明細書 システィン誘導体の製造方法 技術分野
本発明は、 下記一般式 (I I I)
(式中、 R' は、 アミノ基保護基を表し、 R° は、 水素原子を表すか又は R' と 共にアミノ基保護基を表し、 R2 は、 カルボキシル基保護基を表し、 R3 は、 炭 素数 1〜7のアルキル基、 炭素数 6〜1 0のァリール基又は炭素数?〜 1 0のァ ラルキル基を表す。 ) で表されるシスティン誘導体 (以下 「システィ ン誘導体
(1 1 1) 」 という) の製造方法に関する。
本発明により得られるシスティン誘導体 (I I I) は、 H I V—プロテア一ゼ 阻害剤の中間体の原料として重要な化合物であり、 W09 6Z 237 56号、 E P 604 1 8 5 A 1号等に記載されているように、 例えば、 次のスキームの反応 原料として有用である。
背景技術
従来、 上記システィン誘導体 (I I I) の製造方法としては、 アミノ基及び力 ルボキシル基が保護された化合物に、 R3 S基を導入する方法、 例えば、 セリ ン 誘導体の水酸基を、 脱離基に変換後、 置換反応を行う方法 (テトラへドロン · レ ターズ (Te t r ah e d r on Le t t. ) . 28巻、 60 69頁 (1 98 7年) 、 ィビデム (I b i d. ) 、 34卷、 6607頁 (1 99 3年) 、 EP 6 04 1 85 A 1号) 等が知られている。
しかし、 この方法は、 いずれの場合も、 セリ ン誘導体の水酸基を、 スルホニル ォキシ基に変換後、 無水の N, N—ジメチルホルムアミ ド中で、 チオールのナト リウム塩と、 置換反応させるものである。 いずれの文献等にも、 この方法におい て副生する不純物に関する記載はないが、 我々が検討した結果、 この方法におい ては、 目的とする置換反応と競争的に、 塩基として作用するチオールのナ卜リウ ム塩又はその由来物によって、 カルボニル基のな位水素の引き抜きや引き続く E 2脱離が引き起こされる結果、 下記一般式 ( I V) で表されるデヒ ドロアラニン 誘導体 (以下 「デヒ ドロアラニン誘導体 ( I V) 」 という) を生じ、 収率が低下 する等の問題がある事を見い出した。
目的とするシスティン誘導体 (I I I) が光学活性体である場合には、 場合に よっては、 生じたデヒ ドロアラニン誘導体 (I V) に、 更にチオールがマイケル 付加し、 目的とするシスティン誘導体 (I I I) の光学純度の低下を引き起こす
問題を生じる事も見い出した (
SN2 E2 式中、 R1 、 R2 及び R3 は、 前記と同じ。 Xは、 脱離基を表す。
また、 反応に使用するチオール塩の調製方法としては、 無水条件下で、 水素化 ナトリゥムゃ水素化力リゥムを使用する方法等が用いられてきたが、 取り扱いの 観点から、 工業的に適した方法とはいいがたいものであった。
本発明は、 上記に鑑み、 経済的に有利であり、 工業的な規模においても生産効 率が高く、 特に光学純度が高いシスティン誘導体の製造方法を提供することを目 的とするものである。 発明の要約
本発明の要旨は、 下記一般式 ( I ) ;
(式中、 R° 、 R' 、 R2 及び Xは、 前記と同じ。 ) で表されるアミノ酸誘導体 を、 下記一般式 (I I) ;
R3SH (U)
(式中、 R3 は、 前記と同じ。 ) で表されるチオール化合物と反応させ、 上記シ
スティン誘導体 ( I I I ) を製造する方法において、 有機反応溶媒中、 塩基及び 水の存在下にて反応を行い、 システィン誘導体を製造するところにある。 発明の詳細な開示
以下に本発明を詳述する。
本発明においては、 上記一般式 ( I ) で表されるアミノ酸誘導体 (以下 「アミ ノ酸誘導体 ( I ) 」 という) を、 上記一般式 ( I I ) で表されるチオール化合物 (以下 「チオール化合物 ( 1 1 ) 」 という) と反応させ、 上記システィ ン誘導体 ( I I I ) を製造する。
上記 R' は、 アミノ基保護基である。 上記アミノ基保護基としては、 当該置換 反応に対してァミノ基を保護する効果を持つものであれば特に限定されず、 例え ば、 プロテクティブ · グループス · イン ' ォ一ガニック · シンセシス第 2版 (PROTE CT I VE GROUP S I N ORGAN I C S YNTHE S I S s e c o n d e d i t i o n) 、 ジョ ン - ウイ リ一 · アン ド - サンズ (J OHN WI LEY&SONS) 出版 ( 1 9 9 1年) に記載されている保護 基から選ぶことができる。 なかでも、 取り扱いの容易さ、 安価等の観点から、 ベ ンジルォキシカルボニル基、 t—ブトキシカルボニル基、 メ トキシカルボニル基、 ェトキンカルボニル基等が好ましい。
上記 RD は、 普通は水素原子であるが、 上記アミノ基保護基がフタロイル基等 の場合は、 上記 R1 と共にアミノ基保護基を表す。
上記 R2 は、 カルボキシル基保護基である。 上記カルボキシル基保護基として は、 当該置換反応に対してカルボキシル基を保護する効果を持つものであれば特 に限定されず、 例えば、 上記 R1 において取り上げられた成書に記載されている 保護基から選ぶことができ、 例えば、 エステル型保護基等を使用することが好ま しく、 特に、 低級アルキル基、 ベンジル基、 置換ベンジル基等が好ましい。
上記 Xは、 脱離基である。 上記脱離基としては特に限定されず、 例えば、 メシ ルォキシ基等の炭素数 1〜 1 0のアルキルスルホニルォキシ基; 卜シルォキン基 等の炭素数 6〜1 0のァリールスルホニルォキン基;炭素数 7〜 1 0のァラルキ ルスルホニルォキシ基; ァセチルォキシ基、 トリハロアセチルォキシ基、 下記一
般式 (V) ;
(式中、 R4 及び R5 は、 炭素数 1〜 1 0のアルキル基、 炭素数 6〜 1 0のァリ —ル甚又は炭素数 7 ~ 1 0のァラルキル基を表す。 ) で表されるホスホリル基等 を挙げることができる。 なかでも、 調製の容易さ、 安価等の観点から、 トシルォ キシ基、 メシルォキン基等が好ましい。
使用する塩基としては特に限定されないが、 実用面より、 安価な塩基が好まし く、 例えば、 水酸化物、 庾酸塩、 重炭酸塩、 酢酸塩、 りん酸水素塩、 pH緩衝剤 等の塩基を挙げることができ、 カウンタ一力チオン種としては、 例えば、 リチウ ム、 ナトリウム、 カリウム等の金属類; アンモニゥム等を挙げることができる。 なかでも、 SN 2反応選択性を向上させる観点から、 あるいは実用性の面より、 水酸化ナトリウム、 重炭酸ナトリウム、 重炭酸力リウム、 pH緩衝剤等が好まし い。
上記塩基の使用量は、 上記ァミノ酸誘導体 ( 1 ) 1モルに対し、 少なく とも 1 モル以上、 好ましくは、 1〜 2モルの範囲であることが好ましく、 後述のよう に、 反応時の pHが 3〜1 1 となるように、 使用量を設定することが望ましい。 チオール化合物 ( I I ) としては特に限定されず、 例えば、 アルキル基の炭素 数が 1〜 7のアルキルメルカプタン、 ァリール基の炭素数が 6〜 1 0のァリール メルカブタン、 ァラルキル基の炭素数が?〜 1 0のァラルキルメルカブタン等を 挙げることができる。 好ましくは、 メチルメルカプタン、 フ I二ルメルカプタン 反応温度は、 目的とする化合物により異なる力く、 反応液が固化しない温度域で あればよく、 SN 2反応選択性の面から、 5 0°C以下が好ましく、 より好ましく は、 0〜3 0°Cである。
反応時間は、 条件にもよる力 通常、 1〜3 0時間である。
反応時間の延長による著しい光学純度の低下が認められないので、 例えば、 1 0時間以上の反応時間であっても、 好適な結果を得ることができる。
反応時の pHは、 使用するチオール化合物 (I I ) の pKa、 上記アミノ酸誘 導体 ( I ) 中の保護基の安定性等を考慮して設定されるが、 通常、 チオール化合 物がチオール塩として安定に存在する範囲が好ましく、 例えば、 pH 3以上が好 ましい。 また、 高い S N 2反応選択性を得るためには、 pH l 1以下が好ましい 従って、 本発明における pHは、 全反応過程を通じて 3〜 1 1に維持することが 好ましく、 より好ましくは、 3〜 1 0の範囲に維持する。 反応の進行と共に pH は酸性に移行するので、 初発 p Hはアル力リ側に設定することが好ましい。
なお、 本発明で使用されるチオール化合物 ( I I) は、 酸化反応により、 ジス ルフィ ド体を副生し、 更に、 その副生は、 高 p H域で加速される傾向があるため、 窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。 また、 上記ジスルフィ ド体の 副生を抑制するために、 当該反応を前述の好適な p H範囲内の、 比較的低い pH 域で行ってもよいし、 場合によっては、 一般に使用される酸化防止剤を共存させ てもよい。
本発明に使用する有機反応溶媒には、
(1 ) 水と均一相を生じる有機反応溶媒を使用する場合、
(2) 水と多相系を生じる有機反応溶媒を使用する場合
がある。 以上述べた反応系は、 いずれの場合にも適用される。
(1 ) の態様においては、 水と均一相を生じる有機反応溶媒中、 塩基及び水の 存在下にて反応を行う。
水の使用量は特に限定されないが、 実用的な反応速度を保っために、 有機反応 溶媒に対して、 容量比で、 5倍以下であることが好ましい。 また、 出発物質のァ ミノ酸誘導体 ( I ) が D体又は L体を主成分とする光学活性体である場合には、 E 2脱離及びそれに引き続く上記チオール化合物 ( I I ) のマイケル付加によ る光学純度の低下を抑制するために、 水の使用量は、 有機反応溶媒に対して、 容量比で、 1 5 0倍以上であるが好ましい。 すなわち、 水の使用量は、 有機 反応溶媒に対して、 容量比で、 1 5 0〜5倍であることが好ましく、 通常、
1 /2 0〜5倍で用いられる。
有機反応溶媒としては、 水と均一相を生じる有機溶媒であれば特に限定されず、 例えば、 ァセトン等のケトン類; テトラヒ ドロフラン等のエーテル類; ァセトニ トリル、 N, N—ジメチルホルムアミ ド、 ジメチルスルホキシド等の高極性非プ 口 トン性溶媒等を挙げることができる。 これらは単独で使用してもよく、 2種以 上を併用してもよい。 特に、 出発物質のアミノ酸誘導体 (I) が D体又は L体を 主成分とする光学活性体である場合には、 光学純度の低下を抑制するために、 N, N—ジメチルホルムアミ ド及びジメチルスルホキシ ドのうち少なく とも 1種 を含有する有機反応溶媒を用いることが好ましい。
(1) の態様における好ましい反応の操作手順を、 以下に説明する。
(1) の態様においては、 まず、 上記塩基と上記アミノ酸誘導体 (I) との副 反応を抑えるために、 通常、 あらかじめ、 上記チオール化合物 (I I) と上記塩 基を反応させてチオール塩を生成させておく ことが好ましい。
引き続いて上記アミノ酸誘導体 (I) との反応を行う。 この場合、 例えば、 ① 上記アミノ酸誘導体 (I) の溶液に、 上記チオール化合物 (I I ) 塩の溶液を ゆっくり添加する方法;②上記チオール化合物 (I I) 塩の溶液に、 上記アミノ 酸誘導体 (I) 又は上記アミノ酸誘導体 (I) の溶液を速やかに添加する方法等 を用いることができる力 いずれの場合も好適な結果を与えることができる。 上記アミノ酸誘導体 (I) の溶液の溶媒としては、 有機反応溶媒又は有機反応 溶媒と水との混合溶媒を用いることができ、 上記チオール化合物 (I I) 塩の溶 液の溶媒としては、 水又は有機反応溶媒と水との混合溶媒を用いることができる。
(2) の態様である水と多相系を生じる有機反応溶媒中、 塩基及び水の存在下 にて反応を行うシスティン誘導体の製造方法について述べる。
水と有機溶媒の容量比は、 実用面から、 1 : 1 00〜1 0 : 1が好ましい。 塩 基の種類、 使用量は前述に同じである。
上記有機反応溶媒としては、 水と多相系を生じる有機溶媒であれば特に限定さ れず、 例えば、 塩化メチレン、 クロ口ベンゼン、 ジクロロベンゼン等のハロゲン 化炭化水素類;酢酸ェチル等のエステル類; メチルイソブチルケ卜ン等のケ卜ン 類等を挙げることができる。 これらは単独で使用してもよく、 2種以上を併用し てもよい。 なかでも、 塩化メチレン、 クロ口ベンゼン、 ジクロロベンゼン等のハ
ロゲン化炭化水素類は、 出発物質のァミノ酸誘導体が D体又は L体を主成分とす る光学活性体である場合には、 SN 2反応選択性を向上させるので、 好ましい。 また、 (2 ) の態様においては、 相間移動触媒を使用することが好ましい。 上記相間移動触媒としては特に限定されず、 例えば、 アンモニゥム塩、 ホスホ 二ゥム塩等種々のものを使用することができるが、 人手の容易さ、 価格等の実用 性の面、 好適な反応速度等の観点より、 ベンジルト リプチルアンモニゥムクロラ イ ド、 テ トラプチルアンモニゥムハイ ドロジユンサルフヱ一 ト、 トリオクチルメ チルアンモニゥムク口ライ ド及びテトラブチルホスホニゥムブロマイ ドからなる 群より選択された少なくとも 1種であることが好ましい。
( 2 ) の態様の操作は、 例えば、 ①上記アミノ酸誘導体 ( I ) の溶液、 又は、 上記アミノ酸誘導体 ( I ) 及び上記相間移動触媒の溶液に、 上記チオール化合物 ( I I ) 塩の溶液を添加する方法;②上記ァミノ酸誘導体 ( I ) 及び上記チォー ル化合物 ( I I ) の溶液、 又は、 上記アミノ酸誘導体 ( I ) 、 上記チオール化合 物 ( I I ) 及び上記相間移動触媒の溶液に、 上記塩基又は上記塩基の溶液を添加 する方法:③上記チオール化合物 ( I I ) 及び上記塩基の溶液、 又は、 上記チォ ール化合物 ( 1 1 ) 、 上記塩基及び上記相間移動触媒の溶液に、 上記アミ ノ酸誘 導体 ( I ) 又は上記アミノ酸誘導体 ( I ) の溶液を添加する方法等を用いること ができるが、 いずれの場合も好適な結果を与えることができる。
上記アミノ酸誘導体 ( I ) の溶液の溶媒としては、 有機反応溶媒又は有機反応 溶媒と水との混合溶媒を用いることができ、 上記チオール化合物 ( I I ) 塩の溶 液の溶媒としては、 水又は有機反応溶媒と水との混合溶媒を用いることができ、 上己アミノ酸誘導体 ( I ) 及び上記チオール化合物 ( I I ) の溶液の溶媒として は、 有機反応溶媒又は有機反応溶媒と水との混合溶媒を用いることができ、 上記 塩基の溶液の溶媒としては、 水又は有機反応溶媒と水との混合溶媒を用いること ができ、 上記チオール化合物 ( I I ) 及び上記塩基の溶液の溶媒としては、 水又 は有機反応溶媒と水との混合溶媒を用いることができる。
このようにして製造される本発明の目的化合物であるシスティン誘導体 ( I I I ) は、 引き統き、 抽出、 晶析等の一般的な分離操作により採取される。
Ύミノ酸誘導体 ( I ) は、 例えば、 一般式 (V I ) ;
(式中、 R1 は、 アミノ基保護基を表し、 R。 は、 水素原子を表すか又は R1 と 共にアミノ基保護基を表し、 R2 は、 カルボキシル基保護基を表す。 ) で表され るセリ ン誘導体 (以下 「セリン誘導体 (V I ) という) の 0H基に脱離基 Xを導 入して調製することができる。 前述の脱離基の導入には、 各々対応する酸クロラ ィ ド等を用いるのがよい。 具体例としては、 メ タンスルホニルクロライ ド等のァ ルキルスルホニルクロライ ド、 卜シルク口ライ ド、 ァリールスルホニルクロライ ド、 ァラルキルスルホニルクロライ ド、 ァセチルクロライ ド、 ト リハロアセチル クロライ ド等である。
この場合の溶媒は、 特に限定はなく、 単一あるいは混合溶媒が使用でき、 本発 明で使用する有機反応溶媒も使用することができる。 特に、 セリン誘導体 (V I ) が D—体又は L一体を主成分とする光学活性体である場合には、 光学純度の低 下や副反応を抑制するために、 塩化メチレン、 トルエン及びクロ口ベンゼンから なる群より選択された少なく とも 1種を含有するものであることが好ましい。 また、 脱離基、 チオール化合物、 溶媒の組合せが特定の場合において、 例えば、 脱離基がメシルォキシ基、 チオール化合物 (I I) がチオフヱノール、 溶媒が塩 化メチレン、 トルエン及びクロロベンゼンからなる群より選択された少なく とも 1種を含有するものである場合においては、 セリン誘導体 (V I) に脱離基を導 入し、 続いてチオール化合物 (I I) と反応させてシスティン誘導体 (I I I) を製造する操作を、 アミノ酸誘導体 (I) を単離することなく行うことができる c 本発明のシスティン誘導体の製造方法は、 安価で取り扱いやすい塩基を使用し、 また、 副反応を抑制し、 SN 2反応選択性を良好に保つことにより、 目的化合物 の収量を向上させることができ、 工業的に優れた製造方法であり、 更に、 光学括 性体であるシスティン誘導体 (I I I) の製造においては、 生成物の光学純度の
低下を抑制することができる。 発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、 本発明はこれら実施例 のみに限定されるものではない。 実施例中、 N—ベンジルォキンカルボ二ルー S—フェニル一 L—システィン メチルエステルの光学純度は、 光学異性体分離用 HP LCカラム (CH I RAL PAK AD、 ダイセル化学工業社製) にて分析を行い、 SN 2反応と E 2反応 の選択比は、 以下の式により、 計算を行った。
反応選択性 = S N 2反応: E 2反応
= (L一 D) / (L十 D + A) : (D X 2十 A) / (L十 D + A) 式中、 Lは、 N—べンジルォキシカルボ二ルー S—フエ二ルー L—システィン メチルエステルの収率を、 Dは、 N—べンジルォキシカルボ二ルー S—フエ二 ル一D—システィン メチルエステルの収率を、 Aは、 N—ベンジルォキシカル ボニルデヒ ドロアラニン メチルエステルの収率をそれぞれ表す。 実施例 1
窒素雰囲気下、 室温にて、 チオフヱノール 4 1 1 mgに、 1 N—水酸化ナトリ ゥム水 3. 6 2m lを加え、 3 0分間授拌を行った後、 N, N—ジメチルホルム アミ ド 5 m lを加え、 溶液を約 0。Cに冷却した。 その溶液に、 N—ベンジルォキ シカルボ'ニル一 0—メシル一 L—セリン メチルエステル (以下 「メシル体」 と いう) 9 7 1111 を加ぇ、 1^, N—ジメチルホルムアミ ド 1 0 m 1で洗い込み、 2 2時間反応させた。 得られた反応液を HP LCで分析した結果、 N—ベンジル ォキシカルボ二ルー S—フエニル一 L—システィン メチルエステル (以下 「S 一フエニル— L一システィン誘導体」 という) の収量は 9 3 7 m g (収率 9 3 %) 、 N—べンジルォキシカルボニル一 S—フエ二ルー D—システィン メチル エステル (以下 「S—フヱ二ルー D—システィン誘導体」 という) の収量は 5 6 mg (収率 5 %) 、 光学純度は 8 8. 8 % e eであった。 また、 N—ベンジルォ
キシカルボ二ルデヒ ドロアラニン メチルエステル (以下 「デヒ ドロアラニン誘 導体」 という) の収率は 0. 4 %であり、 SN 2 : E 2 = 8 8 : 1 2であった。 実施例 2
窒素雰囲気下、 室温にて、 チオフヱノール 1 2 7 7 mgに、 蒸留水 1 5 m 1、 重曹 8 8 5 mgを加え、 3 0分間攪拌を行った後、 N, N—ジメチルホルムアミ ド、 1 0 m 1を加え、 溶液を 2 0°Cに保持した。 このとき、 溶液の pHは 7. 9 であった。 その溶液に、 メ シル体 2 9 1 0 m gを加え、 N, N—ジメチルホルム アミ ド 5 m lで洗い込んだ。 反応の進行と共に、 白色固体が析出した。 2 0時間 反応させた後、 得られた反応液を HP L Cで分析した結果、 S—フヱニルー L— システィン誘導体の収量は 2 8 9 4 m g (収率 9 6 %) 、 S—フヱニル— D—シ スティン誘導体の収量は 1 2 8 mg (収率 4 %) 、 光学純度は 9 1. 5 % e eで あった。 また、 デヒ ドロアラニン誘導体は検出されず、 SN 2 : E 2 = 9 2 : 8 であった。 実施例 3
窒素雰囲気下、 室温にて、 チオフヱノール 4 4 9 mgに、 1 N—水酸化ナ ト リウム水 3. 8 3 m l と蒸留水 1. 5 m lを加え、 3 0分間攪拌を行った後、 N, N—ジメチルホルムアミ ド 5 m 1を加え、 溶液を 2 0°Cに保持した。 このと き、 溶液の pHは、 8. 8であった。 その溶液に、 メシル体 9 7 3 m gを加えた。 反応の進行と共に、 白色固体が析出した。 1 5時間、 反応させた後、 蒸留水 2 m 1を加えた。 この時、 溶液の pHは 8. 1であった。 ここで、 反応スラ リーの 極少量を抜き出し、 HPL Cで分析した結果、 デヒ ドロアラニン誘導体は検出さ れず、 S—フェニルー L—システィン誘導体及び S—フエ二ルー D—システィン 誘導体の合計モル数と、 メ シル体のモル数との比が 9 9 : 1であり、 光学純度は 9 2. 1 %e eであった。 その後、 溶液を約 0°Cに冷却し、 3 0分間攪拌を継続 した後、 濾過を行った。 得られた固体の S—フ 二ルー L—システィン誘導体の 純分の収量は 9 3 6 m g (収率 9 2 %) 、 光学純度は 9 1. 9 % e eであった。 得られた N—べンジルォキシカルボ二ルー S—フエ二ルー L一システィン メ
チルエステルの 4 0 0 MH z核磁気共嗚スぺク トル (CDCL3 、 TMS内部標 準) は、 (5 : 3. 3 6— 3. 4 5 ( 2 H、 m) 、 3. 5 3 ( 3 H、 s ) 、 4. 6 1 - 4. 6 5 ( l H、 m) 、 5. 0 3 - 5. 1 0 (2 H, AB q, J = 1 2. 5 H z) . 5. 6 0— 5. 6 2 (l H、 b) 、 7. 1 7 - 7. 4 5 (1 0 H、 m) であった。 実施例 4
窒素雰囲気下、 室温にて、 チオフヱノール 3 4 6 mgに、 蒸留水 1 m 1、 重炭 酸カリウム 2 8 6 mgを加え、 3 0分問攪拌を行った後、 N, N—ジメチルホル ムアミ ド 3 m lを加え、 溶液を 2 0°Cに保持した。 その溶液に、 N—ベンジルォ キシカルボ二ルー 0— トシル一 Lーセリ ン メチルエステル 9 3 1111 £をカ1]ぇ、 N, N—ジメチルホルムアミ ド 2 m lで洗い込んだ。 反応液は、 始終懸濁状態 であった。 1 7時間反応させた後、 得られた反応液を HP L Cで分析した結果、 S—フエ二ルー L—システィン誘導体の収量は 7 6 0 mg (収率 9 5 %) 、 S— フヱニルー D—システィ ン誘導体の収量は 2 1 m g (収率 3 %) 、 光学純度は 9 4. 5 %e eであった。 また、 デヒ ドロアラニン誘導体は検出されず、 SN 2 : E 2 = 9 4 : 6であった。 参考例 1
窒素雰囲気下、 室温にて、 チオフヱノール 3 9 9 mgと N, N—ジメチルホル ムアミ ド 3m lとからなる溶液に、 水素化ナトリウム (含量 6 7. 4 %) 1 2 5 mgを加え、 3 0分間攪拌を行った後、 溶液を 2 0°Cに保持した。 その溶液に、 メシル体 9 7 l mgを加え、 N, N—ジメチルホルムアミ ド 2 m lで洗い込んだ。 2時間経過した時点で、 反応溶液の極少量を抜き出し、 HPL Cで分析した結果、 出発メシル体は検出されず、 S—フエ二ルー L—システィン誘導体及び S—フヱ 二ルー D_システィン誘導体の合計モル数と、 デヒ ドロアラニン誘導体のモル数 との比が 8 9 : 1 1であり、 光学純度は 7 5. 3 %e eであった。 合計 2 0時間 反応させた後、 得られた反応液を H PLCで分折した。
その結果、 S—フヱ二ルー L一システィ ン誘導体の収量は 5 5 7 m g (収率
5 5 %) 、 S—フヱニルー D—システィン誘導体の収量は 1 3 9 mg (収率 1 4 ) 、 光学純度は 6 0. 1 % e eであった。 また、 デヒ ドロアラニン誘導体の収 率は 2 2 %であり、 SN 2 : E 2 = 4 6 : 5 4であった。 実施例 5
窒素雰囲気下、 室温にて、 チオフヱノール 3 7 4 m g (メシル体に対し 1. 1 当量) に、 1 N—水酸化ナトリウム水 3, 3 2 m l (メシル体に対し 1. 1当量) と蒸留水 2 m lを加え、 3 0分間攪拌を行った後、 ベンジルトリプチルアンモニ ゥムクロライ ド 4 7mg (メシル体に対し 0. 0 5当量) を加え、 溶液を 1 0 °C に保持した。 その溶液に、 メシル体 9 7 l mgとクロ口ベンゼン 1 0 m l とから なる溶液を一気に添加し、 クロ口ベンゼン 2 m 1で洗い込んだ。 1 0°Cで 4時間 反応させた後、 冷却バスをはずし、 徐々に反応液を室温とし、 合計 1 7. 5時間 反応を行った後、 反応液を分析した。
その結果、 S—フ ニル— L—システィン誘導体の収量は 8 8 6 mg (収率 8 8 %) 、 S—フヱニルー D—システィン誘導体の収量は 4 0 mg (収率 4 %) 、 光学純度は 9 1. 3 % e eであった。 また、 デヒ ドロアラニン誘導体の収率は 7 %であり、 S N 2 : E 2 = 8 5 : 1 5であった。 実施例 6〜 1 3
表 1の配合組成及び反応条件に変えたこと以外は実施例 5と同様にして反応を 行い、 その結果を表 2に示した。 表 1
有機溶媒 p v 11. ^ H n 相間移動鹏 ¾λノ JLI刀 Π∑
添加物 後で添加したもの
、く " ¾ε条件 a mm 量 ^4 -©2) 種類" 3M.
6 酸ェチル 12 NaOH 1. 1 0 丄 . 丄 ϋ BTBAC 0. 05 し ノノレ译十" ώコ し、 1 011
7 ジク α口ベンゼン 10 NaOH 1. 20 1. 24 BTBAC 0. 05 無し PhSH+Na0H+H20 10。C、 17h
8 塩化メチレン 10 NaOH 2. 20 2. 27 BTBAC 0. 05 無し NaOH + H2 O 0て、 12 h
9 チレン/ク叩ベンゼン 5/5 NaOH 2. 20 2. 2了 BTBAC 0. 05 無し NaOH + H2 O 0。C、 12 h. 施
10 クロ口ベンゼン 5 NaHC03 1. 1 0 1. 15 BTBAC 0. 05 無し メシル体 +有機溶媒 10て、 16 h 例
1 1 クロ口ベンゼン 5 NaOH 1. 1 0 1. 15 TOMAC 0. 05 無し メシル体 +有機溶媒 10て、 3 h
12 クロ口ベンゼン 5 NaOH 1. 10 1. 15 BTBAC 0. 05 NaCl(4.4当量) メシル体 +有機溶媒 10て、 9 h
13 ク口口ベンゼン 5 NaOH 1. 1 0 1. 15 BTBAC 0. 05 ハイ Qサルファイト メシル体 +有機溶媒 10°C、 16 h
(0.05当量)
1 ) メシル体 1 £に¾ "る溶媒量 (m 1 ) 2) メシル体 1 mo 1に対する mo 1数
3) BTBAC:ベンジルトリプチルアンモ: .ゥムクロライド TOMAC: トリオクチルメチルアンモニゥ厶クロライド
DO
収 率 (%)
S—フヱニルー S—フヱニルー デヒドロ 光学 反応選択性 特記事項
ァラニン 純度
誘導体 誘導体 誘導体 (¾ee) SN 2 : E 2
6 81 7 2 85 83 : 17
7 96 6 5 89 84 : 16
8 83 1 5 98 93 : 7
施 9 90 4 2 92 90 : 10
例 10 90 4 6 92 86 : 14
11 90 6 5 88 84 : 16
12 88 4 6 92 86 : 14
13 89 4 5 92 87 : 13 副生するジフエニルジスルフィ F量が減少
実施例 1 4
窒素雰囲気下、 室温にて、 N—ベンジルォキンカルボニル— Lーセリンメチル エステル 2. 8 2 gに トルエン 1 O m lを加え、 攪拌し溶解させた。 攪拌下、 そ の溶液に、 メタンスルホニルクロリ ド 1. 9 1 g、 ピリジン 1. 3 2 gを加え、 溶液を約 3 0°Cに保持して約 1 2時間反応させた。 その後、 室温にて、 この溶液 に酢酸ェチル 2 0 m lを加えた後、 水 1 0 m 1、 1 N塩酸 1 0 m 1、 飽和重曹水 1 0 m 1、 1 5 %食塩水 1 0m lで洗浄を行った。 その後、 有機相を減圧濃縮後、 N, N—ジメチルホルムアミ ド (以下、 DMFと略す) 1 5m lを加え、 N—ベ ンジルォキシカルボルニー o—メ シルー L—セリ ンメチルエステル (以下、 メ シ ル体と略す) の DMF溶液を調製した。 一方、 窒素雰囲気下、 室温にて、 チオフ ェノール 1. 4 1 gに、 蒸留水 1 5 m l、 重曹 1. 5 4 gを加え、 3 0分間攪拌 を行った後、 上記のメ シル体溶液を加え、 溶液を約 2 0°Cに保持した。 反応の進 行と共に、 白色固体が析出した。 約 2 0時間、 反応を行った後、 反応液を分析し た。
その結果、 S—フヱニルー L—システィ ン誘導体の収量は、 3. 5 0 g (収率 9 1 %) 、 S—フヱニル— D—システィ ン誘導体の収量は、 0. 1 8 g (収率 4. 7 %) 、 光学純度は、 9 0. 2 %e eであった。 また、 デヒ ドロアラニン誘 導体は検出されず、 S N 2 : E 2 = 9 0 : 1 0であった。 産業上の利用可能性
本発明のシスティン誘導体の製造方法は、 上述の通りであるので、 経済的に有 利であり、 工業的な規模においても生産効率が高く、 特に光学純度が高い。