JP2005312364A - 糖尿病治療剤スクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記スクリーニング方法は、(1)SOCS-2のアミノ酸配列、又はその改変アミノ酸配列若しくは相同アミノ酸配列を含み、且つ、膵β細胞にて強制発現させることにより高グルコース濃度下のインスリン分泌を抑制する作用を示すポリペプチドを過剰発現している細胞と、試験物質とを高グルコース濃度下で接触させる工程、及び(2)前記細胞から分泌されるインスリン量を測定する工程を含む。あるいは、(1)ヒトSOCS-2プロモーター配列又はその改変配列を含むDNA断片で形質転換した細胞と試験物質とを接触させる工程、(2)SOCS2発現量を測定する工程、及び(3)SOCS2発現量を抑制する物質を選択する工程を含む。
【選択図】なし
Description
インスリン製剤は、確実に血糖を低下させるが、注射により投与しなければならない上に、低血糖になるおそれもある(非特許文献4)。
[1]SOCS-2のアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、膵β細胞にて強制発現させることにより高グルコース濃度下のインスリン分泌を抑制する作用を示すポリペプチドからなる、糖尿病治療剤スクリーニング用ツール、
[2][1]に記載のポリペプチドを過剰発現している細胞からなる、糖尿病治療剤スクリーニング用ツール、
[3](1)[2]に記載の細胞と試験物質とを高グルコース濃度下で接触させる工程、及び
(2)前記細胞から分泌されるインスリン量を測定する工程
を含む、糖尿病治療剤のスクリーニング方法、
[4]糖尿病治療剤がインスリン分泌促進剤である、[3]に記載のスクリーニング方法、
[5]配列番号3で表される塩基配列又はその一部の配列、あるいは、配列番号3で表される塩基配列において1〜10個の塩基の欠失、置換、及び/若しくは付加された塩基配列又はその一部の塩基配列を含み、且つ、ヒトSOCS-2プロモーター活性を有するDNA断片である、糖尿病治療剤スクリーニング用ツール、
[6](1)[5]に記載のDNA断片で形質転換した細胞と試験物質とを接触させる工程、
(2)SOCS2発現量を測定する工程、及び
(3)SOCS2発現量を抑制する物質を選択する工程
を含む、糖尿病治療剤のスクリーニング方法、並びに
[7]糖尿病治療剤がインスリン分泌促進剤である、[6]に記載のスクリーニング方法
に関する。
「高グルコース濃度下」とは、例えば、血中、あるいは、細胞を取り巻く環境におけるグルコース濃度が、正常な状態におけるグルコース濃度範囲を越えた状態を意味し、好ましくは16.8 mmol/Lである。
また、「低グルコース濃度下」とは、例えば、前記グルコース濃度が、正常な状態におけるグルコース濃度範囲より低い状態を意味し、好ましくは2.8 mmol/Lである。
1.本発明のスクリーニングツール
本発明の糖尿病治療剤(好ましくはインスリン分泌促進剤、より好ましくは高血糖時特異的インスリン分泌促進剤)スクリーニングツールには、(1)ポリペプチド型スクリーニングツール、(2)細胞型スクリーニングツール、及び(3)プロモーター型スクリーニングツールが含まれる。
本発明のポリペプチド型スクリーニングツールとしては、SOCS-2のアミノ酸配列、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列、あるいは、配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、膵β細胞にて過剰発現させることにより高グルコース濃度下のインスリン分泌を抑制する作用を示すポリペプチドを利用することができるが、ヒトSOCS-2又はマウスSOCS-2を使用することがより好ましい。
具体的には、例えば、判定対象ポリペプチドを発現可能なDNAを挿入した発現ベクターと、コントロール用空ベクターとを用いて膵β細胞を形質転換し、膵β細胞にて前記ポリペプチドを発現させた状態にした試験用細胞と、コントロール細胞とを作製し、所定期間(例えば、12時間〜2日間)が経過した後、高濃度又は低濃度のグルコースを含有する緩衝液に置換して更に所定時間(例えば、数十分〜数時間)インキュベートし、前記緩衝液(すなわち、培養上清)中のインスリン分泌量をそれぞれ測定する。このとき、低濃度グルコース刺激時はコントロールと差がないが、高濃度グルコース刺激時にのみ、インスリン分泌抑制作用が認められた場合、前記判定対象ポリペプチドは、「膵β細胞にて過剰発現させることにより高グルコース濃度下のインスリン分泌を抑制する作用」を示すと判定することができる。
非極性アミノ酸:Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、及びTrp
非荷電性アミノ酸:Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、及びGln
酸性アミノ酸:Asp及びGlu
塩基性アミノ酸:Lys、Arg、及びHis
以下、SOCS-2の発現のためのSOCS-2をコードするポリヌクレオチドの取得方法、SOCS-2発現ベクターの作成方法、SOCS-2発現細胞の作製方法を具体的に説明する。
例えば、(1)PCRを用いた方法、(2)常法の遺伝子工学的手法(すなわちcDNAライブラリーで形質転換した形質転換株から所望のアミノ酸配列を含む形質転換株を選択する方法)を用いる方法、又は(3)化学合成法を用いた方法などを挙げることができる。各製造方法については、例えば、国際公開第WO01/34785号パンフレットに記載されているのと同様に実施することができる。
より具体的には、例えば、実施例1に記載の方法によりSOCS-2を製造することができる。
本発明の細胞型スクリーニングツールとしては、本発明のポリペプチド型スクリーニングツールとして利用することができるポリペプチドを、過剰発現している細胞を利用することができる。
SOCS-2をコードするポリヌクレオチドを含む断片は、適当なベクタープラスミドに再び組込むことにより、真核生物又は原核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。更に、これらのベクターに適当なプロモーター及び形質発現にかかわる配列を導入することにより、それぞれの宿主細胞においてSOCS-2を発現させることが可能である。宿主細胞は、インスリンを分泌する細胞であればよいが、膵β細胞が望ましい。
宿主細胞を形質転換し遺伝子を発現させる方法は、例えば、通常のリポフェクトアミン試薬を用いる方法がある。
本発明のプロモーター型スクリーニングツールとしては、配列番号3で示される塩基配列又はその一部の配列、あるいは、配列番号3で示される塩基配列において1〜10個の塩基の欠失、置換、及び/若しくは付加された塩基配列又はその一部の塩基配列を含み、且つ、ヒトSOCS-2プロモーター活性を有するDNA断片を利用することができる。
前記DNA断片は、一般的遺伝子工学的手法により、取得することができ、例えば、実施例3に記載の方法で得ることができる。
SOCS-2遺伝子は、膵β細胞にて過剰発現を行うと、高グルコース濃度存在下において膵β細胞からのインスリン分泌量抑制作用があることを見出した。従って、SOCS-2過剰発現膵β細胞からのインスリン分泌量を指標とする、又は、SOCS-2の発現量変化を指標とする、又は、SOCS-2が膵β細胞内でシグナルを伝える又はその機能を果たすために結合する分子に対する結合の量的若しくは質的変化を指標とする、ことからなる糖尿病治療剤(好ましくはインスリン分泌促進剤、より好ましくは高血糖時特異的インスリン分泌促進剤)のスクリーニング方法を構築することができる。
(1)分泌されるインスリン量の測定を利用したスクリーニング方法
SOCS-2を発現可能なDNAを用いて膵β細胞を形質転換し、膵β細胞にてSOCS-2を発現させた状態にした試験用細胞を作製し、所定期間(例えば、12時間〜2日間)が経過した後、所定濃度のグルコースを含有する緩衝液に置換して更に所定時間(例えば、数十分〜数時間)インキュベートし、前記緩衝液(すなわち、培養上清)中のインスリン分泌量をそれぞれ測定する。このときグルコースを含有する緩衝液に試験物質を添加又は非添加することにより試験細胞を処理又は未処理する。この過程で試験用細胞から培養上清中に分泌されたインスリンを測定する。このとき、SOCS-2発現により引き起こされる膵β細胞でのインスリン分泌は有意に抑制されることが望ましく、試験物質処理によりインスリン分泌抑制が有意に標準状態まで回復又は促進することが望ましい。標準状態とは、SOCS-2を含まない空ベクターを発現させたコントロール細胞を高グルコース濃度存在下にて培養しインスリン分泌抑制の無い状態に分泌されるインスリン量のことを指す。またこのとき、低グルコース濃度下にてインスリン分泌量が試験物質の未処理と処理で変化がないことが望ましい。例えば、実施例1又は実施例2の記載の方法で行うことが好ましい。有意なインスリン分泌量抑制又は回復とは、例えば、試験用細胞群から分泌されるインスリン量と比較対照細胞群から分泌されるインスリン量においてスチューデントのt検定で判定することができる。試験細胞のインスリン分泌量とコントロール細胞に対する有意差が、p<0.05、好ましくはp<0.01である時、有意な変化があったと判断する。
本発明の細胞型スクリーニングツールとして利用できる細胞は、常法に従い培養することができ、前記培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択することができる。例えば、前記MIN6細胞であれば牛胎児血清(FBS)等の血清成分を10%添加したダルベッコ修飾イーグル最小必須培地(DMEM)等の培地を使用することができる。
膵β細胞でのSOCS-2の過剰発現は、高グルコース濃度下において、インスリンの分泌を抑制するため、SOCS-2の発現抑制を指標として糖尿病治療剤(好ましくはインスリン分泌促進剤、より好ましくは高グルコース濃度下特異的インスリン分泌促進剤)のスクリーニングが実施可能となる。例えば、膵β細胞での内在性のSOCS-2の発現量を分析すること、あるいは、SOCS-2のプロモーター領域を、適当なレポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子)の上流に連結した発現ベクターを作製し、この発現ベクターで形質転換した細胞と、試験化合物とを接触させ、前記レポーター遺伝子の発現の変化を分析することによりスクリーニングを実施し、糖尿病治療剤(好ましくはインスリン分泌促進剤、より好ましくは高グルコース濃度下特異的インスリン分泌促進剤)を選択することができる。
まず試験物質で未処理又は処理した膵β細胞から通常用いられる方法によりRNAを調製することができる。このRNA調製液から公知の方法に従ってアガロースゲル電気泳動によりRNAを分離した後、ニトロセルロース膜に転写し、これをSOCS-2の部分塩基配列を含むラベルした短鎖DNAプローブを用いたノーザンブロット解析により、試験物質によるSOCS-2塩基配列を有するRNAの発現量の増減を検出することができる。これによりSOCS-2の発現量を抑制する物質を試験物質の母集団中からスクリーニングすることができる。
(1)アデノウイルスベクターを利用したSOCS-2高発現ウイルスの作製
マウスSOCS-2をコードする遺伝子断片をNCBIリファレンス配列(Reference Sequences)番号 NM_007706を参考に、両端にそれぞれKpnI及びXhoI切断サイトを有する合成オリゴDNA[5’- CGGGGTACCGCCATGACCCTGCGGTGCCTGGAGCCCTCC -3’(配列番号6)及び5’- CCGCTCGAGTTATACCTGGAATTTATATTCTTCCAA -3’(配列番号7)]を用いてPCRを行い、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるマウスSOCS-2をコードするDNA断片(配列番号1)を取得した。PCRにはピロベスト(Pyrobest)DNAポリメラーゼ(TAKARA社)を用い、94℃にて1分処理後、98℃5秒と68℃1分とからなるサイクルを5回、98℃5秒と65℃1分とからなるサイクルを5回、98℃5秒と60℃30秒と72℃1分からなるサイクルを30回行い、最後に、72℃にて1分処理を行った。得られたDNA断片を、制限酵素KpnI及びXhoIにて切断後、アデノウイルスベクターpAdTrack-CMV(Tong-Chuan Heら, Proc.Natl.Acad.Sci,USA, vol. 95,pp. 2509-2514,1998)のマルチクローニングサイトKpnI及びXhoIに挿入し、SOCS-2/pAdTrack-CMVベクターを得た。
なお、ウイルス量は260 nmにおける吸光度(A260)を測定し、下記の計算式:
1 A260 = 1.1 x 1012ウイルス粒子 = 3.3 x 1011 pfu/mL
で換算した。
マウス膵β細胞株MIN6B1細胞〔Endocrinol. (2003) 144, 1368-1379〕に、先に作製したSOCS-2/pAdTrack-CMV又はコントロール用としてpAdTrack-CMVを感染させ、SOCS-2高発現膵β細胞を作製した。
先ず、24穴プレートにMIN6B1細胞(2x105細胞)を播種し、10%牛胎児血清(シグマ社)を含む最少必須培地DMEM(ギブコ社)0.5 mLで24時間培養した。その後、SOCS-2/pAdTrack-CMV又はコントロール用としてpAdTrack-CMVを1穴あたり4x108 pfuの濃度で培地に添加した。
膵β細胞へのアデノウイルスの感染は蛍光顕微鏡下でpAdTrack-CMVに含まれるGFP(green fluorescent protein)の蛍光を目視することにより行った。また、SOCS-2の発現は、一次抗体としてSOCS-2を認識する市販の抗体(抗SOCS-2抗体;ANASPEC Incorporated カタログ番号28133)、二次抗体にはラビットIgG-HRP(horseradish peroxidase)融合抗体(バイオラッド社)を用いたウェスタンブロッティングを行い確認した。
膵β細胞へのアデノウイルスの感染14時間後、培地を吸引し、KRB-HEPES(140 mmol/L NaCl, 3.6 mmol/L KCl, 0.5 mmol/L NaH2PO4, 0.5 mmol/L MgSO4, 1.5 mmol/L-CaCl2, 10 mmol/L Hepes, 2 mmol/L NaHCO3, 0.1% BSA, pH 7.4)で3回洗い、2.8 mmol/Lグルコース含有KRB-HEPES(1 mL)を加え、5% CO2存在下、37℃で1時間インキュベートした。
前記バッファーを吸引除去した後、2.8 mmol/L又は16.8 mmol/Lグルコース含有KRB-HEPESを加え、5% CO2存在下、37℃で20分間インキュベートした。この上清をインスリン分泌量測定に供した。
インスリン分泌量の測定は、市販のインスリン・ラジオイムノアッセイキット(ラットインスリン[125I]RIAシステム;アマシャムバイオサイエンス社)により行なった。
これによりSOCS-2は、その過剰発現により細胞へのインスリン分泌を妨げることによって糖尿病態の増悪因子として作用することがわかった。なお、図中の記号「**」はコントロール群に対する有意差がp<0.01(Studen’s t-testによる)であることを意味している。
(1)ラット膵ランゲルハンス島の単離
体重350gから450gの6〜8週齢の雄ラット4匹を麻酔し、開腹し、腹腔を露出させた。肝臓の胆管側を糸で縛り、心臓より脱血させた。胆管より、翼状針を使って0.02% リベラーゼ(Liberase;ロシュ・ダイアグノスティック社)-HBSS-HEPES(136.8 mmol/L NaCl, 5.3 mmol/L KCl, 0.8 mmol/L MgSO4, 1 mmol/L Na2HPO4, 0.44 mmol/L KH2PO4, 4.1 mmol/L NaHCO3, 10 mmol/L Hepes, 1 mmol/L CaCl2, 2 mmol/L グルコース, pH7.2)溶液5 mLを注入した。膵臓を摘出し、HBSS-HEPES 5mLの入ったチューブに入れ、37℃で20分間インキュベートした。インキュベート後、膵臓を撹拌してから、氷冷したHBSS-HEPES-0.35% BSAを加え、遠心し(1500 rpm,1分)、上清を除いた。これに、HBSS-HEPES-0.35% BSA 10 mLを加え、組織を注射針で懸濁した(2回繰り返した)。遠心後、上清を除き、8.3% フィコール−コンレイ(Ficoll-Conray)溶液10 mLを加え、懸濁後、更に、上からHBSS-HEPES-0.35% BSA 10 mLを加え、20分間遠心した。遠心後、2層に分かれた液層の間にある、膵ランゲルハンス島を回収した。更に、回収した膵ランゲルハンス島にHBSS-HEPES-0.35% BSA 10 mLを加え、遠心後、6穴プレートに60細胞ずつになるよう播種し、2 mLの10% 牛胎児血清(シグマ社)を含むRPMI1640(インビトロジェン社)で1日間培養した。
SOCS-2/pAdTrack-CMV又はコントロール用としてpAdTrack-CMVを1.2x1010 pfuの濃度で培地に添加した。膵ランゲルハンス島へのアデノウイルスの感染及びSOCS-2の発現は実施例1(2)の方法により確認した。
単離した膵ランゲルハンス島へアデノウイルスを添加して42時間後、培地を吸引し、2.8 mmol/Lグルコース含有KRB-HEPES-BSA(140 mmol/L NaCl, 5 mmol/L KCl, 1.2 mmol/L KH2PO4, 1.2 mmol/L MgSO4, 1.7 mmol/L CaCl2, 5.3 mmol/L NaHCO3, 10 mmol/L Hepes, 0.5% BSA, pH7.4)で3回洗浄後、1サンプルあたり5個の膵ランゲルハンス島を1.5 mLチューブに移した。このチューブに500μLの2.8 mmol/Lグルコース含有KRB-HEPES-BSAを添加し、37℃で30分間インキュベートした。
その後、グルコースの終濃度が2.8 mmol/L又は16.8 mmol/Lになるよう、グルコース含有KRB-HEPES-BSAを添加し、90分間インキュベートした。この上清をインスリン分泌量測定に供した。
インスリン分泌量の測定は、市販のインスリン・ラジオイムノアッセイキット(ラットインスリン[125I]RIAシステム;アマシャムバイオサイエンス社)により行なった。
これによりSOCS-2は、その過剰発現により細胞へのインスリン分泌を妨げることによって糖尿病態の増悪因子として作用することがわかった。なお、図中の記号「**」はコントロール群に対する有意差がp<0.01(Studen’s t-testによる)であることを意味している。
(1)SOCS-2プロモーター領域のレポーターベクター構築
ヒトSOCS-2の登録配列(NCBI Reference Sequences番号NM_003877)を参考に、本配列が一致するゲノム配列をNCBI GenBankアクセッション番号NC_000012.5_93000001_94000000と特定した。次にヒトSOCS-2のプロモーター領域と思われる領域NC_000012.5_93000001_94000000の893,596番目から898,678番目に該当する配列、すなわち配列番号3で表される塩基配列からなるDNAを取得するために、それぞれ、NluIとNheIの制限酵素サイトを含む合成オリゴDNA[5’- gtgACGCGTGCTCCCTCCAAGTGGTGGAAAAGTTGA -3’(配列番号8)及び5’- gtgGCTAGCGCGCTGCGGAAAATGCAAACCACCAAC -3’(配列番号9)]を用いて、LATaq(TAKARA社;カタログ番号RR002A)を使用し1回目のPCRを行い、更に、PCR産物を滅菌水にて50倍希釈した液を鋳型とし、合成オリゴDNA[5’- gtgACGCGTGACCTGTATGGTCATTATCACTCATCA -3’(配列番号10)及び5’- gtgGCTAGCGCGCTCTTACCTCGACCTCGGCCGCG -3’(配列番号11)]を用いて、LATaq(TAKARA社;カタログ番号RR002A)を使用し2回目のPCRを行った。それぞれ、1回目のPCRの条件は、94℃にて1分処理後、98℃10秒と72℃5分とからなるサイクルを5回、98℃10秒と68℃5分とからなるサイクルを5回であり、2回目のPCRの条件は、98℃10秒と68℃5分とからなるサイクルを10回、98℃10秒と65℃5分とからなるサイクルを25回行い、最後に、72℃にて5分処理した。2回のPCRの結果、約5 kbのDNA断片を得、DNAシーケンス試薬BigDye3.1(アプライドバイオシステムズ社)を用い、添付の説明書に従い、DNAシーケンサー(モデルPRISM3700;アプライドバイオシステムズ社)を用いて、DNA配列を決定し、予測通り、NCBI GenBankアクセッション番号NT_019546のSOCS-2のエキソンを含む上流配列であることを確認した。このDNA断片中にはSOCS-2が反応すると言われているSTAT1、STAT3、STAT5が結合すると予測されるSTAT結合に特徴的な配列(TTCCCRKAA;STATx,TRANSFACアクセッション番号M00223)が複数個存在していた。このDNA断片を、PGVB-2(ピッカジーンベーシックベクター2;東洋インキ社)のMluI及びNheIサイトへ導入してSOCS-2レポーターベクターを構築した。
まず、内在性のSOCS-2プロモーター活性を測定した。膵β細胞にてSOCS-2のプロモーター活性を促進する刺激は不明なため、外部シグナルを伝えて最終的にSOCS-2転写活性を促進すると考えられるSTAT1、STAT3、STAT5の転写活性を上げる刺激の代表であるIL-6刺激によるSOCS-2メッセンジャーRNA量を測定した。具体的にはIL-6反応性が確認されているヒトHepG2細胞にて、IL-6刺激、又は、無刺激状態の内在性SOCS-2のメッセンジャーRNAの発現量を定量し、比較した。遺伝子発現量は、同時に測定したグリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素〔Glyceraldehyde 3-phosphate dehydrogenase(G3PDH)〕遺伝子の発現量により補正した。測定系としてはPRISM TM 7700 シークエンスディテクションシステム(Sequence Detection System)(アプライドバイオシステムズ社)とSYBRグリーンPCRマスターミックス(SYBR Green PCR Master Mix)(アプライドバイオシステムズ社)を用いた。本測定系においてはPCRで増幅された2本鎖DNAがとりこむSYBRグリーンI色素の蛍光量をリアルタイムに検出・定量することにより、目的とする遺伝子の発現量が決定される。
先ず、6穴プレートにHepG2細胞(ATCCアクセッション番号HB-8065)を播種し、10%牛胎児血清(シグマ社)を含む最少必須培地DMEM(ギブコ社)2 mLで1日間培養したHepG2をIL-6(10 ng/mL;R&D Systems)存在下で3時間培養し、全RNAをRNA抽出用試薬(RNeasy;キアゲン社)を用いて説明書に従い、調製した。次に全RNAから1本鎖cDNAへの逆転写を、0.25 μgのRNAを用い、逆転写反応用キット(AdvantageTM RT-for-PCR Kit;クロンテック社)を用いて20 μLの系で行った。そして、SOCS-2遺伝子に対しては合成オリゴDNAの5’−CCTTTATCTGACCAAACCGCTCTA-3’(配列番号12)と5’−TGTTAATGGTGAGCCTACAGAGATG-3’(配列番号13)との組合せ、G3PDH遺伝子に対しては合成オリゴDNAの5’−CCTGACCTGCCGTCTAGAAAA-3’(配列番号14)と合成オリゴDNAの5’−CGCCTGCTTCACCACCTT-3’(配列番号15)との組み合わせを使用し、PRISM TM 7700 シークエンスディテクションシステム(アプライドバイオシステムズ社)によるPCR増幅のリアルタイム測定を説明書に従って行った。各系において1本鎖cDNAは5 μL、2xSYBRグリーン試薬を12.5 μL、各プライマーは7.5 pmol使用した。なお、検量線作成には、1本鎖cDNAに代えて0.1 μg/μLのマウスゲノムDNA(クロンテック社)を適当に希釈したものを5 μL用いた。PCRは、50℃で10分に続いて95℃で10分の後、95℃で15秒、60℃で60秒の2ステップからなる工程を45サイクル繰り返すことにより行った。
各試料におけるマウスSOCS-2遺伝子の発現量は、下記式:
[SOCS-2補正発現量]=[SOCS-2遺伝子の発現量(生データ)]/[G3PDH遺伝子の発現量(生データ)]
に基づいてG3PDH遺伝子の発現量で補正した。
その結果、図3に示すとおり、内在性のSOCS-2遺伝子はIL-6刺激によって約2倍の発現上昇することが分かった。
HepG2細胞(ATCCアクセッション番号HB-8065)へ、実施例3(1)にて作製したSOCS-2レポーターベクター又はコントロールベクターを遺伝子導入し、IL-6刺激又は無刺激における活性を測定した。具体的には、HepG2細胞を6穴プレートに播種し、10%牛胎児血清(シグマ社)を含む最少必須培地DMEM(ギブコ社)2 mLで1日間培養した。その後、前記プラスミド(0.2 μg)及びβアクチンプロモーターによって調節されるβ−ガラクトシダーゼ遺伝子を含むプラスミドpCH110(0.2 μg)を、遺伝子導入効率を標準化するために併用し、FuGENETM 6(BOEHRINGER MANNHEIM, USA社;1814 443)を用いて細胞に導入した。8時間後に細胞をIL-6刺激し、3時間培養した後、細胞を細胞溶解液LCβ(東洋インキ社)で溶解し、そのルシフェラーゼ活性をピッカジーン発光キット(東洋インキ社;309-04321)を用いて測定した。
本実施例3(3)で得られたIL-6刺激に対するレポーター系の発現亢進が約2倍であった結果は、前記実施例3(2)で得られた内在性のSOCS-2遺伝子の発現亢進が約2倍であった結果と一致し、本実施例で取得した配列がSOCS-2遺伝子のプロモーターであることを確認することができた。
本発明のスクリーニング方法により、正常範囲内に血糖をコントロール可能な糖尿病治療用医薬組成物(好ましくはインスリン分泌促進用医薬組成物、より好ましくは、高グルコース濃度下特異的インスリン分泌促進用医薬組成物)を製造することができる。
Claims (7)
- SOCS-2のアミノ酸配列、配列番号2で表されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、且つ、膵β細胞にて強制発現させることにより高グルコース濃度下のインスリン分泌を抑制する作用を示すポリペプチドからなる、糖尿病治療剤スクリーニング用ツール。
- 請求項1に記載のポリペプチドを過剰発現している細胞からなる、糖尿病治療剤スクリーニング用ツール。
- (1)請求項2に記載の細胞と試験物質とを高グルコース濃度下で接触させる工程、及び
(2)前記細胞から分泌されるインスリン量を測定する工程
を含む、糖尿病治療剤のスクリーニング方法。 - 糖尿病治療剤がインスリン分泌促進剤である、請求項3に記載のスクリーニング方法。
- 配列番号3で表される塩基配列又はその一部の配列、あるいは、配列番号3で表される塩基配列において1〜10個の塩基の欠失、置換、及び/若しくは付加された塩基配列又はその一部の塩基配列を含み、且つ、ヒトSOCS-2プロモーター活性を有するDNA断片である、糖尿病治療剤スクリーニング用ツール。
- (1)請求項5に記載のDNA断片で形質転換した細胞と試験物質とを接触させる工程、
(2)SOCS2発現量を測定する工程、及び
(3)SOCS2発現量を抑制する物質を選択する工程
を含む、糖尿病治療剤のスクリーニング方法。 - 糖尿病治療剤がインスリン分泌促進剤である、請求項6に記載のスクリーニング方法。
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