JPWO2005054302A1 - 薬物担体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

薬物担体として実用的な水溶性ヒアルロン酸修飾物、及びその製造方法を提供する。 水と極性有機溶媒との混合溶媒中で、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸のカルボキシ基にヒドラジド基含む基を55モル%以上導入することにより得られた水溶性ヒアルロン酸修飾物は、従来の水溶性ヒアルロン酸修飾物では得られない実用的なレベルまでその血中滞留時間を延長できることを見出した。

Description

本発明は、薬物担体として有用な水溶性ヒアルロン酸修飾物、及びその製造方法に関する。
一般に、低分子薬物、ペプチド薬物、タンパク質薬物等の血中滞留性の向上、安定性の向上、溶解性の向上、抗原性の低減等を目的として、薬物と水溶性ポリマーとのコンジュゲーションが試みられている。特に、ポリエチレングリコール(PEG)は、その不活性な性質と生体内でのタンパク質による薬物の吸着を防ぐ効果を有することから広く用いられており、PEGコンジュゲート化タンパク質は医薬品として既に実用化の段階に入っている。しかし、PEGは生分解性ポリマーではない為、長期投与により体内に蓄積した場合の安全性等の問題は明らかでない。更には、最近、PEGコンジュゲート化リポソームにおいて投与2回目のクリアランスが異常に早い現象(Accerelated Blood Clearance現象、以下「ABC現象」とも称す)が報告されており(非特許文献1および2を参照)、PEGコンジュゲート化医薬品の安全性、有効性は十分に確立されたとは言い難い。
一方、ヒアルロン酸(以下、「HA」とも称す)は、1934年、K.Meyerによって牛の眼の硝子体から単離された多糖であり、細胞外マトリックスの主成分として古くから知られている。ヒアルロン酸は、その化学的および物理的構造に種差が無く、ヒトにおいてもヒアルロン酸の代謝系が存在する。さらに免疫性または毒性の点に関しても最も安全な生体材料(Biomaterial)ということができる。近年、細胞の接着、増殖、移動の誘導に関するヒアルロン酸の生理活性物質としての側面が報告され注目されてきている。また、微生物による高分子量のヒアルロン酸の大量生産が可能となり、関節疾患治療薬などの医薬として実用化されており、化粧品等の分野においても実用化が進んでいる。さらに、薬物をヒアルロン酸とコンジュゲートすることで、薬物の癌組織へのターゲティング(特許文献1を参照)、肝臓へのターゲティング(特許文献2を参照)、抗原性の低減(特許文献3を参照)、血中滞留時間の延長(特許文献4、5および6を参照)等を達成できるという報告がなされている。
汎用されているPEGと比べて、薬物のコンジュゲート担体としてヒアルロン酸を用いる際の利点は、生分解性を有する点、巨大サイズ化が可能な点、さらに、1分子中に多くの反応点を持つため、複数の薬物(同一薬物を複数、或いは2種類以上の薬物)を1分子中に担持できるということである。このような利点を有するヒアルロン酸を薬物コンジュゲート担体として用いることは、ターゲティング、徐放等、より高度な薬物動態制御機能を持つコンジュゲートを設計開発の手段となる。また、ヒアルロン酸は生分解性である上に、その化学的構造に種差が無いことから、安全性という点においてもPEGよりも優れた担体であるといえる。
一方で、HA自体の血中滞留時間は短く、静脈内注射(以下、「iv」とも称す)で半減期が2分であると報告されている(非特許文献3を参照)。本発明者の検討でも、ただ単にヒアルロン酸を薬物にコンジュゲートしただけでは、薬物の血中滞留時間の大きな延長や、薬効の持続性の向上は確認されなかった。
ヒアルロン酸の主代謝部位は肝臓およびリンパ腺であり、その代謝は、主にCD44、RHAMM、HARE等のヒアルロン酸に特異的に結合する細胞膜局在レセプターを介した細胞内への取り込みとそれに引き続くヒアルロニダーゼによる分解によるものである。これらの分子は共に、ヒアルロン酸の連続した遊離のカルボキシ基(6糖)を主な認識部位にしていることが報告されている(非特許文献4を参照)。
血中滞留時間が短いというヒアルロン酸の問題点を克服すべく、ヒアルロン酸に置換基を導入したヒアルロン酸修飾物を薬物担体として利用する試みもある(特許文献4、5および6を参照)。一般に、ヒアルロン酸に置換基を導入すればその血中滞留時間は延長され、その程度は置換基の導入率と相関すると考えられる。ヒアルロン酸の様々な位置に置換基が導入されたヒアルロン酸修飾物が報告されているが、その中でも、ヒアルロン酸レセプターとの結合阻害に最も効果のあるグルクロン酸のカルボキシ基に、加水分解速度の遅いアミド結合を介して置換基が導入されたHA修飾物が血中滞留時間の面から優れていると考えられる。しかしながら、本発明者の検討では、このようなヒアルロン酸修飾物を合成するに際し、一般的にヒアルロン酸修飾物の合成において汎用されている方法に従って、水中での脱水縮合反応によりヒアルロン酸に置換基を導入した場合、ヒアルロン酸のカルボキシ基の修飾率は最大でも約70モル%程度である上、このヒアルロン酸のカルボキシ基を最大限修飾したヒアルロン酸修飾物であっても実用的な薬物担体としては不十分なものであった。例えば、薬物担体としては大きな分子量を有するヒアルロン酸(分子量60万ダルトン)を用い、そのカルボキシ基の73モル%を修飾したヒアルロン酸修飾物であっても、ラットにおける平均血中滞留時間(MRT)は16時間程度でしかなく、実用的な薬物担体としては不十分であった。
一方、ヒアルロン酸をテトラブチルアンモニウム塩にし、ジメチルスルホキシド中での反応により置換基を導入することによって、ヒアルロン酸のカルボキシ基を最大60モル%アミド化したヒアルロン酸修飾物が得られることも報告されている(特許文献7を参照)。しかしながら、当該ヒアルロン酸修飾物においては疎水性の高い置換基を導入しているため、導入率の上昇に伴ってヒアルロン酸修飾物の水溶性は低下しており、体内に投与することを目的とした水溶性の薬物担体としては適さない。
上記報告以外にも、水と極性有機溶媒の混合溶媒中で、ヒアルロン酸のカルボキシ基に置換基を導入した例が報告されている(特許文献8を参照)。しかしながら、得られたヒアルロン酸修飾物について、血中滞留時間の延長が見られるかどうかにについては一切触れられておらず、また、この発明においては置換基の導入率は10%以下であり、この程度の置換基の導入率では血中滞留時間の延長された実用的な薬物担体を得ることはできない。
このように、薬物担体として実用的な水溶性ヒアルロン酸修飾物、特に血中滞留時間を実用的なレベルまで延長した水溶性ヒアルロン酸修飾物は知られておらず、その製造方法も知られていなかった。
国際公開WO92/06714号パンフレット 特開2001−81103号公報 特開平2−273176号公報 特開平5−85942号公報 国際公開WO01/05434号パンフレット 国際公開WO01/60412号パンフレット 特表2002−519481号公報 国際公開WO94/19376号パンフレット Int.J.Pharm.第255巻、第167−174頁、2003年 J.Control.Rel.第88巻、第35−42頁、2003年 J.Inter.Med.第242巻、第27−33頁、1997年 Exp.Cell Res.第228巻、第216−228頁、1996年
発明が解決しようとする課題は、薬物担体として実用的な水溶性ヒアルロン酸修飾物、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、かかる問題点を解決する為に鋭意研究を進めたところ、水と極性有機溶媒との混合溶媒中で、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸のカルボキシ基にヒドラジド基を55モル%以上導入することにより得られた水溶性ヒアルロン酸修飾物が、従来の水溶性ヒアルロン酸修飾物では得られない実用的なレベルまでその血中滞留時間を延長できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明の一つの側面によれば、水と極性有機溶媒との混合溶媒中で、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基を、反応試薬に含まれるヒドラジド基と脱水縮合反応させる工程を含む、水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法が提供される。
本発明のこの側面における一つの態様において、カルボキシ基とヒドラジド基との脱水縮合反応により導入される基は、少なくとの1以上の官能基を含んでいてもよい。当該官能基は、例えば、置換されていてもよいヒドラジド基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルデヒド基、メタクリロイル基、およびアクリロイル基から選択され、好ましくは、置換されていてもよいヒドラジド基である。
本発明のこの側面における一つの態様において、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基は、例えば30%以上、好ましくは55モル%以上の修飾率で反応試薬のヒドラジド基と脱水縮合反応してもよい。
本発明の別の側面によれば、前記水溶性ヒアルロン酸修飾物が、ヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有するものである、水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法が提供される。ここで、ヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有する水溶性ヒアルロン酸修飾物とは、例えば、当該ヒアルロン酸修飾物をその構成ユニットの二糖にまで分解でき且つ分解産物の非還元末端にΔ−4,5−グルクロン酸残基をもつ不飽和二糖を生成させるヒアルロニダーゼで分解させ、クロマトグラフィーにより分解液に含まれる成分の232nmにおける吸収を観察したとき、分解産物に由来する全ピークエリアに対する二糖に由来するピークエリアの分率が、23.4%以下、好ましくは19.8%以下、さらに好ましくは18.8%以下であるという特徴を有する。ここで、分解産物に由来する全ピークエリアに対する二糖に由来するピークエリアの分率は、以下の式:
Figure 2005054302
で求めることができる。また、このようなヒアルロニダーゼとしては、例えばヒアルロニダーゼSD(生化学工業株式会社製)等を使用することができる。
本発明の別の側面によれば、水と極性有機溶媒との混合溶媒中で、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸部分のカルボキシ基の30モル%以上、好ましくは55モル%以上にヒドラジド基を導入した、水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、当該製造方法により得られた水溶性ヒアルロン酸修飾物が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、当該水溶性ヒアルロン酸修飾物を含む薬物担体が提供される。この側面における一つの実施態様において、薬物担体は、前記水溶性ヒアルロン酸修飾物により表面修飾された微粒子薬物担体である。
本発明のさらに別の側面によれば、前記水溶性ヒアルロン酸修飾物を含む医薬組成物が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、前記水溶性ヒアルロン酸修飾物と薬物を含む水溶性ヒアルロン酸修飾物−薬物コンジュゲートが提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、当該水溶性ヒアルロン酸修飾物で表面修飾を施した治療用または診断用の微粒子性薬物担体または医療用デバイスもまた提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、当該水溶性ヒアルロン酸を含む治療用あるいは診断用の微粒子薬物担体または医療用デバイスもまた提供される。
以下、本発明を更に具体的に説明する。
本発明に用いられるヒアルロン酸(HA)はヒアルロン酸骨格を有していれば特に限定されず、ヒアルロン酸の一部を誘導体化したヒアルロン酸誘導体や、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸誘導体の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、等)なども含まれる。
本発明に用いられるヒアルロン酸は、どのような製造方法により得られたヒアルロン酸であってもよく、例えば、動物組織から抽出されたヒアルロン酸、発酵法で得られたヒアルロン酸、化学合成で得られたヒアルロン酸など、その由来は限定されない。
水と極性有機溶媒との混合溶媒において、水と極性有機溶媒との混合体積比率は、99/1〜20/80、好ましくは95/5〜40/60である。使用される極性有機溶媒は水と上記比率で混和するものであれば特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジオキサン、アセトン、ピリジン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、スルホラン(SF)、N−メチルピロリドン(NMP)またはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、エタノール(EtOH)またはジメチルスルホキシド(DMSO)である。
本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物において、置換アミド基またはエステル基に変換されているカルボキシ基の割合は、カルボキシ基修飾率(モル%)として以下の式:
Figure 2005054302
により算出される。実用的な血中滞留時間を得るため、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物のカルボキシ基修飾率は55モル%以上であることが好ましく、57.3モル%以上であることがさらに好ましく、57.9モル%以上であることがさらに好ましい。修飾率が100%に近づく程、HAとしての特性が実質上失われ、本発明の長所が活かされなくなることから、最大修飾率は95モル%程度が好ましい。例えば当該ヒアルロン酸修飾物の修飾率は、55モル%〜95モル%、より具体的には58モル%〜80モル%である。
ここで、カルボキシ基の修飾率は、プロトンNMRで定量することができる。具体的には、プロトンNMRで得られるヒドラジド化(以下、「HZ化」とも称す)されたHA誘導体中のヒドラジド化合物の量と、HA由来のピークとの比較から求めることができる。例えば、アジピン酸ジヒドラジド(以下、「ADH」とも称す)でヒドラジド基を導入したヒアルロン酸誘導体(以下、「HA−HZ」とも称す)のプロトンNMRから得られるヒドラジド化合物由来のピーク(ADH由来の4つのメチレン、1.5〜1.65、2.1〜2.35および2.25〜2.5ppmの積分値:測定溶媒DO)と、HA由来のピーク(N−アセチル基、1.8〜1.95ppm:測定溶媒DO)の比を実測する。
また、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の分子量も、その体内動態に大きく影響する。本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間は、一般にヒアルロン酸の分子量にも依存し、分子量の大きなヒアルロン酸ほどその血中滞留時間は遅い。従って、水溶性ヒアルロン酸修飾物の分子量およびカルボキシ基の修飾率を変化させることで、当該修飾物の血中滞留時間を制御することが可能である。本発明に用いられる原料のヒアルロン酸の分子量は特に制限されないが、余りに低分子量では得られた水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間が短くなる。逆に、余りに高分子量になると得られた水溶性ヒアルロン酸修飾物の粘度が非常に高くなり、高濃度での投与が難しくなる。また、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間は分子量が一定以上大きくなるとほとんど変化しなくなるので、通常、原料のヒアルロン酸の分子量は粘度平均分子量で5000ダルトン〜100万ダルトンであることが好ましく、1万ダルトン〜30万ダルトンであることがより好ましく、8万ダルトン〜30万ダルトンであることがさらに好ましい。尚、ヒアルロン酸重量平均分子量の測定方法については、光散乱法、粘度法等、各種の公知の方法を利用することができる。
本発明の製造方法により得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間は、原料HAの血中滞留時間に比べて延長されているものであることが好ましい。ここで、血中滞留時間は、平均血中滞留時間(以下、「MRT」とも称す)、血中半減期(以下、「t1/2」とも称す)、血中クリアランス(以下、「Cl」とも称す)などの公知の代表的なパラメーターを利用して適宜比較することができる。本発明製造方法により得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物の血中滞留時間は、実用面から平均血中滞留時間(MRT)が18時間以上のものであることが好ましく、20時間以上のものであることがさらに好ましく、30時間以上のものがさらに好ましい。測定の対象動物はラットが好ましい。血中滞留時間の測定方法は、例えば、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物をFITC等で蛍光ラベル化するか、あるいは、ラジオアイソトープで放射線ラベル化したものを静脈注射し、経時的に採血し、血中のラベル化した水溶性ヒアルロン酸修飾物濃度を測定する方法が挙げられる。
また、本発明の製造方法により得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物は、原料HAに比べてヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有するものであることが好ましい。ここで、「ヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有する」とは、原料HAと本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物をそれぞれヒアルロニダーゼにより酵素分解させた際に、原料HAよりも分解速度が遅いかまたは分解が進まない性質を有することを指す。例えば、一定時間ヒアルロニダーゼ処理した際に、原料HAでは観察される二糖分解ピークが観察されなければ「分解が進まない」性質を有する(即ち、ヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有する)と判定することができる。なお、HAの分解速度や分解状態はゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも称す)などの常法を用いて観察することができる。
ヒアルロン酸またはその誘導体に含まれるグルクロン酸のカルボキシ基に導入される基としては、当該基導入後に得られるヒアルロン酸修飾物が水溶性であれば特に制限されない。本発明のヒアルロン酸修飾物のカルボキシ基に導入される基はどのような基であってもよいが、得られたヒアルロン酸修飾物の水溶性を保持するために、親水性の基または疎水性の低い基であることが好ましい。
本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物は、特に限定はされないが、例えば10mg/mL〜1000mg/mLの水に対する溶解度を有する。実際に治療を目的として投与される時のヒアルロン酸修飾物の濃度は10〜500mg/mL程度であるので、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の溶解度は、好ましくは室温において生理食塩水に対して10mg/mL以上である。
本発明において、ヒアルロン酸またはその誘導体と反応させる反応試薬としては、一分子中に1つのヒドラジド基を有し、さらに1以上の官能基を有する化合物を用いることができる。ここで、官能基は、例えば、置換されていてもよいヒドラジド基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルデヒド基、メタクリロイル基、アクリロイル基から選択される。官能基の数は好ましくは2つである。好ましい反応試薬としては、例えば、2つのヒドラジド基を有する化合物(以下、「ジヒドラジド化合物」とも称す);ヒドラジド基とヒドロキシ基を有する化合物;ヒドラジド基とメルカプト基を有する化合物;ヒドラジド基とカルボキシ基を有する化合物;ヒドラジド基とアルデヒド基を有する化合物、ヒドラジド基とメタクリロイル基を有する化合物;または、ヒドラジド基とアクリロイル基を有する化合物が挙げられる。さらに好ましくは、反応試薬はジヒドラジド化合物である。ここで、上記の反応試薬のヒドラジド基は、置換基を有していてもよく、当該置換基には例えばC−Cアルキル基などが含まれる。
特定の実施態様において、ヒアルロン酸またはその誘導体と反応させる化合物の具体例は、分子量1万ダルトン以下のジヒドラジドPEGや、式(I):
Figure 2005054302
[式中、Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子またはC1−6アルキル基であり、nは、0〜12の整数である。]
で表される化合物などが挙げられる。
本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物の調製方法は、カルボキシ基を修飾するための既知の方法を用いることができる。具体的には、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(以下、「EDC」とも称す)等の縮合剤で、HAのカルボキシ基と前記反応試薬のヒドラジド基を脱水縮合反応させることができる。また、例えば、HAのカルボキシ基とアジピン酸ジヒドラジド(以下、「ADH」とも称す)のヒドラジド基の1つとを縮合させ、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物、即ちヒドラジド基を含む基で修飾されたHA(以下、「HA−HZ」とも称す)を合成することができる。ここで、ヒアルロン酸のカルボキシ基にEDC等の縮合剤で、アジピン酸ジヒドラジド等の反応試薬を縮合させることによりヒアルロン酸を修飾する際に、縮合剤のヒアルロン酸に対する添加量、反応試薬の添加量、および反応溶液中ヒアルロン酸の濃度を調節することにより、ヒドラジド基を含む基の導入量を調節できる。例えば、ヒアルロン酸またはその誘導体に含まれるカルボキシ基に対して、EDCなどの縮合剤は0.1〜5モル倍、特に1〜4モル倍の量を用いることができ、反応試薬がADHなどのホモ2官能性試薬の場合は20〜100モル倍、特に20〜40モル倍の量を用いることができ、1官能性試薬またはヘテロに官能性試薬の場合は0.3〜20モル倍、特に0.5〜5モル倍の量を用いることができる。
本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物には、例えば式(II):
Figure 2005054302
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル基またはC1−6アルキルカルボニル基であり、
Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子またはC1−6アルキル基であり、
nは、0〜12の整数である。)
で表される繰り返し単位を分子内に少なくとも1以上含むヒアルロン酸修飾物;
式(III):
Figure 2005054302
(式中、R、R、R、R、Ra、Rb、Rc、Rdおよびnは、既に定義したとおりであり、
Qは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトンまたはこれらの共重合体から選択されるポリマーであり、該ポリマーは末端のカルボキシ基で窒素原子と結合している。)
で表される繰り返し単位を分子内に少なくとも1以上含むヒアルロン酸修飾物;および式(IV):
Figure 2005054302
(式中、R、R、R、R、Ra、Rb、Rc、Rdおよびnは、既に定義したとおりであり、
Xは、OまたはNHであり、
10は、C1−6アルケニル、メルカプトC1−6アルキルまたはカルボキシC1−6アルキルである。)
で表される繰り返し単位を分子内に少なくとも1以上含むヒアルロン酸修飾物が含まれる。ここで、上記式(I)〜(IV)において、Ra、Rb、RcおよびRdは水素原子であるのが好ましい。
また、置換基が導入された水溶性ヒアルロン酸修飾物の電荷に関しては、導入された置換基がカチオン性であった場合、トータルの電荷がプラス側に振れ、血中滞留時間の短縮に繋がるため、血中滞留時間を延長する場合には修飾電荷はノニオン性か、アニオン性であることが好ましい。従って、本発明の一つの側面によれば、ヒアルロン酸またはその誘導体と反応試薬の脱水縮合後の水溶性ヒアルロン酸修飾物に含まれるHZ基の末端のアミノ基をアミド化する工程をさらに含む、水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法が提供される。ここで、末端アミノ基のアミド化は、例えば、無水酢酸、ラクチド等のカルボン酸誘導体、無水コハク酸、無水マレイン酸、イタコン酸無水物等のジカルボン酸誘導体で処理することにより行うことができ、好ましくは無水コハク酸が使用される。特に無水コハク酸などのジカルボン酸誘導体により処理した場合は、末端のアミノ基をアミド化とともに分子内にカルボキシ基が導入されるため、分子のトータル電荷がアニオン性となり、得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物血中滞留時間の延長に好ましい。
本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物は、薬物担体として用いることができる。担持される薬物は特に限定されず、低分子化合物、タンパク質、ペプチド等を用いることが可能である。また、薬物を担持させるにおいては、公知の各種の方法を用いることができ、薬物を本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物中に封入してもよく、薬物と本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物とをコンジュゲートにしてもよい。
本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物と薬物とからなるコンジュゲートの調製方法は、既知のポリマーとタンパク質のコンジュゲートで使用されている方法を用いることができる。例えば、上述のヒドラジド基修飾されたヒアルロン酸修飾物を合成し、この一部をN−スクシンイミジル 3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート(N−Succinimidyl 3−[2−pyridyldithio]propinate;SPDP)と反応させ、メルカプト基を導入したHA(HA−SH)を調製する。この際、余剰のヒドラジド基は、上述したとおり、例えば無水コハク酸等で処理し、カルボキシ基を導入してトータル電荷をアニオン性にした方が好ましい。一方で、タンパク質にマレイミド基、ビニルスルホン基などのメルカプト基と特異的に反応する官能基を導入し、これをHA−SHと反応させコンジュゲートを調製すればよい。あるいは、上述のヒドラジド基修飾されたHAを合成し、この一部をSulfo−KMUS(同仁化学社、PIERCE社等により販売)等のマレイミド基含有化合物と反応させマレイミド基を導入し、余剰のHZ基は、例えば無水コハク酸等で処理する。一方でタンパク質にシステインを導入したり、チオール基を有するリンカーを反応させておき、これをHA−マレイミドと反応させコンジュゲートを調製してもよい。
ここで、このコンジュゲートにおいて、コンジュゲートの生物活性を有効に保つために、タンパク質と水溶性ヒアルロン酸修飾物主鎖間のスペーサーの長さを調節したり、部位特異的なコンジュゲートとすることもできる。
また、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物は薬物とのコンジュゲート以外にも、高分子ミセル、リポソーム、ナノ微粒子等の微粒子性薬物キャリアーにおいて、そのステルス化のための表面修飾に用いることもできる。ここで「表面修飾」とは他の合成高分子、天然高分子、脂質、金属、セラミックスあるいはそれらの複合体などからなる物質の表面に、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を化学的に結合または物理的に吸着させ、当該物質の最表面に本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物が存在している状態を指す。例えば、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物とPLGA等の疎水性高分子を結合させた化合物を含む高分子ミセルや、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物をリン脂質に結合させたリポソーム、あるいは、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物に疎水性分子を結合させ、疎水性相互作用で疎水性微粒子表面をコートした微粒子等が挙げられる。
本発明における「微粒子薬物担体」とは、疾患の治療または診断のために用いられる微粒子状の薬物担体をいう。当該担体の粒径は特に限定はされないが、例えば1nm〜200μmである。
また、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物自体を、多価官能性化合物を架橋剤に用いてゲル化させ生理活性物質を内包した薬物担体、あるいは外科手術後の癒着防止剤などの医療用デバイスの成分とすることもできる。本発明における「医療用デバイス」とは、疾患の治療または診断、あるいはそれらの補助に用いられるデバイスであれば特に限定されず、例えば人工臓器、インプラント、カテーテル、薬物内包ゲル、薬物内包ペレットなどが含まれる。
なお、前述の薬剤(低分子化合物、タンパク質、ペプチド)の例としては、以下のものを挙げることができる。
低分子化合物の例としては、例えば、制癌剤(例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アルカロイド等)、免疫抑制剤、抗炎症剤(ステロイド剤、非ステロイド剤系抗炎症剤、等)、抗リウマチ剤、抗菌剤(β−ラクタム系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、マクロライド系抗生物質、テトラサイクリン系抗生物質、新キノロン系抗生物質、サルファ剤、等)などを挙げることができる。
タンパク質、ペプチドの例としては、例えば、エリスロポエチン(EPO)、グラニュロサイトコロニー刺激因子(G−CSF)、インターフェロン−α、β、γ、(INF−α、β、γ)、トロンボポエチン(TPO)、シリアリーニュートロフィクファクター(CNTF)、チューマーネクローシスファクター(TNF)、チューマーネクローシスファクター結合タンパク質(TNFbp)、インターロイキン−10(IL−10)、FMS類似チロシンカイネース(Flt−3)、成長ホルモン(GH)、インシュリン、インシュリン類似成長因子−1(IGF−1)、血小板由来成長因子(PDGF)、インターロイキン−1レセプターアンタゴニスト(IL−1ra)、ブレイン由来ニューロトロフィクファクター(BDNF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、幹細胞因子(SCF)、メガカリオサイト成長分化因子(MGDF)、オステオプロテゲリン(OPG)、レプチン、副甲状腺ホルモン(PTH)、塩基性フィブロブラスト成長因子(b−FGF)、骨形成タンパク質(BMP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、抗体、ダイアボディー、ミニボディー、断片化抗体等を挙げることができる。
本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を用いることで、従来の水溶性ヒアルロン酸修飾物では得られない実用的なレベルまでその血中滞留時間を延長することが可能である。従って、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を担体に用い、薬物をコンジュゲート化することで、従来の技術では達成できなかった、実用的でかつ安全な医薬組成物を提供することが可能である。
実施例2−1において得られたHA−HZのNMRスペクトル測定結果の一例である。 実施例2−2において得られたHA−HZのNMRスペクトル測定結果の一例である。 実施例2−3において得られたHA−HZのNMRスペクトル測定結果の一例である。 比較例1−1で得られたHA−HZについてのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 実施例1−6で得られたHA−HZのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 実施例1−5で得られたHA−HZのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 実施例1−4で得られたHA−HZのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 実施例2−1および比較例2−1で得られたHA−HZについてヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。 実施例2−2および比較例2−2で得られたHA−HZについてヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。 実施例2−3および比較例2−3で得られたHA−HZについてヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。 未修飾のヒアルロン酸についてヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。 比較例4−1、4−2および4−3で得られた蛍光標識HA修飾物の血中濃度の推移を示すグラフである。 比較例4−4、4−5および4−6で得られた蛍光標識HA修飾物の血中濃度の推移を示すグラフである。 比較例4−7、4−8および4−9で得られた蛍光標識HA修飾物の血中濃度の推移を示すグラフである。 実施例3−1、3−2および3−3、ならびに比較例4−3、4−6および4−9で得られた蛍光標識HA修飾物の血中濃度の推移を示すグラフである。 実施例4−1で得られたHA−HZのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 比較例5−1で得られたHA−HZのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 比較例5−2で得られたHA−HZのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 比較例5−3で得られたHA−HZのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 比較例5−4で得られたHA−HZのヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 未修飾のヒアルロニダーゼSDに対する酵素分解性試験の結果の一例である。図中の右列のチャートはヒアルロニダーゼSDによる酵素分解後のHA−HZのゲル浸透クロマトグラフィー分析結果を示し、左列のチャートは当該酵素を含まない系についての分析結果を示すものである。 実施例4−2で得られた蛍光標識HA−HZのNMRスペクトル測定結果の一例である。 比較例5−5で得られた蛍光標識HA−HZのNMRスペクトル測定結果の一例である。 比較例5−6で得られた蛍光標識HA−HZのNMRスペクトル測定結果の一例である。 比較例5−7で得られた蛍光標識HA−HZのNMRスペクトル測定結果の一例である。 比較例5−8で得られた蛍光標識HA−HZのNMRスペクトル測定結果の一例である。 実施例4−2および比較例5−5〜5−8で得られた蛍光標識HA−HZの血中濃度の推移を示すグラフである。 実施例4−1および比較例5−1〜5−4ならびに実施例3−2で得られたHA−HZのHZ導入率とそれらをヒアルロニダーゼSD処理したときの分解産物のうちの二糖分率、および実施例4−1および比較例5−1〜5−4ならびに実施例3−2で得られたHA−HZのHZ導入率と実施例4−2および比較例5−5〜5−8ならびに実施例3−2で得られた蛍光標識HA−HZのMRTの関係を示すグラフである。 実施例5−3、比較例6−1〜6−2およびEPOの血中濃度推移を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕混合溶媒中でのヒアルロン酸修飾物の合成
混合溶媒でヒアルロン酸修飾物を合成する際に用いる有機溶媒および混合比率の変化させた場合の、得られるヒアルロン酸修飾物の酵素分解性を確認するために、以下の手順によりヒアルロン酸修飾物を合成した。なお、以下特に断らない場合は、溶媒の混合比は容積比で表示するものである。また、ヒアルロン酸修飾物中に残存するヒドラジド基の定量は、トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基の定量法(以下、「TNBS法」とも称す)により行なった。TNBS法の具体的手順は、「学会出版センター 生物化学実験法12 蛋白質の化学修飾<上>初版」37ページに記載の方法(TNBS法)に従った。ただし、既知濃度の酢酸ヒドラジド溶液を標準物質とし、TNBS溶液は0.5Mに調製し、ヒドラジド基を定量するために500nmの吸光度を測定した。
(実施例1−1)
分子量2.5×10ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム(HA)(電気化学工業株式会社製)14.0mgを、0.1%濃度で蒸留水/EtOH=50/50に溶解し、5N塩酸でpHを4.7〜4.8に調整した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)とアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を、HAのユニット(1ユニット=繰り返し単位であるN−アセチルグルコサミン−グルクロン酸):EDC:ADH=1/5/40モル比になるよう添加し、5N塩酸でpHを4.7〜4.8に保ちながら室温で2時間反応させた。大過剰量の100mM塩化ナトリウム溶液、25%エタノール溶液、蒸留水に対して順に透析(スペクトラポア7、分画分子量(MWCO):12k−14kダルトン)し、凍結乾燥して標題のヒドラジド基(HZ基)が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)11.5mgを得た。
(実施例1−2)
混合溶媒として蒸留水/EtOH=80/20を用いたほかは実施例1−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)13.2mgを得た。
(実施例1−3)
混合溶媒として蒸留水/EtOH=95/5を用いたほかは実施例1−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)14.1mgを得た。
(実施例1−4)
混合溶媒として蒸留水/DMAc=50/50を用いたほかは実施例1−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)12.8mgを得た。
(実施例1−5)
混合溶媒として蒸留水/DMAc=80/20を用いたほかは実施例1−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)13.8mgを得た。
(実施例1−6)
混合溶媒として蒸留水/DMAc=95/5を用いたほかは実施例1−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)14.0mgを得た。
(比較例1−1)
溶媒として蒸留水のみを用いたほかは実施例1−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)13.1mgを得た。
実施例1−1〜1−6、比較例1−1で得られたHA−HZ中のHZ基導入率をADH導入率としてプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基、1.85ppm、HZ:ADH由来の4つのメチレン、1.5、2.1および2.25ppm)。結果を表1に示す。
Figure 2005054302
なお、NMRの測定はNMR分光計としてJNM−ECA500(500MHz分光計)を使用し、溶媒としてDOを用い、以下の条件(パラメーター)で行なった:
Data points(X point):16384
Spectral width(X sweep):15ppm
Acquisition time(X acq time):1.749秒
Pulse delay(Relaxation delay):30秒
Transients(Scans):64
温度:周囲温度
〔実施例2〕薬物動態試験用ヒアルロン酸修飾物の合成
(実施例2−1)HA−HZの調製
分子量2.5×10ダルトンのHA(電気化学工業株式会社製)84.0mgを、0.1%濃度で蒸留水/EtOH=50/50に溶解した。HAのユニット:EDC:ADH=1:4:40モル比になるよう添加し、5N塩酸でpHを4.7〜4.8に保ちながら室温で2時間反応させた。大過剰量の100mM塩化ナトリウム溶液、25%エタノール溶液、蒸留水に対して順に透析(スペクトラポア7、分画分子量(MWCO):12k−14kダルトン)し、凍結乾燥してヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)86.6mgを得た。得られたHA−HZのNMRスペクトル測定結果を図1に示す。
(実施例2−2)
分子量2×10ダルトンのHA 76.0mgを用いたほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)57.0mgを得た。得られたHA−HZのNMRスペクトル測定結果を図2に示す。
(実施例2−3)
分子量6×10ダルトンのHA 76.0mgを用いたほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)73.6mgを得た。得られたHA−HZのNMRスペクトル測定結果を図3に示す。
(比較例2−1)
分子量2.5×10ダルトンのHAを1%の濃度で蒸留水に溶解したほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例2−2)
分子量2×10ダルトンのHAを0.5%の濃度で蒸留水に溶解したほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例2−3)
分子量6×10ダルトンのHAを0.25%の濃度で蒸留水に溶解したほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3で得られたHA−HZ中のHZ基導入率をプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基、1.85ppm;HZ:ADH由来の4つのメチレン、1.5、2.1および2.25ppmの積分値から算出)。結果を表2に示す。
Figure 2005054302
〔実施例3〕薬物動態試験用の蛍光標識HA−HZの合成
(実施例3−1)
実施例2−1で得られたHA−HZ(38.9mg)を、2mg/mL濃度で50mM炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解した。HAのユニット(1ユニット=繰り返し単位であるN−アセチルグルコサミン−グルクロン酸)に対して0.15モル倍のフルオレセインイソチオシアネート(以下、FITCとも称す)をHA−HZ溶液の1/10容量のジメチルスルホキシド(以下、DMSOとも称す)溶液として加えて室温で1時間撹拌した。脱塩カラムPD−10(アマシャムバイオサイエンス株式会社製)で未反応のFITCを除去した後、HAのユニットに対して40モル倍の無水コハク酸をPD−10で粗精製した溶液の1/10容量のDMSO溶液として加えた。室温で1時間撹拌して反応させた後、大過剰量の水に対して透析して精製し、凍結乾燥して実施例2−1のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(実施例3−1:38.0mg)を得た。
(実施例3−2)
実施例2−2で得られたHA−HZ 40.9mgを用いたほかは実施例3−1と同様の方法で、実施例2−2のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(実施例3−2:40.2mg)を得た。
(実施例3−3)
実施例2−3で得られたHA−HZ 41.1mgを用いたほかは実施例3−1と同様の方法で、実施例2−3のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(実施例3−3:42.5mg)を得た。
実施例3−1〜3−3で得られた各蛍光標識HA−HZを0.25mg/mL濃度で50mM炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、その溶液の494nmにおける吸光度からFITC濃度を定量し、以下の式に従って各ユニットの濃度を算出した。さらに、モル分率への変換、HA修飾物中のHA由来の重量分率算出を行った。
未修飾HAユニット:x nmol/mL
HA−SUCユニット:y nmol/mL(残存HZが無水コハク酸処理されたユニット)
式1:(379.3×x)+(635.57×y)+(924.88×(FITC conc.))=250mg
式2:x/(y+(FITC conc.))=(100−HZ(%))/HZ(%)
得られた結果を表3に示す。
Figure 2005054302
(比較例3−1)
分子量2.5×10ダルトンのHA(電気化学工業株式会社製)を1.0%濃度で蒸留水に溶解し、5N塩酸でpHを4.7〜4.8に調整した。1−エチル−3−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)とアジピン酸ジヒドラジド(ADH)を、HAのユニット:EDC:ADH=1:0.1:40のモル比になるよう添加し、5N塩酸でpHを4.7〜4.8に保ちながら室温で2時間反応させた。大過剰量の100mM塩化ナトリウム溶液、25%エタノール溶液、蒸留水に対して順に透析(スペクトラポア7、分画分子量(MWCO):12k−14kダルトン)し、凍結乾燥してヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例3−2)
反応に用いたHAのユニット:EDC:ADHの比を1:1:40としたほかは比較例3−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例3−3)
反応に用いたHAのユニット:EDC:ADHの比を1:5:40としたほかは比較例3−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例3−4)
分子量1.9×10ダルトンのHAを0.5%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例3−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例3−5)
分子量1.9×10ダルトンのHAを0.5%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例3−2と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例3−6)
分子量1.9×10ダルトンのHAを0.5%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例3−3と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例3−7)
分子量5.8×10ダルトンのHAを0.25%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例3−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例3−8)
分子量5.8×10ダルトンのHAを0.25%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例3−2と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
(比較例3−9)
分子量5.8×10ダルトンのHAを0.25%濃度で蒸留水に溶解したほかは比較例3−3と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。
比較例3−1〜3−9で得られたHA−HZ中のHZ導入率をADH導入率としてプロトンNMR法で定量したところ、それぞれHAのカルボキシ基の3%(比較例3−1)、42%(比較例3−2)、59%(比較例3−3)、6%(比較例3−4)、49%(比較例3−5)、71%(比較例3−6)、8%(比較例3−7)、56%(比較例3−8)、73%(比較例3−9)にHZ基が導入されていた。
(比較例4−1)比較例3−1のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−1で得られたHA−HZ(25.6mg)を水に溶解させた後、等量の100mM炭酸緩衝液(pH9.0)を加えて終濃度を1mg/mLに調整した。これにFITC/HAのユニット=3.0mol/molの仕込比で、HA−HZ溶液の1/10容量のDMSOに溶解させたFITCを添加し、室温、遮光下に1時間反応させた。反応溶液25mLを予め50mM炭酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したPD−10カラム(10本)に投入し、未反応のFITCを除去した。TNBS法で、HZ基の残存量を確認した後、精製した溶液に無水コハク酸/HZ=250mol/molの仕込比で、3.5mLのDMSOに溶解させた無水コハク酸を添加し同様に反応させた。反応混合物を大過剰量の水に対して透析精製し、凍結乾燥して比較例3−1のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−1;18.3mg)を得た。
(比較例4−2)比較例3−2のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−2で得られたHA−HZ 24.0mgを用いたほかは比較例4−1と同様の方法で、比較例3−2のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−2;18.9mg)を得た。
(比較例4−3)比較例3−3のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−3で得られたHA−HZ 23.2mgを用いたほかは比較例4−1と同様の方法で、比較例3−3のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−3;18.4mg)を得た。
(比較例4−4)比較例3−4のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−4で得られたHA−HZ(25.0mg)を水に溶解させた後、等量の100mM炭酸緩衝液(pH9.0)を加えて終濃度を1mg/mLに調整した。これにFITC/HAのユニット=0.5mol/molの仕込比で、HA−HZ溶液の1/10容量のDMSOに溶解させたFITCを添加し、室温、遮光下に1時間反応させた。反応溶液25mLを予め50mM炭酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したPD−10カラム(10本)に投入し、未反応のFITCを除去した。TNBS法でHZ基の残存量を確認した後、精製した溶液に無水コハク酸/HZ=80mol/molの仕込比で、3.5mLのDMSOに溶解させた無水コハク酸を添加し同様に反応させた。反応混合物を大過剰量の水に対して透析精製し、凍結乾燥して比較例3−4のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−4;19.2mg)を得た。
(比較例4−5)比較例3−5のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−5で得られたHA−HZ 23.7mgを用いたほかは比較例4−1と同様の方法で、比較例3−5のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−5;20.0mg)を得た。
(比較例4−6)比較例3−6のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−6で得られたHA−HZ 25.0mgを用いたほかは比較例4−1と同様の方法で、比較例3−6のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−6;19.0mg)を得た。
(比較例4−7)比較例3−7のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−7で得られたHA−HZ(23.5mg)を水に溶解させた後、等量の100mM炭酸緩衝液(pH9.0)を加えて終濃度を1mg/mLに調整した。これにFITC/HA unit=0.3mol/molの仕込比で、HA−HZ溶液の1/10容量のDMSOに溶解させたFITCを添加し、室温、遮光下に1時間反応させた。反応溶液25mLを予め50mM炭酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したPD−10カラム(10本)に投入し、未反応のFITCを除去した。TNBS法で、HZ基の残存量を確認した後、精製した溶液に無水コハク酸/HZ=40mol/molの仕込比で、3.5mLのDMSOに溶解させた無水コハク酸を添加し同様に反応させた。反応混合物を大過剰量の水に対して透析精製し、凍結乾燥して比較例3−4のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−7;20.7mg)を得た。
(比較例4−8)比較例3−8のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−8で得られたHA−HZ 25.0mgを用いたほかは比較例4−1と同様の方法で、比較例3−8のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−8;22.6mg)を得た。
(比較例4−9)比較例3−9のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZの合成
比較例3−9で得られたHA−HZ 25.3mgを用いたほかは比較例4−1と同様の方法で、比較例3−9のHA−HZをFITC標識した蛍光標識HA−HZ(比較例4−9;19.2mg)を得た。
比較例4−1〜4−9で得られた各蛍光標識HA−HZを0.25mg/mL濃度で50mM炭酸緩衝液(pH9.0)に溶解し、以下、実施例3と同様に分析、評価した。得られた結果を表4に示す。
Figure 2005054302
〔試験例1〕混合溶媒中で調製したHA−HZの酵素分解性評価
実施例1−4、1−5および1−6、ならびに比較例1−1で得られたHA−HZを0.5mg/mL濃度に0.1Mリン酸緩衝液(pH6.2)に溶解した。この溶液80μLにヒアルロニダーゼSD(生化学工業株式会社製)0.5U/mL溶液32μLを加えて37℃で24時間インキュベートした。対象として酵素非添加群も同様に行った。それぞれゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも称す)に供してHA−HZの分子量の変化、分解産物の生成パターンを観察した。
酵素分解産物のGPCプロファイルを図4−1〜図4−4に示す。
DMAc混合率が増大するにつれて分解産物の低分子化は著しく抑制された。この傾向はEtOHを混合させた場合にも観察された。ヒアルロニダーゼSDは最終産物として不飽和二糖を生成することが知られているため、基質の認識は未修飾な連続する4糖であると考えられる。従って、有機溶媒の混合により連続する未修飾連鎖が減少するものと考えられた。
〔試験例2〕混合溶媒中で調製したHA−HZの酵素分解性評価(その2)
実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3で得られたHA−HZをそれぞれ試験例1−2)と同様にヒアルロニダーゼSDによる分解性を評価した。
酵素分解産物のGPCプロファイルを図5−1〜図5−3に示す。
それぞれ反応溶媒が異なるだけのほぼ同等のHZ基修飾率を有するHA−HZであるが、混合溶媒(50%EtOH)を反応溶媒としたHA−HZ(実施例2−1〜2−3)は、酵素分解による分子量の低下が著しく抑制されたことが示された。
〔試験例3〕血中滞留時間評価
HA投与ラット血漿サンプル
実施例3−1〜3−3の蛍光標識HA修飾物、比較例4−1〜4−9の蛍光標識HA修飾物を10mg/kgの用量でラット静脈内に単回投与し、投与前および投与後0.25、1、2、4、6、8、10、12、24、30、54時間(30、54時間は実施例3−1〜3−3の蛍光標識HA修飾物のみ)に採血(ヘパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この血漿サンプルは測定まで−20℃以下で凍結保存した。
測定方法
GPCにより検量線用標準試料および測定用試料の分析を行う。以下に条件を示す。
GPC Column:TSKgel G6000PWXL
Mobile phase:PBS(pH7.4)
Elution mode:Isocratic
Flow rate:0.5mL/min
Injection volume:40uL
Detection:Fluorescence(EX:490,EM:518)
測定試料の調製
・検量線用試料;
各蛍光標識HA修飾物をPBS(pH7.4)を用いて希釈し、1、5、10、50、100、500μg/mLおよび0μg/mL(対照、PBS(pH7.4))の標準液を調製した。この標準液に等容量の正常ラット血漿を添加し検量線用試料を調製した。
・測定用試料の調製;
HA修飾物投与ラット血漿サンプルに等容量のPBS(pH7.4)を添加して測定用試料を調製した。
・血漿中のHA修飾物濃度の算出;
解析ソフトMilleniumを用いてピーク面積を算出した。各標準試料のピーク面積から得られた検量線より血漿中のHA修飾物濃度を算出した。
薬物動態データ
実施例3−1〜3−3の蛍光標識HA修飾物、比較例4−1〜4−9の蛍光標識HA修飾物の血中濃度推移のデータについて、WinNonlin Ver 3.3(Pharsight社)で薬物動態学的パラメーターを算出した。各個体の最終測定点3点のデータを用いてモデル非依存的解析を行い、半減期(t1/2)、平均血中滞留時間(MRT)を算出した。比較例4−1〜4−9の蛍光標識HA修飾物の血中濃度推移を図6−1〜図6−3に示し、算出した薬物動態学的パラメーターを表5に示す。
Figure 2005054302
蛍光標識HA修飾物を用いた薬物動態試験により、混合溶媒中で合成した本発明HA修飾物(実施例3−1〜3−3)は、水中で合成したHA修飾物のうち、各分子量で最も血中滞留時間の長かったHA修飾物(比較例4−3、4−6、4−9)と比較して、ラット単回静脈内投与後の血中滞留時間が改善されることが確認された。水中で合成したHA修飾物の中で血中半減期(t1/2)が2.40±0.55(時間)と最も短かった分子量25KDaのHA修飾物は、混合溶媒中で合成することで血中半減期が25.2±2.0(時間)となり、10倍以上の血中滞留期間の延長効果が認められた。分子量200KDa、600KDaの各HA修飾物でも、混合溶媒中で合成することにより、3〜5倍に血中半減期が延長された。水中で合成したHA修飾物では、HAの分子量に応じて血中滞留期間が延長しており、比較例4−9(600KDa)の血中半減期は、比較例4−3(25KDa)の血中半減期の4.7倍となっていた。混合溶媒中で合成したHA修飾物でも、HAの分子量に応じた血中滞留期間の延長効果が認められ、実施例3−3(600KDa)の血中半減期は、実施例3−1(25KDa)の血中半減期の1.4倍となっていた。平均血中滞留時間(MRT)および血中クリアランス(Cl)についても同様の傾向が見られた。
[実施例4]薬物動態試験用ヒアルロン酸修飾物の合成(修飾率依存性)
(実施例4−1)HA−HZの調製
分子量2.0×10ダルトンのHA(電気化学工業株式会社製)145.0mgを用い、HAのユニット:EDC:ADH=1:1:40モル比になるよう添加したほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)102.9mgを得た。HA−HZ中のHZ基導入率をプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基、1.95ppm;HZ:ADH由来の4つのメチレン、1.65、2.35および2.50ppmの積分値から算出)。HZ導入率は55モル%だった。
(実施例4−2)蛍光標識HA−HZの調製
実施例4−1で得られたHA−HZ(34.6mg)を蒸留水で20.0mg/mLに溶解し、これに0.25M炭酸緩衝液(pH9.0、1.384mL)および5.06mg/mLのFITCのDMSO溶液(346μL)を加えて遮光下、室温で1時間、穏やかに震盪した。193.22mg/mLの無水コハク酸のDMSO溶液(346μL)を加えて同様に1時間震盪した後、大過剰量のPBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさらに透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識HA−HZ(35.79mg)を得た。
[比較例5]
(比較例5−1)HA−HZの調製
分子量2.0×10ダルトンのHA(電気化学工業株式会社製)145.0mgを、用い、HAのユニット:EDC:ADH=1:0.15:40モル比になるよう添加したほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)107.7mgを得た。HA−HZ中のHZ基導入率をプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基、1.95ppm;HZ:ADH由来の4つのメチレン、1.65、2.35および2.50ppmの積分値から算出)。HZ導入率は20モル%だった。
(比較例5−2)HA−HZの調製
分子量2.0×10ダルトンのHA(電気化学工業株式会社製)145.0mgを用い、HAのユニット:EDC:ADH=1:0.25:40モル比になるよう添加したほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)109.6mgを得た。HA−HZ中のHZ基導入率をプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基、1.95ppm;HZ:ADH由来の4つのメチレン、1.65、2.35および2.50ppmの積分値から算出)。HZ導入率は30モル%だった。
(比較例5−3)HA−HZの調製
分子量2.0×10ダルトンのHA(電気化学工業株式会社製)145.0mgを用い、HAのユニット:EDC:ADH=1:0.3:40モル比になるよう添加したほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)60.4mgを得た。HA−HZ中のHZ基導入率をプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基、1.95ppm;HZ:ADH由来の4つのメチレン、1.65、2.35および2.50ppmの積分値から算出)。HZ導入率は34モル%だった。
(比較例5−4)HA−HZの調製
分子量2.0×10ダルトンのHA(電気化学工業株式会社製)145.0mgを用い、HAのユニット:EDC:ADH=1:0.5:40モル比になるよう添加したほかは実施例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)105.0mgを得た。HA−HZ中のHZ基導入率をプロトンNMR法で定量した(HA:N−アセチル基、1.95ppm;HZ:ADH由来の4つのメチレン、1.65、2.35および2.50ppmの積分値から算出)。HZ導入率は46モル%だった。
(比較例5−5)蛍光標識HA−HZの調製
比較例5−1で得られたHA−HZ(33.8mg)を蒸留水で20.0mg/mLに溶解し、これに0.25M炭酸緩衝液(pH9.0、1.352mL)および5.06mg/mLのFITCのDMSO溶液(338μL)を加えて遮光下、室温で1時間、穏やかに震盪した。193.22mg/mLの無水コハク酸のDMSO溶液(338μL)を加えて同様に1時間震盪した後、大過剰量のPBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさらに透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識HA−HZ(32.58mg)を得た。
(比較例5−6)蛍光標識HA−HZの調製
比較例5−2で得られたHA−HZ(33.9mg)を蒸留水で20.0mg/mLに溶解し、これに0.25M炭酸緩衝液(pH9.0、1.356mL)および5.06mg/mLのFITCのDMSO溶液(339μL)を加えて遮光下、室温で1時間、穏やかに震盪した。193.22mg/mLの無水コハク酸のDMSO溶液(339μL)を加えて同様に1時間震盪した後、大過剰量のPBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさらに透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識HA−HZ(33.63mg)を得た。
(比較例5−7)蛍光標識HA−HZの調製
比較例5−3で得られたHA−HZ(33.6mg)を蒸留水で20.0mg/mLに溶解し、これに0.25M炭酸緩衝液(pH9.0、1.344mL)および5.06mg/mLのFITCのDMSO溶液(336μL)を加えて遮光下、室温で1時間、穏やかに震盪した。193.22mg/mLの無水コハク酸のDMSO溶液(336μL)を加えて同様に1時間震盪した後、大過剰量のPBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさらに透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識HA−HZ(32.65mg)を得た。
(比較例5−8)蛍光標識HA−HZの調製
比較例5−4で得られたHA−HZ(34.9mg)を蒸留水で20.0mg/mLに溶解し、これに0.25M炭酸緩衝液(pH9.0、1.396mL)および5.06mg/mLのFITCのDMSO溶液(349μL)を加えて遮光下、室温で1時間、穏やかに震盪した。193.22mg/mLの無水コハク酸のDMSO溶液(349μL)を加えて同様に1時間震盪した後、大過剰量のPBSに対して透析精製した。透析外液を蒸留水に置換してさらに透析精製し、得られた水溶液を凍結乾燥して蛍光標識HA−HZ(35.48mg)を得た。
〔試験例4〕酵素分解性評価
実施例4−1、比較例5−1〜5−4、およびヒアルロン酸ナトリウムをHAユニット換算4.98mM(ヒアルロン酸ナトリウム2.0mg/mL相当)に蒸留水に溶解した。この溶液55μLに蒸留水77μLおよび0.2Mリン酸緩衝液(pH6.2)132μLを加えた。この溶液にヒアルロニダーゼSD(生化学工業株式会社製)1.0U/mL溶液44μLを加えて37℃で24時間インキュベートした。対照として酵素非添加群も同様に行った。それぞれGPCに供してHA−HZの分子量の変化、分解産物の生成パターンを観察した。さらに、GPCプロファイルは分解産物が強い吸収を持つことが知られている232nmで観察し、分解産物のうちの二糖分率として溶媒由来のピークを除いた範囲で100×(二糖のピークエリア)/(全ピークエリア−酵素非添加時全ピークエリア)(%)を算出した。
GPCプロファイルを図8−1〜図8−6に示す。
〔試験例5〕蛍光標識HA−HZの分析
実施例4−2および比較例5−5〜5−8で得られた各蛍光標識HA−HZを0.05M炭酸緩衝液(pH9.0)で0.2mg/mLに溶解した。この溶液の494nmにおける吸光度からFITC濃度を定量した。
実施例4−2および比較例5−5〜5−8で得られた各蛍光標識HA−HZを重水で約3.5mg/mLに溶解し、プロトンNMRを測定した。得られたスペクトルにおけるN−アセチルグルコサミンのメチルプロトン(1.85ppm付近)、ADHのメチレンプロトン(1.55および2.25ppm付近)およびコハク酸アミドのメチレンプロトン(2.4ppm付近)のシグナル強度比からHZ導入率、コハク酸導入率および残存HZ率を算出した。さらに、以下の式に従ってFITC導入率およびHA由来の重量分率算出を行った。
未修飾HAユニット:x(nmol/mL)
HA−SUCユニット:y(nmol/mL)
残存HA−HZユニット:a×x/b(nmol/mL)[ここで、a=残存HZ(%)、b=(100−HZ導入率)(%)である]
式3:(379.3×x)+(635.57×y)+(535.5×(残存HA−HZユニット濃度))+(924.88×(FITC濃度))=200.0μg
式4:x/(y+(残存HA−HZユニット濃度)+(FITC濃度))=(100−(HZ導入率))/(HZ導入率)
得られたNMRスペクトルを図9−1〜図9−5に、計算結果を表6に示す。
Figure 2005054302
〔試験例6〕蛍光標識HA−HZの血中滞留時間評価
HA投与ラット血漿サンプル
実施例4−2の蛍光標識HA−HZ、比較例5−5〜5−8の蛍光標識HA−HZを10mg/kgの用量でラット静脈内に単回投与し、投与前および投与後5分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間、および1週間経過時に採血(ヘパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。この血漿サンプルは測定まで−20℃以下に設定された冷凍庫で凍結保存した。
測定方法:以下に示すプレートリーダーにより検量線用標準試料および測定用試料の分析を行った。
SPECTRA MAX GEMINI(Molecular Devices)
Detection:Fluorescence(EX:485、EM:538)
測定試料の調製:
・検量線用試料:各蛍光標識HA−HZをPBS(pH7.4)を用いて稀釈し、1,5,10,50,100,500μg/mLおよび0μg/mL(対照PBS(pH7.4))の標準液を調製する。この標準液に等用量の正常ラット血漿を添加し検量線用試料を調製した。
・測定用試料の調製:蛍光標識HA−HZ投与ラット血漿サンプルに等用量のPBS(pH7.4)を添加して測定用試料を調製した。
・血漿中の蛍光標識HA−HZ濃度の算出:解析ソフトSOFT max PRO version3.1.1(Molecular Devices)を用いて各標準試料の蛍光強度から得られた検量線より血漿中のHA修飾物濃度を算出した。
薬物動態データ
実施例4−2の蛍光標識HA−HZ、比較例5−5〜5−8の蛍光標識HA−HZの血中濃度推移のデータについて、WinNonlin Ver3.3(Pharsigh社)でモデル非依存的解析を行い、薬物動態学的パラメーター(半減期t1/2)、平均血中滞留時間(MRT))を算出した。但し、血漿中濃度推移で明らかにCmaxが観察される個体は投与ミスと判断し、データからはずした。また、それ以外の個体で投与5分の血漿中濃度に関してスミルノフの棄却検定を行い有意(P=0.05)に低い個体も投与ミスと判断し、データからはずした。
実施例4−2および比較例5−5〜5−8の血中濃度推移を図10に示した。算出した薬物動態パラメーターは、実施例3−2から算出した値も含めて表7にまとめた。
Figure 2005054302
さらに、ここで得られた値と実施例3−2を用いて得られた値をまとめて、HZ導入率とMRTの関係、および蛍光標識前のHA−HZをヒアルロニダーゼSDで処理したときの分解産物のうちの二糖分率とHZ導入率の関係を図11に示す。さらに、図11には比較例2−2で得られたHA−HZをヒアルロニダーゼSD処理したときの分解産物のうちの二糖分率とHZ導入率の関係を示す。
蛍光標識HA−HZを用いた薬物動態試験とヒアルロニダーゼSDを用いた酵素分解性評価より、血中滞留性が改善された本発明HA修飾物はヒアルロニダーゼSD処理による分解産物のうち二糖の分率が低い傾向が見られた。
図11において、ヒアルロン酸修飾物が実用面から好ましい18時間以上のMRTであるにはヒアルロニダーゼSD処理による分解産物のうち二糖の分率が19.8%以下であり、さらに好ましいMRT20時間以上であるには同じく18.8%以下であることが示された。このことより、本発明HA修飾物はヒアルロニダーゼSD処理による分解産物のうちで二糖分率が19.8%以下であることをひとつの特徴とするものである。
[実施例5]エリスロポエチン(EPO)−ヒアルロン酸修飾物コンジュゲートの合成
(実施例5−1)HA−PDP/SUCの調製
実施例2−1と同様の方法で得られたHA−HZの5mg/mL水溶液(900μL)に、5.71mg/mLのSulfo−LC−SPDPのDMSO溶液(45μL)を加えた(SPDP/HZ=0.08(mol/mol))。室温下に1時間撹拌して反応させた後、350μLを分取し、PD−10で水に溶媒置換し凍結乾燥してHA−PDPを得た。残る反応溶液に0.2M炭酸ナトリウム溶液(pH9.0)および水を加えて0.1M炭酸ナトリウム溶液(pH9.0、4.75mL)に調整した。これに76.6mg/mLのコハク酸無水物のDMSO溶液(250μL)を加えて(コハク酸/HZ=50(mol/mol))室温下に更に2時間撹拌し、HA−PDP/SUC溶液を得た。この溶液は4℃で保存した。
途中で分取回収したHA−PDPについて100mMリン酸ナトリウム溶液(pH8.0)で1.0mg/mLに溶解した。この溶液1.0mLに、48.0mg/mLのDTT(250μL)を加えて室温下に30分間撹拌して側鎖のジスルフィド結合を還元した。343nmにおける吸光度から遊離したピリジン−2−チオン(pyridin−2−thione)を定量した。この定量値からHA−HZへのチオール導入率を算出した結果、SH導入率は2.5モル%であった。
(実施例5−2)EPO−マレイミド(EPO−MAL)の調製
エリスロポエチン(EPO)原体(中外製薬株式会社製)7.6mL(EPO7.752mg)に、1.06mg/mLのSulfo−KMUSのDMSO溶液(380μL)を加え(KMUS/EPO=2(mol/mol))、室温下に30分間撹拌した。PD−10で低分子量成分を除去すると共にpH6.5のPBに溶媒置換した。得られた試料溶液およびコントロールEPO溶液についてProtein assay(BioRad)でEPO濃度を求め,TNBS法によりアミノ基量を定量し,それぞれの比からMaleimide導入率を算出した結果、マレイミド導入率は1.3個/EPOであった。
なお、TNBS法の具体的手順は「学会出版センター 生物化学実験法12 蛋白質の化学修飾<上>初版」第37頁に記載の方法に従った。
(実施例5−3)HA−EPOコンジュゲートの調製
実施例5−1のHA−PDP/SUC溶液4.0mLに、48mg/mLのDTT溶液2.0mLを加え、室温下に30分間撹拌した。PD−10で低分子量成分を除去し、得られたHA−SH/SUCをCentricon−10で850μLまで濃縮した。濃縮HA−SH/SUC溶液0.6mL(HA誘導体の回収率を100%として1.33mg相当)にEPO−MAL溶液をCentricon−30で2.4mL(EPO換算で2.8mg/mL)まで濃縮した溶液0.7mLを加えた。室温下に22時間穏かに震盪した後、1.0mg/mLのエチルマレイミド溶液(100μL)を加え、更に2時間震盪した。精製までの間は4℃で保存した。反応混合物を下記の条件によるGPCに供してコンジュゲートと思われる画分を分取した。対照としてEPO−MAL非添加のHA−SH/SUC溶液も同様に行って同じ画分を分取した。分取画分をそれぞれCentricon−50で濃縮し、281nmにおける吸光度を測定した。グルクロノラクトン(Glucuronolactone(Glclac))454.2nmol/mLを最高値に2倍稀釈列計5点をスタンダードとし、コンジュゲート溶液および対照として回収したHA−SH/SUCそれぞれについて稀釈した後、カルバゾール−硫酸法を行いウロン酸を定量した。試料溶液の281nmにおける吸光度のEPOに拠らない分はグルクロン酸(GlcA)濃度すなわちHA誘導体濃度に比例すると仮定して281nmにおける吸光度を補正し、EPO濃度およびGlcA濃度、EPO濃度比からコンジュゲート当りのEPO導入率を算出した結果、EPO導入率は2.2個/HAであった。
精製(GPC)条件
Instrumentation:FPLC System(Amersham Bioscience)
Column:HiLoad 16/60 Superdex200 PrepGrade(1.6×60cm)(Amersham Bioscience)
Eluent:PBS
Flow rate:1.0mL/min.
Detector:UV(Abs.at 280nm)
カルバゾール−硫酸法による定量は、以下の方法により行った。氷冷した濃度既知の標準物質(グルクロノラクトン)溶液あるいは試料溶液0.2mLに、25mMのNa・10HO濃硫酸溶液1.0mLを加えて撹拌した。熱水浴(90℃以上)中に約20分間浸して加熱した。室温まで冷却させた後にカルバゾールの0.125%EtOH溶液40μLを加え,再度熱水浴中に30分間浸して加熱した。室温まで冷却した後に530nmの吸光度を測定し、標準物質で作成した検量線から試料溶液中ウロン酸を定量した。
[比較例6]
(比較例6−1)
比較例2−1と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。これを原料にして実施例5と同じ方法でHA−EPOコンジュゲートを調製した。
(比較例6−2)
比較例2−2と同様の方法で、ヒドラジド基が導入されたヒアルロン酸(HA−HZ)を得た。これを原料にして実施例5と同じ方法でHA−EPOコンジュゲートを調製した。
[実施例6]HA−EPOコンジュゲートPK試験
実施例5−3、比較例6−1および6−2のHA−EPOコンジュゲート、ならびにEPOを2mg/kgの用量でSDラット(オス、投与時12週齢)静脈内に単回投与し、投与前および投与後1時間、3時間、6時間、1日、2日、3日、6日、9日、14日経過時に採血(ヘパリン処理)し、遠心分離により血漿を得た。血漿中のEPO濃度をELISA(R&D社)で定量した。
試験結果を図12に示す。本発明のHA修飾物を用いたHA−EPOコンジュゲート実施例5−3はMRTで42.2時間を示し、比較例6−1:15.5時間、比較例6−2:18.3時間に比較し、大幅に血中滞留性が延長された。
これらの結果から、HAのカルボキシ基の修飾率を上げていけば、相対的に血中滞留時間は延長されるが、水と極性有機溶媒との混合溶媒中で修飾したHA修飾物においては、水中で修飾した場合と比較して、同程度の修飾率で、極めて顕著な血中滞留時間延長効果を示すことが確認された。この理由は次のように予想される。HAは水中で分子内水素結合と、分子内、外の疎水性相互作用により、2次構造、3次構造を形成していることが知られており(The Biology of Hyaluronan.Chiba Foundation Symposium 143,6−14(1989))、均一な化学修飾が難しくなっていると考えられる。このため、水中でHAのカルボキシ基の多くを修飾しても、HAレセプターに認識されうる連続した4−6糖の未修飾ドメインが一部残存しており、ここが体内のHAレセプターに結合してしまうことで比較的短期間に血中からクリアされてしまうと予想される。
水と極性有機溶媒との混合溶媒中ではHAの水素結合、疎水性相互作用が減弱されることでHAの高次構造が壊され、高次構造形成に基づくカルボキシ基周辺環境の不均一性が解消され、より均一な化学修飾が達成されるものと考えられる。
ヒアルロン酸修飾物の酵素分解性試験に用いたヒアルロニダーゼは基質認識性が高く、HAを二糖に分解することが知られている。つまり、未修飾4糖が最小の基質であり、分解産物としての二糖は未修飾ユニットが連続するほど生産量が増大する。本発明により得られるヒアルロン酸修飾物がヒアルロニダーゼSDに分解耐性を示すことは、HAレセプターに認識されうる連続した未修飾ドメインが従来の水中での反応で得られる修飾物に比して低減していることを支持している。
本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を用いることで、従来の水溶性ヒアルロン酸修飾物では得られない実用的なレベルまでその血中滞留時間を延長することが可能である。従って、本発明の水溶性ヒアルロン酸修飾物を担体に用い、薬物をコンジュゲート化することで、従来の技術では達成できなかった、実用的でかつ安全な医薬組成物を提供することが可能である。

Claims (21)

  1. 水と極性有機溶媒との混合溶媒中で、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基を、反応試薬に含まれるヒドラジド基と脱水縮合反応させる工程を含む、水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  2. カルボキシ基とヒドラジド基との脱水縮合反応により導入される基が、少なくとも1以上の官能基を含み、当該官能基が、置換されていてもよいヒドラジド基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルデヒド基、メタクリロイル基、およびアクリロイル基から選択される、請求項1に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  3. カルボキシ基とヒドラジド基との脱水縮合反応により導入される基が、1つの官能基を含み、当該官能基が、置換されていてもよいヒドラジド基、置換されていてもよいアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、アルデヒド基、メタクリロイル基、およびアクリロイル基から選択される、請求項1に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  4. カルボキシ基とヒドラジド基との脱水縮合反応により導入される基が、置換されていてもよいヒドラジド基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  5. 反応試薬が、式(I)
    Figure 2005054302
    [式中、Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子またはC1−6アルキル基であり、nは、0〜12の整数である。]
    で表される化合物である、請求項4に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  6. 前記水溶性ヒアルロン酸修飾物が式(II)
    Figure 2005054302
    [式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、C1−6アルキル基またはC1−6アルキルカルボニル基であり、
    Ra、Rb、RcおよびRdは、それぞれ独立に、水素原子またはC1−6アルキル基であり、
    nは、0〜12の整数である。]
    で表される繰り返し単位を分子内に少なくとも1以上含むものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  7. Ra、Rb、RcおよびRdが水素原子である、請求項5または6に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  8. 水と極性有機溶媒との混合溶媒中で、ヒアルロン酸またはその誘導体のグルクロン酸部分に含まれるカルボキシ基を、55モル%以上の修飾率で反応試薬のヒドラジド基と脱水縮合反応させる工程を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  9. 前記水溶性ヒアルロン酸修飾物が、ヒアルロニダーゼによる分解に対して耐性を有するものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法により得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物であって、ヒアルロン酸をその構成ユニットの二糖にまで分解することができ且つ分解産物の非還元末端にΔ−4,5−グルクロン酸残基をもつ不飽和二糖を生成させるヒアルロニダーゼで該水溶性ヒアルロン酸修飾物を分解し、得られる分解産物の232nmにおける吸収を観測した場合に、分解産物に由来する全ピークエリアに対して二糖に由来するピークエリアの分率が23.4%以下である、前記水溶性ヒアルロン酸修飾物。
  11. 前記水溶性ヒアルロン酸誘導体の哺乳動物における平均血中滞留時間が、18時間以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  12. 水と極性有機溶媒との混合溶媒の混合比が、水:極性有機溶媒の容積比で95:1〜20:80である、請求項1〜9および11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 極性有機溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、エタノール(EtOH)、メタノール(MeOH)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、ジオキサン、アセトン、ピリジン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、スルホラン(SF)、N−メチルピロリドン(NMP)またはこれらの2種以上の混合溶媒から選択される請求項12に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  14. 極性有機溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、エタノール(EtOH)またはジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される請求項13に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物の製造方法。
  15. 請求項1〜9、11、12、13および14のいずれか1項に記載の製造方法により得られる水溶性ヒアルロン酸修飾物。
  16. 請求項10または15に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物を含む薬物担体。
  17. 請求項10または15に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物により表面修飾された微粒子薬物担体。
  18. 請求項10または15に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物を含む医薬組成物。
  19. 請求項10または15に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物と薬物とからなる水溶性ヒアルロン酸修飾物−薬物コンジュゲート。
  20. 請求項10または15に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物を含む、治療用あるいは診断用の医療用デバイス。
  21. 請求項10または15に記載の水溶性ヒアルロン酸修飾物で表面修飾を施した、請求項20の医療用デバイス。
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