JP7237085B2 - 凝固異常を伴う敗血症の治療及び/又は改善のための医薬 - Google Patents

凝固異常を伴う敗血症の治療及び/又は改善のための医薬 Download PDF

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Description

特許法第30条第2項適用 2018年(平成30年)8月2日 https://www.asahi-kasei.com/jp/news/2018/me180802.html にて発表
特許法第30条第2項適用 2018年(平成30年)8月2日 https://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/en/news/2018/e180802.html にて発表
特許法第30条第2項適用 2018年(平成30年)8月9日 https://www.yakuji.co.jp/entry66605.html にて発表
特許法第30条第2項適用 2018年(平成30年)8月2日 https://nk.jiho.jp/article/135046 にて発表
本発明は、凝固異常を伴う敗血症を治療及び/又は改善するための医薬に関する。
敗血症は、感染によって惹起された全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)である。すなわち感染の存在に加え,SIRS項目((1)体温>38℃または<36℃、(2)心拍数>90/分、(3)呼吸数>20/分またはPaCO<32 torr、(4)白血球数>12,000/μL又は<4000/μLまたは未熟型白血球>10%)の2項目以上をみたす病態と定義される。従来は、血液中の菌体の存在(bacteremia)が強調されてきたが、この定義では必ずしも血液培養陽性を必要としない。敗血症の中で、臓器障害,臓器灌流低下または低血圧を呈する状態は重症敗血症(severe sepsis)と呼ばれる。臓器灌流低下または灌流異常には、乳酸アシドーシス、乏尿、意識混濁などが含まれる。重症敗血症の中で、十分な輸液負荷をおこなっても低血圧が持続するものは敗血症性ショック(septic shock)と呼ばれる(非特許文献1)。これらの病態にみられる循環不全は、交感神経系の機能失調あるいは好中球などから放出されるメディエータによっておこり、また臓器障害は組織酸素代謝失調(dysoxia)によっておこると考えられている。
一方、トロンボモジュリンは、トロンビンと特異的に結合しトロンビンの血液凝固活性を阻害すると同時にトロンビンのプロテインC活性化能を著しく促進する作用を有する物質として知られ、強力な血液凝固阻害作用を有することが知られている。トロンビンによる凝固時間を延長することや、トロンビンによる血小板凝集を抑制することが知られている。プロテインCは、血液凝固線溶系において重要な役割を演じているビタミンK依存性の蛋白質であり、トロンビンの作用により活性化され、活性化プロテインCとなる。この活性化プロテインCは、生体内で血液凝固系因子の活性型第V因子、および活性型第VIII因子を失活させ、また血栓溶解作用を有するプラスミノゲンアクチベータの産生に関与していることが知られている(非特許文献2)。したがって、トロンボモジュリンは、このトロンビンによるプロテインCの活性化を促進して抗血液凝固剤または血栓溶解剤として有用であるとされており、凝固亢進を伴う疾患の治療、予防に有効であるという動物実験についての報告もある(非特許文献3)。
従来、トロンボモジュリンは、ヒトをはじめとする種々の動物種の血管内皮細胞上に発現している糖蛋白質として発見取得され、その後、クローニングが達成されている。即ち、遺伝子工学的手法を用いてヒト肺cDNAライブラリーからシグナルペプチドを含むヒトトロンボモジュリン前駆体の遺伝子をクローニングし、そしてトロンボモジュリンの全遺伝子配列を解析し、シグナルペプチド(通常は、18アミノ酸残基が例示される)を含む575残基のアミノ酸配列が明らかにされている(特許文献1)。シグナルペプチドが切断されたマチュアなトロンボモジュリンは、そのマチュアなペプチドのN末端側よりN末端領域(1-226番目:シグナルペプチドが18アミノ酸残基であると考えた場合の位置表示、以下同じ)、6つのEGF様構造をもつ領域(227-462番目)、O型糖鎖付加領域(463-498番目)、膜貫通領域(499-521番目)、そして細胞質内領域(522-557番目)の5つの領域から構成されている。全長のトロンボモジュリンと同じ活性を有する部分(すなわち、最小活性単位)は、6つのEGF様構造を持つ領域のうち、主としてN末端側から4,5,及び6番目のEGF様構造からなる部分であることが知られている(非特許文献4)。
全長のトロンボモジュリンは界面活性剤の存在下でないと溶解し難く、製剤としては界面活性剤の添加が必須であるのに対して、界面活性剤の非存在下でもきれいに溶解することができる可溶性トロンボモジュリンの存在が知られている。可溶性トロンボモジュリンは、少なくとも、膜貫通領域の一部または全部を含有せしめないように調製すればよく、例えば、N末端領域と6つのEGF様構造をもつ領域とO型糖鎖付加領域の3つの領域のみからなる(即ち、配列番号9の第19~516位のアミノ酸配列からなる)可溶性トロンボモジュリンは、組換え技術の応用により取得できること、そしてその組換え体可溶性トロンボモジュリンは、天然のトロンボモジュリンの活性を有していることが確認されている(特許文献1)。他に可溶性トロンボモジュリンの例としていくつかの報告がある(特許文献2~9)。あるいは天然型としてヒト尿由来の可溶性トロンボモジュリン等も例示される(特許文献10、11)。
因みに、遺伝子においては、自然の変異または取得時の変異により、多くのケースで認められる通り、ヒトにおいても多形性の変異が見つけられており、上述の575残基のアミノ酸配列からなるヒトトロンボモジュリン前駆体の第473位のアミノ酸においてValであるものと、Alaであるものが現在確認されている。このアミノ酸をコードする塩基配列においては、第1418位において、それぞれTとCとの変異に相当する(非特許文献5)。しかし、活性および物性においては、全く相違なく、両者は実質的に同一と考えることができる。
トロンボモジュリンは播種性(汎発性)血管内血液凝固症候群(以下、DICと呼ぶことがある)の治療において効果があることが報告されている(非特許文献6)。トロンボモジュリンの用途としては上述の他に、例えば、急性冠動脈症候群(ACS)、血栓症、末梢血管閉塞症、閉塞性動脈硬化症、血管炎、心臓手術に続発する機能性障害、臓器移植の合併症、狭心症、一過性脳虚血発作、妊娠中毒症、糖尿病、肝VOD(Liver veno-occlusive disease;劇症肝炎や骨髄移植後の肝静脈閉塞症)、深部静脈血栓症(DVT;Deep venous thrombosis)等や、さらには敗血症や成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の疾患の治療および予防に用いられることが期待されている(特許文献12~14)。
敗血症患者における血漿検体の国際標準比(International Normalized Ratio、以下、「INR」と略すことがある)は、凝固異常(Coagulopathy)を意味するものとして公知である。例えば、2003年の国際救急治療医学会(CCM)で報告されているCoagulopathyの指標としては、aPPT>60秒と共に、INR>1.5が提示されている(Crit. Care Med., 2003;31:1250-1256)。しかしながら、このINR値は臨床試験などによって検証されたものではなく、いまだ明確な結果として確定しているわけではない。実際に、抗凝固剤であるTissue Factor Pathway Inhibitorのティファコジン(Tifacogin)の重症敗血症患者を対象とした第3相臨床試験において、INR>1.2の患者を主要な対象として実施した結果として、INR≦1.2の患者群の方がINR>1.2の患者群よりも効果が良好であった旨報告している(JAMA, July 9, 2003, Vol.290. No.2, P238-247)。一方、トロンボモジュリンを用いた敗血症治療に関する臨床試験の結果の中で、INR>1.2の患者集団の中では、INR>1.5の患者の方がINR>1.2の患者よりも効果が高い傾向にあったことが報告されている(特許文献13)。
このように、敗血症に対する抗凝固剤の治療の際には、Coagulopathyを伴う患者を対象とすることにより、高い効果が一部の試験結果から期待されるものの、その反対の結果も得られているなど、Coagulopathyの定義はいまだ確定しているとは言い難い。即ち、INR値を用いて対象患者をどのように規定すれば良好な結果が得られるのかという命題についてはいまだ明確になっておらず、どのようなINR値を有する敗血症患者に薬剤が特に有効であるかについての技術常識も存在しない。INR値と治療効果との関係については、その一部がせいぜい各薬剤毎の個別のケースとして知られているに過ぎないと考えられる。
こうした中、本発明者らは抗凝固薬の中でもトロンボモジュリンに着目し、敗血症に対する治療及び/又は改善効果について鋭意検討を行った。その結果、敗血症患者の中でも1つ以上の臓器障害を有する重症敗血症患者(但し、肝臓又は腎臓のみの臓器障害を有する敗血症患者を除く)を対象とした場合には、臓器障害が無い患者に比して、意外にも患者におけるINRが1.4より大きい場合に、より効果的に敗血症を治療及び/又は改善できること、すなわちトロンボモジュリンの敗血症治療及び/又は改善に関し、敗血症患者の中でも1つ以上の臓器障害を有する重症敗血症患者とINR>1.4との間に当業者には予想し得ない特別な関係があることを見出した。さらに、驚くべきことにINRが1.4より大きく1.6以下の値である重症敗血症患者においては、トロンボモジュリン-プラセボ間の死亡率差が15%を超えるという特に顕著な効果があることを見出した(特許文献13)。しかしながら、望ましい臨床効果を達成するための投与方法については未だ十分に解明されていない。
特開昭64-6219号公報 特開平5-213998号公報 特開平2-255699号公報 特開平3-133380号公報 特開平3-259084号公報 特開平4-210700号公報 国際公開WO92/00325号 国際公開WO92/03149号 国際公開WO93/15755号 特開平3-86900号公報 特開平3-218399号公報 国際公開WO2003/061687号 国際公開WO2013/073545号
American Colledge of Chest Physicians,CHEST/101/6/JUNE, 1992:1481-1483 鈴木宏治、医学のあゆみ 1983;125:901 Gomi K et al.、 Blood 1990;75:1396-1399 Zushi M et al.、J Biol Chem 1989;246:10351-10353 Wen DZ et al、Biochemistry 1987;26:4350-4357 S.M.Bates et al.、Br. J. of Pharmacol.,2005;144:1017-1028 Crit. Care Med. 2003;31:1250-1256 JAMA 2003;290:238-247 「ART-123の海外における第3相臨床試験結果(速報)について」https://www.asahi-kasei.co.jp/asahi/jp/news/2018/me180802.html(2018年8月2日、旭化成ファーマ株式会社)
本発明の課題は、凝固異常を伴う敗血症等を効果的に治療及び/又は改善するための医薬、並びに凝固異常を伴う敗血症等を効果的に治療及び/又は改善するための方法を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、抗凝固薬の中でもトロンボモジュリンに着目し、敗血症に対する治療及び/又は改善効果について鋭意検討を行った。その結果、トロンボモジュリンの投与の直前に凝固異常を伴うことが確認された患者に対しては、トロンボモジュリンが極めて効果的に敗血症を治療及び/又は改善できることを見出した。さらに、本発明者らは、0.005~1mg/kgのトロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与すると極めて効果的に敗血症を治療及び/又は改善できることを見出した。
また本発明者らは、トロンボモジュリンの投与の直前において、ある特定の数の臓器障害を有することが確認された患者に対しては、トロンボモジュリンが極めて効果的に敗血症を治療及び/又は改善できることを見出した。
すなわち、本発明として具体的には以下のものが挙げられる。
〔1〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における国際標準比(INR)の値が1.4より大きい該患者に投与されるための医薬。
〔2〕投与直前における血小板数が30,000/mmを超過する該患者に投与されるための、前記[1]に記載の医薬。
〔3〕投与直前におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL又はそれ以上である該患者に投与されるための、前記[1]または[2]に記載の医薬。
〔4〕投与直前における血小板数が30,000/mmを超過し、かつ、Sofaスコアが11以下である患者に投与されるための、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の医薬
〔5〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL以上である該患者に投与されるための医薬。
〔6〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が229pmol/Lより大きい該患者に投与されるための医薬。
〔7〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が250pmol/L以上である該患者に投与されるための医薬。
〔8〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるプロテインC活性値が40%以下である該患者に投与されるための医薬。
〔9〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるアンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)活性値が70%より小さい該患者に投与されるための医薬。
〔10〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるマイクロパーティクル(microparticle:MP)の値が10nmより大きい該患者に投与されるための医薬。
〔11〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるAPACHE IIスコアが35より小さい該患者に投与されるための医薬。
〔12〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する該患者に投与されるための医薬。
〔13〕肝臓又は腎臓のいずれかのみに臓器障害を有する敗血症患者を除く該患者に投与される、〔12〕に記載の医薬。
〔14〕投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する該患者に投与されるための、〔1〕または〔2〕に記載の医薬。
〔15〕肝臓又は腎臓のいずれかのみに臓器障害を有する敗血症患者を除く該患者に投与される、〔14〕に記載の医薬。
〔16〕トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるD-ダイマーの値が3,500ng/mL以上である該患者に投与されるための医薬。
〔17〕投与直前におけるD-ダイマーの値が3,500ng/mL以上である該患者に投与されるための、〔1〕または〔2〕に記載の医薬。
〔18〕投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が229pmol/Lより大きい該患者に投与されるための、〔1〕または〔2〕に記載の医薬。
〔19〕投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が250pmol/L以上である該患者に投与されるための、〔1〕または〔2〕に記載の医薬。
〔20〕投与直前におけるプロテインC活性値が40%以下である該患者に投与されるための、〔1〕または〔2〕に記載の医薬。
〔21〕投与直前におけるアンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)活性値が70%より小さい該患者に投与されるための、〔1〕または〔2〕に記載の医薬。
〔22〕投与直前におけるマイクロパーティクル(microparticle:MP)の値が10nmより大きい該患者に投与されるための、〔1〕または〔2〕に記載の医薬。
〔23〕投与直前におけるAPACHE IIスコアが35より小さい該患者に投与されるための、〔1〕または〔2〕に記載の医薬。
〔24〕心血管系機能障害及び/又は呼吸機能障害を有する重症敗血症患者に投与されるための、前記〔1〕~〔23〕のいずれかに記載の医薬。
〔25〕該トロンボモジュリンが可溶性トロンボモジュリンである,前記〔1〕~〔24〕のいずれかに記載の医薬。
〔26〕該トロンボモジュリンが、下記の(1)~(4)の性質を有するトロンボモジュリンである、前記〔1〕~〔25〕のいずれかに記載の医薬;
(1)トロンビンと選択的に結合する作用、
(2)トロンビンによるプロテインCの活性化を促進する作用、
(3)トロンビンによる凝固時間を延長する作用、及び
(4)トロンビンによる血小板凝集を抑制する作用。
〔27〕該トロンボモジュリンが、下記の(1)~(5)の性質を有する可溶性トロンボモジュリンである、前記〔1〕~〔26〕のいずれかに記載の医薬;
(1)トロンビンと選択的に結合する作用、
(2)トロンビンによるプロテインCの活性化を促進する作用、
(3)トロンビンによる凝固時間を延長する作用、
(4)トロンビンによる血小板凝集を抑制する作用、及び
(5)抗炎症作用。
〔28〕該トロンボモジュリンが、配列番号9または配列番号11に記載のアミノ酸配列をコードするDNAを宿主細胞にトランスフェクトして調製された形質転換細胞より取得されるペプチドである、前記〔1〕~〔27〕のいずれかに記載の医薬。
〔29〕該トロンボモジュリンが、下記(i-1)又は(i-2)のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドがトロンボモジュリン活性を有するペプチドである、前記〔1〕~〔28〕のいずれかに記載の医薬;
(i-1)配列番号9又は配列番号11のいずれかに記載のアミノ酸配列における第19~516位のアミノ酸配列、又は
(i-2)上記(i-1)のアミノ酸配列の1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列。
〔30〕該可溶性トロンボモジュリンが、
(i)配列番号9又は配列番号11のいずれかに記載のアミノ酸配列における第367~480位のアミノ酸配列を含み、かつ下記(ii-1)又は(ii-2)のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドがトロンボモジュリン活性を有するペプチドである、前記〔1〕~〔29〕のいずれかに記載の医薬;
(ii-1)配列番号9又は配列番号11のいずれかに記載のアミノ酸配列における第19~244位のアミノ酸配列、又は
(ii-2)上記(ii-1)のアミノ酸配列の1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失、又は付加されたアミノ酸配列。
[31]0.005~1mg/kgの該トロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与するための、前記[1]または[2]に記載の医薬。
〔32〕投与直前がトロンボモジュリンの投与開始時から遡って24時間以内である、前記[1]~〔31〕のいずれかに記載の医薬。
[33]トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症の治療及び/又は改善のための医薬であって、0.005~1mg/kgのトロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与するための医薬。
〔34〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前における国際標準比(INR)の値が1.4より大きい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔35〕投与直前における血小板数が30,000/mmを超過する該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕投与直前におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL又はそれ以上である該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、前記〔34〕又は〔35〕に記載の方法。
〔37〕投与直前における血小板数が30,000/mmを超過し、かつ、Sofaスコアが11以下である該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、前記〔34〕~〔36〕のいずれかに記載の方法。
〔38〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL以上である該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔39〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が229pmol/Lより大きい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔40〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が250pmol/L以上である該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔41〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前におけるプロテインC活性値が40%以下である該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔42〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前におけるアンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)活性値が70%より小さい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔43〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前におけるマイクロパーティクル(microparticle:MP)の値が10nmより大きい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔44〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前におけるAPACHE IIスコアが35より小さい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔45〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔46〕肝臓又は腎臓のいずれかのみに臓器障害を有する敗血症患者を除く該患者に投与する工程を含む、〔45〕に記載の方法。
〔47〕投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
〔48〕肝臓又は腎臓のいずれかのみに臓器障害を有する敗血症患者を除く該患者に投与する工程を含む、〔47〕に記載の方法。
〔49〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、投与直前におけるD-ダイマーの値が3,500ng/mL以上であるである該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む方法。
〔50〕投与直前におけるD-ダイマーの値が3,500ng/mL以上である該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
〔51〕投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が229pmol/Lより大きい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
〔52〕投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が250pmol/L以上である該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
〔53〕投与直前におけるプロテインC活性値が40%以下である該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
〔54〕投与直前におけるアンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)活性値が70%より小さい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
〔55〕投与直前におけるマイクロパーティクル(microparticle:MP)の値が10nmより大きい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
〔56〕投与直前におけるAPACHE IIスコアが35より小さい該患者にトロンボモジュリンを投与する工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
〔57〕0.005~1mg/kgの該トロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与するため工程を含む、〔34〕または〔35〕に記載の方法。
[58]投与直前がトロンボモジュリンの投与開始時から遡って24時間以内である、前記[34]~〔57〕のいずれかに記載の方法。
〔59〕敗血症を治療及び/又は改善する方法であって、0.005~1mg/kgのトロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与するため工程を含む該方法。
〔60〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、該医薬が投与直前における患者の血漿検体の国際標準比(INR)の値が1.4より大きい該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔61〕該医薬が、投与直前における血小板数が30,000/mmを超過する該患者に投与される医薬である、前記〔60〕に記載の使用。
〔62〕該医薬が、投与直前におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL又はそれ以上である該患者に投与される医薬である、前記〔60〕又は〔61〕に記載の使用。
〔63〕該医薬が、投与直前における血小板数が30,000/mmを超過し、かつ、Sofaスコアが11以下である患者に投与されるための医薬である、前記〔60〕~〔62〕のいずれかに記載の使用。
〔64〕該医薬が、0.005~1mg/kgのトロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与するための医薬である、前記〔60〕又は〔61〕に記載の使用。
[65]投与直前がトロンボモジュリンの投与開始時から遡って24時間以内である、前記[60]~〔64〕のいずれかに記載の方法。
〔66〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、該医薬が、0.005~1mg/kgのトロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与するための医薬である、上記の使用。
〔67〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬の製造のためのトロンボモジュリンの使用であって、該医薬が投与直前における患者の血漿検体の国際標準比(INR)の値が1.4より大きい該患者に投与されるための医薬である、上記の使用。
〔68〕該医薬が、投与直前における血小板数が30,000/mmを超過する該患者に投与される医薬である、前記〔67〕に記載の使用。
〔69〕該医薬が、投与直前におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL又はそれ以上である該患者に投与される医薬である、前記〔67〕又は〔68〕に記載の使用。
〔70〕該医薬が、投与直前における血小板数が30,000/mmを超過し、Sofaスコアが11以下である患者に投与されるための医薬である、前記〔67〕~〔69〕のいずれかに記載の使用。
〔71〕該医薬が、0.005~1mg/kgのトロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与するための医薬である、前記〔67〕又は〔68〕のいずれかに記載の使用。
[72]投与直前がトロンボモジュリンの投与開始時から遡って24時間以内である、前記[67]~[71]のいずれかに記載の方法。
〔73〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬の製造のためのトロンボモジュリンの使用であって、該医薬が、0.005~1mg/kgのトロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、凝固異常を伴う敗血症患者の静脈内に投与するための医薬である、上記の使用。
〔74〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL以上である該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔75〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が229pmol/Lより大きい該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔76〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が250pmol/L以上である該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔77〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前におけるプロテインC活性値が40%以下である該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔78〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前におけるアンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)活性値が70%より小さい該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔79〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前におけるマイクロパーティクル(microparticle:MP)の値が10nmより大きい該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔80〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前におけるAPACHE IIスコアが35より小さい該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔81〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する該患者に投与されるための医薬である上記の使用。
〔82〕肝臓又は腎臓のいずれかのみに臓器障害を有する敗血症患者を除く該患者に投与されるための医薬である、〔81〕に記載の使用。
〔83〕投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する該患者に投与されるための医薬である、前記〔60〕または〔61〕に記載の使用。
〔84〕肝臓又は腎臓のいずれかのみに臓器障害を有する敗血症患者を除く該患者に投与されるための医薬である、〔83〕に記載の使用。
〔85〕敗血症の治療及び/又は改善のための医薬としてのトロンボモジュリンの使用であって、投与直前におけるD-ダイマーの値が3,500ng/mL以上である該患者に投与されるための医薬である、上記の使用。
〔86〕該医薬が、投与直前におけるD-ダイマーの値が3,500ng/mL以上である該患者に投与される医薬である、前記〔60〕または〔61〕に記載の使用。
〔87〕該医薬が、投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が229pmol/Lより大きい該患者に投与される医薬である、前記〔60〕または〔61〕に記載の使用。
〔88〕該医薬が、投与直前におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が250pmol/L以上である該患者に投与される医薬である、前記〔60〕または〔61〕に記載の使用。
〔89〕該医薬が、投与直前におけるプロテインC活性値が40%以下である該患者に投与される医薬である、前記〔60〕または〔61〕に記載の使用。
〔90〕該医薬が、投与直前におけるアンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)活性値が70%より小さい該患者に投与される医薬である、前記〔60〕または〔61〕に記載の使用。
〔91〕該医薬が、投与直前におけるマイクロパーティクル(microparticle:MP)の値が10nmより大きい該患者に投与される医薬である、前記〔60〕または〔61〕に記載の使用。
〔92〕該医薬が、投与直前におけるAPACHE IIスコアが35より小さい該患者に投与されるための医薬である、前記〔60〕または〔61〕に記載の使用。
[93]投与直前がトロンボモジュリンの投与開始時から遡って24時間以内である、前記[60]~[92]のいずれかに記載の使用。
本発明により、凝固異常を伴う敗血症を効果的に治療及び/又は改善することができる。
実施例において、24時間以内に実施例1の凝固異常基準及び臓器障害基準を満たすことが確認された総数816症例を12時間以内に無作為化し、無作為化時点から原則として4時間以内に初回投与が実施し、初回投与の際に投与直前時点(Baseline)での血小板数と血漿中INR値等を再測定する試験プロトコールを示した図である。なお図中のRは、無作為化が終了した時点を指す。
以下、本発明をいくつかの好ましい態様(本発明を実施するための好ましい形態:以下、本明細書において「実施の形態」と略すことがある)について具体的に説明するが、本発明の範囲は下記に説明する特定の態様に限定されることはない。
本実施の形態におけるトロンボモジュリンは、(1)トロンビンと選択的に結合して(2)トロンビンによるプロテインCの活性化を促進する作用を有することが知られている。また、(3)トロンビンによる凝固時間を延長する作用、(4)トロンビンによる血小板凝集を抑制する作用、及び/又は(5)抗炎症作用が通常認められることが好ましい。これらトロンボモジュリンの持つ作用をトロンボモジュリン活性と呼ぶことがある。
トロンボモジュリン活性としては、上記(1)及び(2)の作用を有し、さらに上記(1)~(4)の作用を有していることが好ましい。また、トロンボモジュリン活性としては、(1)~(5)の作用を全て備えていることがより好ましい。
トロンボモジュリンのトロンビンとの結合作用は、例えば、Thrombosis and Haemostasis 1993 70(3):418-422やThe Journal of Biological Chemistry 1989 Vol.264,No.9 pp.4872-4876を初めとする各種の公知文献に記載の試験方法により確認できる。トロンビンによるプロテインCの活性化を促進する作用は、例えば、特開昭64-6219号公報を初めとする各種の公知文献に明確に記載された試験方法によりプロテインCの活性化を促進する作用の活性量やその有無を容易に確認できるものである。また、トロンビンによる凝固時間を延長する作用、及び/又はトロンビンによる血小板凝集を抑制する作用についても同様に容易に確認できる。さらには、抗炎症作用についても、例えばblood 2008 112:3361-3670、The Journal of Clinical Investigation 2005 115 5:1267-1274を初めとする各種の公知文献に記載の試験方法により確認できる。
本発明におけるトロンボモジュリンとしては、トロンボモジュリン活性を有していれば特に限定されないが、界面活性剤の非存在下で水に可溶な可溶性トロンボモジュリンであることが好ましい。可溶性トロンボモジュリンの溶解性の好ましい例示としては、水、例えば注射用蒸留水に対して(トリトンX-100やポリドカノール等の界面活性剤の非存在下、通常は中性付近にて)、1mg/mL以上、または10mg/mL以上が挙げられ、好ましくは15mg/mL以上、または17mg/mL以上が挙げられ、さらに好ましくは20mg/mL以上、25mg/mL以上、または30mg/mL以上が例示され、特に好ましくは60mg/mL以上が挙げられ、場合によっては、80mg/mL以上、または100mg/mL以上がそれぞれ挙げられる。可溶性トロンボモジュリンが溶解し得たか否かを判断するに当たっては、溶解した後に、例えば白色光源の直下、約1000ルクスの明るさの位置で、肉眼で観察した場合に、澄明であって、明らかに認められるような程度の不溶性物質を含まないことが端的な指標となるものと理解される。また、濾過して残渣の有無を確認することもできる。
トロンボモジュリンは上記に示した通り、トロンボモジュリン活性を有していれば、その分子量は限定されないが、分子量の上限としては100,000以下が好ましく、90,000以下がより好ましく、80,000以下がさらに好ましく、70,000以下が特に好ましく、分子量の下限としては、50,000以上がさらに好ましく、60,000以上が特に好ましい。可溶性トロンボモジュリンの分子量は、たん白質の分子量を測定する通常の方法で容易に測定が可能であるが、質量分析法にて測定することが好ましく、MALDI-TOF-MS法がより好ましい。目的の範囲の分子量の可溶性トロンボモジュリンを取得するためには、後述の通り、可溶性トロンボモジュリンをコードするDNAをベクターにより宿主細胞にトランスフェクトして調製された形質転換細胞を培養することにより取得される可溶性トロンボモジュリンをカラムクロマトグラフィー等により分画することで取得することができる。
本発明におけるトロンボモジュリンとしては、ヒト型のトロンボモジュリンにおいてトロンボモジュリン活性の中心部位として知られている配列番号1の第19~132位のアミノ酸配列を包含していることが好ましく、配列番号1の第19~132位のアミノ酸配列を包含していれば特に限定されない。該配列番号1の第19~132位のアミノ酸配列は、トロンビンによるプロテインCの活性化を促進する作用、すなわちトロンボモジュリン活性を有する限り自然または人工的に変異していてもよく、すなわち配列番号1の第19~132位のアミノ酸配列において1つまたは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加していても良い。許容される変異の程度は、トロンボモジュリン活性を有すれば特に限定されないが、例えばアミノ酸配列として50%以上の相同性が例示され、70%以上の相同性が好ましく、80%以上の相同性がより好ましく、90%以上の相同性がさらに好ましく、95%以上の相同性が特に好ましく、98%以上の相同性が最も好ましい。このようにアミノ酸配列の1つ又は複数のアミノ酸が置換、欠失、付加しているアミノ酸配列を相同変異配列という。これらの変異については後述の通り、通常の遺伝子操作技術を用いれば容易に取得可能である。トロンボモジュリンは上記配列を有し、少なくともトロンボモジュリン全体としてトロンビンと選択的に結合してトロンビンによるプロテインCの活性化を促進する作用を有していれば特に限定されないが、同時に抗炎症作用を有することが好ましい。
配列番号3の配列は、配列番号1の第125位のアミノ酸であるValがAlaに変異したものであるが、本発明におけるトロンボモジュリンとして、配列番号3の第19~132位のアミノ酸配列を包含していることも好ましい。
このように本発明におけるトロンボモジュリンとしては、配列番号1もしくは配列番号3の第19~132位の配列、またはそれらの相同変異配列を少なくとも有し、少なくともトロンボモジュリン活性を有するペプチド配列を包含していれば特に限定されないが、配列番号1もしくは配列番号3における第19~132位もしくは第17~132位の配列からなるペプチド、または上記配列の相同変異配列からなり少なくともトロンボモジュリン活性を有するペプチドが好ましい例として挙げられ、配列番号1もしくは配列番号3の第19~132位の配列からなるペプチドがより好ましい。また、配列番号1もしくは配列番号3における第19~132位もしくは第17~132位の相同変異配列からなり少なくともトロンボモジュリン活性を有するペプチドがより好ましい別の態様もある。
また本発明におけるトロンボモジュリンの別の態様として、配列番号5の第19~480位のアミノ酸配列を包含していることが好ましく、配列番号5の第19~480位のアミノ酸配列を包含していれば特に限定されない。該配列番号5の第19~480位のアミノ酸配列は、トロンビンによるプロテインCの活性化を促進する作用、すなわちトロンボモジュリン活性を有する限りその相同変異配列であってもよい。
配列番号7の配列は、配列番号5の第473位のアミノ酸であるValがAlaに変異したものであるが、本発明におけるトロンボモジュリンとして、配列番号7の第19~480位のアミノ酸配列を包含していることも好ましい。
このように本発明におけるトロンボモジュリンとしては、配列番号5もしくは配列番号7の第19~480位の配列、またはそれらの相同変異配列を少なくとも有し、少なくともトロンボモジュリン活性を有するペプチド配列を包含していれば特に限定されないが、配列番号5もしくは配列番号7における第19~480位もしくは第17~480位の配列からなるペプチド、または上記配列の相同変異配列からなり少なくともトロンボモジュリン活性を有するペプチドが好ましい例として挙げられ、配列番号5もしくは配列番号7の第19~480位の配列からなるペプチドがより好ましい。また、配列番号5もしくは配列番号7における第19~480位もしくは第17~480位の相同変異配列からなり少なくともトロンボモジュリン活性を有するペプチドがより好ましい別の態様もある。
また本発明におけるトロンボモジュリンの別の態様として、配列番号9の第19~515位のアミノ酸配列を包含していることが好ましく、配列番号9の第19~515位のアミノ酸配列を包含していれば特に限定されない。該配列番号9の第19~515位のアミノ酸配列は、トロンビンによるプロテインCの活性化を促進する作用、すなわちトロンボモジュリン活性を有する限りその相同変異配列であってもよい。
配列番号11の配列は、配列番号9の第473位のアミノ酸であるValがAlaに変異したものであるが、本発明におけるトロンボモジュリンとして、配列番号11の第19~515位のアミノ酸配列を包含していることも好ましい。
このように本発明におけるトロンボモジュリンとしては、配列番号9もしくは配列番号11の第19~515位の配列、またはそれらの相同変異配列を少なくとも有し、少なくともトロンボモジュリン活性を有するペプチド配列を包含していれば特に限定されないが、配列番号9もしくは配列番号11における第19~516位、第19~515位、第17~516位、もしくは第17~515位の配列からなるペプチド、または上記配列の相同変異配列からなり少なくともトロンボモジュリン活性を有するペプチドがより好ましい例として挙げられ、配列番号9における第19~516位、第19~515位、第17~516位、もしくは第17~515位の配列からなるペプチドが特に好ましい。これらの混合物も好ましい例として挙げられる。また、配列番号11における第19~516位、第19~515位、第17~516位、もしくは第17~515位の配列からなるペプチドが特に好ましい別の態様もある。これらの混合物も好ましい例として挙げられる。さらにそれらの相同変異配列からなり、少なくともトロンボモジュリン活性を有するぺプチドも好ましい例として挙げられる。トロンボモジュリンは、同時に抗炎症作用を有することが好ましい。
相同変異配列を有するペプチドとは、上述した通りであるが、対象とするペプチドのアミノ酸配列中1つ以上、すなわち1つまたは複数のアミノ酸、さらに好ましくは数個(例えば1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から5個、特に好ましくは1から3個)のアミノ酸が置換、欠失、付加していてもよいペプチドをも意味する。許容される変異の程度は、トロンボモジュリン活性を有すれば特に限定されないが、例えばアミノ酸配列として50%以上の相同性が例示され、70%以上の相同性が好ましく、80%以上の相同性がより好ましく、90%以上の相同性がさらに好ましく、95%以上の相同性が特に好ましく、98%以上の相同性が最も好ましい。
さらに、本発明におけるトロンボモジュリンとしては、特開昭64-6219号公報における配列番号14(462アミノ酸残基)からなるペプチド、配列番号8(272アミノ酸残基)からなるペプチド、または配列番号6(236アミノ酸残基)からなるペプチドも好ましい例として挙げられる。
本発明におけるトロンボモジュリンとしては配列番号1または配列番号3の第19~132位のアミノ酸配列を少なくとも有しているペプチドであれば特に限定されないが、その中でも配列番号5または配列番号7の第19~480位のアミノ酸配列を少なくとも有しているペプチドであることが好ましく、配列番号9もしくは配列番号11の第19~515位のアミノ酸配列を少なくとも有しているペプチドであることがより好ましい。配列番号9もしくは配列番号11の第19~515位のアミノ酸配列を少なくとも有しているペプチドとしては、配列番号9もしくは配列番号11のそれぞれにおける第19~516位、第19~515位、第19~514位、第17~516位、第17~515位、もしくは第17~514位の配列からなるペプチドがより好ましい例として挙げられる。また、配列番号9もしくは配列番号11のそれぞれにおける第19~516位、第19~515位、第19~514位、第17~516位、第17~515位、もしくは第17~514位の配列からなるペプチドの、配列番号9もしくは配列番号11それぞれについての混合物もより好ましい例として挙げられる。
一つの実施形態において、トロンボモジュリンとしては、前記トロンボモジュリンであれば特に限定されないが、可溶性トロンボモジュリンが例示される。別の態様としては、ヒトトロンボモジュリンが例示される。さらに別の態様としては、ヒト可溶性トロンボモジュリンが例示される。さらに別の態様としては、トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)が例示される。トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)は、日本において医薬品としての承認を受けているリコモジュリン(登録商標)の有効成分である。トロンボモデュリン アルファ(遺伝子組換え)は、ART-123と呼ばれることもある。
上記混合物の場合、配列番号9もしくは配列番号11のそれぞれにおける第17位から始まるペプチドと第19位から始まるペプチドの混合割合としては、(30:70)~(50:50)が例示され、(35:65)~(45:55)が好ましい例として挙げられる。
また、配列番号9もしくは配列番号11のそれぞれにおける第514位、第515位、及び第516位で終わるペプチドの混合割合としては、(0:0:100)~(0:90:10)が例示され、場合によっては、(0:70:30)~(10:90:0)、(10:0:90)~(20:10:70)が例示される。
これらペプチドの混合割合は、通常の方法により求めることができる。
なお、配列番号1の第19~132位の配列は、配列番号9の第367~480位の配列に相当し、配列番号5の第19~480位の配列は、配列番号9の第19~480位の配列に相当する。また、配列番号3の第19~132位の配列は、配列番号11の第367~480位の配列に相当し、配列番号7の第19~480位の配列は、配列番号11の第19~480位の配列に相当する。さらに、配列番号1、3、5、7、9、および11のそれぞれにおける第1~18位の配列は、全て同一の配列である。
これら本発明におけるトロンボモジュリンは後述の通り、これらのペプチドをコードするDNA(具体的には、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、または配列番号12等の塩基配列)をベクターにより宿主細胞にトランスフェクトして調製された形質転換細胞より取得することができる。
さらに、これらのペプチドは、前記のアミノ酸配列を有すればよく、糖鎖が付いていても、また付いていなくともよく、この点は特に限定されるものではない。また遺伝子操作においては、使用する宿主細胞の種類により、糖鎖の種類や、付加位置や付加の程度は相違するものであり、いずれも用いることができる。糖鎖の結合位置および種類については、特開平11-341990号公報に記載の事実が知られており、本発明におけるトロンボモジュリンについても同様の位置に同様の糖鎖が付加する場合がある。本実施の形態のトロンボモジュリンにはフコシルバイアンテナリー型とフコシルトリアンテナリー型の2種類のN結合型糖鎖が結合し、その比率は(100:0)~(60:40)が例示され、(95:5)~(60:40)が好ましく、(90:10)~(70:30)がより好ましい例として挙げられる。これらの糖鎖の比率は、生物化学実験法23 糖蛋白質糖鎖研究法、学会出版センター(1990年)などに記載の2次元糖鎖マップによって測定できる。さらに、本実施の形態のトロンボモジュリンの糖組成を調べると、中性糖、アミノ糖及びシアル酸が検出され、たん白質含量に対し、それぞれ独立に重量比で1~30%の比率が例示され、2~20%が好ましく、5~10%がより好ましい。これら糖含量は、新生化学実験講座3 糖質I糖タンパク質(上)、東京化学同人(1990年)に記載の方法(中性糖:フェノール-硫酸法、アミノ糖:エルソン-モルガン法、シアル酸:過ヨウ素酸-レゾルシノール法)によって測定できる。
後述の通り、トロンボモジュリンの取得は遺伝子操作により取得することに限定されるものではないが、遺伝子操作により取得する場合には、発現に際して用いることができるシグナル配列としては、配列番号9の第1~18位のアミノ酸配列をコードする塩基配列、配列番号9の第1~16位のアミノ酸配列をコードする塩基配列、その他公知のシグナル配列、例えば、ヒト組織プラスミノゲンアクチベータのシグナル配列を利用することができる(国際公開88/9811号公報)。
トロンボモジュリンをコードするDNA配列を宿主細胞へ導入する場合には、好ましくはトロンボモジュリンをコードするDNA配列を、ベクター、特に好ましくは、動物細胞において発現可能な発現ベクターに組み込んで導入する方法が挙げられる。発現ベクターとは、プロモーター配列、mRNAにリボソーム結合部位を付与する配列、発現したい蛋白をコードするDNA配列、スプライシングシグナル、転写終結のターミネーター配列、複製起源配列などで構成されるDNA分子であり、好ましい動物細胞発現ベクターの例としては、Mulligan RCら[Proc Natl Acad Sci USA 1981;78:2072-2076]が報告しているpSV2-Xや、Howley PMら[Methods in Emzymology 1983;101:387-402、Academic Press]が報告しているpBP69T(69-6)などが挙げられる。また、微生物において発現可能な発現ベクターに組み込む別の好ましい態様もある。
これらのペプチドを製造するに際して用いることのできる宿主細胞としては、動物細胞が挙げられる。動物細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS-1細胞、COS-7細胞、VERO(ATCC CCL-81)細胞、BHK細胞、イヌ腎由来MDCK細胞、ハムスターAV-12-664細胞等が、またヒト由来細胞としてHeLa細胞、WI38細胞、ヒト293細胞、PER.C6細胞が挙げられる。CHO細胞が極めて一般的であり好ましく、CHO細胞においては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)欠損CHO細胞がさらに好ましい。
また、遺伝子操作の過程やペプチドの製造過程において、大腸菌等の微生物も多く使われ、それぞれに適した宿主-ベクター系を使用することが好ましく、上述の宿主細胞においても、適宜のベクター系を選択することができる。遺伝子組換え技術に用いるトロンボモジュリンの遺伝子は、クローニングされており、そしてトロンボモジュリンの遺伝子組換え技術を用いた製造例が開示されており、さらにはその精製品を得るための精製方法も知られている[特開昭64-6219号公報、特開平2-255699号公報、特開平5-213998号公報、特開平5-310787号公報、特開平7-155176号公報、J Biol Chem 1989;264:10351-10353]。したがって本発明で用いるトロンボモジュリンは、上記の報告に記載されている方法を用いることにより、あるいはそれらに記載の方法に準じることにより製造することができる。例えば特開昭64-6219号公報では、全長のトロンボモジュリンをコードするDNAを含むプラスミドpSV2TMJ2を含む、Escherichia coli K-12 strain DH5(ATCC寄託番号67283号)が開示されている。また、この菌株を生命研(現独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)の菌株(Escherichia coli DH5/pSV2TM J2)(FERM BP-5570)を用いることもできる。この全長のトロンボモジュリンをコードするDNAを原料として、公知の遺伝子操作技術によって、本発明のトロンボモジュリンを調製することができる。
本実施の形態におけるトロンボモジュリンは、従来公知の方法またはそれに準じて調製すればよいが、例えば、前記山本らの方法[特開昭64-6219号公報]、または特開平5-213998号公報を参考にすることができる。すなわちヒト由来のトロンボモジュリン遺伝子を遺伝子操作技術により、例えば、配列番号9のアミノ酸配列をコードするDNAとなし、さらに必要に応じた改変を行うことも可能である。この改変としては、例えば、配列番号11のアミノ酸配列をコードするDNA(具体的には、配列番号12の塩基配列よりなる)となすために、配列番号9の第473位のアミノ酸をコードするコドン(特に、配列番号10の第1418位の塩基)に、Zoller MJら[Methods in Enzymology 1983;100:468-500、Academic Press]の方法に従って、部位特異的変異を行う。例えば、配列番号10の第1418位の塩基Tは、配列番号13に示された塩基配列を有する変異用合成DNAを用いて塩基Cに変換したDNAとなすことができる。
このようにして調製したDNAを、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に組み込んで、形質転換細胞とし、適宜選択し、この細胞を培養して得た培養液から、公知の方法により精製されたトロンボモジュリンが製造できる。前述の通り配列番号9のアミノ酸配列をコードするDNA(配列番号10)を前記宿主細胞にトランスフェクトすることが好ましい。
本実施の形態におけるトロンボモジュリンの生産方法は、上記の方法に限定されるものではなく、例えば、尿や血液、その他体液等から抽出精製することでも可能であるし、またトロンボモジュリンを生産する組織またはこれら組織培養液等から抽出精製することも、また必要によりさらに蛋白分解酵素により切断処理することも可能である。
上記の形質転換細胞を培養するにあたっては、通常の細胞培養に用いられる培地を使用することが可能であり、その形質転換細胞を各種の培地にて事前に培養して、最適の培地を選択することが好ましい。例えば、MEM培地、DMEM培地、199培地などの公知の培地を基本培地とし、さらに改良あるいは各種培地用のサプリメントを添加した培地を使用すればよい。培養方法としては、血清を添加した培地で培養する血清培養、又は血清を添加しない培地で培養する無血清培養が挙げられる。培養方法は特に限定されることはないが、無血清培養が好ましい。
血清培養において、培地に血清を添加する場合はウシ血清が好ましい。ウシ血清には、ウシ胎児血清、新生仔ウシ血清、仔ウシ血清、成牛血清などがあるが、細胞培養に適したものであれば、どれを使用してもよい。一方、無血清培養において、使用する無血清培地は、市販の培地を使用することが可能である。各種細胞に適した無血清培地が市販されており、例えばCHO細胞に対しては、インビトロジェン社からCD-CHO、CHO-S-SFMII、CHO-III-PFMが、アーバイン サイエンティフィック社からIS CHO、IS CHO-CD培地などが販売されている。これらの培地をそのまま、改良あるいはサプリメントを添加して使用してもよい。さらに、無血清培地としては、インスリン、トランスフェリン、及び亜セレン酸をそれぞれ5mg/Lとなるように添加したDMEM培地が例示される。このように、本実施の形態のトロンボモジュリンを産生できる培地であれば、特に限定されない。培養方法は特に限定されず、バッチ培養、繰り返しバッチ培養、フェドバッチ培養、灌流培養等どのような培養法でもよい。
上記細胞培養方法により本発明におけるトロンボモジュリンを製造する場合、タンパク質の翻訳後修飾により、N末端アミノ酸に多様性が認められる場合がある。例えば、配列番号9における第17位、18位、19位、もしくは22位のアミノ酸がN末端となる場合がある。また、例えば第22位のグルタミン酸がピログルタミン酸に変換されるように、N末端アミノ酸が修飾される場合もある。第17位または19位のアミノ酸がN末端となることが好ましく、第19位のアミノ酸がN末端となることがより好ましい。また、第17位のアミノ酸がN末端となることが好ましい別の態様もある。以上の修飾や多様性等については配列番号11についても同様な例が挙げられる。
さらに、配列番号10の塩基配列を有するDNAを用いて可溶性トロンボモジュリンを製造する場合、C末端アミノ酸の多様性が認められることがあり、1アミノ酸残基短いペプチドが製造される場合がある。すなわち、第515位のアミノ酸がC末端となり、さらに該第515位がアミド化されるといったように、C末端アミノ酸が修飾される場合がある。また、2アミノ酸残基短いペプチドが製造される場合もある。すなわち、第514位のアミノ酸がC末端となる場合がある。したがって、N末端アミノ酸とC末端アミノ酸が多様性に富んだペプチド、又はそれらの混合物が製造されることがある。第515位のアミノ酸又は第516位のアミノ酸がC末端となることが好ましく、第516位のアミノ酸がC末端となることがより好ましい。また、第514位のアミノ酸がC末端になることが好ましい別の態様もある。以上の修飾や多様性等については配列番号12の塩基配列を有するDNAについても同様である。
上記方法で得られるトロンボモジュリンは、N末端及びC末端に多様性が認められるペプチドの混合物である場合がある。具体的は、配列番号9における第19~516位、第19~515位、第19~514位、第17~516位、第17~515位、もしくは第17~514位の配列からなるペプチドの混合物が挙げられる。
次いで上記により取得された培養上清、または培養物からのトロンボモジュリンの単離精製方法は、公知の手法[堀尾武一編集、蛋白質・酵素の基礎実験法、1981]に準じて行うことができる。例えば、トロンボモジュリンと逆の電荷を持つ官能基を固定化したクロマトグラフィー担体と、トロンボモジュリンの間の相互作用を利用したイオン交換クロマトグラフィーや吸着クロマトグラフィーの使用も好ましい。また、トロンボモジュリンとの特異的親和性を利用したアフィニティークロマトグラフィーも好ましい例として挙げられる。吸着体の好ましい例として、トロンボモジュリンのリガンドであるトロンビンやトロンボモジュリンの抗体を利用する例が挙げられる。この抗体としては、適宜の性質、あるいは適宜のエピトープを認識するトロンボモジュリンの抗体を利用することができ、例えば、特公平5-42920号公報、特開昭64-45398号公報、特開平6-205692号公報などに記載された例が挙げられる。また、トロンボモジュリンの分子量サイズを利用した、ゲル濾過クロマトグラフィーや限外濾過が挙げられる。そしてまた、疎水性基を固定化したクロマトグラフィー担体と、トロンボモジュリンのもつ疎水性部位との間の疎水結合を利用した疎水性クロマトグラフィーが挙げられる。また、吸着クロマトグラフィーとしてハイドロキシアパタイトを担体として用いることも可能であり、例えば、特開平9-110900号公報に記載した例が挙げられる。これらの手法は適宜組み合わせることができる。精製の程度は、使用目的等により選択できるが、例えば電気泳動、好ましくはSDS-PAGEの結果が単一バンドとして得られるか、もしくは単離精製品のゲル濾過HPLCまたは逆相HPLCの結果が単一のピークになるまで純粋化することが望ましい。もちろん、複数種のトロンボモジュリンを用いる場合には、実質的にトロンボモジュリンのみのバンドになることが好ましいのであり、単一のバンドになることを求めるものではない。
本発明における精製法を具体的に例示すれば、トロンボモジュリン活性を指標に精製する法が挙げられ、例えばイオン交換カラムのQ-セファロースFast Flowで培養上清または培養物を粗精製しトロンボモジュリン活性を有する画分を回収し、ついでアフィニティーカラムのDIP-トロンビン-アガロース(diisopropylphosphorylthrombin agarose)カラムで主精製しトロンボモジュリン活性が強い画分を回収し、回収画分を濃縮し、ゲル濾過にかけトロンボモジュリン活性画分を純品として取得する精製方法[Gomi K et al、Blood 1990;75:1396-1399]が挙げられる。指標とするトロンボモジュリン活性としては、例えばトロンビンによるプロテインC活性化の促進活性が挙げられる。その他に、好ましい精製法を例示すると以下の通りである。
トロンボモジュリンと良好な吸着条件を有する適当なイオン交換樹脂を選定し、イオン交換クロマト精製を行う。特に好ましい例としては、0.18mol/L NaClを含む0.02mol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で平衡化したQ-セファロースFast Flowを用いる方法である。適宜洗浄後、例えば0.3mol/L NaCl含む0.02mol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で溶出し粗精製品のトロンボモジュリンを得ることができる。
次に、例えばトロンボモジュリンと特異的親和性を持つ物質を樹脂に固定化しアフィニティークロマト精製を行うことができる。好ましい例としてDIP-トロンビン-アガロースカラムの例と、抗トロンボモジュリンモノクローナル抗体カラムの例が挙げられる。DIP-トロンビン-アガロースカラムは、予め、例えば、100mmol/L NaClおよび0.5mmol/L塩化カルシウムを含む20mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で平衡化せしめ、上記の粗精製品をチャージして、適宜の洗浄を行い、例えば、1.0mol/L NaClおよび0.5mmol/L塩化カルシウムを含む20mmol/Lトリス塩酸緩衝液(pH7.4)で溶出し精製品のトロンボモジュリンを取得することができる。また抗トロンボモジュリンモノクローナル抗体カラムにおいては、予めCNBrにより活性化したセファロース4FF(GEヘルスケアバイオサイエンス社)に、抗トロンボモジュリンモノクローナル抗体を溶解した0.5mol/L NaCl含有0.1mol/L NaHCO3緩衝液(pH8.3)に接触させ、セファロース4FFに抗トロンボモジュリンモノクローナル抗体をカップリングさせた樹脂を充填したカラムを、予め例えば0.3mol/L NaCl含む20mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH7.3)で平衡化し、適宜の洗浄の後、例えば、0.3mol/L NaCl含む100mmol/Lグリシン塩酸緩衝液(pH3.0)にて溶出せしめる方法が例示される。溶出液は適当な緩衝液で中和し、精製品として取得することもできる。
次に得られた精製品をpH3.5に調整した後に、0.3mol/L NaClを含む100mmol/Lグリシン塩酸緩衝液(pH3.5)で平衡化した陽イオン交換体、好ましくは強陽イオン交換体であるSP-セファロースFF(GEヘルスケアバイオサイエンス社)にチャージし、同緩衝液で洗浄して得られた非吸着画分を得る。得られた画分は適当な緩衝液で中和し、高純度精製品として取得することができる。これらは、限外濾過により濃縮することが好ましい。
さらに、ゲル濾過による緩衝液交換を行うことも好ましい。例えば、50mmol/L NaClを含む20mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH7.3)で平衡化せしめたSephacryl S-300カラムもしくはS-200カラムに、限外濾過により濃縮した高純度精製品をチャージし、50mmol/L NaClを含む20mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH7.3)で展開分画し、トロンビンによるプロテインC活性化の促進活性の確認を行って活性画分を回収し、緩衝液交換した高純度精製品を取得することができる。このようにして得られた高純度精製品は安全性を高めるために適当なウイルス除去膜、例えばプラノバ15N(旭化成メディカル株式会社)を用いて濾過することが好ましく、その後限外濾過により目的の濃度まで濃縮することができる。最後に無菌濾過膜により濾過することが好ましい。
本発明の1つの態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の血漿検体の国際標準比(INR)の値が1.4より大きい該患者に投与されるための医薬、が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の血漿検体の国際標準比(INR)の値が1.4より大きく、かつ、投与直前における患者の該検体における血小板数が30,000/mmを超過する該患者に投与されるための医薬、が提供される。
さらに、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症の治療及び/又は改善のための医薬であって、上記の患者に対して、0.005~1mg/kgのトロンボモジュリンを、1日1回の頻度で、少なくとも連続する4日間にわたって、敗血症患者の静脈内に投与するための該医薬、が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の血漿検体の国際標準比(INR)の値が1.4より大きく、かつ、投与直前における患者の該検体におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL又はそれ以上である該患者に投与されるための、医薬が提供される。
さらに、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、感染部位が適切にコントロールされていない患者ではない患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の血漿検体の国際標準比(INR)の値が1.4より大きく、投与直前における患者の該検体における血小板数が30,000/mmを超過し、Sofaスコアが11以下である患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の該検体におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL以上である患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の該検体におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が229pmol/Lより大きい患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の該検体におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)の値が250pmol/L以上である患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の該検体におけるプロテインC活性値が40%以下である患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の該検体におけるアンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)活性値が70%より小さい患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における患者の該検体におけるマイクロパーティクル(microparticle:MP)の値が10nmより大きい患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前におけるAPACHE IIスコアが35より小さい患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、肝臓又は腎臓のいずれかのみに臓器障害を有する敗血症患者を除く、投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における国際標準比(INR)の値が1.4より大きく、かつ、投与直前における血小板数が30,000/mmを超過し、かつ、投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する患者に投与されるための、医薬が提供される。
また、本発明の別の態様として、トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、投与直前における国際標準比(INR)の値が1.4より大きく、かつ、投与直前における血小板数が30,000/mmを超過し、かつ、肝臓又は腎臓のいずれかのみに臓器障害を有する敗血症患者を除く、投与直前において1つ以上3つ以下の臓器障害を有する患者に投与されるための、医薬が提供される。
本発明の態様において、投与直前とは、トロンボモジュリンの投与開始時点から遡って24時間以内、好ましくは12時間以内、より好ましくは8時間以内、さらに好ましくは4時間以内、特に好ましくは2時間以内を意味するが、投与開始時点から遡って24~48時間以内において採取された血漿検体において上記条件を満足する場合にも高い有効性を達成できる場合がある。
敗血症の治療の及び/又は改善としては、例えば「敗血症による患者の死亡を防ぐこと」が好ましい効果のひとつとして挙げられる。また「敗血症により患者の全身状態が悪化するのを防ぐこと」も好ましい効果として挙げられる。
また、敗血症の治療の及び/又は改善としては、例えば「敗血症患者の死亡率を低減すること」が好ましい効果のひとつとして挙げられる。
血液凝固マーカーであるD-ダイマーの血中濃度の上昇は、繊維素溶解(2次線溶、フィブリン溶解)が進行中であることなどを示唆し、血栓塞栓症や凝固性亢進状態に付随するその他の症状の特徴であるフィブリン血栓の形成を示すことがある。本発明の医薬を患者に対して投薬した際、投薬しない場合と比較して、血中D-ダイマー濃度の減少又は増加抑制が観察されることがより好ましい。
血液凝固マーカーであるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)は、トロンビンとその代表的な阻止因子であるアンチトロンビンが1:1の割合で結合した複合体である。一般的に、凝固活性化に伴い、トロンビンの一部は速やかにアンチトロンビンと結合し、TATが形成される。正常な血中TATの濃度は、概ね、3~4ng/mL未満である。血中TATの濃度を測定することで、採血時の凝固活性化の程度を知ることができる。本発明の医薬を患者に対して投薬した際、投薬しない場合と比較して、血中TAT濃度の減少又は増加抑制が観察されることがより好ましい。
プロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)も、TATと同様に凝固活性化マーカーであることが知られており、プロトトロンビンからトロンビンに転換する際に、プロトトロンビンから遊離されるペプチドであることができる。本発明の医薬を患者に対して投薬した際、投薬しない場合と比較して、血中プロトロンビンフラグメント1+2濃度の減少又は増加抑制が観察されることがより好ましい。
本発明の医薬を患者に対して投薬した際、投薬しない場合と比較して、血小板数の増加又は減少抑制が観察されることがより好ましい。
アンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)は、生理的な抗凝固因子の一つであり、活性化第X因子や活性化第II因子(トロンビン)などの血液凝固因子と1対1に結合しその作用を阻害することにより抗凝固作用を発揮する。
マイクロパーティクル(microparticle:MP)は、血小板、単球および血管内皮細胞などの様々な細胞から生成される膜小胞体であり、血液凝固の促進や炎症反応の促進作用を持つことが知られている。
本実施の形態における敗血症は、感染症、悪性腫瘍、肝硬変、腎不全、糖尿病、異常分娩といったような疾病や、留置カテーテル、輸液器具、透析、気管切開といったようなケガや病気に対する治療が原因となって、感染巣から絶えずまたは断続的に微生物が血液に侵入してくる重症全身性感染症として知られている。症状が進行すると、敗血性ショック、すなわち急激な血圧降下、末梢循環不全によって全身性のショックが誘発され、肺、腎臓、肝臓、心臓、消化管、さらには中枢神経系など重要臓器の障害により死亡する。また、敗血症に伴う合併症として、DICや、好中球の活性化と肺実質への遊走集積に伴う肺毛細障害により、肺間質の浮腫、出血や急性呼吸不全を特徴とする成人呼吸窮迫症候群(ARDS)が誘発され、予後は非常に悪くなる。
本実施の形態における敗血症としては、感染によって惹起された全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome:SIRS)である。すなわち感染の存在に加え,SIRS項目((1)体温>38℃又は<36℃、(2)心拍数>90/分,(3)呼吸数>20/分又はPaCO2<32 torr、(4)白血球数>12,000/μL又は<4000/μLまたは未熟型白血球>10%)の2項目以上をみたす病態が挙げられ、基本的には当該病態をもって敗血症と診断することができる。
敗血症の診断方法としてはいくつかの方法がある。それらはLevy M.ら、Crit.Care.Med.、31:1250-1256にまとめられている。例えば、医師によりその診断を行う方法、あるいは検査値等を用いる方法がある。後者の例として、1)体温>38℃又は<36℃、2)心拍数>90/分、3)呼吸数>20/分又は人工呼吸を必要とする、4)白血球数>12,000/μLまたは<4,000/μL、又は幼弱球>10%、の4項目の内、2項目を満たす場合SIRSと診断し、微生物が病因に証明されたかまたは疑われたSIRSを敗血症と診断する方法がある[LaRosa S.、The Cleveland Clinicのホームページ]。これに近い方法がMembers of the American College of Chest Physicians/Society of Critical Care Medicine Consensus Conference: Crit Care Med、20、864-874(1992)に記載されている。
敗血症(sepsis)の状態としては、例えば菌血症、敗血症(septicemia)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症(微生物が病因に証明されたか又は疑われたSIRS)、重症敗血症、敗血症性ショック、難治性敗血症性ショック、又は多臓器機能障害(以下、MODSと呼ばれることがある)が例示される(ハリソン内科学 原著第15版 124項 P828-833 株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナル)。上記各状態は、本発明の治療及び/又は改善剤が効果的な症状として例示される。
敗血症としては、上記の診断基準を満たす敗血症であれば特に限定されないが、本発明の医薬の適用対象は、敗血症のうち特に凝固異常を伴う敗血症(sepsis with coagulopathy)である。凝固異常の指標としては、例えばINRを挙げることができ、その場合、患者の血漿検体のINRが1.2より大きい状態であれば特に限定されないが、1.3より大きいことが好ましく、1.4より大きいことがより好ましい。
あるいは、凝固異常を伴う敗血症における凝固異常の指標として、INRに代わって又は加えて、血小板数の異常な減少(例:血小板減少症)を挙げることができる。その基準値の下限として、2万/mm、2.5万/mm、3万/mmを例示することができ、その基準値の上限として、20万/mm、18万/mm、15万/mmを例示することができる。血小板数の異常な減少を示す好ましい範囲として、血小板数が3万/mmを超過し、15万/mmより小さい範囲を挙げることができる。あるいは、血小板数の異常な減少を示す基準として、24時間以内に30%を超える血小板数減少を示すことを挙げることもできる。
あるいは、凝固異常を伴う敗血症における凝固異常の指標として、INRに代わって又は加えて、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)値の異常な増加を挙げることができる。その基準値の下限として、4ng/mL、8ng/mL、10ng/mL、12ng/mLを例示することができる。また上限としては、2,000ng/mL、5,000ng/mL、10,000ng/mLを例示することができる。
あるいは、凝固異常を伴う敗血症における凝固異常の指標として、INRに代わって又は加えて、プロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)値の異常な増加を挙げることができる。その基準値の下限として、200pmol/L、229pmol/L、230pmol/L、250pmol/Lを例示することができる。また上限としては、10,000pmol/L、20,000pmol/L、40,000pmol/Lを例示することができる。
あるいは、凝固異常を伴う敗血症における凝固異常の指標として、INRに代わって又は加えて、プロテインC値の異常な減少を挙げることができる。その基準値の上限として、40%、50%、60%を例示することができる。また下限としては、5%、8%、10%を例示することができる。
あるいは、凝固異常を伴う敗血症における凝固異常の指標として、INRに代わって又は加えて、マイクロパーティクル(MP)値の異常な増加を挙げることができる。その基準値の下限として、5nm、8nm、10nmを例示することができる。また上限としては、350nm、370nm、400nmを例示することができる。
あるいは、凝固異常を伴う敗血症における凝固異常の指標として、INRに代わって又は加えて、アンチトロンビンIII(AT III)値の異常な減少を挙げることができる。その基準値の上限として、45%、60%、70%を例示することができる。また下限としては、5%、8%、10%を例示することができる。
あるいは、凝固異常を伴う敗血症における凝固異常の指標として、INRに代わって又は加えて、D-ダイマー値の異常な増加を挙げることができる。その基準値の下限として、2,000ng/mL、3,000ng/mL、3,500ng/mLを例示することができる。また上限としては、50,000ng/mL、60,000ng/mL、70,000ng/mLを例示することができる。
1)敗血症患者が凝固異常を伴う敗血症患者であるか否かの診断、判定、又は確認の時点(時点1)と2)本発明の医薬を用いた同患者の治療及び/又は改善の開始時点(時点2)において、時点1から時点2までの経過時間は、本発明の趣旨を逸脱しない限り特に限定されないが、例えば、時点1から時点2までの経過時間は24時間であることもできる。
菌血症としては、血液培養陽性で証明される血液中の細菌の存在が確認される状態が例示される。
敗血症(septicemia)としては、血液中の微生物又は他の毒素の存在が確認される状態が例示されるが、感染の存在に加え,SIRS項目((1)体温>38℃または<36℃、(2)心拍数>90/分、(3)呼吸数>20/分またはPaCO<32 torr、(4)白血球数>12,000/μL又は<4,000/μLまたは未熟型白血球>10%)の2項目以上をみたす病態であればよく、必ずしも血液培養陽性であることを要しない。
全身性炎症反応症候群(SIRS)としては、上記の通りDIC準備段階にある状態が例示される。
重症敗血症としては、代謝性アシドーシス、臓器灌流低下、急性脳症、乏尿、低酸素血症又は播種性血管内凝固などの臓器障害または低血圧の症状を1つ又は複数伴う敗血症が例示される。敗血症の中で、臓器障害、臓器灌流低下または低血圧を呈する状態を重症敗血症(severe sepsis)という。臓器灌流低下または灌流異常には、乳酸アシドーシス、乏尿、意識混濁などが含まれる。重症敗血症の中で、十分な輸液負荷をおこなっても低血圧が持続するものを敗血症性ショック(septic shock)という。
本実施の形態における重症敗血症としては、より具体的には以下に示す通りである。
敗血症性ショックとしては、低血圧(血圧90mmHg以下又は通常の血圧より40mmHg以下)で、補液による蘇生法にも反応せず、臓器不全を伴うものが例示される。
難治性敗血症性ショックとしては、敗血症性ショックが1時間以上持続し、補液昇圧剤に反応しないものが例示される。
多臓器機能障害(MODS)としては、1臓器以上の機能不全があり、恒常性を保つため医学的介入を要するものが例示される。
Sofa(Sequential organ failure assessment)スコアは、重要臓器の障害度を数値化した指数であり、呼吸器、凝固系、肝機能、心血管系、中枢神経系、腎機能の6項目について、臓器障害の程度を0から4点の5段階で評価される。スコアが5を超えると死亡率は20%程度となると考えられる。本スコアは、敗血症の重症度を推察する上で有用である。Sofaスコアのほか、Apache(acute physiology and chronic health evaluation)IIスコアも知られており、呼吸や循環など12指標を用いて死亡率等を予測可能なスコアである。
敗血症の原因となる感染症は特に限定されないが、肺炎(肺の急性感染症)、尿路感染症、腸管感染症、血流感染症などが挙げられる。本発明の医薬が適用される敗血症の原因となる感染症は、尿路感染症以外(肺の急性感染症、腸管感染症、血流感染症など)の感染症であることが好ましい。
本実施の形態におけるINRとは、血液凝固異常を定義する検査指標の1つである。INRは、トロンボプラスチン製剤の製造ロット間の差異を標準化したプロトロンビン時間(prothrombin time、以下、PTと略すことがある)を意味し、INRは以下の通り定義される。
INR値
=(被検検体の凝固時間(秒)/コントロール検体の凝固時間(秒))^(ISI値)
式中、被検検体の凝固時間(秒)とは、測定対象の血漿被検検体のPTを示す。
また、ISIは国際感度指数を示す。
本実施の形態における重症敗血症は、上記の通り代謝性アシドーシス、急性脳症、乏尿、低酸素血症又は播種性血管内凝固などの臓器障害または低血圧の症状を1つ又は複数伴う敗血症が例示される。重症とは、生命に関わる重い病態にあることをいう。特に重症敗血症としては1つ以上の臓器障害を有する敗血症が挙げられる。臓器障害とは、敗血症により障害が生じる臓器の障害であれば特に限定されないが、生命の維持に必須とされる臓器の障害が好ましい。1つ以上の臓器障害としては、循環器障害、呼吸器障害、腎障害、及び肝障害からなる群より選ばれる1つ以上の臓器障害が挙げられ、呼吸器障害、循環器障害、及び腎障害からなる群より選ばれる1つ以上の臓器障害であることが好ましく、呼吸器障害及び循環器障害からなる群より選ばれる1つ以上の臓器障害であることがより好ましい。臓器障害の数は1つ以上であれば特に限定されないが、2つ以上が好ましい場合がある。特に、呼吸器障害及び循環器障害の2つの臓器障害を同時に有することが好ましい。ここで、呼吸器障害を呼吸機能障害と、循環器障害を心血管系機能障害と、それぞれ呼称することもできる。
また、本実施の形態における患者の臓器障害の数は、1つ以上3つ以下が好ましい場合がある。また、臓器障害としては少なくとも循環器障害または呼吸器障害のいずれかを有することが好ましい場合がある。
循環器障害としては、循環器障害として一般的に知られているものであれば特に限定されないが、例えば、血圧低下又はショックが挙げられる。具体的には、循環作動薬の使用が挙げられる。また別の例として、動脈血乳酸値>2mmol/Lである状態が例示される。
呼吸器障害としては、呼吸器障害として一般的に知られているものであれば特に限定されないが、例えば、低酸素血症、急性肺障害、又は呼吸困難が挙げられる。具体的には、人工呼吸器の使用が望ましいか、あるいは必須である状態が挙げられる。
腎障害としては、腎障害として一般的に知られているものであれば特に限定されないが、例えば、腎機能障害、乏尿、又は腎不全が挙げられる。具体的には、クレアチニン≧2.0mg/dLである状態が挙げられる。
肝障害としては、肝障害として一般的に知られているものであれば特に限定されないが、例えば、肝機能障害、黄疸、又は肝不全等が挙げられる。具体的には、ビリルビン≧2.0mg/dLである状態が挙げられる。
これらの各臓器障害は、出願前公知刊行物である「敗血症の解明と治療戦略」(舟田久 2006 医薬ジャーナル社,p38~)、又は「Surviving Sepsis Campaign: international guidelines for management of severe sepsis and septic shock 2008.」(Crit Care Med. 2008 Jan;36(1):296-327)等に記載の通り、一般的に知られているものである。
なお、重症敗血症患者としては、薬剤性臓器障害など敗血症に限定されない要因から発現する可能性が想定されることから、肝臓又は腎臓のみの臓器障害を有する患者は除かれることが好ましい。また臓器障害の結果として血小板数減少症(Thrombocytopenia)が発症することが知られている。本実施の形態における医薬が投与される患者における血小板数は30万/μL未満であれば特に限定されないが、20万/μL未満が好ましく、また15万/μL未満が好ましい。
また、本実施の形態における患者は、Apache(acute physiology and chronic health evaluation)IIスコアが35よりも小さいことが好ましい。また、25以上であることも例示される。
本実施の形態における敗血症患者の血漿検体のINRの値としては、1.4より大きければ特に限定されることはなく、INRが1.4より大きい場合に、1つ以上の臓器障害を有する敗血症患者に対してトロンボモジュリンがより効果的となる。INRの上限としては、2.0以下が例示され、1.9以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.7以下であることがさらに好ましく、1.6以下であることが特に好ましい。1.5以下が好ましい場合もある。また、INR=1.7は除かれることが好ましい場合がある。
なお、「INRが1.4より大きい」は「INR>1.4」と表記されることもある。
本実施の形態において、DICとは、様々な疾患での組織障害によって血管凝固促進物質が大量に流出して凝固系の働きが極度に亢進し、小さな血栓が全身の血管に発生(微小血栓形成)して、小さな血管を詰まらせると共に、それにより出血の制御に必要な血小板や凝固因子が消費されて不足する結果、止血異常を起こす疾患あるいは症候群である。具体的には血管内フィブリン形成により、消費性凝固線溶障害による出血症状や微小血栓形成による臓器不全症状が認められる。DICは、播種性血管内凝固症候群又は汎発性血管内凝固症候群と呼ばれることもある。
DICの臨床症状は基礎病態の種類に応じて様々であるが、DICの診断方法としては出血症状、臓器症状の観察に加え、次に示すいくつかの検査値によりDICスコアをつけ、ある一定以上のスコアに達した場合にDICであると診断することが好ましい。検査値としては、例えば、血中の血小板数、プラスミンにより分解されたフィブリン並びにフィブリノゲン分解産物(以下、FDPと略すことがある)濃度、D-ダイマー濃度、フィブリノゲン濃度、又はプロトロンビン時間等が挙げられる。また、DICスコアをつけず、血小板低下、D-ダイマー、あるいはFDP濃度上昇等からpreDICと診断することもできる(中川雅夫.「播種性血管内凝固(DIC)診断基準の利用に関する調査報告」厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究班, 平成11年度研究報告書.1999: 65-72、出口克巳.「DIC早期治療開始基準に関する試案について」厚生省特定疾患血液凝固異常症調査研究班, 平成11年度研究報告書.1999:73-77、中川克、辻肇.「DIC診断の現状-アンケート調査結果報告」臨床血液.1999;40:362-364)。
また、本実施の形態において、患者血漿検体のINRの値が1.2より大きい、好ましくは1.3より大きい、より好ましくは1.4より大きい敗血症患者を広義のDIC患者と呼ぶことでき、本実施の形態における敗血症の治療及び/又は改善のための医薬は、INRの値が1.4より大きいDICの治療及び/又は改善のための医薬として使用できる場合がある。
本実施の形態における医薬はDICに対しても使用できる場合がある。敗血症は、感染性の重篤な臨床的侵襲によって起こるSIRSとも位置付けられ、感染症を原因疾患とするDICと密接な関係にある。敗血症においてDICを併発することはしばしばあり、そのようなDICを併発した敗血症患者に対しても本実施の形態における医薬が使用できる場合がある。すなわち、本実施の形態における医薬は、DIC又は敗血症のいずれか一方、又は両方を患った患者、又は患っていることが疑われる患者に対して使用することができる場合がある。
本実施の形態におけるINRは、例えば以下のように測定することができる。すなわち、クエン酸ナトリウムを添加して得られた血漿(被検検体)に組織トロンボプラスチン、Ca2+を添加し凝固(フィブリン析出)するまでの時間(PT)を測定し、その秒数で判定し、コントロール検体との相対比(活性率)で評価を行う。活性率は、「被検検体の凝固時間(秒)/コントロール検体の凝固時間(秒)」により求められるが、使用する組織トロンボプラスチンの感度が異なることにより検査実施機関により検査値の格差が生じる。INR値はこのような格差を解消するために考案され、国際感度指数(International sensitivity Index、以下、ISIと略すことがある)で補正したINR値でPTを評価することにより、施設間差をなくし標準的な結果を得ることが出来る。ISIは国際標準試料とどれだけ異なっているかを表示したものである。ISIは各組織トロンボプラスチン試薬ごとに決められ、試薬に添付されている。トロンボプラスチン試薬としては、トロンボレルS(登録商標:シスメックス社製)やトロンボプラスチンC+(登録商標:シスメックス社製)などが例示されるがこれらに限定されるものではない。トロンボレルS(登録商標)ではヒト胎盤トロンボプラスチン(ISI値は1.0に近い)が、トロンボプラスチンC+(登録商標)ではウサギ脳トロンボプラスチン(ISI値は約1.8)が使用されている。
組織トロンボプラスチン試薬にはISIが付与されており、INR値は上記式1の計算式により求められる。
コントロール検体としては、市販の正常ヒトプール血漿であれば特に限定されないが、例えばコージンバイオ(株)社や国際バイオ(株)社から購入可能な市販正常人プールクエン酸Na血漿などを使用することができる。
敗血症の治療は一般に公知文献(Surviving Sepsis Campaign: International guidelines for management of severe sepsis and septic shock: Crit Care Med.2008 36 296-327.、Crit Care Med. 2003 32(3) 1250-56)に基づき、以下のような基礎治療が行われ、トロンボモジュリンと別の薬剤が併用される場合があるが、併用はこれらの薬剤に制限されるものではない。
敗血症性ショックの患者が,中心静脈圧(CVP)が目標値まで上昇した後も低血圧が持続する場合,平均血圧を少なくとも60mmHgまで上昇させるためにドパミンが投与される場合がある。またドパミン用量が20μg/kg/分を超える場合,他の血管収縮薬(通常はノルエピネフリン)が加えられる場合がある。
敗血症の原因菌の治療のため、一般に抗生物質が使用される。抗生物質の選択には,疑わしい原因、臨床状況、微生物の知識とその特定の入院病棟に共通する感受性のパターンに関する知識、および事前の培養検査の結果などに基づいた根拠ある推測が必要である。
敗血症患者での血糖値の徹底した正常化は,重篤な状態の患者において転帰を改善する。
抗生物質の使用にあたっては、血液、体液もしくは創傷部などの検体を調べ、起因菌に有効な薬剤を選択することができる。例えば、原因不明の敗血症ショックなどでは、ゲンタマイシン又はトブラマイシンと第3世代セファロスポリンの併用投与がなされる場合がある。また耐性ブドウ球菌または腸球菌が疑われる場合には、バンコマイシンが追加される。
一般にインスリンの持続静注により、血糖値を80~110mg/dL(4.4~6.1mmol/L)に保つために投与量を調節される。
コルチコステロイド療法は敗血症の治療に効果を示すことから、補充用量にて投与される場合がある。
死亡リスクが高い患者(APACHE II score≧25、sepsisによる多臓器不全、septic shock、sepsisによるARDS)では、禁忌(出血など)のない場合に、組替型活性化プロテインC(rhAPC;ドロトレコギンα)が投与される場合がある。
対象患者は限定されるものの、濃厚赤血球をHb 7.0~9.0g/dLを目標として輸血される場合がある。
敗血症患者で腎不全による赤血球産生障害時には、エリスロポエチン(Erythropoietin(EPO))が投与される場合がある。
重症敗血症では低用量ヘパリンあるいは低分子ヘパリン投与によるDVTの予防投与が行われる場合がある。
本発明の医薬は、担体を含有することができる。本発明で用いることのできる担体としては、水溶性の担体が好ましく、通常は、医薬品の添加剤として許容できる、等張化剤、緩衝化剤、増粘剤、界面活性剤、保存剤、防腐剤、無痛化剤、pH調整剤などが好ましい。例えば、ショ糖、グリセリン等や、その他の無機塩のpH調整剤等を添加剤として加えて調製することができる。さらに必要に応じて、特開平1-6219号公報および特開平6-321805号公報に開示される通り、アミノ酸、塩類、糖質、界面活性剤、アルブミン、ゼラチン等を添加しても良い。これらの添加方法は特に限定されないが、凍結乾燥とする場合には、通常行われるように、例えば、免疫抑制剤、造血器悪性腫瘍治療薬から選ばれる少なくとも1つを含有する溶液とトロンボモジュリン含有溶液を混合した後、添加物を添加混合する方法や、またはあらかじめ添加物を水、注射用蒸留水あるいは適当な緩衝液に溶解した免疫抑制剤、造血器悪性腫瘍治療薬から選ばれる少なくとも1つに混合した後、トロンボモジュリン含有溶液を添加混合にする方法にて溶液を調製し、凍結乾燥する方法が挙げられる。本発明の医薬が各医薬成分を組み合わせてなる医薬である場合には、各医薬は、適宜の製造方法により担体を添加して製造することが好ましい。本発明の医薬としては、注射液の形態で提供されても、また凍結乾燥製剤を使用時に溶解して使用する形態で提供されてもよい。
製剤化工程においては、アンプルまたはバイアルに、0.1~10mgのトロンボモジュリン、注射用水、さらには、添加剤を含有する溶液を、例えば0.5~10mL充填して水溶液注射用製剤として調製できる。また、凍結し減圧下のもとで乾燥して凍結乾燥製剤として調製する方法が例示される。
本発明の医薬は、非経口投与法、例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与などによって投与することが望ましい。また経口投与、直腸内投与、鼻内投与、舌下投与なども可能である。本発明の医薬が各医薬成分を組み合わせてなる医薬である場合には、それぞれの医薬成分は、適宜の投与方法により投与することが好ましい。
静脈内投与の場合、一度に所望の量を投与する方法(静脈内急速投与)または点滴静脈内投与が挙げられる。
一度に所望の量を投与する方法(静脈内急速投与)は投与時間が短い点で好ましい。特に敗血症の患者では急を要している場合も多く、短時間で投与することが好ましい場合がある。一度に投与する場合には、注射器での投与に要する時間に通常幅があるが、投与に要する時間としては、投与する液量にもよるが、5分以下が例示され、3分以下が好ましく、2分以下がより好ましく、1分以下がさらに好ましく、30秒以下が特に好ましい。また下限としては特に限定されないが、1秒以上が好ましく、5秒以上がより好ましく、10秒以上がさらに好ましい。投与量は上記の好ましい投与量であれば特に限定されない。また、点滴静脈内投与はトロンボモジュリンの血中濃度を一定に保つことが容易な点で好ましい。
本発明における医薬の1日の投与量は、患者の年齢、体重、疾患の程度、投与経路などによっても異なるが、一般的にトロンボモジュリンの量として、上限としては20mg/kg以下が好ましく、10mg/kg以下がより好ましく、5mg/kg以下がさらに好ましく、2mg/kg以下が特に好ましく、1mg/kg以下が最も好ましく、下限としては0.001mg/kg以上が好ましく、0.005mg/kg以上がより好ましく、0.01mg/kg以上がさらに好ましく、0.02mg/kg以上が特に好ましく、0.05mg/kg以上が最も好ましい。
静脈内急速投与の場合、上記の好ましい投与量であれば特に限定されないが、1日の投与量の上限としては1mg/kg以下が好ましく、0.5mg/kg以下がより好ましく、0.1mg/kg以下がさらに好ましく、0.08mg/kg以下が特に好ましく、0.06mg/kg以下が最も好ましく、下限としては0.005mg/kg以上が好ましく、0.01mg/kg以上がより好ましく、0.02mg/kg以上がさらに好ましく、0.04mg/kg以上が特に好ましい。
体重が100kgを超える患者に投与する場合には、血液量が体重とは比例せず、体重に対する血液量が相対的に低下するという観点から、6mgの固定用量で投与することが好ましい場合がある。
点滴静脈内投与の場合、上記の好ましい投与量であれば特に限定されないが、1日の投与量の上限としては1mg/kg以下が好ましく、0.5mg/kg以下がより好ましく、0.1mg/kg以下がさらに好ましく、0.08mg/kg以下が特に好ましく、0.06mg/kg以下が最も好ましく、下限としては0.005mg/kg以上が好ましく、0.01mg/kg以上がより好ましく、0.02mg/kg以上がさらに好ましく、0.04mg/kg以上が特に好ましい。
体重が100kgを超える患者に投与する場合には、血液量が体重とは比例せず、体重に対する血液量が相対的に低下するという観点から、6mgの固定用量で投与することが好ましい場合がある。
1日あたり1回または必要に応じて数回投与する。投与間隔は、2日から14日に1回、好ましくは2日から7日に1回、さらに好ましくは3日から5日に1回にとすることも可能である。
[配列表の説明]
配列番号1:TME456の生産に用いた遺伝子がコードするアミノ酸配列
配列番号2:配列番号1のアミノ酸配列をコードする塩基配列
配列番号3:TME456Mの生産に用いた遺伝子がコードするアミノ酸配列
配列番号4:配列番号3のアミノ酸配列をコードする塩基配列
配列番号5:TMD12の生産に用いた遺伝子がコードするアミノ酸配列
配列番号6:配列番号5のアミノ酸配列をコードする塩基配列
配列番号7:TMD12Mの生産に用いた遺伝子がコードするアミノ酸配列
配列番号8:配列番号7のアミノ酸配列をコードする塩基配列
配列番号9:TMD123の生産に用いた遺伝子がコードするアミノ酸配列
配列番号10:配列番号9のアミノ酸配列をコードする塩基配列
配列番号11:TMD123Mの生産に用いた遺伝子がコードするアミノ酸配列
配列番号12:配列番号11のアミノ酸配列をコードする塩基配列
配列番号13:部位特異的変異を行う際に使用する変異用合成DNA
以下、実施例および試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらによって限定されるものではない。
試験例に用いる本発明におけるトロンボモジュリンは、前記山本らの方法(特開昭64-6219号公報に記載の方法)に従って製造した。以下にその製造例を示す。なお、今回の製造例で得られたトロンボモジュリンは、ラットおよびサルを用いた単回および反復静脈内投与試験、マウス生殖試験、局所刺激性試験、安全性薬理試験、ウイルス不活化試験などによりその安全性が確認されている。
[製造例1]
<トロンボモジュリンの取得>
上記の方法、すなわち、配列番号9のアミノ酸配列をコードするDNA(具体的には、配列番号10の塩基配列よりなる)を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションして、この形質転換細胞の培養液より前述した定法の精製法にて、50mmol/L NaClを含む20mmol/Lリン酸塩緩衝液(pH7.3)で活性画分を回収した高純度精製品を取得した。さらに限外濾過膜を用いて濃縮し、11.0mg/mLのトロンボモジュリン(本明細書においてTMD123と略すことがある)溶液を取得した。
<ポリソルベート溶液調製>
ガラスビーカーにポリソルベート80を0.39g量り、注射用水を30mL加えて溶解した。
<薬液調製・充填>
5Lのステンレス製容器に、上記得られたTMD123溶液2239mL(可溶性トロンボモジュリンのたん白質量として24.63gに相当。ただし5%過量仕込み。)を入れた。さらに、上記で得られたポリソルベート溶液を加え、塩化ナトリウム27.9gを加えた。注射用水を600mL加え撹拌した。1mol/L塩酸溶液を添加して、pHを6.0に調整した。さらに注射用水を加えて全量を3940gとして均一に混合撹拌した。この薬液を、孔径が0.22μmのフィルター(ミリポア製MCGL10S)で濾過滅菌した。濾過液を1.1gずつアンプルに充填して、TMD123製剤を得た。
[製造例2]
配列番号11のアミノ酸配列をコードするDNA(具体的には、配列番号12の塩基配列よりなる)を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションして、この形質転換細胞の培養液より前述した定法の精製法にて精製されたトロンボモジュリン(本明細書においてTMD123Mと略すことがある)溶液を取得し、上記と同様の方法によりTMD123M製剤を取得する。
[製造例3]
配列番号1のアミノ酸配列をコードするDNA(具体的には、配列番号2の塩基配列よりなる)を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションして、この形質転換細胞の培養液より前述した定法の精製法にて精製されたトロンボモジュリン(本明細書においてTME456と略すことがある)を取得し、上記と同様の方法によりTME456製剤を取得する。
[製造例4]
配列番号3のアミノ酸配列をコードするDNA(具体的には、配列番号4の塩基配列よりなる)を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションして、この形質転換細胞の培養液より前述した定法の精製法にて精製されたトロンボモジュリン(以下、TME456Mと略すことがある)を取得し、上記と同様の方法によりTME456M製剤を取得する。
[製造例5]
配列番号5のアミノ酸配列をコードするDNA(具体的には、配列番号6の塩基配列よりなる)を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションして、この形質転換細胞の培養液より前述した定法の精製法にて精製されたトロンボモジュリン(本明細書においてTMD12と略すことがある)を取得し、上記と同様の方法によりTMD12製剤を取得する。
[製造例6]
配列番号7のアミノ酸配列をコードするDNA(具体的には、配列番号8の塩基配列よりなる)を、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞にトランスフェクションして、この形質転換細胞の培養液より前述した定法の精製法にて精製されたトロンボモジュリン(以下、TMD12Mと略すことがある)を取得し、上記と同様の方法によりTMD12M製剤を取得する。
[製造例7]プラセボ製剤の調製
<ポリソルベート溶液調製>
ガラスビーカーにポリソルベート80を0.4g量り、注射用水を30mL加えて溶解した。
<薬液調製・充填 >
5Lのステンレス製容器に、注射用水を2000mLを入れた。さらに、上記で得られたポリソルベート溶液を加えた。さらに注射用水を加えて全量を4000gとして均一に混合撹拌した。この薬液を、孔径が0.22μmのフィルター(ミリポア製MCGL10S)で濾過滅菌した。濾過液を1.1gずつアンプルに充填して、プラセボ製剤を得た。
[実施例1]
<試験方法>
製造例1に準じて製造したTMD-123をトロンボモジュリンとして使用し、凝固異常を伴う重症敗血症患者を対象とした無作為二重盲検プラセボ(Placebo)対象の試験を行った。対象患者数は総数816例であり、その内、402例がTMD-123投与群に割り付けされ、414例がプラセボ投与群に割り付けされた。そのうち治験薬が投与された患者が800例(TMD-123投与群395例、プラセボ投与群405例)として試験を実施した。TMD-123は、0.06mg/kgの用量で1日1回、最大6日間連続静脈内急速投与された。プラセボとしては製造例7に準じて製造されたものを用いた。なお、体重100kgを超える患者に対しては、過量投与による副作用発現を抑える目的で、一律6mgの固定用量にて1日1回、6日間連続静脈内急速投与された。
本試験において、凝固異常を伴うとは、1)INR>1.4を示し、かつ、2)血小板数が3万/mmを超過し、15万/mmより小さい、又は、24時間以内に30%を超える血小板数減少を示す、こととした。
治験薬投与前の患者の血漿中INR値は、上記式1に記載の方法により測定した。患者の血小板数は自体慣用の方法により測定した。
本試験において、対象患者は、敗血症に関連する臓器障害a及び/又は臓器障害bを有する者とした。
1)臓器障害a 平均動脈圧65mmHg以上を維持するために十分な輸液負荷と昇圧剤の両方を要する、心血管系機能障害
2)臓器障害b 人工呼吸の急性の必要性を有し、PaO/FiO比が250未満である(ただし、肺が感染部位の場合には、200未満)である、呼吸機能障害
上記心血管系機能障害は、循環器障害と呼ばれる場合がある。また、上記呼吸機能障害は、呼吸器障害と呼ばれる場合がある。
本試験において、24時間以内に前述の凝固異常基準及び前述の臓器障害基準を満たすことが確認できた総数816例は、12時間以内に無作為化され、その無作為化時点から原則4時間以内に初回投与が実施された。その初回投与の際、投与直前時点(Baseline)での血小板数と血漿中INR値等が再測定された(図1)。
なお、前述の「24時間以内に前述の凝固異常基準及び前述の臓器障害基準を満たすことが確認できた」とは、INR値、血小板数、及び臓器障害のいずれかの基準を初めて満たしてから、残る基準全てを満たすことを確認した時点までが24時間以内であることを意味する。また、前述の「12時間以内に無作為化され」とは、前述の凝固異常基準及び前述の臓器障害基準を満たすことを確認した時点から、患者の治験参加同意(Informed Consent:IC)取得、治験コーディネートセンター(Clinical Coordinating Center:CCC)における患者の治験参加の適格性確認、治験登録、及び無作為化が終了した時点までが12時間以内であることを意味する(図1)。
投与開始から28日目の転帰を確認し、主要有効性評価項目として、各患者群の死亡率(Mortality)を算出した。また、TMD-123とプラセボ間の死亡率差をDifferenceとして算出した。
さらに、主要安全性評価項目として、重篤な有害事象(Serious Adverse Events;SAE)、重篤な出血事象(Serious Major Bleeding Event;MBE)及び抗薬物抗体(Anti-Drug-Antibody;ADA)を観察した。
<試験結果>
前述の800例を最大解析対象集団(Full analysis set;FAS)として、最大解析対象集団の有効性及び様々な視点によるその部分集団の有効性を解析した(表1)。
Figure 0007237085000001
Figure 0007237085000002
Figure 0007237085000003
上記表において、「BL INR > 1.4」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるINRが1.4より大きい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL INR ≦ 1.4」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるINRが1.4以下である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL INR > 1.4 かつPLT > 30,000(mm3)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるINRが1.4より大きい患者であってかつ投与直前(Baseline)時点における血小板数が30,000(mm)より大きい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL INR ≦ 1.4 及び/又はPLT ≦ 30,000(mm3)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるINRが1.4以下である及び/又は投与直前(Baseline)時点における血小板数が30,000(mm)以下である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「TAT ≧ 10(ng/mL)」とは、最大解析対象集団のうち、トロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)が10ng/mL以上である患者から形成される集団を意味する。
なお上記表における「TAT」が、投与直前(Baseline)時点におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の測定値を意味することは説明するまでもない。
上記表において、「BL F1+2≧ 250 (pmol/L)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)が250pmol/L以上である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL F1+2> 229 (pmol/L)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)におけるプロトロンビンフラグメント1+2(PROTHROMBIN FRAGMENT 1+2:F1+2)が229pmol/Lより大きい患者から形成される集団を意味する。
「BL AT III< 70%」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)におけるアンチトロンビンIII(antithrombin III:AT III)が70%より小さい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL MP> 10(nm)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)におけるマイクロパーティクル(microparticle)が10nmより大きい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL プロテインC ≦ 40%」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるプロテインCが40%以下である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL プロテインC > 40%」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるプロテインCが40%より大きい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL APACHE IIスコア≧25」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるAPACHE IIスコアが25以上である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL APACHE IIスコア<25」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるAPACHE IIスコアが25よりも小さい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL APACHE IIスコア≧35」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるAPACHE IIスコアが35以上である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL APACHE IIスコア<35」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるAPACHE IIスコアが35よりも小さい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL 臓器障害の数」とは、最大解析対象集団の患者が、投与直前(Baseline)時点において有する臓器障害の数を意味する。
上記表において、「1≦BL 臓器障害の数 ≦3」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点において有する臓器障害の数が1以上3以下である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL INR > 1.4 かつPLT > 30,000(mm3)かつ1≦BL 臓器障害の数 ≦3」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるINRが1.4より大きく、かつ投与直前(Baseline)時点における血小板数が30,000(mm)より大きく、かつ投与直前(Baseline)時点において有する臓器障害の数が1以上3以下である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL 動脈血乳酸 ≦ 6 (mmol/L)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)における動脈血乳酸が6mmol/L以下である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL 動脈血乳酸 > 6 (mmol/L)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)における動脈血乳酸が6mmol/Lより大きい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL 血清クレアチニン < 2 (mg/dL)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)における血清クレアチニンが2mg/dLより小さい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL 血清クレアチニン ≧2 (mg/dL)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)における血清クレアチニンが2mg/dL以上である患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「糖尿病罹患者」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)において、糖尿病を併発している患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「糖尿病非罹患者」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)において、糖尿病を併発していない患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「ヘパリン使用者」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)において、低用量ヘパリンが使用されている患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「ヘパリン非使用者」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)において、低用量ヘパリンが使用されていない患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「4回以上の投与」とは、最大解析対象集団のうち、治験薬(TMD-123またはプラセボ)を4回またはそれ以上(すなわち、4~6回)投与された患者で形成される集団を意味する。
なお、上記表における「4回以上の投与」が「少なくとも連続する4日間にわたっての投与」を意味することは、説明するまでもない。
上記表において、「BL INR > 1.4 かつ4回以上の投与」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるINRが1.4より大きい患者であってかつ治験薬(TMD-123またはプラセボ)を4回またはそれ以上(すなわち、4~6回)投与された患者で形成される集団を意味する。
上記表において、「BL INR > 1.4、4回以上の投与 かつPLT > 30,000(mm3)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)時点におけるINRが1.4より大きい患者であって、治験薬(TMD-123またはプラセボ)を4回またはそれ以上(すなわち、4~6回)投与され、かつ、投与直前(Baseline)時点における血小板数が30,000(mm)より大きい患者から形成される集団を意味する。
上記表において、「BL D-ダイマー≧3,500(ng/mL)」とは、最大解析対象集団のうち、投与直前(Baseline)におけるD-ダイマーが3,500ng/mL以上である患者から形成される集団を意味する。
前述の「BL INR > 1.4 かつPLT > 30,000(mm3)」(634症例)において、投与直前(Baseline)時点から初回投与時までの経過時間(表2の最も左の欄)、その経過時間内に治験薬を投与された患者群が示した有効性(表2の最も右の欄)等を表に纏めた(表2)。
Figure 0007237085000004
最大解析対象集団(800例)において、24時間以内の凝固異常基準及び前述の臓器障害基準を満たすことが確認できた時点(初回測定時)から、投与直前(Baseline)時点(再測定時点)までの経過が患者の血漿中INR値に与える影響を以下の表に纏めた(表3)。
Figure 0007237085000005
最大解析対象集団(800例)において、24時間以内の凝固異常基準及び前述の臓器障害基準を満たすことが確認できた時点(初回測定時)から、投与直前(Baseline)時点(再測定時点)までの経過が患者の血小板数に与える影響を以下の表に纏めた(表4)。
Figure 0007237085000006
血小板数はその測定時から24時間以内であれば凝固異常性の観点において大きな変動が認められなかった。また、INR>1.4を示す患者は、その測定から24時間以内であればその70%以上がINR>1.4を維持する(凝固異常の維持)ことが明らかとなった。
前述の通り、患者の血小板数と血漿中INR値の測定値が前記条件(INR>1.4かつ血小板数>30,000(mm))を充足することを確認した後、遅くとも24時間以内に投与を開始することが高い有効性を獲得するために好ましいと考えられるが、その理由の1つとして24時間以内であれば概ね凝固異常性が維持されているであろうことを上記の2つの表は示唆している。
また、治験薬が投与された全患者800例と前述の「BL INR > 1.4 かつPLT > 30,000(mm3)」(634症例)において、重篤な重大出血事象の発現率に大きな差はなく、また、プラセボ群との間にも大きな差は認められなかった。
なお、本発明で規定しているSofaスコアは、一般的なSofaスコアの算出方法ではなく、Glasgow Coma Scaleの評価を除く5臓器(呼吸器、循環器、肝臓、腎臓、凝固)の評価より算出されたスコアであり、スコアの範囲は0~20である。また、呼吸器および循環器のSofaスコアは、以下の基準に従って評価した暫定値を用いた。
呼吸器:P/F比が欠測している患者では、人工呼吸管理がある場合は3点、ない場合は0点とした。
循環器:臨床試験で設定した循環器の選択基準を満たした患者<1>は3点、「Dobutamine」または「>5 ug/kg/minと特定されていないDopamine」が投与されている患者<2>は2点とした。<1>および<2>に合致しないが、適格性確認時の平均血圧が70mmHg未満の患者<3>は1点、<1>から<3>のいずれにも該当しない患者は0点とした。
なお、本発明で規定しているAPACHE(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation) IIスコアは、集中治療室入室患者における病態の重症度を評価するためのスコアリングシステムであり、12の生理学的指標、年齢および合併する慢性疾患に対する評価に与えられるスコアの総和として求められるものである。スコアが高いほど重症度は高いと判定され、スコアの範囲は0~71である。
本発明のトロンボモジュリンを含有する医薬は、凝固異常を伴うる敗血症を効果的に治療及び/又は改善することができる医薬として有用である。

Claims (2)

  1. トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、トロンボモジュリンの投与開始時点から遡って4時間以内におけるトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT)の値が10ng/mL以上である該患者に投与されるための医薬。
  2. トロンボモジュリンを有効成分として含む敗血症患者の治療及び/又は改善のための医薬であって、トロンボモジュリンの投与開始時点から遡って4時間以内におけるプロテインC活性値が40%以下である該患者に投与されるための医薬。
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