明 細 書
光素子及び光モジュール
技術分野
[0001] 本発明は、基体に 1以上の受光領域が形成された光素子と、 1本の光ファイバ、あ るいは複数本の光ファイバ(光ファイバアレイ)、又は 1つの光導波路、あるいは複数 の光導波路等を有する光モジュールに関し、特に、これら光伝達手段を伝搬する信 号光を途中でモニタする場合に好適な光素子及び光モジュールに関する。
背景技術
[0002] 現在の光通信技術において、通信品質の監視技術は重要な項目となっている。中 でも、光出力の監視については、特に、波長多重通信技術の分野において重要な 位置を占めている。
[0003] 近年、このような光出力監視技術に対する小型化、高性能化、低コストィ匕の要求が 高まりつつある。その中で、光ファイバあるいは光導波路に直接スリット構造を設けて 信号光の一部を取り出し検出することで、信号光の品質の監視を行う、 TAP (入力信 号モニタ用分岐力ブラ)方式が注目を集めて 、る。
[0004] 従来では、例えば特許文献 1に示すような技術が提案されている。この技術は、ガ ラス基板の V溝内に光ファイバを配置し、その後、ガラス基板に対して光ファイバを( その光軸に対して)斜めに横切るように平行溝を形成する。そして、前記平行溝内に 光分岐部材を挿入し、その隙間に紫外線硬化榭脂 (接着剤)を充填するようにして 、 る。
[0005] これにより、光ファイバを伝搬する信号光のうち、光分岐部材で分岐した光成分 (分 岐光)がクラッド外に取り出されることになる。従って、この分岐光を例えば受光素子 にて検知することで、信号光のモニタが可能となる。
特許文献 1:特開 2001— 264594号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0006] ところで、上述のような TAP方式を採用した光モジュールでは、受光素子を使用す
ることが必須であり、受光素子への分岐光を特性を劣化させずにどのように入射させ るかが課題である。
[0007] また、複数の光ファイバや光導波路を横一列に並べたインライン型の光モジュール においては、光ファイバや光導波路に対応して複数の受光領域を配列させた受光素 子を用いることが必須となってくる。この場合、受光素子が隣接して形成されるため、 迷光の影響を受け易 、ことと、各受光領域で発生した光電流 (キャリア)の一部が漏 れ電流として、隣接する受光領域や他の受光領域を介してコモン電極に流れること により、クロストーク (混信)特性を悪化させるという問題が発生する。
[0008] また、従来の例えば裏面入射型の受光素子 100には、図 13に示すように、光透過 性の基体 102の表面に受光領域 104が形成され、基体 102の裏面 (光の入射面)に はパッシベーシヨンと反射防止のために、耐湿性の高い SiN等の 1つの膜 (単層膜) 1 06をコーティングして!/、る。
[0009] そして、受光素子 100への光の入射は、通常、基体 102の裏面に対して垂直にな される。垂直入射の場合、単層膜 106の膜厚を変更するだけで、特定の波長の光の 特性、例えば反射特性や偏光依存性(PDC : Polarization Dependent Current)をほ とんど変化させることなぐ光を受光領域 104に入射させることができる。
[0010] しかし、光ファイバや光導波路にスリットを形成した TAP方式の光モジュールにお いては、光ファイバや光導波路力も斜め方向に分岐光 108が出射することになる。そ のため、分岐光 108を受光素子 100の受光領域 104に対して垂直入射させるには、 受光素子 100を実装する際に、分岐光 108の入射面を斜めにして実装しなければな らない。この場合、受光素子 100を実装する際の角度の制御が困難であり、実装の ためのコストが上がり、し力も、光モジュールのサイズの大型化にもつながる。
[0011] そこで、受光素子 100を実装する際に、分岐光 108の入射面を水平に、即ち、光フ アイバゃ光導波路の信号光の光軸と平行にして実装することが考えられるが、この場 合、受光素子 100の裏面に対する分岐光 108の入射が斜め方向となり、特定の波長 の光の特性、例えば反射特性や偏光依存性 (PDC)が大きく変動し、分岐光 108の 検出精度、即ち、信号光のモニタ精度が低下するという問題が生じる。
[0012] 本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、分岐光が斜めに入射され
ても、該分岐光の反射特性や偏光依存性 (PDC)をほとんど変動させることがなぐ 信号光のモニタ精度の低下を抑制することができ、信号光のモニタ機能の信頼性を 向上させることができる光素子及び光モジュールを提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0013] 本発明に係る光素子は、基体に 1以上の受光領域が形成された光素子において、 光の入射面に特性劣化防止のコーティング膜が形成されていることを特徴とする。
[0014] これにより、光の入射面に対して光が斜めに入射されても、該光の反射特性や偏光 依存性 (PDC)をほとんど変動させることがない。従って、この光素子を例えばインラ イン型の TAP方式の光モジュールにおける信号光のモニタ機能に適用した場合に、 分岐光が斜め入射したとしても、分岐光の検出精度の低下を抑制することができ、信 号光のモニタ機能の信頼性を向上させることができる。
[0015] そして、前記基体は光透過性であって、前記基体の表面に前記 1以上の受光領域 が形成され、前記基体の裏面が前記光の入射面であってもよい。この場合、理論的 には光素子の裏面を光ファイバや光導波路等の光伝達手段に近接させて実装させ ることができる。し力も、光の入射角(鉛直方向とのなす角)を小さくすることができる。 これは、受光領域での受光効率等を向上させる上で有利となる。
[0016] また、本発明において、前記コーティング膜は、 2つ以上の膜が積層されて構成さ れていることが好ましい。具体的には、前記コーティング膜は、反射防止用の多層膜 を有することが好ましい。従来のように、光の入射面に単層膜を形成した場合、前記 入射面に光が斜めに入射すると、光の偏光状態によって受光領域から出力される電 流 (検出電流)が変動することとなる。即ち、偏光依存性が大きい。
[0017] しかし、本発明では、前記光の入射面に反射防止用の多層膜を形成するようにした ので、斜めに入射される光に対して予想される角度に合わせて多層膜の膜質や膜厚 等を設計することが可能となる。その結果、斜めに入射される光の偏光状態をコント口 ールすることができ、検出電流の変動を抑えることができる。これは、偏光依存性の 低減につながる。
[0018] また、前記構成において、コーティング膜を耐湿用の膜と反射防止用の多層膜とを 積層して構成するようにしてもよい。光の入射面に多層膜を形成する場合、多層膜の
形成条件によっては、ポーラスが形成される場合がある。このような場合、水分が多 層膜を通り抜けて基体等に到達し、光素子の特性劣化 (リーク電流の増加、暗電流 の増加等)を引き起こすおそれがある。そこで、この発明のように、コーティング膜を耐 湿用の膜と反射防止用の多層膜とを積層して構成することで、耐湿性に優れ、かつ、 入射光の偏光状態に依存することなぐ安定に検出電流を取り出すことができる。
[0019] また、前記構成において、前記光の入射面に少なくとも屈折率整合を目的とした榭 脂が形成される場合に、前記コーティング膜は、前記樹脂の存在による特性劣化を 防止するための膜と、反射防止用の多層膜とが積層されて構成されていてもよい。こ こで、前記樹脂の存在による特性劣化を防止するための膜は、耐湿用の膜であって ちょい。
[0020] 光の入射面に少なくとも屈折率整合を目的とした榭脂を形成する場合、水分を吸 着する榭脂を用いることが考えられる。その場合、多層膜のみでは、水分の浸入を防 ぐことができず、光素子の特性劣化 (リーク電流の増加、暗電流の増加等)を引き起こ すおそれがある。そこで、この発明のように、コーティング膜を前記樹脂の存在による 特性劣化を防止するための膜と反射防止用の多層膜とを積層して構成することで、 耐湿性に優れ、かつ、入射光の偏光状態に依存することなぐ安定に検出電流を取 り出すことができる。
[0021] また、前記構成において、前記コーティング膜の端面に 1以上の光遮蔽マスクを有 し、前記光遮蔽マスクは、前記コーティング膜に対して斜めに入射する光を考慮した 位置に形成されて 、てもよ 、。
[0022] 偏光依存性と共に光素子の出力電流の特性として重要なファクタがクロストークで ある。クロストークの原因の 1つとして迷光が挙げられる。迷光は、光素子の受光領域 以外に光が入射し、反射、散乱を繰り返して隣接する受光領域あるいは他の受光領 域に入射し、クロストークとなる。
[0023] 迷光を防ぐ有効な手段は、光の入射面にマスクをして光の入射を制限し、光素子 内に入射する光を受光領域で受けて電流 (検出電流)に変換し、受光領域以外の場 所に光を入射させないという方法が挙げられる。通常、マスクは受光領域に対応した 位置に設置される。
[0024] しかし、裏面入射型の場合、光の入射面力 受光領域までに距離があるため、光の 入射面のうち、受光領域の真下の部分に窓が形成されるように、マスクを形成したと しても、斜めに入射する光に対しては、依然、受光領域に到達しない光が発生し、迷 光となる場合がある。また、入るべき光がマスクで遮断されてしまい、効率の低下にも つながる。
[0025] 一方、この発明にお 、ては、前記光遮蔽マスクを、斜めに入射する光を考慮した位 置に形成するようにしたので、迷光の発生をほとんどなくすことができ、クロストークを 改善することができると共に、受光領域での受光効率等を向上させることができる。
[0026] 光素子の出力電流の特性に影響を与えるファクタとして、上述の光学的なクロスト ークのほかに、電気的なクロストークも挙げられる。基体に複数の受光領域が形成さ れている場合に、各受光領域に対して共通にコモン電極が接続されるが、各受光領 域にて発生した光電流 (キャリア)の一部が漏れ電流として隣接する受光領域や他の 受光領域を介してコモン電極に流れてしま 、、電気的なクロストークとなる。
[0027] 従って、前記構成において、前記基体に 2以上の受光領域が形成されている場合 においては、受光領域のそれぞれにアノード電極と力ソード電極とを設けることで、電 気的なクロストークを抑えることができる。これは低抵抗の電極 (例えば Au)がカソー ドに繋がれることにより、発生したキャリアが隣接チャネルの力ソードに漏れることなく 、低抵抗の Au電極に引っ張られるため、クロストークの減少を実現する。
[0028] また、前記構成において、前記基体に 2以上の受光領域が形成されている場合に 、前記基体は、前記受光領域間にスリットを有するようにしてもよい。受光領域間にス リットを設けて物理的に分離することで、漏れ電流の経路が分断され、上述のような電 気的なクロストークを防ぐことができる。し力も、迷光が隣接する受光領域や他の受光 領域に進入することもなくなるため、迷光〖こよるクロストークも改善させることができる。
[0029] また、前記構成において、複数の前記基体がそれぞれ所定の間隔を置いて配列さ れ、前記各基体にそれぞれ 1つの受光領域が形成されていてもよい。この場合も、漏 れ電流の経路が分断されることから、上述のような電気的なクロストークを防ぐことが でき、しかも、迷光が隣接する受光領域や他の受光領域に進入することもなくなるた め、迷光〖こよるクロス卜ークち改善させることがでさる。
[0030] また、本発明に係る光モジュールは、光分岐機能が設けられた 1以上の光伝達手 段と、前記光伝達手段の上方であって、かつ、前記光伝達手段の少なくとも前記光 分岐機能によって発生した分岐光の光路上に榭脂を介して固着された光素子とを有 する光モジュールにおいて、前記光素子は、基体と、該基体に形成された 1以上の 受光領域と、光の入射面に形成された特性劣化防止のコーティング膜とを有すること を特徴とする。
[0031] これにより、分岐光が光素子に対して斜めに入射したとしても、該光の反射特性や 偏光依存性をほとんど変動させることがないため、分岐光の検出精度の低下を抑制 することができ、信号光のモニタ機能の信頼性を向上させることができる。
[0032] 以上説明したように、本発明に係る光素子及び光モジュールによれば、分岐光が 斜めに入射されても、該分岐光の反射特性や偏光依存性 (PDC)をほとんど変動さ せることがなぐ信号光のモニタ精度の低下を抑制することができ、信号光のモニタ 機能の信頼性を向上させることができる。
図面の簡単な説明
[0033] [図 1]図 1は、本実施の形態に係る光モジュールを正面力も見て示す断面図である。
[図 2]図 2は、本実施の形態に係る光モジュールを側面力も見て示す断面図である。
[図 3]図 3は、本実施の形態に係る光モジュールの分岐部を示す拡大図である。
[図 4]図 4は、第 1の具体例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 5]図 5は、第 2の具体例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 6]図 6は、第 3の具体例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 7]図 7は、第 4の具体例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 8]図 8は、第 1の比較例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 9]図 9は、第 5の具体例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 10]図 10は、第 2の比較例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 11]図 11は、第 6の具体例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 12]図 12は、第 7の具体例に係る PDアレイを示す断面図である。
[図 13]図 13は、従来例に係る受光素子を示す断面図である。
発明を実施するための最良の形態
[0034] 以下、本発明に係る光素子及び光モジュールを例えば 12chインライン型パワーモ ニタモジュールに適用した実施の形態例について図 1一図 12を参照しながら説明す る。
[0035] 本実施の形態に係る光モジュール 10は、図 1及び図 2に示すように、ガラス基板 12 と、該ガラス基板 12に設けられた複数の V溝 14に固定された複数の光ファイバ 16か らなる光ファイバアレイ 18と、各光ファイバ 16の各上面力もガラス基板 12にかけて設 けられたスリット 20 (図 2参照)と、該スリット 20内に挿入された分岐部材 (フィルタ部材 22 :図 2参照)と、各光ファイバ 16を透過する信号光 24のうち、少なくともフィルタ部 材 22等にて反射された光 (分岐光) 26を検出する受光領域 28が複数配列された本 実施の形態に係る PD (フォトダイオード)アレイ 30と、該 PDアレイ 30が実装され、力 つ、 PDアレイ 30を光ファイバアレイ 18に向けて固定するためのサブマウント 32と、少 なくとも PDアレイ 30を安定に固定するためのスぺーサ 34とを有する。なお、スリット 2 0の 2つの端面とフィルタ部材 22の表面及び裏面は光ファイバ 16を透過する信号光 24の一部を分岐する分岐部 36 (図 2参照)として機能することになる。また、光フアイ ノ 16は、図 3に示すように、コア 40とクラッド 42とを有する。
[0036] 即ち、本実施の形態に係る光モジュール 10は、 V溝 14が形成されたガラス基板 12 と、該ガラス基板 12の V溝 14に固定され、かつ、各光ファイバ 16に光分岐機能 (スリ ット 20、フィルタ部材 22等)が設けられた光ファイバアレイ 18と、各光ファイバ 16のク ラッド外のうち、少なくとも光分岐機能によって発生した分岐光 26の光路上に屈折率 整合を目的とした榭脂 (屈折率整合榭脂) 44を介して固着された本実施の形態に係 る PDアレイ 30と、該 PDアレイ 30を実装するためのサブマウント 32とを有する。該サ ブマウント 32は、 PDアレイ 30の実装面がガラス基板 12に対向されて設置されている
[0037] ガラス基板 12に形成される V溝 14の角度は、後にスリット 20を加工する際に光ファ ィバアレイ 18の各光ファイバ 16に与える負荷を考えると 45° 以上が好ましぐ逆にフ タ無し光ファイバアレイとするため、十分な接着剤量(=接着強度)の確保のために 9 5° 以下が好ましぐこの実施の形態では 70° としている。
[0038] 光ファイバアレイ 18のガラス基板 12への固定は、まず、光ファイバアレイ 18を V溝 1
4に収容載置し、この状態で固定用接着剤 (紫外線硬化型接着剤) 46 (図 1参照)を 塗布し、光ファイバアレイ 18の裏面並びに上方から紫外線を照射して、前記固定用 接着剤 46を本硬化させることにより行う。
[0039] スリット 20の傾斜角度 α (図 2参照)、即ち、鉛直面とのなす角は、 15° — 25° であ ることが好ましい。傾斜角度 aが小さすぎると、フィルタ部材 22からの分岐光 26の広 力 Sりが大きくなりすぎてしまい、多チャネルに適用した場合に、クロストークの悪ィ匕を招 くおそれがある。一方、傾斜角度 αが大きすぎると、フィルタ部材 22からの分岐光 26 の偏光依存性が大きくなり、特性の劣化につながるおそれがあるからである。
[0040] フィルタ部材 22は、図 3に示すように、石英基板 48と、該石英基板 48の主面に形 成された分岐用の多層膜 50とを有する。フィルタ部材 22の材料は、該フィルタ部材 2 2のハンドリング等を考慮した場合、プラスチック材料、高分子材料、ポリイミド材料で もよいが、スリット 20の傾斜角度 αが 15° — 25° と大きいので、屈折により透過側の 光軸がずれることを抑えるために光ファイバ 16 (石英)と同じ屈折率の材料が好まし い。
[0041] また、スリット 20内における該スリット 20とフィルタ部材 22との隙間に紫外線硬化榭 脂 (接着剤) 52が充填されている。該榭脂 52には、その屈折率が、光ファイバ 16のコ ァ 40の屈折率やフィルタ部材 22の石英基板 48の屈折率とほぼ同じになるように、シ リコーン系の榭脂を用いた。
[0042] 本実施の形態に係る PDアレイ 30の構造は、図 2に示すように、裏面入射型を採用 した。即ち、この PDアレイ 30は、光透過性の基体 54と、該基体 54の表面に形成され た複数 (チャンネル数に応じた数)の前記受光領域 28とを有する。
[0043] 受光領域 28の上部(サブマウント 32側)は Au半田や電極又は銀ペーストではなく 異方性導電ペースト 56とした。この部分は Au等のように反射率の高!、材質ではなく 、異方性導電ペースト 56や空気等のように反射率の低!、状態であることがクロストー クの観点力 好ましい。もちろん、 PDアレイ 30として、表面入射型の PDアレイを使用 してちよい。
[0044] PDアレイ 30の受光領域 28の大きさは φ 40— 80 μ mであることが望ましい。本実 施の形態では約 φ 60 mとした。 φ 40 μ m未満の場合、受光領域 28の大きさが小
さすぎるために受光効率の低下が懸念される。 φ 80 m以上の場合、迷光を拾!、易 くなるためにクロストーク特性が悪ィ匕するおそれがある。
[0045] また、サブマウント 32の取付け構造は、光ファイバアレイ 18— PDアレイ 30—サブマ ゥント 32という構成を採用した。光ファイバアレイ 18—サブマウント 32— PDアレイ 30と いう構成も取り得る力 この場合、サブマウント 32が光ファイバアレイ 18と PDアレイ 3 0間に存在してしまうため、分岐光 26の光路長が長くなり、分岐光 26の広がりが大き くなつてしまい、受光効率やクロストークの観点で好ましくないからである。なお、サブ マウント 32の構成材料は Al Oとした。
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[0046] 光ファイバアレイ 18— PDアレイ 30—サブマウント 32の構成の場合、 PDアレイ 30を 表面入射の状態とすると、表面力もサブマウント 32への導通のためにはワイヤボンデ イングが必要となる。この場合、ワイヤボンディングのために 100 m程度は空間が必 要となる。この空間は、光ファイバ 16 (石英)との屈折率整合や信頼性という意味で屈 折率整合榭脂 44で埋める必要がある。つまり、表面入射の場合、 100 /z mもの屈折 率整合榭脂 44が光路に存在することになり、この屈折率整合榭脂 44が PDL (偏波 依存性)や波長依存性等の特性に不安定性を招く。また、ボンディングワイヤには、 通常 Au等の金属を用いるため、そこに光が当ると光が散乱し、迷光になるおそれも める。
[0047] 一方、裏面入射の場合、理論的には光ファイバ 16に PDアレイ 30を接することも可 能である。 PDアレイ 30と光ファイバ 16が接することは、物理的な欠陥を招くおそれが あるので 10 μ m程度の空間(間隔)をあけ、この空間に屈折率整合榭脂 44を充填す ればよい。
[0048] また、 PDアレイ 30は、受光領域 28側(サブマウント 32側)にアノード電極、力ソード 電極が配置されており、サブマウント 32には共通の力ソード電極と各チャネルのァノ ード電極が Au電極パターン 58でパターユングされている。
[0049] 各チャネルのアノード電極及び力ソード電極に対応する部分に Auバンプ 60を設け 、受光領域 28の部分には異方性導電ペースト 56を充填した。 Auバンプ 60を設ける ことで確実な導通を図ることができるほか、受光領域 28とサブマウント 32の電極間距 離を離すことができるため、この部分の反射 ·散乱による迷光を小さくすることができる
。異方性導電ペースト 56は熱を加えることにより、異方性導電ペースト 56内にある銀 等の導電物質が Auバンプ 60のような導電性のものに集まる性質がある。これにより、
Au電極パターン 58との間にのみ導電性をもたらすのである。
[0050] また、サブマウント 32の実装面には、光ファイバアレイ 18と PDアレイ 30とのギャップ を決定するためのスぺーサ 34が例えば紫外線硬化型接着剤にて固着されている。
[0051] そして、本実施の形態に係る PDアレイ 30は、図 3に示すように、基体 54の裏面に 特性劣化防止のコーティング膜 70が形成されて 、る。このコーティング膜 70としては
、 2つ以上の膜が積層されて構成されて 、ることが好ま U、。
[0052] ここで、本実施の形態に係る PDアレイ 30のいくつかの具体例について図 4一図 12 を参照しながら説明する。
[0053] まず、第 1の具体例に係る PDアレイ 30Aは、代表的に 1チャネルに対応した部分の みを示すと、図 4に示すように、特性劣化防止のコーティング膜 70として、 PDアレイ 3
OAの基体 54の裏面に反射防止用の多層膜 72が形成されて構成されている。
[0054] 図 13に示す従来例のように、分岐光 108の入射面に単層膜 106を形成した場合、 前記入射面に分岐光 108が斜めに入射すると、分岐光 108の偏光状態によって受 光領域 104から出力される検出電流が変動することとなる。即ち、偏光依存性が大き い。
[0055] しかし、この第 1の具体例では、図 4に示すように、基体 54の裏面に反射防止用の 多層膜 72を形成するようにしたので、斜めに入射される分岐光 26に対して予想され る角度に合わせて多層膜 72の膜質や膜厚等を設計することが可能となる。その結果 、斜めに入射される分岐光 26の偏光状態をコントロールすることができ、検出電流の 変動を抑えることができる。これは、偏光依存性の低減につながる。
[0056] 次に、第 2の具体例に係る PDアレイ 30Bは、代表的に 1チャネルに対応した部分 のみを示すと、図 5に示すように、基体 54の裏面に耐湿用の膜 74を形成し、更に、こ の耐湿用の膜 74の端面に反射防止用の多層膜 72を積層するようにしている。
[0057] 光の入射面に多層膜 72を形成する場合、多層膜 72の形成条件によっては、ポー ラスが形成される場合がある。このような場合、水分が多層膜 72を通り抜けて基体 54 等に到達し、 PDアレイ 30Bの特性劣化(リーク電流の増カロ、暗電流の増加等)を引き
起こすおそれがある。そこで、この第 2の具体例のように、コーティング膜 70を耐湿用 の膜 74と反射防止用の多層膜 72とを積層して構成することで、耐湿性に優れ、かつ 、分岐光 26の偏光状態に依存することなぐ安定に検出電流を取り出すことができる
[0058] 次に、第 3の具体例に係る PDアレイ 30Cは、代表的に 1チャネルに対応した部分 のみを示すと、図 6に示すように、基体 54の裏面に屈折率整合榭脂 44の存在による 特性劣化を防止するための膜 76を形成し、更に、該膜 76の端面に反射防止用の多 層膜 72を積層するようにしている。ここで、前記膜 76は、上述した耐湿用の膜 74で あってもよい。
[0059] 光の入射面に少なくとも屈折率整合榭脂 44を形成する場合、水分を吸着する榭脂 を用いることが考えられる。その場合、多層膜 72のみでは、水分の浸入を防ぐことが できず、 PDアレイ 30Cの特性劣化(リーク電流の増カロ、暗電流の増加等)を引き起こ すおそれがある。そこで、この第 3の具体例のように、コーティング膜 70を前記屈折率 整合榭脂 44の存在による特性劣化を防止するための膜 76と反射防止用の多層膜 7 2とを積層して構成することで、耐湿性に優れ、かつ、分岐光 26の偏光状態に依存 することなぐ安定に検出電流を取り出すことができる。
[0060] 次に、第 4の具体例に係る PDアレイ 30Dは、代表的に 3チャネルに対応した部分 のみを示すと、図 7に示すように、コーティング膜 70の端面に 1以上の光遮蔽マスク 7 8 (以下、単にマスクと記す)が形成されている。特に、これらマスク 78は、コーティン グ膜 70の端面のうち、コーティング膜 70に対して斜めに入射する分岐光 26を考慮し た位置に形成されている。
[0061] 偏光依存性と共に PDアレイ 30Dの出力電流の特性として重要なファクタがクロスト ークである。クロストークの原因の 1つとして迷光が挙げられる。迷光は、 PDアレイ 30 Dの受光領域 28以外に光が入射し、反射、散乱を繰り返して隣接する受光領域 28、 あるいは他の受光領域 28に入射し、クロストークとなる。
[0062] 迷光を防ぐ有効な手段は、図 8に示す第 1の比較例に係る PDアレイ 80のように、分 岐光 26の入射面にマスク 78を形成して分岐光 26の入射を制限し、 PDアレイ 80内 に入射する分岐光 26を受光領域 28で受けて電流 (検出電流)に変換し、受光領域 2
8以外の場所に光を入射させないという方法が挙げられる。通常、マスク 78は受光領 域 28に対応した位置に設置される。
[0063] しかし、裏面入射型の場合、コーティング膜 70の端面力も受光領域 28までに距離 があるため、第 1の比較例に係る PDアレイ 80のように、コーティング膜 70の端面のう ち、受光領域 28の真下の部分に窓 82が形成されるようにマスク 78を形成したとして も、斜めに入射する分岐光 26に対しては、依然、受光領域 28に到達しない光が発 生し、迷光 84となる場合がある。また、受光領域 28に入るべきであった光がマスク 78 で遮断されてしまい、効率の低下にもつながる。
[0064] 一方、この第 4の具体例に係る PDアレイ 30Dにおいては、図 7に示すように、マスク 78を、斜めに入射する分岐光 26を考慮した位置に形成するようにしている。つまり、 オフセットを設けるようにしている。例えば、受光領域 28の中心部から真下に延ばし た線を基準線 mとすると、マスク 78の窓 82の中心線 nが基準線 mよりも分岐部 36 (図 2参照)寄りに所定距離 d (例えば 50 m)程度ずらした位置にくるようにマスク 78を 形成する。これにより、迷光 84の発生をほとんどなくすことができ、クロストークを改善 することができると共に、受光領域 28での受光効率等を向上させることができる。
[0065] 次に、第 5の具体例に係る PDアレイ 30Eは、図 9に示すように、基体 54に形成され た各受光領域 28に対応してそれぞれ力ソード電極 91とアノード電極 92とが形成され て構成されている。
[0066] PDアレイ 30Eの出力電流 iの特性に影響を与えるファクタとして、上述の光学的な クロストークのほかに、電気的なクロストークも挙げられる。つまり、基体 54に複数の受 光領域 28が形成されている場合に、例えば図 10に示す第 2の比較例に係る PDァレ ィ 90に示すように、各受光領域 28に対して共通に力ソード電極 91が接続されること から、各受光領域 28にて発生した電荷の一部が漏れ電流 idとして、隣接する受光領 域 28や他の受光領域 28を介してアノード電極 92に流れてしま 、、電気的なクロスト ークとなる。
[0067] しかし、この第 5の具体例に係る PDアレイ 30Eでは、図 9に示すように、前記受光領 域 28のそれぞれがアノード電極 92と力ソード電極 91とを有することから、電気的なク ロストークを抑えることができる。これは低抵抗の電極 (例えば Au)が力ソードに繋が
れることにより、発生したキャリアが隣接チャネルの力ソードに漏れることなぐ低抵抗 の Au電極に引つ張られるため、クロストークの減少を実現する。
[0068] また、他の構成例としては、図 11に示す第 6の具体例に係る PDアレイ 30Fのように 、基体 54のうち、受光領域 28間にそれぞれスリット 85を設けるようにしてもよい。この 場合、各受光領域 28に対応して力ソード電極 91とアノード電極 92が形成されること となる。
[0069] この第 6の具体例に係る PDアレイ 30Fでは、受光領域 28間にスリット 85を設けて 物理的に分離するようにしたので、漏れ電流 idの経路が分断されることから、各チヤ ネルの検出電流 iがそれぞれ対応するアノード電極 92に流れ、上述のような電気的 なクロストークを防ぐことができる。し力も、隣接する受光領域 28や他の受光領域 28 に迷光 84が進入することもなくなるため、迷光 84によるクロストークも改善させること ができる。
[0070] 次に、第 7の具体例に係る PDアレイ 30Gは、図 12に示すように、複数の基体 54A 、 54B及び 54Cがそれぞれ所定の間隔を置いて配列され、各基体 54A、 54B及び 5 4Cにそれぞれ 1つの受光領域 28が形成されている。
[0071] この場合も、漏れ電流 idの経路が分断されることから、上述のような電気的なクロス トークを防ぐことができ、し力も、隣接する受光領域 28や他の受光領域 28に迷光が 進人することちなくなるため、迷光〖こよるクロストークち改善させることができる。
実施例
[0072] 本実施の形態に係る光モジュール 10の実施例について説明する。先ず、実施例 に係る光モジュールに使用するガラス基板 12を研削加工にて作製した。ガラス基板 12の材料として、ホウケィ酸ガラス (ここでは特にパイレックス (登録商標)ガラス材料) を使用した。このガラス基板 12に角度 70° の V溝 14を 12本研削加工にて形成した
[0073] 次に、光ファイバアレイ 18の組み立てを行った。光ファイバアレイ 18は 250 mピッ チの 12芯テープ心線を用いた。 12芯テープ心線を、途中の被覆除去部(中剥き部) が 12mmになるように中剥きし、ガラス基板 12の V溝 14へ載置し、固定用接着剤 46 にて固定した。
[0074] 次に、光ファイバアレイ 18に対するスリット 20の加工を行った。スリット 20は、幅 30 μ m、深さ 200 μ m、傾斜角度 ocは 20° とした。
[0075] 次に、フィルタ部材 22の製作を行った。石英基板 48に例えば酸ィ匕タンタル、石英、 アルミナ、酸ィ匕チタン等力も任意に選ばれた多層膜 50を蒸着により形成し、多層膜 5 0が形成された石英基板 48を厚さ 20 μ m、長さ 5mm、幅 200 μ mの形状に加工して フィルタ部材 22を作製した。傾斜設計は 20° 、分岐比率は透過 90%、反射 10%と した。
[0076] その後、フィノレタ部材 22をスリット 20内へ挿入し、光ファイバ 16のコア 40とほぼ同 等の屈折率 (光ファイバ 16のコア 40の屈折率の ± 0. 1程度の屈折率)をもつ榭脂 5 2をスリット 20内における該スリット 20とフィルタ部材 22との隙間に充填して、フィルタ 部材 22の実装を行った。榭脂 52にはシリコーン系榭脂を用いた。榭脂 52の充填後 、該榭脂 52を硬化させた。
[0077] その後、 PDアレイ 30のサブマウント 32への実装を行った。 PDアレイ 30のチャネル 数は 12chとし、寸法は、高さ 150 μ m、幅 420 μ m、長さ 3mmとした。
[0078] PDアレイ 30の構造は、本実施の形態に係る光モジュール 10と同様に、裏面入射 型を採用した。受光領域 28の上部(サブマウント 32側)は異方性導電ペースト 56を 充填した。
[0079] 具体的には、 PDアレイ 30は、 12チャネルの PINフォトダイオードを用いた。受光領 域 28の径は 60 μ m、受光領域 28の配列ピッチは 250 μ m、基体 54の厚みは 150 μ m、アノード電極及び力ソード電極には、それぞれ厚みが 30 μ mの Auバンプ 60を 用いた。
[0080] そして、 PINフォトダイオードの裏面に、耐湿用の膜 74として屈折率 1. 93の SiN膜 を厚み 200nm程度堆積させた。この SiN膜は、 PDアレイの耐湿性等を向上させ、保 護するものであり、厚みは 50nm以上あればよい。その後、 PINフォトダイオードをァ レイ状に切断して、 PDアレイ 30とした後、該 PDアレイ 30をアルミナのサブマウント 3 2に銀ペーストを用 1、て実装した。
[0081] その後、 PDアレイ 30の端面 (耐湿用の膜 74の端面)上に反射防止用の多層膜 72 を形成した。反射防止用の多層膜 72は、分岐光 26の入射角(鉛直線とのなす角)を
40— 50° で想定し、 SiNの屈折率、膜厚を考慮し、 Al O、 TiO、 Ta Oの多層膜 7
2 3 2 4 5
2とした。
[0082] 上述した PINフォトダイオードをアレイ状に切断して PDアレイ 30としたとき、 PDァレ ィ 30の側面は何も保護されていないため、上述のように、 PDアレイ 30とした後に、多 層膜 72を形成することで、該多層膜 72が保護層の役目も果たすため好ましい。
[0083] その後、 PDアレイ 30の端面(多層膜 72の端面)上に Au膜を選択的にスパッタし、 Auによるマスク 78を形成した。このとき、分岐光 26の入射角(鉛直線とのなす角)を 40— 50° で想定し、マスク 78の窓 82の開口径を 80 μ m、窓 82の中心線 nを受光 領域 28の基準線 m (図 7参照)から分岐部 36寄りに約 50 μ m程度のオフセットを設 けて、マスク 78を形成した。
[0084] その後、 PDアレイ 30をチャネル毎に分離した。この分離は、 PDアレイ 30を 250 μ mピッチで切断を行い、チャネル毎の分離幅は 30 μ mとし、深さは基体 54が完全に 分離できる深さ(この実施例では 150 /z m以上)とした。もちろん、 PDアレイ 30は、チ ャネル毎に分離されても、サブマウント 32に実装された状態を維持している。なお、 P Dアレイ 30のサブマウント 32への実装前に、 PDアレイ 30をチャネル毎に分離し、そ の後、チャネル毎にサブマウント 32に並べて実装するようにしてもょ 、。
[0085] 次に、 PDアレイ 30の調心を行った。具体的には、サブマウント 32に光ファイバァレ ィ 18と PDアレイ 30とのギャップを決定するためのスぺーサ 34を取り付けた。
[0086] スぺーサ 34の構成材料はホウケィ酸ガラス、この場合、特にパイレックス (登録商標 )ガラス材料とした。また、ギャップ長は 10 mに設定した。つまり、 Auバンプ 60も含 め PDアレイ 30の厚みが 190 μ mなので、スぺーサ 34を 200 μ mとした。
[0087] そして、分岐光 26の光路となる光ファイバ 16の上部に必要量の屈折率整合榭脂 4 4 (スリット 20内に充填した榭脂 52と同じ材質の榭脂)を塗布した。 PDアレイ 30のァラ ィメントは、光ファイバアレイ 18の両端のチャネルに光を入射し、分岐光 26の PD受 光パワー(両端チャンネルに対応する受光領域 28での受光パワー)が最大になるよう に、アクティブァライメントにて行った。このときの PD受光パワーのモニタは、両端チ ャネルに対応する受光領域 28からの出力を、サブマウント 32にプローブを当て、電 流値を見ながら行った。もちろん、予め分岐光 26の出射する位置を計算によって求
めておき、その位置が容易に判別できるようにァライメントマークを形成し、該ァライメ ントマークに合わせて PDアレイ 30をァライメント(パッシブァライメント)するようにして ちょい。
[0088] その後、紫外線により PDアレイ 30を光ファイバアレイ 18上に固定した。この段階で
、実施例に係る光モジュールが完成する。最後に、実施例に係る光モジュールをパッ ケージに実装し、製品とした。
[0089] そして、実施例に係る光デバイスの測定評価を実施した。分岐光 26の偏光依存性 は各チャネルで 0. 2dB未満と良好であり、クロストークも 40dB以上と良好な結果を 得た。
[0090] なお、本発明に係る光素子及び光モジュールは、上述の実施の形態に限らず、本 発明の要旨を逸脱することなぐ種々の構成を採り得ることはもちろんである。