JPWO2020090597A1 - 炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

紡糸速度を高めた場合や紡糸口金の孔数を増加させた場合であっても、エアギャップ部において紡糸口金から押し出された紡糸溶液が破断することや凝固浴液中における凝固中繊維束が破断することなく紡糸可能な炭素繊維前駆体繊維の製造方法、ならびにこれを用いた炭素繊維を提供することを課題とする。ポリアクリロニトリル系重合体溶液を紡糸口金1から空気中に押し出し、紡糸溶液が貯留された凝固浴液中に浸漬させ、凝固中繊維束として紡糸口金の下方に設置された第一浴中ガイドで折り返し、凝固浴液中から空気中に引き出して凝固繊維束を得た後、少なくとも水洗工程、延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を行う炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、紡糸溶液が凝固浴液中に浸漬されてから第一浴中ガイド3で折り返されるまでの距離である凝固浴深さ浸漬長を3〜40cmとする炭素繊維前駆体繊維の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、航空機部材、自動車部材および船舶部材をはじめとして、ゴルフシャフトや釣竿等のスポーツ用途およびその他一般産業用途に好適に用いられる炭素繊維に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されつつあり、更なる生産性の向上と高性能化の両立の要請が強い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル(以下、PANと略記することがある)系炭素繊維は、その前駆体となるPAN系重合体からなる紡糸溶液を主に乾湿式紡糸法により紡糸して炭素繊維前駆体繊維を製造する工程、それを200〜300℃の温度の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維へ転換する工程、少なくとも1200℃の温度の不活性雰囲気下で加熱して炭素化する工程を順次経ることによって工業的に製造されている。PAN系炭素繊維の生産性の向上は、炭素繊維前駆体繊維の製造、耐炎化、あるいは、炭素化のいずれの工程についても行われている。炭素繊維前駆体繊維の製造工程における紡糸法としては湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法があるが、特に乾湿式紡糸法は他の紡糸法と比較して引き取り速度を上昇させることができ、また、高い強度を有する炭素繊維が得られるため、生産性の向上に加えて、高性能化も両立できる技術として広く適用されている。
乾湿式紡糸法とは、紡糸口金を通して、紡糸溶液を一旦気体雰囲気中(エアギャップ)に押し出してから凝固浴に導いて、凝固浴底部に設置した浴中ガイドで引取方向を転換し、引き取りロ−ラ−で凝固浴から炭素繊維前駆体繊維を得るための凝固繊維束を引き出す紡糸方法である。
凝固繊維束の引き取り速度の高速化は、凝固中繊維束の走行に伴い発生する凝固浴液の流れ(以下、随伴流という)を増大させるため、凝固浴の液面が変動するなどして繊維束の破断を引き起こしてしまう。引き取り速度の上昇以外にも、紡糸口金孔数を増加させることで生産性の向上が図れるが、フィラメント数の増加によって随伴流が増大するため、同様の問題によって限界が生じることになる。すなわち、炭素繊維前駆体繊維を得る際の乾湿式紡糸においては、前記要因によって生産性を向上させるのには限界があった。
これまでにPAN系繊維において炭素繊維前駆体繊維を高速で紡糸するため、いくつかの提案がなされている。特許文献1では特定の分子量分布を有するPAN系重合体を用いることで、紡糸張力を増大させ、凝固中繊維束の破断を生じにくくする技術が提案されている。特許文献2には流下式凝固浴を用いて、凝固浴抵抗をできるだけ軽減することにより引き取り速度を向上させる技術が提案されている。特許文献3には空孔を有した板等で口金から下方に紡出される凝固中繊維束の周囲の全部または一部を囲み、液面の変動や凝固中繊維束の揺れを抑制する技術が提案されている。
国際公開WO2008/047745号 特開昭59−21709号公報 国際公開WO2013/047437号
しかしながら、特許文献1の技術では、高速化は可能であるが、特定のPAN系重合体を用いる必要があった。特許文献2の技術では、凝固浴の構造が複雑で工業的な実現性に乏しいこと、始業時の糸かけに技術を要し、操業性が悪化するなどの課題があった。特許文献3の技術では、液面の沈みこみの抑制効果が小さいためにエアギャップ部において紡糸口金から押し出された紡糸溶液の破断が生じ、生産性向上には限界があった。すなわち、従来知られているいずれの方法でも炭素繊維前駆体繊維を高い生産性で製造するには不十分であった。
そこで、本発明の課題は、紡糸速度を高めた場合や紡糸口金の孔数を増加させた場合であっても、エアギャップ部において紡糸口金から押し出された紡糸溶液が破断することや凝固浴液中における凝固中繊維束の破断を生じることなく紡糸可能な炭素繊維前駆体繊維の製造方法、ならびにこれを用いた炭素繊維を提供することである。
上記の目的を達成するために、炭素繊維前駆体繊維の製造方法はポリアクリロニトリル系重合体溶液を紡糸口金から空気中に押し出し、凝固浴に貯留された凝固浴液中に浸漬させ、凝固中繊維束として紡糸口金の下方に設置された第一浴中ガイドで折り返し、凝固浴液中から空気中に引き出して凝固繊維束を得た後、少なくとも水洗工程、延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を行う炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、紡糸溶液が凝固浴液中に浸漬されてから凝固中繊維束が第一浴中ガイドで折り返されるまでの距離である凝固浴深さ浸漬長を3〜40cmとすることを特徴とする。本発明の第1の好ましい態様に係る炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、さらに、凝固中繊維束が第一浴中ガイドで折り返されてから空気中に引き出されるまでの距離を凝固浴斜め浸漬長とするとき、凝固浴深さ浸漬長と凝固浴斜め浸漬長の和である凝固浴浸漬長を10〜500cmとすることを特徴とする。また、本発明の第2の好ましい態様に係る炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、さらに、前記凝固中繊維束を前記第一浴中ガイドで折り返した後、さらに、少なくとも第二浴中ガイドで折り返し、第二浴中ガイドは、凝固中繊維束が凝固溶液中から空気中に引き出される地点と第一浴中ガイドとを結ぶ直線よりも下方の凝固溶液中に設置されていることを特徴とする。
また、本発明の炭素繊維の製造方法は、上記の炭素繊維前駆体繊維の製造方法によって得られた炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の酸化性雰囲気中において耐炎化処理した後、500〜1200℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、次いで1200〜3000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化処理することを特徴とする。
本発明によれば、引き取り速度を増大させた場合でも、エアギャップ部において紡糸口金から押し出された紡糸溶液が破断することや凝固浴液中における凝固中繊維束が破断することなく安定して紡糸でき、高品位な炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維を製造することができる。
本発明の第1の好ましい態様に係る炭素繊維前駆体繊維の製造方法の実施形態の一例を示した側断面図である。 本発明の第2の好ましい態様に係る炭素繊維前駆体繊維の製造方法の実施形態の一例を示した側断面図である。
本発明者らは、紡糸口金孔数が多い条件や引き取り速度が高い条件でも、エアギャップ部において紡糸口金から押し出された紡糸溶液が破断することや凝固浴液中における凝固中繊維束が破断することなく炭素繊維前駆体繊維を製造するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
[炭素繊維前駆体繊維の製造方法]
図1は、本発明の第1の好ましい態様における乾湿式紡糸装置の実施形態の一例を示した側断面図である。なお、本発明の第1の好ましい態様を、以降、態様(1)と略記する場合もある。図中の符号1は紡糸口金、2aは紡糸溶液、2bは紡糸溶液が凝固中である繊維束(以降、2bを凝固中繊維束と略記する場合もある)、2cは凝固繊維束、3は凝固浴液中の第一浴中ガイド、4は第一浴中ガイド3の中心点(以降、4を第一浴中ガイド中心と略記する場合もある)、5は引取ガイド、6は凝固浴液、7はエアギャップ長、8が凝固浴深さ浸漬長、9が凝固浴斜め浸漬長、10が紡糸口金の引き取り方向の最外孔から口金中心までの距離、11が紡糸口金の引き取り方向の最外孔と第一浴中ガイドでの紡糸溶液の折り返し点とを結ぶ直線と、紡糸口金面に対して垂直方向の線との為す角度(A)、12が口金中心から第一浴中ガイドでの紡糸溶液の折り返し点とを結ぶ直線と、第一浴中ガイドでの紡糸溶液の折り返し点と引取ガイド5を直線で結んだ直線との為す角度である折り返し角度(B)(以降、12を態様(1)における折り返し角度(B)と略記する場合もある)である。なお、2a、2b、2cは連続しているが、それぞれ次の範囲におけるものである;2a:紡糸口金から凝固浴液に入るまで、2b:凝固浴液に入ってから凝固浴液を出るまで、2c:凝固浴液から出て以降。
紡糸口金1から吐出された紡糸溶液2aは、凝固浴液に入り、凝固中繊維束2bとなり、凝固浴液中下方に走行し、浴中ガイド3を経由して、引取ガイド5に向けて走行する。ここで、凝固中繊維束とは、紡糸溶液が凝固中である繊維束、すなわち、紡糸溶液が凝固浴液中に浸漬されて少なくとも表面が凝固した状態となったものであり、凝固浴液中で紡糸溶媒が抽出されることで凝固が進行する過程にあるものである。なお、条件により、凝固浴液を出る前に凝固が完了した場合にあっても、本発明においては、凝固浴液中においては凝固中繊維束と記すものとする。
ここで、態様(1)における凝固浴浸漬長とは凝固浴深さ浸漬長8と凝固浴斜め浸漬長9との総和である。
凝固浴深さ浸漬長8とは、凝固浴液の液面から第一浴中ガイド中心4までの鉛直距離であり、巻き尺等で測定することで決定できる。紡糸速度が速い場合は、口金直下の凝固浴液の液面が凝固中繊維束の走行により沈み込む場合があるが、この場合は沈み込む前の液面を凝固浴液の液面とする。
また、凝固浴斜め浸漬長9とは、第一浴中ガイド3と引取ガイド5との間の凝固中繊維束の走行経路となる直線において、第一浴中ガイド中心4との最短の位置となる点から、その直線と液面との交点までの距離を表し、巻き尺等で測定することで決定できる。紡糸速度が速い場合は、凝固浴液から空気中に凝固繊維束が出る際の液面がもち上がることがあるが、その場合はもち上がる前の液面を凝固浴液の液面とする。
図2は本発明の第2の好ましい態様における乾湿式紡糸装置の実施形態の一例を示した側断面図である。なお、本発明の第2の好ましい態様を、以降、態様(2)と略記する場合もある。態様(2)においても、口金1から吐出された紡糸溶液2aが、凝固中繊維束2bとして第一浴中ガイド3に到達するまでの紡糸態様は態様(1)の紡糸態様と同様である。図2の符号13は凝固浴第一斜め浸漬長、14が第二浴中ガイド、15が第二浴中ガイド中心、16が口金中心から第一浴中ガイドでの凝固中繊維束2bの折り返し点を結ぶ直線と、第一浴中ガイドでの凝固中繊維束2bの折り返し点と第二浴中ガイド14とを結んだ直線との為す角度である態様(2)における折り返し角度(B)(以降、16を態様(2)における折り返し角度(B)と略記する場合もある)、17が第二浴中ガイドの深さ、18が凝固浴第二斜め浸漬長である。
態様(2)における凝固浴深さ浸漬長8は、態様(1)と同様である。態様(2)における第二浴中ガイド14は、凝固中繊維束が凝固浴液中から空気中に引き出される地点と第一浴中ガイドとを結ぶ直線よりも下方の凝固浴液中に設置される。態様(2)における凝固浴第一斜め浸漬長13とは、第一浴中ガイド中心4と第二浴中ガイド中心15を結んだ線分の長さであり、巻き尺等で測定することで決定できる。凝固浴第二斜め浸漬長18とは、第二浴中ガイド14と引き取りガイド5との間の凝固中繊維束の走行経路となる直線において、第二浴中ガイド中心15との最短の位置となる点からその直線と液面との交点までの距離を表し、巻き尺等で測定することで決定できる。ここで、紡糸速度が速い場合は、凝固浴液から空気中に凝固繊維束が出る際の液面がもち上がることがあるが、その場合はもち上がる前の液面を凝固浴液の液面とする。また、第二浴中ガイド深さ17とは第二浴中ガイド中心15と凝固液面の鉛直距離であり、巻き尺等で測定できる。
態様(1)における凝固浴深さ浸漬長8は3〜40cmである。凝固浴深さ浸漬長8を短くすると凝固浴深さ方向の随伴流が低減され、凝固中繊維束の破断が生じにくくなるが、短くしすぎると、第一浴中ガイド3を介して斜め方向に走行する凝固中繊維束と凝固浴液の液面との距離が近くなりすぎて紡糸口金近傍の液面変動が増大し目付斑が生じてしまう。そのため、凝固浴深さ浸漬長8は3〜30cmが好ましく、4〜25cmがより好ましく、5〜20cmが更に好ましい。
また、態様(1)において凝固浴斜め浸漬長9を短くすると斜め方向の随伴流が低減され、液面の変動が抑制されるが凝固中繊維束2bと第一浴中ガイド3との接触角度が大きくなるため第一浴中ガイド3でのガイド抵抗が上昇し、ガイドでの凝固中繊維束の破断を誘発してしまう。そのため、凝固浴浸漬長は10〜500cmが好ましく、15〜300cmがより好ましく、20〜200cmが更に好ましい。
態様(1)における折り返し角度(B)は70°〜89°が好ましく、75°〜89°がより好ましく、80°〜89°が更に好ましい。態様(1)における折り返し角度(B)が小さすぎると第一浴中ガイド3から引取ガイド5に向かって走行する凝固中繊維束2bと凝固浴液の液面との距離が近くなり、液面が変動し目付斑・凝固中繊維束の破断が生じてしまう一方で、大きすぎると使用する凝固浴サイズが大型化してしまう。態様(1)における折り返し角度(B)は下記の通り計算される。
態様(1)における折り返し角度(B)=arccos(凝固浴深さ浸漬長/凝固浴斜め浸漬長)。
態様(2)においても凝固浴深さ浸漬長8は3〜40cmである。凝固浴深さ浸漬長を短くすると凝固浴深さ方向の随伴流が低減され、凝固中繊維束の破断が生じにくくなるが、短くしすぎると、第一浴中ガイド3を経て第二浴中ガイドに向かって走行する凝固中繊維束と凝固浴液の液面との距離が近くなりすぎて紡糸口金近傍の液面変動が増大し目付斑が生じてしまう。そのため、凝固浴深さ浸漬長は3〜30cmが好ましく、4〜25cmがより好ましく、5〜20cmが更に好ましい。
また、態様(2)において凝固浴第一斜め浸漬長13を短くすると斜め方向の随伴流が低減され液面の変動が抑制される点、凝固浴サイズを小さくできる点で好ましいが、短すぎると口金近傍の液面変動を誘発する。そのため、凝固浴第一斜め浸漬長13は10〜300cmが好ましく、10〜250cmがより好ましく、10〜150cmが更に好ましい。凝固浴第二斜め浸漬長18は第二浴中ガイド14の位置と引取ガイド5の位置で一義的に決定される。両ガイドの位置については、特に限定されず操業性の観点から適宜決定するとよいが、態様(2)に拠る効果を得るためには凝固繊維束が凝固浴液中から空気中に引き出される地点と第一浴中ガイドとを結ぶ直線よりも下方の凝固浴液中に設置することが好ましい。
態様(2)における折り返し角度(B)は70°〜150°が好ましく、80°〜140°がより好ましく、90°〜130°が更に好ましい。折り返し角度(B)が小さすぎると第一浴中ガイドから第二浴中ガイドに向かって走行する凝固中繊維束と凝固浴液の液面との距離が近くなり、液面が変動し目付斑や凝固中繊維束の破断が生じてしまう一方で、大きすぎると口金直下の深さ方向の随伴流が増大するため、結果として液面が変動し目付斑や凝固中繊維束の破断が生じてしまう。折り返し角度(B)が90°より小さい条件は態様(1)でも取り得るが、態様(1)では折り返し角度(B)が90°に近づくほど凝固浴サイズを大きくする必要性が生じるのに対し、態様(2)では折り返し角度(B)に応じて凝固浴サイズを無理に変更しなくてもよい点で異なる。態様(2)における折り返し角度(B)は下記の通り計算される。
態様(2)における折り返し角度(B)=arccos{(凝固浴深さ浸漬長 − 第二浴中ガイド深さ)/凝固浴第一斜め浸漬長}。
ここで、態様(2)は態様(1)と比較して、第一浴中ガイドにおける折り返し角度(B)を大きくできる特徴があり、引取ガイド方向に走行中の凝固中繊維束と液面との距離を態様(1)よりも離すことができ、可紡性を更に向上できる点で優位性がある。また、折り返し角度(B)を大きくすることで第一浴中ガイドでの摩擦抵抗を低減できるため、原糸品位を向上できる点でも優位性がある。このため、第一浴中ガイドでの折り返し角度(B)を大きくすることを目的に第二浴中ガイドを設置すればよく、その後さらに第三浴中ガイド、第四浴中ガイドを設置するなどして凝固中繊維束の走行を制御する工夫を行ってもよい。
(ポリアクリロニトリル系重合体溶液)
本発明で用いられるポリアクリロニトリル系重合体溶液を構成するポリアクリロニトリル系重合体とは、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合物、または、それらを主成分とする混合物である。なお、以降、ポリアクリロニトリルをPANと略記することもある。ここでいう主成分とは、混合物または共重合体において60質量%以上含まれる成分をいう。PAN系重合体溶液の溶媒は、PAN系重合体を溶解するものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、塩化亜鉛水溶液、およびチオシアン酸ナトリウム水溶液を使用することができる。口金から吐出する際のPAN系重合体溶液の温度は、特に限定されず、吐出安定性の観点から適宜決定するとよい。
(紡糸口金)
本発明において用いられる口金の孔数は、500〜24000個であることが好ましい。孔数が500個より少ない場合、多数の口金を設置する必要があり、トラブル時の糸かけ等の作業操業性が低下する。一方、孔数が24000個を超える場合には、口金が大きくなりすぎて口金中心部と外周部で目付斑が生じる懸念もある。口金孔の配置される領域の形状は円形、矩形、環状形のいずれでもかまわないが、矩形では長辺と短辺があり、通常、短辺を糸束の引き取り方向に配置するのが一般的である。ここで、紡糸口金の引き取り方向の長さが5〜20cmであるのが好ましい。紡糸口金の引き取り方向の長さとは、紡糸溶液が凝固浴液に導入され凝固中繊維束として浴中ガイドで折り返した後に引取ガイドに向かって走行する方向に対して後方側の最外孔と前方側の最外孔との間の長さを表し、巻き尺等で測定できる。紡糸口金の引き取り方向の長さが小さいほどPAN系重合体溶液の吐出角度を小さくでき、安定した引き取りが可能になる一方で口金孔数が減少し生産性が低下するため6〜17cmが好ましく8〜15cmが更に好ましい。
(凝固浴液)
本発明における凝固浴液は、粘度が2〜100mPa・sであることが好ましい。凝固浴液の粘度が低すぎると凝固した繊維の緻密性が低下するため最終的な炭素繊維の物性が低下する。なお、凝固浴液は、慣用的に、凝固浴と表記される場合がある。本発明においては粘度が高い方が効果が出やすいが、粘度があまりに高すぎると随伴流が増大しすぎるため、糸切れが発生する。そのため凝固浴液の粘度は、6〜80mPa・sがより好ましく、10〜50mPa・sが更に好ましい。
また、本発明における凝固浴液の温度は、−40〜80℃が好ましい。凝固浴液の温度が低いほど凝固した繊維の緻密性が向上し最終的な炭素繊維の物性が向上する一方、凝固浴液の温度が低いと凝固浴液の粘度があまりに上昇する場合があり随伴流が増大しすぎるため紡糸溶液のエアギャプ部での破断や凝固中繊維束の破断が生じる場合がある。そのため、凝固浴液の温度は−20〜50℃がより好ましく、−5〜15℃が更に好ましい。
本発明における凝固浴液には、PAN系重合体溶液で溶媒として用いたジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、塩化亜鉛水溶液、およびチオシアン酸ナトリウム水溶液などのPAN系重合体の溶媒と、いわゆる凝固促進成分とを混合した物が用いられる。凝固促進成分としては、前記のPAN系重合体を溶解せず、かつPAN系重合体溶液に用いた溶媒と相溶性があるものが好ましい。凝固促進成分としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどが挙げられるが、安全性の面から水を使用することが最も好ましい。凝固浴液の溶媒濃度は、凝固した繊維の緻密性・真円度の観点から適宜決定すればよいが、凝固促進成分が水の場合で溶媒がジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドの場合は溶媒濃度25〜85質量%が好ましく、70〜85質量%がより好ましい。凝固浴液が塩化亜鉛水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶液の場合は塩濃度5〜60質量%が好ましい。一般に、凝固浴液中の有機溶媒濃度や塩濃度が高いほど、凝固浴液の粘度が高いものとなりやすく、また、凝固速度が遅くなる方向となるので、これらのことが原因で紡糸溶液のエアギャプ部での破断や凝固中繊維束の破断が発生しやすくなる。凝固浴液が塩化亜鉛水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶液の場合は塩濃度5〜60質量%の範囲において、本発明の効果が特に顕著となるため好ましい。
浴中ガイドは、従来の乾湿式紡糸で一般に用いられるものであれば材質、形状、大きさなど特に限定されるものではないが、凝固中繊維束との摩擦ができるだけ小さい方がガイドでの凝固中繊維束の破断を抑制できるため好ましい。ガイド抵抗を低減するためにローラー型のガイドを使用してもよい。
(吐出角度)
本発明において紡糸口金の引き取り方向の最外孔と第1浴中ガイドでの凝固中繊維束の折り返し点とを結ぶ直線と、紡糸口金面に対して垂直方向の線との為す角度(A)を6.5〜45°に設定するのが好ましい。なお、以降、紡糸口金の引き取り方向の最外孔と第1浴中ガイドでの凝固中繊維束の折り返し点とを結ぶ直線と、紡糸口金面に対して垂直方向の線との為す角度(A)を、単に、角度(A)と略記することもある。角度(A)は、図1および図2において符号11で表される角度である。角度(A)は下記の通り計算できる。
角度(A)=arctan{(紡糸口金の引き取り方向の最外孔から口金中心までの距離)/(凝固浴深さ浸漬長+エアギャップ長)}。
ここで、エアギャップ長とは、図1および図2における符号7で示された距離であり、凝固浴液の液面が紡糸溶液の凝固浴深さ方向への走行に伴い発生する随伴流により沈み込む前の凝固浴液の液面と紡糸口金との距離を表す。また、紡糸口金の引き取り方向の最外孔から口金中心までの距離、凝固浴深さ浸漬長およびエアギャップ長は巻き尺等で測定できる。角度(A)が小さすぎると走行する紡糸溶液が拡がるため随伴流が増大し凝固中繊維束の破断を誘発する一方、大きすぎると紡糸溶液の吐出角度が大きくなりすぎてエアギャップ部での紡糸口金から押し出された紡糸溶液2aの破断が発生する。そのため、8〜40°が好ましく10〜35°が更に好ましい。エアギャップ長は大きすぎるとエアギャップ部での紡糸口金から押し出された紡糸溶液2aの破断を誘発するため、1〜50mmとすることが好ましい。
(紡糸溶液の引き取り速度)
本発明において、PAN系重合体溶液を凝固浴液中に導入し凝固中繊維束を形成させる際の紡糸溶液の引き取り速度(凝固中繊維束の引き取り速度と通常等しい)は10m/min以上であることが好ましい。紡糸溶液の引き取り速度は紡糸溶液が口金を離れて凝固中繊維束または凝固中繊維束が最初に接触する駆動源を持ったローラーの表面速度である。紡糸溶液の引き取り速度が速いほどエアギャップ部での紡糸口金から押し出された紡糸溶液の破断または凝固浴液中における凝固中繊維束の破断が生じやすくなるため、この条件において本発明の効果を得やすい。紡糸ドラフト率は特に限定されず、製造する炭素繊維前駆体繊維の繊度に合わせて適宜決定するとよい。紡糸ドラフト率は下記の通り計算できる。
紡糸ドラフト率=(紡糸溶液の引き取り速度)/(吐出線速度)
吐出線速度とは単位時間当たりに口金から吐出される紡糸溶液の体積を口金孔面積で割った値である。
(水洗工程、延伸工程、油剤付与工程、乾燥工程)
本発明において、前述したようにPAN系重合体溶液を紡糸溶液として凝固浴液中に導入して凝固させ凝固繊維束を形成した後、水洗工程、延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を経て、炭素繊維前駆体繊維が得られる。この際、凝固浴液の中で延伸を行ってもよい。
また、乾燥工程の後に、さらに乾熱延伸工程や蒸気延伸工程を加えてもよい。浴中延伸は、通常、30〜98℃の温度に温調された単一または複数の延伸浴中で行うことができる。そのときの浴中延伸倍率は、2〜6倍であることが好ましい。浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する目的から、延伸された糸条にシリコーン等からなる油剤を付与することが好ましい。シリコーン油剤は、耐熱性の高いアミノ変性シリコーン等の変性されたシリコーンを含有するものを用いることが好ましい。次の乾燥工程は、公知の方法を利用することができる。また、生産性の向上や結晶配向度の向上として、乾燥工程後に加熱熱媒中で延伸することが好ましい。加熱熱媒としては、例えば、加圧水蒸気あるいは過熱水蒸気が操業安定性やコストの面で好適に用いられる。
[炭素繊維の製造方法]
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。前記した方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を、好適には200〜300℃の温度の酸化性雰囲気中において耐炎化処理した後、好適には500〜1200℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、次いで好適には1200〜3000℃の最高温度の不活性雰囲気中において炭化処理して炭素繊維を製造することができる。
耐炎化処理における酸化性雰囲気としては、空気が好ましく採用される。本発明において、予備炭化処理や炭化処理は不活性雰囲気中で行なわれる。不活性雰囲気に用いられるガスとしては、窒素、アルゴンおよびキセノンなどを例示することができ、経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。より弾性率が高い炭素繊維を所望する場合には、炭化工程に続き黒鉛化を行うこともできる。黒鉛化工程の温度は2000〜3000℃で行うことが好ましい。
(表面改質工程)
得られた炭素繊維はその表面改質のため、電解処理をすることができる。電解処理により、得られる繊維強化複合材料において炭素繊維マトリックスとの接着性を適正化することができるためである。電解処理の後、炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理を施すこともできる。サイジング剤には、使用する樹脂の種類に応じて、マトリックス樹脂と相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の態様に限定されるものではない。
(実施例1)
<紡糸溶液>
アクリロニトリルとイタコン酸を、ジメチルスルホキシドを溶媒とし、重合開始剤を用いて溶液重合法により共重合し、ポリアクリロニトリル系共重合体を製造し、ポリマー濃度21質量%の紡糸溶液とした。
<口金>
口金孔の配置される領域の短辺が6cmで孔数1000の紡糸口金を短辺が引き取り方向に向くように配置した口金を、紡糸口金の引き取り方向の長さを6cmとした状態でエアギャップ長5mmとなる様配置した。
<凝固浴液>
ジメチルスルホキシドを25質量%、凝固促進成分である水を75質量%の比率で混合し、凝固浴液とした。
<紡糸>
上記で調整した紡糸溶液を、上述の口金から空気中に吐出し、温度を5℃にコントロールした凝固浴液に浸漬して、態様(1)の紡糸形態で凝固繊維束を引き取った。ここで、凝固浴深さ浸漬長は10cm、凝固浴浸漬長は160cmとした。凝固浴液の粘度は7mPa・sであり、凝固中繊維束とガイドとの為す角度(A)は15.9°、折り返し角度(B)は86°であった。紡糸ドラフト率を一定とし、紡糸溶液の引き取り速度を上昇させていった際に、エアギャップ部での紡糸口金から押し出された紡糸溶液の破断または凝固浴液中における凝固中繊維束の破断が生じた際の引き取り速度である限界引き取り速度は46m/minであった。
(実施例2)
凝固浴深さ浸漬長を20cmとした以外は実施例1と同様とした。
(実施例3)
短辺が9cmで孔数5000の紡糸口金を用い、凝固浴深さ浸漬長は5cmとした以外は実施例1と同様とした。
(実施例4)
凝固浴深さ浸漬長は15cmとした以外は実施例3と同様とした。
(実施例5)
凝固浴深さ浸漬長は35cmとした以外は実施例3と同様とした。
(実施例6)
凝固浴深さ浸漬長は5cmとし、凝固浴浸漬長を15cmとした以外は実施例3と同様とした。
(実施例7)
短辺が15cmで孔数10000の紡糸口金を用い、凝固浴深さ浸漬長は10cmとした以外は実施例1と同様とした。
(実施例8)
短辺が18cmで孔数16000の紡糸口金を用い、凝固浴深さ浸漬長を15cmとした以外は実施例1と同様とした。
(実施例9)
凝固浴液としてジメチルスルホキシド70質量%、水30質量%の比率で混合したものを用いた以外は実施例1と同様とした。凝固浴液の粘度は12mPa・sであった。凝固浴液の有機溶媒濃度が高いため、限界引き取り速度は有機溶媒濃度が低い場合には及ばないが、後述の比較例5に対し限界引き取り速度が13m/min上昇しており、上昇幅が大きい。
(実施例10)
凝固浴液としてジメチルスルホキシド80質量%、水20質量%の比率で混合したものを用いた以外は実施例1と同様とした。凝固浴液の粘度は11mPa・sであった。後述の比較例6に対し限界引き取り速度が15m/min上昇しており、上昇幅が大きい。
(実施例11)
凝固浴液としてジメチルスルホキシド85質量%、水15質量%の比率で混合したものを用いた以外は実施例1と同様とした。凝固浴液の粘度は11mPa・sであった。後述の比較例7に対し限界引き取り速度が16m/min上昇しており、上昇幅が大きい。
(実施例12)
凝固浴液としてジメチルスルホキシド55質量%、水20質量%、グリセリン(Gly)25質量%の比率で混合し、温度を−5℃にコントロールした以外は実施例1と同様とした。凝固浴液の粘度は42mPa・sであった。後述の比較例8に対し限界引き取り速度が17m/min上昇しており、上昇幅が大きい。
(実施例13)
ポリアクリロニトリル系共重合体溶液の溶媒をジメチルホルムアミドとし、凝固浴液としてジメチルホルムアミド80質量%、水20質量%の比率で混合し、温度を−5℃にコントロールした以外は実施例1と同様とした。凝固浴液の粘度は10mPa・sであった。後述の比較例9に対し限界引き取り速度が17m/min上昇しており、上昇幅が大きい。
(実施例14)
ポリアクリロニトリル系共重合体溶液の溶媒をジメチルアセトアミドとし、凝固浴液としてジメチルアセトアミド80質量%、水20質量%の比率で混合し、温度を5℃にコントロールした以外は実施例1と同様とした。凝固浴液の粘度は12mPa・sであった。後述の比較例10に対し限界引き取り速度が16m/min上昇しており、上昇幅が大きい。
(実施例15)
凝固浴液としてジメチルスルホキシド5質量%、水95質量%の比率で混合し、温度を25℃にコントロールした以外は実施例1と同様とした。凝固浴液の粘度は2mPa・sであった。
(実施例16)
態様(2)の紡糸形態で、凝固浴深さ浸漬長を35cm、凝固浴第一斜め浸漬長を100cm、第二浴中ガイド深さを15cmとした以外は実施例5と同様とした。折り返し角度(B)は78°であり実施例5と比較して4°大きかった。
(実施例17)
第二浴中ガイド深さを35cmとした以外は実施例16と同様とした。折り返し角度(B)は90°であった。
(実施例18)
凝固浴第一斜め浸漬長を40cm、第二浴中ガイド深さを50cmとした以外は実施例16と同様とした。折り返し角度(B)は112°であった。
(実施例19)
第二浴中ガイド深さを60cmとした以外は実施例18と同様とした。折り返し角度(B)は129°であった。
(実施例20)
第二浴中ガイド深さを68cmとした以外は実施例18と同様とした。折り返し角度(B)は146°であった。
(実施例21)
凝固浴深さ浸漬長を15cmとした以外は実施例16と同様とした。折り返し角度(B)は90°であった。
(実施例22)
第二浴中ガイド深さを60cmとした以外は実施例21と同様とした。折り返し角度(B)は117°であった。
(実施例23)
凝固浴深さ浸漬長を5cmとした以外は実施例16と同様とした。折り返し角度(B)は90°であった。
(実施例24)
第二浴中ガイド深さを60cmとした以外は実施例23と同様とした。折り返し角度(B)は123°であった。
(実施例25)
態様(2)の紡糸形態で、凝固浴深さ浸漬長を10cm、凝固浴第一斜め浸漬長を100cm、第二浴中ガイド深さを10cmとした以外は実施例10と同様とした。折り返し角度(B)は90°であった。
(実施例26)
凝固浴第一斜め浸漬長を40cm、第二浴中ガイド深さを25cmとした以外は実施例25と同様とした。折り返し角度(B)は112°であった。
(実施例27)
凝固浴液としてジメチルスルホキシド70質量%、水30質量%の比率で混合した以外は実施例25と同様とした。折り返し角度(B)は90°であった。
(実施例28)
凝固浴液としてジメチルスルホキシド80質量%、水20質量%の比率で混合した以外は実施例21と同様とした。折り返し角度(B)は90°であった。
(比較例1)
凝固浴深さ浸漬長は60cmとした以外は実施例1と同様とした。限界引き取り速度は、浸漬深さ10cmに設定した実施例1と比較して11m/min低下した。
(比較例2)
凝固浴深さ浸漬長は60cmとした以外は実施例3と同様とした。
(比較例3)
短辺が25cmで孔数18000の紡糸口金を用いた以外は比較例2と同様とした。
(比較例4)
短辺が25cmで孔数21000の紡糸口金を用いた以外は比較例3と同様とした。
(比較例5)
凝固浴深さ浸漬長は60cmとした以外は実施例9と同様とした。限界引き取り速度は、浸漬深さ10cmに設定した実施例9と比較して13m/min低下した。
(比較例6)
凝固浴深さ浸漬長は60cmとした以外は実施例10と同様とした。限界引き取り速度は、浸漬深さ10cmに設定した実施例10と比較して15m/min低下した。
(比較例7)
凝固浴深さ浸漬長は60cmとした以外は実施例11と同様とした。限界引き取り速度は、浸漬深さ10cmに設定した実施例11と比較して16m/min低下した。
(比較例8)
凝固浴深さ浸漬長は60cmとした以外は実施例12と同様とした。限界引き取り速度は、浸漬深さ10cmに設定した実施例12と比較して17m/min低下した。
(比較例9)
凝固浴深さ浸漬長は60cmとした以外は実施例13と同様とした。限界引き取り速度は、浸漬深さ10cmに設定した実施例13と比較して17m/min低下した。
(比較例10)
凝固浴深さ浸漬長は60cmとした以外は実施例14と同様とした。限界引き取り速度は、浸漬深さ10cmに設定した実施例14と比較して16m/min低下した。
(比較例11)
凝固浴液としてジメチルスルホキシド80質量%、水20質量%の比率で混合した以外は比較例2と同様とした。
(比較例12)
凝固浴深さ浸漬長を60cm、第二浴中ガイド深さを60cmとした以外は実施例28と同様とした。
(比較例13)
凝固浴深さ浸漬長を60cm、第二浴中ガイド深さを60cmとした以外は実施例17と同様とした。
(比較例14)
凝固浴深さ浸漬長を45cm、第二浴中ガイド深さを45cmとした以外は実施例17と同様とした。
以下の表において、ジメチルスルホキシドをDMSO、グリセリンをGly、ジメチルホルムアミドをDMF、ジメチルアセトアミドをDMAC、とそれぞれ略記する。
Figure 2020090597
Figure 2020090597
Figure 2020090597
Figure 2020090597
1 紡糸口金
2a 紡糸溶液
2b 凝固中繊維束
2c 凝固繊維束
3 第一浴中ガイド
4 第一浴中ガイド中心
5 引取ガイド
6 凝固浴液
7 エアギャップ長
8 凝固浴深さ浸漬長
9 凝固浴斜め浸漬長
10 紡糸口金の引き取り方向の最外孔から口金中心までの距離
11 紡糸口金の引き取り方向の最外孔と浴中ガイドでの紡糸溶液の折り返し点とを結ぶ直線と、紡糸口金面に対して垂直方向の線との為す角度(A)
12 態様(1)における折り返し角度(B)
13 凝固浴第一斜め浸漬長
14 第二浴中ガイド
15 第二浴中ガイド中心
16 態様(2)における折り返し角度(B)
17 第二浴中ガイド深さ
18 凝固浴第二斜め浸漬長

Claims (13)

  1. ポリアクリロニトリル系重合体溶液を紡糸口金から空気中に押し出し、凝固浴に貯留された凝固浴液中に浸漬させ、凝固中繊維束として紡糸口金の下方に設置された第一浴中ガイドで折り返し、凝固浴液中から空気中に引き出して凝固繊維束を得た後、少なくとも水洗工程、延伸工程、油剤付与工程および乾燥工程を行う炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、紡糸溶液が凝固浴液中に浸漬されてから凝固中繊維束が第一浴中ガイドで折り返されるまでの距離である凝固浴深さ浸漬長を3〜40cmとする炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  2. 凝固中繊維束が第一浴中ガイドで折り返されてから空気中に引き出されるまでの距離を凝固浴斜め浸漬長とするとき、凝固浴深さ浸漬長と凝固浴斜め浸漬長の和である凝固浴浸漬長を10〜500cmとする請求項1に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  3. 第一浴中ガイドでの凝固中繊維束の折り返し角度(B)が70〜89°である請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  4. 前記凝固中繊維束を前記第一浴中ガイドで折り返した後、さらに、少なくとも第二浴中ガイドで折り返し、第二浴中ガイドは、凝固中繊維束が凝固溶液中から空気中に引き出される地点と第一浴中ガイドとを結ぶ直線よりも下方の凝固溶液中に設置されている請求項1に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  5. 第一浴中ガイドでの凝固中繊維束の折り返し角度(B)が70〜150°である請求項4に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  6. 凝固中繊維束が第一浴中ガイドで折り返されてから第二浴中ガイドで折り返されるまでの距離を凝固浴第一斜め浸漬長とするとき、凝固浴第一斜め浸漬長が10〜300cmである請求項4または5に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  7. 紡糸口金の引き取り方向の最外孔と第一浴中ガイドでの凝固中繊維束の折り返し点とを結ぶ直線と、紡糸口金面に対して垂直方向の線との為す角度(A)が6.5〜45°である請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  8. 前記紡糸口金の引き取り方向の長さが5〜20cmである請求項1〜7に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  9. 孔数500〜24000個である紡糸口金を用いる請求項1〜8のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  10. 紡糸溶液の引き取り速度が10m/min以上である請求項1〜9のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  11. 凝固浴液の粘度が2〜100mPa・sである請求項1〜10のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  12. 凝固浴液がジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびジメチルアセトアミドからなる群から選ばれる少なくとも1つの溶媒と水との混合液で、溶媒濃度が25〜85質量%である、請求項1〜11のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  13. 請求項1〜12のいずれかに記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法によって得られた炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の酸化性雰囲気中において耐炎化処理した後、500〜1200℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、次いで1200〜3000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化処理する炭素繊維の製造方法。
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