明細書 蓄電池のメモリ効果低減方法及びその装置 技術分野
この発明は、 例えば電動車両に電源として搭載される蓄電池のメモリ効果低減 方法及びその装置に関するものである。 背景技術
例えば、 電動車両の電源として搭載される蓄電池として、 アルカリ二次電池等 があり、 このようなアルカリ二次電池等を使用する際、 電池容量を 1 0 0 % (公 称容量) 使用しないまま、 充放電サイクルを繰り返すと、 第 3図に示すようにそ れまで放電できていた時間よりも短い時間で放電が終わってしまい、 最悪の場合 にはほとんど、 放電していないのに、 電池電圧が放電終止電圧に達する状況に陥 ることがある。
このような電池容量を 1 0 0 %使用しないまま、 充放電サイクルを繰り返す と、 それまで放電できていた時間よりも短い時間で放電が終わってしまう現象 は、 メモリ効果として認識されており、 この状況を解消するためには使用電池の 容量をほぼ 1 0 0 %近くまで放電する必要がある。 実際には比較的小さな電流 値、 例えば 0. 1〜0. 2 C Aで長時間放電を実行することで、 メモリ効果の影 響を低減することが行なわれる。
即ち、放電時間 (電池の使用可能時間) が短くなつた時点で、 小さい電流での リフレツシュ放電を実行すればよいわけであるが、 実行の時期の判断は一般の ユーザーに任されており、 いつリフレツシュ放電を実行するのがメモリ効果の影 響を低減するのに有効かつ効率的なのか明確でないため、 リフレツシュ放電が有 効でない場合が多い。
この発明は、 かかる実情に鑑みてなされたもので、 適切な時期にリフレッシュ 放電を自動的に又は、 督告を受けて手動で実行し、 有効かつ効率的にメモリ効果 の影響を低減することが可能な蓄電池のメモリ効果低減方法及びその装置を提供
することを目的としている。 発明の開示
この発明の蓄電池のメモリ効果低減方法は、 蓄電池の放電容量の公称容量に対 する割合を表す放電深度を複数のレンジに区分し、 前記各レンジに対してリフレ ッシュ放電を実行すべき充電回数を設定しておき、 充電から次の充電までの間の 放電容量を積算して放電深度を求め、 充電時にこの放電深度の値に応じて、 該当 するレンジの充電回数のカウント数を積算することを繰り返し、 各レンジのいず れかの充電回数がリフレツシュ放電を実行すべき回数に達した時に自動的に又は 手動でリフレツシュ放電を実行する。 放電深度を複数にレンジ分けすると共に、 各レンジごとにリフレッシュ放電をすべき充電回数を設定し、 t、ずれかのレンジ の充電回数が設定値に達したらリフレツシュ放電を実行するので、 リフレッシュ 放電実行の効果を最も効率的に作用させることができる適切な時期にリフレツシ ュ放電を自動的にあるいは手動で実行でき、 有効かつ効率的にメモリ効果の影響 を低減することができる。
また、 リフレツシュ放電を実行すべき回数に達した時にリフレツシュ放電を実 行する S告を行なう。 自動的にリフレッシュ放電を実行する場合には、 リフレツ シュ放電実行の警告がユーザーの放電のさせ方は適切でないという注意の喚起と なり、 手動でリフレッシュ放電を実行する場合には、 リフレッシュ放電実行の警 告により手動操作が行われる。
この発明の蓄電池のメモリ効果低減装置は、 蓄電池の放電容量の公称容量に対 する割合を表す放電深度を複数のレンジに区分し、 前記各レンジに対してリフレ ッシュ放電を実行すべき充電回数を設定するリフレツシュ放電設定手段と、 充電 から次の充電までの間の放電容量を積算する放電容量積算手段と、 前記蓄電池の 積算放電容量と公称容量とから放電深度を算出する放電深度算出手段と、 充電時 にこの放電深度の値に応じて該当するレンジの充電回数のカウント数を積算する ことを繰り返す充電回数カウント手段と、 各レンジの t、ずれかの充電回数がリフ レッシュ放電を実行すべき回数に達した時に自動的に又は手動でリフレツシュ放 電を実行するリフレッシュ放電実行判断手段と、 を備える。 放電深度を複数にレ
ンジ分けすると共に、 各レンジごとにリフレツシュ放電をすべき充電回数を設定 し、 L、ずれかのレンジの充電回数が設定値に達したらリフレツシュ放電を実行す るので、 リフレツシュ放電実行の効果を最も効率的に作用させることができる適 切な時期にリフレツシュ放電を自動的にあるいは手動で実行でき、 有効かつ効率 的にメモリ効果の影響を低减することができる。
また、 リフレツシュ放電を実行すべき回数に達した時にリフレツシュ放電を実 行する警告を行なう警告手段を備える。 自動的にリフレツシュ放電を実行する場 合には、 リフレツシュ放電実行の警告がユーザーの放電のさせ方は適切でないと いう注意の喚起となり、 手動でリフレッシュ放電を実行する場合には、 リフレツ シュ放電実行の警告により手動操作が行われる。 図面の簡単な説明
第 1図は蓄電池のメモリ効果低減装置の概略構成を示すプロック図である。 第 2図は蓄電池のメモリ効果低減装置のフローチャートである。
第 3図は蓄電池のメモリ効果を説明する図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 この発明の蓄電池のメモリ効果低減方法及びその装置の実施例を図面に 基づいて詳細に説明する。
第 1図は蓄電池のメモリ効果低減装置の概略構成を示すプロック図、 第 2図は 蓄電池のメモリ効果低減装置のフローチヤ一ト、 第 3図は蓄電池のメモリ効果を 説明する図である。
蓄電池のメモリ効果低減装置 1は、 例えば電動補助自転車のような電動車両に 搭載された蓄電池 6のメモリ効果低減を行なう。 蓄電池 6には、 車載の負荷回路 2と充電回路 3とが接続されている。 負荷回路 2には、 手動の負荷回路スィッチ 4、 モータ類の負荷 5が備えられ、 負荷回路スィッチ 4を閉じることで蓄電池 6 から負荷 5に電力が与えられる。 この蓄電池 6としては、 例えば N i— MH、 N i 一 C d等のアル力リニ次電池が用いられる。
充電回路 3には、 充電回路スィッチ 7が備えられている。 この充電回路 3は、
電動車両を停止し、 例えば夜間の充電時にコネクタ 8を介してリフレッシュ放電 器 1 0付き充電器 9が接続されると、 車載のコントローラ 1 4が充電回路スィッ チ 7を閉じることで蓄電池 6の充電またはリフレッシュ放電が行なわれる。 また、 蓄電池のメモリ効果低減装置 1には、 蓄電池 6の電圧を検出する電池電 圧検出器 1 1が備えられると共に、 負荷回路 2に放電電流検出器 1 2が設けら れ、 この電池電圧検出器 1 1から得られる電圧情報、 放電電流検出器 1 2から得 られる電流情報は車載のコントローラ 1 4に送られる。
コントローラ 1 4には、 リフレッシュ放電設定手段 2 0と、 放電容量積算手段 2 1と、 放電深度算出手段 2 2と、 充電回数カウント手段 2 3と、 リフレッシュ 放電実行判断手段 2 4とが備えられている。
リフレツシュ放電設定手段 2 0は、 蓄電池 6の実際の放電容量の蓄電池 6の公 称容量に対する割合を表す放電深度 (D O D) を複数のレンジに区分し、 各レン ジに対してリフレツシュ放電を実行すべき充電の回数を予め設定して記憶する。 放電容量積算手段 2 1は、 放電電流検出器 1 2から得られる電流情報から、 充電 から次の充電までの間の放電容量の積算により蓄電池 6の積算放電容量を求め る。 放電深度算出手段 2 2は、 放電容量積算手段 2 1から得られる蓄電池 6の積 算放電容量を記憶し蓄電池 6の公称容量との割合すなわち放電深度を算出する。 充電回数力ゥント手段 2 3は算出した放電深度の値に応じて、 該当するレンジの 充電回数のカウント数を積算することを繰り返す。 リフレツシュ放電実行判断手 段 2 4は、 各レンジのいずれかの充電回数がリフレッシュ放電を実行すべき回数 に達した時に自動的にリフレツシュ放電を実行する。
この蓄電池のメモリ効果低減装置 1は、 充電から次の充電までの間の放電容量 の積算により蓄電池 6の積算放電容量を検出し、 この積算放電容量を記憶し公称 容量との割合を表す放電深度を算出し、 算出した放電深度の値に応じて該当する レンジの充電回数のカウント数を積算することを繰り返し、 各レンジのいずれか の充電回数がリフレツシュ放電を実行すべき回数に達した時に、 自動的にリフレ ッシュ放電器 1 0を作動させてリフレツシュ放電を実行し、 リフレッシュ放電を 適切な時期に効率的に作用させることができる。 また、 リフレッシュ放電を実行 することで、 第 3図に示すような蓄電池 6のメモリ効果による影響を最少限にす
ることが可能である。
また、 蓄電池のメモリ効果低減装置 1は、 リフレッシュ放電を実行すべき回数 に達した時にリフレツシュ放電を実行する警告を行なう警告手段 25を備えて t、 る。 この警告手段 25は、 例えば、 ランプ、 ブザー等を用いることができ、 リフ レッシュ放電実行の警告を行なうことで、 ユーザーの充放電のさせ方に問題があ ること、 すなわち浅い放電と充電を繰り返していることを注意、 指導できる。 次に、 コントローラ 14での放電容量積算による放電深度の算出の場合の制御 について説明する。
この実施例では、 放電深度を 3段階にレンジ分けしており、 具体的には、 レン ジ R 1 ; 0〜30%、 レンジ R2 ; 30〜50%、 レンジ R3 ; 50〜 90%と する。 3つのレンジに対してリフレツシュ放電を実行すべき充電回数を設定す る。 例えば、 レンジ R 1に対しては N 1 = 20回、 レンジ R 2に対しては N 2 = 50回、 レンジ R3に対しては N3 = 80回というように浅い放電を繰り返すほ どリフレッシュ放電の時期が早く来るよう設定し、 予めコントローラ 14のリフ レッシュ放電設定手段 20により記憶しておく。
ステップ aでは、 N l、 N2、 N3を 「0」 にリセットし、 電動車両の走行が 開始されると、 ステップ bで蓄電池 6の放電が開始される。 電動車両の走行を停 止して放電が終了すると (ステップ c) 、 ステップ dで放電容量積算手段 21に より放電容量の積算が行なわれ、 蓄電池 6の積算放電容量を記憶する。
続いて充電器 9を接続して充電を行うものとする (ステップ e) 。 ステップ f で、 放電深度算出手段 22により放電容量積算手段 21から得られる蓄電池 6の 積算放電容量と蓄電池 6の公称容量との割合である放電深度を算出し、 ステップ gで放電深度がレンジ R 1 ; 30%以下か否かの判断を行ない、 レンジ R 1 ; 30%以下の場合には、 ステップ hでレンジ R 1に対しては充電回数 N 1に 1回 を加算する。
この充電回数が 20回になるまで (ステップ i) ステップ kに移行して充電を 行い、 完了後充電器 9をはずして (ステップ 1) 放電する (ステップ b) という ような放充電のサイクルを繰り返し、 充電回数が 20回になると、 ステップ jで リフレツシュ放電を実行する。 リフレツシュ放電終了後ステップ pで充電し、 完
了後充電器 9をはずして (ステップ q) 、 ステップ aへ移行し、 ステップ bから 前記した作動を行なう。
ステップ gで放電深度がレンジ R 1 ; 30%以下か否かの判断を行ない、 30 %以上の場合には、 ステップ mへ移行し、 レンジ R2 ; 50%以下か否かの判断 を行なう。 レンジ R2 ; 50%以下の場合には、 ステップ nでレンジ R 2に対し ては充電回数 N 2に 1回を加算する。
ステップ oで充電回数が 50回になるまでステップ kに移行して充電を行、、 完了後充電器 9をはずして (ステップ 1) 放電する (ステップ b) という充放電 サイクルを繰り返し、 充電回数が 50回になると、 ステップ jへ移行してリフレ ッシュ放電を実行する。 リフレッシュ放電終了後、 ステップ pで充電し、 完了後 充電器 9をはずして (ステップ q) 、 ステップ aへ移行し、 ステップ bから前記 した作動を行なう。
また、 ステップ mでレンジ R 2 ; 50%以下か否かの判断を行ない、 50%以 上の場合には、 ステップ rでレンジ R 3に対しては充電回数 N 3に 1回を加算す る。
ステップ sで充電回数が 80回になるまでステップ kに移行して充電を行い、 完了後充電器 9をはずして (ステップ 1) 放電する (ステップ b) という充放電 サイクルを繰り返し、 充電回数が 80回になると、 ステップ jへ移行してリフレ ッシュ放電を実行する。 リフレッシュ放電終了後ステップ pで充電し、 完了後充 電器 9をはずして (ステップ q) 、 ステップ aへ移行し、 ステップ bから前記し た作動を行なう。
このように、 充電のたびに、 その時の放電深度の値が属するレンジの充電回数 N l、 N2、 N3のどれかとしてカウントされ、 N l, 2, N3のどれかがリ フレツシュ放電を実行すべき充電回数に達した時点でリフレツシュ放電が実行さ れる。 このリフレッシュ放電により蓄電池 6のメモリ効果の影響は低減される。 リフレッシュ放電後、 充電が行われると N 1, N2, N3のカウント数はすべて 再度 0回にリセットされ、 新たにカウントを開始し、 N 1, N2, N3のカウン ト数が、 それぞれのリフレツシュ放電を実行すべき充電回数に最初に達した時リ フレッシュ放電が実行される。
以上の実施の形態は、 自動でリフレッシュ放電を実行している力く、 警告が出た ら手動でリフレッシュ放電を選択してもよい。 また、 この実施の形態では、 電動 車両の走行を停止して放電が終了するたびに、 ステップ dで放電容量の積算が行 なわれ、 蓄電池 6の積算放電容量を記憶し、 続いて充電器 9を接続してはじめて ステップ fで蓄電池 6の積算放電容量と蓄電池 6の公称容量との割合である放電 深度を算出するようにしているが、 放電終了のたびに蓄電池 6の積算放電容量を 記憶し、 さらに蓄電池 6の積算放電容量と蓄電池 6の公称容量との割合である放 電深度までを算出して記憶しておき、 その後充電器 9が接続されたらすぐ、 ステ ップ gの放電深度がレンジ R 1 ; 3 0 %以下か否かの判断を行なうようにしても よい。 産業上の利用可能性
以上のように、 蓄電池の劣化監視方法及びその装置は、 例えば電動補助自転車 のような電動車両に搭載され、 放電深度を複数にレンジ分けすると共に、 各レン ジごとにリフレツシュ放電をすべき充電回数を設定し、 t、ずれかのレンジの充電 回数力設定値に達したらリフレツシュ放電を実行するので、 リフレツシュ放電実 行の効果を最も効率的に作用させることができる適切な時期にリフレツシュ放電 を自動的にあるいは手動で実行でき、 有効かつ効率的にメモリ効果の影響を低減 することができる。