JPWO2020158220A1 - 防音構造体、防音パネル、及びルーバー - Google Patents

防音構造体、防音パネル、及びルーバー Download PDF

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Abstract

より簡易で且つ小型の構造で、且つ、高い吸音性能を発揮する防音構造体、防音パネル、及びルーバーを提供する。
本発明の防音構造体、防音パネル、及びルーバーは、並べて配置された複数の流れ抵抗体を有し、複数の流れ抵抗体のうち、隣り合う2つの流れ抵抗体は、各々の厚み方向において互いに対向しており、複数の流れ抵抗体には、流れ抵抗が150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下である特定流れ抵抗体が2つ以上含まれており、特定流れ抵抗体の厚みは、11mm未満であり、隣り合う特定流れ抵抗体同士の間には隙間が設けられており、隙間の各部分の厚みの平均値が0.6mm以上、且つ40mm未満である。

Description

本発明は、防音構造体、防音パネル、及びルーバーに係り、特に、複数の流れ抵抗体を用いた防音構造体、防音パネル、及びルーバーに関する。
布等の流れ抵抗体を吸音材として用いる防音構造体及び防音パネルは、既に知られている。その一例としては、例えば、特許文献1に記載の防音パネル(特許文献1では、「防音サンドイッチパネル」と表記)が挙げられる。特許文献1に記載の防音パネルは、一対の表面板の間に多孔質材料からなる芯材を挟み込み、一方の表面板に貫通孔を形成し、さらに、その外表面に金属布を装着することで構成されている。ここで、金属布は、流れ抵抗体であり、特許文献1には、金属布の流れ抵抗が5〜300Pa・s/m(=Rayls)であることが開示されている。
上述した構造を有する特許文献1に記載の防音パネルは、高剛性であり、且つ、比較的広帯域で高い吸音性能を示す。その反面、特許文献1に記載の防音パネルは、多孔質材料より重い表面板を有するために比較的重くなり、また、成形形状及び設置スペース等の面で制限を受ける虞がある。それ故に、防音パネルの軽量化、並びに成形形状及び設置スペースの自由度を高める観点では、より簡易な構造、具体的には表面板を利用しない防音構造が求められる。
一方、例えば、特許文献2に開示された防音方法のように、不織布及びファブリック等の繊維体を部屋内に配置して部屋の反響雑音を削減する方法が知られている。特許文献2には、例えば、流れ抵抗体である布を部屋内全体に亘って天井等から吊り下げることで部屋の雑音レベルを削減することが開示されている。
特開2002−189475号公報 特公平5−29919号公報
ここで、特許文献1に記載の防音パネルよりも簡易な構造としては、例えば、単一(1個)の流れ抵抗体のみを用いた構造が考えられる。このような構造において、流れ抵抗体として一般的な吸音材(具体的には、ウレタン、グラスウール、及びマイクロファイバー等)を用いる場合、小型化及び軽量化のために吸音材を薄くすると、高い吸音性能を発揮することが困難となる。これは、一般的な吸音材については、ポーラス性が高く(換言すると、空気密度が高く)、厚みに応じて吸収性能が変わるため、薄い状態では吸音が困難となり、特に吸音材の背面に板材(背面板)がない場合には高い吸音性能が発揮され難くなる。
なお、一般的な吸音材は、微細孔内部に空気を多量に含むために高い断熱性能を有している。それ故に、一般的な吸音材については、熱を発する機器周辺での使用に適さない等、用途が制限されることになる。
また、一般的な吸音材以外の流れ抵抗体としては、比較的薄い布等が挙げられる。ただし、本発明者らによると、単層の布等のみによって構成される防音構造体については十分な吸音性能が得られず、具体的には、音の吸収率の上限が50%程度であることが分かった(例えば、図11参照)。
一方、特許文献2に記載された防音方法のように、複数の布(具体的には、不織布又はファブリック等の繊維体)を部屋内で積層状に並べて配置してもよい。しかし、特許文献2に記載された例では布の間隔が0.45mとなっており、そのサイズまで布の間隔が広がると、部屋内における布の設置スペースとして相当のスペースを確保する必要があり、構造の大型化に繋がってしまう。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、以下に示す目的を解決することを課題とする。
具体的に説明すると、本発明は、上記従来技術の問題点を解決するものであり、より簡易で且つ小型の構造でありつつ、高い吸音性能を発揮する防音構造体及び防音パネルを提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、上記の防音構造体を採用したルーバーを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、並べられた複数の流れ抵抗体に、流れ抵抗が150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下である特定流れ抵抗体が2つ以上含まれており、特定流れ抵抗体の厚みが11mm未満であり、隣り合う特定流れ抵抗体同士の間には隙間が設けられており、隙間の各部分の厚みの平均値が0.6mm以上、且つ40mm未満であることにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、以下の構成により上記の課題を解決することを見出した。
[1] 並べて配置された複数の流れ抵抗体を有し、複数の流れ抵抗体のうち、隣り合う2つの流れ抵抗体は、隣り合う2つの流れ抵抗体の各々の厚み方向において互いに対向しており、複数の流れ抵抗体には、流れ抵抗が150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下である特定流れ抵抗体が2つ以上含まれており、特定流れ抵抗体の厚みは、11mm未満であり、隣り合う特定流れ抵抗体同士の間には隙間が設けられており、隙間の各部分の厚みの平均値が0.6mm以上、且つ40mm未満であることを特徴とする防音構造体。
[2] 特定流れ抵抗体は、布によって構成されている[1]に記載の防音構造体。
[3] 複数の流れ抵抗体には、3個以上、且つ10個以下の特定流れ抵抗体が含まれている[1]又は[2]に記載の防音構造体。
[4] 3個以上、且つ10個以下の特定流れ抵抗体が、複数の流れ抵抗体が並ぶ方向において連続して並べられている[3]に記載の防音構造体。
[5] 複数の流れ抵抗体の各々が特定流れ抵抗体である[1]乃至[4]のいずれかに記載の防音構造体。
[6] 平均値が20mm以下である[1]乃至[5]のいずれかに記載の防音構造体。
[7] 平均値が1mm以上、且つ12mm以下である[1]乃至[6]のいずれかに記載の防音構造体。
[8] 特定流れ抵抗体の厚みは、4mm未満である[1]乃至[7]のいずれかに記載の防音構造体。
[9] 隣り合う特定流れ抵抗体の間には、隙間を保持するための保持部材が設けられている[1]乃至[8]のいずれかに記載の防音構造体。
[10] 特定流れ抵抗体の流れ抵抗が200Pa・s/m以上、且つ1300Pa・s/m以下である[1]乃至[9]のいずれかに記載の防音構造体。
[11] 防音構造体は、空間を仕切る天井及び壁のうちの少なくとも一方に、吊り下げられた状態で取り付けられている[1]乃至[10]のいずれかに記載の防音構造体。
[12] [1]乃至[10]のいずれかに記載の防音構造体を有する防音パネル。
[13] [1]乃至[10]のいずれかに記載の防音構造体が少なくとも一部分を構成するルーバー。
本発明によれば、より簡易で、且つ小型の構造でありつつ、高い吸音性能を発揮する防音構造体及び防音パネルを提供することが可能である。
また、本発明によれば、上記の効果が得られる防音構造体を採用したルーバー及び格子窓を提供することが可能である。
本発明の防音構造体の好適な実施形態の一例を示す図である。 本発明の防音構造体の構成についての説明図であり、図1のA−A断面図である。 第1変形例に係る防音構造体を示す図である。 第2変形例に係る防音構造体を示す図である。 本発明の防音パネルを示す斜視図である。 本発明のルーバーの好適な実施形態の一例を示す図である(その1)。 本発明のルーバーの好適な実施形態の一例を示す図である(その2)。 本発明のルーバーの好適な実施形態の一例を示す図である(その3)。 本発明のルーバーに採用される防音構造体の第一例を示す図である。 本発明のルーバーに採用される防音構造体の第二例を示す図である。 本発明のルーバーに関する他の実施形態を示す図である。 図8Aに図示したルーバーの格子を示す平面図である。 単層布の垂直入射吸音率について実測結果及びシミュレーション結果を示す図である。 Biotモデル、Rigidモデル及びDBモデルのそれぞれのシミュレーション結果を示す図である。 単層構造の吸収率を計算した際の計算結果を示す図である。 三層構造において層間距離を変化させたときの吸収率を示す図である。 三層構造において布の流れ抵抗と層間距離を変化させたときの吸収率を示す図である。 五層構造において層間距離を変化させたときの吸収率を示す図である。 五層構造において布の流れ抵抗と層間距離を変化させたときの吸収率を示す図である。 二層構造において層間距離を変化させたときの吸収率を示す図である。 四層構造において層間距離を変化させたときの吸収率を示す図である。 本願発明の吸収率と単純足し合わせ系の吸収率とを比較した図である。 防音構造体全体の厚みを固定して層の数を変化させたときの吸収率を示す図である。 合計厚みが等しい単層構造及び二層構造のそれぞれの吸収率を示す図である。 2kHzにおける吸収率と合計厚みとの関係を示す図である。 4kHz及び12kHzのそれぞれについて、層間距離と吸収率との関係を示す図である。 規格化した層間距離に対する吸収率を示す図である。 吸収合計値の、層間距離に対する依存性を示す図である。 吸収合計値を層間距離で微分した結果を示す図である。
本発明の一実施形態に係る防音構造体、防音パネル、及びルーバーについて、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら、以下に詳細に説明する。
なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明は、そのような実施態様に限定されるものではない。また、本明細書に添付する図面では、視認し易くするために、必要に応じて各部分の縮尺を適宜変更している。
また、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「直交」及び「平行」とは、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、「直交」及び「平行」とは、厳密な直交あるいは平行に対して±10°未満の範囲内であることなどを意味する。ここで、厳密な直交あるいは平行に対しての誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
また、本明細書において、「同一」及び「同じ」は、本発明が属する技術分野において一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。また、本明細書において、「全部」、「いずれも」または「全面」等というとき、100%である場合のほか、本発明が属する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含み、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合を含むものとする。
また、本発明での「防音」は、「遮音」と「吸音」の両方の意味を含む概念である。ここで、「遮音」は、「音を遮蔽する」こと、換言すれば「音を透過させない」ことを意味し、主として、音(音響)を反射することである。また、「吸音」は、「反射音を少なくする」ことを意味し、分かり易くは音(音響)を吸収することを意味する。そして、以下では、「防音」が主として「吸音」であることとし、「遮音」と「吸音」とを呼び分けて両者を区別することとする。
<<本発明の防音構造体の概要>>
先ず、本発明の防音構造体の概要について説明する。
本発明の防音構造体は、並べて配置された複数の流れ抵抗体を有する(例えば、図2〜図4参照)。本発明の防音構造体では、複数の流れ抵抗体のうち、隣り合う2つの流れ抵抗体が、これら2つの流れ抵抗体の各々の厚み方向において互いに対向している。また、複数の流れ抵抗体には、流れ抵抗が150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下である特定流れ抵抗体が2つ以上含まれている。また、特定流れ抵抗体の厚みは、11mm未満である。また、隣り合う特定流れ抵抗体同士の間には隙間が設けられており、隙間の各部分の厚みの平均値が0.6mm以上、且つ40mm未満である。
上記のように構成された本発明の防音構造体によれば、より簡易で、且つ小型の構造でありながらも、高い吸音性能を発揮することができる。より詳しく説明すると、特許文献1に記載の防音パネルのように、一対の表面板の間に多孔質材料からなる芯材を挟み込み、一方の表面板に貫通孔を形成し、さらに、その外表面に流れ抵抗体としての布を装着することで構成された防音構造体が知られている。ただし、このような構造では、多孔質材料より重い表面板を有するために比較的重くなり、また、成形形状及び設置スペース等の面で制限を受ける虞がある。
これに対して、本発明の防音構造体は、表面板を利用しておらず、その分、より軽量化され、且つより簡易な構造となる。この結果、本発明の防音構造体については、成形形状及び設置スペースの自由度が向上する。
特に、流れ抵抗体の背面側(換言すると、音源とは反対側)に配置される板材、すなわち背面板がない場合には、防音構造体を小型の構造としながらも、通気性を確保しつつ、比較的広い周波数帯域にて音を吸収することが可能となる。ここで、「背面板がない場合」とは、吸音対象音の波長をλとしたときに、流れ抵抗体の背面側において流れ抵抗体の表面からλ/2の距離の中に背面板が存在しないことを意味する。
ところで、上記のように小型化及び軽量化した防音構造体に関して、例えば、単一の流れ抵抗体を用いた構造(すなわち、単層構造)とすると、50%より大きい吸収率を実現することが困難となる。このことは、下記に示す音波の圧力の連続式によって導かれる吸収率からも明らかである。
具体的に説明すると、吸収率をAとし、透過率をTとし、反射率をRとし、透過係数をtとし、反射係数をrとし、T=|t|、R=|r|とすると、下記の関係式が成立する。
A=1−T−R=1−|t|―|r|
ここで、1層の流れ抵抗体と相互作用する音波の基本式である、圧力の連続式は、入射音圧をPとし、反射音圧をPとし、透過音圧をPとしたときに(P、P、及びPは、いずれも複素数)、P=P+Pとなる。
また、t=P/P、r=P/Pであるため、圧力の連続式は、以下のように表される。
1=t+r
以上より、吸収率Aと透過係数tとの間には、下記の関係式が成立する。なお、下記式中のReは、複素数の実部であり、Imは、複素数の虚部である。
A=1−|t|−|1−t|
=1−{Re(t)+Im(t)
−{(Re(1−t))+(Im(1−t))
=1−{Re(t)+Im(t)
−{1−2Re(t)+Re(t)+Im(t)
=−2Re(t)+2Re(t)−2Im(t)
=2Re(t)×(1−Re(t))−2Im(t)
<2Re(t)×(1−Re(t))
上記式は、2x×(1−x)の形の式であり、且つ、0≦x≦1であるので、x=0.25のときにAが最大値(=0.5)となる。このことから、単層構造における音の吸収率は、最大でも0.5となることが分かる。
以上の状況に関して、本発明者らは、流れ抵抗が150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下である特定流れ抵抗体を2つ以上並べて多層構造とし、特定流れ抵抗体の厚み、及び、隣り合う特定流れ抵抗体同士の間の隙間を所定の範囲に設定することで吸収率が向上することを明らかにした。より具体的に説明すると、特定流れ抵抗体の厚みが11mm未満であり、且つ、上記隙間の各部分の厚みの平均値が0.6mm以上、且つ40mm未満であるとき、広い周波数帯域に亘って高い吸収性能を発揮することができ、0.5を超える吸収率が得られるようになる(例えば、図12参照)。特に、隙間を挟んで並ぶ2つの特定流れ抵抗体が近接している場合には、当該隙間における音の干渉効果によって吸収率をより高めることができる。
また、特定流れ抵抗体同士の間に設けられた隙間の各部分の厚みの平均値が40mm未満であるので、特定流れ抵抗体同士が近接しており、特許文献2に記載された構造における布の間隔(=450mm)と比べて格段に小さくなっている。この結果、特許文献2に記載された構造のように布の設置スペースを大きく確保する必要がなく、この結果、防音構造体をより一層小型化することができる。
なお、本発明の防音構造体は、前述したように、流れ抵抗体の背面側に背面板がないことにより、広い周波数帯域に亘って音を効果的に吸収することができる。より詳しく説明すると、吸音対象音の波長λの1/2倍の距離の中に背面板が存在すると、流れ抵抗体が音の節となり、該当する周波数において吸音効果が小さくなってしまう。これに対して、流れ抵抗体の表面(厚み方向における端面)の面積の半分以上に亘って、λ/2の距離の中に背面板が存在しない場合には、音の節となる周波数がないために広帯域で高い吸収率が得られる。
ちなみに、本発明の防音構造体において流れ抵抗体の背面側に背面板が仮に存在するケースでは、流れ抵抗体での音の局所速度を最大化して吸音を高める結果、特定の周波数(厳密には、ピーク周波数)での音の吸収率が向上する。また、上記のケースでは、背面板で音が反射されることでピーク周波数での吸収率を効果的に上げることができる。
なお、上記のケースにおける背面板としては、本発明の防音構造体が利用される空間を仕切る壁及び天井等が該当し、より具体的には建物の壁、床及び天井、車等の輸送機械の板金及び床材、机等の一般家具類の板、防音壁、道路、パーティション等の仕切板、家電類の表面、オフィス機器の表面若しくは内部ダクト、工業機械類の表面、並びに金属板等が該当する。
以上までに本発明の防音構造体の構成及び効果について説明してきたが、本発明の防音構造体は、多岐の用途に用いることが可能であり、例えば、住宅、ホール、エレベーター、教室、オフィス、会議室、学校、保育園及び幼稚園、その他の建物(具体的には、工場及び動物小屋等)、建物以外の構造物、パーティション等で仕切られたブース、並びに防音ブース等の様々な音環境を構築する用途に用いられる。
また、本発明の防音構造体は、上記以外の用途にも利用可能であり、例えば、航空機のエンジンの音響板、自動車の内装材等、箱材及び梱包材等の物流用資材として用いることができる。
また、本発明の防音構造体は、騒音源となる機器、例えばエアコン室外機又は給湯器等を囲むケージとして用いることもできる。本発明の防音構造体によって騒音源を囲むことで、放熱性及び通気性を確保したまま音を吸収しつつ、騒音を防ぐことができる。
また、本発明の防音構造体は、複写機、送風機、空調機器、換気扇、ポンプ類、発電機及びダクト等の材料として用いることができる。さらに、本発明の防音構造体は、塗布機、回転機、及び搬送機等のように音を発する様々な種類の産業用機器;自動車、電車等の車輌、及び航空機等の輸送用機器;並びに冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、テレビジョン、コピー機、電子レンジ、ゲーム機、エアコン、扇風機、プロジェクター、パーソナルコンピュータ、掃除機、空気清浄機、及び換気扇等の一般家庭用機器等に用いることができる。
なお、本発明の防音構造体は、上述した各種の機器において騒音源から発生する音が通過する位置に適宜配置される。
<<本発明の防音構造体の構成例>>
本発明の防音構造体の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の防音構造体の好適な実施形態の一例を示す図であり、具体的には、本発明の防音構造体が設置された部屋を示す図である。図2は、本発明の防音構造体の構成についての説明図であり、図1のA−A断面図である。
本発明の一実施形態に係る防音構造体(以下、防音構造体10)は、図1に示すように、部屋を仕切る天井Cに吊り下げられた状態で利用される。具体的には、例えば、防音構造体10における一つの角部(厳密には、積層された複数の流れ抵抗体12の各々において同じ位置に在る角部)に紐11を括り付け、その紐11を天井Cに取り付けた留め具(不図示)に引っ掛けることで防音構造体10が取り付けられる。
なお、防音構造体10が取り付けられる場所は、天井Cに限定されず、例えば、部屋を仕切る側壁又は梁等であってもよく、具体的には、側壁又は梁等に上記の紐11を直接的あるいは間接的に固定して防音構造体10を取り付けてもよい。
防音構造体10の構成例について説明すると、防音構造体10は、図2に示すように、複数の流れ抵抗体12を有する。各流れ抵抗体12は、通気性を有し、その内部には通気部分(空隙)が形成されている。流れ抵抗体12は、布、薄厚の微細貫通孔板、又は薄厚の多孔質吸音材料等によって構成されているのが好ましく、意匠性及び触感(人が触れた際の質感)の面では布が特に好ましい。ここで、布は、不織布、織布、及び編布等を含む繊維集合体を指す。また、布の素材に関しては、天然糸でもよいし、合成糸でもよいし、金属材料等でもよい。また、流れ抵抗体12としての微細貫通孔板は、孔径1mm程度以下の貫通孔を多数有する板材を指し、化学的にエッチング処理等で孔を形成したものでもよいし、物理的に貫通孔を穿った板でもよい。あるいは、構造上の工夫によって貫通孔状部分が形成された構造の微細貫通孔板であってもよい。なお、微細貫通孔板は、パンチングメタル及びエキスパンドメタルを含む。
また、複数の流れ抵抗体12は、図2に示すように、間隔を空けて並べて配置されており、具体的には、複数の流れ抵抗体12のうち、隣り合う2つの流れ抵抗体12が各流れ抵抗体12の厚み方向(図2では、流れ抵抗体12が積層している方向)において互いに対向している。つまり、複数の流れ抵抗体12の各々は、積層しており、積層構造における各層をなしている。なお、図2に図示の構成では、多層構造における層の数(すなわち、積層状態で並んだ流れ抵抗体12の個数)が3となっているが、これに限定されるものではなく、2以上の任意の数であってもよい。
また、複数の流れ抵抗体12の中には、流れ抵抗が150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下である特定流れ抵抗体12aが2つ以上含まれている。また、音の吸収率をより一層高める上では、特定流れ抵抗体12aが3個以上、且つ10個以下存在するとよい。これらの特定流れ抵抗体12aの各々の流れ抵抗は、互いに同一であってもよく、あるいは、少なくとも一つの特定流れ抵抗体12aの流れ抵抗が他の特定流れ抵抗体12aの流れ抵抗と異なっていてもよい。また、複数の特定流れ抵抗体12aは、複数の流れ抵抗体12が並ぶ方向において連続して並べられているのがよい。ここで、複数の流れ抵抗体12が並ぶ方向では、各流れ抵抗体12が、それぞれの厚み方向を一定方向に揃えた状態で間隔を空けて並んでいる。なお、以下では、複数の流れ抵抗体12が並ぶ方向を、積層方向とも言う。
また、本発明の効果をより確実に得る目的から、複数の流れ抵抗体12がすべて特定流れ抵抗体12aであるとしてもよい。ただし、これに限定されるものではなく、複数の流れ抵抗体12の中に特定流れ抵抗体12a以外の流れ抵抗体12(すなわち、流れ抵抗が150Pa・s/m未満、あるいは2050Pa・s/m超である流れ抵抗体12)が含まれてもよい。その場合、積層方向において特定流れ抵抗体12aの間に、流れ抵抗が極端に小さい流れ抵抗体12が介在してもよい。
なお、以下の説明では、特に断る場合を除き、複数の流れ抵抗体12がすべて特定流れ抵抗体12aであるケースを想定して説明することとする。
また、それぞれの特定流れ抵抗体12aは、比較的薄厚であり、具体的には11mm未満の厚みを有する。ここで、特定流れ抵抗体12aの厚みについては、7mm未満であることが好ましく、人の声の周波数帯域(4kHz付近)の音を効果的に吸音する点では4mm未満であることがより好ましく、2.5mm未満であることがより一層好ましく、2mm未満であることが特に好ましい。
また、互いに隣り合う特定流れ抵抗体12a同士の間には隙間が設けられている。この隙間の各部分の厚み(図2にて記号dにて示す)の平均値は、0.6mm以上、且つ40mm未満である。ここで、同一の隙間内において、隙間各部分の厚みは、その部位に応じて変動し得る。そのため、本発明では、隙間の各部分の厚みの平均値、厳密には相加平均値に着目し、その平均値を上記の数値範囲に設定している。
そして、特定流れ抵抗体12aの厚み、隙間の各部分の厚みdの平均値が上述の数値範囲内にあることにより、広帯域にて音の吸収率を0.5超とすることができる。なお、より望ましくは、隙間の各部分の厚みdがいずれも上述の数値範囲内にあるのがよい。
また、特定流れ抵抗体12aが3つ以上存在し、これらが積層方向に連続して並んでいる場合には、特定流れ抵抗体12a間の隙間は、2つ以上(具体的には、特定流れ抵抗体12aの数から1だけ小さい数)存在することになるが、この場合には、それぞれの隙間について、当該隙間の各部分の厚みの平均値が上記の数値範囲を満たす必要がある。ここで、隙間の各部分の厚みdの平均値については、30mm以下であることが好ましい。また、隙間の各部分の厚みdの平均値は、隙間毎に異なっていてもよく、あるいはすべての隙間が同一であってもよい。換言すると、積層方向に連続して並ぶ3つ以上の特定流れ抵抗体12aは、積層方向において等間隔で配置されてもよく、若しくは異なる間隔で配置されてもよい。
さらに、音の吸収率を効率よく高める上では、2つ以上の隙間のうち、少なくとも1つ以上の隙間において、当該隙間の各部分の厚みの平均値が20mm以下であることがより好ましく、1mm以上、且つ12mm以下であることが特に好ましい。
なお、隙間の各部分の厚みは、特定流れ抵抗体12aがなす層の間の距離、すなわち層間距離に相当する。それ故に、以下では、隙間の各部分の厚みを層間距離とも呼ぶこととする。
また、隙間の各部分の厚みd(層間距離)を一定に保つ観点から、図2に示すように、隣り合う特定流れ抵抗体12aの間に、隙間を保持するための保持部材14が設けられているのが望ましい。
以下、防音構造体10を構成する流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)及び保持部材14について詳述する。
[流れ抵抗体]
本発明において、流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)は、比較的厚みが薄いシート状体、膜状体又は薄板体であり、11mm未満の厚みを有する。したがって、流れ抵抗体12は、配置場所に合わせて自在に湾曲させることができる。
また、流れ抵抗体12の厚みが7mm未満となると、複数の流れ抵抗体12を積層された多層構造での吸収率が単層構造での吸収率を効果的に上回るようになる。さらに、防音構造体10のさらなる小型化及び軽量化を図る上では、4mm未満であることがより一層好ましく、2.5mm未満であることがさらに好ましく、2mm未満であることが特に好ましい。なお、厚みが2mm未満の流れ抵抗体としては、例えば、織布、編布又は不織布等からなるシート状体、並びに膜状体等が挙げられる。
流れ抵抗体12の厚みについては、同一の流れ抵抗体12内で一様であってもよく、あるいは不均一であってもよい(変動してもよい)。なお、流れ抵抗体12の厚みが流れ抵抗体12内で変動している場合には、流れ抵抗体12の各部分の厚みの平均値を、その流れ抵抗体12の厚みとすることになる。また、複数の流れ抵抗体12の各々の厚みは、流れ抵抗体12の間で揃っていてもよく、あるいは異なっていてもよい。
また、流れ抵抗体12自体の吸音性能は、流れ抵抗体12の流れ抵抗に大きく依存する。流れ抵抗体12の流れ抵抗が吸音性能に及ぼす影響について説明すると、流れ抵抗体12中の通気部分(空隙)を音が通過して抜けると、その際に生じる摩擦によって音が吸収される。なお、以下では、流れ抵抗体12のうち、通気部分以外の素材部分を便宜的に「フレーム」と呼ぶことにする。
ここで、通常の吸音材として利用され得る流れ抵抗率が比較的小さい流れ抵抗体12は、通気部分での抵抗が小さくなるので、上記通気部分を音が通過し、その際に生じる熱粘性摩擦が吸音に寄与する。ただし、音は、通気部分を流れてフレームをほぼ揺らさないので、フレーム自体は、吸音に寄与しない。
これに対し、流れ抵抗体12の流れ抵抗が大きくなると、流れ抵抗体12の通気部分を音が通過する際の摩擦だけではなく、フレームが音で揺らされる効果が加わるようになる。より詳しく説明すると、流れ抵抗が比較的大きい特定流れ抵抗体12aでは、その通気部分に音が容易には流れなくなる。これにより、入射音(吸音対象の音)の一部が通気部分を通過する代わりに、フレームを揺らすようになる。この結果、特定流れ抵抗体12aにおけるフレームの振動及び質量(マス)が吸音効果に寄与するようになったと考えられる。
以上のように、流れ抵抗が比較的大きい特定流れ抵抗体12aでは、フレームの振動及び質量(マス)が吸音に寄与するようになる。そして、本発明では、前述したように、特定流れ抵抗体12aの流れ抵抗が150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下である。
なお、特定流れ抵抗体12aの流れ抵抗については、150Pa・s/m〜1750Pa・s/mであることが好ましく、200Pa・s/m〜1300Pa・s/mであることがより好ましく、250Pa・s/m〜900Pa・s/mであることがさらに好ましく、250Pa・s/m〜550Pa・s/mであることが特に好ましい。
ちなみに、流れ抵抗体12の流れ抵抗は、通気抵抗測定装置(カトーテック株式会社製 KES F−8)を用いて、流れ抵抗体12の表面に対する単位面積当たりの通気量を0.4cc/cm2/sに設定して測定することができる。この手法は、通気量一定方式によって通気抵抗を測定する手法であり、測定部に流れ抵抗体12を挟み、試料を通して大気中に向かって上記通気量にて空気を放出するステップ、及び、上記と同様にして大気中から試料を通して装置側に吸引するステップの2ステップから構成されており、それぞれのステップでの圧力を測定することで流れ抵抗を測定する手法である。また、流れ抵抗体12の表面の面内において流れ抵抗が一様でない場合には、表面各部の流れ抵抗の平均値を、その流れ抵抗体12の流れ抵抗として採用するとよい。例えば、流れ抵抗体12中の三か所を測定して、その平均値を流れ抵抗として採用することができる。
また、種類が異なる複数の布をそれぞれ別の場所に貼る等、流れ抵抗の異なる部材が複数用いられていたり、領域毎に流れ抵抗が異なっていたりする場合には、それぞれの部材又は領域毎に上記測定を行う。そして、それぞれの測定結果を複合化した流れ抵抗が上記の数値範囲を満たせば、特定流れ抵抗体12aとして用いることが可能となる。つまり、流れ抵抗体12については、流れ抵抗が異なる複数の層(素材)を貼り合わせた積層構造のものであってもよく、その場合には、それぞれの層の流れ抵抗を複合化した値を流れ抵抗として採用する。
なお、流れ抵抗については、日本音響エンジニアリング製「流れ抵抗測定システム AirReSys」のようなシステムを用いて流れ抵抗を測定してもよい。このシステムが採用する手法は、ISO 9053(2018年時点ではISO 9053-1:2018)に規定される手法であり、この手法に従う限り、他の装置でも測定することが可能である。
次に、流れ抵抗体12の材質について説明すると、意匠性の高さ、質感の良さ及び調達の容易性から、布を流れ抵抗体12の材料として用いることが望ましい。流れ抵抗体12を構成する布としては、例えば、織布、編布及び不織布等が挙げられる。また、流れ抵抗体12を構成する布の繊維として、繊維径がサブミクロンオーダ(1〜100nmのオーダ)となった繊維を用いることは、従来の不織布よりも薄く且つ高い吸音効果が得られるため好ましい。なお、流れ抵抗体12を構成する不織布の例としては、シンサレート(商標、3M社製、素材はポリプロピレンとポリエステル)、及び吸音フェルト(素材はポリエステル、ポリプロピレン、PETなど各種繊維)を含むフェルト等のポリマー繊維からなる不織布;ポアル(ユニックス社製、素材はアルミニウム)、及びトミーファイレックSS(巴川製紙社製、素材はステンレス)等の金属繊維からなる不織布;紙繊維からなる不織布等が挙げられる。
また、流れ抵抗体12を構成する織布の例としては、ブロード(平織布)、不燃クロス(イストフロン株式会社IST製)、金属織布及び金属とポリマーの複合繊維布(セーレン社製導電布など)等を挙げることができる。
なお、不織布は、一般に圧縮することで、薄く流れ抵抗の大きな流れ抵抗体としやすく、また織布は密に織ることが比較的容易なため、本発明で求める効果を得るために望ましい形態である。
流れ抵抗体12を構成する布の繊維としては、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維、低密度ポリエチレン樹脂繊維、エチレン酢酸ビニル樹脂繊維、合成ゴム繊維、共重合ポリアミド樹脂繊維、共重合ポリエステル樹脂繊維等の樹脂材料からなる繊維、ステンレス繊維等の金属材料からなる繊維、カーボン材料の繊維、カーボン含有材料の繊維、及びガラス材料の繊維等を挙げることができる。
流れ抵抗体12を構成する材料については、厚み及び流れ抵抗が上述した条件を満たすものであれば、布以外の材料であってもよく、例えば、厚みが比較的薄いエキスパンドメタル及びパンチングメタル等の微細貫通孔板を用いてもよく、あるいは、薄層の多孔質シート(膜)を用いてもよい。また、これら以外の多孔質吸音材料、例えば、グラスウール、ロックウール、発泡ウレタン及び石膏ボード等を流れ抵抗体12として用いることも可能である。
また、金属材料からなる流れ抵抗体12(例えば、金属繊維によって構成された布シート)を用いる場合には、防音構造体10の難燃性を向上させることができる。流れ抵抗体を構成する金属材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、パーマロイ、42アロイ、コバール、ニクロム、銅、ベリリウム、リン青銅、黄銅、洋白、錫、亜鉛、鉄、タンタル、ニオブ、モリブデン、ジルコニウム、金、銀、白金、パラジウム、鋼鉄、タングステン、鉛、ステンレス、及びイリジウム等の各種金属、並びに上述した各種金属を組み合わせた合金材料が挙げられる。この中で、コスト及び入手容易性の観点から、銅、ニッケル、ステンレス、チタン及びアルミニウムが好ましい。
さらに、金属材料からなる流れ抵抗体12については、耐オゾン性を向上させることができ、また電波を遮蔽することが可能である。さらにまた、金属材料からなる流れ抵抗体12では、導電性を持ち帯電し難いので、微小な埃及びゴミ等が静電気で流れ抵抗体12側に引き寄せられることがなく、流れ抵抗体12の内部に埃及びゴミ等が詰まって吸音性能が低下することを抑制できる。また、金属材料は、遠赤外線による輻射熱に対する反射率が大きいため、金属材料からなる流れ抵抗体12は、輻射熱による伝熱を防ぐ断熱材としても機能する。その際、流れ抵抗体12中には比較的サイズが小さい空隙が多数存在するため、流れ抵抗体12が輻射熱に対して反射膜として機能する。
また、金属材料からなる流れ抵抗体12に関しては、錆びの抑制等の観点から、表面に金属めっきを施してもよい。このとき、少なくとも流れ抵抗体12中の空隙の内壁面に金属めっきを施すことで、空隙のサイズをより小さくなるように調整してもよい。また、金属めっきを施す際には、繊維間で結節点を作らないように金属めっきを施すのが望ましい。
また、布等からなる流れ抵抗体12については、吸音性能以外の機能、例えば、難燃性、意匠性、防水性、撥水性、撥油性、防汚性、耐摩耗性、耐候性及び形状保持性等を付与する目的から、流れ抵抗体12の性質を改質させるための加工が施されてもよい。上記の加工が施された流れ抵抗体12を用いた防音構造体10は、従来には防音構造体が用いられていなかった場所に設置することができ、その場所にて使用することができるので、市場価値及び有用性が高まる。
一方、加工方法次第では、流れ抵抗体12の通気性及び吸音性を低下させる可能性がある。流れ抵抗体12の吸音性を維持するためには、流れ抵抗体12に付与する特性(改質対象の特性)に関して適切な加工方法を選定する必要がある。すなわち、流れ抵抗体12を構成する布としては、吸音性を維持しつつ、所望の特性を付与する加工が施された布が求められている。なお、流れ抵抗体12を構成する布として、意匠性向上のために所定の画像が印刷された布が従来から存在するものの、その布の種類(布地)は限定的なものであり、さらに印刷依頼時に画像入稿を要するので加工コスト及び手間が掛かってしまう。
以上の理由より、本発明において流れ抵抗体12を構成する布を加工する際には、その布地の表面における力学的物性のうち、吸音に関わる物性(具体的には、流れ抵抗及び繊維強度率等)を維持し得る方法にて行うのが好ましい。換言すると、本発明の流れ抵抗体12のうち、加工が施された加工部分の加工後の流れ抵抗は、150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下であると好ましい。この範囲内に加工部分の加工後の流れ抵抗が入っていれば、加工後の流れ抵抗体12を用いた場合にも高い吸音効果を得ることができる。
具体的に一例を挙げて説明すると、流れ抵抗体12をなす布に対して意匠性を付与する(分かり易くは、加工部分に画像又は模様を付ける)方法としては、色素による染色、塗料による着色、及び印刷済フィルムの転写等が挙げられる。このうち、加工部分の加工後の流れ抵抗を維持する観点では、色素染色が好ましいと考えられる。
もう一つの例を挙げて説明すると、流れ抵抗体12をなす布に対して撥水性を付与する撥水加工としては、撥水コーティング層を布表面に積層する方法、及び、薬液に布を浸漬して布生地の繊維に対して化学的に撥水成分を結合させる方法等が挙げられる。このうち、加工部分の加工後の流れ抵抗を維持する観点では、後者の方法、すなわち布生地の繊維に対して化学的に撥水成分を結合させる方法が好ましいと考えられる。
なお、加工部分の加工後の流れ抵抗を上記の数値範囲に維持しつつ、流れ抵抗体12に撥水加工を施すことによって、流れ抵抗体12、及び流れ抵抗体12の間に介在する保持部材14についても、水又はその他の液体(以下、水等)が掛かった際に水等から保護することができる。これにより、保持部材14の素材についての選択の幅を、水に対する耐久性が小さい素材にまで広げることができ、例えば紙等を利用することも可能となる。このように、上記の構成のように流れ抵抗体12に撥水加工を施すことで、防音構造体10全体を保護することができる。
ちなみに、流れ抵抗体12をなす布に施される加工としては、前述の染色加工及び撥水加工以外にも挙げられ、例えば、印刷加工、昇華転写加工、起毛加工、抗菌加工、吸水加工、速乾加工、形態安定加工、防皺加工、光触媒加工、紫外線カット加工、防塵加工、涼感加工、マイナスイオン加工、防炎加工、花粉付着防止加工、及び害虫忌避加工が挙げられ、これらのうちの少なくとも一つが加工部分に施されていればよい。
なお、流れ抵抗体12の表面(厳密には、厚み方向における端面)に対する、加工部分に属する領域の比率については、5%超であるとよく、30%超であるとより好ましく、70%超であると特に好ましい。つまり、流れ抵抗体12には、加工部分と非加工部分とが混在してもよく、加工部分と非加工部分との間で流れ抵抗(通気性)が同等であればよい。
次に、防音構造体10における層の数、つまり、流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)の個数について説明すると、吸収率を0.5超とする上で、層の数が2個以上であることが必要である。また、吸収率(厳密には、流れ抵抗を変化させたときの最大吸収率)をより高くする観点では、層の数が3個以上であることが好ましい。層の数を3個以上とすれば、干渉によって音の吸収が低減するのを抑え、広帯域にて効果的に吸音することができる。
他方、層の数が増えるほど、防音構造体10の作製が煩雑になり、コストも大きくなる。したがって、流れ抵抗体12の個数については10枚以下であることが好ましい。
なお、複数の流れ抵抗体12(厳密には、複数の特定流れ抵抗体12a)の各々のサイズ及び形状は、流れ抵抗体12の間で同一であってもよく、あるいは流れ抵抗体12毎に異なっていてもよい。ここで、各流れ抵抗体12の平面形状は、特に限定されるものではなく、例えば、菱形、正方形、長方形、平行四辺形、台形若しくはその他の四角形、三角形、五角形及び六角形等を含む多角形、円形、楕円形、又は不定形であってもよい。
また、積層方向に沿って並べられた複数の流れ抵抗体12の各々は、積層方向から視認した際に完全に重なった状態(つまり、各流れ抵抗体12が位置ずれしていない状態)で並んでいてもよく、あるいは、一部の流れ抵抗体12の位置がずれた状態で並んでいてもよい。
次に、流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)間の隙間の各部分の厚みについて説明すると、吸収率を0.5超とする上で、隙間の各部分の厚みの平均値が0.6mm以上であることが必要である。また、厚みの平均値を大きくしていくと、防音構造体10の吸音特性が高くなる傾向にあるので(例えば、図24参照)、厚みの平均値については、1.5mm以上であることが好ましく、2.0mm以上であることがより好ましく、3.0mm以上であることがさらに好ましく、3.5mm以上であることが特に好ましい。
一方、隙間の各部分の厚みが40mm以上となると、吸収特性の増大がほぼ得られなくなる(例えば、図24及び図25参照)。したがって、隙間の各部分の厚みの平均値については、40mm未満であることが望ましい。また、厚みの平均値については、防音構造体10をより小型化する観点から、30mm以下であることが好ましい。また、流れ抵抗体12が3つ以上存在して隙間が2つ以上存在する場合、吸収特性を効果的に高める観点から、少なくとも1つ以上の隙間において、当該隙間の各部分の厚みの平均値が20mm以下であることがより好ましく、1mm以上、且つ12mm以下であることが特に好ましい。
ここで、隙間の各部分の厚みの測定方法について説明すると、当該隙間を挟む2つの流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)が張られて、望ましくは流れ抵抗体12をまっすぐに伸ばす程度にテンション(張力)が掛かっていて、且つ双方の流れ抵抗体12が互いに平行である場合には、隙間の各部分の厚みが均一であるので、隙間の一箇所の厚みをノギス及びシックネスゲージ等の測定器具を用いて測定すればよい。また、ギャップゲージ(スキマゲージ)のような、厚みが定まった金属板を隙間に差し込み、引っ掛かりなく差し込めるゲージの厚みの最大値を隙間厚みとして規定してもよい。なお、この場合、測定した厚みは、隙間の各部分の厚みの平均値に相当することになる。
また、上記の条件で2つの流れ抵抗体12が互いに平行でない場合でも、隙間の最小値と最大値を、各流れ抵抗体12の傾き方向に沿って測定することができる。このときの最小値と最大値の平均値を、隙間の各部分の厚みの平均値として採用すればよい。
他方、隙間を挟む2つの流れ抵抗体12が大きく撓んでいる場合には、隙間の各部分の厚みが不均一となる(変動する)。かかる場合には、隙間の数箇所の厚みを測定器具によって測定することになる。そして、測定した各箇所の厚みを平均して厚みの平均値を算出することとなる。具体的には、各流れ抵抗体12の撓みの曲率を特定する。ここで、撓みの変曲点(曲率の極値に相当)では、流れ抵抗体12間の距離が極大若しくは極小となる。これは、例えば図4のように流れ抵抗体12を吊り下げた構成においては、流れ抵抗体12の重心位置が最も垂れ下がることになり、そこが変曲点となることによる。そして、変曲点の位置における隙間を対象として、厚みを測定する。その後、流れ抵抗体12の端部(例えば、流れ抵抗体12の中で固定された部分)における隙間を対象として、厚みを測定する。ここで、流れ抵抗体の端部における隙間内で厚みにバラツキがある場合には、その最大値と最小値の平均値を、厚みとして採用する。以上の手順で測定した2つの厚み(すなわち、変曲点での厚みと流れ抵抗体12の端部での厚み)の平均値を、隙間の各部分の厚みの平均値として採用することができる。
また、隙間を挟む2つの流れ抵抗体12の間に保持部材14が配置されている場合には、保持部材14の高さを隙間の各部分の厚み(層間距離)とみなすことができる。
なお、以降の説明では、特に断る場合を除き、隙間の各部分の厚みが揃っており、隙間の各部分の厚みが当該各部分の厚みの平均値に等しいケースを想定して説明することとする。
ちなみに、隙間が2つ以上存在する場合には、隙間同士の間で厚みが揃っていてもよく、若しくは一つの隙間と他の隙間との間で厚みが異なっていてもよい。また、厚みが互いに異なる複数の隙間が存在する場合には、より音源に近い側で隙間の各部分の厚みがより大きくなるように流れ抵抗体12を配置するのがよい。また、3つ以上の隙間が存在する場合には、積層方向において対称の位置にある隙間同士の間で厚みが揃うように流れ抵抗体12を配置するのがよい。例えば、5枚の流れ抵抗体12を配置する場合には、4つの隙間が存在することになるが、そのうち、2つの隙間では厚みが2mmであり、残り2つの隙間では厚みが1mmであるとしたら、1mm−2mm−2mm−1mmの順に配置するのが好ましく、2mm−1mm−1mm−2mmの順に配置するのがより好ましい。
[保持部材]
保持部材14は、図2に示すように、積層方向において流れ抵抗体12の間に配置された中空状の枠体である。保持部材14の平面形状及びサイズは、流れ抵抗体12の平面形状及びサイズに応じて決定されており、具体的には一致している。そして、保持部材14の両面(保持部材14の高さ方向における両端面)に流れ抵抗体12が貼り付けられている。保持部材14の高さは、流れ抵抗体12(厳密には特定流れ抵抗体12a)の間における隙間の各部分の厚み、すなわち層間距離と同じであり、0.6mm以上、且つ40mm未満である。
保持部材14を構成する中空状の枠体については、特に限定されるものではないが、流れ抵抗体12を支持するのに十分な強度及び剛性を確保しつつ軽量化を図る観点では、例えば、複数の開口部(セル)を有するハニカムコアが好ましい。ただし、これ以外にも、パンチングメタル及びエキスパンドメタル等、複数の開口部を有する板状の部材を保持部材14として用いてもよい。
保持部材14の材料としては、紙材料、木材、及び樹脂材料等の可燃性材料が挙げられる。紙材料としては、例えば、和紙、用紙、パルプ原料を用いた段ボール構造、並びに、ハニカム段ボール構造及びボード等を挙げることができる。樹脂材料としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、TAC(トリアセチルセルロース)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PMP(ポリメチルペンテン)、COP(シクロオレフィンポリマー)、ゼオノア、ポリカーボネート、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)、PAR(ポリアリレート)、アラミド、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PES(ポリエーテルサルフォン)、ナイロン、PEs(ポリエステル)、COC(環状オレフィン・コポリマー)、ジアセチルセルロース、ニトロセルロース、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリアミドイミド、POM(ポリオキシメチレン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ポリロタキサン(スライドリングマテリアルなど)、及びポリイミド等を挙げることができる。さらに、主にポリプロピレン又はポリカーボネートを用いた、いわゆるプラダン構造を用いることもできる。
また、保持部材14の材料としては、難燃材も挙げられる。難燃材としては、例えば、金属材料、無機材料、難燃合板、難燃繊維板、及び難燃プラスチック板等を挙げることができる。金属材料としては、例えば、アルミニウム、スチール、チタン、マグネシウム、タングステン、鉄、スチール、クロム、クロムモリブデン、ニクロムモリブデン、及びこれらの合金等を挙げることができる。無機材料としては、例えば、ガラス、コンクリート、石膏ボード、サファイア、及びセラミックス等を挙げることができる。また、可燃性材料をアラミド樹脂等でコーティングすることで難燃材として使用できる。
また、保持部材14の材料としては、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics:CFRP)、カーボンファイバ、及びガラス繊維強化プラスチック(Glass Fiber Reinforced Plastics:GFRP)等の炭素繊維を含む材料が挙げられる。
また、保持部材14は、上述した材料の複数種を組み合わせて構成されたものであってもよい。
なお、図1及び図2に図示の防音構造体10においては、流れ抵抗体12が保持部材14に固定されることで支持されているが、保持部材14を用いずに流れ抵抗体12を保持してもよい。保持部材14を用いずに流れ抵抗体12を保持する方法については、特に限定されないが、例えば、図3に示すように、防音構造体10xを構成する複数の流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)の各々を、天井Cから垂れ幕状に吊り下げてもよい。また、図4に示すように、天井Cの直下位置において、防音構造体10yを構成する複数の流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)の各々を、上下方向に一定のピッチで重ねて配置してもよい。図4に図示の構成について説明すると、天井に適宜な間隔で棒状の支柱16を複数配置し、それぞれの支柱16では、上下方向に一定の間隔で複数の流れ抵抗体12を取り付けられるとよい。かかる構成において、流れ抵抗体12として布を用いる場合には、それぞれの布が支柱16の間に張られた状態で配置されてもよく、あるいは、図4に示すように弛んだ状態で配置されてもよい。
なお、広帯域にて高い吸音性能を発揮させる観点から考えると、図1〜図4に図示の防音構造体10、10x、10yは、その端面(具体的には、最外層をなす流れ抵抗体12の表面)が天井C等から離れるように配置されて、剛体との間に空気層が存在しているのが望ましい。
<<本発明の防音パネルについて>>
次に、上述した防音構造体10を用いて構成された本発明の防音パネルについて、図5に図示の防音パネルBの構成を例に挙げて説明する。
防音パネルBは、図5に示すように、防音構造体10によって構成されたパネル本体Bxと、パネル本体Bxを取り囲む枠体Byと、を有し、吸音性能を有するパネル材(すなわち、吸音パネル)である。なお、図5に図示の防音パネルBでは、その一部が防音構造体10によって構成されているが、これに限定されるものではなく、防音パネルBの全体が防音構造体10によって構成されてもよい。また、パネル本体Bx及び枠体Byのうち、枠体Byのみが防音構造体10に構成されてもよい。
防音パネルBは、防音部材、防音箱、防音囲構造、及び防音室等を構成する用途に用いられる。防音部材としては、例えば、建材として用いられるもの、空調設備用として用いられるもの、部屋の窓等の開口部に設置されるもの、天井に設置されるもの、床用に設置されるもの、室内ドア又は襖等の部屋内開口部に設置されるもの、トイレ内部に設置されるもの、バルコニーに設置されるもの、室内音調用に用いられるもの、簡易防音室を構築するためのもの、ペット小屋を作製するもの、アミューズメント施設内に設置されるもの、工事現場の遮音用に用いられるもの、乗物等の移動体の室内(例えば、自動車、電車及び飛行機等における乗員室)に設置されるもの、並びにトンネル内に設置されるもの等が挙げられる。
防音箱は、防音パネルBを含む複数のパネル材を箱状に配置することで構築される箱体であり、例えば、建物及びその他の構造物を建築する用途、輸送用途、並びに物流用途に用いることができる。防音パネルBを用いた防音箱により、箱内部から外部への音の漏洩、あるいは外部から箱内部への音の侵入を防ぐことができる。防音箱は、例えば、ペット小屋、又は騒音源となる機器の筐体等として利用される。
防音囲構造は、防音パネルBを含む複数のパネル材を外周壁(すなわち、仕切り)として配置することで構成され、その内側の空間に音源が配置されることで、騒音への吸音効果を発揮する。なお、防音囲構造は、音源を取り囲むように防音パネルBを環状に配置したものに限定されず、1枚若しくは2枚からなるパーティションのようなものであってもよい。防音囲構造としてのパーティションを用いる場合には、間仕切りした空間の間で音を好適に遮蔽することができる。また、本発明の防音パネルBからなる可動式のパーティションは、薄くて軽いので持ち運びが容易であり、これを用いるメリットが大きい。
また、防音囲構造は、椅子及び机等に取り付けられて用いられてもよい。
防音室は、防音パネルBを含む複数のパネル材を、部屋の壁若しくは天井に用いて構成された部屋であり、室内で活動する人の声、あるいは室外で発生する騒音等に対して吸音効果を発揮する。
なお、上述した音源としては、音を発する機器類であってもよいし、人の声であってもよい。
<<本発明のルーバーについて>>
本発明の防音構造体は、図6A〜図6Cに示すように、ルーバー110として用いることができる。すなわち、本発明によれば、上述した防音構造体によって少なくとも一部分が構成されたルーバーを実現することができる。このルーバー(具体的には、図6A〜図6Cに図示のルーバー110)は、例えば、パーソナルブース、集中用のブース、ワークブース、及び会議室スペースブースなどの個室空間用の設備(以下、ブースV)に利用することが可能である。具体的に説明すると、ブースVに関しては、通気性、消火設備との関連、及び消防法等の法規により上部(天井部)を開放する必要がある場合が多い。その場合、図6Cに示すように、外の音(ブースVが設置された部屋の天井Cでの反射音を含む)が開放部を通じてブースV内に進入して、ブースV内の人にとって騒音になり得る。反対に、図6Bに示すように、ブースV内の人が発する声及び音がブースVの外へ開放部を通じて拡散し、この結果、守秘性がある情報が漏れたり騒音になったりする等の問題が生じる。
そこで、図6A〜図6Cに示すように、本発明の防音構造体によって構成されたルーバー110をブースVの開放部に取り付けることにより、通気性及びその他の状況(消防設備との関連等)を維持しつつ、吸音することができる。また、ルーバー110を構成する本発明の防音構造体は、主に流れ抵抗体12によって構成されており、流れ抵抗体12は一般に軽量な構造である。このため、ブースVの開放部(すなわち、天井部)に設置したルーバー110が万が一落下した場合にも、安全性を確保することができる。
ここで、ルーバー110は、防音構造体をなす布等の流れ抵抗体のみによって構成されてもよく、あるいは、防音構造体をなす流れ抵抗体とこれを支持するフレームとを組み合わせて構成されてもよい。ここで、フレームとしては、プラスチック、金属又は木材等の硬い材料からなるフレームを用いるとよい。
また、ルーバー110(図7Bでは、ルーバー110x)を構成する防音構造体において、流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)は、図7Aに示すように格子状に並べて配置されてもよく、図7Bに示すように互いに平行となるように一方向に沿って並べられてもよい。
また、本発明の防音構造体によって構成されたルーバー210は、図8Aに示すように、排熱又は通気用のダクトDに配置された送気ファンRに対して用いることができる。これにより、ダクトD内に風を通したまま、ルーバー210によって音を遮断することができる。ここで、ルーバー210を構成する防音構造体の流れ抵抗体12(厳密には、特定流れ抵抗体12a)は、ルーバー210の格子として機能する。なお、ルーバー210の格子は、流れ抵抗体12のみによって構成されてもよく、あるいは、流れ抵抗体12の側端部に硬い板材211を取り付けてもよい。具体的には、図8Bに示すように、略矩形状の布の外縁部にプラスチック又は金属製のフレーム材(板材211)を取り付けることでルーバー210の格子を構成することができる。このような構造であれば、送気ファンR内部に指等が入り込むのを防止することができる。また、送気ファンR由来の異物等がダクトDの外へ飛散するのを防ぐルーバー210本来の機能を維持したまま、ルーバー210に吸音性を付与することが可能となる。
また、本発明の防音構造体は、ルーバー110、210以外の用途に用いてもよく、例えば、格子窓、目隠し又は日除け等に利用することも可能である。すなわち、本発明によれば、上述した防音構造体によって少なくとも一部分が構成された格子窓を実現することもできる。
以下に説明する実施例により、本発明をより具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
本発明の防音構造体の吸収率について、有限要素法ソフトウェアCOMSOL ver5.3(COMSOL Inc.)を用いたシミュレーションによって検討した。ここで、「吸収率」とは、流れ抵抗体の背面側に壁が設けられておらず、且つ、音の透過及び反射の双方が存在し得る系において、「1−透過率−反射率」で定義される値である。
また、本シミュレーションでは流れ抵抗体を布とし、シミュレーションに際して布のモデル化を行った。布のモデル化に関しては、本発明者らの鋭意検討の結果、布の通気部分の摩擦熱吸音モデルだけではなく、布のフレーム(素材部分)の振動もシミュレーションモデルに取り入れることで、実験結果を極めてよく再現することを明らかにした。
ところで、流れ抵抗体である吸音材の計算には、一般的な経験式であるDelaney−Bazley−Mikiモデル、あるいは、フレームが振動せずに通気部分の音の通過だけを計算するEquivalent Fluidモデル(Rigidモデル)が用いられる。これらのモデルによれば、通常の多孔質吸音材であるフェルト及びグラスウールの吸収率を、精度よく再現できることが知られている。
しかし、本発明者らは、上記のモデルでは、大きな流れ抵抗を有する流れ抵抗体の実験結果を良好に再現することが困難であることを明らかにした。具体的に説明すると、Rigidモデルを用いて計算した場合の計算結果では、吸音ピーク周波数における吸収率及び吸音帯域が実測値を良好に再現できないことが判明した。
そこで、本発明者らは、流れ抵抗体におけるフレームの振動まで考慮して計算するためにBiotモデルを採用した。具体的に説明すると、本発明者らは、Biotモデルに適用して、流れ抵抗体におけるフレームの振動まで含めて計算することにより、実測値を良好に再現できることを明らかにした。
より詳しく説明すると、本発明者らは、単層の布における吸収率について、実験及びシミュレーションを比較した。対象の布には、流れ抵抗が比較的高い布である東レGS2000を用いた。この布の流れ抵抗は、カトーテック株式会社製 KES F−8を用いて測定すると、694Pa・s/mであった。また、上記の布を10cm×10cmに切り取り、切り取った布の重さを量りで測定して面積で割ることで、面密度を求めた。このようにして得らえた面密度は、200g/mであった。また、布の厚みをミツトヨ製デジマチックシックネスゲージによって測定した。厚みの測定結果は、530μmであった。
そして、上記の布を対象として、音響管を用いた測定を行った。詳しくは、布が音源側に向くように配置し、その背面側に40mm離して壁(具体的には、厚み20mmのアルミ板)を置き、背面壁のある布吸音構造とした。また、音響管測定法は、「JIS A 1405−2」に従い、マイクを2本用いた垂直入射吸音率の測定系を作製して評価を行った。ここで、音響管の内部直径は、4cmとし、4000Hz程度まで測定できる系とした。
なお、上記音響間測定法と同様の測定は、日本音響エンジニアリング製WinZacMTXを用いて行うことができる。
測定した垂直入射吸音率を図9に示した。図9から分かるように、測定結果の特徴として、反射スペクトルが周波数に対して非対称となっており、低周波側に偏った垂直入射吸音率となっている。
一方、上記の構造についてシミュレーションを行った。具体的には、COMSOLの音響モジュールを用いて音響管をモデル化し、布部分をポロシティ部材として設定し、上述したBiotモデルに上述のパラメータを入力してシミュレーションを実施した。
シミュレーション結果として得られた垂直入射吸音率を図9に示した。図9から分かるように、低周波側で非対称に垂直入射吸音率が高くなる傾向を含めて、実験結果とシミュレーション結果とが良好に一致している。
さらに、上記のシミュレーション結果(Biotモデルでの計算結果)を、他のポロシティモデルと比較した。比較モデルとしては、流れ抵抗体の経験式であるDBモデル(Delany-Bazley-Mikiモデル)を用い、上述した流れ抵抗及び厚みをCOMSOLモデルに入力して計算を行った。もう一つの比較モデルとして、流れ抵抗体の吸音の半経験式であるJCAモデルにおいて布の素材部分(フレーム)を固定したRigidモデル、すなわち、多孔質体の格子の振動をなくしたモデルを用いて、計算を行った。
上記二つの比較モデルについては、比較的流れ抵抗が小さい流れ抵抗体を対象とする場合には、実験とよく一致するシミュレーション結果が得られることが分かっている。これらのモデルと前述のBiotモデルのそれぞれを用いたときのシミュレーション結果を図10に示した。図10から分かるように、DBモデル及びRigidモデルは、互いに類似した傾向を示し、特徴的な傾向として、周波数に対して吸音率のグラフ形状が略対称になることが分かった。
これに対して、Biotモデルを用いると、垂直入射吸音率のグラフ形状が低周波側に偏る非対称な形状となり、前述したように、実験結果を良好に再現したものとなる。
以上のことから、本発明のように流れ抵抗が比較的高い系では、Biotモデルを用いることで実際の現象を良好に再現でき、そのことを本発明者らは確認した。ここで、流れ抵抗が比較的高い系とは、正確に言えば、流れ抵抗が大きく厚みが小さいために流れ抵抗率が極めて大きくなる場合である。ちなみに、上述した布(GS2000)の流れ抵抗率は、1300000Pa・s/mであり、通常吸音体として用いられる発泡ウレタン及びグラスウールの流れ抵抗率が10000Pa・s/m程度であることを考えると、著しく高い値である。この結果、上記の布の通気部分を通る際には大きな抵抗が生じ、そのことが、音が布の素材部分(フレーム)を振動させる原因になっていると考えられる。
なお、Biotモデルは、DBモデル等と比べて適用範囲がより広いモデルであるため、仮に流れ抵抗が低い流れ抵抗体に適用しても、計算は実験と良好に一致する。したがって、Biotモデルを用いて様々な種類の流れ抵抗体の吸音性を検討することに問題はない。
Biotモデルによるシミュレーションは、下記に示す実施例1〜7の条件で実施した。また、各実施例の条件下でシミュレーションを実施するにあたり、以下に示す比較例の条件にてシミュレーションを実施した。
(比較例)
流れ抵抗体のモデルとして、密度0.6g/m、厚み240μmの布を想定し、当該布の流れ抵抗を100、200、400、600、800及び1000Pa・s/mと変化させてシミュレーションを実施した。また、比較例では、単一の布(単層構造)の吸収率を計算した。比較例の計算結果を図11に示す。
図11から分かるように、流れ抵抗が大きくなるほど、単一の薄い布(単層構造)であっても吸収率が上昇する。しかしながら、図11に示すように、単層構造では、吸収率が50%を超えることがない。このことは、「発明が解決しようとする課題」の項で説明したように、防音構造体の小型化及び軽量化を図るために単層構造を採用した場合に生じ得る課題である。
(実施例1)
比較例と同じ密度及び厚みを有する布の層を、単層ではなく三層とし、布間に設けられた隙間の各部分の厚み(層間距離)を変化させて吸収率を計算した。実施例1では、先ず、各層を構成する布の流れ抵抗を400Pa・s/mとし、層間距離を2、4、6、8及び10mmと変化させた。層間距離を変化させたときの吸収率の計算結果を図12に示す。
図12から分かるように、三層構造の吸収率は、層間距離が上述した値のいずれであっても、低周波数から高周波数までの広帯域に亘って単層構造の吸収率(比較例の計算結果)を超えている。具体的に説明すると、例えば、10000Hzの音の波長は、343mm程度であるため、実施例1の多層構造の厚み(4〜20mm)は、上記の波長に比べてはるかに薄い系である。このような薄い系であっても、布を多層化することで吸収率を高められることが明らかとなった。なお、多層構造の厚みとは、多層構造全体の厚み(実施例1では、三層の各々の厚みと、二つの層間距離との合計値)であり、以下では、「合計厚み」とも言う。
次に、布の流れ抵抗と層間距離の両方を変化させて、周波数12kHzにおける吸収率を計算した。布の流れ抵抗と層間距離を変化させたときの吸収率の計算結果を図13に示す。図13から分かるように、各層の布が適切な流れ抵抗を有し、且つ、層間距離が一定以上である場合には、特に高い吸収率が得られる。より詳しく説明すると、流れ抵抗が400Pa・s/m程度であるときに最も高い吸収率が得られる。
ここで、単層構造(すなわち、比較例の系)での吸収率が最大で50%であったため、その値よりも1割大きい値(55%)以上の吸収率は、単層構造よりも本質的に大きな吸収率であると考えられる。この吸収率を実現するためには、布が多層化された構造において、各布の流れ抵抗が150〜2050Pa・s/mであり、且つ、層間距離が0.6mm以上であることが必要となる。
また、55%以上の吸収率を得るための条件を表1に示した。
Figure 2020158220
(実施例2)
実施例2では、実施例1から層の数を五層に変更し、それ以外の条件を実施例1と同様の条件として吸収率を計算した。層間距離を変化させたときの吸収率の計算結果を図14に示す。また、布の流れ抵抗と層間距離を変化させたときの吸収率の計算結果を図15に示す。図14及び図15から分かるように、層の数を増やすことで、より高い吸収率が得られるようになる。
また、90%以上の吸収率を得るための条件を表2に示した。
Figure 2020158220
(実施例3及び4)
実施例3では、実施例1から層の数を二層に変更し、それ以外の条件を実施例1と同様の条件として吸収率を計算した。実施例4では、実施例1から層の数を四層に変更し、それ以外の条件を実施例1と同様の条件として吸収率を計算した。実施例3の計算結果を図16に、実施例4の計算結果を図17に、それぞれ示す。なお、図16及び図17は、いずれも、層間距離を変化させたときの吸収率の計算結果を示している。図16及び図17から分かるように、布の層数が二層又は四層である構造では、単層構造よりも高い吸収率が得られる。ただし、層数が二層である場合には、最大吸収率が80%未満に留まっている。このことから、層数が二層を超える構成では、より高い吸収率が得られると考えられる。
(実施例1乃至4のそれぞれの計算結果に関する考察)
以上までに説明してきた実施例1乃至4のそれぞれの計算結果に関して、以下に考察する。具体的には、本発明と、布の吸収効果を単純に足し合わせた系(以下、単純足し合わせ系)とを比較する。なお、各層をなす布の流れ抵抗は、いずれも400Pa・s/mとした。
単純足し合わせ系は、単層構造の重ね合わせとしては吸収が最も大きくなる理想的な系を想定しており、具体的には、布間での音の干渉がなく、各層の布に当たった音のうち、吸収されない分がすべて当該布を透過することになると仮定した。すなわち、各層をなす布の吸収率をAとし、透過率をTとし、反射率をRとしたとき、単純足し合わせ系では下記の式が成立する。
T=1−A
R=0
なお、実際の単層構造では、一定量の反射が生じるため、上記の理想的な系と比較して吸収が小さくなる。
そして、単純足し合わせ系では、布の層数がn(nは2以上の自然数)である防音構造体全体の吸収率Anが以下のように表される。
nが2である場合 :An=A{1+(1−A)}
nが3以上である場合:An=A{1+(1−A)+…+(1−A)n−1
ちなみに、層数が1である場合(すなわち、単層構造)の吸収率Anは、実際に1層で計算した場合の最大吸収率を用いて求めることができる。
上記の要領で計算した単純足し合わせ系の吸収率Anを図18に示す。また、図18には、本発明の防音構造体における最大吸収率を、上述したCOMSOLを用いた多層構造の計算により、層数を変えて計算したときの計算結果を併せて示している。
図18に示すように、単純足し合わせ系と本発明の防音構造体とを比較すると、本発明の防音構造体のように数mmの間隔を空けて布を配置した場合の吸収率の方が、単純足し合わせ系の吸収率よりも大きくなっている。すなわち、布同士を互いに近接して配置することにより、単純な足し合わせ系での理想的な吸収以上の吸収率が得られることが分かった。より詳しくは、互いに近接した位置に流れ抵抗体が存在することで、流れ抵抗体の間に音の干渉が生じる。このとき、離間した流れ抵抗体間の距離、つまり層間距離が吸音対象音の波長λの1/2倍(つまり、λ/2)よりも短い場合には、干渉による音の重ね合わせの関係により、二つの流れ抵抗体からの反射波同士が互いに打ち消し合う。この結果、吸収に回る分が大きくなる。なお、吸収対象音の周波数が12kHzである場合、λ/2が約14mmとなるため、数mm程度の層間距離であれば、上述した好適な干渉条件を十分に満たす。
なお、λ/2の距離となる場合は、次の実施例5に示す通り、干渉効果による吸収極小化が生じる。
よって、本発明の防音構造体によれば、単純足し合わせ系となる配置、例えば大きく離間した場合よりも高い吸収率を得ることができるようになると考えられる。つまり、流れ抵抗体同士を互いに近接して配置することにより、単に防音構造体全体の厚みを小さくするだけではなく、音の干渉効果を用いて高い吸収効果が得られることが分かった。
(実施例5)
上記の実施例1〜4では、層間距離を変化させて吸収率を計算したが、そのような条件では、布がなす層の数が増えるほど、全体厚みが大きくなる。これに対して、実施例5では、全体厚みを20mmに固定して、層の数を二層から五層まで変化させて吸収率を計算した。なお、布の流れ抵抗は400Pa・s/mとし、それ以外の条件についてはシミュレーション1と同様の条件とした。実施例5の計算結果を図19に示す。
層数が二層である場合、図19に示すように、層間距離が比較的大きくなるため、布間での干渉によって音の吸収に変動(波打ち)が生じる。なお、周波数9kHzの音の波長λが38mm程度であり、層間距離がほぼλ/2となる。そして、層数が二層である場合には、周波数9kHzにて吸収率が極小となり、広帯域な吸収が行われなくなる。
また、層数が二層であり、且つ、層間距離がλ/2となる条件では、各層での反射波が層間で完全に強め合う位相関係となる。したがって、上記の条件では、防音構造体における反射波が極大化する一方で、防音構造体における音の吸収率が極小化することになる。図19において確認される吸収率の極小値は、上述した反射波の強め合いによって生じたものである。
以上のように、層間距離がλ/2となることは好ましいことではなく、特に、可聴域内の聴感感度が大きくなる領域(具体的には約1kHz〜4kHzの範囲)で上記の条件を満たすことは望ましいことではない。
これに対して、層数が三層以上の構造では、吸収率が比較的高い値に収束することが分かった。つまり、最も外側に位置する2つの布の間の距離は、層数が二層である場合と同じく20mmであるが、その間に布が配置されていることにより、層間距離がλ/2であるときの干渉による音の強め合い、及びそれに伴う吸収の低減がほぼ生じなくなり、広帯域な吸収効果が得られるようになる。これは、三層のうち、真ん中の層からの反射波が打ち消し合う位相関係となるため、反射音同士が強め合う関係が崩れたためであると考えられる。
以上のことから、三層以上の多層構造とすることにより、最大吸収率が高められ、また、層間距離がλ/2であるときの干渉による吸収の低減効果(極小化効果)を抑えることができる。かかる点において、三層以上の多層構造は、二層構造よりも優位である。
また、上述したように、層間距離が吸収対象音の波長λの1/2倍(λ/2)であると、干渉による吸収の低減効果(極小化効果)が現れる。これは、吸収対象音の周波数にも依るが、例えば周波数8kHzの音を十分に吸収する上では、層間距離が20mmより大きくなるのは好ましくない。したがって、布を多層化した構造において、干渉による吸収の低減効果(極小化効果)を抑えるには、層間距離、つまり離間した布間の距離を20mm以下に設計するのが望ましいと考えられる。
(実施例6)
厚みが厚い単層構造の吸収率と、その厚みと同じ合計厚みを有する二層構造の吸収率とを対比したとき、後者の吸収率がより大きくなる合計厚みが存在する。このときの合計厚みは、吸収率と重量の両方の観点から二層構造がより優位となるため、本発明の特徴である多層構造を用いるべき合計厚みであると言える。
そこで、実施例6では、単層構造及び二層構造のそれぞれについて、布の流れ抵抗を単層構造での吸収率が大きくなる条件値(具体的には800Pa・s/m)に設定してシミュレーションを行った。実施例6の単層構造に関して説明すると、布の流れ抵抗を800Pa・s/m(Rayls)とし、面密度を200g/mとし、また、厚みを1500μmから12000μm(12mm)まで変化させて、吸収率をそれぞれ計算した。
一方、二層構造の場合、各層をなす布の流れ抵抗を800Pa・s/mとし、面密度を200g/mとし、各層の厚みを500μmとし、層間距離を500μmから11000μm(11mm)まで変化させて、吸収率をそれぞれ計算した。ここで、例えば、単層構造で厚みが5000μmになる場合と、二層構造で各層(布)の厚みが500μmであり、且つ層間距離が4000μmである場合には、単層構造の厚みと二層構造の合計厚みとが等しくなる。そして、実施例6では、単層構造の厚みと二層構造の合計厚みとが等しくなる場合の吸収率の比較を行った。単層構造の厚み、及び二層構造の合計厚みがともに5000μmであるときの、それぞれの構造の吸収率スペクトルを図20に示す。図20に示すように、低周波側の一部の周波数帯域を除き、他の周波数帯域では、その全体に亘って二層構造の吸収率がより大きくなる。
以下、二層構造と単層構造を比較して、多層構造における各層(具体的には、流れ抵抗体)の厚みの上限を検討する。
二層構造において合計厚みを厚くするほど、層間距離を大きくすることができる。この層間距離が過度に大きくならない範囲では、層間距離を大きくするほど吸収率が大きくなり、合計厚みを大きくしていくと、二層構造の吸収率が単層構造の吸収率を上回る点が現れる。このことに関して、オクターブバンドの定義に従って周波数を1kHz、2kHz、4kHz、8kHz、及び16kHzに設定し、それぞれの周波数について、単層構造及び二層構造のそれぞれの吸収率を比較した。図21には、一例として2kHzにおける合計厚みと吸収率との関係を、単層構造及び二層構造との間で比較した結果を示す。図21に示すように、合計厚みが7000μm(7mm)以上となる場合、すなわち、二層構造では層間距離が6000μm(6mm)以上となる場合には、2kHzにおいても二層構造の吸収率が単層構造の吸収率を上回る。この場合、流れ抵抗体の合計体積が単層構造と比較して約14%まで低減しているが、吸収率は、二層構造の方がより大きくなっている。
2kHz、及びそれ以外の周波数での吸収率の比較結果を表3に示す。
Figure 2020158220
ここで、同一体積のスペース内に流れ抵抗体を単層及び二層のいずれで配置した方が効果的であるかを検討する。図21及び表3から、高周波数であるほど小さな体積であっても二層構造の吸収率が単層構造の吸収率を上回っていることが分かる。同一体積のスペース内において二層構造の吸収率が単層構造の吸収率を上回る場合、そのスペースには、単層構造よりも二層構造を配置した方が好適であるという結果が得られる。この結果から、層の厚みの上限を決定することができる。より具体的に説明すると、上記の結果から、層1つあたりの厚みは、11mm未満であることが好ましく、7mm未満であることがより好ましく、4mm未満であることがより一層好ましく、2.5mm未満であることがさらに好ましく、2mm未満であることが特に望ましい。
なお、上記のスペース内に三層以上の流れ抵抗体を配置することで、吸収率をより一層向上させることが可能である。
(実施例7)
実施例7では、広帯域吸音の条件から、多層構造における層間距離の上限を検討した。
先ず、二層構造の各層をなす流れ抵抗体の流れ抵抗を400Pa・s/mとし、面密度を200g/mとし、厚みを250μmとし、さらに層間距離を変化させて吸収率を計算した。図22に、4kHz及び12kHzの二種類の周波数について、層間距離と吸収率との関係を示す。図22に示すように、吸収率の、層間距離に対する依存性が周波数に応じて変化することが分かった。
次に、図23に、層間距離Lを上記の周波数(4kHz及び12kHz)に対応する波長λで割って規格化した値(図中の横軸L/λに相当する値であり、以下、規格化距離)に対する吸収率を示す。図23から分かるように、二種類の周波数のいずれにおいても、吸収率の規格化距離に対する依存性が完全に一致する。すなわち、層間距離Lがλ/4に相当する距離となるときに吸収率が最大化し、λ/2に相当する距離となるときに極小化する依存性であることが分かった。より正確に説明すると、層間距離Lが(2m+1)/4(mは0以上の整数)となるときには吸収率が極大値となり、2m×λ/4となるときには極小値となる。
また、図23から分かるように、層間距離Lが0であるときは、全周波数で吸収率が極小となる。また、層同士が離れると、音の周波数が高周波側に向かうほど波長が短くなるために、層間距離Lが小さい段階から吸収率が極大値と極小値との間で振動することが分かる。なお、この吸収率の規格化距離への依存性は、下記の式にて示す曲線で良好に表すことができる。
Y=a+b×{sin(L/(λ/4)×Pi/2)}^2
上記の式において、Yは、吸収率であり、Lは、層間距離であり、a及びbは定数であり、定数aは、0.5であり、定数bは、0.3である。
ここで、波動現象はsin(正弦)関数の依存性を示し、また、音の吸収はエネルギーによって表現される。このことから考えても、上記の式に示すように、音の吸収率がsin関数の2乗に対して依存性を示すことは、物理的にも自然なことである。
ところで、本発明の防音構造体は、人間の聴く音を広帯域に吸収することを目的とするものである。そこで、実施例7では、多くの周波数に亘って、吸収率を大きくする層間距離を計算によって求めた。具体的には、吸収対象の音の周波数を1/3オクターブバンドで500Hz〜16000Hzとした。また、前述の二層構造を想定し、吸収率の干渉成分を定める関数を、下記の式で表されるAbsorption Function(AF)として定義した。
AF={Aweighting×sin(L/(λ/4)×Pi/2)}^2
上記の関数によれば、層間における音の干渉によって吸収率が増減する効果を計算することができる。なお、Aweightingは、IEC(国際電気標準会議) 61672-1:2013に定められたA特性の重み付けである。より具体的に説明すると、Aweightingは、人間が五月蠅さを感じる周波数に対する重み付けを示すラウドネス曲線から算出され、周波数毎に音圧に乗じられる重み付けである。この重み付けを各周波数の音圧に乗じることで、例えば1kHz〜4kHz程度の音が人間にとって最も聞こえやすい音であること等を反映して、吸収率の評価を行うことができる。
実施例7では、各周波数におけるAbsorption FunctionをAF(f)として表現し、それを全周波数に亘って足し合わせることで、広帯域な周波数全体に亘る吸収率(厳密には、人間が感じる吸収率)を評価した。その結果として、AF(f)の合計値(以下、吸収合計値)の、層間距離に対する依存性を示すグラフを図24に示す。図24に示すように、層間距離を大きくしていくと、吸収特性を示す吸収合計値が飽和して振動する傾向にあることが分かる。この吸収合計値が振動する領域では、層間距離を大きくしても(すなわち、二層構造全体のサイズを大きくしても)吸収率が大きくならないことを示している。このため、上記の領域では、層間に新たな三層目の流れ抵抗体(布)を挟む等の対策を行う必要があることが分かる。
以上より、層間距離は、上記の振動領域に相当する大きさ以下であることが好ましい。
また、層間距離に対する吸収率の増減を評価するために、図24に示した吸収合計値を層間距離で微分し、その結果を図25に示す。図25に示すように、層間距離が1〜5mmの領域では、層間距離が大きくなるほど上記の微分値が大きくなるため、層同士を5mm程度離して防音構造体(二層構造)を構築することで音を効率よく吸収し得ることが分かる。また、層間距離が6mm〜30mmである領域では、微分値が単調に減少するが、微分値が正の領域となる。この領域では、層間距離を大きくすると吸収合計値も増加するが、その増加量は、層間距離が大きくなるほど小さくなっていくことが分かる。また、層間距離が30mm以上である場合は、上述の振動領域となる。特に、層間距離が40mm以上となる領域では微分値が負となる。すなわち、この領域では、層間距離を大きくしても吸収合計値が小さくなり、層間距離を大きくしても吸収率の増大がほとんど得られない領域となる。よって、層同士を40mm以上離して配置する場合には、その間に追加の層(すなわち、別の布)を挿入すべきである。
以上のように、図25に示した結果から考えて、層間距離については、40mm未満であることが望ましく、30mm以下であることがより望ましく、また、微分値の変曲点である20mm以下であることが特に望ましい。さらに、層間距離に応じて最も効率よく吸収率を高める場合には、特に5mm付近が好適であり、この点を踏まえて、層間距離を1mm以上12mm以下(12mmは、上記の微分値の変曲点)とすることが最も望ましい。
以上までに説明した本発明の実施例1〜8の各々は、本発明の範囲にあり、本発明の効果は明らかである。
10,10x,10y 防音構造体
11 紐
12 流れ抵抗体
12a 特定流れ抵抗体
14 保持部材
16 支柱
110,110x,210 ルーバー
211 板材
B 防音パネル
Bx パネル本体
By 枠体
C 天井
D ダクト
R 送気ファン
V ブース

Claims (13)

  1. 並べて配置された複数の流れ抵抗体を有し、
    前記複数の流れ抵抗体のうち、隣り合う2つの流れ抵抗体は、前記隣り合う2つの流れ抵抗体の各々の厚み方向において互いに対向しており、
    前記複数の流れ抵抗体には、流れ抵抗が150Pa・s/m以上、且つ2050Pa・s/m以下である特定流れ抵抗体が2つ以上含まれており、
    前記特定流れ抵抗体の厚みは、11mm未満であり、
    隣り合う前記特定流れ抵抗体同士の間には隙間が設けられており、
    前記隙間の各部分の厚みの平均値が0.6mm以上、且つ40mm未満であることを特徴とする防音構造体。
  2. 前記特定流れ抵抗体は、布によって構成されている請求項1に記載の防音構造体。
  3. 前記複数の流れ抵抗体には、3個以上、且つ10個以下の前記特定流れ抵抗体が含まれている請求項1又は2に記載の防音構造体。
  4. 3個以上、且つ10個以下の前記特定流れ抵抗体は、前記複数の流れ抵抗体が並ぶ方向において連続して並べられている請求項3に記載の防音構造体。
  5. 前記複数の流れ抵抗体の各々が前記特定流れ抵抗体である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の防音構造体。
  6. 前記平均値が20mm以下である請求項1乃至5のいずれか一項に記載の防音構造体。
  7. 前記平均値が1mm以上、且つ12mm以下である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の防音構造体。
  8. 前記特定流れ抵抗体の厚みは、4mm未満である請求項1乃至7のいずれか一項に記載の防音構造体。
  9. 隣り合う前記特定流れ抵抗体の間には、前記隙間を保持するための保持部材が設けられている請求項1乃至8のいずれか一項に記載の防音構造体。
  10. 前記特定流れ抵抗体の流れ抵抗が200Pa・s/m以上、且つ1300Pa・s/m以下である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の防音構造体。
  11. 前記防音構造体は、空間を仕切る天井及び壁のうちの少なくとも一方に、吊り下げられた状態で取り付けられている請求項1乃至10のいずれか一項に記載の防音構造体。
  12. 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の防音構造体を有する防音パネル。
  13. 請求項1乃至10のいずれか一項に記載の防音構造体が少なくとも一部分を構成するルーバー。
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