明細書
荷電粒子線露光装置および半導体デバイス製造方法 本出願は日本国特許出願平成 1 1年第 3 5 5 2 6号および日本国特許出願平成 1 1年第 1 0 0 8 9 4号を基礎とし、 その内容は引用文としてここに含まれる。 技術分野
本発明は、 荷電粒子線を用いて、 マスク又はレチクルに形成されたパターンの 像をウェハ等の感応基板に投影露光する荷電粒子線露光装置に関する。 背景技術
従来の荷電粒子線露光装置の露光方式は概ね以下の 3種に分類される。
( 1) スポッ トビーム露光方式
(2) 可変成形露光方式
(3)ブロック露光方式
これらの露光方式は従来の光による一括転写方式に比較して、 解像度において 非常に優位性があるが、 スループッ 卜において大きく劣っていた。 特に(1)、 (2) の露光方式では、 非常に小さいスポッ ト径ゃ矩形ビームでパターンをなぞるよう にして露光を行うため、 スループッ トは制限される。 また、 (3)のブロック露光 方式はスループッ 卜を改善するために開発された方式であり、 定型化されたパ夕 —ンをマスク化し、 その部分については一括露光することにより、 スループッ ト を改善している。 ところが、 この方式においてもマスク化されるパターン数が制 限されるため、 可変成形露光方式を併用せざるを得ず、 そのため、 スループッ ト は期待ほどには向上できていない。
このように従来の荷電粒子線露光装置の欠点であるスループッ トを向上させる ために、 レチクルの一部を一括して試料上に投影露光する分割投影転写方式の露 光装置の開発が進められている。
この分割投影転写方式の露光装置では、 試料 (通常はウェハである) 上には複 数のチップが形成され、 さらに各チップの領域は複数のストライプに、 各ストラ
イブは複数のサブフィールドにそれぞれ分割されている。 一方、 レチクルには試 料のチップに転写されるパターンが形成されており、 このパターンはチップのス トライプおよびサブフィールドに対応して同様のストライプおよびサブフィール ドに分割されている。
電子線を用いた露光方法を説明すると、 まず、 レチクルが装着されたレチクル ステージと試料が装着されたウェハステージとを対応するストライプの中心を縮 小比に従った速度で定速移動させる。 電子線はレチクル上のサブフィールドを照 明し、 レチクル上に形成されたパターンは、 投影光学系によって試料上に投影さ れて試料が露光される。
そして、 電子線をレチクルステージの進行方向と略直角な方向に偏向させ、 順 次、 一列に配置されたサブフィールドの投影露光を行う。 一列のサブフィールド の投影露光が終了すると、 次の列のサブフィールドの投影露光を開始する。 その 際、 各列ごとに電子線の偏向方向を逆にして順次サブフィ一ルドの投影露光を行 うことにより、 スル一プッ トを上げるようにしている。
このような方法で露光が行われるため、 従来の荷電粒子線露光装置と比較す ると、 サブフィールド領域が一括露光され、 またレチクルには露光すべきパター ンが全て形成されているため、 非常にスループッ 卜を向上させることができる。 発明の開示
こうした電子線を用いた露光装置の投影光学系はレンズや偏向器等により構成 されるが、 偏向器コイルの見込み半角や、 各偏向器コイルに流す電流の設定によ つては、 偏向器から偏向場以外の磁場も同時に発生する。 光軸周りの回転角を Θ とした円筒座標系(Z , θ )で磁場分布を表すと、 偏向場は最低次の三角関数 cos [ Θ ] , sin [ 0 ]に比例する成分の結合の形で表されるが、 偏向場以外の磁場は cos [3 Θ } , sin [3 θ ] 、 cos [5 θ } , sin [5 0 ]等の奇数次の三角関数に比例した成分の 結合で表される。
これらの高次成分は、 電子線の偏向には寄与しないが、 いわゆる 「4重収差」 とよばれる一群の収差を発生する。 これらの 4重収差により電子線の像がボケた り、 投影像の形状が歪んだりすることは、 ウェハ面上に形成される集積回路の断
線や、 形状の変化を引き起こし好ましくない。 これらの 4重収差は、 3 Θ成分や 5 0成分がほぼ 0となるように設計された偏向器からも発生している。 従来は、 偏向器の組み立て誤差により、 3 Θ成分や 5 0成分が生じていると考え、 コイル の加工精度や組み立て精度の向上が試みられてきたが、 これらによつても十分な 成果が得られていなかった。
このような問題は、 電子線を用いた露光装置だけでなく、 他の荷電粒子線を用 いた場合にも起こりうる問題である。
本発明の目的は、 偏向器において発生する 4重収差を低減した荷電粒子線露光 装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、 線幅の非常に小さな集積度の高い半導体デバイス、 およ び、 そのような半導体デバイスを製造できる半導体デバイス製造方法を提供する ことにある。
上記目的を達成するため、 本発明による荷電粒子線露光装置では、 荷電粒子線 を偏向する偏向器の少なくとも 1つについて、 その偏向器の偏向器コイルの見こ み半角と Ampere Turn値を、 当該偏向器によって発生する磁場の 3 Θ成分、 5 0 成分および 7 0成分がほぼ 0となるように設定する。 その結果、 3 0成分、 5 Θ 成分および 7 Θ成分に起因する 4重収差をほぼ 0とすることができる。
ここで、 偏向器を見込み半角 Θ iがほぼ 180 ° X i/(2n + 1)である n組 ( n≥ 2、 i = l〜n) の偏向器コイルから構成し、 次式 ( 1 ), ( 2 ) が 1から mま での各整数 kに対してほぼ成立するように各偏向器コイル iの Ampere Turn値 J i を設定することができる。 ただし、 mの値は、 最小値 3 ( 11 = 2のとき 1、 n == 3のとき 2) と最大値 (n— 1 ) の間の任意の整数に設定される。
または、 偏向器を見込み半角 0 iがほぼ 180 ° X (i — 1/2)バ 2n — 1)である n組 (n≥ 3、 i = l〜n) の偏向器コイルから構成し、 次式 ( 1 ), ( 2 ) が 1か ら mまでの各整数 kに対してほぼ成立するように各偏向器コィル iの Ampere Turn 値 J i を設定しても良い。 ただし、 mの値は、 最小値 3 (n = 3のとき 2 ) と最 大値 (n— 1 ) の間の任意の整数に設定される。
∑Ji-sm( i)≠0 …ひ)
i 1
I: Ji-sin(2k + l)0i = 0 (k=l,2,- · ',m) ''·(2)
1=1
その結果、 偏向器により発生する磁場の奇数次成分を、 少なくとも 7次成分まで ほぼ 0とすることができる。 さらに、 偏向コイルの組数を ηとするとともに条件 を適当に設定することにより、 偏向器が発生する磁場の奇数次成分を、 (4 η— 1 ) 次成分までほぼ 0とすることができる。 よって、 これらにより発生する重ね 収差の発生を防ぐことができる。
また、 偏向器コイルの見こみ半角と Ampere Turn値を、 磁場の 3 0成分、 5 0 成分および 7 Θ成分がほとんど発生しないように設定するとともに、 それらの偏 向器コイルの中に、 見こみ半角が 45 ° の偏向器コイルを含むか、 または、 異な る 2つの偏向器コイルの見込み半角の和が 90 ° となるような偏向器コイルを含 むように構成しても良い。 その結果、 光軸方向の同じ位置に置いた X軸方向偏向 器と Y軸方向偏向器のコイルのうち、 少なくとも一つが重なるように設定される ため、 重なった位置のコイルを一つのコイルとしてコイルの数を減らすことがで きる。 また、 このコイルに、 X軸方向偏向器として要求される電流と Y軸方向偏 向器として要求される電流との和を流すことにより、電流発生装置の数を減らし、 コストの削減を図ることができる。
上述したもの以外に、 偏向器を見込み半角 0 iがほぼ 180 ° X i/(2n)である n 組 (n≥ 3、 i = l 〜! ) の偏向器コイルで構成し、 次式 ( 1 ) , ( 2 ) が 1か ら mまでの各整数 kに対してほぼ成立するように各偏向器コイル iの Ampere Turn 値 J i を設定するようにしても良い。 ただし、 mの値は、 最小値 3 (n = 3のと— き 2 ) と最大値 (n— 1 ) の間の任意の整数に設定される。
または、 偏向器を見込み半角 0 iがほぼ 180 ° X (i — 1/2)バ 2η)である n組 (n ≥ 3、 i = l 〜! 1 ) の偏向器コイルから構成し、 次式 ( 1 ) , ( 2 ) 力 1から m までの各整数 kに対してほぼ成立するように各偏向器コイル i の Ampere Turn値 J i を設定する。 ただし、 mの値は、 最小値 3 (n = 3のとき 2 ) と最大値 (n 一 1 ) の間の任意の整数に設定される。
∑ Ji-sin( 0i)≠O … )
i耀 1
∑ Ji · sin(2k + ί)θ{ = 0 (k=l,2,… ) … (2)
1=1
その結果、 偏向器により発生する磁場の奇数次成分を、 少なくとも 7次成分ま でほぼ 0とすることができる。 さらに、 偏向コイルの組数を nとするとともに条 件を適当に設定することにより、 偏向器が発生する磁塲の奇数次成分を、 (4 n — 1 ) 次成分までほぼ 0とすることができる。 よって、 これらにより発生する重 ね収差の発生を防ぐことができる。
また、 偏向器を n組 (n≥ 3 ) の偏向器コイルで構成し、 これらの偏向器コィ ルの見こみ半角と Ampere Turn値を、 磁場の 3 Θ成分、 5 0成分および 7 0成分 がほとんど発生しないように設定しても良い。 この場合、 各々のコイルの Ampere Turn値が等しく設定されているため、コイル用電源装置を共通にすることができ、 コストダウンを図ることができる。
さらに、 リソグラフイエ程を有する半導体デバイス製造方法において、 リソグ ラフィ工程に上述したような荷電粒子線露光装置を使用することにより、 線幅の 非常に小さな密度の高い半導体デバイスを製造することができる。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明による荷電粒子線露光装置の実施例を示す概略図である。
図 2は、 例 1に用いたトロイダル型偏向器のコィル配置を示す図である。
図 3は、 例 2に用いたトロイダル型偏向器のコイル配置を示す図である。
図 4は、 例 3に用いた卜ロイダル型偏向器のコイル配置を示す図である。
図 5は、 例 4に用いたトロイダル型偏向器のコイル配置を示す図である。
図 6は、 比較例に用いたトロイダル型偏向器のコイル配置を示す図である。 図 7は、分割投影転写方式の露光装置における分割露光の単位を示す図である。 図 8は、 分割投影露光装置の露光方式を示す図である。
図 9は、 半導体デバイス製造方法を示すフローチヤ一トである。
図 1 0は、 ウェハプロセッシング工程におけるリソグラフイエ程の内容を示す フローチヤ一卜である。
図 1 1は、 第 1〜第 6の実施の形態に対応する偏向器を構成する偏向器コイル の見込み半角を示す図。
図 1 2は、 第 1〜第 6の実施の形態に対応する偏向器を構成する偏向器コイル の Ampere Turn値を示す図。
図 1 3は、 第 1〜第 6の実施の形態に対応する偏向器の d 2k- 1の値を示す図。 図 1 4は、 第 1〜第 6の実施の形態に対応する偏向器する偏向器コイルの見込 み半角および Ampere Turn値の許容誤差を示す図。
図 1 5は図 1に示す荷電粒子線露光装置の投影光学系に本発明を適用した場合 の、 評価結果を示す図。 発明を実施するための最良の形態
以下、 本発明の実施形態 (embodiment) について、 図を用いて説明する。 図 1 は、 荷電粒子線露光装置の概略構成を示す図である。 図 1において 1、 2はレン ズ、 3はマスク、 4は感応基板であるウェハ、 5は散乱アパーチャ一、 6は光軸、 7 ( C 1〜 C 8および P 1〜P 4 ) は偏向器、 8は電子線の軌道である。 電子銃 等の電子線源 9から出射された電子線は、 照明光学系を構成するコンデンサーレ ンズ 1 0および偏向器 1 1 によりマスク 3のサブフィ一ルドの一つに照射され る。 サブフィールドのパターンを通過した電子線は、 2つのレンズ 1、 2により ウェハ 4上に結像され、 マスク 3上のパターンの像がウェハ 4上に縮小投影され る。
レンズ 1 とレンズ 2の間には、 散乱線を力ッ 卜するための散乱アパーチャ一 5 が設けられている。 偏向器 7は合計 1 2個設けられており、 散乱アパーチャ一 5 よりマスク側に C 1〜C 8の 8個が、 散乱アパーチャ一 5よりウェハ側に P 1〜 P 4の 4個が設けられている。 これらの偏向器 7は、 マスク 3の所定の位置を出 発した電子線が、 電子線の所定の軌道 8上に乗って、 散乱アパーチャ一 5を通過 し、 ウェハ 4の所定の位置に結像するように電子線を偏向させるほか、 像の歪み や収差を取り除く。
ところで、 発明者らは、 上述したように 3 0成分や 5 Θ成分がほぼ 0となるよ うに設計された偏向器においても 4重収差が残るのは、 7 Θ成分により無視でき
ぬ大きさの 4重収差が発生するためであることを数値計算により見出した。
そこで、本発明では、偏向器 1 1および偏向器 7を構成する偏向器 C 1〜C 8 , P 1〜P 4の少なくとも一つの偏向器の偏向器コイルの配置 (見こみ半角) と Ampere Turn値を、 磁場の 3 0成分、 5 0成分だけでなく、 7 0成分がほとんど 発生しないように設定することにより、 4重収差がほぼ 0となるようにした。 こ こで、 「ほとんど発生しない」 とは、 荷電粒子線露光装置に設計上許される範囲 内の 4重収差であれば、完全に発生しない状態でなくてもよいということである。 なお、 以下の説明では、 投影光学系に設けられた偏向器 C 1〜C 8, P 1〜P 4 に対して、 上述のように設定する場合について説明するが、 照明光学系の偏向器 1 1についても全く同様に適用することができる。
以下では偏向コイル iの見こみ半角を 偏向コイル i の Ampere Turn値を J i として、 4重収差がほぼ 0となるような実施形態について説明する。
(第 1の実施の形態)
偏向器が見込み半角 Θ i = 180 ° X i/(2n + 1)を有する n組 (n≥ 2、 i = 1 〜n ) の偏向器コイルから構成され、 次式 ( 1 ), ( 2 ) が 1から mまでの各整 数 kに対して成り立つように各偏向器コイル iの Ampere Turn値 J iを設定する。 ただし、 mの値は、 最小値 3 (n = 2のとき 1、 n = 3のとき 2 ) と最大値 (n 一 1 ) の間の任意の整数に設定される。
∑ Ji-sinf θι)≠0 …ひ)
1-1
∑ Ji'sinf2k+l)0i = 0 0^1,2,···^) · · '(2)
ι=1
(1)式の左辺は偏向に寄与する磁場を表しており、 (1)式は偏向に寄与する磁場が 0でないことを示すものである。 一方、 (2)式の左辺は偏向器によって発生する 磁塲の ( 2 k + l ) Θ成分をそれぞれ表しており、 (2)式は偏向器によって発生 する磁場の ( 2 k + l ) 0成分が 0であることを示すものである。
偏向器コィルの組数が n≥ 4の場合には mの最小値が 3なので、 nの値がどの ような場合であっても k = 1から k = 3まで(2)式が成り立つように設定される。 このことから、 k = 1から k = 3までのそれぞれについて ( 2 k + 1 ) 0成分が 0となることが保証されるので、 3 0、 5 Θ . 7 0成分を 0とすることができる。
偏向器コイルの組数が n = 3の場合には、 (2)式は k = l , 2に関して成立す るので、 3 0、 5 0成分が 0となる。 しかし、 各偏向器コイルの見込み半角 θ 1, Θ 2, 0 3 (ラジアン) は t/ 7、 2 π/ 7、 3 πΖ 7となるので、 各 sin 0 iは 自動的に 0となり、 7 Θ成分は 0となる。
偏向器コイルの組数が n - 2の場合には、 (2)式により 3 Θ成分が 0 となり、 見込み半角 0 Ι,θ 2 (ラジアン) が π/ 5、 2 π/ 5となるから 5 0成分が 0と なる。 7 Θ成分については、
Sin (7 Θ 1) =Sin (7 π/5) =— Sin (— 7 π/5)
=一 Sin (2 π— 7 π /5) =— Sin (3 π /5)
=- Sin (3 θ 1)
となる。
同様に、
Sin (7 θ 2) =Sin (14 π /5) =Sin (4 π /5)
= - Sin (2 π - 4 π /5) = - Sin (6 π /5)
=一 Sin (3 θ 2)
となる。 よって、
JlSin (7 θ 1) + J2Sin (7 θ 2)
=一 IJISin (3 θ 1) + J2Sin (3 θ 2) ) =0
となって、 3 0成分が 0であることから、 7 Θ成分が 0となることが自動的に保 証される。
このような三角関数の性質を利用すれば、 偏向器コイルの組数が η = 2の場合 に限らず、 η≥ 3においても、 mの値を最大値 (n— 1 ) に設定して k = 1〜 ( - 1 ) について(2)式を成り立たせ、 ( 2 n— 1 ) Θ成分までを 0 とすれば、 自 動的に (4 n— l ) 0成分までが 0となることが分かる。
以上のことより、 条件 1 において高次成分中の 3 0、 5 θ , 7 0成分を 0とす るには、 偏向器コイルの組数 nは 2で十分であり、 このように設定するのが最も 経済的である。 しかし、 コイル駆動装置の電圧負荷などを考慮して 3組以上の偏 向器コイルを使用してもよい。 なお、 上述した説明では、 偏向器を構成する偏向 器コイルの見込み半角 Θ iと Ampere Turn値 J iとが(1)式および(2)式を満足すれ
ば、 3 0成分、 5 0成分、 7 Θ成分が完全 0となることを示したが、 荷電粒子線 露光装置に設計上許される範囲内の 4重収差であれば、完全に 0でなくても良い。 すなわち、 4重収差が許容範囲内となるのであれば、見込み半角 Θ iと Ampere Turn 値 J i とを(1)式および(2)式が 「ほぼ」 満足されるように設定し、 成分、 5 Θ成分、 7 0成分が 「ほぼ」 0となるようにしても良い。 さらに、 荷電粒子光学 系が偏向器を複数有している場合には、 同様の理由から、 全ての偏向器について 上述したように設定する必要はない。
3組以上の偏向器コイルを使用する場合は、 必要な偏向量によって(1)式の左 辺の値を決定し、 かつ、 mの値を最大値 (n— 1 ) に設定して、 1から (n— 1 ) までの kの値に対して(2)式を成立させると、 n個の J i に関して n個の方程式 が得られるので、 各偏向器コイルの Ampere Turn値 J iが一義的に定まる。
(第 2の実施の形態)
偏向器が見込み半角 0 i = 180 ° X (i — 1/2) / (2n一 1)である n組 (n 3、 i = l〜n ) の偏向器コイルから構成され、 次式 ( 1 ) , ( 2 ) が 1から までの 各整数 kに対して成り立つように各偏向器コイル iの Ampere Turn値 J iを設定す る。 ただし、 mの値は、 最小値 3 ( n = 3のとき 2 ) と最大値 (n— 1 ) の間の 任意の整数に設定される。
∑Ji-sin( θ-) 0 ·' ·(1)
1-1
∑ Ji-sin(2k + l)0i - 0 ik=l,2,' ' '^m) · · '(2)
i=l
この第 2の実施の形態においても、 n≥ 4の場合については、 上述した第 1の 実施の形態の場合と同様に k = 1から k = 3まで(2)式が成り立つように設定さ れるので、 k = 1から k = 3までのそれぞれについて ( 2 k + l ) Θ成分が 0と なることが保証され、 3 Θ、 5 θ , 7 0成分を 0とすることができる。
偏向器コイルの組数 nが n = 3の場合には、 (2)式により 0となることが保証 されているのは、 3 0成分と 5 0成分のみである。 しかし、
Sin (7 Θ 1) =Sin (7 π /10) =Sin ( π— 7 π /10)
=Sin (3 π/10) =Sin (3 θ 1)
Sin (7 θ 2) =Sin ( 14 π /10) =Sin (2 π— 7 π /10)
=Sin (6 Tt /10) =Sin (3 Θ 2)
Sin (7 Θ 3) =Sin (21 π /10) =Sin (3 π — 21 π /10)
=Sin (9 π /10) =Sin (3 θ 3)
であるので、
JlSin (7 θ 1) + J2Sin (7 θ 2) + J3Sin (7 θ 3)
= IJISin (3 θ 1 ) + J2Sin (3 θ 2) + J3Sin (3 θ 3) \ =0
となり、 3 0成分が 0であることから、 7 0成分も 0となる。
このような三角関数の性質を利用すれば、 η = 3の場合に限らず、 η≥ 4にお いても、 mの値を最大値 (n— 1 ) に設定して k = l 〜 (n— 1 ) について(2) 式を成り立たせ、 ( 2 n — 1 ) 0成分までを 0とすれば、 自動的に (4 n— 5 ) Θ成分までが 0となることが分かる。
以上のことより、 第 2の実施の形態において高次成分中の 3 Θ 、 5 θ , 7 Θ成 分を 0とするには、 偏向器コイルの組数 nは 3で十分であり、 このように設定す るのが最も経済的である。 しかし、 コイル駆動装置の電圧負荷などを考慮して 4 組以上の偏向器コイルを使用してもよい。
4組以上の偏向器コイルを使用する場合は、 必要な偏向量によって(1 )式の左 辺の値を決定し、 かつ、 mの値を最大値 (n— 1 ) に設定して、 1から (n— 1 ) までの kの値に対して(2)式を成立させると、 n個の J i に関して n個の方程式 が得られるので、 各偏向器コイルの Ampere Turn値 J iが一義的に定まる。
なお、 この第 2の実施の形態のように偏向器コイルの見込み半角 0 i を Θ i = 180 ° X (i — 1/2) / (2n 一 1)とした場合には、 n番目 (i = n ) の偏向器コイルの 見込み半角 θ n は必ず 90 ° となるので、 たとえば、 1象限と 2象限、 3象限と 4象限の偏向器コイルが組をなしている場合、 1象限と 4象限、 2象限と 3象限 のコイルがそれそれ重なり合う。 このような場合には、 重なり合うコイルは 1つ のコイルで構成し、 このコイルに、 計算された Ampere Turn値の 2倍の Ampere Turn 値を与えるようにすればよい。
(第 3の実施の形態)
第 3の実施の形態では、 偏向器コイルの見こみ半角と Ampere Turn値を、 磁場 の 3 Θ成分、 5 Θ成分および 7 Θ成分がほとんど発生しないように設定するとと
もに、 それらの偏向器コイルの中に、 見こみ半角が 45 ° の偏向器コイルを含む か、 または、 異なる 2つの偏向器コイルの見込み半角の和が 90 ° となるような 偏向器コイルを含むようにした。
この第 3の実施の形態の場合には、 X軸方向偏向器および Y軸方向偏向器にお いて、 少なくとも一つの偏向器コイルが同じ位置に置かれることになる。 すなわ ち、 Y軸方向偏向器は X軸方向偏向器を光軸の回りに 9 0 ° ずらしたものであり、 例えば、 見込み半角が 45 ° の偏向器コイルを含む場合には、 X軸方向偏向器の 偏向器コイルも Y軸方向偏向器の偏向器コイルも同じ位置となる。 このような場 合には偏向器コイルを共用できるので、 偏向器コイルの数と電流発生装置の数を 減らすことができる。 これら偏向器コイルに流す電流は、 X軸方向偏向器で必要 とされる電流と、 Y軸方向偏向器で必要とされる電流の和となる。
(第 4の実施の形態)
第 4の実施の形態では、 偏向器が見込み半角 Θ i = 180 ° X i/(2n)である n組 ( n≥ 3、 i = l〜n ) の偏向器コイルで構成され、 次式 ( 1 ) , ( 2 ) 力 1か ら mまでの各整数 kに対して成り立つように各偏向器コイル iの Ampere Turn値 J i を設定する。 ただし、 mの値は、 最小値 3 ( n = 3のとき 2 ) と最大値 (n - 1 ) の間の任意の整数に設定される。
∑ Ji-sinf θ·) 0 *·· )
1-1
∑ Ji-sinf2k + l)0i = 0 (k=l,2,- · -^m) · · -(2)
i=l この第 4の実施の形態においても、 上述した第 1の実施の形態や第 2の実施の 形態と同様に、 n≥ 4のときは、 (2)式により、 3 Θ成分、 5 Θ成分、 7 Θ成分 を 0にすることができる。 また、 n = 3の場合には、 (2)式により 0となること が保証されているのは 3 Θ成分、 5 Θ成分のみであるが、
Sin (7 Θ 1) =Sin (7 π /6) =— Sin (7 π /6— 2 it )
=— Sin (5 π/6) =— Sin (5 Θ l)
Sin (7 Θ 2) =Sin (14 π/6) =— Sin (14 π /6 — 4 π )
=- Sin (10 π /6) = - Sin (5 θ 2)
Sin (7 θ 3) =Sin (21 π /6) =— Sin (21 π /6 — 6 π )
=一 Sin (15 π/6) =一 Sin (5 θ 3)
であるので、
JlSin (7 θ 1) + J2Sin (l θ 2) + J3Sin (7 θ 3)
=一 IJISin (5 θ 1) + J2Sin (5 θ 2) + J3Sin (5 0 3) ) =0
となり、 5 Θ成分が 0であることから、 7 Θ成分も 0 となる。
η≥ 4の場合においても、 同様な関係により、 ( 2 η — 1 ) Θ成分まで 0とな るように(2)式を定めれば、 自動的に (4 η — 3 ) S成分までが 0となる。
そのため、 第 4の実施の形態において高次成分中の 3 0、 5 Θ 、 7 0成分を 0 とするには、 偏向器コイルの組数 ηは 3で十分であり、 このように設定するのが 最も経済的である。 しかし、 コイル駆動装置の電圧負荷などを考慮して 4組以上 の偏向器コイルを使用してもよい。 4組以上の η組のコイルを用いる場合には、 mの値を最大値 (n — 1 ) に設定して、 1から (n — 1 ) までの kの値に対して (2)式を成立させることにより、 各偏向器コイルの Ampere Turn値 J iの比は一義 的に定まる。 そして、 既に述べたような三角関数の関係を用いることにより、 (4 n — 3 ) 0成分までを 0にすることができる。 その上で、 必要な偏向量によって (1)式の左辺の値を決定すると、 各偏向器コイルの Ampere Turn値 J iが一義的に Λ ま ό。
なお、 この第 4の実施の形態のように見込み半角 Θ iを Θ i = 180 ° X i/(2n)と した場合には、 n番目 (i = n ) の偏向器コイルの見込み半角 Θ nは必ず 90 ° と なるので、 上述した第 2の実施の形態条件 2で述べたような偏向器コイルの重な りが発生するが、 重なり合うコイルを 1つのコイルとする手法については、 第 2 の実施の形態条件 2で説明した手法と同一である。 ― (第 5の実施の形態)
第 5の実施の形態では、 偏向器が見込み半角 Θ i = 180 ° X (i — 1/2)バ 2n)であ る n組 (n≥ 3、 i = l 〜 n ) の偏向器コイルから構成され、 次式 ( 1 ) , ( 2 ) が 1から mまでの各整数 kに対して成り立つように各偏向器コイル i の Ampere Turn値 J i を設定する。 ただし、 mの値は、 最小値 3 ( n = 3のとき 2 ) と最大 値 (n— 1 ) の間の任意の整数に設定される。
∑Jrsin( θ{)≠0 '··(1)
l-l
¾ Ji'sin(2k + l)0i = 0 (k=l,2 - '^η) · · '(2)
ι=1 この第 5の実施の形態においても、 η ≥ 4のときは、 (2)式により、 3 Θ成分、 5 0成分、 7 Θ成分を 0にすることができる。 また、 η = 3の場合は、 (2)式に より 0となることが保証されているのは 3 Θ成分、 5 Θ成分のみであるが、 Sin (7 Θ 1) =Sin (7 π /12) =Sin ( π — 7 π /12)
=Sin (5 π/12) =Sin (5 Θ l)
Sin (7 Θ 2) =Sin ( 14 it 111) =Sin (2 π — 14 π /12)
=Sin (10 π/12) =Sin (5 θ 2)
Sin (7 θ 3) =Sin (21 π /12) =Sin (3 π — 21 π /12)
=Sin (15 π/12) =Sin (5 θ 3)
であるので、
JlSin (7 θ 1) + J2Sin (7 θ 2) + J3Sin (7 θ 3)
= IJISin (5 θ 1) + J2Sin (5 0 2) + J3Sin (5 θ 3) ) =0
となり、 5 0成分が 0であることから、 7 Θ成分も 0となる。
η ≥ 4の場合においても、 同様な関係により、 ( 2 η — 1 ) Θ成分まで 0とな るように(2)式を定めれば、 自動的に (4 η — 3 ) 0成分までが 0となる。
第 5の実施の形態において高次成分中の 3 0、 5 θ , 7 0成分を 0とするには、 偏向器コイルの組数 ηは 3で十分であり、 このように設定するのが最も経済的で ある。 しかし、 コイル駆動装置の電圧負荷などを考慮して 4組以上の偏向器コィ ルを使用してもよい。 4組以上の η組のコイルを用いる場合には、 mの値を最大 値 (n — 1 ) に設定して、 1から (n — 1 ) までの kの値に対して(2)式を成立 させることにより、 各偏向器コイルの Ampere Turn値 J iの比は一義的に定まる。 そして、 既に述べたような三角関数の関係を用いることにより、 (4 n — 3 ) Θ 成分までを 0にすることができる。 その上で、 必要な偏向量によって(1)式の左 辺の値を決定すると、 各偏向器コイルの Ampere Turn値 J iが一義的に定まる。
(第 6の実施の形態)
第 6の実施の形態では、 偏向器が n組 (n≥ 3 ) の偏向器コイルを有し、 これ らの偏向器コイルの見込み半角と Ampere Turn値を、 磁場の 3 0成分、 5 Θ成分 および 7 e成分がほとんど発生しないように設定する。
具体的には、 次式 ( 5 ) , ( 6 ) が少なく とも 2以下の kについて、
各々、 満足されればよい。
∑sin( 0i)≠O ' · ·(5)
2 sin(2k + l)0i = 0 ik=l,2, · · · — 1) · · · (6)
これらの式の解は、 η 4のときは容易に求まる。 また、 η = 3のときは、 (6) 式が一次独立でないとき、 及び上述した第 1, 第 2 , 第 4および第 5の実施の形 態で述べたような対称性がある場合に解が求まる。
この第 6の実施の形態においては、 各偏向器コイルに流す電流を同じにするこ とができるので、 電源装置の数を少なくすることができ、 経済的である。
ところで、 上述した第 1 , 第 2, 第 4および第 5の実施の形態において、 単に、
3 θ , 5 θ , 7 Θ成分を消去するのみであれば、 5組以上の偏向器コイルを用い た場合でも、 mを最小値 3に設定して k = 1 , 2, 3について(2)式を満足する ようにし、 これと(1)式とを連立させれば、 各偏向器コイルの Ampere Turn値 J i を求めることができる。 しかし、 このような場合には、 各偏向器コイルの Ampere Turn値 J iを決定するには方程式の数が足りないので、 Ampere Turn値 J iが一義 的には求まらず、 冗長性を有することとなる。 よって、 n≥ 5の場合においても、 1から (n — 1 ) までの kについて(2)式を満足させるようにし、 より高次の 0 成分を除去するようにすることが好ましい。
上述した第 1〜第 6の実施の形態に対して、 これらを満たすような偏向器コィ ルの組み合わせ例を図 1 1〜図 1 4に示した。 図 1 1〜図 1 4には、 No.により 区別される 1 2種類の偏向器が示されている。 用いられている偏向器は、 いずれ も卜ロイダル型偏向器である。 図 1 1は偏向器コイルの見込み半角、 図 1 2はそ れらの偏向器コイルの Ampere Turn値、図 1 3は(7)式で示される値 d 2k- 1である。 d 2k-lにおいて、 d 1は上述した(1 )式の左辺の値を、 d 3以降は(2)式の左辺の 値をそれぞれ示しており、 d 3 , d 5 , d Ί 3 θ , 5 θ , 7 0成分を、 d 9以
降はより高次の Θ成分を表している。 ∑ Ji ' sin(2k— l)6»i (k=lA * · · »η) · ' · (7)
(7)式において ηは偏向器コイルの組数である。 図 1 1〜図 1 4において、 偏 向器 No.l〜偏向器 No.3は第 1の実施の形態による偏向器を、 偏向器 No.4〜偏向 器 No.6 は第 2の実施の形態による偏向器を、 偏向器 No.7, No.8 は第 4の実施の 形態による偏向器を、 偏向器 No.9, No.10 は第 5の実施の形態による偏向器を、 偏向器 No.l lおよび偏向器 No.12は第 6の実施の形態による偏向器を表している。 また、 各偏向器の偏向器コイルの組数 nは、 偏向器 No.lが 2、 偏向器 No.2, No.4, No.7 , No.9および No.l lが 3、 偏向器 No.3 , No.5 , No.8 , No.10および No.12が 4、 偏向器 No.6が 5である。
図 1 3において、 0でない成分が出た次数より高い次数における場の成分の大 きさは調べても無意味であるので記載していない。 図 1 4は、 4重収差による非 線型歪みを lOnm未満とするための見込み半角の許容誤差 (Ampere Turn値に誤差 が無いとした場合) と、 Ampere Turn値の許容誤差 (見込み半角に誤差がないと した場合) である。 コイルの設定角度、 Ampere Turn値は、 荷電粒子露光装置に 要求される設計精度に応じて、 図 1 1および図 1 2に示されるような理論値から ある程度のずれが許されるが、 この程度は、 許される非線型歪みに応じて、 図 1 4を用いることにより当業者が適宜決定することができる。
なお、 図 1 2における Ampere Turn値は、 トロイダルコイルにおいて、 見込み 半角が 60 ° の偏向コイル 1組を使用して 1 Ampere Turnの励磁を与えた場合と、 同じ偏向感度を得るために必要な Ampere Turn値を示している。 すなわち、 (8)式 を満足させるように、 各 J i の値を決定している。 また、 見込み半角が 90 ° の コイルにおいては、 前述のように、 図 1 2における値の 2倍の Ampere Turn値を 与えるようにしている。
∑ J
· ' · ί8) なお、 上述した図 1 1〜図 1 4では、 いずれもトロイダルコイルを例にあげて 説明したが、 サドルコイルゃコンパウンドサドルコイルについても、 本発明を適
用することが可能である。 この場合に、 コイルの弧部分の線同士の重なりが問題 になるときは、 互いに重なる部分のコイル線を半径方向や光軸方向にずらし、 か つ、 ずれによる影響を無くするように設計すればよい。
後述するように、 図 1に示した荷電粒子線露光装置では、 1 2個の偏向器 C 1 〜C 8 , P 1 ~ P 4の全てに対して上述した第 1〜第 6の実施の形態の何れかを 適用したが、 必ずしもそのようにする必要はなく、 少なくとも 1つの偏向器につ いて満足させればよい。
図 1において、 マスク 3とウェハ 4間の距離を 600mm とし、 マスク 3におけ る 1mm角のパターンがウェハ 4上で 0.25mm角になるようにレンズ 1、 2の励磁 電流を設定し、 4分の 1縮小露光転写を行っている。 以下においては、 開き角 6mradのビームでマスク 3上のパターンを光軸 6から 2.5mm離れたウェハ 4上の 位置に照射する場合を考え、 そのときの像に生じるボケと、 歪みで、 偏向器の性 能を評価する。
図 1 5は評価結果を示すものであるが、 4種類の例と比較例 (従来の方式によ るもの) とを示した。 図 1 5には、 使用した偏向器 (いずれもトロイダル型偏向 器) の寸法、 偏向器コイルの構成 (組数) と見込み半角、 Ampere Turn値、 およ び各々の場合における高次収差 (ボケ、 歪み) を示す。 なお、 4重収差の起因と なる磁場の次数成分により、 3次成分により発生する 4重収差、 5次成分により 発生する 4重収差、 7次成分により発生する 4重収差、 9次成分により発生する 4重収差に分けて示した。
図 1 5に示す例では、 偏向器 C 1 〜C 8, P 1〜 P 4は全て同一タイプの偏向 器である。 例 ( example) :! 〜 4として示される偏向器と図 1 1〜図 1 4に示し— た偏向器 1〜 1 2との対応については、 例 1の偏向器には偏向器 No.l が適用さ れ、 例 2の偏向器には偏向器 No.l lが、 例 3の偏向器には偏向器 No.2力 例 4の 偏向器には偏向器 No.3がそれぞれ適用されている。 比較例として示されている のは、 磁場の 3 0、 5 0成分は消えるが 7 Θ成分は消えないような角度構成を使 用した偏向器である。 また、 図 2に例 1の偏向器の横断面図を、 図 3に例 2の偏 向器の横断面図を、 図 4に例 3の偏向器の横断面図を、 図 5に例 4の偏向器の横 断面図を、 図 6に比較例の偏向器の横断面図をそれぞれ示す。
図 1 5を見るとわかるように、 比較例の場合、 7 Θ成分が消去されるように偏 向器の角度構成が設定されていないために、 消去できない 4重収差によるボケが 250nm以上、 歪みが 300nm以上発生している。 これに対し、 7 Θ成分を消去する よう構成が設定されている例 1〜例 4の全てにおいて、 7 0成分までに起因する 4重収差は 0となっている。
例 1 と例 2の場合には、 9 Θ成分が消去されるように見込み角の角度構成を設 定していないので、 これに起因する 4重収差が発生している。 例 2の見込み角の 角度及び、 Ampere Turn値の設定は、 例 1のそれと比べて、 9 Θ成分の発生量が 約 6割になるように設計されている。 これにより、 例 2における 4重収差は例 1 の約 6割に低減されている。
例 3及び例 4の場合には、 9 Θ成分も消去されるよう見込み角の角度構成及び、 Ampere Turn値が設定されているので、 9 6»成分に起因する 4重収差まで、 全て の重ね収差の発生を防ぐことができる。
次に、このような露光装置を用いた分割投影転写方式の露光について説明する。 図 7は分割露光の単位を示す図であり、 基板 (通常はウェハーである) W上には 複数のチップ 1 0 3が形成され、 さらにチップ 1 0 3の領域は複数のストライプ 1 0 4に、 各ストライプ 1 0 4は複数のサブフィールド Sにそれぞれ分割されて いる。 レチクル 3 (図 1参照) にはチップ 1 0 3の領域に転写されるパターンが 形成されており、 このパターンは、 チップ 1 0 3のストライプ 1 0 4に対応して ストライプ 2 0 4 (図 8参照) に分割され、 さらにストライプ 2 0 4はストライ プ 1 0 4のサブフィールド Sに対応してサブフィ一ルド S ' に分割されている。 分割投影転写方式の露光では、通常、 図 8に示すような方法で露光が行われる。 図 8では、 ウェハ Wの 1つのストライプ 1 0 4とレチクル 3の対応するストライ プ 2 0 4とを示した。 まず、 レチクル 3が装着されたレチクルステージとウェハ Wが装着されたウェハステージとを、 ストライプ 1 0 4, 2 0 4の中心に沿って 縮小比に従った速度で等速移動させる。 レチクル上のサブフィールド S ' は電子 線 E Bによって照明され、 サブフィールド S ' に形成されたパターンの像が図 1 に示すような投影光学系によってウェハ Wの対応するサブフィールド S上に縮小 投影される。
そして、電子線 E Bをレチクルステージの進行方向と略直角な方向に偏向させ、 順次、 一列に配置されたサブフィールド S ', Sの投影露光を行う。 一列のサブ フィールド S ', Sの投影露光が終了すると、 次の列のサブフィールド S ' , S の投影露光を開始するが、 その際、 各列ごとに図 8に示すように電子線 E Bの偏 向方向を逆にして、 ライン L ', Lのように順次サブフィールド S ', Sの投影 露光を行うことにより、 スループッ トを上げるようにしている。
この露光方式で使用するレチクルは、光を使用した露光装置の場合とは異なり、 図 8に示すようにパターンが形成されるサブフィ一ルド S ' とその周辺の梁部 S Tに分割されている。 梁部 S Tは、 レチクル自体の強度を保つためや、 露光すベ きサブフィ一ルド S , のみが電子線 E Bにより照明されるように設けられたもの である。
次いで、 上述した露光装置が適用される半導体デバイス製造方法について説明 する。 図 9は半導体デバイス製造方法を示すフローチャートであり、 主工程とし て、 ウェハを製造するウェハ製造工程 S 1、 ウェハにチップを形成するのに必要 な加工処理を行うウェハプロセッシング工程 S 2、 ウェハに形成されたチップを 1個づっ切り出して、 デバイスとして動作可能な形態に組み立てるチップ組み立 て工程 S 3、 完成したチップを検査するチップ検査工程 S 4、 およびウェハプロ セッシング工程 S 2で使用するマスクを製作するマスク製造工程 S 5を有してい る。
これらの工程の中で、 半導体デバイスの性能に決定的な影響を有する工程はゥ ェハプロセッシング工程 S 2である。 このウェハプロセッシング工程 S 2では、 設計された回路パターンがウェハ上に順次積層形成され、 メモリ一や M P Uとし て動作するデバイスチップがウェハ上に多数形成される。 そのため、 ウェハプロ セッシング工程 S 2には、 ① C V Dやスパッタリング等を用いて絶縁層となる誘 電体薄膜や、 配線部、 電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程、 ② ウェハ基板や薄膜形成工程で形成された薄膜層を酸化する酸化工程、 ③薄膜層や ウェハ基板等を選択的に加工するために、 マスク (レチクルとも呼ばれる) を用 いてレジストパターンを形成するリソグラフイエ程、 ④レジストパターンを用い てドライエッチング等により薄膜層や基板を加工するエッチング工程、 ⑤イオン
'不純物注入工程、 ⑥レジスト剥離工程、 ⑦ウェハを洗浄する洗浄工程、 ⑧加工 されたウェハを検査する検査工程などが含まれている。 なお、 ウェハプロセッシ ング工程 S 2は必要な層数だけ繰り返し行われる。
図 1 0はウェハプロセッシング工程 S 2の中核を成すリソグラフイエ程の内容 を示すフローチャートである。 レジスト塗布工程 S 1 1でウェハ上にレジストを 塗布したならば、 露光工程 S 1 2において、 マスク製造工程で作製されたマスク を用いて露光装置によりレジストを露光する。 露光されたレジストを現像工程 S 1 3で現像すると、 レジス卜のパターンが得られる。 このレジストパターンは、 続くァニール工程 S 1 4により安定化される。
上述した露光工程 S 1 2に、 本発明による荷電粒子線露光装置を用いることに より、 精度の高い露光を行うことができる。 特に、 必要な最小線幅、 およびそれ に見合った重ね合わせ精度の実現に関係する工程はリソグラフイエ程であって、 その中でも位置合わせ制御を含めた露光工程 S 1 2が重要である。 この露光工程 S 1 2に本発明を適用することにより、 今まで製造が不可能であるとされていた 半導体デバイスの製造が可能となる。 産業上の利用可能性
なお、 上述した実施例では電子線を用いた露光装置を例に説明したが、 イオン ビームを含む荷電粒子線を用いる露光装置に関して本発明は適用可能である。