JPWO2020158410A1 - 電荷輸送性ワニス - Google Patents

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Abstract

例えば、下記式(1−1)で示されるような電荷輸送性物質と、下記式(P−1)で示されるようなオニウムボレート塩と、有機溶媒とを含む電荷輸送性ワニスを提供する。

Description

本発明は、電荷輸送性ワニスに関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELという)素子には、発光層や電荷注入層として、有機化合物からなる電荷輸送性薄膜が用いられる。特に、正孔注入層は、陽極と、正孔輸送層あるいは発光層との電荷の授受を担い、有機EL素子の低電圧駆動および高輝度を達成するために重要な機能を果たす。
正孔注入層の形成方法は、蒸着法に代表されるドライプロセスと、スピンコート法に代表されるウェットプロセスとに大別され、これら各プロセスを比べると、ウェットプロセスの方が大面積に平坦性の高い薄膜を効率的に製造できる。それゆえ、有機ELディスプレイの大面積化が進められている現在、ウェットプロセスで形成可能な正孔注入層が望まれている。
このような事情に鑑み、本発明者らは、各種ウェットプロセスに適用可能であるとともに、有機EL素子の正孔注入層に適用した場合に優れたEL素子特性を実現できる薄膜を与える電荷輸送性材料や、それに用いる有機溶媒に対する溶解性の良好な化合物を開発してきている(例えば、特許文献1〜3参照)。
一方、これまで、有機EL素子を高性能化するために様々な取り込みがなされてきているが、光取出し効率を向上させる等の目的で、用いる機能膜の屈折率を調整する取り組みがなされている。具体的には、素子の全体構成や隣接する他の部材の屈折率を考慮して、相対的に高いあるいは低い屈折率の正孔注入層や正孔輸送層を用いることで、素子の高効率化を図る試みがなされている(例えば、特許文献4、5参照)。
このように、屈折率は有機EL素子の設計上重要な要素であり、有機EL素子用材料では、屈折率も考慮すべき重要な物性値と考えられている。
また、有機ELという素子に用いられる電荷輸送性薄膜の着色は、有機EL素子の色純度および色再現性を低下させる等の事情から、近年、有機EL素子用の電荷輸送性薄膜は、可視領域での透過率が高く、高透明性を有することが望まれている(例えば、特許文献6参照)。
この点に鑑み、本出願人は、可視領域での着色が抑制された、透明性に優れた電荷輸送性薄膜を与えるウェットプロセス用材料を既に見出している(例えば、特許文献6、7参照)。
しかしながら、有機ELディスプレイの大面積化が進められている現在、ウェットプロセスを用いた有機ELディスプレイの実用化に向けてその開発が精力的に行われており、高透明性の電荷輸送性薄膜を与えるウェットプロセス用材料は常に求められている。
国際公開第2008/129947号 国際公開第2015/050253号 国際公開第2017/217457号 特表2007−536718号公報 特表2017−501585号公報 国際公開第2013/042623号 国際公開第2008/032616号
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高い屈折率および非常に優れた透明性を有し、電荷輸送性に優れる電荷輸送性薄膜を再現性よく与える電荷輸送性ワニスを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定の電荷輸送性物質と、所定のオニウムボレート塩とを有機溶媒に溶解させて得られるワニスから、高い屈折率および非常に優れた透明性を有し、電荷輸送性にも優れる電荷輸送性薄膜が再現性よく得られること、並びに当該薄膜を正孔注入層として用いることで、優れた輝度特性の有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の電荷輸送性ワニスを提供する。
1. 電荷輸送性物質と、オニウムボレート塩と、有機溶媒とを含み、
上記電荷輸送性物質が、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含み、上記オニウムボレート塩が、式(a1)で表される1価または2価のアニオンと式(c1)〜(c5)で表される対カチオンからなるオニウムボレート塩(ただし、電気的中性な塩である)を含むことを特徴とする電荷輸送性ワニス。
Figure 2020158410
(式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、Xは、重合性官能基を有するアルキル基、重合性官能基を有するアルコキシ基、重合性官能基を有する芳香族炭化水素基または重合性官能基を有する芳香族複素環基を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、1〜5の整数を示す。)
Figure 2020158410
(式中、Arは、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、Lは、アルキレン基、−NH−、酸素原子、硫黄原子または−CN+−を表す。)
Figure 2020158410
2. 上記Rが、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である1の電荷輸送性ワニス。
3. 上記Ar1およびAr2が、それぞれ独立して、下記式(2−1)〜(2−3)のいずれかで表される基である1または2の電荷輸送性ワニス。
Figure 2020158410
(式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表し、cは、それぞれ独立して、1〜3の整数を表す。)
4. 上記Xが、それぞれ独立して、下記式(3−1)〜(3−4)のいずれかで表される基である1〜3のいずれかの電荷輸送性ワニス。
Figure 2020158410
(式中、YおよびZは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、fは0〜10の整数を示す。)
5. 上記Xが、下記式(4)で表される基である4の電荷輸送性ワニス。
Figure 2020158410
(式中、Zは、単結合または酸素原子を表し、gは、0〜10の整数を示す。)
6. 上記電荷輸送性物質が、下記式(1−1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含む1〜5のいずれかの電荷輸送性ワニス。
Figure 2020158410
7. 上記Arが、1または2以上の電子吸引性置換基を有するアリール基である1〜6のいずれかの電荷輸送性ワニス。
8. 上記電子吸引性置換基が、ハロゲン原子である7の電荷輸送性ワニス。
9. 上記アニオンが、式(a2)で表される1〜8のいずれかの電荷輸送性ワニス。
Figure 2020158410
10. 上記オニウムボレート塩が下記式(P−1)で表される9の電荷輸送性ワニス。
Figure 2020158410
11. 1〜10のいずれかの電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜。
12. 11の電荷輸送性薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
13. 1〜10のいずれかの電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることを特徴とする電荷輸送性薄膜の製造方法。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いることで、高い屈折率(高いn)および非常に優れた透明性(極めて低い消衰係数k)を有し、電荷輸送性にも優れる電荷輸送性薄膜が得られる。
また、このような特性を有する電荷輸送性薄膜は、有機EL素子をはじめとした電子素子用薄膜として好適に用いることができる。特に、この薄膜を有機EL素子の正孔注入層に適用することで、輝度特性に優れる有機EL素子を得ることができる。
さらに、本発明の電荷輸送性ワニスは、スピンコート法やインクジェット法等、大面積に成膜可能な各種ウェットプロセスを用いた場合でも電荷輸送性に優れた薄膜を再現性よく製造できるため、近年の有機EL素子の分野における進展にも十分対応できる。
そして、本発明の電荷輸送性ワニスから得られる薄膜は、有機光電変換素子、有機薄膜太陽電池、有機ぺロブスカイト光電変換素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子、発光電子化学電池、量子ドット発光ダイオード、量子レーザー、有機レーザーダイオードおよび有機プラスモン発光素子等の電子素子にも好適に用い得る。
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る電荷輸送性ワニスは、電荷輸送性物質と、オニウムボレート塩と、有機溶媒とを含み、上記電荷輸送性物質が、式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含み、上記オニウムボレート塩が、式(a1)で表される1価または2価のアニオンと式(c1)〜(c5)で表される対カチオンからなるオニウムボレート塩(ただし、電気的中性な塩である)を含むものである。
なお、電荷輸送性とは、導電性と同義であり、正孔輸送性とも同義である。また、本発明の電荷輸送性ワニスは、それ自体に電荷輸送性があるものでもよく、ワニスを使用して得られる固体膜に電荷輸送性があるものでもよい。
Figure 2020158410
ここで、式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表す。
アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜15のアルキル基を挙げることができる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−n−プロピルヘキシル基、2−n−ブチルヘキシル基、2−エチルデシル基および3−エチルヘキシル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状の炭素数1〜15のアルコキシ基を挙げることができる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、2−n−プロピルヘキシルオキシ基、2−n−ブチルヘキシルオキシ基、2−エチルデシルオキシ基、3−エチルヘキシルオキシ基、フェノキシ基が挙げられる。
上記Rは、水素原子および炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基およびt−ブチル基がより好ましく、水素原子、メチル基およびエチル基がより一層好ましく、水素原子およびメチル基が更に好ましい。
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
上記芳香族炭化水素基および芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、ナフタレン、フルオレン、フラン、チオフェン、ピリジン、キノリン、イソキノリンおよびカルバゾールから誘導されるn価の基が挙げられる。なお、上記の「から誘導されるn価の基」とは、ベンゼンなどの所定の基本骨格から水素原子をn個除いた基を意味する。
Ar1およびAr2の好ましい態様としては、下記式(2−1)〜(2−6)で表される基を挙げることができる。
Figure 2020158410
ここで、式中、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
アルキル基としては、上記炭素数1〜15のアルキル基のうち、炭素数1〜10のアルキル基を挙げることができる。
c、dおよびeは、それぞれ独立して、1〜3の整数を表す。
Ar1およびAr2のより好ましい態様としては、下記式(2−1’)〜(2−6’)で表される基を挙げることができる。
Figure 2020158410
Xは、重合性官能基を有するアルキル基、重合性官能基を有するアルコキシ基、重合性官能基を有する芳香族炭化水素基、または重合性官能基を有する芳香族複素環基を表す。
アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基および芳香族複素環基としては、上記で例示したものと同様のものを挙げることができる。
上記重合性官能基とは、触媒の有無に関係なく、光あるいは熱により架橋が可能な基(重合基)であり、具体的には、ビニル基、トリフルオロビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキセタン基およびエポキシ基等が挙げられる。本発明では、これらの中でも、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、オキセタン基およびエポキシ基が好ましく、ビニル基がより好ましい。
aおよびbは、それぞれ独立して、1〜5の整数を示し、1〜3が好ましく、1がより好ましい。
Xの好ましい具体例としては、例えば、下記式(3−1)〜(3−6)で表される基を挙げることができる。
Figure 2020158410
上記式(3−1)〜(3−6)中、YおよびZは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、R3は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を示し、fは0〜10の整数を示す。
アルキル基、芳香族炭化水素基および芳香族複素環基としては、上記で例示したものと同様のものを挙げることができる。
上記芳香族炭化水素基および芳香族複素環基に結合し得る置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、フルオレニル基、ベンジル基、フェネチル基、フラニル基、チオフェニル基、ピリジニル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、ジフェニルアミノ基、トリフェニルアミノ基およびスチレニル基が挙げられる。
Xのより好ましい態様としては、下記式(4)で表される基が挙げられる。
Figure 2020158410
上記式(4)中、Zは、単結合または酸素原子を表し、gは、0〜10の整数を示す。
Xのより一層好ましい態様としては、例えば、下記式(5−1)〜(5−7)で表される基が挙げられる。
Figure 2020158410
本発明で好適に用いることのできる上記式(1)の高分子化合物としては、例えば、下記式(1−1)〜(1−4)で示される繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。
Figure 2020158410
上記高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜500,000であり、分散度(Mw/Mn)は、通常1〜15である。なお、重量平均分子量等の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値である。
なお、上記高分子化合物は、例えば、出願人が関東化学(株)である特開2009−283509号公報等に記載された公知の方法を参考に合成することができる。
上記高分子化合物を用いて電荷輸送性ワニスを調製する際、反応後の溶液の状態で用いても、溶媒を除去して単離したものを用いてもよい。電荷輸送性ワニスを調製する際に、上記高分子化合物の合成時に使用した溶媒とは異なる溶媒を使用する場合は、溶媒置換して目的とする溶媒系としてもよい。
なお、本発明において、上記高分子化合物は、式(1)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含んでいてもよいが、高屈折率および高透明性を有する薄膜を再現性よく得る観点から、式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましく、95〜100モル%がより一層好ましく、100モル%、すなわち、式(1)で表される繰り返し単位からなるものが最も好ましい。
また、本発明で用いる電荷輸送性物質には、上記式(1)で表される高分子化合物以外に、更に他の電荷輸送性物質を含んでもよい。
Figure 2020158410
式中、Arは、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、Lは、アルキレン基、−NH−、酸素原子、硫黄原子または−CN+−を表す。
アリール基としては、炭素数6〜20のアリール基等が挙げられる。その具体例としては、フェニル基、トリル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられ、フェニル基、トリル基およびナフチル基が好ましい。
上記置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基および炭素数2〜20のアルキニル基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
炭素数1〜20のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコサニル基等が挙げられるが、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。
炭素数2〜20のアルケニル基の具体例としては、エテニル基、n−1−プロペニル基、n−2−プロペニル基、1−メチルエテニル基、n−1−ブテニル基、n−2−ブテニル基、n−3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、n−1−ペンテニル基、n−1−デセニル基、n−1−エイコセニル基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルキニル基の具体例としては、エチニル基、n−1−プロピニル基、n−2−プロピニル基、n−1−ブチニル基、n−2−ブチニル基、n−3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、n−1−ペンチニル基、n−2−ペンチニル基、n−3−ペンチニル基、n−4−ペンチニル基、1−メチル−n−ブチニル基、2−メチル−n−ブチニル基、3−メチル−n−ブチニル基、1,1−ジメチル−n−プロピニル基、n−1−ヘキシニル基、n−1−デシニル基、n−1−ペンタデシニル基、n−1−エイコシニル基等が挙げられる。
また、上記アリール基は、上述した置換基の中でも、1または2以上の電子吸引性基を有するものが好ましい。上記電子吸引性基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられ、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
ヘテロアリール基としては、好ましくは炭素数2〜20のヘテロアリール基が挙げられる。その具体例としては、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フラニル基、3−フラニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、4−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基等の含酸素ヘテロアリール基、2−チアゾリル基、4−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、4−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基等の含硫黄ヘテロアリール基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−ピラジル基、3−ピラジル基、5−ピラジル基、6−ピラジル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、6−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、5−ピリダジル基、6−ピリダジル基、1,2,3−トリアジン−4−イル基、1,2,3−トリアジン−5−イル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、1,2,4−トリアジン−6−イル基、1,3,5−トリアジン−2−イル基、1,2,4,5−テトラジン−3−イル基、1,2,3,4−テトラジン−5−イル基、2−キノリニル基、3−キノリニル基、4−キノリニル基、5−キノリニル基、6−キノリニル基、7−キノリニル基、8−キノリニル基、1−イソキノリニル基、3−イソキノリニル基、4−イソキノリニル基、5−イソキノリニル基、6−イソキノリニル基、7−イソキノリニル基、8−イソキノリニル基、2−キノキサニル基、5−キノキサニル基、6−キノキサニル基、2−キナゾリニル基、4−キナゾリニル基、5−キナゾリニル基、6−キナゾリニル基、7−キナゾリニル基、8−キナゾリニル基、3−シンノリニル基、4−シンノリニル基、5−シンノリニル基、6−シンノリニル基、7−シンノリニル基、8−シンノリニル基等の含窒素ヘテロアリール基等が挙げられる。
上記ヘテロアリール基が有する置換基としては、上記アリール基で例示したものと同様の置換基が挙げられる。
Lは、アルキレン基、−NH−、酸素原子、硫黄原子または−CN+−を表すが、−CN+−が好ましい。
アルキレン基としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。その具体例としては、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
本発明で好適に用いることのできる上記式(a1)のアニオンとしては、式(a2)で示されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
Figure 2020158410
一方、対カチオンは、式(c1)〜(c5)で表されるものが挙げられる。
Figure 2020158410
上記オニウムボレート塩のより好ましい態様としては、例えば、下記式(P−1)で示されるものが挙げられる。
Figure 2020158410
本発明において、上記オニウムボレート塩は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
また、必要に応じて公知のその他のオニウムボレート塩を併用してもよい。
なお、上記オニウムボレート塩は、例えば、国際公開第2018/147204号等に記載された公知の方法を参考に合成することができる。
上記オニウムボレート塩は、電荷輸送性ワニスへの溶解を容易にするため、あらかじめ有機溶媒に溶かしておいてもよい。
このような有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテル等の多価アルコールおよびその誘導体類;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン、3−フェノキシトルエン、4−メトキシトルエン、安息香酸メチル、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、イソホロン等の芳香族炭化水素類等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒を使用する場合、その使用割合は、上記オニウムボレート塩100質量部に対して、15〜1,000質量部が好ましく、30〜500質量部がより好ましい。
本発明において、上記オニウムボレート塩と、電荷輸送性物質との比率は、物質量(モル)比で、電荷輸送性物質:オニウムボレート塩=1:0.1〜10程度とすることができる。
また、本発明において、上記オニウムボレート塩と、電荷輸送性物質との比率は、上記モル比を超えない範囲で、質量比では、電荷輸送性物質:オニウムボレート塩=1:0.01〜20程度、好ましくは1:0.01〜10程度、より好ましくは1:0.01〜2程度、更に好ましくは1:0.1〜2程度とすることができ、1:0.15〜1が最適である。
電荷輸送性ワニスを調製する際に用いられる有機溶媒としては、電荷輸送性物質およびオニウムボレート塩を良好に溶解し得る高溶解性溶媒を用いることができる。
このような高溶解性溶媒としては、例えば、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、3−フェノキシトルエン、4−メトキシトルエン、トルエン、アニソール、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸メチル、テトラリン、イソホロン等の有機溶媒が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができ、その使用量は、ワニスに使用する溶媒全体に対して5〜100質量%とすることができる。
また、本発明においては、ワニスに、25℃で10〜200mPa・s、特に35〜150mPa・sの粘度を有し、常圧(大気圧)で沸点50〜300℃、特に150〜250℃の高粘度有機溶媒を少なくとも1種類含有させることで、ワニスの粘度の調整が容易になり、その結果、平坦性の高い薄膜を再現性よく与える、塗布方法に応じたワニス調製が可能となる。
高粘度有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−オクチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
本発明のワニスに用いられる溶媒全体に対する高粘度有機溶媒の添加割合は、固体が析出しない範囲内であることが好ましく、固体が析出しない限りにおいて、添加割合は、5〜90質量%が好ましい。
さらに、基板に対する濡れ性の向上、溶媒の表面張力の調整、極性の調整、沸点の調整等の目的で、その他の溶媒を、ワニスに使用する溶媒全体に対して1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%の割合で混合することもできる。
このような溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジアセトンアルコール、γ−ブチロラクトン、エチルラクテート、n−ヘキシルアセテート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの溶媒は1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。
本発明のワニスの粘度は、作製する薄膜の厚み等や固形分濃度に応じて適宜設定されるものではあるが、通常、25℃で1〜50mPa・sであり、その表面張力は、通常、20〜50mN/mである。
また、電荷輸送性ワニスの固形分濃度は、ワニスの粘度および表面張力等や、作製する薄膜の厚み等を勘案して適宜設定されるものではあるが、通常、0.1〜10.0質量%程度であり、ワニスの塗布性を向上させることを考慮すると、好ましくは0.5〜5.0質量%程度、より好ましくは1.0〜3.0質量%程度である。
ワニスの調製法としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記オニウムボレート塩を先に溶媒に溶解させ、そこへ電荷輸送性物質を順次加える手法や、上記オニウムボレート塩と電荷輸送性物質との混合物を溶媒に溶解させる手法が挙げられる。
また、有機溶媒が複数ある場合は、例えば、上記オニウムボレート塩と電荷輸送性物質をよく溶解する溶媒に、まずこれらを溶解させ、そこへその他の溶媒を加えてもよく、複数の有機溶媒の混合溶媒に、上記オニウムボレート塩、電荷輸送性物質を順次、あるいはこれらを同時に溶解させてもよい。
本発明においては、電荷輸送性ワニスは、高屈折率および高透明性を有する均一な薄膜を再現性よく得る観点から、上記オニウムボレート塩、電荷輸送性物質等を有機溶媒に溶解させた後、サブマイクロメートルオーダーのフィルター等を用いて濾過することが望ましい。
本発明の電荷輸送性薄膜は、上記説明した電荷輸送性ワニスを基材上に塗布して焼成することで、基材上に形成させることができる。
ワニスの塗布方法としては、特に限定されるものではなく、ディップ法、スピンコート法、転写印刷法、ロールコート法、刷毛塗り、インクジェット法、スプレー法、スリットコート法等が挙げられ、塗布方法に応じてワニスの粘度および表面張力を調節することが好ましい。
焼成雰囲気は特に限定されるものではなく、大気雰囲気だけでなく、窒素等の不活性ガスや真空中でも均一な成膜面および高い電荷輸送性を有する薄膜を得ることができるが、通常、大気下である。
焼成温度は、得られる薄膜の用途、得られる薄膜に付与する電荷輸送性の程度、溶媒の種類や沸点等を勘案して、100〜260℃程度の範囲内で適宜設定されるものではあるが、得られる薄膜を有機EL素子の正孔注入層として用いる場合、140〜250℃程度が好ましく、145〜240℃程度がより好ましい。
なお、焼成の際、より高い均一成膜性を発現させたり、基材上で反応を進行させたりする目的で、2段階以上の温度変化をつけてもよく、加熱は、例えば、ホットプレートやオーブン等、適当な機器を用いて行えばよい。
電荷輸送性薄膜の膜厚は、特に限定されないが、有機EL素子の正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層として用いる場合、5〜300nmが好ましい。膜厚を変化させる方法としては、ワニス中の固形分濃度を変化させたり、塗布時の基板上の溶液量を変化させたりする等の方法がある。
以上説明した本発明の電荷輸送性薄膜は、400〜800nmの波長領域の平均値で、通常、1.50以上の屈折率(n)と1.0×10-2以下の消衰係数(k)を示すが、ある態様においては1.60以上の屈折率を、その他のある態様においては1.65以上の屈折率を示し、また、ある態様においては1.0×10-3以下の消衰係数(k)を、その他のある態様においては2.0×10-4以下の消衰係数(k)を示す。
本発明の有機EL素子は、一対の電極を有し、これら電極の間に、上述の本発明の電荷輸送性薄膜からなる電荷輸送層を有するものである。
有機EL素子の代表的な構成としては、以下(a)〜(f)が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。なお、下記構成において、必要に応じて、発光層と陽極の間に電子ブロック層等を、発光層と陰極の間にホール(正孔)ブロック層等を設けることもできる。また、正孔注入層、正孔輸送層あるいは正孔注入輸送層が電子ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよく、電子注入層、電子輸送層あるいは電子注入輸送層がホール(正孔)ブロック層等としての機能を兼ね備えていてもよい。更に、必要に応じて各層の間に任意の機能層を設けることも可能である。
(a)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(b)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(c)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
(d)陽極/正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層/陰極
(e)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極
(f)陽極/正孔注入輸送層/発光層/陰極
「正孔注入層」、「正孔輸送層」および「正孔注入輸送層」とは、発光層と陽極との間に形成される層であって、正孔を陽極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「正孔注入輸送層」であり、発光層と陽極の間に、正孔輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陽極に近い層が「正孔注入層」であり、それ以外の層が「正孔輸送層」である。特に、正孔注入(輸送)層は、陽極からの正孔受容性だけでなく、正孔輸送(発光)層への正孔注入性にも優れる薄膜が用いられる。
「電子注入層」、「電子輸送層」および「電子注入輸送層」とは、発光層と陰極との間に形成される層であって、電子を陰極から発光層へ輸送する機能を有するものであり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が1層のみ設けられる場合、それが「電子注入輸送層」であり、発光層と陰極の間に、電子輸送性材料の層が2層以上設けられる場合、陰極に近い層が「電子注入層」であり、それ以外の層が「電子輸送層」である。
「発光層」とは、発光機能を有する有機層であって、ドーピングシステムを採用する場合、ホスト材料とドーパント材料を含んでいる。このとき、ホスト材料は、主に電子と正孔の再結合を促し、励起子を発光層内に閉じ込める機能を有し、ドーパント材料は、再結合で得られた励起子を効率的に発光させる機能を有する。燐光素子の場合、ホスト材料は主にドーパントで生成された励起子を発光層内に閉じ込める機能を有する。
本発明の電荷輸送性ワニスから作製された電荷輸送性薄膜は、有機EL素子において、発光層と陽極との間に形成される機能層として好適であるが、正孔注入層、正孔輸送層、正孔注入輸送層としてより好適であり、正孔注入層としてより一層好適である。
本発明の電荷輸送性ワニスを用いてEL素子を作製する場合の使用材料や、作製方法としては、下記のようなものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記電荷輸送性ワニスから得られる薄膜からなる正孔注入層を有するOLED素子の作製方法の一例は、以下のとおりである。なお、電極は、電極に悪影響を与えない範囲で、アルコール、純水等による洗浄や、UVオゾン処理、酸素−プラズマ処理等による表面処理を予め行うことが好ましい。
陽極基板上に、上記の方法により、上記電荷輸送性ワニスを用いて正孔注入層を形成する。これを真空蒸着装置内に導入し、正孔輸送層、発光層、電子輸送層/ホールブロック層、電子注入層、陰極金属を順次蒸着する。あるいは、当該方法において蒸着で正孔輸送層と発光層を形成する代わりに、正孔輸送性高分子を含む正孔輸送層形成用組成物と発光性高分子を含む発光層形成用組成物を用いてウェットプロセスによってこれらの層を形成する。なお、必要に応じて、発光層と正孔輸送層との間に電子ブロック層を設けてよい。
陽極材料としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)に代表される透明電極や、アルミニウムに代表される金属、またはこれらの合金等から構成される金属陽極が挙げられ、平坦化処理を行ったものが好ましい。高電荷輸送性を有するポリチオフェン誘導体やポリアニリン誘導体を用いることもできる。
なお、金属陽極を構成するその他の金属としては、金、銀、銅、インジウムやこれらの合金等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
正孔輸送層を形成する材料としては、(トリフェニルアミン)ダイマー誘導体、[(トリフェニルアミン)ダイマー]スピロダイマー、N,N’−ビス(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン(α−NPD)、4,4’,4”−トリス[3−メチルフェニル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス[1−ナフチル(フェニル)アミノ]トリフェニルアミン(1−TNATA)等のトリアリールアミン類、5,5”−ビス−{4−[ビス(4−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−2,2’:5’,2”−ターチオフェン(BMA−3T)等のオリゴチオフェン類などが挙げられる。
発光層を形成する材料としては、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体等の金属錯体、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、ビススチリルベンゼン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾールの金属錯体、シロール誘導体等の低分子発光材料;ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリ[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリビニルカルバゾール等の高分子化合物に発光材料と電子移動材料を混合した系等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、蒸着で発光層を形成する場合、発光性ドーパントと共蒸着してもよく、発光性ドーパントとしては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)等の金属錯体や、ルブレン等のナフタセン誘導体、キナクリドン誘導体、ペリレン等の縮合多環芳香族環等が挙げられるが、これらに限定されない。
電子輸送層/ホールブロック層を形成する材料としては、オキシジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、フェニルキノキサリン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピリミジン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
電子注入層を形成する材料としては、酸化リチウム(Li2O)、酸化マグネシウム(MgO)、アルミナ(Al23)等の金属酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)の金属フッ化物などが挙げられるが、これらに限定されない。
陰極材料としては、アルミニウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金等が挙げられるが、これらに限定されない。
電子ブロック層を形成する材料としては、トリス(フェニルピラゾール)イリジウム等が挙げられるが、これに限定されない。
正孔輸送性高分子としては、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,1’−ビフェニレン−4,4−ジアミン)]、ポリ[(9,9−ビス{1’−ペンテン−5’−イル}フルオレニル−2,7−ジイル)−co−(N,N’−ビス{p−ブチルフェニル}−1,4−ジアミノフェニレン)]、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)−ベンジジン]−エンドキャップド ウィズ ポリシルシスキノキサン、ポリ[(9,9−ジジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−co−(4,4’−(N−(p−ブチルフェニル))ジフェニルアミン)]等が挙げられる。
発光性高分子としては、ポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)(PDAF)等のポリフルオレン誘導体、ポリ(2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)等のポリフェニレンビニレン誘導体、ポリ(3−アルキルチオフェン)(PAT)等のポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
陽極と陰極およびこれらの間に形成される層を構成する材料は、ボトムミッション構造、トップエミッション構造のいずれを備える素子を製造するかで異なるため、その点を考慮して、適宜材料選択する。
通常、ボトムエミッション構造の素子では、基板側に透明陽極が用いられ、基板側から光が取り出されるのに対し、トップエミッション構造の素子では、金属からなる反射陽極が用いられ、基板と反対方向にある透明電極(陰極)側から光が取り出されることから、例えば陽極材料について言えば、ボトムエミッション構造の素子を製造する際はITO等の透明陽極を、トップエミッション構造の素子を製造する際はAl/Nd等の反射陽極を、それぞれ用いる。
本発明の有機EL素子は、特性悪化を防ぐため、定法に従い、必要に応じて捕水剤などとともに封止してもよい。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、使用した装置は以下のとおりである。
(1)基板洗浄:長州産業(株)製 基板洗浄装置(減圧プラズマ方式)
(2)ワニスの塗布:ミカサ(株)製 スピンコーターMS−A100
(3)膜厚測定:(株)小坂研究所製 微細形状測定機サーフコーダET−4000
(4)膜の表面観察:レーザーテック社製 共焦点レーザー顕微鏡 リアルタイム走査型レーザー顕微鏡 1LM21D
(5)EL素子の作製:長州産業(株)製 多機能蒸着装置システムC−E2L1G1−N
(6)EL素子の輝度等の測定:(株)イーエッチシー製 多チャンネルIVL測定装置
(7)EL素子の寿命測定(輝度半減期測定):(株)イーエッチシー製 有機EL輝度寿命評価システムPEL−105S
(8)屈折率(n)および消衰係数(k)の測定:ジェー・エー・ウーラムジャパン製 多入射角分光エリプソメーターVASE
[1]電荷輸送性物質の合成
[合成例1]ポリマー(1−1)の合成
特開2009−283509号公報の合成例15に記載された方法に従って、下記式で表される繰り返し単位からなる2,7位結合ポリ−N−[4−{N,N−ビス(4’−(4−ペンテニル)フェニル)アミノ}フェニル]−3,6−ジメチルカルバゾールを合成した。
得られたポリマー(1−1)の重量平均分子量Mwは285,682、多分散度Mw/Mnは10.9であった。
Figure 2020158410
[2]オニウムボレート塩の合成
[合成例2]オニウムボレート塩(P−1)の合成
国際公開第2018/147204号の合成例1に記載された方法に従って、下記式で示されるオニウムボレート塩(P−1)を合成した。
Figure 2020158410
[合成例3]オニウムボレート塩(P−2)の合成
国際公開第2017/150412号の合成例1に記載された方法に従って、下記式で示されるオニウムボレート塩(P−2)を合成した。
Figure 2020158410
[3]電荷輸送性ワニスの調製
[実施例1]
ポリマー(1−1)77mgおよびオニウムボレート塩(P−1)77mgの混合物に、3−フェノキシトルエン4.0gおよび4−メトキシトルエン1.0gを加えて、室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性ワニスを得た。
[比較例1]
ポリマー(1−1)51mgおよびオニウムボレート塩(P−2)51mgの混合物に、シクロヘキサノン4.0gおよびアニソール1.0gを加えて、室温で攪拌して溶解させ、得られた溶液を、孔径0.2μmのシリンジフィルターでろ過して電荷輸送性ワニスを得た。
[4]屈折率(n)および消衰係数(k)の評価
[実施例2]
実施例1−1で得られたワニスを、スピンコーターを用いて石英基板に塗布した後、大気雰囲気下、200℃で30分間焼成し、石英基板上に50nmの均一な薄膜を形成した。
得られた石英基板を用いて、多入射角分光エリプソメーターにてn値およびk値の測定を行った。結果を表1に示す。
Figure 2020158410
表1に示したように、本発明の電荷輸送性薄膜は、屈折率が高く、消衰係数が非常に低かった。
[5]有機EL素子の作製および特性評価
[実施例3]
実施例1で得られたワニスを、スピンコーターを用いてITO基板に塗布した後、大気雰囲気下、200℃で30分間焼成し、ITO基板上に50nmの薄膜を形成した。ITO基板としては、ITOが表面上に膜厚150nmでパターニングされた25mm×25mm×0.7tのガラス基板を用い、使用前にO2プラズマ洗浄装置(150W、30秒間)によって表面上の不純物を除去した。
次いで、薄膜を形成したITO基板に対し、蒸着装置(真空度1.0×10-5Pa)を用いてα−NPDを0.2nm/秒にて120nm成膜した。次に、関東化学(株)製の電子ブロック材料HTEB−01を10nm成膜した。次いで、新日鉄住金化学(株)製の発光層ホスト材料NS60と発光層ドーパント材料Ir(ppy)3を共蒸着した。共蒸着は、Ir(ppy)3の濃度が6%になるように蒸着レートをコントロールし、40nm積層させた。次いで、Alq3、フッ化リチウムおよびアルミニウムの薄膜を順次積層して有機EL素子を得た。この際、蒸着レートは、Alq3およびアルミニウムについては0.2nm/秒、フッ化リチウムについては0.02nm/秒の条件でそれぞれ行い、膜厚は、それぞれ20nm、0.5nmおよび80nmとした。
なお、空気中の酸素、水等の影響による特性劣化を防止するため、有機EL素子は封止基板により封止した後、その特性を評価した。封止は、以下の手順で行った。酸素濃度2ppm以下、露点−76℃以下の窒素雰囲気中で、有機EL素子を封止基板の間に収め、封止基板を接着剤((株)MORESCO製、モレスコモイスチャーカットWB90US(P))により貼り合わせた。この際、捕水剤(ダイニック(株)製HD−071010W−40)を有機EL素子と共に封止基板内に収めた。貼り合わせた封止基板に対し、UV光を照射(波長:365nm、照射量:6,000mJ/cm2)した後、80℃で1時間、アニーリング処理して接着剤を硬化させた。
[比較例2]
実施例1で得られたワニスの代わりに、比較例1で得られたワニスを用いた以外は、実施例3と同様の方法で有機EL素子を作製した。
得られた有機EL素子について、5,000cd/m2で発光させた場合における駆動電圧、電流密度、電流効率、発光効率、外部発光量子収率(EQE)、および輝度の半減期(初期輝度10,000cd/m2が半分に達するのに要する時間)を測定した。結果を表2に示す。なお、比較例2で作製したEL素子は、8Vの電圧をかけても輝度が10cd/m2未満という悪い特性を示したため、表に結果を示していない。
Figure 2020158410
表2に示したように、本発明の電荷輸送性薄膜を備えるEL素子は好適に駆動した。

Claims (13)

  1. 電荷輸送性物質と、オニウムボレート塩と、有機溶媒とを含み、
    上記電荷輸送性物質が、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含み、上記オニウムボレート塩が、式(a1)で表される1価または2価のアニオンと式(c1)〜(c5)で表される対カチオンからなるオニウムボレート塩(ただし、電気的中性な塩である)を含むことを特徴とする電荷輸送性ワニス。
    Figure 2020158410
    (式中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアルコキシ基を表し、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表し、Xは、重合性官能基を有するアルキル基、重合性官能基を有するアルコキシ基、重合性官能基を有する芳香族炭化水素基または重合性官能基を有する芳香族複素環基を表し、aおよびbは、それぞれ独立して、1〜5の整数を示す。)
    Figure 2020158410
    (式中、Arは、それぞれ独立して、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよいヘテロアリール基を表し、Lは、アルキレン基、−NH−、酸素原子、硫黄原子または−CN+−を表す。)
    Figure 2020158410
  2. 上記Rが、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基である請求項1記載の電荷輸送性ワニス。
  3. 上記Ar1およびAr2が、それぞれ独立して、下記式(2−1)〜(2−3)のいずれかで表される基である請求項1または2記載の電荷輸送性ワニス。
    Figure 2020158410
    (式中、R1は、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表し、cは、それぞれ独立して、1〜3の整数を表す。)
  4. 上記Xが、それぞれ独立して、下記式(3−1)〜(3−4)のいずれかで表される基である請求項1〜3のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
    Figure 2020158410
    (式中、YおよびZは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、または置換基を有してもよい芳香族複素環基を示し、fは0〜10の整数を示す。)
  5. 上記Xが、下記式(4)で表される基である請求項4記載の電荷輸送性ワニス。
    Figure 2020158410
    (式中、Zは、単結合または酸素原子を表し、gは、0〜10の整数を示す。)
  6. 上記電荷輸送性物質が、下記式(1−1)で表される繰り返し単位を含む高分子化合物を含む請求項1〜5のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
    Figure 2020158410
  7. 上記Arが、1または2以上の電子吸引性置換基を有するアリール基である請求項1〜6のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
  8. 上記電子吸引性置換基が、ハロゲン原子である請求項7記載の電荷輸送性ワニス。
  9. 上記アニオンが、式(a2)で表される請求項1〜8のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニス。
    Figure 2020158410
  10. 上記オニウムボレート塩が下記式(P−1)で表される請求項9記載の電荷輸送性ワニス。
    Figure 2020158410
  11. 請求項1〜10のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニスから得られる電荷輸送性薄膜。
  12. 請求項11記載の電荷輸送性薄膜を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
  13. 請求項1〜10のいずれか1項記載の電荷輸送性ワニスを基材上に塗布し、溶媒を蒸発させることを特徴とする電荷輸送性薄膜の製造方法。
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