JPWO2019230509A1 - 活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤を提供するものであり、ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを有効成分として含む活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤に関するものである。当該ヒスチジンリッチ配列は、以下に示す配列番号2〜8のいずれか1種又は複数種で特定されるアミノ酸配列である。(配列番号2)DLHPH(配列番号3)KHHSH(配列番号4)EQHPH(配列番号5)GHHPH(配列番号6)AHHPH(配列番号7)EHDTH(配列番号8)RQHPH

Description

本発明は、活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤に関する。具体的には、ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを有効成分として含む活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤に関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2018−105652号優先権を請求する。
活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)には、ラジカルとラジカルでないものがある。脂質関連物質を含む広義の意味においての活性酸素のうち、ラジカルとしては反応性の高いものから順に、ヒドロキシラジカル(・OH)、アルコキシラジカル(LO・)、ペルオキシラジカル(LOO・)、ヒドロペルオキシラジカル(HOO・)、一酸化窒素(NO・)、二酸化窒素(NO2・)、スーパーオキシドアニオンラジカル(O2 -・)等が挙げられる。ラジカルでないものとしては、一重項酸素(1O2)、オゾン(O3)、過酸化水素(H2O2)、脂質ヒドロペルオキシド(LOOH)等が挙げられる。
生体内の過剰な活性酸素種は、スーパーオキシドジスムターゼ(Superoxide Dismutase: SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ等の生体内抗酸化機構の働きで除去される。しかし、老化や疾病などによって抗酸化機構が低下すると、活性酸素種による種々の疾病リスクが高くなる。例えば鉄の過剰摂取で肝臓に鉄が蓄積すると、フェントン反応によりヒドロキシラジカルの発生が促進され、肝炎などが発症する。フェントン反応抑制剤としてD-システノール酸を有効成分とする薬剤について開示がある(特許文献1)。特許文献1には、ヒドロキシラジカルの生成阻害や一重項酸素を消去するためにD-システノール酸を使用することが記載されている。活性酸素抑制剤にアスタキサンチンとクルクミンを使用することについて開示がある(特許文献2)。特許文献2には、食品や医薬品の脂質など酸化しやすい成分の酸化を防止するための活性酸素抑制剤として、アスタキサンチンとクルクミンを使用することが記載されている。しかしながら、特許文献1及び2に示す薬剤は経腸管吸収が極めて低く、生体利用率が低いのが問題である。ヒドロキシラジカル発生後直ちに近傍の分子と反応し、強い酸化力を発揮する。そして可逆的又は不可逆的な細胞障害を惹起し、その結果種々の疾患が引き起こされると考えられる。係る細胞障害や疾患等を防ぐために多くの薬剤が開発されつつあるが、ヒドロキシラジカルは反応性が非常に高く、寿命が非常に短いため、ヒドロキシラジカルが発生した後に当該ヒドロキシラジカルを捕捉する薬剤では効果に限界がある。
ヒスチジンリッチ糖タンパク質(Histidine-rich glycoprotein; HRG)は、Heimburger et al (1972)によって同定された分子量約80kDaの血漿タンパク質である。合計507個のアミノ酸より構成され、そのうちヒスチジンが66存在する高ヒスチジン含有タンパク質であり、主として肝臓で合成され、約100〜150μg/mLという非常に高いと考えられる濃度でヒト血漿中に存在する。HRGは、凝固線溶系の調節や血管新生の制御に関与していることが知られている(非特許文献1)。さらに、HRGの部分を含むポリペプチド(以下、「HRGポリペプチド」ともいう)を投与することによる血管形成を阻害する方法、HRGポリペプチド、HRGポリペプチドに結合する抗体及び受容体、HRG欠乏性血漿及びポリヌクレオチド、HRGポリペプチドをコードするベクター及び宿主細胞を含む、製薬的組成物及び製品が開示されている(特許文献3)。また、血管新生の分野に関し、HRGの中央領域に由来するサブフラグメントを含む抗血管新生活性のある実質的に純粋な連続ポリペプチドの使用に関する開示がある(特許文献4)。さらに、HRGを有効成分とする好中球‐血管内皮細胞接着抑制剤についても開示がある(特許文献5)。このようにHRGの作用は解明されつつあるが、抗酸化作用についての報告はない。
特別な構造からなる遺伝子発現カセットを用いて目的タンパク質を作製したことが開示されている(特許文献6)。ここでは、当該遺伝子発現カセットを用いることで、目的タンパク質を安定かつ高産生可能な細胞が得られることが示されており、作製したタンパク質の例としてHRGやHRG-Fc融合タンパク質等が実施例に示されている。
活性酸素は、好中球を含む食細胞は、細菌、種々の粒子状又は可溶性刺激物等により、細胞膜に存在するNAD(P)H酸化酵素が活性化することで産生される。例えば非特許文献2にも報告されている。非特許文献2では、好中球に及ぼすHRGの作用は各種示されているが、好中球から産生された活性酸素に対する作用は示されていない。
Blood, Vol.117, No.7, 2093-2101 (2011) EBioMedicine, 9, 180-194 (2016), Available online 4 June 2016
特開2001−288078号公報 特開2014−019660号公報 特表2004−527242号公報 特表2007−528710号公報 特許第5807937号公報(国際公開2013/183494号) 国際公開2017/061354号
本発明は、活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤を提供することを課題とする。
ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを有効成分とする、活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤による。本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドは、ヒドロキシラジカルやペルオキシラジカルの産生抑制や消去活性を有することを初めて見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを有効成分とする活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
2.ヒスチジンリッチ配列が、配列番号1に示すアミノ酸配列から選択される部分であって、少なくとも5個のアミノ酸を含み、当該5個のアミノ酸のうち2個以上のアミノ酸がヒスチジンである配列である、前項1に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
3.ヒスチジンリッチ配列が、以下に示す配列番号2〜8のいずれか1種又は複数種で特定されるアミノ酸配列である、前項1又は2に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
(配列番号2)DLHPH
(配列番号3)KHHSH
(配列番号4)EQHPH
(配列番号5)GHHPH
(配列番号6)AHHPH
(配列番号7)EHDTH
(配列番号8)RQHPH
4.有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、ヒスチジンリッチ配列を1〜20個含む、前項2又は3に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
5.有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端から330〜389番目で特定されるアミノ酸配列、又は前記配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端より330〜389で特定されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列、のいずれか少なくとも1種のアミノ酸配列を含む、前項1に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
6.有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は前記配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列、のいずれか少なくとも1種のアミノ酸配列を含む、前項1に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
7.活性酸素が、ヒドロキシラジカル及び/又はペルオキシラジカルである、前項1〜6のいずれかに記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
8.生体内における過剰な活性酸素の産生抑制及び/又は消去促進するための、前項1〜7のいずれかに記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
A.有効成分としてヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを使用する、活性酸素の産生抑制方法及び/又は消去促進方法。
B.ヒスチジンリッチ配列が、配列番号1に示すアミノ酸配列から選択される部分であって、少なくとも5個のアミノ酸を含み、当該5個のアミノ酸のうち2個以上のアミノ酸がヒスチジンである配列である、前項Aに記載の活性酸素の産生抑制方法及び/又は消去促進方法。
C.ヒスチジンリッチ配列が、以下に示す配列番号2〜8のいずれか1種又は複数種で特定されるアミノ酸配列である、前項A又はBに記載の活性酸素の産生抑制方法及び/又は消去促進方法。
(配列番号2)DLHPH
(配列番号3)KHHSH
(配列番号4)EQHPH
(配列番号5)GHHPH
(配列番号6)AHHPH
(配列番号7)EHDTH
(配列番号8)RQHPH
D.ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、ヒスチジンリッチ配列を1〜20個含む、前項B又はCに記載の活性酸素の産生抑制方法及び/又は消去促進方法。
E.有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端から330〜389番目で特定されるアミノ酸配列、又は前記配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端より330〜389で特定されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列、のいずれか少なくとも1種のアミノ酸配列を含む、前項Aに記載の活性酸素の産生抑制方法及び/又は消去促進方法。
F.有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は前記配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列、のいずれか少なくとも1種のアミノ酸配列を含む、前項Aに記載の活性酸素の産生抑制方法及び/又は消去促進方法。
G.活性酸素が、ヒドロキシラジカル及び/又はペルオキシラジカルである、前項A〜Fのいずれかに記載の活性酸素の産生抑制方法及び/又は消去促進方法。
H.生体内における過剰な活性酸素の産生抑制及び/又は消去促進するための、前項A〜Gのいずれかに記載の活性酸素の産生抑制方法及び/又は消去促進方法。
本発明のヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを有効成分とする、活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤は、無細胞の系においてもヒドロキシラジカルやペルオキシラジカルの産生抑制や消去活性を有する。ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドは二価の鉄イオンに結合し、フェントン反応による反応性の極めて高いヒドロキシラジカルの産生を抑制する。
ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドやHRGの構造を示す図である。 HRGのヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図2Aは、対照としてのガーリック酸(GA)のヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図2Bは、各濃度のHRGのヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図2Cは、各濃度のHRG又はGAのヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。(実施例1) ヒスチジンリッチペプチドのヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図3Aは、緩衝液、HRG、ヒスチジンリッチペプチド及び対照ペプチドのヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図3Bは、各濃度のヒスチジンリッチペプチドについての抗酸化作用を示す図である。図3Cは、HRG又はヒスチジンリッチペプチドのヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。(実施例2) HRGと各種金属イオンとの結合性を示す図である。HRGと二価鉄イオン、三価鉄イオン、二価コバルトイオンとの結合性を示す図である。(実施例3) HRGと各種金属イオンとの結合性を示す図である。HRGと二価亜鉛イオン、二価銅イオン、二価ニッケルイオンとの結合性を示す図である。(実施例3) 配列番号10に示すヒスチジンリッチペプチドと各種金属イオンとの結合性を示す図である。ヒスチジンリッチペプチドと二価鉄イオン、三価鉄イオン、二価コバルトイオンとの結合性を示す図である。(実施例3) ヒスチジンリッチペプチドと各種金属イオンとの結合性を示す図である。ヒスチジンリッチペプチドと二価亜鉛イオン、二価銅イオン、二価ニッケルイオンとの結合性を示す図である。(実施例3) 配列番号11に示す対照ペプチドと各種金属イオンとの結合性を示す図である。対照ペプチドと二価鉄イオン、三価鉄イオン、二価コバルトイオンとの結合性を示す図である。(実施例3) 対照ペプチドと各種金属イオンとの結合性を示す図である。対照ペプチドと二価亜鉛イオン、二価銅イオン、二価ニッケルイオンとの結合性を示す図である。(実施例3) ペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図7Aは、対照としてのトロロックス(Tro)のペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図7Bは、各濃度のHRGのペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図7Cは、各濃度のHRG又はトロロックスのペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。(実施例4) ヒスチジンリッチペプチドのペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図8Aは、緩衝液、HRG、ヒスチジンリッチペプチド及び対照ペプチドのペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図8Bは、各濃度のヒスチジンリッチペプチドのペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。図8Cは、HRG又はヒスチジンリッチペプチドのペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を示す図である。(実施例5) HRGがスーパーオキシドに対する抗酸化作用がない結果を示す図である。(参考例1) HRGのカタラーゼ様活性がない結果を示す図である。(参考例2)
本発明は、「ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを有効成分とする、活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」に関する。成熟HRGは、配列番号1に示すアミノ酸配列からなり、合計507個のアミノ酸より構成され、そのうちヒスチジンが66存在する高ヒスチジン含有タンパク質である。成熟HRGを構成するアミノ酸配列のうち、N末端より330〜389で特定される部位は、ヒスチジンリッチドメインといわれる(図1参照)。
本発明の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤に含まれる有効成分としての「ヒスチジンリッチ配列を有するペプチド」は、配列番号1に示すアミノ酸配列からなる成熟HRGタンパク質であってもよいし、配列番号1に示すアミノ酸配列から選択される部分であって、ヒスチジンリッチドメインを1〜複数箇所含むペプチド、ポリペプチド又はタンパク質であってもよい。さらに、本発明の「ヒスチジンリッチ配列を有するペプチド」は、後述する「ヒスチジンリッチ配列」を含むペプチド、ポリペプチドあるいはタンパク質であれば、配列番号1に示すアミノ酸配列又は配列番号1に示すアミノ酸配列から選択される部分配列、からなるペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に限定されるものではない。配列番号1に示すアミノ酸配列から選択される部分であって、ヒスチジンリッチドメインを構成するアミノ酸配列を含むのが好適である。以降、本明細書において有効成分としての「ヒスチジンリッチ配列を有するペプチド」の概念にはHRGも包含される。
成熟HRGのアミノ酸配列(配列番号1)
VSPTDCSAVEPEAEKALDLINKRRRDGYLFQLLRIADAHLDRVENTTVYYLVLDVQESDCSVLSRKYWNDCEPPDSRRPSEIVIGQCKVIATRHSHESQDLRVIDFNCTTSSVSSALANTKDSPVLIDFFEDTERYRKQANKALEKYKEENDDFASFRVDRIERVARVRGGEGTGYFVDFSVRNCPRHHFPRHPNVFGFCRADLFYDVEALDLESPKNLVINCEVFDPQEHENINGVPPHLGHPFHWGGHERSSTTKPPFKPHGSRDHHHPHKPHEHGPPPPPDERDHSHGPPLPQGPPPLLPMSCSSCQHATFGTNGAQRHSHNNNSSDLHPHKHHSHEQHPHGHHPHAHHPHEHDTHRQHPHGHHPHGHHPHGHHPHGHHPHGHHPHCHDFQDYGPCDPPPHNQGHCCHGHGPPPGHLRRRGPGKGPRPFHCRQIGSVYRLPPLRKGEVLPLPEANFPSFPLPHHKHPLKPDNQPFPQSVSESCPGKFKSGFPQVSMFFTHTFPK
本明細書において、「ヒスチジンリッチ配列を有するペプチド」における「ヒスチジンリッチ配列」とは、配列番号1に示すアミノ酸配列から選択される部分であって、少なくとも5個のアミノ酸を含み、当該5個のアミノ酸のうち2個以上、好ましくは3個以上のアミノ酸がヒスチジンである配列をいう。具体的には配列番号2〜8に示すアミノ酸配列が挙げられる。
ヒスチジンリッチ配列
(配列番号2)DLHPH
(配列番号3)KHHSH
(配列番号4)EQHPH
(配列番号5)GHHPH
(配列番号6)AHHPH
(配列番号7)EHDTH
(配列番号8)RQHPH
前記有効成分としての「ヒスチジンリッチ配列を有するペプチド」は、前記ヒスチジンリッチ配列、例えば配列番号2〜8のいずれかに示すヒスチジンリッチ配列からなるペプチドそのものであってもよいし、例えば配列番号2〜8のいずれかに示すヒスチジンリッチ配列を2つ以上含むペプチドであってもよい。配列番号2〜8のいずれかに示すヒスチジンリッチ配列を2つ以上含む場合は、同じヒスチジンリッチ配列を2つ以上含むペプチドであってもよいし、異なるヒスチジンリッチ配列を各々含むペプチドであってもよい。当該ヒスチジンリッチ配列を有するペプチド中に含まれる「ヒスチジンリッチ配列」の数は特に限定されず1〜複数個であってよく、例えば1〜20個、1〜15個好ましくは1〜12個、より好ましくは2〜12個である。当該ヒスチジンリッチ配列を複数ヶ所含む場合は、連続して含んでいてもよいし、間に異なるアミノ酸配列を挟んでいてもよい。配列番号1に示すアミノ酸配列には、配列番号2で特定されるヒスチジンリッチ配列が1個、配列番号3で特定されるヒスチジンリッチ配列が1個、配列番号4で特定されるヒスチジンリッチ配列が1個、配列番号5で特定されるヒスチジンリッチ配列が6個、配列番号6で特定されるヒスチジンリッチ配列が1個、配列番号7で特定されるヒスチジンリッチ配列が1個、配列番号8で特定されるヒスチジンリッチ配列が1個含まれる。
有効成分としての「ヒスチジンリッチ配列を有するペプチド」は、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端から330〜389番目で特定されるアミノ酸配列、又は前記配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端より330〜389で特定されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列、のいずれか少なくとも1種のアミノ酸配列を含むペプチドあるいはタンパク質であってもよい。さらに、有効成分としての「ヒスチジンリッチ配列を有するペプチド又はヒスチジンリッチ糖タンパク質」は、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は前記配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列、のいずれか少なくとも1種のアミノ酸配列を含むペプチドあるいはタンパク質であってもよい。
本発明の有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドがHRGの場合は、当該成熟HRGは生体成分から単離・精製して調製する方法、遺伝子組換え技術を用いて作製する方法、あるいは合成により作製することができる。生体成分からの単離・精製は、例えば血漿、血清等の血液、脊髄液、リンパ液等の生体成分から精製され/若しくは単離することができる。好適な生体成分は、血漿、血清等の血液成分である。生体成分から単離・精製する方法は、自体公知の方法又は今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。例えば、Ni-NTA(nickel-nitrilotriacetic acid)アガロース樹脂を用いて調製したアフィニティカラムに血漿を通すことによって調製することもできる。
本発明の有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを遺伝子組換え技術を用いて作製する場合は、自体公知の方法又は今後開発されるあらゆる方法を適用することができる。当該ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドをコードするcDNAを、発現ベクターにクローニングし、調製することもできる。例えば、GenBank Accession No.NM000412で特定されるヌクレオチドの全体又は部分から生合成されるタンパク質であっても良い。例えば、成熟HRGのアミノ酸配列(配列番号1)をコードする全長cDNA、又は部分をコードするcDNAを、発現ベクターにクローニングし、作製することもできる。HRGを遺伝子組換え技術を用いて作製方法は、具体的には、特許文献6に示す方法を適用することができる。例えばHRGをコードする全長cDNA、又はHRGの活性を有する部分をコードするcDNA、例えば、成熟HRGのアミノ酸配列(配列番号1)をコードする全長cDNA、又は部分をコードするcDNAを、発現ベクターにクローニングし、HRG発現ベクターを調製する。
ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドは、自体公知のペプチド作製方法により作製することができる。例えばペプチド合成方法によっても作製することができる。
本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」により産生抑制及び/又は消去促進される活性酸素の種類は特に限定されないが、特にヒドロキシラジカルやペルオキシラジカルが好適である。活性酸素は、大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称である。活性酸素は、酸素分子が不対電子を捕獲することによってスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、ペルオキシラジカルという順に生成する。スーパーオキシドは酸素分子から生成される最初の還元体であり、他の活性酸素の前駆体であり、生体にとって重要な役割を持つ一酸化窒素と反応してその作用を消滅させる。活性酸素は生体内に侵入又は生成した毒素等を排除するためのものであり、酸化力によって毒素を酸化させて毒素機能を消失することができる。しかしながら活性酸素の過剰な生成や、あってはならない場所での生成は、その局所での生成と消去の平衡関係を崩すこととなり、いわゆる酸化ストレス負荷の状態となり、活性酸素は生体の膜や組織を構成する生体内分子を攻撃して、各種疾患を誘発する。つまり酸化ストレスとは毒素のみならず体中の細胞を破壊し、老化の原因となったり、様々な疾病を引き起こす。過剰な活性酸素は生体膜、核酸、タンパク質、体内活性因子などに種々の障害を与え、膜脂質の過酸化反応、酸化的損傷、タンパク質変性などを引き起こすだけでなく、多くの生命現象の情報伝達の制御因子としても作用する。
活性酸素を生成する環境因子として、大気汚染物質、放射線、ある種の薬剤、紫外線、タバコなどが挙げられ、生体内では、ミトコンドリア電子伝達系、ミクロソーム電子伝達系内のある種の酵素、オキシダーゼ系酵素、鉄含有タンパク質等が挙げられる。炎症、虚血性疾患などとの関連では、好中球を始めとする食細胞も注目される。好中球を含む食細胞は、細菌、種々の粒子状又は可溶性刺激物等により、細胞膜に存在するNAD(P)H酸化酵素が活性化することで産生される。生体内での活性酸素種が、種々の疾病や不健康の原因として解明されてきており、活性酸素種は各種細胞死、癌、動脈硬化、高血圧、糖尿病などの原因の1つといわれている。好中球より生成される過剰な活性酸素種は虚血再灌流障害や自己免疫疾患をはじめとする炎症反応において組織障害性に働いていることも明らかとなりつつある。生じたスーパーオキシドは、酵素的又は非酵素的に還元を受け、より反応性の高い活性酸素種(ヒドロキシラジカル、ペルオキシラジカル)となる。急性呼吸窮迫症候群、潰瘍性大腸炎、急性胃粘膜病変、ベーチェット病などは活性化した好中球より産生される活性酸素種が病変形成に関与するといわれている。
本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」には、有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有する有効量のペプチドの他、薬理学的に許容しうる担体等を適量含ませることができる。当該薬理学的に許容しうる担体としては、例えば、賦形剤(単糖類、オリゴ糖、多糖類を含む)、崩壊剤若しくは崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、潤沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤若しくは溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、増粘剤(キチン、キトサン、増粘多糖類を含む)及び粘着剤等を挙げることができる。
本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」は、生体内での活性酸素種に起因する、種々の疾病や不健康の治療剤又は治療補助剤として使用することができる。種々の疾病や不健康は、具体的には各種細胞死、癌、動脈硬化、高血圧、糖尿病、虚血再灌流障害、急性呼吸窮迫症候群、急性胃粘膜病変や自己免疫疾患などが挙げられる。自己免疫疾患では潰瘍性大腸炎やベーチェット病などが挙げられる。
本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」は、上記疾患の治療剤又は治療補助剤として使用するために、局所的に投与してもよいし、全身的に投与してもよい。その投与量、投与頻度、投与期間は、対象疾患の種類や症状、対象者の年齢・性別を加味して、適宜設定すればよい。本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」が非経口投与用の形態にある場合には、滅菌した水性の、又は非水性の溶液、懸濁液及び乳濁液を含んでいてもよい。非水性希釈剤の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油及び有機エステル組成物、例えば、エチルオレエートであり、これらは注射用に適している。水性担体には、薬理学的に許容しうる水、アルコール性水性溶液、乳濁液、懸濁液、食塩水及び緩衝化媒体が含まれていてもよい。非経口的担体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、リンゲル乳酸及び結合油が含まれていてもよい。静脈内担体には、例えば、液体用補充物、栄養及び電解質(例えば、リンゲルデキストロースに基づくもの)が含まれていてもよい。本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」はさらに、保存剤、安定化剤及び他の添加剤、例えば、抗微生物化合物(抗菌剤、抗生物質を含む)、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスなどの1種又は2種以上を含むことができる。
本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」は、上記疾患の治療剤又は治療補助剤として使用する場合、他の医薬品製剤の1種又は2種以上と併用して投与してもよい。併用可能な他の医薬品製剤としては特に限定されず、通常、既に市販されている治療剤や予防剤、又は今後開発される治療剤や予防剤の何れであってもよい。当該別の他の医薬品製剤は、本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」とは作用機序の異なる医薬品製剤が好適である。本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」を併用することにより、他の医薬品製剤の投与量を軽減化させることも可能である。他の医薬品製剤が副作用を有する場合は、本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」を併用することで、他の医薬品製剤の投与を軽減化することができ、有用である。
本発明の「活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤」は、上記医薬品としての使用の他、化粧品、健康食品、特定保健用食品、機能性食品等の原料や、化粧品補助剤、食品補助剤としても使用することができる。
本発明を以下の実施例、実験例、比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではないことは言及するまでもない。
(実施例1)ヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用1
本実験例では、HRGについてヒドロキシラジカルに対する抗酸化活性を確認した。本実施例及び後述する実施例、参考例で使用するHRGはヒト血漿を出発原料とし、特許文献5(国際公開2013/183494号)の実施例1に示す方法で作製した。各濃度のHRG試料は、Hanks液(Hanks' Balanced Salt Solution:HBSS)で希釈して作製した。陽性対照として、GA(ガーリック酸)を用いた。
ヒドロキシラジカルに対する抗酸化活性はOxiSelectTM HORAC Activity Assay Kit(Cell Biolabs, San Diego, CA)を用いて、仕様書に従って測定した。試料溶液に蛍光プローブ溶液を加え、37℃で30分間インキュベーションし、ヒドロキシラジカル開始剤(H2O2)とフェントン試薬を加え、ヒドロキシラジカルによる水素原子移動(HAT;hydrogen atom transfer)を介した、蛍光プローブの酸化に基づいて蛍光強度(Ex/Em=485nm/538nm)を計測した。ヒドロキシラジカル存在下では蛍光プローブの蛍光は消光し、抗酸化活性がある場合に、消光が抑制される。試料溶液として0.01〜1μMのHRG溶液、又は50〜100μMのGA溶液を用いた。
A.50〜100μMのGA(ガーリック酸)試料溶液について、上記測定方法に従い蛍光強度(Ex/Em=485nm/538nm)を5分おきに60分間計測した。GAとブランクの蛍光強度を縦軸、測定時間を横軸にプロットした。GAの濃度依存的にヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用が確認された(図2A)。
B.0〜1μMのHRG試料溶液について、上記測定方法に従い蛍光強度(Ex/Em=485nm/538nm)を5分おきに60分間計測した。HRGとブランクの蛍光強度を縦軸、測定時間を横軸にプロットした。HRGの濃度依存的にヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用が確認された(図2B)。
C.ヒドロキシラジカルに対する抗酸化活性(NetAUC)
GA又はHRGの蛍光強度の曲線下面積(Area Under the Curve:AUCsample)とブランクの曲線下面積(AUCblank)の差を反応開始後5分おきに60分間測定し、NetAUCを算出した。HRGはヒドロキシラジカルに対して強い抗酸化作用があることが確認された(図2C)。
(実施例2)ヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用2
本実施例では、ヒスチジンリッチペプチド(配列番号10)について、ヒドロキシラジカルに対する抗酸化作用を実施例1と同手法で確認した。対照ペプチド(配列番号11)についても同様に確認した。
・ヒスチジンリッチペプチド:GHHPHGHHPH(配列番号10)
・対照ペプチド:GAAPAGAAPA(配列番号11)
配列番号10に示すアミノ酸配列は、配列番号5のアミノ酸配列を2つ連結させたものであり、配列番号11に示すアミノ酸配列は、配列番号10に示すアミノ酸配列のうちヒスチジンをアルギニンに代えたものである。上記各ペプチドは、シグマジェノシス社のカスタムペプチド合成サービスを利用して作製した。また、本実施例のヒスチジンリッチペプチド及び対照ペプチドは、後述する実施例、参考例でも使用した。
A.HRG(1μM)、ヒスチジンリッチペプチド(6μM)又は対照ペプチド(6μM)の各溶液に蛍光プローブ溶液を加え、実施例1と同手法によりヒドロキシラジカルに対する抗酸化活性を測定した。HRG及びヒスチジンリッチペプチドは強い抗酸化作用を示したのに対し、対照ペプチドは緩衝液(Buffer)と同様に抗酸化作用を示さなかった(図3A)。
B.ヒスチジンリッチペプチド溶液(0.1〜10μM)について、蛍光プローブ溶液を加え、実施例1と同手法によるヒドロキシラジカルに対する抗酸化活性を測定した。ヒスチジンリッチペプチドは濃度依存的に強い抗酸化活性を示した(図3B)。
C.ヒドロキシラジカルに対する抗酸化活性(NetAUC)
ヒスチジンリッチペプチド又はHRGの蛍光強度の曲線下面積(Area Under the Curve:AUCsample)とブランクの曲線下面積(AUCblank)の差を反応開始後5分おきに60分間測定し、NetAUCを算出した。ヒスチジンリッチペプチド及びHRGはヒドロキシラジカルに対して強い抗酸化作用があることが確認された(図3C)。
(実施例3)金属イオン結合性
本実施例では、HRGのフェントン反応における必須因子である金属イオンに対する結合性を調べる為に、カロリーメトリー法を用いて実験を行った。カロリメーターはMicroCal iTC200を用い、仕様書に従って各種金属(鉄、銅、コバルト、亜鉛、ニッケル)と各試料との結合性を測定した。
その結果、HRGは二価金属イオン(鉄、銅、コバルト、亜鉛、ニッケル)には結合するが(図4−1、4−2)、三価の鉄イオンには結合しないことが確認された(図4−1)。HRGが二価鉄イオンと結合することを明らかにしたのは今回が初めてである。さらにHRG 1分子に対して二価金属イオンが多数結合することが明らかとなり、効率的にHRGは二価金属イオンと結合することが明らかとなった(図4−1)。さらにヒスチジンリッチペプチドも二価金属イオン(鉄、銅、コバルト、亜鉛、ニッケル)には結合するが、三価の鉄イオンには結合しないことが確認された(図5−1、5−2)。対照ペプチドは各種金属イオンと結合しなかった(図6−1、6−2)。これらの結果より、ヒスチジンが二価金属イオンの結合に重要であることが確認された。
さらにHRG 1分子に対して二価金属イオンが多数結合することが明らかとなり、効率的にHRGは二価金属イオンと結合することが明らかとなった。さらにヒスチジンリッチペプチド(配列番号10参照)が結合の中心であり、対照ペプチド(配列番号11参照)が二価金属イオンと結合しなかったことより、ヒスチジンがこの結合に重要であることが示された。以上のことより、HRGはヒドロキシラジカル産生経路であるフェントン反応に必須の二価金属イオン(鉄、コバルト等)と結合することで、この反応を阻害することが明らかとなった。
(実施例4)ペルオキシラジカルに対する抗酸化作用1
本実施例では、HRGについて、ペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を調べた。陽性対照としてトロロックスを用いた。ペルオキシラジカルに対する抗酸化活性はOxiSelectTM ORAC Activity Assay Kit(Cell Biolabs, San Diego, CA)を用いて、仕様書に従って測定した。試料溶液に蛍光プローブ溶液を加え、37℃で30分間インキュベーションし、2,2'-アゾビス-(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(AAPH)を加え、直ちに蛍光強度(Ex/Em=485nm/538nm)を計測した。ペルオキシラジカル存在下では蛍光プローブの蛍光は消光し、抗酸化活性がある場合に、消光が抑制される。
A.0〜6.25μMのトロロックス試料溶液について、上記測定方法に従い蛍光強度(Ex/Em=485nm/538nm)を5分おきに60分間計測した。トロロックスの濃度依存的にペルオキシラジカルに対する抗酸化作用が確認された(図7A)。
B.0〜1μMのHRG試料溶液について、上記測定方法に従い蛍光強度(Ex/Em=485nm/538nm)を5分おきに60分間計測した。HRGの濃度依存的にペルオキシラジカルに対する抗酸化作用が確認された(図7B)。
C.ペルオキシラジカルに対する抗酸化活性(NetAUC)
トロロックス又はHRGの蛍光強度の曲線下面積(Area Under the Curve:AUCsample)とブランクの曲線下面積(AUCblank)の差を反応開始後5分おきに60分間測定し、NetAUCを算出した。HRGはペルオキシラジカルに対して抗酸化作用があることが確認された(図7C)。
(実施例5)ペルオキシラジカルに対する抗酸化作用2
本実施例では、ヒスチジンリッチペプチドについて、実施例4と同様にペルオキシラジカルに対する抗酸化作用を調べた。
A.HRG(1μM)、ヒスチジンリッチペプチド(6μM)又は対照ペプチド(6μM)の各溶液に蛍光プローブ溶液を加え、実施例4と同手法によりペルオキシラジカルに対する抗酸化活性を測定した。HRGは強い抗酸化作用を示したのに対し、ヒスチジンリッチペプチドはやや弱いものの抗酸化作用を示した。対照ペプチドは緩衝液(Buffer)と同様に抗酸化作用を示さなかった(図8A)。
B.ヒスチジンリッチペプチド溶液(0.1〜10μM)について、蛍光プローブ溶液を加え、実施例4と同手法によるペルオキシラジカルに対する抗酸化活性を測定した。ヒスチジンリッチペプチドは、わずかではあるが濃度依存的に抗酸化活性を示した(図8B)。
C.ペルオキシラジカルに対する抗酸化活性(NetAUC)
ヒスチジンリッチペプチド又はHRGの蛍光強度の曲線下面積(Area Under the Curve:AUCsample)とブランクの曲線下面積(AUCblank)の差を反応開始後5分おきに60分間測定し、NetAUCを算出した。HRGはペルオキシラジカルに対して抗酸化作用があるが、ヒスチジンリッチペプチドの抗酸化活性はHRGに比べて弱かった(図8C)。ペルオキシラジカルに対するHRGの効果はヒスチジンリッチ領域だけによる作用でないことが示唆された。
(参考例1)HRGのスーパーオキシドに対する抗酸化作用
本参考例では、DetectX Superoxide Dismutase (SOD) Colorimetric Activity Kit(Arbor Assays, Ann Arbor, MI)を用いて、HRGのスーパーオキシドに対する抗酸化作用を確認した。HRGは実施例1に示す方法で作製した血漿由来HRGを用いた。スーパーオキシドアニオン(O2-)はキサンチン/キサンチンオキシダーゼ(XOD)システムにより生じ、色原体溶液を使って検出される。スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)は、O2-から酸素分子と過酸化水素への変化を触媒する金属酵素である。SODの存在によりこれらO2-濃度は減少し、色素シグナルは減少する。
仕様書に従い、0.01〜1μMのHRG溶液にキサンチンオキシダーゼと基質を加えて室温で20分インキュベーションした後、反応溶液について波長450nmでの吸光度を測定した。対照としてSODについても同様に測定した。その結果、HRGはスーパーオキサイドに対する消去活性がないことが明らかとなった(図9)。
(参考例2)HRGのカタラーゼ作用、
本参考例では、OxiSelectTM Catalase Activity Assay Kit(Cell Biolabs, San Diego, CA)を用いて、HRGについてカタラーゼ様活性を有するかを確認した。HRGは実施例1に示す方法で作製した血漿由来HRGを用いた。0.01〜1μMのHRGに既知量の過酸化水素を反応させ、次に残った過酸化水素を HRP存在下でプローブ(比色測定:DHBS+AAP、蛍光測定:ADHP (10-Acetyl-3, 7-dihydroxyphenoxazine))を37℃で30分インキュベーションし、生じた蛍光強度(Ex/Em=544nm/590nm)を測定した。対照としてカタラーゼについても同様に測定した。その結果、HRGはカタラーゼ様活性がないことが明らかとなった(図10)。
上記の結果より、HRG及びヒスチジンリッチペプチドは、ヒドロキシラジカルに対しては強い抗酸化活性を示すことが確認された。かかる強い抗酸化活性は、ヒスチジンリッチ配列を有する部位の作用によることが確認された。HRGはペルオキシラジカルに対する抗酸化活性も示した。一方、HRGはスーパーオキシドには殆ど抗酸化作用を示さなかった。
以上詳述したように、本発明のヒスチジンリッチ配列を有するペプチドは、ヒドロキシラジカルに対しては強い抗酸化活性を示すことが確認された。かかる強い抗酸化活性は、HRGのヒスチジンリッチドメインやヒスチジンリッチ配列を有する部位の作用によることが確認された。HRGはペルオキシラジカルに対する抗酸化活性も示した。一方、HRGはスーパーオキシドには殆ど抗酸化作用を示さなかった。
活性酸素に対する抗酸化剤の開発は各種試みられているものの、ヒドロキシラジカルは反応性が非常に高く、寿命が非常に短いため、ヒドロキシラジカルに対して有効に作用する薬剤の開発が進んでいなかった。本発明のヒスチジンリッチ配列を有するペプチドによれば、効果的にヒドロキシラジカルの産生を抑制することができる。

Claims (8)

  1. ヒスチジンリッチ配列を有するペプチドを有効成分とする活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
  2. ヒスチジンリッチ配列が、配列番号1に示すアミノ酸配列から選択される部分であって、少なくとも5個のアミノ酸を含み、当該5個のアミノ酸のうち2個以上のアミノ酸がヒスチジンである配列である、請求項1に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
  3. ヒスチジンリッチ配列が、以下に示す配列番号2〜8のいずれか1種又は複数種で特定されるアミノ酸配列である、請求項1又は2に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
    (配列番号2)DLHPH
    (配列番号3)KHHSH
    (配列番号4)EQHPH
    (配列番号5)GHHPH
    (配列番号6)AHHPH
    (配列番号7)EHDTH
    (配列番号8)RQHPH
  4. 有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、ヒスチジンリッチ配列を1〜20個含む、請求項2又は3に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
  5. 有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端から330〜389番目で特定されるアミノ酸配列、又は前記配列番号1に示すアミノ酸配列のN末端より330〜389で特定されるアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列、のいずれか少なくとも1種のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
  6. 有効成分としてのヒスチジンリッチ配列を有するペプチドが、配列番号1に示すアミノ酸配列、又は前記配列番号1に示すアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、付加、又は挿入されたアミノ酸配列、のいずれか少なくとも1種のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
  7. 活性酸素が、ヒドロキシラジカル及び/又はペルオキシラジカルである、請求項1〜6のいずれかに記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
  8. 生体内における過剰な活性酸素の産生抑制及び/又は消去促進するための、請求項1〜7のいずれかに記載の活性酸素の産生抑制剤及び/又は消去促進剤。
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