カレンダ処理に供するウェブである長尺のフィルム10は、図1に示すように、長尺の第1ウェブ部としての第1フィルム部11と、第2ウェブ部としての第2フィルム部12とを有する。第1フィルム部11と第2フィルム部12とは長手方向に接合されている。接合部14は、第1フィルム部11と第2フィルム部12とが厚み方向で重なる状態に接合されている部分である。そのため、接合部14は、フィルム10の中で局部的に厚くなっている。接合部は、第1フィルム部11と第2フィルム部12とが突き合わされた状態で、例えば接合用の粘着テープを用いて接合された場合もある。このような場合の接合部も同様に、フィルムの中で局部的に厚くなっている。本例の接合部14は、フィルム10の長手方向と幅方向との両方向に対して交差する方向で形成されているが、接合部14の形成方向は、フィルム10の幅方向と一致している場合もある。また、フィルム10の厚み方向における接合部14での第1フィルム部11と第2フィルム部12との位置関係は特に限定されない。
フィルム10は巻き芯15Aに巻かれた状態とされており、フィルムロール16は巻き芯15Aとフィルム10とを備える。フィルムロール16から巻き出した先端10f側に位置する第1フィルム部11は、製品としての利用が予定されていないロス分として、予め設けたフィルム部分である。そのため、第1フィルム部11は、後述のカレンダ装置20の例えば搬送路の長さ(搬送路長)よりも長くしており、第2フィルム部12と異なる素材、具体的には第2フィルム部12よりも廉価かつ廃棄処理が容易な素材で形成している。第2フィルム部12は、カレンダ処理を経ることで製品としての利用が予定されているフィルム部分である。ただし、第1フィルム部11の代わりに第2フィルム部12を用いてもよい。さらに、複数の第2フィルム部12を長手方向に接合し、より長いフィルムとしてもよく、本例でも、そのようにしている。したがって、図1では、接合部14を、第1フィルム部11と第2フィルム部12とが接合された1か所のみとして描いてあるが、第2フィルム部12同士を接合した接合部(図示無し)もフィルムロール16内に存在する。なお、上記のように長手方向に接合された複数の第2フィルム部12の一部が第1フィルム11に置き替えられている場合もある。
第1フィルム部11及び第2フィルム部12は、単層構造であってもよいし、複層構造であってもよい。第1フィルム部11と第2フィルム部12との一方が単層構造、他方が複層構造であってもよい。第1フィルム部11と第2フィルム部とは、樹脂(ポリマー)で形成されており、微粒子(粉体を含む)、及び/または、添加剤(可塑剤及び紫外線吸収剤など)等を含有していてもよい。また、第1フィルム部11と第2フィルム部12とが複層構造の場合には、樹脂で形成された樹脂層と、樹脂以外の物質(例えば、金属)で形成された層とを有していてもよい。
図2において、カレンダ装置20は、長尺のフィルム10にカレンダ処理するためのものであり、後述するカレンダローラ対によりフィルム10を両フィルム面側から押圧する。この例では、カレンダ処理により、フィルム10のフィルム面を、より平滑化された光沢面にしている。ただし、カレンダ処理は、この例のような平滑化のためのカレンダ処理に限られない。例えば、フィルム面を所定の微細凹凸の面にしたり、フィルムの厚み方向における少なくとも一部をより高い密度にするなど、他の目的で行うカレンダ処理であってもよい。
カレンダ装置20は、送出部22と、巻取部23と、複数のローラ26と、カレンダユニット27と、張力検出部30a,30bと、接合部検出部31a,31bと、シフト機構34と、モータ35a〜35dと、システムコントローラ36などから構成されている。送出部22は、回転軸22aと、モータ35aとを備える。送出部22は、フィルムロール16がセットされた回転軸22aをモータ35aで回転させ、これにより、フィルム10をカレンダローラ対に向けて送り出す。モータ35aの代わりに、パウダブレーキを用いてもよい。パウダブレーキは、磁性粉体を介してトルクを伝達制御する。
巻取部23も送出部22と同様に、回転軸23aと、モータ35bとを備える。巻取部23は、回転軸23aにセットした巻き芯15Aをモータ35bで回転させ、これにより、カレンダ処理を経たフィルム10を先端10f(図1参照)から巻き取る。
複数のローラ26は、送出部22から巻取部23へフィルム10を案内するためのものであり、フィルム10の搬送路を設定している。図2においては、ローラ26の個数を5個として描いているが、ローラ26の個数はこれに限られず、1個以上4個以下、または6個以上であってもよい。本例では、各ローラ26にフィルム10を巻き掛けることによりフィルム10と各ローラ26とを面接触させている。しかし、フィルム10とローラ26とは線接触であってもよい。ローラ26の代わりに、浮上搬送装置を用いてもよい。浮上搬送装置は、エア圧(空気の圧力)によりフィルム10を浮上させる。
張力検出部30a,30bは、フィルム10の長手方向における張力(以下、単に「張力」と称する)を検出するためのものためのものである。張力検出部30aはフィルム10の搬送方向(以下、単に「搬送方向」と称する)におけるカレンダローラ対よりも上流に、張力検出部30bはカレンダローラ対よりも下流に、配されている。本例では張力検出部30a,30bはそれぞれ、搬送方向に並んだ2つのローラ26の間に配されている。張力検出部30a,30bは、システムコントローラ36に接続している。システムコントローラ36は、張力検出部30a,30bの各々から検出した張力の検出信号が入力された場合に、モータ35a〜35cを介して回転軸22a,23a及び後述の回転軸41aを駆動制御し、また、モータ35dを介して後述の回転軸42aの駆動モードでの駆動制御を行う。これにより、搬送されているフィルム10は、長手方向における張力が一定に維持される。
張力検出部30a,30bとしては、ロール型のテンションセンサであるいわゆるテンションピックアップ装置、及び、浮上搬送装置などを用いることができ、市販品でもよい。本例では、従動ローラと市販のテンションピックアップ装置とを組み合わせて張力検出部30a,30bとしており、テンションピックアップ装置には微変位張力検出器(三菱電機(株)製のLX−015TD)を用いている。テンションピックアップ装置は、従動ローラに対するフィルムの押圧力を利用して張力を検出する。なお、図2においては張力検出部30a,30bをフィルム10の搬送路の上側に便宜上描いてあるが、用いる張力検出部に応じてフィルム10の搬送路の下側に配してもよい。浮上搬送装置は、浮上しているフィルムとの間のエア圧(空気の圧力)を用いて張力を検出する。
カレンダユニット27は、第1カレンダローラ41及び第2カレンダローラ42と、ニップローラ43などから構成されている。第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42とは、回転軸41aと回転軸42aとが互いに平行な状態に配されるカレンダローラ対を構成しており、フィルム10を両フィルム面側から押圧するカレンダ処理を施す。回転軸41aと回転軸42aとは、なす角が0.1°以内であれば平行とみなしてよい。本例では第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42とは外径が互いに等しいが、外径は互いに異なっていてもよい。
第1カレンダローラ41は回転駆動するいわゆる駆動ローラであり、回転軸41aを回転させるモータ35cを備える。第1カレンダローラ41は周面にフィルム10が巻き掛けられ、回転軸41aの回転によりフィルム10が長手方向に搬送される。なお、第1カレンダローラ41の周面のうちフィルム10が巻き掛けられる領域(以下、巻き掛け領域と称する)WA(図4参照)の上流端(第1カレンダローラ41の回転方向における上流端)を巻き掛け上流端と称し、符号WAuを付す。また巻き掛け領域WAの下流端(第1カレンダローラの回転方向における下流端)を巻き掛け下流端と称し、符号WAdを付す。
モータ35cは、システムコントローラ36により駆動制御されており、システムコントローラ36は、設定されたフィルム10の搬送速度に、モータ35cを介して第1カレンダローラ41の周速度を制御する。これにより、フィルム10は、目的とする速度で長手方向に搬送される。なお、周速度は、周面上の任意の点に着目した場合に、着目した点が周方向に移動する速さである。
従来は、カレンダローラ対を構成するカレンダローラは、駆動ローラであっても、その周速度は、カレンダ処理で押圧されている間のフィルムの張力を調整する観点で設定される。しかし、第1カレンダローラ41は、上記のように、カレンダ処理の押圧を行う機能の他に、フィルム10を目的とする速度で搬送する機能を担う。
第2カレンダローラ42は、図2の実線で示すようにフィルム10を押圧する押圧位置と、二点破線で示すように押圧位置から退避した押圧退避位置との間で変位自在とされている。接合部14がカレンダローラ対を通過する間は、第2カレンダローラ42は押圧退避位置にされ、これにより接合部14は押圧を回避される。したがって、押圧退避位置は、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との距離が接合部14の厚みよりも大きくなる状態に設定される。
第2カレンダローラ42にはシフト機構34が接続しており、シフト機構34は第2カレンダローラ42を変位させる。シフト機構34は、システムコントローラ36により駆動制御されており、システムコントローラ36は、シフト機構34を介して第2カレンダローラ42の変位を制御する。変位の制御は、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との距離の変化(増加及び減少)と、変位のタイミングとの制御を含む。これにより、フィルム10は、目的とするタイミングで、カレンダローラ対により目的とする押圧力で押圧され、また、押圧を解除される。カレンダローラ対によってフィルム10が押圧される位置の詳細については、別の図面を用いて後述する。
この例では、第2カレンダローラ42のみを押圧位置と押圧退避位置との間で変位自在としている。しかし、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42とは、互いの距離が増減すればよく、互いの距離を減少させることにより押圧位置に、増加させることにより押圧退避位置に、相対的に移動すればよい。すなわち、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との少なくとも一方が変位自在であればよい。カレンダローラ対によってフィルム10を押圧する押圧力は、100kN/m以上1000kN/m以下の範囲内であることが好ましく、100kN/m以上600kN/m以下の範囲内であることがより好ましく、100kN/m以上400kN/m以下の範囲内であることがさらに好ましい。
第2カレンダローラ42は、回転駆動する駆動モードと、搬送されているフィルム10に従動回転する従動モードとを有し、これらのモードを切り替え可能に構成されている。第2カレンダローラ42は、回転軸42aを回転させるモータ35dを備える。モータ35dは、システムコントローラ36により駆動制御されている。システムコントローラ36は、モータ35dの駆動のオンとオフとの切り替え制御を行い、オンにすることにより第2カレンダローラ42を駆動モードに、オフにすることにより第2カレンダローラ42を従動モードに制御する。システムコントローラ36は、第2カレンダローラ42を駆動モードにする場合には、モータ35dを介して第2カレンダローラ42の周速度を第1カレンダローラ41の周速度に制御する。これにより、第2カレンダローラ42は、駆動モードにおいて、第1カレンダローラ41と同じ周速度で回転する。なお、第1カレンダローラ41の周速度をV41とし、第2カレンダローラ42の周速度をV42とするときに、V41とV42との差|V41−V42|がV41×0.01以内であれば、同じ周速度とみなしてよい。
この例では、図2に示すように、押圧位置における第2カレンダローラ42の周面にはフィルム10を巻き掛けていない。したがって、第2カレンダローラ42とフィルム10とは線接触とみなすことができる。
第2カレンダローラ42は、押圧退避位置から押圧位置への変位に応じて、駆動モードと従動モードとが切り替えられる。この切り替えの詳細については、別の図面を用いて後述する。
ニップローラ43は、カレンダローラ対によって押圧していない状態のフィルム10を、第1カレンダローラ41によって目的とする速度で確実に搬送するためのものである。ニップローラ43は、第1カレンダローラ41により搬送されているフィルム10に従動回転する従動ローラである。ニップローラ43は、図2の二点破線で示すようにフィルム10を第1カレンダローラ41との間にニップするニップ位置と、実線で示すようにニップ位置から退避したニップ退避位置との間で変位自在とされている。ニップ位置においては、ニップローラ43は、回転軸43aが第1カレンダローラ41の回転軸41aと互いに平行にした状態とされる。
ニップローラ43にはシフト機構34が接続しており、シフト機構34はニップローラ43を変位させる。シフト機構34は、前述の通りシステムコントローラ36により駆動制御されており、システムコントローラ36は、シフト機構34を介してニップローラ43の変位を制御する。変位の制御は、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との距離の変化(増加及び減少)と、変位のタイミングとの制御を含む。これにより、フィルム10は、目的とするタイミングで、ニップローラ43と第1カレンダローラ41とによりニップされ、また、ニップを解除される。ニップローラ43によってフィルム10がニップされる位置の詳細については、別の図面を用いて後述する。
ニップローラ43は、第2カレンダローラ42が、押圧退避位置から押圧位置へ変位する間、押圧退避位置から押圧位置へ変位する間、及び押圧退避位置にある間は、ニップ位置へ配される。このため、接合部14がカレンダローラ対を通過する間は、ニップローラ43はニップ位置に配されることになる。また、ニップローラ43は、第2カレンダローラ42が押圧位置にある状態で、変位する。
接合部14は、ニップローラ43がニップ位置にあるニップローラ43と第1カレンダローラ41との間を通過してもよく、本例でも通過させている。ニップローラ43は、第1カレンダローラ41にフィルム10をニップする圧力(以下、ニップ圧と称する)を調整するニップ圧調整部43bを備える。ニップ圧調整部43bは、フィルム10に対するニップ圧を一定に調整する。ニップ圧は、カレンダローラ対での押圧力よりも極めて小さく抑えており、50N/m以上2000N/m以下の範囲内であることが好ましく、200N/m以上1000N/m以下の範囲内であることがより好ましく、400N/m以上700N/m以下の範囲内であることがさらに好ましい。なお、ニップ圧の単位「N/m」は、フィルム10の幅方向(回転軸43aが延びた方向)での1m当たりの圧力(単位はNである)を意味している。
接合部検出部31a,31bは、接合部14を検出するためのものである。接合部検出部31aはフィルム10の搬送方向におけるカレンダローラ対よりも上流に、接合部検出部31bはカレンダローラ対よりも下流に、配されている。接合部検出部31a,31bは、システムコントローラ36に接続している。システムコントローラ36は、接合部検出部31a,31bの各々から接合部14を検出した検出信号が入力された場合に、シフト機構34を介して第2カレンダローラ42とニップローラ43との各変位を制御する。これにより、フィルム10は、目的とするタイミングで、押圧と押圧の解除、及び、ニップとニップの解除がそれぞれなされる。
接合部検出部31a,31bとしては、フィルム10に非接触で接合部14を検出できる検出機器が好ましく、光電センサを用いることができる。フィルム10が透明である場合には、市販品として例えばオムロン(株)製のファイバセンサ(E32−T16JとE3X−DAC11−Sとを組み合わせたユニット)などを用いることができ、本例でもフィルム10が透明であるのでこのオムロン(株)製のファイバセンサを用いている。
図3に示すように、第1カレンダローラ41(図2参照)及び第2カレンダローラ42と、ニップローラ43とは、回転軸41a(図2参照),42a,43aが延びた方向において、外径が一定のストレートローラである。第1カレンダローラ41及び第2カレンダローラ42と、ニップローラ43とは、ローラ幅がフィルム10の幅W10よりも大きい。ローラ幅は、回転軸が延びた方向における周面の長さである。図3においては第2カレンダローラ41のローラ幅に符号W42を、ニップローラ43のローラ幅に符号W43を付している。第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42とのローラ幅は同じであるが、互いに異なっていてもよい。
図4に示すように、第2カレンダローラ42は、第1カレンダローラ41の巻き掛け領域WAでフィルム10を押圧する。したがって、フィルム10が押圧される被押圧位置P1は、巻き掛け領域WA上に設定される。ニップ位置も、同様に巻き掛け領域WAでフィルム10がニップされる状態に設定されることが好ましく、本例でもそのようにしている。したがって、フィルム10がニップされる被ニップ位置P2も同様に巻き掛け領域WA上に設定される。
この例のフィルム10は接合部を備えるが、接合部の代わりに、長手方向において局部的に厚みが大きくなっている部分(以下、局厚部と称する)を備えていてもよい。その場合には局厚部を上記の接合部として、カレンダ装置20の各部は構成される。また、ウェブは、樹脂で形成されたフィルムに限定されず、例えば、金属で形成された長尺の金属箔、または、紙で形成された長尺のペーパーウェブなどでもよい。このように、カレンダ処理に供するウェブは、第1フィルム部11の代わりである第1ウェブ部と第2フィルム部12の代わりである第2ウェブ部とが接合されたウェブであってもよいし、長手方向において局厚部を備え、かつ、樹脂以外の素材で形成されたウェブであってもよい。
ウェブが非透明または透明性に乏しい場合には、本例で用いている光透過式の接合部検出部31a,31bの代わりに、光反射式の厚み検出部(図示無し)を用いればよい。この厚み検出部としては例えば(株)Keyence((株)キーエンス)のレーザ変位計LK−H022Kなどを用いることができる。このレーザ変位計は、ウェブにレーザ光を照射し、ウェブ面で反射したレーザ光によってウェブまでの距離を計測し、特に光沢のあるウェブにおいては有用である。
上記構成の作用を説明する。フィルムロール16は送出部22にセットされる。フィルム10は先端Aから繰り出され、カレンダ装置20に配された複数のローラ26と第1カレンダローラ41によって設定された搬送路に掛け渡され、先端10fが巻取部23の回転軸23aにセットされた巻き芯15Bに例えば粘着テープなどで固定される。フィルム10の搬送路への掛け渡しと、先端10fの巻き芯15Bに対する固定とは、本例では作業者によって行っている。
上記のようにカレンダ装置20にフィルム10をセットする間は、第2カレンダローラ42は押圧退避位置に、ニップローラ43はニップ位置に配される。そのため、カレンダ装置20にセットされた初期状態においては、フィルム10はカレンダローラ対には押圧されていない状態であるが、第1カレンダローラ41とニップローラ43とにはニップされている状態である。ここで、上記初期状態にされた時点を図5に示すようにt0とする。なお、図5の「押圧」項目の実線は、カレンダローラ対によってフィルム10を押圧している状態を示し、「ニップ」項目の実線は、第1カレンダローラ41とニップローラ43とによってフィルム10をニップしている状態を示している。
システムコントローラ36には、フィルム10の目的とする搬送速度と張力とカレンダローラ対によって行われる押圧の押圧力とが予め入力されている。上記のようにカレンダ装置20にセットされた後、システムコントローラ36は、回転軸22a,23a,41aを制御し、フィルム10を第1フィルム部11から搬送し始め、第1フィルム部11を予め入力されてある搬送速度と張力とにする。このように搬送速度と張力とを予め設定した状態に調整している間も、上記初期状態と同様に、第2カレンダローラ42は押圧退避位置に、ニップローラ43はニップ位置に配された状態にする。また、図5に示すように、上記初期状態にされた時点及び搬送速度と張力との上記の調整中は、本例では第2カレンダローラ42を、駆動モードがオフとされた従動モードにしているが、初期状態後まもなく従動モードから駆動モードに切り替えてもよい。図5において「第2カレンダローラの駆動」欄の実線は、第2カレンダローラが駆動モードであることを示しており、駆動モードでない間は従動モードとなっていることを示している。
システムコントローラ36は、フィルム10の以降の搬送においても、回転軸22a,23a,41aを制御し、予め入力されてある搬送速度と張力とを一定に保持する。
フィルム10は、回転駆動する第1カレンダローラ41に巻き掛けられており、ニップローラ43によって第1カレンダローラ41との間にニップされているから、確実に、目的とする速度で長手方向に搬送される。そのため、フィルム10を目的とする速度で搬送するための他の搬送機器は必要無い。また、ニップローラ43は、フィルム10の幅W10よりも大きいローラ幅W43とされているから、フィルム10の全幅域を第1カレンダローラ41上にニップする。そのため、フィルム10は、より確実に、目的とする速度で搬送される。
第2カレンダローラ42を押圧退避位置に配した状態で、接合部検出部31a,31bは、接合部14をそれぞれ検出し、検出信号をシステムコントローラ36へ出力する。この例の第1フィルム部11は、製品としての利用を予定していないフィルム部分である。そのため、システムコントローラ36は、カレンダローラ対よりも下流に配された接合部検出部31bからの検出信号に基づき、第2カレンダローラ42のモード切り替えと変位とを行う。具体的には、接合部検出部31bが、検出信号を、接合部14がカレンダローラ対を通過し終えた通過終了時t1として出力した場合に、システムコントローラ36は、図5に示すように、第2カレンダローラ42を従動モードから駆動モードに切り替え、かつ、押圧退避位置から押圧位置へ変位させる。これにより、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との距離はフィルム10が押圧される状態に減少し、カレンダローラ対によって第2フィルム部12の押圧、すなわちフィルム10に対するカレンダ処理が開始される。
上記のように、第2カレンダローラ42は、接合部14がカレンダローラ対を通過する間は押圧退避位置に配されるから、フィルム10のうち厚みが局部的に大きい接合部14(図1参照)は押圧を回避される。これにより、カレンダローラ対に過度な負荷がかかることがないためカレンダローラ対の故障が防止される。また、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との周面に傷が発生することも防止される。
押圧の開始時(以下、押圧開始時と称する)t2は、第2カレンダローラ42は駆動モードとされているから、第2フィルム部12の第2カレンダローラ42側のフィルム面に傷がつきにくく、また、フィルム10の搬送方向におけるカレンダローラ対よりも上流側と下流側との張力差が生じにくい。
押圧が開始された後に、システムコントローラ36は、第2カレンダローラ42のモード切り替えと、ニップローラ43の変位とを行う。具体的には、システムコントローラ36は、第2カレンダローラ42の押圧位置への変位に応じて、図5に示すように、第2カレンダローラ42を駆動モードから従動モードに切り替え、かつ、ニップローラ43をニップ位置からニップ退避位置へ変位させる。このようにニップは、カレンダローラ対によって第2フィルム部12が押圧された状態、すなわちフィルム10に対するカレンダ処理がなされている状態で、解除される。図5においては、このニップの解除時をt3としている。なお、この例では、第2カレンダローラの駆動モードから従動モードへの切り替えを、ニップの解除と同時に行っているが、ニップの解除時t3よりも早くてもよいし、遅くてもよい。
第2カレンダローラ42は、押圧位置への変位に応じて駆動モードから従動モードに切り替わるから、カレンダ処理の開始直後からフィルム10の第2フィルム部12は第2カレンダローラ42側のフィルム面における傷の発生が抑制された状態で、フィルム10は目的とする速度で搬送され、また、フィルム10の搬送方向における張力も一定に保持される。
ニップローラ43は、第2カレンダローラ42が押圧退避位置から押圧位置との間で変位している間、及び、押圧退避位置に配されている間は、ニップ位置に配されており、従動回転しているから、カレンダローラ対での押圧が解除された押圧解除状態であっても、フィルム10は第1カレンダローラ41によって目的とする速度で安定的に搬送される。なお、第2カレンダローラ42が押圧退避位置から押圧位置へ変位している間とは、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との距離が減少している間であり、押圧退避位置に配されている間とは、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラとが押圧を解除した状態に離れている間である。
また、ニップローラ43は、第2カレンダローラ42が押圧位置にある状態で変位するから、フィルム10は第2カレンダローラ42とニップローラ43の少なくともいずれか一方により、第1カレンダローラ41上に押さえられている。そのため、フィルム10は、第1カレンダローラ41の駆動によって、より確実に目的とする速度で搬送される。
ニップローラ43は、ニップ圧調整部43bによりフィルム10に対するニップ圧が均一な状態でフィルム10をニップするから、フィルム10はより確実に目的とする速度で搬送される。また、ニップ圧は、カレンダローラ対での押圧力よりも極めて小さく、50N/m以上2000N/m以下の範囲内という小さなニップ圧に抑えられているから、厚みが局部的に大きい接合部14がニップされる状態で通過しても、フィルム10は安定的に搬送される。
カレンダローラ対は、第1カレンダローラ41の巻き掛け領域WAで、搬送されているフィルム10を押圧するから、フィルム10は、押圧の開始時及び押圧の解除時において、搬送路長が変化せず、そのためそれぞれ一定の張力を保持された状態で搬送される。その結果、張力の変化に起因するフィルム面の傷とフィルムのたるみとが抑えられる。また、フィルム10は、巻き掛け領域WAでニップされるから、ニップを解除した直後及び後述のニップを開始した直後においても、搬送路長が変化しないから張力が変化しにくく、変化した場合でも極めて小さな変化に抑えられる。その結果、張力の変化に起因するフィルム面の傷とフィルムのたるみとがより確実に抑えられる。
カレンダローラ対のうち第2カレンダローラ42のみを変位自在としているから、フィルム10の張力がより制御しやすく、かつ、カレンダユニット27の大型化が抑えられる。
第2カレンダローラ42を従動モードにした状態、かつ、ニップローラ43をニップ退避位置に配した状態で、第1フィルム部11の後端に接合した第2フィルム部12をカレンダローラ対によりカレンダ処理する。前述の通り、フィルム10は、複数の第2フィルム部12を長手方向に接合しており、第2フィルム部12同士の接合部(図示無し)がある。第2フィルム部12同士の接合部が接合部検出部31aにより検出された場合には、その検出信号に基づき、システムコントローラ36は、ニップローラ43をニップ退避位置からニップ位置へ変位させる。これによりフィルム10が第1カレンダローラ41とニップローラ43とによりニップされる。このニップ開始時を、図5においてはt4で示している。
その後、システムコントローラ36により、第2カレンダローラ42を押圧位置から押圧退避位置に変位させ、これにより押圧を解除、すなわちカレンダ処理を停止する。この押圧の解除時を、図5においてはt5で示している。そして、第2カレンダローラ42を従動モードから駆動モードへ切り替える。この切り替え時を図5においてはt6で示している。この例では、t6をt5の後としているが、t6はt5と同時でもよい。
第2カレンダローラ42を押圧退避位置に配した状態で、接合部検出部31bが接合部を検出した場合に、前述の接合部14を検出した場合と同様に、システムコントローラ36はその検出信号に基づいて、図5に示すように、既に駆動モードにしてある第2カレンダローラ42を押圧退避位置から押圧位置へ変位させる。このように、フィルム10を押圧する状態に第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との距離を減少させるまで、第2カレンダローラ42を駆動モードとする。これにより、第1フィルム部11に接合された第2フィルム部12の後端に対して、さらに接合された2枚目の第2フィルム部12の押圧が開始され、すなわちフィルム10に対するカレンダ処理が再び開始される。この押圧の開始時を、図5においてはt7で示している。
その後同様に、ニップローラ43のニップ退避位置への変位と第2カレンダローラの従動モードへの切り替えとを行い、押圧すなわちカレンダ処理を継続する。以上のように、第2カレンダローラ42のモード切り替えと変位、及びニップローラ43の変位とを同様に繰り返すことにより、同様に、接合部の押圧を回避したカレンダ処理が、フィルム10の搬送を停止することなく、行われる。
上記の方法によると、接合部14がカレンダローラ対に達する前に、フィルム10の搬送速度及び張力等が調整されており、接合部14がカレンダローラ対を通過して間もなく目的とするカレンダ処理がなされる。そのため、接合部14よりも上流側の第2フィルム部12のロス分が極めて少なく抑えられる。また、接合部14がカレンダローラ対に近づいた場合に、フィルム10の搬送を停止する必要がないから、カレンダユニット27の上流にカレンダ処理と異なる処理工程がある場合でも、その処理工程での処理時間をフィルム10の長手方向において一定にすることができる。すなわち、フィルム10の長手方向において局部的に上記の処理工程での処理が長くなってしまうことが回避できる。
以上の作用は、接合部14の代わりに前述の局厚部を備えるフィルムの場合、及び、接合部または局厚部を備え、かつ、樹脂以外の素材で形成されたウェブの場合も同様である。なお、ウェブが非透明または透明性に乏しい場合には、前述の通り、接合部検出部31a,31bの代わりに反射式のセンサを用いることにより同様の作用となる。
上記の例では、第1カレンダローラ41の回転方向において、被ニップ位置P2を被押圧位置P1よりも下流にしている。しかし、第1カレンダローラ41の回転方向における被押圧位置P1と被ニップ位置P2との位置関係はこの例に限られない。例えば、図6に示すように、被ニップ位置P2を、第1カレンダローラの回転方向における被押圧位置P1よりも上流にしてもよい。この場合においても、前述のように被押圧位置P1は巻き掛け領域WA上にし、そのために、第2カレンダローラ42の押圧位置は、巻き掛け領域WAで設定する。そして、被ニップ位置P2は、必ずしも巻き掛け領域WA上でなくてもよいが、前述の通り巻き掛け領域WA上である方がより好ましく、そのために、図6に示すように、ニップローラ43のニップ位置は巻き掛け領域WAで設定することが好ましい。
カレンダ装置20は、送出部、巻取部、及び/またはローラなどをさらに加えることにより、複数の長尺のフィルムに対してカレンダ処理を施すことができる。例えば図7に示すカレンダ装置60は、フィルム10と他の長尺のフィルムとの2枚のフィルムに対してカレンダ処理を施すための装置である。フィルム10を第1フィルム10とする。上記の他の長尺のフィルムを第2フィルム61とする。
前述の送出部22及び巻取部23を、第1送出部22及び第1巻取部23とするときに、カレンダ装置60は、カレンダ装置20に対して、さらに、第2送出部62、第2巻取部63、張力検出部30c,30d、接合部検出部31c,31d、モータ35e,35f、及びローラ26を増設した構成となっている。なお、図7においては、図2と同じ部材については図2と同じ符号を付し、説明を略す。また、図7においては、シフト機構34、モータ35a〜35e、及び、システムコントローラ36の既に説明した各部との接続の図示を略してある。
説明の便宜上、2枚のフィルムを区別するために一方を第1フィルム10とし、他方を第2フィルム61としているが、本例の第2フィルム61は、第1フィルム10と同じフィルムである。しかし、第2フィルム61は、第1フィルム10と異なるフィルムであってもよい。なお、この例では第1フィルム10と第2フィルム61との各フィルム面を、カレンダ処理により、より平滑化された光沢面にしている。ただし、カレンダ処理は、この例のような平滑化のためのカレンダ処理に限られない。例えば、少なくとも一方のフィルムのフィルム面を所定の微細凹凸の面にしたり、フィルムの厚み方向における少なくとも一部をより高い密度にするなど、他の目的で行うカレンダ処理であってもよい。
第2フィルム61は、接合部の代わりに局厚部を備えるフィルムであってもよい。また、第2フィルム61は、第1ウェブの一例である第1フィルム10と同様に第2ウェブの一例であり、例えば、金属で形成された長尺の金属箔、または、紙で形成された長尺のペーパーウェブなどでもよい。このように、第2ウェブは、第1フィルム部11の代わりである第1ウェブ部と第2フィルム部12の代わりである第2ウェブ部とが接合された第2ウェブであってもよいし、長手方向において局厚部を備え、かつ、樹脂以外の素材で形成された第2ウェブであってもよい。第2ウェブが非透明または透明性に乏しい場合には接合部検出部31c,31dは、前述の反射式のセンサに置き換えるとよい。
第2送出部62は、第1送出部22と同様に構成されている。すなわち、第2送出部62は、回転軸62aとモータ35eとを有し、第2フィルム61が巻き芯15Cに巻かれたフィルムロール66がセットされた回転軸62aをモータ35eで回転させ、これにより、第2フィルム61をカレンダローラ対に向けて送り出す。
第2巻取部63は、第1巻取部23と同様に構成されている。すなわち、第2巻取部63は、回転軸63aと、モータ35fとを備え、第2巻取部63は、回転軸63aにセットした巻き芯15Dをモータ35fで回転させ、これにより、カレンダ処理を経た第2フィルム61を先端10f(図1参照)から巻き取る。
第2送出部62と第2巻取部63との間に配された複数のローラ26は、第2フィルム61を案内するためのものであり、第2フィルム61の搬送路を設定している。図7においては、第2送出部62と第2巻取部63との間に配されるローラ26の個数を5個として描いているが、第1送出部22と第1巻取部23との間のローラ26の個数と同様に、5個に限られない。本例では、各ローラ26に第2フィルム61を巻き掛けることにより第2フィルム61と各ローラ26とを面接触させている。しかし、第2フィルム61も第1フィルム10と同様に、ローラ26との接触が線接触であってもよい。
この例のカレンダローラ対は、第1フィルム10を第2フィルム61とともに押圧することにより、第1フィルム10と第2フィルム61とをカレンダ処理する。この例では、第1カレンダローラ41は、回転軸41aの回転駆動により、第1フィルム10と第2フィルム61とを、目的とする速度で長手方向に搬送する。
張力検出部30c,30dは、第2フィルム61の張力を検出するためのものためのものである。張力検出部30cは第2フィルム61の搬送方向(以下、単に「搬送方向」と称する)におけるカレンダローラ対よりも上流に、張力検出部30dはカレンダローラ対よりも下流に、配されている。張力検出部30cは張力検出部30aと同様に、また、張力検出部30dは張力検出部30bと同様に構成されている。すなわち、張力検出部30c,30dは、それぞれ、搬送方向に並んだ2つのローラ26の間に配されており、システムコントローラ36に接続している。システムコントローラ36は、張力検出部30c,30dの各々から検出した張力の検出信号が入力された場合に、モータ35c,35e,35fを介して回転軸62a,63a及び後述の回転軸41aを駆動制御し、また、モータ35dを介して後述の回転軸42aの駆動モードでの駆動制御を行う。これにより、搬送されている第2フィルム61も第1フィルム10と同様に、長手方向における張力が一定に維持される。
第2フィルム61も第1フィルム10と同様に接合部14を有する。第2フィルム61の接合部14も、第1フィルム10の接合部14と同様に、ニップ位置にあるニップローラ43と第1カレンダローラ41との間を通過してもよく、本例でも通過させている。したがって、この例でのニップ圧調整部43bは、ニップローラ43が第1カレンダローラ41に第1フィルム10を第2フィルム61とともにニップするニップ圧を調整する。ニップ圧調整部43bは、第1フィルム10及び第2フィルム61に対するニップ圧を一定に調整する。
接合部検出部31c,31dは、第2フィルム61の接合部14を検出するためのものである。接合部検出部31cは第2フィルム61の搬送方向におけるカレンダローラ対よりも上流に、接合部検出部31dはカレンダローラ対よりも下流に、配されている。接合部検出部31c,31dは接合部検出部31a,31bと同様に構成されている。すなわち、接合部検出部31,31dはシステムコントローラ36に接続しており、システムコントローラ36は、接合部検出部31c,31dの各々から第2フィルム61の接合部14を検出した検出信号が入力された場合に、シフト機構34を介して第2カレンダローラ42とニップローラ43との各変位を制御する。これにより、第2フィルム61は第1フィルム10とともに、目的とするタイミングで、押圧と押圧の解除、及び、ニップとニップの解除がそれぞれなされる。
図2に示すカレンダ装置20では、接合部検出部31a,31bをフィルム10の第2カレンダローラ42側のフィルム面側に配しているが、図7に示すカレンダ装置60では、第1フィルム10の第1カレンダローラ41側のフィルム面側に配してある。このように、接合部検出部31a,31bは、いずれのフィルム面側に配してもよい。接合部検出部31c,31dも同様に、いずれのフィルム面側に配してもよい。
上記構成の作用を説明する。なお、カレンダ装置60はカレンダ装置20の構成を含んでいるから、カレンダ装置20と同じ作用については説明を略す。フィルムロール66は第2送出部62にセットされる。第2フィルム61は、第1フィルム10と同様に、先端(図示無し)から繰り出され、複数のローラ26と第1カレンダローラ41によって設定された搬送路に掛け渡され、先端が第2巻取部63の回転軸63aにセットされた巻き芯15Dに例えば粘着テープなどで固定される。第2フィルム61は、第1フィルム10の第2カレンダローラ42側のフィルム面側に位置する状態に、掛け渡される。なお、第2フィルム61も第1フィルム10の場合と同様に、搬送路への掛け渡しと、先端の巻き芯15Dに対する固定とは、作業者によって行っている。
上記のようにカレンダ装置60に第1フィルム10と第2フィルム61とをセットする間は、第2カレンダローラ42は押圧退避位置に、ニップローラ43はニップ位置に配される。そのため、カレンダ装置60にセットされた初期状態において(図5における時間T=t0)は、第1フィルム10及び第2フィルム61はカレンダローラ対には押圧されていない状態であるが、第1カレンダローラ41とニップローラ43とにはニップされている状態である。
システムコントローラ36には、第1フィルム10の目的とする搬送速度と、第1フィルム10及び第2フィルム61のそれぞれに付与する張力と、カレンダローラ対により第1フィルム10及び第2フィルム61に対して付与する押圧力とが予め入力されている。第2フィルム61の目的とする搬送速度は、第1フィルム10の目的とする搬送速度と同じとするから、システムコントローラ36に入力する必要はない。また、この例では、第2フィルム61は前述の通り第1フィルム10と同じフィルムであるから、付与する張力も同じに設定している。
上記のようにカレンダ装置60に第1フィルム10と第2フィルム61とがセットされた後、システムコントローラ36は、回転軸22a,23a,62a,63a,41aを制御し、第1フィルム10及び第2フィルム61を、それぞれ第1フィルム部11から搬送し始め、各第1フィルム部11を予め入力されてある搬送速度と張力とにする。このように搬送速度と張力とを予め設定した状態に調整している間は、カレンダ装置20を用いた場合と同様に、第2カレンダローラ42は押圧退避位置に、ニップローラ43はニップ位置に配された状態にする。また、この例においても、カレンダ装置20を用いた場合と同様に、初期状態にされた時点及び搬送速度と張力との上記の調整中は、第2カレンダローラ42を、駆動モードがオフとされた従動モードにしているが、初期状態後まもなく従動モードから駆動モードに切り替えてもよい。
システムコントローラ36は、第2フィルム61の以降の搬送においても、回転軸62a,63aを制御し、予め入力されてある張力を一定に保持する。
第1フィルム10と第2フィルム61とは厚み方向に重なった状態で、回転駆動する第1カレンダローラ41に巻き掛けられており、ニップローラ43によって第1カレンダローラ41との間にニップされているから、確実に、目的とする速度で長手方向に搬送される。そのため、第1フィルム10及び第2フィルム61を目的とする速度で搬送するための他の搬送機器は必要無い。また、ニップローラ43は、第1フィルム10の幅W10(図3参照)及び第2フィルム61の幅(図示無し)よりも大きいローラ幅W43とされているから、第1フィルム10及び第2フィルム61の全幅域を第1カレンダローラ41上にニップする。そのため、第1フィルム10及び第2フィルム61は、より確実に、目的とする速度で搬送される。
この例では、システムコントローラ36は、第1フィルム10の接合部14に加えて、第2フィルム61の接合部14を、カレンダローラ対に押圧されない状態に、各部を制御する。すなわち、接合部検出部31c,31dは、第2フィルム61の接合部14をそれぞれ検出し、検出信号をシステムコントローラ36へ出力する。第1フィルム10及び第2フィルム61の各第1フィルム部11は、製品としての利用を予定していないフィルム部分であるから、システムコントローラ36は、カレンダローラ対よりも下流に配された接合部検出部31b,31dからの検出信号に基づき、第2カレンダローラ42のモード切り替えと変位とを行う。具体的には、以下である。接合部検出部31bと接合部検出部31dとの両方が検出信号を出力した場合に、第1フィルム10と第2フィルム61との各接合部14がカレンダローラ対を通過し終えた前述の通過終了時(図5における時間T=t1)として出力したものとみなすことができる。そこで、接合部検出部31bと接合部検出部31dとの両方から検出信号が入力された場合に、システムコントローラ36は、第2カレンダローラ42を従動モードから駆動モードに切り替え、かつ、押圧退避位置から押圧位置へ変位させる。これにより、互いの第2フィルム部12が重なった状態の第1フィルム10と第2フィルム61との押圧、すなわち第1フィルム10及び第2フィルム61に対するカレンダ処理が開始される。
上記のように、第2カレンダローラ42は、第1フィルム10及び第2フィルム61の接合部14がカレンダローラ対を通過する間は押圧退避位置に配されるから、第1フィルム10及び第2フィルム61のそれぞれの接合部14(図1参照)は押圧を回避される。
押圧開始時(図5における時間T=t2)は、第2カレンダローラ42は駆動モードとされているから、第2フィルム61の第2フィルム部12の第2カレンダローラ42側のフィルム面に傷がつきにくく、また、第1フィルム10及び第2フィルム61のそれぞれにはカレンダローラ対よりも上流側と下流側との張力差が生じにくい。
押圧開始後に、システムコントローラ36は、カレンダ装置20の場合と同様に、第2カレンダローラ42の押圧位置への変位に応じて、第2カレンダローラ42を駆動モードから従動モードに切り替え、かつ、ニップローラ43をニップ位置からニップ退避位置へ変位させる。これにより、第1フィルム10及び第2フィルム61に対するカレンダ処理がなされている状態で、ニップが解除される(図5における時間T=t3)。
第2カレンダローラ42は、押圧位置への変位に応じて駆動モードから従動モードに切り替わるから、カレンダ処理の開始直後から第2フィルム61の第2フィルム部12は第2カレンダローラ側のフィルム面における傷の発生が抑制された状態で、第1フィルム10及び第2フィルム61は目的とする速度で搬送され、また、張力も一定に保持される。
ニップローラ43は、第2カレンダローラ42が押圧退避位置から押圧位置との間で変位している間、及び、押圧退避位置に配されている間は、ニップ位置に配されており、従動回転しているから、押圧解除状態であっても、第1フィルム10及び第2フィルム61は第1カレンダローラ41によって目的とする速度で安定的に搬送される。
また、ニップローラ43は、第2カレンダローラ42が押圧位置にある状態で変位するから、第1フィルム10及び第2フィルム61は第2カレンダローラ42とニップローラ43の少なくともいずれか一方により、第1カレンダローラ41上に押さえられている。そのため、第1フィルム10及び第2フィルム61は、第1カレンダローラ41の駆動によって、より確実に目的とする速度で搬送される。
カレンダローラ対は、第1カレンダローラ41の巻き掛け領域WA(図4参照)で、搬送されている第1フィルム10及び第2フィルム61を押圧するから、第1フィルム10及び第2フィルム61は、押圧開始時及び押圧解除時において、搬送路長が変化せず、そのため、それぞれ一定の張力を保持された状態で搬送される。その結果、張力の変化に起因するフィルム面の傷とフィルムのたるみとが抑えられる。また、第1フィルム10及び第2フィルム61は、巻き掛け領域WAでニップされるから、ニップを解除した直後及び後述のニップを開始した直後においても、搬送路長が変化せず、そのため、張力が変化しにくく、変化した場合でも極めて小さな変化に抑えられる。その結果、張力の変化に起因するフィルム面の傷と第1フィルム10及び第2フィルム61のたるみとがより確実に抑えられる。
カレンダローラ対のうち第2カレンダローラ42のみを変位自在としているから、第1フィルム10及び第2フィルム61の個々の張力がより制御しやすく、かつ、カレンダユニット27の大型化が抑えられる。
第2カレンダローラ42を従動モードにした状態、かつ、ニップローラ43をニップ退避位置に配した状態で、第1フィルム10及び第2フィルム61の各第1フィルム部11に接合した各第2フィルム部12をカレンダローラ対によりカレンダ処理する。前述の通り、この例の第1フィルム10及び第2フィルム61は、複数の第2フィルム部12を長手方向に接合しており、第2フィルム部12同士の接合部(図示無し)がある。第2フィルム部12同士の接合部が接合部検出部31aにより検出された場合と接合部検出部31cにより検出された場合とには、それぞれ、検出信号に基づき、システムコントローラ36は、ニップローラ43をニップ退避位置からニップ位置へ変位させる。これにより第1フィルム10及び第2フィルム61が第1カレンダローラ41とニップローラ43とによりニップされる(図5における時間T=t4)。このように、第1フィルム10の接合部14が検出された場合と、第2フィルム61の接合部14が検出された場合とのそれぞれにおいて、ニップローラ43のニップ位置への変位が行われる。
その後、システムコントローラ36により、第2カレンダローラ42を押圧位置から押圧退避位置に変位させ、これにより押圧を解除、すなわちカレンダ処理を停止する(図5における時間T=t5)。そして、第2カレンダローラ42を従動モードから駆動モードへ切り替える(図5における時間T=t6)。
第2カレンダローラ42を押圧退避位置に配した状態で、接合部検出部31bが接合部14を検出し、かつ、接合部検出部31dが接合部14を検出した場合には、前述のシステムコントローラ36はそれらの検出信号に基づいて、既に駆動モードにしてある第2カレンダローラ42を押圧退避位置から押圧位置へ変位させる。これにより、第2フィルム部12の後端に接合された2枚目の第2フィルム部12の押圧が開始、すなわちカレンダ処理が再び開始される(図5における時間T=t7)。
その後同様に、ニップローラ43のニップ退避位置への変位と第2カレンダローラの従動モードへの切り替えとを行い、押圧すなわちカレンダ処理を継続する。以上のように、第2カレンダローラ42のモード切り替えと変位、及びニップローラ43の変位とを同様に繰り返すことにより、同様に、接合部の押圧を回避したカレンダ処理が、第1フィルム10及び第2フィルム61の搬送を停止することなく、行われる。このように、第1フィルム10の接合部14と第2フィルム61の接合部14とが検出されるたびに、第2カレンダローラの押圧退避位置への変位と駆動モードへの切り替え、その後の第2カレンダローラの押圧位置への変位とニップローラ43のニップ退避位置への変位が行われる。
上記の方法によると、第1フィルム10及び第2フィルム61の搬送を停止する必要がないから、カレンダユニット27の上流にカレンダ処理と異なる処理工程がある場合でも、その処理工程での処理時間を第1フィルム10及び第2フィルム61の長手方向において一定にすることができる。すなわち、第1フィルム10及び第2フィルム61の長手方向において局部的に上記の処理工程での処理が長くなってしまうことが回避できる。
図8に示すカレンダ装置70もカレンダ装置60と同様に、第1フィルム10と第2フィルム61とに対してカレンダ処理を施すための装置である。カレンダ装置70も、カレンダ装置60と同様にカレンダ装置20の構成を含んでいる。カレンダ装置70は、カレンダ装置20に対して、さらに、第2送出部62、第2巻取部63、張力検出部30c,30d、接合部検出部31c,31d、モータ35e,35f、及びローラ26を増設した構成となっている。また、前述のニップローラ43を第1ニップローラ43とするときに、カレンダ装置70のカレンダユニット27は、第2ニップローラ73をさらに備える。なお、図8においては、図2及び図7と同じ部材については図2及び図7と同じ符号を付し、説明を略す。また、図8においては、モータ35a〜35fと、システムコントローラ36と、システムコントローラ36の既に説明した各部との接続及びシフト機構34の既に説明した各部との接続の図示を略してある。
この例のカレンダローラ対も、カレンダ装置60のカレンダローラ対と同様に、第1フィルム10を第2フィルム61とともに押圧することにより、第1フィルム10と第2フィルム61とをカレンダ処理する。第2送出部62と第2巻取部63との間に配される複数のローラ26は、押圧位置及び押圧退避位置の第2カレンダローラ42に第2フィルム61が巻き掛けられる状態に、第2フィルム61の搬送路を設定している。このように、この例の第2カレンダローラ42には、第1カレンダローラ41に第1フィルム10が巻き掛けられると同様に、第2フィルム61が巻き掛けられることが好ましい。
この例では、第1カレンダローラ41は、回転軸41aの回転駆動により、押圧中は第1フィルム10と第2フィルム61とを目的とする速度で長手方向に搬送し、押圧を解除している間は第1フィルム10のみを目的とする速度で搬送する。第2カレンダローラ42は、押圧を解除している間は、駆動モードにされ、これにより第2フィルム61を目的とする速度、すなわち第1フィルム10と同じ速度で搬送する。
この例では、システムコントローラ36は、張力検出部30c,30dの各々から検出した張力の検出信号が入力された場合に、モータ35c,35e,35fを介して回転軸62a,63a及び後述の回転軸41aを駆動制御し、また、モータ35dを介して後述の回転軸42aの駆動モードでの駆動制御を行う。これにより、搬送されている第2フィルム61は、第1フィルム10と同様に、長手方向における張力が一定に維持される。
第2ニップローラ73は、カレンダローラ対によって押圧されていない状態の第2フィルム61を、駆動モードの第2カレンダローラ42よって目的とする速度で確実に搬送するためのものである。第2ニップローラ73は、駆動モードの第2カレンダローラ42により搬送されている第2フィルム61に従動回転する従動ローラである。第2ニップローラ73のローラ幅は第2フィルム61の幅よりも大きいことが好ましい。第2ニップローラ73は、変位する第2カレンダローラ42に追従して変位する。なお、第2ニップローラ73は、第2フィルム61の幅よりも大きいローラ幅(図示無し)を有することが好ましく、本例でもそのようにしている。
ここで、第1ニップローラ43のニップ位置を第1ニップ位置、ニップ退避位置を第1ニップ退避位置とする。第2ニップローラ73は、図8の二点破線で示すように第2フィルム61を第2カレンダローラ42との間にニップする第2ニップ位置と、実線で示すように第2ニップ位置から退避した第2ニップ退避位置との間で変位自在とされている。第2ニップ位置においては、第2ニップローラ73は、回転軸73aが第2カレンダローラ42の回転軸42aと互いに平行にした状態とされる。第2ニップローラ73は、さらに、第2ニップ位置にある状態で、変位する第2カレンダローラ42に追従して位置を変える構成としている。
第2ニップローラ73にはシフト機構34が接続しており、シフト機構34は第2ニップローラ73を変位させる。そして、システムコントローラ36は、シフト機構34を介して第2ニップローラ73の変位を制御する。変位の制御は、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42との距離の変化(増加及び減少)と、変位のタイミングとの制御を含む。これにより、第2フィルム61は、目的とするタイミングで、第2ニップローラ73と第2カレンダローラ42とによりニップされ、また、ニップを解除される。第2ニップローラ73によって第2フィルム61がニップされる第2ニップ位置も、第1フィルム10の場合と同様に、第2カレンダローラ42の周面のうち、第2フィルム61が巻き掛けられている巻き掛け領域上にされることが好ましく、本例でもそのようにしている。
第2ニップローラ73は、第2カレンダローラ42が、押圧退避位置から押圧位置へ変位する間、押圧退避位置から押圧位置へ変位する間、及び押圧退避位置にある間は、第2ニップ位置へ配される。このため、第1フィルム10及び第2フィルム61の各接合部14がカレンダローラ対を通過する間は、第2ニップローラ73は第2ニップ位置に配されることになる。また、第2ニップローラ73は、第2カレンダローラ42が押圧位置にある状態で、第2ニップ位置と第2ニップ退避位置との間で変位する。
第2フィルム61の接合部14は、第2ニップ位置にある第2ニップローラ73と第2カレンダローラ42との間を通過してもよく、本例でも通過させている。第2ニップローラ73は、第2カレンダローラ42に第2フィルム61をニップするニップ圧を調整するニップ圧調整部を備えるが、図8においては図示を略してある。第2ニップローラ73のニップ圧調整部は、前述のニップ圧調整部43bと同様に構成されており、第2フィルム61に対するニップ圧を一定に調整する。第2フィルム61に対するニップ圧は、50N/m以上2000N/m以下の範囲内であることが好ましく、200N/m以上1000N/m以下の範囲内であることがより好ましく、400N/m以上700N/m以下の範囲内であることがさらに好ましい。
接合部検出部31,31dに接続しているシステムコントローラ36は、接合部検出部31c,31dの各々から第2フィルム61の接合部14を検出した検出信号が入力された場合に、シフト機構34を介して第2カレンダローラ42と第2ニップローラ73との各変位を制御する。これにより、第2フィルム61は、目的とするタイミングで、押圧と押圧の解除、及び、ニップとニップの解除がそれぞれなされる。
上記構成の作用を説明する。なお、カレンダ装置70はカレンダ装置20の構成を含んでいるから、カレンダ装置20と同じ作用については説明を略す。また、カレンダ装置60と同じ構成部材を用いているから、それらの作用について同じ場合にも説明を略す。
カレンダ装置60の場合と同様に、第1フィルム10と第2フィルム61とはカレンダ装置70にセットされる。セットする間は、第2カレンダローラ42は押圧退避位置に、第1ニップローラ43は第1ニップ位置に、第2ニップローラは第2ニップ位置に、それぞれ配される。そのため、カレンダ装置70にセットされた初期状態においては、第1フィルム10及び第2フィルム61はカレンダローラ対には押圧されていない状態であるが、第1カレンダローラ41と第1ニップローラ43、及び第2カレンダローラ42と第2ニップローラ73とにはそれぞれニップされている状態である。
システムコントローラ36には、第1フィルム10及び第2フィルムの目的とする搬送速度と、第1フィルム10及び第2フィルム61のそれぞれに付与する張力と、カレンダローラ対により第1フィルム10及び第2フィルム61に対して付与する押圧力とが予め入力されている。第2フィルム61の目的とする搬送速度は、第1フィルム10の目的とする搬送速度と同じである。また、この例も前述の例と同様に、第2フィルム61は第1フィルム10と同じフィルムであるから、付与する張力も同じに設定している。
カレンダ装置70に第1フィルム10と第2フィルム61とがセットされた後、システムコントローラ36は、回転軸22a,23a,62a,63a,41a,42aを制御し、第1フィルム10及び第2フィルム61を、それぞれ第1フィルム部11から搬送し始め、各第1フィルム部11を予め入力されてある搬送速度と張力とにする。このように搬送速度と張力とを予め設定した状態に調整している間は、カレンダ装置20を用いた場合と同様に、第2カレンダローラ42は押圧退避位置に、第1ニップローラ43,第2ニップローラ73は第1ニップ位置及び第2ニップ位置にそれぞれ配された状態にする。また、この例においても、初期状態にされた時点では、カレンダ装置20を用いた場合と同様に、第2カレンダローラ42を従動モードにしている。しかし、第2フィルム61の搬送速度と張力との調整中は、第2カレンダローラ42を駆動モードにする。
第1フィルム10は、回転駆動する第1カレンダローラ41に巻き掛けられており、第1ニップローラ43によりニップされている。一方、第2フィルム61は駆動モードの第2カレンダローラ42に巻き掛けられており、第2ニップローラ73によりニップされている。そのため、第1フィルム10及び第2フィルム61は、確実に、目的とする速度で長手方向に搬送される。そのため、第1フィルム10及び第2フィルム61を目的とする速度で搬送するための他の搬送機器は必要無い。また、第2ニップローラ73は、第2フィルム61の幅よりも大きいローラ幅とされているから、第2フィルム61の全幅域を第2カレンダローラ42上にニップする。そのため、第2フィルム61は、より確実に、目的とする速度で搬送される。
この例においても、システムコントローラ36は、第1フィルム10の接合部14に加えて、第2フィルム61の接合部14を、カレンダローラ対に押圧されない状態に、各部を制御する。すなわち、システムコントローラ36は、カレンダローラ対よりも下流に配された接合部検出部31b,31dからの検出信号に基づき、第2カレンダローラ42のモード切り替えと変位とを行う。具体的には、以下である。接合部検出部31bと接合部検出部31dとのそれぞれが検出信号を出力した場合に、第1フィルム10と第2フィルム61との各接合部14がカレンダローラ対を通過し終えた前述の通過終了時(図5における時間T=t1)として出力したものとみなすことができる。そこで、接合部検出部31bと接合部検出部31dとの両方から検出信号が入力された場合に、システムコントローラ36は、駆動モードとなっている第2カレンダローラ42を押圧退避位置から押圧位置へ変位させる。これにより、互いの第2フィルム部12が重なった状態の第1フィルム10と第2フィルム61との押圧、すなわち第1フィルム10及び第2フィルム61に対するカレンダ処理が開始される。
上記のように、第2カレンダローラ42は、第1フィルム10及び第2フィルム61の接合部14がカレンダローラ対を通過する間は押圧退避位置に配されるから、第1フィルム10及び第2フィルム61のそれぞれの接合部14(図1参照)は押圧を回避される。
押圧開始時は、第2カレンダローラ42は駆動モードとされているから、第2フィルム61の第2フィルム部12の第2カレンダローラ42側のフィルム面に傷がつきにくく、また、第1フィルム10及び第2フィルム61のそれぞれにはカレンダローラ対よりも上流側と下流側との張力差が生じにくい。
押圧開始後に、システムコントローラ36は、カレンダ装置20の場合と同様に、第2カレンダローラ42の押圧位置への変位に応じて、第2カレンダローラ42を駆動モードから従動モードに切り替え、かつ、第1ニップローラ43を第1ニップ退避位置へ、第2ニップローラ73を第2ニップ退避位置へそれぞれ変位させる。これにより、第1フィルム10及び第2フィルム61に対するカレンダ処理がなされている状態で、それぞれのニップが解除される。
第2カレンダローラ42は、押圧位置への変位に応じて駆動モードから従動モードに切り替わるから、カレンダ処理の開始直後から第2フィルム61の第2フィルム部12のフィルム面における傷の発生が抑制された状態で、第1フィルム10及び第2フィルム61は目的とする速度で搬送され、また、張力も一定に保持される。
第2ニップローラ73は、第2カレンダローラ42が押圧退避位置から押圧位置へ変位している間、及び、押圧退避位置に配されている間は、第2ニップ位置に配されており、従動回転しているから、カレンダローラ対によって押圧していない非押圧状態すなわち押圧解除状態であっても、第2フィルム61は駆動モードの第2カレンダローラ42によって目的とする速度で安定的に搬送される。
また、第2ニップローラ73は、第2カレンダローラ42が押圧位置にある状態で変位するから、第2フィルム61は第2カレンダローラ42と第2ニップローラ73の少なくともいずれか一方により、第1カレンダローラ41上に押さえられている。そのため、第2フィルム61は、第1カレンダローラ41の駆動によって、より確実に目的とする速度で搬送される。
カレンダローラ対は、第1カレンダローラ41の巻き掛け領域WA及び第2カレンダローラの巻き掛け領域で、搬送されている第1フィルム10及び第2フィルム61を押圧するから、第1フィルム10は、押圧開始時及び押圧解除時において、搬送路長が変化せず、そのため、一定の張力を保持された状態で搬送される。その結果、張力の変化に起因するフィルム面の傷とフィルムのたるみとが抑えられる。また、第2フィルム61は、第2カレンダローラ42の巻き掛け領域でニップされるから、ニップを解除した直後及び後述のニップを開始した直後においても、搬送路長が変化せず、そのため張力が変化しにくく、変化した場合でも極めて小さな変化に抑えられる。その結果、張力の変化に起因する第2フィルム61のフィルム面の傷とたるみとがより確実に抑えられる。
第2カレンダローラ42を従動モードにした状態、かつ、ニップローラ43をニップ退避位置に配した状態で、第1フィルム10及び第2フィルム61の各第1フィルム部11の後端に接合した各第2フィルム部12をカレンダローラ対によりカレンダ処理する。前述の通り、この例の第1フィルム10及び第2フィルム61は、複数の第2フィルム部12を長手方向に接合しており、第2フィルム部12同士の接合部(図示無し)がある。
第2フィルム部12同士の接合部が接合部検出部31aと接合部検出部31cとの少なくともいずれか一方により検出された場合とには、検出信号に基づき、システムコントローラ36は、第1ニップローラ43及び第2ニップローラ73を第1ニップ位置及び第2ニップ位置へ変位させる。これにより第1フィルム10は第1カレンダローラ41と第1ニップローラ43とによりニップされ、第2フィルム61は第2カレンダローラ42と第2ニップローラ73とによりニップされる。このように、第1フィルム10の接合部14と第2フィルム61の接合部14とがそれぞれ検出されるたびに、第1ニップローラ43及び第2ニップローラ73の第1ニップ位置及び第2ニップ位置への変位が行われる。
第2フィルム部12同士の接合部が接合部検出部31aと接合部検出部31cとの少なくともいずれか一方により検出された場合とには、検出信号に基づき、システムコントローラ36は、第2カレンダローラ42を従動モードから駆動モードに切り替える。なお、この例では、この切り替えを、第1ニップローラ43及び第2ニップローラ73の第1ニップ位置及び第2ニップ位置への変位と同じタイミングで行っている。しかし、上記の切り替えは、第1ニップローラ43及び第2ニップローラ73の第1ニップ位置及び第2ニップ位置への変位のタイミングと前後してもよい。
その後、システムコントローラ36により、第2カレンダローラ42を押圧位置から押圧退避位置に変位させ、これにより押圧を解除、すなわちカレンダ処理を停止する。
駆動モードの第2カレンダローラ42を押圧退避位置に配した状態で、接合部検出部31bが接合部14を検出し、かつ、接合部検出部31dが接合部14を検出した場合には、前述のシステムコントローラ36はその検出信号に基づいて、既に駆動モードにしてある第2カレンダローラ42を押圧退避位置から押圧位置へ変位させる。これにより、第2フィルム部12の後端に接合された2枚目の第2フィルム部12の押圧が開始、すなわちカレンダ処理が再び開始される。
その後同様に、ニップローラ43のニップ退避位置への変位と第2カレンダローラの従動モードへの切り替えとを行い、押圧すなわちカレンダ処理を継続する。以上のように、第2カレンダローラ42のモード切り替えと変位、及び第1ニップローラ43及び第2ニップローラ73の変位を同様に繰り返すことにより、接合部の押圧を回避したカレンダ処理が、第1フィルム10及び第2フィルム61の搬送を停止することなく、行われる。
上記の方法も、第1フィルム10及び第2フィルム61の搬送を停止する必要がないから、カレンダユニット27の上流にカレンダ処理と異なる処理工程がある場合でも、その処理工程での処理時間を第1フィルム10及び第2フィルム61の長手方向において一定にすることができる。すなわち、第1フィルム10及び第2フィルム61の長手方向において局部的に上記の処理工程での処理が長くなってしまうことが回避できる。
図9に示すカレンダ装置80もカレンダ装置60,70と同様に、第1フィルム10と第2フィルム61とに対してカレンダ処理を施すための装置である。カレンダ装置80は、カレンダ装置20に対して、さらに、第2送出部62、第2巻取部63、張力検出部30c,30d、接合部検出部31c,31d、モータ35e,35f、及びローラ26を増設した構成となっている。カレンダ装置80は、さらに、ダンサローラ83と、搬送ローラ85と、第3ニップローラ87と、モータ35gとを備える。なお、図9においては、図2,図7及び図8と同じ部材については図2,図7及び図8と同じ符号を付し、説明を略す。また、図9においては、モータ35a〜35fと、シフト機構34と、システムコントローラ36の既に説明した各部との接続の図示を略してある。
この例のカレンダローラ対も、カレンダ装置60,70のカレンダローラ対と同様に、第1フィルム10を第2フィルム61とともに押圧することにより、第1フィルム10と第2フィルム61とをカレンダ処理する。
この例の第2フィルム61は、第1カレンダローラ41と第2カレンダローラ42とのいずれにも巻き掛けていない。なお、第1カレンダローラ41または第2カレンダローラ42にわずかに巻き掛かっている場合であっても、ラップ角(巻き掛け中心角)が1°以内であれば、巻き掛けていないと見なしている。
第1カレンダローラ41は、回転軸41aの回転駆動により、周面に巻き掛けられている第1フィルム10を、目的とする速度で長手方向に搬送する。
第2送出部62と第2巻取部63との間に配され、第2フィルム61を案内する複数のローラ26は、図9においては個数を6個として描いているが、前述の各例と同様に、特に限定されない。また、第2フィルム61とローラ26とは図9に示すように面接触であってもよいし、または、線接触であってもよい。
搬送ローラ85は、第2フィルム61を搬送するためのものである。特に押圧解除状態では、搬送ローラ85は、第2フィルム61を、目的とする速度で長手方向に搬送するためのものである。搬送ローラ85は、第2フィルム61の搬送方向におけるカレンダローラ対よりも下流に設けられている。搬送ローラ85は、ローラ幅が第2フィルム61の幅よりも大きく、回転軸85aが延びた方向において外径が一定のいわゆるストレートローラとなっている。搬送ローラ85は、回転駆動するいわゆる駆動ローラであり、回転軸85aを回転させるモータ35gを備える。搬送ローラ85は周面に第2フィルム61が接触し、回転軸85aの回転により第2フィルム61が長手方向に搬送される。なお、図9においては、第2フィルム61と搬送ローラ85とを線接触の状態に描いてある。しかし、第2フィルム61と搬送ローラ85とは面接触であってもよい。
モータ35gは、システムコントローラ36により駆動制御されており、システムコントローラ36は、設定された第2フィルム61の搬送速度に、モータ35gを介して搬送ローラ85の周速度を制御する。第2フィルム61の目的とする搬送速度は、第1フィルム10の目的とする搬送速度と同じである。これにより、第2フィルム61は、第1カレンダローラ41に巻き掛けられていなくても、また、上記の押圧解除状態であっても、目的とする速度で長手方向に搬送される。
第3ニップローラ87は、上記の押圧解除状態において、第2フィルム61を、より確実に、目的とする速度で搬送するためのものである。第3ニップローラ87は、搬送ローラ85により搬送されている第2フィルム61に従動回転する従動ローラである。第3ニップローラ87のローラ幅は、第2フィルム61よりも大きいことが好ましい。
第3ニップローラ87は、図9の二点破線で示す第3ニップ位置と、実線で示す第3ニップ退避位置との間で変位自在に設けられる。第3ニップ位置は、搬送ローラ85との間に第2フィルム61をニップする位置である。第3ニップ退避位置は、第2フィルム61のニップを解除する状態に、第3ニップ位置から退避した位置である。第3ニップローラ87は、第3ニップ位置においては回転軸87aが搬送ローラ85の回転軸85aと互いに平行にした状態とされる。
第2カレンダローラ42が押圧位置と押圧退避位置との間で変位する間、及び押圧退避位置に配されている間は、第3ニップローラ87は第3ニップ位置に配される。また、第2カレンダローラ42が押圧位置に変位した後に、できるだけ早いタイミングで第3ニップ退避位置へ変位する。このように、第3ニップローラ87は、カレンダローラ対によって押圧していない非押圧状態の第2フィルム61を、搬送ローラ85との間にニップする。これにより、非押圧状態であっても、第2フィルム61は、より確実に目的とする速度で搬送される。
接合部14は、第3ニップローラ87と搬送ローラ85との間を通過してもよく、本例でも通過させている。第3ニップローラ87は、ニップ圧調整部87bを備える。ニップ圧調整部87bは、第2フィルム61に対するニップ圧を一定に調整する。ニップ圧は、50N/m以上2000N/m以下の範囲内であることが好ましく、200N/m以上1000N/m以下の範囲内であることがより好ましく、400N/m以上700N/m以下の範囲内であることがさらに好ましい。
ダンサローラ83は、カレンダローラ対での押圧の開始時と解除時、及び、搬送ローラ85と第3ニップローラ87とによって行うニップの開始時と解除時における、第2フィルム61の張力の変動を抑えるためのものである。ダンサローラ83は、カレンダローラ対と搬送ローラ85との間に設けられている。ダンサローラ83は、搬送されている第2フィルム61の張力の変動を抑える張力変動抑制機の一例である。ダンサローラ83は、第2フィルム61のフィルム面に交差する方向(図9における上下方向)に移動可能とされている。ダンサローラ83は、ダンサローラ83の上流側の1本のローラ26及び下流側の1本のローラ26と協働して、ダンサローラ83に一定荷重を付加しておくことにより第2フィルム61の張力の微小な変動に応じて移動する。
ダンサローラ83は、第2フィルム61の張力の変動を抑制する状態に機能するオンモード、機能を停止しているオフモードとで切り替え可能とされている。ダンサローラ83は、第2カレンダローラ42が押圧退避位置にある状態においてはオフモードである。これにより、張力検出部30cの検出結果に基づき第2送出部62によって行う張力の制御と、張力検出器30dの検出結果に基づき第2巻取部63によって行う張力の制御との両方と干渉しない。このため、第2フィルム61の搬送速度が安定化する。また、ダンサローラ83は、第2カレンダローラ42が押圧位置と押圧退避位置との間で変位する間と押圧位置にある間と、第3ニップローラ87が第3ニップ位置と第3ニップ退避位置との間で変位する間と、第3ニップローラ87が第3ニップ位置にある間とは、オンモードとされる。これにより、カレンダーロール対と搬送ローラ85とにわずかな速度差が生じても第2フィルム61の張力の変動が抑制される。
上記のように、搬送されている第2フィルム61は張力の変動が抑制されるから、搬送がより安定し、かつ、カレンダローラ対における押圧力がより一定になる。
この例においては、第2フィルム61は、ニップローラ43と第1カレンダローラ41との間を通過させない。したがって、この例でのニップローラ43は、第1フィルム10のみを第1カレンダローラ41との間にニップする。
第2フィルム61の接合部14を検出する接合部検出部31c,31dはシステムコントローラ36に接続しており、システムコントローラ36は、接合部検出部31c,31dの各々から第2フィルム61の接合部14を検出した検出信号が入力された場合に、シフト機構34を介して第2カレンダローラ42とニップローラ43との各変位を制御する。これにより、第2フィルム61は第1フィルム10ととともに、目的とするタイミングで、押圧と押圧の解除がなされ、また、第1フィルム10はニップとニップの解除とがなされる。
カレンダ装置80の場合も同様に、カレンダローラ対とニップローラ43とが変位し、かつ、第2カレンダローラ42の駆動モードと従動モードとが切り替えられる。そのため、この例でも第1フィルム10及び第2フィルム61の各接合部14は押圧が回避される。
また、カレンダ装置80は、第2フィルム61を第1カレンダローラ41と同じ周速度に回転駆動している搬送ローラ85により搬送している。そのため、第2フィルム61も第1フィルム10と同様に、目的とする速度で搬送される。例えば、カレンダローラ対により押圧されていない間の第2フィルム61は、ニップローラ43によってニップされていないが、搬送ローラ85によって、目的とする速度で安定した搬送がなされる。
カレンダ装置60,70,80の以上の作用は、第2フィルム61を、局厚部を備える第2フィルムとした場合、及び、接合部または局厚部を備え、かつ、樹脂以外の素材で形成された第2ウェブにした場合も同様である。なお、第2ウェブが非透明または透明性に乏しい場合には、前述の通り、接合部検出部31c,31dの代わりに反射式のセンサを用いることにより同様の作用となる。したがって、カレンダ装置20,60,70,80は、接合部を備えるフィルムのみならず、局厚部を備えるフィルムと、接合部または局厚部を備え、樹脂以外の素材で形成されたウェブとに対しても同様の効果を示す。
フィルム及び第1フィルム10と第2フィルム61との幅は、本例では300mmとしている。しかし、フィルム及び第1フィルム10と第2フィルム61との幅は、この例に限定されない。そして、幅が100mm以上1500mm以下の範囲内である場合に、上記の各例は、特に効果が顕著である。