明細書
半導体製造装置
技術分野
本発明は半導体製造装置にかかわり、 スピン式枚葉洗浄装置での薬液温度コン トロールに関する。
背景技術
半導体製造装置における洗浄装置の役割は、 半導体の薬液処理、 薬液処理後の 副生成物の除去およびそのリンス、 リンス液の乾燥にある。 このような工程は、 1 ) 半導体の歩留まりの減少を引き起こす可能性のある異物 (例えば、 エツチン グ残滓、他の装置ゃクリーンル一ムからの発麈で付着した微小粒子、金属汚染物) の除去、 2 ) 堆積された膜 (例えば、 酸化膜、 窒化膜、 金属膜) の除去、 3 )成 膜前のウェファ一表面の処理 (例えば、 シリコン表面が露出した場合のダングリ ングボンドの安定原始分子による終端処理) といったデバイスの歩留まりに直結 するきわめて重要なものである。
洗浄装置には、 ウェファ一への薬液のかけ方によって大きく二つに分けられ、 浸積型、 スピン 'スプレー型があり、 それそれにバッチ式、 枚葉式がある。特に スピン型枚葉式洗浄装置は他の型に比べて枚葉処理であり、 プロセス時間が短い ので、 ゥエファーを一枚ずつ連続で各プロセスを処理する生産形態に 向いており、 異物がウェファ一から離脱した後の他のウェファ一への転写が原理 的にないため、 非常に清浄であるという利点があり汎用されている装置である。 既存のスピン型洗浄装置は、 図 1に示すように、 回転したウェファ一に薬液をか け、薬液を振り切る時に生ずる薬液の液滴をウェファ一に再付着させないために、 チヤンバ一内ウェファ一の表面側に気体を導入し、 ウェファ一の反対側から排気 する構造になっている。 通常その気体はクリーンルームの HEPPAフィルタ一を通 つた空気が使用されており、 その温度は室温である。
そのため、 装置内部の大部分の温度は室温に固定されている。固定された雰囲 気に高温の薬液をかけると、 図 2に示すように、 必然的にウェファ一上で薬液の 温度が不均一に低下し、 洗浄工程の不均一を生ずる。こうした環境の中で使用で きる薬液の温度の上限は 5 0 °C程度といわれている。枚葉洗浄用の薬液の開発
は低温化という要請が新たに加わった。しかし、 洗浄工程の中には、 例えば、 ェ ヅチングのポリマー残渣の除去を行おうとした場合、 エッチングの条件によって はポリマーの精製方法が異なり、 それまで使ってきたプロセス条件では除去でき ない場合がある。そうした場合、薬液を変えるか、長時間処理に頼ることになり、 コスト的にも、 時間的にも問題が生ずる。 また、 反応性をあげるひとつの重要な パラメ—夕一は薬液処理の温度であるが、 枚葉洗浄器で温度コントロールをしよ うとするとウェファ一の取り付け部に温調機構を設ける必要があり、 従来は装置 の複雑化、 高コスト化を招いて実用的でなかった。
また、 洗浄工程では、 薬液処理をするため、 洗浄部材への何らかのエツチン グが生じる。 例えば、 典型的な R C A洗浄では、 異物の除去のために、 酸化膜を 少し削りながら、 異物を遊離させ、 異物と酸ィ匕膜間のゼ一夕ポテンシャルをコン トロールすることにより、 遊離された異物の再付着を防止している。 ここで削る ことが可能な酸化膜の許容度は、 微細化に伴って益々少なくなつており、 微細化 レベル 6 5 nmノードでは数オングストローム以下が要請されている。薬液処理 は化学反応であるため、 その処理温度に極めて敏感である。 薬液温度が不均一で あると、 必然的に膜のエッチングレートへの影響が大きくなり、 膜を削りすぎた り、 また削れないために、 異物が取れないといった問題が生じる。 不均一に削れ た膜はデノ イスのトランジスタ一の閾値や、相関の容量のばらつきの原因となる。 したがって、 本発明は、 こうした問題を解決するために、 装置を複雑にするこ となく、 温度調節のコストを低減できるスピン式枚葉洗浄装置を提供することを 目的とする。
発明の開示
本発明は、 スピン式枚葉洗浄装置において、 高温の薬液を使用する場合、 スピ ンチヤンバ一内およびその周り、 ウェファ一搬送系内の雰囲気および装置内部の 温度を薬液の温度より低い温度にコント口一ルする機構を有する装置である。好 ましくは薬液の温度が 5 0 °C以上の場合、 装置内部の温度を薬液の温度より 3 0 °C以内にコントロールする。
装置内部の温度を薬液の温度に対し相対的にコントロールする機構を用いる ことにより、 低コストでスピンチャンバ一の機構を変えずに、 装置内部の温度調
節を実現することができる。
本発明はまた装置の筐体に断熱処理を施し、 装置内部の温度が外部に伝わら ないようにする。
筐体に断熱機構を設けると、 外部から流入する流体の温度をコントロールす ることによって、装置内の温度を装置外の温度より、高くすることが可能となり、 また必要な薬液の温度を装置内の ¾gとの差を制御することによって、 実質的に 利用可能な薬液の温度を高く設定でき、 結果としてプロセスの余裕度を広げるこ とになる。
本発明はまた、 スピンチャンバ一に流入するクリーンな気体を温度調節する機 構を有することができる。 気体には、 乾燥空気、 例えば温度 2 0 °C、 湿度 6 0 % を用いることができる。 また、 スピンチャンバ一に流入するリンス液 (例えば、 超純水 (D I W)) を 調節する機構を有することができる。 さらに、 装置か ら廃液する流体の温度を、 装置に導入する流体に伝達する機構を設けることがで きる。 また、 装置から排気する気体の温度を、 装置に導入する気体に伝達する機 構を設けることができる。 ウェファ一の受入れ部に装置内と同じ温度の清浄気体 を導入し、 ウェファ一の温度を清浄チャンバ一に入る前に昇温する機構を設ける ことができる。
図面の簡単な説明
図 1は、 従来のスピン式枚葉洗浄装置の概略図である。
図 2は、 従来の装置におけるウェファ一上の薬液温度分布を示す説明図であ る。
図 3は、 本発明の実施例におけるスピン式枚葉洗浄装置の概略図である。
図 4は、 本発明の装置におけるウェファ一上の薬液温度分布例を示す説明図 である。
図 5は、 本発明の実施例における熱交換器を示す説明図である。
図 6は、 本発明の実施例における断熱構造を示す図である。
図 7は、 本発明の実施例および比較例におけるゥエファー上の温度分布を示す 図である。
図 8は、 本発明の実施例および比較例で得られたシリコン酸ィ匕膜のェヅチング
状態を示す図である。
図 9は、 本発明の実施例 1および比較例 1で得られたェヅチングゥエファ一の しきい値電圧 (V t ) を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
本発明をさらに詳細に説明するために、 図 3に従って説明すると、 スピン式 枚葉洗浄装置は、 断熱機構をおよび温度調節機構を設けた筐体の内部にスピンチ ヤンバー、 ウェファ一搬送ロボヅトを備える。 スピンチャンバ一は、 ウェファ一 力ヅプ、 ウェファ一回転装置および気液分離装置からなり、 ウェファ一チヤヅク およびウェファ一止めにてウェファ一を支持する。 薬液、 次いで超純水を、 ゥェ ファー回転装置により回転するウェファ一上に注入し、 ウェファ一を加工処理し 洗浄する。 洗浄されたウェファ一はウェファ一搬送ロボヅトにより筐体の外のゥ エファ一力セヅ トに搬送される。 薬液、 洗浄水および汚染空気は気液分離装置に て分離される。
クリーン気体は温度調節機構としての熱交換器を経て装置内に流入し、 熱交 換器を経て装置外に流出し、 流出した空気はクリーンル一ムで再生した後に再循 環させる。
本発明によれば、 図 4に示すように、 ウェファ一上の薬液温度分布を一定に 保持することができる。 クリーンルームの気体が室温と同じであっても、 熱交換 器を絰て薬液温度と同じ温度にすることができる。 これにより、 スピンチャンバ —内の温度を一定に保持する事ができる。
熱交換器の実施例を図 5に示す。 低温のクリーン気体は熱交換器を経て高温 の換気となり洗浄装置に流入する。 流出された高温の排気は熱交換器を経て低温 で排気される。 これにより装置から排気する気体の温度を、 装置に導入する気体 に伝達する事ができる。
筐体の断熱構造は、 図 6の実施例に示すような構造とすることができる。 具 体的には、 筐体の壁を S A S又は樹脂の間に石綿等の断熱材を充填し、 窓には中 空構造の透明樹脂を用いる事ができる。
温度調節機構は、 スピンチャンバ一にさらに熱交換機の補助として、 例えば 電熱ヒ一夕一を設け、 内部の温度をコントロールすることができる。
ウェファ—の受入れ部、 例えば保温ボックス内に装置と同じ温度の清浄気体 を導入することにより、 ウェファ一の温度を清浄装置に入る前に昇温する機構を 設けることができる。
筐体に流入する気体、 薬液、 超純水の温度をコントロールするため、 コンビ ュ一夕一にて監視し、 制御する機構を設けることができる。
実施例
以下に、 実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、 本発明はそれ に限定されるものではない。
実施例 1
本発明のスピン式枚葉洗浄装置を用い、 3 O Aのシリコン酸化被膜をもつ直 径 2 0 0 mmの G O 1テストパターンのシリコンウェファ一を処理した。 処理条 件は、 アンモニア:過酸化水素水:水 = 1 : 1 : 5の混合比の洗浄液を 7 0 °C に、 ウェファ一の温度および雰囲気を 5 0 °Cに制御して、 毎分 2 0 0回転で、 1 . 5分間処理した。 操作中のウェファ一上の温度分布は図 7に示すように、 温 度差が小さい。得られたシリコン酸化膜のエッチング状態を図 8に示した。膜厚 は Elipsometer (堀場製作所製) で測定した。 図から明らかなように、 エツチン グの部分的なばらつきは小さく、 このものを用いて高い性能の製品を生産するこ とができた。
比較例 1
汎用のスピン洗浄機を用い、 実施例 1と同じシリコン酸化被膜をもつシリコ ンウェファ一および洗浄液を使用した。 洗浄液温度は 7 0 °C、 雰囲気温度は 2 0 °Cで、 毎分 2 0 0回転にて 1 . 5分間処理した。 操作中のウェファ一上の温 度分布は図 7に示した。得られたシリコン酸ィ匕膜のェヅチング状態を図 8に示し た。
実施例 2
本発明のスビン式枚葉洗浄装置を用い、 実施例 1と同じシリコン酸化被膜シ リコンウェファ一および洗浄液で、 同一条件下で 2 Aのエッチングを洗浄時間 4 5秒、 リンス時間 3 0秒、 乾燥時間 3 0秒、 ウェファ一搬送 1 5秒で行い、 全 プロセスは 2分間であった。 したがって、 1チャンバ一当り 1時間に 3 0枚を生
産した。
比較例 2
汎用のスピン洗浄機を用い、 実施例 1と同じシリコン酸化被膜をもつシリコ ンウェファ一および洗浄液を使用した。 同じ条件下で 2 Aのエツチングを洗浄 時間 1 . 5分、 リンス時間 4 5秒、 乾燥時間 3 0秒で行い、 全プロセスは 4分間 であった。 したがって、 1チャンバ一当り 1時間に 2 0枚を生産した。
実施例 3
C V曲線 ( 1 MH z ) により実施例 1および比較例 1で得られたエッチング ウェファ一のしきい値電圧 (V t ) を測定した。 その結果を図 9に示す。 図から 明らかなように、 しきい値電圧の分布が本発明では、 従来法に比較して約 5 0 % も改良された。
発明の効果
本発明の装置は、 薬液使用温度を従前よりも大幅に引き上げることが可能であ る。 例えば薬液の温度限界が 5 0 °Cくらいであったものが、 装置内の雰囲気温 度を 5 0 °Cにでき、 それによつて薬液温度を 8 0 °Cくらいまで引き上げること ができる。 これはプロセスの温度の余裕度の向上につながる。 また、 高温の薬液 を使用でき、 これにより反応速度を早めるため、 プロセス時間を短縮でき、 枚葉 装置の処理量をさらに引き上げることができる。
産業上の利用の可能性
以上のような本発明のスピン型枚葉洗浄装置は、 これまでのバッチ式におい て不利であったコスト対処理能力比を大幅に改善することができ、 半導体洗浄装 置に使用される割合が、飛躍的に大きくなるであろう。従来、半導体への投資は、 バヅチ式の装置が主流であるために、 初期投資の段階から本投資分の洗浄装置を 導入しなければならなかった。しかし、本発明の洗浄装置を用いることによって、 初期投資を低減することができ、 必要に応じて最適な生産量に増減できる。 これ により、 半導体の需要と供給のアンバランスによる不安定な生産量を改善するこ とができる。 また、 本発明の洗浄装置を用いると、 エッチングの部分的なばらつ きが小さく、 高い性能の製品を生産することができる。