明細書
高脂血症治療剤
技術分野
本発明は、 LDL受容体発現上昇をターゲットにした高脂血症治療薬のスクリ 一ユング方法に関する。 更に詳しくは転写制御を介さない LDL受容体発現上昇 作用に基づく高脂血症治療薬のスクリーニング方法ならぴに該スクリーニングに よって得られ得る高脂血症治療に有用な物質に関するものである。
背景技術
ここ数年間で、 ァテローム性の冠動脈疾患 (CAD) による死亡率の減少とい う点が非常に大きく進歩したにもかかわらず、 ほとんどの先進国において、 心臓 血管疾患は、 依然として主要な死亡原因となっている。 CADと血清総コレステ ロール濃度、 特に低密度リポタンパク質 (LDL) コレステロール濃度の上昇と の関係は文献で十分に実証されている。 冠動脈性心疾患 (CHD) の進行におい て、 脂質の変調が重要な因子であることは十分に確証されている [S c h e t t 1 e r, G. 著、 "心筋梗塞後の患者の血清コレステロールの低下における食事 と薬物の役割,, 「Ca r d i o v a s c. Dr u g s Th e r . J, 1989年, 2/6 (795〜 799) を参照]。
一方、 高脂血症治療薬のターゲットとして、 肝臓中の LDL受容体の上昇が考 えられることは既に知られている (参考文献: New. En g. J. Me d 305 (1981) 515— 517等)。 LD L受容体は、 各臓器に発現して おり、 LDLを血中から取り込む際に必要な受容体であり、 生体内各臓器へのコ レステロール分配に重要であるだけでなく、 血中コレステロール量の調節におい ても主要な役割を担っている。
例えば、 ゴールドシュタイン (Go l d s t e i n, J. L.) らは、 "家族性 高コレステロール血症における LDL受容体欠損、 病因おょぴ治療とのかかわ り " 「Me d. C l i . No r t h Am. J, 1982年, 66/2 (335
〜362) において、 『家族性高コレステロール血症は、 心筋梗塞の原因となる
ことが認められた最初の遺伝性疾患であった。 高コレステロール血症およぴ冠動 脈ァテロ一ム性硬ィヒの両方を引き起こす単一遺伝子突然変異の未解決の実例が今 日まで残っている。』 ことを指摘している。
生体内における LD L受容体の発現制御は、 細胞内コレステロール量に依存し た遺伝子転写段階で行われていると考えられている (細胞内コレステロール量に よるネガティブフィードパックレギュレーション)。 転写後、 LDL受容体 mR NAはまず、 前駆体 (未成熟型) としてタンパク質に翻訳され、 糖鎖付加を受け て成熟型の LDL受容体として細胞表面に発現するが、 この翻訳後の制御につい ては、 現在のところ、 その存在も含めてほとんど判っていない。 また、 mRNA より合成される LDL受容体タンパク質の一部が、 分解され細胞表面に発現しな い経路の存在が考えられるが、 その詳細は不明である。
また、 転写活性 (mRNA合成) が上昇するのに LDL受容体タンパク質発現 量は上昇しないという報告 (Eu r . J. B i o c h em. (1993) v o 1. 216, 527— 38等) はあるが、 転写後の mRNAの安定性等が関 与する可能性も考えられており、 翻訳後 (タンパク合成後) の作用については不 明である。
肝細胞中の遊離コレステロール量が減少することにより、 肝細胞表面上の L D L受容体が誘導される。 LDL受容体は血中の LDLと結合し、 肝細胞内に取り 込むことによつて血中の L D Lを減少させる。 肝細胞内に取り込まれた L D L中 のコレステロールは、 胆汁酸等に変換され腸管へ排出される。 より細胞表面上の LD L受容体量を上昇させることにより、 血中の LD L量をより低減化すること ができ、 従って、 高脂血症等の LDLが悪玉として作用する種々の疾患の予防 · 治療への用途が期待できる。 力べして LDL受容体の発現上昇をターゲットにし た高脂血症治療薬開発は、 広く行われている。 最もよく知られているのは、 HM G— Co A還元酵素阻害剤で、 コレステロールの生合成を阻害することで、 間接 的に L D L受容体遺伝子の転写を活性ィ匕させ L D L受容体発現を上昇させる (参 考文献: S c i e n c e 232 (1986) 34-47 ; J. L i p i d
Re s. 25 (1984) 1450— 1461等)。
このほか、 文献的に LD L受容体の発現上昇作用を持つ薬剤の報告は多数ある 力 いずれも何らかの (詳細なメカニズムが不明なものも含めて) 転写活性化を 介したものである。 L i f i b r o 1のように、 明確に転写活性ィ匕を示してはい ないが、 コレステロール生合成阻害があり、 恐らく転写活性ィ匕によると考えられ ている化合物もある (At he r o s c l e r o s i s (2000) v o l . 153, 69— 80)。 現状で、 LDL受容体の発現上昇作用に関して転写活性 化を経由しないルートが存在するという報告はない。
発明の開示
本発明は、 LDL受容体の発現を促進する作用、 特に LDL受容体遺伝子の転 写活性化という経路を介さずに LDL受容体タンパク質の発現を促進する作用を 有する、 従来になかった新しい作用機序を有する高脂血症治療剤ならびに血中脂 質低下剤を提供することを目的とする。 さらに本発明の別の目的は、 かかる用途 に有用な、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物のスクリーニング方 法ならびに当該スクリーニング方法により得られ得る、 あるいは選択され得る化 合物を提供することである。
本発明者等は鋭意検討を進めた結果、 転写活性化経路に依存しない L D L受容 体タンパク質発現上昇作用が存在することを見出し、 その作用による血中脂質低 下作用を確認した。 さらにかかる作用を有する化合物を見出し、 LDL受容体遺 伝子の転写後の過程が、 当該ィ匕合物の LDL受容体タンパク質発現調節に関与し ているという明確な知見を得て、 そしてそのような化合物のスクリーユング方法 を確立して本発明を完成するに至つた。
即ち本発明は下記の通りである。
[1] 式 1
〔式中、 環 Aは置換基を有していてもよいピリジン環を表す。 Xは、 式
(式中、 R 1は水素原子、 アルキル基、 置換アルキル基、 アルケニル基、 置換ァ ルケニル基、 アルキニル基、 置換アルキニル基、 シクロアルキル基、 または置換 シクロアルキル基を表す。 ) または式
[式中、 Wは水素原子または式—O R a (R aはアルキル基、 置換アルキル基、 アルケニル基、 置換アルケニル基、 アルキニル基、 または置換アルキニル基を表 す。 ) を表す。 ] で示される基を表す。 Zは結合手、 一 NH—、 炭素原子数 1も しくは 2のアルキレン基または一 CH= C H—を表す。 Yはアルキル基、 置換ァ ルキル基、 シクロアルキル基、 置換シクロアルキル基、 芳香族基または置換芳香 族基を表す。 Bはアルキル基、 置換アルキル基、 アルケニル基、 置換アルケニル 基、 シクロアルキル基、 置換シクロアルキル基、 芳香族基、 または置換芳香族基 を表す。 〕 で表されるナフチリジン誘導体もしくはそのプロドラッグまたはそれ • らの薬学上許容される塩を有効成分として含有する、 L D L受容体タンパク質の 発現促進剤。
[ 2 ] 式 1で表されるナフチリジン誘導体が式 2
〔式中、 環 Aは置換基を有していてもよいピリジン環を表す。
Yはアルキル基、 置換アルキル基、 シクロアルキル基、 置換シクロアルキル基、 芳香族基または置換芳香族基を表す。
R 1は水素原子、 アルキル基、 置換アルキル基、 アルケニル基、.置換アルケニ ル基、 アルキニル基、 置換アルキニル基、 シクロアルキル基、 または置換シクロ アルキル基を表す。
R 2は水素原子または低級アルキル基を表す。
R 3は低級アルキル基を表す。
Z aは、
1 ) 一 D 1— Q
[式中、 D 1は結合手または不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数 1〜 8 の 2価の炭化水素基を表し、 Qは水酸基、 カルボキシル基、 ヘテロァリール基、 置換へテロアリーノレ基、 または式:一 NR 4 R 5 (R 4および R 5は互いに独立し て、 水素原子、 低級アルコキシ基、 低級アルキル基、 置換低級アルキル基、 シク 口アルキル基またはァラルキル基を表すか、 または R 4および R 5が互いに結合 してそれらが結合する窒素原子とともに、 環中にさらに式:一 N R 8— (R 8は 水素原子、 低級アルキル基、 置換低級アルキル基、 フエニル基、 置換フエニル基、 ベンジル基、 置換べンジル基、 または低級アルコキシカルボ二ル基を表す。 ) で 表される基を 1個、 または酸素原子 1個を含んでもよい、 環を構成する炭素原子 数が 4〜 8個の飽和環状アミノ基を表す。 ) を表す。 但し、 Qがへテロアリール
基または置換へテロアリール基である場合は、 D1は結合手とはならない。 ] または、
2) 一 D2— M— E— W
[式中、 D 2は結合手または不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数 1〜 8 の 2価の炭化水素基を表し、 Mは酸素原子、 硫黄原子、 スルブイニル基もしくは スルホニル基、 または式一 NHC (=θ) ―、 一 C (=O) NH—もしくは一 N R6— (R 6は水素原子もしくは低級アルキル基を表す。 ) で表される基を表し、 Eは結合手または不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数 1〜 8の 2価の炭化 K素基を表し、 Wは水酸基、 力ルポキシル基、 ヘテロァリール基、 置換へテロア リーノレ基、 または式:一 NR4R5 (R4および R5は前記の意味を表す。 ) で表 される基を表す。 但し、 Wが水酸基、 カルボキシル基もしくは式一 NR4R5で 表される基の時は Eは結合手とはならない。 ] を表す。 〕 で表される化合物であ る、 上記 [1] 記載の LDL受容体タンパク質の発現促進剤。
[3] ナフチリジン誘導体が下記式 A
〔式中、 n— B uは n—ブチノレ基を、 i一 P rはイソプロピル基を表す。 ] で表される化合物である、 上記 [1] 記載の LDL受容体タンパク質の発現促進 剤。
[4] LDL受容体タンパク質の発現促進が、 LDL受容体の mRNA転写後の タンパク質発現プロセスを制御することによって誘導されるものである、 上記 [1] 〜 [3] のいずれかに記載の LDL受容体タンパク質の発現促進剤。
[5] さらに、 LDL受容体の遺伝子発現に影響を与えないことを特徴とする上
記 [4] 記載の LDL受容体タンパク質の発現促進剤。
[6] LD L受容体の mR N A転写後のタンパク質発現プロセスを制御すること によって L D L受容体タンパク質の発現を促進する化合物のスクリ一ユング方法 であって、 以下の工程を含むスクリーニング方法:
(1) LDL受容体発現細胞を使用し、
(2) LDL受容体の転写抑制因子の存在下、 被検物質の存在下または非存在下 で当該細胞を培養し、
( 3 ) 被検物質存在下または非存在下で培養した L D L受容体発現細胞の L D L 受容体タンパク質発現量を測定し、
(4) LDL受容体タンパク質の発現量を増加させる物質を選択する。
[7] LDL受容体タンパク質の未成熟型と成熟型の量を測定し、 未成熟型に対 する成熟型の比が大きい物質を選択する工程をさらに含む上記 [6] 記載のスク リーユング方法。
[8] LDL受容体の m R N A転写後のタンパク質発現プロセスを制御すること によって LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物のスクリーニング方法 であって、 以下の工程を含むスクリーニング方法:
(1) LDL受容体発現細胞を使用し、
(2) LDL受容体の転写抑制因子の存在下、 被検物質の存在下または非存在下 で当該細胞を培養し、
(3) 被検物質の存在下または非存在下で培養した LDL受容体発現細胞に、 放 射性同位元素で標識されたアミノ酸を添加し、
(4) 経時的に一定量の細胞を採取し、 細胞を可溶化後、 細胞タンパク質画分を 調製し、
( 5 ) 得られた細胞タンパク質画分中に存在する L D L受容体タンパク質を免疫 沈降させ、
( 6 ) 免疫沈降物中の L D L受容体タンパク質の量を測定し、
(7) LDL受容体タンパク質の発現量を増加させる物質を選択する。
[ 9 ] 免疫沈降物中の未成熟型 LDL受容体タンパク質と成熟型 LDL受容体タ ンパク質の量を測定し、 未成熟型 LDL受容体タンパク質量に対する成熟型 L D L受容体タンパク質量の比が大きい物質を選択する工程をさらに含む上記 [8] 記載のスクリーニング方法。
[10] LDL受容体の mRNA転写後のタンパク質発現プロセスを制御するこ とによって LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物のスクリーニング方 法であって、 以下の工程を含むスクリーニング方法:
(1) LDL受容体発現細胞を使用し、
(2) LDL受容体の転写抑制因子の存在下、 被検物質の存在下または非存在下 で当該細胞を培養し、
(3) 被検物質の存在下または非存在下で培養した LDL受容体発現細胞に、 放 射性同位元素で標識されたアミノ酸を添加後、 一定期間培養し、
(4) 放射性同位元素を含まない培養液に交換後、 経時的に一定量の細胞を採取 し、 細胞を可溶化した後、 細胞タンパク質画分を調製し、
(5) 得られた細胞タンパク質画分中に存在する LDL受容体タンパク質を免疫 沈降させ、
( 6 ) 免疫沈降物中の LD L受容体タンパク質の量を測定し、
(7) LDL受容体タンパク質の発現量を増加させる物質を選択する。
[11] 免疫沈降物中の未成熟型 LDL受容体タンパク質と成熟型 LDL受容体 タンパク質の量を測定し、 未成熟型 LDL受容体タンパク質量に対する成熟型 L D L受容体タンパク質量 比が大きい物質を選択する工程をさらに含む上記 [ 1 0] 記載のスクリーニング方法。
[12] LDL受容体の転写抑制因子が 25—ヒドロキシコレステロールである、 上記 [6] 、 [8] および [10] のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[13] 陽性対照として、 式 Aで表される化合物を用いることを特徴とする上記
[6] 、 [8] および [10] のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[14] LDL受容体タンパク質の発現量を増加させる物質を選択する工程が、
式 Aで表される化合物が有する LDL受容体タンパク質発現促進活性以上の活性 を有する物質を選択する工程である、 上記 [6] 、 [8] および [10] のいず れかに記載のスクリ一ユング方法。
[15] 未成熟型 LDL受容体タンパク質量に対する成熟型 LDL受容体タンパ ク質量の比が大きい物質を選択する工程が、 式 Aで表される化合物を添加した場 合に得られる比以上の値である物質を選択する工程である、 上記 [7] 、 [9] および [11] のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[16] 上記 [6] 〜 [15] のいずれかに記載のスクリーニング方法によって 得られる、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物もしくはそのプロド ラッグまたはそれらの薬学上許容される塩を有効成分として含有する、 LDL受 容体タンパク質の発現促進剤。
[17] 上記 [6] 〜 [15] のいずれかに記載のスクリーニング方法によって 得られる、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物が、 式 1で表される ナフチリジン誘導体もしくはそのプロドラッグまたはそれらの薬学上許容される 塩である、 上記 [16] 記載の LDL受容体タンパク質の発現促進剤。
[18] 上記 [6] 〜 [15] のいずれかに記載のスクリーニング方法によって 得られる、 L D L受容体タンパク質の発現を促進する化合物もしくはそれらのプ 口ドラッグまたはそれらの薬学上許容される塩を有効成分として含有する、 血中 脂質低下剤。
[19] 上記 [6] 〜 [15] のいずれかに記載のスクリーニング方法によって 得られる、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物もしくはそのプロド ラッグまたはそれらの薬学上許容される塩を有効成分として含有する、 高脂血症 治療剤。
[20] 式 1、 好ましくは式 2、 特に好ましくは式 Aで表されるナフチリジン誘 導体もしくはそのプロドラッグまたはそれらの薬学上許容される塩の有効量を投 与対象に投与することを含む、 該対象内における LD L受容体タンパク質の発現 を促進する方法。
[21〕 LDL受容体タンパク質の発現促進が、 LDL受容体のmRNA転写後 のタンパク質発現プロセスを制御することによつて誘導されるものである、 上記 [20〕 記載の方法。
[22] さらに、 LDL受容体の遺伝子発現に影響を与えないことを特徴とする 上記 [21] 記載の方法。
[23] LDL受容体タンパク質の発現促進剤を製造する為の、 式 1、 好ましく は式 2、 特に好ましくは式 Aで表されるナフチリジン誘導体もしくはそのプロド ラッグまたはそれらの薬学上許容される塩の使用。
[24] LDL受容体タンパク質の発現促進が、 LDL受容体の:mRNA転写後 のタンパク質発現プロセスを制御することによって誘導されるものである、 上記 [23] 記載の使用。
[25] さらに、 LDL受容体の遺伝子発現に影響を与えないことを特徴とする 上記 [24] 記載の使用。
[26] 上記 [6] 〜 [15] のいずれかに記載のスクリーニング方法によって 得られる、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物もしくはそのプロド ラッグまたはそれらの薬学上許容される塩の有効量を投与対象に投与することを 含む、 該対象内における L D L受容体タンパク質の発現を促進する方法。
[27] LDL受容体タンパク質の発現促進が、 LDL受容体の mRNA転写後 のタンパク質発現プロセスを制御することによって誘導されるものである、 上記 [26] 記載の方法。
[28] さらに、 LDL受容体の遺伝子発現に影響を与えないことを特徴とする 上記 [27] 記載の方法。
[29] LDL受容体タンパク質の発現促進剤を製造する為の、 上記 [6] 〜
[15] のいずれかに記載のスクリーニング方法によって得られる、 LDL受容 体タンパク質の発現を促進するィ匕合物もしくはそのプロドラッグまたはそれらの 薬学上許容される塩の使用。
[30] LDL受容体タンパク質の発現促進が、 LDL受容体の mRNA転写後
のタンパク質発現プロセスを制御することによつて誘導されるものである、 上記
[29〕 記載の使用。
[31] さらに、 LDL受容体の遺伝子努現に影響を与えないことを特徴とする 上記 [30] 記載の使用。
[32] 上記 [6] 〜 [15] のいずれかに記載のスクリーニング方法によって 得られる、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物もしくはそのプロド ラッグまたはそれらの薬学上許容される塩の有効量を、 それを必要とする患者に 投与することを含む、 血中脂質を低下する方法。
[33] LDL受容体タンパク質の発現促進が、 LDL受容体の mRNA転写後 のタンパク質発現プロセスを制御することによって誘導されるものである、 上記 [32] 記載の方法。
[34] さらに、 LDL受容体の遺伝子発現に影響を与えないことを特徴とする 上記 [33] 記載の方法。
[35] 血中脂質低下剤を製造する為の、 上記 [6] 〜 [15] のいずれかに記 載のスクリ一エング方法によって得られる、 LDL受容体タンパク質の発現を促 進する化合物もしくはそのプロドラッグまたはそれらの薬学上許容される塩の使 用。
[36] LDL受容体タンパク質の発現促進が、 LDL受容体の mRNA転写後 のタンパク質努現プロセスを制御することによつて誘導されるものである、 上記 [35] 記載の使用。
[37] さらに、 LDL受容体の遺伝子発現に影響を与えないことを特徴とする 上記 [36] 記載の使用。
[38] 上記 [6] 〜 [15] のいずれかに記載のスクリーニング方法によって 得られる、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物もしくはそのプロド ラッグまたはそれらの薬学上許容される塩の有効量を、 それを必要とする患者に 投与することを含む、 高脂血症の治療方法。
[39] LDL受容体タンパク質の発現促進が、 LDL受容体の mRNA転写後
のタンパク質発現プロセスを制御することによって誘導されるものである、 上記
[38] 記載の方法。
[40] さらに、 LDL受容体の遺伝子発現に影響を与えないことを特徴とする 上記 [39] 記載の方法。
[41] 高脂血症治療剤を製造する為の、 上記 [6:] 〜 [15] のいずれかに記 載のスクリーニング方法によって得られる、 LDL受容体タンパク質の発現を促 進する化合物もしくはそのプロドラッグまたはそれらの薬学上許容される塩の使 用。
[42] LDL受容体タンパク質の発現促進が、 01^受容体の1111 転写後 のタンパク質発現プロセスを制御することによって誘導されるものである、 上記 [41] 記載の使用。
[43] さらに、 LDL受容体の遺伝子発現に影響を与えないことを特徴とする 上記 [42] 記載の使用。
図面の簡単な説明
図 1は、 培養肝細胞株を用いたインビトロでの化合物 Aの LDL受容体タンパ ク質量おょぴ mRNA量に対する影響を調べた結果を示す図である。
(A) 実験条件の要約を示す図である。
(B) 化合物 Aの、 LDL受容体タンパク質量への影響を調べた、 ィムノプロッ ティングの結果を示す図である。
(C) 化合物 Aの、 LDL受容体 mRNA量への影響を調べたグラフである。 図 2は、 培養肝細胞株を用いたィンビトロでの被験物質の L D L受容体タンパ ク質量および mRNA量に対する影響 (スタチン系薬剤との対比) を調べた結果 を示す図である。
(A) 実験条件の要約を示す図である。
(B) 化合物 A及びアト口パスタチンの、 LDL受容体タンパク質量への影響を 調べた、 ィムノブロッテイングの結果を示す図である。
(C) 化合物 A及ぴアト口パスタチンの、 LDL受容体 mRNA量への影響を調
ベたグラフである。
図 3は、 培養細胞株を用いたインビトロでの被験物質の LD L受容体 mRNA の安定性に対する影響を調べた結果を示す図である。
(A) 実験条件の要約を示す図である。
(B) 化合物 Aの、 LDL受容体 mRNAの安定性に及ぼす影響を調べた結果を 示すグラフである。
(C) PMAの、 LDL受容体 mRNAの安定性に及ぼす影響を調べた結果を示 すグラフである。
図 4は、 ハムスターを用いたインビポでの被験物質の LDL受容体タンパク質 量および mRNA量に対する影響を調べた結果を示す図である。
(A) 実験条件の要約を示す図である。
(B) (上段) 化合物 Aの、 LDL受容体タンパク質量への影響を調べたィムノ プロッティ'ングの結果を示す図である。 (下段) ィ匕合物 Aの、 血清総コレステロ ール値に及ぼす影響を調べた結果である。
(C) 化合物 Aの、 LDL受容体 mRNA量への影響を調べた結果を示すグラフ である。
図 5は、 培養肝細胞株を用いたィンビトロでの被験物質の L D L受容体タンパ ク質合成に対する影響を調べた結果を示す図である。
(A) 実験条件の要約を示す図である.。
(B) 未成熟型 LDL受容体と成熟型 LDL受容体の合成量の経時的変ィ匕を示し たグラフである。
( C ) 未成熟型 LDL受容体と成熟型 LDL受容体の比の経時的変動を示したグ ラフである。
図 6は、 培養肝細胞株を用いたィンビトロでの被験物質の L D L受容体タンパ ク質成熟過程に対する影響を調べた結果を示す図である。
(A) 実験条件の要約を示す図である。
(B) LD L受容体の成熟過程を測定したォートラジォグラフィ一の結果を示す
W 図である。
( C ) 未成熟型 L D L受容体量と成熟型 L D L受容体量の経時的変化を示したグ ラフである。
(D) 未成熟型 L D L受容体と成熟型 L D L受容体の比の経時的変動を示したグ ラフである。
図 7は、 培養肝細胞株を用いたインビトロでの被験物質の S R— B I、 インス リン受容体発現に対する効果を示した図である。
(A) 実験条件の要約を示す図である。
(B) 化合物 Aの S R— B I発現に及ぼす影響を調べたィムノブロッテイングの 結果を示す図である。
(C) 化合物 Aのィンスリン受容体 サブュニット発現に及ぼす影響を調べたィ ムノブ口ッティングの結果を示す図である。
図 8は、 ハムスターを用いたインビポでの被験物質の S R— B I発現に対する 効果を調べた結果を示す図である。
(上段) 化合物 Αの、 S R— B I発現量への影響を調べたィムノプロッティング の結果を示す図である。
(下段) 化合物 Aの、 血清総コレステロール値に及ぼす影響を調べた結果である。
発明の詳細な説明
本発明において、 「L D L受容体の mR NA転写後のタンパク質発現プロセ ス」 とは、 L D L受容体タンパク質合成経路において、 L D L受容体の mR NA 転写後の工程であれば全て包含される。 より具体的には、 翻訳 (タンパク質合 成) 、 糖鎖付加 (未成熟型から成熟型への移行) 、 膜表面への輸送、 リソゾーム やプロテアソ ムによる分解等が例示される。 該 「タンパク質発現プロセス」 を 制御するとは、 上記の種々の工程における制御を意図し、 例えば、 翻訳効率の向 上、 成熟化の促進、 膜表面への輸送の効率化、 分解の抑制等が挙げられる。
本発明の L D L受容体タンパク質の発現促進剤は、 L D L受容体の mRNA転 写後のタンパク質発現プロセスを制御することによって L D L受容体発現を上昇
させるものであれば特に制限されず、 好ましくは L D L受容体遺伝子の発現なら ぴに mR N A転写には影響を与えない。 具体的には式 1
〔式中、 環 Aは置換基を有していてもよいピリジン環を表す。 Xは、 式
(式中、 R
1は水素原子、 アルキル基、 置換アルキル基、 アルケュル基、 置換ァ ルケニル基、 アルキニル基、 置換アルキニル基、 シクロアルキル基、 または置換 シクロアルキル基を表す。 ) または式
[式中、 Wは水素原子または式一 O R a (R aはアルキル基、 置換アルキル基、 アルケニル基、 置換アルケニル基、 アルキニル基、 または置換アルキニル基を表 す。 ) を表す。 ] で示される基を表す。 Zは結合手、 一 NH—、 炭素原子数 1も しくは 2のアルキレン基または一 C H = C H—を表す。 Yはアルキル基、 置換ァ ルキル基、 シクロアルキル基、 置換シクロアルキル基、 芳香族基または置換芳香 族基を表す。 Bはアルキル基、 置換アルキル基、 アルケュル基、 置換アルケニル 基、 シクロアルキル基、 置換シクロアルキル基、 芳香族基、 または置換芳香族基 を表す。 〕 で表されるナフチリジン誘導体もしくはそのプロドラッグまたはそれ らの薬学上許容される塩を有効成分として含有するものである。
〔式 1化合物〕
本明細書中、 式 1中の各種の基を詳細に説明すると次の通りである。 なお、 特 に指示のない限り、 各々の基の説明は他の置換基の一部である場合も含む。
環 Aは置換基を有していてもよいピリジン環を表し、 その窒素原子は縮合環の 縮合位置を除くいずれの場所にあってもよい (縮合環の橋頭原子にならない) が、 下記 (a ) 、 ( b ) 、 ( c ) で表されるものが好ましい。
(a) (b) (c)
また、 ピリジン環の置換基としては、 例えば低級アルキル基、 ハロゲン原子、 シァノ基、 トリフルォロメチル基、 ニトロ基、 アミノ基、 モノ低級アルキルアミ ノ基、 ジ低級アルキルアミノ基、 水酸基、 低級アルコキシ基、 低級アルキルチオ 基、 低級アルキルスルブイ二ル基、 低級アルキルスルホ -ル基等が挙げられる。 本発明でいう低級とは当該基のアルキル部分が低級アルキル基であることを意味 し、 そのような低級アルキル基としてはメチル、 ェチル、 プロピル、 2—プロピ ル、 プチル、 ペンチル、 へキシル等の炭素原子数が 1〜 6個の低級アルキル基を 挙げることができる。 ハロゲン原子としては例えばフッ素、 塩素、 臭素、 ヨウ素 が挙げられる。 上記ピリジン環の置換基は 1個または同一もしくは異なって複数 個あってもよい。
好ましくは、 環 Aは無置換のピリジン環、 特に式 (a ) で表される。
R R a及び Yにおけるアルキル基、 または置換アルキル基のアルキル基部 分としては、 例えば直鎖または分枝した炭素原子数 1〜8個のアルキル基が挙げ られ、 具体的には例えばメチル、 ェチル、 プロピル、 2—プロピル、 プチル、 2 一プチル、 2 _メチルプロピル、 1, 1—ジメチルェチル、 3—ペンチル、 3— へキシル、 4一へプチル、 4ーォクチル等が挙げられる。 R 1及ぴ R aにおける アルケニル基、 または置換アルケニル基のアルケニル基部分としては、 例えば直 鎖または分枝した炭素原子数 2〜 8個のアルケニル基が挙げられ、 具体的には例
えばビニル、 ァリル、 2—プロピュ /レ、 2—プテ-ノレ、 3—メチルー 2—プテ- ノレ、 3一へキセニノレ、 3ーェチ /レー 2—ペンテ二ノレ、 4ーェチノレ一 3—へキセニ ル等が挙げられる。 R 1及ぴ; R aにおけるアルキニル基、 または置換アルキニル 基のアルキニル基部分としては、 例えば直鎖または分枝した炭素原子数 3〜 8個 のアルキニル基が挙げられ、 具体的には例えば 2—プロピエル、 3—プチエル、 4—ペンチ二ノレ、 3—へキシュル、 5—メチノレ一 2—へキシニノレ、 6—メチノレー 4一ヘプチュル等が挙げられる。
Bにおけるアルキル基または置換アルキル基のアルキル基部分としては、 例え ば直鎖または分枝した炭素原子数 1〜 2 0個のアルキル基が挙げられ、 具体的に は例えばメチル、 ェチル、 プロピル、 2—プロピル、 プチル、 2—プチル、 2 - メチルプロピル、 1, 1ージメチルェチル、 ペンチル、 3—ペンチル、 へキシル、 ヘプチル、 ォクチル、 ゥンデシル、 ドデシル、 へキサデシル、 2, 2—ジメチル ドデシル、 2—テトラデシル、 n—ォクタデシル等が挙げられる。 Bにおけるァ ルケニル基または置換アルケ-ル基のアルケニル基部分としては、 例えば 1〜 2 個の二重結合を有する直鎖または分枝した炭素原子数 3〜 2 0個のアルケニル基 が挙げられ、 具体的には例えば 2—プロべニル、 2—ブテニル、 3—メチルー 2 一プテニノレ、 3—ペンテュル、 2—ォクテニル、 5—ノネニル、 4ーゥンデセニ ル、 5—ヘプタデセニル、 3—ォクタデセ -ル、 9ーォクタデセニル、 2, 2— ジメチル一 9ーォクタデセニル、 9, 1 2—ォクタデカジエエル等が挙げられる。
Y及び Bにおけるシク口アルキル基または置換シク口アルキル基のシク口アル キノレ基部分としては、 例えば炭素原子数 3〜 7個のシクロアルキル基が挙げられ、 具体的には例えばシクロプロピル、 シクロプチル、 シクロペンチル、 シクロへキ シル、 シクロへプチル等が挙げられる。
Y及び Bにおける芳香族基または置換芳香族基の芳香族基部分としてはァリ一 ル基、 ヘテロァリール基が挙げられる。 ァリール基としては、 例えばフエュル基、 ナフチル基等の炭素原子数 1 0個以下のァリール基が挙げられる。 ヘテロァリー ル基としては、 例えば窒素原子を 1〜 2個含む 5〜 6員単環式の基、 窒素原子を
1〜 2個と酸素原子を 1個もしくは硫黄原子を 1個含む 5〜 6員単環式の基、 酸 素原子を 1個もしくは硫黄原子を 1個含む 5員単環式の基、 窒素原子 1〜 4個を 含み、 6員環と 5または 6員環が縮合した二環式の基等が挙げられ、 具体的には、 例えば、 2—ピリジル、 3—ピ! ジル、 4—ピリジル、 2—チェニル、 3—チェ ニル、 3—ォキサジァゾリル、 1一イミダゾリル、 2—イミダゾリル、 2—チア ゾリル、 3—イソチアゾリル、 2—ォキサゾリル、 3—イソォキサゾリル、 2— フリル、 3—フリル、 3—ピロリル、 8—キノリル、 2—キナゾリニル、 8—プ リュル等が挙げられる。
Y及び Bにおける置換芳香族基の置換基としては、 1個または同一もしくは異 なって複数個あってもよく、 例えばハロゲン原子、 シァノ基、 トリフルォロメチ ル基、 ニトロ基、 水酸基、 メチレンジォキシ基、 低級アルキル基、 低級アルコキ シ基、 低級アルカノィルォキシ基、 アミノ基、 モノ低級アルキルアミノ基、 ジ低 級アルキルアミノ基、 カルパモイル基、 低級アルキルアミノカルボニル基、 ジ低 級アルキルアミノカルボニル基、 カルボキシル基、 低級アルコキシカルポニル基、 低級アルキルチオ基、 低級アルキルスルフィエル基、 低級アルキルスルホニル基、 低級アルカノィルァミノ基、 低級アルキルスルホンアミド基または式一D " — E, - F {D 1 ' は、 結合手、 酸素原子、 硫黄原子もしくは式一 NR 3 ' —
(R 3 ' は水素原子もしくは低級アルキル基を表す。 ) を表し、 E ' は不飽和結 合を'含んでいてもよレ、炭素原子数 1〜 6の 2価の炭化水素基もしくはフエ二レン 基を表し、 Fは、 水酸基、 カルボキシル基、 低級アルコキシカルボ二ル基、 ベン ジルォキシカルボ二ル基、 ハロゲン原子、 シァノ基、 ベンジルォキシ基、 低級ァ ルコキシ基、 低級アルカノィルォキシ基、 低級アルキルチオ基、 低級アルキルス ルフィニル基、 低級アルキルスルホニル基、 低級アルカノィルァミノ基、 低級ァ ルキルスルホンアミド基、 フタルイミド基、 ヘテロァリール基、
式一 N R 4, R 5 ' (R 4, および R 5, は互いに独立して、 水素原子もしくは低 級アルキル基を表すか、 または R 4 > および R 5 ' が互いに結合して、 それらが 結合する窒素原子とともに、 環中にさらに一 NR 8 ' ― (R 8 > は水素原子、 低
級アルキル基、 フエニル基、 またはベンジル基を表す。 :) を 1個、 または酸素原 子 1個を含んでもよい飽和 5ないし 7員環の環状アミノ基を表す。 ) 、 もしくは 式— C ( = 0 ) N R 4 ' R 5 ' ( 4 ' 、 R 5 ' は前記の意味を表す。 ) を表 す。 } で示される基が挙げられる。 不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数 1 〜6の 2価の炭化水素基としては、 例えばメチレン、 エチレン、 トリメチレン、 テトラメチレン、 ペンタメチレン、 またはへキサメチレン等のアルキレン鎖、 プ ロぺエレン等のアルケニレン鎖、 プロピ-レン等のアルキニレン鎖が挙げられる。
Fにおけるヘテロァリール基としては、 例えば窒素原子を 1〜 3個含む 5〜 6員 環の基、 酸素原子を 1個もしくは硫黄原子を 1個含む 5員環の基等が挙げられ、 具体的には、 例えば 2—ピリジル、 3—ピリジル、 4一ピリジル、 1 ピロリル、 1—イミダゾリル、 1一 (1, 2 , 4—トリァゾリル) 、 2—チェニル、 3—チ ェニル、 2—フリル、 3—フリル等が挙げられる。 これらのヘテロァリール基は 低級アルキル基で 1個または同一もしくは異なって複数個置換されていてもよい。 NR
4 ' R
5 ' が形成する環状アミノ基としては、 例えば 4一低級アルキル一 1 —ピぺラジュノレ、 4一フエ二ルー 1ーピぺラジュル、 4—ベンジル一 1—ピペラ ジニル等の
(R 8 ' は前記と同じ意味を表す。 ) で表される基、 または 1—ピロリジニル、
1ーピペリジニル、 1一ホモピベリジ二ル、 4一モルホリ -ル等が挙げられる。 置換アルキル基、 置換シクロアルキル基、 置換アルケニル基、 置換アルキニル 基の置換基は 1個または同一もしくは異なって複数個あってもよく、 置換基とし ては、 例えばノヽ口ゲン原子、 シァノ基、 ベンジルォキシ基、 トリフルォ口メチル 基、 水酸基、 低級アルコキシ基、 低級アルカノィルォキシ基、 アミノ基、 モノ低 級アルキルアミノ基、 ジ低級アルキルアミノ基、 カルパモイル基、 低級アルキル ァミノカルボニル基、 ジ低級アルキルアミノカルボ二ル基、 低級アルコキシカル
ボエルアミノ基、 カルボキシル基、 低級アルコキシカルボニル基、 低級アルキル チォ基、 低級アルキルスルフィエル基、 低級アルキルスルホニル基、 低級アル力 ノィルァミノ基、 低級アルキルスルホンァミド基、 フタルイミド基、 ヘテロァリ 一ノレ基、 飽和へテロ環基または式一 D 2 ' — E, 一 F {D 2 ' は、 酸素原子、 硫 黄原子もしくは式一 N R 3 ' ― (R 3 ' は前記の意味を表す。 ) を表し、 Eおよ ぴ Fは前記の意味を表す } で示される基が挙げられる。 ヘテロァリール基として は前記 Fと同様のへテロアリール基が挙げられる。 飽和へテロ環基としては、 例 えば 1一ピぺリジ-/レ、 1一ピロリジュル等の窒素原子 1個を有する 5〜 8員環 の基、 窒素原子 2個を有する 6〜8員環の基、 窒素原子 1個および酸素原子 1個 を有する 6〜 8員環の基が挙げられる。 また置換アルキル基としては、 シクロア ルキル基もしくは置換シク口アルキルに置換された炭素原子 1〜 6個のアルキル 基、 またはァラルキル基もしくは置換ァラルキル基が挙げられる。 ァラルキル基 および置換ァラルキル基としては前記ァリール基、 置換ァリール基に置換された 炭素原子数 1〜 6個のアルキル基が挙げられ、 例えばべンジル、 1—フエニルェ チル、 2—フエニルェチル、 2—ナフチルメチルが挙げられる。
Yにおける好ましい基としては、 例えば置換基を有していてもよいフエ二ノレ基 もしくはピリジル基が挙げられる。 置換基は 1個または同一もしくは異なって複 数個あってもよく、 好ましい置換基としては、 例えば、 フッ素、 塩素等のハロゲ ン原子、 シァノ基、 トリフルォロメチル基、 ニトロ基、 水酸基、 メチレンジォキ シ基、 低級アルキル基、 低級アルコキシ基、 低級アルカノィルォキシ基、 ァミノ 基、 モノ低級アルキルアミノ基、 ジ低級アルキルアミノ基、 カルパモイル基、 低 級アルキルァミノカルボ-ル基、 ジ低級アルキルァミノカルポニル基、 カルボキ シル基、 低級アルコキシカルポニル基、 低級アルキルチオ基、 低級アルキルスル フィニル基、 低級アルキルスルホニル基、 低級アルカノィルァミノ基、 低級アル キルスルホンアミド基または式一 D 1 ' — E, - F (D 1 ' 、 E, および Fは前 記の意味を表す。 ) で示される基が挙げられる。 D 1 ' における好ましい基とし ては結合手もしくは酸素原子が挙げられる。 特に好ましくは酸素原子である。
E, における好ましい基としては、 炭素原子数 1〜6のアルキレン鎖、 アルケニ レン鎖もしくはアルキニレン鎖が挙げられ、 更に好ましくは、 炭素数原子数 1〜 3個の直鎖のアルキレン鎖、 もしくはアルキニレン鎖が挙げられる。 特に好まし くは炭素原子数 1〜 3個の直鎖のアルキレン鎖である。 Fにおける好ましい基と しては、 水酸基、 ハロゲン原子、 シァノ基、 低級アルコキシ基、 低級アルカノィ ルォキシ基、 低級アルキルチオ基、 低級アルキルスルフィニノレ基、 低級アルキル スルホ-ル基、 低級アル力ノィルァミノ基、 低級アルキルスルホンァミド基、 へ テロアリール基、 式—NR4, R5' ( 4' 、 R5' は前記の意味を表す) で示 される基が挙げられる。 具体的には、 ヘテロァリール基としては、 例えば、 2— ピリジル、 3—ピリジル、 4一ピリジル、 1—イミダゾリル、 1一 (1, 2, 4 一トリァゾリル) 等が挙げられる。 式一 NR4' R5' (R4> 、 R5' は前記の 意味を表す) としては、 例えばジメチルァミノ、 ジェチノレアミノ、 ピぺリジニル 等が挙げられる。 特に好ましくは Fは水酸基である。
Bにおける好ましい基としては、 例えば置換基を有していてもよいフエニル基 もしくはヘテロァリーノレ基が挙げられる。 更に好ましい基としては、 例えばフッ 素、 塩素等のハロゲン原子、 アミノ基、 低級アルキル基、 低級アルコキシ基もし くは低級アルキルチオ基が 1〜 3個置換したフエニル基もしくはピリジル基が挙 げられる。 具体的には例えば 2, 6—ジイソプロピルフエニル、 4—ァミノ一 2, 6—ジイソプロピルフエニル、 2, 4, 6—トリメチルフエニル、 2, 4, 6— トリメ トキシフエュル、 2, 4—ジフルオロフェニル、 2, 4, 6—トリフルォ 口フエニル、 2, 6—ジメチルチオ一 3—ピリジル、 2, 6—ジメチルチオ一 4 ーメチ /レー 3—ピリジル等が挙げられる。
Xの好ましい基としては、 例えば以下の基が挙げられる。
〔式中、 R1は前記の意味を表す〕
R 1における好ましい基としては、 例えば水素原子、 アルキル基、 置換アルキ ル基が挙げられる。 置換アルキル基の置換基としては、 1個または同一もしくは 異なって複数個あってもよく、 好ましくは、 フッ素、 塩素等のハロゲン原子、 シ ァノ基、 ベンジルォキシ基、 水酸基、 低級アルコキシ基、 低級アルカノィルォキ シ基、 カルパモイル基、 低級アルキルアミノカルボ二ル基、 ジ低級アルキルアミ ノカルポエル基、 カルボキシル基、 低級アルコキシカルボ二ル基、 低級アルキル チォ基、 低級アルキルスルフィニル基、 低級アルキルスルホニル基、 ァリール基、 低級アル力ノィルァミノ基、 低級アルキルスルホンァミド基、 フタルイミド基、 ヘテロァリール基、 飽和へテロ環基等が挙げられる。 更に好ましい置換基として は、 例えば、 フッ素原子、 塩素原子、 シァノ基、 水酸基、 カルパモイル基、 2— ピリジル基、 3—ピリジル基、 4 _ピリジル基等が挙げられる。 R 1におけるさ らに好ましい基としては無置換のアルキル基もしくはアルケニル基が挙げられる。 式 1中、 特に好ましくは式 2
〔式中、 環 Aは置換基を有していてもよいピリジン環を表す。
Yはアルキル基、 置換アルキル基、 シクロアルキル基、 置換シクロアルキル基、 芳香族基または置換芳香族基を表す。
R 1は水素原子、 アルキル基、 置換アルキル基、 アルケニル基、 置換アルケニ ル基、 アルキニル基、 置換アルキニル基、 シクロアルキル基、 または置換シクロ アルキル基を表す。
2は水素原子または低級アルキル基を表す。
3は低級アルキル基を表す。
zaは、
1) 一 D1— Q
[式中、 D1は結合手または不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数 1 〜8の 2価の炭化水素基を表し、 Qは水酸基、 カルボキシル基、 ヘテロァリール 基、 置換へテロアリーノレ基、 または式:一 NR4R5 (R4および R5は互いに独 立して、 水素原子、 低級アルコキシ基、 低級アルキル基、 '置換低級アルキル基、 シクロアルキル基またはァラルキル基を表すか、 または R 4および R 5が互いに 結合してそれらが結合する窒素原子とともに、 環中にさらに式:一 NR8—
(R8は水素原子、 低級アルキル基、 置換低級アルキル基、 フエニル基、 置換フ ェ-ル基、 ベンジル基、 置換べンジル基、 または低級アルコキシ力ルポ二ル基を 表す。 ) で表される基を 1個、 または酸素原子 1個を含んでもよい、 環を構成す る炭素原子数が 4〜 8個の飽和環状アミノ基を表す。 ) を表す。 但し、 Qがへテ ロアリ一ル基または置換へテロアリール基である場合は、 D 1は結合手とはなら ない。 ]
または、
2) 一 D2— M— E— W
[式中、 D 2は結合手または不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数 1 〜8の 2価の炭化水素基を表し、 Mは酸素原子、 硫黄原子、 スルフィエル基もし くはスルホニル基、 または式一 NHC (=0) 一、 一 C (=θ) NH—もしくは 一 NR6— (R 6は水素原子もしくは低級アルキル基を表す。 ) で表される基を 表し、 Eは結合手または不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数 1〜 8の 2価 の炭化水素基を表し、 Wは水酸基、 力ルポキシル基、 ヘテロァリール基、 置換へ テロアリール基、 または式: 一 NR4R5 (R4および R5は前記の意味を表 す。 ) で表される基を表す。 但し、 Wが水酸基、 カルボキシル基もしくは式一 N R4R5で表される基の時は Eは結合手とはならない。 ] を表す。 〕 で表される 化合物である。
〔式 2化合物〕
本明細書中、 式 2中の各種の基を詳細に説明すると次の通りである。 なお、 特 に指示のない限り、 各々の基の説明は他の置換基の一部である場合も含む。
ここで、 低級とは当該基のアルキル部分が低級アルキル基であることを意味し、 そのような低級アルキル基としてはメチル、 ェチル、 プロピル、 2—プロピル、 ブチル、 t e r t—ブチル、 ペンチル、 へキシル等の炭素原子数が 1〜 6個の低 級アルキル基を挙げることができる。
ハロゲン原子としては例えばフッ素、 塩素、 臭素、 ヨウ素が挙げられる。
環 A、 Y及ぴ R 1については、 それぞれ上記式 1で述べた定義と同様の意味を 表す。
R 2及び R 3における低級アルキル基としては、 例えば直鎖または分枝した炭 素原子数 1〜 6個のアルキル基が挙げられ、 具体的には例えばメチル、 ェチル、 プロピル、 イソプロピル、 プチル、 2—プチル、 2—メチルプロピル、 1, 1— ジメチノレエチノレ、 ペンチ/レ、 3—ペンチ/レ、 3—メチノレプチ/レ、 へキシノレ、 3 - へキシル等が挙げられる。
Ό \ D 2及ぴ Εにおける不飽和結合を含んでいてもよい炭素原子数 1〜8の 2価の炭化水素基としては、 例えばメチレン、 エチレン、 トリメチレン、 テトラ メチレン、 ペンタメチレン、 へキサメチレン等のアルキレン鎖、 プロぺニレン、 プテ-レン等のァ /レケニレン鎖、 ェチニレン、 プロピュレン、 プチ二レン等のァ ルキニレン鎖が挙げられる。
Q及び Wにおけるへテロアリ一ル基または置換へテロアリール基のへテロアリ ール基部分としては、 例えば窒素原子を 1〜 3個含む 5〜 6員環の基、 酸素原子 を 1個もしくは硫黄原子を 1個含む 5員環の基、 窒素原子 1〜 4個を含み 6員環 と 5または 6員環が縮合した二環式の基等が挙げられ、 具体的には、 例えば 1— ピロリル、 1一ピラゾリル、 1一イミダゾリル、 1, 2 , 4—トリァゾール一 1 —ィル、 2—ピリジル、 3—ピリジル、 4一ピリジル、 2—チェニル、 3—チェ ニル、 2—フリル、 3—フリル、 2—キノリル等が挙げられる。 Q及び Wにおけ る置換へテロアリール基の置換基としては、 低級アルキル基、 低級アルコキシ基
またはハロゲン原子が挙げられ、 1個または同一もしくは異なって複数個置換さ れていてもよい。
R 4及び R 5における置換低級アルキル基の置換基は、 1つまたは複数、 同一 または異なって置換していてよく、 例えば水酸基、 ハロゲン原子または低級アル コキシ基が挙げられる。
R 8における置換低級アルキル基、 置換フエニル基および置換べンジル基の置 換基は、 1つまたは複数、 同一または異なって置換していてよく、 例えば水酸基、 ハ口ゲン原子または低級アルコキシ基が挙げられる。
一 N R 4 R 5で表される基が形成する環状アミノ基としては、 例えば環を構成 する原子数が 6個、 即ち 6員環である基、 例えば 1ーピペリジニル、 4一モルホ リニル、 4一低級アルキル一 1一ピペラジ-ル、 4—フエ二ルー 1—ピペラジ- ルもしくは 4—ベンジルー 1ーピペラジニル等、 5員環である基、 例えば 1一ピ 口リジニル基等、 または 7員環である基、 例えば 1—ホモピペリジニル等が挙げ られる。
R 2における好ましい基としては水素原子、 メチル、 ェチル、 プロピルまたは ィソプロピルが挙げられる。 R 3における好ましい基としてはィソプロピルまた は e r t一プチノレである。
D 1における好ましい基としては、 単結合、 メチレンまたはエチレンが挙げら れる。 Qにおける好ましい基としては、 水酸基、 ヘテロァリール基、 置換へテロ ァリール基、 または式:一 N R 4 R 5 (R 4および R 5は前記の意味を表す。 ) で 表される基が挙げられる。 さらに好ましい基としては、 水酸基、 1一ピラゾリル、 3 , 5—ジメチルー 1—ピラゾリル、 1—イミダゾリル、 2—メチルー 1—イミ ダゾリル、 1, 2, 4—トリァゾーノレ一 1一ィル、 1—ピペリジ-ル、 1—ピロ リジュル、 4ーメチルー 1ーピペラジニル、 モルホリノ、 ジェチルァミノまたは ジプロピルアミノ等が挙げられる。 Qとして、 特に好ましくは一 N R 4 R 5であ つてその中でも R 4及ぴ; 5が水素原子であるものが好ましい。
D 2における好ましい基としては、 結合手、 メチレンもしくはエチレンが挙げ
られる。 Mにおける好ましい基としては、 酸素原子または式:一NH C (= 0) 一、 - c (= 0) NH—もしくは一N R 6—で表される基が挙げられる。 Eにお ける好ましい基としては、 メチレン、 エチレンもしくはトリメチレンが挙げられ る。
Wにおける好ましい基としては、 水酸基、 ヘテロァリール基、 置換へテロァリ ール基、 または式:一 N R 4 R 5 (R 4および R 5は前記の意味を表す。 ) で表さ れる基が挙げられる。 さらに好ましい基としては、 水酸基、 2—ピリジル、 3— ピリジル、 4一ピリジル、 1—ピラゾリル、 3, 5—ジメチル一 1—ビラゾリル. 1一イミダゾリル、 2—メチル一 1一イミダゾリル、 1 , 2, 4—トリァゾール _ 1一ィル、 1—ピペリジェル、 1—ピロリジニル、 4—メチルー 1ーピペラジ ュル、 モルホリノ、 ジェチルァミノまたはジプロピルァミノ等が挙げられる。
「プロドラッグ」 としては、 生体内で容易に加水分解され、 式 1または式 2の 化合物を再生するものが挙げられ、 例えば力ルポキシル基を有する化合物であれ ばそのカルボキシル基がアルコキシカルボニル基となった化合物、 アルコキシ力 ルポニル基により置換されアルコキシカルボニルァミノ基となった化合物、 アル キルチオ力ルポニル基となつた化合物、 またはアルキルァミノ力ルポニル基とな つた化合物が挙げられる。 また、 例えばアミノ基を有する化合物であれば、 その ァミノ基がアル力ノィル基で置換されアル力ノィルアミノ基となった化合物、 ァ シロキシメチルァミノ基となった化合物、 またはヒドロキシルァミンとなった化 合物が挙げられる。 また、 例えば水酸基を有する化合物であれば、 その水酸基が 前記ァシル基により置換されてァシロキシ基となった化合物、 リン酸エステルと なつた化合物、 またはァシロキシメチ ォキシ基となつた化合物が挙げられる。 これらのプロドラッグ化に用いる基のアルキル部分としては前記アルキル基が挙 げられ、 そのアルキル基は置換 (例えば炭素数 1〜 6のアルコキシ基等により) されていてもよい。 好ましい例としては、 例えば力ルポキシル基がアルコキシ力 ルポニル基となった化合物を例にとれば、 メトキシカルボニル、 エトキシカルボ ニルなどの低級 (例えば炭素数 1〜 6 ) アルコキシ力ルポニル、 メトキシメトキ
シカルボ二 Λ\ エトキメトキシカルポ-ル、 2—メトキシエトキシカルボニル、 2—メトキシエトキシメトキシカルポュルまたはピパロイロキシメトキシカルポ ニル等のアルコキシ基により置換された低級 (例えば炭素数 1〜 6 ) アルコキシ カルボニルが挙げられる。
式 1およぴ式 2における各定義ならぴに好ましい基の例示、 具体的な化合物の 詳細については、 特開平 9— 4 8 7 8 0号公報ならぴに国際公開第 0 0ノ0 9 5 0 5号パンフレツトの記載に準じることができる。 さらに式 1およぴ式 2で表さ れる化合物、 そのプロドラッグ及びそれらの薬学上許容される塩は、 これらの文 献に記載の方法に従つて調製することができる。
本発明の L D L受容体タンパク質の発現促進剤に有効成分として含められる式 1化合物としては、 特に下記式 A
〔式中、 n— B uは n—プチル基を、 i—P rはイソプロピル基を表す〕 で表さ れる化合物が好ましい。
式 1または式 2で表される化合物、 特に式 Aで表される化合物、 それらのプロ ドラッグの薬学上許容される塩としては、 例えば酸付加塩が挙げられる。 酸付加 塩としては、 具体的には、 例えば塩酸塩、 硝酸塩、 硫酸塩、 リン酸塩等の無機酸 塩、 ギ酸塩、 酢酸塩、 トリフルォロ酢酸塩、 プロピオン酸塩、 マレイン酸塩、 ク ェン酸塩、 マロン酸塩、 メタンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。 また、 該化合物がカルボキシル基等を有する場合、 例えばジエタノールアミン塩、 ェチ レンジァミン塩もしくは N—メチルダルカミン塩等の有機塩基との塩、 カルシゥ ム塩もしくはマグネシウム塩等のアル力リ土類金属との塩、 またはリチウム塩、
力リゥム塩もしくはナトリゥム塩等のアルカリ金属との塩であってもよい。
本発明はまた、 上記した化合物 (式 1化合物、 式 2化合物、 特に式 A化合物) の、 LDL受容体タンパク質の発現促進剤製造の為の使用、 ならびに当該化合物 を投与対象に投与することを含む、 当該対象内での L D L受容体タンパク質の発 現を促進する方法をも提供する。 ここで、 「投与対象」 とは、 LDL受容体タン パク質の発現の促進を期待するか、 あるいは促進されるか否かの判定を必要とす る対象であり、 上記した化合物が投与され得るものであれば特に限定されず、 ヒ トをはじめゥシ、 ゥマ、 ィヌ、 マウス、 ラット等の哺乳動物に加え (インビポ) 、 当該動物から単離、 採取される (必要に応じて遺伝子工学的な処理を施すことも できる) ような組織や細胞 (インビトロ) が意図される。
本発明はまた、 LDL受容体タンパク質の発現促進剤として、 また該剤に有効 成分として含めるに有用な、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物を スクリーニングする方法を提供する。 ここで、 スクリーニングする対象としては、 天然あるいは合成の化合物に加え、 組成物や混合物等の任意の態様であってもよ い。
本発明のスクリ一ユング方法は具体的には以下の工程を含む。
(1) LDL受容体発現細胞を使用する工程 (工程 1) 。
当該工程に使用する細胞は LDL受容体を発現し得る細胞であれば特に限定さ れず、 例えば初代培養細胞、 株化細胞、 あるいは LDL受容体遺伝子を導入し人 ェ的にあるいは過剰に LDL受容体を発現している形質転換細胞等が挙げられる。 好ましくは肝臓由来の細胞である。 当該細胞を、 次工程 (工程 2) に付すまで適 当な培養条件にて培養あるいは継代培養する。 かかる培養は、 LDL受容体を発 現する能力を維持し得る条件であれば、 当分野で通常行われてレヽる条件下で実施 することができる。
(2) LDL受容体の転写抑制因子の存在下、 被検物質の存在下または非存在下 で上記 LDL受容体発現細胞を培養する工程 (工程 2)。
「被検物質」 とは、 LDL受容体タンパク質の発現促進作用の有無を調べるた
めに選択あるレヽは合成された化合物、 あるいは当該化合物を有効成分とする薬剤 であり、 当該化合物は新規な化合物以外に、 既に別の作用を有することが報告さ れている既知化合物をも包含する。 例えば前述の特開平 9— 4 8 7 8 0号公報に 開示されている一連の化合物群 (式 1で表される) 、 国際公開第 0 0ノ 0 9 5 0 5号パンフレットに開示されている一連の化合物 (式 2で表される) 等が挙げら れる。 既に L D L受容体タンパク質の発現促進作用が知られている化合物に対し ても、 その効果の程度を知る目的で本発明のスクリ一ユング方法の被検物質とし て使用することができる。 後述するが、 被検物質の L D L受容体タンパク質の発 現促進作用の有無を確認するための対照 (陰性対照) として、 被検物質の非存在 下で培養した細胞を用いることが好ましい。
目的とする L D L受容体タンパク質の発現促進作用が、 L D L受容体の m R N A転写後のタンパク質発現プロセスを制御することによってもたらされるもので あることを明確にするために、 本工程は L D L受容体の転写抑制因子の存在下で 実施されることが好ましい。 「L D L受容体の転写抑制因子」 としては、 通常当 分野で使用される転写抑制因子が挙げられ、 例えば 2 5—ヒドロキシコレステロ ール、 コレステロール、 一 V L D L等が挙げられ、 好ましくは 2 5—ヒドロキ シコレステロ一ルが用いられる。 かかる転写抑制因子の存在下で発揮される L D L受容体タンパク質の発現促進作用は、 L D L受容体の遺伝子発現 (mRNAへ の転写) の上昇によるものではなく転写後のタンパク質発現プロセスの制御によ るものである。 当該転写抑制因子は、 培養細胞の培養液中に添加することができ、 その用量、 処理時間等は十分な転写抑制効果が得られるように適宜設定されるが、 通常、 被検物質と一緒に処理に付される。
当該工程は培養細胞の培養液中に、 被検物質を添加することによって行われる。 当該被検物質の添加量は、 被検物質の種類、 細胞の種類に応じて適宜設定される。 好ましくは添加量を段階的に変化させて調べることが好ましい。 温度、 処理時間 も被検物質や細胞の種類、 培養条件に応じて適宜設定されるが、 通常、 0 °C〜5
0 °Cで処理し、 数十分〜数時間の範囲内で当該処理を完了する。 また、 処理時間
は経時的に数種類設定することが好ましい。
( 3 ) 被検物質存在下または非存在下で培養した L D L受容体発現細胞の L D L 受容体タンパク質発現量を測定する工程 (工程 3 ) 。
本工程は、 上記工程 2で調製された、 被検物質存在下または非存在下で培養し た LD L受容体発現細胞の L D L受容体タンパク質の発現量が測定できる方法で あれば特に限定されず、 当分野で通常実施される任意の技術を用いることができ る。 例えばィムノブロッティング法や免疫沈降法等の抗体を利用した手法が用い られ、 必要に応じて、 蛍光色素や放射性同位元素等の標識化合物を用いることが できる。 より具体的には以下の工程により実施されるが、 本発明はこれらの例示 になんら限定されるものではない。
( 3 - 1 ) 上記工程 2で調製された、 被検物質存在下または非存在下で培養した L D L受容体発現細胞に、 放射性同位元素で標識されたアミノ酸を添加する工程 (工程 3— 1 ) 。
本工程で使用される 「放射性同位元素で標識されたアミノ酸」 としては、 当分 野で通常タンパク質の生合成研究に使用し得るものであれば特に限定されないが、 具体的には3 5 S—メチォユンや3 5 S—システィン、 またはそれらの混合物 (3 5 S—メチォニン ·システィン) が挙げられる。
当該アミノ酸を添加、 あるいは当該アミノ酸を含有する培養液に交換してから、 次の工程 (即ち細胞タンパク質の抽出) に付すまでの培養時間 (あるいは処理時 閒) は、 使用する細胞ゃ被検物質の種類等に応じて適宜設定される。 また、 生合 成されたタンパク質の挙動を追跡するためには、 上記放射性同位元素でのパルス ラベルが好ましく、 この場合、 一定期間 (当該期間も、 使用する細胞ゃ被検物質 の種類、 スクリーニングの対象となる所望する化合物の特徴等に応じて適宜設定 される) 、 該放射性同位元素で標識されたアミノ酸存在下で培養 (あるいは処 理) した後、 当該アミノ酸を含有しない培養液に交換する。
該 「一定期間」 は、 通常 3 0分間〜 2 4時間、 好ましくは 3 0分間〜 2時間、 特に好ましくは 3 0分程度である。
本工程により、 放射性同位元素で標識されたアミノ酸添加後、 あるいはその存 在下で培養していた期間に合成されたタンパク質が放射標識される。
( 3— 2 ) 経時的に一定量の細胞を採取し、 細胞を可溶化後、 細胞タンパク質画 分を調製する工程 (工程 3— 2 ) 。
本工程では、 まず、 放射性同位元素で標識されたアミノ酸存在下で培養した細 胞、 あるいは放射性同位元素で標識されたアミノ酸で一定期間処理した細胞を、 経時的に一定量採取する。 浮遊系の細胞であれば、 フラスコ等の同一の培養器か ら経時的に容易に一定量採取することができるが、 接着細胞等、 細胞の採取に剥 離操作を伴う場合には予め測定ボイントの数に応じて複数の培養皿等の培養器を 用いて同一条件で培養、 処理した細胞を経時的に使用する。
培養物を遠心分離等の常法に付して細胞を回収する。 当該回収した細胞を適当 な緩衝液剤中に懸濁して、 さらに界面活性剤を適当な濃度で加えて細胞を可溶化 し、 細胞タンパク質を抽出液として得る。 得られる粗抽出液は、 必要ならば界面 活性剤の存在下で、 一般に用いられる方法を適宜組み合わせることによって精製 することもできる。 界面活性剤としては、 細胞を可溶化し、 タンパク質を抽出し 得るものであれば当分野で通常使用されるものが使用でき、 例えばドデシル硫酸 ナトリウム (S D S ) 、 セチルトリメチルアンモ -ゥムブロマイド (C TA B ) 等が挙げられるが、 これらは強力なタンパク質変性作用を有するので、 後の工程、 例えば免疫沈降法等の抗体を用いる工程における抗体との反応性を考慮して、 穏 やかな界面活性剤、 例えば C HA P S等の両イオン性界面活性剤や T r i t o n
X - 1 0 0等の非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
( 3 - 3 ) 得られた細胞タンパク質画分中に存在する L D L受容体タンパク質を 免疫沈降させる工程 (工程 3— 3 ) 。
本工程も通常、 当分野で実施される免疫沈降法と同様にして実施することがで きる。 すなわち、 L D L受容体タンパク質に特異的に結合する抗体ならぴにセフ ァロース等の担体が結合しているプロティン Aやプロティン G等の抗体に特異的 に結合する物質を用い、 免疫沈降物を得る。 本発明において使用し得る抗体とし
ては LDL受容体タンパク質を特異的に認識し得る抗体であれば特に限定されな レ、が、 その種類や濃度、 処理条件等は実施する実験条件に応じて適宜設定するこ とが好ましい。
(3-4) 免疫沈降物中の LDL受容体タンパク質の量を測定する工程 (工程 3 -4) 。
本工程も、 免疫沈降物中の L D L受容体タンパク質の量を測定することが可能 な方法であれば任意の方法が利用できる。 例えば上記の工程 3-3で調製した免 疫沈降物を電気泳動に付し、 オートラジオグラフィーを行う。 デンシトメーター で放射活性の強きを測定し、 免疫沈降物中の LDL受容体タンパク質を定量する。
LDL受容体は、 およそ 12 OKDaの前駆体 (未成熟型) とおよそ 16 OK D aの糖鎖付加を受けた成熟型が存在し、 その分子量の違いに基づいて未成熟型 と成熟型を区別し割合を算出することもできる。
(4) LDL受容体タンパク質の発現量を増加させる物質を選択する工程 (工程 4) 。
上記工程 3で得られた結果をもとに、 LDL受容体タンパク質の発現量を増加 させる物質を選択する。 LDL受容体は糖鎖付加され、 成熟型として細胞膜表面 で発現している。 従って、 高脂血症への適用や血中脂質低下剤としての用途を想 定した場合、 LDL受容体タンパク質の発現を促進する化合物、 特に成熟型 LD L受容体タンパク質の発現を促進する化合物を選択することが好ましい。 すなわ ち未成熟型 L D L受容体タンパク質量に対する成熟型 L D L受容体タンパク質量 の比 (以下、 成熟型 Z未成熟型一比ともいう) が大きい物質を選択する。
陰性対照としては被検物質非存在下で同様に処理した細胞において測定される LDL受容体タンパク質の発現量、 あるいは成熟型 Z未成熟型一比である。 スク リーユングするにあたり、 陽性対照を設けることが好ましく、 例えば式 Aで表さ れる化合物 (以下単に化合物 Aともいう) 存在下で培養した細胞において測定さ れる LDL受容体タンパク質の発現量、 あるいは成熟型 Z未成熟型一比が用いら れる。 特に好ましくはかかる陽性対照以上の結果を得ることのできる物質を選択
する。
上記の方法、 ならびに上記以外の方法を使用する場合でも必要な試薬、 手法等 は公知あるいは商業的に入手可能である。
本発明は、 上記スクリーユング方法によって得られ得る L D L受容体タンパク 質の発現を促進する化合物またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有 する、 L D L受容体タンパク質の発現促進剤を提供する。 本発明の L D L受容体 タンパク質の発現促進剤は、 ヒトをはじめゥシ、 ゥマ、 ィヌ、 マウス、 ラット等 の投与対象となる哺乳動物に対し L D L受容体量を上昇させる作用を有し、 血中 の L D L量を低減化することができ、 従って、 高脂血症等の L D Lが悪玉として 作用する種々の疾患の予防'治療に有用である。 従って、 本発明は、 上記スクリ 一ニング方法によって得られ得る L D L受容体タンパク質の発現を促進する化合 物もしくはそのプロドラッグまたはそれらの薬学上許容される塩を有効成分とし て含有する、 血中脂質低下剤ならびに高脂血症治療剤を提供する。 尚、 本発明に おいて、 単に治療剤という場合でも、 当該治療には、 予防、 症状の軽減、 症状の 減退、 進行停止等、 あらゆる管理が含まれるものとする。 上記スクリーニング方 法によって得られ得る L D L受容体タンパク質の発現を促進する化合物としては、 具体的には陽性対照として使用し得る化合物 Aをはじめとする上述の式 1化合物 が挙げられる。
高脂血症治療剤、 ならぴに血中脂質低下剤や L D L受容体タンパク質の発現促 進剤を医薬として使用する場合は、 一般的な医薬製剤として調製され、 経口また は非経口的に投与される。
経口的に投与する場合、 通常当分野で用いられる投与形態で投与することがで きる。 非経口的に投与する場合には、 局所投与剤 (経皮剤等) 、 直腸投与剤、 注 射剤、 経鼻剤等の投与形態で投与することができる。
経口剤または直腸投与剤としては、 例えばカプセル、 錠剤、 ピル、 散剤、 ドロ ップ、 カシエ剤、 座剤、 液剤等が挙げられる。 注射剤としては、 例えば、 無菌の 溶液又は懸濁液等が挙げられる。 局所投与剤としては、 例えば、 クリーム、 軟膏、
ローション、 経皮剤 (通常のパッチ剤、 マトリクス剤) 等が挙げられる。
上記の剤形は当分野で通常行われている手法により、 薬学的に許容される賦形 剤、 添加剤とともに製剤化され得る。 薬学的に許容される賦形剤、 添加剤として は、.担体、 結合剤、 香料、 緩衝剤、 増粘剤、 着色剤、 安定剤、 乳化剤、 分散剤、 懸濁化剤、 防腐剤等が挙げられる。
薬学的に許容される担体としては、 例えば、 炭酸マグネシウム、 ステアリン酸 マグネシウム、 タノレク、 砂糖、 ラタトース、 ぺクチン、 デキストリン、 激粉、 ゼ ラチン、 トラガント、 メチノレセルロース、 ナトリウムカルポキシメチルセルロー ス、 低融点ワックス、 カカオパター等が挙げられる。
さらに、 錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、 例えば糖衣錠、 腸溶性 コーティング錠、 フィルムコーティング錠あるいは二層錠、 多層錠とすることが できる。 散剤は、 薬学的に許容される散剤の基剤と共に製剤化される。 基剤とし ては、 タルク、 ラグトース、 澱粉等が挙げられる。 ドロップは水性又は非水性の 基剤と一種またはそれ以上の薬学的に許容される拡散剤、 懸濁化剤、 溶解剤等と 共に製剤化できる。 カプセルは、 有効成分となる化合物を薬学的に許容される担 体と共に中に充填することにより製造できる。 当該化合物は薬学的に許容される 賦形剤と共に混合し、 または賦形剤なしでカプセルの中に充填することができる。 カシエ剤も同様の方法で製造できる。 本発明を座剤として調製する場合、 植物油
(ひまし油、 オリープ油、 ピーナッツ油等) や鉱物油 (ワセリン、 白色ワセリン 等) 、 ロウ類、 部分合成もしくは全合成グリセリン脂肪酸エステル等の基剤と共 に通常用いられる手法によって製剤化される。
注射用液剤としては、 溶液、 懸濁液、 乳剤等が挙げられる。 例えば、 7溶液、 水一プロピレングリコール溶液等が挙げられる。 液剤は、 水を含んでも良い、 ポ リエチレンダリコールおよび/またはプロピレンダリコールの溶液の形で製造す ることもできる。
経口投与に適切な液剤は、 有効成分となる化合物を水に加え、 着色剤、 香料、 安定化剤、 甘味剤、 溶解剤、 増粘剤等を必要に応じて加え製造することができる。
また経口投与に適切な液剤は、 当該化合物を分散剤とともに水に加え、 粘重にす ることによつても製造できる。 増粘剤としては、 例えば、 薬学的に許容される天 然または合成ガム、 レジン、 メチノレセノレロース、 ナトリウムカノレポキシメチノレセ ルロースまたは公知の懸濁化剤等が挙げられる。
局所投与剤としては、 上記の液剤おょぴ、 クリーム、 エアロゾル、 スプレー、 粉剤、 ローション、 軟膏等が挙げられる。 上記の局所投与剤は、 有効成分となる ィ匕合物と薬学的に許容される希釈剤およぴ担体と混合することによつて製造でき る。 軟膏およびクリームは、 例えば、 水性または油性の基剤に増粘剤および Zま たはゲル化剤を加えて製剤化する。 該基剤としては、 例えば、 水、 液体パラフィ ン、 植物油等が挙げられる。 增粘剤としては、 例えばソフトパラフィン、 ステア リン酸アルミニウム、 セトステアリルアルコール、 プロピレングリコール、 ポリ エチレングリコール、 ラノリン、 水素添加ラノリン、 蜜蝶等が挙げられる。 局所 投与剤には、 必要に応じて、 ヒドロキシ安息香酸メチル、 ヒドロキシ安息香酸プ 口ピル、 クロロタレゾール、 ベンザルコニゥムク口リ ド等の防腐剤、 細菌增殖防 止剤を添加することもできる。 ローションには、 水性又は油性の基剤に、 一種類 またはそれ以上の薬学的に許容される安定剤、 懸濁化剤、 乳化剤、 拡散剤、 増粘 剤、 着色剤、 香料等を加えることができる。
投与量、 投与回数は使用する化合物の種類、 患者の症状、 年齢、 体重、 投与形 態等によって異なるが、 例えば式 1で表される化合物を有効成分として含める場 合であれば、 経口投与する場合には、 通常は成人に対し 1日あたり約 1〜約 5 0 O m gの範囲、 好ましくは約 1〜約 1 0 0 m gの範囲を 1回または数回に分けて 投与することができる。 注射剤として投与する場合には約 0 . 1〜約 1 0 O m g の範囲、 好ましくは約 0 . 1〜約 1 O m gの範囲を 1回または数回に分けて投与 することができる。
実施例
以下、 本発明を実施例にて具体的且つ詳細に説明するが、 本発明はこれらに何 ら限定されるものではない。 又、 本実施例では下記式 Aで表される化合物 Aを用
いて、 その LDL受容体 (以下 LDLR、 あるいは LD L— Rともいう) タンパ ク質発現促進作用を確認した。
実施例 1 :培養肝細胞株を用いたィンビトロでの被験物質の L D L受容体タンパ ク質量および mRNA量に対する影響
①タンパク質量への影響
[方法]
H e p G 2細胞を 1 0% L i p o p r o t e i n d e f i c i e n t s e r um (LPDS) 1. 5 μ g /m 1 25—ヒドロキシコレステロ一ノレお ょぴ各種濃度の被験物質 (化合物 A) あるいは対照としての DMSO (化合物 A の添加量と等量) を含む DMEMZF— 1 2培地中で培養した。 24時間培養後、 細胞を細胞溶解液 ( 1 25 mM T r i s— HC 1 (pH7. 9) , 2 mM C a C 1 2, 1%T r i t o nX- 1 00, プロテアーゼ阻害剤) で溶解し、 1 2 000 r pm、 4°Cで遠心分離した。 遠心後の上清を細胞タンパク質画分とした。 タンパク質濃度を測定し、 サンプル間のタンパク質濃度をそろえ、 ィムノブロッ ティング法にて LDL受容体タンパク質量を評価した。 実験条件を図 1 (A) に 示す。
3
結果を図 1 (B) に示す。 2 5—ヒドロキシコレステロールの添加により、 L DL受容体遺伝子の転写が抑制された条件下、 化合物 Aは LDL受容体タンパク 質量の発現を 0. 1 の処置濃度より上昇させた。
② mRNA量への影響
[方法]
He p G2細胞を 1 0%LPDS、 1. 5 μ g/m 1 25—ヒドロキシコレ ステロールおよび上記①で十分に LDL受容体タンパク質の発現を引き起こすこ とが確認された量の被験物質 (化合物 A; 10 ^M) を含む DMEMZF— 1 2 培地中で培養を開始した。 培養開始後、 経時的に TR I z o 1 r e a g e n t (G I B CO社) を用いて全 RNAを調製した。 これを用いて、 T a qma n PCR (AB I PR I SM 7700 s e q u e n c e d e t e c t o r (A l i e d B i o t e c h n o l o g y社) ) にて LDL受容体 mR NA量を定量し、 βーァクチン mRNAの発現量に対する比として結果を表した ( 実験条件を図 1 (A) に示す。
[:結果] '
結果を図 1 (C) に示す。 25—ヒドロキシコレステロールの添加により、 L D L受容体遺伝子の転写が抑制された条件下、 化合物 Aは LD L受容体 mRNA を誘導しなかった。
以上の結果より、 化合物 Aは、 肝細胞 (インビトロ) 中の LDL受容体 mRN A発現に変化を与えることなく、 L D L受容体タンパク質の発現を上昇させるこ とを確認した。
実施例 2.:培養肝細胞株を用いたィンビトロでの被験物質の L D L受容体タンパ ク質量およぴ m R N A量に対する影響 (スタチン系薬剤との対比)
①タンパク質量への影響
[方法]
He pG2細胞を 1 0 % L P D Sおよび各種濃度の被験物質 (化合物 A) 、 ス タチン系薬剤の代表薬物であるアト口パスタチン (a t o r v a s t a t i n ; 各種濃度) あるいは対照としての DMSO (化合物 Aあるいはアト口パスタチン の添加量と等量) を含む DMEMZF— 1 2培地で処置し、 24時間の培養後、 細胞を実施例 1①と同様にして可溶ィヒし細胞タンパク質画分を調製し、 ィムノブ 口ティング法にて LDL受容体タンパク質量を評価した。 実験条件を図 2 (A)
に示す。
C結果 3
結果を図 2 (B) に示す。 培地中のリポタンパク質を除いた、 スタチン系の薬 剤が LDL受容体の発現を引き起こすことが良く知られている条件で、 化合物 A は、 LDL受容体タンパク質量を上昇させた。 アト口パスタチンの効果を調べた ところ発現上昇が認められた。
② mRNA量への影響
は法 3
. He p G2細胞を 1 0 % L P D Sおよび実施例 1①で十分に L D L受容体タン パク質の発現を引き起こすことが確認された量の被験物質 (化合物 A ; 1 0 μ Μ) あるいはアト口パスタチン (1 / Μ) を含む培地中で培養を開始した。 培養 開始後、 経時的に RN Αを調製した。 調製した RNAを用いて、 T a qma n PCR法にて LDL受容体 mRNA量を定量し、 βーァクチン mRN Αの発現量 に対する比として結果を表した。
[結果]
結果を図 2 (C) に示す。 培地中のリポタンパク質を除き、 スタチン系の薬剤 が LDL受容体の発現を引き起こすことが良く知られている条件で、 化合物 Aは、 処置後 8時間で、 LDL受容体 mRNAに対して弱い転写活性化を示したがァト ロバスタチンと比較して弱いものであった。 24時間の処置では、 この作用は認 められなかった。
実施例 3 :培養細胞株を用いたインビトロでの被験物質の LDL受容体 mRN A の安定性に対する影響
[方法]
He pG2細胞を 1 0%LPDS、 5 μ g/m 1 ァクチノマイシン D (Ac t i n omy c i n D) および被験物質 (化合物 A; 1 0 μΜ) 、 あるいは陽 性対照として 1 6 0 ηΜのホルポーノレミリステートアセテート (ΡΜΑ; LDL 受容体の mR Ν Α安定化作用を有することが文献的に公知) を含む培地で処置し、
経時的に RNAを調製した。 また、 コントロールとしては無処置群を用いた。 調 製した RNAを用いて、 SYBR G r e e i^ (AB I P I SM 770 0 s e q u e n c e d e t e c t o r (Ap p l i e d B i o t e c hn o l o g y社) ) にて LDL受容体 mRNA量を定量し、 GAPDH mRNA の比として結果をあらわした。 実験条件を図 3 (A) に示す。
PMAは、 LDL受容体 mRNAの安定化を示した (図 3 (C) ) 1) 化合物 Aは影響を及ぼさなかった (図 3 (B) ) 。
実施例 4 :ハムスターを用いたインビポでの被験物質の LDL受容体タンパク質 量および mRNA量に対する影響
①タンパク質量への影響
[方法]
ハムスターを、 普通食飼育下で、 7日間化合物 Aを 3、 1 Omg/k g/d a y経口投与した。 対照には、 化合物 Aの代わりに、 化合物 Aの調製に用いた媒体 (Ve i c l e ;メチルセルロース溶液) のみを投与した。 8ョ目に解剖し、 月刊蔵を摘出し、 それにホモジナイズバッファー (20mM T r i s—HC l
(pH8) , ImM C a C 12, 1 50 mM N a C 1 ) を加え、 ホモジナイ ズした。 ホモジネートを 8000 X g、 1 0分、 4°Cで、 遠心し、 その上清を 1 00, 000 x g、 60分、 4。Cで遠心した沈殿を膜画分とした。 これに、 ホモ ジナイズパッファーを添加し、 100, 000 x g、 20分、 4 °Cで遠心し、 洗 浄の後、 懸濁用バッファー (1 25mM T r i s -ma l e a t e (pH6) , ImM C a C 12, 1 60 mM N a C' 1、 1%T r i t o n X— 1 00) で 懸濁し、 このタンパク濃度を測定の後、 サンプル間のタンパク量をそろえ、 ィム ノプロッティング法にて LD L受容体タンパク質量を評価した。 実験条件を図 4 (A) に示す。
[結果]
化合物 Aは LDL受容体タンパク質量を上昇させた (図 4 (B) :上段のィム
ノプロッテイング像) 。
② mRNA量への影響
[方法]
上記実施例 4①で調製した肝臓より、 グァニジンチオシァネート ·フエノー ル 'クロ口ホルム (AGPC) 法で; RNAを調製した。 調製した RNAを用いて T a qma n P CR法にて LD L受容体 mRNA量を定量し、 —ァクチン m RNAとの比で結果を示した。 実験条件を図 4 (A) に示す。
c結果:]
化合物 Aは、 LDL受容体 mRNA量に対して影響を及ぼさなかった (図 4 (C) ) 。
実施例 5 :培養肝細胞株を用いたインビトロでの被験物質の LDL受容体タンパ ク質合成に対する影響
は法 3
He pG2細胞を 10%LPDS、 1. 5 μ g/m 1 25—ヒ ドロキシコレ ステロールおよぴ被験物質 (化合物 A; 1 0 μΜ) を含むメチォニン ·システィ ン不含 DMEM培地で処置し、 4時間培養後、 細胞内で生合成されるタンパク質 の標識を目的として35 S—メチォニン ·システィンを同培地に添加し、 処置を 続けた。 35 S—メチォニン · システィンを添加後、 0、 1、 2、 3時間後に細 胞を回収し、 洗浄後、 1 00 / 1の溶解液 (5 OmM HE PES— N a (pH 7. 5) , 0. 1M Na C 1 , 2%CHAP S, 2 mM C a C 1 2, 2. 5 mM Mg C 1 2) で細胞を溶解させた。 4°C、 1 5000 r p m、 30分の遠 心の後、 調製した細胞タンパク質画分に 1 Z 9容の 10 % S D S溶液を添加し、
5分間、 9 5 °Cで処置した。 これに、 9倍容の HB Sバッファー (50mM H
EPES-Na (pH7. 4) , 0. 1M Na C 1 , 1%T r i t o nX- 1 00) を添加し、 LDL受容体タンパク質を抗 LDL受容体抗体 (あら力 じめ反 応性が確認されている市販の抗体) を用いて免疫沈降させ、 電気泳動後オートラ ジオグラフィーにて合成された L D L受容体タンパク質量を評価した。 分子量 1
2 OKD a付近のものを未成熟型 LDL受容体、 分子量 16 OKD a付近のもの を成熟型 LDL受容体とした。 対照には、 化合物 Aのかわりに DMSOを等量投 与した。 実験条件を図 5 (A) に示す。
1:結果〕
化合物 A処置をすると、 対照と比べて、 成熟型の LDL受容体タンパク質の合 成量が経時的に上昇した。 一方、 未成熟型の方は、 35S—メチォニン .システ インを添加 2時間後をピークとした生合成増大が鞸められた。 こちらのほうも、 対照と比べて、 増大していた (図 5 (B) ) 。 成熟型と未成熟型の比の経時的変 動を示したものが、 図 5 (C) であるが、 化合物 A処置で、 対照より増大すると いうことが判った。
この結果より、 化合物 Aは、 成熟型 LDL受容体の生合成を促進することが判 つた。
実施例 6 :培養肝細胞株を用いたィンビトロでの被験物質の L D L受容体タンパ ク質成熟過程に対する影響
[方法]
H e p G 2細胞を 10%LPDS、 1. 5 g/m 1 25—ヒドロキシコレス テロールおよぴ被験物質 (化合物 A; 10 ^M) を含む培地で処置し、 4時間培 養後、 35S—メチォニン 'システィンを 30分間添加し、 細胞内生合成タンパ ク質のパルス標識を行った。 その後、 35S—メチォニン . システィンを含まな い培地に戻し、 経時的に細胞を可溶化し細胞タンパク質画分を調製した。 調製し た細胞タンパク質画分を用いて、 LDL受容体タンパク質を実施例 5と同様に免 疫沈降させ、 電気泳動後ォートラジォダラフィ一にて未成熟型 ·成熟型 LD L受 容体タンパク質量を評価した。 対照には、 化合物 Aのかわりに DMSOを等量投 与した。 実験条件を図 6 (A) に示す。
[結果]
本処理条件では、 未成熟型の LDL受容体タンパク質については、 化合物 Aと 対照群に差は認められなかった。 一方で、 成熟型への変換は、 化合物 A処置で増
大し、 未成熟型と成熟型の比を算出すると、 化合物 Aは、 その比を増大させた。 このことから、 化合物 Aは、 LDL受容体タンパク質の成熟化過程を上昇させる ことが明らかとなった (図 6 (B) 〜図 6 (D) ) 。
実施例 7 :培養肝細胞株を用いたィンビトロでの被験物質の S R— B I、 インス リン受容体 /3サブュニット発現に対する効果
法 3
He pG 2細胞を 10 % L P D Sおよぴ被験物質 (化合物 A) を含む培地で処 置し、 24時間培養後、 細胞を可溶化し細胞タンパク質画分を調製した。 細胞を 可溶ィ匕し細胞タンパク質画分を調製した。 調製した細胞タンパク質画分を用いて、 ィムノプロッティング法にて SR— B Iタンパク質量おょぴインスリン受容体 サブユニットタンパク質量を評価した。 対照には、 化合物 Aのかわりに DMSO を等量投与した。 実験条件を図 7 (A) に示す。
[結果 3
化合物 Aは、 S R— B Iタンパク質量およびィンスリン受容体 βサプュ二ット タンパク質量に対して影響を示さなかった (図 7 (Β) 、 図 7 (C) ) 。 このこ と力 ら、 化合物 Αの LDL受容体発現に対する作用は、 特異性の高いものである ことが明らかとなった。
実施例 8 :ハムスターを用いたインビボでの被験物質の SR—B I発現に対する 効果
[方法]
ハムスターを普通食飼育下で、 73間化合物 Aを 3、 1 Omg/k g/d a y 経口投与した後、 肝臓より実施例 4と同様にして、 膜画分を調製した。 調製した 膜画分を用いてィムノブロッテイング法にて SR— B Iタンパク質量を評価した。 対照には、 化合物 Aのかわりに、 化合物 Aの調製に用いた媒体 (Ve h i c 1 e ;メチルセルロース溶液) のみを投与した。
[結果]
化合物 Aは、 SR— B Iタンパク質量に対しては影響を示さなかった (図 8) 。
実施例 9 :ハムスターを用いた被験物質の血清脂質低下作用についての検討
[方法]
ハムスターを普通食飼育下で、 7日間化合物 Aを 3、 1 Omg/k g/d a y 経口投与した後、 血清コレステロール量を測定した。
[結果]
化合物 Aは、 顕著な血清コレステロール低下作用を示した (図 4 (B) の下段、 図 8の下段:血清総コレステロール低下率) 。
実施例 10 :スタリ一ユング方法
インビトロにおいて、 LDL受容体タンパク量上昇作用があるかをィムノプロ ッティング法等にて確認する。 必要に応じて、 mRNAに対する影響 (PCR法 や、 ノザンプロット法等) '他のタンパク質に対する影響 (ィムノブロッテイン グ法等) を確認する。 タンパク質合成以降の過程に影響があるかについては、
35S—メチォニン ·システィンなどを用いた方法にて確認する。 血清脂質低下 作用は、 各種動物 (例えばゥサギ ·ハムスターなど) を用いたモデル (普通食下、 高脂肪食下など) で評価する。 インビポにおいて、 LDL受容体タンパク質合成 以降に作用するかの確認は、 ィムノブロッティング法などで L D L受容体タンパ ク質発現に対する影響を、 PCR法などで mRNAに対する影響を検討する。 今までに、 LDL受容体は mRNAに転写され、 タンパク質に翻訳された段階 では、 未成熟で、 さらに糖鎖付加を受けて成熟型 (機能的な) LDL受容体とな ることが明らかとなっているので、 LDL受容体の翻訳後に関与する因子として は、 Da b l, D a b 2, a b 1 b, a b 8, Ra f t等が考えられている。 従って、 こういった因子に作用することによっても翻訳効率の上昇 Z膜表面への 輸送の効率化 成熟化の効率化 Z分解の抑制などが変化し L D L受容体タンパク 質の発現增加が生じることが考えられる。
産業上の利用可能性
本発明によれば、 転写活性化経路に依存することなく LDL受容体の mRNA 転写後のタンパク質発現プロセスを制御することによって LDL受容体タンパク
質の発現を促進することが可能な化合物ならびにそのような化合物をスクリー二 ングする方法が提供され、 該化合物は新しい作用機序を有する高脂血症治療剤等 として有用である。