明 細 書
アシノレ CoAォキシダーゼ、その遺伝子、組み換え体 DNA及びアシノレ Co Aォキシダーゼの製造法
技術分野
[0001] 本発明は、 SH試薬に対する安定性が優れたァシル CoAォキシダーゼ、その遺伝 子、組み換え体 DNA及び SH試薬に対する安定性が優れたァシル CoAォキシダー ゼの製造法に関する。
背景技術
[0002] ァシル CoAォキシダーゼは、ァシルコェンザィム A (ァシル CoA)を酸化し、トランス _2,3—デヒドロアシルコェンザィム A (エノィル CoA)及び過酸化水素に変換する酵 素であり、ペルォキシソームにおける脂肪酸の β酸化に関与する。本酵素は、哺乳 動物、植物、微生物等天然に広く存在することが知られている。
[0003] 例えば、哺乳類由来のものとしては、ラット由来(Biochem. Biophys. Res. Com mun. 217, 482 (1995)参照)、マウス由来(Eur. J. Biochem. 267, 1254 (200 0)参照)、ヒ卜由来(Biochem. Biophys. Res. Commun. 198, 1113 (1994)参 照)等の報告がある。
[0004] 植物由来としては、カボチヤ由来 (J. Biol. Chem. 273, 8301 (1998)参照)、キ ユウリ由来 l. Biol. Chem. 261 , 8570 (1986)参照)、シロイヌナズナ由来等が知 られている。
[0005] また微生物由来としては、 Candida lipolytics (Yarrowia lipolytics)由来(特 公昭 59— 15625号公報、 J. Biochem. 88, 1481 (1980)参照)、 Candida tropic alis由来(Biochem. Biophys. Res. Commun. 91 , 108 (1979)参照)、 Candid a maltosa由来 (Nucleic Acids Res. 16, 365 (1988)参照)、 Macrophomina phaseoli由来(特公昭 58-40466号公報参照)、 Cladosporium resinae由来、 Aspergillus candidus由来(特公昭 58-40466号公報参照)、 Monascus属由来 (特公昭 58—40466号公報参照)、 Saccharomyces cerevisiae由来(特公昭 58- 40466号公報参照)、 Arthrobacter属由来(特公昭 58—40466号公報参照)、 Die
tyostelium discoideum由来、 Corynebacterium由来(特願 2003— 276393号 明細書参照)等が知られている。これらの酵素のなかにはすでに遺伝子のクローニン グに成功し、組み換え体によって生産されている例もある。
[0006] 本酵素の産業上の有用性としては、例えば、遊離脂肪酸の測定あるいは脂肪酸の
/3酸化系を利用する化学変換が挙げられる。特に臨床診断の分野においては、血 清中の遊離脂肪酸が糖尿病、高脂血症、甲状腺機能亢進症、重症肝障害の診断の 指標とされている。また、近年、遊離脂肪酸がォーファン Gタンパク質受容体の一つ である GPR40に作用して、瞎臓 細胞からのインスリン分泌を促進することが明らか となり、遊離脂肪酸の生体内における機能性に注目が集まっている(Nature 422, 173 (2003)参照)。
[0007] 酵素を用いる遊離脂肪酸の測定方法は、レ、くつか知られている。
[0008] ァシル CoAォキシダーゼを用いる方法は、特異性が高ぐ簡便であることから広く 一般的に用いられている(特公昭 57-29998号公報及び特公昭 57-33955号公報 参照)。
[0009] 本測定は、まず血清中の遊離脂肪酸にコェンザィム A (CoA)、アデノシン 3リン酸( ATP)及びァシル CoAシンターゼ等を含有する第一試薬を添加し、アシノレ CoAを生 成させる。これにァシル CoAォキシダーゼを含有する第二試薬を添加すると、アシノレ CoAが酸化されて過酸化水素が発生する。第二試薬にペルォキシダーゼと発色試 薬を共存させると、発生する過酸化水素により発色するので、これを測定することによ り遊離脂肪酸を定量できる。以下に反応式を示す。
[化 1] アシノレ C o Aシンターゼ
遊離脂肪酸 + C 0 A + AT P → ァシル C 0 A + P P i + AMP ァシル C o Aォキシダーゼ
ァシル C o A + 02 → エノィル C o A + H 2 0 2
[0010] 本測定では、過剰に添加する CoAが発色を妨害することが知られており、これを回
避するために、第二試薬中に N_ェチルマレイミド(NEM)、ョード酢酸、ョード酢酸 アミド等の SH試薬を共存させ、第二試薬の添加と同時に CoAを失活させる方法が 報告されている(特公昭 57-29998号公報及び特公昭 57-33955号公報参照)。し 力、しながら、同じく第二試薬に処方されるァシル CoAォキシダーゼは、 SH試薬共存 下では安定性が著しく低下するために、長期間使用可能な液状化試薬の調製が困 難であった。そこで、遊離脂肪酸測定用の液状化試薬を開発するために、 SH試薬 に対する安定性の優れたァシル CoAォキシダーゼの開発が強く求められていた。 発明の開示
[0011] 本発明が解決しょうとする課題は、種々の用途、特に臨床診断に用いることのでき る、 SH試薬共存下での安定性の優れたアシノレ CoAォキシダーゼを提供することに める。
[0012] そこで本発明者等は、前記課題解決のために鋭意検討を重ねた結果、 Arthroba cter ureaf aciens (IFO 12140)由来のァシル CoAォキシダーゼ力 S、上記課題を 解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
[0013] すなわち、本発明は、以下の発明を提供するものである。
[0014] (l) lOmMの SH試薬存在下、 pH7. 5において 37°C, 4時間の処理で 40。/。以上 の残存活性を示すことを特徴とするアシノレ CoAォキシダーゼ。
[0015] (2) 10mMの SH試薬存在下、 pH7. 5において 37°C, 4時間の処理で 60。/o以上 の残存活性を示すことを特徴とするアシノレ CoAォキシダーゼ。
[0016] (3)以下の(a)又は(b)のァシル CoAォキシダーゼ。
(a)配列番号 1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)アミノ酸配列(a)において 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加さ れたアミノ酸配列からなり、かつアシノレ CoAォキシダーゼ活性を有するタンパク質
[0017] (4)以下の(a)又は(b)のァシル CoAォキシダーゼをコードする遺伝子。
(a)配列番号 1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)アミノ酸配列(a)において 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加さ れたアミノ酸配列からなり、かつァシル CoAォキシダーゼ活性を有するタンパク質
[0018] (5)以下の(a)又は(b)の DNA力 なるァシル CoAォキシダーゼ遺伝子。
(a)配列番号 2に示される塩基配列からなる DNA
(b) (a)の塩基配列からなる DNAと相補的な塩基配列からなる DNAとストリンジェン トな条件下でハイブリダィズし、かつァシル CoAォキシダーゼ活性を有するタンパク 質をコードする DNA
[0019] (6)項目(4)又は(5)記載のァシル CoAォキシダーゼ遺伝子をベクター DNAに揷 入したことを特徴とする組み換え体 DNA。
[0020] (7)項目(6)記載の組み換え体 DNAを含む形質転換体又は形質導入体。
[0021] (8)項目(7)記載の形質転換体又は形質導入体を培地に培養し、培養物からァシ ル CoAォキシダーゼを採取することを特徴とするァシル CoAォキシダーゼの製造法
[0022] 本発明によれば、 SH試薬共存下において安定性の優れたアシノレ CoAォキシダー ゼが提供される。 SH試薬共存下において安定性の優れた、本発明ァシル CoAォキ シダーゼは、診断用酵素等として測定用キットに有利に利用でき、産業上有用である 発明を実施するための最良の形態
[0023] 以下、本発明を詳細に説明する。本願は、 2003年 8月 25日に出願された日本国 特許出願第 2003— 299607号の優先権を主張するものであり、上記特許出願の明 細書および/または図面に記載される内容を包含する。
[0024] ァシル CoAォキシダーゼは、 自然界に広く分布しており、該酵素の遺伝子は、種々 の動物、植物、微生物等からクローニングが可能であり、その生物資源は、特に限定 されないが、本発明では、例えば、微生物、さらに具体的には Arthrobacter ureaf aciens (IFO 12140)力用レ、られる。
[0025] 目的とするァシル CoAォキシダーゼ遺伝子は、染色体遺伝子あるいは mRNAより 逆転写酵素を用いて合成した DNAからクローニングすることができる。クローニング については如何なる方法でもよぐ例えば、単離したァシル CoAォキシダーゼのアミ ノ酸配列解析結果や、既知のアシノレ CoAォキシダーゼの塩基配列又はアミノ酸配列 を基に混合塩基プライマーを作製してポリメラーゼ連鎖反応(以下、 PCRと略称する )を行うことにより目的の遺伝子又はその一部をクローニングすることができる。さらに
、制限酵素処理した染色体遺伝子についてサザンプロット分析を行い、 目的遺伝子 断片を有する遺伝子断片群を単離し、これをベクターに挿入して大腸菌等を形質転 換させて目的遺伝子をスクリーニングする方法あるいはセルフライゲーシヨンさせたも のを铸型としてインバース PCRを行う方法等も用いることができる。
[0026] 次いで、得られた塩基配列を有する遺伝子によって翻訳されるポリペプチドのァミノ 酸配列を確定する。このアミノ酸配歹 1Jは、配列番号 1で表されるとおりである。このよう にして確定されたアミノ酸配列をコードする遺伝子が本発明のアシノレ CoAォキシダ ーゼ遺伝子である。
[0027] なお、配列番号 1で表されるアミノ酸配列において、 1若しくは数個のアミノ酸が欠 失、置換若しくは付加されており、かつ、ァシル CoAォキシダーゼ活性をもたらすアミ ノ酸配列をコードするァシル CoAォキシダーゼ遺伝子は、全て本発明に含まれる。
[0028] そして、配列番号 1で表されるアミノ酸配列において、 1若しくは数個のアミノ酸が欠 失、置換若しくは付加されており、かつァシル CoAォキシダーゼ活性をもたらすァミノ 酸配列をコードするアシノレ CoAォキシダーゼ遺伝子を得るには、如何なる方法でも よぐ例えば、遺伝子に点変異又は欠失変異を生じさせるための周知技術である部 位特定変異誘導法;遺伝子を選択的に開裂し、次いで、選択されたヌクレオチドを除 去又は付加し、遺伝子を連結する方法;オリゴヌクレオチド変異誘導法等が挙げられ る。
[0029] これらの DNAは、ァシル CoAォキシダーゼ活性をもたらすポリペプチドをコードし ている蓋然性が高ぐ形質転換体を作製し、活性を有するものを選択することができ る。
[0030] 本発明のアシノレ CoAォキシダーゼ遺伝子と実質的に同一な遺伝子を取得するた めには、配列番号 2の塩基配列を有する DNA若しくはその相補鎖、又はそれらの一 部を含むプローブによりストリンジヱントな条件でハイブリダィゼーシヨンし、ァシル Co Aォキシダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするものを選択することができる。 ここでレ、うストリンジェントな条件とは、特異的なハイブリッドのみが選択的に形成され 、シグナルが検出されるが、非特異的なハイブリッドは形成されない条件である。この ような条件は個々の生物種により若干異なるが、常法によりハイブリダィゼーシヨンと
洗いの際の塩濃度又は温度をいくつか検討するのみで容易に決定することができる
。このような条件としては、例えば、後記実施例 1の項目(4)において特異的なシグナ ルが観察できることから、ハイブリダィゼーシヨンは、 DIG Easy Hyb試薬(ロシュ'ダ ィァグノステイクス社製)を用レヽて 37 42°Cでー晚行う。洗レヽ fま、 0. 5 X SSC, 0. 1 % SDSを用レ、、 15分間、 2回行う。洗いの温度は、 45°C以上、好ましくは 52°C以上 、更に好ましくは 57°C以上である。このような条件でハイブリダィズするような DNAは 、ァシル CoAォキシダーゼ活性を有するペプチドをコードしている蓋然性が高いが、 ァシル CoAォキシダーゼ活性を失うような変異を有するものも含まれる。そして配列 番号 1で表されるアミノ酸配列の 70%以上、好ましくは 80%以上、さらに好ましくは 9 0%以上の相同性を有するアミノ酸配列は本発明に含まれることとなる。そして配列 番号 2に示される遺伝子配列の 70%以上、好ましくは 80%以上、さらに好ましくは 9 0%以上の相同性を有する遺伝子配歹 1Jもまた本発明に含まれることとなる。
[0031] なお、配列番号 2に示される配列を有するァシル CoAォキシダーゼ遺伝子は、 pA CO - A300に挿入されて、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託セン ター(茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1 中央第 6)にブタペスト条約の規定下で 200 3年 8月 21日付(原寄託)で国際寄託され、受託番号 FERM BP— 08456力 S付与さ れている。
[0032] 上記のようにして得られたァシル CoAォキシダーゼ遺伝子を、大腸菌ラタトースォ ペロン等に由来するプロモーター、オペレーター及びリボゾーム結合部位等の発現 領域を含む DNA配歹 IJ (The Operon, p. 227, Cold Spring Harbor Laboratory , 1980を参照)を保有するベクター DNAに挿入し、得られた組み換え体 DNAを用 いて、例えば、大腸菌等に形質導入してアシノレ CoAォキシダーゼ高生産株を得る。
[0033] 用いられるベクター DNAは、如何なるものでもよく、例えば、プラスミド DNA若しく はバタテリオファージ DNA等でもよレ、。具体的には、特開平 08—205861号公報記 載の pBR系ベクターである pUTE500K,あるいはこれを pUC系に改良した実施例 1 の項目(6)に示される pUTE300K'等を用いることができる。得られた組み換え体 D NAを用いて、例えば、大腸菌 K一 12、好ましくは大腸菌 JM109 (宝酒造社製)、 DH 5 a (宝酒造社製)等を形質転換又はそれらに形質導入して夫々の菌株を得る。
[0034] 上記のようにして得られたァシル CoAォキシダーゼ生産能を有する形質転換体又 は形質導入体、例えば、エツシェリシァ属に属する菌株を用いてアシノレ CoAォキシ ダーゼを生産するには、下記のようにして行うことができる。上記微生物を培養するに は、通常の固体培養法で培養してもよいが、なるべく液体培養法を採用して培養す るのが好ましい。
[0035] また、上記微生物を培養する培地としては、例えば、酵母エキス、ペプトン、肉ェキ ス、コーンスティープリカ一あるいは大豆もしくは小麦麹の浸出液等、 1種以上の窒素 源に、リン酸 2水素カリウム,リン酸水素 2カリウム、硫酸マグネシウム、塩化第 2鉄、硫 酸第 2鉄あるいは硫酸マンガン等の無機塩類の 1種以上を添加し、更に必要により糖 質原料、ビタミン等を適宜添加したものが用いられる。
[0036] なお、培地の初発 pHは、例えば、 7— 9に調整するのが適当である。また培養は、 例えば、 30— 42°C、好ましくは 37°C前後で 6— 24時間、通気撹拌深部培養、振とう 培養、静置培養等により実施するのが好ましい。培養終了後、該培養物よりァシル C oAォキシダーゼを採取するには、通常の酵素採取手段を用いることができる。
[0037] 培養物から、例えば、濾過、遠心分離等の操作により菌体を分離し、洗菌する。こ の菌体からァシル CoAォキシダーゼを採取することが好ましい。この場合、菌体をそ のまま用いることもできる力 超音波破碎機、フレンチプレス、ダイナミル等の種々の 破壊手段を用いて菌体を破壊する方法、リゾチームの如き細胞壁溶解酵素を用いて 菌体細胞壁を溶解する方法、トリトン X-100等の界面活性剤を用いて菌体から酵素 を抽出する方法等により、菌体からアシノレ CoAォキシダーゼを採取するのが好まし レ、。
[0038] このようにして得られた粗酵素液からァシル CoAォキシダーゼを単離するには、通 常の酵素精製に用いられる方法が使用できる。例えば、硫安塩析法、有機溶媒沈澱 法、イオン交換クロマトグラフ法、ゲル濾過クロマトグラフ法、吸着クロマトグラフ法、電 気泳動法等を適宜組み合わせて行うのが好ましい。
[0039] 本発明の「SH試薬」とは、 SH基と反応する試薬をいい、チオール試薬、スルフヒド リル試薬ともいう。例えば、 N—ェチルマレイミド(NEM)等のマレイミド誘導体、ョード 酢酸、ョード酢酸アミド、 p_メルクリ安息香酸(PMB)、 5, 5 ' _ジチォビス(2_ニトロ安
息香酸)(DTNB)等が挙げられる。
[0040] また、本発明の「SH試薬に対する安定性が優れた」とは、以下に述べる活性測定 方法及び安定性測定方法に記載した反応条件下で、 10mMの SH試薬の存在下、 pH7. 5において 37°C、 4時間処理した後の残存活性比が処理前の活性に対して 4 0%以上、好ましくは 60%以上残存していることをいう。 SH試薬に対する安定性が優 れたアシノレ CoAォキシダーゼは、 SH試薬を共存させた酵素含有製品等の保存性 が著しく向上するため、産業上極めて有用である。
[0041] ァシル CoAォキシダーゼの活性の測定方法及び安定性の測定方法は、種々の方 法を用いることができ、一例として、以下に、本発明で用いるァシル CoAォキシダー ゼ活性の測定方法及び安定性測定方法について説明する。
[0042] (ァシル CoAォキシダーゼ活性の測定方法)
0. 2M Tris-HClHfn¾ (ρΗ7. 5) 0. 9ml, 0. 1 % ノ ノレミトイノレ CoA溶夜 0. lml、 15mM Toos溶液 0. 04ml, 150U/mlペルォキシダーゼ溶液 0· 04ml 、 1. 76% 4ーァミノアンチピリン溶液 0. 02mlの混合液を 37°Cで 5分間インキュべ ートし、ァシル CoAォキシダーゼサンプルを 0· 05ml添加、混合する。全容 1 · 15ml を 37°Cで 3分間反応させ、反応開始から 3分間の、反応溶液の 555nmにおける吸 光度の変化を分光光度計を用いて測定する。酵素 1Uは、上記測定条件下において 、 1分間あたり 1 μ molの過酸化水素を生成する酵素量とする。
[0043] (NEM安定性測定方法)
各種ァシル CoAォキシダーゼを 0. ImM FADを含む 200mM リン酸カリウム緩 衝液(pH7. 5)にて夫々約 10U/mlの濃度とし、各酵素溶液に 0. ImM FAD及 び 20mM NEMを含む 200mM リン酸カリウム緩衝液(ρΗ7. 5)を夫々等量添カロ し、 NEMの濃度を 10mMとする。本酵素液 (約 5UZml)を 37°Cにて 4時間放置す る。保存前及び保存後のサンプルの酵素活性を測定し、残存活性比を求めることで 安定性を評価する。
実施例
[0044] 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
[0045] 実施例 1:ァシル CoAォキシダーゼ遺伝子のクローニング
(l)Arthrobacter ureaf aciens (IFO 12140)染色体 DNAの調製 Arthrobacter ureaf aciens (IFO 12140)を LB寒天培地〔ノくクトトリプトン 1 % ( W/V) ,酵母エキス 0· 5% (W/V) , NaCl 0. 5% (W/V)及び寒天 1 · 4% (W /V)〕に接種し、 37°Cで培養した。培地表面に生育した菌体を集菌した。この菌体 より G NOME DNA Isolation Kit (フナコシ社製)を用いて、染色体 DNAを 100 β g守,こ。
[0046] (2)ァシル CoAォキシダーゼ遺伝子の部分断片の取得 1
次いで、 日本 DNAデータバンクの国際塩基配列データベースを用いて、各種ァシ ル CoAォキシダーゼのアミノ酸配列の相同性検索を行レ、、相同性が高いアミノ酸配 列部分を基に、コドンが縮重している箇所を混合塩基とした複数個の PCR用プライ マーを作製した。項目(1)で調製した染色体 DNAを铸型とし、 Ex Taq DNAポリメ ラーゼ(宝酒造社製)を用いて PCRを行った。 PCR反応は、 PCRマスターサイクラ一 グラジェント(エツペンドルフ社製)にて、熱変性 94°C, 2分、ァニール 58°C, 30秒、 伸長反応 72°C, 1分の条件下、 30サイクル行った。結果としてセンスプライマーが 5' -TTYGCNATGACNGARATHGGNCAYGG-3 ' (配列番号 3 ; 26 mer, Aは 、アデニン、 Cは、シトシン、 Gは、グァニン、 Tは、チミン、 Hは、アデニン、シトシン又 はチミン、 Nは、アデニン、シトシン、グァニン又はチミン、 Rは、アデニン又はグァニン 、 Yは、チミン又はシトシンを示す。対応するアミノ酸配列: Phe Ala Met Thr Glu II e Gly His Gly (配列番号 4) )、アンチセンスプライマーが 5 '— TGYTGCATNARN ACNGTRTTRTCNCCYTC-3 ' (配列番号 5; 29mer,対応するアミノ酸配歹 IJ : G1 u Gly Asp Asn Thr Val Leu Met Gin Gin (配列番号 6) )であるとき、 0· 9kbp程 度に相当する遺伝子断片が増幅された。
[0047] 増幅した DNA断片を 1%ァガロースゲル電気泳動後のゲルより回収し、 pT7Blue T Vector (宝酒造社製)に組み込み、組み換え体プラスミドを得た。該プラスミド中の 揷入 DNAの塩基配列を、マルチキヤピラリー DNA解析システム CEQ2000 (ベック マン ·コールター社製)を用いて決定した。その結果、 DNA断片(841bp)が、 PCR のプライマー設計に用いたペプチドのアミノ酸配列を正しくコードする塩基配列を両 端に有していた。また、決定した塩基配歹 IJから推定されるアミノ酸配列中には、既知
のアシノレ CoAォキシダーゼの内部アミノ酸配列と相同性が認められた。従って、得ら れた増幅 DNA断片は、本発明のァシル CoAォキシダーゼ遺伝子の一部分 (部分遺 伝子)であることが判明した。
[0048] (3)ァシル CoAォキシダーゼ遺伝子の部分断片の取得 2
先にクローニングした Corynebacterium sp. 2— 3— 1 (FERM BP— 6183)由来 のァシル CoAォキシダーゼ(特願 2003—276393号明細書;アミノ酸配列を配列番 号 7に、遺伝子の塩基配列を配列番号 8に示す)と部分遺伝子配列の相同性が極め て高かったことから、 Corynebacterium sp. 2—3—1由来のアシノレ CoAォキシダー ゼの遺伝子配列に基づいてプライマーを作製し、項目(1)で調製した染色体 DNA を錡型として PCRを行った。 Ex Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用レ、、熱変 性 94。C, 30秒、ァニーノレ 58°C, 30秒、伸長反応 72。Cの条件下、 30サイクル行った 結果、 Corynebacterium sp. 2—3—1由来ァシル CoAォキシダーゼの 5 '末端側 の塩基配列情報をもとに設計したセンスプライマー 5 ' -AGATCACCGATTGG CTTTGCCTGGG-3' (配列番号 9 ; 25 mer)及び項目(2)の遺伝子配列をもとに 作製したアンチセンスプライマー 5, -GGCCGTTGTGGCAATGCTGGCGAC GT-3' (配列番号 10 ; 26 mer)を用いて PCRを行った場合、増幅 DNA (約 0. 6kb P)を得ることができた。
[0049] 本増幅 DNA断片 1%ァガロースゲル電気泳動後のゲルより回収し、 pT7Blue T Vector (宝酒造社製)に組み込み、組み換え体プラスミドを得た。該プラスミド中の挿 入 DNAの塩基配列を、マルチキヤピラリー DNA解析システム CEQ2000 (ベックマ ン 'コールター社製)を用いて決定した。決定した塩基配列から推定されるアミノ酸配 列には、既知のアシノレ CoAォキシダーゼの内部アミノ酸配列と高い相同性が認めら れた。また、推定されたアミノ酸配列の上流側には終止コドンの 10アミノ酸の後にメチ ォニンが存在してレ、たこと力ら、このメチォニンをコードする ATGが本ァシル CoAォ キシダーゼをコードする遺伝子の 5'末端であると推定された。
[0050] (4)Arthrobacter ureaf aciens (IFO 12140)染色体 DNAのサザンブロット解析 次に、項目(1)で調製した染色体 DNA2 x gを、制限酵素 Smalを用レ、、 37°Cで 5 時間消化した。得られた制限酵素消化 DNAを 0. 7%ァガロースゲル電気泳動に供
した。泳動後、サザンブロット法により、ナイロン膜(Hybond_N +、アマシャムファノレ マシアバイオテック社製)に DNAを転写した。ハイブリダィゼーシヨンのプローブとし ては、項目(2)で得られたプラスミド遺伝子を铸型とし、項目(2)で使用したプライマ 一を用いて、 PCR Digラベリングミックス(ロシュ'ダイァグノスティックス社製)存在下 で PCR増幅させたものを使用した。 PCRの反応条件等は、上記(2)と同様に行った
[0051] 上記のナイロン膜を 2 X SSC (0. 3M NaCl、 0. 03Mクェン酸ナトリウム; pH7. 0) で洗浄後、 DIGシステムを用レ、、ユーザーガイド(ロシュ'ダイァグノスティックス社製) に従レ、、ハイブリダィゼーシヨンを行った。ハイブリダィゼーシヨンを行った後のナイ口 ン膜の洗浄は、 0. 1% SDS含有 2 X SSC (15mM NaCl、 1. 5mMクェン酸ナトリウ Λ ; ρΗ7. 0)で室温 ίこて 5分 Γ 、 2回ののち、 0. 1% SDS含有 0. 1 X SSCで 68。Gこ て 15分間、 2回行った。
[0052] その結果、約 2. 5kbpの位置にハイブリダィズしたプローブに由来するシグナルが 認められた。
[0053] (5)ァシル CoAォキシダーゼ遺伝子の部分断片の取得 3
上記の結果に基づき、 Smal消化した染色体 DNA10 /i gを 1. 0%ァガロースゲル 電気泳動で分離し、約 2. 5kbpの大きさに相当する位置のァガロースゲルを切り出し た。ゲルから GENE CLEAN II (フナコシ社製)により DNA断片を抽出精製し、該 D NA断片を Smal処理した pUC19 Vector (宝酒造社製)に組み込み、組み換え体 プラスミドを得た。本プラスミドを铸型とし、(2)の部分遺伝子配列をもとに作製したセ ンスプライマー 5'— CAGACCTGGATGTCTACGTCACCTT—3 ' (配列番号 1 1 ; 25 mer)及び pUC19 Vectorの遺伝子配列をもとに作製したアンチセンスプライ マー 5 ' -GGGCCTCTTCGCTATTACGCCAGCT-3 ' (配列番号 12; 25 mer )を用いて PCRを行った。 Ex Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用レ、、熱変性 94°C, 30禾少、ァニーノレ 58°C, 30禾少、 ί申長反応 72。G, 3分の条件下、 30サイクノレ行 つた。結果として増幅 DNA (約 1. Okbp)を得ることができた。
[0054] 本増幅 DNA断片 1%ァガロースゲル電気泳動後のゲルより回収し、 pT7Blue T Vector (宝酒造社製)に組み込み、組み換え体プラスミドを得た。該プラスミド中の揷
入 DNAの塩基配列を、マルチキヤピラリー DNA解析システム CEQ2000 (ベックマ ン 'コールター社製)を用いて決定した。決定した塩基配列から推定されるアミノ酸配 列には、既知のアシノレ CoAォキシダーゼの内部アミノ酸配列と高い相同性が認めら れ、終止コドンである TAGが含まれていることがわかった。結果として、ァシル CoA ォキシダーゼをコードする遺伝子の 3'末端まで及び 3 '末端より下流側 193bpの塩 基配列情報を得た。
[0055] (6)全長ァシル CoAォキシダーゼ遺伝子のクローニング及びァシル CoAォキシダー ゼ生産株の取得
先ず、上記の操作で得られた塩基配列に基づき、ァシル CoAォキシダーゼ遺伝子 の 5 '末端あるいは 3,末端を含むオリゴヌクレオチド(計 30塩基のオリゴヌクレオチド、 3'末端側は相補鎖)を設計した。このプライマー中に Ndel部位を組み込んでおき、 PCRで増幅した産物を、 Ndelを作用させて消化することにより、コーディング領域が 得られるようにしておいた。すなわち、 5 '— ACAGAAGGAAGGCATATGACAG AAGTAGTG-3 ' (配列番号 13 ; 30 mer)、アンチセンスプライマーとして 5,_GG CGTTTGTAACCATATGCTAGCGGGACTT-3 ' (配列番号 14 ; 30 mer)を 合成した。項目(2)で調製した染色体遺伝子を铸型とし、合成プライマー及び KOD Plusポリメラーゼ(東洋紡社製)を用い、熱変性 94°C, 15秒、ァニール 56°C, 30秒 、伸長反応 68°C, 4分 00秒の条件下、 30サイクル行った。結果として増幅 DNA (約 2. lkbp)が得られ、これを Ndelで消化して、ァシル CoAォキシダーゼをコードする 領域の DNAを得ることができた。
[0056] 得られた DNAを、大腸菌ラタトースォペロン等に由来するプロモーター、オペレー ター及びリボゾーム結合部位等の発現領域を含む DNA配歹 lj (The Operon, p. 2 27, Cold Spring Harbor Laboratory, 1980を参照)を保有する pBR系ベクター PUTE500K' (特開平 08—205861号公報記載)を pUC系に改良した PUTE300K ,の Ndel部位に揷入し、組み換え体プラスミド DNA pACO_A300を得た。 D. M. Morrisonの方法(Methods in Enzymology, 68, p. 326—331, 1979) ίこ従レヽ、 組み換え体プラスミド DNA pACO_A300を用いて大腸菌(E. coli)JM109 (宝酒 造社製)を形質転換し、形質転換株、大腸菌 . coli)JM109 (PAC〇-A300)を得
た。菌体より QIAGEN tip-100 (キアゲン社製)を用いて組み換え体プラスミド pA CO-A300を抽出して精製し、組み換え体プラスミドを 100 μ g得た。
[0057] 該プラスミド中の挿入 DNAの塩基配列を、マルチキヤピラリー DNA解析システム C EQ2000 (ベックマン'コールター社製)を用いて決定した。染色体 DNAを铸型とし た複数ロットの PCRを行うことにより、 errorが入っていないことを確認した。決定した ァシル CoAォキシダーゼ遺伝子の塩基配列を配列番号 2に、また、該 DNA配列か ら翻訳されるポリペプチドのアミノ酸配列を配列番号 1に夫々示した。 pAC〇_A300 に揷入されているァシル CoAォキシダーゼ遺伝子の ORFは、 2109bp、 703ァミノ 酸からなっていることが判明した。なお、 pAC〇_A300は、独立行政法人産業技術 総合研究所 特許生物寄託センター (茨城県つくば巿東 1丁目 1番地 1 中央第 6) にブタペスト条約の規定下で 2003年 8月 21日付 (原寄託)で国際寄託され、受託番 号 FERM BP—08456が付与されている。
[0058] 得られた大腸菌(E. coli)jM109 (pAC〇_A300)を、 LB_IPTG_amp培地〔バタ トトリプトン 1 % (W/V) ,酵母エキス 0· 5% (W/V) , NaCl 0. 5% (W/V) ,イソ プロピノレー jS—D—チォガラタトピラノシド(ImM)及びアンピシリン(50 μ g/ml)〕に て 37°Cで 10時間振とう培養した後、アシノレ CoAォキシダーゼ活性を測定したところ 、 0. 2U/mlであった。
[0059] 実施例 2:ァシル CoAォキシダーゼの製造法
大腸菌 . coli)JM109 (pAC〇一 A300)を実施例 1の項目(6)の方法にて 50ml の培地で培養し、ァシル CoAォキシダーゼを生産させた。本培養液から、特公昭 58 一 40466号公報記載の方法により、精製ァシル CoAォキシダーゼ溶液を得た。
[0060] 実施例 3:ァシル CoAォキシダーゼの NEMに対する安定性の評価
実施例 2にて調製した組み換えァシル CoAォキシダーゼ及び市販の精製 Arthro bacter sp. 由来ァシル CoAォキシダーゼ(Sigma社)及び Candida sp. 由来ァシ ル CoAォキシダーゼ(Sigma社)を夫々 0. ImM FADを含む 200mM リン酸カリ ゥム緩衝液(PH7. 5)にて約 lOUZmlの濃度とし、各酵素溶液に 0. ImM FAD及 び 20mM NEMを含む 200mM リン酸カリウム緩衝液(ρΗ7. 5)を夫々等量添カロ し、 NEMの濃度を 10mMとした。本酵素液(約 5U/ml)を 37°Cにて放置し、保存
前及び保存後のサンプルの酵素活性を測定して残存活性比を求めることで安定性 を評価した。図 1に示したとおり、 Arthrobacter ureaf aciens (IFO 12140)由来 ァシル CoAォキシダーゼは、市販の 2種のァシル CoAォキシダーゼより NEM共存 下での安定性が高ぐ 4時間放置後も約 65%の残存活性が認められた。
[0061] 本明細書中で引用した全ての刊行物、特許および特許出願は、その全文を参考と して本明細書中にとり入れるものとする。
産業上の利用可能性
[0062] 本発明によれば、 SH試薬共存下において安定性の優れたァシル CoAォキシダー ゼが提供される。 SH試薬共存下において安定性の優れた、本発明ァシル CoAォキ シダーゼは、診断用酵素等として測定用キットに有利に利用でき、産業上有用である 図面の簡単な説明
[0063] [図 1]図 1は、本発明ァシル CoAォキシダーゼの NEMに対する安定性を示すグラフ である。〇は Arthrobacter ureaf aciens (IFO 12140)由来ァシル CoAォキシダ ーゼ(pAC〇_A300)、△は Arthrobacter sp. 由来ァシル CoAォキシダーゼ(Si gma社)、口は Candida sp. 由来ァシル CoAォキシダーゼ(Sigma社)を用いた結 果を示す。
配列表フリーテキスト
[0064] 配列番号 3、 5及び 9一 14 :合成オリゴヌクレオチド(式中、 Hは A、 C又は Tを表し、 Rは A又は Gを表し、 Yは T又は Cを表し、 Nは A、 C、 G又は Tを表す)
配列番号 4及び 6:ペプチド