明 細 出血傾向予防および治療薬 技術分野
本発明は出血傾向の予防および治療薬に関する。 詳し く は、 本発明はィ ンターロイキン 6 (以下、 I L— 6 と 略す) を有効成分とする出血傾向の予防および治療薬に 関する。 背景技術
出血傾向はその発現機序から大別して、 ①血小板の量 的 · 質的異常 ②血管の異常 ③血液凝固に関与する血 漿夕 ンパクの欠乏、 あるいは質的異常、 異常活性化およ びそれらの組み合わせに分類される。 また、 これらの諸 病因による出血傾向にはそれぞれ先天性のものと後天性 のものがある。 出血傾向が発症する疾患には以下に述べ るようなものが代表的である。 即ち、 ベルナール · ス リ エ症候群 (Bernard- Soul ier syndrome) 、■ ス ト レ—ジブ —ル病(Storage pool d i s e a s e)などの血小板無力症、 フ ア ンコニ症候群、 再生不良性貧血、 特発性血小板減少症、 薬剤過敏性、 特発性血小板減少性紫斑病、 播種性血管内 凝固 (D I C) などの血小板減少症、 壊血病、 アレルギ 一性紫斑病などの血管性疾患、 フ ォ ンビルブラ ン ド病、 ビ夕 ミ ン K欠乏症、 ネフ口—ゼ症候群など、 非常に多く
の疾患に認められるものである (医科学大辞典 No.21 、 講談社、 1982^ ; Hematology, 4 tb edition, Wi l l iams J. W. , Beutier E. , e t a 1, 1990)。
癌化学療法後と癌放射線療法後の骨髄抑制に伴う出血 傾向、 骨髄移植後の出血傾向については、 表面的には血 小板数の減少が見られ、 血小板弒少症と称されるが、 臨 床的危険症状としての出血傾向はより総合的な素因の複 合した症状である。 すなわち骨髄抑制を誘発する化学療 法剤や放射線は同時に肝臓をはじめ種々の臓器に障害を 与え、 生体の恒常性を著しく乱すことによって、 その総 合的結果として出血傾向を誘発する。
出血傾向の治療は、 直接的には止血系の正常化を図る ことによって達成される。 例えば凝固因子の異常による 出血性素因の改善と しては血友病の例が代表的である。 この疾患は出血時間は正常であるが、 凝固時間や部分ト ロ ンボプラスチン時間が延長し、 筋肉内や関節内に出血 を起こす。 この場合には欠乏している血液第珊因子や第 X I因子製剤の投与が行われ、 止血機能の正常化が図ら れる。 また、 ビタ ミ ン K欠乏性患者に対しては、 ビタ ミ ン K製剤の投与が行われている。 一方血管壁の障害によ る出血に対しては、 フラボノイ ドやエタンシレー ト等の 血管強化剤が使用されている。 ところが血小板の量的 · 質的異常による出血傾向の発症に対しては、 低下した機 能の正常化が可能な優れた治療薬が無く、 唯一血小板輸 血が行われている。 しかしこの血小板輸血には拒絶反応
や自己抗体の出現、 輸血血小板の早期減少化、 ウィルス 感染の危険性など幾つかの副作用と問題点が存在してお り、 完全な治療法にはなり得ていないのが実状である。 この点においては、 本来生体内に存在し目的の機能を有 している物質を医薬品と して応用することは生体のリズ ムを乱さない点においてより望ま しいと言えるが、 生体 由来の生理活性物質出の中にも、 未だ出血傾向を有効に 予防 · 治療する物質は見出だされてはいない。
—方、 イ ンターロイキン 6 (以下、 I L— 6 と略す) は、
イ ンターフェ ロ ン 2 (Z i I be r s t e i n, A. e t. a t. , E BO J . 5^.2529 - 2537, 1986 ) 、 B細胞分化因子 (B S F - 2 ) : (Hi rano, T e t. a 1, , ature, 324, 73 - 76, 1986) 、 2 6 - k D a プロティ ン (Hageman, G. e t. a i . , Eur. J. B i o c h em. , 159, 625 - 632, 1986 ) 、
ハイプリ ドーマ プラズマサイ トーマ增殖因子 (VanDam me, J. et. a 1. , J. Exp. Med. , 165, 914 - 919, 1987 ) 、 肝細胞刺激因子 (H S F) : (Andus, T. e t. a I. , FEBS Le ti., 221, 18 - 22, 1987 ;
Gaul die, J. e t. a 1. , Proc. Nat I. Acad. Sc i. USA, , 7251 -72 55, Ι9Π ) 、
など、 別々に研究されてきた生理活性物質が同一分子で あることが分かり、 その生理活性の多様性から I L— 6 と呼ぶこ とが提唱され、 その名称が定着している。 I L — 6は上記したように、 その発見に伴う生理作用の他に
最近、 in vitroにおいて巨核球の成熟を促進し (isiiitia sii, T. , Proc. Na 11. Acad. Sc i. , 86, 5953 -5957, 1989) 、 in 7Ϊ 70 に投与すると血小板が增加することが報告されて いる (Assno, S. , Blood, 75, 1602- 1605, 1990) 。
このように I L一 6については多くの生理活性が報告 されているが、 止血機構と血液凝固線溶系に対する効果 は明確に示されていない。 すなわち、 前述したように血 小板増加作用は認められるものの実際に生体の止血機構 におよぼす影響については知られていない。 哺乳動物の 止血機構が必ずしも血小板の数のみに制御されるわけで はない以上、 止血能と血小板数の変動とは機能上区別し て検討することが望まれている。 すなわち、 単に血小板 を増加させるだけでは、 出血傾向の症状の改善には必ず しもつながらず、 また逆に、 血小板数の増加のみを指標 に血小板増加薬剤を投与すれば、 不必要な副作用の発現 を伴う。
これまでに I L一 6投与でラ ッ ト末梢血中に增加した 血小板が正常細胞と同等の凝集能を備えていることや、 血小板の形質膜上には I L一 6の受容体が存在しないた めに直接の作用を受けることはないとの報告がなされて いる。
さ らに I L一 6は、 血中フイ ブリ ノ —ゲン量の増加な ど止血と凝固促進に作用する因子を増加させること、 ァ ンチ トロンビン IE (A T IE) のような血液凝固の制御因 子を増加させることの他、 プラスミ ノ ーゲンァクティべ
—タイ ンヒ ビタ— ( P A I ) など線溶系の制御因子を増 加させることに関しても報告がされている。 しかしそれ らの総合的な作用が実際に生体内(i n v i v o) の止血機構 と凝固線溶機構にどの様な反応を引き起こすのかについ ては不明なままであり、 ま して I L— 6の生体内への投 与が生体の止血能力に対してどのような作用をおよぼす かについては知られていない。
本発明で解決しょう とするのは、 本来生体内で作用を 有する微量な生理活性物質を純化して、 これを医薬品と して提供することにある。 詳細に述べると、 出血傾向は 血小板の質的 ·量的異常、 血管の異常、 凝固因子の欠乏 , 障害に起因して発症する疾病である。 なかでも血小板 機能障害と血管障害に起因する出血傾向に対しては優れ た治療薬が存在せず、 医療の現塲において切望されてい る ものである。 特に癌化学療法後と癌放射線療法後の骨 髄抑制に伴う出血傾向、 骨髄移植後の出血傾向、 再生不 良性貧血、 あるいは特発性血小板減少性紫斑病などにお ける出血傾向は生命を直接危機にさ らすものであり、 こ れをいかに制御するかが重要な治療技術となつている。 本発明の目的は、 止血を妨げる出血素因を改善治療する 生理活性物質を提供するこ とにある。 発明の開示
本発明者らは新たに、 I L 一 6が血小板増加という単 純な指標でなく、 より総合的に、 また、 より直接的効果
D
と して出血傾向を改善することを発見し、 本発明を完成 するに至った。 すなわち本発明は、 I L— 6を有効成分 とする出血傾向予防および治療薬に関する。
本発明は、 I L 一 6を生体に投与することで ( 1 ) 血 小板の機能亢進、 (2 ) 血管内皮細胞の保護活性化、 お よび (3 ) 血小板凝集、 血液凝固線溶系に関する因子の バラ ンスのとれた増加、 (4 ) 血小板の増加を起こさせ 総合的に止血能力を増強させて出血傾向を治療し得るこ とを見出し、 I L一 6が従来得られなかった出血傾向予 防および治療薬として直接的に有用であることを示すも のである。 発明を実施するための最良の形態
本発明を更に詳しく述べれば、 I L— 6の生体への投 与が血小板数の增加を第一の目的とするのでなく、 また 必ずしも I L一 6の投与により血小板の増加を伴わない 力、、 あるいは血小板增加が軽微であっても、 効率良く 出 血時間を短縮させることを新規に見出したことにより達 成されたものである。 すなわち本発明による出血傾向の 予防と治療は、 I L一 6による血小板の質的 , 量的な機 能改善と血管内皮細胞活性化および血小板の凝集や凝固 •線溶系に関する因子のパラ ンスの取れた増加、 また血 小板の増加を同時に総合的に達成させるのが特徵である。 本発明の治療および/もしく は予防効果の一部は、 I L一 6を哺乳動物 (特にヒ ト) の生体内に投与すること
で、 血小板粘着 ' 凝集および放出能の亢進を伴い止血を 増強させることから得られる。 血小板内の顆粒に含まれ ており、 活性化に伴い放出され得る物質は例えば A T P、 A D P、 セロ トニン、 血小板活性化因子 ( P A F ) 、 血 小板由来増殖因子 (P D G F) 、 ^— トロ ンボグロプリ ン、 血小板第 4因子 ( P F— 4 ) 、 フ ォ ンビルブラ ン ド 因子 (vWF) 、 トロ ンボスボンジン等である。 これら のうちのすく なく とも一部の含有量または放出量の増大 が本発明の効果の重要な要因となつている。 また本発明 の効果の一部は、 I L一 6の生体内への投与により血小 板のリ ン脂質代謝、 カルシウムイオン代謝、 タ ンパク質 リ ン酸化酵素の代謝を増強させるこ とによると推測され る。 すなわちァラキ ドン酸ゃィノ シ ト一ル 3 - リ ン酸 ( I P 3 ) 、 ジァシルグリ セロール ( D G ) 、 サイ ク リ ッ ク AM P ( c AMP) などの細胞内情報伝達機能の亢 進がおこる結果、 血小板血栓の形成が増強されるこ とに よると考えられる。 さ らに本発明の効果の一部は、 I L 一 6の生体内への投与により血小板の形質膜上に存在す る表面抗原の増加や親和性の増強が起こ り、 同様に細胞 内情報伝達機能が亢進して血小板血栓の形成が増強され てもたらされると考えられる。 その様な表面抗原と して G P n b / ma や G P I b / IX夕 ンパク質に代表される 細胞接着因子 (も しく は受容体) が挙げられる。 また本 発明の効果の一部は、 I L一 6の生体内への投与によつ て血管内皮細胞が活性化して本細胞が産生し得るフ ォ ン
ビルブラ ン ド因子 (v W F ) の血漿中 (血流中) 濃度を 高め、 1次止血を強化させるこ とによる と考えられる。 さらに本発明の効果の一部は、 I L— 6の生体内への投 与によって肝臓が産生する、 血小板凝集や凝固線溶系に 関与する因子の量を增加させることによると考えられる。 血小板凝集や凝固線溶系に関与する因子と してはフィ ブ リ ノ 一ゲン、 セル口プラス ミ ン、 アンチ ト ロ ンビン m、 各種プロテアーゼ阻害剤が挙げられる。 また本発明の効 果の一部は、 I L一 6の血小板数の増加作用によると考 えられ、 これらが総合的に作用し止血能力を増強させて いるのが特徴である。
本発明の実施例に示したように I L一 6による血小板 凝集や出血時間の改善は明らかな血小板増加を伴ってい なく ても達成されている。 この点において、 出血傾向治 療および予防薬と しての I L— 6 ©有用性は、 従来の医 薬品では達成できなかった血小板機能の正常化も しく は 機能亢進、 さらに血管内皮細胞の修復と活性化の全てを 同時に改善治療することにあり、 本発明はこの事実を最 初に明確に示したのである。
本発明で使用する I L— 6にはとく に制限はなく、 既 知の方法で得られる哺乳動物 I L一 6が好適に使用され る。 例えば I L一 6産生細胞を培養して得られたもの、 あるいは遺伝子組換え法により得られた組換え型 I L 一 6でも良い。 ヒ 卜の臨床目的には、 好ま しく は I L— 6 産生ヒ ト細胞を培養して得られるものが使用される。
g 培養ヒ ト細胞から取得した I L— 6は、 ヒ ト以外の種 由来の不純物の混入を避けることができ、 得られる I L 一 6は本来生体内で働く I L— 6に近いものとなるため 好ま しい。 すなわち糖鎖および微細修飾を含んだ構造が ヒ ト生体内 I L— 6に近いものとなるために、 ヒ トに医 薬と して投与したときに抗体産生を相対的に排除するこ とができるため好ま しい。 したがって、 ヒ ト培養細胞が 産生する I L— 6は生体内でのより効率的な有効性を期 待するこ とができる。
本発明の培養ヒ ト細胞が産生する I L 一 6 とは、 ヒ ト 由来の細胞を培養するこ とによって得られる I L 一 6を 意味し、 さ らに特定すれば、 正常細胞すなわち、 癌化 (極端な形質転換) していない、 あるいは癌細胞由来で ない付着性ヒ ト細胞を培養するこ とによつて得られる I L 一 6が好ま しい。 これらの条件によって得られる I し
- 6 は通常糖鎖の付加した構造を有する。 癌細胞由来で ない正常ヒ ト細胞と して 、 特に線維芽細胞、 内皮細胞、 ス ト ローマ細胞などが生体内での I L 一 6の源の一つと 考えられており、 その一部は正常細胞に近い形で培養で きるので特に好適に用いられるが、 特にこれらに限定さ れるものではない。
上記の正常ヒ ト細胞のうち、 特に好適な細胞は付着性 であるので、 一般的な細胞培養条件にて培養できる。 一 般的な培養フラスコ、 ローラ一ボトル、 マイ ク ロキヤ リ 了 (微粒子) を用いる培養法などが好適に甩いられるが
これに限定されるものではない。 こう してヒ ト細胞の培 養によって得られた培養液から通常の精製法により、 ほ ぼ純粋な I L— 6を得ることができる。 これら培養およ び精製法については実施例でその一例を示すが勿論これ に限定されるものではない。
一方、 組換え型 I L一 6は、 既知の方法により製造す ることができる。 一例として、 大腸菌を宿主と した例を 実施例として示したが、 これ以外でも広く知られた遺伝 子操作法を用いることによって製造することができる。 たとえば、 枯草菌などの原核細胞、 酵母、 ハムスター細 胞 · マウス細胞 · サル細胞 · ヒ ト細胞などの動物細胞、 昆虫細胞、 昆虫体に、 I L一 6遺伝子をその宿主で機能 するプロモーターなどの下流に連結して D N Aも しく は ウィルスなどの形態で導入することによつても調製する ことができる。
本発明の組成物は前述した方法で製造される I L 一 6 を主成分として含有する。 他の成分としては、 一般的な 医薬添加物が選ばれる。 もちろん添加物が無く とも本発 明の目的は達成される。 一般的には主として安定化のた めに添加物が加えられる。 そのような医薬添加物と して は、 日本薬局方に記載された、 医薬品添加物と して使え る夕 ンパク質および Zまたは糖類等の中から選ばれる。 特に好適にはヒ ト血清アルブミ ン (H S A ) 、 ゼラチン、 マンニ トール、 ソルビ トール、 ラク トース、 ト レノヽ口一 ス、 界面活性剤などの中から適宜あるいは組み合わせて
^ ^ 選ばれるが、 もちろんこれらに限定するものではない。
本発明はまた、 I L一 6 と他の薬剤、 生物学的医薬品、 合成医薬品などとの、 同時も しく は逐次的な併用投与を も包含する。 他の薬剤と しては、 I L— 1、 I L— 2、 I L— 3、 】 L一 7、 I L— 1 1などのイ ンターロイキ ン類ゃ C S F (コロニー刺激因子) や E P O (エリ ス口 ポイエチン) 、 イ ンターフェ ロ ン、 ト ロ ンボポイエチン、 M S F (巨核球刺激因子) 、 M e g— C S F (巨核球コ ロニー刺激因子) などのサイ トカイ ン類、 あるいは I L 一 6の本発明の目的を補完、 補助する既知の医薬品など のなかから選ばれる。
本発明の目的である出血傾向予防および洽療を具体的 に達成するためには、 こ う して得られた I L一 6を主成 分とする組成物を生体に投与する。 投与方法と しては、 特に限定する ものではないが癌化学療法後の血小板減少、 癌放射線療法後の骨髄抑制、 骨髄移植後の骨髄抑制、 あ るいは外傷 · 手術などに伴う出血傾向、 一般的な注射、 すなわち静脈注射、 皮下注射、 筋肉注射、 点滴静脈内注 入などの内適当な一つが選ばれる。 経口、 経鼻、 経肺、 経腸のような経粘膜投与法も場合により、 好適に実施さ レ る o
有効投与量と しては、 1 日につぎ体重 1 k g当たり 0. 0 0 0 1から 3 0 0 // gの範囲で選ばれる。 好適には体 重 l k g当たり 0. 0 0 1 — 5 0 // gの範囲で選ばれる。 前述の投与量は症状によっても異なり、 これらの値に限
定されるものでは勿論ない。 本発明の特徴として、 投与 量は生体内で血小板増加を示す用量より も通常低い用量 が好適に選ばれるが勿論これに限定されるものではない。 投与回数と しては通常 1 日 1ないし 2回、 も しく は 2 ないし数日に 1回の範囲で選ばれるがこれに限定される ものではない。
投与対象と しては、 生体が出血傾向を示す時、 例えば 血小板数が低下したときに投与されるが特に限定される ものではない。 実施例 4に示すように、 血小板減少は軽 微であっても、 出血傾向は顕著である場合があり、 この ような場合においても本発明の薬剤は出血傾向の改善に 有効性を示した。
ヒ トの臨床上において重度な血小板減少は血小板数が 2 1ΐ / μ 以下と定義されることが多く、 血小板輸血は 通常、 このような重度血小板減少に対して実施されるが、 化学療法剤の投与や他の病的素因による出血傾向は必ず しも血小板数が 2万 以下に関わらない場合がある。 その様な例の多く においても本発明の I L 一 6を含む組 成物は有効に使用され得る。 中程度の血小板減少は血小 板数が 4万ないし 5万 Z 以下と定義され、 通常血小 板輸血は行われないが、 出血傾向があり、 患者に内出血 が懸念される場合には本発明の組成物の治療対象になる。 また血小板数が 4万ないし 5 7ΐ / β & 以上であつても、 化学療法剤投与やその他の誘因で出血傾向がある場合、 もしく は出血傾向の出現があらかじめ予想される場合に
も本発明の組成物の治療も しく は予防的治療の対象とな 本発明の特徴と して、 投与量は生体内で血小板増加を示 す用量より も低い用量が選ばれてもよく、 投与回数も必 ずしも、 血小板増加を示さない程度のものが出血傾向治 療および予防薬と して有用であることが主張される。 勿 論投与量および投与回数はこれらに限定されるものでは ない。 実施例
以下に本発明を実施例によって、 より詳細に、 より具 体的に説明するが、 もちろんこれによつて本発明が制限 されるものではない。
なお、 I L一 6の活性評価法は以下の方法により行な つた。
生物活性の評価法 :
株細胞 7 T D 1 ( I L— 6依存ハイプリ ドーマ細胞 ( J. van Snick e t a I . , European J. Immunol. , 18, 1 93 - 197 (1988 )) を用いて、 それに適当量の I L一 6を添 加することにより、 7 T D 1の細胞増殖を MT T法によ り測定し、 別途標準 I L一 6の段階希釈サンプルについ ての増殖活性との比較により、 I L'— 6の生物活性評価 を行った。 標準 I L— 6と しては、 下記に示す東レ株式 会社ヒ ト I L— 6 E L I S Aキッ トに添付されているの と同じものを使用した。
E L I S A (酵素免疫評価法) 法 :
抗 I L— 6抗体 I" e t al. , Biociem. Biophys. Res. CommuD. , 165, 728 - 734, (1989 )) を用いた E L I S A法で 測定した。 東レ株式会社製造、 トーレ · フ ジバイオニク ス販売、 ヒ ト I L一 6 E L I S Aキッ トを用いて I L一
6の評価を行つた。
実施例 1
大腸菌由来 I L一 6の調製 :
既知文献 (T. Hirano ら、 N a t u r e , v o l . 3 2 4, 7 3 ( 1 9 8 6 ) ) と同じ遺伝子配列を持つ I L
— 6 c D N Aを骨格とする I L— 6発現べク夕一を下記 の方法で作成した。
甲状腺癌由来細胞株 N I M— 1細胞 (通山薰ら、 日本 血液学会雑誌、 5 3巻、 8 0 5 ( 1 9 9 0 ) を培養して 通常の方法で調製した mR N Aから、 逆転写酵素で合成 した c D N A混合物から下記 2本の化学合成 D N Aオリ ゴマー
C C G A T C G A T G C C A G T A C C C C C A G G
A (配列リス トの配列番号 1 ) 、 および
G C C A C G G A T C C T A C A T T T G C C G A A
G (配列リス 卜の配列番号 2 )
をプライマーと して P C R反応を行った。 得られた增幅 D NAを制限酵素 C 1 a I と B a mH I で消化した後、 得られた D N A断片を大腸菌発現べクター p K M 6 (Tan aka et a 1. , J. Interferon Res. , 6, 429 - 35 (1986) ) の
C 1 a I部位と B g 1 I I部位の間に掙入して、 発現 I L— 6ベク ター p K M I L — 6 を得た。 この p KM I L - 6を大腸菌 H B 1 0 1 に導入し、 組換え体を得た。 こ の組換え体を下記のように培養して大腸菌組換え型 I L — 6を調製した。
ヒ 卜イ ンターロイキン一 6発現プラス ミ ドを保持する 大腸菌 H B 1 0 1 Z p KM I L — 6を、 3 0 L容ジャー を用いて培養した。 3 0 Lの増殖用培地 (リ ン酸 1 カ リ ゥム 0. 3 %、 リ ン酸 2ナ ト リ ウム 0. 6 %、 塩化ナ ト リ ウム 0. 5 %、 塩化アンモニゥム 0. 1 %、 ダルコ一 ス 0. 5 %、 カザミ ノ酸 0. 5 %、 硫酸マグネシウム 1 mM、 硫酸第 1鉄 3 ίί Μ、 ビタ ミ ン B 1 6 g I、 アン ピシ リ ン 5 0 ^ g /m l ) を 3 0 L容ジャーに仕込 み、 上記組換え体を植菌した。 ジャーは、 攪拌数 3 0 0 r p m、 通気量 1 V VM、 2 5 °Cの条件で運転した。 ト リ ブ ト フ ア ンオペ口 ンの誘導物質であるイ ン ド一ルァク リル酸を加え、 グルコースとカザミ ノ酸を添加しながら 6 0時間培養した。 培養菌体を 1 0, 0 0 0 x g 2 0分 間の遠心分離操作により集めた。 菌体は、 約 8 9 5 g得 られた。 集めた菌体を 1 mM E D T A、 l O O mMN a
C 1 を含む 5 0 mM ト リ ス塩酸バッ フ ァ ー p H 8. 0 に 0 D 550 nm が 2 0 となるように懸濁した。 菌体をマン ト ンゴー リ ンにより破砕し、 遠心分離を行い、 破砕抽出物 を回収した。 抽出液中の蛋白量は 2 3 5 g、 イ ンター口 ィキン一 6 は 4 9 5 m gであった。 こ こで I L — 6の量
ば、 前記の E L I S A法で測定した (以下同じ) 。
抽出液をシリ カカラム 5. 5 Lに吸着させ、 酸性溶液 で溶出した。 I L— 6は 46 2 m g回収した。 溶出液に 硫酸アンモニゥムを終濃度 1. 3 3 M添加して、 遠心に より、 不溶性不純物を除去した。 次にプチルカラム (ブ チルトヨパール 東ソ一社製) 2 0 0 m lに吸着させ、 低塩中性溶液で溶出した。 S D S— P A G E純度検定法 により純度 8 4%の I L一 6を 23 7 m g得た。 溶出し た I L— 6をそのままへパリ ンカラム ( A Fへパリ ン ト ョパール 東ソ一社製) 8 0 m 1 に吸着させた。 中性塩 ノ ッ ファ一で溶出した。 純度 9 1 %の I L一 6を 1 1 4 m g得た。 溶出液をさらにプチルカラム (プチルトヨパ ール 東ソ一社製) 2 0 0 m 1で再度精製して、 I L— 6を 6 6 m g得た。 上記で調製した I L— 6の純度は逆 相 H P L C法で 9 5 %以上であつた。 上記 I L— 6は実 施例 1に記載した評価法で活性を持った I L— 6である ことを確認した。 '
実施例 2 - ヒ ト細胞由来 I L一 6の調製 :
本発明の I L一 6は一例と して次の方法で調整された。
2 Lのガラス製培養槽に 1 Lの 5%の N C Sを含むィ 一ダル M E M培地中で、 細胞数が 1 06 /mUこなるよう にヒ ト線維芽細胞をビーズ培養した (ビーズ : "サイ ト デッ クス 1 " 、 (フ アルマシア社) 、 3 7 °C) o その後、 培地を少量のカルボキシメチルセル口一スを含む無血清
^ ^ イーグル M E M培地 1 Lに交換し、 プライ ミ ングと して 1 0万単位 Z Lのヒ ト天然型ィ ンタ一フ ロ ン 3を添加 した。 翌日さ らにポリ I : ポリ C 5 0 mgZ L、 シク ロへ キシミ ド 1 0 mgZL添加した。 その 4時間後、 ァクチノ . マイ シン Dを 4mgZL投入し、 そして、 さ らに 1時間後、 産生培地と して少量のメチルセルロースを含むイーグル MEM培地に置換し、 スーパーイ ンダク ショ ン処理を行 なった。 その後 2 日間そのまま培養を続けた (3 7°C) 。 撹拌を停止し、 マイク ロキャ リ アを沈降させた後、 上 清および産生培地での洗液をろ過し、 1 Lを別の撹拌装 置付き容器に移した。 この産生液に滅菌した "ブルーセ フ ァ ロ一ス C L— 6 B F F" (フ アルマシア社) を投入 し、 1 5°C, 4日間撹拌しながらバッチ吸着させた。 撹 拌停止後、 ブルー担体を沈降させ上清を別の容器に移し た。 シリ カ担体は、 リ ン酸ナ ト リ ウム緩衝液中で高圧蒸 気滅菌 ( 1 2 1 °C、 3 0分) したのち、 4 m lずつ 2本 のカラムに充填して直列に接続させた。 これに、 ブル— 担体の素通り上清を流速 2 0 m l Zh rで流した。 全量 流した後、 2本のカラムを別々に精製した。 それぞれリ ン酸ナ ト リ ウム緩衝液 2 5 m 1 を流した後、 2 0 mM塩 酸を流してイ ンターロイキン— 6含有画分 1 O m 1 を回 収した。 この塩酸回収液にさ らに硫酸アンモニゥムを 1. 3 3 Mになるように添加し、 4 °C、 1晚ゆるやかに撹拌 した。 沈殿物を 3 0 0 0 r p in, 3 0分遠心分離 (4°C) 、 除去した。
分離した上清を疎水性ク口マ トグラフィ 一用担体であ るブチルトヨパール 6 5 0 M" 1 m l (東ソ一社) を充 填したカラムに流し、 吸着させた。 このカラムを 1. 3 3 Mの硫酸アンモニゥムを含む 2 0 mM塩酸、 1. 3 3 Mの硫酸アンモニゥムを含む 5 O mMリ ン酸ナ ト リ ウム 緩衝液で洗浄した後、 5 0 mMリ ン酸ナ ト リ ウム緩衝液 で回収した。 その後、 逆相系のクロマ トグラフィ ーであ る O D Sカラム (C18) (YMC— P a c k O D S A— 3 1 2 S - 5 1 2 0 A, YMC社) を装着した 高速液体ク口マ トグラフィ ー (島津 L C— 4 A) を用い て、 0. 1 % ト リ フロロ酢酸を含有する水と 0. 1 %ト リ フロロ酢酸を含有するァセ トニ ト リルでグラジェン ト 溶出させヒ ト天然型ィ ンターロイキン一 6 ピークを分取 した。 こう して得られたヒ ト天然型イ ンターロイキン一 6を "セフ アデッ クス G— 2 5" (フ アルマシア社) で
5 mMギ酸を溶媒と してゲルろ過しァセ トニ ト リルを含 まないィ ンターロイキン一 6溶液を得た。
上記で調製した I L— 6の純度は逆相 H P L C法で 9 5 %以上であつた。 上記 I L一 6は前記に示す評価法で - 活性を持つた I L一 6であることを確認した。
実施例 3
I L - 6による血液止血能の亢進':
C 5 7 B LZ6マウスに実施例 2で得た I L一 6の溶 液を 1日 1回の割合で毎日皮下投与して、 1 1 日巨に出 血時間を測定した。 対照投与液としては、 生理食塩水を
同様に投与して出血時間を測定した。 出血時間の測定方 法と しては、 マウスの尻尾の先端を 1 c m切断して、 出 てく る血液を 5秒ごとに濾紙に染み込ませて出血の認め られなく なつた時間を測定する方法で求めた。 投与した I L— 6用量は体重 l K g当たり 1 日 2 8 0 gと した。 その結果、 生理食塩水投与の対照コン トロール群 (n = 8 ) の平均出血時間が 1 0 0. 9 ± 6. 7秒 (平均出 血時間土 S E) であったのに対し、 I L— 6投与群 (n = 8) では平均 5 4. 7 ± 5. 4秒となり、 統計学的に 有意 ( pく 0. 0 0 5 ) な短縮が認められた。 そのとき 生理食塩水投与群に比べ、 I L - 6投与群の血小板数は 1 3 5 %であり約 3 5 %の増加を認めたにすぎなかった。 このように、 I L— 6の生体内への投与により見られる 出血時間 (止血までの時間) の短縮の反応は、 血小板增 加の反応より も鋭いと言える。
同様に、 I L一 6を 1 日 1回の割合で皮下連続投与し て、 2日 目に出血時間を測定した。 その結果、 生理食塩 水投与の対照コン トロール群の平均出血時間が 1 1 0.
5 ± 5. 4秒であったのに対して、 I L— 6の 2回投与 群では平均 8 0. 5 ± 7. 7秒となり、 統計学的に有意 ( p < 0. 0 1 ) な短縮が認められた。 またこの時 I L ― 6投与群の血小板数は、 対照群に比べて有意な変動は 認められなかった。 以上の結果より、 必ずしも血小板数 増加と相関しない状況での、 I L— 6による止血能の亢 進が明らかとなった。
実施例 4
CI ) マウス化学療法剤投与モデルでの出血時間の回復 (皮下投与) :
C 5 7 B L/6マウスに、 癌化学療法剤であるマイ ト マイシン C (以下、 MM Cと略す) を (S m g/k g) 単回腹腔内投与して血小板減少症を誘発した。 このマウ ス群に血小板が減少し始める MM C投与後 7 曰目から、 実施例 2で調製した I L— 6を 1 日 1回の割合で 1 1 日 間皮下投与して最終投与日の翌日実施例 3 と同様の方法 で出血時間を測定した。 投与した I L— 6用量は体重 1 K g当たり 1 曰 2 8 0 gと した。
その結果、 MM C投与後生理食塩水のみ連続投与した 対照群 (血小板减少群) の出血時間が平均 1 3 1. 4土 1 5. 1秒となり、 正常マウス群の平均 1 0 0. 9 ± 6. 7秒に比べ、 統計学的に有意 (P < 0. 0 1 ) に遅延し た。 一方、 MM C投与後 I L一 6を連続投与した群 (血 小板回復群) では平均 8 2. 7 ± 6. 6秒となり、 MM C単独投与群に比べ統計学的に有意 (P < 0. 0 1 ) に 短縮する効果を認めた。 この時 MM Cを投与したマウス では、 血小板数は正常値の約 Ί 0 %に減少しているにす ぎなかったが出血傾向は顕著であり、 全身状態は悪化し ていた。 この例では、 投与された化学療法剤は肝臓や他 の臓器に対する障害を起こ し、 より総合的に出血傾向を 誘発しており、 血小板減少は軽微であっても、 出血傾向 は顕著であった。 このような場合においても I L— 6は
2 \ 出血傾向の改善に有効性を示し、 血小板の増加が主たる 作用でないことを示している。 すなわち、 止血までの時 間は MM Cを投与して I L— 6を投与していない対照群 では 1 3 1. 4秒に延長していたのに対して、 MMCを 投与して更に I L一 6を投与した群では平均 8 2. 7秒 にまで短縮していた。 MM Cを投与せずに生理食塩水を 投与した対照群は平均 1 0 0. 9秒であった (正常値を 示す対照群) 。 この例では I L— 6投与によつて出血時 間は正常値を越えてまで短縮したことになる。 一方、 こ のとき血小板数は正常値の 9 7 %まで回復しているのみ であった。 このこ とは、 I L一 6が血小板増加のためで なく、 出血素因の改善 (治療および Zも し く は予防) に 対して、 より有効に作用していることを明らかに示すも のである。
(2) マウス化学療法剤投与モデルでの出血時間の回復
(静脈内投与) :
C 5 7 B L Z 6マウスに、 癌化学療法剤である MM C を 2 m gZk g単回腹腔内投与して血小板減少症を誘発 した。 このマウス群に血小板が減少し始める MM C投与 後 7日目から、 I L— 6を 1 日 1回の割合で 6 日間尾静 脈内投与して最終投与日の翌日実施例 3と同様の方法で 出血時間を測定した。 投与した I L一 6用量は体重 1 K g当たり 1 日 1 7 7 gと した。 その結果、 MMC投与 後生理食塩水のみ連続投与した対照群の出血時間が平均 1 5 1. 4 ± 1 5. 1秒となり、 正常マウス群の平均 1
3 0. 9 ± 6. 7秒に比べ、 統計学的に有意 (P < 0. 0 1) に遅延した。 一方、 MM C投与後 I L— 6を連続 投与した群では平均 1 3 4. 7 ± 6. 6秒となり、 MM C単独投与群に比べ統計学的に有意 (p < 0, 01) に 短縮して正常値に回復させる効果を認めた。
以上の結果より、 化学療法剤投与により出血時間が遅 延したマウスに I L一 6を投与することで、 遅延した出 血時間を改善し正常化させることを見出だした。
実施例 5
I L一 6によるコラ—ゲン刺激血小板の粘着 · 凝集能の 亢進 :
C 5 7 B LZ6マウス (n = 8) に、 癌化学療法剤で ある MMC (2 m gXk g) を単回腹腔内投与した。 こ のマウス群に血小板が減少し始める MM C投与後 7日目 から、 実施例 2で調製した 1 乙ー 6を 1 日 1回の割合で 6日間尾静脈内連続投与して最終投与日の翌日に血小板 の粘着 · 凝集能を測定した。 投与した I L一 6用量は体 重 l K g当たり 1日 1 7 と した。 詳細に述べると、
I L - 6の連日投与が終了後の翌日多血小板血漿 (P R P) を採取した。 コラーゲン 2 g/m を惹起剤とし て使い、 全血凝集計 (CH L O NO L O G ; ク ロノ ログ 社製全血凝集能測定装置モデル 560) でのイ ン ピーダ ンス法により粘着,凝集能を測定した。 P R Pは血小板 数を 8 0 X 1 04 個 Z/z に定めた。 その結果、 I L一 6投与マウスから採取した血小板の最大凝集値 (1 0分
値) は 7. 5 Ωとなり、 生理食塩水を同様に投与した対 照マウスの血小板の 4. 8 Ωを上回った。 以上の結果と 次の実施例 6の結果より、 T RM— 6 0 0を投与した動 物では、 その血小板のリ ン脂質 · ァラキ ドン酸代謝が高 まることで ト ロ ンボキサン A 2産生量及び遊離 C a 2 +量 が増大することが示唆され、 最終的にその血小板の粘着 • 凝集能が増強することが分かった。
実施例 6
I L一 6によるコラ—ゲン刺激血小板の A T P放出能の 亢進 :
C 5 7 B LZ6マウス (n = 8) に、 癌化学療法剤で ある MM C (2 m g/k g) を単回腹腔内投与した。 こ のマウス群に血小板が減少し始める MM C投与後 7曰目 から、 実施例 2で調製した I L— 6を 1 日 1回の割合で 6日間尾静脈内連続投与して血小板の放出能を測定した。 投与した I L— 6用量は体重 I K g当たり 1 日 1 7 7 gと した。 詳細に述べると、 I L一 6投与した後に多血 小板血漿(PRP) を採取してコラーゲン 2 g Zm で粘 着 · 凝集を惹起させ、 その時の放出 A T P量をルシフエ リ ン · ルシフヱラーゼ試薬を用いた発光法 (C H L 0 N
O L O G ; クロノ 口グ社製全血凝集能測定装置モデル 5 6 0) で定量した。 その結果、 I L— 6投与マウスから 採取した血小板の最大 A T P放出量は 1. 6 ± 0. 2 Μとなり、 生理食塩水を同様に投与した対照マウスの血 小板の 1. 2 ± 0. 1 Μを上回った。 以上の結果より
I L - 6を投与した動物では、 その血小板のリ ン脂質 · ァラキ ドン酸代謝が高まるこ とで ト ロ ンボキサン A 2産 生量及び遊離 C a 2+量が増大し、 さらにひき続き起こる AT Pの放出反応が増大することが示唆され、 最終的に その血小板の粘着 ·凝集能が増強することが分かった。 血小板の放出物質と しては、 AT Pの他に代表的な物と して AD P、 セロ トニン, 血小板活性化因子 (P A F) 、 血小板第 4因子 (P F 4) 、 フォンビルプラ ン ド因子
( V W F ) 、 ト ロ ンボスボンディ ン等が知られているが、 ここでは AT Pのみを指標として計測している。
実施例 7
I L一 6によるァラキ ドン酸刺激血小板の粘着 ·凝集能 の亢進 :
C 5 7 B LZ6マウス (n = 8) に、 癌化学療法剤で ある MMC (2 m gZk g) を単回腹腔内投与した。 こ のマウス群に血小板が減少し始める MM C投与後 7日目 力、ら、 実施例 2で調製した I L— 6を 1 日 1回の割合で 6曰間尾静脈内連続投与して最終投与日の翌日に血小板 の粘着 ·凝集能を測定した。 投与した I L一 6用量は体 重 l K g当たり 1日 1 77 gと した。 詳細に述べると、
I L一 6投与した後に多血小板血漿 (P R P) を採取し、 ァラキ ドン酸 4 0 0 Mを惹起剤'と して全血凝集計 (C HL O NO L O G ; ク ロノ 口グ社製全血凝集能測定装置 モデル 5 6 0 ) でのイ ンピーダンス法により粘着 ·凝集 能を測定した。 P R Pは血小板数を 8 0 X 1 04 個 〃
^ 5
^ に定めた。 その結果、 I L 一 6投与マウスから採取し た血小板は、 誘導期 7. 7分の後最大凝集値 1 8. 7 Ω となり、 生理食塩水を同様に投与した対照マゥスの血小 板の誘導期 9. 9分、 最大凝集値 1 5. 0 Ωを上回った。 以上の結果より T R M— 6 0 0を投与した動物では、 血 小板のァラキ ドン酸代謝が高ま り トロンボキサン A 2産 生量及び遊離 C a 2 +量が増大することが示唆され、 最終 的にその血小板の粘着 ·凝集能が増強することが分かつ た。
実施例 8
I L 一 6による血小板凝集能の亢進 (ラ ッ ト) :
実施例 3 と同様の検討を動物種を変えてラ ッ トで行つ た。 即ち、 S p r a g u e - D a w l e y ( S D) ラ ッ ト雄 8週令 (約 2 5 0 g ) に I L 一 6溶液 ( l O O ju g /m 1 ) 0. 5 m 1 を 1 日 1回の割合で毎日皮下投与し、
6 曰目に血小板凝集能を測定した。 対照投与液と しては 生理食塩水を用いた。 血小板凝集能は以下の様にして測 定した。
クェン酸血 5 m l を 1 , 0 0 0回転 1 0分間、 室温で 遠心し、 上層 ( P R P : p l a t e l e t r i c h p 1 a s m a ) を取り、 さ らに下層を 3, 0 0 0回転 2 0分間、 室温で遠心し、 上層 ( P P P : p 1 a t e 1 e t p o r p l a s m a ) を分離した。 P R Pを P P Pで希釈し、 血小板濃度が 5 0万個 Z 1 となるよう に調整した。 この血小板浮遊液 2 0 0 1 に A D P (終
濃度 3 i M) あるいはコラーゲン (終濃度 1 0 g / 1 ) のどちらか添加し、 最大凝集率を測定した。 凝集計 として二光バイオサイェンス社へマ ト レーサー 8 0 1型 を用いた。
その結果、 生理食塩水投与群 (n = 4) の血小板凝集 率が A D Pでは 3 2. 8 ± 2. 7 % (平均値土 S E) 、 コラーゲンでは 1 2. 8 ± 4. 9 %であったのに対し、 I L一 6投与群 (n = 3 ) では 4 8. 5 ± 0. 5 % (A D P) 、 4 7. 0 ± 3. 0 % (コラーゲン) となり、 統 計学的に有意 (Pく 0. 0 5 ) な増加が認められた。 ま た、 この時 I L— 6投与群の血小板数は、 1 4 8. 8土 4. 3 X 1 04 個 Z I であり、 生理食塩水投与群の血 小扳数 ( 9 4. 4 ± 1. 6 X 1 04 個/^ 1 ) より、 有 意 (Pく 0 0 0 1 ) に高かった。
以上の結果より I L一 6投与で血小板数が増加した時 期においては、 実施例 3 と同様に単位血小板数当たりの 凝集能が亢進していることが明らかとなつた。
実施例 9
化学療法剤投与モデルでの血小板凝集能の亢進 (ラ ッ ト) : 実施例 4 と同様の検討を動物種を変えてラ ッ 卜で行つ た。 即ち、 S p r a g u e— D a w l e y ( S D) ラッ ト雄 8週合 (約 2 5 0 g) に癌化学療法剤である塩酸二 ムスチン (以下 A C N Uと記述する) を 2 2. 5 m g / k g静脈内単回投与した。 このラッ 卜に A C N U投与の
翌日から I L— 6溶液 ( 1 0 0 g Zm 1 ) 0. 5 m l を 1 日 1回の割合で 5日間毎日皮下投与し、 5日目に透 過度法による血小板凝集能を前項実施例と同様に測定し た。 対照投与液と しては生理食塩水を用いた。 血小板凝 集能はコラーゲン終濃度 2 0 gZm 1で測定した。
その結果、 生理食塩水投与群 (n = 4) の血小板凝集 率が 44. 3 ± 6. 8 % (平均値土 S E ) であったのに 対し、 I L— 6投与群 (n = 4) では 5 2. 3 ± 4. 9 %となり、 統計学的に有意 (P < 0. 0 1) な増加が認 められた。 また、 この時血小板数は、 A C N U投与によ り正常値 (1 1 4. 4 ± 7. 3 X 1 04 個/ 1 ) の 7 8 % (8 9. 7 ± 4. 5 X 1 04 個/ 1 ) まで減少し たのに対し、 A C N U投与後 I L一 6を投与した群の血 小板数は 1 1 4. 0 ± 1 1. 1 1 04 個 〃 1 と正常 値とほぼ同じであった。
以上の結果より化療剤投与ラ ッ 卜の血小板減少モデル において、 I L— 6投与による血小板数低下の抑制が認 められる時期では、 実施例 4と同様に単位血小板数当た りの凝集能が亢進していることが明らかとなつた。
実施例 1 0
I L— 6による vWF (フ ォ ンビルブラ ン ド因子) の増 加作用 :
C 5 7 B LZ6マウス (n = 8) に、 瘙化学療法剤で ある MM C (2 m g/k g) を単回腹腔内投与した。 こ のマウス群に血小板が減少し始める MM C投与後 7日目
から、 実施例 2で調製した I L一 6を 1日 1回の割合で 6日間尾静脈内連続投与して、 最終投与の翌日に血漿中 の遊離フオンビルブラ ン ド因子 (vWF) 濃度をサン ド イ ッチ E I A法で測定した。 I L一 6の投与量は、 体重 1 k g当たり 1日 1 7 7〃 gとした。 その結果、 MMC のみ投与したマウスの血漿中 vWF濃度は 3. 8 ± 0. 3 g m lであり、 生理食塩水を投与した対照マウス の 4. 7 ± 0. 6 μ gZm 1に比べ有意 (pく 0. 0 1) に減少した。 それに対して MMC投与後 I L一 6を連続 投与したマウスでは 4. 4 ± 0. 4 g/m l となり、
MMC単独投与群より有意 (p < 0. 0 1) に増加させ て正常値に回復した。 以上の結果より、 I L一 6を投与 した動物では血管内皮細胞が活性化してタンパク質の産 生放出能が増大していることが推定され、 少なく とも事 実として血液中の遊離 vWF濃度が増加することが示さ れた。
実施例 1 1
I L一 6による培養ヒ ト血管内皮細胞の V WF産生増強 作用 :
健常人の臍帯静脈から常法に従って血管内皮細胞を分 離して、 in vitroにおける培養を行つた。 培養は 1 0 % ゥシ胎仔血清を含む R P M I - 1 6 4 0培地で行つた。 24穴プレー トを使用して 5 X 1 05 個 Z穴で内皮細胞 を添加し、 3 7°C、 5 % C 02 の条件で培養した。 一方 の群 (n = 3) の内皮細胞には、 実施例 2で調製した I
L— 6を 1 O n g /m 1で添加し、 対照群 ( n = 3 ) に は生食を同量添加して、 4 8時間培養した。 培養終了後、 培養上澄を回収してそこに含まれる vWF量を実施例 1 0と同様のサン ドイ ッチ E I Aで定量した。 その結果、 I L一 6添加した内皮細胞の V W F量は 4 0 0 ± 4 5 n gZm 1 となり、 対照群の S S O i S S n gZm l に比 ベ有意 (Pく 0. 0 1 ) に増加した。 以上の結果より、 I L一 6はヒ ト血管内皮細胞に作用して、 これを活性化 して vWFの産生量を増大させる作用を持つことが分か つた。
実施例 1 2
I L一 6によるフイ ブリ ノ —ゲン産生量の増加作用 :
C 5 7 B LZ6マウス (n = 8) に、 癌化学療法剤で ある MMC (2 m g/k g) を単回腹腔内投与した。 こ のマウス群に血小板が減少し始める MMC投与後 7日目 から、 実施例 2で調製した I L— 6を 1 日 1回の割合で 6日間尾静脈内連続投与して、 血漿中の遊離フィ プリ ノ —ゲン (以下 F b gと略) 濃度を測定した。 I L— 6の 投与量は、 体重 1 k g当たり 1 日 1 7 7 ^ gと した。 そ の結果、 MMCのみ投与したマウスの血漿中 F b g濃度 は 1 4 0. 4 ± 8. 0 m g d 1 であり、 生理食塩水を 投与した対照マウスの 2 1 1. 9 + 2 2. 6 m g / d 1 に比べ有意に ( Pく 0. 0 1 ) 減少した。 それに対して MM C投与後 I L一 6を連続投与したマウスでは 2 3 9. 3 ± 7. 3 m g Z d 1 となり、 MM C単独投与群より有
意 (p < 0. 0 1) に増加して正常値に回復した。 また、 I L一 6の 1日投与量を 1. 7 7 gの低用量とした場 合にも 191. 8±5. 6mgZd lとなり、 MMC単 独投与群より も有意 (p < 0. 0 1) に増加して正常値 に回復した。 以上の結果より、 I L一 6を投与した動物 の血液中には、 肝臓で産生され得る遊離 F b g濃度が増 加することが分かつた。
実施例 1 3
I L一 6による出血時間の正常化 :
実施例 5と同一の実験系を用い、 実施例 3と同様の方 法で出血時間を測定した。 その結果、 MMC単独投与群 Cn = 8 ) の平均出血時間が 1 5 5 ± 9秒となり、 生理 食塩水投与群 (n = 8 ) の平均出血時間 1 3 0 ± 1 0秒 に比べ、 統計学的に有意 (P < 0. 0 0 1) に遅延した。 MM C投与マゥスには出血傾向が発症したと言える。
これに対して、 MMC投与後にマウスの体重 1 k g当 たりに I L— 6を 1. 7 7 gで 6回連続投与した群 (n = 8 ) の平均出血時間は 1 45 ± 1 4秒 (p < 0. 2 1) 、 1 7, 7 β g投与の群 (n = 8) では 1 3 5土 3秒 (Pく 0. 0 0 1) になり、 さらに 1 7 7 g投与 の群 (n = 8) では 1 3 3 ± 5秒 (Pく 0. 0 0 1) と なり、 統計学的に有意に短縮して正常な出血時間に回復 した。 この結果より、 I L一 6が出血傾向を改善して正 常な出血時間に治療し得ることが明らかとなつた。
産業上の利用可能性
以上のように本発明により、 生体内での出血素因を改 善して出血傾向を予防も しく は治療できる医薬を得るこ とができる。 すなわち I L— 6 は、 これまでに優れた治 療薬のなかった血小板の質的 · 量的な異常と血管の異常 などに起因する出血傾向に対して、 これらを総合的に改 善して止血機構を正常にもどす新規な治療薬である。 特 に癌化学療法後と癌放射線療法後の骨髄抑制から来る出 血傾向、 骨髄移植後の出血傾向、 再生不良性貧血の出血 傾向、 あるいは特発性血小板減少性紫斑病などにおける 出血傾向の治療に有効である。 また、 I L— 6 は生体内 に存在するものであるため、 合成医薬に比べより生体と 調和するという優れた出血傾向治療および予防薬が期待 できる。
配列リス卜 配列番号: 1
配列の長さ : 2 5
S2列の型:核酸
鎖の数:一本鎖
トポロジー:直鑌状
配列の種類:他の核酸 合成 D N A
CCCATCGATG CCACTACCCC CAGGA 25 配列番号: 2
配列の長さ : 2 5
配列の型:核酸
鏆の数 -'—本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸 合成 D N A
配列
GCCACGGATC CTACATTTGC CGAAG 25