより、脂質代謝改善薬、及び/又はインスリン抵抗性改善薬をス クリーニングすることができる。具体的には、試験物質、 LXR、 RXR、 LXR応答配列、 及び機能的 cl0ne6を混合し、一定時間放置した後、ポリアクリルアミドゲルで電気泳 動を行う公知のゲルシフトアツセィ(Electrophoretic Mobility Shift Assay)により実施 することができる。機能的 clone6存在下で LXR応答配列への LXR結合量を好ましくは 1/2倍以下に減少させる試験物質を選択する。このようにして、脂質代謝改善薬、及 び/又はインスリン抵抗性改善薬をスクリーニングすることができる。
[0050] [3] 試験物質
本発明のスクリ一-ング法で使用する試験物質としては、特に限定されるものでは ないが、例えば、市販の化合物(ペプチドを含む)、ケミカルファイルに登録されてい る種々の公知化合物(ペプチドを含む)、コンビナトリアル ·ケミストリー技術 (Terrettら 、 J. Steele. Tetrahedron,第 51卷、第 8135-8173頁、 1995年)によって得られた化合 物群、微生物の培養上清、植物や海洋生物由来の天然成分、動物組織抽出物、あ るいは本発明のスクリーニング法により選択されたィ匕合物 (ペプチドを含む)をィ匕学的 、又は生物学的に修飾した化合物(ペプチドを含む)を挙げることができる。
[0051] [4] 脂質代謝改善、及び/又はインスリン抵抗性改善用医薬組成物の製造方法 本発明には、本発明のスクリーニング方法を用いてスクリーニングする工程、及び、 前記スクリーニングにより得られた物質を用いて製剤化する工程を含む、脂質代謝改 善、及び/又はインスリン抵抗性改善用医薬組成物の製造方法の発明が包含される 本発明のスクリーニング方法により得られる物質を有効成分とする製剤は、前記有 効成分のタイプに応じて、それらの製剤化に通常用いられる担体、賦形剤、及び Z 又はその他の添加剤を用いて調製することができる。
投与としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、又は経口 用液剤などによる経口投与、あるいは静注、筋注、若しくは関節注などの注射剤、坐
剤、経皮投与剤、又は経粘膜投与剤などによる非経口投与を挙げることができる。特 に胃で消化されるペプチドにあっては、静注等の非経口投与が望ま 、。
[0052] 経口投与のための固体組成物においては、 1又はそれ以上の活性物質と、少なくと も一つの不活性な希釈剤、例えば、乳糖、マン-トール、ブドウ糖、微結晶セルロー ス、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、又はメタケイ酸ァ ルミン酸マグネシウムなどと混合することができる。前記組成物は、常法に従って、不 活性な希釈剤以外の添加剤、例えば、滑沢剤、崩壊剤、安定化剤、又は溶解若しく は溶解補助剤などを含有することができる。錠剤又は丸剤は、必要により糖衣又は胃 溶性若しくは腸溶性物質などのフィルムで被覆することができる。
[0053] 経口投与のための液体組成物は、例えば、乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、 又はエリキシル剤を含むことができ、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば、 精製水又はエタノールを含むことができる。前記組成物は、不活性な希釈剤以外の 添加物、例えば、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、芳香剤、又は防腐剤を含有することがで きる。
[0054] 非経口のための注射剤としては、無菌の水性若しくは非水性の溶液剤、懸濁剤、 又は乳濁剤を含むことができる。水溶性の溶液剤又は懸濁剤には、希釈剤として、 例えば、注射用蒸留水又は生理用食塩水などを含むことができる。非水溶性の溶液 剤又は懸濁剤の希釈剤としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコ ール、植物油(例えば、ォリーブ油)、アルコール類 (例えば、エタノール)、又はポリソ ルベート 80等を含むことができる。前記組成物は、更に湿潤剤、乳化剤、分散剤、安 定化剤、溶解若しくは溶解補助剤、又は防腐剤などを含むことができる。前記組成物 は、例えば、バクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合、又は照射によつ て無菌化することができる。また、無菌の固体組成物を製造し、使用の際に、無菌水 又はその他の無菌用注射用媒体に溶解し、使用することもできる。
[0055] 投与量は、有効成分すなわち本発明のスクリーニング方法により得られる物質の活 性の強さ、症状、投与対象の年齢、又は性別等を考慮して、適宜決定することができ る。
例えば、経口投与の場合、その投与量は、通常、成人 (体重 60kgとして)において、
1日にっき約 0.1— 100mg、好ましくは 0.1— 50mgである。非経口投与の場合、注射剤 の形では、 1日にっき 0.01— 50mg、好ましくは 0.01— 10mgである。
実施例
[0056] 以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明は該実施例によって限定され るものではない。なお、特に断りがない場合は、公知の方法 (「Molecular CloningJ Sambrookら、 Cold Spring Harbor Laboratory Press、 1989年、等)に従って実施可能 である。酵母を用いた実験操作は Yeast Protocols Handbook (クロンテック社)等公知 の方法に従って実施可能である。また、市販の試薬やキットを用いる場合には巿販 品の指示書に従っても実施可能である。
[0057] [実施例 1] Y2H法による、 LXRとリガンド依存的に相互作用する蛋白質の同定
LXRにリガンド依存的に結合する転写共役因子を探索する目的で、 Y2H法による候 補遺伝子クローユングを実施した。 LXRの DNA結合領域、及びリガンド結合領域をバ イトにし、ヒト肝臓 cDNAライブラリーからのスクリーニングを実施した。
[0058] (1)Y2H用バイトの作製
配列番号 13及び配列番号 14に示したプライマーを用いて PCR法(DNAポリメラーゼ (Taq DNA polymerase;シグマ社)を用い、 94°C (5分)の後、 94°C (30秒)、 55°C (30秒 )、 72°C (40秒)のサイクルを 30回繰り返した)により、 LXRを含む cDNAを取得した。 Y2H用発現ベクター pDBtrp (インビトロジェン社)に挿入するため、配列番号 15及び配 列番号 16に示したプライマーを用いて、前述の PCR産物をテンプレートとして再度 PCR(DNAポリメラーゼ(Taq DNA polymerase;シグマ社)を用い、 94°C (5分)の後、 94 °C (30秒)、 55°C (30秒)、 72°C (30秒)のサイクルを 25回繰り返した)を行 ヽ、配列番号 8に示す LXRの第 93番目のアミノ酸から終止コドン直前までの 355アミノ酸で DNA結合 領域およびリガンド結合領域 (Ligand Binding Domain ;LBD)を含む領域をコードする cDNAを取得した。この LXRを含む DNA断片を pDBtrpに Yeast Protocols Handbook ( クロンテック社)の方法に従って挿入し、 pDB- LXRを構築した。 pDBtrpの GAL4の DNA結合領域のコード領域と LXR遺伝子の翻訳フレームが一致して挿入されたブラ スミド (以下 pDB- LXRと略称する)を含む酵母をバイトとして選択した。
[0059] (2) Y2Hスクリーニング
上述のバイトを用いてヒト肝臓 cDNAライブラリー(Match Maker cDNA library;クロン テック社)を Yeast Protocols Handbook (クロンテック社)の方法に従ってスクリー-ン グした。なお、 LXRァゴ-ストであることが報告されている Τ-0901317(200 /ζ M) ( Joshuaら、 Gene Dev.,第 14卷、第 2831-2838頁、 2000年; WO2000/54759号)を特許 明細書に従って合成し、培地にあら力じめ塗布しておいた。 T-0901317存在下で生 育してくる酵母を LXRに結合する蛋白質を発現している陽性クローンとして取得した。 次に、この陽性クローンを T-0901317 (2 mM)を塗布した YPD固形培地上で 30°Cにて 培養後、結合指示レポーターである lacZ遺伝子の発現を β -ガラタトシダーゼ活性を 指標として調べた。 j8 -ガラクトシダーゼ活性は Yeast Protocols Handbook (クロンテツ ク社)の方法に従って測定した。 β -ガラタトシダーゼ活性が検出された酵母を選択 することにより、これを T-0901317の存在に依存して LXRに結合する蛋白質を発現し ている最終的な陽性クローンとして特定した。これらからライブラリー由来のプラスミド を抽出し、これに含まれる遺伝子断片の塩基配列をシーケンシングキット (アプライド バイオシステムズ社)およびシーケンサー(ΑΒΙ 3700 DNA sequencer;アプライドバイ ォシステムズ社)を用いて決定した結果、配列番号 4に記載の LXRMの部分配列(配 列番号 4の第 1番目一第 661番目)をコードするクローンが含まれていた。なお、 LXR の相互作用因子として公知である RXR a (Willyら、 Genes & Dev.、第 9卷、 1033-1044 頁、 1995年)の部分配列をコードするクローンも陽性クローンの一つとして含まれてい たため、上記スクリーニングにより LXR相互作用因子を取得できることが確認された。 上述のように Y2Hスクリーニングの結果、 LXRMは LXRのリガンド結合領域に LXRリ ガンド存在下で結合することが確認された。これにより LXRMが LXRに結合する因子 であることが明ら力となった。
[実施例 2] LXRM全長クローニング
Y2H法で得られた部分塩基配列情報をもとに、ヒト脾臓 mRNA (クロンテック社)より調 製した cDNAライブラリーを用いて LXRM全長 cDNAを取得した。 cDNAライブラリ一は スパースクリプトチヨイスシステム (インビトロジェン社)のキットを用い、添付された説明 書に従い合成した。プライマーにはキットに添付された random hexamerを用いた。 Y2H法で得られた LXRMの部分塩基配列を BLAST検索し、高 、相同性の得られた配
列情報(GenBankァクセッション番号 NM_032752)を基に設計した配列番号 17及び配 列番号 18のプライマーを用いて PCR法(DNAポリメラーゼ(Pyrobest DNA Polymerase ;宝酒造株式会社)を用い、 98°C (10秒)、 65°C (30秒)、 72°C (2分 30秒)のサイクルを 40回繰り返した)により LXRM全長 cDNAを取得した。
[0061] [実施例 3] clone6全長クローユングおよび発現ベクター構築
Y2H法で得られた LXRMの塩基配列(配列番号 3)をもとに、 GenBankデータベース に対して BLAST検索を実施した。その結果、 KIAA0557 (GenBankァクセッション番号 AB011129)との相同性が確認された。 KIAA0557は部分 cDNA配列であったため、 3' および 5' RACE (Rapid Amplification of cDNA Ends)法により clone6全長 cDNA配列( 配列番号 1)を同定した。配列番号 19及び配列番号 20のプライマーを用いて小腸の cDNAライブラリー (Human small intestine Marathon— ReadyTM cDNA;クロンテック社) を铸型として、 PCR法(DNAポリメラーゼ(Pfo DNA polymerase ;ストラタジーン社)を用 い、 95°C (1分)の後、 95°C (30秒)、 68°C (4分)のサイクルを 35回繰り返した)により、 clone6の全長 cDNAを取得した。得られた cDNAは pCR- Blunt2- TOPO (インビトロジェ ン社)にクロー-ング後、 pcDNA3.1(+) (インヴィトロジェン)の CMVプロモーター下流 で発現するように EcoRI制限酵素部位に組み込んだ。得られたクローンにより、配列 番号 1に記載の塩基配列によりコードされる clone6蛋白質を発現する発現ベクターを 構築することができた。
[0062] [実施例 4] Y2H法による clone6と LXRの結合確認
LXRMは Y2H法でリガンド依存的な LXR結合分子としてクローユングしており、 LXR 結合能を確認して 、る。 LXRMのホモログとして得た clone6も LXRM同様に LXR結合 能を持つか確認した。
配列番号 21及び配列番号 22に示したプライマーを用いて、実施例 3で得た clone6 ( 配列番号 1)をもとに、 clone6をコードする DNA断片を PCR法(DNAポリメラーゼ( Pyrobest DNA Polymerase;宝酒造株式会社)を用い、 98°C (5分)の後、 98°C (10秒) 、 55°C (30秒)、 72°C (90秒)のサイクルを 25回繰り返した)により取得した。活性化ドメ インベクター pACT2 (クロンテック社)はヒト肝臓 cDNAライブラリー(Match Maker cDNA library;クロンテック社)カゝら精製し、制限酵素(EcoRI及び Xhol ;宝酒造株式会
社)で処理してインサートを除いて直鎖状にしたものを用いた。これに clone6を含む DNA断片を Yeast Protocols Handbook (クロンテック社)の方法により挿入し pACT2- clone6を構築した。 pDB- LXRを含む酵母を pACT2- clone6を用いて形質転 換し、同方法により酵母を選択培地上で 30°Cにて培養した。なお、同培地中にはあら かじめ LXRァゴ-ストであることが知られている Τ-0901317(200 /ζ M)を添カ卩した。上述 の Υ2Ηの結果、 LXRリガンド依存的な生育が確認され、 clone6が LXRに結合する因子 であることが明ら力となった。
[0063] [実施例 5] SREBPlcレポーターアツセィ、及び ABCA1レポーターアツセィ
clone6による LXRターゲット遺伝子である SREBPlc、 ABCA1の発現制御を SREBPlc 、 ABCA1各遺伝子の転写調節領域を含むレポーター遺伝子を用いて確認した。
[0064] (1) SREBPlc及び ABCA1レポーター遺伝子の構築
配列番号 23及び 24に示したプライマーを用いて、マウス染色体 DNA (クロンテック社 )を铸型にして PCR法(DNAポリメラーゼ(Advantage 2 PCR Kit ;クロンテック社)を用 い、 95°C (1分)の後、 95°C (30秒)、 68°C (3分)のサイクルを 30回繰り返した)によりマ ウス SREBPlcの転写調節領域をコードする染色体 DNAを取得した。この DNA断片を 制限酵素(Bglll及び Hindlll;宝酒造株式会社)で切断し、 BglII、 Hindlllで切断したピ ッカジーンベーシックベクター 2 (pGV- B2;東洋インキ製造株式会社)と結合し、マウス SREBPlc-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を構築した。
配列番号 25及び 26に示したプライマーを用いて、マウス染色体 DNA (クロンテック社 )を铸型にして PCR法(DNAポリメラーゼ(Pyrobest DNA Polymerase;宝酒造株式会 社)を用い、 98°C (10秒)、 65°C (30秒)、 72°C (1分)のサイクルを 40回繰り返した)によ りマウス ABCA1の転写調節領域をコードする染色体 DNAを取得した。この DNA断片 を制限酵素(Kpnl及び Xhol ;宝酒造株式会社)で切断し、 Kpnl、 Xholで切断したピッ 力ジーンベーシックベクター2 (pGV-B2;東洋インキ製造株式会社)と結合し、マウス ABCA1-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を構築した。
[0065] (2) LXR発現プラスミドの構築
配列番号 27及び 28に示したプライマーを用いて、ヒト肝臓 cDNAライブラリー(クロン テック社)から、 PCR法(DNAポリメラーゼ(Pfo DNA polymerase ;ストラタジーン社)を
用い、 94°C (1分)の後、 94°C (15秒)、 60°C (30秒)、 72°C (3分)のサイクルを 30回繰り 返した)により、ヒト LXR cDNAを取得した。得られた cDNAは pCR- Bluntにクローニン グ後、 pcDNA3.1 (インビトロジェン社)の CMVプロモーター下流で発現するように EcoRV、 BamHI制限酵素部位に組み込み、 pcDNA-hLXR αを構築した。
[0066] (3) RXR o;発現ベクターの構築
ヒト RXR a発現ベクター phRXR aは pVgRXR (インビトロジェン社)をもとに構築した。 pVgRXRは RXR aおよびエタダイソン受容体を同時に発現するように構築された発現 ベクターである。そこで、 pVgRXRから制限酵素(Kpnl ;宝酒造株式会社)でェクダイソ ン受容体部分に相当する 2096bpを除去し、 RXR aのみを発現する phRXR aを構築し た。
[0067] (4)レポーターアツセィ法
NIH-3T3細胞を 96ゥエルプレート(コラーゲンタイプ 1コートプレート;岩城硝子社)に 2 X 104個 Zゥエルの密度で播種し、 5%活性炭及びデキストランで処理したゥシ胎児 血清(ギブコ社)を含むフエノールレッド不含ダルベッコ改変イーグル培地 (DMEM) ( ギブコ社)を用い、 5%二酸化炭素存在下、 37°Cで一晩培養した。この細胞にトランス フエクシヨン試薬(Lipofectamine 2000 ;インビトロジェン社)を用いて、トランスフエクシ ヨン試薬添付のプロトコールに従い、以下 0、 ii)、 iii)、 iv)、及び v)を一過性に同時に形 質移入した。
i)実施例 5の(1)で作製したマウス SREBPlcレポーター遺伝子、若しくはマウス ABCA1レポーター遺伝子(50 ng/ゥエル)
ii)実施例 3で作製した clone6発現ベクター(0_56 ng/ゥエル)
iii)実施例5の(2)で作製した LXR a発現プラスミド(pcDNA- hLXR a ) (7 ng/ゥエル) iv) 実施例 5の(3)で作製した RXR a発現ベクター (phRXR c (7 ng/ゥエル) V) β -ガラタトシダーゼ発現ベクター pCHl 10 (アマシャム社)(40 ng/ゥエル)
[0068] 24時間培養後、細胞に内在性に存在する LXRァゴ-スト(生体内リガンド)であるハ イドロキシコレステロールの合成を阻害するために 5 μ M Mevastatin (シグマ社)を含 む上記培地に交換し、 LXRァゴ-スト Τ-0901317 (0.03 /ζ Μ)存在下、非存在下で培 養した。さらに 24時間培養後、培養上清を除き、ピツカジーン培養細胞溶解剤 (東洋
インキ製造株式会社)を 1ゥエルあたり 60 / ^添加し、細胞を溶解した。この細胞溶解 液 40 μ 1に 100 μ 1のルシフェラーゼ基質溶液 (和光純薬工業社)を添加し、化学発光 測定装置 (ML3000型;ダイナテックラボラトリーズ社)を用いて発光量を測定し、ルシ フェラーゼ活性を求めた。また、別途、前記細胞溶解液の β -ガラタトシダーゼ活性を 、 β -ガラタトシダーゼ酵素測定システム(プロメガ社)を用いて測定し数値ィ匕した。こ れを導入遺伝子の形質転換効率として上述のルシフェラーゼ活性を各ゥエル毎に補 正した。レポーター活性は、 clone6発現ベクターを導入しな力つた細胞を含むゥエル のルシフェラーゼ活性を 100とした相対活性で示した。
[0069] 実施例 5の(1)で構築した SREBPlcレポーター遺伝子および ABCA1レポーター遺 伝子が機能して 、ることを確認するために、 LXRの共役因子である RXR a発現べクタ 一存在下で LXRァゴ-スト T-0901317の濃度依存的なルシフェラーゼレポーター活 性ィ匕を確認した(図 1. A, B)。また、 ABCA1レポーター遺伝子に関しては RXR o;非存 在下でも LXRァゴ-スト T-0901317濃度依存的な活性ィ匕を示し、 RXR aの発現量に は依存しな 、転写活性であることを確認した(図 1. C)。
[0070] clone6の SREBPlc及び ABCA1遺伝子発現に対する作用を解析するために、 clone6 発現量依存的な SREBPlc及び ABCA1レポーター活性を確認した。 clone6は LXRァゴ -スト T- 0901317 (0.03 μ Μ)存在下で SREBPlcレポーター遺伝子のルシフェラーゼレ ポーター活性を亢進し、 ABCA1レポーター遺伝子のルシフェラーゼレポーター活性 を抑制した (図 2. A, B)。また、 clone6は LXRァゴ-スト非存在下(T-0901317非添加か つ Mevastatin添加で内在ァゴニスト(生体内リガンド)合成を阻害した条件下)でも SREBPlcレポーター遺伝子のルシフェラーゼレポーター活性を亢進し、 ABCA1レポ 一ター遺伝子のルシフェラーゼレポーター活性を抑制し、 LXR非依存の転写制御活 性を持つことを示した (図 3. A, B)。
[0071] 従来の合成 LXRァゴ-ストは SREBPlc遺伝子と ABCA1遺伝子をともに亢進方向に 発現制御するが、脂質代謝改善剤、及び/又はインスリン抵抗性改善剤としては、 TG 合成を促進する SREBPlcの遺伝子発現は抑制方向に制御するほうが好ましぐコレ ステロールの排出作用、抗動脈硬化症作用を持つ ABCA1の遺伝子発現は亢進方 向に制御するほうが好まし!/、。
[0072] clone6は LXRァゴ-スト T-0901317存在下、及び非存在下で、 SREBPlc遺伝子の発 現を亢進し、 ABCA1遺伝子の発現を抑制した。よって、 clone6の作用を阻害するよう な薬剤は、 SREBPlc遺伝子の発現を抑制し、 ABCA1遺伝子の発現を亢進する脂質 代謝改善剤、及び/又はインスリン抵抗性改善剤として好まし ヽ特性を有することが 明ら力となった。従って、 clone6の活性、発現、及び LXRとの相互作用等を抑制する 物質をスクリーニングすることにより、従来の合成 LXRァゴニストが有する TG合成亢進 作用を持たない脂質代謝改善剤、及び/又はインスリン抵抗性改善剤をスクリーニン グすることができる。
産業上の利用可能性
[0073] 本発明の細胞は脂質代謝改善薬、及び Z又はインスリン抵抗性改善薬の同定及 びスクリーニングに有用である。本発明のスクリーニング方法により、 TG合成亢進とい つた副作用のない脂質代謝改善薬、及び Z又はインスリン抵抗性改善薬をスクリー ニングすることができる。
配列表フリーテキスト
[0074] 以下の配列表の数字見出し < 223 >には、「Artificial Sequence」の説明を記載す る。具体的には、配列表の配列番号 13, 14, 15, 16, 21, 22, 23, 24, 25, 26の配列で 表される各塩基配列は、人工的に合成したプライマー配列である
[0075] 以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は 本発明の範囲に含まれる。