アディポネクチン受容体及びそれをコードする遺伝子
技術分野
本発明は、 アディポネクチン結合能を有する新規タンパク質、 該タン パク質をコードする遺伝子、 該遺伝子を含む組換えベクター、 該組換え 明
ベクターを含む形質転換体、 及び上記タンパク質に対する抗体又はその 断片に関する。 さらに、 本発明は、 アディポネクチン受容体に対するリ 書
ガンド、 ァゴュス ト又はアンタゴニス トのスタ リ一二ング方法及びスク リ一ユング用キットに関する。
背景技術
肥満は、 脂肪組織量の増加として定義され、 糖尿病、 高脂血症、 冠動 脈性心疾患等の心臓血管疾患及び代謝疾患の高リスクと関連する (Reav en, G. M. Diabetologia 38, 3 - 13. (1995); Spiegelman, B. M.ら, Cell 87, 377-389. (1996) )。 肥満及び 2型糖尿病の顕著な特徴であるダルコ ース及び脂質の代謝異常は、 筋肉、 肝臓等のインスリ ン標的組織におけ る脂質蓄積量の増加の原因となり、 インスリ ン抵抗性を引き起こす (Ru derman, N. B.ら, Am. J. Physiol. 276, E1-E18. (1999); Shulman, G. I. J. Cl in. Invest. 106, 171-176. (2000) )。脂肪組織は、エネルギー 要求の変化に応答してトリグリセリ ド (TG) を蓄積するとともに遊離脂 肪酸 (FFA) Zグリセロールを放出する部位としての役割を果たす (Spi egelman, B. M. , and Fl ier, J. S. Cel l 87, 377-389. (1996) )。 また、 脂肪組織は、 FFA (Shulman, G. I. J. Cl in. Invest. 106, 171-176. (2 000) )、 アディプシン (White, R. T.ら, J. Biol. Chera. 267, 9210 - 921
3. (1992))、 レプチン (Friedman, J. M. Nature 404, 632-634. (2000)
)、 プラスミ ノーゲンァクチべ一ターインヒ ビタ 1 1 (PAI-1) (Shimo mura, I.ら, Nat. Med. 2, 800 - 803. (1996))、 レジスチン (Steppan, C. M. ら, Nature 409, 307-312. (2001))、 腫瘍壌死因子ひ (TNF- a ) (H otamisligil, G. S. J. Intern. Med. 245, 621-625. (1999)) 等の 「ァ ディポカイン (adipokines)」 (Matsuzawa, Y. ら, Ann. NY. Acad. Sci. 892, 146-154. (1999)) と呼ばれる多数の生物活性物質を分泌する重要 な内分泌器官として、 様々なエネルギーホメォスタシスの調節に関与す る。
アディポネクチン又は Acrp30(Hu, E., Liang, P.ら, J. Biol. Chem.
271, 10697-10703. (1996)等) は、アディポサイ ト由来のホルモンであ り、 様々な生物学的機能を有している。 肥満、 2型糖尿病、 冠動脈性心 疾患は、 アディポネクチンの血漿レベルの減少に関連しており、 アディ ポネクチンは in vitroにおいて抗ァテローム発生性を示すことが報告さ れてレヽる (Ouchi, N.ら, Circulation 103, 1057-1063. (2001) ; Yokot a, T. ら, Blood 96, 1723-1732. (2000) )。 また、 Acrp30の循環レベルの 急増は、 肝臓におけるグルコース産生を低下させることが報告されてい る (Berg, A. H.ら, Nat. Med. 7, 947-953. (2001) ; Combs, T. P.ら, J.
Clin. Invest. 108, 1875—1881. (2001))。 また、 globular Acrp30は、 筋肉における脂肪酸酸化を亢進させ、 マウスにおける体重減少を引き起 こすことが報告されている (Fruebis, J.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 2005-2010. (2001) )。 また、脂肪組織萎縮性マウス又は肥満マ ウスにおけるィンスリン抵抗性が、 globularドメィンのみからなるアデ ィポネクチン (globular adiponectin; gAd) で処理することにより、 筋 肉における脂肪酸酸化の亢進を介して改善したこと、 及び全長アディポ ネクチンで処理することにより程度は gAdよりも低いが改善したことが
報告されている (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 7, 941-946. (2001) )。 さらに最近になって、骨格筋において、アディポネクチンが AMPキナー ゼ (AMPK) を急性的に活性化し、 その結果、 脂肪酸酸化及ぴグルコース 取り込みが亢進されることが報告されているとともに(Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288-1295. (2002) )、 アディポネクチンが PPAR αを慢性 的に活性化し、その結果、脂肪酸酸化が亢進されるが筋肉における組織 Τ G含量は減少すること、そしてこれらの効果は全長アディポネクチンより も gAdの方が大きいことが報告されている (Yamauchi, T.ら, J. Biol . Chem. 278, 2461-2468 (2002) )。 また、 興味深いことに、 肝臓において は、 全長アディポネクチンのみが AMPKを急性的に活性化し、 その結果、 糖新生に関連する分子を減少させるとともに脂肪酸酸化を亢進させる一 方、 全長アディポネクチンのみが AMPKを慢性的に活性化し、 その結果、 脂肪酸酸化を亢進させるとともに肝臓における組織 TG量を減少させる。 そして、これらの変化はいずれも in vivoにおけるインスリ ン感受性を增 カロさせる (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288-1295. (2002) ; Yamauc hi, T.ら, J. Biol. Chem. 278, 2461-2468 (2002) )
これらのアディポネクチンの作用は、 細胞表面の受容体によって媒介 されると考えられるが、 アディポネクチン受容体は未だ同定されておら ず、 骨格筋及び肝臓におけるアディポネクチン受容体が構造的及び機能 的に異なるか否かも未だ不明である。 なお、 本発明者がアディポネクチ ン受容体をコードする遺伝子を同定した後、 ホモロジ一検索を行ったと ころ、 ホモロジ一を有する遺伝子として酵母 Y0L002Cが発見された (Kar pichev, I. V.ら, Journal of Biological Chemistry, 277, 19609 - 19617 (2002) )。 Y0L002cは、脂肪酸酸化等の脂質の代謝経路において重要な役 割を果たす 7回膜貫通型タンパク質をコードする (Karpichev, I. V.ら, Journal of Biological Chemistry, 277, 19609 - 19617. (2002) )。
発明の開示
本発明は、第一に、アディポネクチン結合能を有する新規タンパク質、 該タンパク質をコードする遺伝子、 該遺伝子を含む組換えベクター、 該 組換えベクターを含む形質転換体、 及び上記タンパク質に対する抗体又 はその断片を提供することを目的とする。
また、本発明は、第二に、アディポネクチン受容体に対するリガンド、 ァゴエス ト又はアンタゴニス トのスタ リ一ユング方法及びスク リ一ニン グ用キットを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、 本発明は、 以下のタンパク質、 遺伝子、 組換えベクター、 形質転換体、 抗体、 並びにアディポネクチン受容体に 対するァゴエスト又はアンタゴニストのスタ リ一ユング方法及びスク V 一二ング用キットを提供する。
( 1) 以下の (a) 又は (b) に示すタンパク質。
( a ) 配列番号 2、 4、 6又は 8に記載のァミノ酸配列からなるタン パク質
(b ) 配列番号 2、 4、 6又は 8に記載のアミノ酸配列において、 1 又は複数個のアミノ酸が欠失、 置換又は付加されたアミノ酸配列からな り、 かつアディポネクチン結合能を有するタンパク質
(2) 前記 (1) 記載のタンパク質をコードする遺伝子。
( 3) 以下の (c ) 又は (d) に示す DNAを含む前記 (2) 記載の遺 伝子。
(c ) 配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列からなる DNA (d) 配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列からなる DNAと 相補的な DN Aにス トリンジェントな条件下でハイプリダイズし、 かつ アディポネクチン結合能を有するタンパク質をコードする DNA
(4) 前記 (2) 又は (3) 記載の遺伝子を含む組換えベクター。
(5) 前記 (4) 記載の組換えベクターを含む形質転換体。
(6) 前記 (1) 記載のタンパク質に反応し得る抗体又はその断片。
(7) 試験物質と前記 (1 ) 記載のタンパク質とを接触させる工程を含 む、 アディポネクチン受容体に対するリガンド、 ァゴュス ト又はアンタ ゴニス トのスタ リ一ユング方法。
(8) 前記 ( 1 ) 記載のタンパク質、 前記 (2) 若しくは (3) 記載の 遺伝子、 前記 (4) 記載の組換えベクター又は前記 (5) 記載の形質転 換体を含む、 アディポネクチン受容体に対するリガンド、 ァゴニス ト又 はアンタゴニス トのスク リーニング用キッ ト。
図面の簡単な説明
図 1 (a ) は、 アディポネクチンの C2C12筋細胞への結合を示す図、 図 1 (b) は、 アディポネクチンの肝細胞への結合を示す図、 図 1 ( c ) 〜 (e ) は、 FACS解析の結果を示す図、 図 1 ( f ) は、 AdipoRl遺伝子及 び AdipoR2遺伝子の転写物の構造を示す模式図、 図 1 (g) は、 マウスの 様々な組織に関するノーザンプロッ ト解析の結果を示す図、 図 1 (h) は、 ヒ トの様々な組織に関するノーザンブロッ ト解析の結果を示す図で ある。
図 2 ( a ) は、 AdipoRl及び AdipoR2の構造を示す模式図、 図 2 ( b ) は、 ェピトープタグ FLAGを有する AdipoRl及び AdipoR2をトランスフエク トした 293T細胞の細胞溶解物を抗 FLAG抗体で免疫染色した結果を示す図、 図 2 ( c ) は、 ェピトープタグを N末端又は C末端に導入た AdipoRl又は AdipoR2をトランスフヱタ トした 293T細胞における AdipoRl又は AdipoR2 の細胞内局在を示す図、 図 2 ( d ) は、 AdipoRl及ぴ AdipoR2の予測構造 モデルを示す図である。
図 3 ( a ) は、 AdipoRl又は AdipoR2をトランスフエタ トした 293T細胞 への [125I] globular Adipo ( gAd) の結合等温線 (binding isotherm) を示す図、 図 3 ( b ) は、 当該 293T細胞への [1251] 全長 Adipo (Ad) の 結合等温線を示す図、 図 3 ( c ) は、 ェピトープタグ FLAG又は HAを有す る AdipoRl又は AdipoR2をトランスフエク トした 293T細胞の細胞溶解物を、 抗 FLAG抗体又は抗 HA抗体を用いて免疫沈降した後、 抗 FLAG抗体又は抗 HA 抗体で免疫染色した結果を示す図、 図 3 ( d ) は、 マウス AdipoRl発現細 胞又は BLT1発現細胞に globular Adipo, 全長 Adipo、 LTB4又は ATPをチヤ レンジしたときの [Ca2+] iの変化を示す図、 図 3 ( e ) は、 ホルスコリ ンで処理した又は処理しない HEK- 293細胞に cAMP又は cGMPを蓄積させた 結果を示す図、 図 3 ( f ) は、 AdipoRlをトランスフエク トした 293T細胞 を globular Adipo又は全長 Adipoとィンキュベートしたときの PPAR a リ ガンド活性を示す図である。
図 4 ( a ) は、 マウス AdipoRl mRNA量を示す図、 図 4 ( b ) はマウス A dipoR2 mRNA量を示す図、 図 4 ( c ) 及び (d ) は、 マウス AdipoRl又は マウス AdipoR2をトランスフエク トした C2C12筋細胞に結合した [125I] g lobular Adipo (gAd) 又は全長 Adipo (Ad) の結合等温線を示す図、 図 4 ( e ) は、 マウス AdipoRl又はマウス AdipoR2をトランスフエタ トした C2 C12筋細胞に LacZ又は DN- α 2AMPKを含有するアデノウィルスを感染させ、 globular Adipo又は全長 Adipoで 7時間処理したときの C2C12筋細胞内の PPARひリガンド活性を示す図、 図 4 ( f ) は上記 C2C12筋細胞内の in vi tro 脂肪酸酸化を示す図である。
図 5 ( a ) は、 siRNA又は mockをトランスフエタ トした C2C12筋細胞内 のマウス AdipoRl mRNAの量を示す図、 図 5 ( b ) は、 上記 C2C12筋細胞内 のマウス AdipoR2 raRNAの量を示す図、 図 5 ( c ) は、 非標識 globular A dipoの濃度を増加させることによって、二本鎖 siRNAをトランスフエク ト
した細胞に結合する [125I] globular Adipoを置換した競合ラジオリガン ド結合アツセィの結果を示す図、 図 5 ( d ) は、 非標識全長 Adipoの濃度 を増加させることによって、二本鎖 siRNAをトランスフエク トした細胞に 結合する [ I]全長 Adipoを置換した競合ラジオリガンド結合アツセィの 結果を示す図、 図 5 ( e ) は、 二本鎖 siRNAをトランスフエタ トした C2C I2筋細胞への [ I] globular Adipoの結合等温線を示す図、 図 5 ( ί ) は 、 二本鎖 siRNAをトランスフエク トした C2C12筋細胞への [1251]全長 Adipo の結合等温線を示す図、 図 5 ( g ) は、 二本鎖 siRNAをトランスフエク ト した C2C12筋細胞を globular Adipo、全長 Adipo又は Wy- 14, 643と 7時間ィ ンキュペートしたときの PPAR aリガンド活性を示す図、 図 5 ( h ) は、 二本鎖 siRNAをトランスフエク トした C2C12筋細胞を globular Adipo、 全 長 Adipo又は Wy- 14, 643と 7時間インキュベートしたときの in vitro 脂 肪酸酸化を示す図、 図 5 ( i ) は、 二本鎖 siRNAをトランスフエク トした C2C12筋細胞を globular Adipo, 全長 Adipo又はインスリンと 7時間イン キュベートしたときのグルコース取り込みを示す図である。
図 6 ( a ) は、 gAdの肝細胞への特異的結合を示す図、 図 6 ( b ) は、 Adの肝細胞への特異的結合を示す図、 図 6 ( c ) は、 HAECにおけるヒ ト A dipoRl mRNAの発現レベルを示す図、 図 6 ( d ) は、 HAECにおけるヒ ト A dipoR2 mRNAの発現レベルを示す図、 図 6 ( e ) は、 gAdの HAECへの特異 的結合を示す図、 図 6 ( f ) は、 Adの HAECへの特異的結合を示す図であ る。
図 7 ( a ) は、 二本鎖 s iRNAをトランスフエク トした C2C12筋細胞への [ 125I] globular Adipoの結合等温線 (binding isotherm) を示す図、 図 7 ( b ) は、 二本鎖 s iRNAをトランスフエタ トした C2C12筋細胞への [1251] 全長 Adipoの結合等温線 (binding isotherm) を示す図、 図 7 ( c ) は、 図 7 ( a ) に示す結果に基づきスキャッチヤードプロット解析を行った
結果を示す図、 図 7 ( d ) は、 図 7 ( b ) に示す結果に基づきスキヤッ チャードプロット解析を行った結果を示す図である。
図 8 ( a ) は、 AdipoRlをトランスフエタ トした又はしていない C2C12 細胞を 0. 1 μ g/mL gAd又は 1 μ g/mLとともに 10分間ィンキュベートした後、 当該細胞の溶解物と抗リン酸化 AMPK抗体とを反応させた結果を示す図、 図 8 ( b ) は、 AdipoRlをトランスフエタ トした又はしていない C2C12細 胞を 0. 1 μ g/mL gAd又は 1 μ g/mLとともに 10分間ィンキュベートした後、 当該細胞の溶解物と抗リン酸化 ACC抗体とを反応させた結果を示す図、図 8 ( c ) は、 AdipoRlをトランスフエタ トした又はしていない C2C12細胞 を 0. 1 μ g/mL gAd又は 1 μ g/mLとともに 10分間ィンキュベートした後、 当 該細胞の溶解物と抗リン酸化 p38 MAPK抗体とを反応させた結果を示す図、 図 8 ( d ) は、 AdipoRlをトランスフエタ トした又はしていない C2C12細 胞を 0. 1 A g/mL gAd又は 1 μ g/mLとともに 10分間ィンキュベートした後、 当該細胞の溶解物と抗リン酸化 MAPK抗体とを反応させた結果を示す図、 図 8 ( e ) は、 AdipoRlをトランスフエク トした又はしていない肝細胞を 0. 1 μ g/mL gAd又は 1 μ g/mLとともに 10分間ィンキュベートした後、 当該 細胞の溶解物と抗リン酸化 AMPK抗体とを反応させた結果を示す図、 図 8 ( f ) は、 AdipoRlをトランスフエタ トした又はしていない肝細胞を 0. 1 μ g/mL gAd又は 1 g/mLとともに 10分間ィンキュベートした後、当該細胞 の溶解物と抗リン酸化 ACC抗体とを反応させた結果を示す図、 図 8 ( g ) は、 優性阻害型 AMPキナーゼ (DN- AMPK) 又は p38 MAPK特異的阻害剤 SB2 03580の存在下における AdipoRlをトランスフエク トした又はしていない 〇2 2筋細胞の脂肪酸酸化を示す図、 図 8 ( h ) は、 優性阻害型 AMPキナ ーゼ(DN- AMPK)又は p38 MAPK特異的阻害剤 SB203580の存在下における A dipoRlをトランスフエタ トした又はしていなレ、 C2C12筋細胞のグノレコー ス取り込みを示す図である。
発明を実施するための最良の形態
本発明のタンパク質は、 以下の (a ) 又は (b ) に示すタンパク質で ある。
( a ) 配列番号 2、 4、 6又は 8に記載のアミノ酸配列からなるタンパ ク質 (以下 「タンパク質 (a )」 という。)
( b ) 配列番号 2、 4、 6又は 8に記載のアミノ酸配列において、 1又 は複数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列からなり、 かつアディポネクチン結合能を有するタンパク質 (以下 「タンパク質 ( b ) j という。)
タンパク質 ( a ) 又は (b ) は、 アディポネクチン結合能を有するタ ンパク質である。 「アディポネクチン結合能」 とは、 アディポネクチンと 結合する能力、 好ましくはアディポネクチンと特異的に結合する能力 ( すなわちアディポネクチン受容体が有するアディポネクチン結合能) を 意味する。 「アディポネクチン結合能」 には、 全長アディポネクチン又は globularドメインのみからなるアディポネクチンのいずれに対する結合 能も含まれる。 アディポネクチン結合能を有するタンパク質には、 全長 アディポネクチンにのみ結合し得るタンパク質、 globularドメインのみ からなるアディポネクチンにのみ結合し得るタンパク質、 全長アディポ ネクチン及び globularドメインのみからなるアディポネクチンの両者に 結合し得るタンパク質、 全長アディポネクチン及ぴ globularドメインの みからなるアディポネクチンのいずれか一方に優先的に結合し得るタン パク質等が含まれる。
なお、 「globularドメイン」 とは、 アディポネクチンの C末端側に約 1 0 0アミノ酸強の長さで存在する糸状体類似の構造ドメインである。 補 体の Cl q等にも globularドメインとホモロジ一の高いドメインが存在す
る。 アディポネクチンの globularドメインは機能的には骨格筋等に強く 作用して、 脂肪酸を燃焼させ、 脂肪が蓄積するのを抑制する作用を有し ており、 全長のアディポネクチンより数十分の一の低い濃度で同程度の 強い活性を示す。
タンパク質 ( a ) のうち、 配列番号 2又は 4に記載のタンパク質はヒ ト由来のアディポネクチン受容体であり、 配列番号 6又は 8に記載のタ ンパク質はマウス由来のアディポネクチン受容体である。 また、 配列番 号 2及び 6記載のタンパク質は同一種類のアディポネクチン受容体 (Ad ipoRl) であり、 配列番号 4及び 8記載のタンパク質は、 AdipoRlとは異 なる種類のアディポネクチン受容体 (AdipoR2) である。 AdipoRlは、 全 長アディポネクチンよりも globularドメインのみからなるアディポネク チンに対して比較的選択性を有する受容体であると考えられ、 AdipoR2 は、 globularドメインのみからなるアディポネクチンよりも全長アディ ポネクチンに対して比較的選択性を有する受容体であると考えられる。
AdipoRlについて、 ヒ ト (配列番号 2 ) 及びマウス (配列番号 6 ) 間の アミノ酸レベルでの相同性は 9 6 . 8 %である。 AdipoR2について、 ヒ ト (配列番号 4 ) 及びマウス (配列番号 8 ) 間のアミノ酸レベルでの相同 性は 9 5 . 2 %である。 AdipoRlと AdipoR2の構造は類似しており、 マウ スにおける AdipoRl (配列番号 6 ) 及び AdipoR2 (配列番号 8 ) の相同性 は 6 6 . 7 %である。
生体において、 AdipoRlはほとんどの組織で発現しており、特に骨格筋 で高度に発現している一方、 AdipoR2は肝臓で高度に発現している。 また 、 AdipoRl及び AdipoR2は、 ホモ又はへテロマルチマーを形成していると 考えられる。 また、 AdipoRl及び AdipoR2はともに、 全長アディポネクチ ン及ぴ globularドメインのみからなるアディポネクチンと結合し、 これ らのアディポネクチンによる PPAR a (Peroxisome prolif erator-activa
ted receptor :ペルォキシソーム増殖因子活性化受容体ひ) リガンド 活性及ぴ脂肪酸酸化の亢進を媒介する。 例えば、 AdipoRlは、 globular ドメインのみからなるアディポネクチンによる筋細胞内の PPARaリガン ド活性、 脂肪酸酸化及びグルコース取り込みの増加を媒介すると考えら れる。 また、 AdipoR2は、 全長アディポネクチンによる肝細胞及び筋細胞 内の PPARaリガンド活性及び脂肪酸酸化の増加を一部媒介すると考えら れる。
AdipoRl及び AdipoR2はいずれも 7個の膜貫通ドメインを有すると考え られる。 配列番号 2記載のアミノ酸配列 (ヒ ト AdipoRl) のうち、 1 3 6 〜 1 5 8番目、 1 7 2〜 1 9 4番目、 2 0 7〜 2 2 8番目、 2 3 4〜 2 5 5番目、 2 6 7〜 2 8 9番目、 2 9 9〜 3 2 1番目、 3 3 6〜 3 5 8 番目のアミノ酸配列が膜貫通ドメインに相当すると考えられる。 また、 配列番号 4記载のァミノ酸配列 (ヒ ト AdipoR2) のうち、 6 0〜 8 2番目 、 9 6〜 1 1 8番目、 1 3 0〜 1 5 2番目、 1 5 8〜 1 7 9番目、 1 9 2〜 2 1 4番目、 2 2 2〜 2 4 4番目、 2 6 0〜 2 8 2番目のアミノ酸 配列が膜貫通ドメインに相当すると考えられる。 また、 配列番号 6記載 のァミノ酸配列 (マウス AdipoRl) のうち、 1 3 6 ~ 1 5 8番目、 1 7 2 〜 1 9 4番目、 2 0 7〜 2 2 8番目、 2 3 4〜 2 5 5番目、 2 6 7〜 2 8 9番目、 2 9 9〜 3 2 1番目、 3 3 6〜 3 5 8番目のァミノ酸配列が 膜貫通ドメインに相当すると考えられる。 また、 配列番号 8記載のアミ ノ酸配列 (マウス AdipoR2) のうち、 7 2〜 9 4番目、 1 0 8〜 1 3 0番 目、 1 4 2〜 1 6 4番目、 1 7 0〜 1 9 1番目、 2 0 4〜 2 2 6番目、 2 3 4〜 2 5 6番目、 2 7 2〜 2 9 4番目のアミノ酸配列が膜貫通ドメ ィンに相当すると考えられる。
配列番号 2、 4、 6又は 8に記載のアミノ酸配列において欠失、 置換 又は付加されるアミノ酸の個数は、 アディポネクチン結合能が保持され
得る限り特に限定されるものではなく、 その個数は 1又は複数個、 好ま しくは 1又は数個であり、 その具体的な範囲は通常 1〜 1 0 0個、 好ま しくは 1〜5 0個、 さらに好ましくは 1 ~ 1 0個である。 このとき、 タ ンパク質 (b ) のアミノ酸配列は、 タンパク質 (a ) のアミノ酸配列と 通常 6 0 %以上、 好ましくは 8 0 %以上、 さらに好ましくは 9 0 %以上 の相同性を有する。
配列番号 2、 4、 6又は 8に記載のアミノ酸配列において欠失、 置換 又は付加されるアミノ酸の位置は、 アディポネクチン結合能が保持され 得る限り特に限定されるものではない。
タンパク質 (b ) には、 タンパク質 ( a ) に対して人為的に欠失、 置 換、 付加等の変異を導入したタンパク質の他、 欠失、 置換、 付加等の変 異が導入された状態で天然に存在するタンパク質や、 それに対して人為 的に欠失、置換、付加等の変異を導入したタンパク質も含まれる。欠失、 置換、 付加等の変異が導入された状態で天然に存在するタンパク質とし ては、 例えば、 ヒ トを含む哺乳動物 (例えば、 ヒ ト、 サル、 ゥシ、 ヒ ッ ジ、 ャギ、 ゥマ、 ブタ、 ゥサギ、 ィヌ、 ネコ、 マウス、 ラット等) 由来 のタンパク質 (これらの哺乳動物において多型によって生じ得るタンパ ク質を含む) が挙げられる。
タンパク質 ( a ) 及び (b ) には、 糖鎖が付加されたタンパク質及び 糖鎖が付加されていないタンパク質のいずれもが含まれる。 タンパク質 に付加される糖鎖の種類、 位置等は、 タンパク質の製造の際に使用され る宿主細胞の種類によって異なるが、糖鎖が付加されたタンパク質には、 いずれの宿主細胞を用いて得られるタンパク質も含まれる。 また、 タン パク質 (a ) 及び (b ) には、 その医薬的に許容される塩も含まれる。 タンパク質 (a ) 又は (b ) をコードする遺伝子は、 例えば、 ヒ ト、 マウス等の哺乳動物の骨格筋、肝臓、心臓、 マクロファージ、 血管、脳、
腎臓、 肺、 胎盤、 脾臓、 精巣、 末梢血液、 胸腺、 腸管等の組織から抽出 した mRNAを用いて c DNAライブラリ一を作製し、配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列に基づいて合成したプローブを用いて、 c D N Aライブラリ一から目的の DN Aを含むクローンをスクリ一ユングす ることにより得られる。 以下、 c DNAライブラリーの作製、 及ぴ目的 の DN Aを含むクローンのスクリ一-ングの各工程について説明する。 〔c DNAライブラリーの作製〕
c DNAライブラリーを作製する際には、 例えば、 ヒ ト、 マウス等の 哺乳動物の骨格筋、 肝臓、 心臓、 マク口ファージ、 血管、 脳、 腎臓、 肺、 胎盤、 脾臓、 精巣、 末梢血液、 胸腺、 腸管等の組織から全 RNAを得た 後、 オリゴ d T—セルロースやポリ U—セファロース等を用いたァフィ 二ティーカラム法、 バッチ法等によりポリ (A + ) RNA (mRNA) を得る。 この際、 ショ糖密度勾配遠心法等によりポリ (A + ) RNA ( mRNA)を分画してもよい。次いで、得られた mRNAを铸型として、 オリゴ d Tプライマー及び逆転写酵素を用いて一本鎖 c DNAを合成し た後、 該一本鎖 c DNAから二本鎖 c DNAを合成する。 このようにし て得られた二本鎖 c DNAを適当なクローニングベクターに組み込んで 組換えベクターを作製し、 該組換えべクターを用いて大腸菌等の宿主細 胞を形質転換し、 テトラサイクリン耐性、 アンピシリン耐性を指標とし て形質転換体を選択することにより、 c DNAのライブラリーが得られ る。 c DNAライブラリ一を作製するためのクローニングべクターは、 宿主細胞中で自立複製できるものであればよく、 例えば、 ファージべク ター、プラスミ ドベクター等を使用できる。宿主細胞としては、例えば、 大腸菌 (Escherichia coli) 等を使用できる。
大腸菌等の宿主細胞の形質転換は、 塩化カルシウム、 塩化マグネシゥ ム又は塩化ルビジウムを共存させて調製したコンビテント細胞に、 組換
えベクターを加える方法等により行うことができる。 なお、 ベクターと してプラスミ ドを用いる場合は、 テトラサイクリン、 アンピシリン等の 薬剤耐性遺伝子を含有させておく。
c DNAライブラリ一の作製にあたっては、 市販のキッ ト、 例えば、 S uperScript Plasmid System ior cDNA synthesis and Plasmid Cloning
(Gibco BRL社製)、 ZAP- cDNA Synthesis Kit (ストラタジーン社製) 等 を使用できる。
〔目的の DN Aを含むクローンのスクリーユング〕
c DNAライブラリーから目的の DN Aを含むクローンをスクリー二 ングする際には、 配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列に基づい てプライマーを合成し、 これを用いてポリメラーゼ連鎖反応 (P C R) を行い、 P CR増幅断片を得る。 P CR増幅断片は、 適当なプラスミ ド ベクターを用いてサブクロー-ングしてもよい。 P CRに使用するプラ イマ一セットは特に限定されるものではなく、 配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列に基づいて設計できる。
c DNAライブラリ一に対して、 P C R増幅断片をプローブとしてコ ロニーハイプリダイゼーション又はプラークハイブリダイゼーションを 行うことにより、 目的の DNAが得られる。 プローブとしては、 P CR 増幅断片をアイソトープ (例えば、 32 P、 35 S)、 ピオチン、 ジゴキシ ゲユン、 アルカリホスファターゼ等で標識したものを使用できる。 目的 の DN Aを含むクローンは、 抗体を用いたィムノスクリ一ユング等の発 現スクリーニングによっても得られる。
取得された DNAの塩基配列は、 該 DNA断片をそのまま、 又は適当 な制限酵素等で切断した後、 常法によりベクターに組み込み、 通常用い られる塩基配列解析方法、例えば、マキサム一ギルバートの化学修飾法、 ジデォキシヌクレオチド鎖終結法を用いて決定できる。 塩基配列解析の
際には、 通常、 3 7 3 A DN Aシークェンサ一 (Perkin Elmer社製) 等 の塩基配列分析装置が用いられる。
タンパク質 ( a) 又は (b) をコードする遺伝子は、 タンパク質 (a ) 又は (b ) をコードするオープンリーディングフレームとその 3,末端 に位置する終止コドンとを含む。 また、 タンパク質 (a ) 又は (b ) を コードする遺伝子は、オープンリ一ディングフレームの 5,末端及び/又 は 3'末端に非翻訳領域 (UTR) を含むことができる。
タンパク質(a) をコードする遺伝子としては、例えば、配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列からなる DNAを含む遺伝子が挙げられ る。 ここで、 配列番号 1記載の塩基配列のうち 1〜 1 1 2 5番目の塩基 配列は、 配列番号 2記載のタンパク質をコードするオープンリーディン グフレームであり、 配列番号 1記載の塩基配列のうち、 翻訳開始コドン は 1〜 3番目の塩基配列に位置し、 終止コドンは 1 1 2 6〜 1 1 2 8番 目の塩基配列に位置する。 また、 配列番号 3記載の塩基配列のうち 1〜 8 9 7番目の塩基配列は、 配列番号 4記載のタンパク質をコードするォ ープンリーディングフレームであり、配列番号 3記載の塩基配列のうち、 翻訳開始コドンは 1〜3番目の塩基配列に位置し、 終止コドンは 8 9 8 〜 9 0 0番目の塩基配列に位置する。 また、 配列番号 5記載の塩基配列 のうち 1〜1 1 2 5番目の塩基配列は、 配列番号 6記載のタンパク質を コードするオープンリーディングフレームであり、 配列番号 5記載の塩 基配列のうち、 翻訳開始コドンは 1〜 3番目の塩基配列に位置し、 終止 コドンは 1 1 2 6〜 1 1 2 8番目の塩基配列に位置する。 また、 配列番 号 7記載の塩基配列のうち 1〜9 3 3番目の塩基配列は、 配列番号 8記 載のタンパク質をコードするオープンリ一ディングフレームであり、 配 列番号 7記載の塩基配列のうち、 翻訳開始コドンは 1〜 3番目の塩基配 列に位置し、 終止コドンは 9 34〜 9 3 6番目の塩基配列に位置する。
タンパク質 (a) をコードする遺伝子の塩基配列は、 タンパク質 (a ) をコードする限り特に限定されるものではなく、 オープンリーデイン グフレームの塩基配列は、 配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列 に限定されるものではない。 タンパク質 (a) をコードする遺伝子は、 その塩基配列に従って化学合成により得ることもできる。 DNAの化学 合成は、 市販の DNA合成機、 例えば、 チォホスフアイ ト法を利用した DN A合成機(島津製作所社製)、 フォスフォアミダイ ト法を利用した D NA合成機 (パーキン .エルマ一社製) を用いて行うことができる。
タンパク質(b ) をコードする遺伝子としては、例えば、配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列からなる DN Aと相補的な DNAにス ト リンジェントな条件下でハイプリダイズし、 かつアディポネクチン結合 能を有するタンパク質をコードする DN Aを含む遺伝子が挙げられる。
「ス トリンジェントな条件」 としては、 例えば、 4 2°C、 2 X S S C 及ぴ 0. 1 % S D Sの条件、好ましくは 6 5 °C、 0. 1 X S S C及び 0 · 1 %SD Sの条件が挙げられる。
配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列からなる DN Aと相補的 な DNAにス トリンジェントな条件下でハイプリダイズする DN Aの具 体例としては、 配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列からなる D N Aと少なく とも 6 0%以上、 好ましくは 8 0%以上、 さらに好ましく は 90 °/0以上の相同性を有する DNAが挙げられる。
タンパク質 (b) をコードする遺伝子は、 例えば、 配列番号 1、 3、 5又は 7に記載の塩基配列からなる D N Aに、 部位特異的変異誘発法等 の公知の方法を用いて人為的に変異を導入することにより得られる。 変 異の導入は、 例えば、 変異導入用キット、 例えば、 Mutant- K (TAKARA社 製)、 Mutant- G (TAKARA社製)、 TAKARA社の LA PCR in vitro Mutagenesi シリーズキッ トを用いて行うことができる。 また、 塩基配列が既に決
定されている D N Aについては化学合成によっても得られる。
タンパク質 (a ) 又は (b ) は、 例えば、 以下の工程に従って、 それ ぞれのタンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞中で発現させることに より製造できる。
〔組換えベクター及び形質転換体の作製〕
組換えベクターを作製する際には、 目的とするタンパク質のコード領 域を含む適当な長さの D N A断片を調製する。 また、 目的とするタンパ ク質のコード領域の塩基配列を、 宿主細胞における発現に最適なコ ドン となるように、 塩基を置換した D N Aを調製する。
この D N A断片を適当な発現ベクターのプロモーターの下流に揷入す ることにより組換えベクターを作製し、 該組換えベクターを適当な宿主 細胞に導入することにより、 目的とするタンパク質を生産し得る形質転 換体が得られる。 上記 D N A断片は、 その機能が発揮されるようにべク ターに組み込まれることが必要であり、ベクターは、プロモーターの他、 ェンハンサ一等のシスエレメント、 スプライシングシグナノレ、 ポリ A付 加シグナル、 選択マーカー (例えば、 ジヒ ドロ葉酸還元酵素遺伝子、 ァ ンピシリ ン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子)、 リポソーム結合配列 ( S D配列) 等を含有できる。
発現ベクターとしては、 宿主細胞において自立複製が可能なものであ れば特に限定されず、例えば、プラスミ ドベクター、ファージベクター、 ウィルスベクター等を使用できる。 プラスミ ドベクターとしては、 例え ば、 大腸菌由来のプラスミ ド (例えば、 pRSET、 pBR322、 pBR325、 pUCl l 8、 pUC119、 pUC18、 pUC19)、 枯草菌由来のプラスミ ド (例えば、 pUB110、 pTP5)、 酵母由来のプラスミ ド (例えば、 YEpl3、 YEp24、 YCp50) が挙げ られ、 ファージベクターとしては、 例えば、 λファージ (例えば、 Char on4A、 Charon21A、 EMBL3、 EMBL4、 λ gt lO, λ gt l l, λ ZAP) が挙げられ、
ウィルスベクターと しては、 例えば、 レ トロウイルス、 ワクシニアウイ ルス等の動物ウィルス、 バキュ口ウィルス等の昆虫ウィルスが挙げられ る。
宿主細胞としては、 目的とする遺伝子を発現し得る限り、 原.核細胞、 酵母、 動物細胞、 昆虫細胞、 植物細胞等のいずれを使用してもよい。 ま た、 動物個体、 植物個体、 カイコ虫体等を使用してもよい。
細菌を宿主細胞とする場合、 例えば、 エッシェ リ ヒァ ■ コ リ (Escher ichia coli) 等のェシエリ ヒア属、 バチルス ·ズブチリス (Bacillus s ubtilis) 等のバチルス属、 シユードモナス .プチダ (Pseudomonas put ida) 等のシユードモナス属、 リゾビゥム · メリロティ (Rhizobium mel iloti)等のリゾビゥム属に属する細菌を宿主細胞として使用できる。具 体的には、 Escherichia coli XL1- Blue、 Escherichia coli XL2 - Blue、 E scherichia coli DH1、 Escherichia coli K12、 Escherichia coli JM10 9、 Escherichia coli HB101等の大腸菌や、 Bacillus subtilis MI 114、 Bacillus subtilis 207- 21等の枯草菌を宿主細胞として使用できる。 こ の場合のプロモーターは、 大腸菌等の細菌中で発現できるものであれば 特に限定されず、 例えば、 trpプロモーター、 lacプロモーター、 PLプロ モーター、 PRプロモーター等の大腸菌やファージ等に由来するプロモー ターを使用できる。 また、 tacプロモーター、 lacT7プロモーター、 let Iプロモーターのよ うに人為的に設計改変されたプロモーターも使用で きる;
細菌への組換えベクターの導入方法としては、 細菌に DNAを導入し 得る方法であれば特に限定されず、 例えば、 カルシウムイオンを用いる 方法、 エレク ト口ポレーシヨン法等を使用できる。
酵母を宿主細胞とする場合、 サッカロミセス ' セレピシェ (Saccharo mycescerevisiae)、 ンンサッカロ セス ' ホンべ (Schizosaccharorayce
s pombe)、 ピヒア · パストリス (Pichia pastoris) 等を宿主細胞として 使用できる。 この場合のプロモーターは、 酵母中で発現できるものであ れば特に限定されず、 例えば、 gal lプロモーター、 gal lOプロモーター、 ヒートショ ックタンパク質プロモーター、 MF a lプロモーター、 PH05プロ モーター、 PGKプロモーター、 GAPプロモーター、 ADHプロモーター、 A0X 1プロモーター等を使用できる。
酵母への組換えベクターの導入方法は、 酵母に D N Aを導入し得る方 法であれば特に限定されず、 例えば、 エレク ト口ポレーシヨ ン法、 スフ エロプラスト法、 酢酸リチウム法等を使用できる。
動物細胞を宿主細胞とする場合、 サル細胞 COS- 7、 Vero、 チャイニーズ ハムスター卵巣細胞 (CH0細胞)、 マウス L細胞、 ラッ ト GH3、 ヒ ト FL細胞 等を宿主細胞として使用できる。 この場合のプロモーターは、 動物細胞 中で発現できるものであれば特に限定されず、 例えば、 SR aプロモータ 一、 SV40プロモーター、 LTR (Long Terminal Repeat)プロモーター、 CMV プロモーター、 ヒ トサイ トメガロウィルスの初期遺伝子プロモーター等 を使用できる。
動物細胞への組換えべクターの導入方法は、 動物細胞に D N Aを導入 し得る方法であれば特に限定されず、 例えば、 エレク ト口ポレーシヨ ン 法、 リン酸カルシウム法、 リポフエクシヨン法等を使用できる。
昆虫細胞を宿主とする場合には、 Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞、 Trichoplusia niの卵巣細胞、カイコ卵巣由来の培養細胞等を宿主細胞と して使用できる。 Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞としては Sf9、 Sf21 等、 Trichoplusia niの卵巣細胞としては High 5、 BTI-TN-5B1-4 (インビ トロジ ン社製) 等、 カイコ卵巣由来の培養細胞としては Bombyx mori N4等が挙げられる。
昆虫細胞への組換えベクターの導入方法は、 昆虫細胞に D N Aを導入
し得る限り特に限定されず、 例えば、 リン酸カルシウム法、 リボフエタ ション法、 エレク トロポレーション法等を使用できる。
〔形質転換体の培養〕
目的とするタンパク質をコードする D N Aを組み込んだ組換えべクタ 一を導入した形質転換体を通常の培養方法に従って培養する。 形質転換 体の培養は、 宿主細胞の培養に用いられる通常の方法に従って行うこと ができる。
大腸菌や酵母等の微生物を宿主細胞として得られた形質転換体を培養 する培地としては、 該微生物が資化し得る炭素源、 窒素源、 無機塩類等 を含有し、 形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、 合成培地のいずれを使用してもよい。
炭素源としては、 グルコース、 フラク トース、 スクロース、 デンプン 等の炭水化物、 酢酸、 プロピオン酸等の有機酸、 エタノール、 プロパノ ール等のアルコール類を使用できる。 窒素源としては、 アンモニア、 塩 化アンモ-ゥム、 硫酸アンモ-ゥム、 酢酸アンモニゥム、 リン酸アンモ ウム等の無機酸又は有機酸のアンモユウム塩、 ペプトン、 肉エキス、 酵母エキス、 コーンスチープリカー、 カゼイン加水分解物等を使用でき る。 無機塩としては、 リン酸第一カリウム、 リン酸第二カリウム、 リン 酸マグネシウム、 硫酸マグネシウム、 塩化ナトリウム、 硫酸第一鉄、 硫 酸マンガン、 硫酸銅、 炭酸カルシウム等を使用できる。
大腸菌や酵母等の微生物を宿主細胞として得られた形質転換体の培養 は、 振盪培養又は通気攪拌培養等の好気的条件下で行う。 培養温度は通 常 2 5〜3 7 °C、 培養時間は通常 1 2〜4 8時間であり、 培養期間中は «[を6〜8に保持する。 p Hの調整は、 無機酸、 有機酸、 アルカリ溶 液、 尿素、 炭酸カルシウム、 アンモニア等を用いて行うことができる。 また、 培養の際、 必要に応じてアンピシリン、 テトラサイクリン等の抗
生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形 質転換した微生物を培養するときには、 必要に応じてィンデューサーを 培地に添加してもよい。例えば、 lacプロモーターを用いた発現ベクター で形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル一 /3— D—チォ ガラク トピラノシド等を、 trpプロモーターを用いた発現べクタ一で形質 転換した微生物を培養するときにはィンドールァクリル酸等を培地に添 加してもよい。
動物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地として は、 一般に使用されている RPMI1640培地、 Eagleの MEM培地、 DMEM培地、 H am F12培地、 Ham F12K培地又はこれら培地に牛胎児血清等を添加した培 地等を使用できる。 形質転換体の培養は、 通常 5 %C02存在下、 3 7 °Cで 3〜 1 0日間行う。 また、 培養の際、 必要に応じてカナマイシン、 ペニシリン、ストレプトマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。 昆虫細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地として は、 一般に使用されている TNM- FH培地 (ファーミンジヱン社製)、 Sf-90 0 II SFM培地 (Gibco BRL社製)、 ExCell400、 ExCell405 (JRHバイオサイ エンシーズ社製) 等を使用できる形質転換体の培養は、 通常 2 7°Cで 3 〜 1 0日間行う。 また、 培養の際、 必要に応じてゲンタマイシン等の抗 生物質を培地に添加してもよい。
目的とするタンパク質は、 分泌タンパク質又は融合タンパク質として 発現させることもできる。 融合させるタンパク質としては、 例えば、 —ガラタ トシダーゼ、 プロテイン A、 プロテイン Aの I g G結合領域、 クロラムフエ二コール . ァセチルトランスフェラーゼ、 ポリ (A r g)、 ポリ (G l u)、 プロテイン G、 マルトース結合タンパク質、 ダルタチォ ン S-トランスフェラーゼ、 ポリヒスチジン鎖 (His- tag)、 Sペプチド、
D N A結合タンパク質ドメイン、 T a c抗原、 チォレドキシン、 グリー ン · フルォレツセント ■プロティン等が挙げられる。
〔タンパク質の単離 ·精製〕
形質転換体の培養物より 目的とするタンパク質を採取することにより、 目的とするタンパク質が得られる。 ここで、 「培養物」 には、 培養上清、 培養細胞、 培養菌体、 細胞又は菌体の破砕物のいずれもが含まれる。
目的とするタンパク質が形質転換体の細胞内に蓄積される場合には、 培養物を遠心分離することにより、 培養物中の細胞を集め、 該細胞を洗 浄した後に細胞を破碎して、 目的とするタンパク質を抽出する。 目的と するタンパク質が形質転換体の細胞外に分泌される場合には、 培養上清 をそのまま使用するか、 遠心分離等により培養上清から細胞又は菌体を 除去する。
こうして得られるタンパク質 (a ) 又は (b ) は、 溶媒抽出法、 硫安 等による塩析法脱塩法、 有機溶媒による沈殿法、 ジェチルアミノエチル ( D E A E ) —セファロース、 イオン交換クロマトグラフィー法、 疎水 性クロマトグラフィ一法、 ゲルろ過法、 ァフイエティーク口マトグラフ ィ一法等により精製できる。
タンパク質 (a ) 又は (b ) は、 そのアミノ酸配列に基づいて、 Fmoc 法 (フルォレニルメチルォキシカルポニル法)、 tBoc法 ( t 一プチルォキ シカルボニル法) 等の化学合成法によっても製造できる。 この際、 市販 のぺプチド合成機を使用できる。
本発明の抗体又はその断片は、 タンパク質 (a ) 又は (b ) に反応し 得る抗体又はその断片である。 ここで、 「抗体」 には、 モノクローナル抗 体及びポリクローナル抗体のいずれもが含まれ、「モノクローナル抗体及 びポリクローナル抗体」 には全てのクラスのモノクローナル抗体及びポ リクローナル抗体が含まれる。 また、 「抗体」 には、 ゥサギやマウス等の
免疫動物にタンパク質 (a ) 又は (b ) のタンパク質を免疫して得られ る抗血清、 ヒ ト抗体、 遺伝子組換えによって得られるヒ ト型化抗体も含 まれる。 また、 「抗体の断片」 には、 Fab断片、 F (ab) ' 2断片、 単鎖抗体( scFv)等が含まれる。
本発明の抗体又はその断片は、 タンパク質 (a ) 又は (b ) を免疫用 抗原として利用することより作製できる。免疫用抗原としては、例えば、 (i) タンパク質 (a ) 又は ( b ) を発現している細胞又は組織の破砕物 又はその精製物、 (i i) 遺伝子組換え技術を用いて、 タンパク質 (a ) 又 は (b ) をコードする遺伝子を大腸菌、 昆虫細胞又は動物細胞等の宿主 に導入して発現させた組換えタンパク質、 (ii i) 化学合成したペプチド 等を使用できる。
ポリクローナル抗体の作製にあたっては、 免疫用抗原を用いて、 ラッ ト、 マウス、 モルモッ ト、 ゥサギ、 ヒッジ、 ゥマ、 ゥシ等の哺乳動物を 免疫する。 免疫動物は、 抗体を容易に作製できることからマウスを利用 することが好ましい。 免疫の際には、 抗体産生誘導する為に、 フロイン ト完全アジュバンド等の免疫助剤を用いてェマルジョン化した後、 複数 回の免疫することが好ましい。 免疫助剤としては、 フロイント完全アジ ュバン ト(FCA)の他、 フロイン ト不完全アジュバント(FIA)、 水酸化アル ミニゥムゲル等を利用できる。 哺乳動物 1匹当たりの抗原の投与量は、 哺乳動物の種類に応じて適宜設定できるが、 マウスの場合には通常 5 0 〜 5 0 0 /1 gである。 投与部位は、 例えば、 静脈内、 皮下、 腹腔内等で ある。 免疫の間隔は、 通常、 数曰から数週間間隔、 好ましくは 4曰〜 3 週間間隔で、 合計 2〜8回、 好ましくは 2〜 5回免疫を行う。 そして、 最終免疫日から 3〜 1 0日後に、 タンパク質 (a ) 又は (b ) に対する 抗体力価を測定し、 抗体力価が上昇した後に採血し、 抗血清を得る。 抗 体力価の測定は、 酵素免疫測定法(ELISA)、 放射性免疫測定法(RIA)等に
より行うことができる。
抗血清から抗体の精製が必要とされる場合は、 硫酸アンモニゥムによ る塩析、 ゲルクロマトグラフィー、 イオン交換クロマトグラフィー、 ァ フイエティークロマトグラフィ一等の公知の方法を適宜選択して又はこ れらを組み合わせて利用できる。
モノクローナル抗体の作製にあたっては、 ポリクローナル抗体の場合 と同様に免疫用抗原を用いて哺乳動物を免疫し、 最終免疫日から 2〜 5 日後に抗体産生細胞を採取する。 抗体産生細胞としては、 例えば、 脾臓 細胞、 リンパ節細胞、 胸腺細胞、 末梢血細胞等が挙げられるが、 脾臓細 胞が一般的に利用される。
次いで、 ハイプリ ドーマを得るために、 抗体産生細胞とミエローマ細 胞との細胞融合を行う。 抗体産生細胞と融合させるミエローマ細胞とし. ては、 ヒ ト、 マウス等の哺乳動物由来の細胞であって一般に入手可能な 株化細胞を利用できる。 利用する細胞株としては、 薬剤選択性を有し、 未融合の状態では選択培地(例えば HAT培地)で生存できず、抗体産生細胞 と融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが好ましい。 ミエ口 一マ細胞の具体例としては、 P3X63 - Ag. 8. Ul (P3U1)、 P3/NSI/1- Ag4- 1、 S P2/0 - Ag 14等のマウスミエローマ細胞株が挙げられる。
細胞融合は、血清を含まない DMEM、 RPMI- 1640培地等の動物細胞培養用 培地中に、 抗体産生細胞とミエローマ細胞とを所定の割合 (例えば 1 : 1〜 1 : 1 0 ) で混合し、 ポリエチレングリコール等の細胞融合促進剤 の存在下で、 又は電気パルス処理(例えばエレク トロポレーシヨン)によ り融合反応を行う。
細胞融合処理後、 選択培地を用いて培養し、 目的とするハイプリ ドー マを選別する。 次いで、 増殖したハイプリ ドーマの培養上清中に、 目的 とする抗体が存在するか否かをスクリーユングする。 ハイブリ ドーマの
スクリーユングは、 通常の方法に従えばよく、 特に限定されるものでは ない。 例えば、 ハイプリ ドーマとして生育したゥエルに含まれる培養上 清の一部を採集し、 酵素免疫測定法 (ELISA)、 放射性免疫測定法(RIA) 等によってスクリ一-ングできる。
ハイプリ ドーマのクローニングは、 例えば、 限界希釈法、 軟寒天法、 フイブリンゲル法、 蛍光励起セルソーター法等により行うことができ、 最終的にモノクローナル抗体を産生するハイプリ ドーマを取得する。
取得したハイプリ ドーマからモノクローナル抗体を採取する方法とし ては、 通常の細胞培養法等を利用することができる。 細胞培養法におい ては、 例えばハイブリ ドーマを 10〜20%牛胎児血清含有 RPMI- 1640培地、 MEM培地等の動物細胞培養培地中、 通常の培養条件(例えば 37°C, 5 % C02 濃度)で 3〜 1 0日間培養することにより、その培養上清からモノクロ一 ナル抗体を取得することができる。 また、 ハイプリ ドーマをマウス等の 腹腔内に移植し、 1 0〜 1 4日後に腹水を採取し、 当該腹水からモノク ローナル抗体を取得することもできる。
モノクローナル抗体の精製が必要とされる場合は、 硫酸アンモニゥム による塩析、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換ク口マトグラフィー、 ァフィ二ティークロマトグラフィ一等の公知の方法を適宜選択して又は これらを組み合わせて利用できる。
モノクローナル抗体をヒ トに投与する目的 (抗体治療) で使用する場 合には、 免疫原性を低下させるため、 ヒ ト抗体又はヒ ト型化抗体を使用 することが好ましい。 ヒ ト抗体又はヒ ト型化抗体は、 例えば、 免疫動物 としてヒ ト抗体遺伝子を導入したマウス等を用いてハイプリ ドーマを作 製することにより、 また、 ファージ上に抗体を提示したライブラリーを 用いることにより取得できる。 具体的には、 ヒ ト抗体遺伝子のレパート リーを有する トランスジエニック動物に、 抗原となるタンパク質、 タン
パク質発現細胞又はその溶解物を免疫して抗体産生細胞を取得し、 これ をミエローマ細胞と融合させたハイプリ ドーマを用いて目的のタンパク 質に対するヒ ト抗体を取得できる (国際公開番号 W092- 03918、 W093-222 7、 W094 - 02602、 W096 - 33735及び簡 6 - 34096参照)。 また、 複数の異なる ヒ ト scFvをファージ上に提示させた抗体ライブラリーから、 抗原となる タンパク質、 タンパク質発現細胞又はその溶解物に結合する抗体を提示 しているファージを選り分けることで、 目的のタンパク質に結合する sc Fvを選択できる■ (Griffiths.等, EMBO J. 12, 725-734, 1"3)。
本発明のスク リーニング方法は、 試験物質とタンパク質 (a ) 又は ( b)とを接触させる工程を含む。本発明のスクリ一二ング方法によれば、 試験物質とタンパク質 (a ) 又は (b) とを接触させ、 試験物質がタン パク質 (a) 又は (b) に結合するか否かを判別することにより、 アデ ィポネクチン受容体に対するリガンド、 ァゴニス ト又はアンタゴニス ト をスクリーエングできる。 スクリーニングされた物質は、 アディポネク チン受容体に対するリガンド、 ァゴ-ス ト又はアンタゴニス トとしての 作用を実際に有するか否かを判別する工程にさらに供することが好まし レ、。
試験物質の種類は特に限定されるものではないが、 例えば、 高分子化 合物、 低分子化合物、 細胞培養物、 組織抽出物等が挙げられる。
スクリーニングの際には、 タンパク質 (a) 又は (b) として、 例え ば、 (i) タンパク質 (a) 又は (b) を発現している細胞若しくは組織 又はそれらの処理物 (ii) DNA組換え技術を用いて、 タンパク質 (a ) 又は (b) をコードする DNAを大腸菌、 酵母、 昆虫細胞、 動物細胞 等の宿主に導入して発現させた組換えタンパク質、 (iii) 化学合成した ペプチド等を使用できる。 タンパク質 (a) 又は (b) を発現している 細胞又は組織は、 タンパク質 (a ) 又は (b) を内因性タンパク質とし
て発現している細胞又は組織 (例えば、 筋細胞、 骨格筋、 心臓、 マクロ ファージ、 血管、 脳、 腎臓、 肺、 胎盤、 脾臓、 精巣、 末梢血液、 胸腺、 腸管等) であってもよいし、 外因性タンパク質として発現している細胞 又は組織 (例えば、 タンパク質 (a ) 又は (b) をコードする DNAを 導入した大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等) であってもよい。 また、 細胞又は組織の処理物は、 細胞又は組織に、 破砕、 抽出、 精製等の処理 を施したものであり、 細胞又は組織の処理物としては、 例えば、 細胞又 は組織の細胞膜画分が挙げられる。
試験物質がアディポネクチン受容体に対するリガンド、 ァゴニス ト又 はアンタゴ-ス トとしての作用を有するか否かは、 例えば、 タンパク質 (a ) 又は (d) に対する試験物質の結合量、 試験物質とタンパク質 ( a ) 又は (b) との結合により生じる細胞応答の有無又は程度に基づい て判別できる。
タンパク質 (a ) 又は (b) に対する試験物質の結合量は、 例えば、 標識した試験物質、試験物質に対する標識抗体等を使用して測定できる。 標識としては、 例えば、 3H、 14C、 125 I、 35 S、 32 P等の放射性同 位体元素、 蛍光色素等を使用できる。 放射性同位体元素の放射活性は、 例えば、 液体シンチレーシヨンカウンター、 X線フィルム、 イメージン グプレート等を用いて測定でき、 蛍光色素の蛍光強度は、 例えば、 C C Dカメラ、 蛍光スキャナー、 分光蛍光光度計等を用いて測定できる。
試験物質とタンパク質 ( a ) 又は (b ) との結合により生じる細胞応 答としては、 例えば、 PPARaリガンド活性の亢進又は抑制、 脂肪酸酸化 の亢進又は抑制、 グルコース取り込みの亢進又は抑制、 細胞内 pHの上昇 又は低下、 AMPキナーぜ活性の増加又は低下、 AMPキナーゼのリン酸化の 増加又は低下、 p38 MAPキナーゼ活性の増加又は低下、 p38 MAPキナーゼ のリン酸化の増加又は低下、 糖新生の促進又は抑制、 脱共役蛋白の増加
又は低下等が挙げられる。
タンパク質 (a ) 又は (b ) に対する試験物質の結合量の測定、 及び 細胞応答の有無又は程度の測定にあたっては、 タンパク質 (a ) 又は ( b ) の存在下及び不存在下における測定値を比較することが好ましい。 脂肪細胞は主要なィンスリン感受性ホルモンとしてアディポネクチン を分泌し、 脂肪細胞肥大はアディポネクチン分泌低下を惹起し、 アディ ポネクチン分泌低下はインスリン抵抗性を惹起する。 そして、 インスリ ン抵抗性は、 糖尿病、 高脂血症、 高血圧を惹起する。 また、 アディポネ クチン分泌低下は動脈硬化を促進させる。 したがって、 アディポネクチ ン受容体に対するァゴエス ト又はアンタゴニストとしてスクリ一二ソザ された物質は、例えば、インスリン抵抗性改善薬、糖尿病予防 ·治療薬、 高脂血症予防 ·治療薬、 高血圧予防 ·治療薬、 動脈硬化予防 ·治療薬、 肥満予防 ·治療薬、 抗炎症薬、 骨粗鬆症予防 ·治療薬、 抗癌剤等として 使用できる。
これらの薬剤はスクリ一二ングされた物質のみから構成してもよいが、 通常は、 薬学的に許容され得る賦形剤その他任意の添加剤を用いて製剤 化する。 製剤化にあたっては、 例えば、 賦形剤、 結合剤、 崩壌剤、 滑沢 剤、 安定剤、 矯味矯臭剤、 希釈剤、 注射剤用溶剤等の添加剤を使用でき る。 投与経路としては、 例えば、 経口投与、 非経口投与 (例えば、 皮下 投与、 筋肉内投与、 腹腔内投与等) が挙げられ、 投与剤形としては、 例 えば、 噴霧剤、 カプセル剤、 錠剤、 顆粒剤、 シロップ剤、 乳剤、 座剤、 注射剤、 懸濁剤等が挙げられる。 投与量及び投与回数は、 目的とする作 用効果、投与方法、治療期間、 患者の年齢、体重、性別等により異なり、 スクリ一ユングされた物質の種類に応じて適宜調節できる。
タンパク質 (a ) 又は (b )、 タンパク質 (a ) 又は (b ) をコードす る遺伝子、 該遺伝子を含有する組換えベクター又は該組換えベクターを
含む形質転換体は、 アディポネクチン受容体に対するリ ガンド、 ァゴニ ス ト又はアンタゴ -ス トのスク リーニング用キッ トの構成要素として利 用できる。 これらは、 タンパク質 (a ) 又は (b ) の供給源としてスク リ一エング用キットに含まれる。
スクリ一二ング用キットは、 タンパク質 ( a ) 又は (b )、 タンパク質 ( a ) 又は (b ) をコードする遺伝子、 該遺伝子を含有する組換えべク ター又は該組換えベクターを含む形質転換体を含む限り、 いかなる形態 であってもよく、 各種試薬 (例えば、 緩衝液等)、 測定機械器具、 標識化 合物、 モデル動物、 細胞株、 細胞培養用培地等を含むことができる。
〔実施例〕
以下、 実施例に関する本文及び図において、 アディポネクチンを 「Ad ipoj と、 globularドメインのみからなるアディポネクチンを 「globula r AdiPo」 又は 「gAd」 と、 全長アディポネクチンを 「全長 Adipo」 又は 「 Adj という場合がある。 また、 アディポネクチン受容体を 「AdipoR」 と、 ヒ ト由来アディポネクチン受容体を 「hAdipoR」 と、 マウス由来アディポ ネクチン受容体を 「mAdipoR」 という場合がある。 また、 「AdipoRl」 及び 「AdipoR2j はァミノ酸配列が異なるアディポネクチン受容体を表す。
1 . 実験方法
( 1 ) レトロウイルスの作製及び感染
レトロ ウィルス含有上清を作製するために、 リボフエタタミン PLUS (L ife Technologies) を用いて、 107個の Plat - E packaging細胞 (Morita, S.ら, Gene Ther. 7, 1063 - 1066 (2000) ) に、 ヒ ト骨格筋 cDNAライブラ リー (Clontech) 10 μ gを一過性にトランスフエク トした。 24時間インキ ュベーシヨンした後、 上清 (10mL) を回収した。 Ba/F3細胞に、 ポリブレ
ン (hexadimethrine , S i gma) 10 μ g/mLを添加した 1/20倍希釈上清 (推定 m. 0. i=0. 3) を感染させた。 6時間後、 培養液を交換し、 Ba/F3細胞を 6 日間培養して増殖させた後、 冷凍保存又は細胞選別を行った。
( 2 ) FACS解析及び cDNAの配列決定
FACS解析は、 Stoeckl inらの方法 (Stoeckl in, G.ら, EMBO J. 21, 47 09-4718. (2000) ) に従って行った。 細胞選別のために、 ヒ ト骨格筋 cDN Aライブラリーをトランスフエク トした Ba/F3細胞 1 X 107個力 ら FACVant age (Becton Dickinson) を用いて細胞を濃縮した。 細胞を回収し、 増殖 させた後、 11日後に FACS解析に供した。 選別された細胞をさらに増殖し て FACS解析に供した。 選別された細胞に組み込まれた cDNAの配列決定を 行うために、 レトロウィルスべクターに対する上流及び下流のプライマ 一を用いて、 選別された細胞から抽出されたゲノム DNA 50ngを鎵型とし て PCRを行い、 得られた PCR増幅断片の配列決定を行った。
PCRは、 Taqポジメラーゼ (Perkin— Elmer/Cetus) を用レヽて、 94。Cで 1 分間、 56°Cで 2分間、 72°Cで 3分間のサイクルを 35サイクル行った。 レ ト ロウィルスベクターに対するプライマー (pLIBプライマー) は以下のと おりである。
5 プフイマ一 : 5 - agccctcactccttctctag - 3'
3 プフィマー : 5 - acctacaggtggggtctttcattccc -3'
PCR産物は、 プライマーを除去した後、 BigDye Terrainater Ki t (Appl ied Biosystems) を用いた direct sequenceにより塩基配列を決定した。
( 3 ) ノーザンプロット解析
ヒ トの様々な組織 (脳、 心臓、 骨格筋、 大腸、 胸腺、 脾臓、 腎臓、 肝 臓、 小腸、 胎盤、 肺、 末梢血白血球) のノーザンプロッ トフィルタ I
及び I Iを Clonetechより購入した。 これらのフィルターを、 4 X SSC、 5 X D enhardt' s溶液、 0. 2 % SDS、 200mg/raL サケ精子 DNA、及び 50 % ホルムァ ミ ドを含有するハイブリダィゼーシヨン緩衝液中、 42°Cで 24時間、 [32P ] dCTP 標識した cDNAプローブ (ヒ ト AdipoRl cDNA、 マウス AdipoRl cDN A、 ヒ ト又はマウス AdipoR2 cDNAをそれぞれ PstI/BstXI、 BamHI/PstI、 E coRV/Notlを処理して得られた断片) とハイブリダィズさせた。 0. 1 X SS C、 0. 1 % SDS、 65°Cの条件でフィルターを洗浄した後、 オートラジオグ ラフィ一に供した。 同様のノーザンプロッ ト解析をマウスの様々な組織 (脳、 心臓、 腎臓、 肝臓、 肺、 骨格筋、 脾臓、 精巣) についても行った。
( 4 ) 哺乳動物細胞におけるタンパク質の発現及ぴ性状決定
AdipoRl cDNA又は AdipoR2 cDNAを pCXN2 (Kinoshita, S. ら, Pharm.
Res. 15, 1851-1856 (1998) )の EcoRV/Notl部位にライゲートすることに より、 AdipoRl又は AdipoR2 発現ベクターを構築した。 HEK- 293T (human embryoni c kidney cel ls: ヒ ト胎児腎臓細胞)、 HAEC (Normal Human Ao rtic Endothelial Cells :正常ヒ ト大動脈内皮細胞) 及び C2C12筋細胞 ( マウス筋細胞株) を DMEM中で培養した。 培養液には、 10%ゥシ胎児血清 (FCS) を含有させた。 DNAトランスフエクシヨンは、 いずれの細胞につ いても、 リポフエクタミン PLUS (Gibco BRL) を用いたリポフエクシヨン によって行った。
( 5 ) C2C12筋細胞における RNA干渉 (RNA interference)
Karpichevらの方法 (Karpichev, ら, J. Biol. Chem. 277, 1960
9-19617 (2002) ) に従い、 二組の siRNAを化学合成し、 アニーリングさせ 、 リポフエクタミン PLUS (Life Technologies) を用いて、 コンフノレェン トから 2日後にゥマ血清含有 DMEMで 4〜 7日間培養して筋管細胞に分化
させた C2C12筋細胞にトランスフエク トした。肝細胞又は HAECについても 同様に siRNAをトランスフエタ トした。 siRNAのトランスフエクショ ン 48 時間後、 細胞を溶解した。
無関係なコン トロール siRNA (siRNA unrelated) の塩基配列は次のと おりである。
Unrelated- sense: gugcgcugcuggugccaaccctt
Unre 1 at ed-anti sense: ggguuggcaccagcagcgcactt
マウス AdipoRl遺伝子のコーディング領域に対応する siRNA (siRNA mA dipoRl) の塩基配列は次のとおりである。
siRNA mAdipoRl— sense : gagacuggcaacaucuggacatt
siRNA mAdipoRl-anti sense: uguccagauguugccagucuctt
マウス AdipoR2遺伝子のコーディング領域に対応する siRNA (siRNA mA dipoR2) の塩基配列は次のとおりである。
siRNA mAdipoR2-sense: gcuuagagacaccuguuuguutt
siRNA mAdipoR2~anti sense : aacaaacaggugucucuaagctt
ヒ ト AdipoRl遺伝子のコーディング領域に対応する siRNA (siRNA hAdi poRl) の塩基配列は次のとおりである。
siRNA hAdipoRl - sense : ggacaacgacuaucugcuacatt
siRNA nAdipoRl-anti sense : uguagcagauagucguugucctt
ヒ ト AdipoR2遺伝子のコーディング領域に対応する siRNA (siRNA hAdi poR2) の塩基配列は次のとおりである。
siRNA hAdipoR2-sense: ggaguuucguuucaugaucggtt
siRNA hAdipoR2-anti sense : ccgaucaugaaacgaaacucctt
( 6 ) PPAR a (Peroxisome prolif erator-activated receptor :ぺノレ ォキシソーム増殖因子活性化受容体 α ) リガンド活性の測定
大腸菌を用いて発現させたマウス globular Adipo及ぴ全長 Adipoを、 Y amauchiらの方法 (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288 - 1295. (2002) ) に従って精製した。 Yamauchiらの方法 (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288-1295. (2002) ) に従って、分化した C2C12筋細胞又は単離した肝 細胞を所定濃度のアディポネクチンで処理した。 PPAR aリガンド活性は、 Yamauchiらの方法 (Yamauchi, T.ら, J. Biol. Chem. 278, 2461-2468 (2002) ) に従って、 (UAS) X 4-tk- LUC リポータープラスミ ド、 GAL4-rat PPAR a リガンド結合ドメイン発現プラスミ ド、 及ぴ ]3 -ガラク トシダー ゼ発現プラスミ ド (内部コントロール) を用いて定量した。
( 7 ) 脂質及びグルコース代謝
Yamauchiらの方法 (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 7, 941—946. (2001) ) に従って、 細胞溶解物を用いて [1-"C] パルミチン酸からの [14C] C02 産生を測定した。 また、 Yamauchiらの方法 (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288-1295. (2002) ) に従って、 グルコース取り込みを測定した。
( 8 ) 優性阻害型 (dominant negative) AMPキナーゼ (AMPK) を用いた 研究
ひ 2 AMPK (45番目のリジン残基がアルギニン残基に置換された変異を 含む) をコードする cDNAを DN -ひ 2AMPKとして用いた (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288-1295. (2002) )。 C2C12筋細胞に、 コントロール Mock ベクター又は匪 _ α 2ΑΜΡΚを含有する等しい力価のアデノウィルスを感染 させた。 Yamauchiらの方法(Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288 - 1295.
(2002) ) に従って、 分化の誘導の 5日後に、 細胞を所定濃度のアディポ ネクチンで処理して、 PPAR o:リガンド活性及び脂肪酸酸化を測定した。
( 9 ) 結合アツセィ
合成ヒ 卜又はマウス Adipoの Tyrを、 a125I (2000Ci/ramol, Amershara P harmacia Biotech) の存在下、 I0D0-ビーズ(Pierce)により125Iで標識し た。 組換え globular Adipo又は全長 Adipoを NHS- LC-ビォチン (Pierce) を用いてビォチン化した。 細胞を 96we l lプレート上に 4. 1 X 104個/ wel l の密度で播き、 一晩培養した後、 培養液を除去し、 細胞を 37°Cで一晩、 所定濃度の [125I] Adipo及び非標識競合物質を含有する結合アツセィ用 緩衝液(HEPES緩衝化生理食塩水 /0. 1 %ゥシ血清アルブミン) とィンキュ ベートした。 その後、 YamaucMらの方法 (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288-1295. (2002) ; Yokomizo, T. ら, Nature 387, 620-624 (1997) ) に従って、 細胞を氷冷リン酸緩衝化生理食塩水で 3回洗浄し、 0. 1N N a0H/0. 1 % SDSで溶解し、細胞に結合した放射活性を γカウンターで測定 した。
( 10) 蛍光顕微鏡による解析
AdipoRl又は AdipoR2の細胞内局在を、 293T細胞を用いて、 共焦点蛍光 顕微鏡により評価した。 細胞を 1 %パラホルムアルデヒ ドで固定した後、 5倍希釈した透過緩衝液 (permeabi l ization buffer) (Coulter) を用い て透過させて又は透過させずに、 抗 FLAG抗体 (M2; 30 g/mL) と 22°Cで 1時間ィンキュベートした。次いで、 AlexFluor 488を結合させた二次抗 体 10 μ g/mLとともにインキュベートした。 次いで、 ェコン顕微鏡及びク リプトン/アルゴンレーザー (488mn) を備えたレーザスキャンニング顕 微鏡システムを用いて共焦点イメージングを行った。
( 11) AdipoRl遺伝子及び AdipoR2遺伝子の転写物のリアルタイム PCRによ る定量的解析
Hei dらの方法(Hei d, C丄ら, Genome Res. 6, 986-994 (1996) ) に従 つて、 ヒ ト AdipoRl遺伝子、 ヒ ト AdipoR2遺伝子、 マウス AdipoRl遺伝子及 びマウス AdipoR2遺伝子に関する 4種類の転写物の定量をリアルタイム P CRによって行った。 それぞれの転写物に関するプライマー及ぴプローブ は以下のとおりである。 PCR産物は、 ABI PRISM7700 Sequence Detectio n Syst em (Appl i ed Biosystems) を用いて連続的に測定した。 それぞれ の転写物の相対量をァクチンの転写物量に対して標準化した。
[マウス AdipoRl遺伝子]
forward プフイマ一: 5 - acgttggagagtcatcccgtat -3'
reverse ァフ マー : 5 - ctctgtgtggatgcggaagat - 3'
フ 口 " ~フ : 5 一 cctgctacatggccacagaccacct - 3 minor groove binder を担持)
[マウス AdipoR2遺伝子]
forward プフィマー: 5 一 tcccaggaagatgaagggtttat - 3,
reverse プフイマ一 : 5 - ttccattcgttcgatagcatga-3'
プローブ: 5 - atgtccccgctcctacaggccc -3 (minor groove binderを担 持)
[ヒ ト AdipoRl遺伝子]
forward プフィマー: 5 一 ttcttcctcatggctgtgatgt -3,
reverse ァフイマ一 : 5 - aagaagcgctcaggaattcg - ,
フローブ: 5 一 tcactggagctggcctttatgctgc -3 ^minor groove binder を担持)
[ヒ ト AdipoR2遺伝子]
iorward プフづマー : 5 一 atagggcagataggctggttga -3,
reverse プフイマ一 : 5 ggatccgggcagcataca -3,
プ 1 ~ブ: 5 - ctgatggccagcctctacatcacagga - 3, (minor groove binde
rを担持)
( 12) 細胞内カルシウム濃度、 cAMP量及び cGMP量の測定
細胞内 Ca2+濃度は、 Yokomizoらの方法 (Yokomizo, T. ら, Nature 387, 620-624 (1997) ) に従って測定した。 すなわち、 細胞に、 Hepes-Tyrod e, s BSA緩衝液(25mM Hepes-NaOH (pH 7. 4), 140mM NaCl, 2. 7mM KC1, 1. OmM CaCl2) 12mM NaHC03, 5. 6mM D—ク、 'ノレコース, 0. 37raM NaH2P04, 0. 49m M MgCl2, 0. 1 % [wt/vol]脂肪酸不含 BSA ; Fraction V) に溶解した ΙΟ μ Μ Fura-2 AM (Dojin) を 37°Cで 2時間接触させた。 細胞を 2回洗浄し、 He pes-Tyrode' s BSA緩衝液に 106細胞/ mLの濃度で懸濁させた。 0. 5mLの細胞 懸濁液を CAF- 100 system (Jasco) にアプライし、 のリガンドのェ タノール溶液 (LTB4用) 又は PBS溶液 (Adipo用) を加えた。 340mn及び 3 80nmの励起光によつて発せられる 500讓の蛍光の割合に基づいて細胞内 C a2+濃度を測定した。
また、 cAMP量及び cGMP量は、 Yokomizoらの方法 (Yokomizo, T.ら, Na ture 387, 620— 624 (1997) ) こ従レヽ、 アツセィキット (cAMP: Biotrak cAMP EIAシステム, cGMP: Biotrak cGMP EIAシステム) (Amersham Phar macia Biotech) を用いて、 製造業者のプロ トコルに基づき測定した。
( 13) AdipoRl及び AdipoR2の構造予測
Kyte-Dool itleのハイ ドロパシーィンデックスを用いて、 AdipoRl及び A dipoR2夕ンノヽ0ク質のノ、ィ ド ΐ3ノ シ一プロ y 卜 (hydropathy plot) を行つ た。 また、 AdipoRl及び AdipoR2の構造モデルを S0SUIによって予測し、 P RINTS (http: //bioinf . man. ac. uk/dbbrowser/PRINTS/) によってコンセ ンサス配列を解析した。 さらに、 リン酸化部位を DNASIS Pro.によって解 析した。 さらに、 AdipoRl/R2がその他のクラスの GPCRとホモロジ一を有
する力否力 を http : //cbrg. inf. ethz. ch/Server/Al lAl l. htmlに記載の方 法により解析した。
( 14) AMPキナーゼ (AMPK)、 ACC、 p38 MAPキナーゼ (P38 MAPK) 及び MA Pキナーゼ (MAPK) のリン酸化及びリン酸化量の測定
AMPK、 ACC (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288 - 1295. (2002) )、 p3 8 MAPK及び MAPK (Barger, P. M.ら, J. Biol. Chem. 276, 44495-44501
(2001); Puigserver, P.ら, Mol. Cel l 8, 971-982 (2001); Michael, L. F. ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 3820 - 3825 (2001) ) のリ ン 酸化及ぴリン酸化量を、抗リン酸化 AMPK抗体、抗リン酸化 ACC抗体、抗リ ン酸化 p38 MAPK抗体又は抗リン酸化 MAPK抗体を利用したウェスタンプロ ッティング法により測定した。 この際、 AdipoRlをトランスフエタ トした 又はしていない C2C 12細胞又は肝細胞を 0. 1 μ g/mL gAd又は 1 g/mLとと もに 10分間ィンキュベートした後、 各細胞の溶解物と各抗体とを反応さ せた。 · 3^:
( 1 ) AdipoRl及び AdipoR2の発現クローニング
筋肉において、 globular Adipoは全長 Adipoよりもインスリン抵抗性を 改善させ、 PPARひ及ぴ脂肪酸酸化を活性化させる (Fruebis, J. ら, Pr oc. Nat l. Acad. Sci. U S A. 98, 2005-2010 (2001) ; Yamauchi , T. ら, Nat. Med. 7, 941-946 (2001) ; Yamauchi, T.ら, J. Biol. Chem. 278, 2461-2468 (2002) )。 さらに、 globular Adipoは全長 Adipoよりも C 2C12筋細胞に強く結合するとともに、 肝細胞及び肝臓の膜よりも骨格筋 の膜に強く結合する (Yamauchi, T.ら, Nat. Med. 8, 1288-1295. (200 2) ) (図 1 a , b参照)。 図 1 aは、 globular Adipo又は全長 Adipoと C2C
12筋細胞との結合、図 1 bは globular Adipo又は全長 Adipoと肝細胞との 結合を示す。 細胞は、 図示する濃度のピオチン化 globular Adipo又は全 長 Adipoとともにィンキュベートし、 細胞表面に結合したビォチン化 glo bular Adipo又は全長 Adipoは ELISAにより定量した。図中のそれぞれのバ 一は平均ィ直士 s. e. (n=3-5) を示し、 「 」 は Pく 0. 05、 厂※※」 は Pく 0. 01を示 す。
そこで、ヒ ト骨格筋の mRNA由来の cDNAを組み込んだレト口ウィルスを B a/F3細胞に感染させて作製したライブラリーから、 globular Adipoに対 する結合能を有するタンパク質をスクリーユングすることにより、 Adip oRlの cDNAの単離を試みた。
感染させた Ba/F3細胞を回収し、ビォチン化した globular Adipoとィン キュペートした後、 ストレプトアビジンを結合させたフィコエリ トリン (phycoerythrin: PE) (赤色蛍光プローブ) で染色し、 蛍光活性化セル ソーター (fluorescence-activated cel l sorting: FAC¾ 【こ した ( |¾ 1 c参照)。 FACS解析の結果を図 1 c, d , eに示す。 図 1 cは、 感染後 であるが、 第一の選別前の Ba/F3細胞を示し、 図 1 dは、 第三の選別前の Ba/F3細胞を示し、 図 1 eは、 FITC (fluorescein isothiocyanate) を結 合させた globular Adipoとィンキュベートした後であるが、 第四の選別 前の Ba/F3細胞を示す。 また、 図 l c, d , eにおいて、 四角で囲まれた 領域は、 AdipoRl陽性細胞を示し、 四角内の細胞は選別された細胞を示す 選別された globular Adipo結合能を有する細胞を第二ラウンド目の選 別に供した。 再選別された globular Adipo結合能を有する細胞 (図 1 d 参照) を第三ラウンド目の選別に供し、 再選別された細胞を直ちに FITC (fluorescein i sothiocyanate) (緑色蛍光プローブ) を結合させた glo bular Adipoとインキュベートした。 赤色から緑色に変化した細胞が glo
bular Adipoに対する特異的結合部位を有する細胞であるから(図 1 e参 照)、そのように変化した細胞のみを選別し、 さらなる分析のために培養 により増殖させた。 これらの細胞から抽出したゲノム DNAを、 ウィルスべ クタ一に対するプライマーを用いた PCRに供し、 配列決定した。
なお、 上記のように細胞を二色 (赤色及び緑色) で染色したのは、 gl obular Adipoがその粘着性によって非特異的に結合した細胞を除去する ためである。
配列決定されたヒ ト AdipoRl cDNAの塩基配列を配列番号 1に示し、 そ れにコー ドされるタンパク質(ヒ ト AdipoRl) のアミノ酸配列を配列番号 2に示す。 また、 C2C12筋細胞から同様の方法によって取得したマウス A dipoRl cDNAの塩基配列を配列番号 5に示し、それにコードされるタンパ ク質 (マウス AdipoRl) のアミノ酸配列を配列番号 6に示す。 ヒ ト Adipo Rl cDNA (配列番号 1 ) 及ぴマウス AdipoRl cDNA (配列番号 5 ) は、 375 個のアミノ酸からなるタンパク質をコードする遺伝子であることが判明 した (図 1 f 参照)。 ヒ ト AdipoRl及びマウス AdipoRlのアミノ酸配列の相 同性は 96. 8%である (図 1 f 参照)。 図 1 ίは、 データベース (ΝΙΗ- MGC Project and NCBI contig)における AdipoRl遺伝子及び AdipoR2遺伝子の 転写物の模式的構造を示す。
これまでの知見 (Yamauchi, T. ら, Nat. Med. 8, 1288-1295. (2002) ; Yaraauchi, T.ら, J. Biol. Chera. 278, 2461-2468 (2002) ) 力、ら、 Ad ipoRには、 globular Adipo又は全長 Adipoに対する結合親和性が異なる 2 種類のタイプ、 すなわち、 骨格筋で発現する globular Adipoに優先的に 結合するタイブと、肝臓で発現する全長 Adipoにのみ結合するタイブとが 存在すると考えられる。
AdipoRlとホモロジ一を有するタンパク質を調査したところ、ヒ ト及び マウスに関するテータベース (The Human Genome, http : //ww. ncbi. nl
m. nih. gov/genome/guide/human/ ; Mouse Genome Resources, http: //w ww. ncbi. nlm. nih. gov/genome/guide/mouse/) (Waterston, R. H. ら, Na ture 420, 520 - 562 (2002) ; Okazaki, Y. ら, Nature 420, 563 - 573 (2 002) ) において、 AdipoRl cDNAとは異なるオープンリーディングフレー ム (0RF) を有する遺伝子が発見された。 そこで、 この cDNAを HePG2細胞 (ヒ ト肝癌由来細胞株) の mRNAからクローユングし、配列決定し、 この c DNAにコードされているタンパク質を AdipoR2と名付けた。 配列決定され たヒ ト AdipoR2 cDNAの塩基配列を配列番号 3に示し、 それにコードされ るタンパク質 (ヒ ト AdipoR2) のアミノ酸配列を配列番号 4に示す。 また 、C2C12筋細胞から同様の方法によつて取得したマウス AdipoR2 cDNAの塩 基配列を配列番号 7に示し、 それにコードされるタンパク質 (マウス Ad ipoR2) のァミノ酸配列を配列番号 8に示す。
ヒ ト AdipoR2及びマウス AdipoR2のァミノ酸配列の相同性は 95. 2%であ る。 また、 AdipoRl及び AdipoR2は構造的に高度に類似しており、 マウス A dipoRl及び AdipoR2のァミノ酸配列の相同性は 66. 7%である。
SWISS- PR0Tにおいて、 AdipoRl及び AdipoR2と相同性が高い哺乳動物の タンパク質は存在しなかったが、 興味深いことに、 AdipoRl及び AdipoR2 をコードする cDNAは、 酵母 Y0L002c (Karpichev, I. V.ら, J. Biol. Che m. 277, 19609-19617. (2002) )とホモロジ一を有していた。 YOL002cは、 脂肪酸酸化等の脂質の代謝経路において重要な役割を果たす 7回膜貫通 型タンパク質をコードすると報告されている (Karpichev, I. V.ら, J. Biol. Chem. 277, 19609-19617 (2002) )。 種を問わず、 7回膜貫通構造 を有する AdiPOR/Y0L002cは、 脂肪酸酸化等の脂肪代謝において重要な制 御シグナルを媒介すると考えられる。
( 2 ) AdipoRl及び AdipoR2の組織分布
マウスの様々な組織に関するノーザンプロット解析の結果を図 1 gに 示し、 ヒ トの様々な組織に関するノーザンブロッ ト解析の結果を図 1 h に示す。 図 l g中、 レーン 1は脳、 レーン 2は心臓、 レーン 3は腎臓、 レーン 4は肝臓、 レーン 5は肺、 レーン 6は骨格筋、 レーン 7は脾臓、 レーン 8は精巣の結果を示し、 図 l h中、 レーン 1は脳、 レーン 2は心 臓、 レーン 3は骨格筋、 レーン 4は大腸、 レーン 5は胸腺、 レーン 6は 脾臓、 レーン 7は腎臓、 レーン 8は肝臓、 レーン 9は小腸、 レーン 10は 胎盤、 レーン 11は肺、 レーン 12は末梢血白血球の結果を示す。
ヒ ト及ぴマウスの様々な組織に関するノーザンプロッ ト解析によって、 上記データベースにおいて予測された mRNAのサイズを有する 2. Okbの一 本の主要なバンドが同定され、 AdipoRlがほとんどの組織で発現しており 、 骨格筋において高度に発現していることが明らかになった。 また、 上 記データベースにおいて予測された mRNAのサイズを有する 4. Okbの一本 の主要なバンドが同定され、 AdipoR2が肝臓において高度に発現している ことが明らかになった。
( 3 ) AdipoRl及び AdipoR2の細胞内局在
マウス AdipoRlの推定アミノ酸配列 (配列番号 6 ) から、 マウス Adipo R1は 375個のァミノ酸からなるタンパク質であり、 その分子量は 42. 4kDa と予測される。 また、 マウス AdipoR2の推定アミノ酸配列 (配列番号 8 ) から、 マウス AdipoR2は 311個のアミノ酸からなるタンパク質であり、 そ の分子量は 35. 4kDaと予想される (図 2 a参照)。 図 2 aは、 ソフトゥェ ァ PRINTS (http : //bioinf. man. ac. uk/dbbrowser/PRINTS/) によって Adi poRの配列をスキャンした結果であり、 図中、 下線領域は、 AdipoRl及び A dipoR2の 7個の膜貫通ドメインを示し、 太字の下線部は、 Gタンパク質 結合受容体のメンバーに特徴的な保存モチーフを示す。 また、 図 2 aに
は、 PKCリン酸化部位及ぴチロシンリン酸化部位も併せて示す。
AdipoRl及ぴ AdipoR2の推定ァミノ酸配列から AdipoRl及び AdipoR2は、 7個の膜貫通ドメインを有するタンパク質であると予測される (図 2 a 参照)。 AdipoRl又は AdipoR2について、 7個の膜貫通ドメィンを有する公 知の受容体 (Waterston, R. H. ら, Nature 420, 520 - 562 (2002) ; Okaz aki, Y. ら, Nature 420, 563-573 (2002) ; Wess, J., FASEB. J. 11, 346-354 ( 1997) ) とのァライメントを行ったが、 Gタンパク質結合受容 体 (G-protein coupled receptor: GPCR) ファミ リ一に属するメンノ 一 とのアミノ酸配列の相同性は低かった。 AdipoRl及び AdipoR2は、 Gタン パク質結合受容体ファミ リーの特徴 (例えば、 保存アミノ酸、 グリ コシ ル化部位、 Gタンパク質結合部位) (Wess, J. ら FASEB. J. 11, 346-3 54 (1997); Yokomizo, T. ら, ature 387, 620-624 (1997); Scheer, A. ら, EMB0. J. 15, 3566-3578 (1996) ) が欠落していた。 Gタンパク質結 合受容体ファミ リ一において高度に保存されているアミノ酸のうち、 Ad ipoRl及び AdipoR2の第一及び第二細胞外ループにおいて高度に保存され ている 2個の Cys¾基のうちの 1つのみが存在していた。 AdipoRl及ぴ Ad ipoR2は、 TM7の末端に存在する高度に保存された Asn_Pro- Xaa2- Tyrモチ ーフを欠落していた。 また、 AdipoRl及び AdipoR2の TM3/細胞内ループ 2 トランジションに存在する高度に保存された Asp - Arg-Tyrモチーフ (Wes s, J. ら FASEB. J. 11, 346-354 (1997); Scheer, A.ら, EMB0. J. 15, 3566-3578 (1996) ) も欠落していた。
ェピトープタグ FLAGで標識したヒ ト及ぴマウスの AdipoRl又は AdipoR2 を HEK - 293T細胞中で発現させ、 抗 FLAG抗体で免疫染色した。 ヒ ト及びマ ウス AdipoRl及び AdiPoR2は、 予想された分子量を示した (図 2 b参照)。 マウス AdipoRl又は AdipoR2の細胞内局在及ぴトポロジーを調べるため に、 いずれかの末端にェピトープタグを有する AdipoRl又は AdipoR2の cD
NAを HEK-293T細胞で発現させた (図 2 c参照)。 図 2 c中、 「intact」 は 細胞を透過させなかった場合、 「permeabil ized」 は細胞を透過させた場 合を表す。
ェピトープタブを N末端に導入した場合には、 細胞を透過させたとき のみ、 細胞表面に存在する AdipoRl及び AdipoR2を検出できた (図 2 c参 照)。 これに対して、 ェピトープタグを C末端に導入した場合には、 細胞 表面に存在する AdipoRl及ぴ AdipoR2を検出できた (図 2 c参照)。 これら の結果は、 AdipoRl及び AdipoR2が 7個の膜貫通ドメインを有する膜内在 性タンパク質であり、 その N末端は膜内に存在し、 その C末端は膜外に 存在することを示す (図 2 c, d参照)。 これは、 これまでに報告されて いる全ての Gタンパク質結合受容体 (Wess, J. ら FASEB. J. 11, 346- 354 (1997) ; Yokomizo, T.ら, Nature 387, 620-624 (1997) ; Scheer, A.ら, EMB0. J. 15, 3566-3578 ( 1996) ) と反対のトポロジーである。 な お、 図 2 dは、 AdipoRl及び AdipoR2の予測構造モデルである。
( 4 ) 293T細胞における AdipoRの発現の効果
AdipoRl又は AdipoR2を細胞表面上に過剰発現させた 293T細胞を用いて、 globular Adipo又は全長 Adipoにより亢進される結合活性及ぴ細胞内シ グナルを調べた。 293T細胞における AdipoRl又は AdipoR2の発現は、 glob ular Adipo及び全長 Adipoの両者の結合を宂進させた(図 3 a, b参照)。 図 3 aは、 AdipoRl又は AdipoR2をトランスフエタ トした 293T細胞への 25I] globular Adipo (gAd) の結合等温線 (binding isotherm) を示し、 図 3 bは、 当該 293T細胞への [1251] 全長 Adipo (Ad) の結合等温線 (bi nding isotherm) を示し、 図中、 口は Mock、 騸はマウス AdipoRl、 ·はマ ウス AdipoR2に関する結果を示す。
次に、 AdipoRl及ぴ AdipoR2がマルチマー (multitner) を形成するかど
うかを調べた。ェピトープタグ FLAGを有する AdipoRl及びェピトープタグ HAを有する AdipoRlをともに HEK- 293T細胞中で発現させた場合には、 抗 Η Α抗体を用いた免疫沈降において、 ェピトープタグ FLAGを有する AdipoR l が検出された (図 3 c参照)。 図 3 cは、 ェピトープタグ FLAG又は HAを有 する AdipoRl又は AdipoR2をトランスフエク トした 293T細胞の細胞溶解物 を、 抗 FLAG抗体 (上側及び下側のパネル) を用いて免疫沈降 (IP) した 後、 抗 FLAG抗体 (上側のパネル) 又は抗 HA抗体 (下側のパネル) で免疫 染色した結果であり、 AdipoRl及び AdipoR2によるホモ一及びへテロ一マ ルチマーの形成を示す。
さらに、 ェピトープタグ HAを有する AdipoR l及ぴェピトープタグ FLAG を有する AdipoR2をともに HEK-293T細胞中で発現させた場合には、 抗 HA 抗体を用いた免疫沈降において、 ェピトープタグ FLAGを有する AdipoR2 が検出された (図 3 c参照)。 これらの結果は、 AdipoRl及び AdipoR2がホ モー及びへテロ一マルチマーの両者を形成する可能性を示す。
GPCR又は LTB4受容体 BLT1を発現させた細胞では、 LTB4により細胞内力 ルシゥムが増加し、 AdipoRlを発現する細胞の発現レベルと類似する発現 レベルを示したが (データは示さず)、 AdipoR lを発現する細胞では、 Ad ipoによる細胞内カルシウムの変化は観察されなかった (図 3 d参照)。 図 3 dは、 Fura- 2/AMをロードしたマウス AdipoR l発現細胞又は BLT 1発現 細胞に、 10 μ g/raL gl obul ar Adipo ( gAd)、 l O ^ g/raL 全長 Adipo (Ad)、 1 μ Μ LTB4又は Ι ΟΟ μ Μ ATPをチャレンジし、 [ Ca2+] iの変化を測定した結 果である。
さらに、 AdipoRlを発現する細胞において、 AdipoRlは cAMP及び cGMPレ ベルに対して全く影響しないか、 ほとんど影響を与えなかった (図 3 e 参照)。 図 3 eはホルスコリン (forsko l in) で処理した又は処理しない H EK - 293細胞に cAMP又は cGMPを蓄積させた結果であり、 図中、 「gAd0. 01」、
「gAdO.1」はそれぞれ 0.01、 0. 1 μ g/mLの globular Adipoを表し、「Adl」、 rAdlOj はそれぞれ 1、 10μ g/mLの全長 Adipoを表す。 対照的に、 AdipoR 1の発現は、 globular Adipo及ぴ全長 Adipoによる 293T細胞内の PPAR リ ガンド活性の増加を増強した (図 3 f 参照)。 図 3 f は、 AdipoRlをトラ ンスフエタ トした 293T細胞を図示する濃度 (/z g/mL) の globular Adipo 又は全長 Adipoとィンキュベートしたときの PPARaリガンド活性を示し、 図中、 「gAd0. 1J、 「gAd0.5」、 「gAd2.5」 はそれぞれ 0.1、 0.5、 2.5 g/mL の globular Adipoを表し、 「Adl」、 「Ad5」、 「Ad25」 はそれぞれ 1、 5、 25 μ g/mLの全長 Adipoを表す。 また、 図中、 各バーは平均値土 s. e. (n=3- 5 ) を表し、 卩※」 は Pく 0.05を表し、 卩※※」 は Pく 0.01を表す。
( 5 ) C2C12筋細胞における PPAR a活性化及び脂肪酸酸化
C2C12筋細胞における AdipoRlの発現 (図 4 a参照) は、 globular Adi po及び全長 Adipoの両方の結合を促進させ (図 4 c , d参照)、 globular Adipo及び全長 Adipoによる C2C12筋細胞内の PPAR αリガンド活性(図 4 e 参照) 及び脂肪酸酸化 (図 4 f 参照) の増加と関連した。 また、 C2C12 筋細胞における AdipoR2の発現 (図 4 b参照) は、 globular Adipo及び全 長 Adipoの両方の結合を促進させ (図 4 c , d参照)、 globular Adipo及 び全長 Adipoによる C2C12筋細胞内の脂肪酸酸化の亢進 (図 4 f ) に関連 した。 図 4 aはマウス AdipoRl mRNA量を示し、 図 4 bはマウス AdipoR2 mRNA量を示し、 図中、 口は Mock、 國はマウス AdipoRl、 点線を引いた口は マウス AdipoR2に関する結果を示す。 また、 図 4 c及び dは、 マウス Adi poRl又はマウス AdipoR2をトランスフエク トした C2C12筋細胞に結合した
[125I] globular Adipo (gAd) 又は全長 Adipo (Ad) の結合等温線 (bin ding isotherm) を示し、 図中、 口は Mock、 画はマウス AdipoRl、 參はマ ウス AdipoR2に関する結果を示す。 また、 図 4 eは、 マウス AdipoRl又は
マウス AdipoR2をトランスフエク トした C2C12筋細胞に、 LacZ又は DN- a 2 AMPKを含有するアデノウイルスを感染させ、 図示する濃度 ( g/tnL) の g lobular Adipo又は全長 Adipoで 7時間処理したときの、当該 C2C12筋細胞 内の PPAR aリガンド活性を示し、 図中、 口は Mock、 画はマウス AdipoRl に関する結果を示す。 また、 図 4 ίは、 上記 C2C12筋細胞内の in vitro 脂肪酸酸化を示し、 図中、 口は Mock、 騸はマウス AdipoRl、 点線を引いた 口はマウス AdipoR2に関する結果を示す。 なお、 各図中、各バーは平均値 土 s. e. (n=3-5) を表し、 「 」 は Pく 0. 05を表し、 「※ は Pく 0. 01を表す。 優性阻害型 (dominant negative: DN) AMPキナーゼの発現は、 globul ar Adipo及ぴ全長 Adipo誘導性であって AdipoRl発現依存的な PPAR aリガ ンド活性の亢進に影響を与えなかった。 これらの結果は、 AdipoRl及び A dipoR2はともに、 globular Adipo及び全長 Adipoの結合を媒介し、 globu lar Adipo及び全長 Adipoによる PPAR aリガンド活性及び脂肪酸酸化を亢 進させることを示す。
( 6 ) 筋細胞内の AdipoRの結合及び作用に対する siRNAの影響
筋細胞において、内因性の AdipoRl及び AdipoR2が Adipoの特異的結合及 び代謝的作用を媒介しているか否かを調べるため、 s iRNAを用いて Adipo R1及び AdipoR2の発現を抑制した (図 5 a, b参照)。 図 5 aは、 s iRNA 又は mockをトランスフエク トした C2C12筋細胞内のマウス AdipoRl mRNA の量を示し、図 5 bは、 当該 C2C12筋細胞内のマウス AdipoR2 mRNAの量を 示す。 また、 図 5 a, b中、 レーン 1は mock、 レーン 2は無関係な s iRN A、 レーン 3はマウス AdipoRl遺伝子に対する siRNA、 レーン 4はマウス A dipoR2遺伝子に対する siRNAを用いた場合の結果を示す。
C2C12筋細胞において、 s iRNAにより AdipoRlの発現を抑制すると (図 5 a参照)、 globular Adipoの結合活性は全く観察されなくなり、 全長 Adi
poの結合活性は一部低下した (図 5 c , d参照)。 図 5 cは、 非標識 glo bular Adipoの濃度を増加させることによって、 二本鎖 siRNAをトランス フユク トした細胞に結合する [ I] globular Adipoを置換した競合ラジ オリガンド結合アツセィの結果 (n=4) であり、 図 5 dは、 非標識全長 A dipoの濃度を増加させることによって、二本鎖 siRNAをトランスフエク ト した細胞に結合する [1251]全長 Adipoを置換した競合ラジオリガンド.結合 ァッセィの結果(n=4)である。
globular Adipo又は全長 Adipoで 7時間処理すると、 C2C12細胞におい て、 PPAR aリガンド活性が増加し (図 5 g参照)、 脂肪酸酸化が亢進し ( 図 5 h参照)、グルコース取り込みが亢進した(図 5 i参照)。図 5 gは、 二本鎖 siRNAをトランスフエク トした C2C12筋細胞を、図示する濃度 ( μ g /mL) の globular Adipo又は全長 Adipo、 あるいは 10— 5 M Wy - 14, 643 (図 中 「Wy」 と記載) と 7時間インキュベートしたときの PPAR aリガンド活 性を示す。 図 5 hは、 二本鎖 siRNAをトランスフエタ トした C2C12筋細胞 を、 図示する濃度 (/x g/mL) の globular Adipo又は全長 Adipo、 あるいは 10— 5 M Wy - 14, 643 (図中 「Wy」 と記載) と 7時間インキュベートしたと きの in vitro 脂肪酸酸化を示す。 図 5 iは、 二本鎖 siRNAをトランスフ ェタ トした C2C12筋細胞を、 図示する濃度 (/i g/mL) の globular Adipo 又は全長 Adipo、 あるいは 10—7M インスリ ン (図中 「Ins J と記載) と 7 時間ィンキュベートしたときのグルコース取り込みを示す。 図 5 g〜 i において、 「gAd0. 01」、 「gAd0, 03」、 「gAd0. 1」、 「gAd0. 5」、 「gAd2. 5」 はそ れぞれ 0. 01、 0. 03、 0. 1、 0. 5、 2. 5 μ g/mLの globular Adipoを表し、 「Ad 0. 1」、 「Ad0. 3」、 「Adl」、 「Ad5」、 「Ad25」 はそれぞれ 0. 1、 0. 3、 1、 5、 25 μ g/mLの全長 Adipoを表す。 図中、 各バーは平均値土 s. e. (n=3-5) を表 し、 「 」 は Pく 0. 05、 「※ は Pく 0. 01を表す。 また、 図 5 g〜 iにおいて、 口は無関係な siRNA、 園はマウス AdipoRlに対する siRNA、点線を引いた口
はマウス AdipoR2に対する siRNA、斜線を引いた口はマウス AdipoRl及ぴマ ウス AdipoR2に対する siRNAを用いたときの結果を示す。
C2C12筋細胞において、 siRNAにより AdipoRlの発現を抑制すると (図 5 a参照)、 globular Adipoによる PPAR αリガンド活性 (図 5 g参照)、 月旨 肪酸酸化 (図 5 h参照) 及ぴグルコース取り込み (図 5 i参照) の増加 が減少した。 これに対して、 AdipoRlの発現を抑制しても、 全長 Adipoに よるこれらの作用の有意な減少は観察されなかった。 したがって、 Adip oRlは、 globular Adipoによる筋細胞内の PPAR aリガンド活性、脂肪酸酸 化及びグルコース取り込みの増加を媒介していると考えられる。
内因性の AdipoR2が、 筋細胞における Adipoの特異的結合及び代謝的作 用を媒介しているか否かを調べるため、 siRNAを用いて AdipoR2の発現を 抑制した (図 5 b参照)。 C2C12筋細胞において、 s iRNAによって AdipoR2 の発現を抑制すると (図 5 b参照)、 globular Adipo及ぴ全長 Adipoの結 合が一部減少した (図 5 e , f 参照)。 さらに、 AdipoR2の発現抑制によ つて、 全長 Adipoによる PPAR o:リガンド活性 (図 5 g参照) 及び脂肪酸酸 化 (図 5 h参照) の亢進が部分的に減少した。 したがって、 AdipoR2は、 全長 Adipoによる筋細胞内の PAR a リガンド活性、 脂肪酸酸化の亢進を部 分的に媒介していると考えられる。 図 5 eは、二本鎖 siRNAをトランスフ エタ トした C2C12筋細胞への [125I] globular Adipoの結合等温線 (bindin g isotherm) を示し、 図 5 f は、 二本鎖 siRNAをトランスフエタ トした C 2C12筋細胞への [1251]全長 Adipoの結合等温線 (binding i sotherm) を示 す。 なお、 図中、 口は無関係なコントロール siRNA、 参はマウス AdipoR2 に対する siRNA、 ▲はマウス AdipoRl及びマウス AdipoR2に対する s iRNAを 用いた場合の結果を示す。
AdipoRlは、 globular Adipoに対して比較的選択性を有する受容体であ り、 AdiPoR2は全長 Adipoに対して比較的選択性を有する受容体であると
考えられる。 しかしながら、 いずれのタイプの AdipoRの機能的発現を抑 制しても、 globular Adipo及び全長 Adipoの両者に対する有意な影響が観 察される。 これらの結果は、 AdipoRl及ぴ AdipoR2は、 ホモマルチマー及 ぴヘテロマルチマーの両者を形成しているという結果 (図 3 e参照) に よって説明され得る。
興味深いことに、 C2C12筋細胞において、 AdipoRl及び AdipoR2の両者の 発現を siRNAにより同時に抑制すると、 globular Adipo及ぴ全長 Adipoの 両者の結合がほとんど観察されなくなるとともに (図 5 e , f 参照)、 g lobular Adipo及ぴ全長 Adipoによる PPARひリガンド活性 (図 5 g参照) 及び脂肪酸酸化 (図 5 h参照) の増加がほとんど観察されなくなった。
( 7 ) 肝細胞内の結合及び作用に対する siRNAの影響
肝細胞への Adipoの結合を調べた。 肝細胞は全長 Adipoに対して特異的 な結合を示した (図 6 b参照)。 AdipoRl及び AdipoR2の発現によって、 g lobular Adipo及び全長 Adipoの肝細胞への結合が促進した (図 6 a , b 参照)。 逆に、 肝細胞において、 s iRNAにより AdipoR2の発現を抑制すると 、全長 Adipoの結合が大きく減少した(図 6 b参照)。これらの結果から、 AdipoRlは、 globular Adipoに対して比較的選択性を有する受容体であり 、 AdipoR2は全長 Adipoに対して比較的選択性を有する受容体であると考 えられる。
正常ヒ ト大動脈内皮細胞 (Normal Human Aort ic Endothel ial Cel l s : HAEC) への Adipoの結合を調べた。 AdipoRl及び AdipoR2の両者の発現を siRNAにより同時に抑制すると、 globular Adipoの結合は大幅に減少し( 図 6 e参照)、 全長 Adipoの結合は一部減少した (図 6 f 参照)。 この結果 は、 AdipoRl及び AdipoRが、 HAECにおいても Adipoに対する受容体である ことを示す。
( 8 ) スキャッチヤードプロット解析
図 5 e及ぴ f に関する実験を再度より詳細に行って得られた結果を図 7 a及び bに示す。 図 7 aは図 5 eに対応する図であり、 二本鎖 s iRNA をトランスフエク トした C2C12筋細胞への [125I] globular Adipoの結合等 温線(binding isotherm)を示し、図 7 bは図 5 f に対応する図であり、 二本鎖 s iRNAをトランスフエク トした C2C12筋細胞への [1251]全長 Adipoの 結合等温線 (binding i sotherm) を示す。 なお、 図 7 a及び b中、 口は 無関係なコントロール siRNA、 匿はマウス AdipoRlに対する siRM、暴はマ ウス AdipoR2に対する siRNA、 ▲はマウス AdipoRl及ぴマウス AdipoR2に対 する siRNAを用いた場合の結果を示す。
図 7 a及び bに示す結果に基づきスキヤツチヤードプロット解析を行 つた結果をそれぞれ図 7 c及び dに示す。
無関係な s iRNAをトランスフエク トした C2C12筋細胞は、全長 Adipoより も globular Adipoに強く結合した (図 7 a及ぴ b参照)。
スキヤツチヤードプロッ ト解析によって、 globular Adipoに対する 2 種類の結合部位、 すなわち高ァフィユティー結合部位 (Kd値:約 0.
/mL, 1. 14nM gAd三量体等量) と中ァフイエティー結合部位 (Kd値:約 0. 80 μ g/niL, 14. 4nM gAd三量体等量) が存在する一方 (図 7 c参照)、 全長 Adipoに対する 2種類の結合部位、すなわち中ァフィ-ティー結合部位( Kd値:約 6. 7 μ g/mL, 49. InM Ad六量体等量) と低ァフィ二ティー結合部 位 (Kd値:約 329. 3 z g/raL, 2415nM Ad六量体等量) が存在することが明 らかとなつた (図 7 d参照)。
siRNAにより AdipoRlの発現を抑制すると、 globular Adipoの結合はか なり減少したが (図 7 a参照)、 全長 Adipoの結合はわずかに減少しただ けだった(図 7 b参照)。 AdipoRlの発現を特異的に抑制すると、 globula
r Adipoに対する高ァフィ二ティー結合部位の活性は失われるが、 globu lar Adipoに対する中ァフィユティー結合部位の活性は影響されないこ とが、 スキャッチヤードプロット解析によって明らかとなった (図 7 c 参照)。 さらに、 AdipoRlの発現を特異的に抑制すると、 全長 Adipoに対す る中ァフィユティー結合部位の活性は部分的に減少するが、 全長 Adipo に対する低ァフィユティー結合部位の活性は失われることが、 スキヤッ チヤ一ドプロット解析によって明らかとなった (図 7 d参照)。
AdipoRlとは対照的に、 siRNAにより AdipoR2の発現を抑制すると、全長 Adipoの結合はかなり減少したが (図 7 b参照)、 globular Adipoの結合 はわずかに減少した (図 7 a参照)。 AdipoR2の発現を特異的に抑制する と、 globular Adipoに対する高ァフイエティー結合部位の活性は部分的 に減少するが、 globular Adipoに対する中ァフィ二ティー結合部位の活 性が失われることが、 スキャッチヤードプロット解析によって明らかと なった (図 7 c参照)。 さらに、 AdipoR2の発現を特異的に抑制すると、 全長 Adipoに対する中ァフィユティー結合部位の活性は失われる力 、全長 Adipoに対する低ァフィ二ティー結合部位の活性は影響されないこと力 スキャッチヤードプロット解析によって明らかとなった (図 7 d参照)。
( 9 ) AMPK、 ACC、 p38 MAPK及び MAPKのリン酸化及びリン酸化量
図 8 aのパネルは、 AdipoRlをトランスフエク トした (図中 「AdipoRl J と記載) 又はしていない (図中 「Mock」 と記載) C2C12細胞を 0. 1 μ g/ inL gAd又は 1 /z g/mLとともに 10分間ィンキュベートした後、当該細胞の溶 解物と抗リン酸化 AMPK抗体とを反応させた結果を示し、 図 8 bのパネル は、 当該細胞の溶解物と抗リン酸化 ACC抗体とを反応させた結果を示し、 図 8 cのパネルは、 当該細胞の溶解物と抗リン酸化 P38 MAPK抗体とを反 応させた結果を示し、 図 8 dのパネルは、 当該細胞の溶解物と抗リン酸
化 MAPK抗体とを反応させた結果を示す。 図 8 eのパネルは、 AdipoRlをト ランスフエタ トした (図中 「AdipoRl」 と記載) 又はしていない (図中 「 Mock」 と記載) 肝細胞を 0. 1 // g/mL gAd又は 1 /z g/mLとともに 10分間イン キュベートした後、 当該細胞の溶解物と抗リン酸化 AMPK抗体とを反応さ せた結果を示し、 図 8 f のパネルは、 当該細胞の溶解物と抗リン酸化 AC C抗体とを反応させた結果を示す。図 8 a〜 f の各パネルの下側のグラフ は、 パネルの各位置におけるリン酸化量を示す。 なお、 図中、 「pAMPK」 はリン酸化 AMPK、 「pACC;」 はリン酸化 ACC、 「pp38 MAPKJ はリン酸化 p38 MAPK、 「pp44MAPK」 はリン酸ィ匕 p44MAPKヽ 「pp42 MAPK」 はリン酸ィ匕 p42 MA PKを表す。
AdipoRlをトランスフエク トしていない C2C12筋細胞において、 globul ar Adipo及び全長 Adipoの両者が AMPK、 ACC及び p38 MAPKのリ ン酸化量を 増加させたが、 MAPK等の他のプロティンキナーゼのリン酸化量は増加さ せなかった (図 8 a〜d参照)。 C2C12細胞における AdipoRlの発現は、 g lobular Adipoによる AMPK、 ACC及び p38 MAPKのリン酸化の亢進に関連し ていた (図 8 a〜 d参照)。 このことは、 AdipoRlが globular Adipoによ る AMPK及び p38 MAPK活性化を媒介することを示唆する。
AdipoRlをトランスフエタ トしていない肝細胞において、全長 Adipoは A MPK活性化及び ACCリン酸化を亢進させたが、 globular Adipoは亢進させ なった (図 8 e及び f 参照)。 肝細胞における AdipoRlの発現は、 globul ar Adipo及び全長 Adipoによる AMPK及び ACCリン酸化の亢進に関連してい た (図 8 e及び f 参照)。 このことは、 AdipoRlが globular Adipo及び全 長 Adipoによる AMPK及ぴ ACCリン酸化を媒介することができることを示唆 する。
AdipoRlをトランスフエタ トしていない (図 8中 「Mock」 と記載) C2C 12筋細胞において、 globular Adipoにより亢進される脂肪酸酸化及びグ
ルコース取り込みは、 優性阻害型 (dominant negative: DN) AMPK又は p 38 MAPK特異的阻害剤 SB203580 (Barger, P. M.ら, J. Biol. Chem. 276,
44495-44501 (2001) ; Puigserver, P.ら, Mol. Cel l 8, 971-982 (20 01) ; Michael, L. F.ら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 3820-3825
(2001) ) によって部分的に阻害された (図 8 g及び h参照)。 C2C12筋細 胞における AdipoRlの発現 (図 8中 「mAdipoRl」 と記載) は、 globular Adipoによる脂肪酸酸化及ぴグルコース取り込みを亢進させたが、これも DN- AMPK又は SB203580によって部分的に阻害された(図 8 g及ぴ h参照)。 したがって、 AdipoRlを介した globular Adipoによる脂肪酸酸化及ぴグル コース取り込みの亢進は、 C2C12筋細胞における AMPK及ぴ p38 MAPKの両者 の経路に関連していると考えられた。 以上の結果は、 本実施例で取得された AdipoRl cDNA (配列番号 1, 5 ) 及び AdipoR2 cDNA (配列番号 3, 7 ) 、 それぞれ生物学的機能を有 する AdipoRl (配列番号 2 , 6 ) 及び AdipoR2 (配列番号 4 , 8 ) をコー ドすることを示す。
産業上の利用の可能性
本発明によって、 アディポネクチン結合能を有する新規タンパク質、 該タンパク質をコードする遺伝子、該遺伝子を含有する組換えベクター、 該組換えベクターを含む形質転換体及び上記タンパク質に対する抗体が 提供される。 また、 本発明によって、 上記タンパク質、 遺伝子、 組換え ベクター又は形質転換体を利用した、 アディポネクチン受容体に対する リガンド、 ァゴニス ト又はアンタゴエス トのスク リ一ユング方法及びス クリーユング用キットが提供される。