JP2006166704A - 軟骨分化抑制遺伝子 - Google Patents
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Abstract
【課題】軟骨の障害が関与する疾患の診断、治療または予防等に使用されるII型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質の提供。
【解決手段】マウス細胞株ATDC5およびヒト肺線維芽細胞から作製したcDNAライブラリーから、プラスミドCPE43を用いて、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするcDNAをクローニングして、そのDNA配列およびそれより推定されるアミノ酸配列を決定した。同タンパク質、これをコードするDNA、同DNAを含有する組換えベクターおよび同組換えベクターを含有する形質転換体は、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する物質のスクリーニングに使用される。
【選択図】 なし
【解決手段】マウス細胞株ATDC5およびヒト肺線維芽細胞から作製したcDNAライブラリーから、プラスミドCPE43を用いて、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするcDNAをクローニングして、そのDNA配列およびそれより推定されるアミノ酸配列を決定した。同タンパク質、これをコードするDNA、同DNAを含有する組換えベクターおよび同組換えベクターを含有する形質転換体は、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する物質のスクリーニングに使用される。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAの取得方法、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体ならびに該タンパク質と特異的に反応する抗体に関する。また、本発明は、軟骨の障害が関与する疾患の診断、治療または予防を行う際の本発明のタンパク質、DNAまたは抗体の使用に関する。
【0002】
また本発明は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、軟骨細胞の増殖分化を阻害または抑制する物質をスクリーニングする方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
軟骨は軟骨細胞(chondrocyte)とこれを取り囲む細胞外基質(matrix)からなる結合組織であり、関節、脊椎の椎間板、肋軟骨、耳介、外耳道、恥骨結合、咽喉蓋などに存在する。細胞外基質の主成分はコラーゲン及びアグリカン(軟骨型プロテオグリカン)であり、これらは軟骨細胞によって産生される。コラーゲン繊維は軟骨の張力および剪断力に対する剛性に関与し、アグリカンは軟骨組織特有の膨潤性に関与することが知られている。
【0004】
軟骨組織は胎児期には骨格の大部分を占めており豊富に存在するが、出生後の発育、成長に伴い、軟骨組織の占める割合は減少し、その局在は限定されるようになる。成体では主に骨端表面を覆う関節軟骨として残るのみである。
【0005】
骨端軟骨の軟骨細胞は、骨端部から骨幹部へ向かって、静止軟骨細胞、増殖軟骨細胞、前肥大軟骨細胞、肥大軟骨細胞に分かれ、同調した分化段階にある細胞群が極めて整然と層状に配列している。そして各軟骨層は、その分化の程度に応じて特有の分子を発現、産生する。増殖軟骨細胞は分化の指標としては、軟骨に特有のII型コラーゲンと、糖とタンパク質の複合体であるプロテオグリカン、特にアグリカンを強く発現する。肥大軟骨細胞になるとコラーゲンはII型からX型を発現するようになる。
【0006】
軟骨細胞は間葉系の細胞(多能性未分化間葉系細胞)より分化する。さらに最近の研究から軟骨細胞の増殖や分化を調節する因子が明らかにされてきている(たとえば、Crombrugghe B. et al.:Current Opinion in Cell Biology.13 p721-727(2001))。Sox(Sry-type HMG box)遺伝子群は、性決定遺伝子Sry(Sex determining region Y)のHMG(high mobility group)ボックスと高い相同性を持つドメインを有する転写制御遺伝子群であり、現在20種類以上のSox遺伝子が同定されている。この中で、Sox9はヒトにおける変異が彎曲肢異型性症の原因になること(Foster J.W.et al.:Nature,372 p525-530(1994))、またマウスの発生過程において軟骨組織優位に発現されること(Wright E.M.etal.:Nature Genet.9 p15-20(1995))、Sox9遺伝子変異のES細胞を用いた実験から、Sox9-/-細胞は軟骨組織に参加できず、II型コラーゲンのような軟骨細胞特異的な細胞外遺伝子を発現できないことが報告されており(Bi W.etal.:Nature Genet.22 p85-89(1999))、軟骨形成に重要な働きを持つ転写因子とされている。しかし、Sox9の機能は軟骨細胞に限られているわけではなく、またII型コラーゲン遺伝子の活性化には、Sox9の他に未知のパートナー遺伝子が必要であるとの報告(Kamachi Y.et al.:Mol.Cell.Biol.19 p107-120(1999))もあり不明な点は多い。また、Sox9の発現制御メカニズムも未解明である。
【0007】
この他に、軟骨細胞の増殖や分化に関与する因子として、骨形成タンパク(bone morphogenetic protein:BMP)、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)、インスリン様増殖因子(insulin-like growth factor:IGF)、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(parathyroid hormone related peptide:PTHrP)、ソニックへッジホッグ(Sonic hedgehog)、インディアンヘッジホッグ(Indian hedgehog)、などが報告されているが、いずれも軟骨以外にもさまざまな組織、期間形成で重要な役割を果たす共通の基本的制御因子であり、特異的な分化誘導因子は見つかっていない。
【0008】
血管に富む骨は比較的旺盛な再生能力を持っているが、その表面を覆う関節軟骨は再生能力に極めて乏しい組織である。関節軟骨の表面が損傷を受けると容易に変形性軟骨症へと移行し、これを軟骨で再生させることは極めて困難である。軟骨細胞の増殖と分化の分子機構を解明することは、軟骨疾患の病因解明や、治療手段開発に寄与することが期待される。
【0009】
しかしながら、軟骨細胞の増殖と分化のメカニズムに関しては、いまだ不明な点が多くその全容は明らかにされていない。軟骨細胞の増殖・分化に関わる新たな分子の同定と、より進んだメカニズムの解明が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記のように軟骨細胞の増殖と分化を制御する作用を有する有用な新規な遺伝子、タンパク質を見出し、これを医薬、診断薬、医療の分野で利用する方法を提供することにある。
【0011】
即ち、本発明は、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する新規タンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の製造方法、該タンパク質またはその部分ペプチドに対する抗体、該抗体の製造方法、該タンパク質あるいは該遺伝子を含有している医薬を提供する。
【0012】
また、本発明は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する物質をスクリーニングする方法、該スクリーニング用キット、該スクリーニング方法もしくはスクリーニング用キットを用いて得られるII型コラーゲンの発現を阻害または促進する物質、該物質の製造方法、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する物質を含有している医薬などを提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
マウスEC(embryonal carcinoma)由来クローン化細胞株ATDC5は高率に軟骨分化が誘導されるのみならず、高い自己複製能を有する点で軟骨幹細胞に必須の要件を満たしている(Atsumi T.et al.:Cell Diff. Dev.,30 p109-116(1990) Shukunami C.et al.: J.Cell Biol.,133 p457-468(1996))。最近この細胞を用いて軟骨分化の制御機構を解析することが可能となってきた。未分化ATDC5細胞をインスリン存在下で培養すると肢芽間充織細胞に見られるような細胞凝集領域が培養系内に出現する。凝集領域内にある特徴的な未分化細胞は前駆軟骨細胞と言えるもので、この領域内において増殖軟骨細胞へと分化が進行する。この時、発現するコラーゲンタイプはI型からII型へと劇的に変化する。II型コラーゲンを発現する軟骨細胞はゆっくり増殖して軟骨結節を形成する。さらにX型コラーゲンを発現する肥大軟骨細胞へと分化してついには細胞外基質が石灰化する。このようにATDC5細胞によって、軟骨のすべての分化段階をシミュレートできる。
【0014】
一方、軟骨特異的な分子であるII型コラーゲンの発現制御に関しては、II型コラーゲンが軟骨で特異的に発現するのに必要な調節配列(エンハンサー)が、II型コラーゲン遺伝子の第1イントロン内に存在し、哺乳類のII型コラーゲン遺伝子間で保存されていることが報告されている(例えば、Lefebvre V.et al.:Mol.Cell.Biol.16 p4512-4523(1996), Lefebvre V.et al.:Mol.Cell.Biol.17 p2336-2346(1997), Bell,D.M.et al.:Nature Genet.16 p174-178(1997), Zhou G.et al.:J.Biol.Chem.272 p14989-14997(1998))。
【0015】
本発明者らは、かかる技術背景のもとに、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製し、ATDC5細胞を用いた発現クローニング法による遺伝子機能アッセイ系を完成し、該アッセイ系によりII型コラーゲンの発現を制御する作用を有するタンパク質をコードする新規DNA(cDNA)を単離することに成功した。この新規DNAは、ATDC5細胞内で発現させることによりII型コラーゲンの発現を抑制させることができることを確認した。この結果は、該新規DNAがII型コラーゲンの発現に関与する分子であることを示しており、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1) 以下の(a)または(b)の精製されたタンパク質。
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質。
(2) 上記(1)記載のタンパク質とその全長にわたり少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する、精製されたタンパク質。
(3) 上記(1)または(2)に記載のタンパク質であり、かつ軟骨細胞の分化を抑制する作用を有するタンパク質。
(4) 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質。
(5) 以下の(a)〜(c)のいずれかのヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかで表されるヌクレオチド配列。
(b)(a)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかにおいて、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(6) 以下の(a)〜(c)のいずれかのヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかのコード領域に示されるヌクレオチド配列。
(b)(a)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77に示されるコード領域のいずれかであって、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(7) 上記(4)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
(8) 上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列からなり、かつ軟骨細胞の分化を抑制する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(9) 上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドによりコードされる精製されたタンパク質。
(10) 上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
(11) 上記(10)に記載の組換えベクターを含む形質転換された細胞。
(12) 上記(3)〜(7)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドでコードされたタンパク質が膜タンパク質である場合における、上記(11)記載の細胞。
(13) (a)上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載の単離されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現する条件下で該ポリヌクレオチドを含有する形質転換された細胞を培養し、
(b)培養物からタンパク質を回収する、
ことを含む、タンパク質の製造方法。
(14) (a)個体のゲノムにおける上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列中の変異の存在または不存在を決定し、および/または
(b)該個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析する、
ことを含む該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した、該個体における疾病または疾病への感受性の診断方法。好ましくは発現するタンパク質の量が正常の2倍以上の場合、あるいは2分の1以下の場合に病気であると診断する。
(15) 以下の工程を含むII型コラーゲンの発現の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングする方法。
(a)II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質をコードする遺伝子およびII型コラーゲンの発現に対応した、検出可能シグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、および
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離もしくは同定する工程。
また、シグナルを正常より1.2倍以上増加させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定し、0.8倍以下に減少させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定することが好ましい。
(16) 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子、および検出可能なシグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された宿主細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離もしくは同定する工程、および
(f)単離または同定された化合物を医薬組成物として最適化する工程。
また、本発明においては、シグナルを正常より1.2倍以上増加させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定し、0.8倍以下に減少させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定することが好ましい。
(17) II型コラーゲンの発現の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングするためのキットであって、
(a)II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質をコードする遺伝子、およびII型コラーゲンの発現に対応した、検出可能なシグナルを提供しうる成分により形質転換された細胞、および
(b)検出可能なシグナルを測定するための試薬
を含むキット。
(18) 上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルあるいはポリクローナル抗体。
(19) 上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質を抗原あるいはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することからなる、上記(1)、(2)または(9)記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法。
(20) II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質の発現を阻害する、上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
(21) 上記(1)、(2)または(9)記載のタンパク質をコードするRNAの開裂により、II型コラーゲンの発現を促進するリボザイム。
(22) 軟骨疾患の予防治療に有効な量の、上記(15)記載の方法でスクリーニングされた化合物、上記(18)記載のモノクローナル、上記(18)に記載のポリクローナル抗体、上記(20)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび上記(21)記載のリボザイムからなる群より選ばれる1種または2種以上を、個体に投与することを含む疾患の治療法。
(23) II型コラーゲンの発現を阻害または活性化するものとして上記(16)に記載の方法により製造された医薬組成物。
(24) 軟骨疾患の予防治療のための上記(23)記載の医薬組成物。
(25) 変形性関節症、軟骨欠損症、または慢性関節リウマチの予防治療のための上記(23)記載の医薬組成物。
(26) 軟骨に関連する疾患を患っている患者に上記(16)記載の方法により製造された医薬組成物を投与することからなる軟骨疾患を予防治療する方法。
(27) 上記(18)記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を有効成分として含有する医薬組成物。
(28) 上記(20)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬組成物。
(29) 上記(21)記載のリボザイムを有効成分として含有する医薬組成物。
(30) 対象疾患が軟骨に関連する疾患である、上記(27)、(28)または(29)に記載の医薬組成物。
(31) 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77に示されるヌクレオチド配列もしくはコード領域のヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセット、および/または、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体。
(32) 上記(31)に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列および/または他のアミノ酸配列のデータを比較して他のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列との同一性の算出を行う方法。
(33) 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質。
(34) 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の基本的特徴を更に明らかにするために、本発明の完成に至る経緯を追いながら、本発明について説明する。II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する新規遺伝子を取得する目的で、実施例に示すように、以下の実験を実行した。
【0018】
まずATDC5細胞(理研ジーンバンクより購入)あるいはヒト正常肺線維芽細胞(三光純薬株式会社より購入)より調製したmRNAより、オリゴキャッピング法によって完全長cDNAを作製し、該cDNAをベクターpME18S−FL3(GenBank Accession AB009864)に組み込んだ完全長cDNAライブラリーを作製した。次に、該cDNAライブラリーを大腸菌に導入し、1クローンずつプラスミドを調製した。次に、ATDC5細胞に、ルシフェラーゼをコードするDNAの上流にII型コラーゲン遺伝子のプロモーター配列及びエンハンサー配列を含有するレポータープラスミド、すなわちII型コラーゲン遺伝子の発現を調べることができるレポータープラスミドと上記の完全長cDNAプラスミドとを共導入した。続いて、Insulin−like Growth Factor−I(IGF−I)、Fibroblast Growth Factor−Basic(bFGF)を終濃度50ng/mlとなるように培地に添加し、II型コラーゲン遺伝子の発現を誘導した。そして、48時間培養後、ルシフェラーゼ活性を測定し、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAの代わりに、空のベクターpME18S−FL3を入れた細胞)と比べて有意に低下している(対照実験と比べてルシフェラーゼ活性が0.6倍以下の値を示した)プラスミドを選抜し、該プラスミドにクローニングされているcDNAの全ヌクレオチド配列を決定した。このようにして得られたcDNAによりコードされるタンパク質は、該タンパク質がII型コラーゲンの発現に関与する分子であることを示している。
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質を提供し、これに関連して、さらに以下のタンパク質を提供する。
(a)上記アミノ酸配列を含むタンパク質。
(b)上記アミノ酸配列の1つを有するペプチド。
(c)II型コラーゲンの発現を抑制し、かつ上記アミノ酸配列において、1以上のアミノ酸の削除、置換または付加を有するタンパク質。
(d)その全長にわたり配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のアミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
【0020】
“同一性”とは、当該技術で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはヌクレオチド配列の間の適合によって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間の適合によって決定されるような、タンパク質またはヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味する。“同一性”は、既知の方法により容易に決定できる。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最も長く適合するように設計される。同一性を決定するための方法は、公に利用可能なプログラムにコードされている。相同性決定には、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りであるが、これに限定されない。
【0021】
アミノ酸置換行列とは20種類のアミノ酸の各々のペアの類縁性を数値化した行列であり、通常BLOSUM62のデフォルトマトリックスが用いられる。このアミノ酸置換行列の理論についてはAltschul S.F., J.Mol.Biol.,219:555-565(1991)に、DNA配列の比較への適用についてはStates D.J., Gish W., Altschul S.F., Methods, 3:66-70(1991)に示されている。その際の最適なギャップコストは経験的に決定されており、BLOSUM62の場合は好ましくは、Existence 11、Extension 1のパラメーターが用いられる。期待値(EXPECT)とは、データベース配列に対してマッチする際の統計的有意性に関する閾値であり、デフォルト値は10である。
【0022】
一例として、配列番号2のアミノ酸配列に対して例えば95%以上の同一性を有するタンパク質は、そのアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸100個あたり5個までのアミノ酸の変化を含んでよいことを意味する。言い換えれば、対照アミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質は、対照配列中の全アミノ酸の5%までの数のアミノ酸が欠失または他のアミノ酸と置換していてもよく、あるいは、対照配列中の全アミノ酸配列のうち5%までの数のアミノ酸が対照配列中に挿入されたものであっても良い。対照配列におけるこれらの変化は、対照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端位置に存在していてもよく、あるいはそれらの末端間のいずれかの位置に存在していてもよく、あるいは対照配列内で1個またはそれ以上の一連の群をなしていてもよい。
【0023】
上記した配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78に記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質がII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有することは、本明細書実施例に記載の通りである。
【0024】
また、本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75もしくは77のポリヌクレオチドまたはこれらの配列に示されるコード領域(CDS)からなるポリヌクレオチドを提供する。(なお、以下本明細書においては、特に断らない限り、これらのポリヌクレオチドを「配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のポリヌクレオチド」という。配列番号により示されるヌクレオチド配列についても同様である。)これに関連して、本発明はさらに以下の単離されたポリヌクレオチドを提供する。
(a)上記配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
(b)上記配列のポリヌクレオチド。
(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のアミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド。
【0025】
上記ヌクレオチド配列に含まれるヌクレオチド配列に同一または実質的に同一なポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする全長cDNA及びゲノムクローンまたは上記配列に対応する相同性の高い他の遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして、または核酸増幅反応のためのプライマーとして使用してもよい。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記配列に70%同一であり、好ましくは、80%同一であり、より好ましくは90%同一であり、最も好ましくは、95%同一である。プローブまたはプライマーは、一般的には少なくとも15ヌクレオチドを含有し、好ましくは30ヌクレオチドを含有し、50ヌクレオチドを含有してもよい。特に好ましいプローブは、30〜50ヌクレオチドを有する。特に好ましいプライマーは、20〜25ヌクレオチドを有する。
【0026】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態(たとえば、cDNAおよびクローニングによって得られるか、あるいは合成的に生成されるゲノムDNAを含む)であってもよく、RNA(たとえばmRNA)の形態であってもよい。該ポリヌクレオチドは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドであってもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(コード鎖としても知られる)であっても、アンチセンス鎖(非コード鎖としても知られる)であってもよい。
【0027】
当業者であれば、公知の方法を用いてこのタンパク質中のアミノ酸の置換などを適宜行ない、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と同様にII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質を作製することが可能である。一つの方法としては、該タンパク質をコードするDNAに対して、慣用の突然変異誘発法を使用する方法がある。別の方法としてはたとえば部位特異的変異法(たとえば宝酒造株式会社のMutan−Super Express Km キット)が挙げられる。また、タンパク質のアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このようにアミノ酸の欠失、置換、付加により配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のタンパク質に対してアミノ酸配列が変異した変異体であって、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質及び該タンパク質をコードするDNAも本発明に含まれる。変異の数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは3以下が好ましい。
【0028】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
【0029】
当業者であれば、ハイブリダイゼーション技術などを用いて配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(たとえば配列番号1)またはその一部を基に、これと類似性の高いDNAを単離して、該DNAから配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様にII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質を得ることも通常行ない得ることである。このように上記した配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列のタンパク質と高い同一性を有するタンパク質であって、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。高い同一性とは、上記配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列の全長にわたり少なくとも95%、好ましくは、少なくとも97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を示す。
【0030】
本発明におけるII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するとは、適切な細胞内に遺伝子を導入し該遺伝子にコードさせるタンパク質を過剰発現させた時、II型コラーゲンの発現が直接的あるいは間接的に抑制されることをいう。II型コラーゲンの発現は、例えば、II型コラーゲン遺伝子のプロモーター配列及び調節(エンハンサー)配列を用いて作製したII型コラーゲン遺伝子の発現を調べることができるレポータープラスミドを用いたレポーターアッセイにより測定できる。II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するとは、II型コラーゲンの発現が対照実験(該タンパク質を過剰発現させてない細胞)に比し低下させる作用を有することをいう。II型コラーゲンの発現低下は、好ましくは、0.8倍以下、さらに好ましくは、0.6倍以下である。
【0031】
II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子は、発現させたいタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えばcDNA)を適切な発現ベクター内にクローニングし、該発現ベクターとII型コラーゲンの発現を調べることができるレポータープラスミドを適切な細胞に共導入(コ・トランスフェクション)し、さらに、II型コラーゲンの発現を誘導することが知られている因子により細胞を刺激し、一定時間培養後、レポーターの活性を測定することにより測定することができる。適切な発現ベクターは当業者にはよく知られており、例えば、pME18S−FL3、pcDNA3.1(Invitrogen社)などが挙げられる。レポーター遺伝子は、当業者がその発現を容易に検出できるものであれば良く、例えば、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子である。ルシフェラーゼをコードする遺伝子を使用することが最も好ましい。II型コラーゲンの発現を調べることができるレポータープラスミドとしては、例えば本明細書に記載のCPE43が例示される。適切な細胞とは、例えばATDC5細胞が挙げられる。細胞培養および細胞への遺伝子導入(トランスフェクション)は、当業者であれば当技術分野で公知の慣用方法により実施でき最適化できる。
【0032】
好ましい方法としては、細胞を細胞培養用96穴プレートに7500cells/wellの細胞数となるように、5%FBS(Fetal Bovine Serum)存在下の培地(10μg/mlヒトトランスフェリン、0.3nmol/l亜セレン酸ナトリウムを含む、HAM F−12培地とD−MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)を1:1で混合したもの)に播種し、5%CO2存在下、37℃で24時間培養した後、FuGENE6(Roche社)を用いて、CPE43レポータープラスミドと、発現ベクターを1ウエルに共導入する。続いて、FGF、IGF、BMP等のII型コラーゲンの発現を誘導することが知られている因子または軟骨細胞の増殖や分化を誘導することが知られている因子を培地中に添加する。37℃で48時間培養後、ロングタームルシフェラーゼアッセイシステムピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定することによりII型コラーゲンの発現を測定する。ルシフェラーゼ活性の測定は、例えばPerkin Elmer社のWallac ARVOTMST 1420 MULTILABEL COUNTERを用いて測定できる。FuGENE6による遺伝子導入の方法及びピッカジーンLT2.0によるルシフェラーゼ活性測定は、それぞれに添付されているプロトコールに従い実施できる。FuGENE6を用いた96穴プレートでの遺伝子導入の方法は、1ウエルあたり、FuGENE6の量は0.3〜0.5μlが良く好ましくは0.4μlであり、CPE43レポータープラスミドの量は50〜100ngが良く好ましくは100ngであり、発現ベクターの量は50〜100ngが良く好ましくは100ngである。FGF、IGF、BMP等の添加濃度は、10〜100ng/mlが良い。II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有することは、該レポーター活性(ルシフェラーゼ活性)を対照実験(空のベクターのみを導入した細胞)に比し低下させる作用を指標として確認することができる。指標とするレポーター活性の低下は、好ましくは、0.8倍以下、さらに好ましくは、0.6倍以下である。
【0033】
本発明のタンパク質としては、ヒトや哺乳動物のあらゆる細胞や組織に由来する天然のタンパク質でもよく、化学合成タンパク質であってもよく、また遺伝子組換え技術によって得られたタンパク質でもよい。タンパク質は糖鎖やリン酸化などの翻訳後修飾は受けていても受けていなくても良い。
【0034】
本発明の遺伝子がコードするタンパク質としては、例えば、分泌タンパク質(増殖因子、サイトカイン、ホルモン等)、タンパク質修飾酵素(タンパク質リン酸化酵素、タンパク質脱リン酸化酵素、プロテアーゼ等)、シグナル伝達分子(タンパク間相互作用分子等)、核内タンパク質(核内受容体、転写因子等)、膜タンパク質が挙げられる。膜タンパク質は、受容体、細胞接着分子、イオンチャンネル、トランスポーター等が挙げられる。タンパク質が膜タンパク質である場合、後述するスクリーニングにより選択された化合物は、細胞内へ容易に移行する或いは細胞内にシグナルを伝達させることが予想されるため、医薬化合物のリサーチツールとしては、より有用である。
【0035】
本発明は、上記で示される本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。上記の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列としてより具体的には、たとえば配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77で表されるヌクレオチド配列が挙げられる。DNAはcDNAのほか、ゲノムDNA、化学合成DNAも含まれる。遺伝暗号の縮重に従い、遺伝子から生産されるタンパク質のアミノ酸配列を変えることなく配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチドを他の種類のヌクレオチドに置換することができる。従って、本発明のDNAはまた、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって変換されたヌクレオチド配列も含有する。このようなDNAは、公知の方法により合成することができる。
【0036】
本発明のDNAは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77で表されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。ストリンジェントな条件とは、当業者には十分理解できることであり、たとえば、T.Maniatisらの実験操作書(Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory1982、1989)などに従えば容易に実施できる。
【0037】
すなわち、ストリンジェントな条件とは、30%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中(5×SSC(0.75MのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、100μg/mlの変性せん断サケ精子DNA)で37℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで1×SSC、0.1%SDS中、37℃で10分の洗浄を2回行う条件である(低ストリンジエンシー)。より好ましい条件は、40%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、1%SDS中、42℃で10分の洗浄を2回行う条件である(中ストリンジエンシー)。最も好ましい条件は、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃で10分の洗浄を2回行う条件である(高ストリンジエンシー)。この際、得られたDNAは、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードすることが必須である。
【0038】
本発明は、上記(4)(5)あるいは(6)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と高い類似性を有し、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記(4)(5)または(6)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の全長にわたり95%同一であり、より好ましくは97%同一であり、最も好ましくは少なくとも99%同一である。
【0039】
本発明のタンパク質は、ATDC5細胞においてII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有している。軟骨細胞は、凝集した間葉系幹細胞から分化する。間葉系幹細胞は、軟骨細胞以外にも分化するが、軟骨細胞への分化したか否かは、軟骨細胞に特異的に発現するII型コラーゲンの産生の有無で判断できる。II型コラーゲンが、軟骨細胞に特異的に発現する分子であることは、よく知られている(例えば、Horton W. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 p8864-8868(1987))。よって、II型コラーゲンの発現を抑制することにより、間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化を抑制することができると考えられる。また一方ATDC5細胞は、軟骨分化の全ての段階をシミュレートできる細胞株として世の中で認知されている(例えば、Atsumi T.et al.:Cell Diff. Dev.,30 p109-116(1990) 、Shukunami C.et al.: J.Cell Biol.,133 p457-468(1996))。ATDC5細胞は軟骨前駆細胞の性質を有し、かつ増殖因子の刺激により軟骨細胞に分化する。未分化ATDC5細胞はII型コラーゲンを発現していないが、インスリン存在下で培養すると、コンフルエントに達した後に特有の細胞凝集領域が出現し、この領域から軟骨細胞が出現して、軟骨結節が形成される。軟骨結節の形成と並行してII型コラーゲンの発現が認められるようになることが報告されている(Shukunami C.et al.: J.Cell Biol.,133 p457-468(1996))。すなわち本発明は、上記(1)または(2)に記載のタンパク質であり、かつ軟骨細胞の分化を抑制する作用を有するタンパク質である。また本発明は、上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列からなり、かつ軟骨細胞の分化を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列である。
【0040】
上記の本発明のDNAは、前述のタンパク質を、組換えDNA技術を用いて製造するのに用いることができる。本発明のDNA及びペプチドは、概略以下のようにして得ることができる。
(A)本発明のタンパク質をコードするDNAをクローニングする。
(B)タンパク質の全コード領域あるいはその一部をコードするDNAを発現用ベクターに組み込んで、組換えベクターを構築する。
(C)構築した組換えベクターにより、宿主細胞を形質転換する。
(D)得られた細胞を培養し、該タンパク質、またはその類縁体を発現させ、カラムクロマトグラフィーなどにより精製する。
【0041】
上記の工程中でDNA、組換え体宿主としての大腸菌等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれらの目的を達成することができる。以下に上記(A)〜(D)の工程について更に詳しく説明する。
【0042】
上記工程(A)における本発明のタンパク質をコードするDNAのクローニングの手段としては、本願明細書実施例に記載した方法の他に、本発明のヌクレオチド配列(たとえば配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77)の一部を有する合成DNAをプライマーとしたPCR法によって増幅する方法、あるいは、適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別すること、などが挙げられる。細胞、組織より全RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(RT-PCR法)によって増幅することもできる。
【0043】
適当なベクターに組み込んだDNAとしては、たとえば市販されている(CLONTECH社、STRATAGENE社)ライブラリーを使用することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。クローン化された本発明のタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。上記のようにして得られるDNAは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77に記載のヌクレオチド配列を有する遺伝子であるか、あるいは前述の(4)〜(7)のポリヌクレオチドであればよい。上記工程(B)において発現ベクターに組み込むDNAは、上述のタンパク質の全長をコードする全長cDNAでも、DNA断片でも良いし、その一部分を発現する様に構築されたDNA断片でも良い。
【0044】
すなわち、本発明は、上記のDNAを含有する組換えベクターを提供する。本発明のタンパク質の発現ベクターは、たとえば、本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0045】
用いる発現ベクターとしては、複製可能であれば、大腸菌をはじめとする原核生物由来、酵母由来、真菌由来、昆虫ウイルス由来、脊椎動物ウイルス由来いずれのベクターでも良いが、宿主として使用する微生物または細胞に適したものを選択する必要がある。また、発現物に応じて、宿主細胞―発現ベクター系としては、適切な組み合わせが選択される。
【0046】
微生物を宿主として使用する場合、これら微生物に適したプラスミドベクターが組換え体DNAの複製可能な発現ベクターとして一般に用いられる。
【0047】
たとえば、大腸菌を形質転換するためのプラスミドベクターとしては、プラスミドpBR322やpBR327などを用いることができる。プラスミドベクターは通常複製起源、プロモーター、及び組換え体DNAで形質転換した細胞を選別するのに有用な表現型を組換え体DNAに与えるマーカー遺伝子等を含んでいる。プロモーターの例としては、β−ラクタマーゼプロモーター、ラクトースプロモーター、トリプトファンプロモーター等が挙げられる。マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子やテトラサイクリン遺伝子などが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpBR322、pBR327の他に、pUC18、pUC19等が挙げられる。
【0048】
酵母で本発明のDNAを発現するためには、複製可能なベクターとして、たとえばYEp24を用いることができる。プラスミドYEp24はURA3遺伝子を含有しており、このURA3遺伝子をマーカー遺伝子として利用することができる。酵母細胞用の発現ベクターのプロモーターの例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼなどの遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0049】
真菌で本発明のDNAを発現するための発現ベクターに用いられるプロモーター及びターミネーターの例としては、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPD)、アクチン等の遺伝子プロモーター及びターミネーターが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpPGACY2、pBSFAHY83等が挙げられる。
【0050】
昆虫細胞で本発明のDNAを発現させるための発現ベクターに用いられるプロモーターの例としては、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。昆虫細胞に適した発現ベクターの例としては、バキュロウイルスなどが挙げられる。
【0051】
動物細胞で本発明のDNAを発現させるための組換えベクターは、一般に遺伝子を制御するための機能配列、たとえば、複製起源、本発明のDNAの上流に位置すべきプロモーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位や転写終止配列を含有している。本発明のDNAを真核細胞内で発現させるのに用いることができるそのような機能配列はウイルスやウイルス性物質から得ることができる。
【0052】
例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の上流位置に本来存在するプロモーターも、上述の宿主−ベクター系で使用するのに適しているならば使用することができる。複製起源については、外来性の起源、たとえばアデノウイルス、ポリオーマ、SV40等のウイルス由来の複製起点を用いることができる。また、発現ベクターとして宿主染色体に組み込まれるような性質を有するベクターを用いる場合、宿主染色体の複製起源を利用することができる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpSV−dhfr(ATCC 37146)、pBPV−1(9−1)(ATCC 37111)、pcDNA3.1(INVITROGEN社)、pME18S−FL3等が挙げられる。
【0053】
本発明は、上記の組換えベクターを含む形質転換された細胞である。本発明の複製可能な組換えベクターで形質転換された微生物または細胞は、前述の通り、組換えベクターに与えられた少なくとも1種の表現型によって形質転換されずに残った親細胞から選別される。表現型は少なくとも1種のマーカー遺伝子を組換えベクターに挿入することによって与えることができる。また複製可能なベクターが本来有しているマーカー遺伝子を利用することもできる。マーカー遺伝子の例としては、たとえば、ネオマイシン耐性などの薬剤耐性遺伝子やジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子などが挙げられる。
【0054】
上記工程(C)において用いる宿主としては、大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでも良いが、用いる発現ベクターに適したものを選択する必要がある。微生物の例としては、エシュリヒア コリ(Escherichia coli)の菌株、たとえばE.coliK12株294(ATCC 31446)、E.coli X1776(ATCC 31537)、E.coli C600、E.coli JM109、E.coli B株、あるいはバチラス サブチリス(Bacillus subtilis)の如きBacillus属の菌株、あるいはサルモネラ チフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア マーゼサンス(Serratia marcesans)等の大腸菌以外の腸内菌、あるいはシュードモナス(Pseudomonas)属の種々の菌株が挙げられる。
【0055】
酵母としては、たとえば、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。真菌としては、たとえば、アスペルギルス ニドランス(Aspergillus nidulans)、アクレモニウム クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)(ATCC 11550)等が挙げられる。
【0056】
昆虫細胞としては、たとえば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda:Sf細胞)、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、などが用いられる。動物細胞の例としては、HEK293細胞、COS−1細胞、COS−7細胞、Hela細胞、チャイニーズハムスター(CHO)細胞、ATDC5細胞等が挙げられる。これらの中でも、CHO細胞およびHEK293細胞が好ましい。細胞を宿主とする場合、用いられる発現ベクターと宿主細胞の組合せは実験の目的により異なるが、その組合せにより、一過的発現、構成的発現の2種類の発現方式が考えられる。
【0057】
上記工程(C)における微生物及び細胞の形質転換とは、DNAを強制的方法や、細胞の貪食能により微生物や細胞に取り込ませ、プラスミド状態あるいは染色体に組み込まれた状態でDNAの形質を一過的あるいは構成的に発現させることである。当業者であれば公知の方法によって形質転換できる(たとえば実験医学別冊遺伝子工学ハンドブック)。たとえば動物細胞の場合、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、リポフェクション法などの方法でDNAを細胞に導入することができる。動物細胞を用いて、本発明のタンパク質を安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のタンパク質の高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、Dihydroforate reductase(DHFR)遺伝子を選択マーカーとして用いた場合Methotrexate(MTX)濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、DHFR遺伝子とともに、本発明のタンパク質をコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
【0058】
上記の形質転換された細胞を本発明のタンパク質をコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のタンパク質を生成、蓄積せしめることによって、本発明のタンパク質を製造することができる。すなわち、本発明は、上記(4)〜(7)に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む形質転換された細胞を、該ポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を発現させる条件下培養し、次いで培養物から該タンパク質を回収することを含む該タンパク質の製造方法である。
【0059】
上記の形質転換された細胞の培養は、当業者に公知の方法で行なうことができる(たとえばバイオマニュアルシリーズ4、羊土社)。たとえば動物細胞の場合、各種の動物細胞培養法、たとえば、シャーレ培養、マルチトレー式培養、モジュール培養などの付着培養、または細胞培養用担体(マイクロキャリアー)に付着させるか生産細胞自体を浮遊化させ浮遊培養等の公知の方法により培養を行なえば良い。培地は通常良く用いられる動物細胞用の培地、たとえばD−MEMやRPMI1640等を用いれば良い。
【0060】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。たとえば、本発明のタンパク質は、硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスフォセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法により組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。最も好ましくは、高性能液体クロマトグラフィーが精製に使用される。ポリペプチドが細胞内合成、単離または精製の間に変性するときには、活性なコンフォメーションを再生するためにタンパク質をリフォールディングするためのよく知られた技術を使用できる。
【0061】
本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として製造することができる。これらも、本発明に含まれる。この融合タンパク質を発現する際に用いられるベクターとしては、該タンパク質をコードするDNAを組み込むことができ、かつ該融合タンパク質を発現することができるベクターであれば、いかなるベクターでも用いることができる。本発明のペプチドに融合できるタンパク質としては、たとえばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジン残基の6個の連続配列(6×His)等が挙げられる。本発明のタンパク質を他のタンパク質と融合したタンパク質として発現させた場合には、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、有利である。例えば、GSTとの融合タンパク質として生産した場合は、グルタチオンをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0062】
本発明は、上記(9)のタンパク質の活性を阻害するタンパク質を含む。たとえば、抗体や、上記(9)のタンパク質の活性中心等に結合し活性の発現を妨げる他のタンパク質が挙げられる。
【0063】
本発明は、前記の本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドに特異的に結合する抗体ならびにそのような抗体の製造方法に関する。抗体は、本発明のタンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体のフラグメント、一本鎖抗体、ヒト化抗体の何れであってもよい。抗体フラグメントは、公知の技術によって作製することができる。たとえば、該抗体フラグメントには、限定されるものではないが、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント及びFvフラグメントが含まれる。たとえば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、上記(1)または(2)に記載のタンパク質を抗原またはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することにより得られる。本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質あるいはそのペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。たとえば実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版に記載の方法が挙げられる。
【0064】
ポリクローナル抗体の場合であれば、たとえば、本発明のタンパク質をウサギなどの動物に本発明のタンパク質あるいはペプチドを注射することにより該タンパク質あるいはペプチドに対する抗体を産生させ、次いで血液を採取し、これを、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0065】
モノクローナル抗体の場合は、たとえば、本発明のタンパク質をマウスなどの動物に免疫し、同マウスから脾臓を抽出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウス内より腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0066】
得られた抗体をヒトに投与する目的で使用する場合は、免疫原性を低下させるために、ヒト型化抗体あるいはヒト抗体を用いることが好ましい。ヒト型化抗体は、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物を用いて作製することができる。これらのヒト型化抗体やヒト抗体の一般的概説は、たとえば、Morrison,S.L.et al.〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)〕、Jones,P.T.et al〔Nature 321:522-525(1986)〕、野口浩〔医学のあゆみ 167:457-462(1993)〕、松本隆志〔化学と生物 36:448-456(1998)〕によって供されている。ヒト化キメラ抗体は、マウス抗体のV領域とヒト抗体のC領域を遺伝子組換えにより結合し、作製することができる。ヒト化抗体は、マウスのモノクローナル抗体から相補性決定部位(CDR)以外の領域をヒト抗体由来の配列に置換することによって作製できる。また、免疫系をヒトのものと入れ換えたマウスを用いて、該マウスを免疫して、通常のモノクローナル抗体と同様に直接ヒト抗体を作製することもできる。
【0067】
これらの抗体は、タンパク質を発現するクローンを単離したり同定するのに使用できる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質を細胞抽出液、または本発明のタンパク質を産生する形質転換細胞から精製するのに使用できる。更にこれらの抗体は、細胞や組織中の本発明のタンパク質を検出するELISAやRIA(ラジオイムノアッセイ)、またはウエスタンブロット系の構築に使用できる。このような検出系は、動物、好ましくは、ヒトの組織または血管内流体などの身体サンプル中に存在する本発明のタンパク質の存在量を検出する診断目的に使用することができる。たとえば、これらの抗体は、変形性関節症、慢性関節リウマチなどの本発明のタンパク質の(発現)異常に起因する軟骨の異常によって特徴付けられる疾患の診断に使用できる。
【0068】
疾患の診断の基礎を提供するために、本発明のタンパク質の発現についての通常の値、すなわち標準値が確立されなければならないが、これは当業者においては周知の技術である。すなわち、複合体形成のための適切な条件下で、ヒトあるいは動物のどちらでもよいが、正常の被験者から得られた体液あるいは細胞抽出物と、本発明のタンパク質に対する抗体とを結合させ、この抗体−タンパク複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原(本発明のタンパク質)を含む標準液を用いて作成した標準曲線を用いて、正常サンプルから得られた標準値を算出する。標準値と本発明のタンパク質が関係する疾患を潜在的に患う被験者からのサンプルから得られた値と比較し、標準値との偏差によって疾病の存在を確認することができる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質の機能を研究する試薬としても用いることができる。
【0069】
本発明の抗体は精製され、次いで、たとえば、本発明のタンパク質の発現異常に起因するII型コラーゲンの発現異常および/または軟骨細胞分化異常によって特徴付けられる疾患の患者に投与され得る。すなわち本発明は、上記に記載の抗体を有効成分として含有する医薬、および抗体を用いた治療方法である。これらの医薬は治療的使用のためにさらなる有効成分または不活性成分(たとえば、従来の薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(たとえば、免疫原性アジュバント))と、生理学的に無毒の安定化剤および賦形剤とともに組み合わされ得る。これらの組み合わせは、濾過滅菌され、そして凍結乾燥により投薬バイアル中に、または安定化水性調製物中の貯蔵物として投薬形態にされ得る。患者への投与は、たとえば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などの当業者に公知の方法により行い得る。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。これらの抗体は、本発明のタンパク質で仲介されるII型コラーゲンの発現障害および/または軟骨細胞の分化障害を阻害し、治療効果を示す。より具体的には、本発明の抗体は、たとえば変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症などの軟骨細胞が関係する疾患を治療または予防する医薬として有用である。
【0070】
本発明のDNAは、軟骨細胞の分化制御に関わるタンパク質を単離、同定、クローン化することにも使用できる。たとえば、本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、コードされたタンパク質を「バイト(bait)」として用いて、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーから、本発明のタンパク質に結合できるタンパク質をコードする他の配列「プレイ(prey)」を単離し、クローン化する酵母ツーハイブリッドシステム(たとえばNature、340:245-246(1989))に用いることができる。同様の方式で、本発明のタンパク質が、他のタンパク質に結合できるかどうかも決定することができる。あるいは別の方法として、本発明のタンパク質の抗体を用いた免疫沈降法(たとえば、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によって、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を細胞抽出物から単離する方法が挙げられる。さらに別の方法として、上記に記載のように、本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として発現させ、融合タンパク質に対する抗体を用いて免疫沈降法を行ない、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を単離する方法が挙げられる。
【0071】
本発明は、前述の方法により、II型コラーゲンの発現を抑制する機能を持つ(1)、(2)または(9)のタンパク質をコードする遺伝子中の変異を検出するアッセイを行い、疾患の診断や該疾患への感受性を診断するための方法を提供する。さらに、このような疾患は、個体に由来するサンプル中のタンパク質またはmRNAレベルの異常な減少または増加を測定することを含む方法によって診断してもよい。発現の減少または増加は、当該技術でRNAレベルでのポリヌクレオチドの定量によく知られた方法、たとえば、RT−PCRなどの核酸増幅法、およびRNase保護法、ノーザンブロット法その他のハイブリダイゼーション法などの方法で測定できる。宿主に由来するサンプル中のタンパク質レベルの測定に使用され得るアッセイ技術は、当業者によく知られている。そのような方法には、ラジオイムノアッセイ、競合的結合測定法、ウエスタンブロット分析およびELISAアッセイが含まれる。本発明のDNAは、本発明のタンパク質またはそのペプチドフラグメントをコードするDNAまたはmRNAにおける異常を検出するのに使用できる。本発明は、個体における上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質の発現に関連した疾患または疾患への感受性を診断する方法に関する。該方法は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列における変異を、測定することを含む。
【0072】
本発明のDNAは、本発明のDNAを用いることによって、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常を検出することができるので、たとえば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、増加あるいは発現過多などの遺伝子診断に有用である。すなわち本発明は、生物個体における該タンパク質の発現または活性に関連した、該個体における疾病または疾病への感受性の診断方法であって、
(a)個体のゲノムにおける上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列中の変異の存在または不存在を決定し、および/または
(b)該個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析する、ことを含む方法を提供する。例えば、タンパク質の発現量の程度に基づき疾患であるか否かの判断は行うことができ、発現量に基づく判断基準の好ましい一例としては、発現するタンパク質の量が正常の2倍以上あるいは1/2以下の場合に病気であると診断する。
【0073】
上記診断方法の工程(a)により、II型コラーゲンの発現を抑制する作用および/または軟骨細胞の分化を抑制する作用を持つ(1)、(2)または(9)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列に変異があることが検出された場合は、該変異がII型コラーゲンの発現異常および/または軟骨細胞の分化に関連した疾病を引き起こす可能性がある。あるいは、上記診断方法の工程(b)により、被験者における前記(1)、(2)または(9)のタンパク発現量を測定し正常値と異なる値を示す場合は、II型コラーゲンの発現を抑制する作用および/または軟骨分化を抑制する作用を持つ本発明の新規タンパク質の発現量異常が、II型コラーゲンの発現異常及び/または軟骨細胞の分化異常に関連した疾病の原因である可能性がある。ここで、工程(a)のII型コラーゲンの発現を抑制する作用および/または軟骨細胞の分化を抑制する作用を持つ(1)、(2)または(9)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の変異の有無を測定する方法としては、例えば、それらのタンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列の一部をプライマーとして、RT−PCRを行い、その後通常のヌクレオチド配列決定方法によって配列を決定し、変異の有無を検出できる。あるいは、PCR−SSCP法(Genomics、5:874-879、1989年、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によっても変異の有無を調べることができる。また、工程(b)のタンパク発現量を調べる方法としては、たとえば、前記(18)に記載の抗体を利用する方法などが挙げられる。
【0074】
また、本発明は、本発明のタンパク質によるII型コラーゲンの発現および/または軟骨細胞の分化を阻害または促進する化合物のスクリーニング方法に関する。このスクリーニング方法は、
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子および検出可能なシグナルを提供し得る成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された細胞と1あるいは複数個の被検化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを検出する工程、および
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離または同定する工程、を含む。
【0075】
また、シグナルを正常より1.2倍以上増加させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定し、0.8倍以下に減少させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定することが好ましい。
【0076】
検出可能なシグナルを提供し得る成分としては、たとえばレポーター遺伝子が挙げられる。レポーター遺伝子は、テストを行なう転写因子の活性化を直接検出するかわりに用いられるもので、調べたい遺伝子のプロモーターをレポーター遺伝子につなぎ、レポーター遺伝子の産物の活性を測定することによってプロモーターの転写活性の解析を行なうものである(バイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))。
【0077】
レポーター遺伝子としては、その発現産物の活性または生産量(mRNAの生産量も含まれる)を当業者が測定可能なものであれば、いかなるペプチド、タンパク質をコードする遺伝子も用いることができる。たとえば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダ−ゼ、ルシフェラーゼ等の酵素活性を測定することで利用できる。II型コラーゲンの発現を評価するのに用いるレポータープラスミドとしては、II型コラーゲン遺伝子のプロモーター配列およびII型コラーゲンが軟骨で特異的に発現するのに必要な調節配列をレポーター遺伝子の上流に組み込んだものであればよく、たとえば本明細書実施例に記載のCPE43が利用できる。あるいは、Murakami S.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96 p1113-1118(2000)に記載のレポータープラスミド(48-bp chondrocyte-specific Col2a1 enhancer construction)が例示される。
【0078】
宿主細胞としては、II型コラーゲンの発現を検出し得る細胞であればよく、好ましくは、哺乳動物細胞であり、たとえばATDC5細胞が好適に用いられる。形質転換及び培養に関しては、上記に記載の通りである。
【0079】
II型コラーゲンの発現を阻害または促進する化合物のスクリーニングは、具体的には、たとえば、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することにより、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する化合物をスクリーニングすることができる。レポーター活性の測定は、当業者に公知の方法(たとえばバイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))で行なうことができる。スクリーニングの被検物質には特に制限はなく、低分子化合物、高分子化合物、ペプチドなどが挙げられる。被検化合物は、人工的に合成したものであっても、天然に存在するものであっても良い。また単一物質でも、混合物でも良い。検出可能なシグナルとしては、上記レポーター遺伝子の他に、II型コラーゲンのmRNA量あるいはタンパク量を測定しても良い。mRNA量の測定は、たとえばノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法などが挙げられる。タンパク量の測定はたとえば抗体を用いる方法が挙げられる。抗体は公知の方法によって作製しても良いし、市販のもの(たとえばSANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY社)を使用することもできる。
【0080】
また、以下の(a)〜(f)の工程により医薬組成物を製造することも可能である。
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子および検出可能なシグナルを与えることができる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された宿主細胞と1あるいは複数個の化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離または同定する工程、および
(f)単離または同定された化合物を医薬組成物として最適化する工程。
【0081】
また、上記医薬組成物製造方法の工程(e)においては、シグナルを正常より1.2倍以上増加させる化合物を阻害剤化合物、0.8倍以下に減少させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定することが好ましい。
【0082】
本発明のタンパク質は、以下の工程により、該タンパク質のアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤を、構造を基礎にして設計する方法に使用してもよい。
(a)まず、タンパク質の三次元構造を決定する工程、
(b)アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤の反応性部位または結合部位と思われる部位の三次元構造を推論する工程、
(c)推論した結合部位または反応性部位に結合するかあるいは結合すると予測される候補化合物を合成する工程、および
(d)該候補化合物が本当にアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤であるか否かを試験する工程。
【0083】
また本発明は、上記スクリーニングによって得られた化合物を含む。しかしながら、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物の製造方法は、上記の方法に限定されるものではない。さらに、上記(16)に記載の方法により医薬組成物を製造する方法も含む。
【0084】
該候補化合物には特に制限はなく、低分子化合物、高分子化合物、ペプチドなどが挙げられ、また、人工的に合成したものであっても、天然に存在するものであっても良い。上記スクリーニングによって得られた化合物は、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する作用を有しているので、II型コラーゲンの発現異常および/または軟骨細胞の分化異常に起因する疾患を治療または予防するための医薬として有用である。混合物から目的化合物を単離、精製するには、自体公知の方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行なうことができる。化合物の塩を取得したい時は、化合物が塩の形で得られる場合にはそのまま精製すれば良く、また遊離の形で得られる場合には、通常の方法により適当な溶媒に溶解または懸濁し、所望の酸または塩基を添加し、塩を形成させて単離精製すれば良い。
【0085】
本発明の方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として最適化する工程としては、例えば以下のような常法により製剤化する方法が例示される。すなわち活性成分として有効な量の上記化合物またはその薬理的に許容される塩と、薬理的に許容される担体とを混合すれば良い。製剤化は、選択された投与様式に適した形態が選ばれる。経口投与に適した組成物としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、および散剤などの固体形態、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液剤などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌溶液剤、乳剤、および懸濁液剤が挙げられる。上記の担体としては、例えばゼラチン、乳糖、グルコース等の糖類、コーン・小麦・米・とうもろこし澱粉等の澱粉類、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩、タルク、植物油、ステアリンアルコール・ベンジルアルコール等のアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらのうち液状担体の例としては、一般に水、生理食塩水、デキストロースまたは類似の糖溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。
【0086】
本発明は、II型コラーゲンの発現の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングするためのキットを提供する。該キットは、
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子およびII型コラーゲンの発現を抑制後、検出可能なシグナルを提供しうる成分により形質転換された細胞、
(b)検出可能なシグナルを測定するための試薬、から成り、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する化合物をスクリーニングするために必要な試薬類、
を含む。
【0087】
別の側面において、本発明は、
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77で表されるヌクレオチド配列を有する本発明のポリヌクレオチド;
(b)(a)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46またはで表されるアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質またはそれらの断片;または
(d)(c)の本発明のタンパク質に対する抗体;
を含む診断キットを提供する。
少なくとも上記(a)〜(d)のいずれかを含む診断キットは、変形性関節症、慢性関節リウマチおよび軟骨欠損症などの疾患または該疾患への感受性を診断するのに有用である。
【0088】
本明細書中に報告するII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する新規タンパク質の発見により、軟骨の障害が関与する疾患の治療または予防する新しい医薬および治療方法が提供された。さらなる具体例において、本発明は、軟骨細胞の増殖・分化を制御するための前記のII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質の機能を活性化または阻害する化合物を用いる方法に関する。上記スクリーニング方法によって得られた、II型コラーゲンの発現を活性化または阻害する化合物は、軟骨の障害が関与する疾患の治療または予防する医薬として有用である。該疾患とは、例えば、変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、異所性骨化および異所性石灰化などが挙げられる。
【0089】
更に、本発明のタンパク質や該タンパク質をコードするDNAは、診断目的にも使用できる。
【0090】
上記本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を上述の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。たとえば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、たとえば、ヒトや哺乳動物(たとえば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。患者への投与は、たとえば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行いうる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢などにより変動するが、当業者であれば適宜投与方法を選択すると共に、投与方法に応じて適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。すなわち本発明は、II型コラーゲンの発現を阻害または活性化する化合物を有効成分として含有する医薬を提供する。
【0091】
さらに、上記化合物は、軟骨の障害が関与する疾患の治療または予防する医薬として有用である。すなわち本発明は、II型コラーゲンの発現を阻害または活性化する化合物を含む、軟骨疾患予防または治療のための医薬を提供する。具体的には、例えば、変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、異所性骨化、異所性石灰化などに対する治療及び予防薬として有用である。
【0092】
さらにまた、本発明は、変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、異所性骨化、異所性石灰化などの医薬の製造における上記(16)記載の方法により製造された医薬組成物の使用も含む。
【0093】
また本発明は、上記(4)〜(7)に記載のポリヌクレオチドに対するアンチセンスオリヌクレオチドを提供する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的とした遺伝子配列に対して相補的な配列を持つオリゴヌクレオチドを用いて、タンパク質への翻訳、細胞質への輸送、あるいは全体的な生物活性機能に必要な他の活性等のRNAの機能を阻害することによって、標的遺伝子の発現を抑制することができる。この際、アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、RNAを用いても良いし、DNAを用いても良い。本発明のDNA配列は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNAとハイブリダイズし得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために使用できる。一般にアンチセンスオリゴヌクレオチドが、その遺伝子の発現に対して抑制的に作用することは公知での事実である(たとえば、細胞工学 Vol.13 No.4(1994))。本発明のタンパク質をコードする遺伝子に対するアンチセンスコード配列を有するオリゴヌクレオチドは、標準の方法で細胞内に導入することができ、該オリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする遺伝子のmRNAの翻訳を効果的に遮断して、その発現を遮断して、望ましくない作用を抑制することができる。
【0094】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、天然に見出されるオリゴヌクレオチドの他に、修飾されたものであっても良い〔たとえば、村上&牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259-266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364-1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85-95(1996)〕。従って、オリゴヌクレオチドは変化した糖部分あるいは糖間部分を有していても良い。これらの例は、当該技術分野において使用が知られているホスホチオエート及び他のイオウ含有種である。幾つかの好ましい態様に従えば、オリゴヌクレオチドの少なくとも一つのホスホジエステル結合が、その活性が調節されるべきRNAが位置する細胞の領域に浸透する組成物の能力を高める機能を有する構造により置換される。
【0095】
このような置換は、ホスホロチオエート結合、ホスホロアミデート結合、メチルホスホネート結合または短鎖アルキルもしくはシクロアルキル構造を含むことが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、幾つかの修飾されたヌクレオチド型を含んでいても良い。従って、天然に通常見いだされるもの以外のプリン及びピリミジンを使用していても良い。同様に本発明の本質的な意図が実行される限り、ヌクレオチドサブユニットのフラノシル部分を修飾することもできる。このような修飾の例は、2’−O−アルキル−、及び2’−ハロゲン置換ヌクレオチドである。本発明において有用な幾つかの糖部分の2’位の修飾の例は、OH、SH、SCH3、OCH3、OCN、またはO(CH2)nCH3(ここでnは1から約10である)、及び同様の特性を有する他の置換基である。全てのこのような類似体は、本発明の遺伝子のmRNAとハイブリダイズしてそのRNAの機能を阻害する機能を果たす限り、本発明に包含される。
【0096】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約3から約50ヌクレオチドを含み、約15から約30ヌクレオチドを含むことが好ましく、約20から約25ヌクレオチドを含むことがさらに好ましい。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、周知の方法である固相合成法により作製することができる。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含む幾つかの業者により販売されている。ホスホチオエート等の他のオリゴヌクレオチドの製造も当業者に公知の方法で作製できる。
【0097】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明の遺伝子から転写されるmRNAとハイブリダイズできるように設計される。与えられた遺伝子の配列に基づいてアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計する方法は、当業者であれば容易である〔たとえば、村上および牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259-266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364-1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85-95(1996)〕。最近の研究は、mRNAの5’領域、好ましくは翻訳開始部位を含む領域に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが、遺伝子の発現の阻害に最も効果的であることを示唆している。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、15から30ヌクレオチドが好ましく、20から25ヌクレオチドがより好ましい。ホモロジー検索で他のmRNAとの相互作用がないこと、オリゴヌクレオチド配列内で二次構造を取らないことを確認しておくことが望ましい。設計したアンチセンス分子が機能したかどうかの評価は、適当な細胞を用いて、該細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入し、当業者には公知の方法で、対象mRNAの量(たとえば、ノーザンブロット法またはRT−PCR法)、あるいは対象タンパク質の量(たとえば、ウエスタンブロットまたは蛍光抗体法)を測定することにより、発現抑制の効果を確認できる。
【0098】
一方、三重らせん形成(トリプル・ヘリックス技術)は、核内のDNAを標的とした、主に転写の段階での遺伝子発現制御方法である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、主に転写に関与する遺伝子領域に設計され、それにより、転写及び本発明のタンパク質の産生を抑える。これらのRNA、DNA、オリゴヌクレオチドは、公知の合成装置などを用いて製造することができる。
【0099】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸配列を含む細胞に、たとえばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法などのDNAトランスフェクション法、またはウイルスなどの遺伝子導入ベクターの使用を含む遺伝子導入法のいずれを用いて導入してもよい。適切なレトロウイルスベクターを用いてアンチセンスオリゴヌクレオチド発現ベクターを作製し、その後、該発現ベクターを細胞とin vivoまたはex vivoで接触させることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入できる。
【0100】
本発明のDNAは、アンチセンスRNA/DNA技術またはトリプル・へリックス技術を用いて、本発明のタンパクを介するII型コラーゲンの発現抑制および/または軟骨細胞の分化抑制を阻害するのに使用できる。
【0101】
本発明のタンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえば、変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症などの軟骨細胞が関係する疾患を治療または予防する医薬として有用である。すなわち、本発明は、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法を用いてそれらの疾病の検出に利用することもできる。
【0102】
本発明は、II型コラーゲンの発現抑制および/または軟骨細胞の分化抑制を阻害するリボザイムも含む。リボザイムは、核酸のヌクレオチド配列を認識して、核酸を切断する活性を持つRNAである(たとえば、柳川弘志 実験医学バイオサイエンス12、RNAのニューエイジ)。リボザイムは、選択された標的RNA、たとえば本発明のタンパク質をコードするmRNAを開裂するように製造することができる。本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列を基に、本発明のタンパク質のmRNAを特異的に切断するリボザイムを設計することができ、かようなリボザイムは本発明のタンパク質のmRNAに対して相補的な配列を有し、該mRNAと相補的結合し、ついで該mRNAが開裂され本発明のタンパク質の発現が減少し(または完全に発現せず)、発現減少のレベルは標的細胞内でのリボザイム発現のレベルに依存している。
【0103】
よく用いられるリボザイムには、ハンマーヘッド型とヘアピン型の2種類があり、特にハンマーヘッド型リボザイムは切断活性に必要な一次構造や二次構造がよく調べられており、当業者であれば、本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列情報のみで容易にリボザイムの設計が可能である〔たとえば、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445 (1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)〕。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的RNAと相補鎖を形成する2ヶ所の認識部位(認識部位Iと認識部位II)と活性部位からなる構造をなし、標的RNAと認識部位で相補対を形成した後、標的RNAのNUXの配列(N:AまたはGまたはCまたはU、X:AまたはCまたはU)の3’末端側で切断することが知られており、特にGUC(あるいはGUA)が一番高い活性を持つことが知られている〔たとえばKoizumi,Mら:Nucl. Acids Res.17,7059-7071(1989)、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445(1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)、川崎&多比良:実験医学 Vol.18 No.3p381-386 (2000)〕。
【0104】
そこでまず、本発明のDNA配列の中からGTC(またはGTA)の配列を探し出し、その前後で数ヌクレオチドから十数ヌクレオチドの相補対をつくることができるようにリボザイムを設計する。設計したリボザイムの適切性の評価は、たとえば、大川&平比良の文献〔実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)〕に記載の方法によって、作製したリボザイムが、イン ビトロ(in vitro)で標的mRNAを切断できるかどうかを調べることで評価できる。リボザイムの調製は、RNA分子を合成するための当分野で周知の方法により調製する。
【0105】
別法としては、リボザイムの配列をDNA合成機で合成し、たとえばT7或いはSP6のような適切なRNAポリメラーゼプロモータを有する多種のベクターに組み込み、イン ビトロで酵素的にRNAを合成させる方法が挙げられる。これらのリボザイムは、たとえばマイクロインジェクション法などの遺伝子導入方法によって細胞内に導入できる。あるいは別の方法として、リボザイムをコードするDNAを適当な発現ベクターに組み込んで、株細胞、細胞或いは組織内に導入する。選択された細胞中にリボザイムを導入するのに、適切なベクターを使用することができ、たとえばプラスミドベクター、動物ウイルス(たとえばレトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスあるいはワクシニアウイルス)ベクターがこれらの目的に通常用いられるこれらのリボザイムは、本発明のタンパク質で仲介されるII型コラーゲンの発現抑制および/または軟骨細胞の分化抑制を阻害する作用を有する。本発明のリボザイムは、たとえば変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症などの軟骨細胞が関係する疾患を治療または予防する医薬として有用である。すなわち、本発明は、上記リボザイムを有効成分として含有する医薬である。
【0106】
本発明はまた、機能を有する新規遺伝子の取得方法を提供する。より具体的には、オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製する工程およびシグナル因子を用いて該機能を有するタンパク質の存在を検出する工程を含む、新規遺伝子の取得方法を提供する。シグナル因子には、たとえばレポーター遺伝子が挙げられる。
【0107】
機能を有する遺伝子(cDNA)を多数取得するためには、不完全長のものが多いcDNAライブラリーを用いると効率が悪い。したがって、全体のクローンの中で、完全長のものの割合が高いライブラリーが必要となる。完全長cDNAは遺伝子から出来るmRNAの完全なコピーのことである。オリゴキャッピング法で作製したcDNAライブラリーは、完全長cDNAの割合が50〜80%であり、従来の方法で作製されたcDNAライブラリーと比べて、5〜10倍の完全長cDNAクローンの濃縮になっている(菅野純夫:月刊 BIO INDUSTRY Vol.16 No.11 p19-26)。一般に、完全長cDNAは、遺伝子の機能解析においては、タンパク質発現のために必須なクローンであり、完全長cDNAのクローンそのものが活性測定のための材料として極めて重要なものであるため、遺伝子の機能解析を試みるに際して、完全長cDNAのクローニングは必須の要件である。さらにその配列を決定することで、それがコードするタンパク質の一次配列を確定するための重要な情報となると同時に、遺伝子の全エクソンの配列も分かる。すなわち、完全長cDNAは、遺伝子を同定する上で貴重な情報、たとえばタンパク質の一次配列、エクソン−イントロン構造、mRNAの転写開始点、プロモーターの位置などを決めるための情報をも与える。
【0108】
オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製は、たとえば実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック改訂第3版(1999年)に記載の方法に従い行うことができる。すなわち、本発明において、オリゴキャッピング法とは、鈴木・菅野 実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック改訂第3版に記載のように、BAP,TAP,RNAリガーゼにより、キャップ構造を合成オリゴに置換する方法である。
【0109】
機能を有するタンパク質の存在を示すシグナル因子として用いることができるレポーター遺伝子は、転写因子等のタンパク質因子が結合できる適切な発現制御配列部分(1つまたは複数)と、その転写因子等による活性化を測定できる構造遺伝子部分からなる。構造遺伝子部分は、その発現産物の活性または生産量(mRNAの生産量も含まれる)を当業者が測定可能なものであれば、いかなるペプチド、タンパク質をコードする遺伝子も用いることができる。たとえば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダ−ゼ、ルシフェラーゼ等をコードするポリヌクレオチドなどを用いることができ、その酵素活性を測定することで利用できる。機能を有するタンパク質の存在を示すレポーター遺伝子としては、本明細書実施例に示すようにCPE43レポータープラスミドの他、たとえば軟骨細胞で特異的に発現しているマーカー遺伝子であるアグリカン、XI型コラーゲン等の遺伝子発現制御配列を用いたレポーター遺伝子などが挙げられる。
【0110】
たとえば、II型コラーゲン遺伝子の発現を抑制する機能を有する遺伝子を取得したい場合は、II型コラーゲンの発現をモニターできるCPE43レポータープラスミドとオリゴキャッピング法で作製した完全長cDNAクローンを細胞に共導入し、さらにII型コラーゲンの発現を誘導する因子で細胞を刺激し、その中からレポーター活性の上昇を抑制したプラスミドを選ぶことによって、該目的を達成することができる。cDNAクローンの細胞への導入は、1クローンでも良いし、複数のクローンを同時に導入しても良い。本発明の該方法の一例は、本明細書実施例に詳細に記述してある。しかし、レポーター遺伝子を適宜作製することにより、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子以外にも、各種生理活性因子(例えばNF-κB、MAPカイネース、血管新新生因子、各種転写因子)を活性化する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子の取得が可能である。
【0111】
本発明の新規遺伝子の取得方法は、イン ビトロ(in vitro)の系、あるいは細胞を用いて(cell-based)の系のどちらの方法でも良く、好ましくは細胞を用いた系である。細胞は、原核大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでも良く、好ましくは動物細胞であり、ATDC5細胞、が例示できる。
【0112】
また、本発明のcDNAは、完全長cDNAであるため、その5’末端の配列がmRNAの転写開始点であり、該cDNA配列をゲノムのヌクレオチド配列と比較することにより、該遺伝子のプロモーター領域を同定することに利用できる。ゲノムのヌクレオチド配列は、データベースに公知の配列として登録されている場合はその配列を利用できる。あるいは、該cDNAを用いてたとえばハイブリダイゼーションによってゲノムライブラリーからクローニングし、ヌクレオチド配列を決めることもできる。このようにして、本発明のcDNAのヌクレオチド配列をゲノムの配列と比較することによって、その上流に存在する該遺伝子のプロモーター領域を同定することが可能である。さらに、このようにして同定した該遺伝子のプロモーター断片を用いて該遺伝子の発現を調べるレポータープラスミドを作製することができる。レポータープラスミドは、大方の場合、転写開始点からその上流2kb、好ましくは転写開始点からその上流1kbのDNA断片をレポーター遺伝子の上流に組み込むことによって作製できる。さらに該レポータープラスミドは、該遺伝子の発現を増強あるいは減弱させる化合物のスクリーニングに利用できる。具体的には例えば、該レポータープラスミドで適当な細胞を形質転換し、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することによりスクリーニングすることができる。これらも本発明に含まれる。
【0113】
また本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体に関する。
【0114】
さらに本発明は、上記に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列のデータを比較して相同性の算出を行う方法に関する。すなわち、本発明のポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、その2次元および3次元構造を決定し、たとえば同様の機能を有する相同性の高いさらなる配列を同定するための貴重な情報源となる。これらの配列をコンピュータ読み込み可能媒体に保存し、ついで既知の高分子構造プログラムにおいて保存したデータを用いて、GCGのような既知検索ツールを用いてデータべースを検索すれば、データベース中の、ある相同性を有する配列を見出すことは容易である。
【0115】
コンピュータ読み取り可能媒体は情報またはデータを保存するのに用いる物体のいずれの組成物であってもよく、たとえば、市販フレキシブルディスク、テープ、チップ、ハードドライブ、コンパクトディスク、およびビデオディスク等がある。また、本媒体上のデータは、他のヌクレオチド配列のデータと比較して相同性の算出を行なう方法を可能にする。この方法には、本発明のヌクレオチド配列を含む第一のヌクレオチド配列をコンピュータ読み込み可能媒体中に提供し、次いで、該第一のヌクレオチド配列を少なくとも一つの第二のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を同定する工程を含む。
【0116】
本発明はまた、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質に関する。DNAプローブである複数の各種ポリヌクレオチドがスライドガラス等の特別に加工された基質上に固定され、次いで標識された標的ポリヌクレオチドを、固定化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズさせ、それぞれのプローブからのシグナルを検出する。得られるデータは、解析され、遺伝子発現が測定される。
【0117】
本発明はさらにまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質に関する。このタンパク質を固定した不溶性基質と、生物由来の細胞抽出液とを混合し、不溶性基質上に捕獲された、診断あるいは新薬開発のために有効であることが期待されるタンパク質などの細胞由来の成分を、単離あるいは同定することができる。
【0118】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。当業者には種々の変更、修飾が可能であり、これも本発明に含まれる。
【0119】
(実施例1)オリゴキャッピング法を用いた完全長cDNAライブラリーの作製(1)マウスATDC5細胞からのRNA調製
マウスEC(embryonal carcinoma)由来クローン化細胞株ATDC5(Atsumi,T.et al.:Cell Diff.Dev.,30:p109-116(1990))を10cmシャーレ50枚まで継代培養した後、セルスクレーパーで細胞を回収した。次いで、回収した細胞からRNA抽出用試薬ISOGEN(ニッポンジーンより購入)を用いて全RNAを取得した。取得の具体的方法は、試薬のプロトコールに従った。次いで、オリゴ−dT セルロース カラムを用いて、全RNAからポリA+RNAを取得した。ポリA+RNA取得の具体的方法は、上記Maniatisの実験書に従った。
【0120】
なお、ATDC5細胞の培養は、5%ウシ胎児血清(FBS:Invitrogen社)、10μg/mlヒトトランスフェリン(SIGMA社)、0.3nmol/l亜セレン酸ナトリウム(和光純薬)を含む、HAM F−12培地(SIGMA社)とD−MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium:SIGMA社)を1:1で混合した培地にて、5%CO2存在下、37℃で培養した。
【0121】
(2)ヒト肺線維芽細胞(Cryo NHLF)からのRNA調製
ヒト肺線維芽細胞(Cryo NHLF:三光純薬株式会社より購入)を、添付のプロトコールに従って培養した。10cmシャーレ50枚まで継代培養した後、セルスクレーパーで細胞を回収した。次いで、上記(1)と同様の方法でポリA+RNAを取得した。
【0122】
(3)オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製
上記ATDC5細胞とヒト肺線維芽細胞のポリA+RNAから、オリゴキャッピング法により完全長cDNAライブラリーをそれぞれ作製した。オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製の具体的方法は、菅野らの方法〔例えば、Maruyama,K.& Sugano,S.Gene,138:171-174(1994)、Suzuki、Y.et al.Gene、200:149-156(1997)、鈴木・菅野 実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック改訂第3版〕に従って作製した。
【0123】
(4)プラスミドDNAの調製
上記実施例で作製した完全長cDNAライブラリーを、エレクトロポレーション法によって大腸菌TOP10株に形質転換した後、100μg/mlアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。続いて、アンピシリン含有LB寒天培地上で生育した大腸菌のコロニーから、QIAGEN社のQIAwell 96 Ultra Plasmid Kitを用いてプラスミドを回収した。具体的方法は、QIAwell 96 Ultra Plasmid Kitに添付のプロトコールに従った。
【0124】
(実施例2)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するDNAのクローニング
(1)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするcDNAのスクリーニング
ATDC5細胞を、7500cells/well/100μlとなるように細胞培養用96穴プレートに播種し、5%CO2存在下、37℃で1日培養した。なお培地は、5%ウシ胎児血清(Invitrogen社)、10μg/mlヒトトランスフェリン(SIGMA社)、0.3nmol/l亜セレン酸ナトリウム(和光純薬)を含む、HAM F−12培地(SIGMA社)とD−MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium:SIGMA社)を1:1で混合した培地を用いた。次いで、FuGENE6(Roche社より購入)を用いて、CPE43レポータープラスミド100ngと、上記実施例1(4)で調製した完全長cDNAプラスミド2μlを1ウエルに共導入した。導入の方法は添付のプロトコールに従った。続いて、Insulin−like Growth Factor−I(IGF−I:SIGMA社より購入)、Fibroblast Growth Factor−Basic(bFGF:SIGMA社より購入)を終濃度50ng/mlとなるように培地に添加した。5%CO2存在下、37℃で2日培養後、ロングタームルシフェラーゼアッセイシステム、ピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)を用いて添付されている説明書に従い、CPE43レポータープラスミドのレポーター活性(ルシフェラーゼ活性)を測定した。なおルシフェラーゼ活性の測定は、Perkin Elmer社のWallac ARVOTMST 1420 MULTILABEL COUNTERを用いて行った。
【0125】
なお、II型コラーゲン遺伝子のプロモーター配列およびエンハンサー配列を有すると共に構造遺伝子部分としてルシフェラーゼをコードするDNAを搭載したレポータープラスミドCPE43は、以下の通りに構築した。CPE43は、Lefebvreら(Mol.Cell.Biol.,16 p4512-4523(1996))が構築したレポータープラスミドを参考にして構築した。まず、ヒトII型コラーゲン遺伝子のプロモーター領域の配列をクローニングするために、ヒトII型コラーゲン遺伝子の塩基配列(Genbank Accession M60299)に基づいて、合成オリゴヌクレオチド、5’―AGATCTGGTTACAGCCCAGCTGGG―3’(配列番号79)と、5’―AAGCTTAGCAGCGCTCTGCGTCTTC―3’(配列番号80)のプライマーを設計し、このプライマー対を用いてヒトゲノムを鋳型としてPCRを行ない、増幅された約0.12kbの断片を分離し、制限酵素BglIIとHindIIIで消化後、ホタルルシフェラーゼレポーターベクターpGL3−Basic Vector(プロメガ株式会社)のBglII部位とHindIII部位の間にT4 DNAリガーゼ(GIBCO/BRL)を用いて挿入した。得られたクローンは、定法により塩基配列を確認した。PCRは、10倍濃度の反応緩衝液(TaKaRa Ex Taqに添付のバッファー:宝酒造)5μl、2.5mMdNTP混合液5μl、上記プライマー各々2μl(各々10μMの濃度)、TaKaRa Ex Taqポリメラーゼ(宝酒造)0.5μl、ヒトGenomic DNA (CLONTECH社)200ngを含む50μlの反応液を調製し、96℃で2分間のインキュベーションの後、94℃で1分間、56℃で1分20秒間、72℃で1分40秒間のインキュベーションを、TaKaRa PCR Thermal Cycler MP(宝酒造)を用いて30サイクル行なった。
【0126】
次に、II型コラーゲン遺伝子のエンハンサー配列を合成オリゴヌクレオチドにより作製した。2本の合成オリゴヌクレオチド、5’―GATCCTGTGAATCGGGCTCTGTATGCGCTTGAGAAAAGCCCCATTCATGAGA―3’(配列番号81)と、5’―GATCTCTCATGAATGGGGCTTTTCTCAAGCGCATACAGAGCCCGATTCACAG―3’(配列番号82)を合成した。この合成オリゴヌクレオチドを各々1μg/μlとなるように滅菌水で溶解し、各々1μlずつ混ぜ、さらに滅菌水で20μlに容量を合わせた。その溶液を95℃で5分間加熱後、徐々に室温まで冷却し二本鎖オリゴヌクレオチド溶液を調製した。その溶液をT4 DNAリガーゼを使用してライゲーションを行ない、制限酵素BamHIとBglIIで消化後、アガロースゲル電気泳動に供した。二本鎖オリゴヌクレオチドが4回同方向(タンデム)に連結された、約0.2kbのDNA断片を切り出し、Geneclean Spin kit(BIO 101社)を用いて精製した。該DNA断片を上記作製のプラスミド(ヒトII型コラーゲン遺伝子のプロモーター領域の配列がpGL3−Basic Vectorに組み込まれたもの)のBglII部位に挿入した。II型コラーゲンプロモーターと合成オリゴヌクレオチドの間に制限酵素BglII部位が生じるように合成オリゴヌクレオチドが挿入されたクローンを選び、CPE43レポータープラスミドとした。
【0127】
(2)ヌクレオチド配列の決定
上記スクリーニングを12万クローン行ない、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAプラスミドの代わりに、空ベクターpME18S−FL3を導入した細胞のルシフェラーゼ活性)と比べて0.6倍以下に低下しているプラスミドを選抜し、まず、クローニングされているcDNAの5’側(シークエンスプライマ−:5’−CTTCTGCTCTAAAAGCTGCG−3’(配列番号83))と3’側(シークエンスプライマ−:5’−CGACCTGCAGCTCGAGCACA−3’(配列番号84))からそれぞれone−passシークエンスを行ない、できる限り長くヌクレオチド配列を決定した。なお、ヌクレオチド配列決定のための試薬や方法は、BigDye TerminatorCycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(アプライドバイオシステムズ社)を用い、ABI PRISM 377シークエンサー、あるいは、ABI PRISM 3100シークエンサーを用い、各々キットに添付されている説明書に従って行なった。
【0128】
(3)全長シークエンス
39種類の新規のクローンについて全長ヌクレオチド配列(配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77)を決定し、タンパク質をコードする部分(オープンリーディングフレーム)のアミノ酸配列(配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78)を予想した。
【0129】
【発明の効果】
本発明により、産業上有用性の高いII型コラーゲン遺伝子の発現を抑制する作用を有するタンパク質やそれらの遺伝子が提供される。本発明のタンパク質やそれらの遺伝子により、軟骨の障害が関与する疾患の治療や予防に有用な化合物のスクリーニング、さらにそのような疾患の診断薬を作製することが可能である。
【0130】
【配列表】
【発明の属する技術分野】
本発明は、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAの取得方法、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体ならびに該タンパク質と特異的に反応する抗体に関する。また、本発明は、軟骨の障害が関与する疾患の診断、治療または予防を行う際の本発明のタンパク質、DNAまたは抗体の使用に関する。
【0002】
また本発明は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、軟骨細胞の増殖分化を阻害または抑制する物質をスクリーニングする方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
軟骨は軟骨細胞(chondrocyte)とこれを取り囲む細胞外基質(matrix)からなる結合組織であり、関節、脊椎の椎間板、肋軟骨、耳介、外耳道、恥骨結合、咽喉蓋などに存在する。細胞外基質の主成分はコラーゲン及びアグリカン(軟骨型プロテオグリカン)であり、これらは軟骨細胞によって産生される。コラーゲン繊維は軟骨の張力および剪断力に対する剛性に関与し、アグリカンは軟骨組織特有の膨潤性に関与することが知られている。
【0004】
軟骨組織は胎児期には骨格の大部分を占めており豊富に存在するが、出生後の発育、成長に伴い、軟骨組織の占める割合は減少し、その局在は限定されるようになる。成体では主に骨端表面を覆う関節軟骨として残るのみである。
【0005】
骨端軟骨の軟骨細胞は、骨端部から骨幹部へ向かって、静止軟骨細胞、増殖軟骨細胞、前肥大軟骨細胞、肥大軟骨細胞に分かれ、同調した分化段階にある細胞群が極めて整然と層状に配列している。そして各軟骨層は、その分化の程度に応じて特有の分子を発現、産生する。増殖軟骨細胞は分化の指標としては、軟骨に特有のII型コラーゲンと、糖とタンパク質の複合体であるプロテオグリカン、特にアグリカンを強く発現する。肥大軟骨細胞になるとコラーゲンはII型からX型を発現するようになる。
【0006】
軟骨細胞は間葉系の細胞(多能性未分化間葉系細胞)より分化する。さらに最近の研究から軟骨細胞の増殖や分化を調節する因子が明らかにされてきている(たとえば、Crombrugghe B. et al.:Current Opinion in Cell Biology.13 p721-727(2001))。Sox(Sry-type HMG box)遺伝子群は、性決定遺伝子Sry(Sex determining region Y)のHMG(high mobility group)ボックスと高い相同性を持つドメインを有する転写制御遺伝子群であり、現在20種類以上のSox遺伝子が同定されている。この中で、Sox9はヒトにおける変異が彎曲肢異型性症の原因になること(Foster J.W.et al.:Nature,372 p525-530(1994))、またマウスの発生過程において軟骨組織優位に発現されること(Wright E.M.etal.:Nature Genet.9 p15-20(1995))、Sox9遺伝子変異のES細胞を用いた実験から、Sox9-/-細胞は軟骨組織に参加できず、II型コラーゲンのような軟骨細胞特異的な細胞外遺伝子を発現できないことが報告されており(Bi W.etal.:Nature Genet.22 p85-89(1999))、軟骨形成に重要な働きを持つ転写因子とされている。しかし、Sox9の機能は軟骨細胞に限られているわけではなく、またII型コラーゲン遺伝子の活性化には、Sox9の他に未知のパートナー遺伝子が必要であるとの報告(Kamachi Y.et al.:Mol.Cell.Biol.19 p107-120(1999))もあり不明な点は多い。また、Sox9の発現制御メカニズムも未解明である。
【0007】
この他に、軟骨細胞の増殖や分化に関与する因子として、骨形成タンパク(bone morphogenetic protein:BMP)、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)、インスリン様増殖因子(insulin-like growth factor:IGF)、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(parathyroid hormone related peptide:PTHrP)、ソニックへッジホッグ(Sonic hedgehog)、インディアンヘッジホッグ(Indian hedgehog)、などが報告されているが、いずれも軟骨以外にもさまざまな組織、期間形成で重要な役割を果たす共通の基本的制御因子であり、特異的な分化誘導因子は見つかっていない。
【0008】
血管に富む骨は比較的旺盛な再生能力を持っているが、その表面を覆う関節軟骨は再生能力に極めて乏しい組織である。関節軟骨の表面が損傷を受けると容易に変形性軟骨症へと移行し、これを軟骨で再生させることは極めて困難である。軟骨細胞の増殖と分化の分子機構を解明することは、軟骨疾患の病因解明や、治療手段開発に寄与することが期待される。
【0009】
しかしながら、軟骨細胞の増殖と分化のメカニズムに関しては、いまだ不明な点が多くその全容は明らかにされていない。軟骨細胞の増殖・分化に関わる新たな分子の同定と、より進んだメカニズムの解明が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記のように軟骨細胞の増殖と分化を制御する作用を有する有用な新規な遺伝子、タンパク質を見出し、これを医薬、診断薬、医療の分野で利用する方法を提供することにある。
【0011】
即ち、本発明は、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する新規タンパク質、該タンパク質をコードするDNA、該DNAを含有する組換えベクター、該組換えベクターを含有する形質転換体、該タンパク質の製造方法、該タンパク質またはその部分ペプチドに対する抗体、該抗体の製造方法、該タンパク質あるいは該遺伝子を含有している医薬を提供する。
【0012】
また、本発明は、該タンパク質、DNA、組換えベクターおよび形質転換体を用いて、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する物質をスクリーニングする方法、該スクリーニング用キット、該スクリーニング方法もしくはスクリーニング用キットを用いて得られるII型コラーゲンの発現を阻害または促進する物質、該物質の製造方法、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する物質を含有している医薬などを提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
マウスEC(embryonal carcinoma)由来クローン化細胞株ATDC5は高率に軟骨分化が誘導されるのみならず、高い自己複製能を有する点で軟骨幹細胞に必須の要件を満たしている(Atsumi T.et al.:Cell Diff. Dev.,30 p109-116(1990) Shukunami C.et al.: J.Cell Biol.,133 p457-468(1996))。最近この細胞を用いて軟骨分化の制御機構を解析することが可能となってきた。未分化ATDC5細胞をインスリン存在下で培養すると肢芽間充織細胞に見られるような細胞凝集領域が培養系内に出現する。凝集領域内にある特徴的な未分化細胞は前駆軟骨細胞と言えるもので、この領域内において増殖軟骨細胞へと分化が進行する。この時、発現するコラーゲンタイプはI型からII型へと劇的に変化する。II型コラーゲンを発現する軟骨細胞はゆっくり増殖して軟骨結節を形成する。さらにX型コラーゲンを発現する肥大軟骨細胞へと分化してついには細胞外基質が石灰化する。このようにATDC5細胞によって、軟骨のすべての分化段階をシミュレートできる。
【0014】
一方、軟骨特異的な分子であるII型コラーゲンの発現制御に関しては、II型コラーゲンが軟骨で特異的に発現するのに必要な調節配列(エンハンサー)が、II型コラーゲン遺伝子の第1イントロン内に存在し、哺乳類のII型コラーゲン遺伝子間で保存されていることが報告されている(例えば、Lefebvre V.et al.:Mol.Cell.Biol.16 p4512-4523(1996), Lefebvre V.et al.:Mol.Cell.Biol.17 p2336-2346(1997), Bell,D.M.et al.:Nature Genet.16 p174-178(1997), Zhou G.et al.:J.Biol.Chem.272 p14989-14997(1998))。
【0015】
本発明者らは、かかる技術背景のもとに、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製し、ATDC5細胞を用いた発現クローニング法による遺伝子機能アッセイ系を完成し、該アッセイ系によりII型コラーゲンの発現を制御する作用を有するタンパク質をコードする新規DNA(cDNA)を単離することに成功した。この新規DNAは、ATDC5細胞内で発現させることによりII型コラーゲンの発現を抑制させることができることを確認した。この結果は、該新規DNAがII型コラーゲンの発現に関与する分子であることを示しており、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1) 以下の(a)または(b)の精製されたタンパク質。
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質。
(2) 上記(1)記載のタンパク質とその全長にわたり少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する、精製されたタンパク質。
(3) 上記(1)または(2)に記載のタンパク質であり、かつ軟骨細胞の分化を抑制する作用を有するタンパク質。
(4) 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する、単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質。
(5) 以下の(a)〜(c)のいずれかのヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかで表されるヌクレオチド配列。
(b)(a)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかにおいて、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(6) 以下の(a)〜(c)のいずれかのヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかのコード領域に示されるヌクレオチド配列。
(b)(a)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77に示されるコード領域のいずれかであって、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(7) 上記(4)〜(6)のいずれかに記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
(8) 上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列からなり、かつ軟骨細胞の分化を抑制する作用を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(9) 上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドによりコードされる精製されたタンパク質。
(10) 上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
(11) 上記(10)に記載の組換えベクターを含む形質転換された細胞。
(12) 上記(3)〜(7)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドでコードされたタンパク質が膜タンパク質である場合における、上記(11)記載の細胞。
(13) (a)上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載の単離されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現する条件下で該ポリヌクレオチドを含有する形質転換された細胞を培養し、
(b)培養物からタンパク質を回収する、
ことを含む、タンパク質の製造方法。
(14) (a)個体のゲノムにおける上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列中の変異の存在または不存在を決定し、および/または
(b)該個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析する、
ことを含む該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した、該個体における疾病または疾病への感受性の診断方法。好ましくは発現するタンパク質の量が正常の2倍以上の場合、あるいは2分の1以下の場合に病気であると診断する。
(15) 以下の工程を含むII型コラーゲンの発現の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングする方法。
(a)II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質をコードする遺伝子およびII型コラーゲンの発現に対応した、検出可能シグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、および
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離もしくは同定する工程。
また、シグナルを正常より1.2倍以上増加させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定し、0.8倍以下に減少させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定することが好ましい。
(16) 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子、および検出可能なシグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された宿主細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離もしくは同定する工程、および
(f)単離または同定された化合物を医薬組成物として最適化する工程。
また、本発明においては、シグナルを正常より1.2倍以上増加させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定し、0.8倍以下に減少させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定することが好ましい。
(17) II型コラーゲンの発現の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングするためのキットであって、
(a)II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質をコードする遺伝子、およびII型コラーゲンの発現に対応した、検出可能なシグナルを提供しうる成分により形質転換された細胞、および
(b)検出可能なシグナルを測定するための試薬
を含むキット。
(18) 上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルあるいはポリクローナル抗体。
(19) 上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質を抗原あるいはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することからなる、上記(1)、(2)または(9)記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法。
(20) II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質の発現を阻害する、上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
(21) 上記(1)、(2)または(9)記載のタンパク質をコードするRNAの開裂により、II型コラーゲンの発現を促進するリボザイム。
(22) 軟骨疾患の予防治療に有効な量の、上記(15)記載の方法でスクリーニングされた化合物、上記(18)記載のモノクローナル、上記(18)に記載のポリクローナル抗体、上記(20)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび上記(21)記載のリボザイムからなる群より選ばれる1種または2種以上を、個体に投与することを含む疾患の治療法。
(23) II型コラーゲンの発現を阻害または活性化するものとして上記(16)に記載の方法により製造された医薬組成物。
(24) 軟骨疾患の予防治療のための上記(23)記載の医薬組成物。
(25) 変形性関節症、軟骨欠損症、または慢性関節リウマチの予防治療のための上記(23)記載の医薬組成物。
(26) 軟骨に関連する疾患を患っている患者に上記(16)記載の方法により製造された医薬組成物を投与することからなる軟骨疾患を予防治療する方法。
(27) 上記(18)記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を有効成分として含有する医薬組成物。
(28) 上記(20)記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬組成物。
(29) 上記(21)記載のリボザイムを有効成分として含有する医薬組成物。
(30) 対象疾患が軟骨に関連する疾患である、上記(27)、(28)または(29)に記載の医薬組成物。
(31) 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77に示されるヌクレオチド配列もしくはコード領域のヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセット、および/または、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体。
(32) 上記(31)に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列および/または他のアミノ酸配列のデータを比較して他のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列との同一性の算出を行う方法。
(33) 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質。
(34) 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質。
【0017】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の基本的特徴を更に明らかにするために、本発明の完成に至る経緯を追いながら、本発明について説明する。II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する新規遺伝子を取得する目的で、実施例に示すように、以下の実験を実行した。
【0018】
まずATDC5細胞(理研ジーンバンクより購入)あるいはヒト正常肺線維芽細胞(三光純薬株式会社より購入)より調製したmRNAより、オリゴキャッピング法によって完全長cDNAを作製し、該cDNAをベクターpME18S−FL3(GenBank Accession AB009864)に組み込んだ完全長cDNAライブラリーを作製した。次に、該cDNAライブラリーを大腸菌に導入し、1クローンずつプラスミドを調製した。次に、ATDC5細胞に、ルシフェラーゼをコードするDNAの上流にII型コラーゲン遺伝子のプロモーター配列及びエンハンサー配列を含有するレポータープラスミド、すなわちII型コラーゲン遺伝子の発現を調べることができるレポータープラスミドと上記の完全長cDNAプラスミドとを共導入した。続いて、Insulin−like Growth Factor−I(IGF−I)、Fibroblast Growth Factor−Basic(bFGF)を終濃度50ng/mlとなるように培地に添加し、II型コラーゲン遺伝子の発現を誘導した。そして、48時間培養後、ルシフェラーゼ活性を測定し、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAの代わりに、空のベクターpME18S−FL3を入れた細胞)と比べて有意に低下している(対照実験と比べてルシフェラーゼ活性が0.6倍以下の値を示した)プラスミドを選抜し、該プラスミドにクローニングされているcDNAの全ヌクレオチド配列を決定した。このようにして得られたcDNAによりコードされるタンパク質は、該タンパク質がII型コラーゲンの発現に関与する分子であることを示している。
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかのアミノ酸配列からなるタンパク質を提供し、これに関連して、さらに以下のタンパク質を提供する。
(a)上記アミノ酸配列を含むタンパク質。
(b)上記アミノ酸配列の1つを有するペプチド。
(c)II型コラーゲンの発現を抑制し、かつ上記アミノ酸配列において、1以上のアミノ酸の削除、置換または付加を有するタンパク質。
(d)その全長にわたり配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のアミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質。
【0020】
“同一性”とは、当該技術で知られているとおり、配列を比較することにより決定される、2以上のタンパク質あるいは2以上のポリヌクレオチドの間の関係である。当該技術で“同一性”とは、タンパク質またはヌクレオチド配列の間の適合によって、あるいは場合によっては、一続きのそのような配列間の適合によって決定されるような、タンパク質またはヌクレオチド配列の間の配列相関性の程度を意味する。“同一性”は、既知の方法により容易に決定できる。同一性を決定する好ましい方法は、試験する配列間で最も長く適合するように設計される。同一性を決定するための方法は、公に利用可能なプログラムにコードされている。相同性決定には、AltschulらによるBLAST (Basic Local Alignment Search Tool) プログラム(たとえば、Altschul SF, Gish W, Miller W, Myers EW, Lipman DJ., J. Mol. Biol., 215: p403-410 (1990), Altschyl SF, Madden TL, Schaffer AA, Zhang J, Miller W, Lipman DJ., Nucleic Acids Res. 25: p3389-3402 (1997))を利用し決定することができる。BLASTのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いるのが好ましい。BLAST検索に一般的に用いられる主な初期条件は、以下の通りであるが、これに限定されない。
【0021】
アミノ酸置換行列とは20種類のアミノ酸の各々のペアの類縁性を数値化した行列であり、通常BLOSUM62のデフォルトマトリックスが用いられる。このアミノ酸置換行列の理論についてはAltschul S.F., J.Mol.Biol.,219:555-565(1991)に、DNA配列の比較への適用についてはStates D.J., Gish W., Altschul S.F., Methods, 3:66-70(1991)に示されている。その際の最適なギャップコストは経験的に決定されており、BLOSUM62の場合は好ましくは、Existence 11、Extension 1のパラメーターが用いられる。期待値(EXPECT)とは、データベース配列に対してマッチする際の統計的有意性に関する閾値であり、デフォルト値は10である。
【0022】
一例として、配列番号2のアミノ酸配列に対して例えば95%以上の同一性を有するタンパク質は、そのアミノ酸配列が配列番号2のアミノ酸配列のアミノ酸100個あたり5個までのアミノ酸の変化を含んでよいことを意味する。言い換えれば、対照アミノ酸配列に対して95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質は、対照配列中の全アミノ酸の5%までの数のアミノ酸が欠失または他のアミノ酸と置換していてもよく、あるいは、対照配列中の全アミノ酸配列のうち5%までの数のアミノ酸が対照配列中に挿入されたものであっても良い。対照配列におけるこれらの変化は、対照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端位置に存在していてもよく、あるいはそれらの末端間のいずれかの位置に存在していてもよく、あるいは対照配列内で1個またはそれ以上の一連の群をなしていてもよい。
【0023】
上記した配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78に記載されたアミノ酸配列からなるタンパク質がII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有することは、本明細書実施例に記載の通りである。
【0024】
また、本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75もしくは77のポリヌクレオチドまたはこれらの配列に示されるコード領域(CDS)からなるポリヌクレオチドを提供する。(なお、以下本明細書においては、特に断らない限り、これらのポリヌクレオチドを「配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のポリヌクレオチド」という。配列番号により示されるヌクレオチド配列についても同様である。)これに関連して、本発明はさらに以下の単離されたポリヌクレオチドを提供する。
(a)上記配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
(b)上記配列のポリヌクレオチド。
(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のアミノ酸配列に少なくとも95%、好ましくは97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド。
【0025】
上記ヌクレオチド配列に含まれるヌクレオチド配列に同一または実質的に同一なポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする全長cDNA及びゲノムクローンまたは上記配列に対応する相同性の高い他の遺伝子のcDNAまたはゲノムクローンを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして、または核酸増幅反応のためのプライマーとして使用してもよい。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記配列に70%同一であり、好ましくは、80%同一であり、より好ましくは90%同一であり、最も好ましくは、95%同一である。プローブまたはプライマーは、一般的には少なくとも15ヌクレオチドを含有し、好ましくは30ヌクレオチドを含有し、50ヌクレオチドを含有してもよい。特に好ましいプローブは、30〜50ヌクレオチドを有する。特に好ましいプライマーは、20〜25ヌクレオチドを有する。
【0026】
本発明のポリヌクレオチドは、DNAの形態(たとえば、cDNAおよびクローニングによって得られるか、あるいは合成的に生成されるゲノムDNAを含む)であってもよく、RNA(たとえばmRNA)の形態であってもよい。該ポリヌクレオチドは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドであってもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(コード鎖としても知られる)であっても、アンチセンス鎖(非コード鎖としても知られる)であってもよい。
【0027】
当業者であれば、公知の方法を用いてこのタンパク質中のアミノ酸の置換などを適宜行ない、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質と同様にII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質を作製することが可能である。一つの方法としては、該タンパク質をコードするDNAに対して、慣用の突然変異誘発法を使用する方法がある。別の方法としてはたとえば部位特異的変異法(たとえば宝酒造株式会社のMutan−Super Express Km キット)が挙げられる。また、タンパク質のアミノ酸の変異は自然界においても生じうる。このようにアミノ酸の欠失、置換、付加により配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のタンパク質に対してアミノ酸配列が変異した変異体であって、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質及び該タンパク質をコードするDNAも本発明に含まれる。変異の数は、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、最も好ましくは3以下が好ましい。
【0028】
アミノ酸置換の例としては、保存的置換が好ましく、具体的には以下のグループ内での置換が挙げられる。(グリシン、アラニン)(バリン、イソロイシン、ロイシン)(アスパラギン酸、グルタミン酸)(アスパラギン、グルタミン)(セリン、トレオニン)(リジン、アルギニン)(フェニルアラニン、チロシン)。
【0029】
当業者であれば、ハイブリダイゼーション技術などを用いて配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA(たとえば配列番号1)またはその一部を基に、これと類似性の高いDNAを単離して、該DNAから配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質と同様にII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質を得ることも通常行ない得ることである。このように上記した配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列のタンパク質と高い同一性を有するタンパク質であって、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。高い同一性とは、上記配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列の全長にわたり少なくとも95%、好ましくは、少なくとも97〜99%の同一性を有するアミノ酸配列を示す。
【0030】
本発明におけるII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するとは、適切な細胞内に遺伝子を導入し該遺伝子にコードさせるタンパク質を過剰発現させた時、II型コラーゲンの発現が直接的あるいは間接的に抑制されることをいう。II型コラーゲンの発現は、例えば、II型コラーゲン遺伝子のプロモーター配列及び調節(エンハンサー)配列を用いて作製したII型コラーゲン遺伝子の発現を調べることができるレポータープラスミドを用いたレポーターアッセイにより測定できる。II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するとは、II型コラーゲンの発現が対照実験(該タンパク質を過剰発現させてない細胞)に比し低下させる作用を有することをいう。II型コラーゲンの発現低下は、好ましくは、0.8倍以下、さらに好ましくは、0.6倍以下である。
【0031】
II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子は、発現させたいタンパク質をコードするポリヌクレオチド(例えばcDNA)を適切な発現ベクター内にクローニングし、該発現ベクターとII型コラーゲンの発現を調べることができるレポータープラスミドを適切な細胞に共導入(コ・トランスフェクション)し、さらに、II型コラーゲンの発現を誘導することが知られている因子により細胞を刺激し、一定時間培養後、レポーターの活性を測定することにより測定することができる。適切な発現ベクターは当業者にはよく知られており、例えば、pME18S−FL3、pcDNA3.1(Invitrogen社)などが挙げられる。レポーター遺伝子は、当業者がその発現を容易に検出できるものであれば良く、例えば、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子である。ルシフェラーゼをコードする遺伝子を使用することが最も好ましい。II型コラーゲンの発現を調べることができるレポータープラスミドとしては、例えば本明細書に記載のCPE43が例示される。適切な細胞とは、例えばATDC5細胞が挙げられる。細胞培養および細胞への遺伝子導入(トランスフェクション)は、当業者であれば当技術分野で公知の慣用方法により実施でき最適化できる。
【0032】
好ましい方法としては、細胞を細胞培養用96穴プレートに7500cells/wellの細胞数となるように、5%FBS(Fetal Bovine Serum)存在下の培地(10μg/mlヒトトランスフェリン、0.3nmol/l亜セレン酸ナトリウムを含む、HAM F−12培地とD−MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)を1:1で混合したもの)に播種し、5%CO2存在下、37℃で24時間培養した後、FuGENE6(Roche社)を用いて、CPE43レポータープラスミドと、発現ベクターを1ウエルに共導入する。続いて、FGF、IGF、BMP等のII型コラーゲンの発現を誘導することが知られている因子または軟骨細胞の増殖や分化を誘導することが知られている因子を培地中に添加する。37℃で48時間培養後、ロングタームルシフェラーゼアッセイシステムピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定することによりII型コラーゲンの発現を測定する。ルシフェラーゼ活性の測定は、例えばPerkin Elmer社のWallac ARVOTMST 1420 MULTILABEL COUNTERを用いて測定できる。FuGENE6による遺伝子導入の方法及びピッカジーンLT2.0によるルシフェラーゼ活性測定は、それぞれに添付されているプロトコールに従い実施できる。FuGENE6を用いた96穴プレートでの遺伝子導入の方法は、1ウエルあたり、FuGENE6の量は0.3〜0.5μlが良く好ましくは0.4μlであり、CPE43レポータープラスミドの量は50〜100ngが良く好ましくは100ngであり、発現ベクターの量は50〜100ngが良く好ましくは100ngである。FGF、IGF、BMP等の添加濃度は、10〜100ng/mlが良い。II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有することは、該レポーター活性(ルシフェラーゼ活性)を対照実験(空のベクターのみを導入した細胞)に比し低下させる作用を指標として確認することができる。指標とするレポーター活性の低下は、好ましくは、0.8倍以下、さらに好ましくは、0.6倍以下である。
【0033】
本発明のタンパク質としては、ヒトや哺乳動物のあらゆる細胞や組織に由来する天然のタンパク質でもよく、化学合成タンパク質であってもよく、また遺伝子組換え技術によって得られたタンパク質でもよい。タンパク質は糖鎖やリン酸化などの翻訳後修飾は受けていても受けていなくても良い。
【0034】
本発明の遺伝子がコードするタンパク質としては、例えば、分泌タンパク質(増殖因子、サイトカイン、ホルモン等)、タンパク質修飾酵素(タンパク質リン酸化酵素、タンパク質脱リン酸化酵素、プロテアーゼ等)、シグナル伝達分子(タンパク間相互作用分子等)、核内タンパク質(核内受容体、転写因子等)、膜タンパク質が挙げられる。膜タンパク質は、受容体、細胞接着分子、イオンチャンネル、トランスポーター等が挙げられる。タンパク質が膜タンパク質である場合、後述するスクリーニングにより選択された化合物は、細胞内へ容易に移行する或いは細胞内にシグナルを伝達させることが予想されるため、医薬化合物のリサーチツールとしては、より有用である。
【0035】
本発明は、上記で示される本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドである。上記の配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列としてより具体的には、たとえば配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77で表されるヌクレオチド配列が挙げられる。DNAはcDNAのほか、ゲノムDNA、化学合成DNAも含まれる。遺伝暗号の縮重に従い、遺伝子から生産されるタンパク質のアミノ酸配列を変えることなく配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするヌクレオチド配列の少なくとも1つのヌクレオチドを他の種類のヌクレオチドに置換することができる。従って、本発明のDNAはまた、遺伝暗号の縮重に基づく置換によって変換されたヌクレオチド配列も含有する。このようなDNAは、公知の方法により合成することができる。
【0036】
本発明のDNAは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77で表されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするDNAも含まれる。ストリンジェントな条件とは、当業者には十分理解できることであり、たとえば、T.Maniatisらの実験操作書(Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory1982、1989)などに従えば容易に実施できる。
【0037】
すなわち、ストリンジェントな条件とは、30%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中(5×SSC(0.75MのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、100μg/mlの変性せん断サケ精子DNA)で37℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで1×SSC、0.1%SDS中、37℃で10分の洗浄を2回行う条件である(低ストリンジエンシー)。より好ましい条件は、40%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、1%SDS中、42℃で10分の洗浄を2回行う条件である(中ストリンジエンシー)。最も好ましい条件は、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液中で42℃のインキュベーションを一晩行い、その後2×SSC、0.1%SDS中、室温で10分の洗浄を3回行い、次いで0.2×SSC、0.1%SDS中、50℃で10分の洗浄を2回行う条件である(高ストリンジエンシー)。この際、得られたDNAは、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードすることが必須である。
【0038】
本発明は、上記(4)(5)あるいは(6)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列と高い類似性を有し、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチドを含むポリヌクレオチドを含む。代表的には、これらのヌクレオチド配列は、上記(4)(5)または(6)のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列の全長にわたり95%同一であり、より好ましくは97%同一であり、最も好ましくは少なくとも99%同一である。
【0039】
本発明のタンパク質は、ATDC5細胞においてII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有している。軟骨細胞は、凝集した間葉系幹細胞から分化する。間葉系幹細胞は、軟骨細胞以外にも分化するが、軟骨細胞への分化したか否かは、軟骨細胞に特異的に発現するII型コラーゲンの産生の有無で判断できる。II型コラーゲンが、軟骨細胞に特異的に発現する分子であることは、よく知られている(例えば、Horton W. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 p8864-8868(1987))。よって、II型コラーゲンの発現を抑制することにより、間葉系幹細胞から軟骨細胞への分化を抑制することができると考えられる。また一方ATDC5細胞は、軟骨分化の全ての段階をシミュレートできる細胞株として世の中で認知されている(例えば、Atsumi T.et al.:Cell Diff. Dev.,30 p109-116(1990) 、Shukunami C.et al.: J.Cell Biol.,133 p457-468(1996))。ATDC5細胞は軟骨前駆細胞の性質を有し、かつ増殖因子の刺激により軟骨細胞に分化する。未分化ATDC5細胞はII型コラーゲンを発現していないが、インスリン存在下で培養すると、コンフルエントに達した後に特有の細胞凝集領域が出現し、この領域から軟骨細胞が出現して、軟骨結節が形成される。軟骨結節の形成と並行してII型コラーゲンの発現が認められるようになることが報告されている(Shukunami C.et al.: J.Cell Biol.,133 p457-468(1996))。すなわち本発明は、上記(1)または(2)に記載のタンパク質であり、かつ軟骨細胞の分化を抑制する作用を有するタンパク質である。また本発明は、上記(4)〜(7)のいずれか1つに記載のヌクレオチド配列からなり、かつ軟骨細胞の分化を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列である。
【0040】
上記の本発明のDNAは、前述のタンパク質を、組換えDNA技術を用いて製造するのに用いることができる。本発明のDNA及びペプチドは、概略以下のようにして得ることができる。
(A)本発明のタンパク質をコードするDNAをクローニングする。
(B)タンパク質の全コード領域あるいはその一部をコードするDNAを発現用ベクターに組み込んで、組換えベクターを構築する。
(C)構築した組換えベクターにより、宿主細胞を形質転換する。
(D)得られた細胞を培養し、該タンパク質、またはその類縁体を発現させ、カラムクロマトグラフィーなどにより精製する。
【0041】
上記の工程中でDNA、組換え体宿主としての大腸菌等の取り扱いに必要な一般的な操作は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。使用する酵素、試薬類も全て市販の製品を用いることができ、特に断らない限り、製品で指定されている使用条件に従えば、完全にそれらの目的を達成することができる。以下に上記(A)〜(D)の工程について更に詳しく説明する。
【0042】
上記工程(A)における本発明のタンパク質をコードするDNAのクローニングの手段としては、本願明細書実施例に記載した方法の他に、本発明のヌクレオチド配列(たとえば配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77)の一部を有する合成DNAをプライマーとしたPCR法によって増幅する方法、あるいは、適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別すること、などが挙げられる。細胞、組織より全RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(RT-PCR法)によって増幅することもできる。
【0043】
適当なベクターに組み込んだDNAとしては、たとえば市販されている(CLONTECH社、STRATAGENE社)ライブラリーを使用することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、当業者間で通常行われているものであり、たとえば、上記T.Maniatisらの実験操作書に従えば容易に実施できる。クローン化された本発明のタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。上記のようにして得られるDNAは、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77に記載のヌクレオチド配列を有する遺伝子であるか、あるいは前述の(4)〜(7)のポリヌクレオチドであればよい。上記工程(B)において発現ベクターに組み込むDNAは、上述のタンパク質の全長をコードする全長cDNAでも、DNA断片でも良いし、その一部分を発現する様に構築されたDNA断片でも良い。
【0044】
すなわち、本発明は、上記のDNAを含有する組換えベクターを提供する。本発明のタンパク質の発現ベクターは、たとえば、本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0045】
用いる発現ベクターとしては、複製可能であれば、大腸菌をはじめとする原核生物由来、酵母由来、真菌由来、昆虫ウイルス由来、脊椎動物ウイルス由来いずれのベクターでも良いが、宿主として使用する微生物または細胞に適したものを選択する必要がある。また、発現物に応じて、宿主細胞―発現ベクター系としては、適切な組み合わせが選択される。
【0046】
微生物を宿主として使用する場合、これら微生物に適したプラスミドベクターが組換え体DNAの複製可能な発現ベクターとして一般に用いられる。
【0047】
たとえば、大腸菌を形質転換するためのプラスミドベクターとしては、プラスミドpBR322やpBR327などを用いることができる。プラスミドベクターは通常複製起源、プロモーター、及び組換え体DNAで形質転換した細胞を選別するのに有用な表現型を組換え体DNAに与えるマーカー遺伝子等を含んでいる。プロモーターの例としては、β−ラクタマーゼプロモーター、ラクトースプロモーター、トリプトファンプロモーター等が挙げられる。マーカー遺伝子の例としては、アンピシリン耐性遺伝子やテトラサイクリン遺伝子などが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpBR322、pBR327の他に、pUC18、pUC19等が挙げられる。
【0048】
酵母で本発明のDNAを発現するためには、複製可能なベクターとして、たとえばYEp24を用いることができる。プラスミドYEp24はURA3遺伝子を含有しており、このURA3遺伝子をマーカー遺伝子として利用することができる。酵母細胞用の発現ベクターのプロモーターの例としては、3−ホスホグリセレートキナーゼ、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼなどの遺伝子のプロモーター等が挙げられる。
【0049】
真菌で本発明のDNAを発現するための発現ベクターに用いられるプロモーター及びターミネーターの例としては、ホスホグリセレートキナーゼ(PGK)、グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPD)、アクチン等の遺伝子プロモーター及びターミネーターが挙げられる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpPGACY2、pBSFAHY83等が挙げられる。
【0050】
昆虫細胞で本発明のDNAを発現させるための発現ベクターに用いられるプロモーターの例としては、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが挙げられる。昆虫細胞に適した発現ベクターの例としては、バキュロウイルスなどが挙げられる。
【0051】
動物細胞で本発明のDNAを発現させるための組換えベクターは、一般に遺伝子を制御するための機能配列、たとえば、複製起源、本発明のDNAの上流に位置すべきプロモーター、リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位や転写終止配列を含有している。本発明のDNAを真核細胞内で発現させるのに用いることができるそのような機能配列はウイルスやウイルス性物質から得ることができる。
【0052】
例えば、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の上流位置に本来存在するプロモーターも、上述の宿主−ベクター系で使用するのに適しているならば使用することができる。複製起源については、外来性の起源、たとえばアデノウイルス、ポリオーマ、SV40等のウイルス由来の複製起点を用いることができる。また、発現ベクターとして宿主染色体に組み込まれるような性質を有するベクターを用いる場合、宿主染色体の複製起源を利用することができる。適した発現ベクターの例としては、プラスミドpSV−dhfr(ATCC 37146)、pBPV−1(9−1)(ATCC 37111)、pcDNA3.1(INVITROGEN社)、pME18S−FL3等が挙げられる。
【0053】
本発明は、上記の組換えベクターを含む形質転換された細胞である。本発明の複製可能な組換えベクターで形質転換された微生物または細胞は、前述の通り、組換えベクターに与えられた少なくとも1種の表現型によって形質転換されずに残った親細胞から選別される。表現型は少なくとも1種のマーカー遺伝子を組換えベクターに挿入することによって与えることができる。また複製可能なベクターが本来有しているマーカー遺伝子を利用することもできる。マーカー遺伝子の例としては、たとえば、ネオマイシン耐性などの薬剤耐性遺伝子やジヒドロ葉酸レダクターゼをコードする遺伝子などが挙げられる。
【0054】
上記工程(C)において用いる宿主としては、大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでも良いが、用いる発現ベクターに適したものを選択する必要がある。微生物の例としては、エシュリヒア コリ(Escherichia coli)の菌株、たとえばE.coliK12株294(ATCC 31446)、E.coli X1776(ATCC 31537)、E.coli C600、E.coli JM109、E.coli B株、あるいはバチラス サブチリス(Bacillus subtilis)の如きBacillus属の菌株、あるいはサルモネラ チフィムリウム(Salmonella typhimurium)またはセラチア マーゼサンス(Serratia marcesans)等の大腸菌以外の腸内菌、あるいはシュードモナス(Pseudomonas)属の種々の菌株が挙げられる。
【0055】
酵母としては、たとえば、サッカロミセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。真菌としては、たとえば、アスペルギルス ニドランス(Aspergillus nidulans)、アクレモニウム クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)(ATCC 11550)等が挙げられる。
【0056】
昆虫細胞としては、たとえば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda:Sf細胞)、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、などが用いられる。動物細胞の例としては、HEK293細胞、COS−1細胞、COS−7細胞、Hela細胞、チャイニーズハムスター(CHO)細胞、ATDC5細胞等が挙げられる。これらの中でも、CHO細胞およびHEK293細胞が好ましい。細胞を宿主とする場合、用いられる発現ベクターと宿主細胞の組合せは実験の目的により異なるが、その組合せにより、一過的発現、構成的発現の2種類の発現方式が考えられる。
【0057】
上記工程(C)における微生物及び細胞の形質転換とは、DNAを強制的方法や、細胞の貪食能により微生物や細胞に取り込ませ、プラスミド状態あるいは染色体に組み込まれた状態でDNAの形質を一過的あるいは構成的に発現させることである。当業者であれば公知の方法によって形質転換できる(たとえば実験医学別冊遺伝子工学ハンドブック)。たとえば動物細胞の場合、DEAE−デキストラン法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、リポフェクション法などの方法でDNAを細胞に導入することができる。動物細胞を用いて、本発明のタンパク質を安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のタンパク質の高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、Dihydroforate reductase(DHFR)遺伝子を選択マーカーとして用いた場合Methotrexate(MTX)濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、DHFR遺伝子とともに、本発明のタンパク質をコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
【0058】
上記の形質転換された細胞を本発明のタンパク質をコードするDNAが発現可能な条件下で培養し、本発明のタンパク質を生成、蓄積せしめることによって、本発明のタンパク質を製造することができる。すなわち、本発明は、上記(4)〜(7)に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む形質転換された細胞を、該ポリヌクレオチドによりコードされているタンパク質を発現させる条件下培養し、次いで培養物から該タンパク質を回収することを含む該タンパク質の製造方法である。
【0059】
上記の形質転換された細胞の培養は、当業者に公知の方法で行なうことができる(たとえばバイオマニュアルシリーズ4、羊土社)。たとえば動物細胞の場合、各種の動物細胞培養法、たとえば、シャーレ培養、マルチトレー式培養、モジュール培養などの付着培養、または細胞培養用担体(マイクロキャリアー)に付着させるか生産細胞自体を浮遊化させ浮遊培養等の公知の方法により培養を行なえば良い。培地は通常良く用いられる動物細胞用の培地、たとえばD−MEMやRPMI1640等を用いれば良い。
【0060】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。たとえば、本発明のタンパク質は、硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスフォセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む既知の方法により組換え細胞培養物から回収し、精製することができる。最も好ましくは、高性能液体クロマトグラフィーが精製に使用される。ポリペプチドが細胞内合成、単離または精製の間に変性するときには、活性なコンフォメーションを再生するためにタンパク質をリフォールディングするためのよく知られた技術を使用できる。
【0061】
本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として製造することができる。これらも、本発明に含まれる。この融合タンパク質を発現する際に用いられるベクターとしては、該タンパク質をコードするDNAを組み込むことができ、かつ該融合タンパク質を発現することができるベクターであれば、いかなるベクターでも用いることができる。本発明のペプチドに融合できるタンパク質としては、たとえばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ヒスチジン残基の6個の連続配列(6×His)等が挙げられる。本発明のタンパク質を他のタンパク質と融合したタンパク質として発現させた場合には、融合したタンパク質に親和性をもつ物質を用いたアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製することができ、有利である。例えば、GSTとの融合タンパク質として生産した場合は、グルタチオンをリガンドとするアフィニティークロマトグラフィーにより精製することができる。
【0062】
本発明は、上記(9)のタンパク質の活性を阻害するタンパク質を含む。たとえば、抗体や、上記(9)のタンパク質の活性中心等に結合し活性の発現を妨げる他のタンパク質が挙げられる。
【0063】
本発明は、前記の本発明のタンパク質あるいはその部分ペプチドに特異的に結合する抗体ならびにそのような抗体の製造方法に関する。抗体は、本発明のタンパク質を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体のフラグメント、一本鎖抗体、ヒト化抗体の何れであってもよい。抗体フラグメントは、公知の技術によって作製することができる。たとえば、該抗体フラグメントには、限定されるものではないが、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント及びFvフラグメントが含まれる。たとえば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、上記(1)または(2)に記載のタンパク質を抗原またはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することにより得られる。本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質あるいはそのペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。たとえば実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック 改訂第3版に記載の方法が挙げられる。
【0064】
ポリクローナル抗体の場合であれば、たとえば、本発明のタンパク質をウサギなどの動物に本発明のタンパク質あるいはペプチドを注射することにより該タンパク質あるいはペプチドに対する抗体を産生させ、次いで血液を採取し、これを、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0065】
モノクローナル抗体の場合は、たとえば、本発明のタンパク質をマウスなどの動物に免疫し、同マウスから脾臓を抽出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明のタンパク質に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウス内より腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、たとえば硫安沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、あるいは該タンパク質を固定化したアフィニティーカラム等によって精製することで調製することができる。
【0066】
得られた抗体をヒトに投与する目的で使用する場合は、免疫原性を低下させるために、ヒト型化抗体あるいはヒト抗体を用いることが好ましい。ヒト型化抗体は、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物を用いて作製することができる。これらのヒト型化抗体やヒト抗体の一般的概説は、たとえば、Morrison,S.L.et al.〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)〕、Jones,P.T.et al〔Nature 321:522-525(1986)〕、野口浩〔医学のあゆみ 167:457-462(1993)〕、松本隆志〔化学と生物 36:448-456(1998)〕によって供されている。ヒト化キメラ抗体は、マウス抗体のV領域とヒト抗体のC領域を遺伝子組換えにより結合し、作製することができる。ヒト化抗体は、マウスのモノクローナル抗体から相補性決定部位(CDR)以外の領域をヒト抗体由来の配列に置換することによって作製できる。また、免疫系をヒトのものと入れ換えたマウスを用いて、該マウスを免疫して、通常のモノクローナル抗体と同様に直接ヒト抗体を作製することもできる。
【0067】
これらの抗体は、タンパク質を発現するクローンを単離したり同定するのに使用できる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質を細胞抽出液、または本発明のタンパク質を産生する形質転換細胞から精製するのに使用できる。更にこれらの抗体は、細胞や組織中の本発明のタンパク質を検出するELISAやRIA(ラジオイムノアッセイ)、またはウエスタンブロット系の構築に使用できる。このような検出系は、動物、好ましくは、ヒトの組織または血管内流体などの身体サンプル中に存在する本発明のタンパク質の存在量を検出する診断目的に使用することができる。たとえば、これらの抗体は、変形性関節症、慢性関節リウマチなどの本発明のタンパク質の(発現)異常に起因する軟骨の異常によって特徴付けられる疾患の診断に使用できる。
【0068】
疾患の診断の基礎を提供するために、本発明のタンパク質の発現についての通常の値、すなわち標準値が確立されなければならないが、これは当業者においては周知の技術である。すなわち、複合体形成のための適切な条件下で、ヒトあるいは動物のどちらでもよいが、正常の被験者から得られた体液あるいは細胞抽出物と、本発明のタンパク質に対する抗体とを結合させ、この抗体−タンパク複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原(本発明のタンパク質)を含む標準液を用いて作成した標準曲線を用いて、正常サンプルから得られた標準値を算出する。標準値と本発明のタンパク質が関係する疾患を潜在的に患う被験者からのサンプルから得られた値と比較し、標準値との偏差によって疾病の存在を確認することができる。また、これらの抗体は、本発明のタンパク質の機能を研究する試薬としても用いることができる。
【0069】
本発明の抗体は精製され、次いで、たとえば、本発明のタンパク質の発現異常に起因するII型コラーゲンの発現異常および/または軟骨細胞分化異常によって特徴付けられる疾患の患者に投与され得る。すなわち本発明は、上記に記載の抗体を有効成分として含有する医薬、および抗体を用いた治療方法である。これらの医薬は治療的使用のためにさらなる有効成分または不活性成分(たとえば、従来の薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(たとえば、免疫原性アジュバント))と、生理学的に無毒の安定化剤および賦形剤とともに組み合わされ得る。これらの組み合わせは、濾過滅菌され、そして凍結乾燥により投薬バイアル中に、または安定化水性調製物中の貯蔵物として投薬形態にされ得る。患者への投与は、たとえば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などの当業者に公知の方法により行い得る。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。これらの抗体は、本発明のタンパク質で仲介されるII型コラーゲンの発現障害および/または軟骨細胞の分化障害を阻害し、治療効果を示す。より具体的には、本発明の抗体は、たとえば変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症などの軟骨細胞が関係する疾患を治療または予防する医薬として有用である。
【0070】
本発明のDNAは、軟骨細胞の分化制御に関わるタンパク質を単離、同定、クローン化することにも使用できる。たとえば、本発明のタンパク質をコードするDNA配列は、コードされたタンパク質を「バイト(bait)」として用いて、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーから、本発明のタンパク質に結合できるタンパク質をコードする他の配列「プレイ(prey)」を単離し、クローン化する酵母ツーハイブリッドシステム(たとえばNature、340:245-246(1989))に用いることができる。同様の方式で、本発明のタンパク質が、他のタンパク質に結合できるかどうかも決定することができる。あるいは別の方法として、本発明のタンパク質の抗体を用いた免疫沈降法(たとえば、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によって、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を細胞抽出物から単離する方法が挙げられる。さらに別の方法として、上記に記載のように、本発明のタンパク質を他のタンパク質との融合タンパク質として発現させ、融合タンパク質に対する抗体を用いて免疫沈降法を行ない、本発明のタンパク質に結合し得るタンパク質を単離する方法が挙げられる。
【0071】
本発明は、前述の方法により、II型コラーゲンの発現を抑制する機能を持つ(1)、(2)または(9)のタンパク質をコードする遺伝子中の変異を検出するアッセイを行い、疾患の診断や該疾患への感受性を診断するための方法を提供する。さらに、このような疾患は、個体に由来するサンプル中のタンパク質またはmRNAレベルの異常な減少または増加を測定することを含む方法によって診断してもよい。発現の減少または増加は、当該技術でRNAレベルでのポリヌクレオチドの定量によく知られた方法、たとえば、RT−PCRなどの核酸増幅法、およびRNase保護法、ノーザンブロット法その他のハイブリダイゼーション法などの方法で測定できる。宿主に由来するサンプル中のタンパク質レベルの測定に使用され得るアッセイ技術は、当業者によく知られている。そのような方法には、ラジオイムノアッセイ、競合的結合測定法、ウエスタンブロット分析およびELISAアッセイが含まれる。本発明のDNAは、本発明のタンパク質またはそのペプチドフラグメントをコードするDNAまたはmRNAにおける異常を検出するのに使用できる。本発明は、個体における上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質の発現に関連した疾患または疾患への感受性を診断する方法に関する。該方法は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列における変異を、測定することを含む。
【0072】
本発明のDNAは、本発明のDNAを用いることによって、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常を検出することができるので、たとえば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、増加あるいは発現過多などの遺伝子診断に有用である。すなわち本発明は、生物個体における該タンパク質の発現または活性に関連した、該個体における疾病または疾病への感受性の診断方法であって、
(a)個体のゲノムにおける上記(1)、(2)または(9)に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列中の変異の存在または不存在を決定し、および/または
(b)該個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析する、ことを含む方法を提供する。例えば、タンパク質の発現量の程度に基づき疾患であるか否かの判断は行うことができ、発現量に基づく判断基準の好ましい一例としては、発現するタンパク質の量が正常の2倍以上あるいは1/2以下の場合に病気であると診断する。
【0073】
上記診断方法の工程(a)により、II型コラーゲンの発現を抑制する作用および/または軟骨細胞の分化を抑制する作用を持つ(1)、(2)または(9)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列に変異があることが検出された場合は、該変異がII型コラーゲンの発現異常および/または軟骨細胞の分化に関連した疾病を引き起こす可能性がある。あるいは、上記診断方法の工程(b)により、被験者における前記(1)、(2)または(9)のタンパク発現量を測定し正常値と異なる値を示す場合は、II型コラーゲンの発現を抑制する作用および/または軟骨分化を抑制する作用を持つ本発明の新規タンパク質の発現量異常が、II型コラーゲンの発現異常及び/または軟骨細胞の分化異常に関連した疾病の原因である可能性がある。ここで、工程(a)のII型コラーゲンの発現を抑制する作用および/または軟骨細胞の分化を抑制する作用を持つ(1)、(2)または(9)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列の変異の有無を測定する方法としては、例えば、それらのタンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列の一部をプライマーとして、RT−PCRを行い、その後通常のヌクレオチド配列決定方法によって配列を決定し、変異の有無を検出できる。あるいは、PCR−SSCP法(Genomics、5:874-879、1989年、実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック)によっても変異の有無を調べることができる。また、工程(b)のタンパク発現量を調べる方法としては、たとえば、前記(18)に記載の抗体を利用する方法などが挙げられる。
【0074】
また、本発明は、本発明のタンパク質によるII型コラーゲンの発現および/または軟骨細胞の分化を阻害または促進する化合物のスクリーニング方法に関する。このスクリーニング方法は、
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子および検出可能なシグナルを提供し得る成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された細胞と1あるいは複数個の被検化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを検出する工程、および
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離または同定する工程、を含む。
【0075】
また、シグナルを正常より1.2倍以上増加させる化合物を阻害剤化合物として単離または同定し、0.8倍以下に減少させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定することが好ましい。
【0076】
検出可能なシグナルを提供し得る成分としては、たとえばレポーター遺伝子が挙げられる。レポーター遺伝子は、テストを行なう転写因子の活性化を直接検出するかわりに用いられるもので、調べたい遺伝子のプロモーターをレポーター遺伝子につなぎ、レポーター遺伝子の産物の活性を測定することによってプロモーターの転写活性の解析を行なうものである(バイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))。
【0077】
レポーター遺伝子としては、その発現産物の活性または生産量(mRNAの生産量も含まれる)を当業者が測定可能なものであれば、いかなるペプチド、タンパク質をコードする遺伝子も用いることができる。たとえば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダ−ゼ、ルシフェラーゼ等の酵素活性を測定することで利用できる。II型コラーゲンの発現を評価するのに用いるレポータープラスミドとしては、II型コラーゲン遺伝子のプロモーター配列およびII型コラーゲンが軟骨で特異的に発現するのに必要な調節配列をレポーター遺伝子の上流に組み込んだものであればよく、たとえば本明細書実施例に記載のCPE43が利用できる。あるいは、Murakami S.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96 p1113-1118(2000)に記載のレポータープラスミド(48-bp chondrocyte-specific Col2a1 enhancer construction)が例示される。
【0078】
宿主細胞としては、II型コラーゲンの発現を検出し得る細胞であればよく、好ましくは、哺乳動物細胞であり、たとえばATDC5細胞が好適に用いられる。形質転換及び培養に関しては、上記に記載の通りである。
【0079】
II型コラーゲンの発現を阻害または促進する化合物のスクリーニングは、具体的には、たとえば、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することにより、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する化合物をスクリーニングすることができる。レポーター活性の測定は、当業者に公知の方法(たとえばバイオマニュアルシリーズ4、羊土社(1994))で行なうことができる。スクリーニングの被検物質には特に制限はなく、低分子化合物、高分子化合物、ペプチドなどが挙げられる。被検化合物は、人工的に合成したものであっても、天然に存在するものであっても良い。また単一物質でも、混合物でも良い。検出可能なシグナルとしては、上記レポーター遺伝子の他に、II型コラーゲンのmRNA量あるいはタンパク量を測定しても良い。mRNA量の測定は、たとえばノーザンハイブリダイゼーションやRT−PCR法などが挙げられる。タンパク量の測定はたとえば抗体を用いる方法が挙げられる。抗体は公知の方法によって作製しても良いし、市販のもの(たとえばSANTA CRUZ BIOTECHNOLOGY社)を使用することもできる。
【0080】
また、以下の(a)〜(f)の工程により医薬組成物を製造することも可能である。
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子および検出可能なシグナルを与えることができる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された宿主細胞と1あるいは複数個の化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離または同定する工程、および
(f)単離または同定された化合物を医薬組成物として最適化する工程。
【0081】
また、上記医薬組成物製造方法の工程(e)においては、シグナルを正常より1.2倍以上増加させる化合物を阻害剤化合物、0.8倍以下に減少させる化合物を活性化剤化合物として単離または同定することが好ましい。
【0082】
本発明のタンパク質は、以下の工程により、該タンパク質のアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤を、構造を基礎にして設計する方法に使用してもよい。
(a)まず、タンパク質の三次元構造を決定する工程、
(b)アゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤の反応性部位または結合部位と思われる部位の三次元構造を推論する工程、
(c)推論した結合部位または反応性部位に結合するかあるいは結合すると予測される候補化合物を合成する工程、および
(d)該候補化合物が本当にアゴニスト、アンタゴニストまたは阻害剤であるか否かを試験する工程。
【0083】
また本発明は、上記スクリーニングによって得られた化合物を含む。しかしながら、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物の製造方法は、上記の方法に限定されるものではない。さらに、上記(16)に記載の方法により医薬組成物を製造する方法も含む。
【0084】
該候補化合物には特に制限はなく、低分子化合物、高分子化合物、ペプチドなどが挙げられ、また、人工的に合成したものであっても、天然に存在するものであっても良い。上記スクリーニングによって得られた化合物は、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する作用を有しているので、II型コラーゲンの発現異常および/または軟骨細胞の分化異常に起因する疾患を治療または予防するための医薬として有用である。混合物から目的化合物を単離、精製するには、自体公知の方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行なうことができる。化合物の塩を取得したい時は、化合物が塩の形で得られる場合にはそのまま精製すれば良く、また遊離の形で得られる場合には、通常の方法により適当な溶媒に溶解または懸濁し、所望の酸または塩基を添加し、塩を形成させて単離精製すれば良い。
【0085】
本発明の方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として最適化する工程としては、例えば以下のような常法により製剤化する方法が例示される。すなわち活性成分として有効な量の上記化合物またはその薬理的に許容される塩と、薬理的に許容される担体とを混合すれば良い。製剤化は、選択された投与様式に適した形態が選ばれる。経口投与に適した組成物としては、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、および散剤などの固体形態、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、および懸濁液剤などの液体形態が挙げられる。非経口投与に有用な形態としては、無菌溶液剤、乳剤、および懸濁液剤が挙げられる。上記の担体としては、例えばゼラチン、乳糖、グルコース等の糖類、コーン・小麦・米・とうもろこし澱粉等の澱粉類、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸塩、タルク、植物油、ステアリンアルコール・ベンジルアルコール等のアルコール、ガム、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらのうち液状担体の例としては、一般に水、生理食塩水、デキストロースまたは類似の糖溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類が挙げられる。
【0086】
本発明は、II型コラーゲンの発現の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングするためのキットを提供する。該キットは、
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子およびII型コラーゲンの発現を抑制後、検出可能なシグナルを提供しうる成分により形質転換された細胞、
(b)検出可能なシグナルを測定するための試薬、から成り、II型コラーゲンの発現を阻害または促進する化合物をスクリーニングするために必要な試薬類、
を含む。
【0087】
別の側面において、本発明は、
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77で表されるヌクレオチド配列を有する本発明のポリヌクレオチド;
(b)(a)のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46またはで表されるアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質またはそれらの断片;または
(d)(c)の本発明のタンパク質に対する抗体;
を含む診断キットを提供する。
少なくとも上記(a)〜(d)のいずれかを含む診断キットは、変形性関節症、慢性関節リウマチおよび軟骨欠損症などの疾患または該疾患への感受性を診断するのに有用である。
【0088】
本明細書中に報告するII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する新規タンパク質の発見により、軟骨の障害が関与する疾患の治療または予防する新しい医薬および治療方法が提供された。さらなる具体例において、本発明は、軟骨細胞の増殖・分化を制御するための前記のII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質の機能を活性化または阻害する化合物を用いる方法に関する。上記スクリーニング方法によって得られた、II型コラーゲンの発現を活性化または阻害する化合物は、軟骨の障害が関与する疾患の治療または予防する医薬として有用である。該疾患とは、例えば、変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、異所性骨化および異所性石灰化などが挙げられる。
【0089】
更に、本発明のタンパク質や該タンパク質をコードするDNAは、診断目的にも使用できる。
【0090】
上記本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を上述の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。たとえば、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、たとえば、ヒトや哺乳動物(たとえば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。患者への投与は、たとえば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射など当業者に公知の方法により行いうる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢などにより変動するが、当業者であれば適宜投与方法を選択すると共に、投与方法に応じて適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。すなわち本発明は、II型コラーゲンの発現を阻害または活性化する化合物を有効成分として含有する医薬を提供する。
【0091】
さらに、上記化合物は、軟骨の障害が関与する疾患の治療または予防する医薬として有用である。すなわち本発明は、II型コラーゲンの発現を阻害または活性化する化合物を含む、軟骨疾患予防または治療のための医薬を提供する。具体的には、例えば、変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、異所性骨化、異所性石灰化などに対する治療及び予防薬として有用である。
【0092】
さらにまた、本発明は、変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症、異所性骨化、異所性石灰化などの医薬の製造における上記(16)記載の方法により製造された医薬組成物の使用も含む。
【0093】
また本発明は、上記(4)〜(7)に記載のポリヌクレオチドに対するアンチセンスオリヌクレオチドを提供する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的とした遺伝子配列に対して相補的な配列を持つオリゴヌクレオチドを用いて、タンパク質への翻訳、細胞質への輸送、あるいは全体的な生物活性機能に必要な他の活性等のRNAの機能を阻害することによって、標的遺伝子の発現を抑制することができる。この際、アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、RNAを用いても良いし、DNAを用いても良い。本発明のDNA配列は、本発明のタンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNAとハイブリダイズし得るアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために使用できる。一般にアンチセンスオリゴヌクレオチドが、その遺伝子の発現に対して抑制的に作用することは公知での事実である(たとえば、細胞工学 Vol.13 No.4(1994))。本発明のタンパク質をコードする遺伝子に対するアンチセンスコード配列を有するオリゴヌクレオチドは、標準の方法で細胞内に導入することができ、該オリゴヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードする遺伝子のmRNAの翻訳を効果的に遮断して、その発現を遮断して、望ましくない作用を抑制することができる。
【0094】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、天然に見出されるオリゴヌクレオチドの他に、修飾されたものであっても良い〔たとえば、村上&牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259-266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364-1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85-95(1996)〕。従って、オリゴヌクレオチドは変化した糖部分あるいは糖間部分を有していても良い。これらの例は、当該技術分野において使用が知られているホスホチオエート及び他のイオウ含有種である。幾つかの好ましい態様に従えば、オリゴヌクレオチドの少なくとも一つのホスホジエステル結合が、その活性が調節されるべきRNAが位置する細胞の領域に浸透する組成物の能力を高める機能を有する構造により置換される。
【0095】
このような置換は、ホスホロチオエート結合、ホスホロアミデート結合、メチルホスホネート結合または短鎖アルキルもしくはシクロアルキル構造を含むことが好ましい。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、幾つかの修飾されたヌクレオチド型を含んでいても良い。従って、天然に通常見いだされるもの以外のプリン及びピリミジンを使用していても良い。同様に本発明の本質的な意図が実行される限り、ヌクレオチドサブユニットのフラノシル部分を修飾することもできる。このような修飾の例は、2’−O−アルキル−、及び2’−ハロゲン置換ヌクレオチドである。本発明において有用な幾つかの糖部分の2’位の修飾の例は、OH、SH、SCH3、OCH3、OCN、またはO(CH2)nCH3(ここでnは1から約10である)、及び同様の特性を有する他の置換基である。全てのこのような類似体は、本発明の遺伝子のmRNAとハイブリダイズしてそのRNAの機能を阻害する機能を果たす限り、本発明に包含される。
【0096】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、約3から約50ヌクレオチドを含み、約15から約30ヌクレオチドを含むことが好ましく、約20から約25ヌクレオチドを含むことがさらに好ましい。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、周知の方法である固相合成法により作製することができる。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含む幾つかの業者により販売されている。ホスホチオエート等の他のオリゴヌクレオチドの製造も当業者に公知の方法で作製できる。
【0097】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、本発明の遺伝子から転写されるmRNAとハイブリダイズできるように設計される。与えられた遺伝子の配列に基づいてアンチセンスオリゴヌクレオチドを設計する方法は、当業者であれば容易である〔たとえば、村上および牧野:細胞工学 Vol.13 No.4 p259-266(1994)、村上章:蛋白質核酸酵素 Vol.40 No.10 p1364-1370(1995)、竹内恒成ら:実験医学 Vol.14 No.4 p85-95(1996)〕。最近の研究は、mRNAの5’領域、好ましくは翻訳開始部位を含む領域に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドが、遺伝子の発現の阻害に最も効果的であることを示唆している。アンチセンスオリゴヌクレオチドの長さは、15から30ヌクレオチドが好ましく、20から25ヌクレオチドがより好ましい。ホモロジー検索で他のmRNAとの相互作用がないこと、オリゴヌクレオチド配列内で二次構造を取らないことを確認しておくことが望ましい。設計したアンチセンス分子が機能したかどうかの評価は、適当な細胞を用いて、該細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを導入し、当業者には公知の方法で、対象mRNAの量(たとえば、ノーザンブロット法またはRT−PCR法)、あるいは対象タンパク質の量(たとえば、ウエスタンブロットまたは蛍光抗体法)を測定することにより、発現抑制の効果を確認できる。
【0098】
一方、三重らせん形成(トリプル・ヘリックス技術)は、核内のDNAを標的とした、主に転写の段階での遺伝子発現制御方法である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、主に転写に関与する遺伝子領域に設計され、それにより、転写及び本発明のタンパク質の産生を抑える。これらのRNA、DNA、オリゴヌクレオチドは、公知の合成装置などを用いて製造することができる。
【0099】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸配列を含む細胞に、たとえばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法などのDNAトランスフェクション法、またはウイルスなどの遺伝子導入ベクターの使用を含む遺伝子導入法のいずれを用いて導入してもよい。適切なレトロウイルスベクターを用いてアンチセンスオリゴヌクレオチド発現ベクターを作製し、その後、該発現ベクターを細胞とin vivoまたはex vivoで接触させることにより、標的核酸配列を含む細胞に導入できる。
【0100】
本発明のDNAは、アンチセンスRNA/DNA技術またはトリプル・へリックス技術を用いて、本発明のタンパクを介するII型コラーゲンの発現抑制および/または軟骨細胞の分化抑制を阻害するのに使用できる。
【0101】
本発明のタンパク質をコードする遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、たとえば、変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症などの軟骨細胞が関係する疾患を治療または予防する医薬として有用である。すなわち、本発明は、上記アンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法を用いてそれらの疾病の検出に利用することもできる。
【0102】
本発明は、II型コラーゲンの発現抑制および/または軟骨細胞の分化抑制を阻害するリボザイムも含む。リボザイムは、核酸のヌクレオチド配列を認識して、核酸を切断する活性を持つRNAである(たとえば、柳川弘志 実験医学バイオサイエンス12、RNAのニューエイジ)。リボザイムは、選択された標的RNA、たとえば本発明のタンパク質をコードするmRNAを開裂するように製造することができる。本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列を基に、本発明のタンパク質のmRNAを特異的に切断するリボザイムを設計することができ、かようなリボザイムは本発明のタンパク質のmRNAに対して相補的な配列を有し、該mRNAと相補的結合し、ついで該mRNAが開裂され本発明のタンパク質の発現が減少し(または完全に発現せず)、発現減少のレベルは標的細胞内でのリボザイム発現のレベルに依存している。
【0103】
よく用いられるリボザイムには、ハンマーヘッド型とヘアピン型の2種類があり、特にハンマーヘッド型リボザイムは切断活性に必要な一次構造や二次構造がよく調べられており、当業者であれば、本発明のタンパク質をコードするDNAのヌクレオチド配列情報のみで容易にリボザイムの設計が可能である〔たとえば、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445 (1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)〕。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的RNAと相補鎖を形成する2ヶ所の認識部位(認識部位Iと認識部位II)と活性部位からなる構造をなし、標的RNAと認識部位で相補対を形成した後、標的RNAのNUXの配列(N:AまたはGまたはCまたはU、X:AまたはCまたはU)の3’末端側で切断することが知られており、特にGUC(あるいはGUA)が一番高い活性を持つことが知られている〔たとえばKoizumi,Mら:Nucl. Acids Res.17,7059-7071(1989)、飯田ら:細胞工学Vol.16 No.3,p438-445(1997)、大川&平比良:実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)、川崎&多比良:実験医学 Vol.18 No.3p381-386 (2000)〕。
【0104】
そこでまず、本発明のDNA配列の中からGTC(またはGTA)の配列を探し出し、その前後で数ヌクレオチドから十数ヌクレオチドの相補対をつくることができるようにリボザイムを設計する。設計したリボザイムの適切性の評価は、たとえば、大川&平比良の文献〔実験医学Vol.12 No.12 p83-88(1994)〕に記載の方法によって、作製したリボザイムが、イン ビトロ(in vitro)で標的mRNAを切断できるかどうかを調べることで評価できる。リボザイムの調製は、RNA分子を合成するための当分野で周知の方法により調製する。
【0105】
別法としては、リボザイムの配列をDNA合成機で合成し、たとえばT7或いはSP6のような適切なRNAポリメラーゼプロモータを有する多種のベクターに組み込み、イン ビトロで酵素的にRNAを合成させる方法が挙げられる。これらのリボザイムは、たとえばマイクロインジェクション法などの遺伝子導入方法によって細胞内に導入できる。あるいは別の方法として、リボザイムをコードするDNAを適当な発現ベクターに組み込んで、株細胞、細胞或いは組織内に導入する。選択された細胞中にリボザイムを導入するのに、適切なベクターを使用することができ、たとえばプラスミドベクター、動物ウイルス(たとえばレトロウイルス、アデノウイルス、ヘルペスあるいはワクシニアウイルス)ベクターがこれらの目的に通常用いられるこれらのリボザイムは、本発明のタンパク質で仲介されるII型コラーゲンの発現抑制および/または軟骨細胞の分化抑制を阻害する作用を有する。本発明のリボザイムは、たとえば変形性関節症、軟骨形成異常症、骨折における軟骨の欠損、外傷による関節軟骨または関節円板の損傷、結核性関節炎、慢性関節リウマチ、椎間板ヘルニア、変形性脊椎症などの軟骨細胞が関係する疾患を治療または予防する医薬として有用である。すなわち、本発明は、上記リボザイムを有効成分として含有する医薬である。
【0106】
本発明はまた、機能を有する新規遺伝子の取得方法を提供する。より具体的には、オリゴキャッピング法を用いて完全長cDNAライブラリーを作製する工程およびシグナル因子を用いて該機能を有するタンパク質の存在を検出する工程を含む、新規遺伝子の取得方法を提供する。シグナル因子には、たとえばレポーター遺伝子が挙げられる。
【0107】
機能を有する遺伝子(cDNA)を多数取得するためには、不完全長のものが多いcDNAライブラリーを用いると効率が悪い。したがって、全体のクローンの中で、完全長のものの割合が高いライブラリーが必要となる。完全長cDNAは遺伝子から出来るmRNAの完全なコピーのことである。オリゴキャッピング法で作製したcDNAライブラリーは、完全長cDNAの割合が50〜80%であり、従来の方法で作製されたcDNAライブラリーと比べて、5〜10倍の完全長cDNAクローンの濃縮になっている(菅野純夫:月刊 BIO INDUSTRY Vol.16 No.11 p19-26)。一般に、完全長cDNAは、遺伝子の機能解析においては、タンパク質発現のために必須なクローンであり、完全長cDNAのクローンそのものが活性測定のための材料として極めて重要なものであるため、遺伝子の機能解析を試みるに際して、完全長cDNAのクローニングは必須の要件である。さらにその配列を決定することで、それがコードするタンパク質の一次配列を確定するための重要な情報となると同時に、遺伝子の全エクソンの配列も分かる。すなわち、完全長cDNAは、遺伝子を同定する上で貴重な情報、たとえばタンパク質の一次配列、エクソン−イントロン構造、mRNAの転写開始点、プロモーターの位置などを決めるための情報をも与える。
【0108】
オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製は、たとえば実験医学別冊新遺伝子工学ハンドブック改訂第3版(1999年)に記載の方法に従い行うことができる。すなわち、本発明において、オリゴキャッピング法とは、鈴木・菅野 実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック改訂第3版に記載のように、BAP,TAP,RNAリガーゼにより、キャップ構造を合成オリゴに置換する方法である。
【0109】
機能を有するタンパク質の存在を示すシグナル因子として用いることができるレポーター遺伝子は、転写因子等のタンパク質因子が結合できる適切な発現制御配列部分(1つまたは複数)と、その転写因子等による活性化を測定できる構造遺伝子部分からなる。構造遺伝子部分は、その発現産物の活性または生産量(mRNAの生産量も含まれる)を当業者が測定可能なものであれば、いかなるペプチド、タンパク質をコードする遺伝子も用いることができる。たとえば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、β−ガラクトシダ−ゼ、ルシフェラーゼ等をコードするポリヌクレオチドなどを用いることができ、その酵素活性を測定することで利用できる。機能を有するタンパク質の存在を示すレポーター遺伝子としては、本明細書実施例に示すようにCPE43レポータープラスミドの他、たとえば軟骨細胞で特異的に発現しているマーカー遺伝子であるアグリカン、XI型コラーゲン等の遺伝子発現制御配列を用いたレポーター遺伝子などが挙げられる。
【0110】
たとえば、II型コラーゲン遺伝子の発現を抑制する機能を有する遺伝子を取得したい場合は、II型コラーゲンの発現をモニターできるCPE43レポータープラスミドとオリゴキャッピング法で作製した完全長cDNAクローンを細胞に共導入し、さらにII型コラーゲンの発現を誘導する因子で細胞を刺激し、その中からレポーター活性の上昇を抑制したプラスミドを選ぶことによって、該目的を達成することができる。cDNAクローンの細胞への導入は、1クローンでも良いし、複数のクローンを同時に導入しても良い。本発明の該方法の一例は、本明細書実施例に詳細に記述してある。しかし、レポーター遺伝子を適宜作製することにより、II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子以外にも、各種生理活性因子(例えばNF-κB、MAPカイネース、血管新新生因子、各種転写因子)を活性化する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子の取得が可能である。
【0111】
本発明の新規遺伝子の取得方法は、イン ビトロ(in vitro)の系、あるいは細胞を用いて(cell-based)の系のどちらの方法でも良く、好ましくは細胞を用いた系である。細胞は、原核大腸菌をはじめとする原核生物、酵母、真菌等の微生物、及び昆虫や動物等の細胞のいずれでも良く、好ましくは動物細胞であり、ATDC5細胞、が例示できる。
【0112】
また、本発明のcDNAは、完全長cDNAであるため、その5’末端の配列がmRNAの転写開始点であり、該cDNA配列をゲノムのヌクレオチド配列と比較することにより、該遺伝子のプロモーター領域を同定することに利用できる。ゲノムのヌクレオチド配列は、データベースに公知の配列として登録されている場合はその配列を利用できる。あるいは、該cDNAを用いてたとえばハイブリダイゼーションによってゲノムライブラリーからクローニングし、ヌクレオチド配列を決めることもできる。このようにして、本発明のcDNAのヌクレオチド配列をゲノムの配列と比較することによって、その上流に存在する該遺伝子のプロモーター領域を同定することが可能である。さらに、このようにして同定した該遺伝子のプロモーター断片を用いて該遺伝子の発現を調べるレポータープラスミドを作製することができる。レポータープラスミドは、大方の場合、転写開始点からその上流2kb、好ましくは転写開始点からその上流1kbのDNA断片をレポーター遺伝子の上流に組み込むことによって作製できる。さらに該レポータープラスミドは、該遺伝子の発現を増強あるいは減弱させる化合物のスクリーニングに利用できる。具体的には例えば、該レポータープラスミドで適当な細胞を形質転換し、一定時間培養した形質転換細胞に、被験物質を任意の量添加し、一定時間後の該細胞が発現するレポーター活性を測定し、被験物質を添加しない細胞のレポーター活性と比較することによりスクリーニングすることができる。これらも本発明に含まれる。
【0113】
また本発明は、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77で表されるヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットおよび/または配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体に関する。
【0114】
さらに本発明は、上記に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列のデータを比較して相同性の算出を行う方法に関する。すなわち、本発明のポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、その2次元および3次元構造を決定し、たとえば同様の機能を有する相同性の高いさらなる配列を同定するための貴重な情報源となる。これらの配列をコンピュータ読み込み可能媒体に保存し、ついで既知の高分子構造プログラムにおいて保存したデータを用いて、GCGのような既知検索ツールを用いてデータべースを検索すれば、データベース中の、ある相同性を有する配列を見出すことは容易である。
【0115】
コンピュータ読み取り可能媒体は情報またはデータを保存するのに用いる物体のいずれの組成物であってもよく、たとえば、市販フレキシブルディスク、テープ、チップ、ハードドライブ、コンパクトディスク、およびビデオディスク等がある。また、本媒体上のデータは、他のヌクレオチド配列のデータと比較して相同性の算出を行なう方法を可能にする。この方法には、本発明のヌクレオチド配列を含む第一のヌクレオチド配列をコンピュータ読み込み可能媒体中に提供し、次いで、該第一のヌクレオチド配列を少なくとも一つの第二のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と比較して相同性を同定する工程を含む。
【0116】
本発明はまた、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質に関する。DNAプローブである複数の各種ポリヌクレオチドがスライドガラス等の特別に加工された基質上に固定され、次いで標識された標的ポリヌクレオチドを、固定化されたポリヌクレオチドとハイブリダイズさせ、それぞれのプローブからのシグナルを検出する。得られるデータは、解析され、遺伝子発現が測定される。
【0117】
本発明はさらにまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質に関する。このタンパク質を固定した不溶性基質と、生物由来の細胞抽出液とを混合し、不溶性基質上に捕獲された、診断あるいは新薬開発のために有効であることが期待されるタンパク質などの細胞由来の成分を、単離あるいは同定することができる。
【0118】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明は、これらの例に何ら限定されるものではない。当業者には種々の変更、修飾が可能であり、これも本発明に含まれる。
【0119】
(実施例1)オリゴキャッピング法を用いた完全長cDNAライブラリーの作製(1)マウスATDC5細胞からのRNA調製
マウスEC(embryonal carcinoma)由来クローン化細胞株ATDC5(Atsumi,T.et al.:Cell Diff.Dev.,30:p109-116(1990))を10cmシャーレ50枚まで継代培養した後、セルスクレーパーで細胞を回収した。次いで、回収した細胞からRNA抽出用試薬ISOGEN(ニッポンジーンより購入)を用いて全RNAを取得した。取得の具体的方法は、試薬のプロトコールに従った。次いで、オリゴ−dT セルロース カラムを用いて、全RNAからポリA+RNAを取得した。ポリA+RNA取得の具体的方法は、上記Maniatisの実験書に従った。
【0120】
なお、ATDC5細胞の培養は、5%ウシ胎児血清(FBS:Invitrogen社)、10μg/mlヒトトランスフェリン(SIGMA社)、0.3nmol/l亜セレン酸ナトリウム(和光純薬)を含む、HAM F−12培地(SIGMA社)とD−MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium:SIGMA社)を1:1で混合した培地にて、5%CO2存在下、37℃で培養した。
【0121】
(2)ヒト肺線維芽細胞(Cryo NHLF)からのRNA調製
ヒト肺線維芽細胞(Cryo NHLF:三光純薬株式会社より購入)を、添付のプロトコールに従って培養した。10cmシャーレ50枚まで継代培養した後、セルスクレーパーで細胞を回収した。次いで、上記(1)と同様の方法でポリA+RNAを取得した。
【0122】
(3)オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製
上記ATDC5細胞とヒト肺線維芽細胞のポリA+RNAから、オリゴキャッピング法により完全長cDNAライブラリーをそれぞれ作製した。オリゴキャッピング法による完全長cDNAライブラリー作製の具体的方法は、菅野らの方法〔例えば、Maruyama,K.& Sugano,S.Gene,138:171-174(1994)、Suzuki、Y.et al.Gene、200:149-156(1997)、鈴木・菅野 実験医学別冊 遺伝子工学ハンドブック改訂第3版〕に従って作製した。
【0123】
(4)プラスミドDNAの調製
上記実施例で作製した完全長cDNAライブラリーを、エレクトロポレーション法によって大腸菌TOP10株に形質転換した後、100μg/mlアンピシリンを含有するLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩インキュベートした。続いて、アンピシリン含有LB寒天培地上で生育した大腸菌のコロニーから、QIAGEN社のQIAwell 96 Ultra Plasmid Kitを用いてプラスミドを回収した。具体的方法は、QIAwell 96 Ultra Plasmid Kitに添付のプロトコールに従った。
【0124】
(実施例2)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するDNAのクローニング
(1)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするcDNAのスクリーニング
ATDC5細胞を、7500cells/well/100μlとなるように細胞培養用96穴プレートに播種し、5%CO2存在下、37℃で1日培養した。なお培地は、5%ウシ胎児血清(Invitrogen社)、10μg/mlヒトトランスフェリン(SIGMA社)、0.3nmol/l亜セレン酸ナトリウム(和光純薬)を含む、HAM F−12培地(SIGMA社)とD−MEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium:SIGMA社)を1:1で混合した培地を用いた。次いで、FuGENE6(Roche社より購入)を用いて、CPE43レポータープラスミド100ngと、上記実施例1(4)で調製した完全長cDNAプラスミド2μlを1ウエルに共導入した。導入の方法は添付のプロトコールに従った。続いて、Insulin−like Growth Factor−I(IGF−I:SIGMA社より購入)、Fibroblast Growth Factor−Basic(bFGF:SIGMA社より購入)を終濃度50ng/mlとなるように培地に添加した。5%CO2存在下、37℃で2日培養後、ロングタームルシフェラーゼアッセイシステム、ピッカジーンLT2.0(東洋インキ社)を用いて添付されている説明書に従い、CPE43レポータープラスミドのレポーター活性(ルシフェラーゼ活性)を測定した。なおルシフェラーゼ活性の測定は、Perkin Elmer社のWallac ARVOTMST 1420 MULTILABEL COUNTERを用いて行った。
【0125】
なお、II型コラーゲン遺伝子のプロモーター配列およびエンハンサー配列を有すると共に構造遺伝子部分としてルシフェラーゼをコードするDNAを搭載したレポータープラスミドCPE43は、以下の通りに構築した。CPE43は、Lefebvreら(Mol.Cell.Biol.,16 p4512-4523(1996))が構築したレポータープラスミドを参考にして構築した。まず、ヒトII型コラーゲン遺伝子のプロモーター領域の配列をクローニングするために、ヒトII型コラーゲン遺伝子の塩基配列(Genbank Accession M60299)に基づいて、合成オリゴヌクレオチド、5’―AGATCTGGTTACAGCCCAGCTGGG―3’(配列番号79)と、5’―AAGCTTAGCAGCGCTCTGCGTCTTC―3’(配列番号80)のプライマーを設計し、このプライマー対を用いてヒトゲノムを鋳型としてPCRを行ない、増幅された約0.12kbの断片を分離し、制限酵素BglIIとHindIIIで消化後、ホタルルシフェラーゼレポーターベクターpGL3−Basic Vector(プロメガ株式会社)のBglII部位とHindIII部位の間にT4 DNAリガーゼ(GIBCO/BRL)を用いて挿入した。得られたクローンは、定法により塩基配列を確認した。PCRは、10倍濃度の反応緩衝液(TaKaRa Ex Taqに添付のバッファー:宝酒造)5μl、2.5mMdNTP混合液5μl、上記プライマー各々2μl(各々10μMの濃度)、TaKaRa Ex Taqポリメラーゼ(宝酒造)0.5μl、ヒトGenomic DNA (CLONTECH社)200ngを含む50μlの反応液を調製し、96℃で2分間のインキュベーションの後、94℃で1分間、56℃で1分20秒間、72℃で1分40秒間のインキュベーションを、TaKaRa PCR Thermal Cycler MP(宝酒造)を用いて30サイクル行なった。
【0126】
次に、II型コラーゲン遺伝子のエンハンサー配列を合成オリゴヌクレオチドにより作製した。2本の合成オリゴヌクレオチド、5’―GATCCTGTGAATCGGGCTCTGTATGCGCTTGAGAAAAGCCCCATTCATGAGA―3’(配列番号81)と、5’―GATCTCTCATGAATGGGGCTTTTCTCAAGCGCATACAGAGCCCGATTCACAG―3’(配列番号82)を合成した。この合成オリゴヌクレオチドを各々1μg/μlとなるように滅菌水で溶解し、各々1μlずつ混ぜ、さらに滅菌水で20μlに容量を合わせた。その溶液を95℃で5分間加熱後、徐々に室温まで冷却し二本鎖オリゴヌクレオチド溶液を調製した。その溶液をT4 DNAリガーゼを使用してライゲーションを行ない、制限酵素BamHIとBglIIで消化後、アガロースゲル電気泳動に供した。二本鎖オリゴヌクレオチドが4回同方向(タンデム)に連結された、約0.2kbのDNA断片を切り出し、Geneclean Spin kit(BIO 101社)を用いて精製した。該DNA断片を上記作製のプラスミド(ヒトII型コラーゲン遺伝子のプロモーター領域の配列がpGL3−Basic Vectorに組み込まれたもの)のBglII部位に挿入した。II型コラーゲンプロモーターと合成オリゴヌクレオチドの間に制限酵素BglII部位が生じるように合成オリゴヌクレオチドが挿入されたクローンを選び、CPE43レポータープラスミドとした。
【0127】
(2)ヌクレオチド配列の決定
上記スクリーニングを12万クローン行ない、ルシフェラーゼ活性が対照実験(完全長cDNAプラスミドの代わりに、空ベクターpME18S−FL3を導入した細胞のルシフェラーゼ活性)と比べて0.6倍以下に低下しているプラスミドを選抜し、まず、クローニングされているcDNAの5’側(シークエンスプライマ−:5’−CTTCTGCTCTAAAAGCTGCG−3’(配列番号83))と3’側(シークエンスプライマ−:5’−CGACCTGCAGCTCGAGCACA−3’(配列番号84))からそれぞれone−passシークエンスを行ない、できる限り長くヌクレオチド配列を決定した。なお、ヌクレオチド配列決定のための試薬や方法は、BigDye TerminatorCycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(アプライドバイオシステムズ社)を用い、ABI PRISM 377シークエンサー、あるいは、ABI PRISM 3100シークエンサーを用い、各々キットに添付されている説明書に従って行なった。
【0128】
(3)全長シークエンス
39種類の新規のクローンについて全長ヌクレオチド配列(配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77)を決定し、タンパク質をコードする部分(オープンリーディングフレーム)のアミノ酸配列(配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78)を予想した。
【0129】
【発明の効果】
本発明により、産業上有用性の高いII型コラーゲン遺伝子の発現を抑制する作用を有するタンパク質やそれらの遺伝子が提供される。本発明のタンパク質やそれらの遺伝子により、軟骨の障害が関与する疾患の治療や予防に有用な化合物のスクリーニング、さらにそのような疾患の診断薬を作製することが可能である。
【0130】
【配列表】
Claims (33)
- 以下の(a)または(b)の精製されたタンパク質。
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質。 - 請求項1記載のタンパク質とその全長にわたり95%以上のアミノ酸配列の同一性を有するタンパク質であり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有する精製されたタンパク質。
- 以下の(a)または(b)のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78のいずれかにおいて1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質。 - 以下の(a)〜(c)のいずれかのヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかで表されるヌクレオチド配列。
(b)(a)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかにおいて、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。 - 以下の(a)〜(c)のいずれかのヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
(a)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77のいずれかのコード領域に示されるヌクレオチド配列。
(b)(a)のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。
(c)配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77に示されるコード領域のいずれかであって、1若しくは複数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたヌクレオチド配列からなり、かつII型コラーゲンの発現を促進する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列。 - 請求項3記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項4または5記載のポリヌクレオチドと全長にわたり少なくとも95%以上の同一性を有し、かつII型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードするヌクレオチド配列を包含する単離されたポリヌクレオチド。
- 請求項3〜7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドによりコードされる精製されたタンパク質。
- 請求項3〜7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
- 請求項9に記載の組換えベクターを含む形質転換された細胞。
- 請求項3〜7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドでコードされたタンパク質が膜タンパク質である場合における、請求項10記載の細胞。
- (a)請求項3〜7のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチドがコードするタンパク質を発現する条件下で該ポリヌクレオチドを含有する形質転換された細胞を培養し、
(b)培養物からタンパク質を回収する、
ことを含むタンパク質の製造方法。 - (a)個体のゲノムにおける請求項1、2または8に記載のタンパク質をコードするヌクレオチド配列中の変異の存在または不存在を決定し、および/または
(b)該個体に由来するサンプル中での該タンパク質の発現量を分析する、
ことを含む、該個体における該タンパク質の発現または活性に関連した、該個体における疾病または疾病への感受性の診断方法。 - 以下の工程を含むII型コラーゲンの発現の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングする方法。
(a)II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質をコードする遺伝子、およびII型コラーゲンの発現に対応した、検出可能なシグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、および
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離もしくは同定する工程。 - 以下の工程を含む、医薬組成物を製造する方法。
(a)II型コラーゲンの発現を抑制する作用を有するタンパク質をコードする遺伝子、および検出可能なシグナルを提供しうる成分を細胞に提供する工程、
(b)該遺伝子が形質転換された細胞内で発現可能となる条件下で該形質転換された宿主細胞を培養する工程、
(c)該形質転換された宿主細胞と1あるいは複数個の候補化合物とを接触させる工程、
(d)検出可能なシグナルを測定する工程、
(e)該検出可能なシグナルの測定により活性化剤化合物および/または阻害剤化合物を単離もしくは同定する工程、および
(f)単離または同定された化合物を医薬組成物として最適化する工程。 - II型コラーゲンの発現の阻害活性または促進活性について化合物をスクリーニングするためのキットであって、
(a)II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質をコードする遺伝子、およびII型コラーゲンの発現に対応した、検出可能なシグナルを提供しうる成分により形質転換された細胞、および
(b)検出可能なシグナルを測定するための試薬、
を含むキット。 - 請求項1、2または8に記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルあるいはポリクローナル抗体。
- 請求項1、2または8に記載のタンパク質を抗原あるいはエピトープ含有フラグメントとして非ヒト動物に投与することからなる、請求項1、2または8記載のタンパク質に特異的に結合するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造方法。
- II型コラーゲンの発現を抑制するタンパク質の発現を阻害する、請求項3〜請求項7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド。
- 請求項1,2または8に記載のタンパク質をコードするRNAの開裂により、II型コラーゲンの発現を促進するリボザイム。
- 軟骨疾患の予防治療に有効な量の、請求項14記載の方法でスクリーニングされた化合物、請求項17記載のモノクローナル、請求項17に記載のポリクローナル抗体、請求項19記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび請求項20記載のリボザイムからなる群より選ばれる1種または2種以上を、個体に投与することを含む疾患の治療法。
- II型コラーゲンの発現を阻害または活性化するものとして請求項15に記載の方法により製造された医薬組成物。
- 軟骨疾患の治療のための請求項22記載の医薬組成物。
- 変形性関節症、軟骨欠損症、または慢性関節リウマチの予防治療のための請求項22記載の医薬組成物。
- 軟骨に関連する疾患を患っている患者に請求項15記載の方法により製造された医薬組成物を投与することからなる軟骨疾患を治療する方法。
- 請求項17記載のモノクローナルまたはポリクローナル抗体を有効成分として含有する医薬組成物。
- 請求項19記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドを有効成分として含有する医薬組成物。
- 請求項20記載のリボザイムを有効成分として含有する医薬組成物。
- 対象疾患が軟骨に関連する疾患である、請求項26、請求項27または請求項28に記載の医薬組成物。
- 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77に示されるヌクレオチド配列もしくはコード領域のヌクレオチド配列のうち少なくとも1以上を含むデータセット、および/または、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列のうち少なくとも1以上を含むデータセットを保存したコンピュータ読み込み可能媒体。
- 請求項30に記載の媒体上のデータと他のヌクレオチド配列および/または他のアミノ酸配列のデータを比較して他のヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列との同一性の算出を行う方法。
- 配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、33、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、59、61、63、65、67、69、71、73、75または77から選択されるヌクレオチド配列の全てまたは一部を含むポリヌクレオチドが固定されている不溶性基質。
- 配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76または78で表されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列の全てまたは一部を含むポリペプチドが固定されている不溶性基質。
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