明細書 翼付多層円板ファ ン 技術分野 本発明は、 静粛運転を保持しながら、 十分な風量を安定的に 得られる翼付多層円板ファンに関する。 背景技術 従来、 静粛運転可能なファ ンの一形態として、 実開昭 54-896 02号公報に記載されている翼付多層円板ファ ン Xがある。
かかる翼付多層円扳ファン Xは、 図 25及び図 26に示すように 、 実質的に、 ファ ンケーシング 110 の一端側に電動モータ 100 によって駆動されるファンブレード 101 を配設している。
そして、 罨動モータ 100 の駆動によってファンブレード 101 を回転して、 空気流を発生して、 空気を空気出口 140 から送出 することできる。
また、 ファンブレード 101 は、 図 25に示すように、 多数の薄 い環状円板 104 を所定の間隔を開けて積層して構成しているの で、 環状円板 104 を回転させることによってその表面に円周方 向のせん断力が発生する。 その力が遠心力となって作用し、 そ
の結果空気流が発生し、 ファ ンの運転を静粛に行うことができ る。
また、 環状円板 104 間に所定の間隔を設けるとともに、 内周 側から外周側へ空気を円滑に流し、 ファ ン風量を増大するため 、 図 25及び図 26に示すように、 スぺーサ一としても機能する複 数の弧状の翼 105 を、 環状円板 104 間に、 所要円周方向ピッチ で介設している。
しかし、 かかる翼付多層円板ファン Xは、 未だ、 以下の解決 すべき課題を有していた。
即ち、 図 26から明らかなように、 翼 105 は全て、 その外周方 商先端 (翼出口部先端) を、 環状円板 104 の外周緣部まで伸延 している。 そのため、 環状円板 104 の出口では、 図 26及び図 27 に示すように、 円周方向に大きな速度歪みが生じ、 この速度歪 によりケーシングの舌部付近の圧力が周期的に変動し、 いわゆ る回転騒音が発生していた。
さらに、 舌部以外でも、 この大ぎな速度歪の均一化の過程で 環状円板 104 の外周緣に乱れが生じ、 乱流騒音が発生していた また、 環状円板 104, 104 間を流れる空気流 106 のうち、 翼 10 5後方の空気部分が剝離し、 剝離域 108 が形成され、 この剝離 の影響により円板外周緣に乱流域 107 が生じ、 乱流騒音が発生 していた。
一方、 翼 105 は、 図 26から明らかなように、 その内周方向先
端 (翼入口部先端) も、 環状円板 104 の内周縁部まで伸延して いる。
そのため、 ①図 26の翼表面での速度の絶対値の分布 111 に示 すように、 翼 105 の内側先端サクシヨ ン面での減速比が大きい 、 ②図 28で示すように、 環状円板 104, 104 間への入口部での減 速比が大きいことにより、 翼 105 の内側先端サクシヨ ン面での 剥離が生じていた。 また環状円板の入口部での円周方向に対す る速度歪があった場合、 翼への流入角度が一定せず、 これも剝 離の原因となっていた。 これらの結果、 環状円板 104 の内周部 での乱流騒音も大きなものとしている。
本発明は、 上記した課題を解決することができ、 運転の静粛 性を維持しながら、 風量の增大を可及的に図ることができる翼 付多層円板ファンを提供することを目的とする。 発明の開示 本発明は、 互いに一定の間隔を保持した多数の環状円板を積 層することによって形成した翼付多層円板ファンにおいて、 環 状円板間に多数の翼を介設し、 同翼の外周方向先端を、 環状円 板の外周縁より内倒に位置するように構成してなる翼付多層円 板ファンに係るものである。
本発明は、 また、 互いに一定の間隙を保持した多数の環状円 板を積層することによって形成した翼付多層円板ファンにおい
て、 環状円板間に多数の翼を介設し、 同翼の内周方向先端を、 環状円板の内周緣ょり一定の距離だけ外側に位置するように構 成してなる翼付多層円板ファンに係るものである。
本発明は、 また、 互いに一定の間隙を保持した多数の環状円 板を積層することによって形成した翼付多層円板ファンにおい て、 環状円板間に、 多数の翼を介設し、 同翼の外周方向先端を 、 環状円板の外周緣ょり一定の距離だけ内側に位置するように 構成するとともに、 同翼の内周方向先端を、 環状円板の内周緣 より一定の間隙だけ外側に位置するように構成してなる翼付多 層円板ファンに係るものである。
さらに、 本発明は、 翼付多層円板ファンを、 以下の構成とし たことにも特徴を有する。
① 翼の環状円板の外周緣より内側に位置させた距離 を、 以下の式で表される値としている。
式中、
ί: 翼間ピッチ (mm)
Vu , : 翼外側先端半径における流体の接線方向速度 On/s) Vr , : 翼外側先端半径における流体の半径方向速度 On/s)
② 翼の環状円板の内周緣より外側に位置させた距離 Szを、 環状円板の翼内側端半径 r2との閬係において、 0. 025 < S2/r 2 < 0. 125としている。
③ 翼の取付方向を後向き翼としている。
④ 翼の最内端と最外端とを結ぶ線 , L2と、 環状円板間を 流れる流体の相対速度における周方向速度及び半径方向速度よ り求めた流体の軌跡 Rと力 翼の内側先端でなす角度 、 すな わち迎角を、 20° ±15。 としている。
⑤ 翼間の円周方向ピッチ角 oと、 翼の最内端と最外端とを 環状円板の中心と結んで形成した線 , のなす角/?との閩係 を、 0.5 < β /な < 1としている。
⑥ 環状円板間の間隙 5を、 以下の式で表される値としてい る。
6
0.8 < < 4.0
% ( V I ω) ζ
式中、
V -動粘性係数 0»2/s)
6> =角½度 (rad/s)
⑦ 環状円板間の間隙 を、 以下の式で表される値としてい る。
ω , · δ
200 < ( =Re ) く 3000
V
式中、 2 · π · rz · n
u =環状円板 (24)の内周速度 = ( m/s)
60
ω, -空気と環状円板との入口部相対速度(m/s)
V -動粘性係数 (m2/s)
Re-レイ ノルズ数
図面の簡単な説明
図 1は本究明に係る翼付多層円板ファンを温風ファンとして 用いた場合の実施例 1に係る翼付多層円板ファンの斜視図、 図 2は同断面側面図、 図 3は図 2の I— I線による横断面図、 図 4は環状円板の斜視図、 図 5は翼の斜視図、 図 6は環状円板の 外周緣における空気流の流速を示す説明図、 図 7は翼付多層円 板ファンの比騒音値を示すグラフ、 図 8は実施例 2に係る翼付 多層円板ファンの断面正面図、 図 9は翼付多層円板ファンの比 騒音値を示すグラフ、 図 1 0は実施例 3に係る翼付多層円板フ アンの断面正面図、 図 1 1は実施例 4に係る翼付多層円板ファ ンにおける適切な翼の後方迎角を示す説明図、 図 1 2は不適切 な翼の後方迎角を示す説明図、 図 1 3は不適切な翼の後方迎角 を示す説明図、 図 1 4は迎角と比騒音との関係を示すグラフ、 図 1 5は不適切な翼の後方迎角を示す説明図、 図 1 6は無傾斜 角度の翼を具備する翼付多層円板ファンの説明図、 図 1 7は後 方迎角を有する翼の変容例の説明図、 図 1 8は後方迎角を有す る翼の変容例の説明図、 図 1 9は実施例 5に係る翼付多層円板 ファンの要部拡大説明図、 図 2 0は翼の円周ピッチと翼取付角 との比及び比騒音の関係を示すグラフ、 図 2 1は実施例 6に係 る円周速度等と比騒音の関係を示すグラフ、 図 2 2は実施例 7 に係る環状円板間の間隙を流れる空気流の説明図、 図 2 3は空 気流の流れを示す説明図、 図 2 4はレイノルズ数と比騒音との 閬係を示すグラフ、 図 2 5は従来の多層円板ファンの断面側面
図、 図 2 6は図 25の I I - I I線による断面図、 図 2 7は環状円板 上の空気流の流れを示す説明図、 図 2 8は環状円板間の空気流 の速度分布を示す説明図である。 発明を実施するための最良の形態 以下、 添付図に示す幾つかの実施例に基づいて、 本発明に係 る翼付多層円板ファ ン Aを具体的に説明する。
(実施例 1 )
本実施例は、 図 1〜図 6を参照して、 以下に説明するように 、 翼 25の外側端を、 環状円板 24の外周緣より距離 S ,だけ内側に 位置するように構成してなる翼付多層円板ファン Aに係るもの である。 なお、 本実施例は、 翼付多層円板ファン Aを、 温風フ ァンとして用いた場合である。
図 1〜図 3に示すように、 翼付多層円板ファン Aのファンケ 一シング 13は、 略円形の前壁 10と後壁 11の周縁同士を、 下端開 口部 (温風吹出口) 40 を除いて、 環状周壁 12によって連結する ことによって形成されている。
かかるファンケーシング 13は、 本実施例では、 支持フレーム 14を介して、 モータケ一シング 15に固定されている。
ファ ンケーシング 13は、 前壁 10に空気取込口 10a を具備する とともに、 その内部に、 同心円的にファ ンブレード 20を配設し
ており、 同ファンブレード 20は、 支持フレーム 14内に配設した 駆動モータ 21の出力蚰 22に連結されている。
また、 ファンケーシング 13の下方には、 ニクロム線等からな るヒーター 39が配設されている。
上記基本構成において、 本発明は、 静粛運転が可能なファン ブレード 20の構成に特徴を有する。
即ち、 図 2、 図 4及び図 5に示すように、 ファンブレード 20 は、 実質的に、 基礎円板 23上に、 多数の薄肉の環状円板 24を、 多数の翼 25を介して一定の間隙 を開けた状態で、 層状に積層 することによって構成している。
なお、 一定の間隙 とは、 間隙 が等しい場合のみならず、 等しくない場合も含む。
環状円板 24は、 図 3に示すようにドーナツッ形状を有してお り、 一定円周ピッチで、 後述する連結ビン 26を揷通するための 挿通孔 27を設けている。
なお、 一定円周ピッチとは、 ピッチが等しい場合のみならず 、 等しくない場合も含む。
—方、 翼 25は、 図 5に示すように、 薄肉の弧状片からなり、 その中央部に連結ピン 26を挿通するための揷通孔 28を設けてい る。
そして、 図 2に示すファンブレード 20の組立に際しては、 基 礎円板 23上に多数の環状円板 24と翼 25とを、 それぞれの揷通孔 27, 28 に連結ピン 26を挿通することによって、 交互に積層し、
その後、 連結ビン 26の挿通端を最終の環状円板 24の表面にかし めることによって、 ファンブレード 20を組み立てることができ る。 さらに、 本実施例では、 図 3から最も明らかなように、 全 ての翼 25の外側先端部 25a を、 環状円板 24の外周緣から一定距 離 S ,だけ内側に位置させている。
このようにすることによって、 ファンブレード 20を回転した 際、 空気は多層の環状円板 24の内部に形成された中央空間 Cか ら環状円板 24, 24 間の空気流路 30を通してファンブレード 20の 外部へ放射状に流れ、 その後、 環状円板 24から外部に放出され ることになる。 その際、 環状円板 24, 24 間に生じた翼 25後方の 剝離による乱れ 31を回転する環状円板 24の壁面による粘性の影 響により抑えることができ、 乱流 31及びそれに起因する乱流騒 音の発生を確実に防止することができる。
また、 外周縁までの一定距離 S ,間で面転する環状円板 24の壁 面せん断力の影響により隣合う翼外側先端間に生じた速度歪は 図 6に示すように緩和され、 円板出口ではほぼ均一化される。 そのため舌部付近の圧力変動はなくなり、 干涉騒音が低減され るとともに、 速度歪による乱流騒音の発生も防止することがで きる。
さらに、 舌部や吹出し部等円板外部の影響により、 翼列内部 の流れが周期的に変わり、 圧力低下や失速の原因になることが あるが、 翼 25の外側先端部を、 環状円板 24の外周縁から一定距 離 S ,だけ内側に位置させることにより翼出口での境界条件が安
定し、 翼から流れ出る流体の角度が常に一定となり安定した運 転が可能である。
ところで、 上記した翼 25の外側先端部 25a から環状円板 24の 外周縁までの距離 は、 本出願人が行った実験によれば、 以下 の式で表される値とすることが好ましいことが判明した。
ί: 翼間ピッチ (mm)
Vu,: 翼外側先端半径における流体の接線方向速度 (m/s) VrI : 翼外側先端半径における流体の半径方向速度 (m/s)
ここで、 翼間ピッチ £, 流体の接線方向速度 V
Ul 及び半径方 向達度 は、 それぞれ、 以下の式で求めることができる。
式中、
ri : 翼外側先端半径 (mra)
Z : 翼枚数
Vu, A
一 ( 1 )
12π R2 12ττ
J /A
x e (3)
式中、
u ,: 翼外側先端半径における環状円板 24の周速度 (m/s)
= 2 Tr r.n / 60
η : 環状円板 24の回転数 (rpm)
A: 無次元流量 (= q ノ ri z)
q: 2枚の環状円板間を流れる空気流量 (m3/s) δ : 2枚の環状円板間の間隙 (tn)
V: 動粘性係数 (m2/s)
: 環状円板入口の半径 (m)
R ; r,/ ri
q
Vr, = (4)
2 TL X, - δ
上記した基本式(1) において、 (S,/^ ) は、 図 6に示すよ うに、 距離 S,による流速分布の緩和に閬係する値であり、 ( V u,/ VrJ は接線方向速度による空気の混合効果である。
ところで、 図 7に、 上記した (S,/£ ) · ( Vu,/ Vr,) " 3 を横釉に、 比騒音値 ks (dB(A)) を縦軸にとった場合のダラ フを示す。
なお、 比騒音 ks は、 ks = Lsp-10 log QP2で求められる 値である。
ただし、
Q:送風機の風量 〔m3/s:
P :送風機の圧力へッ ド 〔翻 Ag〕
LSP:送風機の音圧レベル 〔dB(A) 〕 同グラフから明らかなように、 0.3 < H) · ( Vu,/
Vr,) 1/3 <1.2 の場合に、 比騒音 ks は低減されており、 特 に、 0.5 < i /SL) · ( Vui/ Vr, ) 1/3 <1.0 とした場 合に、 比騒音 ks は低滅された。
この結果から: 距離 は翼間ピッチ 、 翼外側先端半径にお ける流体の接線方向速度 VUl および半径方向速度 , によって 関係づけられ、 翼間ピツチ に対しては小さい方が好ましく、 また Vri に対して V'Ul が大きい方が好ましい。
しかし、 S,を大きくとりすぎると、 翼弦長が短くなつてしま うため、 翼による仕事が少なくなり性能が低下し、 結果的に比 騒音が大きくなつてしまう。 その結果関係式において最適範囲 が存在する。
以下、 図 2及び図 3を参照して、 上記構成を具備する翼付多 層円扳ファン Aを、 温風ファンとして用いた場合の作動につい て説明する。 '
まず、 使用者が図示しない作動スィツチを押すと、 ファン駆 動モータ 21とヒーター 39が作動する。
ファン駆動モータ 21の駆動によってファンブレード 20が回転 し、 ファ ンケーシング 10内に空気取込口 10a を通して外部から 空気を吸引し、 同空気を、 ファ ンブレード 20を構成する多層構
成円板 24, 24 間の間隙を通して、 入口側から奥部側まで略等し い風量分布で通過させ、 その後、 下方空気流を発生し、 ヒータ 一 39で加熱した後、 温風吹出口 40から外部に温風を吹き出し、 手を乾燥する。
また、 上記ファ ンブレード 20の回転において、 翼 25の外側端 25a は、 環状円板 24の外周縁 24a から一定距離 S ,だけ内側に位 置させているので、 翼 25の先端付近において、 剥離によって生 じる乱流を効果的に抑止することができ、 しかも、 環状円板 24 の外周緣 24a での出口速度歪がないので、 乱流騒音及び干渉騒 音が低滅でき、 静粛な運転が可能となる。
(実施例 2 ) 本実施例に係る翼付多層円板ファン Aは、 図 8に示すように 、 実質的に、 実施例 1に係る翼付多層円板ファ ン Aと同じ構成 を有している。 即ち、 翼付多層円板ファ ン Aを、 互いに一定の 間隙 を保持した多数の環状円板 24を積層することによって形 成している。 従って、 図 8において、 実施例 1に係る翼付多層 円板ファ ン Aと同一構成又は部材は同一の符合で示す。
但し、 本実施例では、 実施例 1と異なり、 図 8に示すように 、 環状円板 24, 24 の内周緣側のみに、 剥離による乱流防止を図 つている。
即ち、 環状円板 24,24 間に介設した多数の翼 25の内周方向先
端 25b のみを、 環状円板 24の内周緣 24b より一定の距離 S2だけ 外側に位置するように構成している。
このようにすることによって、 環状円板 24の内周緣側に生じ やすい、 剥離による乱流騒音を効果的に抑制することができる とともに、 環状円板 24の入口部での円周方向に対する速度歪が あった場合でも、 翼までの一定の距離 Szの間で速度分布を均一 化するため、 翼への流入角が一定となり、 別離の生じない安定 した静粛な運転ができる。
ところで、 上記した翼 25の内側先端部 25b から環状円板 24の 内周緣 24b までの距離 S2は、 本出願人が行った実験によれば、 以下の式で表される値とすることが好ましいことが判明した。
0.025 < S2 / r2 < 0.125 ( 5 ) 式中、
Τ ζ : 翼内側先端半径 (,) 即ち、 下表 (表 1 ) に、 翼 25の内側先端部 25b から環状円板 24の内周縁までの距離 S2 (mm)と、 翼内側先端半径 r2 (MM) とを それぞれ異ならせて測定した実験結果である比騒音値 ks を示 すととともに、 図 9に、 上記した (S2 I r2) を横軸に、 比騒音 値 ks (dB (A) ) を縦軸にとった場合のグラフを示す。
なお、 比騒音 ks は、 実施例 1と同様に、. ks = L S P- 10 log QP2 で求められる値である。
表 1
上記した表及び図 9に示すグラフから明らかなように、 0.02 5 < ( S
2/r
2 ) く 0. 125の場合に、 比騒音 k
s は低減されてお り、 特に、 0.05 < ( S
2/r
2 ) < 0. 10 とした場合に、 比騒音 k
s を効果的に低滅することが判明した。
なお、 騒音に関しては、 翼内側先端半径 r2に対して、 翼 25の 内側先端部 25b から環状円板 24の内周縁までの距離 Szを大きく とる方が好ましいが、 同距離 S2をあまり大きくとりすぎると翼 25の弦長が短くなつてしまうため、 翼 25による仕事が少なくな り、 性能が低下し、 結果的に比騒音 ks が大きくなつてしまう 。 その結果、 S2/r2 には上述した最適範囲が存在することにな る。
(実施例 3 )
本実施例に係る翼付多層円板ファン Aも、 図 10に示すように 、 実質的に、 実施例 1に係る翼付多層円板ファ ン Aと同じ構成 を有している。 即ち、 翼付多層円板ファ ン Aを、 互いに一定の 間隙 ίを保持した多数の環状円板 24を積層することによって形 成している。 従って、 図 8において、 実施例 1に係る翼付多層 円板ファ ン Αと同一構成又は部材は同一の符合で示す。
但し、 本実施例では、 実施例 1と異なり、 図 10に示すように 、 環状円板 24, 24 の内周緣側のみならず、 外周緣側においても 速度歪みおよび剥離による乱流騒音 ·回転騒音防止を図ってい る。
即ち、 環状円板 24, 24 間に介設した多数の翼 25の外側方向先 端 25a を環状円板 24の外周緣 24a より距離 だけ内側に位置す るように構成するとともに、 同翼 25の内側方向先端 25b も、 環 状円板 24の内周緣 24b より一定の距離 S2だけ外側に位置するよ うに構成している e
かかる構成とすることによって、 環状円扳 25の内外周縁側に 生じやすい、 速度歪みおよび剥離による乱流騒音 ·干渉騒音を 効果的に抑制することができる。
(実施例 4 ) 本実施例は、 多数の翼 25を具備する翼付多層円板ファン Aに おいて、 翼 25の環状円板 24上の取付角度に着目して、 翼付多層
円板ファン Aの運転の静粛化を図ったものである。
以下、 図 2 , 図 3及び図 11〜図 15を参照して、 本実施例を具 体的に説明する。 図 2及び図 3に示すように、 翼付多層円板フ ァン Aにおいては、 同ファン Aを回転した際、 空気は、 環状円 板 24を多層に積層して形成したファンブレード 20の中央部に形 成された中央空間 Cから各環状円板 24 , 24 間に形成される空気 流路を通り、 環状円板 24の全面にわたって外方向へ放射状に流 れ、 その後、 ヒーター Hで加熱された後、 翼付多層円板ファ ン Aの温風吹出口 40から外部に円滑に放出されることになる。 そ して、 かかる空気の流れにおいて、 空気の外部への放出は、 翼 25によりさらに促進されることになる。
ところで、 この翼 25は、 図 11に示すように、 それぞれ、 その 外側方向先端 25a を、 環状円板 24の酒転方向と反対方向に後退 させた後退翼としている。
翼 25を後退翼としたのは、 翼 25を図 15に示すような前向き翼 や、 図 16に示すような半径方向翼にした場合は、 翼部分の流体 は環状円板 24の周速と同じか、 それ以上の接線方向速度をもつ て流れるが、 流体が翼から出ると、 環状円板 24の壁面摩擦によ つて逆に滅速されロスを生じるからである。
これに対して、 図 11に示すように、 翼 25を後退翼とした場合 は、 環状円板 24と流体との剪断力によって生じる遠心力だけで なく、 翼 25による仕事によって送風力を増し、 しかも、 乱れを 極力生じさせずに送風できるからである。
また、 本出願人は、 この翼 25の後退角度、 即ち、 環状円板 24 への取付角度 0を、 環状円板 24, 24 間に形成される空気流路を 流れる空気の軌跡 Rに対して、 一定の値とした場合に、 翼付多 層円板ファン Aの運転の静粛化を効果的に向上できることを知 見した。
即ち、 環状円板 24, 24 間を流れる空気の軌跡 Rと、 翼 25の外 側方向先端部 25a と内側方向先端部 25b とを結ぶ線しとが、 各 環状円板 24の入口側でなす取付角度 を 20° ± 15° に設定した 場合に、 十分な風量を確保しながら、 静粛化を図れることが実 験的にわかった c
取付角度 を 20° ± 15° に設定したのは、 以下の理由による 。 即ち、 図 12に示すように取付角度 0を最大角 35 より大きく した場合、 サクシヨ ン面 k3に空気の剝離による渦の発生等、 流 れに乱れが見られ、 送風音が著しく大きくなつたり、 失速によ り性能が不安定になり、 騒音が著しく大きくなる。 一方、 図 13 に示すように、 取付角度 を最小角 5 より小さくした場合、 翼による仕事がほとんどなくなったり、 逆に翼が風の流れの抵 抗になったりして性能が低下し、 結果として比騒音が大きくな る。
なお、 空気流路を流れる空気の軌跡 Rは、 以下の要領で容易 に求めることができる c
まず、 以下の式 (6 ) ( 7 ) より、 翼付多層円板ファン Aのフ rンマ'レード 20を回転した場合における環状円板 24 , 24 間を流
れる空気の相対速度における周方向速度 (Vu— U) 及び半径方 向速度 Vr を求める。
[周方向速度 (Vu— U) ]
= 1 一 + ( 1)
12 π (r/ri )z 12 π (τ/η )2
X e 125t - °- <r/ri) /A (6) 上式(6) で求めた Vuから周方向速度(Vu — U) を求める。
[半径方向速度 Vr 」
ベルヌーィの連続の式より、
Vr = q/2 π r 5 ( 7 )
上記した式 ( 6 ) ( 7 ) より、 環状円板 24上の一点における Δ t秒後の空気の位置は、 x = x。 +A t Vr , y = y。 +厶 t ( Vu · U) として求められる。 なお、 Δ t ^ 0である。 そして、 このようにして求めた位置を連続して結ぶことによ つて軌跡 Rを容易に求めることができる。
上記した式中、
A 無次元流量 ( = q 6 D / V r i 2)
任意半径における空気の周方向速度 mZs
Vr 任意半径における空気の半径方向速度 m/ s U 任意半径における円板の周速度 mZs
δ : 2枚の環状円板間の間隙 m
q : 2枚の環状円板間を流れる空気流量 m 3 / s r :任意半径 m
r i :環状円板入口の半径 m
:動粘性係数 mz / s
:粘性係数 kgs / m z ところで、 下表 (表 2) に、 取付角度 (迎角) 0をそれぞれ 異ならせて測定した比騒音値 ks を縦軸にとった場合のグラフ を図 14に示す。
表 2
ί
迎角 比騒音 ks
5° 42.5
10.5° 42
27.5。 42
35。 42.5
45c 47
上記した表 2及び図 14に示すグラフから明らかなように、 5 ° く Θく 35° の場合に比騒音は低滅されており、 特に 10.5° く Θ < 27.5 c とした場合に比騒音 ks を効果的に低滅するこ とができた。
なお、 上記したように、 本実施例は、 図 11に示すように、 翼 25を後退翼とするとともに、 迎角 0を 20° ±15° にしたことを 特徴とするものがある力、 翼 25の形状及び配列は、 図 11に示す ものに何ら限定されるものではなく、 例えば、 図 17及び図 18に 示すような翼 25を具備する多層円板ファン Aとすることもでき る。
即ち、 図 17は、 翼 25の形状を完全に直線状にしたものであり 、 図 18は、 翼 25の形状に僅かに曲率を設けたものである。
(実施例 5 ) 本実施例は、 図 19に示すように、 翼 25,25 間の円周方向ビッ チ角 と、 翼 25の最内端と最外端とを環状円板 24の中心と結ん で形成した線 L3, のなす角 との関係を、 0.5 < β/α< 1 としている。
なお、 翼 25, 25 間の円周方向ピッチ角 orを、 0.5 < β/α< 1に設定したのは以下の理由による。
即ち、 β/αを Q.5 より小さく した場合、 つまり翼 25, 25 間 の円周方向ピッチ角を^ 0.5 より大きく した場合、 下表 (表
3 ) 及び図 20のグラフに示すように、 翼 25,25 による仕事の低 下により、 風量 ·風圧が減少するとともに、 翼 25の外側先端間 の速度歪みが大きくなり、 乱流騒音 ·干渉騒音が増大する。 ま た、 β / αを 1より大きくした場合、 即ち、 翼 25, 25 間の円周 方向ピッチ角を より小さく した場合は、 翼 25, 25 間を流れる 空気流の通路が狭められ、 通路圧損が大きくなるため、 風量 - 風圧が極端に滅少するからである。 従って、 最適範囲が存在す る。 表 3
(実施例 6 ) 本実施例は、 多数の翼 25を具備する翼付多層円板ファン Αに おいて、 環状円板 24,24 間の間隙 <Jを空気の動粘性係数と環状 円板 24の角速度との閬係を適切な比率とすることによって、 翼 付多層円板ファン Aの運転の静粛化を図ったものである。 即ち 、 翼なし多層円板ファ ンにおいては、 Bre i ter らは、 環状円板 間の最適すきまを、
6
= 1 ( 8 )
π ( ν I ω) 1 /ζ 式中、
ν =動粘性係数 (mz/s)
ω =角速度 (rad/s)
で与えている。 本出願人は、 翼枚数を、 Z≥ 8に設定した条件下で、 翼付多 層円板ファン Aにおける上記式の妥当性を調べるため実験を行 い、 図 21のグラフに示す実験結果を得た。
かかるグラフから明らかなように、 翼付多層円板ファン Aに おいては、 δ /π ( / ω) ,/ζ を 0.8〜4.0 の範囲、 好まし くは、 1.2 〜 3.0とすることによって、 比騒音値を著しく低滅 することができた。
このように、 多数の翼 25を環状円板 24に付けたことにより、 環状円板 24, 24 間の最適間隙 が大きくなつたのは、 間隙 を 開けることにより、 翼 25がより効率よく仕事をするため、 空力 性能が向上し、 その結果、 比騒音 ks が減少したものと思われ る。 また、 間隙 を開けすぎると円板による層流効果が失われ て騒音が大きくなる。 従って最適範囲が存在する。
(実施例 7 )
本実施例は、 空気のレイノルズ数 Reに着目して、 多層円板フ
ァン Aにおける環状円板 24,24 間の間隙 を決定することを特 徴とする。
シロッコファン等では、 翼部で流体の流れに渦が発生しやす いが、 多層円板ファ ン Aでは、 多数の環状円板 24を積層するこ とによって、 その渦が乱れを抑制することができる。
し力、し、 図 22 (a) に示すように、 環状円板 24, 24 間の間隙 が広すぎる場合は、 環状円板 24, 24 間に渦や乱れが発生すると ともに、 図 22 (c) に示すように、 環状円板 24, 24 間の間隙 が 狭すぎる場合は、 環状円板 24 , 24 間に渦や乱れは発生しないが 、 流路抵抗によって、 殆ど空気を送風できないことになる。 そこで、 本出願人は、 上記した渦や乱れの発生を可及的に防 止しながらかつ十分な風量を確保できる間隙 について考察し たところ、 環状円板 24, 24 間の間隙 <?をレイノルズ数 Reとの閬 係において一定の範囲内の値とすることによって、 図 22 (b) に 示すように、 渦や乱れがなく、 かつ、 十分な風量で送風できる ことを知見した。
即ち、 多層円板ファ ン Aは、 一般に多層円板ファン Aにおけ る間隙 とレイノルズ数 Reとの間には以下の関係がある。
即ち、 いま、 環状円板 24, 24 の枚数を B、 風量を Q (mVmin ) とすると、 図 23から、 入口部相対速度は、 空気が多層円板フ ァン Aに対して半径方向に流入すると仮定すると、 以下の式に よって求めることができる。
Q
0) m
入口部では、 空気は周方向に完全にすべるとすると、
2 π η
ω (10)
60 ω , -V ω 十 wu (11) これより、 レイノルズ数 Reと環状円板 24,24 間の間隙 5との 関係は、 以下の式で求められる。 ω 1 · 6
Re = (12)
V
±記式において、 各記号は、 それぞれ以下を示す。
ωη1: 空気の入口部相対角速度
o)ul: 空気の入口部周角速度
ω , : 空気の入口部相対速度
V : 空気の動粘性係数
T i : 環状円板の入口半径
一方、 本出願人がレイノルズ数 Reが、 200 から 10000 の範囲 で環状円板 24 , 24 間の間隙 を変えて実験を行った結果を図 24 のグラフに示す。
図 24に示すグラフより、 騒音レベルを効果的に低減するには 、 レイノルズ数 Reと間隙 との関係を、 以下の範囲にするのが 望ましいことがわかる。 ω - 6
200 < ( = Re ) く 3000 (13) 以上説明してきた構成により、 本発明は、 以下の効果を奏す る。
即ち、 本癸明では、 互いに一定の間隔を保持した多数の環状 円板を積層することによって形成した翼付多層円板ファンにお いて、 環状円板間に多数の翼を介設し、 かつ翼の内側端又は外 倒端の少なくとも一方を、 環状円板の内周縁又は外周緣から一 定距離だけ外側又は内側に位置させているので、 円板による層 流効果で内、 外翼の先端において剝難によつて生じる乱流を効 果的に抑止することができ、 しかも、 環状円板の外周縁での出 口速度歪みがないので、 乱流騒音及び干渉騒音が低減できるの で、 静粛な運転が可能となる。
また、 後退翼を採用したり、 翼の最内端と最外端とを結ぶ線 と、 円板間の流体の相対速度における周方向速度及び半径方向 速度より求めた流体の軌跡とが、 各円板の入口側でなす角度、
即ち、 迎角を、 20° ± 15° とすることにより、 静粛性を保ちな がら、 送風量を増加させることができる。
また、 翼間の円周方向ピッチ角と、 翼の最内端と最外端とを 環状円板の中心と結んで形成した線のなす角との比を 0.5 〜 1 とすることにより、 最適な空気流の通路をとることができ、 静 粛性を保ちながら、 送風量を増加させることができる。
また、 環状円板間の間隙と回転数また円板入口での流速との 関係で最適運転範囲が存在し、 その範囲内では、 円板による層 流効果により、 翼の内外先端において、 剥離によって生じる乱 流騒音を抑制するとともに環状円板外周での出口歪みを押さえ ることになり、 乱流騒音および干涉騒音が低滅でき、 静粛な運 転が可能となる。
以上、 本発明を、 幾つかの実施例を参照して具体的に説明し てきたが、 本発明は何ら上記した実施例に記載の発明に限定さ れるものではなく、 本発明に係る多層円板ファ ンは、 上述した 温風ファンの他、 熱交換器や、 その他の静音送風が必要な技術 分野及び用途に好適に用いることができるものである。