明細書
生体触媒を用いたひーヒドロキシ酸ァンモニゥム塩の製造方法 技術分野:
本発明は、 生体触媒を用いて 0!—ヒドロキシニトリル化合物を加水分解し、
キシ酸アンモニゥム塩を高濃度で生成蓄積させる方法に関する。 背景技術:
ひーヒドロキシ酸アンモニゥム塩は、 常法により遊離のひーヒドロキシ酸に導くことが できる。 α—ヒドロキシ酸又は Q!—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩のうち、 乳酸や乳酸アン モニゥムは食品工業、 醸造工業、 製薬工業等で用いられ、 ひ—ヒドロキシイソブタン酸は 医薬 ·農薬等の合成原料として有用であり、 —ヒドロキシ— 4ーメチルチオブ夕ン酸又 は α—ヒドロキシ一 4—メチルチオブタン酸アンモニゥム塩は、 家畜、 特に家禽の飼料に 必須アミノ酸であるメチォニンの不足を補う目的で添加される飼料添加物として有用であ る。
従来、 ひーヒドロキシニトリルから生体触媒によってひ—ヒド口キシ酸を製造する方法 としては、 例えば、 乳酸、 ダリコール酸及び α—ヒドロキシイソブタン酸の製造方法 (特 許文献 1参照。 ) 、 乳酸、 α—ヒドロキシイソブタン酸、 ひ—ヒドロキシフエニルプロピ オン酸及びマンデル酸の製造方法 (特許文献 2参照。 ) 、 ひーヒドロキシィソブタン酸の 製造方法(特許文献 3参照。 )、 Q!—ヒドロキシ— 4ーメチルチオブタン酸の製造方法(特 許文献 4〜 9参照。 ) 等が知られている。 これら先行文献に開示されたひーヒドロキシ酸 の製造においては、 —ヒド口キシニトリルを生体触媒で加水分解し、 先ず α—ヒドロキ シ酸アンモニゥム塩を得て、 これを通常の方法、 例えば酸による中和、 イオン交換樹脂力 ラム、電気透析、熱分解等の方法により、遊離の α—ヒドロキシ酸を製造している。また、 ひ—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法として、 2段階の反応槽を用いてひ—ヒドロ キシニトリルの反応液中の濃度を 2段階で減少するように反応させる方法が提案されてい る (特許文献 1 0参照。 ) 。
これらひーヒドロキシ酸や α—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法は、 いずれも目 的とする物質を高濃度で生成蓄積させることにおいて満足しうるものでなく、 また、 目的 物質の生体触媒あたりの生産速度も工業的見地から十分とは言えない。 また、 本発明のよ うに、 ーヒドロキシ酸アンモニゥム塩を高濃度で生成蓄積させるにあたり、 段階的に蓄 積濃度を上げていく生体触媒反応の有効性については記載されていない。 特許文献 1:特開昭 6 1— 5 6 0 8 6号公報
特許文献 2:特開昭 6 3 - 2 2 2 6 9 6号公報
特許文献 3:特開平 4一 4 0 8 9 7号公報
特許文献 4: WO 9 6 - 0 9 4 0 3号公報
特許文献 5:特開平 8— 1 7 3 1 7 5号公報
特許文献 6:特開平 9一 3 2 2 7 9 7号公報
特許文献 7: WO 98 - 1 8941号公報
特許文献 8:特開 200 1— 054380号公報
特許文献 9:特開 20 02— 034584号公報
特許文献 10:特開 2000— 1 2589 1号公報 発明の開示:
一般的に生体触媒が生産物によって阻害を受けることはよく知られている (Enzyme Catalysis in Organic Synthesis, VCH, 1995, p24) 。 a—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の 生体触媒による製造においても、 上述のような従来の方法では、 生産物である α—ヒドロ キシ酸アンモニゥム塩の蓄積濃度が 25重量%未満であり、 25重量%以上の蓄積濃度で a—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩を実用に耐える生産速度で生産する方法はほとんど知ら れていない。
一方、 工業的に ーヒドロキシ酸アンモニゥム塩を製造するにあたって、 a—ヒドロキ シ酸アンモニゥム塩を高濃度で蓄積させることは、 その後の製品化に至る工程において、 濃縮の負荷が軽減されるか又は全く濃縮の工程が必要なくなるという大きな利点がある。 本発明の課題は、 生産物濃度の上昇による反応速度の低下の影響が少なく、 かつ高価な 生体触媒の使用量を最小限に抑えることができる、 工業的に有利な a—ヒド口キシ酸アン モニゥム塩の高濃度水性溶液を得る方法を提供することにある。
本発明者らは、 まず、 生体触媒の活性および活性持続性に対する生産物の蓄積濃度の影 響を種々調べたところ、 生産物阻害に対する耐性を有した生体触媒、 例えば、 アースロバ クタ一 'エスピ一 Arthrobacter sp.) NS S C 204 (FE RM BP— 7662 (F ERM P— 1 7 924) ;特許文献 9参照) 等の微生物であっても、 生産物であるひ— ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の反応液中濃度が上昇するにしたがって、 活性低下および活 性持続性の低下が大きくなることを見い出した。 そこで、 生体触媒反応方法につき種々検 討した結果、 1段階で a—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩を高濃度で蓄積生産させるよりも、 段階的に a—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の蓄積濃度を上げていった方が、 生体触媒あた りの反応速度が高く、 しかも高い反応速度を長期間持続させることができることを見い出 した。 本発明をこれら知見に基づき完成するに至ったものである。
すなわち本発明は、 (1) 式 [I] : RCH (OH) CN (式中、 Rは水素原子、 置換基 を有していてもよい C Ceのアルキル基、置換基を有していてもよい C2〜C6のアルケ ニル基、 置換基を有していてもよい Ci Ceのアルコキシ基、 置換基を有していてもよい ァリ一ル基、 置換基を有していてもよいァリ一ルォキシ基又は置換基を有していてもよい 複素環基を表す。 )で表される a—ヒドロキシニトリル化合物 [I]を、生体触媒により、 水性溶媒中で加水分解して、 式 [Π] : RCH (OH) C〇0_NH4+ (式中、 Rは式 [ I] における Rと同一である。 ) で表されるひ一ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] に変換す る、 2段階以上の反応槽を用いた a—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法であって、 各反応槽における反応液を次段階の反応槽に順次移送すると共に該反応液が移送された反 応槽に ーヒドロキシニ卜リル化合物 [ I ] を添加して、 各段階の反応槽におけるひーヒ ドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] の蓄積濃度を順次段階的に高めていくことを特徴とする
0;—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法に関する。
また本発明は、 (2) a—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] の蓄積濃度の各段階間にお ける上昇値を順次減少させることを特徴とする上記 (1) の —ヒドロキシ酸アンモニゥ ム塩の製造方法や、 (3)最終段階の反応槽の反応液を濃度調整反応槽に移送し、該濃度調 整反応槽には α—ヒドロキシニトリルイ匕合物 [I] を添加することなく、 残存している α —ヒドロキシニトリル化合物 [I] をひ—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] に変換する ことを特徴とする上記(1)又は(2)のひーヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法や、 (4) 最終の反応槽で得られるひーヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] の水性溶媒中の蓄 積濃度が 25重量%以上であることを特徴とする上記 (1) 〜 (3) のいずれかの ーヒ ドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法や、 (5) 反応槽の段階数が 2〜 50段階であるこ とを特徴とする上記 (1) 〜 (4) のいずれかの《—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造 方法や、 (6) 生体触媒を再利用することを特徴とする上記 (1) 〜 (5) のいずれかの ひ—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法や、 (7) 生体触媒として、 固定化菌体又は 固定化酵素を用いることを特徴とする上記 (1) 〜 (6) のいずれかの ーヒドロキシ酸 アンモニゥム塩の製造方法や、 (8) 固定化菌体又は固定化酵素をカチオン性ポリマーと ァニオン性ポリマーとを含む固定化担体で調製することを特徴とする上記 (7) の α—ヒ ドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法や、 (9) ひーヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] が α—ヒドロキシ— 4ーメチルチオブ夕ン酸ァンモニゥム塩であることを特徴とする上記 (1) 〜 (8) のいずれかの a—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法に関する。 本発明の —ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法によれば、 生産物濃度の上昇によ る反応速度の低下の影響が少なく、 かつ高価な生体触媒の使用量を最小限に抑えて、 工業 的に有利に、 高濃度 0!—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の水性溶液を得ることができる。 発明を実施するための最良の形態
本発明のひーヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法としては、 式 [I] : RCH (〇 H) CNで表される α—ヒドロキシニトリル化合物 [I] を、 生体触媒により、 水性溶媒 中で加水分解して、 式 [II] : RCH (OH) C〇0_NH4+で表される《—ヒドロキシ 酸アンモニゥム塩 [II] に変換する、 2段階以上の反応槽を用いた ーヒドロキシ酸アン モニゥム塩の製造方法であって、 各反応槽における反応液を次段階の反応槽に順次移送す ると共に該反応液が移送された反応槽に a—ヒドロキシニトリル化合物 [ I ]を添加して、 各段階の反応槽における α—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] の蓄積濃度を順次段階的 に上げていく α—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法であれば特に制限されるもので はなく、 本発明の特徴である —ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] の水性溶媒中の蓄積 濃度を段階的に上げるにあたっては、 各段階間におけるひーヒドロキシ酸アンモニゥム塩
[II] の蓄積濃度の上昇値を順次減少させることが好ましい。 各段階の反応槽の濃度は、 用いる生体触媒によって異なるが、 例えば、 第 1段階の反応槽を 15重量%、 第 2段階の 反応槽を 25重量%、 第 3段階の反応槽を 30重量%と設定することができる。
本発明の α—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の製造方法においては、 各反応槽における反 応液を次段階の反応槽に順次移送すると共に該反応液が移送された反応槽に α—ヒドロキ
シニトリル化合物 [ I ] を添加するので、 段階的に各反応槽における ο;—ヒドロキシ酸ァ ンモニゥム塩の蓄積濃度を上昇させることができ、 これにより、 同一容量 (各段階の合計 容量) の単一槽において同量の生体触媒を用いた場合に比して、 効率的に高濃度ひ一ヒド ロキシ酸ァンモニゥム塩水性溶液を得ることができる。
ここで、 上記式 〔1 ] 及び [ 2 ] 中の Rは同一の基であり、 水素原子、 置換基を有して いてもよい C i C eのアルキル基、 置換基を有していてもよい C 2〜C 6のアルケニル基、 置換基を有していてもよい C i C eのアルコキシ基、 置換基を有していてもよいァリール 基、 置換基を有していてもよいァリールォキシ基又は置換基を有していてもよい複素環基 を表す。 前記置換基を有してもよい C i C eのアルキル基としては、 例えば、 C i C e のアルキルチオアルキル基、 C 1~ C 6のヒドロキシアルキル基を好適に例示することがで き、 置換基を有してもよいァリール基としては、 例えば、 フエ二ル基を好適に例示するこ とができ、 置換基を有してもよい複素環基としては、 例えば、 ピリジル基、 ビラジニル基 を好適に例示することができる。
具体的に、 式 [ I ] で表わされる α—ヒドロキシニトリル化合物としては、 ラクトニト リル、 アセトンシアンヒドリン、 マンデロニトリル、 2—ヒドロキシ一 η—ブチロニトリ ル、 2—ヒドロキシ一 4ーメチルチオプチロニトリル (α—ヒドロキシー 4—メチルチオ ブチロニトリル) 、 2—ヒドロキシー 2—フエニルプロピオ二トリル、 2 , 4—ジヒドロ キシ— 3, 3—ジメチルブチロニトリル、 2—ヒドロキシー 3—ブテン二トリル、 2—ヒ ドロキシ— 3 _メチル— 3—ブテン二トリル、 2—ピリジンアルデヒドシアンヒドリン、 2—シァノピリジン、 3—シァノピリジン、 4一シァノピリジン、 2ーシァノピラジン等 を具体的に例示することができる。
本発明の製造方法における反応槽の段階数としては、 2段階以上であれば特に制限され るものではなく、 1段階中に並列な複数の反応槽があってもよく、 蓄積濃度の向上と生産 効率の相対的な関係から反応槽の段数が 2〜 5 0段階であることが好ましく、 3 ~ 2 0段 階であることがより好ましい。 また、 最終段階の反応槽の後に、'濃度調整反応槽を設けて おき、 最終段階の反応槽の反応液を濃度調整反応槽に移送して、 該濃度調整反応槽には α —ヒドロキシニトリル化合物 [ I ] を添加することなく、 残存している α—ヒドロキシニ トリル化合物 [ I ]を α—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II]に変換することが好ましい。 濃度調整反応槽を用いることにより、 残存している α—ヒドロキシニトリルを ーヒドロ キシ酸アンモニゥム塩に変換して、 α—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] の収率を向上 させることができる。 なお、 濃度調整反応槽は、 本発明における 2段階以上の反応槽には 含まれない。 また、 濃度調整反応槽は 2段階以上設けることも可能である。
本発明の製造方法に用いる生体触媒としては、 二トリルから酸へ加水分解する能力、 す なわち、 二トリラ一ゼ活性、 及び/又は二トリルヒドラ夕一ゼとアミダ一ゼ活性を有する ものであればどのようなものでも用いることができ、 例えば、 かかる活性を有する微生物 自体、 固定化微生物、 粗酵素、 固定化酵素等の微生物処理物を挙げることができる。 かか る活性を有する微生物としては、 例えば、 ァエロモナス er«Mno/2as)属、 ァスペルギルス (AspergUlus)属、 ァシネトパクタ一 (Acinetobactei 、 アル力リゲネス (AlcaligOues)属、 アースロバクタ一 r Ambac er)属、 ェシエリシァ (JEscherichia)鼠、 エルピニァ Ezwin/a)
属、 ェンテロバクタ一 E¾fem6acfer)属、 ォ一レオパクテリゥム ひ rea6scfej2'u )属、 力 セォパクター(Oaseobacfer)属、 キヤンディダ andida)^^ コクリオ^ラ T ochliobolui) 属、 コリネバクテリ
ゴルドナ(Gordona)鼠、 シュ一ドモナス Pseudoinonas、属、 ストレプトマイセス 0¾τ<9_ρήΜΏァ ces)属、 セルロモナス (CfeZ/ii/o nanas) 属、 ノカルディァ (N carife)属、パクテリ
チルス (Bacillus)属、 ノ リオポラクス(l¾ z'OTOゾ )属、 パントエア CPanioea)属、 フザリウム iFusa 'm )属、 フラ ポバクテリ Flavobacteriuni 、 ブレビパクテリゥ Brevibacter miMヽ ぺニシリ ゥ jPemcilliimi ヽ マイコプラナ(Mycqplana)属、 ミクロコッカス (Micrococcus) j^s、 口 コッカス (jUlodoCOCCUS、鼠、口ドシュ一ドモナス ( θί¾ΜβΙ«¾1Ώσ/2¾9)属等の微生物を挙 げることができる。
より具体的には、例えば、 Aeromonas punctata IFO 13288、 Alcaligenes faecalis ATCC 8750、 Arthrobacter oxydans IFO 12138、 Arthrobacter sp. NSSC 104 (FERM P- 15424)、 Arthrobacter sp. NSSC204 (FERM BP-7662), Escheichia coli IFO 3301、 Ervinia herbicola IFO 12686、 A ureobacterium testaceum IAM 1561、 Candida guilliermondii IFO 0566、 Corynebacterium mtrilop ilus ATCC 21419、 Gordona terrae MA- 1 (FERM BP-4535), Pseudomonas synxanta IAM1235b、 Strep tomycea griseus IFO 3355、 Uellulomonas £mi IAM 12107、 Nocardia asteroides IFO 3384、 Nocardia calcarea KCCAO 191、 Nocardia polychromogenes IFM 19、 Bacteridium sp. R341 (FERM P-2719)、 Bacteridium sp. R340 (FERM P_2718)、 Bacillus sp. R332 (FERM P.2717)、 Bacillus subtilisATCC 21697、 Bacillus licheniformis IFO 12197、 Bacillus megaterium ATCC 25833、 Variovorax paradoxus IAM 12374、 Pantoea agglommerans NH-3 (FERM P-11349)、 Flavobacterium £avescens CC 8315、 Brevibacterium acetylicum IAM1790、 Brevibacterium helvolum ATCC 11822、 Micrococcus luteus ATCC 383、 Micrococcus vananslAM. 1099, Micrococcus roseus IFO 3768, Micrococcus sp. Alll (FERM P-2720), Mycoplana dimorpha ATCC 4297、 Rhodococcus sp. HT29-7 (FERM BP-3857) , Rhodococcus sp. HT40-6 (FERM BP.5231)、 Rhodococcus sp. SK92 (FERM BP.3324)、 Rhodococcus rhodochrous ATCC 12674、 Rhodococcus erythropolis IFM155、 同 IFO 12320、 同 IFO 12538及び同 IFO 12540等の微生物を例示することができるが、 これら の中でも、 生産物阻害に対する耐性を有する Arthrobacter sp. NSSC204 (FERM BP-7662)を用いることが好ましい。
これらの生体触媒は再利用することが工業的に有利であり、そのために、固定化微生物、 固定化酵素等の固定化生体触媒として用いることが好ましい。 生体触媒の固定化法として は、 担体結合法、 架橋法、 包括法等の従来公知の固定化法であれば特に制限されないが、 カチオン性ポリマーとァニオン性ポリマーとを含む固定化担体で調製する方法を用いるこ とが、固定化生体触媒の活性が高いので好ましい。カチオン性ポリマ一 しては、例えば、 ポリアリルァミン、 ポリエチレンィミン、 キトサンを挙げることができ、 ァニオン性ポリ マ一としては、 例えば、 アルギン酸、 カラギ一ナンを挙げることができる。 また、 生体触 媒として遊離菌体を用いた場合は、 反応槽と遊離菌体の分離機を組み合わせた反応装置を 用いることで、 生体触媒を再利用しながら、 本発明を実施することができる。 遊離菌体の
分離機としては、 例えば膜分離機や遠心分離機等を挙げることができる。 また、 生体触媒 は、 新鮮な生体触媒を第 1段階の反応槽に連続的又は間欠的に添加し、 順次使用後の生体 触媒を次段階の反応槽に移送するカスケ一ド方式を採用することにより再利用することも できる。
生体触媒反応 (加水分解反応) は水性溶媒中で行われ、 かかる水性溶媒としては、 水単 独または有機溶媒を含む水溶液が用いられる。 また、 生体触媒の反応液中濃度は反応槽毎 に任意に選択できるが、通常乾燥菌体として 0. 15〜7. 5重量%の範囲で制御される。 反応液の P Hは各反応槽で同一であつても異なっていてもよく、 適当な緩衝剤もしくは 酸 ·アルカリによって、 通常、 5〜10の範囲に保持される。 また、 反応液の温度は各反 応槽で同一であっても異なっていてもよく、 通常 4〜60°C、 好ましくは 15〜50での 範囲に保持される。
最終の反応槽で得られる ーヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] の水性溶媒中の蓄積濃 度としては、 25重量%以上であることが好ましく、 35重量%以上であることがより好 ましい。 これにより、 その後の製品化に至る工程において、 濃縮の負荷が軽減される。 な お、 最終の反応槽とは、 最終段階の反応槽、 又は濃度調整反応槽を用いる場合には濃度調 整反応槽をいう。
本発明で製造される α—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] としては、 グリコール酸、 乳酸、 マンデル酸、 α—ヒドロキシブタン酸、 α—ヒドロキシイソプ夕ン酸、 a—ヒドロ キシー 4ーメチルチオブタン酸、 《—ヒドロキシー 2—メチルプロピオン酸、 《—ヒドロ キシー 2 _フエニルプロピオン酸、 α, —ジヒドロキシ—3, 3—ジメチルブタン酸、 α—ヒドロキシ一 3—ブテン酸、 α—ヒドロキシー 3—メチル一 3—ブテン酸、 2_ピリ ジニル— α—ヒドロキシ酢酸、 2—ピリジンカルボン酸、 ニコチン酸、 イソニコチン酸、 2 -ピラジンカルボン酸等のアンモニゥム塩など、 前記例示したひ—ヒドロキシニトリル 化合物 [I] を加水分解して得られる a—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩 [II] が挙げられ る。 その中の《—ヒドロキシ— 4—メチルチオブタン酸アンモニゥム塩は、 家畜、 特に家 禽の飼料として有用であり、 必須ァミノ酸であるメチォニンの不足を補うことができる。 以下、 実施例により本発明をより具体的に説明するが、 本発明の技術的範囲はこれらの 例示に限定されるものではない。 なお、 ひ—ヒドロキシ酸アンモニゥム塩の定量は高速液 体クロマトグラフィーにより行った。 実施例 1 :
(固定化生体触媒の調製)
85. 5 ^の水に0. 5 gのアルギン酸ナトリウムを溶解し、 148の50重量%ァ一 スロバクタ一 ·エスピー · NS S C 204湿菌体懸濁液を加えてよく混合した。 この混合 液を注射針の先から 0. 1Mの塩化カルシウムを含む 0. 025重量%ポリエチレンイミ ン (平均分子量 70000) 水溶液 (IN HC 1で pH7. 5に調整) 1L中に攪拌し ながら滴下し、 固定化生体触媒を調製した。 ここに得られた固定化生体触媒は球形のビー ズ状で、デカン卜により水洗し、湿重量 14 gの固定化生体触媒(略称: CAP 7)を得、 反応に供した。
(生体触媒反応)
高濃度ひーヒドロキシー 4ーメチルチオブタン酸アンモニゥム塩 (略称: HAAS) の 連続生産を行う生体触媒反応の実施例を示す。 4段階の濃度上昇により 25. 0重量%の HAAS水溶液を生産したときの生産性を示す実施例である。
上記方法によって調製した固定ィ匕生体触媒 (CAP 7) 25. 5 g (湿重量) ずつを 1 段目反応槽、 2段目反応槽、 3段目反応槽にそれぞれ仕込み、 濃度調整反応槽には 4. 8 gを仕込んだ。 そして、 1段目反応槽は 12. 0重量%の11八八3水溶液 133mLで満 たし、 2段目反応槽は 19. 7重量%の^1八八3水溶液 133mLで満たし、 3段目反応 槽は 24. 7重量%の11八八3水溶液 133mLで満たし、 濃度調整反応槽は 25. 2重 量%の HAAS水溶液 25mLで満たした。 各反応槽における設定濃度は、 原料、 触媒の 種類、 量から実験的に求めたものである。 各反応槽と濃度調整反応槽には攪拌機を設置し 緩やかな攪拌を行い、 反応温度は 25 °Cに設定した。 1〜 3段目反応槽に連続的な所定量 (表 1参照) の ーヒドロキシ— 4—メチルチオブチロニ卜リル (略称: HMBN) 添加 開始により、 反応を開始させた。 反応槽間は送液ポンプにより、 反応液のみをストレーナ —で固定化生体触媒が各反応槽に留まるようコントロールしながら所定量 (表 1) を送液 した。 表 1
上記の反応定常状態を 480時間維持し、 総生産量として 25. 0重量%の H A A S水 溶液を 31. 51 k g得た。 HMBNの総添加量に対する HAASのモル収率は 97. 8% であった。 比較例 1 :
実施例 1と同量の生体触媒量 ·同量の反応液量で段階的にひ—ヒドロキシ酸アンモニゥ ム塩蓄積濃度を上昇させることなく、 1段階で 25. 0重量%の《[八八3水溶液を生産さ せた場合の生産性を実施例 1の比較例として示す。
固定化生体触媒 (CAP 7) 76. 5 gを仕込んだ反応槽に 24. 7重量%の HAAS 水溶液 40 OmLで満たした。 実施例 1と同様、 CAP 7を 4. 8 gを仕込み、 25. 2 重量%の^[八八3水溶液 25mLで満たした濃度調整反応槽を設けた。 反応槽と濃度調整 反応槽には攪拌機を設置し緩やかな攪拌を行い、 反応温度は 25 °Cに設定した。 反応槽に 連続的な所定量 (表 2参照) の a—ヒドロキシ— 4ーメチルチオプチロニトリル (略称: HMBN) 添加開始により、 反応を開始させた。 反応槽間は送液ポンプにより、 反応液の
みをストレーナ一で固定化生体触媒が各反応槽に留まるようコントロールしながら所定量
(表 2) を送液した。
表 2
上記の反応定常状態を 480時間維持し、 総生産量として 25. 0重量%の HAAS水 溶液を 22. 57 k g得た。 HMBNの総添加量に対する HAASのモル収率は 98. 1 % であった。 実施例 2 :
4段階の濃度上昇により 50. 1重量%の HAA S水溶液を生産した場合の生産性を示 す実施例である。
実施例 1と同様に調製した固定化生体触媒 (CAP 7) 25. 5 g (湿重量) を 1段目 反応槽、 2段目反応槽、 3段目反応槽にそれぞれ仕込み、 濃度調整反応槽には 4. 8 gを 仕込んだ。 1段目反応槽は 32. 4重量%の HAAS水溶液 1 33mLで満たし、 2段目 反応槽は 44. 1重量%の1^八八≤水溶液 133mLで満たし、 3段目反応槽は 49. 8 重量%の11八八3水溶液 1 33mLで満たし、 濃度調整反応槽は 50. 1重量%の HAA S水溶液 25mLで満たした。 各反応槽と濃度調整反応槽には攪拌機を設置し緩やかな攪 拌を行い、反応温度は 2 5°Cに設定した。 1〜 3段目反応槽に連続的な所定量(表 3参照) の α—ヒドロキシ一 4—メチルチオプチロニトリル (略称: HMBN) 添加開始により、 反応を開始させた。 反応槽間は送液ポンプにより、 反応液のみをストレ一ナ一で固定化生 体触媒が各反応槽に留まるようコントロールしながら所定量 (表 3) を送液した。 表 3
上記の反応定常状態を 480時間維持し、 総生産量として 50. 1重量%の11八八3水 溶液を 10. 1 5 k g得た。 HMBNの総添加量に対する HAASのモル収率は 9 8. 7% であった。
比較例 2 :
実施例 2と同量の生体触媒量 ·同量の反応液量で段階的に α—ヒドロキシ酸アンモニゥ ム塩蓄積濃度を上昇させることなく、 1段階で 50. 1重量%の11八八3水溶液を生産さ せた場合の生産性を実施例 2の比較例として示す。
固定化生体触媒 (CAP 7) 76. 5 gを仕込んだ反応槽に 49. 8重量%の^[八八3 水溶液 40 OmLで満たした。 実施例 2と同様、 CAP 7を 4. 8 gを仕込み、 50. 1 重量%の?^八八3水溶液 25 mLで満たした濃度調整反応槽を設けた。 反応槽と濃度調整 反応槽には攪拌機を設置し緩やかな攪袢を行い、 反応温度は 251に設定した。 反応槽に 連続的な所定量 (表 4参照) の ーヒドロキシ— 4—メチルチオプチロニトリル (略称: HMBN) 添加開始により、 反応を開始させた。 反応槽間は送液ポンプにより、 反応液の みをストレーナ一で固定化生体触媒が各反応槽に留まるようコントロールしながら所定量
(表 4) を送液した。 表 4
上記の反応定常状態を 480時間維持し、 総生産量として 50. 1重量%の HAA S水 溶液を 5. 4 l kg得た。 HMBNの総添加量に対する HAASのモル収率は 98. 7% であった。 実施例 3 :
5段階の濃度上昇により 55. 7重量%の HAA S水溶液を生産した場合の生産性を示 す実施例である。
実施例 1と同様に調製した固定化生体触媒 (CAP 7) 19. l g (湿重量) を 1段目 反応槽、 2段目反応槽、 3段目反応槽、 4段目反応槽にそれぞれ仕込み、 濃度調整反応槽 には 4. 8 gを仕込んだ。 1段目反応槽は 33. 4重量%の HAAS水溶液 10 OmLで 満たし、 2段目反応槽は 45. 6重量%の?^八八3水溶液 10 OmLで満たし、 3段目反 応槽は 51. 2重量%の?1八八3水溶液 10 OmLで満たし、 4段目反応槽は 55. 1重 量%の HAAS水溶液 10 OmLで満たし、 濃度調整反応槽は 55. 7重量%の11八八3 水溶液 25mLで満たした。 各反応槽と濃度調整反応槽には攪拌機を設置し緩やかな攪拌 を行い、 反応温度は 25 °Cに設定した。 1〜4段目反応槽に連続的な所定量 (表 5参照) の a—ヒドロキシ一 4ーメチルチオプチロニトリル (略称: HMBN) 添加開始により、 反応を開始させた。 反応槽間は送液ポンプにより、 反応液のみをストレーナ一で固定化生 体触媒が各反応槽に留まるようコントロールしながら所定量 (表 5) を送液した。
表 5
上記の反応定常状態を 480時間維持し、 総生産量として 55. 7重量%の9: AA S水 溶液を 7. 80 k g得た。 HMBNの総添加量に対する HAASのモル収率は 98. 7 % であった。