JP2008109925A - アディポネクチン受容体遺伝子欠損非ヒト動物及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】アディポネクチン受容体のin vivoにおける機能を解明するための手段の開発。
【解決手段】アディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2の機能が欠失した非ヒト動物。
【選択図】なし

Description

本発明は、メタボリックシンドロームに代表される種々の疾患のモデル動物として有用なアディポネクチン受容体遺伝子欠損非ヒト動物及びその用途に関する。
アディポネクチン又はAcrp30(非特許文献1)は、アディポサイト由来のホルモンであり、様々な生理機能を有している。肥満、2型糖尿病、冠動脈性心疾患は、アディポネクチンの血漿レベルの減少と関連しており、アディポネクチンはin vitroにおいて抗アテローム発生性を示すことが報告されている(非特許文献2、3)。また、Acrp30の循環レベルの急増は、肝臓におけるグルコース産生を低下させることが報告されている(非特許文献4、5)。また、globular Acrp30は、筋肉における脂肪酸酸化を亢進させ、マウスにおける体重減少を引き起こすことが報告されている(非特許文献6)。また、脂肪組織萎縮性マウス又は肥満マウスにおけるインスリン抵抗性が、globularドメインのみからなるアディポネクチン(globular adiponectin;gAd)で処理することにより、筋肉における脂肪酸酸化の亢進を介して改善したこと、及び全長アディポネクチンで処理することにより程度はgAdよりも低いが改善したことが報告されている(非特許文献7)。さらに最近になって、骨格筋において、アディポネクチンがAMPキナーゼ(AMPK)を急性的に活性化し、その結果、脂肪酸酸化及びグルコース取り込みが亢進されることが報告されているとともに(非特許文献8)、アディポネクチンがPPARαを慢性的に活性化し、その結果、脂肪酸酸化が亢進されるが筋肉における組織TG含量は減少すること、そしてこれらの効果は全長アディポネクチンよりもgAdの方が大きいことが報告されている(非特許文献9)。また、興味深いことに、肝臓においては、全長アディポネクチンのみがAMPKを急性的に活性化し、その結果、糖新生に関連する分子を減少させるとともに脂肪酸酸化を亢進させる一方、全長アディポネクチンのみがAMPKを慢性的に活性化し、その結果、脂肪酸酸化を亢進させるとともに肝臓における組織TG量を減少させる。そして、これらの変化はいずれもin vivoにおけるインスリン感受性を増加させる(非特許文献10、11)。
さらにこれらのアディポネクチンの作用は、細胞膜表面のアディポネクチン受容体を介していると考えられ、最近アディポネクチン受容体が明らかにされた。アディポネクチン受容体には、アディポネクチン受容体1(AdipoR1)とアディポネクチン受容体2(AdipoR2)とがあることが報告されている(特許文献1)。
Hu,E.,Liang,P.ら,J.Biol.Chem.271,10697−10703.(1996) Ouchi,N.ら,Circulation 103,1057−1063.(2001) Yokota,T.ら,Blood 96,1723−1732.(2000) Berg,A.H.ら,Nat.Med.7,947−953.(2001) Combs,T.P.ら,J.Clin.Invest.108,1875−1881.(2001) Fruebis,J.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.98,2005−2010.(2001) Yamauchi,T.ら,Nat.Med.7,941−946.(2001) Yamauchi,T.ら,Nat.Med.8,1288−1295.(2002) Yamauchi,T.ら,J.Biol.Chem.278,2461−2468(2002) Yamauchi,T.ら,Nat.Med.8,1288−1295.(2002) Yamauchi,T.ら,J.Biol.Chem.278,2461−2468(2002) WO2004/061108号パンフレット
しかし、AdipoR1及びAdipoR2がそれぞれin vivoにおいてどのように作用しているのか、また実際の機能性については不明である。
従って、本発明は、AdipoR1及びAdipoR2のin vivoにおける機能を解明するための手段及びその用途を提供することを目的とする。
そこで本発明者は、種々検討した結果、AdipoR1遺伝子欠損動物、AdipoR2遺伝子欠損動物、AdipoR1及びAdipoR2遺伝子欠損動物の作成に成功し、これらの動物由来の培養細胞の樹立にも成功した。さらにこれらの遺伝子欠損動物を解折した結果、AdipoR1は、アディポネクチンによるAMPキナーゼ活性化に必須であり、インスリン分泌に重要な役割を果たすことが明らかとなった。一方、AdipoR2は、アディポネクチンによるPPARα活性化に必須であり、抗炎症、抗酸化ストレス作用、グルコキナーゼ発現誘導、ミトコンドリア機能、血圧に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。従って、これらの遺伝子欠損動物がメタボリックシンドローム等のモデル動物として有用でありこれらを使い分けることによって、AdipoR1及びAdipoR2が関与する疾患の治療薬及び機能性食品のスクリーニングが可能となることを見出した。
すなわち、本発明は、アディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2の機能が欠失した非ヒト動物を提供するものである。
また、本発明は、上記非ヒト動物由来の、アディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2の機能が欠失した細胞を提供するものである。
さらに、本発明は、上記非ヒト動物よりなるメタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン分泌不全、糖尿病、動脈硬化症、ミトコンドリア機能低下、酸化ストレス又は高血圧症のモデル動物を提供するものである。
さらに本発明は、上記非ヒト動物に被検物質を投与することを特徴とするアディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2作動薬、AMPキナーゼ活性化薬、PPARα活性化薬、インスリン分泌促進薬、グルコキナーゼ作動性糖取り込み促進薬、インスリン分泌促進薬、抗炎症薬、抗酸化ストレス薬、ミトコンドリア機能改善薬、高血圧治療薬、又はメタボリックシンドローム治療薬のスクリーニング法を提供するものである。
さらに本発明は、上記非ヒト動物に被検食品を投与することを特徴とするメタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、動脈硬化、ミトコンドリア機能低下、酸化ストレス、高血圧症に有効な機能性食品の評価法を提供するものである。
さらに、本発明は、被検物質の存在下に、前記細胞を培養することを特徴とする、アディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2作動薬、AMPキナーゼ活性化薬、PPARα活性化薬、インスリン分泌促進薬、グルコキナーゼ作動性糖取り込み促進薬、抗炎症薬、抗酸化ストレス薬、メタボリックシンドローム治療薬、ミトコンドリア機能改善薬又は高血圧症治療薬のスクリーニング法を提供するものである。
本発明の遺伝子欠損非ヒト動物はAMPキナーゼ、PPARα、インスリン分泌、グルコキナーゼ、炎症、酸化ストレス、ミトコンドリア機能、血圧に異常をきたすモデル動物として、また、インスリン抵抗性、糖尿病やメタボリックシンドローム、動脈硬化、癌のモデル動物として、医学研究のツールとして有用である。また本発明の遺伝子欠損非ヒト動物を用いることによって、肥満、糖尿病、動脈硬化等のアディポネクチンの低下に起因する疾病の予防・治療薬となりうるアディポネクチン受容体作動薬のスクリーニングが可能になる。また、アディポネクチン受容体に作用し、肥満、糖尿病、動脈硬化、高血圧等のメタボリックシンドローム関連疾病を予防する機能性食品の評価に用いることができる。
本発明のAdipoR1及び/又はAdipoR2の機能が欠失した非ヒト動物又は細胞は、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の発現が人為的に抑制されたものである。AdipoR1及びAdipoR2遺伝子は、本発明者により既にクローニングされ特許文献1に記載されている。配列番号1及び2にマウスAdipoR1のアミノ酸配列及び塩基配列を示す。配列番号3に、AdipoR1遺伝子を含むマウスのゲノム配列を示す。配列番号3の塩基配列中の塩基番号2001〜2106はエクソン1を、9442〜9676はエクソン2を、10479〜10595はエクソン3を、11272〜11443はエクソン4を、12429〜12616はエクソン5を、14603〜14790はエクソン6を、18051〜18856はエクソン8を示す。配列番号4及び5にマウスAdipoR2のアミノ酸配列及び塩基配列を示す。配列番号6にAdipoR2遺伝子を含むマウスのゲノム配列を示す。配列番号6の塩基配列中の塩基番号1001〜1064はエクソン1を、48076〜48334はエクソン2を、53104〜53233はエクソン3を、58947〜59133はエクソン4を、59375〜59562はエクソン6を、61075〜61268はエクソン7を、62556〜65332はエクソン8を示す。
本発明において、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損の対象となる非ヒト動物としては、ヒト以外であればよいが、動物モデルとして用いる点から、マウス、ラット、ハムスター等のげっ歯類、特にマウスが好ましい。
本発明において、「AdipoR1及び/又はAdipoR2の機能が欠失した」とは、染色体上のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子が破壊され、その機能が正常に発現しなくなったことを意味する。従って、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子産物が全く発現されない場合だけでなく、遺伝子産物が発現されても、正常な機能を有しない場合も含む。AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の破壊は、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子、又はその発現制御領域(転写調節領域及びプロモータ領域を含む)上の部分配列の欠失、置換又は挿入などにより行なわれる。
本発明の非ヒト動物には、AdipoR1の機能が欠失した非ヒト動物、AdipoR2の機能が欠失した非ヒト動物、AdipoR1及びAdipoR2の機能が欠失した非ヒト動物、AdipoR1の機能が時期特異的及び/又は部位特異的に欠失した非ヒト動物、AdipoR2の機能が時期特異的及び/又は部位特異的に欠失した非ヒト動物、AdipoR1及びAdipoR2の機能が時期特異的及び/又は部位特異的に欠失した非ヒト動物が含まれる。
ここで、「AdipoR1及び/又はAdipoR2の機能が時期特異的及び/又は部位特異的に欠失した」とは、これらの遺伝子機能の欠失が、動物のある特定の成長時期に生じるように制御された場合;及びこれらの遺伝子欠損が動物の部位特異的に生じるように制御された場合をいう。
ここで遺伝子機能の欠失時期特異的に制御する例としては、任意の各発生・成長段階や、検討したい化合物の動物投与の前後など、が挙げられ、いつでも自由自在である。このような制御は、例えば、Cre/LoxP法をもとにして、キメラCre組換え酵素(CreERT)を発現させ、その遺伝子組換え活性を薬剤投与により時間的にコントロールすることによってなされる。その結果LoxPを導入した遺伝子は時間特異的に組換えをおこすことによって行なわれる。
また遺伝子機能の欠失を部位特異的に制御する例としては、肝臓、骨格筋、脂肪細胞、膵ベータ細胞、血管、心臓、中枢、それぞれの神経ニューロンなどが挙げられる。このような制御は、例えば、Cre/LoxP法をもとにして、Cre酵素をそれぞれの細胞・組織特異的に発現させ、その遺伝子組換え活性を部位特異的にコントロールする。その結果LoxPを導入した遺伝子は細胞・組織特異的に組換えをおこすことによって行なわれる。
本発明のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子機能が欠失した非ヒト動物は、例えば、ジーンターゲティング、Cre−loxPシステム、体細胞クローン技術などにより作成することができる。以下、ジーンターゲティング法について説明する。1)AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子又はその発現制御領域上における、少なくとも一部の配列の欠失置換及び/又は他の配列の挿入を目的としたターゲティングベクターを構築する。2)得られたベクターをES細胞に導入し、該ベクターで相同組換えされたES細胞を得る。3)得られた組換えES細胞を初期胚に導入し、発生させてキメラ動物を得る。4)得られたキメラ動物を野生型動物と交配すれば、本発明のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子機能が欠失した動物が得られる。
まず、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子を欠損させるためのターゲティングベクターを構築する。ターゲッティングベクターの構築に先立って、使用する動物のゲノムDNAライブラリーを調製する。そのようなライブラリーとしては市販のもの(例えば、Stratagene社製 129Sv/Jゲノムライブラリー等)を用いてもよい。ゲノムライブラリーは、標的とするAdipoR1及び/又はAdipoR2 cDNAまたはその部分配列をプローブとしてスクリーニングを行い、AdipoR1及び/又はAdipoR2ゲノムDNAをクローニングする。
クローニングされたゲノムDNAはシークエンシング、サザンブロッティング、制限酵素消化等を行うことにより、各エクソンの位置を明示した制限酵素地図を作成し、変異導入部位等を決定する。また、ターゲティングベクターに使用する相同領域の外側には相同組換え体をスクリーニングするためのプローブ(external probe)を設定する。
本発明において、染色体上に導入する変異はAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の機能を欠失できる限り特に限定されない。例えば、欠失または置換される配列は、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子のイントロン領域であってもエクソン領域であっても、あるいはAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の発現制御領域であってもよい。特に、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子のエクソン領域の相当部分を欠失、置換させるような変異であれば、確実にAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の機能を欠損させることができる。また、挿入される他の配列も特に限定されないが、以下のような各マーカー遺伝子配列が好適に用いられる。
ターゲティングベクターは、変異導入部位の3’および5’側の相同領域とともに、組み換え体を選択するための適当な選択マーカーを含む。該マーカーとしては、例えば、ネオマイシン耐性遺伝子(pGKneo、pMC1neo等)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子等のポジティブセレクションマーカー、LacZやβラクタマーゼ遺伝子等の破壊対象遺伝子の発現レポーター、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−TK)、ジフテリア毒素Aフラグメント(DT−A)等のネガティブセレクションマーカー等が挙げられるが、これらに限定されない。また、ベクターは相同領域の外側に、ベクターを直鎖化するための適当な制限酵素切断部位を含む。
かかるターゲティングベクターの構築は、市販のプラスミドベクターを利用して行うことができる。
図1にマウスAdipoR1遺伝子欠損用のターゲティングベクターの一例を示す。このコンストラクトは、マウスAdipoR1遺伝子を欠損のため、AdipoR1をコードしているエクソン2、3、4をneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成した。
図2に、マウスAdipoR2遺伝子欠損用のターゲティングベクターの一例を示す。このコンストラクトは、マウスAdipoR2遺伝子を欠損のため、AdipoR2をコードしているエクソン3をneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成した。
マウスAdipoR1−AdipoR2ダブル遺伝子欠損マウスはAdipoR1遺伝子欠損マウスとAdipoR2遺伝子欠損マウスの交配によって得られる。
次に、構築されたターゲティングベクターを胚性幹細胞(ES細胞)等の全能性を有する細胞に導入する。ES細胞は、マウス、ハムスター、ブタ等では細胞株が樹立されており、特にマウスでは、129系マウス由来のK14株、E14株、D3株、AB−1株、J1株や、R1株、TT2株等、複数の細胞株が入手可能である。また、マウスではES細胞に代えて胚性ガン腫細胞(EC細胞)を利用することもできる。
ES細胞は、ターゲティングベクターの導入に先立って、適当な培地で培養しておく。例えば、マウスES細胞であれば、マウス繊維芽細胞等をフィーダー細胞として、これにES細胞用の液体培地(例えば、GIBCO製)を加えて共培養する。
ES細胞へのターゲティングベクターの導入は、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム法等、公知の遺伝子導入法により実施することができる。ターゲティングベクターが導入されたES細胞は、ベクター中に挿入されたマーカーにより容易に選択することができる。例えば、ネオマイシン耐性遺伝子をマーカーとして導入した細胞であれば、G418を加えたES細胞用培地で培養することにより、一次セレクションを行うことができる。
ターゲティングベクターが導入されたES細胞では、相同組換えによって、染色体上のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の一部が該ベクターで置換され、内因性のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子が破壊される。所望の相同組換えがなされたか否かは、サザンブロティングやPCR法等を利用したジェノタイプ解析によって判定できる。サザンブロッティングによるジェノタイプ解析は、変異導入部位の外側に設定したプローブ(external probe)を用いて行うことができる。PCR法によるジェノタイプ解析は、それぞれ野性型と変異型AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の特異的増幅産物を検出することにより実施できる。
ターゲティングベクターが導入されたES細胞(組換えES細胞)は、ES細胞が由来する系統とはコートカラーが明らかな相違を有する別な系統由来の初期胚に導入し、キメラ動物として発生させる。例えば、マウスであれば、アグーチ色の毛色を有する129系由来のES細胞に対しては、黒色の毛色を有し、マーカーとして利用できる各種遺伝子座が129系マウスとは異なっているC57BL/6マウス等の初期胚を用いることが望ましい。これにより、キメラマウスはその毛色によって、キメラ率を判断することができる。
ES細胞の初期胚への導入は、マイクロインジェクション法(Hogan,B.et al.”Manipulating the Mouse Embryo”Cold Spring Habor Laboratory Press,1988)や、アグリゲーション法(Andra,N.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,8424−8428,1993,Stephen,A.W.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,4582−4585,1993)等により行うことができる。
マイクロインジェクション法は、ES細胞を8細胞期胚〜胚盤胞(ブラストシスト)に直接注入する方法である。すなわち、動物より採取した胚に、マイクロマニピュレーター等を用いて組換えES細胞を顕微鏡下で直接注入してキメラ胚を作製する。このキメラ胚を、仮親(偽妊娠動物)の子宮に移植し、発生させれば、所望のキメラ動物を得ることができる。
一方、アグリゲーション法では、透明帯を除去した1〜2個の8細胞期胚とES細胞を共培養し、凝集させてキメラ胚を得る。このキメラ胚を、仮親(偽妊娠動物)の子宮に移植し、発生させれば、キメラ動物を得ることができる。
仮親から得られたキメラ動物は、さらに同系の野性型動物と交配する。得られる動物の約半分は、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠失染色体をヘテロで有するはずである。各個体のジェノタイプは、毛色等の外見上の特徴で一時判定できるほか、前述したサザンブロッティングやPCR法を利用したジェノタイプ解析によって決定することができる。こうして、ヘテロ型のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損動物が同定されたら、このヘテロ型のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損動物同士を交配して、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の欠損をホモで有する動物を得ることができる。
上記のようにして作製されたAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損動物の子孫も、染色体上のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の機能が欠失している限り、本発明のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損動物に含まれる。
一方、前記の時期特異的及び/又は部位特異的遺伝子欠損動物は、バクテリオファージ由来のCre−loxPシステムを利用して、時期特異的、部位特異的に標的遺伝子を欠損させる方法(Kuhn R.et al.,Science,269,1427−1429,1995)である。loxP(locus of X−ing−over)配列は34塩基対からなるDNA配列でCre(Causes recombination)組換え酵素の認識配列である。遺伝子上の2つのloxP配列はCre蛋白の存在下で特異的組換えを起こす。すなわち、欠損させたい標的遺伝子をloxPで挟んだものに置換し、さらにCre発現ベクターを組み込めば、時期特異的、部位特異的なCre蛋白の産生により、loxPで挟まれた標的遺伝子を欠失させることができる。
例えば、前記のターゲティングベクター構築において、欠損させるAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子領域の5’側にloxP遺伝子を3’側にloxP遺伝子で挟んだマーカー遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子等)を組み込んだターゲティングベクターを作製し、ES細胞に導入する。ES細胞はマーカーによる選択の後、サザンブロッティングあるいはPCR法によるジェノタイプ解析を行って相同組換えを確認する。この相同組換えES細胞に、さらにCre蛋白を特異的プロモーターに連結したCre発現ベクターを導入する。得られたES細胞から、loxP組換えによってマーカー遺伝子のみが欠失し、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子領域は欠失していないES細胞クローンを同定する。このES細胞を前記のようにして動物に導入し、Cre−loxP組換え動物を得る。
あるいは、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子両端にloxP遺伝子を組み込んだターゲッティングベクターを導入したloxP導入組換え動物と、Cre発現ベクターを導入したCre発現組換え動物を別個に作製し、両者を交配することによって、Cre−loxP組換え動物を作製してもよい。
図3にマウスAdipoR1コンディショナル遺伝子欠損用のターゲティングベクターの一例を示す。このコンストラクトは、Cre蛋白の発現に応じて、時期特異的、部位特異的にマウスAdipoR1遺伝子を欠損させるため、AdipoR1遺伝子のイントロン5に、前後をFLTサイト及びloxPサイトではさまれたneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成し、挿入したものである。さらに、AdipoR1遺伝子のイントロン2に、loxPサイトを挿入している。
図4にマウスAdipoR2コンディショナル遺伝子欠損用のターゲティングベクターの一例を示す。このコンストラクトは、Cre蛋白の発現に応じて、時期特異的、部位特異的にマウスAdipoR2遺伝子を欠損させるため、AdipoR2遺伝子のイントロン7に、前後をFLTサイト及びloxPサイトではさまれたneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成し、挿入したものである。さらに、AdipoR2遺伝子のイントロン4に、loxPサイトを挿入している。
こうして得られたCre−loxP組換え動物は、Cre蛋白の発現に応じて、時期特異的、部位特異的にAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子を欠損しうる。従って、特定時期、特定部位におけるAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の機能解析に極めて有用である。
マウスAdipoR1−AdipoR2コンディショナルダブル遺伝子欠損マウスはAdipoR1コンディショナル遺伝子欠損マウスとAdipoR2コンディショナル遺伝子欠損マウスの交配によって得られる。
本発明のAdipoR1遺伝子欠損動物、AdipoR2遺伝子欠損動物及びAdipoR1−AdipoR2遺伝子ダブル欠損動物は、それぞれ以下の特性を有する。
(1)AdipoR1遺伝子欠損動物
AdipoR1遺伝子欠損動物はAMPキナーゼの経路などが異常となり、インスリン抵抗性を来たし、さらにインスリン分泌にも異常をきたし、糖尿病やメタボリックシンドローム、癌のモデル動物となる。例えば、肝臓においては、AMPキナーゼによって通常抑制されている糖新生に関わる酵素(PEPCKやG6Paseなど)や脂肪合成に関わる分子(SREBP1cやSCD1など)の発現が上昇しているのが認められた。さらに脂肪酸燃焼の活性が低下しているのが認められた。そして空腹時血糖値・インスリン値の上昇と糖負荷後の血糖値の上昇、すなわちインスリン抵抗性と耐糖能障害、メタボリックシンドロームが認められた。インスリン抵抗性の責任臓器としては、高インスリン正常血糖クランプ法により、主には肝臓であることも分かっている。さらに、単離膵島を用いた実験により、インスリン分泌にも不全があることが明らかとなっている。さらに、AdipoR1の発現が低下すると、癌細胞の増殖が促進されることも明らかとなっている。
(2)AdipoR2遺伝子欠損動物
AdipoR2遺伝子欠損動物はPPARαの経路などが異常となり、さらに肝臓への糖の取り込みに重要なグルコキナーゼの発現の低下、脂肪組織や肝臓での酸化ストレスの増大と慢性炎症の惹起などによりインスリン抵抗性を来たし、糖尿病やメタボリックシンドローム、癌のモデル動物となる。例えば、通常は、PPARαによって発現が誘導されている脂肪燃焼に関わる酵素(ACOなど)やエネルギー消費に関わる分子(UCP2など)の発現が低下しており、実際に脂肪酸燃焼の活性も低下しているのが認められた。さらに、酸化ストレスの消去に関わる酵素(SOD1やcatalaseなど)の発現の低下と炎症性サイトカイン(TNFαなど)やケモカイン(MCP−1など)の発現の上昇が認められ、各々の臓器障害を惹起しているのが認められた。そしてインスリン値の上昇、すなわち全身性のインスリン抵抗性、メタボリックシンドロームが認められた。さらに、AdipoR2の発現が低下すると、動脈硬化が促進や癌細胞の増殖が促進されることも明らかとなっている。
(3)AdipoR1−AdipoR2遺伝子ダブル欠損動物
AdipoR1−AdipoR2遺伝子ダブル欠損動物はAMPキナーゼやPPARαの経路などが異常となり、さらに肝臓への糖の取り込みに重要なグルコキナーゼの発現の低下、脂肪組織や肝臓での酸化ストレスの増大と慢性炎症の惹起などにより、インスリン抵抗性を来たし、さらにインスリン分泌にも異常をきたし、糖尿病やメタボリックシンドローム、動脈硬化、癌のモデル動物となる。例えば、肝臓においては、AMPキナーゼによって通常抑制されている糖新生に関わる酵素(PEPCKやG6Paseなど)や脂肪合成に関わる分子(SREBP1cやSCD1など)の発現が上昇しているのが認められた。PPARαによって発現が誘導されている脂肪燃焼に関わる酵素(ACOなど)やエネルギー消費に関わる分子(UCP2など)の発現が低下しており、実際に脂肪酸燃焼の活性も低下しているのが認められた。さらに、酸化ストレスの消去に関わる酵素(SOD1やcatalaseなど)の発現の低下と炎症性サイトカイン(TNFαなど)やケモカイン(MCP−1など)の発現の上昇が認められ、各々の臓器障害を惹起しているのが認められた。そして空腹時血糖値・インスリン値の上昇と糖負荷後の血糖値の上昇、すなわち全身のインスリン抵抗性と耐糖能障害、メタボリックシンドロームが認められた。インスリン抵抗性の責任臓器としては、高インスリン正常血糖クランプ法により、主には肝臓であることも分かっている。さらに、単離膵島を用いた実験により、インスリン分泌にも不全があることが明らかとなっている。さらに、AdipoR1・AdipoR2の発現が低下すると、動脈硬化の促進や癌細胞の増殖が促進されることも明らかとなっている。
AdipoR1・R2ダブル欠損マウスの骨格筋では、筋細胞でのミトコンドリアの多いtype 1 fiberへの分化促進因子であるmyocyte enhancer factor 2(MEF2)の発現は有意に低下しており、MEF2を転写促進因子とするPPARγ co-activator 1α(PGC−1α)の発現も有意に低下していた。PGC−1αは骨格筋においてミトコンドリア生合成及び機能を調節している可能性のある因子の一つとして注目されていが、ミトコンドリア電子伝達に関わる酵素Cytochrome C(CytC)の有意な発現低下も認められた。また、AMPKの下流で酸化ストレスの消去に関わるsuper oxide dismutase 2(SOD2)も低下していた。
以上よりアディポネクチン/AdipoR経路が骨格筋においてMEF2、PGC−1αを介し、ミトコンドリア機能調節を行っている可能性が示唆された。また、酸化ストレスの消去に関わるSOD2の低下が認められたことより、アディポネクチンのAMPK、PGC−1αを介した、酸化ストレス消去作用が存在する可能性が示唆された。
脂肪細胞の肥大化に伴う、脂肪細胞の機能低下のメカニズムの一つとして、肥大化に伴う脂肪細胞の低酸素が考えられている。AdipoR1・R2ダブル欠損マウスのWATでは線溶系を抑制するPAI−1の発現が有意に上昇しており、更に、細胞内の低酸素状態を示す、HIF1αの発現が有意に上昇していた。
AdipoR2及びAdipoR1・R2欠損マウスの収縮期血圧は有意に上昇していた。
また、AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子の時期特異的又は部位特異的欠損動物は、前記のそれぞれの特性が、時期特異的、部位特異的に発現する。
従って、本発明のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損動物は、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン分泌不全、糖尿病、動脈硬化症、癌、ミトコンドリア機能、酸化ストレス、高血圧症のモデル動物として有用である。このうち、AdipoR1遺伝子欠損動物は、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン分泌不全、糖尿病、癌のモデル動物として特に有用である。一方、AdipoR2遺伝子欠損動物は、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、糖尿病、動脈硬化症、癌、高血圧症のモデル動物として特に有用である。また、AdipoR1−AdipoR2遺伝子ダブル欠損動物は、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン分泌不全、糖尿病、動脈硬化症、癌、ミトコンドリア機能低下、酸化ストレス、高血圧症のモデル動物として有用である。
本発明者は、さらに本発明のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損動物由来の細胞の培養細胞の樹立に成功した。かかる細胞の培養は、例えば、肝臓細胞の場合、10%ウシ胎仔血清、10nMデキサメタゾン、1nMインスリン、100Unit/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含むウィリアム培地E上で、5%CO2存在下37℃で行うことができる。
本発明のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損動物及び細胞は、アディポネクチンが関与する種々の疾患の治療薬又は機能性食品のスクリーニングに利用することができる。特に、本発明のAdipoR1遺伝子欠損動物、AdipoR2遺伝子欠損動物及びAdipoR1−AdipoR2遺伝子ダブル欠損動物の2種又は3種、あるいはこれらの動物由来の細胞の2種又は3種を組み合せて用いれば、前記治療薬や機能性食品のスクリーニングに有用である。
本発明のAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子欠損動物に被検物質を投与して該動物の各種マーカーの変化を測定するから、あるいは被検物質の存在下に当該動物由来の細胞を培養して該細胞の各種マーカーの変化を測定すれば、被検薬物がアディポネクチンが関与する疾患の治療薬又は機能性食品となり得るか否かをスクリーニングできる。
アディポネクチンが関与する疾患の治療薬としては、AdipoR1−AdipoR2作動薬、AMPキナーゼ活性化薬、PPARα活性化薬、インスリン分泌促進薬、グルコキナーゼ作動性糖取り込み促進薬・インスリン分泌促進薬、抗炎症薬、抗酸化ストレス薬、メタボリックシンドローム治療薬(肥満治療薬、糖尿病治療薬、動脈硬化治療薬等)ミトコンドリア機能改善薬、高血圧治療薬が挙げられる。また機能性食品としては、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、動脈硬化、ミトコンドリア機能改善、酸化ストレス、高血圧症に有効な機能性食品が挙げられる。
ここで、動物及び細胞の各種マーカーの変化の測定は、公知の手段で行えばよい。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 アディポネクチン受容体遺伝子欠損マウスの作製
AdipoR1遺伝子(配列番号1)及びAdipoR2遺伝子(配列番号4)を含むクローンをクローニングし、AdipoR1をコードしているエクソン2、3、4をneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクター(図1)、及びAdipoR2をコードしているエクソン3をneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクター(図2)を構築し、それぞれJ1ES細胞(129/Sv)にエレクトロポレーション法により導入してトランスフェクトした。ターゲティングベクターには、ネガティブセレクションのマーカーとして、ジフテリア毒素Aフラグメント(DT−A)を用いた。J1ES細胞(129/Sv)は、ターゲティングベクター導入に先立って、マウス繊維芽細胞等をフィーダー細胞として、これにES細胞用の液体培地(GIBCO社)を加えて共培養した。培養、エレクトロポレーション、相同組み換え体の選択は、公知の方法(J.Biol.Chem. 277, 25863−25866(2002))に則って行った。トランスフェクトされた細胞を、マイクロインジェクション法(Hogan,B.et al.”Manipulating the Mouse Embryo”Cold Spring Habor Laboratory Press,1988)により黒色の毛色を有するC57BL/6マウスの初期胚に導入し、キメラ胚を作製し、得られた胚を、仮親(偽妊娠動物)の子宮に移植し発生させ、キメラマウスを作製し、C57B1/6雌マウスとの交配によりF1、さらにF2を作製し、AdipoR1遺伝子欠損マウス、AdipoR2遺伝子欠損マウスを得た。遺伝子型の確認は、サザンブロッティング及びPCR法により行った。サザンブロッティングの結果を図5に示す。PCR法によるAdipoR1遺伝子の確認で用いたプライマーは、forward primer 1(5'- GCA GGG TAA GCT GAT TAG CTA TG -3':配列番号7)、forward primer 2(5'- ATA GAT CTC TCG TGG GAT CAT TG -3':配列番号8)、reverse primer(5'- TTA CTG CAC TTC TTC TGC TGG A -3':配列番号9)であり、AdipoR2遺伝子の確認で用いたプライマーは、forward primer 1(5'- AGC CTA CTG CCT ACT GTA TTG T -3':配列番号10)、forward primer 2(5'- ATA GAT CTC TCG TGG GAT CAT TG -3':配列番号11)、reverse primer(5'- ACT CTT CTA ACC TTC ATC AGG AG -3':配列番号12)である。
なお、用いたC57B1/6雌マウスは、8〜10週齢であり、CLEA Japanから購入した。マウスの飼育は、12時間の明暗周期で行い、餌としては、CE−2(CLEA Japan;タンパク質25.6%、食物繊維3.8%、灰分50.5%、脂肪分4%、水分9.2%を含有する)を与えた。
実施例2
前記のターゲティングベクター構築において、欠損させるAdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子領域の5’側にloxP遺伝子を3’側にloxP遺伝子で挟んだマーカー遺伝子(ネオマイシン耐性遺伝子等)を組み込んだターゲティングベクターを作製し、ES細胞に導入した。ES細胞はマーカーによる選択の後、サザンブロッティングあるいはPCR法によるジェノタイプ解析を行って相同組換えを確認した。
AdipoR1及び/又はAdipoR2遺伝子両端にloxP遺伝子を組み込んだターゲッティングベクターを導入したloxP導入組換え動物と、Cre発現ベクターを導入したCre発現組換え動物を別個に作製し、両者を交配することによって、Cre−loxP組換え動物を作製した。
図3にマウスAdipoR1コンディショナル遺伝子欠損用のターゲティングベクターを示す。このコンストラクトは、Cre蛋白の発現に応じて、時期特異的、部位特異的にマウスAdipoR1遺伝子を欠損させるため、AdipoR1遺伝子のイントロン5に、前後をFLTサイト及びloxPサイトではさまれたneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成し、挿入した。さらに、AdipoR1遺伝子のイントロン2に、loxPサイトを挿入した。
図4にマウスAdipoR2コンディショナル遺伝子欠損用のターゲティングベクターを示す。このコンストラクトは、Cre蛋白の発現に応じて、時期特異的、部位特異的にマウスAdipoR2遺伝子を欠損させるため、AdipoR2遺伝子のイントロン7に、前後をFLTサイト及びloxPサイトではさまれたneo耐性遺伝子に置き換えたターゲティングベクターを作成し、挿入した。さらに、AdipoR2遺伝子のイントロン4に、loxPサイトを挿入した。
マウスAdipoR1−AdipoR2コンディショナルダブル遺伝子欠損マウスはAdipoR1コンディショナル遺伝子欠損マウスとAdipoR2コンディショナル遺伝子欠損マウスの交配によって得られた。
試験例1 AdipoR1遺伝子欠損マウスの特性
実施例1で得られたAdipoR1遺伝子欠損マウス(以下、AdipoR1-/-マウス又はR1KOと称する)は、AMPキナーゼの経路などが異常となり、インスリン抵抗性を来たし、さらにインスリン分泌にも異常をきたしていた。例えば、肝臓においては、AMPキナーゼによって通常抑制されている糖新生に関わる酵素(PEPCKやG6Paseなど)や脂肪合成に関わる分子(SREBP1cやSCD1など)の発現が上昇しているのが認められた。さらに脂肪酸燃焼の活性が低下しているのが認められた。そして空腹時血糖値・インスリン値の上昇と糖負荷後の血糖値の上昇、すなわちインスリン抵抗性と耐糖能障害、メタボリックシンドロームが認められた。
以下、及び試験例3及び4に、これらの結果を含め、得られた欠損動物の特性についての実験結果を詳細に示す。
AdipoR1-/-マウスの遺伝子欠損について、ノザンブロット及びリアルタイムPCR法により、肝臓におけるAdipoR1遺伝子mRNA発現量を調べた(図6)。プライマーとしては、acgttggagagtcatcccgtat(配列番号13)及びctctgtgtggatgcggaagat,(配列番号14)を用い、プローブとしては、cctgctacatggccacagaccacct(配列番号15)を用いた。肝細胞の単離は以下の実施例3のように行った。図6に示すように、ヘテロ接合体であるAdipoR1+/-マウスでは、AdipoR1mRNAの発現量は、約50%の減少であったが、AdipoR1-/-マウスでは、同発現が検出されなかった。
AdipoR1-/-マウスを観察したところ、生存及び繁殖に問題なく、体重も通常と相違なく、発育も正常であった。成長曲線も、野生型マウスと30週齢までほぼ同じであった。また、食糧摂取量も正常であった。
次に、血漿中のグルコース及びインスリン量を調べた(図7)。グルコースの測定には、グルコースBテスト(和光純薬工業株式会社)を、インスリンの測定には、株式会社シバヤギの抗体を用いた。図7に示すように、AdipoR1-/-マウス(R1KO)では、血漿中のグルコース及びインスリンの量は、野生型(WT)と比較して顕著に多かった。
また、AdipoR1-/-マウスについて、経口的耐糖能試験(OGTT)を行った(図8、9)。図8左図に示すように、AdipoR1-/-マウス(AdipoR1KO)では耐糖能が顕著に欠損していた。図8右図に示すように、血漿中のインスリン濃度は、野生型に比べて顕著に高かった。図9に示すように、インスリン抵抗性指数は、野生型より高かった。なお、インスリン抵抗性指数は以下のように求めた。すなわち、グルコース値(1mg/ml=1cm)、インスリン値(1mg/ml)の累積平均の高さを、それぞれ時間(60min=1cm)と掛けてグルコース、インスリン曲線で囲む面積を求め、得られた値(但し、インスリンは×10-2とする)をインスリン抵抗性指数とした。
さらに、AdipoR1-/-マウスについて、hyperinsulinemic euglycemic clamp studyを行った(図10)。実験は、以下のように行った。実験の2〜3日前にペントバルビタールナトリウムによる麻酔下で頚動脈に注入カテーテルを挿入したマウスに、インスリンを5.0milliunits/kg/minで与え、5分毎にモニターして血中グルコース濃度が120mg/dLとなるようにグルコース([6,6−22]グルコースが20%となるよう濃縮した0.5g/mLグルコース溶液)を120分間投与した。90、105、120分後に尾の先から血液を採取し、グルコース消失率(Rd)を求めた。endogenous glucose production(EGP)は、RdとGIRの差として求めた。図10中段に示すように、endogenous glucose production(EGP)は、AdipoR1-/-マウス(R1KO)では野生型(WT)に比して顕著に多かった。
また、肝臓中のG6Pase、SREB1c、AdipoR2及びACO発現量を野生型との対比において調べた(図11)。これらの発現量は、野生型に比して多かった。
試験例2 AdipoR2遺伝子欠損マウス、及びAdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスの特性
実施例1で得られたAdipoR2遺伝子欠損マウス(以下、AdipoR2-/-マウス又はR2KOと称する)は、PPARαの経路などが異常となり、さらに肝臓への糖の取り込みに重要なグルコキナーゼの発現の低下、脂肪組織や肝臓での酸化ストレスの増大と慢性炎症の惹起などによりインスリン抵抗性を来たしていた。例えば、通常は、PPARαによって発現が誘導されている脂肪燃焼に関わる酵素(ACOなど)やエネルギー消費に関わる分子(UCP2など)の発現が低下しており、実際に脂肪酸燃焼の活性も低下しているのが認められた。さらに、酸化ストレスの消去に関わる酵素(SOD1やcatalaseなど)の発現の低下と炎症性サイトカイン(TNFαなど)やケモカイン(MCP−1など)の発現の上昇が認められ、各々の臓器障害を惹起しているのが認められた。そしてインスリン値の上昇、すなわち全身性のインスリン抵抗性、メタボリックシンドロームが認められた。
また、AdipoR1-/-マウスとAdipoR2-/-マウスを交配して、AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウス(以下、AdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウス又はDoubleKOを称する)を得た。得られたAdipoR1−AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスは、AMPキナーゼやPPARαの経路などが異常となり、さらに肝臓への糖の取り込みに重要なグルコキナーゼの発現の低下、脂肪組織や肝臓での酸化ストレスの増大と慢性炎症の惹起などにより、インスリン抵抗性を来たし、さらにインスリン分泌にも異常をきたしていた。例えば、肝臓においては、AMPキナーゼによって通常抑制されている糖新生に関わる酵素(PEPCKやG6Paseなど)や脂肪合成に関わる分子(SREBP1cやSCD1など)の発現が上昇しているのが認められた。PPARαによって発現が誘導されている脂肪燃焼に関わる酵素(ACOなど)やエネルギー消費に関わる分子(UCP2など)の発現が低下しており、実際に脂肪酸燃焼の活性も低下しているのが認められた。さらに、酸化ストレスの消去に関わる酵素(SOD1やcatalaseなど)の発現の低下と炎症性サイトカイン(TNFαなど)やケモカイン(MCP−1など)の発現の上昇が認められ、各々の臓器障害を惹起しているのが認められた。そして空腹時血糖値・インスリン値の上昇と糖負荷後の血糖値の上昇、すなわち全身のインスリン抵抗性と耐糖能障害、メタボリックシンドロームが認められた。
以下、及び試験例3、4に、これらの結果を含め、得られた欠損動物の特性について実験結果を詳細に示す。
これらのマウスについて、試験例1と同様に、肝臓におけるAdipoR2遺伝子mRNA発現量を調べた(図12)。プライマーとしては、tcccaggaagatgaagggtttat(配列番号16)及びttccattcgttcgatagcatga,(配列番号17)を用い、プローブとしては、atgtccccgctcctacaggccc(配列番号18)を用いた。図12に示すように、スプライシングに異常のあるmRNAが少量観察された。
また、これらのマウスを観察したところ、体重は通常と相違なかった。
次に、AdipoR2-/-マウスについて、試験例1と同様の方法で経口的耐糖能試験(OGTT)を行った(図13、9)。グルコース負荷後の血漿中のインスリンレベルは、野生型に比して顕著に高かった。試験例1と同様にインスリン抵抗性指数を求めたところ、野生型より高かった。
インスリン抵抗性は、AdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウスについても同様の方法で調べた。結果をAdipoR1-/-マウス及びAdipoR2-/-マウスに並べて図14に示す。AdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウスでは、これら単独の遺伝子欠損マウスよりもインスリン抵抗性が悪化していた。
AdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウスについて、adiponectin sensitivitytestを行った。結果を図15に示す。野生型では、血漿中グルコースレベルが顕著に減少するのに対し、AdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウス由来のものでは、そのような減少が起こらなかった。
次に、AdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウスについて、肝臓中のAktのリン酸化を調べた(図16)。この欠損マウスでは、インスリン投与によるAktのリン酸化が野生型に比して少なかった。
さらに、AdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウスについて、肝臓におけるPEPCK、SCD−1、SPREBP1cのmRNA発現量、中性脂肪(TG)容量、筋肉におけるACO、UCP2のmRNA発現量、白色脂肪組織におけるMCP−1、カタラーゼ、SOD−1、MCP−1のmRNA発現量を調べ、野生型と対比して示した(図17)。欠損マウスでのPEPCK、SCD−1、SPREBP1cのmRNA発現量、中性脂肪容量は、野生型に比して高かった。ACO、UCP2、カタラーゼのmRNA発現量は野生型に比して低かった。
AdipoR1・R2ダブル欠損マウスの骨格筋では、筋細胞でのミトコンドリアの多いtype 1 fiberへの分化促進因子であるmyocyte enhancer factor 2(MEF2)の発現は有意に低下しており(図18)、MEF2を転写促進因子とするPPARγ co-activator 1α(PGC−1α)の発現も有意に低下していた(図19)。PGC−1αは骨格筋においてミトコンドリア生合成及び機能を調節している可能性のある因子の一つとして注目されていが、ミトコンドリア電子伝達に関わる酵素Cytochrome C(CytC)の有意な発現低下も認められた(図20)。また、AMPKの下流で酸化ストレスの消去に関わるsuper oxide dismutase 2(SOD2)も低下していた(図21)。
以上よりアディポネクチン/AdipoR経路が骨格筋においてMEF2、PGC−1αを介し、ミトコンドリア機能調節を行っている可能性が示唆された。また、酸化ストレスの消去に関わるSOD2の低下が認められたことより、アディポネクチンのAMPK、PGC−1αを介した、酸化ストレス消去作用が存在する可能性が示唆された。
脂肪細胞の肥大化に伴う、脂肪細胞の機能低下のメカニズムの一つとして、肥大化に伴う脂肪細胞の低酸素が考えられている。AdipoR1・R2ダブル欠損マウスのWATでは線溶系を抑制するPAI−1の発現が有意に上昇しており(図22)、更に、細胞内の低酸素状態を示す、HIF1αの発現が有意に上昇していた(図23)。
また、AdipoR2及びAdipoR1・R2欠損マウスの収縮期血圧は有意に上昇していた(図24)。
試験例3 AMPキナーゼ活性試験
AdipoR1-/-マウス(R1KO)、AdipoR2-/-マウス(R2KO)及びAdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウス(DoubleKO)について、肝臓におけるアディポネクチン誘導のAMPキナーゼ活性を調べた(図25)。キナーゼ活性測定においては、全長のアディポネクチンを30μg/10gの濃度で肝臓に10分間処理した。野生型で見られたアディポネクチン投与によるAMPKリン酸化は、R1KO及びDoubleKOでは阻害されていた。
試験例4 放射性リガンド結合試験
AdipoR1-/-マウス、AdipoR2-/-マウス及びAdipoR1-/-・AdipoR2-/-マウスについて、肝細胞に対するアディポネクチンの結合性を、以下のような放射性リガンド結合試験により行った。まず、Na[125I](2000Cimmol-1、アマシャムファーマシアバイオテック)存在下でIODOビーズによって組換え体アディポネクチンのTyrを125Iで標識した。後記実施例2で得た肝細胞を3.75×105cell/12wellの濃度で植えた。48時間後、125I標識したアディポネクチン(5000カウント/min・ng)と非標識の競合アディポネクチンを含む結合バッファー(氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、0.1%ウシ血清アルブミン)で4℃一晩インキュベートした。その後細胞をウェルあたり1mlの氷冷PBSを用いて20回洗浄し、800μLのPBS中でトリプシン分解した。細胞懸濁液の125I標識を測定した。細胞に結合したものの放射活性は、γ−カウンターを用いて求めた。非特異的結合は、200倍過剰の非標識アディポネクチンを用いて求めた。特異的結合は、合計結合量から非特異的結合量を減じて求めた。3回の測定の平均値として、結果を図26に示す。野生型で見られたアディポネクチンの特異的結合活性は、これらの遺伝子欠損マウスでは低下していた。
実施例3 培養細胞の樹立
試験例1及び2で得たAdipoR1遺伝子やAdipoR2遺伝子欠損の8週齢の雌マウスからコラゲナーゼかん流法により肝細胞を単離した。これを、コラーゲンI被覆12ウェル培養皿に3.75×105ずつ植えた。培地としては、10%ウシ胎仔血清、10nMデキサメタゾン、1nMインスリン、100Unit/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含むウィリアム培地Eを用いた。5%CO2存在下、37℃で48時間インキュベートしたのち、PBSによって細胞を2度洗浄し、ウシ胎仔血清を含まないウィリアム培地Eによって6時間培養した。
AdipoR1遺伝子欠損についてのジーンターゲティングの模式図を示す。 AdipoR2遺伝子欠損についてのジーンターゲティングの模式図を示す。 マウスAdipoR1コンディショナル遺伝子欠損用のターゲティングベクターを示す図である。図3中、白四角は、エクソンを示し、P、Rは制限酵素サイトを示す。黒矢印は、loxPサイトの位置を示し、白矢印は、FRTサイトの位置を示す。 マウスAdipoR2コンディショナル遺伝子欠損用のターゲティングベクターを示す図である。図4中、白四角は、エクソンを示し、P、Rは制限酵素サイトを示す。黒矢印は、loxPサイトの位置を示し、白矢印は、FRTサイトの位置を示す。 サザンハイブリダイゼーションの結果を示す図である。+/+は野生型を示し、+/−はヘテロ接合体を示し、−/−はホモ接合体を示す。 肝臓中のAdipoR1mRNA発現量についての検証結果である。左図は、リアルタイムPCR法による定量結果である。+/+は野生型を示し、+/−はヘテロ接合体を示し、−/−はホモ接合体を示す。右図は、ノザンブロットの結果である。 AdipoR1遺伝子欠損マウスの血漿中のグルコース(左図)及びインスリン(右図)量を示す図である。 AdipoR1遺伝子欠損マウスについての経口的耐糖能試験結果を示す図である。左図は、血漿中のグルコースレベル、右図は、インスリンレベルを示す。 AdipoR1遺伝子欠損マウスのインスリン抵抗性指数を示す図である。 AdipoR1遺伝子欠損マウスについてのhyperinsulinemic euglycemic clamp studyの結果を示す図である。 clamp試験後のAdipoR1遺伝子欠損マウスの肝臓における各遺伝子のmRNA発現量を示す図である。 AdipoR1遺伝子やAdipoR2遺伝子が欠損したマウスの肝臓におけるAdipoR2mRNA発現量をノザンブロットで検証した結果を示す。 AdipoR2遺伝子欠損マウスについての経口的耐糖能試験結果を示す図である。左図は、血漿中のグルコースレベル、右図は、インスリンレベルを示す。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスなど各遺伝子欠損マウスについてのインスリン抵抗性指数を示した図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスについてのAdiponectin sensitivity testの結果を示す図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスの肝臓におけるAktのリン酸化の程度を野生型(WT)との対比において示す図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスの各器官における各mRNAの発現量などを検証した結果を示す図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスの骨格筋(腓腹筋(Gastrocnemius)及びヒラメ筋(Soleus))におけるMEF2の発現を示す図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスの骨格筋(腓腹筋(Gastrocnemius)及びヒラメ筋(Soleus))におけるPGC−1αの発現を示す図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスの骨格筋(腓腹筋(Gastrocnemius)及びヒラメ筋(Soleus))におけるCytCの発現を示す図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブル欠損マウスの骨格筋(腓腹筋(Gastrocnemius)及びヒラメ筋(Soleus))におけるSOD2の発現を示す図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブルノックアウトマウスの脂肪細胞におけるPAI−1の発現を示す図である。 AdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブルノックアウトマウスの脂肪細胞におけるHIF1αの発現を示す図である。 AdipoR2遺伝子ノックアウト又はAdipoR1・AdipoR2遺伝子ダブルノックアウトの収縮期血圧の上昇作用を示す図である。 各遺伝子欠損マウスの肝臓におけるアディポネクチンによるAMPKのリン酸化の程度を示す図である。 各遺伝子欠損マウスから単離した肝細胞を用いて、放射性リガンド結合試験を行った結果を示す図である。

Claims (8)

  1. アディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2の機能が欠失した非ヒト動物。
  2. アディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2の機能が、時期特異的及び/又は部位特異的に欠失した非ヒト動物。
  3. 非ヒト動物がマウスである請求項1又は2記載の動物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の非ヒト動物由来の、アディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2の機能が欠失した細胞。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の非ヒト動物よりなるメタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン分泌不全、糖尿病、動脈硬化症、ミトコンドリア機能低下、酸化ストレス又は高血圧症のモデル動物。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項記載の非ヒト動物に被検物質を投与することを特徴とするアディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2作動薬、AMPキナーゼ活性化薬、PPARα活性化薬、インスリン分泌促進薬、グルコキナーゼ作動性糖取り込み促進薬、抗炎症薬、抗酸化ストレス薬、ミトコンドリア機能改善、高血圧症治療薬又はメタボリックシンドローム治療薬のスクリーニング法。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項記載の非ヒト動物に被検食品を投与することを特徴とするメタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、動脈硬化、ミトコンドリア機能低下、酸化ストレス又は高血圧症に有効な機能性食品の評価法。
  8. 被検物質の存在下に請求項4記載の細胞を培養することを特徴とする、アディポネクチン受容体1及び/又はアディポネクチン受容体2作動薬、AMPキナーゼ活性化薬、PPARα活性化薬、インスリン分泌促進薬、グルコキナーゼ作動性糖取り込み促進薬、抗炎症薬、抗酸化ストレス薬、メタボリックシンドローム治療薬、ミトコンドリア機能改善薬又は高血圧症治療薬のスクリーニング法。
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