JPWO2020203545A1 - 複合電極活物質、電極用組成物、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、並びに、複合電極活物質、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

活物質と、この活物質を被覆する被覆層とを有する複合電極活物質であって、
上記被覆層が無機固体電解質及び導電助剤を含有し、
上記被覆層に含まれるリチウム原子及び炭素原子が、原子数について下記式(I)で規定される関係を満たす、複合電極活物質、電極用組成物、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、並びに、複合電極活物質、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池の製造方法。
A1<B1 式(I)
式中、A1は上記被覆層の活物質接触部から外側に向けて厚さ0.5μmの領域A中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示し、B1は上記被覆層の表面から内側に向けて厚さ0.5μmの領域B中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示す。ただし、B1は99/1以下である。

Description

本発明は、複合電極活物質、電極用組成物、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、並びに、複合電極活物質、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池の製造方法に関する。
全固体二次電池は負極、電解質、正極の全てが固体からなり、有機電解液を用いた電池の課題とされる安全性及び信頼性を大きく改善することができる。また長寿命化も可能になるとされる。更に、全固体二次電池は、電極と電解質を直接並べて直列に配した構造とすることができる。そのため、有機電解液を用いた二次電池に比べて高エネルギー密度化が可能となり、電気自動車又は大型蓄電池等への応用が期待されている。
このような全固体二次電池の電極活物質層は、通常、無機固体電解質及び活物質を含有する。活物質は、全固体二次電池の充放電により膨張収縮を繰り返す。そのため、固体粒子(活物質、無機固体電解質、導電助剤等)間に空隙が生じ電池抵抗が上昇する要因となる。この問題に対処するための全固体二次電池として、例えば、特許文献1には、正極および負極の少なくとも一方の電極が、導電剤およびリチウムイオン伝導性無機固体電解質を含む被覆層で被覆された活物質粒子を有するリチウム二次電池が記載されている。
また、特許文献2及び3には、リチウムイオン二次電池に用いる活物質粒子の表面を、固体電解質、導電材、更にはリチウムイオン伝導性ポリマー等で被覆する技術が記載されている。
特開2003−059492号公報 特開2016−66584号公報 特開2002−373643号公報
近年、電気自動車の高性能化、実用化等の研究開発が急速に進行し、全固体二次電池に求められる電池性能も高くなっている。リチウムと合金形成可能な負極活物質はイオン伝導度が高く(初期の)電池性能の向上に資する点で着目されているが、その一方で充放電による膨張収縮が大きく上述の問題が発生しやすい。
かかる状況の下、本発明者が全固体二次電池に用いる活物質について検討を進めたところ、特許文献1〜3に記載されているような、導電剤、無機固体電解質、更にはリチウムイオン伝導性ポリマー等で被覆した活物質粒子を用いても、全固体二次電池に優れた電池特性(例えばハイレートでの充放電を繰り返したときの放電容量の維持特性)を付与する点で、まだ十分でないことが分かった。
本発明は、全固体二次電池の電極活物質層の含有成分として用いることにより、全固体二次電池に優れた電池性能を付与できる複合電極活物質を提供することを課題とする。また、本発明は、この複合電極活物質を用いた、電極用組成物、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池、並びに、複合電極活物質、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、種々検討を重ねた結果、全固体二次電池用の活物質として、無機固体電解質及び導電助剤の被覆層で活物質の表面を被覆したうえで、更に、この被覆層の外側領域のリチウム原子数に対する炭素原子数の比を上記被覆層の内側領域のリチウム原子数に対する炭素原子数の比よりも大きく設定することにより、この活物質に構築した電子伝導パス及びイオン伝導パスが充放電による膨張収縮を繰り返しても途絶されることなく、全固体二次電池に優れた電池性能を付与できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>
活物質と、この活物質を被覆する被覆層とを有する複合電極活物質であって、
上記被覆層が無機固体電解質及び導電助剤を含有し、
上記被覆層に含まれるリチウム原子及び炭素原子が、原子数について下記式(I)で規定される関係を満たす、複合電極活物質。
A1<B1 式(I)
式中、A1は上記被覆層の活物質接触部から外側に向けて厚さ0.5μmの領域A中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示し、B1は上記被覆層の表面から内側に向けて厚さ0.5μmの領域B中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示す。ただし、B1は99/1以下である。
<2>
上記領域AとBとの間の領域Cに含まれるリチウム原子及び炭素原子が、原子数について下記式(IIA)又は式(IIB)で規定される関係を満たす、<1>に記載の複合電極活物質。
A1≦C1<B1 式(IIA)
A1<C1≦B1 式(IIB)
式中、A1及びB1は、上記式(I)中のA1及びB1と同義である。C1は、上記領域C中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示す。
<3>
上記導電助剤が繊維状炭素を含む、<1>又は<2>に記載の複合電極活物質。
<4>
上記領域Bに存在する導電助剤が繊維状炭素を含む、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の複合電極活物質。
<5>
上記B1が50/50〜99/1である、<1>〜<4>のいずれか1つに記載の複合電極活物質。
<6>
<1>〜<5>のいずれか1つに記載の複合電極活物質、及び分散媒を含む電極用組成物。
<7>
バインダーを含む、<6>に記載の電極用組成物。
<8>
上記バインダーが粒子状である、<7>に記載の電極用組成物。
<9>
<1>〜<5>のいずれか1つに記載の複合電極活物質を含む、全固体二次電池用電極シート。
<10>
バインダーを含む、<9>に記載の全固体二次電池用電極シート。
<11>
上記バインダーが粒子状である、<10>に記載の全固体二次電池用電極シート。
<12>
正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
上記正極活物質層及び上記負極活物質層の少なくとも1つの層が、<9>〜<11>のいずれか1つに記載の全固体二次電池用電極シートで構成した層である全固体二次電池。
<13>
<1>〜<5>のいずれか1つに記載の複合電極活物質の製造方法であって、
下記工程(1)と1回又は複数回行う下記工程(2)とを有し、下記工程(1)と最後に行う下記工程(2)における無機固体電解質及び導電助剤の混合割合を変更して、上記式(I)で規定される関係を満たす被覆層を活物質の表面に形成する、複合電極活物質の製造方法。
工程(1):活物質、無機固体電解質及び導電助剤を混合する工程
工程(2):上記工程(1)で得られる混合物と、無機固体電解質及び導電助剤とを混合する工程
<14>
<6>〜<8>のいずれか1つに記載の電極用組成物を製膜することを含む、全固体二次電池用電極シートの製造方法。
<15>
<14>に記載の製造方法を経て全固体二次電池を製造する、全固体二次電池の製造方法。
本発明の複合電極活物質は、全固体二次電池の電極活物質層の含有成分として用いることにより、全固体二次電池に優れた電池性能を付与できる。上記複合電極活物質を含む、本発明の電極用組成物は、全固体二次電池の電極活物質層の構成材料として用いることにより、全固体二次電池に優れた電池性能を付与できる。本発明の全固体二次電池用電極シートは、上記複合電極活物質を含み、全固体二次電池の電極活物質層として用いることにより、全固体二次電池に優れた電池性能を付与できる。また、本発明の複合電極活物質、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池の製造方法は、上記優れた特性を示す本発明の複合電極活物質、全固体二次電池用電極シート及び全固体二次電池を製造することができる。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池を模式化して示す縦断面図である。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において化合物の表示(例えば、化合物と末尾に付して呼ぶとき)については、この化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、置換基を導入するなど一部を変化させた誘導体を含む意味である。
[複合電極活物質]
本発明の複合電極活物質は、活物質と、この活物質を被覆する被覆層とを有する。
上記被覆層が無機固体電解質及び導電助剤を含有し、上記被覆層に含まれるリチウム原子及び炭素原子が、原子数について下記式(I)で表される関係を満たす。

A1<B1 (I)

式中、A1は上記被覆層の活物質接触部(活物質と被覆層との界面)から外側(活物質とは反対側)に向けて厚さ0.5μmの領域A中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示す。
B1は、上記被覆層の表面から内側に向けて厚さ0.5μmの領域B中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示し、99/1以下である。ここで、被覆層は粒子状の無機固体電解質及び導電助剤等から形成されるため、被覆層の表面は通常平坦ではないが、本発明において、被覆層の表面を、後述する実施例における測定方法において、活物質と接触しておらず、空隙に露出している面(SEM−EDX(走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法)にて組成(被覆層固体電解質由来のLi)が不連続に変化する箇所)と定義する。
上記比C/LiにおけるC(炭素原子)は導電助剤に由来する炭素原子であり、Li(リチウム原子)は無機固体電解質に由来する炭素原子である。
A1及びB1における比C/Liは、後記実施例の項に記載の方法により決定する。
本発明の複合電極活物質は、上記構成により、十分な電子伝導性及びイオン伝導性を示す(電子伝導パス及びイオン伝導パスが構築される)。しかも、上記電子導電性及びイオン導電性(両伝導パス)は、全固体二次電池の充放電によって、活物質が膨張収縮を繰り返しても、維持される。
本発明の複合電極活物質において、被覆層(無機固体電解質、導電助剤等)は、活物質の表面に物理的(機械的)に吸着若しくは付着し、若しくは化学的結合により結合して、表面の被覆層を形成している。すなわち、本発明の複合電極活物質は、活物質及び被覆層が本発明の課題の解決において密接不可分に一体(好ましくは被覆粒子)となって作用する。活物質に対する被覆層の被覆率は、活物質、無機固体電解質及び導電助剤の種類、両伝導性に応じて適宜に設定されるが、例えば、活物質の表面積に対して、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上が特に好ましい。上限は、100%以下に設定される。上記被覆率は後記実施例に記載の方法により測定することができる。
被覆層の厚さは、1μmを越えれば特に制限されないが、例えば、1μmを越え10μm以下とすることができ、1μmを越え5μm以下が好ましく、1μmを越え3μm以下がより好ましい。被覆層の厚さは、後記実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明において、被覆層は、その含有成分(形成成分)である無機固体電解質及び導電助剤が混合された状態(混合物)で、形成されている。これにより、複合電極活物質(特にその表面)に、電子伝導パス及びイオン伝導パスの両伝導パスを構築できる。
上述のように、被覆層は、無機固体電解質及び導電助剤の混合物で形成され、比C/Liが上記式(I)で規定される関係を満たす。すなわち、被覆層の内側と外側とにおいて、無機固体電解質及び導電助剤の濃度が偏在しており、厚さ方向に沿って濃度傾斜していることが好ましい態様の1つである。濃度傾斜の態様は、特に制限されないが、漸次的な傾斜でもよく、段階的な傾斜でもよい。また、濃度傾斜は、内側から外側に向かって増加又は減少する傾斜に限られず、増加又は減少の傾斜途中に、濃度が一定の領域、濃度が減少する領域若しくは濃度が増加する領域を含んでいてもよい。
上記A1は、本発明の全固体二次電池のハイレート特性の更なる向上の点で、45/55〜1/99であることが好ましく、35/65〜1/99であることがより好ましく、20/80〜5/95であることが更に好ましい。
上記B1は、十分なイオン伝導度を確保できる点で99/1以下であればよく、本発明の全固体二次電池のハイレート特性の更なる向上の点で、50/50〜99/1であることが好ましく、70/30〜99/1であることがより好ましく、85/15〜95/5であることが更に好ましい。
A1とB1との差は、特に制限されないが、リチウム原子数に対する炭素原子数の比を百分率で表したときに、5〜99%であることが好ましく、35〜90%であることがより好ましい。
本発明の複合電極活物質は、本発明の全固体二次電池のハイレート特性をより向上させるため、領域AとBとの間の領域Cに含まれるリチウム原子及び炭素原子が、原子数について下記式(IIA)又は式(IIB)で規定される関係を満たすことが好ましく、下記式(IIC)で規定される関係を満たすことが好ましい。

A1≦C1<B1 式(IIA)
A1<C1≦B1 式(IIB)
A1<C1<B1 式(IIC)

式中、A1及びB1は、式(I)中のA1及びB1と同義である。C1は、領域C中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示す。
「領域C」は、活物質接触部と被覆層の表面との最短距離(すなわち被覆層の厚さ)の中点から領域A及びB側に向かってそれぞれ0.5μm(合計1μm)の厚さを有する領域を意味する。したがって、領域Cは領域Aと一部が重複することがあり、領域Cは領域Bと一部が重複することがある。
C1は、本発明の全固体二次電池のハイレート特性の更なる向上の点で、30/70〜70/30であることが好ましく、35/65〜65/35であることがより好ましく、40/60〜60/40であることが更に好ましい。
両式において、A1とC1との差は、特に制限されないが、リチウム原子数に対する炭素原子数の比を百分率で表したときに、15〜70%であることが好ましく、20〜55%であることがより好ましい。同様に、C1とB1との差は、特に制限されないが、リチウム原子数に対する炭素原子数の比を百分率で表したときに、15〜70%であることが好ましく、20〜55%であることがより好ましい。
本発明の複合電極活物質は、領域AとBとの間に、上記領域C以外に、他の領域を有していてもよい。このような領域の数としては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が更に好ましい。この他の領域は、リチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liについて、領域A〜Cと同一であっても異なっていてもよい。好ましい態様の1つは、領域Aから領域Bにかけて段階的に比C/Liが大きくなっている態様である。
以下、本発明の複合電極活物質が含有する成分及び含有しうる成分について説明する。
<活物質>
本発明の複合電極活物質は、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの挿入放出が可能な活物質を無機固体電解質及び導電助剤を含有する被覆層(以下、「本発明に用いられる被覆層」ともいう。)で被覆してなる。活物質としては、以下に説明するが、正極活物質及び負極活物質が挙げられる。
(正極活物質)
正極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、遷移金属酸化物、又は、硫黄などのLiと複合化できる元素などでもよい。
中でも、正極活物質としては、遷移金属酸化物を用いることが好ましく、遷移金属元素M(Co、Ni、Fe、Mn、Cu及びVから選択される1種以上の元素)を有する遷移金属酸化物がより好ましい。また、この遷移金属酸化物に元素M(リチウム以外の金属周期律表の第1(Ia)族の元素、第2(IIa)族の元素、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Si、P及びBなどの元素)を混合してもよい。混合量としては、遷移金属元素Mの量(100mol%)に対して0〜30mol%が好ましい。Li/Mのモル比が0.3〜2.2になるように混合して合成されたものが、より好ましい。
遷移金属酸化物の具体例としては、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物、(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物、(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物、(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物及び(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物等が挙げられる。
(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiCoO(コバルト酸リチウム[LCO])、LiNi(ニッケル酸リチウム)、LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム[NCA])、LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム[NMC])及びLiNi0.5Mn0.5(マンガンニッケル酸リチウム)が挙げられる。
(MB)スピネル型構造を有する遷移金属酸化物の具体例として、LiMn(LMO)、LiCoMnO、LiFeMn、LiCuMn、LiCrMn及びLiNiMnが挙げられる。
(MC)リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、LiFePO及びLiFe(PO等のオリビン型リン酸鉄塩、LiFeP等のピロリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類並びにLi(PO(リン酸バナジウムリチウム)等の単斜晶ナシコン型リン酸バナジウム塩が挙げられる。
(MD)リチウム含有遷移金属ハロゲン化リン酸化合物としては、例えば、LiFePOF等のフッ化リン酸鉄塩、LiMnPOF等のフッ化リン酸マンガン塩及びLiCoPOF等のフッ化リン酸コバルト類が挙げられる。
(ME)リチウム含有遷移金属ケイ酸化合物としては、例えば、LiFeSiO、LiMnSiO、LiCoSiO等が挙げられる。
本発明では、(MA)層状岩塩型構造を有する遷移金属酸化物が好ましく、LCO又はNMCがより好ましい。
正極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。正極活物質の粒子径(体積平均粒子径)は特に制限されない。例えば、0.1〜50μmとすることができ、0.5〜20μmであることがより好ましく、1.5〜15μmであることが更に好ましい。正極活物質粒子の粒子径は、下記無機固体電解質の粒子径と同様にして測定できる。正極活物質を所定の粒子径にするには、通常の粉砕機又は分級機が用いられる。例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、衛星ボールミル、遊星ボールミル、旋回気流型ジェットミル又は篩などが好適に用いられる。粉砕時には水又はメタノール等の有機溶媒を共存させた湿式粉砕も行うことができる。所望の粒子径とするためには分級を行うことが好ましい。分級は、特に限定はなく、篩、風力分級機などを用いて行うことができる。分級は乾式及び湿式ともに用いることができる。
焼成法によって得られた正極活物質は、水、酸性水溶液、アルカリ性水溶液、有機溶剤にて洗浄した後使用してもよい。
正極活物質は、1種を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
(負極活物質)
負極活物質は、可逆的にリチウムイオンを挿入及び放出できるものが好ましい。その材料は、上記特性を有するものであれば、特に制限はなく、炭素質材料、金属酸化物、金属複合酸化物、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金形成可能な負極活物質等が挙げられる。中でも、炭素質材料、金属複合酸化物又はリチウム単体が信頼性の点から好ましく用いられる。
負極活物質として用いられる炭素質材料とは、実質的に炭素からなる材料である。例えば、石油ピッチ、アセチレンブラック(AB)等のカーボンブラック、黒鉛(天然黒鉛、気相成長黒鉛等の人造黒鉛等)、及びPAN(ポリアクリロニトリル)系の樹脂若しくはフルフリルアルコール樹脂等の各種の合成樹脂を焼成した炭素質材料を挙げることができる。更に、PAN系炭素繊維、セルロース系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、脱水PVA(ポリビニルアルコール)系炭素繊維、リグニン炭素繊維、ガラス状炭素繊維及び活性炭素繊維等の各種炭素繊維類、メソフェーズ微小球体、グラファイトウィスカー並びに平板状の黒鉛等を挙げることもできる。
これらの炭素質材料は、黒鉛化の程度により難黒鉛化炭素質材料(ハードカーボンともいう。)と黒鉛系炭素質材料に分けることもできる。また炭素質材料は、特開昭62−22066号公報、特開平2−6856号公報、同3−45473号公報に記載される面間隔又は密度、結晶子の大きさを有することが好ましい。炭素質材料は、単一の材料である必要はなく、特開平5−90844号公報記載の天然黒鉛と人造黒鉛の混合物、特開平6−4516号公報記載の被覆層を有する黒鉛等を用いることもできる。
炭素質材料としては、ハードカーボン又は黒鉛が好ましく用いられ、黒鉛がより好ましく用いられる。
負極活物質として適用される金属若しくは半金属元素の酸化物としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な酸化物であれば特に制限されず、金属元素の酸化物(金属酸化物)、金属元素の複合酸化物若しくは金属元素と半金属元素との複合酸化物(纏めて金属複合酸化物という。)、半金属元素の酸化物(半金属酸化物)が挙げられる。これらの酸化物としては、非晶質酸化物が好ましく、更に金属元素と周期律表第16族の元素との反応生成物であるカルコゲナイドも好ましく挙げられる。本発明において、半金属元素とは、金属元素と非半金属元素との中間の性質を示す元素をいい、通常、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン及びテルルの6元素を含み、更にはセレン、ポロニウム及びアスタチンの3元素を含む。また、非晶質とは、CuKα線を用いたX線回折法で、2θ値で20°〜40°の領域に頂点を有するブロードな散乱帯を有するものを意味し、結晶性の回折線を有してもよい。2θ値で40°〜70°に見られる結晶性の回折線の内最も強い強度が、2θ値で20°〜40°に見られるブロードな散乱帯の頂点の回折線強度の100倍以下であるのが好ましく、5倍以下であるのがより好ましく、結晶性の回折線を有さないことが特に好ましい。
上記非晶質酸化物及びカルコゲナイドからなる化合物群の中でも、半金属元素の非晶質酸化物又は上記カルコゲナイドがより好ましく、周期律表第13(IIIB)族〜15(VB)族の元素(例えば、Al、Ga、Si、Sn、Ge、Pb、Sb及びBi)から選択される1種単独若しくはそれらの2種以上の組み合わせからなる(複合)酸化物、又はカルコゲナイドが特に好ましい。好ましい非晶質酸化物及びカルコゲナイドの具体例としては、例えば、Ga、GeO、PbO、PbO、Pb、Pb、Pb、Sb、Sb、SbBi、SbSi、Sb、Bi、Bi、GeS、PbS、PbS、Sb又はSbが好ましく挙げられる。
Sn、Si、Geを中心とする非晶質酸化物負極活物質に併せて用いることができる負極活物質としては、リチウムイオン又はリチウム金属を吸蔵及び/又は放出できる炭素質材料、リチウム単体、リチウム合金、リチウムと合金化可能な負極活物質が好適に挙げられる。
金属若しくは半金属元素の酸化物、とりわけ金属(複合)酸化物及び上記カルコゲナイドは、構成成分として、チタン及びリチウムの少なくとも一方を含有していることが、高電流密度充放電特性の観点で好ましい。リチウムを含有する金属複合酸化物(リチウム複合金属酸化物)としては、例えば、酸化リチウムと上記金属(複合)酸化物若しくは上記カルコゲナイドとの複合酸化物、より具体的には、LiSnOが挙げられる。
負極活物質、例えば金属酸化物は、チタン元素を含有すること(チタン酸化物)も好ましく挙げられる。具体的には、LiTi12(チタン酸リチウム[LTO])がリチウムイオンの吸蔵放出時の体積変動が小さいことから急速充放電特性に優れ、電極の劣化が抑制されリチウムイオン二次電池の寿命向上が可能となる点で好ましい。
負極活物質としてのリチウム合金としては、二次電池の負極活物質として通常用いられる合金であれば特に制限されず、例えば、リチウムアルミニウム合金が挙げられる。
リチウムと合金形成可能な負極活物質は、二次電池の負極活物質として通常用いられるものであれば特に制限されない。このような活物質は、充放電による膨張収縮が大きく、上述のように電池性能が低下しやすいが、本発明では負極活物質を上記被覆層により被覆することにより電池性能の低下を抑制できる。このような活物質として、ケイ素元素若しくはスズ元素を有する負極活物質(合金)、Al及びIn等の各金属が挙げられ、より高い電池容量を可能とするケイ素元素を有する負極活物質(ケイ素元素含有活物質)が好ましく、ケイ素元素の含有量が全構成元素の50mol%以上のケイ素元素含有活物質がより好ましい。
一般的に、これらの負極活物質を含有する負極(ケイ素元素含有活物質を含有するSi負極、スズ元素を有する活物質を含有するSn負極等)は、炭素負極(黒鉛及びアセチレンブラックなど)に比べて、より多くのLiイオンを吸蔵できる。すなわち、単位質量あたりのLiイオンの吸蔵量が増加する。そのため、電池容量を大きくすることができる。その結果、バッテリー駆動時間を長くすることができるという利点がある。
ケイ素元素含有活物質としては、例えば、Si、SiOx(0<x≦1)等のケイ素材料、更には、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、ランタン等を含むケイ素含有合金(例えば、LaSi、VSi、La−Si、Gd−Si、Ni−Si)、又は組織化した活物質(例えば、LaSi/Si)、他にも、SnSiO、SnSiS等のケイ素元素及びスズ元素を含有する活物質等が挙げられる。なお、SiOxは、それ自体を負極活物質(半金属酸化物)として用いることができ、また、全固体二次電池の稼働によりSiを生成するため、リチウムと合金化可能な負極活物質(その前駆体物質)として用いることができる。
スズ元素を有する負極活物質としては、例えば、Sn、SnO、SnO、SnS、SnS、更には上記ケイ素元素及びスズ元素を含有する活物質等が挙げられる。また、酸化リチウムとの複合酸化物、例えば、LiSnOを挙げることもできる。
本発明においては、上述の負極活物質を特に制限されることなく用いることができるが、電池容量の点では、負極活物質として、リチウムと合金化可能な負極活物質が好ましい態様であり、中でも、上記ケイ素材料又はケイ素含有合金(ケイ素元素を含有する合金)がより好ましく、ケイ素(Si)又はケイ素含有合金を含むことが更に好ましい。
上記焼成法により得られた化合物の化学式は、測定方法として誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法、簡便法として、焼成前後の粉体の質量差から算出できる。
負極活物質の形状は特に制限されないが粒子状が好ましい。負極活物質の体積平均粒子径は、特に制限されないが、0.1〜60μmが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましく、1.0〜15μmであることが更に好ましい。負極活物質粒子の体積平均粒子径は、下記無機固体電解質の平均粒径と同様にして測定できる。所定の粒子径にするには、正極活物質と同様に、通常の粉砕機若しくは分級機が用いられる。
上記負極活物質は、1種を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
全固体二次電池において、正極活物質として本発明の複合電極活物質を用いる場合、負極活物質層を二次電池の充電により形成することもできる。この場合、上記負極活物質に代えて、全固体二次電池内に発生する周期律表第一族若しくは第二族に属する金属のイオンを用いることができる。このイオンを電子と結合させて金属として析出させることで、負極活物質層を形成できる。
(活物質の被覆)
正極活物質及び負極活物質の表面は別の金属酸化物で表面被覆されていてもよい。すなわち、活物質と被覆層との間に、別の金属酸化物で形成された表面被覆を有していてもよい。表面被覆剤としてはTi、Nb、Ta、W、Zr、Al、Si又はLiを含有する金属酸化物等が挙げられる。具体的には、チタン酸スピネル、タンタル系酸化物、ニオブ系酸化物、ニオブ酸リチウム系化合物等が挙げられ、具体的には、LiTi12、LiTi、LiTaO、LiNbO、LiAlO、LiZrO、LiWO、LiTiO、Li、LiPO、LiMoO、LiBO、LiBO、LiCO、LiSiO、SiO、TiO、ZrO、Al、B等が挙げられる。
また、正極活物質又は負極活物質を含む電極表面は硫黄又はリンで表面処理されていてもよい。
更に、正極活物質又は負極活物質の、上記表面被覆を形成する粒子表面は、上記表面被覆の前後において活性光線又は活性気体(プラズマ等)により表面処理を施されていてもよい。
<無機固体電解質>
本発明に用いられる被覆層は、無機固体電解質を含有する。
本発明において、無機固体電解質とは、リチウム原子を有する無機の固体電解質のことであり、固体電解質とは、その内部においてイオンを移動させることができる固体状の電解質のことである。主たるイオン伝導性材料として有機物を含むものではないことから、有機固体電解質(ポリエチレンオキシド(PEO)などに代表される高分子電解質、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)などに代表される有機電解質塩)とは明確に区別される。また、無機固体電解質は定常状態では固体であるため、通常カチオン及びアニオンに解離又は遊離していない。この点で、電解液、又は、ポリマー中でカチオン及びアニオンに解離若しくは遊離している無機電解質塩(LiPF、LiBF、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、LiClなど)とも明確に区別される。無機固体電解質は周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有するものであれば、特に限定されず、電子伝導性を有さないものが一般的である。本発明の全固体二次電池がリチウムイオン電池の場合、無機固体電解質は、リチウムイオンのイオン伝導性を有することが好ましい。
上記無機固体電解質は、全固体二次電池に通常使用される固体電解質材料を適宜選定して用いることができる。無機固体電解質は(i)硫化物系無機固体電解質、(ii)酸化物系無機固体電解質、(iii)ハロゲン化物系無機固体電解質、及び、(iV)水素化物系固体電解質が挙げられ、活物質と無機固体電解質との間により良好な界面を形成することができる観点、更に、後述する混合機による混合において被覆層と活物質との密着性を高める観点から、硫化物系無機固体電解質が好ましい。
(i)硫化物系無機固体電解質
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子を含有し、かつ、周期律表第1族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
硫化物系無機固体電解質としては、例えば、下記式(S1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。

a1b1c1d1e1 (S1)

式中、LはLi、Na及びKから選択される元素を示し、Lの少なくとも一部はLiを示す。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl及びFから選択される元素を示す。a1〜e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は1〜12:0〜5:1:2〜12:0〜10を満たす。a1は1〜9が好ましく、1.5〜7.5がより好ましい。b1は0〜3が好ましく、0〜1がより好ましい。d1は2.5〜10が好ましく、3.0〜8.5がより好ましい。e1は0〜5が好ましく、0〜3がより好ましい。
各元素の組成比は、下記のように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、P及びSを含有するLi−P−S系ガラス、又はLi、P及びSを含有するLi−P−S系ガラスセラミックスを用いることができる。
硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(LiS)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mで表される元素の硫化物(例えばSiS、SnS、GeS)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
Li−P−S系ガラス及びLi−P−S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは60:40〜90:10、より好ましくは68:32〜78:22である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高いものとすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10−4S/cm以上、より好ましくは1×10−3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
具体的な硫化物系無機固体電解質の例として、原料の組み合わせ例を下記に示す。例えば、LiS−P、LiS−P−LiCl、LiS−P−HS、LiS−P−HS−LiCl、LiS−LiI−P、LiS−LiI−LiO−P、LiS−LiBr−P、LiS−LiO−P、LiS−LiPO−P、LiS−P−P、LiS−P−SiS、LiS−P−SiS−LiCl、LiS−P−SnS、LiS−P−Al、LiS−GeS、LiS−GeS−ZnS、LiS−Ga、LiS−GeS−Ga、LiS−GeS−P、LiS−GeS−Sb、LiS−GeS−Al、LiS−SiS、LiS−Al、LiS−SiS−Al、LiS−SiS−P、LiS−SiS−P−LiI、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiSiO、LiS−SiS−LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。ただし、各原料の混合比は問わない。このような原料組成物を用いて硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法、溶液法及び溶融急冷法を挙げられる。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
(ii)酸化物系無機固体電解質
酸化物系無機固体電解質は、リチウム原子及び酸素原子を含有し、かつ、周期律表第1族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有するものが好ましい。
酸化物系無機固体電解質は、イオン伝導度として、1×10−6S/cm以上であることが好ましく、5×10−6S/cm以上であることがより好ましく、1×10−5S/cm以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、1×10−1S/cm以下であることが実際的である。
具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xaは0.3≦xa≦0.7を満たし、yaは0.3≦ya≦0.7を満たす。〕(LLT); LixbLaybZrzbbb mbnb(MbbはAl、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In及びSnから選ばれる1種以上の元素である。xbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。); Lixcyccc zcnc(MccはC、S、Al、Si、Ga、Ge、In及びSnから選ばれる1種以上の元素である。xcは0<xc≦5を満たし、ycは0<yc≦1を満たし、zcは0<zc≦1を満たし、ncは0<nc≦6を満たす。); Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(xdは1≦xd≦3を満たし、ydは0≦yd≦1を満たし、zdは0≦zd≦2を満たし、adは0≦ad≦1を満たし、mdは1≦md≦7を満たし、ndは3≦nd≦13を満たす。); Li(3−2xe)ee xeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。); LixfSiyfzf(xfは1≦xf≦5を満たし、yfは0<yf≦3を満たし、zfは1≦zf≦10を満たす。); Lixgygzg(xgは1≦xg≦3を満たし、ygは0<yg≦2を満たし、zgは1≦zg≦10を満たす。); LiBO; LiBO−LiSO; LiO−B−P; LiO−SiO; LiBaLaTa12; LiPO(4−3/2w)(wはw<1); LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO; ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO; NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12; Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2−xhSiyh3−yh12(xhは0≦xh≦1を満たし、yhは0≦yh≦1を満たす。); ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。
またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO); リン酸リチウムの酸素原子の一部を窒素で置換したLiPON; LiPOD(Dは、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt及びAuから選ばれる1種以上の元素である。)等が挙げられる。
更に、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C及びGaから選ばれる1種以上の元素である。)等も好ましく用いることができる。
(iii)ハロゲン化物系無機固体電解質
ハロゲン化物系無機固体電解質は、ハロゲン原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオンの伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
ハロゲン化物系無機固体電解質としては、特に制限されないが、例えば、LiCl、LiBr、LiI、ADVANCED MATERIALS,2018,30,1803075に記載のLiYBr、LiYCl等の化合物が挙げられる。中でも、LiYBr、LiYClを好ましい。
(iV)水素化物系無機固体電解質
水素化物系無機固体電解質は、水素原子を含有し、かつ、周期律表第1族若しくは第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
水素化物系無機固体電解質としては、特に制限されないが、例えば、LiBH、Li(BHI、3LiBH−LiCl等が挙げられる。
無機固体電解質は粒子であることが好ましい。この場合、無機固体電解質の粒子径(体積平均粒子径)は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。
本発明において、無機固体電解質の粒子径は、活物質の表面被覆状態等に応じて、活物質及び導電助剤の粒子径等を考慮して、決定されることが好ましい。被覆層を形成する無機固体電解質の粒子径は、上記範囲の中でも、0.1〜5μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましく、0.2〜1μmであることが更に好ましい。
無機固体電解質の粒子径は活物質よりも小さいことが好ましく、活物質の粒子径との差は、特に制限されないが、例えば、0.5〜10μmであることが好ましく、0.8〜5μmであることがより好ましい。
無機固体電解質の粒子径の測定は、以下の手順で行う。無機固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mLサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調製する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(商品名、HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJIS Z 8828:2013「粒子径解析−動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
無機固体電解質は、1種を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
無機固体電解質の被覆層中の含有量は、特に制限されず、上記式(I)で規定される関係を満たす範囲に設定される。例えば、被覆層全体の質量に対して、15〜99質量%であることが好ましく、20〜95質量%であることがより好ましい。
<導電助剤>
本発明に用いられる被覆層は、導電助剤を適宜含有する。
導電助剤としては、炭素原子を含有する物質であれば特に制限はなく、一般的な導電助剤として知られているものを用いることができる。例えば、電子伝導性材料である、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、ニードルコークスなどの無定形炭素、気相成長炭素繊維若しくはカーボンナノチューブなどの繊維状炭素、グラフェン若しくはフラーレンなどの炭素質材料であってもよいし、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリフェニレン誘導体などの導電性高分子を用いてもよい。本発明においては、これら炭素原子を含有する導電助剤に対して銅、ニッケルなどの金属粉、金属繊維等の炭素原子を含有しない通常の導電助剤を併用できる。
本発明において、導電助剤とは、電池を充放電した際にLiの挿入と放出が起きず、活物質として機能しないものをいう。したがって、導電助剤の中でも、電池を充放電した際に活物質層中において活物質として機能しうるものは、導電助剤ではなく活物質に分類する。電池を充放電した際に活物質として機能するか否かは、一義的ではなく、活物質との組み合わせにより決定される。
導電助剤の形状は、特に制限されないが、例えば、不定形状、粒子状又は繊維状であり、粒子状又は繊維状が好ましく、繊維状がより好ましい。本発明に用いられる被覆層は、繊維状炭素を含有することが好ましい。本発明に用いられる被覆層の領域AとBに含まれる導電助剤の形状が異なることが好ましく、全固体二次電池のハイレート特性をより向上させるため、領域Bに含まれる導電助剤が繊維状であることが好ましく、領域Aに含まれる導電助剤が粒子状であり、領域Bに含まれる導電助剤が繊維状であることがより好ましい。
粒子状又は繊維状の導電助剤の体積平均粒子径は、活物質の表面被覆状態等に応じて、活物質及び導電助剤の粒子径等を考慮して、決定されることが好ましい。1〜900nmであることが好ましく、5〜800nmであることがより好ましく、10〜500nmであることが更に好ましい。導電助剤の粒子径は活物質よりも小さいことが好ましく、活物質の粒子径との差は、特に制限されないが、例えば、0.1〜50μmであることが好ましく、1〜15μmであることがより好ましい。
粒子状又は繊維状の導電助剤の体積平均粒子径は、上記無機固体電解質の平均粒径と同様にして測定できる。
粒子状の導電助剤のアスペクト比は、0.5〜1.5が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。一方、繊維状の導電助剤のアスペクト比は、2〜10000が好ましく、10〜1000がより好ましい。アスペクト比は、例えばSEM画像にて形状を観察することにより、導電助剤の中心部を通る線分のうち最大の長さの線分を最大長径とし、最大長径/最大長径に直交する幅によって算出することができる。なお、上記アスペクト比は、全導電助剤の個数を100%として、そのうちの80%のアスペクト比の算術平均値とする。
導電助剤は、1種を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
導電助剤の被覆層中の含有量は、特に制限されず、上記式(I)で規定される関係を満たす範囲に設定される。例えば、被覆層全体の質量に対して、5〜95質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
<無機固体電解質及び導電助剤以外の成分>
被覆層は、無機固体電解質及び導電助剤を含有していればよく、本発明の効果を損なわない範囲で無機固体電解質及び導電助剤以外の成分を含有していてもよい。無機固体電解質及び導電助剤以外の成分としては、特に制限されないが、リチウム塩若しくはリチウムイオン伝導ポリマー等のイオン伝導性物質、導電助剤以外の電子導電性物質、後述する電極用組成物が含有してもよい他の成分等が挙げられる。被覆層はリチウムイオン伝導ポリマーを含有しない形態(例えば、被覆層中の含有量が5質量%以下、)が好ましい。
被覆層中の上記成分の含有量は、特に制限されない。特にイオン伝導性及び電子伝導性を示さない成分の含有量は、被覆層中、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。
(複合電極活物質の製造方法)
本発明の複合電極活物質の製造方法は、特に制限されないが、高速気流中衝撃法、転動流動コーティング法(ゾルゲル法)、混合法等が挙げられ、混合法が好ましい。
上記比C/Liを偏移させる方法は、公知の方法を特に制限されることなく適用でき、例えば、無機固体電解質及び導電助剤の混合比を変更して、高速気流中衝撃法によるコーティング、転動流動コーティング又は混合を複数回行う方法が挙げられる。
好ましい製造方法として下記工程(1)と、1回又は複数回行う下記工程(2)とを有し、工程(1)と最後に行う上記工程(2)における無機固体電解質及び導電助剤の混合割合を変更して、上記式(I)で規定される関係を満たす被覆層を活物質の表面に形成する方法が挙げられる。

工程(1):活物質、無機固体電解質及び導電助剤を混合する工程
工程(2):工程(1)で得られる混合物と、無機固体電解質及び導電助剤とを混合する工程
工程(2)を行う回数は1回以上であれば特に制限されず、例えば、3回とすることができる。生産性等を考慮すると、1〜4回が好ましく、1回〜3回がより好ましい。
工程(2)で用いる無機固体電解質及び導電助剤は、新たに被覆層を形成する材料であり、直前に行った工程で用いた無機固体電解質及び導電助剤(被覆層形成済)と同種でも異種でもよい。
工程(2)で混合する無機固体電解質と導電助剤との混合比(被覆層中の含有量に相当)は、最後に行う上記工程(2)の混合比が工程(1)の混合比と異なっていればよく、工程ごとに異なっていてもよい。この混合比の変更は、上記濃度傾斜の態様に応じて適宜に設定される。混合比は、通常、上記各式における、A1、B1、C1、更には他の領域の比C/Liを満たす値に設定される。
両工程における混合方法は、特に制限されず、後述する電極用組成物の調製方法で説明する方法を適用できる。その一例として、活物質又は直前に行った工程で得られる混合物と、無機固体電解質及び導電助剤とを、例えば、5〜180分間ボールミルで混合する方法が挙げられる。具体的には、後述する実施例で説明する方法が挙げられる。
[電極用組成物]
本発明の電極用組成物は、本発明の複合電極活物質と、分散媒とを含有する。本発明の電極用組成物は、複合電極活物質が分散媒中に分散したスラリーであることが好ましい。
電極用組成物中の複合電極活物質の含有量は、電極用組成物が含有する全固形分中、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。
本発明の電極用組成物は、全固体二次電池用電極シート又は全固体二次電池の活物質層の成形材料として好ましく用いることができる。
本明細書において、固形分(固形成分)とは、電極用組成物を、1mmHgの気圧下、窒素雰囲気下170℃で6時間乾燥処理したときに、揮発又は蒸発して消失しない成分をいう。典型的には、後述の分散媒以外の成分を指す。
本発明の電極用組成物は、特に制限されないが、含水率(水分含有量ともいう。)が、500ppm以下であることが好ましく、200ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることが更に好ましく、50ppm以下であることが特に好ましい。電極用組成物の含水率が少ないと、無機固体電解質の劣化を抑制することができる。含水量は、電極用組成物中に含有している水の量(電極用組成物に対する質量割合)を示し、具体的には、0.02μmのメンブレンフィルターでろ過し、カールフィッシャー滴定を用いて測定された値とする。
<分散媒>
本発明の電極用組成物が含有する分散媒(分散媒体)は、含有する固形分を分散又は溶解させるものであればよい。分散媒としては、例えば、各種の有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、アルコール化合物、エーテル化合物、アミド化合物、アミン化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、ニトリル化合物、エステル化合物等の各溶媒が挙げられる。
上記各溶媒の具体例を以下に示す。
アルコール化合物としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールが挙げられる。
エーテル化合物としては、アルキレングリコールアルキルエーテル(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等)、ジアルキルエーテル(ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン、ジオキサン(1,2−、1,3−及び1,4−の各異性体を含む)等)が挙げられる。
アミド化合物としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。
アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。
ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトンなどが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素化合物が挙げられる。
脂肪族化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素化合物が挙げられる。
ニトリル化合物としては、例えば、アセトニトリル、プロピロニトリル、イソブチロニトリルなどが挙げられる。
エステル化合物としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酪酸ブチル、ペンタン酸ブチルなどが挙げられる。
非水系分散媒としては、上記芳香族化合物、脂肪族化合物等が挙げられる。
本発明においては、中でも、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、脂肪族化合物、エステル化合物が好ましく、ケトン化合物、脂肪族化合物又はエステル化合物が更に好ましい。本発明においては、硫化物系無機固体電解質を用いて、更に上記の特定の有機溶媒を選定することが好ましい。この組み合わせを選定することにより、硫化物系無機固体電解質に対して活性な官能基が含まれないため硫化物系無機固体電解質を安定に取り扱える。特に硫化物系無機固体電解質と脂肪族化合物との組み合わせが好ましい。
分散媒は常圧(1気圧)での沸点が50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。上限は250℃以下であることが好ましく、220℃以下であることが更に好ましい。
上記分散媒は、1種を単独で含有していても、2種以上を含有していてもよい。
本発明において、電極用組成物中の、分散媒の含有量は、特に制限されず適宜に設定することができる。例えば、電極用組成物中、20〜99質量%が好ましく、25〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
<バインダー>
本発明の電極用組成物は、バインダーを含有していてもよい。バインダーは、どのような形態で含有していてもよく、例えば、電極用組成物、全固体二次電池用電極シート又は全固体二次電池中において、粒子状であっても不定形状であってもよい。バインダーは、ポリマー粒子の形態で含有していることが好ましい。より好ましくは、マクロモノマー成分を含有した樹脂粒子の形態で含有している。
本発明で使用するバインダーがポリマー粒子である場合、このポリマー粒子を形成するポリマーは特に限定されない。
このバインダーは、特に制限はなく、例えば、下記のポリマーからなる粒子の形態が好ましい。
含フッ素ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニレンジフルオリド(PVdF)、ポリビニレンジフルオリドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(PVdF−HFP)が挙げられる。
炭化水素系熱可塑性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)、ブチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレンが挙げられる。
アクリルポリマーとしては、各種の(メタ)アクリルモノマー類、(メタ)アクリルアミドモノマー類、及びこれらポリマーを構成するモノマーの共重合体(好ましくは、アクリル酸とアクリル酸メチルとの共重合体)が挙げられる。
また、そのほかのビニル系モノマーとの共重合体(コポリマー)も好適に用いられる。例えば、(メタ)アクリル酸メチルとスチレンとの共重合体、(メタ)アクリル酸メチルとアクリロニトリルとの共重合体、(メタ)アクリル酸ブチルとアクリロニトリルとスチレンとの共重合体が挙げられる。本発明において、コポリマーは、統計コポリマー及び周期コポリマーのいずれでもよく、ブロックコポリマーが好ましい。
その他のポリマーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、セルロース誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、アクリルポリマー、ポリウレタン、ポリアミド及びポリイミドが好ましく、アクリルポリマー、ポリウレタン及びポリアミドがより好ましく、アクリルポリマーが特に好ましい。
バインダーを構成するポリマーは、常法により合成ないし調製したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
バインダーは、1種を含有していてもよいし、2種以上を含有していてもよい。
電極用組成物がバインダーを含有する場合、バインダーの電極用組成物中の含有量は、全固体二次電池に用いたときの界面抵抗の低減と低減された界面抵抗の維持を考慮すると、固形成分100質量%中、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限としては、電池特性の観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
<リチウム塩>
本発明の電極用組成物は、リチウム塩(支持電解質)を含有することも好ましい。
リチウム塩としては、通常この種の製品に用いられるリチウム塩が好ましく、特に制限はなく、例えば、特開2015−088486号公報の段落0082〜0085記載のリチウム塩が好ましい。
本発明の電極用組成物がリチウム塩を含む場合、リチウム塩の含有量は、複合電極活物質100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限としては、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
<分散剤>
本発明の電極用組成物は分散剤を含有してもよい。分散剤としては、全固体二次電池に通常使用されるものを適宜選定して用いることができる。一般的には粒子吸着と立体反発及び/又は静電反発を意図した化合物が好適に使用される。
<他の添加剤>
本発明の電極用組成物は、上記各成分以外の他の成分として、適宜に、イオン液体、増粘剤、架橋剤(ラジカル重合、縮合重合又は開環重合により架橋反応するもの等)、重合開始剤(酸又はラジカルを熱又は光によって発生させるものなど)、消泡剤、レベリング剤、脱水剤、酸化防止剤等を含有することができる。イオン液体は、イオン伝導度をより向上させるため含有されるものであり、公知のものを特に制限されることなく用いることができる。
(電極用組成物の調製)
本発明の電極用組成物は、複合電極活物質、分散媒、更には適宜に、バインダー、リチウム塩、任意の他の成分を、例えば通常用いる各種の混合機で混合することにより、混合物として、好ましくはスラリーとして、調製することができる。
混合方法は特に制限されず、一括して混合してもよく、順次混合してもよい。混合する環境は特に制限されないが、乾燥空気下又は不活性ガス下等が挙げられる。
[全固体二次電池用電極シート]
本発明の全固体二次電池用電極シートは、全固体二次電池の電極活物質層を形成しうるシート状成形体であって、電極、又は電極と固体電解質層との積層体に好ましく用いられる。
本発明の全固体二次電池用電極シート(単に「電極シート」ともいう。)は、活物質層を有する電極シートであればよく、活物質層が基材(集電体)上に形成されているシートでも、基材を有さず、活物質層から形成されているシートであってもよい。この電極シートは、通常、集電体及び活物質層を有するシートであるが、集電体、活物質層及び固体電解質層をこの順に有する態様、並びに、集電体、活物質層、固体電解質層及び活物質層をこの順に有する態様も含まれる。本発明の電極シートは上述の他の層を有してもよい。本発明の電極シートを構成する各層の層厚は、後述する全固体二次電池において説明する各層の層厚と同じである。
本発明の全固体二次電池用シートは、活物質層の少なくとも1層が本発明の複合電極活物質を含有する。本発明の複合電極活物質を含有する活物質層において、複合電極活物質のほとんどが被覆層による活物質の被覆状態を維持しており、更には上記式(I)で規定される関係を大きく損なわず、維持している。被覆層を形成している無機固体電解質及び導電助剤の一部は本発明の効果を損なわない範囲で被覆層から脱落して複合電極活物質と独立に存在していてもよい。これにより、本発明の全固体二次電池用電極シートを用いて全固体二次電池を製造すると、優れた電池性能を示す。
[全固体二次電池用電極シートの製造方法]
本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法は、特に制限されず、本発明の電極用組成物を用いて、活物質層を形成することにより、製造できる。例えば、好ましくは集電体上(他の層を介していてもよい。)に、製膜(塗布乾燥)して電極用組成物からなる層(塗布乾燥層)を形成する方法が挙げられる。これにより、集電体と、塗布乾燥層とを有する全固体二次電池用電極シートを作製することができる。ここで、塗布乾燥層とは、本発明の電極用組成物を塗布し、分散媒を乾燥させることにより形成される層(すなわち、本発明の電極用組成物を用いてなり、本発明の電極用組成物から分散媒を除去した組成からなる層)をいう。活物質層は、本発明の効果を損なわない範囲であれば分散媒が残存していてもよく、残存量としては、例えば、各層中、3質量%以下とすることができる。
本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法において、塗布、乾燥等の各工程については、下記全固体二次電池の製造方法において説明する。
本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法においては、上記のようにして得られた塗布乾燥層を加圧することもできる。加圧条件等については、後述する、全固体二次電池の製造方法において説明する。
また、本発明の全固体二次電池用電極シートの製造方法においては、基材、保護層(特に剥離シート)等を剥離することもできる。
[全固体二次電池]
本発明の全固体二次電池は、正極活物質層と、この正極活物質層に対向する負極活物質層と、正極活物質層及び負極活物質層の間に配置された固体電解質層とを有する。正極活物質層は、好ましくは正極集電体上に形成され、正極を構成する。負極活物質層は、好ましくは負極集電体上に形成され、負極を構成する。
負極活物質層及び正極活物質層の少なくとも1つの層は、本発明の複合電極活物質を含有し、負極活物質層及び正極活物質層が複合電極活物質を含有することが好ましい。本発明の複合電極活物質を含有する活物質層中における複合電極活物質のほとんどが被覆層による活物質の被覆状態を維持しており、更には上記式(I)で規定される関係を大きく損なわず、維持している。被覆層を形成している無機固体電解質及び導電助剤の一部は本発明の効果を損なわない範囲で被覆層から脱落して複合電極活物質と独立に存在していてもよい。また、この活物質層は、好ましくは、含有する成分種及びその含有量比について、本発明の電極用組成物の固形分におけるものと同じである。なお、活物質層の一方が本発明の電極用組成物で形成されない場合、公知の材料を用いることができる。
負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層の厚さは、それぞれ、特に制限されない。各層の厚さは、一般的な全固体二次電池の寸法を考慮すると、それぞれ、10〜1,000μmが好ましく、20μm以上500μm未満がより好ましい。本発明の全固体二次電池においては、正極活物質層及び負極活物質層の少なくとも1層の厚さが、50μm以上500μm未満であることが更に好ましい。
正極活物質層及び負極活物質層は、それぞれ、固体電解質層とは反対側に集電体を備えていてもよい。
〔筐体〕
本発明の全固体二次電池は、用途によっては、上記構造のまま全固体二次電池として使用してもよいが、乾電池の形態とするためには更に適当な筐体に封入して用いることが好ましい。筐体は、金属性のものであっても、樹脂(プラスチック)製のものであってもよい。金属性のものを用いる場合には、例えば、アルミニウム合金又は、ステンレス鋼製のものを挙げることができる。金属性の筐体は、正極側の筐体と負極側の筐体に分けて、それぞれ正極集電体及び負極集電体と電気的に接続させることが好ましい。正極側の筐体と負極側の筐体とは、短絡防止用のガスケットを介して接合され、一体化されることが好ましい。
以下に、図1を参照して、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池について説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る全固体二次電池(リチウムイオン二次電池)を模式化して示す断面図である。本実施形態の全固体二次電池10は、負極側からみて、負極集電体1、負極活物質層2、固体電解質層3、正極活物質層4、正極集電体5を、この順に有する。各層はそれぞれ接触しており、隣接した構造をとっている。このような構造を採用することで、充電時には、負極側に電子(e)が供給され、そこにリチウムイオン(Li)が蓄積される。一方、放電時には、負極に蓄積されたリチウムイオン(Li)が正極側に戻され、作動部位6に電子が供給される。図示した例では、作動部位6に電球をモデル的に採用しており、放電によりこれが点灯するようにされている。
図1に示す層構成を有する全固体二次電池を2032型コインケースに入れる場合、この全固体二次電池を全固体二次電池用電極シートと称し、この全固体二次電池用電極シートを2032型コインケースに入れて作製した電池を全固体二次電池と称して呼び分けることもある。
(正極活物質層、固体電解質層、負極活物質層)
全固体二次電池10においては、正極活物質層及び負極活物質層のいずれも、本発明の全固体二次電池用電極シートで構成されており、本発明の複合電極活物質を含有している。そのため、この全固体二次電池10は優れた電池性能を示す。正極活物質層4及び負極活物質層2が含有する複合電極活物質は、互いに同種であっても異種であってもよい。
本発明において、正極活物質層及び負極活物質層のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、活物質層又は電極活物質層と称することがある。また、正極活物質及び負極活物質のいずれか、又は両方を合わせて、単に、活物質又は電極活物質と称することがある。
全固体二次電池10においては、負極活物質層をリチウム金属層とすることができる。リチウム金属層としては、リチウム金属の粉末を堆積又は成形してなる層、リチウム箔及びリチウム蒸着膜等が挙げられる。リチウム金属層の厚さは、上記負極活物質層の上記厚さにかかわらず、例えば、1〜500μmとすることができる。
正極集電体5及び負極集電体1は、電子伝導体が好ましい。
本発明において、正極集電体及び負極集電体のいずれか、又は、両方を合わせて、単に、集電体と称することがある。
正極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたもの(薄膜を形成したもの)が好ましく、その中でも、アルミニウム及びアルミニウム合金がより好ましい。
負極集電体を形成する材料としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル及びチタンなどの他に、アルミニウム、銅、銅合金又はステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタンあるいは銀を処理させたものが好ましく、アルミニウム、銅、銅合金及びステンレス鋼がより好ましい。
集電体の形状は、通常フィルムシート状のものが使用されるが、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体なども用いることができる。
集電体の厚みは、特に制限されないが、1〜500μmが好ましい。また、集電体表面は、表面処理により凹凸を付けることも好ましい。
本発明において、負極集電体、負極活物質層、固体電解質層、正極活物質層及び正極集電体の各層の間又はその外側には、機能性の層、部材等を適宜介在若しくは配設してもよい。また、各層は単層で構成されていても、複層で構成されていてもよい。
[全固体二次電池の製造]
全固体二次電池は、常法によって、製造できる。具体的には、全固体二次電池は、本発明の電極用組成物等を用いて、活物質層を形成することにより、製造できる。ただし、活物質層の形成に際して集電体以外の基材を用いた場合には、活物質から基材を剥離して、全固体二次電池の製造に用いる。これにより、優れた電池性能を示し、更に小さな電気抵抗を示す全固体二次電池を製造できる。以下、詳述する。
本発明の全固体二次電池は、本発明の電極用組成物を、適宜基材(例えば、集電体となる金属箔)上に、塗布し、塗膜を形成する(製膜する)工程を含む(介する)方法(本発明の全固体二次電池用シートの製造方法)を行って、製造できる。
例えば、正極集電体である金属箔上に、正極用組成物を塗布して正極活物質層を形成し、全固体二次電池用正極シートを作製する。次いで、この正極活物質層の上に、固体電解質層を形成するための固体電解質組成物を塗布して、固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、負極用組成物を塗布して、負極活物質層を形成する。負極活物質層の上に、負極集電体(金属箔)を重ねることにより、正極活物質層と負極活物質層の間に固体電解質層が挟まれた構造の全固体二次電池を得ることができる。これを筐体に封入して所望の全固体二次電池とすることもできる。
また、各層の形成方法を逆にして、負極集電体上に、負極活物質層、固体電解質層及び正極活物質層を形成し、正極集電体を重ねて、全固体二次電池を製造することもできる。
別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シートを作製する。また、負極集電体である金属箔上に、負極用組成物を塗布して負極活物質層を形成し、全固体二次電池用負極シートを作製する。次いで、これらシートのいずれか一方の活物質層の上に、上記のようにして、固体電解質層を形成する。更に、固体電解質層の上に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートの他方を、固体電解質層と活物質層とが接するように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
また別の方法として、次の方法が挙げられる。すなわち、上記のようにして、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートを作製する。また、これとは別に、固体電解質組成物を基材上に塗布して、固体電解質層からなる全固体二次電池用固体電解質シートを作製する。更に、全固体二次電池用正極シート及び全固体二次電池用負極シートで、基材から剥がした固体電解質層を挟むように積層する。このようにして、全固体二次電池を製造することができる。
上記の製造方法においては、正極用組成物及び負極用組成物のいずれか1つに本発明の電極用組成物を用いればよく、いずれも、本発明の電極用組成物を用いることが好ましい。
<各層の形成(成膜)>
各組成物の塗布方法は特に制限されず、適宜に選択できる。例えば、塗布(好ましくは湿式塗布)、スプレー塗布、スピンコート塗布、ディップコート、スリット塗布、ストライプ塗布、バーコート塗布が挙げられる。
このとき、各組成物は、それぞれ塗布した後に乾燥処理を施してもよいし、重層塗布した後に乾燥処理をしてもよい。乾燥温度は特に制限されない。下限は30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましく、200℃以下が更に好ましい。このような温度範囲で加熱することで、分散媒を除去し、固体状態(塗布乾燥層)にすることができる。また、温度を高くしすぎず、全固体二次電池の各部材を損傷せずに済むため好ましい。これにより、全固体二次電池において、優れた総合性能を示し、かつ良好な結着性と、非加圧でも良好なイオン伝導度を得ることができる。
塗布した電極用組成物、又は、全固体二次電池を作製した後に、各層又は全固体二次電池を加圧することが好ましい。また、各層を積層した状態で加圧することも好ましい。加圧方法としては油圧シリンダープレス機等が挙げられる。加圧力としては特に制限されず、一般的には5〜1500MPaの範囲であることが好ましい。
また、塗布した電極用組成物は、加圧と同時に加熱してもよい。加熱温度としては特に制限されず、一般的には30〜300℃の範囲である。無機固体電解質のガラス転移温度よりも高い温度でプレスすることもできる。
加圧は塗布溶媒又は分散媒を予め乾燥させた状態で行ってもよいし、溶媒又は分散媒が残存している状態で行ってもよい。
なお、各組成物は同時に塗布してもよいし、塗布乾燥プレスを同時及び/又は逐次行ってもよい。別々の基材に塗布した後に、転写により積層してもよい。
加圧中の雰囲気としては特に制限されず、大気下、乾燥空気下(露点−20℃以下)、不活性ガス中(例えばアルゴンガス中、ヘリウムガス中、窒素ガス中)などいずれでもよい。
プレス時間は短時間(例えば数時間以内)で高い圧力をかけてもよいし、長時間(1日以上)かけて中程度の圧力をかけてもよい。全固体二次電池用シート以外、例えば全固体二次電池の場合には、中程度の圧力をかけ続けるために、全固体二次電池の拘束具(ネジ締め圧等)を用いることもできる。
プレス圧はシート面等の被圧部に対して均一であっても異なる圧であってもよい。
プレス圧は被圧部の面積又は膜厚に応じて変化させることができる。また同一部位を段階的に異なる圧力で変えることもできる。
プレス面は平滑であっても粗面化されていてもよい。
<初期化>
上記のようにして製造した全固体二次電池は、製造後又は使用前に初期化を行うことが好ましい。初期化は特に制限されず、例えば、プレス圧を高めた状態で初充放電を行い、その後、全固体二次電池の一般使用圧力になるまで圧力を開放することにより、行うことができる。
[全固体二次電池の用途]
本発明の全固体二次電池は種々の用途に適用することができる。適用態様には特に制限はないが、例えば、電子機器に搭載する場合、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源などが挙げられる。その他民生用として、自動車、電動車両、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)などが挙げられる。更に、各種軍需用、宇宙用として用いることができる。また、太陽電池と組み合わせることもできる。
以下に、実施例に基づき本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。以下の実施例において組成を表す「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。本発明において「室温」とは25℃を意味する。
<硫化物系無機固体電解質の合成>
硫化物系無機固体電解質として、T.Ohtomo,A.Hayashi,M.Tatsumisago,Y.Tsuchida,S.Hama,K.Kawamoto,Journal of Power Sources,233,(2013),pp231−235およびA.Hayashi,S.Hama,H.Morimoto,M.Tatsumisago,T.Minami,Chem.Lett.,(2001),pp872−873の非特許文献を参考にして、Li−P−S系ガラスを合成した。
具体的には、アルゴン雰囲気下(露点−70℃)のグローブボックス内で、硫化リチウム(LiS、Aldrich社製、純度>99.98%)2.42g、五硫化二リン(P、Aldrich社製、純度>99%)3.90gをそれぞれ秤量し、乳鉢に投入した。LiS及びPはモル比でLiS:P=75:25とした。メノウ製乳鉢上において、メノウ製乳棒を用いて、5分間混合した。
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記混合物全量を投入し、アルゴン雰囲気下で容器を密閉した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7(商品名)に容器をセットし、25℃で、回転数510rpmで20時間メカニカルミリングを行うことで黄色粉体の硫化物系無機固体電解質(Li−P−S系ガラス、LPS)6.20gを得た。平均粒径は2.6μmであった。
<バインダAの合成>
還流冷却管、ガス導入コックを付した2L三口フラスコに、後述のようにして調製したマクロモノマーM−1の40質量%ヘプタン溶液 7.2g、アクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬工業社製) 12.4g、アクリル酸(富士フイルム和光純薬工業社製) 6.7g、ヘプタン(富士フイルム和光純薬工業社製) 207g、アゾイソブチロニトリル 1.4gを添加し、流速200mL/minにて窒素ガスを10分間導入した後に、100℃に昇温した。別容器にて調製した液(マクロモノマーM−1の40質量%ヘプタン溶液 93.1g、アクリル酸メチル 222.8g、アクリル酸 120.0g、ヘプタン 300.0g、アゾイソブチロニトリル 2.1gを混合した液)を4時間かけて滴下した。滴下完了後、アゾイソブチロニトリル 0.5gを添加した。その後100℃で2時間攪拌した後、室温まで冷却し、ろ過することでバインダAの分散液を得た。固形成分濃度は39.2%であった。平均粒径は150nmであった。
マクロモノマーM−1の40質量%ヘプタン溶液は以下のようにして調製した。
12−ヒドロキシステアリン酸(富士フイルム和光純薬工業社製)の自己縮合体(GPCポリスチレンスタンダード数平均分子量:2,000)にグリシジルメタクリレート(東京化成工業社製)を反応させマクロモノマーとしてそれをメタクリル酸メチルとグリシジルメタクリレート(東京化成工業社製)と1:0.99:0.01(モル比)の割合で重合したポリマーにアクリル酸(富士フイルム和光純薬工業社製)を反応させたマクロモノマーM−1を得た。このマクロモノマーM−1のSP値は9.3、数平均分子量は11000であった。
<複合電極活物質の合成>
(ボールミル方式)
以下のようにして、後記表1に記載の被覆原料1を用いて下記工程(1)行い、次いで、後記表1に記載の被覆原料2及び3を用いて下記工程(2)を2回行って、後記表1に記載の複合電極活物質No.7を合成した。
− 工程(1) −
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、LPS 3gと、導電助剤としてアセチレンブラック 0.2gと、活物質として平均粒径5μmのNMC 10gとを、ボールミル(商品名:P−7、フリッチュ社製)で室温下、370rpmで30分間撹拌して、LPS及び導電助剤を含む被覆層を有する活物質1を得た(被覆回数1)。
− 工程(2) −
この活物質1と、LPS 0.05gと、アセチレンブラック 0.4gとを、ボールミル(商品名:P−7、フリッチュ社製)で室温下、370rpmで30分間撹拌して、LPS及び導電助剤を含む被覆層を有する活物質2を得た(被覆回数2)。
この活物質2と、LPS 0.1gと、アセチレンブラック 0.4gとを、ボールミル(商品名:P−7、フリッチュ社製)で室温下、370rpmで30分間撹拌して、LPS及び導電助剤を含む被覆層を有する複合電極活物質No.7を得た(被覆回数3)。
複合電極活物質No.7の合成において、後記表1の組成及び被覆回数を採用したこと以外は、複合電極活物質No.7と同様にして、後記表1に記載の複合電極活物質No.7及び12以外の複合電極活物質を合成した。
(高速気流中衝撃方式)
以下のようにして、後記表1に記載の被覆原料1を用いて下記工程(1a)行い、次いで、後記表1に記載の被覆原料3を用いて下記工程(2a)を行って、後記表1に記載の複合電極活物質No.12を合成した。
− 工程(1a) −
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、LPS 3gと、導電助剤としてアセチレンブラック 0.2gと、活物質として平均粒径5μmのNMC 10gとを、ボールミル(商品名:P−7、フリッチュ社製)で室温下、150rpmで30分間撹拌して、LPS及び導電助剤を含む複合体を得た。その後、高速気流中衝撃装置(奈良機械製作所社製NHS-0(商品名))を用いて、12000rpm、5分間の乾式複合化処理工程を経ることで、LPS及び導電助剤を含む被覆層を有する活物質1を得た(被覆回数1)。
− 工程(2a) −
この活物質1と、LPS 0.1gと、アセチレンブラック 0.4gとを、ボールミル(商品名:P−7、フリッチュ社製)で室温下、150rpmで30分間撹拌して、LPS及び導電助剤を含む複合体を得た。その後、高速気流中衝撃装置(奈良機械製作所社製NHS-0(商品名))を用いて、12000rpm、5分間の乾式複合化処理工程を経ることで(被覆回数2)、LPS及び導電助剤を含む被覆層を有する複合電極活物質No.12を得た。
<全固体二次電池の作製>
以下のようにして、図1に示す層構成を有する全固体二次電池No.1−7を作製した。
(正極用組成物1の調製)
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記で合成した複合電極活物質No.7 7.0g、LPS 0.9g、分散媒としてヘプタン 12.3gを投入した。遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで10分間混合を続け、正極用組成物1を調製した。
(負極用組成物1の調製)
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記で合成したLPS 2.8g、分散媒としてヘプタン 12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合した。その後、活物質としてCGB20(商品名、日本黒鉛社製)7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間混合を続け負極用組成物1を調製した。
(正極シートの作製)
上記で調製した正極用組成物1を、アルミ箔(正極集電体)上に、アプリケータ(商品名:SA−201ベーカー式アプリケータ、テスター産業社製)により30mg/cmの目付量となるように塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧し(20MPa、1分間)、正極集電体上に正極活物質層を有する正極シートを作製した。
(負極シートの作製)
上記で調製した負極用組成物1を、ステンレス鋼(SUS)箔(負極集電体)上に、アプリケータ(商品名:SA−201ベーカー式アプリケータ、テスター産業社製)により15mg/cmの目付量となるように塗布し、80℃で1時間加熱後、さらに110℃で1時間乾燥させた。その後、ヒートプレス機を用いて、加熱(120℃)しながら加圧し(20MPa、1分間)、負極集電体上に負極活物質層を有する負極シートを作製した。
作製した正極シートおよび負極シートを用いて、以下のように全固体二次電池を作製した。
正極シートを直径10mmφの円盤状に打ち抜き、10mmφのポリエチレンテレフタレート(PET)製の円筒に入れた。円筒内の正極活物質層の表面上に上記合成したLPSを30mg入れて、円筒の両端開口部から10mmφのSUS製の棒を挿入した。正極シートの正極集電体側とLPSを、SUS製棒により350MPaの圧力で加圧形成して固体電解質層を形成した。その後、固体電解質層側に配置したSUS製棒を一旦外し、直径10mmφの円盤状に打ち抜いた負極シートを、円筒内の固体電解質層の上に挿入した。外していたSUS製棒を円筒内に再度挿入し、50MPaの圧力をかけた状態で固定した。このようにしてアルミ箔(厚さ20μm)−正極活物質層(厚さ100μm)−硫化物系無機固体電解質層(厚さ200μm)−負極活物質層(厚さ30μm)−SUS箔(厚さ20μm)の構成を有する全固体二次電池を得た。
全固体二次電池No.1−7の作製において、複合電極活物質No.7に代えて、複合電極活物質No.1〜6及び8〜24を用いたこと以外は、全固体二次電池No.1−7と同様にして、全固体二次電池No.1−1〜1−6及1−び8〜1−24を作製した。
全固体二次電池No.1−7の作製において、正極用組成物1及び負極用組成物1に代えて、下記正極用組成物2及び負極用組成物2を用いたこと以外は、全固体二次電池No.1−7と同様にして、全固体二次電池No.1−26を作製した。
(正極用組成物2の調製)
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記で合成したLPS 2.8g、分散媒としてヘプタン12.3gを投入した。フリッチュ社製遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数300rpmで2時間混合した。その後、活物質としてNMC 7.0gを容器に投入し、同様に、遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数200rpmで15分間混合を続け正極用組成物2を調製した。
(負極用組成物2の調製)
ジルコニア製45mL容器(フリッチュ社製)に、直径5mmのジルコニアビーズを66g投入し、上記で合成した複合電極活物質No.26 7.0g、LPSを0.9g、分散媒としてヘプタン 12.3gを投入した。遊星ボールミルP−7に容器をセットし、温度25℃、回転数100rpmで10分間混合を続け、負極用組成物2を調製した。
全固体二次電池No.1−26の作製において、複合電極活物質No.26に代えて、複合電極活物質No.1−25及び1−27〜30を用いたこと以外は、全固体二次電池No.1−7と同様にして、全固体二次電池No.1−25及び1−27〜30を作製した。
<リチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Li>
上記合成した複合電極活物質の被覆層の各領域におけるC/Liは以下のようにして測定した。
複合電極活物質粉末を350MPaでプレスし複合電極活物質粉末ペレットを得て、このペレットを割断しイオンミリング装置(日立製作所、IM4000PLUS(商品名))で、加速電圧3kV、放電電圧1.5V、処理時間4時間、アルゴンガスフローレート0.1ml/minの条件で切り出した。複合電極活物質断面をSEM(日立製作所、MINISCOPE TM3030PLUS(商品名))にて倍率×5000倍で観察した。各領域の測定値は、無作為に複合電極活物質10個を選択し、各複合電極活物質について、周方向は中心角90°間隔で4か所、複合電極活物質の厚さ方向については各領域の中心近傍で1か所のC/Liを算出して、10個の複合電極活物質から得られた各領域の値の算術平均値を採用した。
活物質接触面は、SEM-EDX(日立製作所、QUANTAX70(商品名))にて組成(正極活物質由来のMn若しくはAlと被覆層中の無機固体電解質由来のLi又は負極活物質由来のSiやSnと被覆層中の無機固体電解質由来のLi)が不連続に変化する箇所を活物質と被覆層の接触面とした。被覆層表面は、SEM-EDXにて組成(被覆層中の無機固体電解質由来のLiと空隙)が不連続に変化する箇所を被覆層の表面とした。なお、領域A、領域C、領域Bは同一直線上で測定した(1つの半径上)。
全固体二次電池中で複合電極活物質は、被覆層の各領域におけるC/Liを維持していた。なお、全固体二次電池中での複合電極活物質の被覆層の各領域におけるC/Liは、全固体二次電池を分解して複合電極活物質を取り出し、取り出した複合電極活物質を用いて上記と同様にして測定した。
上記合成した複合電極活物質の活物質に対する被覆層の被覆率は以下のようにして算出した。
10個の複合電極活物質を無作為に選び、各複合電極活物質について、活物質接触部の周長Xと、被覆されていない部分の領域の長さsとを測定し、下記式から被覆率を算出して、10個の複合電極活物質から得られた値の算術平均値を採用した。
被覆率(%)=100×(X−s)/X
全固体二次電池中で複合電極活物質は、複合電極活物質の活物質に対する被覆層の被覆率を維持していた。なお、全固体二次電池中での複合電極活物質の活物質に対する被覆層の被覆率は、全固体二次電池を分解して複合電極活物質を取り出し、取り出した複合電極活物質を用いて上記と同様にして測定した。
上記合成した複合電極活物質の被覆層の層厚は、10個の複合電極活物質を無作為に選び、各複合電極活物質について、無作為に40か所の活物質接触部と被覆部表面との最短距離を、上記と同様に断面を切り出しSEM(日立製作所、MINISCOPE TM3030PLUS(商品名))にて倍率×5000倍の画像から測定し、その算術平均値を採用した。
全固体二次電池中で複合電極活物質は、複合電極活物質の被覆層の層厚を維持していた。なお、全固体二次電池中での複合電極活物質の被覆層の各領域における層厚は、全固体二次電池を分解して複合電極活物質を取り出し、取り出した複合電極活物質を用いて上記と同様にして測定した。
<電池特性の評価(ハイレート特性試験)>
上記で作製した全固体二次電池を用い、30℃の環境下、充電電流値0.13mA及び放電電流値0.13mAの条件で4.3V〜3.0Vの充放電を1回行った(初期化した)。
その後、ハイレート特性試験として、25℃の環境下、充放電電流値3.9mAの条件で4.3V〜3.0Vの充放電を行った。
初期化の放電時の放電容量(1)と4.3V〜3.0Vの充放電の放電時の放電容量(2)とを測定し、下記式により放電容量維持率を測定し、この放電容量維持率を下記評価基準にあてはめハイレート特性を評価した。「E」以上が本試験の合格である。
放電容量維持率(%)=(放電容量(2)/放電容量(1))×100
−評価基準−
AA:70%以上80%未満
A:60%以上70%未満
B:50%以上60%未満
C:40%以上50%未満
D:30%以上40%未満
E:20%以上30%未満
F:15%以上20%未満
G:0%以上15%未満
Figure 2020203545
<表の注>
No.1〜30:複合電極活物質のNo.を示す。
No.1−1〜1−30:全固体二次電池のNo.を示す。
SE:無機固体電解質
NMC:LiNi1/3Co1/3Mn1/3(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、豊島製作所社製、平均粒径5.0μm
NCA:LiNi0.85Co0.10Al0.05(ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム)、日本化学産業社製、平均粒径6.0μm
Si:Alfa Aesar社製、平均粒径3.0μm
Sn:Alfa Aesar社製、平均粒径3.5μm
LLZ:LiLaZr12、豊島製作所社製、平均粒径1.3μm
AB:アセチレンブラック、デンカ社製、平均粒径40nm、アスペクト比1.0
VGCF:気相成長炭素繊維、昭和電工社製、平均粒径1.2μm、アスペクト比11
CNT:カーボンナノチューブ、Alfa Aesar社製、平均粒径1μm、アスペクト比100
Li−435:商品名、デンカ社製アセチレンブラック、平均粒径23nm、アスペクト比1.2
HSBR:水添スチレンブタジエンゴム
表1から明らかなように、本発明の規定を満たさない複合電極活物質を用いた全固体二次電池はいずれもハイレート特性試験が不合格であった。
これに対して、本発明の複合電極活物質を用いた全固体二次電池はいずれもハイレート特性試験が合格であった。また、例えば、全固体二次電池No.11の結果から、領域Bに存在する導電助剤が繊維状炭素を含むことで、電池性能がより向上することがわかる。
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
本願は、2019年3月29日に日本国で特許出願された特願2019−067059に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
1 負極集電体
2 負極活物質層
3 固体電解質層
4 正極活物質層
5 正極集電体
6 作動部位
10 全固体二次電池

Claims (15)

  1. 活物質と、当該活物質を被覆する被覆層とを有する複合電極活物質であって、
    前記被覆層が無機固体電解質及び導電助剤を含有し、
    前記被覆層に含まれるリチウム原子及び炭素原子が、原子数について下記式(I)で規定される関係を満たす、複合電極活物質。
    A1<B1 式(I)
    式中、A1は前記被覆層の活物質接触部から外側に向けて厚さ0.5μmの領域A中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示し、B1は前記被覆層の表面から内側に向けて厚さ0.5μmの領域B中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示す。ただし、B1は99/1以下である。
  2. 前記領域AとBとの間の領域Cに含まれるリチウム原子及び炭素原子が、原子数について下記式(IIA)又は式(IIB)で規定される関係を満たす、請求項1に記載の複合電極活物質。
    A1≦C1<B1 式(IIA)
    A1<C1≦B1 式(IIB)
    式中、A1及びB1は、前記式(I)中のA1及びB1と同義である。C1は、前記領域C中のリチウム原子数に対する炭素原子数の比C/Liを示す。
  3. 前記導電助剤が繊維状炭素を含む、請求項1又は2に記載の複合電極活物質。
  4. 前記領域Bに存在する導電助剤が繊維状炭素を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合電極活物質。
  5. 前記B1が50/50〜99/1である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合電極活物質。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合電極活物質、及び分散媒を含む電極用組成物。
  7. バインダーを含む、請求項6に記載の電極用組成物。
  8. 前記バインダーが粒子状である、請求項7に記載の電極用組成物。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合電極活物質を含む、全固体二次電池用電極シート。
  10. バインダーを含む、請求項9に記載の全固体二次電池用電極シート。
  11. 前記バインダーが粒子状である、請求項10に記載の全固体二次電池用電極シート。
  12. 正極活物質層と固体電解質層と負極活物質層とをこの順で具備する全固体二次電池であって、
    前記正極活物質層及び前記負極活物質層の少なくとも1つの層が、請求項9〜11のいずれか1項に記載の全固体二次電池用電極シートで構成した層である全固体二次電池。
  13. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合電極活物質の製造方法であって、
    下記工程(1)と1回又は複数回行う下記工程(2)とを有し、下記工程(1)と最後に行う下記工程(2)における無機固体電解質及び導電助剤の混合割合を変更して、前記式(I)で規定される関係を満たす被覆層を活物質の表面に形成する、複合電極活物質の製造方法。
    工程(1):活物質、無機固体電解質及び導電助剤を混合する工程
    工程(2):前記工程(1)で得られる混合物と、無機固体電解質及び導電助剤とを混合する工程
  14. 請求項6〜8のいずれか1項に記載の電極用組成物を製膜することを含む、全固体二次電池用電極シートの製造方法。
  15. 請求項14に記載の製造方法を経て全固体二次電池を製造する、全固体二次電池の製造方法。
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