明細書 核酸の変異及び多型の検出用プローブセット、
それを固相化した DN Aアレイ、
並びにそれらを用いた変異及び多型の検出方法 技術分野
本発明は、 核酸の変異又は多型の検出用プローブセット、 それを固相化し た DNAアレイ、 及びそれらを用いた変異又は多型の検出方法に関する。 背景技術
ゲノム上の特定の遺伝子の塩基配列の変異は、 当該遺伝子がコードする蛋白質 の構造や発現量を変化させ、 癌をはじめとする種々の疾患の原因となることが知 られている。 さらに近年、 ゲノム上である頻度で散在する 1塩基多型 (Single
Nucleotide Polymorphism; SNPs) が、 ヒトにおいては薬剤感受性の違いや、 ある疾患に対する罹患率の違いを引き起こすことが明らかになつてきた。 また細 菌においては、 薬剤耐性などと相関することも明らかになつてきた。 ゆえに、 ゲ ノム上の塩基配列の変異を検出することは、 疾患の診断のみならず、 疾患の罹患 率 測、 個人の薬剤に対する感受性や副作用の予測、 そして細菌の薬剤耐性の予 測を可能とすることが示唆されており、 個々人に適切な医療を施す、 いわゆるォ ーダーメード医療の実現に不可欠と考えられている。
例えば、 ヒトゲノム上にはこのょゔな SNP部位が、 ゲノム全域にわたって数 百塩基に 1個の頻度で存在することが明らかになってきている。 これら SNPの 情報が実際の医療に応用されるためには、 個々人についてなるべく多数の SNP 部位を、 精度よく、 簡便かつ低コストで検出することを可能にする技術が必要で ある。
従来より塩基配列の変異の検出の最も確実な手法として、 ダイデォキシ法ゃサ ンガ一法に基づく塩基配列の解読手法が用いられている。 これらの手法は、 変異 の有無だけでなく、 塩基置換の場合は変異のタイピングを判断することを可能に
し、 更に塩基の欠失や挿入までを高精度に判断することが可能な手法である。 し かし 1回の反応で検出できる変異部位は、 ゲノム上の連続した数百塩基の範囲内 に限られており、 特に、 ゲノム上で数百塩基以上離れた位置に散在する複数箇所 の S N Pを同時に検出することは困難である。 従って、 同時処理が要求される、 上述の変異の同時解析の場合には簡便性及びコストの面で難点がある。
近年、 このようなゲノム上の広範な部位に散在する塩基配列を、 同時並行して 検出する手段として D N Aアレイ (又は D N Aチップ) と呼ばれる技術が注目さ れている。 D N Aアレイとは、 シリコンウェハやスライドガラス等の担体に多種 類のオリゴヌクレオチドプローブをそれぞれ個別の分画に多種類固相化したもの である。 一定条件下で標識済試料核酸を D N Aアレイに接触させてプローブとの 間で八ィブリダイゼーシヨン反応を行い、 個々の分画におけるハイブリダィゼ一 シヨン反応の有無および程度を、 各分画からのシグナルを検出して比較すること によって測定し、 当該核酸試料中の特定の塩基配列の有無や、 その発現量を検出 するために利用されている。
D N Aアレイは、 原理上、 ゲノム上にて数百塩基以上離れた位置に存在する複 数の S N Pを同時に並行して大量に検出することが可能であるため、 個々人の S N Pの検出、 即ち変異の解析に用いることが可能である。 よって変異解析に D N Aアレイが用いられれば、 上述のオーダーメ一ド医療の実現に寄与すると考えら れている。 しかしながら、 そのためには依然として解決すべき課題があるのが実 情である。
D N Aアレイを複数変異の同時解析に適用するための第 1の課題は、 種々の配 列を同一条件下で、 1塩基レベルの違いで有意な差で検出するためのプローブ配 列設計方法を開発することである。 ゲノム上の多種類の塩基配列変異を D N Aァ レイにおいて同時に検出する場合のプローブには、 様々な性質が要求される。 例 えば種々の異なる配列を検出するために調製された複数種類のプローブと、 各プ ローブに対応している標的核酸とのハイブリダィゼ一ションを行う場合には、 そ れぞれのプローブに最適のハイブリダィゼーシヨン条件には一定の広がりがある と考えられる。 そして、 プローブの Tm同士に有意な差が存在するのが普通であ る。 D N Aアレイにおいて遺伝子の発現量解析を行う場合ならば、 プローブがハ
ィブリダイズする標的配列中の領域を、 当該標的配列内においてプローブの T m 値を考慮しつつ選択すれば、 同一アレイ上で使用する種々のプローブ間で T m値 を比較的狭い範囲にそろえることが可能である。 しかし、 変異赫析の場合には発 現量解析の場合とは異なり、 解析しょうとする変異部位を含んだ領域に対してハ ィブリダイズするプローブを作製する必要性から、 Tm値の変更の自由度は相対 的に低いと考えられる。 そのため、 Tm値の異なるプローブを使った測定を同一 の条件で行った場合には、 最適の条件範囲外で測定を行ってしまうことになる試 料群が D N Aアレイに含まれることになる。 従って擬陽性、 擬陰性の結果を含む データを取得してしまうおそれがあり、 好ましくない。
更に同一の検出領域であっても、 複数の変異部位、 例えば二つの変異部立が含 まれている場合には、 プローブと検出領域との間の関係には、 大きく分類すると 完全マッチ、 1塩基ミスマッチ、 2塩基ミスマッチの少なくとも 3種類があるこ とになる。 ミスマッチの場合には、 更に細かく分類すると、 変異の型 (組合せ) が複数あることが考えられる。従って少なくとも完全マッチ、 1塩基ミスマッチ、 及び 2塩基ミスマッチを区別することが重要であり、 可能ならば変異の型までを 明確に区別可能であることが望ましい。 D N Aアレイにおいて S N Pを検出する ために使用するプローブの場合も、 当然このような要求を満たす必要がある。 し かし、 完全マッチと 1塩基ミスマッチを区別するのと同時に、 1塩基ミスマッチ と 2塩基との間をも明確に区別することは、 その測定温度によっては実質的に困 難な場合がある。 とりわけ複数の変異部位が近接して存在している場合には、 完 全マッチ、 1塩基ミスマッチ、 2塩基ミスマッチを峻別することが困難である。 完全マッチと 1塩基ミスマッチのハイブリダィゼーシヨンの差異を検出するのに 適する温度は、 1塩基ミスマッチと 2塩基ミスマッチのハイブリダィゼ一シヨン の差異を検出するのには多くの場合、 適さないからである。 またその逆も同様で ある。 従って、 同一領域内の一組の変異を検出するために調製したプロ一ブセッ 卜の T m値を、 D N Aアレイ上の全プロ一ブセットにおいて狭い範囲に収めるこ とは、 特に複 の変異が近接して存在する場合にはこれまでは非常に困難である か、 実現不可能であった。 D N Aアレイを使ってオーダ一メード医療を実現する には、 このような問題に対処していく必要がある。
変異検出のためのプローブ配列の設計の一の指針としては、 例えば下記の文献 に記載されている。
チ一ら (Chee M. et al.) 、 「サイエンス」 (" Science" ) 、 (米国) 、 1 9 9 6年、 2 74巻、 p p.6 1 0-6 14。
上記の文献は、 変異検出のためのプローブ配列設計方法の一般的指針を与える ものであるが、 上述のような、 特に複数の近接した変異を同時且つ正確に検出す るためのプローブの設計指針を与えるものではない。 発明の開示
本発明は、 上記課題を解決解決し、 目的を達成するために下記のごとく構 成されている。
本発明のプローブセットは、 塩基配列中の変異又は多型を検出するための プローブセットであって、 当該プロ一ブセット中の各プローブは、 当該プロ —ブの全塩基数 Nが奇数の場合(N= 2 n +1、 nは自然数である;以下同じ) には、 プローブの中心の塩基 (両末端から n+1番目) に、 標的配列中に存在 する変異 Xと相補的な塩基 aが配され、 又は当該プローブの全塩基数 Nが偶数 の場合 (N= 2 n + 2) には、 その中心の二つの塩基 (5 ' 末端及び 3 ' 末端 からそれぞれ n + 1番目) の何れか一方の塩基に、 標的配列中に存在する変異 Xと相補的な塩基 aが配され;且つ当該変異 Xに相補的な塩基 aの 5, 末端側 配列、 及び 3 ' 末端側配列は、 共に当該標的配列と完全に相補的である配列 を含んでいる
ことを特徴とする。
本発明のプロ一ブセットにおいては、 標的配列中に変異 X以外の変異 Yが 少なくとも 1つ含まれる可能性のある場合に、 当該標的配列用の各プローブ が、 当該変異 Yの塩基の種類に依存せずに当該変異 Yの塩基 bと塩基対を形成 するユニバーサル塩基 Zを当該変異 Yに対応した部位に有していることが好 ましい。
本発明のプローブセットにおいては、 標的配列中に変異 X及び変異 Y (p = 1 ~q) (Qは、 変異 X以外の変異の数に対応した 1以上の整数) がある場合に
使用するプローブセットであって、
( 1 ) 当該変異 X又は当該変異 Xによる多型を検出するためのプローブで あって、 当該変異 Xと相補的な塩基 aを当該変異 Xに対応した部位に有し、 当 該変異 Y (p = 1~q) のうちの少なくとも 1つの変異に対応した部位に、 当該少 なくとも 1つの変異の塩基の種類に依存せずに当該少なくとも 1つの変異に おける塩基と塩基対を形成するユニバーサル塩基 Zを有する、 変異 X検出用 プローブ;及び
(2) 当該変異 Y (p = 1^q) 中の少なくとも一つの変異又は当該少なくとも 一つの変異による多型を検出するための変異又は多型の検出用プロ一ブ又は 変異又は多型の検出用プローブセットであって、
当該変異 Y (p=1~q) 中の少なくとも一つの変異に対応した部位に、 当該変 異の塩基と相補的な塩基を有し、 当該変異 X、 及び当該変異 Y (p =卜。) 中の 少なくとも一つの変異以外の変異に対応する部位の少なくとも 1つの部位に ユニバーサル塩基 Zを有するプローブ又はプローブセット ;
を含むことを特徴とする。
本発明のプロ一ブセットにおいては更に、 前記のユニバーサル塩基 Zが、 イノシン、 5-ニトロインドール、 及び 3-ニトロピロ一ルからなる群より選 択されることが望ましい。
本発明のプローブセットは、 標的配列中に変異 X以外の変異 Yが少なくと も 1つ含まれる可能性のある場合に、 当該標的配列用の各プローブが、 当該 変異 Yに対応する部位において、 アデニン、 グァニン、 シトシン、 及びチミ ンの何れのヌクレオチドをもランダムに (実質的に同量) 含ませたプローブ 分子の集合体とすることも可能である。
本発明のプロ一ブセットは、 標的配列中に変異 X及び変異 Y (p = l~q) (q は、 変異 X以外の変異の数に対応した 1以上の整数) がある場合に、 前記の 各プローブが、 当該変異 Y (p = l~q) のうちの少なくとも 1つの変異に対応し た部位において、 アデニン、 グァニン、 シトシン、 及び、 チミンの何れのヌ クレオチドをもランダムに含ませたプローブ分子の集合体であることを特徵 とすることができる。
本発明のプローブセットにおいては、 前記の変異 X、 及び前記の変異 Y又 は,前記の変異 Y ( p = 1~ q ) 中の少なくとも一つの変異との間に、 0乃至 1 0個 の塩基が存在することを特徴とすることが好ましい。
本発明のプローブセットは、 変異 Xと相補的な塩基をプローブの中心にす え、 更にそれ以外の塩基は標的核酸の配列と完全に相補的である上記のプロ ーブセット中の少なくとも 1のプロ ブ (ディテクトプローブ) 、 及び、 前 記の変異 Xに対応する部位においてミスマッチを生じ、 それ以外の領域にお いては当該ディテクトプローブと同一の配列を有する少なくとも 1のプロ一 ブ (リファレンスプローブ) からなることを特徴とする。
また、 本発明のプローブセットは、 標的配列中に変異 X以外の変異 Yが少 なくとも 1つ含まれる可能性のある場合に特に利用される上記のプローブセ ット中の少なくとも 1のプローブ (ディテクトプロ一ブ) 、 及び、 前記の変 異 Xに対応する部位においてミスマッチを生じ、 更に前記の変異 Y、 又は前 記の変異 Υ ( ρ =ト q ) 中の少なくとも一つの変異以外の変異の少なくとも 1つ に対応する部位においてユニバーサル塩基 Zを含み、 それ以外の領域におい ては、 当該ディテクトプローブと同一の配列を有する少なくとも 1のプロ一 プ (リファレンスプローブ) からなることを特徴とする。
これらのプロ一ブセットにおいては、 変異 Yに対応する部位において、 ュ ニバ一サル塩基 Zを含むことが好ましく、 特に、 ユニバーサル塩基 Zが、 ィ ノシン、 5 _ニトロインド一ル、 及び 3 -ニトロピロールからなる群より選択 することができる。
これらのプローブセットにおいては、 変異 Y、 又は前記の変異 Y ( P = 1~ Q ) 中の少なくとも一つの変異以外の変異の少なくとも 1つに対応する部位にお いて、 アデニン、 グァニン、 シトシン、 及びチミンの何れのヌクレオチドを もランダムに含ませたプローブ分子の集合体とすることも可能である。
本発明のプローブセッ卜においては、 前記プローブセット中の各プローブ の全塩基数 (N = 2 n + 1、 又は N = 2 n + 2 ) を規定する nが 5乃至 1 8の 範囲内にあり、 その結果、 当該各プローブの T mが所望の値 V- 1 0 の範囲 に含まれることが望ましい。
本発明の D N Aアレイは、 上記の何れかのプローブセットが固相化された ものである。
本発明の標的核酸中の変異又は多型検出方法は、 上記の何れかのプローブ セッ卜が、 ディテク卜プローブとレファレンスプローブの組を含まない場合 に、 固相化された D N Aアレイに対し、 標的核酸を、 当該プローブセット中 の各プローブと当該標的核酸との間のハイプリダイゼ一ションに最適の条件 下で接触させ、 各プローブからのシグナルを定量し、 その後任意に、 当該プ 口一ブセット中のプロ一ブの T m平均値から +/- 1 0 °Cの温度上昇又は温度 下降を行ってから更にシグナルを定量することを特徴とするか、 或いは、 上 記の何れかのプロ一ブセッ卜が、 ディテクトプローブとレファレンスプロ一 ブの組を含む場合に、 固相化された D N Aアレイに対し、 標的核酸を、 当該 プロ一ブセット中の各プローブと当該標的核酸との間のハイプリダイゼ一シ ョンに最適の条件下で接触させ、 ディテク卜プローブ及びリフアレンスプロ —ブのそれぞれからのシグナルを定量して比較することを特徴とする、 標的 核酸中の変異又は多型の検出方法である。 図面の簡単な説明
図 1は、 同一塩濃度条件下での様々な温度における、 完全マッチ、 1塩基 ミスマッチ、 及び 2塩基ミスマッチの状態にある、 標的核酸-プローブ複合体 の熱安定性を示す概念図である。
図 2は、 本発明の一実施例の結果を示す図である。
図 3は従来のプローブセットを使用して 2箇所の近接した変異部を検出する場 合に必要となるプロ一ブセットの例を示す図である。
図 4は、 図 3に示されるタイプの従来のプローブセットを利用して 2箇所の近 接した変異部を実際に検出した場合の検出結果の例を示す図である。
図 5は、 近接する 2箇所の変異部を、 ユニバーサル塩基を利用した本発明のプ ローブセットにより検出する場合のプローブセッ卜の例を示す図である。
図 6は、 図 5に示される本発明のプローブセットを利用して 2箇所の近接した 変異部を実際に検出した場合の検出結果の例を示す図である。
発明を実施するための最良の形態
本願明細書において 「核酸」 とは、 D N A、 人工的ヌクレオチドを含む D N A、 R N A、 及び人工的ヌクレオチドを含む R N A、 P N A、 人工ヌクレオチド を含む P N Aの何れをも意味する。
本発明のプローブセットは、 塩基配列中の変異又は多型を検出するための プロ一プセットであって、 当該プロ一ブセット中の各プローブは、 当該プロ —ブの全塩基数 Nが奇数の場合(N = 2 n + l、 nは自然数である;以下同じ) には、 プローブの中心の塩基 (両末端から n + 1番目) に、 標的配列中に存在 する変異 Xと相補的な塩基 aが配され、 又は当該プローブの全塩基数 Nが偶数 の場合 (N = 2 n + 2 ) には、 その中心の二つの塩基 (5 ' 末端及び 3 ' 末端 からそれぞれ n + 1番目) の何れか一方の塩基に、 標的配列中に存在する変異 Xと相補的な塩基 aが配され;且つ当該変異 Xに相補的な塩基 aの 5 ' 末端側 配列、 及び 3 ' 末端側配列は、 共に当該標的配列と完全に相補的である配列 を含んでいることを特徴とするものである。
ここで使用される各プローブと、 これが認識する配列との間には、 完全マ ツチの関係にあることが望ましいが、 場合によっては標的核酸中に変異 が 含まれずに、 結果として 1塩基ミスマッチの関係にあることもありえる。 こ れは、 プローブ中の塩基 aと相補的な関係にあると想定されていた変異 Xが、 実は野生型の場合であり、 結果としてその部分においてミスマッチを生じて いる場合や、 変異 Xとは異なる変異である場合などが可能性としてあるから である。 このような場合には、野生型の配列に完全にマッチするプローブや、 野生型でも変異 Xでもない塩基に対応して完全にマッチするプローブを、 予 めプローブセット中に同様に含ませておけば、 これらのプローブの何れかに おいて陽性反応となる。 これによつて当該部位に含まれるのは、 変異 X、 変 異 X以外の変異、 又は野生型の何れかであるかが判明する。
これら変異型及び野生型の識別を行うには、 本発明の一態様であるディテ クトプローブどリフアレンスプローブとからなるプローブセットを用いれば よい。 この態様のプローブセットは、 上記のプローブセット中の少なくとも
1のプローブ (ディテクトプローブ) 、 及び、 前記の変異 Xに対応する部位 においてミスマッチを生じ、 それ以外の領域においては当該ディテクトプロ —ブと同一の配列を有する少なくとも 1のプローブ (リファレンスプロ一 ブ) からなることをその構成とする。 ディテクトプローブは、 変異 Xと相補 的な塩基 aを含むものであるが、 例えばこれがグァニン (G ) 塩基であった場 合には、 リファレンスプローブの対応する塩基は、 (:、 T、 Αの内の少なく とも一つであり、 好ましくは、 これらの全てを 3つ一組にしたプローブの組 である。
本実施態様のプロ一ブセット中の各プローブは、 上述のごとく完全マッチ 又は 1塩基ミスマッチが想定される標的核酸とプローブの関係において使用 されることが望ましいが、 場合によっては、 別個の変異を含んでいる状態に おいても使用することは可能である。 このような態様においては、 完全マツ チ、 1塩基ミスマッチ、 2塩基ミスマッチの少なくとも 3つの関係が考えら れる。 これらの状態及びその検出について、 以下に図を参照しながら説明す る。
図 1は、 同一塩濃度条件下での様々な温度における、 完全マッチ、 1塩基 ミスマッチ、 及び 2塩基ミスマッチの状態にある、 標的核酸-プローブ複合体 の熱安定性を示す概念図である。
この図において S字状の実線で示されるものは、 プローブの全領域と標的核 酸とが完全にマッチする関係にある複合体 (T m == T m ( P M) ) について、 温度変化を生じさせた場合に、 プローブ-標的核酸の複合体の 2本鎖形成率が どのようにして変化するかを表したものである。 一方、 実線のすぐ下の S字状 の点線は、 1塩基ミスマッチを含んでいる場合 (T m = T M ( M M 1 ) ) 、 そしてさらのその下の S字状の点線は、 2塩基ミスマッチを含んでいる場合 ( T m = T m ( M M 2 ) ) を示すものである。 概してプローブ-標的核酸複合 体の熱安定性は、 完全マッチのものの方が、 不完全マッチ ( 1塩基ミスマツ チ及び 2塩基ミスマッチ) のものよりも高いが、 温度においてはその差異に 大きな隔たりがある。
図 1において温度が aの低温領域にある場合は、 完全マッチの場合と、 不完
全マッチの場合とでは、 2本鎖形成率がいずれも高くて識別が難しい。 この 温度領域では、 非特異的な結合が生じやすいため、 完全マッチの場合と、 不 完全マッチの場合とで大きな差異がでないからである。 一方、 温度が cの高 温範囲にある場合には温度が aの場合とは逆に、 完全マッチの場合も不完全マ ツチの場合も、 プローブと標的核酸とが乖離しやすい状態にあるため、 互い に識別が難しい。 更に、 この温度領域ではシグナルが低レベルであることも 寄与するから、 測定には不向きの領域となっている。
一方、 温度が bの領域にある場合には、 完全マッチと不完全マッチとを、 2 本鎖形成率に関する差異をもって区別しやすいことがわかる。 縦軸方向にこ の図を見た場合に、 実線と点線との間の距離は、 温度領域 aや cにおける場合 と比べて、 より長くなつているのみならず、 完全マッチと 1塩基ミスマッチ との差異と、 1塩基ミスマッチと 2塩基ミスマッチとの差異とは、 有意な差 が生じている場合があることがわかる。 例えば図 1中の dと eとは長さが有意 に異なるから、 2本鎖形成率が有意に異なっていて、 これは D N Aアレイか らのシグナル強度の有意な差として識別できるものである。 従って完全マツ チと 1塩基ミスマッチとを峻別できることを意味している。 しかしながらこ のことは、 この温度 Tflにおいては、 1塩基ミスマッチと 2塩基ミスマッチとを 識別しにくい (実質的に困難であるか、 不確実性が大きい) ことを意味して いる。
実際に、 完全マッチ、 1塩基ミスマッチ、 2塩基ミスマッチが生じること を、 具体的な配列を示して以下に説明する。
表 1の配列番号 1に示される塩基配列は、 検出しょうとしている標的核酸 の野生型の配列を示し、 配列番号 2及び配列番号 3はそれぞれ、 変異 X及び 変異 Yを含む 1塩基の変異型を示している。 変異 Xは、 野生型において丁で あった塩基が Gへ変化しているものであり、 一方変異 Yは、 野生型で Aであ つた塩基が、 Tへ変化したものである。
標的核酸及びァ o-ァの配列
配列番号 4乃至 7に記載の配列は、 変異 Xを検出するためのプローブのセ ットである。 配列番号 4に記載の配列は、 変異 Xに完全にマッチするプロ一 ブであり、 配列番号 5乃至 7は、 標的核酸との間で 1塩基ミスマッチとなる ものである。 この中で、 配列番号 5に示される配列は、 変異 Xが含まれず、 野生型であった場合に完全にマッチするものである。
配列番号 8乃至 1 1に記載の配列は、 変異 Yを検出するためのプローブの セットである。 配列番号 8に記載の配列は、 変異 Yに完全にマッチするプロ ーブである、 配列番号 9乃至 1 1は、 標的核酸との間で 1塩基ミスマッチと なるものである。 この中で、 配列番号 9に示.される配列は、 変異 Yが含まれ
ず、 野生型であった場合に完全にマッチするものである。
これらのプローブのセットを D N Aアレイに固相化し、 表 2に示される 2 種類の試料核酸 (標的核酸) の変異解析を同一条件で行った場合に、 各プロ ーブと、 検出されるべき変異の数との間の関係は、 表 3のようになる。
表 2 試料中の標的核酸の配列
表 3 試料とァ□-ァとの Mァリダ'イス"産物のミスマ1リチ数
表 3に示されているように、 標的核酸と、 これらのプローブセットとの間 の関係は、 完全マッチか、 不完全マッチの何れかであり、 不完全マッチの場 合には、 更に 1塩基ミスマッチと 2塩基ミスマッチの場合がある。 試料 Aの 場合、 変異 Xが含まれる変異型であるが、 変異 Yは含まれない、 即ち野生型 である。 一方の試料 Bの場合には、 変異 Xが含まれる変異型であるが、 一つ の配列の中に変異 Yも含まれる試料である。
試料 Aにおいては、 標的核酸とプローブとの間の関係は、 完全マッチの場 合と 1塩基ミスマッチの場合としかないことから、 これらを確実に峻別でき
れば変異解析が達成される。 一方、 試料 Bにおいては、 標的核酸とプローブ との間の関係は、 完全マッチの場合はなく、 1塩基ミスマッチと 2塩基ミス マッチの場合がある。 上述のごとく、 完全マッチと 1塩基ミスマッチの識別 に適する測定条件は、 1塩基ミスマッチと 2塩基ミスマッチの識別に適する 測定条件であるとはいえないから、 これらの標的核酸の変異解析を、 同一の D N Aアレイ上で、 同一条件で精度よく行うことの困難性が理解できる。 従来のプローブセットの場合ならば、 上述したように、 完全マッチ、 1塩 基ミスマッチ、 2塩基ミスマッチのそれぞれを同時に明確に識別することが 困難であった。 しかしながら、 本発明のプローブセットを用いれば、 測定温 度をより低温側にシフトすることによって、 1塩基ミスマッチと 2塩基ミス マッチとの間の識別を可能に出来ることが図 1からわかる (図中の gの長さが eよりも長くなつていて、 fの長さも十分に大きいためである) 。 そのため、 結果として二つの変異が標的核酸に含まれる場合であっても、 ディテクトプ ローブとレファレンスプローブからなるプロ一ブセットを用いて、 測定温度 を可能な範囲で若干変更すれば、 完全マッチと 1塩基ミスマッチとの間のみ ならず、 1塩基ミスマッチと 2塩基ミスマッチとの間をも識別可能とするこ とができる。
そのためには、 プローブの全塩基数 (N = 2 n + 1、 又は N = 2 n + 2 ) を 規定する nが 5乃至 1 8の範囲内にあり、 その結果プローブセット中の各プ ローブの T mが所望の値 + 1 0 °Cの範囲に含まれることが望ましい。 このよ うにして T m値を規定していれば、 プローブセット中の全プローブの T m値 が、 従来のプロ一ブセットに比べてきわめて狭い範囲に含まれていることと なり、 この場合には上記のような 2塩基ミスマッチが生じていた場合にも、 若干の測定温度変更によって対処することが可能となり、 本質的に同一の条 件下で変異を特異的に検出することが可能となる。
従って本発明のプロ一ブセットは、 予期していた変異が含まれておらず、 更に 別の部位において予期していなかった変異が含まれている場合、 即ち、 都合二つ の変異が含まれている場合にも潜在的に利用できる。 しかし予め変異 Xとは別個 の部位において変異 Yが含まれていることが十分に予想されるか、 判明している
場合には、 以下のような手段により対応することがより望ましい。
即ち本発明は一の態様において、 上記のプロ一ブセットであって、 更に標的配 列中に変異 X以外の変異 Yが少なくとも 1つ含まれる可能性のある場合に、 当該 標的配列用の各プロ一ブが、 当該変異 Yの塩基の種類に依存せずに当該変異 Y の塩基!)と塩基対を形成するユニバーサル塩基 Zを当該変異 Yに対応した部位に 有していることを特徴とするものである。 ディテクトプローブとリファレンスプ ローブとからなるプローブセットの場合には、 ユニバーサル塩基 Zは、 ディテク トプロ一ブ及びリファレンスプローブ中の、 当該変異 Yに対応する部位において 用いることができる。 このようにユニバーサル塩基を利用することにより、 上記 のように若干の測定温度を変更することなく、 異なる変異構成を持つ標的核酸に ついて、 同一の条件下で変異を検出することが可能になる。 また、 ユニバーサル 塩基を利用すれば、 本来検出したいと考えている塩基部分以外の塩基において存 在している変異の影響を受けずに、 本来検出すべき部分の塩基の変異をより正確 且つ確実に検出することができる。 ユニバーサル塩基を含む部分においては、 本 来の塩基対が形成された場合よりも二本鎖の熱力学的安定性は若干低下する。 し かしながらこれは、 非特異的な結合が生じている場合よりも安定であり、 結果と して、 2塩基ミスマッチが実質的に存在しないこととなり、 完全マッチと 1塩基 ミスマッチとの差異のみを検出するだけでよいことになる。
ここでユニバーサル塩基とは、 核酸配列中において通常の塩基 (アデニン、 グ ァニン、 シトシン、 チミン、 及びゥラシル) を置換することができ、 何れの塩基 とも相補性を有する塩基であり、 その両隣 (又は当該ユニバーサル塩基が配列の 末端にある場合には、 当該末端から 2番目) の塩基が、 対応する核酸との間で形 成する塩基対を顕著に不安定化せず、 またそのような塩基対を破壊しない塩基で あって、それが含まれる配列全体の生化学的機能を保つものを意味する。従って、 ユニバーサル塩基は、 これを含む配列がハイブリダィズする標的配列中の対応部 位において、 アデニン、 グァニン、 シトシン、 チミン、 及びゥラシルの何れが含 まれている場合であっても、 ほぼ等しく安定に鎖間で化学的結合を形成し、 当該 ユニバーサル塩基を含む配列は種々の修飾酵素 (キナーゼ、 リガーゼ等) の基質 となりえるものである。
ユニバーサル塩基の具体例としては、例えばイノシン、 5 -ニトロインドール、 及ぴ 3 -ニトロピロールからなる群より選択されるものを挙げることができ る。尚、 これらの化合物以外であっても上記の要件を満たすものにおいては、 これらと同様にしてユニバーサル塩基として利用することができる。
本発明においてユニバーサル塩基を使用する場合には、 変異又は多型解析 に必要なプローブの数の点でも利点がある。 例えば 2箇所の近接した変異部 を同時に検出しょうとする場合、 従来のプローブセットを使用すると、 図 3 に示されるように合計 1 6種類のプローブが必要であった。 この図では、 変 異 Xが Gであり、 変異 Yが Cである標的核酸に対して、 変異 Xに対応する部 位、 及び変異 Yに対応する部位のそれぞれに A、 T、 G、 Cを配置したプロ —ブを合計 1 6種類用意している。 このようなプローブセットを使用して行 つた実験結果の例を図 4に示した。 このように二箇所の部位について合計 1 6種類のプローブを用意した場合には、 各プローブの T m値に幅が生じてし まい、 変異 X及び変異 Yの双方に完全にマッチするプローブが標的核酸と形 成したハイプリッドからのシグナルが最大になるとは限らない。 そのため、 変異解析においてエラ一を生じる可能性があることになる。
一方、 本発明においてユニバーサル塩基を使用した場合には、 図 5に示さ れるように合計 8種類のプロ一ブセットを用意するだけでよい。 このような 8種類のプローブセットを使用した時の実験結果の例を図 6に示した。 ュニ バーサル塩基がプローブ中に存在することにより、 検出しょうとする変異以 外の変異個所による影響を受けず、 各プローブ間の T m値の差異を低く抑え ることが可能となり > よってプローブと標的核酸とが完全マッチしたものと そうではないものとを、 より明確に区別できる。
上記では変異が 2つの場合について説明したが、 変異が 3箇所以上の場合 であっても本質的に同様の原理により、 ユニバーサル塩基を適切に使用する ことにより、 完全マッチと不完全マッチとをより明確に区別できる。
即ち本発明はその一つの態様において、 標的配列中に変異 X及び変異 Y ( p = 1^ q ) ( Qは、 変異 X以外の変異の数に対応した 1以上の整数) がある場合に 使用するプロ一ブセットであって、 ( 1 ) 当該変異 X又は当該変異 Xによる
多型を検出するためのプローブであって、 当該変異 Xと相補的な塩基 aを当該 変異 Xに対応した部位に有し、 当該変異 Y (p =卜 q) のうちの少なくとも 1つ の変異に対応した部位に、 当該少なくとも 1つの変異 Y (p = 1^q)の塩基の種 類に依存せずに当該少なくとも 1つの変異 Y (p = 1^q) における塩基と塩基対 を形成するユニバーサル塩基 Zを有する、 変異 X検出用プロ一ブ;及び (2) 当該変異 Y (p-^q) 中の少なくとも一つの変異又は当該少なくとも一つの変 異による多型を検出するための変異又は多型の検出用プローブ又は変異又は 多型の検出用プローブセットであって、 当該変異 Y (p = 1^q) 中の少なくとも 一つの変異に対応した部位に、 当該変異の塩基と相補的な塩基を有し、 当該 変異 X、 及び当該変異 Y (p = 1~q) 中の少なくとも一つの変異以外の変異に対 応する部位の少なくとも 1つの部位にユニバーサル塩基 Zを有するプロ一ブ 又はプローブセット;からなることを特徴とするプロ一ブセットを提供する。 上記の ( 1 ) 変異 X検出用プローブにおいては、 当該変異 Xに対応する部 分において相補的な塩基 aを有しており、 その他の変異 Y (p =ト q)部位に対応 した部位の塩基については少なくともその 1つがユニバーサル塩基 Zである c この場合、 ユニバーサル塩基 Zは、 イノシン、 5-ニトロインドール、 及び 3 -二トロピロ一ルからなる群より選択することができる。
一方の (2) 変異検出用プローブ又は変異検出用プローブセットにおいて は、 変異 Y (p =卜 q) 中の少なくとも一つの変異に対応した部位に、 当該変異 の塩基と相補的な塩基を有し、 残りの変異 (当該変異 X、 及び当該変異 Y (p =卜 q)中の少なくとも一つの変異以外の変異)部位に対応した部位の塩基につ いては少なくともその 1つがユニバーサル塩基 Zである。 この場合、 ュニバ —サル塩基 Zは、 イノシン、 5-ニトロインド一ル、 及び 3-ニトロピロ一ル からなる群より選択することができる。
ユニバーサル塩基を含んだプローブセッ卜に代わるものとしては、 標的配 列中に変異 X以外の変異 Y、又は Y (p = 1~q)が含まれる可能性のある場合に、 当該標的配列用のプローブが、 当該変異 Y、 又は Υ (ρ=卜 q)のうちの少なく とも 1つに対応する部位において、 アデニン、 グァニン、 シトシン、 及びチ ミンの何れのヌクレオチドをもランダムに含ませたプロ一ブ分子の集合体で
あることを特徴とするものをプロ一ブとして利用することが挙げられる。 こ の場合には、 アデニン、 グァニン、 シトシン、 及びチミンが、 プローブ分子 にランダムに、 即ち統計的に有意に相違しない量で含まれていることから、 その何れかのプロ一ブ分子種がその部位において特異的にハイブリダィズし て、 検出されることになる。
本発明のプローブセットにおいては、 前記の変異 X、 及び前記の変異 Y又 は Y ( p - h q ) のうちの少なくとも 1つの変異 (であって変異をプローブによ つて検出するもの) との間に、 0乃至 1 0個の塩基が存在することが望まし い。 このような場合には、 変異 X、 及び変異 Y、 又は Υ ( ρ =卜 q )のうちの少 なくとも 1つの変異 (であって変異をプローブによって検出するもの) がプ ローブ分子の中心に近接して存在することになる。 複数の変異がプロ一ブの 中心に集中して存在する場合と、 変異が互いに分散して存在する場合、 即ち 一方が中心にあり、 もう一方が末端又はその近傍にある場合とを比較すると、 後者よりも前者の場合のほうが、 完全マッチと 1塩基ミスマッチのハイプリ ダイゼ一ション強度の差異が大きくなる傾向があり、 多数の検体を同一の条 件で検出することが難しい。 両者を D N Aアレイにより峻別することがより 難しいと考えられる。 しかしながら本発明のプローブセットにおいては、 上 述のごとく、 完全マッチ、 1塩基ミスマッチ、 及ぴ 2塩基ミスマッチの違い を、 若干の温度変更を行ったり、 ユニバーサル塩基を使用するなどして区別 することが出来るものとなっている。 従って、 従来の技術ではより困難であ つた、 二つ以上の変異がプローブの中心に近接している場合において、 本発 明はその効果を十分に発揮すると考えられる。 近接した変異間の塩基の数が 多いと、 変異の有無がハイプリダイゼーション強度に与える影響が小さくな るため、 ユニバーサル塩基の効果が小さくなるが、 1 0塩基以下であれば本 発明を適用することが可能で、 5塩基以下であれば特に効果を有し、 3塩基 以下であれば更に高い効果を有する。
本発明のプローブセットにおいては、 プロ一ブの全塩基数 (N = 2 n + 1、 又は N = 2 n + 2 ) を規定する nが 5乃至 1 8の範囲内にあり、 その結果プロ 一ブセット中の各プローブの T mが所望の値 +/- 1 0 °Cの範囲に含まれてい
ることが好ましい。
本発明の D N Aアレイにおいては、 上記した本発明のプローブセットが固 相化されている。 また本発明の実施例において使用した D N Aアレイは、 基 板にプローブを固相化して位置によりプローブの種類を特定する場合のもの である。 しかし、 D N Aアレイは、 複数種類のプローブが識別可能な状態で、 ハイプリダイズ反応の検出を行うことができる構成をとるものである限り、 本発明の変異又は多型の検出方法において使用することが可能である。 従つ て本発明において D N Aアレイとは、 プローブを基材となるものに固相化し たものであれば特に制限はなく、 例えばガラス、 シリコンウェハ、 種々の多 孔質基板、 ゲル、 マイクロタイタープレートやビーズなどを基材として、 そ の上にプロ一ブを固相化したものも含まれる。 本発明においてはこれら全て のものを D N Aアレイと呼ぶ。 更に、 プローブを固相化する部分が 3次元構 造をとるものも利用すると、 検出感度が上昇して好ましい。 3次元構造をと る場合には、 検体液を流通させる D N Aチップにおいて検体液の温度上昇や 下降を行うことが容易になり、 検体液の温度変化を与えて変異や多型の検出 を行いやすくなる。 種々の多孔質基板、 ゲル、 及びビーズなどを基板として 用いた D N Aチップでは、 2次元の基板よりも多数のプローブを固相化する ことができるので、 検体液中の検出対象物質の濃度が低い場合であっても、 検出が可能となるので、 少量の検体を用いればよく、 これは被験者への負担 を軽くする点において好ましい。
D N Aアレイを用いて変異解析をおこなう対象核酸の配列は、 一般に多種 多様であることから、 それらの配列を 1塩基レベルでの違いを有意に識別し て検出するためのプロ一ブの T m値は、 大きく異なるのが一般的である。 し かし本発明を利用すると、 上述のごとくプローブの全塩基数を規定する nの 値を 5乃至 1 8の範囲内で設定するから、 この調節によって各プローブの T m値を調節することが可能となる。 T m値の調節にあたっては、 D N Aァレ ィ上に固相化するプローブセット中の全プローブの T m値が、 所望の値 +/- 1 0 °Cの範囲に含まれていることが好ましい。 全プローブの T m値がこの範囲 に含まれていると、 本質的に同一の条件で、 各プローブのハイブリダィズ条
件が最適にあるということができる。
以下においては、 本発明の一実施態様の説明を行う。
表 4の配列番号 1に示される塩基配列は、 検出しょうとしている標的核酸 の野生型の配列を示し、 配列番号 2及び配列番号 3はそれぞれ、 変異 X及び 変異 Yを含む 1塩基の変異型を示している。 変異 Xは、 野生型において丁で あった塩基が Gへ変化しているものであり、 一方変異 Yは、 野生型で Aであ つた塩基が、 Tへ変化したものである。
表 4 標的核酸及びァ 0-ァの配列
表 4の配列番号 1 5乃至 1 8に記載の配列は、 変異 Xを検出するためのプ ローブのセットである。 配列番号 1 5に記載の配列は、 変異 Xに完全にマツ チするプローブであり、 配列番号 1 6乃至 1 8は、 標的核酸との間で 1塩基 ミスマッチとなるものである。 この中で、 配列番号 1 6に示される配列は、 変異 Xが含まれず、 野生型であった場合に完全にマッチするものである。 こ れらのプローブにおいては、 変異 Xの二塩基 5 ' よりの部位にユニバーサル
塩基が含まれている。 ユニバーサル塩基としては、 イノシン、 5 -ニトロイン ドール、 又は 3 -ニトロピロールの何れとすることもできる。
表 4の配列番号 1 9乃至 2 2に記載の配列は、 変異 Yを検出するためのプ ローブのセットである。 配列番号 1 9に記載の配列は、 変異 Yに完全にマツ チするプローブである、 配列番号 2 0乃至 2 2は、 標的核酸との間で 1塩基 ミスマッチとなるものである。 この中で、 配列番号 2 0に示される配列は、 変異 Yが含まれず、 野生型であった場合に完全にマッチするものである。 こ れらのプローブにおいては、 変異 Yの 2塩基 3 ' よりの部位にユニバーサル 塩基が含まれている。
表 4の配列番号 1 5乃至 2 2に示されるプロ一ブは、 何れも G C含有量が 4 0 %で共通しているため、 これらのプローブの T m値は、 略同じであるこ とから、 プローブの長さも共通とする。
これらのプローブのセットを D N Aアレイに固相化し、 表 5に示される 2 種類の試料核酸 (標的核酸) の変異解析を同一条件で行った場合に、 各プロ ーブと、 検出されるべき変異の数との間の関係は、 表 6のようになる。
表 5 試料中の標的核酸の配列
表 6
試料と: u-rとの / リダイス'産物のミスマッチ数
表 6に示されているように、 標的核酸と、 これらのプロ一ブセットとの間 の関係は、 完全マッチか、 1塩基ミスマッチの何れかであり、 2塩基ミスマ ツチは存在しない。 試料 Cの場合、 変異 Xが含まれる変異型であるが、 変異 Υは含まれない、 即ち野生型である。 一方の試料 Dの場合には、 変異 X及び 変異 Υが共に含まれる変異型である。
試料 C及び Dの場合においては共に、 標的核酸とプローブとの間の関係は、 完全マッチの場合と 1塩基ミスマッチの場合としかないことから、 これらを 確実に峻別できれば変異解析が達成され、 1塩基ミスマッチと 2塩基ミスマ ツチを識別する必要はなくなる。
解析にあたっては、 標的核酸中に標識物質、 例えば F I T Cなどの蛍光色 素を付加しておけば、 そのシグナルを定量的に測定することが可能となる。 そして、 完全マッチに最適の条件で測定を行えば、 完全マッチのプローブ由 来のシグナルが、 不完全マッチのプロ一ブ由来のシグナルよりも顕著に強い ことから、 変異解析が行える。
この態様においては、 2つの近接して存在する変異を同一条件下で解析す ることが可能になっている (表 4の配列番号 1乃至 3を参照) 。
本発明のプローブセットの作製方法は、 当該技術分野で公知の技術を利用 すればよい。 調製にあたっては、 標的核酸中の変異に対応する部位に適切な 塩基 (Α ; Τ ; G ; C ;ユニバーサル塩基;又は A、 T、 G、 Cのランダム な集合体) を導入するだけでよい。 D N Aアレイへの固相化も、 当該技術分 野で公知の何れの技術を用いればよい。
本発明の標的核酸の変異又は多型の検出方法は、 ディテクトプローブとリ フアレンスプローブとの組合せを用いない場合には、 プローブセッ卜が固相
化された D N Aアレイに対し、 標的核酸を、 当該プローブセット中の各プロ ーブと当該標的核酸との間のハイプリダイゼーションに最適の条件下で接触 し、 各プローブからのシグナルを定量し、 その後任意に、 当該プローブセッ ト中のプローブの T m平均値から +/- 1 0 °Cの温度上昇又は温度下降を行つ てから更にシグナルを定量することにより実施することができる。 ここで、 ハイブリダイゼーションの最適の条件は、 プロ一ブセット中の各プローブの T m値に基づいて求めることができ、 更にプローブの全塩基数を規定する n の値が 5乃至 1 8の範囲内にあることから、 各プローブの T m値は、 非常に 狭い範囲に集中していて、 仮に当初予想していた変異 Xが含まれておらず、 D N Aアレイにおいて、 1塩基ミスマッチ及び 2塩基ミスマッチを識別する 必要性が生じたとしても、 T m値から +/- 1 0 °Cという非常に狭い範囲で温度 を上昇又は下降してシグナルの再測定を行えばよい。
本発明の標的核酸の変異又は多型の検出方法は、 ディテクトプローブとリ フアレンスプローブとの組合せを用いる場合には、 プローブセットが固相化 された D N Aアレイに対し、 標的核酸を、 当該プロ一ブセット中の各プロ一 ブと当該標的核酸との間のハイプリダイゼーションに最適の条件下で接触し, ディテクトプローブ及びリファレンスプローブのそれぞれにからのシグナル を定量して比較することにより実施できる。 実施例
プローブセットの設計
抑制遺伝子 P 5 3第 7ェクソン 2 3 7コドン第 3塩基対における 1塩基突然変 異(AT£→AT )の有無を、 2種類の培養細胞、すなわちヒトリンパ芽球細胞株 WTK1、 及び TK6の 2種類について検出を試みた。 WTK1は、 癌抑制遺伝子 p 5 3第 7ェク ソン 2 3 7コドン第 3塩基対に 1塩基突然変異 (AT →ATA) を持つが、 TK6は正 常 (AT :野生型) である。 まず、 検出すべき p 5 3第 7ェクソン 2 3 7コドン第 3塩基対を基点とし、それぞれ 5 ' 側および 3 ' 側の 10塩基のケ'ノム上の隣接配列 を含む、 表 7に記載されるような変異検出用プローブセットを設計し、 D N Aチ ップ上に固相化した。
表 7 実施例において使用し^ァ
標的核酸の調製は、 以下のように行なった。 すなわちヒトリンパ芽球細胞株
WTK1および TK6の 2種類の細胞株からそれぞれゲノム DN Aを調製した。調製に はキアゲン社のゲノム DNA抽出キットを用いた。 つぎに調製したゲノム DNA それぞれを铸型とし、 末端蛍光標識プライマ一を用いて、 配列番号 28に示すよ うな変異部位を中央部に含む全長 98塩基からなる DNA断片を PCR法により 増幅した。 铸型 DNAはそれぞれ約 250 n gを用い、 5 ' 末端 F I T C標識プ ライマ一を 0. 8 Mになるように添加し、 PCRを 94°C/30秒→65°C/30 秒— 72°C/30秒で 40サイクル実施した後、 キアゲンカラム (QIAquick PCR purification kit) にて、 反応産物から蛍光標識プライマ一を除き、 標的核酸と した。
ハイブリダィゼ一ション及び各プローブにおけるハイブリダィゼーシヨン産物の つぎに WTK1および TK6細胞株につき調製した、 変異部位を含む 98塩基からな る末端蛍光標識 PC R産物を、 塩濃度 2XSSPE、 温度 55 nCの条件下でハイブリダ ィゼーション反応を実施した。 結果得られたハイブリダィゼーション画像を図 2 に示す。 ハイブリダィゼ一シヨン画像において、 G、 C、 A、 Tと示されている プローブスポットには、 それぞれリファレンスプローブ 1、 リファレンスプロ一 ブ 3、 ディテクトプローブ、 及びリファレンスプローブ 2が固相化されている。画 像解析の結果、野生型である ΤΚ6株由来の標的核酸を八イブリダィゼ一シヨンした
場合には、リファレンスプローブ 1における蛍光シグナル輝度が最も高く、一方、 1塩基突然変異 (AT →ATA) を持つ WTK1株由来の標的核酸をハイブリダィゼーシ ヨンした場合には、 ディテクトイプローブにおける蛍光シグナル輝度が最も高く 検出されたことから、 TK6は!) 5 3第 7ェクソン 2 3 7塩基において野生型を、 WTK1は AT →ATAの変異をもつことを明確に検出できた。 産業上の利用性
本発明は、 解析対象の種々の核酸配列に対して、 同一の条件下で正確に変異を 検出することを可能にするプローブセット、 及びそれを用いた変異検出方法を提 供する。 本発明は、 特に複数の変異が、 近接して標的核酸中に存在する場合であ つても、 それらを明確に識別することができるプローブセットを提供する。
配列表
く 110> Olympus Optical Co., Ltd.
<120> Probes for Detecting Mutation and SNPs, DNA Arrays with the Probes Immobilized, and Methods of Detecting Mutation and SNPs Using the Same
<130> 03P01006
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(yE Gy ve.al Dsaeinosine 2 deoxnuco : niO
ronleside1>Ole:
Φ
ypymosine 2 xnculeosidmtrorrol- I
gg atcncta ttatc y.eol axnuceoside
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