JPWO2019235151A1 - 把持装置及び弾性体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ところで、把持装置のうち対象物に接触する把持部には、金属や硬質樹脂が採用される場合があるが、その場合、摩擦係数が低く、ある程度の力をかけて把持する必要がある。一方、力を過剰にかけてしまうと対象物が破損するため、適度な力での把持が求められる。つまり、把持部に対して十分な摩擦力を持たせつつ、対象物を破損させない範囲で把持力を制御する必要がある。ところが、対象物の形状のばらつきや、把持部の位置制御のばらつきが大きい場合は、把持力の制御が困難であった。
リンク機構を有する多指型の把持装置の場合は、対象物との接触面積を増やして把持することで、対象物の形状のばらつきや、把持部の位置制御のばらつきに対応できるが、機構が複雑であり、メンテナンス性や重量増が課題となる場合があった。
そこで、近年、チャック型の把持部に対して弾性体を被覆させることで、対象物の形状のばらつきや、把持部の位置制御のばらつきを吸収することが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
基部と、前記基部の先端に設けられた弾性体と、を複数備えて対象物を把持する把持部を含んで構成されており、
前記弾性体は、ラティス構造の本体部を有し、
複数の前記弾性体は、前記対象物側の面が向かい合うようにして配置され、
前記把持部は、複数の前記基部の拡縮動作によって前記対象物を把持する把持装置である。
図1に示すように、把持装置1は、駆動部2と、この駆動部2によって拡縮動作を行うように構成された複数の把持部3と、を含んで構成されており、複数の把持部3によって、把持の対象となる物品(以下、対象物A)を挟み込んで把持するように構成されている。
なお、本実施形態における複数の把持部3の数は、二つ(一対)とされているが、三つ以上であってもよい。
本実施形態においては、例えば、エア駆動形のロータリアクチュエータを使用して、一対の円弧状のカム溝を形成した回転カムを正転及び逆転駆動し得るように構成し、それらのカム溝に係合したそれぞれの係合ピンを拡縮動作方向に形成した直線状のガイド溝に沿って誘導することにより、それぞれの係合ピンに連係した被取付部2a,2bを介して把持部3を拡縮駆動するように構成することができる。ただし、これに限られるものではなく、複数の把持部3を拡縮駆動できるものであればよいものとする。
なお、把持装置1に設けられる各把持部3は同様に構成されており、取り付けられる対象(被取付部2a,2b)だけが異なるものとする。
取付部4aは、被装着部4bに比して厚さ寸法が長く設定されている。すなわち、被装着部4bよりも取付部4aの方が厚みがある状態になっている。
そして、複数の基部4は、駆動部2における被取付部2a,2bに取り付けられることによって被取付部2a,2bと共に拡縮動作し、このような複数の基部4の拡縮動作によって対象物Aを把持できるようになっている。
なお、本実施形態においては、被取付部2a,2bと基部4を別々のものとしたが、一体形成されるものとしてもよい。
そして、このような弾性体5は、図2〜図6に示すように、本体部6と、表面層7と、装着部8と、を有している。また、これら本体部6と表面層7と装着部8は一体形成されている。
ラティス構造である本体部6は、複数のフレーム材からなる立方体フレーム状(又は直方体フレーム状)の単位構成要素が、弾性体5が基部4に装着された場合の厚み方向(厚)と幅方向(幅)と高さ方向(高)に複数並べられたような構成となっている。
なお、このような本体部6における単位構成要素の形状は、いわゆる体心立方格子構造に近いものとなっている。ただし、これに限られるものではなく、トラス構造をベースとしたその他の単位構成要素を採用してもよい。
第一フレーム材6aは、X方向及びY方向に間隔を空けて配置されてZ方向に延びるフレーム材である。
第二フレーム材6bは、X方向及びY方向に配置され、四本の第一フレーム材6aの一端部間と他端部間をそれぞれ接続するフレーム材である。
第三フレーム材6cは、第一フレーム材6aと第二フレーム材6bからなる角部同士の対角線に沿って配置されるとともに当該角部同士を接続し、中心で互いに交差するフレーム材である。
このような単位構成要素が、厚み方向と幅方向と高さ方向に複数並べられて本体部6が形成される場合、隣接する単位構成要素における第一フレーム材6aと第二フレーム材6bは、隣接する単位構成要素同士で共有されるものとする。
つまり、本実施形態における本体部6は、上記のようなラティス構造とされているが、広義に解釈すれば、本体部6を構成する材(本実施形態においては各フレーム材6a,6b,6cを指す。)間が空いていて「疎」の状態になっているものを好適に採用することができる。要するに、本体部を構成する材と材との間に隙間を形成できる構造を有した単位構成要素からなる本体部が好適に採用され、反対に、いわゆる中実な状態で、「密(ソリッド)」な状態とされた本体部は採用されないものとする。
より詳細に説明すると、本体部を構成する単位構成要素間や単位構成要素そのものに隙間を形成でき(上記のような中実な状態「密(ソリッド)」ではなく)、これによって弾性体5が十分な柔軟性と摩擦力を発揮し、安定的な対象物Aの把持を実現可能なものであれば、本実施形態における弾性体5の本体部として好適に採用することができる。そのため、本実施形態の本体部6は、ラティス構造(トラス構造)やハニカム構造でもよいし、フォーム(泡)状でもよいし、隣り合う単位構成要素間に隙間を形成可能な表面構造を有する単位構成要素からなる構造でもよい。また、隣り合う単位構成要素の形状には規則性があってもよいし、不規則性があってもよい。
本実施形態における表面層7は、薄板状に形成されており、本体部6における対象物A側の面の略全面を被覆した状態となっている。
このような表面層7は、例えば図6に示すように、対象物Aを把持した際に本体部6と共に弾性変形する。すなわち、本体部6及び表面層7は、柔軟性を持っている。
本実施形態における装着部8は、高さ方向に貫通する角筒状に形成されており、基部4の被装着部4bに対して外挿できるようになっている。換言すれば、基部4の被装着部4bを、角筒状に形成された装着部8の貫通孔に対して差し込むことができ、これにより、弾性体5を基部4に装着させることができる。
なお、図5Aに示すように、装着部8の貫通孔内側面には、基部4側に突出する滑り止め部8aが形成されている。この滑り止め部8aは、基部4の被装着部4bにおける外側面に接して滑り止めとして機能し、装着部8(すなわち、弾性体5)を被装着部4bから外れにくくすることができる。基部4の被装着部4bにおける外側面には、滑り止め部8aに合致する凹部(図示せず)が形成されていてもよい。また、滑り止め部8aは、貫通孔内側面に複数形成されていてもよい。
なお、本実施形態における把持装置1は、図示しない位置制御装置によって、対象物Aに対する弾性体5の位置を制御できるようになっている。また、対象物Aの位置や形状を検出するセンサーを適宜併用してもよい。
ここで、第一方向とは、弾性体5が基部4に装着された状態における本体部6の厚み方向を指しており、第二方向とは、弾性体5が基部4に装着された状態における本体部6の高さ方向(上下方向又は対象物A側の面における面方向)を指している。つまり、対象物Aを把持した場合に、本体部6は厚み方向に弾性変形して潰れるようになっているが、高さ方向には弾性変形しにくくなっており、把持した対象物Aの落下を防ぐことができるようになっている(上記面方向の場合は、対象物Aが軸周りに回転することも防ぐことができる。)。
図7A,図7Bには、第一フレーム材6aと第二フレーム材6bからなる単位構成要素が、厚み方向と幅方向と高さ方向に複数並べられて形成された本体部6Aが示されているが、このような本体部6Aは、せん断応力が弱い状態となっている。一方、本実施形態における本体部6は、図7Bに示す本体部6Aに比して、せん断応力が強い状態となっている。
換言すれば、本実施形態における本体部6は、横弾性係数/縦弾性係数の比が大きく、図7Bに示す本体部6Aは、横弾性係数/縦弾性係数の比が小さい。
本実施形態においては、本体部6が、以上のような特性を持っているため、対象物Aの安定的な把持が実現できるようになっている。
ここで、セル構造体では圧縮変形時に、応力と歪みの関係がほぼ一定となるプラトー段階を持つことが知られている。まず、低応力時にフレーム材(フレーム材6a,6b,6c)の曲げ変形による線形弾性段階、次にフレーム材の座屈によるプラトー段階、最終的にはフレーム材同士が接触し、構成材料そのものを圧縮するために応力が急上昇する緻密化段階がある(参考文献1参照。)。
例えば上記のようなソリッド(「密」)な状態とされた本体部を採用した場合には、摩擦が発生するとともに対象物Aが変形・破損しない把持力範囲が狭く、対象物Aの安定的な把持が実現しにくい。
本実施形態においては、上記のようなプラトー段階を上記の把持力範囲に持たせた状態となっており、把持部3の位置制御ばらつきや対象物Aの形状ばらつきを吸収することができ、十分な摩擦を持ちつつ、対象物Aを破損させない範囲の力で安定した把持状態が得られるようになっている。また、弾性体5は、上記のようにポリウレタンエラストマーなどの樹脂によって積層造形されてなるものであるが、積層造形ではラティス構造(セル構造)の作製が容易であり、このラティス構造設計による圧縮応答特性の制御により、安定した把持を実現する把持部3を提案することができる。
[参考文献1]Gibson LJ, Ashby MF. Cellular solids: structures and properties,2nd ed. Cambridge: Cambridge University Press, 1997
ここで、積層造形法とは、立体モデルの3次元形状データをスライスして複数のスライスデータを生成し、各スライスデータを基に造形材料を順次積層することによって3次元物体(立体物)を作製する造形方法である。このような積層造形法には、光造形法、粉末焼結法、シート堆積法、樹脂押し出し法、インクジェット方式、電子写真方式等がある。本実施形態における弾性体5は、任意の積層造形法によって製造されている。
このような積層造形法によって弾性体5を製造すれば、本体部6と表面層7と装着部8の一体化が容易となる。
さらに、対象物Aを把持したときに本体部6が第一方向Y1に十分に弾性変形するので把持精度を向上させることができる。すなわち、対象物Aを狙いどおりに把持して、対象物Aを狙いどおりの位置に置くことができる。
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
本変形例における本体部16は、図8に示すように、六角形筒状体の単位構成要素16aが、弾性体5が基部4に装着された場合の厚み方向及び高さ方向に複数並べられたような構成となっている。
単位構成要素16aは、幅方向に延びる六つの板状体によって構成され、一つの内角が120度とされた一定な六角形の断面を有している。
このような単位構成要素16aが、厚み方向及び高さ方向に複数並べられて本体部16が形成される場合、隣接する単位構成要素16aにおける板状体は、隣接する単位構成要素16a同士で共有されるものとする。
すなわち、上記の実施形態における本体部6はラティス構造とされていたが、本変形例における本体部16は、ラティス構造とは異なるセル構造であるハニカム構造とされている。
また、本変形例のようなハニカム構造の本体部16の場合、図8中の幅方向(すなわち、単位構成要素16aの延在方向)には極めて弾性変形しにくい状態となっている。そのため、例えば図8に示す方向とは異なる向きにするなどして、必要に応じて本体部16の向きを変更してもよいものとする。
上記の実施形態においては、表面層7は、表面(対象物A側の面を指す。)に凹凸がなく平滑な状態に形成されていたが、本変形例においては、表面層27,37,47,57に凹凸パターンが形成されている。
このような表面層27は、本体部26のうち対象物A側の面に設けられて弾性体25を構成している。
このような表面層37は、本体部36のうち対象物A側の面に設けられて弾性体35を構成している。
このような表面層47は、本体部46のうち対象物A側の面に設けられて弾性体45を構成している。
このような表面層57は、本体部56のうち対象物A側の面に設けられて弾性体55を構成している。
上記の実施形態においては、弾性体5が、全体的に直方体状に形成されていたが、本変形例においては、弾性体65,75が、対象物Aの外形に沿った形状に形成されている。
より詳細に説明すると、弾性体65を構成する本体部66のうち対象物側の面が、突出部に対応して凹んだ状態に形成されている。すなわち、本体部66は、側面視した場合において凹字形となるように形成されている。
また、本体部66における対象物側の面に設けられる表面層67は、本体部66における対象物側の面の形状に対応して凹状に設けられており、本体部66における対象物側の面を被覆している。
より詳細に説明すると、弾性体75を構成する本体部76のうち対象物側の面が、対象物の球面部に対応して窪んだ状態に形成されている。
また、本体部76における対象物側の面に設けられる表面層77は、本体部76における対象物側の面の形状に対応して窪み状に設けられており、本体部76における対象物側の面を被覆している。
なお、対象物の形状が複雑であったとしても、弾性体65,75を積層造形法によって製造すれば、弾性体65,75を、対象物の外形に沿った形状に形成することができるので好ましい。
上記の実施形態においては、装着部8が、高さ方向に貫通する角筒状に形成され、基部4を差し込むことができるようになっていたが、本変形例における装着部88は、図15A,図15Bに示すように、ベース部88aと、このベース部88aから突出する複数の柱状部88bと、を備えた構成となっている。また、基部84における被装着部84bには、複数の柱状部88bが差し込まれる複数の貫通孔が形成されている。すなわち、被装着部84bに形成された複数の貫通孔に対し、装着部88が備える複数の柱状部88bを差し込むことによって、弾性体85を基部84に装着できるようになっている。
装着部88におけるベース部88aは、表面層87よりも厚みのある矩形板状体とされており、本体部86とは反対側の面に複数の柱状部88bが一体形成されている。
複数の柱状部88bは、本変形例においては四本であり、ベース部88aの四隅に対応して配置されている。また、複数の柱状部88bの突出方向先端には、抜け止め部88cが一体形成されている。
抜け止め部88cは、先端に向かうにつれて徐々に細くなるように形成されており、被装着部84bに形成された貫通孔に対して、差し込みやすく、抜けにくい状態になっている。
2 駆動部
2a 被取付部
2b 被取付部
3 把持部
4 基部
4a 取付部
4b 被装着部
5 弾性体
6 本体部
6A 本体部
6a 第一フレーム材
6b 第二フレーム材
6c 第三フレーム材
7 表面層
8 装着部
8a 滑り止め部
16 本体部
16a 単位構成要素
27 表面層
27a スタッド
37 表面層
37a 凸条
37b 凹溝
47 表面層
47a 円形凸条
47b 円形凹溝
57 表面層
65 弾性体
65a 凹部
66 本体部
67 表面層
75 弾性体
75a 窪み部
76 本体部
77 表面層
84 基部
84b 被装着部
84c 段差部
85 弾性体
88 装着部
88a ベース部
88b 柱状部
88c 抜け止め部
A 対象物
Y1 矢印
Y2 矢印
Claims (8)
- 基部と、前記基部の先端に設けられた弾性体と、を複数備えて対象物を把持する把持部を含んで構成されており、
前記弾性体は、ラティス構造の本体部を有し、
複数の前記弾性体は、前記対象物側の面が向かい合うようにして配置され、
前記把持部は、複数の前記基部の拡縮動作によって前記対象物を把持する把持装置。 - 前記弾性体は、前記本体部における前記対象物側の前記面に設けられて前記対象物に接触する表面層を有する請求項1に記載の把持装置。
- 前記表面層には凹凸パターンが形成されている請求項2に記載の把持装置。
- 前記弾性体は、当該弾性体を前記基部に装着させるための装着部を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の把持装置。
- 前記本体部が持つ弾性には異方性があり、第一方向には弾性変形しやすく、前記第一方向とは異なる第二方向には弾性変形しにくくなるように設定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の把持装置。
- 前記弾性体は、前記対象物の外形に沿った形状に形成されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の把持装置。
- 前記本体部と前記表面層と前記装着部は一体形成されている請求項2又は3を引用する請求項4に記載の把持装置。
- 対象物を把持する把持装置のうち前記対象物に接触する部位に設けられ、かつ、セル構造の本体部を有する弾性体を、積層造形法によって製造する弾性体の製造方法。
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