明細書 消化器官吸収性ポリペプチド 技術分野 この出願の発明は、 生理活性ポリべプチドの経口投与での高吸収による薬効を 可能とする新しい消化器官吸収性ポリぺプチドに関するものである。 またこの出 願の発明は、 消化器官吸収性ポリべプチドと生理活性ポリぺプチドとの融合ポリ ペプチドを含有する経口医薬品や機能性食品等の組成物に関するものである。
背景技術 ボストゲノム時代にあってヒトの 10万種以上とも言われるタンパク質の構造、 機能が明らかにされつつあり、 疾患治療薬の成分となりうるタンパク質 (薬剤夕 ンパク質) も多く同定されてきている。 しかし、 一方、 治療用タンパク質の投与 経路は通常は注射しかないのが現実である。 病態の急性期では通院あるいは入院 での注射はむしろ妥当と考えられるが、 注射は、 点滴を除いていずれも血中濃度 の維持が容易ではない。 そして限られたタンパク質製剤'を除いては医療施設での 実施が前提となり、 経口投与に比べて医療コストが高くなる。 'かつ注'射には多く の場合、 特に小児などで痛みなどストレスが避けがたい。 また、 連日注射を継続 することで注射部位に、 硬桔など組織の変化を伴うことも多い。 更に注射液の容 器、 注射器など少なくない医療廃棄物が出るなどコストがかかることになる。 こ のような理由から、 病態の慢性期には経口投与に大きな期待が集まっている。 こ のため、 口腔粘膜からの吸収を介した方法論、 あるいは消化を防ぐための化学物 質によるカバーあるいはコ一ティングなどの方法論も実用化されつつある。 しか しながら、 現状においては、 これらの方法においても、 経口投与での吸収効率は
30 %を超えないものがほとんどである。 例えば、 Clement S.等はインスリン経 口投与の臨床試験 (フェーズ 1、 2) の結果を報告しているが、 経口投与による
インスリンの吸収率は 30 %未何である (Clement S . et al. Metabolism. 2004 Jan;53( l) :54-58) 。 なお、 ナッ ト一キナーゼ ( nattokinase ) は納豆菌 (枯草菌 Bacillus subtilis) が産生する酵素 (プロテアーゼ) であり、 その血栓溶解効果を利用し た発明 (例えば、 日本特許公開公報第 2002-360220号) が知られている。 しか しながら、 このナツトーキナーゼが生理活性ポリべプチドの消化器官から血液中 への移行を高効率で実現させることは知られていない。
発明の開示 この出願の発明は、 消化管からは吸収されないタンパク質 (生理活性タンパク 質またはべプチド) を経口投与によって体内に吸収させることを可能とする新し い技術手段を提供することを課題としている。
. 前記の課題を解決するための第 1 の発明は、 生理活性ポリペプチドと連結し て経口摂取された場合に、 生理活性ポリべプチドを消化管から吸収させることを 特徴とする消化器官吸収性ポリべプチドである。 第 1 発明の一つの態様は、 枯草菌ナツ卜一キナーゼの部分ペプチドであって. ナット一キナーゼを構成するアミノ酸配列の少なぐとも連続 100 アミノ酸配列- またはその配列内における数個のアミノ酸残基が欠失、 付加、 若しぐは他のアミ ノ酸残基に置換した配列を有する消化器官吸収性ポリペプチドである。 さらに具 体的には、 配列番号 2 の少なくとも連続 100 アミノ酸配列、 またはその配列内 における数個のアミノ酸残基が欠失、 付加、 若しくは他のアミノ酸残基に置換し た配列を有する消化器官吸収性ポリぺプチドである。 第 2 の発明は、 前記の消化器官吸収性ポリペプチドと、 生理活性ポリべプチ ドとを含む融合ポリべプチドである。
第 3 の発明は、 前記の消化器官吸収性ポリペプチドと、 薬剤成分候補物質と、 標識物質とを含む標識化融合ボリべプチドである。 第 4 の発明は、 前記第 1 発明の消化器官吸収性ポリペプチドをコードするポ リヌクレオチドである。 具体例としては、 配列番号 1の少なくとも連続 300 塩 基配列からなるポリヌクレオチドである。 第 5 の発明は、 前記第 4 明のポリヌクレオチドを保有し、 消化器官吸収性ポ リペプチドを発現する発現べクタ一である。 第 6 の発明は、 前記第 4 発明のポリヌクレオチドと、 生理活性ポリペプチド をコ一ドするポリヌクレオチドとからなる融合ポリヌクレオチドである。 第 7 の発明は、 前記第 6 発明の融合ポリヌクレオチドを保有する発現べクタ 一である。 第 8 の発明は、 前記第 2 発明の融合ポリペプチドを含有する経口組成物であ る。 第 9 の発明は、 被験物質の生体内毒性を試験する方法であって、 前記第 1 発 明の消化器官吸収性ポリべプチドと被験物質との結合体を動物に経口投与するェ 程を含むことを特徴とする毒性試験方法である。 第 10 の発明は、 被験物質の生体内毒性を試験するためのキッ卜であって、 前 記第 1 発明の消化器官吸収性ポリペプチドと被験物質との結合体を含むことを 特徴とする試験キッ トである。 すなわち、 この出願の発明者らはこれまでに、 糖タンパク質を主成分とするい くつかの機能性食品が、 経口投与で病態に対する治療効果があることを確認して
きた。 そこで、 これらのタンパク質を、 生理活性を有するが、 消化管非吸収性の 薬剤タンパク質のキヤリアとして利用し、 これまで困難であった経口投与を可能 にすることを構想し、 実際にこれを可能にすることでこの出願の発明を完成させ た。 なお、 この発明において 「生理活性ポリペプチド」 とは、 それ単独では消化器 官から吸収されない、 または消化器官経由ではそれ本来の生理活性 (例えば、 生 体の生理機能を維持、 促進または抑制、 あるいは病態の改善等) を示すことが困 難なポリペプチドを言う。 また 「消化器官吸収性」 とは、 消化管を経由して血液 中に移行した物質がそれ本来の生理活性を発揮することを意味する。 また 「タンパク質」 または 「ポリペプチド」 とは、 天然のアミド結合 (ぺプチ ド結合) または天然のアミ ド結合以外の残基連結によって互いに結合した複数個 のアミノ酸残基から構成された分子を意味する。 さらには、 「ポリヌクレオチ ド j とは、 プリンまたはピリミジンが糖に /3 -N-グリコシド結合したヌクレオシ ドのリン酸エステル (ATP、 GTP、 CTP、 UTP; または dATP、 dGTP、 dCTP、 dTTP) が結合した分子を意味する。 具体的には、 タンパク質をコードするゲノ ム DNA、 ゲノム DNAから転写される mRNA、 mRNAから合成される cDNA等 である。 また、 2本鎖であっても 1本鎖であってもよい。 さらに、 ごれらのゲノ ム DNAや mRNA、 cDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖も含まれる。 この出願の各発明におけるその他の用語や概念は、 発明の実施形態の説明や実 施例において詳しく規定する。 またこの発明を実施するために使用する様々な技 術は、 特にその出典を明示した技術を除いては、 公知の文献等に基づいて当業者 であれば容易かつ確実に実施可能である。 例えば、 この発明の薬剤の調製は Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co. , Easton, PA, 1990に、 遗伝子工学および分子生物学的 技術は Sambrook and Maniatis, in Molecular Cloning-A Laboratory
Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 1989 ; Ausubel, F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons,
New York, N.Y, 1995等に記載されている。 さらに、 この発明における用語は 基本的にね、 IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるも のであり、 あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくも のである。 図面の簡単な説明 図 1 は、 X-線非照射マウスの未梢血有核細胞数に対する NK+ G-CSF融合ポ リぺプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図 2 は、 X-線 (4.84Gy) 照射マウスの未梢血有核細胞数に対する NK + G- CSF融合ポリペプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図 3 は、 X-線 (4.84Gy) 照射マウスの血中 G- CSF量に対する NK+ G-CSF 融合ポリべプチ卞経口投与の効果を示したグラフである。 図 4 は、 X-線非照射マウスの未梢血赤血球数に対する NK+ EPO 融合ポリべ プチド経口投与の効果を示したグラフである。 図 5は、 X-線非照射マウスの血中 EPO量に対する NK+ EPO融合ポリべプチ ド経口投与の効果を示したグラフである。 図 6 は、 X-線 (3.634Gy) 照射マウスの未梢血赤血球数に対する NK+ EPO 融合ポリぺプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図 7は、 X-線 (3.634Gy) 照射マウスの血中 EPO量に対する NK+ EPO融合 ポリべプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図 8 は、 糖尿病モデルマウスの血糖値に対する NK+ Ins2 融合ポリペプチド 経口投与の効果を示したグラフである。
図 9は、 糖尿病モデルマウスの血中 Ins2量に対する NK+ Ins2融合ポリぺプ チド経口投与の効果を示したグラフである。 図 10は、 実施例 6の結果であり、 マウス末梢血の白血球数に対する NK+ G- CSF 融合ポリペプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図中、 縦軸は白 血球細胞数、 横軸は経過時間、 黒四角はキャリア NK経口投与 (第 4群: 5匹) 、 白四角は PBS皮下注射 (第 5群 : 5匹) 、 黒三角は NK+ G-CSF経口投与 (第 1群: 5匹) 、 白三角は NK+ G-CSF皮下注射 (第 3群 : 5匹) 、 黒丸は NK + G-CSF ( 1 / 10) 経口投与 (第 2群: 5匹〉 の結果である。 図 1 1は、 実施例 7の結果であり、 糖尿病モデルマウスの血中グルコース量に 対する NK+ Insulin 融合ポリペプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図中、 縦軸はグルコース量、 横軸は経過時間、 黒四角は PBS 皮下注射 (第 5 群: コントロール: 6 匹) 、 黒三角は NK+ Insulin経口投与 (第 1群: 9 匹) 、 白三角は NK+ Insulin2 ( 1/ 10) 経口投与 (第 2 群: 8 匹) 、 白丸はキヤリァ NK.経口投与 (第 4群: 8匹) 、 黒丸は NK+ Insulin2皮下注射 (第 3群) の結 果である。 図 12は、 実施例 7の結果であり、 糖尿病モデルマウスの血中グルコース量に 対する NK + Insulin 融合ポリペプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図中、 縦軸はグルコース量、 横軸は経過時間、 菱形は NK+ Insulin 経口投与 (第 6群: 6 匹) 、 四角は NK + Insulin2 ( 1 / 10) 経口投与 (第 7群 ·· 6 匹) 、 三角はキャリア NK経口投与 (第 8群: 6匹) の結果である。 図 13は、 実施例 8の結果であり、 糖尿病モデルマウスの血中インスリン量に 対する NK+ Insulin 融合ポリペプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図中、 縦軸は血中インスリン量、 横軸は経過時間 (分) 、 菱形は NK + Insulin 経口投与 (第 1群: 4匹) 、 四角は NK+ Insulin2皮下注射 (第 2群 : 3匹) の 結果である。
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図 14は、 実施例 9の結果であり、 糖尿病モデルマウスの血中グルコース量に 対する NK + Adiponectin融合ペプチド経口投与の効果を示したグラフである。 図中、 縦軸はグルコース量、 横軸は経過時間、 黒四角は Adiponectin 経口投与 (第 3群 : 4匹) 、 黒三角は NK + Adiponectin経口投与 (第 1群: 4匹) 、 白 三角は NK + Adiponectin ( 1 / 10) 経口投与 (第 2群: 4匹) 、 黒丸はキャリア NK経口投与 (第 4群: 4匹) の結果である。
発明を実施するための最良の形態 この発明の消化器官吸収性ポリペプチドは、 前記のとおり、 それ単独では消化 管非吸収性の生理活性ポリぺプチドと連結して経口摂取された場合に、 その生理 活性ポリ.ぺプチドを消化管から吸収させることを特徴とする。 このようなポリべ プチドは、 例えば、 経口投与によって病態改善効果を示すことが知られている機 能性食品の糖タンパク質 (例えば、 CAF: caipo antidiabetic fraction , LEM: Lentinus edodes mycelia等) と同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドを 例示することができるが、 特に、 枯草菌由来のプロテアーゼ (ナット一キナー ゼ: Natto kinase) と実質的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドが好 ましい。 ナツトーキナーゼには各種のものが知られており、 それらを制限なく使用する ことができるが、 この発明では、 一例として配列番号 2にアミノ酸配列を示した ナツトーキナーゼを提供する。 すなわちこのこの発明の消化器官吸収性ポリぺプ チドは、 例えば、 配列番号 2 ( 381 アミン酸) の全長、 配列番号 2 の任意の 100アミノ酸配列、 101〜150アミノ酸配列、 151 ~ 200 アミノ酸配列、 201〜 250アミノ酸配列、 251〜300アミノ酸配列、 30 1〜350 アミノ酸配列、 351〜 380 アミノ酸配列として選択される。 特に、 N末端側からの 100 アミノ酸以上 を含むことが好ましい。 あるいは、 20 番目 (Met) から 326 番目 (Tyr) まで を含むものであってもよい。 またこのポリペプチドは、 その消化器官吸収能を損
なわない範囲で、 複数個のアミノ酸残基が欠失、 付加、 若しくは他のアミノ酸残 基に置換した配列を有するものであってもよい。 この場合の複数個とは、 例えば 1〜30個程度である。 このような消化器官吸収性ポリペプチドは、 例えば枯草菌ナッ ト一キナーゼ ( NK ) の 公 知 の ア ミ ノ 酸配列 ( 例 え ば配列番号 2 、 ま た は GenBank/AF368283 に開示されたアミノ酸配列) に基づき、 公知のペプチド 合成法 (Merrifield, R.B. J. Solid r>hase oeptide synthesis I. The synthesis of tetrapeptide. J. Amer. Chem. Soc. 85 , 2 149-2154, 1963; Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis. A Practical Approach. Chan, W.C. and White, P.D. , Oxford University Press, 2000) によって作成することもできる。 また 例えば ABI431Aペプチド · シンセサイザ一 (Applied Biosystem) 等を用いる ことによって自動的に行うこともできる。 このような合成ポリペプチドは、 天然のアミド結合以外の残基連結からなるも の、 あるいは天然アミノ酸残基の代わりの非天然残基からなるものであってもよ い。 天然のアミド結合以外の残基連結は、 例えばグルタルアルデヒド、 N-ヒド ロキシスクシンイミドエステル、 2官能マレイミ ド、 N,N,-ジシクロへキシルカ ルポジイミ ド (DCC) 、 または N,N,-ジイソプロピルカルポジイミ ド (DIC) 等 の化学結合またはカップリング手段を例示することができる。 また、 ペプチド結 合の代替となり得る連結基は、 例えばケトメチレン (例えば、 -C ( =0) -CH2- に対する- C ( =0) -NH-) 、 アミノメチレン (CH2-NH〉 、 エチレン、 ォレフィ ン (CH = CH) 、 エーテル (CH2-0) 、 チォェ一テル (CH2- S) 、 テトラゾー ル ( CN4-) 、 チアプール、 レトロアミ ド、 チオアミ ド、 またはエステルを含む (例えば、 Spatola ( 1983) in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Vol. 7, pp 267-357, "Peptide Backbone Modifications," Marcell Dekker, NYを参照) 。 一方、 非天然のアミノ酸残基は、 芳香族アミノ酸については、 例えば D-また はレナフィルァラニン (naphylalanine) ; D-またはレフエニルグリシン ; D-
または L- 2チェネイルァラニン (thieneylalanine) ; D-または L- 1 ,-2,3-また は 4-ピレネイルァラニン (pyreneylalanine) ; D-または レ 3 チェネイルァラ ニン (thieneylalanine) ; D-または L-(2-ピリシニル) -ァラ二ン ; D-ま/こは L- ( 3-ピリジニル) -ァラニン ; D-または L- (2-ピラジニル) -ァラニン ; D-また は L- (4-ィソプロピル) -フエ二ルグリシン ; D- (トリフルォロメチル) -フエ 二ルグリシン ; D- (トリフルォロメチル) -フエ二ルァラニン ; D-P-フルオロ- フェニルァラニン; D-または L-p-ビフエ二ルフエ二ルァラニン ; K-または L-p- メトキシ-ビフエニルフエ二ルァラニン ; D-または L-2 ィンドール (アルキル) ァラニン;および D-または L-アルキルァラニン (alkylalanine) であって、 ァ ルキルが置換されたかまたは未置換のメチル、 ェチル、 プロピル、 へキシル、 ブ チル、 ペンチル、 イソプロピル、 イソ一ブチル、 2級-イソチル (isotyl) 、 イソ —ペンチル、 または非酸性アミノ酸による置換によって生成することができる。 非天然アミノ酸の芳香環は、 例えば、 チアゾィル、 チォフエニル、 ピラゾィル、 ベンゾイミダゾリル、 ナフチル、 フラニル、 ピロリル、 およびピリジル芳香環を 含む。 酸性アミノ酸の場合には、 例えば負の電荷を維持している非力ルボン酸塩 アミノ酸; (ホスホノ) ァラニン;硫酸化トレオニンによる置換によって生成す ることができる。 力ルポキシル側基 (例えば、 ァスパルチルまたはダルタミル) もまた、 例えば 1-シクロへキシル -3 (2-モルフオリニル- (4-ェチル) カルポジ イミ ドまたは 1-ェチル -3 (4-ァゾニァ -4,4-ジメトールペンチル) カルポジイミ ドなどのカルポジイミ ド (R'-N- C-N- R') との反応によって選択的に修飾するこ とができる。 ァスパルチルまたはグルタミルもまた、 アンモニゥムイオンとの反 応により、 ァスパラギニルおよびダルタミニル残基に変換可能である。 塩基性ァ ミノ酸としては、 例.えば (リシンおよびアルギニンに加えて) アミノ酸、 オル二 チン、 シトルリン、 または (グァ二ジノ) -鲊酸、 またはアルキルが前文に定義 されている (グァ二ジノ) アルキル酢酸による置換によって生成することが可能 である。 二トリル誘導体 (例えば、 COOH の代わりに CN-部分を含んでいる) は、 ァスパラギンまたはダルタミン用に置換することが可能である。 ァスパラギ ニルおよびダル夕ミニル残基は、 対応するァスパルチルまたはダルタミル残基に 対して脱アミノ基を行うことが可能である。 非天然のアルギニン残基は、 アルギ ニルを、 例えば 1以上の、 例えばフエニルダリオキサール、 2,3-ブタンジオン、
1,2-シクロへキサンヂオン、 またはニンヒドリンを含む試薬と、 好ましくはアル 力リ性の条件下に反応させることにより生成することができる。 チロシン残基の 場合は、 チロシルを、 例えば芳香族ジァゾニゥム化合物またはテトラニトロメタ ンと反応させることにより生成することができる。 N -ァセチルイミジゾールぉ よびテトラニトロメタンは、 各々 0-ァセチルチロシル類および 3-ニトロ誘導体 を用いて形成することができる。 非天然システィン残基は、 システィニル残基を、
2-クロロ酢酸などの α -ハロアセテート、 またはクロロアセトアミ ドおよび相当 するアミンと反応させ;カルボキシメチルまたはカルポキシアミドメチル誘導体 を生じさせることにより生成することができる。 非天然システィン残基はまた、 システィニル残基を、 例えばブロモ一トリフルォロ酢酸、 a -プロモ - /3 - ( 5-ィ ミダゾィル) プロピオン酸; クロロアセチルホスフアート、 Ν-アルキルマレイ ミド、 3-二トロ- 2-ピリジルジスルフィ ド ; メチル 2-ピリジルスルフィ ド ; Ρ-ク ロロメルクリ安息香酸; 2-クロロメルクリ -4 ニトロフエノ一ル; または、 クロ 口- 7-二ト口べンゾ-ォキサ - 1 ,3-ジァゾ一ルと反応させることにより生成するこ とができる。 非天然リジンは、 リシニルを、 例えば無水コハク酸または他の無水 カルボン酸と反応させることにより生成する (またアミノ末端残基が変更され る) ことができる。 リジンおよび他の α -ァミノ-含有残基模倣物はまた、 メチル ピコリンイミダート、 ピリ ドキサールホスファ.ート、 ピリ ドキサール、 クロロボ ロヒドリ ド、 トリニトロベンゼンアスルホン酸、 0-メチルイソ尿素、 2 ペン夕 ンジオンといったイミドエステルを用いた反応、 およびトランスアミダーゼに触 媒されるグリオキシラートを用いた反応により生成することができる。 非天然メ チォニンは、 例えば、 メチォニンスルホキシドを用いた反応により生成すること ができる。 非天然プロリンは、 例えばピペコリン酸、 チアゾリジンカルボン酸、
3-または 4-ヒドロキシプロリン、 デヒドロキシプロリン、 3-または 4-メチルプ 口リン、 または 3,3,-ジメチルプロリンを含む。 非天然ヒスチジンは、 ヒスチジ ルを、 例えばジェチルプロカルボナー卜またはパラーブロモフエナシルプロミド と反応させることにより生成することができる。 他の非天然のアミノ酸残基は、 例えば、 プロリンおよびリジンの水酸化;セエリルまたはトレオニル残基の水酸 基のリン酸化 ; リジン、 アルギニンおょぴヒスチジンの α -ァミノ基のメチル 化; Ν-末端アミンのァセチル化;主鎖アミド残基のメチル化または Ν-メチルァ
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1 1 ミノ酸による置換; または C-末端の力ルポキシル基のアミ ド化等を例示するこ とができる。 この発明の消化器官吸収性ポリべプチドはまた、 それをコードするポリヌクレ ォチド (第 4 発明) を利用した遺伝子工学的方法によっても得ることができる。 例えば、 ポリヌクレオチドを保有する組換え発現べクタ一からインビトロ転写に よって RNA を調製し、 これを铸型としてインビトロ翻訳を行うことにより目的 の消化器官吸収性ポリペプチドを得ることができる。 また組換え発現べクタ一を 大腸菌、 枯草菌等の原核細胞や、 酵母、 昆虫細胞、 哺乳動物細胞等の真核細胞に 導入して形質転換細胞を作製すれば、 この形質転換細胞から消化器官吸収性ポリ ペプチドを発現させることができる。 . 消化器官吸収性ポリペプチドを遺伝子工学的に発現させるためのポリヌクレオ チドは、 例えば枯草菌ナット一キナーゼ (NK) をコードする公知の配列 (例え ば配列番号 1 ) を利用して NK cDNAを取得し (例えば、 cDNAライブラリーに 対するプロ一ブハイブリダィゼーシヨンや、 PCR法) 、 NK cDNAから消化器官 吸収性ポリべプチドのコード領域を制限酵素等によって切り出して使用すること ができる。 あるい.は、 消化器官吸収性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチ ドは、 公知の方法 (例えば、 Carruthers ( 1982) Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol. 47:41 1-418; Adams ( 1983 ) J. Am. Chem. Soc. 105:661 ; Belousov ( 1997) Nucleic Acid Res. 25:3440-3444; Frenkel ( 1995) Free Radic. Biol. Med. 19:373-380; Blommers ( 1994) Biochemistry 33:7886- 7896; Narang ( 1979 ) Meth. Enzymol. 68:90; Brown ( 1979 ) Meth. Enzymol. 68: 109; Beaucage ( 1981 ) Tetra. Lett. 22: 1859; 米国特許第 4,458,066号) に記載されているような周知の化学合成技術により、 in vitroに おいて合成することができる。 これらのポリヌクレオチドを使用して消化器官吸収性ポリべプチドをインビト 口翻訳で発現させる場合には、 ポリヌクレオチドを、 RNA ポリメラーゼプロモ 一夕一を有するベクタ一に挿入して組換え発現べクタ一 (第 5 発明) を作製し,
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12 このベクターを、 プロモータ一に対応する RNA ポリメラ一ゼを含むゥサギ網状 赤血球溶解物や小麦胚芽抽出物などのインビトロ翻訳系に添加すれば、 目的のポ リぺプチドをインビトロで生産することができる。 RNA ポリメラーゼプロモー 夕一としては、 T7、 T3、 SP6 などが例示できる。 これらの RNA ポリメラ一ゼ プロモーターを含むベクタ一としては、 pKAl、 pCDM8、 pT3/T7 18、 ρΤ7/3 19、 pBluescript IIなどが例示できる。 消化器官吸収性ポリべプチドを大腸菌などの微生物で発現させる場合には、 微 生物中で複製可能なオリジン、 プロモーター、 リボソーム結合部位、 DNA クロ 一二ング部位、 夕一ミネ一夕一等を有するベクターにポリヌクレオチドを組換え た発現ベクター (第 5 発明) を作製し、 この発現ベクターで宿主細胞を形質転 換したのち、 得られた形質転換体を培養すれば、 そのポリヌクレオチドがコード しているポリぺプチドを微生物において大量発現させることができる。 この際、 他のタンパク質との融合夕ンパク質として発現させた後、 目的のポリペプチドを 分離して得ることもできる。 大腸菌用発現ベクターとしては、 pUC 系、 pBluescript II、 pET発現システム、 pGEX発現システムなどが例示できる。 消化器官吸収性ポリぺプチドを真核細胞で発現させる場合には、 ポリヌクレオ チドを、 プロモーター、 スプライシング領域、 ポリ(A)付加部位等を有する真核 細胞用発現べクタ一に挿入して組換えベクター (第 5 発明) を作製し、 真核細 胞内に導入すれば、 目的のポリべプチドを形質転換真核細胞で発現させることが できる。 発現べクタ一としては、 pKAl、 pCDM8、 pSVK3、 pMSG、 pSVL、 pBK-CMV、 pBK- RSV、 EBV ベクター、 pRS、 pcDNA3、 pMSG> pYES2 など が例示できる。 また、 pIND/V5- His、 pFLAG-CMV-2 > pEGFP-N l、 pEGFP- C l、 pCMV-Myc、 pCMV-HA などを発現べクタ一として用いれば、 His タグ、 FLAG タグ、 GFP タグ、 myc タグ、 HA タグなど各種タグを付加した融合タン パク質としてポリペプチドを発現させることもできる。 真核細胞としては、 サル 腎臓細胞 COS7、 チャイニーズハムスター卵巣細胞 CHOなどの哺乳動物培養細 胞、 出芽酵母、 分裂酵母、 カイコ細胞、 アフリカッメガエル卵細胞などが一般に 用いられるが、 目的のポリペプチドを発現できるものであれば、 いかなる真核細
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1 3 胞でもよい。 発現べクタ一を真核細胞に導入するには、 電気穿孔法、 リン酸カル シゥム法、 リボソーム法、 DEAE デキストラン法など公知の方法を用いること ができる。 消化器官吸収性ポリペプチドを原核細胞や真核細胞で発現させたのち、 培養物 から目的べプチドを単離精製するためには、 公知の分離操作を組み合わせて行う ことができる。 例えば、 尿素などの変性剤や界面活性剤による処理、 超音波処理、 酵素消化、 塩析ゃ溶媒沈殿法、 透析、 遠心分離、 限外濾過、 ゲル濾過、 SDS- PAGE、 等電点電気泳動、 イオン交換クロマトグラフィー、 疎水性クロマトダラ フィ一、 ァフィ二ティークロマトグラフィー、 逆相クロマトグラフィーなどが挙 げられる。 第 2 発明は、 前記の消化器官吸収性ポリペプチドと、 生理活性ポリペプチド とを含む融合ポリペプチドである。 すなわちこの融合ポリペプチドは、 一つの形 態として、 消化器官吸収性ポリペプチド 1 分子と、 生理活性ポリペプチド 1 分 子を含むものである。 また別の形態として、 消化器官吸収性ポリペプチド 2 分 子以上と、 生理活性ポリペプチド 1 分子を含むものである。 さらに別の形態と して、 消化器官吸収性ポリペプチド 1分子と、 同一の生理活性ポリペプチドを 2 分子以上を含むものである。 またさらに別の形態として、 消化器官吸収性ポリべ プチド 1 または 2分子以上と、 それぞれに異なる 2種以上の生理活性ポリぺプ チドをそれぞれ 1 または 2 分子以上を含むものであってもよい。 ただし、 消化 管からの吸収効率を考慮した場合には、 分子量として 80 , OOODa以下の任意の' 分子量であることが好ましい。 このような融合ポリペプチドは、 例えば、 消化器官吸収性ポリペプチドと生理 活性ポリペプチドを、 例えば 2価の架橋剤 (例えば、 EDCや ;3—ァラニン等) を介して、 直接的に結合させることによって作製することができる。 あるいはま た、 消化器官吸収性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、 生理活性ポ リぺプチドをコードするポリヌクレオチドとを連結させた融合ポリヌクレ才チド (第 6発明) を調製し、 これを適当な発現ベクターに組換え (第 7) 、 前記と同
様な遺伝子工学的方法により融合ポリヌクレオチドを発現させることによつても、 融合ポリべプチドを作製することができる。 生理活性ポリぺプチドとしては、 それを単独で経口摂取した場合には消化管非 吸収性であり、 従って生体内において望まれるような生理活性を示さないタンパ ク質を例外なく採用することができる。 例えば、 恒常性の維持や、 何らかの疾患 病態の予防または改善に直接的に作用するタンパク質 (薬剤タンパク質) と実質 的に同一のアミノ酸配列からなるポリペプチドである。 また、 例えば 「DNA 結 合タンパク質」 と実施的に同一のアミノ酸配列からなるポリべプチドであっても よい。 DNA 結合タンパク質としては、 細胞内遺伝子 DNA の一部に結合するこ とによって、 例えば、 恒常性維持や疾患予防 (例えば癌抑制) 等に関連する遺伝 子の発現を調節するタンパク質 (転写因子) 、 恒常性の変調や疾患に関連する遺 伝子 DNA の切断や修飾、 構造変化やトポロジー変化を促進するタンパク質等で ある。 もちろんこの発明における生理活性ポリぺプチドはこれらのものに限定さ れることはなく、 何らかの生理活性を有するポリペプチドを制限なく採用するこ とができる。 ただし、 そのような生理活性ポリペプチドを化学合成または遺伝子 工学的に作製して消化器官吸収性ポリべプチドとの融合ポリぺプチドとする場合 には、 アミノ酸配列および/またはそれをコードするポリヌクレオチド配列が公 知であるものが好ましい。 さらにまた、 生理活性ポリペプチドは、 その全長であってもよく、 あるいはそ の生理作用に関連する部分ペプチドであっても'よい。 さらに、 消化器官吸収性ポ リぺプチドと生理活性ポリぺプチドのいずれが N 端側に位置してもよい。 また さらに、 消化器官吸収性ポリペプチドと生理活性ポリペプチドとは、 連続的に連 結されていてもよく、 あるいは両者の間に 2〜10 アミノ酸残基からなるぺプチ ドリンカーを介在させてもよい。 例えば、 消化器官吸収性ポリペプチド 1 分子と生理活性ポリペプチド 1 分子 とを含む融合ポリペプチドとしては、 例えば、 NK の部分ペプチドと顆粒球コロ 二一刺激因子 (G-CSF) の融合ポリペプチド (NK+G- CSF) 、 NKの部分べプチ
ドとインスリン (Ins) の融合ポリペプチド (NK+Ins) 、 NK 部分ペプチドとェ リスロポェチン ( EPO) の融合ポリぺプチド (NK + EPO) 、 NK 部分ペプチド とアディボネクチンの融合ボリペプチド (NK + Adiponectin) 、 NK部分べプチ ドとインターロイキンの融合ペプチド (NK + IL) 等が例示されるが、 この発明 の融合ポリペプチドはこれらに限定されるものではない。 また、 これらの融合ポ リぺプチドを遺伝子工学的に作製するための融合ポリヌクレオチドの例としては、 NK 部分 cDNA (配列番号 1 の一部) とマウス G-CSF 部分 cDNA (配列番号 3) からなる融合ポリヌクレオチド、 NK部分 cDNA (配列番号 1 の一部) とマ ウス Ins2 cDNA (配列番号 4) からなる融合ポリヌクレオチド、 NK部分 cDNA (配列番号 1 の一部) とマウス EPO cDNA (配列番号 5) からなる融合ポリヌ クレオチド、 NK部分 cDNAとマウス G-CSF cDNAからなる融合ポリヌクレオ チド (配列番号 6) 、 NK部分 cDNAとマウス Ins2 cDNAからなる融合ポリヌ クレオチド (配列番号 7) 、 NK部分 cDNAとマウス Ins2 cDNAからなる融合 ポリヌクレオチド (配列番号 8) 、 NK部分 cDNAとマウス Adiponectin cDNA からなる融合ポリヌクレオチド (配列番号 9) を例示することができるが、 この 発明の融合ポリヌクレオチドはこれらに限定されるものではない。 以上のとおりの第 2 発明の融合ポリペプチドは、 それ単独で、 例えば経口薬 剤に製剤化することができる。 また、 その場合は、 融合ポリペプチド、 あるいは その一部である消化器官吸収性ポリぺプチドおよびノまたは生理活性ポリぺプチ ドを 「塩」 の形態としてもよい。 塩は、 例えば、 製薬上許容される酸 (無機酸ま たは有機酸) 付加塩、 例えば塩酸塩、 臭化水素酸塩、 硫酸塩、 硝酸塩、 酢酸塩、 安息硝酸塩、 マレイン酸塩、 フマル酸塩、 コハク酸塩、 酒石酸塩、 クェン酸塩、 シユウ酸塩、 メタンスルホン酸塩、 トレエンスルホン酸塩、 ァスパラギン酸塩、 グルタミン酸塩等である。 この出願の第 3 発明は、 第 1 発明の消化器官吸収性ポリペプチドと、 薬剤成 分候補物質と、 標識物質とからなる標識化融合ポリペプチドである。 すなわちこ の標識化融合ポリべプチドは、 例えばプロテオミクス創薬等における薬剤成分候 補物質の経口摂取による生体内での動態 (消化器官吸収や分解の程度) を実験動
物レベルで検証するために有用である。 この第 3 発明の標識化融合ポリべプチ ドにおける薬剤成分法補物質は、 特段の制限はなく、 有機および無機の化合物、 タンパク質、 ぺプチド等、 通常の創薬対象となる成分を採用することができる。 また、 標識物質は、 実験動物から単離させた組織試料を対象として薬剤成分候補 物質の動態を試験する場合には、 例えば、 酵素、 放射性同位体または蛍光色素等 を使用することができる。 酵素は、 turnover number が大であること、 融合ポ リぺプチドと結合させても安定であること、 基質を特異的に着色させる等の条件 を満たすものであれば特段の制限はなく、 通常の酵素免疫測定等に用いられる酵 素、 例えば、 ペルォキシダーゼ、 ]3—ガラクトシダ一ゼ、 アルカリフォスファタ —ゼ、 グルコースォキシダーゼ、 アセチルコリンエステラーゼ、 グルコース一 6 一リン酸化脱水素酵素、 リンゴ酸脱水素酵素等を用いることもできる。 また、 酵 素阻害物質や補酵素等を用いることもできる。 これら酵素と融合ポリぺプチドと の結合は、 マレイミド化合物等の架橋剤を用いる公知の方法によって行うことが できる。 基質としては、 使用する酵素の種類に応じて公知の物質を使用すること ができる。 例えば酵素としてペルォキシダ一ゼを使用する場合には、 3 ,3',5,5'— テトラメチルベンジシンを、 また酵素としてアルカリフォスファターゼを用いる 場合には、 パラニトロフエノール等を用いることができる。 放射性同位体として は、 i25 Iや 3 H等の通常の RIA 等で用いられているものを使用することができ る。 蛍光色素としては、 フルォレツセンスイソチオシァネート (FITC) ゃテト ラメチル口一ダミンイソチオシァネート (TRITC) 等の通常の蛍光法に用いられ るものを使用することができる。 ' , · 一方、 動.物個体内での薬剤成分候補物質の動態を試験するためには、 標識物質 として、 例えばマンガンや鉄等の金属を使用することもできる。 このような金属 を標識化した融合ポリペプチドを体内に投与し、 MRI 等によって金属を測定す ることによって、 薬剤成分候補物質の生体内動態を正確に知ることができる。 この出願の第 8 発明は、 前記第 2 発明の融合ポリペプチドまたはその塩を含 有する経口組成物である。 この組成物は、 口腔から摂取されて消化器官において 吸収される形態からなる組成物、 例えば、 飲食品や経口医薬品等である。 さらに
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17 具体的には、 融合ポリぺプチドに含まれる生理活性ポリべプチドによって薬効を 発揮する疾患の予防や症状の軽減のための機能性食品、 健康補助食品、 栄養食品、 栄養補助食品等、 あるいは疾患治療用薬剤である。 なお、 この発明の融合ポリべ プチドは、 機能性食品として使用されている CAF、 LEM、 NK 等に由来する消 化器官吸収性ポリペプチドと、 その通常範囲での摂取が毒性を持たないことが確 認されている生理活性ポリペプチドであるから、 飲食品や薬剤の成分としての安 全性には全く問題はない。 治療薬としては、 例えば、 錠剤、 カプセル剤、 顆粒剤、 細粒剤、 粉末剤、 また は懸濁剤やシロップ剤のような経口液体調製物等に製剤化することが好ましい。 担体としては、 常用の製薬補助剤、 例えば結合剤 (シロップ、 アラビアゴム、 ゼ ラチン、 ソルビット、 トラガカント、 ポリビニルピロリ ドン、 ヒドロキシプロピ ルセルロース等) 、 賦形剤 (ラク卜一ス、 シュガー、 コ一ンス夕一チ、 リン酸力 ルシゥム、 ソルビット、 グリシン等) 、 滑沢剤 (ステアリン酸マグネシウム、 夕 ルク、 ポリエチレングリコール、 シリカ等) 、 崩壌剤 (ポテトスターチ、 力ルポ キシメチルセルロース等) 、 湿潤剤 (ラウリル硫酸ナトリウム等) を使用するこ とができる。 ストロベリー · フレーバ一、 ペパーミント等のフレ一パー類等を添 加することもできる。 また錠剤は常法によりコーティングすることができる。 経 口液剤は水溶液またはドライプロダクトにすることができる。 そのような経口液 剤は常用の添加剤、 例えば保存剤 (P-ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはプロ ピル、 ソルビン酸等) を包含していてもよい。 薬効成分である融合ポリべプチドの含有量は症状の程度や剤形に応じて適宜と することができるが、 通常は 5~ 100%(w/w)、 好ましくは 10~ 60%(w/w)の範 囲とすることができる。 また薬剤の投与量は、 患者の年齢や体重、 症状等によつ て異なるが、 融合ポリペプチド量として 100〜200mg/kg/day 程度とすること ができる。 飲食物等の組成物の場合には、 既存の製品製造の過程で、 融合ポリペプチドを. その活性を損なわないように配合して製造することができる。 そのような飲食物
の例としては、 例えば、 清涼飲料、 栄養飲料、 果実飲料、 乳酸飲料などの飲料 (これらの飲料を調整する為の濃縮原液および/または調整粉末を含む) ; アイ スクリーム、 シャーベットなどの冷菓;そば、 うどん、 パン、 餅、 餃子の皮など、 穀物の加工品 ;飴、 キャンディ一、 チョコレ一ト、 スナック菓子、 ビスケット、 クッキ一、 クラッカー、 ゼリー、 ジャムなど、 菓子類;かまぼこ、 はんぺん、 八 ム、 ソーセージなど、 水産、 畜産加工食品 ;加工乳、 チーズ、 バタ一など、 乳製 品 ;マーガリン、 ラード、 マヨネーズなど、 油脂および油脂加工食品 ;醤油、 ソ —ス、 味噌、 ポン酢、 昆布だし、 スープの素など、 調味料;各種惣菜類;漬物 類;その他の各種形態の栄養および健康補助食品などが挙げられるが、 勿論これ らに限定されるものではない。 以上のような融合ポリぺプチドからなる治療薬剤や、 融合ポリぺプチドを含有 する経口組成物は、 生理活性ポリべプチドが例えば注射によって投与された場合 に発揮するのと同程度またはそれ以上の治療的効果を示すことができる。 例えば、 インスリンを含む融合ポリペプチドの場合には、 糖尿病患者等の血糖値を正常化 し、 耐糖能障害、 糖尿病 (II型糖尿病など) 、 インスリン抵抗性症候群 (インス リン受容体異常症など) 、 多嚢胞性卵巣症候群、 高脂質血症、 ァテロ一ム性動脈 硬化症、 心臓血管疾患 (狭心症、 心不全など) 、 高血糖症、 高血圧症、 狭心症、 肺高血圧、 鬱血性心不全、 糖尿病合併症 (例えば糖尿病性壊疽、 糖尿病性関節症、 糖尿病性糸球体硬化症、 糖尿病性皮膚障害、 糖尿病性神経障害、 糖尿病性白内障、 糖尿病性網膜症など) 、 或いは、 皮膚障害、 味覚障害などの予防や治療に効果を 有する。 第 9 の発明は、 被験物質の生体内毒性を試験する方法であって、 前記第 1 発 明の消化器官吸収性ポリべプチドと被験物質との結合体を動物に経口投与するェ 程を含むことを特徵とする毒性試験方法である。 この場合の被験物質は、 例えば, 消化管からは吸収されにくいが、 食物や飲料に含まれていることによって長期間 にわずかずつ吸収され、 生体に対して有害に作用する恐れのある物質である。 こ の第 9 発明の方法によれば、 このような消化器官非吸収性の有害物質を短期間 でその有害量を動物の消化管から吸収させることが可能であり、 有害物質の毒性
を個体レベルで検討することが可能となる。 また、 消化器官吸収性ポリペプチド と被験物質との結合体を任意の標識物質で標識すれば、 標識物質のシグナルによ つて被験物質の体内での蓄積量を測定することができ、 被験物質の体内蓄積量と 個体レベルでの傷害との関係を正確に知ることもできる。 第 10の発明は、 前記第 9発明の方法を簡便に実質するための試験キットであ る。 例えばこの試験キットは、 消化器官吸収性ポリペプチドと被験物質との結合 体と、 被験物質が生体内で毒性を示すことを確認するための試薬等によって構成 することができる。 このような試薬は、 例えば被験物質の生体内での代謝産物が 毒性を持つ場合、 あるいは被験物質の生体内タンパク質が異常分解されることに よって毒性を持つ塲合などは、 これらの代謝産物や異常タンパク質の検量するた めの免疫測定試薬 (例えば ELISA) 等によって構成することができる。
実施例 以下、 実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細かつ具体的に説明す るが、 この出願の発明は以下の例によって限定されるものではない。'
実施例 1
組換えナット一キナーゼ (NK) の cDNAクローニング 納豆菌 (Bacillus subtilis natto) から Dneasy Tissue Kit (QUIAGEN社) を用いてゲノム DNAを調製し、 これを铸型として全長 KN遺伝子 cDNAを PCR 増幅した。 具体的には、 公知の NK mRNA配列 (GenBank/ AY219901:配列 番号 1 ) に基づき PCR プライマーを設計し、 ゲノム DNA を铸型とて、 KOD plus (TOYOBO社) により PCR を行った。 PCR産物の分子量を電気泳動によ り確認後、 p PCR-Script ベクター (INVITROGEN 社) にクローニングし、 配 列を確認した。
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実施例 2
融合ポリぺプチドの作製 インビトロ転写 · 翻訳形 (無細胞系) にて融合ポリペプチドを作製した。 TOYOBO社製 PROTEIOS Wheat germ cell-tree protein synthesis core kitに 添付されている pEU3 -NIIベクタ一の EcoRV/XhoI部位に、 終止コドンを除去 して Hisタグ配列を付加した 3種類の NK cDNAをそれぞれ挿入した。 すなわ ち、 全長 NK ( 38 1アミノ酸) をコードする cDNA、 全長 NKの C端から 19ァ ミノ酸を削除した活性型 NK ( 363 アミノ酸) をコードする cDNA、 活性型 NK の C端からさらに 69アミノ酸を削除した不活性型 NK ( 294アミノ酸) をコー ドする cDNAをそれぞれィンサ一トする発現ベクターを構築した。 次いで、 各発現ベクターの Xhol / Smalクローニングサイトに、 以下の生理活 性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド (cDNA) を挿入連結した。
( 1) マウス顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF) の一部 (N 端 30 アミノ酸を除 去) をコードする cDAN (配列番号 3 ) 。
(2) マウス全長ィンスリン II ( Ins2 ) をコードする cDNA (配列番号 4 ) 。
(3) マウス全長エリスロポエチン (EPO) をコードする cDNA (配列番号 5 ) 。 なお、 以上の各生理活性ポリペプチド cDNA の揷入により、 各発現ベクター は NKポリべプチドと生理活性ポリべプチドがリンカ一 (Leu-Glu-Arg) で連結 された融合ポリペプチド mRNAを転写する。
次いで、 TOYOB O社製 Thermo T7 RNA polymerase ( 150U) を 37でで 4 時間反応させて mRNAを転写させ、 電気泳動にて確認の後、 転写された mRNA ( 12 U g) を用いて 26 °C 24 時間の翻訳反応により融合ポリペプチドを得た。 得 られた融合ポリペプチドは、 SDS-PAGE にて電気泳動の後、 クマーシーブルー 染色により確認した。 また、 His タグ抗体を用いたウエスタンブロッテイングに より融合ポリぺプチドを確認した。
2
得られた融合ポリぺプチドは以下の 9種類である
全長 NK+G-CSF
活性型 NK+G-CSF
不活性型 NK+G-CSF
全長 NK+Ins2
活性型 NK+Ins2
不活性型 NK + Ins2
全長 NK+EPOF
活性型 NK+EPO
不活性型 NK+EPO
実施例 3
NK+ G-CSF融合ポリペプチドの経口投与
NK+G-CSF 融合ポリペプチドを経口投与し、 G-CSF の生理活性のインビポ 変化を調べた。 なお、 内因性 G-CSF は骨髄細胞で産生されるが、 10 週零以下 の健常幼弱マウスでは骨髄細胞の活動が活発であり、 内因性 G-CSF と経口投与 G-CSF との差異を明確に区別するため、 事前の X-線照射によって骨髄細胞の活 動を抑制した。 具体的な実験手続きは以下のとおりである。
5 週齢の BALB/C 雄性マウスに全身 X-線 (150kvp、 20mA、 filte:0.5AI + 0.3Cu、 2.0Gy/min.) を照射し、 4.84Gy照射後 14 日目に、 眼窪から 200 1 を採血し、 ギムザ染色し、 血球計算盤により未梢血中のリンパ球除く有核細胞数 cell number) ¾計数し 7こ。 次いで、 4.84Gy照射された各マウスに、 不活性型 NK+G-CSFおよび不活性 型 NK単独 (コント口一ル) を 5 g/l00 lの容量で胃ゾンデにて経口投与し た。 また 5 g/50 l 容量を、 マウス尾部から静脈注射した。 X-線非照射マウ
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22 スでは 15 日目にも 14 日目と同量経口投与した後、 1時間後に眼窪から 200 1 採血し、 ギムザ染色し、 血球計算盤にて未捎血中のリンパ球を除く有核細胞数 (cell number) を計数した。 直後に心臓から 500 1採血し、 ELISAキットに て G-CSFの血中濃度を測定した。
4.84Gy照射マウスでは、 14 日目と同量の投与を 15 日目および 16 日目に行 い、 1時間後に眼窪から 200 μ ΐ採血し、 ギムザ染色し、 血球計算盤にて未梢 血中のリンパ球を除く有核細胞数 (cell number) を計数した。 直後に心臓から 500 1採血し、 ELISAキットにて G-CSFの血中濃度を測定した。 その結果、 非照射群では、 不活性型 NL+ G-CSF融合ポリペプチドの経口投与 により、 血中 G- CSF が有意に増加した。 また、 500pg/ml 以上 (コントロー ルに比較して約 3倍以上) に G-CSF濃度が増加した個体では、 未梢血有核細胞 数も約 1.8倍に増加した。 (図 1) 。 また、 照射群では、 不活性型 NL+ G-CSF融合ポリペプチドの経口投与により 静脈注射に比較しても、 血中 G-CSFが顕著に増加した (図 2、 図 3) 。
実施例 4
HK+ EPO融合ポリペプチドの経口投与 実施例 3 と同様に、 X-線照射によって骨髄細胞の活動を抑制した状態で、 NK + EPO融合ポリぺプチドの経口投与によるィンビポ活性を検討した。
5 週齢の BALB/C 雄性マウスに全身 X-線 (150kvp、 20mA、 filte:0.5AI + 0.3Cu、 2.0Gy/min.) を照射し、 3.63Gy照射後 12 日目に、 眼窪から 200 1 を採血し、 血球計算機 ((株)シスメックス社) により未梢血中の赤血球数 (cell number) を計数した。
次いで、 3.63Gy 照射された各マウスに、 不活性型 NK+ EPO、 活性型 NL + EPO、 不活性型 NK単独および活性型 NK単独 (コントロール) を 5 /_i gZ l00 lの容量で胃ゾンデにて経口投与した。 また 5 / 50 1容量を、 マウス尾部 から静脈注射した。
12 日目と同量の投与を 13 日目に行い、 1時間後に眼窪から 200 ^ l採血し、 適宜に希釈し、 血球計算機にて末梢血中の赤血球数 (cell number) を計数した。 直後に心臓から 500 1採血し、 ELISAキットにて EPO の血中濃度を測定した。 なお ELISAキットは、 臨床使用されているヒト EPO に対する ELISAキットを 使用した。 結果は以下のとおりであった。 すなわち、 まず、 いずれの群でも、 有意の未梢 血中赤血球数増加が見られなかった (図 4) 。 また ELISA の結果からは、 いず れの投与群でも有意な血中 EPO 濃度の増加は認められなかった (図 5) 。 むし ろ静脈投与では傾向として減少する場合もあった。
X-線照射群では細胞数に関しては、 不活性型 NK+ EPO の経口投与で静脈注 射よりむしろ有意な赤血球数の増加効果が見られた (図 6) 。 さらに、 不活性型 NK+ EPO の経口投与の場合には、 コントロール (不活性型 NK 単独、 活性型 NK単独) よりも EPO濃度が高く、 かつ不活性型 NK+ EPO の経口投与では、 血中への移行効率が静脈投与に比べて相対的に高いことが確認された (図 7) 。 —方、 活性型 NK+ EPOでは、 静脈投与に比べて血中への移行は必ずしも良好で はなかった。 以上の結果から、 EPO の塲合には、 活性型 NK + EPO よりも不活性型 NK + EPOを経口投与することによって、 高い薬効が得られることが確認された。
実施例 5
NK+ Ins2融合ポリペプチドの経口投与
T JP2004/006344
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5週齢の C57BL/5雄性マウスに STZ ( streptozodocin) 2mg を腹腔投与し, 1型糖尿病 (ィンスリン欠乏型) モデルマウスを作成した。 12週齢で 3 時間の 絶食後の血糖値が約 400 に達したものを用いた。 18 あるいは 24時間絶食させ た後、 2g/kg の糖負荷 (胃ゾンデによる砂糖水の経口投与) の後、 30 分後に実 験に供した。 この各糖尿病マウスに、 全長型 NK+ Ins2、 活性型 NL+ Ins2、 全長型 NK単 独および活性型 NK単独 (コントロール) を S gZ lOO lの容量で経口投与し た。 また s ^ gZso^ i容量を、 マウス尾部から静脈注射した。 その後、 20分毎 に血糖値を測定し、 血糖の降下が確認できた 80 分以後または 120 分後に心臓 採血を行った。 また静脈注射マウスの場合には血糖値の測定後、 1時間後に心臓 採血を行なった。 更に ELISA にてそれぞれのマウスの Ins2 血中濃度を測定い た。 その結果は以下のとおりであった。 すなわち、 活性型 NK + Ins2および全長型 NKでは、 経口投与によって有意の 血糖降下が見られた (図 8) 。 特に、 活性型 NK+ Ins2では、 経口投与により、 静脈注射よりもかなり大きな血糖値降下の結果が得られることが確認された。 次 いで 10pg/mlレベルの検出が可能な精密 ELISAにて Ins2血中濃度を測定した, その結果、 全長型 NK+ Ins2 および活性型 NK + Ins2 を高い血中インスリン濃 度が観察され、 特に全長型 NK+ Ins2 の場合には、 静脈注射の場合に比べて、 経口投与ではるかに高いインスリン濃度が観察された (図 9) 。
実施例 6
NK+G-CSF融合ポリぺプチドの経口投与
(1) NK+G-CSF融合ポリペプチドの調製
実施例 1 でクローニングした NK cDNA (配列番号 1) の第 58— 978番塩基 までの配列 (NKの第 20位 Metから第 326位 Thrまでのポリべプチドをコ一
ドするポリヌクレオチド : 以下 「キャリア NK cDNA」 と記載することがある) を調製した。
pQE-TriSystem His · Strep 1 vector (Qiagen社) の Smal/BamHサイ ト にキャリア NK cDNAを組み込み、 大腸菌用のキヤリァー NK発現べクタ一を構' 築した。 またキャリアー NK cDNA の下流 (pQEベクターの EcoRI/Bglllサイ ト) にマウス G- CSF cDNAを組み込み、 大腸菌用の NK+G-CSF発現ベクター を作成した。 NK+G-CSF をコードする融合ポリヌクレオチドの配列は配列番号 6 のとおりである。 なお、 配列番号 6 において、 5,端の Ser-Arg-Glu をコード する塩基配列は pQEベクタ一の Smalサイ トの配列であり、 3'端の Gln-Ile-Ser をコードする配列は pQE ベクタ一の Bglll サイ 卜の配列である。 さらに、 第 31 1〜 315位の Val- Asp- Pro-Asn-Serをコードする配列は pQEベクター由来の 配列である。
作成したベクターは XL10- Gold Kan Ultracompetent Cell ( Stratagene 社) に導入し、 37°Cにて培養し、 O.D.0.5 になったことを確認後、 ImM にな るように IPTG を添加し、 4時間 28でにて培養を行った。 大腸菌を集めた後、 ? 80°Cにて凍結し、 Lysis buffer に溶解した。 次に超音波破砕機にて大腸菌を 破碎し、 可溶成分と不溶成分とに遠心により分離した。 可溶成分から HIS- Select Cobalt Affinity Gel (Sigma社) により His tagを持つタンパク質を精 製した。 精製後、 半透膜を用い溶出液を PBS に置換し、 Mustang Membrane (Pall Corporation社) を用いてエンドトキシンを除去した。
(2) 実験群
正常 BALB/cマウス (25週齢、 雄性、 SLC より購入) を各群 5 匹とし、 以 下のサンプルを投与した。 なお、 投与サンプルには BSA(bovine serum albumin)を lOOmg/ml となるように加えた。 各サンプルのタンパク質量は、 BSAを対照として吸光度計で測定した。 第 1群: NK+G-CSF (経口) 16 g/0.2ml/ PE 1 / 1
第 2群: NK+G-CSF (経口) 1.6 g/0.2ml/匹 1 / 10
第 3群: NK+G-CSF (皮下注射) 16 /i gZ0.2mlZ匹 1 / 1
第 4群:キャリア NK (経口) 16 gZ0.2ml/匹
第 5群 : PBS (皮下注射) 0.2ml/匹
(3) 実験方法
予備実験により、 0.3ml の採血により 2日以上に渡って大きな影響が出るこ とが確認されていた。 まず、 BALB/ c マウスの眼窪から 0.3ml 採血し、 その日 のうちに白血球数を計測した。 次いで、 18 時間の絶食後に、 それぞれのマウス に胃ゾンデでの経口あるいは皮下注射で、 上記のサンプルを投与した。 サンプル の投与から 24時間後、 および 48時間後に、 マウスの眼窪静脈洞から 0.3ml採 血し、 直ちに白血球数を計測した。 なお、 白血球数の計測は三菱化学 BCL 社に て行った。
(4) 結果
結果は図 10に示したとおりである。 すなわち、 NK+G-CSFの経口投与 (第 1 群、 第 2群) では、 投与 48時間後に投与量 16 g_ 匹 (600 g/kg) では統計 学的に有意な白血球数増多作用が確認できたが、 1.6 ^ gZ匹 (60 g/kg) では 有意な効果が認められなかった。
皮下注射では、 PBS単独 (第 5群) でも、 採血の影響および BSAによる免疫 反応か、 上記に比べ小さいが、 有意の白血球数増多作用が確認された。 しかし G-CSF皮下注射 (第 3群) では 5匹中 4匹で増加があつたが、 1 匹で変化が小 さく、 有意差を認めなかった。
キャリア NK皮下投与 (第 4群) でも、 投与後 24時間では 0時間に比較すす ると有意な白血球数増多作用が観察された。 (5) 考察
コントロールの PBS投与群 (第 5群) では、 24、 48時間後にも白血球増多 が認められた。 実際に単回の NK+G-CSF 経口投与 (第 1、 第 2 群) では、 48 時間後にむしろ減少傾向があり、 骨髄に G-CSF が強く作用した後、 G-CSF の 濃度維持が続かなかった場合、 白血球がむしろ減少し、 連日の全血液量の約 30 %に相当する採血の影響では、 むしろ白血球数は増え続ける可能性が示唆さ
れた。
0.6mg/kgの NK+ G-CSF 1回の経口投与ではコントロールと比較して 24時 間後に統計学的に有意な生理活性が確認できたが、 0.06mg/kg の経口投与では 統計学的に有意な生理活性が確認できなかっ た。 しかし、 NK+G-CSF 0.6mg/kgの 1回の皮下注射では、 増加傾向は認めたものの、 有意の白血球の増 加を観察できなかった。 用いた NK+G-CSFの内、 G-CSF分は約 1 /2であり、 0.3mg/kg に相当する。 ヒトの臨床では通常、 50- 100mg/head (60kg) で皮 下あるいは筋肉注射されている。
今回の結果は、 G-CSF を経口投与したが非常に効率よく消化管から吸収され ているだけでなく、 血中でも活性を失わなかった可能性を示唆している。 また皮 下注射では、 かえって個体差があり、 活性型への転換が、 血液中のプロテアーゼ の活性による、 本フュージョンプロテインから活性型の G-CSF への変換が、 必 ずしも効率的に進まない可能性が示唆された。 この融合ポリぺプチドではむしろ 経口投与の方が、 活性が高いものを標的臓器である骨髄に届けられる可能性が示 唆された。
いずれにしても、 この形の融合ポリペプチドによる DDS としての可能性は非 常に大きいことが確認された。 消化管での消化による影響は比較的が小さく、 か つ血中での分解代謝にもかかわらず、 標的臓器である骨髄での活性を十分発揮で きる濃度と活性持続時間が確認された。
実施例 7
糖尿病マウスへの HK+Inslin融合ポリぺプチドの経口投与
( 1) NK+ Insulin融合ポリペプチドの調製
実施例 6 と同様のキャリア NK cDNA を調製した。 pQE-TriSystem His - Stre 1 vector ( Qiagen社) の Smal/BamHサイトにキャリア NK cDNAを組 み込み、 大腸菌用のキャリア一 NK 発現べクタ一を構築した。 またキャリア NK cDNA の下流 (pQE ベクタ一の BamHI/EcoRI サイ ト) にマウス Insulin2 cDNA を組み込み、 大腸菌用の ΝΚ+Insulin 発現べクタ一を作成した。
NK+Insulinをコードする融合ポリヌクレオチドの配列は配列番号 8のとおりで ある。 なお、 配列番号 8 において、 5'端の Ser-Arg- Glu をコードする塩基配列 は pQEベクタ一の Smalサイトの配列であり、 3,端の Pro- Asn-Serをコードす る配列は pQE ベクタ一の EcoRI サイ トの配列である。 さらに、 第 311〜313 位の Val-Asp-Proをコ一ドする配列は pQEベクター由来の配列である。
作成したベクターから、 実施例 6 と同様にして NK+Insulin融合ポリべプチ ドを調製した。
(2) 実験群
正常 C57BL/6 マウス (6-7週齢、 雄性、 SLC より購入) を各群 6-9 匹とし, 10日間の予備飼育後、 180mg/kgの STZを腹腔内注射した。 約 3週間後(11週 齢時)に血糖値および血中ィンスリン値を検討した後、 以下のサンプルを投与し た。 なお、 投与サンプルには BSA(bovine serum albumin)を 100mg/ml とな るように加えた。 各サンプルのタンパク質量は、 BSA を対照として吸光度計で 測定した。 第 1群 : NK+Insulin (経口) 40 g/0.2ml/E 1/1
第 2群: K+Insulin (経口) 4.0< gZ0.2ml //匹 1/10
第 3群: NK+Insulin (皮下注射) 40 g/0.2mlノ匹 1ノ1
第 4群:キャリア NK (経口) 40^§ 0.21111ノ匹
第 5群: PBS (皮下注射) 0.2ml/匹
第 6群: NK+Insulin (経口) 160wgZ0.2mlZ匹 1Z1
第 7群: NK+Insulin (経口) IS gZO mlZ匹 1 1
第 8群:キャリア NK (経口) 160; g 0.2ml/匹
(3) 実験方法
3時間絶食時の血糖値が 400mg/dl前後の STZ投与 C57BL/6マウスを 18 時間絶食し、 空腹時血糖を測定した後に、 ダルコ一ス (2g/kg BW) の経口投与 を胃ゾンデで行った。 各サンプルの投与は、 18 時間の絶食後に、 それぞれのマ ウスに経口あるいは皮下で行った。
血糖値は、 マウスの眼窪静脈叢からキヤビラリ一を用いて採血を行い、 グルテ ストエース (GT- 1640 三和化学研究所製) によって測定した。 糖負荷 30 分後 に血糖値を測定して上昇したことを確認し、 サンプルを投与した。 その後 1、 2、 4時間後に血糖値測定と 0.2mlの採血を行い、 遠心分離して血漿を得た。
(4) 結果
結果は図 1 1、 12に示したとおりである。 すなわち、 図 1 1 に示したように、 NK+Insulin の経口投与 (第 1 群、 第 2 群) では、 投与量 40 ^ g Z匹 ( 2.4mg/kg) で統計学的に有意な血糖降下作用が確認できたが、 4.0 w gZ匹 (240 g/kg) では有意な効果が認められなかった。 キャリア NK 単独 (第 4 群) でも、 AO gZ匹 (2.4mg/kg) では、 採血の影響および BSAによる作用か、 若干の血糖降下傾向が認められた。 なお、 コントロール (第 5 群) でも、 投与 後に若干の血糖降下傾向があった。
一方、 図 12に示したように、 NK+Insulinの経口投与 (第 6群、 第 7群) で は、 投与量 160 g/匹 (約 10mg/kg) では統計学的に有意な血糖降下作用が 確認できたが、 16.0 g/匹 (1.0mg/kg) でも有意の効果が認められた。 キヤ リア NK単独 (第 8群: ISO gZ匹 [約 10mg/kg] ) では、 コントロールと比 較しても有意の変化を認めなかった。
(5) 考察
10、 2.4、 l .Omg/kg の NK+ Insulin 融合ポリペプチドの 1回の経口投与で は統計学的に有意な血糖降下活性が確認できたが、 0.24mg/kg の経口投与では 統計学的に有意な生理活性が確認できなかった。 しかしキャリアー NK 単独 10, 2.4および 0.24mg/kgの 1回の経口投与では、 若干の傾向は認めたものの、 有 意の血糖降下作用を観察できなかった。 使用した融合ポリぺプチドとしての Insulinの内、 Insulin分は約 1 /4であり、 それぞれ 2.5、 0.6、 0.25mg/kgに 相当する。 これは十分臨床応用可能な投与量であり、 かつ投与 4 時間後にも有 意な血糖降下作用が持続した。 この作用の持続時間は、 Insulin の静脈注射の血 糖降下作用よりも優れている。
以上の結果は、 NK+ Insulin 融合ポリペプチドの経口投与によってインスリ
ンが非常に効率よく消化管から吸収されているだけでなく、 血中でも活性を失わ なかった可能性を示唆している。 この融合ポリべプチドではむしろ経口投与の方 が、 活性が高いものを持続して標的臓器である脂肪組織、 筋肉、 肝臓などに届け られる可能性が示唆された。
いずれにしても、 この融合ポリペプチドによる DDS としての可能性は非常に 大きいことが確認された。 消化管での消化の影響は比較的小さく、 かっ血中での 分解代謝にもかかわらず、 標的臓器である脂肪組織、 筋肉、 肝臓などでの活性を 十分発揮できる濃度と活性持続時間が確認された。
実施例 8
糖尿病マウスへの NK+Inslin融合ポリぺプチドの経口投与による
ィンスリンの血中動態
( 1) NK+ Insulin融合ポリペプチドの調製
実施例 6 と同様のキャリア NK cDNA を調製した。 pGEX-5X-3 vector (Amersham Biosciences) の BamHI/EcoRIサイトにキャリア NK cDNAを 組み込み、 大腸菌発現用 Carrier 発現ベクターを作成した。 またキャリア NK cDNA の下流 (pGEX ベクタ一の RcoRI/ Smal サイ ト) にマウス Insulin2 cDNA を組み込み、 大腸菌用の NK+ Insulin 発現ベクターを作成した。 NK + Insulin 融合ポリペプチドをコードする融合ポリヌクレオチドの配列は配列番号 7のとおりである。 なお、 配列番号 7 において、 5,端の Gly- lie-Proをコードす る塩基配列は pGEXベクターの BamHIサイトの配列であり、 3'端の Ser-Arg- Val をコードする配列は pQEベクターの Smalサイ トの配列である。 さらに、 第 31 1〜313位の Arg-Asn- Serをコードする配列は pGEXベクター由来の配列 である。
作成したベクターから、 実施例 6 と同様にして NK + Insulin融合ポリべプチ ドを調製した。 ただし、 この融合ポリペプチドは、 破砕後の大腸菌から遠心分離 して得た可溶成分から、 GST-Select Affinity Gek (Amasham Pharmacia) に よって GST タグを持つタンパク質を分離、 このタンパク質から GST タグを除
外して精製した。 (2) 実験群
正常 C57BL/6 マウス (6-7週齢、 雄性、 SLC より購入) を各群 5-8 匹とし, 10 日間の予備飼育後、 180mg/kgの STZを腹腔内注射した。 約 3週間後(1 1週 齢時)に血糖値および血中ィンスリン値を検討した後、 以下のサンプルを投与し た。 なお、 NK+ Insulin サンプル中には、 タンパク質生成キッ ト培地からの精 製成分を含んでいる。 第 1群: NK+Ins lin (経口) 20 gZO. lml/匹 1/ 1
第 2群: NK+Insulin (皮下注射) 20 g/0. 1ml/ EE 1 / 1
第 3群: PBS (皮下注射) 0. 1mlノ匹、 0.5mlZ匹
(3) 実験方法
3時間絶食時の血糖値が 400mg/ dl前後の STZ投与 C57BL/ 6 マウスを 18 時間絶食し、 空腹時血糖を測定した後に、 ダルコ一ス (2g/kg BW) の経口投与 を胃ゾンデで行った。 各サンプルの投与は、 18 時間の絶食後に、 それぞれのマ ウスに経口あるいは皮下で行った。
血糖値は、 マウスの眼窪静脈叢からキヤピラリーを用いて採血を行い、 グルテ ストェ一ス (GT- 1640 三和化学研究所製) によって測定した。 糖負荷 30 分後 に血糖値を測定して上昇したことを確認し、 サンプルを投与した。 その直後 (実 際上は約 5分後) 、 25、 50、 80分後に 0.2ml の採血を行い、 遠心分離して血 漿を得た。 得られた血漿を用いて Insulin の ELISA を行い、 血中濃度を算出し た。
(4) 結果
結果は図 13に示したとおりである。 すなわち、 NK +Insulinの経口投与 (第 1 群) では、 投与量 20 gZ匹 (1.2mg/kg) で、 コント口一ルとなる PBS 単 独 (第 3 群) に比較して統計学的に有意なインスリン誘導が投与後に観察され た。 同じく皮下投与 (第 2 群) でも、 NK+Insulin の投与量 20 ^ δ /匹
( l .2mg/kg) で統計学的に有意なインスリン誘導が投与後に観察された。 なお、 図 13 に示していない PBS皮下注射 (第 3群) の血中ィンスリン量はいずれの 個体も 24pg/nil以下であった。
(5) 考察
1.2mg/kg の NK+ Insulin 融合ポリペプチドの 1回の経口あるいは皮下注射 投与で統計学的に有意なィンスリンの血中での濃度維持が確認された。 使用した 融合ポリペプチドの内、 Insulin 分は約 1 /4 であり、 0.3mg/kg に相当する。 これは十分臨床応用可能な投与量であり、 かつ投与 4 時間後にも有意な血中ィ ンスリン濃度が持続した。 この作用の持続時間は、 Insulin の皮下注射の血糖降 下作用よりも優れている。 また血中濃度の変化も、 投与量が経口投与と同じ皮下 注射と比較して、 決して劣るものではなかった。
ただ、 皮下注射の場合であっても、 1.2mg/kg投与後の最高血中濃度が平均で も 0.4ng/ml であったことから、 比較的低濃度 (1.0 ng/ml 以下) のインスリ ンでも濃度維持ができれば、 血糖が低下することを示唆している。
以上の結果は、 NK + Insulin 融合ポリペプチドの経口投与によってインスリ ンが非常に効率よく消化管から吸収されているだけでなく、 血中でも活性を失わ なかった可能性を示唆している。 この融合ポリぺプチドではむしろ経口投与の方 が、 活性が高いものを持続して標的臓器である脂肪組織、 筋肉、 肝臓などに届け られる可能性が示唆された。
いずれにしても、 この融合ポリペプチドによる DDS としての可能性は非常に 大きいことが確認された。 消化管での消化の影響は比較的小さく、 かっ血中での 分解代謝にもかかわらず、 標的臓器である脂肪組織、 筋肉、 肝臓などでの活性を 十分発揮できる濃度と活性持続時間が確認された。 .
実施例 9
NK+Adiponectinの経口投与 ( 1) 融合ポリペプチドの調製
実施例 6 と同様のキャリア NK cDNA を調製した。 pQE-TriSystem His - Strep 1 vector (Qiagen社) の Smal/BamHサイトにキャリア NK cDNAを組 み込み、 大腸菌用のキャリアー NK 発現ベクターを構築した。 またキャリア NK cDNAの下流 (pQEベクタ一の BamHI/EcoRIサイ ト) にマウス Adiponectin cDNA を組み込み、 大腸菌用の NK+Adiponectin 発現べクタ一を作成した。 N +Adiponectin をコードする融合ポリヌクレオチドの配列は配列番号 9 のと おりである。 なお、 配列番号 9において、 5'端の Ser-Arg-Glu をコードする塩 基配列は pQEベクタ一の Smalサイトの配列であり、 3'端の Asp-Pro-Asn-Ser をコードする配列は pQE ベクタ一の EcoRI サイトの配列である。 さらに、 第 31 1〜313位の Val-Asp-Proをコードする配列は pQEベクタ一由来の配列であ る。
作成したベクタ一から、 実施例 6 と同様にして NK + Insulin融合ポリべプチ ドを調製した。
(2) 実験群
C57BL db/dbマウス (6週齢、 雄性、 クレアより購入) を各群 4匹とし、 4 週間の予備飼育後、 10 週齢で絶食後血糖値を検討した後、 以下の各サンプルを 投与した。 なお、 投与サンプルには BSA(bovine serum albumin)を lOOmg/ml となるように加えた。 各サンプルのタンパク質量は、 BSA を対照と して吸光度計で測定した。 第 1群: NK+Adiponectin (経口) 25 g 0.2ml/ IS 1 / 1
第 2群: NK+Adiponectin (経口) 2.5 g/0.2mlZ'匹. 1 / 10
第 3群: Adiponectin (経口) SS gZO'.SmI/匹 1 1 第 4群:キャリア NK (経口) SS gZO mlZ匹、 1/ 1
(3) 実験方法
(3- 1) 予備実験
血糖値 400mg/ml前後の 8週齢の上記 C57BL db/dbマウスに対し、 絶食 3時間後に血糖測定と採血を行い、 そのまま 18時間まで絶食を続けた後に 1回
めのサンプル投与を行った。 翌日、 翌々日にも同時刻にサンプルの投与を行い、 計 3 回の投与の効果を、 再び 3 時間絶食後の血糖値を測定することによって検 討した。
(3-2) 投与後経時変化実験
上記の血糖変化を検討し終った C57BL db/db マウスを 18 時間絶食し、 空 腹時血糖を測定した後に、 グルコース (2g/kg BW) の経口投与を胃ゾンデで行 つた。 各サンプルの投与は、 18 時間の絶食後に、 それぞれのマウスに経口ある いは皮下で行った。
血糖値はマウスの眼か静脈叢からキヤビラリ一を用いて採血を行い、 グルテス トエース (GT- 1640 三和化学研究所製) によって測定した。 糖負荷 30 分後に 血糖値を測定して上昇したことを確認し、 合成タンパクを経口投与した。 その後 1、 2、 4時間後に血糖値測定を行った。
(4) 結果
結果は図 14 に示したとおりである。 経口投与後の時間経過観察実験では、 NK + Adiponectinの投与量 25 g/匹 (625 g/kg) (第 1群) では統計学的 に有意な血糖降下作用が確認できたが、 2.5 gZ匹 (62.5 /_i g/kg) (第 2 群) では有意の効果が認められなかった。 また、 キャリア NK 単独 (第 4 群) でも、 20 ^ g/匹 (500 g/kg) では、 採血の影響および BSA による作用か、 統計学 的有意差がなかったが、 若干の血糖降下傾向があった。 さらに、 コントロール (第 4群) でも、 投与後に若干の血糖降下傾向があった。
(5) 考察
0.625mg/kgの NK+ Adiponectin融合ポリべプチドの経口投与では 4回目の 投与 1 時間後に統計学的に有意な血糖降下活性が確認できたが、 1 / 10 量の 62.5 g/kg の経口投与では統計学的に有意な生理活性が確認できなかった。 ま た、 キャリア一 NK 単独 500 ^ g/kg の 1回の経口投与では、 若干の傾向は認め たものの、 有意の血糖降下作用を観察できなかった。 使用した融合ポリペプチド' の内、 Adiponectin 分は約 1 / 2 であり、 約 300 ^ g/kg に相当する。 これは十 二分に臨床応用可能な投与量である。 食直後の血糖の上昇を抑制する意味は小さ
くないと考えられる。
いずれにしても、 この融合ポリペプチドによる DDS としての可能性は非常に 大きいことが確認された。 消化管での消化の影響は比較的小さく、 標的臓器であ る脂肪組織、 筋肉、 肝臓などでの活性を十分発揮できる濃度が確認され t ら。 た だ、 今回の 2型糖尿病モデル動物 C57BL db/dbマウスは、 10週齢に達したば かりで、 比較的軽症であったと考えられる。 特に、 我が国では糖尿病患者の約 95 %がインスリ ン抵抗性が原因とされる 2型糖尿病であるとされている。 Adiponectin は、 この 2型糖尿病に特効があるとされ、 インスリン抵抗性の改 善作用が知られている。 これの経口投与の可能性が、 生理活性とともに示された 意義は極めて大きい。
産業上の利用可能性 この出願の発明により、 疾患治療に有効な生理活性ポリぺプチドの経口投与に よって生体内に投与することが可能となる。 また消化分解されにくく、 かつ吸収 がよいことの結果として、 血中への移行効率が高いことも大きな意味を持つ。 新 規な有用タンパク質の適用範囲の可能性を増すだけでなく、 医療コス卜の消滅、 廃棄物処理コストの削減などを介して、 結果として省エネルギーにもつながり、 また自然界に注射の容器、 シリンジ内に残留した活性タンパク質を放散すること の危険性をも小さくできる。
また、 血中移行の効率あるいは薬効から考えて、 消化器官吸収性ポリペプチド のアミノ酸配列により標的臓器病態が異なる可能性が高いことなど、 全く新規の DDS としての可能性があることも含めて、 この発明は産業上大きな意義を有す る。