明 細 書 糖由来のハイドロゲル化剤 技術分野
この発明は、 有機溶媒及び水の双方に対しゲル形成能力を有するゲル化剤に関 する。 従来技術
近年、 超分子化学の分野では、 単量体種を所望の高次構造に構成することに焦 点が当たっている。 微視的及び巨視的なスケールの双方で汎用的なゲル機能を有 する結果、 例えば、 食品、 脱臭剤、 化粧品、 競技用靴、 及びクロマトグラフィー の分野のような工業的目的用の効果的で且つ調製可能な小分子のゲル化剤の開発 iこ多くの関' L、力集まって ヽる(Murata, K. Aoki, M.; Suzuki, T.; Harada, T.; Kawabata, H.; Komori , T.; Ohseto, F.; Ueda, K.; Shinkai, S. J. Am. Chem. Soc. 1994, 116, 6664 and references therein. : James, T. D.; Murata, K.; Harada, T.; Ueda, K.; Shinkai, S. Chem. Lett. 1994, 273. : Jeong, S. W.; Murata, K.; Shinkai, S. Supramol . Sci. 1996, 3, 83; : Shinkai, S.; Murata, K. J. Mater . Chem. (Feature Article) 1998, 8, 485. ·· Yoza, K.; Amanokura, N. Ono, Y.; Akao, T.; Shinmori, H.; Takeuchi, M.; Shinkai, S.; Reinhout, D. L. Chem. Eur. J. 1999, 5, 2722 : Wang, R.; Geiger, C.; Chen, L.; Swanson, B.; Whitten, D. G. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 2399. : Duncan, D. C.; Whitten, D. G. Langmuir 2000, 16, 6445. : Geiger, C. ; Stanescur M.; Chen, L. ; Whitten, D. G. Langmuir 1999, 15, 2241. : Terech, P.; Weiss, R. G. Chem. Rev. 1997, 3313. : Otsuni, E. ; Kamaras , P.; Weiss, R. G. Angew. Chem. , Int. Ed. 1996, 35, 1324 and references therein. : Terech, P.; Furman , I.; Weiss, R. G. J. Phy. Chem. 1995, 99, 9558 and references therein. : Abdallach,
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E. J.; Carr, A. J.; Melendez, R. E.; Hamilton, A. D. Science 1999, 286, 1540
このようなゲル化剤を S EMや T EMで観察することにより、 非共有結合相互 作用により形成された低分子量の化合物の繊維状集合体が、 このようなゲル化現 象を引き起こすということが分かってきた。 特に 「水性ゲル」 は、 通常タンパク 質やポリマーのような高分子から作られ、 低分子量の一次元の集合体であって自 己凝集によって形成される可逆性の高次構造を有する 「有機ゲル」 と異なって、 この複雑な相互作用を特定するのが困難である。 しカゝし、 低分子量の化合物のこ のような集合体から成る 「水性ゲル」 が少数存在する (Estroff, L. A.; Hamilton, A. D. Angew . Chem. Int. Ed. 2000, 39, 3447. : Fuhrhop, J . -H . ; Schnieder, P.; Rosenbery, J.; Boekema, E. J. Am. Chem. Soc. 1987, 109, 3387. : Fuhrhop, J.-H. Boettcher, C. J. Am. Chem. Soc. 1990, 112, 1768. : Yoza, K.; Ono, Y.; Yoshihara, K.; Akao, T.; Shinmori, H.; Takeuchi, M.; Shinkai, S.; Reinhout, D. L. Chem.Connmun. 1998, 907. : Menger, F.; Caran, K. J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 11679. : Hanbusa, K.; Hirata, T. ; Inoue, D.; Kimura, M.; Touhara, H.; Shirai, H. Colloid. Sur. , A. 2000, 169,
発明が解決しようとする課題
発明者らが知る限りにおいて、 7i性ゲルの微視的構造は未だに NMRや X線等 の測定方法により詳細に明らかにされていない。 発明者らは水中で形成される新 規な糖由来の集合体の開発に焦点を当てた (John, G.; Masuda, M.; Okada, Y.; Yase, K.; Shimizu, T. Adv. Mater. 2001, 13, 715. : Masuda, M.; Hanada, .; Okada, Y.; Yase, K.; Shimizu, T . acromolecules 2000, 33, 9233. : Nakazawa, ェ. Masuda, M.; Okada, Y.; Hanada, T. ; Yase, K.; Asai, M.; Shimizu, T. Langmuir 1999, 15, 4757. : Shimizu, T. ; Masuda, M. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 2812.)。 このシステムの利点は、炭水化物フアミリ一の豊富な基本骨格を利用して、様々 な集合体を系統的に設計できることである。
発明者らは、 いくつかのゲル化剤を設計し、 これらについてこのような解析を 行うことにより、 有機溶媒及び水の双方に対し優れたゲル形成能力を有するゲル ィヒ剤についての研究を行った。 課題を解決するための手段
本発明者らは既にグルコース由来のゲル化剤が水/アルコール(容積比 1: 1) 又は水 /アセトン (容積比 1 : 1) をゲル化することを見出した (John, G.; Masuda, M.; Okada, Y.; Yase, K.; Shimizu, T. Adv. Mater. 2001, 13, 715.)。 この発見は、 もし適当な疎水性基と同様に糖についても注意深く研 究すれば、 レヽくつかの新規な水性ゲル化剤が見つかるかもしれな ヽということを 示唆しており、 これは水性ゲルを設計するための基本的構造要件が何であるかを 特定するのに有用であると考えられる。 このような目的の下に、 糠部分、 ァミノ フエ二ル及ぴ長鎖アルキル基を有する新規なゲル化剤を設計した。
(式中、 Aは糖の残基を表し、 Rはアルキル基を表す。) で表されるハイドロゲル 化剤が有機溶媒及び水の双方に対し優れたゲル形成能力を有することを見出した。 このゲル化剤の一端を成す長鎖アルキル基は有機溶剤への溶解性を向上させる 力 同時にファンデアワールスカにより繊維の集合を促進させ、 最終的にゲルを 形成させる。 図面の簡単な説明
第 1図は、 本発明のゲル化剤を用いて作製した水性ゲルの E F— T EM写真を 示す図である。 第 2図は、 本発明のゲル化剤を用いて作製した水性ゲルの E F— T EM写真であり、 第 1図の拡大図である。 矢印はらせん状繊維を示す。 第 3図 は、 本発明のゲル化剤を用いて作製した水性ゲルの S EM写真を示す図である。 第 4図は、 D 20及ぴメタノール一 d 4 (容積比: 1 Z 1 ) 中の水性ゲルの1 H— NMRスペクトルである。 第 5図は、 キセロゲルの X R Dスペクトルである。 第 6図は、 水性ゲルの X R Dスペクトルである。 第 7図は、 水性ゲルの自己凝集の 様子を示す図である。 発明の実施の形態
以下、 本発明を詳細に説明するが、 本発明を限定することを意図するものでは ない。
本発明のハイド口ゲル化剤は下記化学式
で表される c
ここで、 Aは糖の残基を表す。 この糖は単糖類、 オリゴ糖類、 又は多糖類のい かなる糖であってもよいが、単糖類であることが好ましい。この単糖類としては、 グノレコース、 ガラクトース、 N—ァセチ^/グ コサミンなどのへキソース、 Lァ ラビノシドゃキシロースのペント一スなど!/、ずれでもよいが、 特にアルドピラノ ースが好ましい。 ビラノースにはひ及ぴ の 2種類があるがいずれでもよい。 こ のァノレドピラノースとして、 ひ一D—グノレコース、 a— D—ガラクトース、 ct— D 一マンノース、 β— D—グルコース、 j3 _ D—ガラクトース、 β— D—マンノース、 ρ—二ト口フエ二ノレ一 _ D—グノレコピラノシド、 p—二ト口フエニノレ一 a一 D— ガラクトピラノシド、 p—ニトロフエニノレー CK—D—マンノピラノシド、 p—二 ト口フエニル一 β一 D—グノレコピラノシド、 ρ—二トロフエ二/レー ] 3—D—ガラク トビラノシド、 ρ— -ト口フエ二ルー β _ D—マンノビラノシド等が挙げられる。 アルドピラノースとしては、 ダルコビラノース又はガラクトピラノースが好まし い。
また、 残基とは糖のいずれ力一の水酸基の水素を除いた残基を表すが、 好まし くはアルドビラノースの 6員環に結合するいずれ力 V "の水酸基の水素を除いた残 基を表す。
一方、 上記ィ匕学式中の Rはアルキル基を表す。 このアルキル基は直鎖であって も、 分枝鎖を有するものであってもよいが、 直鎖が好ましい。 炭素数は 6〜2 0 が好ましく、 1 0〜 2 0がより好ましい。
本発明のハイド口ゲル化剤は、 少量の固体ゲル化剤で大量の水分を固ィ匕するこ とができるので、水の保水剤 (砂漠緑化、植物栽培用土の保水剤など)、水分の吸 収剤 (ぺット用トイレの尿吸収剤、生理用水分吸収剤など)、少量のアルコール成 分も固化することからアルコール保持剤として燃料用固形物、 有機溶媒や油も固 化することが出来るので、 家庭用油凝固剤、 重油固化剤、 有機廃液固化剤などと して、 さらには、 水分を多く含む柔軟な材料として生体適合性材料、 組織 ·細胞 培養マトリクス、 タンパク質や核酸などの生体材料分離剤などへ応用できる。 実施例
以下の実施例において、 本発明によるゲル化剤を作製し、 この水中における集
合特性を、 EF-TEM(エネノレギーフィルタ一付透過型電子顕微鏡 ) (Nakazawa , I .; Masuda, M.; Okada, Y.; Hanada, T.; Yase, K.; Asai, M.; Shimizu, T. Langmuir 1999, 15, 4757.)、 NMR、 F T— I R及ぴ X R Dにより解 析した。
実施例 1
p—二トロフエ-ルー ;3— D—ダルコビラノシド (東京化成製) (2 5 0mg) をメタノール Zテトラハイドロフラン混合溶媒( 20 m 1 / 5 m 1 )に'溶解させ、 1 0%パラジウム炭素 (2 50mg) をその溶液中に加えた。 水素ガスを窒素ガ ス雰囲気下、 室温で 3時間、 反応溶液中に導入した。 反応混合物はパラジウム炭 素を除去するために濾過を行い、 ろ液を真空下蒸努させ、 乾固させた。 この残查 をテトラハイド口フラン/クロ口ホルム混合溶媒 (1/1 , 容積比) を溶離液と するシリカゲ^/カラムクトマトグラフィーを用いて精製して、 p—ァミノフエ二 ル一 β -Ό-ダルコビラノシドを得た。
Yield 80-90 %; 1H NMR (300MHz, D SO- d6): δ =3.44-4.10 (m, 6Η) , 4.76 (s, 2Η) , 5.25-5.31 (m, 3Η) , 5.60 (s, 1Η) , 6.70 (d, J = 9.0 Hz, 2H) , 6.95 (d, J = 9.0 Hz, 2H) , 7.37-7.46 (m, 5H); FT-IR (KBr): v= 3312, 2909, 1635, 1510, 1364, 1217, 1089, 1005, 1035, 999, 806, 706 cm"1; MS (NBA): m/z: 360 [M+H]+; elemental analysis calcd (%) for C19H21N06: C 63.50, H 5.89, N 3.90; found: C 63.18, H 6.04, N 3.78.
このようにして得た p—ァミノフエニル一 β— D—ダルコビラノシド (25 0 mg) をテトラハイドロフラン(20m l ) に溶解させ、 ラウ口イルクロリ ド(3 O Omg) とトリェチルァミン (1. O g) を加えた。 反応混合物は 5時間、 環 流した。 反応溶液は濾過して、 固体を除去し、 ろ液は真空下、 蒸発させて乾固さ せた。 残査はメタノール /ク口口ホルム (1/1, 容積比) を溶離液としたシリ 力ゲルク口マトグラフィ一で精製して、 ドデカノィルァミノフエニル一 — D— グノレコピラノシドを得た。
Yield 80 %; 1H NMR (300 MHz, CDC13): δ = 0.9 (t, 3H) , 1.5- 3.0 (m, 15H) , 3.50-4.13 (m, 6H) , 4.76 (s, 2H) , 5.25-5.31 (m, 3H) ,
5.63 (s, 1H) , 6.70 (d, J = 9.0 Hz, 2H) , 6.98 (d, J = 9.0 Hz, 2H〉, 7.30 (d, 2H); FT- IR (KBr): v= 3340, 2912, 1630, 1510, 1364, 1217, 1089, 1005, 1035, 999, 806, 706 cm"1; MS (NBA): m/z: 452.27 [M+H]+; elemental analysis calcd (%) for C24H37NOv: C 63.84A H 8.26, N 3.10; found: C 62.15, H 8.37, N 3.30
実施例 2
実施例 1の p— -トロフエ二ルー β _D—ダルコビラノシドの代わりに p—二 トロフエ二ルー —ガラクトピラノシド (東京化成製) を用いて同様の操作 を行い、 p—ァミノフエニル一 一 D—ガラクトピラノシドを得た。
更に、 実施例 1の p—ァミノフエ二ルー j8—D—ダルコビラノシドの代わりに ここでで得た p—ァミノフエ -ル一 — D—ガラクトビラノシドを用いて同様の 操作を行い、ドデカノィルァミノフエ二ルー β _D—ガラクトビラノシドを得た。
Yield 90 %; 1H 蘭 R (300 MHz, CDC13): δ = 0.9 (t, 3Η) , 1.5- 3.0 (m, 15H) , 3.50-4.13 (m, 6H) , 4.76 (s, 2H) , 5.25-5.31 (m, 3H) , 5.63 (s, 1H) , 6.70 (d, J = 9.0 Hz, 2H) , 6.98 (d, J = 9.0 Hz, 2H) ,
7.30 (d, 2H); FT-IR (KBr): v= 3340, 2912, 1630, 1510, 1364, 1217, 1089, 1005, 1035, 999, 806, 706 cm"1; MS (NBA): m/z: 452.27 [M+H]+; elemental analysis calcd (%) for C24H37N07: C 63.84, H 8.26, N 3.10; found: C 63.15, H 8.25, N 3.15.
上記実施例で得たドデカノイノレアミノフエニル一 — D—ダルコビラノシド及 ぴドデカノィルァミノフエ二ルー J3—D—ガラクトピラノシド (各 lmg) をそ れぞれ試験管内に量り取り、 水 (90 0mg) とメタノール (l O Omg) の混 合溶媒を加えた。 完全に溶解させるために、 加熱した。 そのあと、 ゆっくりと冷 却し、 約 2〜5時間、 室温下で放置することにより、 逆さまにしても形態がくず れない水和ゲルが得られた。
ゲル形成能力の評価結果
ゲル形成能力の評価を以下のようにして行った。
溶媒として、 水 (微量のメタノールとエタノールを含む。)、 メタノール、 エタ ノーノレ、 1ーブタノ一ノレ、 tーブタノ一ノレ、 テトラヒ ドロフラン、 クロロホ/レム、
ジクロロメタン、 n—へキサン、 酢酸ェチル、 ジメチルホルムアミド、 ジメチル ス^/ホキシドを用いた。
実施例で作製した 2種のゲル化剤をシールされた試験用チューブの中で上記レヽ ずれかの溶媒と、 ゲル化剤の濃度を 0. 1〜3. 0重量0 /0となるように混合し、 この混合物を固形分が溶解するまで加熱する。 その結果生成した溶液を 1時間か けて 25°Cまで冷却した。 このゲル化剤及び溶媒は隔膜でキャップされた試験管 に入れられオイルバス中で固形物が溶解するまで加熱される。 この溶液を 25°C まで冷却する。
この段階で、 1ーブタノ一ノレ、 tーブタノール、 テトラヒドロフラン、 クロ口 ホルム、 ジクロロメタン、 n—へキサン、 酢酸ェチノレ、 ジメチノレホルムアミド、 ジメチルスルホキシド及ぴ水の各溶剤についてはいずれのゲル化剤も安定なゲル を形成することが観測されたが、 メタノールとェタノールにつ 、ては溶解した。 本発明のゲル化剤が 0. 1重量%以下の濃度で少量のアルコール(約 1重量%、 即ち、ゲル化剤 1分子に対して水 50000分子以上に相当する。)を含む水をゲ ル化したことは非常に興味のあることである。 これらの結果は本発明のゲル化剤 が水と有機溶媒の両方に機能する両性ゲル化剤であることを示している。
糖部分から生じるキラル集合を視覚的に観察するために、 本発明のゲル化剤に よる水性ゲルの E F— T E M及ぴ S E M画像を第:!〜 3図に示す。 第 1図及ぴ第 3図は本発明のゲル化剤による水性ゲルの典型的な写真である。 これらの写真は このゲノレ化剤が直径が 20〜500 nmのしわ状繊維から成る 3次元ネットヮ一 クを形成していることを明らかにしている。 SEM写真 (第 3図) から判断する と、 いくつかのリボン状構造体がよじれており、 左らせん性を有していることが わかる。 更に、 キラル集合体の TEM分析によれば、 »が、 幅が約 85 nmで ピッチが約 31 5 nmで長さが数 zmである、よじれたらせん状リポンであって、 特異的に左らせん性であることがわかる(第 2図)。これらのらせん状集合体は、 熱的に安定な結晶ではなく順安定なゲルを形成することを説明するものである。 更に、 本発明のゲル化剤による水性ゲルの 1 H— NMR測定結果はこの水性ゲ ルが自己集合していることの別の証拠となる。 第 4図左に示すように、 27°Cに おいて、 集合体のゲル相の芳香族のピークが 7. 43 p pm (d、 J = 8. 6 1
Hz、 Hb (Hbについては下記ィ匕学式参照)) と 7. 38 p pm (d, J = 8 61Hz、 Ha (Haについては下記化学式参照))) に見られる。
加熱するに従って、 徐々に 7. 60 p pm (d、 J = 8. 61Hz, H
b) と 7. 28 p pm (d、 J = 8. 61Hz、 H
a) の新しいピークが現れ、 7. 4 3 p pmと 7. 38 p p mのピークは消えてゆく。 芳香族プロトン H
a及ぴ H
bの 化学シフトの差は π— πスタッキングと水素結合に起因するものであろう。 この ことは、 水素結合の誘導効果が大きすぎて、 π— πスタッキング相互作用による H
aの上方へのシフトを相殺することができないという事実を考慮することによ り説明がつく。 同様の現象が糖部分の C一 1位の芳香族プロトンにおいて観察さ れた (第 4図右)。集合体と非集合体で別のスぺクトルが現れたということは、化 学交換が NMRの時間スケールよりも遅いことを示している。 この結果は、 ゲル 相における水素結合と π - πスタツキング相互作用によって安定化された集合体 を
1 Η— NMRスぺクトルにより初めて観察したものであり、 芳香族単位が構造 上の強度を引き起こし、 また水性ゲルの形成を手助けすることを強力に支持する ものである。 FT— I Rの観察によって、 水性ゲルにおける分子内水素結合相互 作用についての有用な情報を得ることは非常に困難でありほとんど不可能である ので、 発明者らは D
20システム内において分子内水素結合相互作用の証拠を確 認した。 重水素化された水性ゲルの FT— I Rスぺクトルは 1645 cm—
1 (— C = 0、 アミド I) 及び 1514 cm—
1 (—NH、 アミド I I) における吸収バ ンドにより特徴付けられた。 更に、 シクロへキサンゲ についても、 3398 c m一
1 (一 OH)、 3298 cm—
1 (— NH) 及び 1658 cm—
1 (-C = 0) の I Rバンドが観察され、 同様の結果が得られた。 これらの結果は水性ゲルのアミ ド基が、 ゲル相の分子内水素結合を形成するだけでなく、 シクロへキサンゲルよ りも強い水素結合相互作用があることを示すものである。
最近、 ゲル相のゲル化剤の分子充填を確認するための X線結晶学的手法に関し
ていくつかの報告がなされており、 低分子量のゲル化剤のゲル化機構を明らかに するため用いられつつある (Terech, P.; Weiss, R. G. Chem. Rev. 1997, 3313. : Hanabusa, K.; Matsumoto, M.; Kimur a , M.; Kakehi, A.; Shirai, H. J. Colloid Interface Sci . 2000, 224, 231. : Abdallah, D. J.; Sirchio, S. ; Weiss, R. G. Langmuir 2000, 16, 7558. : Sakurai, K.; 〇no, Y.; Jung, J. H.; Okamoto, S .; Sakurai, S .; Shinkai, S. J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2 2001, 108.)。 し力 し、 ゲル化剤分子の分子充填と物理的ゲル化特性との間の関係は未だによく分かつて いない。 凍結法によつて水から得られた本発明のキセ口ゲルはスポンジ状集合体 となるが、 典型的な結晶にはならない。 発明者らは、 このキセロゲルの X線回折 から整然としたゲルにおけるゲル化剤分子の分子充填モードに関する情報を得た。 本発明のキセロゲルの回折パターンは周期的な回折ピーク (第 5図) を示し、 こ のことはこのキセロゲルが実際層状組織となつて集合していることを示している。 XRD法によって得られた集合体の間隔 (d) は約 2. 90n m、 1. 46 nm 及ぴ 0. 97nmであり、 これはほぼ正確に 1 : 1 2 : 1Z3の比であり、 ゲ /レ化剤の分子長 (CPK分子モデノレによれば、 2. 45 nm) の 2倍より短く、 1分子より長い。 キセロゲルで観測されたこの 2. 90nmのピークはゲル状態 においても観察された(第 6図)。 これらの結果は本発明の水性ゲル力 S、厚さが 2. 90nmの (100) 面に相当する分子膜を有する指組状の 2分子膜構造を有し ていることを強く示唆する (第 7図)。更に、本発明の水性ゲルの広角 X線ダイァ グラムは、一連の鋭い反射ピークを示しており、 このことは、長鎖アルキル基が、 指組状の疎水性相互作用により規則的な層状高密度充填を形成するとの仮説的見 方を指示する。 これはよく整った 2分子層の水性ゲルが形成したことの最初の例 である。 XRD、 FT— NMR及ぴ FT— I Rの結果から、 本発明の水性ゲルは 水素結合、 π— π相互作用及ぴ疎水性力の組み合わせにより安定ィ匕していること をが分かった。