JPWO2022113389A5 - - Google Patents

Download PDF

Info

Publication number
JPWO2022113389A5
JPWO2022113389A5 JP2022565034A JP2022565034A JPWO2022113389A5 JP WO2022113389 A5 JPWO2022113389 A5 JP WO2022113389A5 JP 2022565034 A JP2022565034 A JP 2022565034A JP 2022565034 A JP2022565034 A JP 2022565034A JP WO2022113389 A5 JPWO2022113389 A5 JP WO2022113389A5
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oxygen sensor
positive electrode
negative electrode
oxygen
electrolytic solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022565034A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2022113389A1 (ja
Filing date
Publication date
Application filed filed Critical
Priority claimed from PCT/JP2021/009326 external-priority patent/WO2022113389A1/ja
Publication of JPWO2022113389A1 publication Critical patent/JPWO2022113389A1/ja
Publication of JPWO2022113389A5 publication Critical patent/JPWO2022113389A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Description

本発明は、酸素濃度が低いガスにおける測定の信頼性を高めた電気化学式酸素センサと、その製造方法とに関するものである。
電気化学式酸素センサ(以下、酸素センサともいう。)は、安価、手軽であり、かつ常温での作動が可能という利点を有することから、船倉内部やマンホール内の酸欠状態のチェック、麻酔器や人工呼吸器などの医療機器における酸素濃度の検出など、広い分野で使用されている。
このような電気化学式酸素センサとしては、例えば、水溶液系の電解液を有し、負極にSnやその合金を使用したものが知られている(特許文献1、2など)。
特開2006-194708号公報 特開2017-67596号公報
電気化学式酸素センサにおいては、酸素が内部に侵入すると正極で還元され、また負極で金属の溶出反応が生じることにより、正極と負極との間に酸素濃度に応じた電流が発生する。そのため、例えば、正極反応(正極での酸素の還元)によって生じた電流を電圧に変換し、この値を基にして酸素濃度を求めている。よって、電気化学式酸素センサを無酸素の環境下に置いた場合には、前記のような正極反応が生じないことから、本来、前記の電流は発生せず、酸素濃度がゼロであることの測定も可能となるはずである。ところが、現実には、無酸素環境下に置かれているにも関わらず、観測をある程度の時間継続すると、酸素が存在しているかのような測定結果が得られる場合がある。このため、酸素センサの構成によっては、低い濃度の酸素ガスの測定には使用し難いといった問題が生じることもあり、酸素濃度の測定範囲が限られるという課題が生じていた。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、酸素濃度が低いガスにおける測定の信頼性を高めた電気化学式酸素センサと、その製造方法とを提供することにある。
本発明の電気化学式酸素センサは、正極、負極、および水溶液で構成された電解液を含み、前記負極は、SnおよびNiより選択され主成分となる元素Mを含有する金属を含み、前記電解液は、pHが3~10の水溶液であり、前記正極は、触媒金属を含有する触媒層を含み、前記触媒層は、前記電解液と接する表面に、前記元素Mを含有する表面層を含むものである。
本発明の電気化学式酸素センサは、触媒金属を含有する触媒層を含む正極と、SnおよびNiより選択され主成分となる元素Mを含有する金属を含む負極と、pHが3~10の水溶液からなる電解液とを用いて電気化学式酸素センサを組み立てるセンサ組み立て工程と、前記センサ組み立て工程の前または後に、前記正極の表面に、前記元素Mを含有する表面層を形成する表面層形成工程とを含む本発明の製造方法によって、製造することができる。
本発明によれば、酸素含有量が低いガスの酸素濃度を測定する際の信頼性を高めた電気化学式酸素センサと、その製造方法とを提供することができる。
図1は、Snを含有する負極を有する電気化学式酸素センサを無酸素環境下で使用した場合の出力電圧の変化を表すグラフである。 図2は、本発明の電気化学式酸素センサの一例を模式的に表す断面図である。 図3は、実施例1~2および比較例1の電気化学式酸素センサの特性評価試験結果を表すグラフである。
図1に示す通り、電気化学式酸素センサ(以下、「酸素センサ」と略す場合がある。)を無酸素環境下で使用すると、一定の時間、酸素が存在するかのような電圧上昇が認められ、さらに測定を継続すると、前記の電圧上昇がなくなることが、本発明者の検討により明らかとなった。本発明者らは、酸素センサ内部で生じる反応を検討した結果、前記電圧上昇が以下の理由によって発生するのではないかと考えた。
酸素センサの正極では、酸素が存在すると下記(1)式で表される反応が起こる。
2+4H++4e-→H2O (1)
しかしながら、酸素センサが無酸素環境下に置かれた場合、正極では前記(1)式で示す反応は生じない。一方、正極に酸素が供給されない状態で正極と負極とを導通させた場合、電位差により負極から元素Mが溶出するとともに、正負極間に電流が流れ、正極では、下記(2)~(4)式で表される反応が起こる可能性がある。なお、下記(3)式および(4)式は、酸素センサがSnを含有する負極を有する場合に正極で起こる反応を示している。
2H++2e-→H2 (2)
Sn4++4e-→Sn (3)
Sn2++2e-→Sn (4)
前記の通り、酸素センサを無酸素環境下で使用した場合、ある程度の時間が経つと電圧上昇が生じる一方で、一定の時間が経過すると、前記の電圧上昇が認められなくなる。この間、正極では、(2)式の水素が発生する反応ではなく、(3)式または(4)式のSnが析出する反応が進行していると考えられ、徐々に正極の電位が低下して負極の電位と等しくなった時点で、電流がゼロとなり正極でのSnの析出が終了して、酸素センサの電圧の異常が生じなくなる。以上の知見から、本発明者らは、触媒層の電解液と接する表面に、予め、負極が含有する元素Mを含む層を形成しておくことにより、前記正極での反応を防ぐことができ、酸素濃度が低いガスを測定する際の信頼性を高めることができると考えた。
本発明の酸素センサでは、正極における触媒金属を含有する触媒層の、電解液と接する面に、負極が含有する金属、すなわちSnおよびNiより選択される元素Mを主成分とする金属に含まれる前記元素Mと同じ元素を含む層が形成されているため、酸素センサを無酸素環境下で使用した場合の、負極から溶出した金属イオンの正極での析出反応による電圧上昇の発生を防止することが可能となる。これにより、本発明の酸素センサは、例えば、無酸素環境下も含む酸素濃度の低いガス中での使用も可能となるなど、広い濃度範囲で酸素の濃度測定を行うことができる。
特に、Snは低温でも拡散しやすいため、Auなどの触媒金属の表面に積層させた場合、相互拡散により触媒金属と合金化し、表面にAu-Sn合金などの触媒金属と合金化した層が形成されると考えられる。
また、触媒層の、電解液と接する面の少なくとも表層部分では、金属元素が酸化されて酸化物などの状態で存在すると推測される。
従って、触媒層の電解液と接する面に形成される、負極が含有する金属の主成分である元素(SnまたはNi)と同じ元素を含む「表面層」には、前記元素の単体の層の他、前記元素の合金の層、例えば触媒金属と前記元素との合金の層、および前記元素の酸化物の層なども含まれる。
なお、本明細書でいう「主成分となる元素Mを含有する金属」および「元素Mを主成分とする金属」とは、元素Mの含有量が50質量%よりも多い金属を意味する。
次に、本発明の酸素センサを、好適な実施形態の一例であるガルバニ電池式酸素センサを例にとり、図面を用いて説明する。
図2は、本発明の電気化学式酸素センサの一実施形態であるガルバニ電池式酸素センサを、模式的に表す断面図である。
図2に示す酸素センサ1は、有底筒状の容器20内に正極50、負極80および電解液90を有している。容器20は、内部に電解液90を保持する容器本体21と、容器本体21の開口部に保護膜40、隔膜60および正極50を固定するための封止蓋10とで構成されている。封止蓋10は、第1封止蓋(中蓋)11と、第1封止蓋11を固定するための第2封止蓋(外蓋)12とで構成され、酸素センサ1内に酸素を取り込むための貫通孔120を有しており、O-リング30を介して容器本体21に取り付けられている。
電解液90を収容する容器本体21の内部には、負極80が電解液中に浸漬された状態で配されており、負極80には、リード部81が形成されている。また、正極50は、触媒層(触媒電極)51と正極集電体52とが積層されて構成されており、正極集電体52には、リード線53が取り付けられている。そして、容器20のうちの電解液90を保持する容器本体21の下部には、正極集電体52に取り付けられたリード線53を通すための穿孔70が設けられている。また、図2では示していないが、容器本体21の下部には、前記穿孔70とは別に、電解液を正極50に供給するための穿孔も設けられている。
負極80のリード部81と正極集電体52に取り付けられたリード線53との間には、補正抵抗100および温度補償用サーミスタ110が直列に連結され、容器本体21の内部に収容されている。また、負極80のリード部81には、負極端子82が接続されており、正極集電体52に取り付けられたリード線53には、正極端子54が接続されており、それぞれ容器本体21の外部に導出されている。
正極50の外面側には、酸素を選択的に透過させ、かつ透過量を電池反応に見合うように制限する隔膜60が配されており、封止蓋10に設けられた貫通孔120からの酸素が、隔膜60を通じて正極50へ導入される。また、隔膜60の外面側には、隔膜60へのゴミやチリ、水などの付着を防止するための保護膜40が配されており、第1封止蓋11によって固定されている。
すなわち、第1封止蓋11は、保護膜40、隔膜60および正極50の押圧端板として機能する。図2に示す酸素センサ1では、容器本体21の開口部の外周部に形成されたネジ部と螺合するように、第2封止蓋12の内周部にネジ部が形成されている。そして、封止蓋10をネジ締めすることにより、第1封止蓋11がO-リング30を介して容器本体21に押し付けられることで、気密性および液密性を保持した状態で、保護膜40、隔膜60および正極50を容器本体21に固定できるようになっている。
そして、正極50の触媒層51の電解液と接する面(図2中、上側の面)には、負極が含有する金属の主成分である元素Mと同じ元素を含む表面層51aが形成されている。
酸素センサの負極には、SnおよびNiのうちのいずれか一方の単体、または前記元素の合金〔SnおよびNiのうちのいずれか一方を主成分(合金中の含有量が50質量%超)とする合金〕を使用する。前記元素の単体やその合金は、一定量の不純物を含有していてもよいが、RoHS指令に適合させるため、Pbの含有量は1000ppm未満であることが望ましい。
負極に使用し得るSn合金としては、耐食性の点から、Sn-Ag合金、Sn-Cu合金、Sn-Ag-Cu合金、Sn-Sb合金などが例示されるが、Al、Bi、Fe、Mg、Na、Zn、Ca、Ge、In、Ni、Coなどの金属元素を含有する合金であってもよい。
Sn合金としては、具体的には、一般的な鉛フリーはんだ材料(Sn-3.0Ag-0.5Cu、Sn-3.5Ag、Sn-3.5Ag-0.75Cu、Sn-3.8Ag-0.7Cu、Sn-3.9Ag-0.6Cu、Sn-4.0Ag-0.5Cu、Sn-1.0Ag-0.5Cu、Sn-1.0Ag-0.7Cu、Sn-0.3Ag-0.7Cu、Sn-0.75Cu、Sn-0.7Cu-Ni-P-Ge、Sn-0.6Cu-Ni-P-GeSn-1.0Ag-0.7Cu-Bi-In、Sn-0.3Ag-0.7Cu-0.5Bi-Ni、Sn-3.0Ag-3.0Bi-3.0In、Sn-3.9Ag-0.6Cu-3.0Sb、Sn-3.5Ag-0.5Bi-8.0In、Sn-5.0Sb、Sn-10Sb、Sn-0.5Ag-6.0Cu、Sn-5.0Cu-0.15Ni、Sn-0.5Ag-4.0Cu、Sn-2.3Ag-Ni-Co、Sn-2Ag-Cu-Ni、Sn-3Ag-3Bi-0.8Cu-Ni、Sn-3.0Ag-0.5Cu-Ni、Sn-0.3Ag-2.0Cu-Ni、Sn-0.3Ag-0.7Cu-Ni、Sn-58Bi、Sn-57Bi-1.0Agなど)や、Sn-Sb合金を好ましく用いることができる。
負極に使用し得るNi合金としては、耐食性の点から、Ni-V合金、Ni-Cr合金、Ni-Si合金、Ni-Al合金、Ni-Ti合金、Ni-Mo合金、Ni-Mn合金、Ni-Zn合金、Ni-Sn合金、Ni-Cu合金、Ni-Co合金、Ni-Fe合金などが例示されるが、前記以外の金属元素を含有する合金であってもよい。
Ni合金としては、具体的には、Ni66-Cu29-Al3、Ni63-Cu30-Si4、Ni63-Cu30-Si3、Ni62-Mo28-Fe5、Ni68-Mo28-Fe2-Cr1-Co1、Ni57-Mo17-Cr16-Fe4-W3、Ni22-Cr9-Mo0.6-W18.5-Fe1.5-Co0.6などの合金を好ましく用いることができる。
負極は、pHが3~10の水溶液からなる電解液中での腐食が生じにくく、無酸素環境下での正極における水素の発生を抑制できることから、SnまたはSn合金で構成されていることが好ましく、Sn合金で構成されていることがより好ましい。
酸素センサの正極は、例えば、図2に示すように、触媒金属を含有する触媒層と正極集電体とで構成されたものが使用される。触媒層の構成材料である触媒としては、正極上の電気化学的な酸素の還元によって電流が生じ得るものであれば特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、チタン(Ti)などの、酸化還元に活性な金属(前記元素の合金を含む)が好適に用いられ、Auがより好ましい。
正極の触媒層の、電解液と接触する面には、負極が含有する金属の主成分である元素Mと同じ元素を含む表面層を形成する。すなわち、負極がSnを含有する場合(負極がSnで構成されているか、またはSnを主成分とする合金で構成されている場合)には、正極の表面層にはSnを含有させ、負極がNiを含有する場合(負極がNiで構成されているか、またはNiを主成分とする合金で構成されている場合)には、正極の表面層にはNiを含有させる。
表面層は、負極が含有する金属の主成分である元素Mと同じ元素(不可避不純物を含む。)のみで構成されていてもよく、負極が含有する金属の主成分である元素Mと同じ元素を主成分とする合金〔前記合金中における元素Mの割合が50質量%超〕で構成されていてもよい。表面層が元素Mと同じ元素を含む合金で構成されている場合、その合金元素としては、例えば、負極が元素Mの合金で構成される場合に含有させ得るものとして先に例示した各種金属元素が挙げられる。
表面層においては、酸素センサにおける無酸素環境下での無用な正極反応の防止効果をより良好に確保する観点から、元素M〔負極が含有する元素Mと同じ元素〕の単位面積当たりの量が、10μg/cm2以上であることが好ましく、50μg/cm2以上であることがより好ましい。また、表面層における元素Mの単位面積当たりの量は、触媒金属の作用を阻害しないために、10mg/cm2以下であることが好ましく、4mg/cm2以下であることがより好ましい。
酸素センサの電解液には、水溶液で構成されたものが使用され、例えば、酢酸、酢酸カリウムおよび酢酸鉛を含有する水溶液、クエン酸およびクエン酸塩(アルカリ金属塩など)を含有する水溶液などのカルボン酸またはその塩を含有する酸性水溶液;水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ性水溶液;を使用することができる。
また、電解液を構成する水溶液は、pH調整の目的で、必要に応じて各種の有機酸や無機酸、アルカリを含有していてもよい。
なお、酸素センサの長寿命化を図る観点からは、電解液には、キレート剤を含有する水溶液を使用することが好ましい。キレート剤には、負極の構成金属(元素M)をキレート化して電解液に溶解させる作用(以下、「キレート化作用」という。)があると推測され、これが酸素センサの長寿命化に寄与し得ると考えられる。
本明細書でいう「キレート剤」とは、金属イオンと配位結合をする官能基を複数持つ分子(イオンも含む。)を有し、金属イオンと錯体を形成(錯化)して金属イオンを不活性化させるものであり、電解液を構成する溶媒中で前記分子を生成する酸やその塩などの形で電解液に含有させることができる。従って、錯化力が弱いリン酸、酢酸、炭酸およびこれらの塩などの、前記官能基が単数であるものは、本明細書でいう「キレート剤」には含まれない。
放電時に負極から溶出したSn2+などの金属イオンは、電解液のpHが弱酸性~弱アルカリ性の範囲にある場合は、電解液中で不安定なため直ちに酸化物や水酸化物として負極上に析出し、負極の反応を阻害するおそれを生じる。しかし、本発明では、溶出した金属イオンはキレート化され錯イオンとして安定に存在するため、負極の反応を阻害するのを防ぐことができる。
キレート剤は、一般に、キレート化作用を有すると共に、pH緩衝能(少量の酸や塩基が添加されても、溶液のpHをほぼ一定に保つ能力)を有しているが、その具体例としては、例えば、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、マロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸や、これらの塩などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
キレート剤には、キレート化作用を高める観点から水への溶解度が高いもの、具体的には、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸およびその塩などを用いることがより好ましい。これらの中でも、クエン酸やその塩は水への溶解度が高く〔クエン酸:73g/100ml(25℃)、クエン酸三ナトリウム:71g/100ml(25℃)、クエン酸三カリウム:167g/100ml(25℃)〕、また、クエン酸は解離可能な水素原子の数が多く、pH緩衝能が発揮されるpHが複数あることから(pKa1=3.13、pKa2=4.75、pKa3=6.40)、クエン酸を使用することがより好ましい。よって、キレート剤としてクエン酸を用いた場合には、水への溶解度が高く、pH緩衝能も高くなるため、酸素センサの寿命がより向上する。
電解液中でのキレート剤の濃度は、例えば、2.3mol/L以上であることが好ましく、2.5mol/L以上であることがより好ましく、2.7mol/L以上であることが特に好ましい。
なお、電解液中に溶解している負極由来の金属が飽和濃度に達すると、前記金属の酸化物が生成して負極が不活性になることで酸素センサの寿命が損なわれる虞があり、電解液にキレート剤を含有させても、酸素センサの長寿命化効果が限定的になることもある。この場合、電解液にはアンモニアをさらに含有させて、電解液中のキレート剤のモル濃度を高めることが好ましく、これにより、電解液中に溶解している負極由来の金属が飽和に達することを遅らせて、酸素センサの寿命をより長期化することが可能となる。
電解液中のアンモニアの濃度は、アンモニアの前記作用を生じやすくさせるために、0.01mol/L以上とし、前記作用をより高めるために、0.1mol/L以上とすることが好ましく、1mol/L以上とすることがより好ましい。また、電解液中のアンモニアの濃度の上限は、特に規定はされないが、アンモニアは日本の「毒物及び劇物取締法」別表第二に規定されている化合物であるので、安全性の観点からは、電解液中でのアンモニアの濃度は、10質量%未満とすることが好ましい。
電解液を構成する水溶液のpHは3~10である。電解液がこのようなpHの場合に、無酸素環境下に置かれた酸素センサにおいて、負極から元素Mがわずかに溶出して正極で析出する反応が生じやすいが、前記の通り、本発明であれば、このような析出反応による酸素センサの電圧上昇の問題を防止することができる。
酸素センサの正極の外面には、触媒電極に到達する酸素が多くなりすぎないように、酸素の侵入を制御するための隔膜を配置することが好ましい。隔膜としては、酸素を選択的に透過させると共に、酸素ガスの透過量を制限できるものが好ましい。隔膜の材質や厚みについては特に制限はないが、通常、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレンなどのポリオレフィン;などが使用される。隔膜には、多孔膜、無孔膜、更には、キャピラリー式と呼ばれる毛細管が形成された孔を有する膜を使用することができる。
さらに、前記隔膜を保護するために、隔膜上に多孔性の樹脂膜からなる保護膜を配置することが好ましい。保護膜は、隔膜へのゴミやチリ、水などの付着を防止でき、空気(酸素を含む)を透過する機能を有していれば、その材質や厚みについては特に制限はないが、通常、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂が使用される。
酸素センサ1の容器本体21は、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂で構成することができる。また、容器本体21の開口部に配される封止蓋10(第1封止蓋11および第2封止蓋12)は、例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂などで構成することができる。
さらに、容器20の容器本体21と封止蓋10(第1封止蓋11)との間に介在させるO-リング30は、容器本体21と第2封止蓋12とのネジ締めによって押圧されて変形することで、酸素センサ1の気密性および液密性を保持できるようになっている。O-リングの材質については特に制限はないが、通常、ニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素樹脂などが使用される。
これまで、本発明の電気化学式酸素センサの一実施形態であるガルバニ電池式酸素センサを例にとって本発明を説明してきたが、本発明の電気化学式酸素センサは前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、図2に示す酸素センサについても、酸素センサとしての機能および前述した酸素供給経路を備えていれば、各種設計変更が可能である。
また、本発明の電気化学式酸素センサは、定電位式酸素センサとしての形態を採ることもできる。定電位式酸素センサは、正極と負極との間に一定電圧を印加するセンサであり、印加電圧は各電極の電気化学特性や検知するガス種に応じて設定される。定電位式酸素センサでは正極と負極の間に適当な一定電圧を印加すると、その間に流れる電流と酸素ガス濃度とは比例関係を有するので、電流を電圧に変換すれば、ガルバニ電池式酸素センサと同様に、電圧を測定することによって未知の気体の酸素ガス濃度を検出することができる。
本発明の電気化学式酸素センサは、触媒層(触媒電極)の表面に、蒸着法やメッキ法などによって予め表面層を形成した正極と、SnおよびNiより選択される元素Mを主成分とする金属を含有する負極と、pHが3~10の水溶液からなる電解液とを用いて組み立てる方法で製造することができる。
また、正極と、元素Mを主成分とする金属を含有する負極と、pHが3~10の水溶液からなる電解液とを用いて酸素センサを組み立てるセンサ組み立て工程と、センサ組み立て工程の後に、前記正極と前記負極とを導通させた状態で、前記正極に酸素濃度が0.3体積%以下の気体又は酸素を含有しない気体を一定時間供給して、前記正極の触媒層の前記電解液と接する表面に、前記電解液中から前記元素Mを析出させて前記表面層を形成する工程とを有する製造方法によって、電気化学式酸素センサを製造することもできる。この製造方法によれば、予め正極に表面層を形成する工程を省略できることから、電気化学式酸素センサの生産性をより高めることが可能である。この場合、正極と負極とを導通させて元素Mを正極の本体部の表面に析出させる時間は、例えば、50~150時間とすればよい。
本発明の電気化学式酸素センサは、無酸素環境下で使用する用途に好ましく適用できるが、従来から知られている電気化学式酸素センサと同じ用途にも適用することが可能である。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<電解液の調製>
クエン酸、クエン酸三カリウムおよびアンモニアを水に溶解させて電解液を調製した。なお、電解液中のモル濃度は、クエン酸:2.5mol/L、クエン酸三カリウム:0.5mol/L、アンモニア:3.0mol/Lとした。この電解液のpHは25℃で4.30であった。
<酸素センサの組み立て>
前記の電解液5.4gをABS樹脂製の容器本体21の内部に注入し、図2に示す構成のガルバニ電池式酸素センサを組み立てた。封止蓋10(第1封止蓋11および第2封止蓋12)も容器本体21と同様にABS樹脂で形成した。また、保護膜40には多孔性のポリテトラフルオロエチレン製シートを使用し、隔膜60にはテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体膜を使用した。
正極50の触媒層(触媒電極)51は金で構成し、正極集電体52およびリード線53にはチタン製のものを使用して、正極集電体52とリード線53は溶接して一体化した。また、負極80は、Sn-Sb合金(Sb含有量:5質量%)によって構成した。
また、正極のリード線53と負極のリード部81との間には、補正抵抗100および温度補償用サーミスタ110を直列に接続し、さらに、正極のリード線53および負極のリード部81から、正極端子54および負極端子81を容器本体21の外部にそれぞれ導出することにより、出力される電圧から酸素濃度を検出できるようにした。
組み立てた酸素センサ1においては、第1封止蓋11、O-リング30、ポリテトラフルオロエチレン製シートの保護膜40、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体製の隔膜60、触媒電極51、および正極集電体52は、容器本体21と第2封止蓋12とのネジ締めによって押圧され良好な封止状態を維持するようにした。
<表面層の形成>
組み立てた前記酸素センサ1の正極50と負極80とを導通させた状態で、貫通孔120から正極50の表面に窒素ガス(酸素濃度が0体積%)を供給して100時間放置し、正極50の触媒層51の表面(電解液と接する図2中上側の表面)に、負極が含有するSnを含む表面層を形成した。形成された表面層におけるSnの単位面積あたりの量は、150μg/cm2であった。
(実施例2)
正極の触媒層(触媒電極)の片面に、メッキ法によってSn層(表面層、Snの単位面積あたりの量が150μg/cm2)を形成し、この正極を用いた以外は実施例1と同様にして酸素センサを組み立てた。
(比較例1)
実施例1と同様にして組み立てた酸素センサを、前述の表面層の形成をせずに比較例1の酸素センサとした。
実施例1~2および比較例1の酸素センサを、それぞれ窒素ガス中に100時間保持し、その間の出力電圧を測定した。その結果を図3に示す。
実施例1および2の酸素センサでは、測定開始後の出力電圧の上昇がなくなり、実施例1の酸素センサでは測定開始から数時間後に、また実施例2の酸素センサでは測定開始時点で出力電圧がほぼゼロとなり、酸素濃度を安定して測定できる状態となった。一方、比較例1の酸素センサでは、測定開始から数時間後に出力電圧が一旦上昇し、酸素濃度の測定値の変動が大きくなることが分かった。
本願は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本願の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
1 酸素センサ
10 封止蓋
11 第1封止蓋(中蓋)
12 第2封止蓋(外蓋)
20 容器
21 容器本体
30 O-リング
40 保護膜
50 正極
51 触媒層(触媒電極)
51a 表面層
52 正極集電体
53 リード線
54 正極端子
60 隔膜
70 穿孔
80 負極
81 リード部
82 負極端子
90 電解液
100 補正抵抗
110 温度補償用サーミスタ
120 貫通孔

Claims (9)

  1. 正極、負極、および水溶液で構成された電解液を含む電気化学式酸素センサであって、
    前記負極は、SnおよびNiより選択され主成分となる元素Mを含有する金属を含み、
    前記電解液は、pHが3~10の水溶液であり、
    前記正極は、触媒金属を含有する触媒層を含み、
    前記触媒層は、前記電解液と接する表面に、前記元素Mを含有する表面層を含む電気化学式酸素センサ。
  2. 前記正極の触媒層が、金を含有する請求項1に記載の電気化学式酸素センサ。
  3. 前記電解液が、キレート剤を含有する請求項1または2に記載の電気化学式酸素センサ。
  4. 前記負極が、SnまたはSnの合金を含む請求項1~3のいずれかに記載の電気化学式酸素センサ。
  5. 前記触媒層の触媒金属が、Auを含有し、前記表面層が、SnとAuとを含有する請求項4に記載の電気化学式酸素センサ。
  6. 前記表面層が含有する前記元素Mの、単位面積当たりの量が、10μg/cm2以上10mg/cm2以下である請求項1~5のいずれかに記載の電気化学式酸素センサ。
  7. 請求項1~6のいずれかに記載の電気化学式酸素センサを製造する方法であって、
    触媒金属を含有する触媒層を含む正極と、SnおよびNiより選択され主成分となる元素Mを含有する金属を含む負極と、pHが3~10の水溶液からなる電解液とを用いて電気化学式酸素センサを組み立てるセンサ組み立て工程と、
    前記センサ組み立て工程の前または後に、前記正極の表面に、前記元素Mを含有する表面層を形成する表面層形成工程とを含む電気化学式酸素センサの製造方法。
  8. 前記表面層形成工程として、前記センサ組み立て工程の後に、前記正極と前記負極とを導通させた状態で、一定以上の時間、前記正極に酸素濃度が0.3体積%以下の気体を供給する工程を含む請求項7に記載の電気化学式酸素センサの製造方法。
  9. 前記正極に供給する気体が、酸素を含有しない請求項8に記載の電気化学式酸素センサの製造方法。
JP2022565034A 2020-11-25 2021-03-09 Pending JPWO2022113389A1 (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2020195501 2020-11-25
PCT/JP2021/009326 WO2022113389A1 (ja) 2020-11-25 2021-03-09 電気化学式酸素センサおよびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2022113389A1 JPWO2022113389A1 (ja) 2022-06-02
JPWO2022113389A5 true JPWO2022113389A5 (ja) 2023-08-07

Family

ID=81754166

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022565034A Pending JPWO2022113389A1 (ja) 2020-11-25 2021-03-09

Country Status (5)

Country Link
US (1) US20240003843A1 (ja)
EP (1) EP4253949A4 (ja)
JP (1) JPWO2022113389A1 (ja)
CN (1) CN116710767A (ja)
WO (1) WO2022113389A1 (ja)

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
FR1471380A (fr) * 1965-03-09 1967-03-03 Philips Nv Cellule galvanique pour la mesure de la concentration d'oxygène dans un mélange gazeux
JPS548591A (en) * 1977-06-21 1979-01-22 Japan Storage Battery Co Ltd Oxygen concentration meter
US4705617A (en) * 1983-05-06 1987-11-10 Sensormedics Corporation Apparatus for deplating cutaneous gas sensors
US4652359A (en) * 1984-10-29 1987-03-24 General Electric Company Portable oxygen sensor with shortened break-in time
DE3540511A1 (de) * 1985-07-25 1987-02-05 Teledyne Ind Gasanalysator
EP0486179A3 (en) * 1990-11-12 1992-07-08 City Technology Limited Gas diffusion control assembly
JP4062447B2 (ja) 2005-01-13 2008-03-19 株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション 定電位式酸素センサ
US9146208B2 (en) * 2011-09-29 2015-09-29 Brigham Young University Lead-free oxygen sensor
JP6621637B2 (ja) 2015-09-30 2019-12-18 マクセル株式会社 酸素センサ
JP6899751B2 (ja) * 2017-09-29 2021-07-07 マクセル株式会社 電気化学式酸素センサ
WO2020079769A1 (ja) * 2018-10-17 2020-04-23 マクセル株式会社 電気化学式酸素センサ

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP7009646B2 (ja) 電気化学式酸素センサ
EP2950089B1 (en) Galvanic cell type oxygen sensor with a pb-sb alloy negative electrode
US11243183B2 (en) Galvanic oxygen sensor for measurement in gas mixtures
JP2023007024A (ja) 電気化学式酸素センサ
JP6621637B2 (ja) 酸素センサ
WO2018124066A1 (ja) 電気化学式酸素センサ
JP6899751B2 (ja) 電気化学式酸素センサ
JPWO2022113389A5 (ja)
WO2023162960A1 (ja) 電気化学式酸素センサおよびその製造方法
WO2022113389A1 (ja) 電気化学式酸素センサおよびその製造方法
JP6707431B2 (ja) ガルバニ電池式酸素センサ
JP6985533B1 (ja) 電気化学式酸素センサ
JP6955950B2 (ja) 電気化学式酸素センサ
JP2022161670A (ja) 電気化学式酸素センサ
US20220326174A1 (en) Electrochemical oxygen sensor
JP2019066331A (ja) 電気化学式酸素センサ
JP2019066328A (ja) 電気化学式酸素センサ
JPH0239740B2 (ja)
JP7440691B1 (ja) 電気化学式ガスセンサ、電気化学式ガス測定方法
JP2018173375A (ja) 酸素センサ
JP2018173376A (ja) 酸素センサ
JP2017053689A (ja) 電気化学式酸素センサ
JP4415442B2 (ja) ガルバニ電池式酸素センサ
JP2022047289A (ja) 電気化学式酸素センサ