WO2004091292A1 - 食害昆虫発生有無判定方法及び昆虫捕獲装置 - Google Patents

Abstract

保管設備内に保管されている判定対象の穀物類中に、該穀物類を食害する食害昆虫が発生しているか否かを判定する食害昆虫発生有無判定方法である。この方法は、食害昆虫を捕獲する昆虫捕獲装置を保管設備内に配設し、所定の期間放置する第１ステップと、第１ステップの後、昆虫捕獲装置における食害昆虫の捕獲状況に基づいて穀物類中に食害昆虫が発生しているか否かを判定する第２ステップと、を備える。昆虫捕獲装置は、水又は油を透過させない台座と、台座の一方の面上に配置されており、水又は油を保持することが可能な多孔質基材と、多孔質基材に保持された水又は油と、を有する昆虫捕獲装置である。

Description

明糸田

食害昆虫発生有無判定方法及び昆虫捕獲装置 技術分野

【0 0 0 1〗 本発明は保管設備内に保管されている穀物類における食害昆虫類 の発生の有無を判定する方法に関する。

背景技術

【0 0 0 2〗 サイロ、 保管倉庫等の保管設備に保管された米 '小麦 ·大麦'大豆' 小豆'粟 'ヒェ等の穀物及び麦芽、 並びにそれらの粉砕物 (以下これらを総称して 「穀物類」 という） にはこれらを食害する昆虫（例えばコクヌスッ トモドキ 'コク ゾゥムシ .バクガ等、 以下「食害昆虫」 という）が発生することがあり、 食害昆虫 が発生している場合には出荷前に駆除作業を行う必要がある。 従来、 食害昆虫が 発生しているか否かを穀物類の出荷前に判定する方法としては、 熟練した技術者 が肉眼により直接穀物類を観察する方法しかなかった。

発明の開示

【0 0 0 3】 しかしながら、 上記従来の判定方法によれば、 袋詰めの状態で保 管設備に保管された穀物類については、 袋を開けて肉眼で確認するという作業を 多くのランダムサンプルについて行う必要があるため、 時間と労力を要した。 ま た、 サイロに保管された穀物類については、 高所 （例えば、 地上から約 3 0 m) にあるサイロの入口から技術者がサイロ内部に懸垂降下し、 積まれた保管穀物類 の表面まで降りて穀物類を観察するという危険な作業が必要であった。 さらに、 これら従来の判定方法では、 技術者が個人の経験に頼り観察 ·判断を行っていた ので判定の正確性を担保することが困難であった。

【0 0 0 4】 そこで、 本発明は上記問題点を解決し、 保管設備に保管された穀 物類に食害昆虫が発生しているか否かを簡易且つ正確に判定することが可能な方 法、 並びにその方法を実施するために有効な昆虫捕獲装置を提供することを目的 とする。 【0 0 0 5】 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討をおこなった際に、 先ず昆虫を誘引して捕獲する昆虫捕獲装置の利用に着目した。 しかしながら、 フ ェロモン等の誘引物質によって昆虫を誘引し、 粘着剤によつて捕獲する市販の昆 虫捕獲装置は、 誘引物質や粘着剤として人体等に対する有害化学物質を含む場合 があり、穀物類の保管設備内において用 、るのは食品衛生上問題があった。また、 粘着剤を利用した昆虫捕獲装置を穀物類の保管設備内で用いると、 穀物類の粉等 が粘着剤に付着し、 短時間で粘着性を喪失して役に立たなくなってしまうという 問題もあった。

【0 0 0 6】 そこで、 本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、 穀物の保管 設備.内においては、 意外にも水や油によって食害昆虫が誘引され、 それらを保持 した多孔質基材中に棲み付くため、 水や油を含ませた多孔質基材が昆虫捕獲装置 として十分に機能し、 しかも食品衛生上の問題や粘着性喪失といった問題が無い ことを見出し、 本発明を完成するに至った。

【0 0 0 7】 すなわち、 本発明の食害昆虫発生有無判定方法は、 保管設備内に 保管されている判定対象の穀物類中に、 該穀物類を食害する食害昆虫が発生して いるか否かを判定する食害昆虫発生有無判定方法であって、 食害昆虫を捕獲する 昆虫捕獲装置を保管設備内に配設し、 所定の期間放置する第 1ステップと、 第 1 ステップの後、 昆虫捕獲装置における食害昆虫の捕獲状況に基づいて穀物類中に 食害昆虫が発生しているか否かを判定する第 2ステップと、 を備え、 昆虫捕獲装 置は、 水又は油を透過させない台座と、 台座の一方の面上に配置されており、 水 又は油を保持することが可能な多孔質基材と、 多孔質基材に保持された水又は油 と、 を有する昆虫捕獲装置であることを特徴とする。

【0 0 0 8】 また、 本発明の昆虫捕獲装置は、 穀物類を食害する食害昆虫を捕 獲する。 この装置は、 水又は油を透過させない台座と、 台座の一方の面上に配置 されており、 水又は油を保持することが可能な多孔質基材と、 を備えたことを特 徴とする。 【0 0 0 9】 穀物類が保管される保管設備は、非常に乾燥した環境であるので、 保管設備に保管された穀物類中の食害昆虫を誘引するためには、 特殊な誘引物質

(例えばフェロモン等) は何ら必要ではなく、 例えば水又は油を含ませた多孔質 基材であれば充分に食害昆虫の誘引が可能である。 よって、 上記食害昆虫発生有 無判定方法によれば、 保管設備内に所定の期間放置した昆虫捕獲装置を観察する ことにより水又は油に誘引された食害昆虫発生の有無を判定できるので、 穀物類 を直接観察する方法よりも手間を省略することができ、正確な判定が可能となる。 また、 一旦誘引された食害昆虫は多孔質基材中に棲み付くため、 粘着性の昆虫捕 獲装置にて接着するまでもなく捕獲及び存在の確 が可能である。 よって、 上記 昆虫捕獲装置を保管設備内で用いたとしても粘着性喪失という問題が起きない。 さらに、 水又は油を誘引物質として用い、 粘着剤を用いることがないため、 食品 衛生上の問題も発生しない。

【0 0 1 0】 上記昆虫捕獲装置は、 水又は油を透過させない台座を備えている ので、 穀物類や穀物類が詰められた保管袋に当接させて設置しても、 水又は油が 穀物類に直接接触することを防止できる。 このため、 穀物類あるいは穀物類に力 ビが発生したり穀物類が発芽してしまったりすることを防止することができる。 【0 0 1 1】 また、 本発明において、 判定対象となる穀物類としては、 織布製 又は不織布製の保管袋に詰められて保管設備内に保管されている穀物類が挙げら れ、 その場合の第 1ステップにおいては、 台座の他方の面が保管袋に向き合うよ うにして、 昆虫捕獲装置を保管袋上に載置し、 所定の期間放置することが好まし レ、。

【0 0 1 2】 このようにすると、 水又は油が穀物類に直接接触することを防止 でき、 穀物類に力ビが発生したり穀物類が発芽してしまったりすることを防止す ることができる。 さらに、 多孔質基材が穀物類に直接接触していなくても当該保 管袋中の穀物類に棲息する食害昆虫が袋の織目又は封印部分の隙間をすり抜けて 昆虫捕獲装置の多孔質基材に棲み付く。 よって、 この方法によれば保管袋を開封 することなく食害昆虫発生有無を判定することができる。

【0 0 1 3】 また、 本発明においては、 判定対象となる穀物類として、 サイロ 内に保管されている穀物類が挙げられ、 その場合の第 1ステップにおいては、 台 座の他方の面が穀物類に向き合うようにして、昆虫捕獲装置を穀物類上に載置し、 所定の期間放置することが好ましい。

【0 0 1 4】 このようにすると、 サイロ内に積まれた穀物類表面に昆虫捕獲装 置を設置し後に回収すればよい。 よって、 この食害昆虫発生有無判定方法によれ ば、 技術者がサイロ内部に入る必要がなく、 危険な作業が必要なくなる。

【0 0 1 5】 本発明は以下の詳細な説明おょぴ添付図面によりさらに十分に理 解可能となる。 これらは単に例示のために示されるものであって、 本発明を限定 するものと考えるべきではない。

図面の簡単な説明

図 1は、 食害昆虫発生有無判定方法の工程を示すフロー図である。

図 2は、 食害昆虫発生有無判定方法における昆虫捕獲装置の設置形態の一例を 説明するための模式斜視図である。

図 3 Aは食害昆虫発生有無判定方法における昆虫捕獲装置の設置工程及び回収 工程の一例を説明するための模式断面図である。

図 3 Bは昆虫捕獲装置の設置形態の一例を説明するための模式断面図である。 図 4 Aは昆虫捕獲装置の斜視図であり、 図 4 Bはその分解斜視図である。

図 5 Aは昆虫捕獲装置の本体部の平面図であり、図 5 Bはその V-V断面図である 発明を実施するための最良の形態

【0 0 1 6】 以下、 添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明す る。 なお、 図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、 重複する説明 を省略する。 また、 図示の便宜上、 図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致 しない。 【0 0 1 7】 本発明において、 穀物類とは、 米'小麦'大麦 '大豆'小豆'粟 'ヒェ 等の狭義の穀物のみならず、 麦芽、 更にそれらの粉砕物をも含む。 また、 保管設 備とは穀物類を保管する建造物 ·施設をいい、 保管倉庫、 サイロ等がこれに含ま れる。 食害昆虫とは穀物類を食害する昆虫であり、 コクヌスットモドキ ' コクゾ ゥムシ ·バクガ等がこれに含まれる。

(第 1実施形態）

[ 0 0 1 8 ] 本発明の第 1実施形態について図 1、 図 2を参照しながら説明す る。 図 1は本実施形態の食害昆虫発生有無判定方法の工程を示すフロー図である 。 図 2は本実施形態の食害昆虫発生有無判定方法における昆虫捕獲装置 5 0の設 置形態を説明する図である。 本実施形態においては、 図 2に示すように、 判定の 対象となる穀物類 2は保管袋 5に詰められ、 保管袋 5はパレツト 3上に積み上げ られ、 穀物保管倉庫 （保管設備） に保管されている。 本実施形態の食害昆虫発生 有無判定方法は、 このような形態で保管されている穀物類 2に食害昆虫が発生し ているか否かを判定する判定方法である。 保管袋 5としては織布製の袋 （例えば 麻を編んだ麻袋、 プラスチック （例えば、 ポリエチレン、 ポリプロピレン等） を 編んだ袋)、 不織布製の袋 （例えば紙袋） 等が挙げられる。

【0 0 1 9】 まず、 保管倉庫内において、 穀物類 2が詰められた保管袋 5に当 接するように後述する昆虫捕獲装置 5 0を置き （図 2参照）、所定の期間放置する ( S 1 0 2 )。昆虫捕獲装置 5 0は多孔質基材 5 3及び多孔質基材 5 3を保持する 台座 （図 5 A, 5 Bの 5 1 ) を有し、 多孔質基材 5 3には食害昆虫の誘引物質と しての水又は油が含浸されている。 多孔質基材 5 3は昆虫捕獲装置 5 0にセット され、 保管袋 5には直接に接しないようになつている。 昆虫捕獲装置 5 0の詳細 ついては後述する。 所定の期間としては昆虫捕獲装置 5 0の多孔質基材 5 3が完 全に乾燥しない程度の期間を設定し、 例えば 1〜7日間程度とする。 多孔質基材 5 3に含浸せしめる水には溶質を溶かし、 水溶液としてもよい。 水溶液としては 例えばブドウ糖水溶液、 果糖水溶液、 麦芽糖水溶液、 砂糖水溶液、 転化糖水溶液 ―

、 麦芽エキス水溶液、 麦芽熱水抽出物水溶液、 キシリ トール水溶液 'マンニトー ル水溶液等が用いられる。 中でも、 キシリ トール水溶液、 マンニトール水溶液は 蒸発しにくいため多孔質基材 5 3が乾燥しにくく、 放置期間を長く設定すること ができるため好ましい。 油としては例えば、 食用油、 機械用油等が用いられる。 上記水溶液又は油は 2種類以上を適宜混合して用いることもできる。 なお、 この 工程 S 1 0 2が上記の第 1ステップに相当する。

【0 0 2 0〗 次に、 昆虫捕獲装置 5 0を回収し （S 1 0 4 )、 昆虫捕獲装置 5 0 を観察する （S 1 0 6 )。 例えば、 多孔質基材 5 3と台座 5 1との間、 多孔質基材 5 3の表面、 又は多孔質基材 5 3の細孔の隙間等を目視で確認し、 食害昆虫が存 在するか否かを確認する （S 1 0 8 )。 ここで、食害昆虫が 1匹でも発見された場 合にはパレツト 3上の穀物類 2に食害昆虫が発生していると判定する （S 1 1 0 ；)。ここで、発見される食害昆虫は生きているものであっても屍骸であってもよい 。 食害昆虫が発生していると判定された場合には例えば燻蒸処理等の食害昆虫駆 除作業を行う （S 1 1 2 )。 S 1 0 8の確認によって食害昆虫が 1匹も発見されな かった場合には食害昆虫は発生していないと判定する。 なお、 工程 S 1 0 6、 S 1 0 8、 S 1 1 0、 S 1 1 4が上記の第 2ステップに相当する。

【0 0 2 1】 上記食害昆虫発生有無判定方法によれば、 穀物類 2中に食害昆虫 が発生している場合には、 食害昆虫が昆虫捕獲装置 5 0の多孔質基材 5 3に含ま れる水又は油に誘引される。 誘引された食害昆虫は保管袋 5の織目又は封印部分 の隙間を抜けて袋の外に出て、 多孔質基材 5 3に迪り着く。 迪り着いた食害昆虫 は多孔質基材 5 3が完全に乾燥するまでは多孔質基材 5 3の表面又は内部に棲み 付く。 よって、 多孔質基材 5 3が完全に乾燥する前に昆虫捕獲装置 5 0を回収し 、 昆虫が多孔質基材 5 3に発見できるか否かを確認することによって穀物類 2中 に食害昆虫が発生しているか否かを判定することができる。 また、 誘引された食 害昆虫は保管袋 5の織目又は封印部分の隙間を抜けて袋の外に出てくるので袋を 開封することなく食害昆虫発生の有無を判定することができる。 【0 0 2 2】 上記食害昆虫発生有無判定方法では、 誘引物質として水または油 を用いているので、 食品衛生上の問題も少なく、 食品の保管設備において好適に 使用可能である。 また、 上記食害昆虫発生有無判定方法では比較的入手容易な水 又は油を用いることができるので、 簡便に判定が可能である。 また、 上記食害昆 虫発生有無判定方法の昆虫捕獲装置 5 0は粉塵の多い穀物類保管設備内で使用し ても粘着性のトラップと異なり、 粉塵によつて機能が失われることが少ないので 好適に使用可能である。

【0 0 2 3】 また、 上記食害昆虫発生有無判定方法では、 多孔質基材 5 3が昆 虫捕獲装置 5 0にセットされ、 保管袋 5には直接に接しないようになつている。 従って、 多孔質基材 5 3に含まれた水又は油が保管袋 5に浸透し、 保管袋 5に保 管された穀物類 2に触れることを防止することができ、 穀物類 2がカビを生じた り、 発芽してしまったりすることを防止することができる。

(第 2実施形態）

【0 0 2 4】 本発明の第 2実施形態について図 1、 図 3 A， 3 Bを参照しなが ら説明する。 本実施形態においては、 穀物類 1 1はサイロ 1 3の中に粒状のまま 保管されている。 本実施形態の食害昆虫発生有無判定方法は、 このようにサイロ に粒状で保存されたな形態で^:管されている穀物類に食害昆虫が発生しているか 否かを判定する判定方法である。

【0 0 2 5】 本実施形態の食害昆虫発生有無判定方法においては、 第 1実施形 態と同様に図 1に示すフローに従って作業を行う。 本実施形態と第 1実施形態と の相違点は、 昆虫捕獲装置 5 0の構成、 昆虫捕獲装置 5 0の設置 （S 1 0 2 ) の 工程及び回収 （S 1 0 4 ) の工程にある。

【0 0 2 6】 昆虫捕獲装置 5 0の設置 （S 1 0 2 ) 及び昆虫捕獲装置 5 0の回 収 ( S 1 0 4 ) について、 図 3 A， 3 Bを参照しつつ説明する。 本実施形態にお いて、 昆虫捕獲装置 5 0は本体部分 5 2及ぴ吊下部材 5 5を有しており、 本体部 分 5 2は吊下部材 5 5によって自重により吊下げられるようになつている。 吊下 部材 5 5としては例えばロープ、 紐、 くさり等が用いられる。

【0 0 2 7】 まず、 昆虫捕獲装置 5 0の本体部分 5 2をサイロ入口 1 3 aから サイロ内部へ吊り下げ、 保管された穀物類の表面 1 1 aに着くまで降下させる ( 図 3 A参照）。吊下部材 5 5の一端 5 5 aはサイロ内部へ落ち込まないようにサイ 口入口 1 3 aの付近へ固定する。 この状態 （図 3 B参照） で所定の期間放置する

( S 1 0 2 )。所定の期間の後、 吊下部材 5 5の一端 5 5 aを引っ張り、本体部分

5 2を手繰りよせ、 サイロ入口 1 3 aから本体部分 5 2を回収する ( S 1 0 4 )

【0 0 2 8】 上記食害昆虫発生有無判定方法では、 吊下部材 5 5を有する昆虫 捕獲装置 5 0を用い、 サイロ入口 1 3 aから吊下部材 5 5によって本体部分 5 2 をサイロ内部に設置し、 またサイロ入口 1 3 aから吊下部材 5 5によって本体部 分 5 2を回収することとしている。 よって、 上記食害昆虫発生有無判定方法によ れば、 技術者がサイロ内部に懸垂降下し、 積まれた保管穀物類の表面 1 1 aまで 降りるという危険な作業が必要なくなり、 安全な判定作業が可能となる。

【0 0 2 9】 また、 上記食害昆虫発生有無判定方法によれば、 昆虫捕獲装置 5 0を観察することにより食害昆虫発生有無を判定することとしているので、 サイ 口内部での作業が不要となる。 また、 サイロ内部での作業が不要となり、 昆虫捕 獲装置 5 0中の食害昆虫の有無のみで食害昆虫発生有無が判定可能であるので、 熟練の技術者でない者であっても正確な判定が可能となる。

【0 0 3 0】 続いて、 上記第 1実施形態及び第 2実施形態に用いられる昆虫捕 獲装置 5 0について説明する。 図 4 Aは昆虫捕獲装置 5 0の斜視図、 図 4 Bはそ の分解斜視図である。 昆虫捕獲装置 5 0は本体部分 5 2と吊下部材 5 5を有して おり、 本体部分 5 2は台座 5 1、 多孔質基材 5 3、 網状部材 5 7、 及び重り 5 9 を有している。 なお、 第 1実施形態に用いられる昆虫捕獲装置 5 0では、 吊下部 材 5 5及ぴ重り 5 9は必須ではない。 使用状態において昆虫捕獲装置 5 0は、 設 置面 （図 5 Bの 6 1 ) と反対側の面 （図 5 Bの 6 2 ) が保管袋 5又は榖物類 1 1 に向き合うようにして、 保管袋 5又は穀物類 1 1上に載置される。 すなわち、 使 用状態においては、 多孔質基材 5 3と、 保管袋 5又は穀物類 1 1との間に台座 5 1が挟まれるように配置される。

【0 0 3 1〗 図 5 Aは本体部 5 2の平面図、図 5 Bは本体部 5 2の V- V断面図で ある。 台座 5 1は水又は油を透過させない部材からなり、 略正方形の板状で器状 に形成されている。 台座 5 1の内部空間に設けられた設置面 6 1に多孔質基材 5 3を取り外し可能に設置できるようになっている。 台座 5 1の周縁部は多孔質基 材 5 3を収容しやすいように折り返し部分 6 3が設けられている。 折り返し部分 6 3は台座の内部空間へ向かって傾斜が付けられており、 捕獲された昆虫が容易 に外へ出られないようになつている。 台座 5 1の寸法は例えば、 縦 2 3 5 mm, 横 2 3 5 mm、 深さ 1 5 mmである。

【0 0 3 2】 多孔質基材 5 3は台座 5 1の内部空間に収容され、 設置面 6 1上 に設置されている。 多孔質基材 5 3は水又は油を含浸し、 含浸された水又は油を 保持することができる。 多孔質基材 5 3としては例えば、 多孔質材料 （スポンジ 等）、 織布 （木綿布等）、 不織布等が用いられる。 多孔質基材 5 3は台座 5 1とほ ぼ同じ寸法で、 例えば略正方形状に形成されている。

【0 0 3 3】 網状部材 5 7は台座 5 1の設置面 6 1側に着脱可能に固定されて いる。 設置面 6 1と網状部材 5 7との間に挟まれる位置に多孔質基材 5 3が設置 されるようになつており、 網状部材 5 7は多孔質基材 5 3を覆うように設置され ている。 網状部材 5 7の材質としては例えば金属、 プラスチック等が用いられる 。 網目のサイズは特に限定されず、 多孔質基材 5 3が台座 5 1から離れ落ちてし まうのを防止でき、 かつ、 食害昆虫が網目を抜け、 多孔質基材 5 3に到達できる サイズを選択する。

【0 0 3 4】 重り 5 9は台座 5 1の設置面 6 1と反対側の面 6 2に設置されて いる。 重り 5 9は、 台座 5 1に比較して重量が大きくなっている。 このことによ つて、 昆虫捕獲装置 5 0を穀物類の表面 1 1 a上であっても安定して設置するこ とができ、 設置面 6 1を上に向けて安定して設置することができる。 また、 重り 5 9は台座 5 1とほぼ同じ寸法で、 例えば略正方形状に形成されている。

【0 0 3 5〗 再び図 4 A , 4 Bを参照する。 吊下部材 5 5の一端 5 5 bは 4つ に分かれて台座 5 1につながれ、 台座 5 1の 4つの各頂点部分を介して本体部分 5 2を吊り下げることができる。 吊下部材 5 5のもう一方の端 5 5 aは自由端と なっている。 吊下部材 5 5の長さは、 サイロ入口 1 3 aから本体部分を吊り降ろ しサイロに保管された穀物類 1 1の表面 1 1 aに到達させる長さが必要である。 すなわち、 吊下部材 5 5の長さは、 最長でサイロ 1 3の高さと同じ長さが必要で ある。

【0 0 3 6】 上記昆虫捕獲装置 5 0によれば、 台座 5 1の内部空間の設置面 6 1上に多孔質基材 5 3が収容されている。 よって、 設置面 6 1と反対側の面 6 2 が保管袋 5又は穀物類 1 1と向き合うようにして使用することによって、 多孔質 基材 5 3が保管袋 5又は穀物類 1 1と直接に接触することがない。 従って、 保管 袋 5中の穀物類 2又は穀物類 1 1が多孔質基材 5 3に含浸せしめた水又は油に触 れて、 カビを生じたり、 発芽してしまったりすることを防止することができる。 【0 0 3 7】 なお、 本発明は上記した実施形態に限定されることなく種々の変 形が可能である。 例えば、 上記第 1実施形態及び第 2実施形態では多孔質基材 5 3に含浸せしめた水又は油を食害昆虫の誘引物質として用いたが、 麦芽粉砕物、 大麦粉砕物、 小麦粉砕物、 米粉砕物、 でんぷん等の粉状物質を前記水又は油と共 に誘引物質として用いてもよい。 上記のような粉状物質を用いる場合は粉状物自 体に水分を含ませるよう、 水を含んだ多孔質材料 5 3の上に散布する。

(実施例）

【0 0 3 8】 以下、 実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、 本発 明は以下の実施例に限定されるものではな 、。

〖0 0 3 9】 穀物類保管倉庫において、 水、 麦芽エキス、 ブドウ糖、 食用オイ ル、 でんぷんを誘引物質として捕獲された食害昆虫の頭数を確認し、 表 1に誘引 物質と食害昆虫の捕獲頭数との関係を示した。 用いた穀物類は、 サイロに保管さ れた大麦であり、 2年間通常保管したものを用いた。 食害昆虫の捕獲は、 図 4 A ， 4 B及び図 5 A, 5 Bに示すような上記実施形態の構成を有する昆虫捕獲装置 を用いて行った。 用いた昆虫捕獲装置の台座の寸法は、 縦 2 3 5 mm, 横 2 3 5 mm、 深さ 1 5 mmとした。 また、 多孔質基材としては縦 2 2 O mm、 横 2 2 0 mm、 厚さ 5 mmの木綿布を用いた。 昆虫捕獲装置を設置する期間は 3日間とし た。 下表の水、 各水溶液、 又は油はそれぞれ 2 0 0 m lを木綿布に含浸せしめて 昆虫捕獲装置にセットした。 でんぷんについては、 水と混合した濃度 1 0 %の懸 濁液を調製し、 木綿布の上に 2 0 O m 1散布した。 また、 比較のために乾燥した 木綿布のみを昆虫捕獲装置にセットして昆虫捕獲を行った結果を同表に示した。 なお、 食害昆虫の頭数は、 昆虫捕獲装置に捕獲されたコクヌスッ トモ ドキ ·コク ゾゥムシ 'バタガの頭数を合計したものとした。

表 1 . 誘引物質の違いによる害虫捕獲頭数の変動

【0 0 4 0】 上記結果より、 水、 麦芽エキス、 ブドウ糖、 食用オイル、 でんぷ んを誘引物質として用いた昆虫捕獲装置は、 乾燥した木綿布を用いた昆虫捕獲装 置よりも明らかに誘引力が強いことが確認できた。 また、 水であっても、 その他 の誘引物質と有意差なく昆虫を誘引していることが判り、 食害昆虫を誘引する誘 引物質としては水又は油が含まれていれば充分であることが確認できた。

【0 0 4 1】 以上の本発明の説明から、 本発明を様々に変形しうることは明ら かである。 そのような変形は、 本発明の思想および範囲から逸脱するものとは認 めることはできず、 すべての当業者にとって自明である改良は、 以下の請求の範 囲に含まれるものである。

産業上の利用可能性 【0 0 4 2】 本発明によれば、 保管設備に保管された穀物類に食害昆虫が発生 しているか否かを簡易且つ正確に判定することが可能な方法、 並びにその方法を 実施するために有効な昆虫捕獲装置を提供することができる。

Claims

請求の範囲

1 . 保管設備内に保管されている判定対象の穀物類中に、 該穀物類を食害す る食害昆虫が発生しているか否かを判定する食害昆虫発生有無判定方法であって、 前記食害昆虫を捕獲する昆虫捕獲装置を前記保管設備内に配設し、 所定の期間 放置する第 1ステップと、

前記第 1ステップの後、 前記昆虫捕獲装置における食害昆虫の捕獲状況に基づ Vヽて前記穀物類中に食害昆虫が発生しているか否かを判定する第 2ステップと、 を備え、

前記昆虫捕獲装置は、

水又は油を透過させない台座と、

前記台座の一方の面上に配置されており、 水又は油を保持することが可能な多 孔質基材と、

前記多孔質基材に保持された水又は油と、 を有する昆虫捕獲装置である ことを特徴とする食害昆虫発生有無判定方法。

2 . 前記判定対象の穀物類は、 織布製又は不織布製の保管袋に詰められて前 記保管設備内に保管されている穀物類であり、

前記第 1ステップにおいて、 前記台座の他方の面が前記保管袋に向き合うよう にして、 前記昆虫捕獲装置を前記保管袋上に載置し、 所定の期間放置することを 特徴とする請求項 1に記載の食害昆虫発生有無判定方法。

3 . 前記判定対象の穀物類は、 サイロ内に保管されている穀物類であり、 前記第 1ステップにおいて、 前記台座の他方の面が前記穀物類に向き合うよう にして、 前記昆虫捕獲装置を前記穀物類上に載置し、 所定の期間放置することを 特徴とする請求項 1に記載の食害昆虫発生有無判定方法。

4 . 穀物類を食害する食害昆虫を捕獲する昆虫捕獲装置であって、

水又は油を透過させない台座と、

前記台座の一方の面上に配置されており、 水又は油を保持することが可能な多 孔質基材と、

を備えたことを特徴とする昆虫捕獲装置。