明 細 書
薬物担体及びその製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、薬物担体として有用な水溶性ヒアルロン酸修飾物、及びその製造方法 に関する。
背景技術
[0002] 一般に、低分子薬物、ペプチド薬物、タンパク質薬物等の血中滞留性の向上、安 定性の向上、溶解性の向上、抗原性の低減等を目的として、薬物と水溶性ポリマーと のコンジユゲーシヨンが試みられている。特に、ポリエチレングリコール(PEG)は、そ の不活性な性質と生体内でのタンパク質による薬物の吸着を防ぐ効果を有すること 力も広く用いられており、 PEGコンジユゲートイ匕タンパク質は医薬品として既に実用 化の段階に入っている。しかし、 PEGは生分解性ポリマーではない為、長期投与に より体内に蓄積した場合の安全性等の問題は明らかでない。更には、最近、 PEGコ ンジュゲート化リボソームにお 、て投与 2回目のクリアランスが異常に早 、現象 (Acc erelated Blood Clearance現象、以下「ABC現象」とも称す)が報告されており( 非特許文献 1および 2を参照)、 PEGコンジユゲートイ匕医薬品の安全性、有効性は十 分に確立されたとは言、難、、。
[0003] 一方、ヒアルロン酸(以下、「HA」とも称す)は、 1934年、 K. Meyerによって牛の 眼の硝子体力も単離された多糖であり、細胞外マトリックスの主成分として古くから知 られている。ヒアルロン酸は、その化学的および物理的構造に種差が無ぐヒトにおい てもヒアルロン酸の代謝系が存在する。さらに免疫性または毒性の点に関しても最も 安全な生体材料 (Biomaterial)ということができる。近年、細胞の接着、増殖、移動 の誘導に関するヒアルロン酸の生理活性物質としての側面が報告され注目されてき ている。また、微生物による高分子量のヒアルロン酸の大量生産が可能となり、関節 疾患治療薬などの医薬として実用化されており、化粧品等の分野においても実用化 が進んでいる。さらに、薬物をヒアルロン酸とコンジュゲートすることで、薬物の癌組織 へのターゲテイング (特許文献 1を参照)、肝臓へのターゲテイング (特許文献 2を参
照)、抗原性の低減 (特許文献 3を参照)、血中滞留時間の延長 (特許文献 4、 5およ び 6を参照)等を達成できると!、う報告がなされて!/、る。
[0004] 汎用されている PEGと比べて、薬物のコンジュゲート担体としてヒアルロン酸を用い る際の利点は、生分解性を有する点、巨大サイズィ匕が可能な点、さらに、 1分子中に 多くの反応点を持っため、複数の薬物(同一薬物を複数、或いは 2種類以上の薬物) を 1分子中に担持できるということである。このような利点を有するヒアルロン酸を薬物 コンジュゲート担体として用いることは、ターゲティング、徐放等、より高度な薬物動態 制御機能を持つコンジュゲートを設計開発の手段となる。また、ヒアルロン酸は生分 解性である上に、その化学的構造に種差が無いことから、安全性という点においても PEGよりも優れた担体であると 、える。
[0005] 一方で、 HA自体の血中滞留時間は短ぐ静脈内注射(以下、「iv」とも称す)で半 減期が 2分であると報告されている (非特許文献 3を参照)。本発明者の検討でも、た だ単にヒアルロン酸を薬物にコンジュゲートしただけでは、薬物の血中滞留時間の大 きな延長や、薬効の持続性の向上は確認されなかった。
[0006] ヒアルロン酸の主代謝部位は肝臓およびリンパ腺であり、その代謝は、主に CD44 、 RHAMM、 HARE等のヒアルロン酸に特異的に結合する細胞膜局在レセプター を介した細胞内への取り込みとそれに引き続くヒアル口-ダーゼによる分解によるもの である。これらの分子は共に、ヒアルロン酸の連続した遊離のカルボキシ基 (6糖)を 主な認識部位にして 、ることが報告されて 、る (非特許文献 4を参照)。
[0007] 血中滞留時間が短いというヒアルロン酸の問題点を克服すベぐヒアルロン酸に置 換基を導入したヒアルロン酸修飾物を薬物担体として利用する試みもある (特許文献 4、 5および 6を参照)。一般に、ヒアルロン酸に置換基を導入すればその血中滞留時 間は延長され、その程度は置換基の導入率と相関すると考えられる。ヒアルロン酸の 様々な位置に置換基が導入されたヒアルロン酸修飾物が報告されている力 その中 でも、ヒアルロン酸レセプターとの結合阻害に最も効果のあるダルクロン酸のカルボキ シ基に、加水分解速度の遅 ヽアミド結合を介して置換基が導入された HA修飾物が 血中滞留時間の面力も優れていると考えられる。しかしながら、本発明者の検討では 、このようなヒアルロン酸修飾物を合成するに際し、一般的にヒアルロン酸修飾物の合
成において汎用されている方法に従って、水中での脱水縮合反応によりヒアルロン 酸に置換基を導入した場合、ヒアルロン酸のカルボキシ基の修飾率は最大でも約 70 モル0 /0程度である上、このヒアルロン酸のカルボキシ基を最大限修飾したヒアルロン 酸修飾物であっても実用的な薬物担体としては不十分なものであった。例えば、薬 物担体としては大きな分子量を有するヒアルロン酸 (分子量 60万ダルトン)を用い、そ のカルボキシ基の 73モル0 /0を修飾したヒアルロン酸修飾物であっても、ラットにおけ る平均血中滞留時間(MRT)は 16時間程度でし力なぐ実用的な薬物担体としては 不十分であった。
[0008] 一方、ヒアルロン酸をテトラブチルアンモ -ゥム塩にし、ジメチルスルホキシド中での 反応により置換基を導入することによって、ヒアルロン酸のカルボキシ基を最大 60モ ル%アミド化したヒアルロン酸修飾物が得られることも報告されて ヽる(特許文献 7を 参照)。し力しながら、当該ヒアルロン酸修飾物においては疎水性の高い置換基を導 入しているため、導入率の上昇に伴ってヒアルロン酸修飾物の水溶性は低下してお り、体内に投与することを目的とした水溶性の薬物担体としては適さない。
[0009] 上記報告以外にも、水と極性有機溶媒の混合溶媒中で、ヒアルロン酸のカルボキ シ基に置換基を導入した例が報告されている (特許文献 8を参照)。しかしながら、得 られたヒアルロン酸修飾物について、血中滞留時間の延長が見られるかどうかにに ついては一切触れられておらず、また、この発明においては置換基の導入率は 10% 以下であり、この程度の置換基の導入率では血中滞留時間の延長された実用的な 薬物担体を得ることはできな 、。
[0010] このように、薬物担体として実用的な水溶性ヒアルロン酸修飾物、特に血中滞留時 間を実用的なレベルまで延長した水溶性ヒアルロン酸修飾物は知られておらず、そ の製造方法も知られて 、な力つた。
特許文献 1:国際公開 WO92Z06714号パンフレット
特許文献 2:特開 2001— 81103号公報
特許文献 3:特開平 2-273176号公報
特許文献 4:特開平 5— 85942号公報
特許文献 5:国際公開 WO01Z05434号パンフレット
特許文献 6 :国際公開 WO01Z60412号パンフレット
特許文献 7:特表 2002— 519481号公報
特許文献 8 :国際公開 W094Z19376号パンフレット
非特許文献 l :Int. J. Pharm.第 255卷、第 167— 174頁、 2003年
非特許文献 2 :J. Control. Rel.第 88卷、第 35— 42頁、 2003年
非特許文献 3 :J. Inter. Med.第 242卷、第 27— 33頁、 1997年
非特許文献 4:Exp. Cell Res.第 228卷、第 216— 228頁、 1996年
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0011] 発明が解決しょうとする課題は、薬物担体として実用的な水溶性ヒアルロン酸修飾 物、及びその製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0012] 本発明者は、カゝかる問題点を解決する為に鋭意研究を進めたところ、水と極性有 機溶媒との混合溶媒中で、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸のカルボキ シ基にヒドラジド基を 55モル%以上導入することにより得られた水溶性ヒアルロン酸 修飾物が、従来の水溶性ヒアルロン酸修飾物では得られな 、実用的なレベルまでそ の血中滞留時間を延長できることを見出し、本発明を完成させた。
[0013] すなわち本発明の一つの側面によれば、水と極性有機溶媒との混合溶媒中で、ヒ アルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基を、反応試 薬に含まれるヒドラジド基と脱水縮合反応させる工程を含む、水溶性ヒアルロン酸修 飾物の製造方法が提供される。
[0014] 本発明のこの側面における一つの態様において、カルボキシ基とヒドラジド基との 脱水縮合反応により導入される基は、少なくとの 1以上の官能基を含んでいてもよい 。当該官能基は、例えば、置換されていてもよいヒドラジド基、置換されていてもよい アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルデヒド基、メタクリロイル基、 およびアタリロイル基力 選択され、好ましくは、置換されていてもよいヒドラジド基で ある。
[0015] 本発明のこの側面における一つの態様において、ヒアルロン酸またはその誘導体
のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基は、例えば 30%以上、好ましくは 55モ ル%以上の修飾率で反応試薬のヒドラジド基と脱水縮合反応してもよい。
[0016] 本発明の別の側面によれば、前記水溶性ヒアルロン酸修飾物力 ヒアルロニダーゼ による分解に対して耐性を有するものである、水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法 が提供される。ここで、ヒアル口-ダーゼによる分解に対して耐性を有する水溶性ヒア ルロン酸修飾物とは、例えば、当該ヒアルロン酸修飾物をその構成ユニットの二糖に まで分解でき且つ分解産物の非還元末端に Δ— 4, 5—グルクロン酸残基をもつ不飽 和二糖を生成させるヒアル口-ダーゼで分解させ、クロマトグラフィーにより分解液に 含まれる成分の 232nmにおける吸収を観察したとき、分解産物に由来する全ピーク エリアに対する二糖に由来するピークエリアの分率力 23. 4%以下、好ましくは 19. 8%以下、さらに好ましくは 18. 8%以下であるという特徴を有する。ここで、分解産物 に由来する全ピークエリアに対する二糖に由来するピークエリアの分率は、以下の式
[0017] [化 1]
—轳分率 (%) = 糖のピ—クェ' j Χ100
— 牛 ノ (分解液の全ピークエリア) - (酵素非添加時全ピークエリア) ΧΊ 00
[0018] で求めることができる。また、このようなヒアル口-ダーゼとしては、例えばヒアルロニダ ーゼ SD (生化学工業株式会社製)等を使用することができる。
[0019] 本発明の別の側面によれば、水と極性有機溶媒との混合溶媒中で、ヒアルロン酸ま たはその誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基の 30モル%以上、好ましくは 55 モル%以上にヒドラジド基を導入した、水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法が提供 される。
[0020] 本発明のさらに別の側面によれば、当該製造方法により得られた水溶性ヒアルロン 酸修飾物が提供される。
[0021] 本発明のさらに別の側面によれば、当該水溶性ヒアルロン酸修飾物を含む薬物担 体が提供される。この側面における一つの実施態様において、薬物担体は、前記水
溶性ヒアルロン酸修飾物により表面修飾された微粒子薬物担体である。
[0022] 本発明のさらに別の側面によれば、前記水溶性ヒアルロン酸修飾物を含む医薬組 成物が提供される。
[0023] 本発明のさらに別の側面によれば、前記水溶性ヒアルロン酸修飾物と薬物を含む 水溶性ヒアルロン酸修飾物 薬物コンジュゲートが提供される。
[0024] 本発明のさらに別の側面によれば、当該水溶性ヒアルロン酸修飾物で表面修飾を 施した治療用または診断用の微粒子性薬物担体または医療用デバイスもまた提供さ れる。
[0025] 本発明のさらに別の側面によれば、当該水溶性ヒアルロン酸を含む治療用あるい は診断用の微粒子薬物担体または医療用デバイスもまた提供される。
[0026] 以下、本発明を更に具体的に説明する。
[0027] 本発明に用いられるヒアルロン酸 (HA)はヒアルロン酸骨格を有して 、れば特に限 定されず、ヒアルロン酸の一部を誘導体化したヒアルロン酸誘導体や、ヒアルロン酸 及びヒアルロン酸誘導体の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム 塩、アルミニウム塩、等)なども含まれる。
[0028] 本発明に用いられるヒアルロン酸は、どのような製造方法により得られたヒアルロン 酸であってもよぐ例えば、動物組織力 抽出されたヒアルロン酸、発酵法で得られた ヒアルロン酸、化学合成で得られたヒアルロン酸など、その由来は限定されない。
[0029] 水と極性有機溶媒との混合溶媒にお!ヽて、水と極性有機溶媒との混合体積比率は 、 99/1-20/80,好ましくは 95Z5— 40Z60である。使用される極性有機溶媒 は水と上記比率で混和するものであれば特に限定されないが、例えば、 N, N—ジメ チルァセトアミド(DMAc)、エタノール (EtOH)、メタノール (MeOH)、ジメチルスル ホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン、ァセトニトリル、 酢酸ェチル、ジォキサン、アセトン、ピリジン、 1, 3 ジメチルー 2 イミダゾリジノン(D Ml)、スルホラン(SF)、 N メチルピロリドン(NMP)またはこれらの 2種以上の混合 溶媒等が挙げられる。好ましくは、 N, N—ジメチルァセトアミド (DMAc)、エタノール( EtOH)またはジメチルスルホキシド(DMSO)である。
[0030] 本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物において、置換アミド基またはエステル基に変
換されているカルボキシ基の割合は、カルボキシ基修飾率 (モル%)として以下の式:
[0031] [化 2]
(カルボキシ繊率) = (各分 中の修飾されたカルボキシ基の合計数) χ 1 0 0
' (各分子中のダルクロン酸の合計数) 1 U U
[0032] 〖こより算出される。実用的な血中滞留時間を得るため、本発明の水溶性ヒアルロン酸 修飾物のカルボキシ基修飾率は 55モル%以上であることが好ましぐ 57. 3モル% 以上であることがさらに好ましぐ 57. 9モル%以上であることがさらに好ましい。修飾 率が 100%に近づく程、 ΗΑとしての特性が実質上失われ、本発明の長所が活かさ れなくなることから、最大修飾率は 95モル%程度が好ましい。例えば当該ヒアルロン 酸修飾物の修飾率は、 55モル%— 95モル0 /0、より具体的には 58モル%—80モル %である。
[0033] ここで、カルボキシ基の修飾率は、プロトン NMRで定量することができる。具体的に は、プロトン NMRで得られるヒドラジド化(以下、「ΗΖ化」とも称す)された ΗΑ誘導体 中のヒドラジド化合物の量と、 ΗΑ由来のピークとの比較から求めることができる。例え ば、アジピン酸ジヒドラジド(以下、「ADH」とも称す)でヒドラジド基を導入したヒアルロ ン酸誘導体 (以下、「HA— HZ」とも称す)のプロトン NMRから得られるヒドラジド化合 物由来のピーク(ADH由来の 4つのメチレン、 1. 5—1. 65、 2. 1—2. 35および 2. 25-2. 5ppmの積分値:測定溶媒 D O)と、 HA由来のピーク(N-ァセチル基、 1. 8
2
一 1. 95ppm:測定溶媒 D O)の比を実測する。
2
[0034] また、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の分子量も、その体内動態に大きく影響 する。本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間は、一般にヒアルロン酸 の分子量にも依存し、分子量の大きなヒアルロン酸ほどその血中滞留時間は遅い。 従って、水溶性ヒアルロン酸修飾物の分子量およびカルボキシ基の修飾率を変化さ せることで、当該修飾物の血中滞留時間を制御することが可能である。本発明に用 V、られる原料のヒアルロン酸の分子量は特に制限されな 、が、余りに低分子量では 得られた水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間が短くなる。逆に、余りに高分子
量になると得られた水溶性ヒアルロン酸修飾物の粘度が非常に高くなり、高濃度での 投与が難しくなる。また、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間は分 子量が一定以上大きくなるとほとんど変化しなくなるので、通常、原料のヒアルロン酸 の分子量は粘度平均分子量で 5000ダルトン一 100万ダルトンであることが好ましく、
1万ダルトン一 30万ダルトンであることがより好ましぐ 8万ダルトン一 30万ダルトンで あることがさらに好ましい。尚、ヒアルロン酸重量平均分子量の測定方法については
、光散乱法、粘度法等、各種の公知の方法を利用することができる。
[0035] 本発明の製造方法により得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間は、 原料 HAの血中滞留時間に比べて延長されているものであることが好ましい。ここで、 血中滞留時間は、平均血中滞留時間(以下、「MRT」とも称す)、血中半減期(以下
、「tlZ2」とも称す)、血中クリアランス(以下、「C1」とも称す)などの公知の代表的な ノ メーターを利用して適宜比較することができる。本発明製造方法により得られる 水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間は、実用面から平均血中滞留時間(MR T)が 18時間以上のものであることが好ましぐ 20時間以上のものであることがさらに 好ましぐ 30時間以上のものがさらに好ましい。測定の対象動物はラットが好ましい。 血中滞留時間の測定方法は、例えば、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を FITC 等で蛍光ラベル化するか、あるいは、ラジオアイソトープで放射線ラベルイ匕したものを 静脈注射し、経時的に採血し、血中のラベルイ匕した水溶性ヒアルロン酸修飾物濃度 を測定する方法が挙げられる。
[0036] また、本発明の製造方法により得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物は、原料 HAに 比べてヒアル口-ダーゼによる分解に対して耐性を有するものであることが好ましい。 ここで、「ヒアル口-ダーゼによる分解に対して耐性を有する」とは、原料 HAと本発明 の水溶性ヒアルロン酸修飾物をそれぞれヒアル口-ダーゼにより酵素分解させた際に 、原料 HAよりも分解速度が遅 ヽかまたは分解が進まな ヽ性質を有することを指す。 例えば、一定時間ヒアル口-ダーゼ処理した際に、原料 HAでは観察される二糖分 解ピークが観察されなければ「分解が進まない」性質を有する(即ち、ヒアルロニダ一 ゼによる分解に対して耐性を有する)と判定することができる。なお、 HAの分解速度 や分解状態はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも称す)などの常法を用い
て観察することができる。
[0037] ヒアルロン酸またはその誘導体に含まれるグルクロン酸のカルボキシ基に導入され る基としては、当該基導入後に得られるヒアルロン酸修飾物が水溶性であれば特に 制限されな ヽ。本発明のヒアルロン酸修飾物のカルボキシ基に導入される基はどのよ うな基であってもよいが、得られたヒアルロン酸修飾物の水溶性を保持するために、 親水性の基または疎水性の低 、基であることが好ま 、。
[0038] 本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物は、特に限定はされないが、例えば lOmgZ mL— lOOOmgZmLの水に対する溶解度を有する。実際に治療を目的として投与さ れる時のヒアルロン酸修飾物の濃度は 10— 500mg/mL程度であるので、本発明の 水溶性ヒアルロン酸修飾物の溶解度は、好ましくは室温にぉ ヽて生理食塩水に対し て lOmg/mL以上である。
[0039] 本発明にお 、て、ヒアルロン酸またはその誘導体と反応させる反応試薬としては、 一分子中に 1つのヒドラジド基を有し、さらに 1以上の官能基を有する化合物を用いる ことができる。ここで、官能基は、例えば、置換されていてもよいヒドラジド基、置換さ れていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルデヒド基、メ タクリロイル基、アタリロイル基カも選択される。官能基の数は好ましくは 2つである。 好ましい反応試薬としては、例えば、 2つのヒドラジド基を有する化合物(以下、「ジヒ ドラジド化合物」とも称す);ヒドラジド基とヒドロキシ基を有する化合物;ヒドラジド基とメ ルカプト基を有する化合物;ヒドラジド基とカルボキシ基を有する化合物;ヒドラジド基 とアルデヒド基を有する化合物、ヒドラジド基とメタクリロイル基を有する化合物;または 、ヒドラジド基とアタリロイル基を有する化合物が挙げられる。さらに好ましくは、反応 試薬はジヒドラジドィ匕合物である。ここで、上記の反応試薬のヒドラジド基は、置換基 を有していてもよぐ当該置換基には例えば C Cアルキル基などが含まれる。
1 6
[0040] 特定の実施態様において、ヒアルロン酸またはその誘導体と反応させる化合物の 具体例は、分子量 1万ダルトン以下のジヒドラジド PEGや、式 (I):
[0041] [化 3]
[0042] [式中、 Ra、Rb、Rcおよび Rdは、それぞれ独立に、水素原子または C アルキル基
1-6 であり、 nは、 0— 12の整数である。 ]
で表される化合物などが挙げられる。
[0043] 本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の調製方法は、カルボキシ基を修飾するため の既知の方法を用いることができる。具体的には、 1ーェチルー 3— (3—ジメチルァミノ プロピル)カルポジイミド(以下、「EDC」とも称す)等の縮合剤で、 HAのカルボキシ 基と前記反応試薬のヒドラジド基を脱水縮合反応させることができる。また、例えば、 HAのカルボキシ基とアジピン酸ジヒドラジド(以下、「ADH」とも称す)のヒドラジド基 の 1つとを縮合させ、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物、即ちヒドラジド基を含む基 で修飾された HA (以下、「HA— HZ」とも称す)を合成することができる。ここで、ヒア ルロン酸のカルボキシ基に EDC等の縮合剤で、アジピン酸ジヒドラジド等の反応試 薬を縮合させることによりヒアルロン酸を修飾する際に、縮合剤のヒアルロン酸に対す る添加量、反応試薬の添加量、および反応溶液中ヒアルロン酸の濃度を調節するこ とにより、ヒドラジド基を含む基の導入量を調節できる。例えば、ヒアルロン酸またはそ の誘導体に含まれるカルボキシ基に対して、 EDCなどの縮合剤は 0. 1— 5モル倍、 特に 1一 4モル倍の量を用いることができ、反応試薬が ADHなどのホモ 2官能性試 薬の場合は 20— 100モル倍、特に 20— 40モル倍の量を用いることができ、 1官能性 試薬またはへテロに官能性試薬の場合は 0. 3— 20モル倍、特に 0. 5— 5モル倍の 量を用いることができる。
[0044] 本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物には、例えば式 (Π):
[化 4]
(式中、 R、 R、 Rおよび Rは、それぞれ独立に、水素原子、 C アルキル基または C
1 2 3 4 1-6
アルキルカルボ-ル基であり、
1-6
Ra、 Rb、 Rcおよび Rdは、それぞれ独立に、水素原子または C アルキル基であり nは、 0— 12の整数である。 )
で表される繰り返し単位を分子内に少なくとも 1以上含むヒアルロン酸修飾物; 式 (III):
[0047] [化 5]
[0048] (式中、 R、 R、 R、 R、 Ra、 Rb、 Rc、 Rdおよび nは、既に定義したとおりであり、
1 2 3 4
Qは、ポリ乳酸、ポリダリコール酸、ポリ力プロラタトンまたはこれらの共重合体力 選 択されるポリマーであり、該ポリマーは末端のカルボキシ基で窒素原子と結合して ヽ る。)
で表される繰り返し単位を分子内に少なくとも 1以上含むヒアルロン酸修飾物;および 式 (IV) :
[0049] [化 6]
[0050] (式中、 R、 R、 R、 R、 Ra、 Rb、 Rc、 Rdおよび nは、既に定義したとおりであり、
1 2 3 4
Xは、 Oまたは NHであり、
R は、 C アルケニル、メルカプト C アルキルまたはカルボキシ C アルキルであ
10 1-6 1-6 1-6 る。)
で表される繰り返し単位を分子内に少なくとも 1以上含むヒアルロン酸修飾物が含ま れる。ここで、上記式(I)一 (IV)において、 Ra、 Rb、 Rcおよび Rdは水素原子である のが好ましい。
[0051] また、置換基が導入された水溶性ヒアルロン酸修飾物の電荷に関しては、導入され た置換基がカチオン性であった場合、トータルの電荷がプラス側に振れ、血中滞留 時間の短縮に繋がるため、血中滞留時間を延長する場合には修飾電荷はノ-オン 性か、ァ-オン性であることが好ましい。従って、本発明の一つの側面によれば、ヒア ルロン酸またはその誘導体と反応試薬の脱水縮合後の水溶性ヒアルロン酸修飾物に 含まれる HZ基の末端のアミノ基をアミドィ匕する工程をさらに含む、水溶性ヒアルロン 酸修飾物の製造方法が提供される。ここで、末端アミノ基のアミド化は、例えば、無水
酢酸、ラクチド等のカルボン酸誘導体、無水コハク酸、無水マレイン酸、ィタコン酸無 水物等のジカルボン酸誘導体で処理することにより行うことができ、好ましくは無水コ ハク酸が使用される。特に無水コハク酸などのジカルボン酸誘導体により処理した場 合は、末端のアミノ基をアミド化とともに分子内にカルボキシ基が導入されるため、分 子のトータル電荷がァ-オン性となり、得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物血中滞留 時間の延長に好ましい。
[0052] 本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物は、薬物担体として用いることができる。担持さ れる薬物は特に限定されず、低分子化合物、タンパク質、ペプチド等を用いることが 可能である。また、薬物を担持させるにおいては、公知の各種の方法を用いることが でき、薬物を本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物中に封入してもよぐ薬物と本発明 の水溶性ヒアルロン酸修飾物とをコンジュゲートにしてもよ!、。
[0053] 本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物と薬物とからなるコンジュゲートの調製方法は 、既知のポリマーとタンパク質のコンジュゲートで使用されている方法を用いることが できる。例えば、上述のヒドラジド基修飾されたヒアルロン酸修飾物を合成し、この一 部を N—スクシンィミジル 3— [2—ピリジルジチォ]プロピオネート (N-Succinimidyl 3-[2-pyridyldithio] propinate; SPDP)と反応させ、メルカプト基を導入した H A (HA-SH)を調製する。この際、余剰のヒドラジド基は、上述したとおり、例えば無 水コハク酸等で処理し、カルボキシ基を導入してトータル電荷をァ-オン性にした方 が好ましい。一方で、タンパク質にマレイミド基、ビニルスルホン基などのメルカプト基 と特異的に反応する官能基を導入し、これを HA— SHと反応させコンジユゲートを調 製すればよい。あるいは、上述のヒドラジド基修飾された HAを合成し、この一部を Su lfo-KMUS (同仁ィ匕学社、 PIERCE社等により販売)等のマレイミド基含有ィ匕合物と 反応させマレイミド基を導入し、余剰の HZ基は、例えば無水コハク酸等で処理する。 一方でタンパク質にシスティンを導入したり、チオール基を有するリンカ一を反応させ ておき、これを HA-マレイミドと反応させコンジュゲートを調製してもよ 、。
[0054] ここで、このコンジュゲートにおいて、コンジュゲートの生物活性を有効に保っため に、タンパク質と水溶性ヒアルロン酸修飾物主鎖間のスぺーサ一の長さを調節したり 、部位特異的なコンジュゲートとすることもできる。
[0055] また、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物は薬物とのコンジュゲート以外にも、高 分子ミセル、リボソーム、ナノ微粒子等の微粒子性薬物キャリアーにおいて、そのステ ルス化のための表面修飾に用いることもできる。ここで「表面修飾」とは他の合成高分 子、天然高分子、脂質、金属、セラミックスあるいはそれらの複合体など力 なる物質 の表面に、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物をィ匕学的に結合または物理的に吸 着させ、当該物質の最表面に本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物が存在している状 態を指す。例えば、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物と PLGA等の疎水性高分子 を結合させた化合物を含む高分子ミセルゃ、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を リン脂質に結合させたリボソーム、あるいは、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物に 疎水性分子を結合させ、疎水性相互作用で疎水性微粒子表面をコートした微粒子 等が挙げられる。
[0056] 本発明における「微粒子薬物担体」とは、疾患の治療または診断のために用いられ る微粒子状の薬物担体をいう。当該担体の粒径は特に限定はされないが、例えば 1 nm— 200 πιである。
[0057] また、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物自体を、多価官能性化合物を架橋剤に 用いてゲル化させ生理活性物質を内包した薬物担体、あるいは外科手術後の癒着 防止剤などの医療用デバイスの成分とすることもできる。本発明における「医療用デ バイス」とは、疾患の治療または診断、あるいはそれらの補助に用いられるデバイスで あれば特に限定されず、例えば人工臓器、インプラント、カテーテル、薬物内包ゲル 、薬物内包ペレットなどが含まれる。
[0058] なお、前述の薬剤 (低分子化合物、タンパク質、ペプチド)の例としては、以下のも のを挙げることができる。
[0059] 低分子化合物の例としては、例えば、制癌剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤 、アルカロイド等)、免疫抑制剤、抗炎症剤 (ステロイド剤、非ステロイド剤系抗炎症剤 、等)、抗リウマチ剤、抗菌剤( β -ラタタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、 マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、新キノロン系抗生物質、サルフ ァ剤、等)などを挙げることができる。
[0060] タンパク質、ペプチドの例としては、例えば、エリスロポエチン (ΕΡΟ)、ダラ-ュロサ
イトコ口-一刺激因子(G—CSF)、インターフェロン—α、 β、 γ、 (INF— α、 j8、 γ ) 、トロンボポェチン(TPO)、シリアリー-ユートロフイクファクター(CNTF)、チューマ ーネクローシスファクター(TNF)、チューマーネクローシスファクター結合タンパク質 (TNFbp)、インターロイキン 10 (IL— 10)、 FMS類似チロシンカイネース(Fit— 3)、 成長ホルモン (GH)、インシュリン、インシュリン類似成長因子 1 (IGF-1)、血小板 由来成長因子(PDGF)、インターロイキンー1レセプターアンタゴ-スト(IL—lra)、ブ レイン由来-ユーロトロフイクファクター(BDNF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、 幹細胞因子(SCF)、メガカリオサイト成長分ィ匕因子 (MGDF)、ォステオプロテゲリン (OPG)、レブチン、副甲状腺ホルモン (PTH)、塩基性フイブロブラスト成長因子 (b— FGF)、骨形成タンパク質 (BMP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド (ANP)、脳性ナト リウム利尿ペプチド(BNP)、 C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、グルカゴン様ぺプ チドー 1 (GLP— 1)、抗体、ダイアポディー、ミニボディー、断片化抗体等を挙げること ができる。
発明の効果
[0061] 本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を用いることで、従来の水溶性ヒアルロン酸修 飾物では得られない実用的なレベルまでその血中滞留時間を延長することが可能で ある。従って、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を担体に用い、薬物をコンジュゲ ート化することで、従来の技術では達成できなかった、実用的でかつ安全な医薬組 成物を提供することが可能である。
図面の簡単な説明
[0062] [図 1]実施例 2— 1にお!/、て得られた HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果の一例であ る。
[図 2]実施例 2— 2において得られた HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果の一例であ る。
[図 3]実施例 2— 3において得られた HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果の一例であ る。
[図 4-1]比較例 1 1で得られた HA— HZについてのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵 素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDに
よる酵素分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチ ヤートは当該酵素を含まな 、系につ 、ての分析結果を示すものである。
[図 4-2]実施例 1 6で得られた HA— HZのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性 試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素 分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは 当該酵素を含まな 、系につ ヽての分析結果を示すものである。
[図 4-3]実施例 1—5で得られた HA— HZのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性 試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素 分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは 当該酵素を含まな 、系につ ヽての分析結果を示すものである。
[図 4-4]実施例 1 4で得られた HA— HZのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性 試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素 分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは 当該酵素を含まな 、系につ ヽての分析結果を示すものである。
[図 5-1]実施例 2— 1および比較例 2— 1で得られた HA— HZについてヒアルロニダ一 ゼ SDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。
[図 5-2]実施例 2— 2および比較例 2— 2で得られた HA— HZについてヒアルロニダ一 ゼ SDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。
[図 5-3]実施例 2— 3および比較例 2— 3で得られた HA— HZについてヒアルロニダ一 ゼ SDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。
[図 5-4]未修飾のヒアルロン酸についてヒアルロニダーゼ SDに対する酵素分解性試 験の結果の一例である。
[図 6-1]比較例 4 1、 4 2および 4 3で得られた蛍光標識 HA修飾物の血中濃度の 推移を示すグラフである。
[図 6-2]比較例 4 4、 4 5および 4 6で得られた蛍光標識 HA修飾物の血中濃度の 推移を示すグラフである。
[図 6-3]比較例 4 7、 4 8および 4 9で得られた蛍光標識 HA修飾物の血中濃度の 推移を示すグラフである。
[図 7]実施例 3—1、 3—2および 3—3、ならびに比較例 4 3、 4 6および 4 9で得られ た蛍光標識 HA修飾物の血中濃度の推移を示すグラフである。
[図 8-1]実施例 4 1で得られた HA— HZのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性 試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素 分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは 当該酵素を含まな 、系につ ヽての分析結果を示すものである。
[図 8-2]比較例 5— 1で得られた HA— HZのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性 試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素 分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは 当該酵素を含まな 、系につ ヽての分析結果を示すものである。
[図 8-3]比較例 5— 2で得られた HA— HZのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性 試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素 分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは 当該酵素を含まな 、系につ ヽての分析結果を示すものである。
[図 8-4]比較例 5— 3で得られた HA— HZのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性 試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素 分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは 当該酵素を含まな 、系につ ヽての分析結果を示すものである。
[図 8-5]比較例 5— 4で得られた HA— HZのヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性 試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素 分解後の HA— HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは 当該酵素を含まな 、系につ ヽての分析結果を示すものである。
[図 8-6]未修飾のヒアル口-ダーゼ SDに対する酵素分解性試験の結果の一例である
。図中の右列のチャートはヒアル口-ダーゼ SDによる酵素分解後の HA— HZのゲル 浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系に っ 、ての分析結果を示すものである。
[図 9-1]実施例 4 2で得られた蛍光標識 HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果の一 例である。
[図 9-2]比較例 5— 5で得られた蛍光標識 HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果の一 例である。
[図 9-3]比較例 5— 6で得られた蛍光標識 HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果の一 例である。
[図 9-4]比較例 5 7で得られた蛍光標識 HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果の一 例である。
[図 9-5]比較例 5— 8で得られた蛍光標識 HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果の一 例である。
[図 10]実施例 4 2および比較例 5— 5— 5— 8で得られた蛍光標識 HA— HZの血中濃 度の推移を示すグラフである。
[図 11]実施例 4 1および比較例 5—1— 5— 4ならびに実施例 3— 2で得られた HA— H
Zの HZ導入率とそれらをヒアル口-ダーゼ SD処理したときの分解産物のうちの二糖 分率、および実施例 4 1および比較例 5— 1一 5— 4ならびに実施例 3— 2で得られた H
A— HZの HZ導入率と実施例 4 2および比較例 5— 5— 5— 8ならびに実施例 3— 2で 得られた蛍光標識 HA— HZの MRTの関係を示すグラフである。
[図 12]実施例 5—3、比較例 6—1— 6—2および EPOの血中濃度推移を示すグラフで ある。
実施例
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明する力 本発明はこれら の実施例に限定されるものではない。
〔実施例 1〕混合溶媒中でのヒアルロン酸修飾物の合成
混合溶媒でヒアルロン酸修飾物を合成する際に用いる有機溶媒および混合比率の 変化させた場合の、得られるヒアルロン酸修飾物の酵素分解性を確認するために、 以下の手順によりヒアルロン酸修飾物を合成した。なお、以下特に断らない場合は、 溶媒の混合比は容積比で表示するものである。また、ヒアルロン酸修飾物中に残存 するヒドラジド基の定量は、トリ-トロベンゼンスルホン酸 (TNBS)によるァミノ基の定 量法 (以下、「TNBS法」とも称す)により行なった。 TNBS法の具体的手順は、「学会 出版センター 生物化学実験法 12 蛋白質の化学修飾 <上> 初版」 37ページに
記載の方法 (TNBS法)に従った。ただし、既知濃度の酢酸ヒドラジド溶液を標準物 質とし、 TNBS溶液は 0. 5Mに調製し、ヒドラジド基を定量するために 500nmの吸光 度を測定した。
(実施例 1—1)
分子量 2. 5 X 104ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム (HA) (電気化学工業株式会社 製) 14. Omgを、 0. 1%濃度で蒸留水 ZEtOH = 50Z50に溶解し、 5N塩酸で pH を 4. 7-4. 8〖こ調整した。 1ーェチルー 3— (3—ジメチルァミノプロピル)カルボジイミド( EDC)とアジピン酸ジヒドラジド (ADH)を、 HAのユニット(1ユニット =繰り返し単位 である N—ァセチルダルコサミンーグルクロン酸): EDC : ADH= 1/5/40モル比に なるよう添カ卩し、 5N塩酸で pHを 4. 7-4. 8に保ちながら室温で 2時間反応させた。 大過剰量の lOOmM塩ィ匕ナトリウム溶液、 25%エタノール溶液、蒸留水に対して順 に透析 (スぺクトラポア 7、分画分子量 (MWCO) : 12k-14kダルトン)し、凍結乾燥し て標題のヒドラジド基 (HZ基)が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 11. 5mgを得た
(実施例 1 2)
混合溶媒として蒸留水 ZEtOH = 80Z20を用 V、たほかは実施例 1 1と同様の方 法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 13. 2mgを得た。
(実施例 1 3)
混合溶媒として蒸留水 ZEtOH = 95Z5を用 、たほかは実施例 1-1と同様の方法 で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 14. lmgを得た。
(実施例 1—4)
混合溶媒として蒸留水 ZDMAc = 50Z50を用 、たほかは実施例 1-1と同様の方 法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 12. 8mgを得た。
(実施例 1 5)
混合溶媒として蒸留水 ZDMAc = 80Z20を用 、たほかは実施例 1 1と同様の方 法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 13. 8mgを得た。
(実施例 1 6)
混合溶媒として蒸留水 ZDMAc = 95Z5を用 、たほかは実施例 1-1と同様の方
法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 14. Omgを得た。
(比較例 1 1)
溶媒として蒸留水のみを用いたほかは実施例 1 1と同様の方法で、ヒドラジド基が 導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 13. lmgを得た。
[0064] 実施例 1 1一 1 6、比較例 1 1で得られた HA— HZ中の HZ基導入率を ADH導 入率としてプロトン NMR法で定量した(HA:N—ァセチル基、 1. 85ppm、 HZ : AD H由来の 4つのメチレン、 1. 5、 2. 1および 2. 25ppm)。結果を表 1に示す。
[0065] [表 1]
表 1
HZ (%) 反応溶媒
ΗΛ-ΗΖ (rag) (NMR) 比較例 1 1 水 14. 0 13. 1 52 実施例 1 1 50 % Et H 14. 0 11. 5 71 実施例 1― 2 20 % EtCH 14. 0 13. 2 63 実施例 1一 3 5 % EtOH 14. 0 14. 1 51 実施例 1 ― 4 50 % DMAc 14. 0 12. 8 68 実施例 1 - 5 20 % DMAc 14. 0 13. 8 56 実施例 1 6 5 % DMAc 14. 0 14. 0 52
[0066] なお、 NMRの測定は NMR分光計として JNM— ECA500 (500MHz分光計)を使 用し、溶媒として D Oを用い、以下の条件 (パラメーター)で行なった:
2
Data points (X point) : 16384
spectral width (X sweep): 15ppm
Acquisition time (X acq time) : 1. 749禾少
Pulse delay (Relaxation delay) : 30秒
Transients (Scans): 64
温度:周囲温度
〔実施例 2〕薬物動態試験用ヒアルロン酸修飾物の合成
(実施例 2— 1) HA— HZの調製
分子量 2. 5 X 104ダルトンの HA (電気化学工業株式会社製) 84.0mgを、 0. 1% 濃度で蒸留水 ZEtOH = 50/50に溶解した。 HAのユニット: EDC: ADH = 1 :4 : 40モル比〖こなるよう添加し、 5N塩酸で pHを 4. 7-4. 8に保ちながら室温で 2時間 反応させた。大過剰量の lOOmM塩ィ匕ナトリウム溶液、 25%エタノール溶液、蒸留水 に対して順に透析 (スぺクトラポア 7、分画分子量(MWCO) : 12k-14kダルトン)し、 凍結乾燥してヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 86. 6mgを得た。得 られた HA— HZの NMR ^ベクトル測定結果を図 1に示す。
(実施例 2— 2)
分子量 2 X 105ダルトンの HA 76. Omgを用いたほかは実施例 2—1と同様の方法 で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 57. Omgを得た。得られた HA HZの NMR ^ベクトル測定結果を図 2に示す。
(実施例 2— 3)
分子量 6 X 105ダルトンの HA 76. Omgを用いたほかは実施例 2—1と同様の方法 で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 73. 6mgを得た。得られた HA HZの NMR ^ベクトル測定結果を図 3に示す。
(比較例 2 - 1)
分子量 2. 5 X 104ダルトンの HAを 1%の濃度で蒸留水に溶解したほかは実施例 2 —1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。
(比較例 2— 2)
分子量 2 X 105ダルトンの HAを 0. 5%の濃度で蒸留水に溶解したほかは実施例 2 —1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。
(比較例 2— 3)
分子量 6 X 105ダルトンの HAを 0. 25%の濃度で蒸留水に溶解したほかは実施例 2— 1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。
[0067] 実施例 2— 1一 2— 3、比較例 2— 1一 2— 3で得られた HA— HZ中の HZ基導入率をプ 口トン NMR法で定量した(HA:N—ァセチル基、 1. 85ppm;HZ :ADH由来の 4つ のメチレン、 1. 5、 2. 1および 2. 25ppmの積分値から算出)。結果を表 2に示す。
[0068] [表 2]
表 2
原料 HZ導人率 (¾) 反応溶媒 M分子量
HA (mg) ( )
比較例 2 - 1 水 2. 5 104 Da 229. 0 56 実施例 2—1 50 % EL0H 2. 5 104 Da 86. 6 63 比較例 2— 2 水 2 X 105 Da 128. 6 120. 2 63 実施例 2 - 2 50 % EtOH 2 χ ΐα5 Da 76. 0 57. 0 67 比較例 2—3 水 6 x 105 Da 119. 7 111. 2 61 実施例 2 - 3 50 % EtOH 6 x 105 Da 76. 0 73. 6 66
[0069] 〔実施例 3〕薬物動態試験用の蛍光標識 HA— HZの合成
(実施例 3—1)
実施例 2— 1で得られた HA— HZ (38. 9mg)を、 2mgZmL濃度で 50mM炭酸緩 衝液 (pH9. 0)に溶解した。 HAのユニット(1ユニット =繰り返し単位である N—ァセ チルダルコサミンーグルクロン酸)に対して 0. 15 "モ- ル倍のフルォレセインイソチォシァ ネート(以下、 FITCとも称す)を HA— HZ溶液の 1Z10容量のジメチルスルホキシド( 以下、 DMSOとも称す)溶液としてカ卩えて室温で 1時間撹拌した。脱塩カラム PD— 10 (アマシャムバイオサイエンス株式会社製)で未反応の FITCを除去した後、 HAのュ ニットに対して 40モル倍の無水コハク酸を PD-10で粗精製した溶液の 1Z10容量 の DMSO溶液として加えた。室温で 1時間撹拌して反応させた後、大過剰量の水に 対して透析して精製し、凍結乾燥して実施例 2— 1の HA— HZを FITC標識した蛍光 標識 HA - HZ (実施例 3— 1 : 38. Omg)を得た。
(実施例 3— 2)
実施例 2— 2で得られた HA— HZ 40. 9mgを用いたほかは実施例 3—1と同様の方 法で、実施例 2— 2の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (実施例 3— 2: 40 . 2mg)を得た。
(実施例 3— 3)
実施例 2— 3で得られた HA— HZ 41. lmgを用いたほかは実施例 3—1と同様の方 法で、実施例 2— 3の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (実施例 3— 3: 42 . 5mg)を得た。
[0070] 実施例 3— 1一 3— 3で得られた各蛍光標識 HA— HZを 0. 25mgZmL濃度で 50m M炭酸緩衝液 (pH9. 0)に溶解し、その溶液の 494nmにおける吸光度カゝら FITC濃
度を定量し、以下の式に従って各ユニットの濃度を算出した。さらに、モル分率への 変換、 HA修飾物中の HA由来の重量分率算出を行った。
未修飾 HAユニット: X nmol/mL
HA- SUCユニット: y nmol/mL (残存 HZが無水コハク酸処理されたユニット) 式 1: (379.3 X X) + (635.57 X y) + (924.88 X (FITC cone.)) = 250 mg 式 2 : X / (y + (FITC cone.)) = (100— HZ (%))/HZ (%)
得られた結果を表 3に示す。
[0071] [表 3] 表 3. 薬物動態試験用 F T T C標識 H A— H Z
残存 HA-FITC HA-SUC 未修飾 HA
HZ (%) HZ ( ) ュ ッ ト ュニツ ト ュニッ ト HA
HA- HZ 匿 TNBS (モル %) (モノレ ) (モル%) (重量ぬ 実施例 3-1 63 - 1. 5 62 37 71. 4 実施例 3- 2 67 - 1. 2 66 33 69. 8 実施例 3- 3 66 1. 5 65 34 70. 2
-:定量限界以下
[0072] (比較例 3— 1)
分子量 2. 5 X 104ダルトンの HA (電気化学工業株式会社製)を 1. 0%濃度で蒸留 水に溶解し、 5N塩酸で pHを 4. 7-4. 8に調整した。 1ーェチルー 3— 3—ジメチルアミ ノプロピルカルボジイミド(EDC)とアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を、 HAのユニット: EDC :ADH= 1 : 0. 1 :40のモノレ it【こなるよう添カ卩し、 5N塩酸で pHを 4. 7-4. 8【こ 保ちながら室温で 2時間反応させた。大過剰量の lOOmM塩ィ匕ナトリウム溶液、 25% エタノール溶液、蒸留水に対して順に透析 (スぺクトラポア 7、分画分子量 (MWCO) : 12k— 14kダルトン)し、凍結乾燥してヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— H Z)を得た。
(比較例 3— 2)
反応に用いた HAのユニット: EDC : ADHの比を 1: 1 :40としたほかは比較例 3— 1 と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。
(比較例 3— 3)
反応に用いた HAのユニット: EDC :ADHの比を 1 : 5 :40としたほかは比較例 3—1 と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。
(比較例 3 - 4)
分子量 1. 9 X 105ダルトンの HAを 0. 5%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例 3 —1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。
(比較例 3 - 5)
分子量 1. 9 X 105ダルトンの HAを 0. 5%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例 3 —2と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。
(比較例 3— 6)
分子量 1. 9 X 105ダルトンの HAを 0. 5%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例 3 —3と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。
(比較例 3— 7)
分子量 5. 8 X 105ダルトンの HAを 0. 25%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例 3—1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。 (比較例 3— 8)
分子量 5. 8 X 105ダルトンの HAを 0. 25%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例 3—2と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。 (比較例 3— 9)
分子量 5. 8 X 105ダルトンの HAを 0. 25%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例 3—3と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を得た。 比較例 3— 1一 3— 9で得られた HA— HZ中の HZ導入率を ADH導入率としてプロト ン NMR法で定量したところ、それぞれ HAのカルボキシ基の 3% (比較例 3—1)、 42 % (比較例 3— 2)、 59% (比較例 3— 3)、 6% (比較例 3— 4)、 49% (比較例 3— 5)、 71 % (比較例 3— 6)、 8% (比較例 3— 7)、 56% (比較例 3— 8)、 73% (比較例 3— 9)に H Z基が導入されていた。
(比較例 4 1)比較例 3— 1の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZの合成 比較例 3—1で得られた HA— HZ (25. 6mg)を水に溶解させた後、等量の lOOmM 炭酸緩衝液 (ρΗ9. 0)をカ卩えて終濃度を lmg/mLに調整した。これに FITC/HA
のユニット = 3. OmolZmolの仕込比で、 HA— HZ溶液の lZlO容量の DMSOに溶 解させた FITCを添加し、室温、遮光下に 1時間反応させた。反応溶液 25mLを予め 50mM炭酸緩衝液 (pH9. 0)で平衡ィ匕した PD-10カラム(10本)に投入し、未反応 の FITCを除去した。 TNBS法で、 HZ基の残存量を確認した後、精製した溶液に無 水コハク酸 ZHZ = 250molZmolの仕込比で、 3. 5mLの DMSOに溶解させた無 水コハク酸を添加し同様に反応させた。反応混合物を大過剰量の水に対して透析精 製し、凍結乾燥して比較例 3 - 1の HA - HZを FITC標識した蛍光標識 HA - HZ (比 較例 4 1 ; 18. 3mg)を得た。
(比較例 4 - 2)比較例 3 - 2の HA - HZを FITC標識した蛍光標識 HA - HZの合成 比較例 3—2で得られた HA— HZ 24. Omgを用いたほかは比較例 4 1と同様の方 法で、比較例 3— 2の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (比較例 4 2 ; 18 . 9mg)を得た。
(比較例 4 - 3)比較例 3 - 3の HA - HZを FITC標識した蛍光標識 HA - HZの合成 比較例 3—3で得られた HA— HZ 23. 2mgを用いたほかは比較例 4 1と同様の方 法で、比較例 3— 3の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (比較例 4 3; 18 . 4mg)を得た。
(比較例 4 - 4)比較例 3 - 4の HA - HZを FITC標識した蛍光標識 HA - HZの合成 比較例 3— 4で得られた HA— HZ (25. Omg)を水に溶解させた後、等量の lOOmM 炭酸緩衝液 (ρΗ9. 0)をカ卩えて終濃度を lmg/mLに調整した。これに FITC/HA のユニット =0. 5molZmolの仕込比で、 HA— HZ溶液の lZlO容量の DMSOに溶 解させた FITCを添加し、室温、遮光下に 1時間反応させた。反応溶液 25mLを予め 50mM炭酸緩衝液 (pH9. 0)で平衡ィ匕した PD-10カラム(10本)に投入し、未反応 の FITCを除去した。 TNBS法で HZ基の残存量を確認した後、精製した溶液に無水 コハク酸 ZHZ = 80molZmolの仕込比で、 3. 5mLの DMSOに溶解させた無水コ ハク酸を添加し同様に反応させた。反応混合物を大過剰量の水に対して透析精製し 、凍結乾燥して比較例 3— 4の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (比較例 4-4 ; 19. 2mg)を得た。
(比較例 4 5)比較例 3— 5の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZの合成
比較例 3—5で得られた HA— HZ 23. 7mgを用いたほかは比較例 4 1と同様の方 法で、比較例 3— 5の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (比較例 4 5; 20 . Omg)を得た。
(比較例 4 - 6)比較例 3 - 6の HA - HZを FITC標識した蛍光標識 HA - HZの合成 比較例 3— 6で得られた HA— HZ 25. Omgを用いたほかは比較例 4 1と同様の方 法で、比較例 3— 6の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (比較例 4 6; 19 . Omg)を得た。
(比較例 4 - 7)比較例 3 - 7の HA - HZを FITC標識した蛍光標識 HA - HZの合成 比較例 3—7で得られた HA— HZ (23. 5mg)を水に溶解させた後、等量の lOOmM 炭酸緩衝液 (ρΗ9. 0)をカ卩えて終濃度を lmg/mLに調整した。これに FITC/HA unit=0. 3molZmolの仕込比で、 HA— HZ溶液の lZlO容量の DMSOに溶解 させた FITCを添カ卩し、室温、遮光下に 1時間反応させた。反応溶液 25mLを予め 50 mM炭酸緩衝液 (pH9. 0)で平衡ィ匕した PD— 10カラム(10本)に投入し、未反応の FITCを除去した。 TNBS法で、 HZ基の残存量を確認した後、精製した溶液に無水 コハク酸 ZHZ=40molZmolの仕込比で、 3. 5mLの DMSOに溶解させた無水コ ノ、ク酸を添加し同様に反応させた。反応混合物を大過剰量の水に対して透析精製し 、凍結乾燥して比較例 3— 4の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (比較例 4-7 ; 20. 7mg)を得た。
(比較例 4 - 8)比較例 3 - 8の HA - HZを FITC標識した蛍光標識 HA - HZの合成 比較例 3— 8で得られた HA— HZ 25. Omgを用いたほかは比較例 4 1と同様の方 法で、比較例 3— 8の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (比較例 4 8; 22 . 6mg)を得た。
(比較例 4 - 9)比較例 3 - 9の HA - HZを FITC標識した蛍光標識 HA - HZの合成 比較例 3—9で得られた HA— HZ 25. 3mgを用いたほかは比較例 4 1と同様の方 法で、比較例 3— 9の HA— HZを FITC標識した蛍光標識 HA— HZ (比較例 4 9; 19 . 2mg)を得た。
比較例 4 1一 4 9で得られた各蛍光標識 HA— HZを 0. 25mgZmL濃度で 50m M炭酸緩衝液 (pH9. 0)に溶解し、以下、実施例 3と同様に分析、評価した。得られ
た結果を表 4に示す。
[0075] [表 4] 表 4.薬物動態試験用 F I TC†Ig¾HA-HZ
残存 HA-FITC HA-SUC 未修飾 HA
HZ (%) H7 (%) ュニット ュニット ュニッ ト HA
HA- HZ 匪 腿 (モル %) (モル %) (モル %) (重量 ) 比較例 4-1 3 - 1.06 1.94 97.00 99.75 比較例 4- 4 6 1.35 4.65 94.00 98.24 比較例 4- 7 8 1.48 6.52 92.00 97.15 比較例 42 42 1.36 40.64 58.00 79.30 比較例 4-5 49 - 1.50 47.50 51.00 76.57 比較例 4-8 56 1.77 54.23 44.00 74.14 比較例 4- 3 59 - 1.22 57.78 41.00 72.56 比較例 4-6 71 - 1.25 69.75 29.00 68.55 比較例 4-9 73 1.09 71.91 27.00 67.80
-:定量限界以下
[0076] 〔試験例 1〕混合溶媒中で調製した HA— HZの酵素分解性評価
実施例 1 4、 1—5および 1—6、ならびに比較例 1—1で得られた HA— HZを 0.5mg /mL濃度に 0. 1Mリン酸緩衝液 (pH6.2)に溶解した。この溶液 80 Lにヒアル口- ダーゼ SD (生化学工業株式会社製) 0.5U/mL溶液 32 μ Lをカ卩えて 37°Cで 24時 間インキュベートした。対象として酵素非添加群も同様に行った。それぞれゲル浸透 クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも称す)に供して HA— HZの分子量の変化、分解 産物の生成パターンを観察した。
[0077] 酵素分解産物の GPCプロファイルを図 4 1一図 4 4に示す。
[0078] DMAc混合率が増大するにつれて分解産物の低分子化は著しく抑制された。この 傾向は EtOHを混合させた場合にも観察された。ヒアル口-ダーゼ SDは最終産物と して不飽和二糖を生成することが知られているため、基質の認識は未修飾な連続す る 4糖であると考えられる。従って、有機溶媒の混合により連続する未修飾連鎖が減 少するものと考えられた。
〔試験例 2〕混合溶媒中で調製した HA - HZの酵素分解性評価 (その 2)
実施例 2— 1一 2-3、比較例 2— 1一 2— 3で得られた HA— HZをそれぞれ試験例 1— 2)と同様にヒアル口-ダーゼ SDによる分解性を評価した。
[0079] 酵素分解産物の GPCプロファイルを図 5— 1一図 5— 3に示す。
[0080] それぞれ反応溶媒が異なるだけのほぼ同等の HZ基修飾率を有する HA— HZであ る力 混合溶媒(50%EtOH)を反応溶媒とした HA-HZ (実施例 2-1— 2— 3)は、 酵素分解による分子量の低下が著しく抑制されたことが示された。
〔試験例 3〕血中滞留時間評価
HA投与ラット血漿サンプル
実施例 3— 1一 3— 3の蛍光標識 HA修飾物、比較例 4 1一 4 9の蛍光標識 HA修 飾物を lOmgZkgの用量でラット静脈内に単回投与し、投与前および投与後 0. 25 、 1、 2、 4、 6、 8、 10、 12、 24、 30、 54時間(30、 54時間は実施例 3—1— 3— 3の蛍 光標識 HA修飾物のみ)に採血 (へパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この 血漿サンプルは測定まで 20°C以下で凍結保存した。
[0081] 沏 I 法
GPCにより検量線用標準試料および測定用試料の分析を行う。以下に条件を示す [0082] GPC Column: TSKgel G6000PW
XL
Mobile phase : PBS (pH7.4)
Elution mode: Isocratic
Flow rate : 0.5 mL/min
Injection volume: 40 uL
Detection: Fluorescence (EX: 490, EM: 518)
測定試料の調製
•検量線用試料;
各蛍光標識 HA修飾物を PBS (pH7. 4)を用いて希釈し、 1、 5、 10、 50、 100、 50 0 μ gZmLおよび 0 μ g/mL (対照、 PBS (pH7. 4) )の標準液を調製した。この標 準液に等容量の正常ラット血漿を添加し検量線用試料を調製した。
•測定用試料の調製;
HA修飾物投与ラット血漿サンプルに等容量の PBS (pH7. 4)を添加して測定用 試料を調製した。
•血漿中の HA修飾物濃度の算出;
解析ソフト Milleniumを用いてピーク面積を算出した。各標準試料のピーク面積か ら得られた検量線より血漿中の HA修飾物濃度を算出した。
[0083] 薬物動餱データ
実施例 3— 1一 3— 3の蛍光標識 HA修飾物、比較例 4 1一 4 9の蛍光標識 HA修 飾物の血中濃度推移のデータについて、 WinNonlin Ver 3. 3 (Pharsight社)で 薬物動態学的パラメーターを算出した。各個体の最終測定点 3点のデータを用いて モデル非依存的解析を行い、半減期 (tlZ2)、平均血中滞留時間 (MRT)を算出し た。比較例 4 1一 4 9の蛍光標識 HA修飾物の血中濃度推移を図 6— 1一図 6— 3に 示し、算出した薬物動態学的パラメーターを表 5に示す。
[0084] [表 5] 表 5 F I T C標識化 HA誘導体の薬物動態学的パラメーター
[0085] 蛍光標識 HA修飾物を用いた薬物動態試験により、混合溶媒中で合成した本発明 HA修飾物(実施例 3-1— 3— 3)は、水中で合成した HA修飾物のうち、各分子量で 最も血中滞留時間の長カゝつた HA修飾物(比較例 4 3、 4 6、 4 9)と比較して、ラッ ト単回静脈内投与後の血中滞留時間が改善されることが確認された。水中で合成し た HA修飾物の中で血中半減期(tlZ2)が 2. 40±0. 55 (時間)と最も短力つた分 子量 25KDaの HA修飾物は、混合溶媒中で合成することで血中半減期が 25. 2± 2 . 0 (時間)となり、 10倍以上の血中滞留期間の延長効果が認められた。分子量 200 KDa、 600KDaの各 HA修飾物でも、混合溶媒中で合成することにより、 3— 5倍に 血中半減期が延長された。水中で合成した HA修飾物では、 HAの分子量に応じて 血中滞留期間が延長しており、比較例 4 9 (600KDa)の血中半減期は、比較例 4 3 (25KDa)の血中半減期の 4. 7倍となっていた。混合溶媒中で合成した H A修飾
物でも、 HAの分子量に応じた血中滞留期間の延長効果が認められ、実施例 3— 3 (6 OOKDa)の血中半減期は、実施例 3— l (25KDa)の血中半減期の 1. 4倍となってい た。平均血中滞留時間(MRT)および血中クリアランス(C1)についても同様の傾向 が見られた。
[実施例 4]薬物動態試験用ヒアルロン酸修飾物の合成 (修飾率依存性)
(実施例 4 1) HA— HZの調製
分子量 2. O X 105ダルトンの HA (電気化学工業株式会社製) 145.0mgを用い、 H Aのユニット: EDC: ADH = 1 : 1 : 40モル比になるよう添カ卩したほかは実施例 2—1と 同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 102. 9mgを得た。 HA-HZ中の HZ基導入率をプロトン NMR法で定量した(HA: N—ァセチル基、 1. 95ppm;HZ :ADH由来の 4つのメチレン、 1. 65、 2. 35および 2. 50ppmの積分値 から算出)。 HZ導入率は 55モル%だつた。
(実施例 4 - 2)蛍光標識 HA - HZの調製
実施例 4— 1で得られた HA— HZ (34. 6mg)を蒸留水で 20. OmgZmLに溶解し、 これに 0. 25M炭酸緩衝液 (pH9. 0、 1. 384mL)および 5. 06mgZmLの FITC の DMSO溶液(346 L)をカ卩えて遮光下、室温で 1時間、穏やかに震盪した。 193 . 22mgZmLの無水コハク酸の DMSO溶液(346 /z L)をカ卩えて同様に 1時間震盪 した後、大過剰量の PBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさら に透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識 HA— HZ (35. 79mg)を得 た。
[比較例 5]
(比較例 5 - 1) HA - HZの調製
分子量 2. O X 105ダルトンの HA (電気化学工業株式会社製) 145. Omgを、用い、 HAのユニット: EDC: ADH = 1 : 0. 15 : 40モル比になるよう添カ卩したほかは実施例 2—1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 107. 7mgを 得た。 HA— HZ中の HZ基導入率をプロトン NMR法で定量した(HA:N—ァセチル 基、 1. 95ppm;HZ :ADH由来の 4つのメチレン、 1. 65、 2. 35および 2. 50ppmの 積分値から算出)。 HZ導入率は 20モル%だつた。
(比較例 5— 2) HA— HZの調製
分子量 2. O X 105ダルトンの HA (電気化学工業株式会社製) 145.0mgを用い、 H Aのユニット: EDC: ADH= 1 : 0. 25 :40モル比になるよう添カ卩したほかは実施例 2— 1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 109. 6mgを得 た。 HA— HZ中の HZ基導入率をプロトン NMR法で定量した(HA:N—ァセチル基、 1. 95ppm;HZ :ADH由来の 4つのメチレン、 1. 65、 2. 35および 2. 50ppmの積 分値力も算出)。 HZ導入率は 30モル%だつた。
(比較例 5— 3) HA— HZの調製
分子量 2. O X 105ダルトンの HA (電気化学工業株式会社製) 145.0mgを用い、 H Aのユニット: EDC: ADH= 1 : 0. 3 :40モル比になるよう添カ卩したほかは実施例 2—1 と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 60. 4mgを得た 。 HA— HZ中の HZ基導入率をプロトン NMR法で定量した(HA:N—ァセチル基、 1 . 95ppm;HZ :ADH由来の 4つのメチレン、 1. 65、 2. 35および 2. 50ppmの積分 値力も算出)。 HZ導入率は 34モル%だつた。
(比較例 5 - 4) HA - HZの調製
分子量 2. O X 105ダルトンの HA (電気化学工業株式会社製) 145.0mgを用い、 H Aのユニット: EDC: ADH= 1 : 0. 5 :40モル比になるよう添カ卩したほかは実施例 2—1 と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ) 105. Omgを得た 。 HA— HZ中の HZ基導入率をプロトン NMR法で定量した(HA:N—ァセチル基、 1 . 95ppm;HZ :ADH由来の 4つのメチレン、 1. 65、 2. 35および 2. 50ppmの積分 値力も算出)。 HZ導入率は 46モル%だつた。
(比較例 5 - 5)蛍光標識 HA - HZの調製
比較例 5—1で得られた HA— HZ (33. 8mg)を蒸留水で 20. OmgZmLに溶解し、 これに 0. 25M炭酸緩衝液 (pH9. 0、 1. 352mL)および 5. 06mgZmLの FITCの DMSO溶液(338 /z L)をカ卩えて遮光下、室温で 1時間、穏やかに震盪した。 193. 2 2 mgZmLの無水コハク酸の DMSO溶液(338 /z L)をカ卩えて同様に 1時間震盪し た後、大過剰量の PBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさら〖こ 透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識 HA— HZ (32. 58mg)を得た
(比較例 5— 6)蛍光標識 HA— HZの調製
比較例 5—2で得られた HA— HZ (33. 9mg)を蒸留水で 20. OmgZmLに溶解し、 これに 0. 25M炭酸緩衝液 (pH9. 0、 1. 356mL)および 5. 06mgZmLの FITCの DMSO溶液(339 /z L)をカ卩えて遮光下、室温で 1時間、穏やかに震盪した。 193. 2 2mgZmLの無水コハク酸の DMSO溶液(339 L)をカ卩えて同様に 1時間震盪した 後、大過剰量の PBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさらに透 析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識 HA— HZ (33. 63mg)を得た。 (比較例 5— 7)蛍光標識 HA— HZの調製
比較例 5—3で得られた HA— HZ (33. 6mg)を蒸留水で 20. OmgZmLに溶解し、 これに 0. 25M炭酸緩衝液 (pH9. 0、 1. 344mL)および 5. 06mg/mLの FITCの DMSO溶液(336 /z L)をカ卩えて遮光下、室温で 1時間、穏やかに震盪した。 193. 2 2 mgZmLの無水コハク酸の DMSO溶液(336 /z L)をカ卩えて同様に 1時間震盪し た後、大過剰量の PBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさら〖こ 透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識 HA— HZ (32. 65mg)を得た
(比較例 5— 8)蛍光標識 HA— HZの調製
比較例 5— 4で得られた HA— HZ (34. 9mg)を蒸留水で 20. OmgZmLに溶解し、 これに 0. 25M炭酸緩衝液 (pH9. 0、 1. 396mL)および 5. 06mgZmLの FITCの DMSO溶液(349 /z L)を加えて遮光下、室温で 1時間、穏やかに震盪した。 193. 2 2 mgZmLの無水コハク酸の DMSO溶液(349 /z L)を加えて同様に 1時間震盪し た後、大過剰量の PBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさら〖こ 透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識 HA— HZ (35. 48mg)を得た
〔試験例 4〕酵素分解性評価
実施例 4 1、比較例 5—1— 5— 4、およびヒアルロン酸ナトリウムを HAユニット換算 4 . 98mM (ヒアルロン酸ナトリウム 2. OmgZmL相当)に蒸留水に溶解した。この溶 液 こ蒸留水 および 0. 2Mリン酸緩衝液(pH6. 2) 132 Lを加えた。こ
の溶液にヒアル口-ダーゼ SD (生化学工業株式会社製) 1. OUZmL溶液 44 Lを 加えて 37°Cで 24時間インキュベートした。対照として酵素非添加群も同様に行った 。それぞれ GPCに供して HA— HZの分子量の変化、分解産物の生成パターンを観 察した。さらに、 GPCプロファイルは分解産物が強い吸収を持つことが知られている 2 32nmで観察し、分解産物のうちの二糖分率として溶媒由来のピークを除いた範囲 で 100 X (二糖のピークエリア) Z (全ピークエリア 酵素非添力卩時全ピークエリア )(%) を算出した。
[0086] GPCプロファイルを図 8—1—図 8—6に示す。
〔試験例 5〕蛍光標識 HA - HZの分析
実施例 4 2および比較例 5— 5— 5— 8で得られた各蛍光標識 HA— HZを 0. 05M 炭酸緩衝液 (PH9. 0)で 0. 2mgZmLに溶解した。この溶液の 494nmにおける吸 光度から FITC濃度を定量した。
[0087] 実施例 4 2および比較例 5— 5— 5— 8で得られた各蛍光標識 HA— HZを重水で約 3. 5mgZmLに溶解し、プロトン NMRを測定した。得られたスペクトルにおける N— ァセチルダルコサミンのメチルプロトン(1. 85ppm付近)、 ADHのメチレンプロトン(1 . 55および 2. 25ppm付近)およびコハク酸アミドのメチレンプロトン(2. 4ppm付近) のシグナル強度比カゝら HZ導入率、コハク酸導入率および残存 HZ率を算出した。さ らに、以下の式に従って FITC導入率および HA由来の重量分率算出を行った。
[0088] 未修飾 H Aュ-ット: X (nmol/mL)
HA— SUCユニット: y(nmolZmL)
残存 11八ー112ュニット:& 7 (nmol/mL) [ここで、 a=残存 HZ (%)、 b = (100 HZ導入率 )(%)である]
式 3 : (379. 3 X x) + (635. 57 Xy) + (535. 5 X (残存 HA— HZユニット濃度)) + (924. 88 X (FITC濃度) ) = 200. 0 g
式 4 : x/ (y+ (残存 HA-HZユニット濃度) + (FITC濃度)) = (100-(HZ導入率 ) ) , (HZ導入率)
得られた NMR ^ベクトルを図 9 1一図 9 5に、計算結果を表 6に示す。
[0089] [表 6]
表 6 . 薬物動態 用蛍光標識 HA— H Z (修飾率依存性)
[0090] 〔試験例 6〕蛍光標識 ΗΑ— ΗΖの血中滞留時間評価
ΗΑ投与ラッ rfn.瓛サンプル
実施例 4 2の蛍光標識 HA— HZ、比較例 5—5— 5—8の蛍光標識 HA— HZを 10m gZkgの用量でラット静脈内に単回投与し、投与前および投与後 5分、 30分、 1時間 、 2時間、 4時間、 8時間、 24時間、 48時間、 72時間、 96時間、および 1週間経過時 に採血 (へパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この血漿サンプルは測定まで —20°C以下に設定された冷凍庫で凍結保存した。
[0091] 測定方法:以下に示すプレートリーダーにより検量線用標準試料および測定用試 料の分析を行った。
[0092] SPECTRA MAX GEMINI (Molecular Devices)
Detection: Fluorescence (EX :485、 EM : 538)
測定試料の調製:
'検量線用試料:各蛍光標識 HA— HZを PBS (pH7. 4)を用いて稀釈し、 1, 5, 10, 50, 100, 500
4))の標準液を調製す る。この標準液に等用量の正常ラット血漿を添加し検量線用試料を調製した。
•測定用試料の調製:蛍光標識 HA— HZ投与ラット血漿サンプルに等用量の PBS (p H7. 4)を添加して測定用試料を調製した。
•血漿中の蛍光標識 HA— HZ濃度の算出:解析ソフト SOFT max PRO version 3. 1. 1 (Molecular Devices)を用いて各標準試料の蛍光強度から得られた検量 線より血漿中の HA修飾物濃度を算出した。
[0093] 薬物動餱データ
実施例 4 - 2の蛍光標識 HA - HZ、比較例 5 - 5— 5 - 8の蛍光標識 HA - HZの血中 濃度推移のデータについて、 WinNonlin Ver3. 3(Pharsigh社)でモデル非依存 的解析を行い、薬物動態学的パラメーター (半減期 tlZ2)、平均血中滞留時間 (MR T))を算出した。但し、血漿中濃度推移で明らかに Cmaxが観察される個体は投与ミ スと判断し、データからはずした。また、それ以外の個体で投与 5分の血漿中濃度に 関してスミルノフの棄却検定を行い有意 (P = 0. 05)に低い個体も投与ミスと判断し、 データからはずした。
[0094] 実施例 4 2および比較例 5— 5— 5— 8の血中濃度推移を図 10に示した。算出した 薬物動態パラメータ一は、実施例 3— 2から算出した値も含めて表 7にまとめた。
[0095] [表 7] 表 7 . 蛍光標識 HA H Zの薬物動態学的パラメーター
MW HZ CI MRT t1 /2
(kDa) (%: NMR) (mL/h/kg) (h) (h)
比較例 5— 5 1 5.20 2.25 1.65
比較例 5— 6 1 2.78 3.26 2.32
比較例 5— 7 1 2.20 2.39 1.47
比較例 5— 8 0 1 1 .67 3.66 2.54
実施例 4— 2 0 3.77 10.26 7.63
実施例 3— 2 0 1.04 50.20 35.60
[0096] さらに、ここで得られた値と実施例 3— 2を用いて得られた値をまとめて、 HZ導入率 と MRTの関係、および蛍光標識前の HA— HZをヒアル口-ダーゼ SDで処理したとき の分解産物のうちの二糖分率と HZ導入率の関係を図 11に示す。さらに、図 11には 比較例 2— 2で得られた HA— HZをヒアル口-ダーゼ SD処理したときの分解産物のう ちの二糖分率と HZ導入率の関係を示す。
[0097] 蛍光標識 HA— HZを用いた薬物動態試験とヒアル口-ダーゼ SDを用いた酵素分 解性評価より、血中滞留性が改善された本発明 HA修飾物はヒアル口-ダーゼ SD処 理による分解産物のうち二糖の分率が低い傾向が見られた。
[0098] 図 11において、ヒアルロン酸修飾物が実用面から好ましい 18時間以上の MRTで あるにはヒアル口-ダーゼ SD処理による分解産物のうち二糖の分率が 19. 8%以下
であり、さらに好ましい MRT20時間以上であるには同じく 18. 8%以下であることが 示された。このことより、本発明 HA修飾物はヒアル口-ダーゼ SD処理による分解産 物のうちで二糖分率が 19. 8%以下であることをひとつの特徴とするものである。
[実施例 5]エリスロポエチン(EPO) ヒアルロン酸修飾物コンジュゲートの合成 (実施例 5— 1) HA— PDPZSUCの調製
実施例 2— 1と同様の方法で得られた HA— HZの 5mgZmL水溶液(900 /z L)に、 5. 71mgZmLの Sulfo— LC—SPDPの DMSO溶液(45 μ L)を加えた(SPDPZH Z = 0. 08 (mol/mol) ) o室温下に 1時間撹拌して反応させた後、 350 Lを分取し 、 PD— 10で水に溶媒置換し凍結乾燥して HA— PDPを得た。残る反応溶液に 0. 2 M炭酸ナトリウム溶液 (pH9. 0)および水をカ卩えて 0. 1M炭酸ナトリウム溶液 (pH9. 0、 4. 75mL)に調整した。これに 76. 6mgZmLのコハク酸無水物の DMSO溶液( 250 μ L)を加えて(コハク酸 ΖΗΖ = 50 (mol/mol) )室温下に更に 2時間撹拌し、 HA— PDPZSUC溶液を得た。この溶液は 4°Cで保存した。
[0099] 途中で分取回収した HA— PDPについて lOOmMリン酸ナトリウム溶液(pH8. 0)で 1. Omg/rn 【こ溶解した。この溶液 1. Om 【こ、 48. Omg/mL( DTT(250 μ L) をカロえて室温下に 30分間撹拌して側鎖のジスルフイド結合を還元した。 343nmにお ける吸光度力も遊離したピリジン 2—チオン (pyridin— 2— thione)を定量した。この 定量値カゝら HA— HZへのチオール導入率を算出した結果、 SH導入率は 2. 5モル% であった。
(実施例 5— 2) EPO マレイミド(EPO—MAL)の調製
エリスロポエチン (EPO)原体(中外製薬株式会社製) 7. 6mL (EP07. 752mg)に 、 1. 06mg/mLの Sulfo— KMUSの DMSO溶液(380 /z L)をカ卩え(KMUS/EP 0 = 2 (m0lZmol) )、室温下に 30分間撹拌した。 PD— 10で低分子量成分を除去す ると共に pH6. 5の PBに溶媒置換した。得られた試料溶液およびコントロール EPO 溶液について Protein assay(BioRad)で EPO濃度を求め, TNBS法によりアミノ 基量を定量し,それぞれの比から Maleimide導入率を算出した結果、マレイミド導入 率は 1. 3個 ZEPOであった。
[0100] なお、 TNBS法の具体的手順は「学会出版センター 生物化学実験法 12 蛋白質
の化学修飾 <上> 初版」第 37頁に記載の方法に従った。
(実施例 5— 3) HA— EPOコンジュゲートの調製
実施例 5—1の HA— PDPZSUC溶液 4. OmLに、 48mgZmLの DTT溶液 2. Om Lを加え、室温下に 30分間撹拌した。 PD— 10で低分子量成分を除去し、得られた H 八ー311731;じをじ6111;1: 011—10で850 μ Lまで濃縮した。濃縮 ΗΑ— SHZSUC溶 液 0. 6mL (HA誘導体の回収率を 100%として 1. 33mg相当)に EPO— MAL溶液 を Centricon— 30で 2. 4mL (EPO換算で 2. 8mgZmL)まで濃縮した溶液 0. 7mL を加えた。室温下に 22時間穏かに震盪した後、 1. OmgZmLのェチルマレイミド溶 液(100 L)を加え、更に 2時間震盪した。精製までの間は 4°Cで保存した。反応混 合物を下記の条件による GPCに供してコンジュゲートと思われる画分を分取した。対 照として EPO—MAL非添カ卩の HA— SHZSUC溶液も同様に行って同じ画分を分 取した。分取画分をそれぞれ Centricon-50で濃縮し、 28 lnmにおける吸光度を 測定した。グルクロノラタトン(Glucuronolactone (Glclac) ) 454. 2nmolZmLを最 高値に 2倍稀釈列計 5点をスタンダードとし、コンジュゲート溶液および対照として回 収した HA— SHZSUCそれぞれにつ!/、て稀釈した後、カルバゾールー硫酸法を行 ぃゥロン酸を定量した。試料溶液の 281nmにおける吸光度の EPOに拠らない分は グルクロン酸 (GlcA)濃度すなわち HA誘導体濃度に比例すると仮定して 28 lnmに おける吸光度を補正し、 EPO濃度および GlcA濃度、 EPO濃度比力ゝらコンジュゲート 当りの EPO導入率を算出した結果、 EPO導入率は 2. 2個 ZHAであった。
精製 (GPC)条件
Instrumentation: FPLC System (Amersham Bioscience)
Column: HiLoad ID/60 ¾uperdex200 PrepGraae (丄 .6 X 60 cm) (Amersham
Bioscience)
Eluent: PBS
Flow rate: 1.0 mL/min.
Detector: UV (Abs. at 280 nm)
カルバゾールー硫酸法による定量は、以下の方法により行った。氷冷した濃度既知 の標準物質(ダルクロノラクトン)溶液あるいは試料溶液 0. 2mLに、 25mMの Na B
O - 10H O濃硫酸溶液 1. OmLを加えて撹拌した。熱水浴(90°C以上)中に約 20分
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間浸して加熱した。室温まで冷却させた後に力ルバゾールの 0. 125%EtOH溶液 4 O /z Lを加え,再度熱水浴中に 30分間浸して加熱した。室温まで冷却した後に 530η mの吸光度を測定し、標準物質で作成した検量線カゝら試料溶液中ゥロン酸を定量し た。
[比較例 6]
(比較例 6 - 1)
比較例 2— 1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を 得た。これを原料にして実施例 5と同じ方法で HA— EPOコンジュゲートを調製した。 (比較例 6— 2)
比較例 2— 2と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸 (HA— HZ)を 得た。これを原料にして実施例 5と同じ方法で HA— EPOコンジュゲートを調製した。
[実施例 6]HA— EPOコンジュゲート PK試験
実施例 5— 3、比較例 6—1および 6—2の HA— EPOコンジュゲート、ならびに EPOを 2mgZkgの用量で SDラット (ォス、投与時 12週齢)静脈内に単回投与し、投与前お よび投与後 1時間、 3時間、 6時間、 1曰、 2曰、 3曰、 6曰、 9曰、 14曰経過時に採血 ( へパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。血漿中の EPO濃度を ELISA(R&D 社)で定量した。
[0102] 試験結果を図 12に示す。本発明の HA修飾物を用いた HA— EPOコンジュゲート 実施例 5— 3は MRTで 42. 2時間を示し、比較例 6— 1 : 15. 5時間、比較例 6— 2 : 18 . 3時間に比較し、大幅に血中滞留性が延長された。
[0103] これらの結果から、 HAのカルボキシ基の修飾率を上げていけば、相対的に血中滞 留時間は延長されるが、水と極性有機溶媒との混合溶媒中で修飾した HA修飾物に おいては、水中で修飾した場合と比較して、同程度の修飾率で、極めて顕著な血中 滞留時間延長効果を示すことが確認された。この理由は次のように予想される。 HA は水中で分子内水素結合と、分子内、外の疎水性相互作用により、 2次構造、 3次構 造を形成していることが知られており(The Biology of Hyaluronan. Chiba Foundation Symposium 143, 6-14 (1989))、均一な化学修飾が難しくなつていると考えられる。こ
のため、水中で HAのカルボキシ基の多くを修飾しても、 HAレセプターに認識されう る連続した 4 6糖の未修飾ドメインが一部残存しており、ここが体内の HAレセプター に結合してしまうことで比較的短期間に血中力 クリアされてしまうと予想される。
[0104] 水と極性有機溶媒との混合溶媒中では HAの水素結合、疎水性相互作用が減弱さ れることで HAの高次構造が壊され、高次構造形成に基づくカルボキシ基周辺環境 の不均一性が解消され、より均一な化学修飾が達成されるものと考えられる。
[0105] ヒアルロン酸修飾物の酵素分解性試験に用いたヒアル口-ダーゼは基質認識性が 高ぐ HAを二糖に分解することが知られている。つまり、未修飾 4糖が最小の基質で あり、分解産物としての二糖は未修飾ユニットが連続するほど生産量が増大する。本 発明により得られるヒアルロン酸修飾物がヒアル口-ダーゼ SDに分解耐性を示すこと は、 HAレセプターに認識されうる連続した未修飾ドメインが従来の水中での反応で 得られる修飾物に比して低減して 、ることを支持して 、る。
産業上の利用可能性
[0106] 本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を用いることで、従来の水溶性ヒアルロン酸修 飾物では得られない実用的なレベルまでその血中滞留時間を延長することが可能で ある。従って、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を担体に用い、薬物をコンジュゲ ート化することで、従来の技術では達成できなかった、実用的でかつ安全な医薬組 成物を提供することが可能である。