以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について、NMR用磁場発生装置を一例として詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
<1.第1の実施形態>
[1−1.NMR装置の説明]
まず、本発明の第1の実施形態に係るNMR用磁場発生装置が使用され得るNMR装置について説明する。NMR装置は、磁場中に配置された試料にラジオ波を照射して試料中の原子核の核スピンを共鳴させ、この共鳴時に吸収されるエネルギーをNMR信号として検出することで、試料の分子構造や物理的・化学的物性などの情報を得ることに用いられる分析装置である。
NMR装置の基本的な構成は、磁場発生器、電磁波を発生させる高周波発信器、電磁波を試料に照射し、NMR信号を検出するプローブ、電磁波の発振器やNMR信号の増幅器分光計、データ処理を行うコンピュータを備える。
ここでNMR装置の動作について簡単に説明する。NMR装置では、超電導マグネットを有する磁場発生器により試料空間内に高い均一性を有する強磁場が形成される。測定対象の試料は、この様な磁場空間に配置される。高周波発信器により発生したラジオ波をプローブから試料に照射する。プローブにより、試料中の原子核の核磁気共鳴により吸収されるラジオ波のエネルギーがNMR信号として検出される。コンピュータは、プローブから受信したNMR信号に基づいてNMRスペクトルを算出する。得られたNMRスペクトルから試料の分子構造等が解析される。
なお、NMR装置のマグネットが作る磁場強度の均一性は、磁場分布を均一化したい領域において、平均の磁場強度に対する最大磁場強度と最小磁場強度との差分の割合がppmオーダー以下であることが必要とされる。
[1−2.酸化物超電導バルク体の構成]
まず、本発明の実施形態で用いる酸化物超電導バルク体に関して説明する。本実施形態で用いる酸化物超電導バルク体は、単結晶状のREBa2Cu3Oy相(123相)中にRE2BaCuO5相(211相)等に代表される非超電導相が微細分散した組織を有するものである。ここで、「単結晶状」とは、完全な単結晶のみを指すのではなく、単結晶中に小傾角粒界等のような実用に差し支えない欠陥が存在するものも包含するものとする。123相及び211相を構成する元素の一つであるREは、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びYからなる群より1種以上の元素を含む。ただし、La、Nd、Sm、EuまたはGdのいずれかを含む123相は、1:2:3の化学量論組成から外れ、REが配置される位置(REサイト)に存在するREの一部がBaで置換されることもある。また、非超電導相である211相においても、La、Ndは、Y、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luとは幾分異なり、211相を構成する金属元素の比が非化学量論的組成となる場合があり、また、211相の結晶構造が異なる場合があることが知られている。
上述した、BaによるREの置換は、酸化物超電導バルク体の臨界温度を低下させる傾向がある。また、より酸素分圧の小さい環境で酸化物超電導バルク体を製造する場合においては、BaによるREの置換が抑制される傾向にある。
このような単結晶状の酸化物超電導バルク体は、セラミックスの一般的な製法である焼結法ではなく、以下で詳述するような、焼結温度よりも高い溶融温度以上に成形体を昇温して半溶融状態にした後、徐冷中に結晶成長させるという、溶融結晶成長法で製造される。
123相は、以下に示すような、211相及びBaとCuとの複合酸化物からなる液相との包晶反応により生成する。
211相+液相(BaとCuの複合酸化物)→123相
そして、この包晶反応によって123相が生成する温度(Tf:123相の生成温度)は、RE元素のイオン半径に関連し、イオン半径が小さいREが含有されるほど、Tfも低くなる。また、上記の包晶反応時の酸素分圧が低いほどTfは低下する。123相及び211相を構成する元素としてAgが更に含有されることで、Tfは低下する傾向にある。
単結晶状の123相中に211相が微細分散した組織は、123相が結晶成長する際、未反応の211粒が123相中に取り残されるためにできる。即ち、上記バルク材は、以下に示す反応により生成する。
211相+液相(BaとCuの複合酸化物)→123相+211相
酸化物超電導バルク体中の211相の微細分散は、臨界電流密度(Jc)の向上の観点から極めて重要である。上記のような構成元素に加えて、Pt、RhまたはCeの少なくともいずれか一つが微量に含有されることで、半溶融状態(211相と液相とからなる状態)において211相の粒成長が抑制される。その結果、酸化物超電導バルク体中の211相の粒径が約1μm程度に微細化される。Pt、RhまたはCeの少なくともいずれか一つの元素の添加量は、微細化効果が現れる量を添加することが好ましい。また、材料コストの観点から、これらの元素の添加量は、例えば、それぞれ、Pt:0.2〜2.0質量%、Rh:0.01〜0.5質量%、Ce:0.5〜2.0質量%であることが好ましい。添加されたPt、Rh及びCeは、123相中に一部固溶する。また、添加されたPt、Rh及びCeのうち、固溶できなかった残分は、BaやCuとの複合酸化物を形成し、酸化物超電導バルク体中に点在することになる。
また、酸化物超電導バルク体が超電導マグネットとして機能するためには、酸化物超電導バルク体は磁場中においても高い臨界電流密度(Jc)を有する必要がある。酸化物超電導バルク体が磁場中で高い臨界電流密度を有するには、123相は、超電導的に弱結合となる大傾角粒界を含まない単結晶状である必要がある。さらに高い臨界電流密度Jcの特性を有するためには、磁束の動きを止めるためのピンニングセンターが必要となる。このピンニングセンターとして機能するものが微細分散した211相であり、より細かく多数分散していることが好ましい。先に述べたように、Pt、RhやCeは、この211相の微細化を促進する作用を有する。また、例えば、BaCeO3、BaSiO3、BaGeO3、BaSnO3等の化合物がピンニングセンターとして機能する可能性が知られている。また、211相等の非超電導相は、劈開し易い123相中に微細分散することによって、超電導体を機械的に強化し、バルク材料として成り立たす重要な働きをも担っている。
ここで、123相中の211相の割合は、臨界電流密度(Jc)の特性及び機械強度の観点から、例えば、5〜35体積%であることが好ましい。また、酸化物超電導バルク体中には、50〜500μm程度のボイド(気泡)が5〜20体積%程度存在することが一般的である。更に、上記の元素に加えてAgを更に添加して酸化物超電導バルク体とすることも可能である。Agを更に添加した場合、酸化物超電導バルク体は、Agの添加量に応じて、粒径が1〜500μm程度のAgまたはAg化合物を0体積%超25体積%以下含むようになる。
また、結晶成長後の酸化物超電導バルク体は、酸素欠損量(x)が0.5程度となることで、半導体的な抵抗率の温度変化を示す。このような結晶成長後のバルク体を、各RE系に応じて623K〜873Kの温度で100時間程度、酸素雰囲気中においてアニールすることにより、酸素が酸化物超電導バルク体中に取り込まれ、酸素欠損量(x)は、0.2以下となる。その結果、アニール後の酸化部超電導バルク体は、良好な超電導特性を示す。このとき、超電導相中には双晶構造が生成するが、本明細書においては、このような双晶構造も含め、「単結晶状」と称する。
なお、本明細書における「超電導バルク体」とは、上述した超電導体の特性を発現するための酸化物の微細組織を有する酸化物超電導バルク体を一部または全部に含む超電導バルク体を意味する。例えば、当該「超電導バルク体」は、全体が酸化物超伝導体からなるバルク体(すなわち「バルク体」)、および酸化物超電導バルク体と非超伝導バルク体との組み合わせからなる積層体(すなわち「積層体」)を含み得る。
本明細書において「バルク体」は、原則として酸化物超電導バルク体を意味するものとして説明するが、「バルク体」と「積層体」とを特に区別する必要がない場合、これらを総称して「バルク体」と記載することもある。なお、単に「バルク体」等と記載する場合、これらの形状(リング状または円柱状)については限定されない。
[1−3.着磁システムの構成]
次に、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置が適用され得る着磁システム1について説明する。図1は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置が適用され得る着磁システム1のブロック図である。
本実施形態に係るNMR用磁場発生装置が適用される着磁システム1は、NMR用磁場発生装置10と、液体窒素供給装置20と、減圧装置30と、着磁装置40とを備える。
NMR用磁場発生装置10は、NMR分析に用いられる磁場を発生させる装置であり、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置に相当する。NMR用磁場発生装置10は、磁石ユニット100及び制御部200を備える。磁石ユニット100及び制御部200の詳細は後述するため、ここでの詳細な説明は省略する。
液体窒素供給装置20は、NMR用磁場発生装置10に接続され、NMR用磁場発生装置10の磁石ユニット100が備える酸化物超電導バルク体を冷却するための液体窒素を供給する。液体窒素供給装置20は、液体窒素を収容した容器、当該容器からNMR用磁場発生装置10に液体窒素を送液するためのポンプ、管やバルブ等を備える。液体窒素を収容する容器や液体窒素を送液するためのポンプは、従来の液体窒素の保管、送液に用いられる容器及びポンプを使用することができる。液体窒素供給装置20を構成する管、バルブ等についても同様に、液体窒素の送液に用いられる既存の管やバルブ等が適宜使用される。尚、以下の説明では、減圧バルブを減圧手段の一例、供給バルブを供給手段の一例として用いているが、バルブの代わりに逆止弁を用いてもよい。
減圧装置30は、NMR用磁場発生装置10に接続され、NMR用磁場発生装置10の磁石ユニット100を減圧する。減圧装置30としては、既存の機器が使用され、例えば真空ポンプ等が使用される。減圧装置30は、例えば、ロータリーポンプとロータリーポンプに接続されたバッファータンクとを備えることができる。ロータリーポンプとバッファータンクとを接続する管にはバルブが取り付けられてもよい。減圧装置30に備えられたロータリーポンプは、バッファータンクの内部空間を所定の圧力に減圧する。バッファータンクの圧力は、ロータリーポンプの動作と上記バルブの開閉により制御される。減圧装置30によって、後述する磁石ユニット100が備える第1保冷層1101が減圧されることで、第1保冷層1101が冷却される。
着磁装置40は、NMR用磁場発生装置10の磁石ユニット100が備える酸化物超電導バルク体を着磁する。着磁装置40は、着磁マグネット400(着磁ユニット)と着磁マグネット制御部500とを備える。
着磁マグネット400には、超電導体の線材がコイル状に巻かれた超電導コイルが用いられる。着磁マグネット400に用いられる超伝導体の線材としては、例えば、金属系低温超電導体や酸化物系超電導体、鉄系超電導体が用いられる。金属系低温超電導体としては、例えば、ニオブ―チタン合金や、ニオブ―スズ合金が用いられる。酸化物系超電導体としては、例えば、ビスマス系超電導体やRE系超電導体等が用いられてもよい。着磁マグネット400は、液体ヘリウムが充填された容器の中に配置されてもよいし、着磁マグネット400を冷却する冷凍機に設置されてもよい。着磁マグネット400の内部空間の内径は、本実施形態に係る磁石ユニット100の外槽1108の外径よりも大きい。磁石ユニット100は、着磁マグネット400の内部空間に配置される。
着磁マグネット制御部500は、着磁マグネット400を制御し着磁マグネット400による外部磁場の発生、除去を行う。具体的には、着磁マグネット制御部500は、外部電源から着磁マグネット400に電流を流すことで着磁マグネット400から外部磁場を発生させるように制御する。
[1−4.NMR用磁場発生装置10の構成]
次に、図2及び図3を参照しながら、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置について説明する。図2は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10を説明するための模式図である。図3は、NMR用磁場発生装置10の別の態様を示した模式図である。
本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10は、ボア空間1600に磁場を発生する磁石ユニット100を少なくとも備え、必要に応じて制御部200をさらに備える。尚、図2、図3に示す一点鎖線CLはボア空間1600の中心線である。
磁石ユニット100は、リング形状の酸化物超電導バルク体1100を有する。更に、磁石ユニット100は、内槽1102、この内槽1102を包含するように配置される第1中間槽1104、更にこの第1中間槽1104を包含するように配置される第2中間槽1106、及び、更にこの第2中間槽1106を包含するように配置される外槽1108を備える。内槽1102、第1中間槽1104、第2中間槽1106、及び、外槽1108は、それぞれ中空のリング形状を有する。さらに、磁石ユニット100は、第1保冷層1101、第1断熱層1103、第2保冷層1105、及び第2断熱層1107を有する。このような構造を取ることによって、第一保冷層への熱侵入が抑制され、第一保冷層の温度がより長時間安定に保たれ、バルクマグネットの温度が安定することでバルクマグネットが発生する磁場が安定する。これによりNMR用マグネットの冷却マグネットとして機能する。
酸化物超電導バルク体1100は、上述した、単結晶状の123相に211相が分散した組織を有する。酸化物超電導バルク体1100は、中空でありリング形状を有する内槽1102の内部に収容される。
内槽1102は、中空でありリング形状を有する第1中間槽1104の内部に配置される。内槽1102と第1中間槽1104との間には、第1断熱層1103が配置される。第1断熱層1103は、真空状態であり、例えば、10−5Paオーダーの真空度に保持されていることが好ましい。また、第1断熱層1103には、アルミ箔とスペーサーの積層体から構成されるスーパーインシュレーション等が挿入されることが好ましい。第1断熱層1103により、第1保冷層1101と後述する第2保冷層1105との間の熱移動が抑制される。また、第1断熱層1103にスーパーインシュレーションが挿入されることで、輻射熱を遮蔽することが可能となる。このような構造を取ることによって、第一保冷層への熱侵入が抑制され、第一保冷層の温度がより長時間安定に保たれ、これによりNMR用マグネットの冷却マグネットとして機能する。
内槽1102の内部には、酸化物超電導バルク体1100の周囲に、液体、気体または固体の少なくともいずれかの状態の窒素を収容可能に構成された第1保冷層1101が配置される。内槽1102の上部には、液体窒素を供給する供給管が接続される第1接続口と、第1保冷層1101から窒素が排出される排出管が接続される第2接続口が設けられる。この第1接続口には、例えば、後述する第1供給管1220や第3の実施形態で説明する第3供給管1230の一端が接続される。また、第2接続口には、第1保冷層1101と磁石ユニット100の外部とを連通する管が接続され、例えば、内槽1102の外部まで延設される第1減圧管1310の一端が接続されてもよい。第1保冷層1101は、1気圧(1.013×105Pa)未満の第1圧力に減圧可能に構成されている。第1保冷層1101が第1圧力未満に減圧されることで第1保冷層1101の温度は77K未満となる。その結果、酸化物超電導バルク体1100を臨界温度以下に冷却することができる。
酸化物超電導バルク体1100は、単結晶状のREBa2Cu3O7−x(REは、希土類元素)相中にRE2BaCuO5相が分散した組織を有するものであり、4T以上の強磁場でかつ均一な磁場を長時間継続的に安定して形成させるためには、液体窒素温度(77K)未満に維持することが必要である。
仮に液体ヘリウムを冷媒として用いる場合、液体ヘリウムは1気圧での沸点が、4.2Kであるため、酸化物超電導バルク体1100は、減圧せずとも十分冷却されているため、高い臨界電流密度(Jc)を有しており、計算上は、4T以上の強磁場でかつ均一な磁場を安定して形成させることは可能になる。しかし、バルク体は、銅やアルミニウム等の高電気伝導でかつ高熱伝導体との複合加工が難しいことから、4.2Kのような極低温では磁気的に不安定になりやすく、クエンチ(quench)と呼ばれる着磁した磁場の急激な減少が起きやすくなる。酸化物超電導バルク体1100に対して、液体ヘリウムを減圧し、4.2K以下に冷却することは、さらにクエンチさせやすくすることを意味するため望ましくない。
液体窒素を酸化物超電導バルク体1100の冷媒として使用する場合は、77Kは比熱が大きいため通常の着磁ではクエンチを起こすことは無く、減圧・冷却して、77Kに対し臨界電流密度(Jc)を高めて使用することが重要である。
第1中間槽1104は、中空でありリング形状を有する第2中間槽1106の内部に配置される。第1中間槽1104と第2中間槽1106との間には、液体窒素を収容可能に構成された第2保冷層1105が配置される。第2保冷層1105の圧力は大気圧となっている。第1中間槽1104には、第1中間槽1104の上面から、第1減圧管1310に沿って上部に延在する延在部分が設けられることが好ましい。当該延在部分の上端は閉じられており、延在部分の内側には第1断熱層1103が配置される。当該延在部分は、例えば、上端が閉じた円筒形状であり、延在部分の内径は第1減圧管1310の外径より大きく、当該延在部分の内側に第1減圧管1310が配置されることで二重構造が形成されることが好ましい。この二重構造が形成されることで、当該延在部分と第1減圧管1310との間には、第1断熱層1103が配置される。その結果、第2保冷層1105と第1減圧管1310との間で生じる熱の移動が抑制される。延在部分の形状は、円筒形状に限られず、上記二重構造が形成される形状であれば良い。このような構造を取ることによって、第一保冷層への熱侵入が抑制され、第一保冷層の温度がより長時間安定に保たれ、バルクマグネットの温度が安定することでバルクマグネットが発生する磁場が安定する。これによりNMR用マグネットの冷却マグネットとして機能する。
第2中間槽1106は、中空でありリング形状を有する外槽1108の内部に配置される。第2中間槽1106と外槽1108との間には、第2断熱層1107が配置される。第2断熱層1107は、真空状態であり、例えば、10−5Paオーダーの真空度に保持されていることが好ましい。また、第2断熱層1107には、アルミ箔とスペーサーの積層体から構成されるスーパーインシュレーション等が挿入されることが好ましい。第2断熱層1107により、第2保冷層1105と外槽1108の外部空間との間の熱移動が抑制される。また、第2断熱層1107にスーパーインシュレーション等が挿入されることで、輻射熱を遮蔽することが可能となる。このような構造を取ることによって、バルクマグネットの温度が安定することでバルクマグネットが発生する磁場が安定する。これによりNMR用マグネットの冷却マグネットとして機能する。
上記のように、内槽1102、第1中間槽1104、第2中間槽1106、及び外槽1108は、第1中間槽1104が内槽1102を包含し、第2中間槽1106が第1中間槽1104を包含し、外槽1108が第2中間槽1106を包含するように配置される。このような配置によれば、内槽1102の内部に配置される第1保冷層1101と、第1中間槽1104と第2中間槽1106との間に配置される第2保冷層1105とを隔離することができる。従って、後述のように、第2保冷層1105に液体窒素を供給して第1保冷層1101に収容された酸化物超電導バルク体1100の温度を低下させ、その後、第1保冷層1101に液体窒素を供給することで、熱衝撃による酸化物超電導バルク体1100の割れを抑制することができる。なお、第1断熱層1103と第2断熱層1107とは、一部連通していてもよい。
本実施形態に係る磁石ユニット100は、更に外部の液体窒素供給装置20と第2保冷層1105とを連通し第2保冷層に液体窒素を供給可能に構成された第2供給手段(第2供給管1210と、第2供給管1210に設けられた第2供給バルブ1211)と、第2保冷層1105と第1保冷層1101とを連通し第1保冷層に液体窒素を供給可能に構成された第1供給手段(第1供給管1220と、第1供給管1220に設けられた第1供給バルブ1221)と、第1保冷層1101と外部の減圧装置30とを連通し第1保冷層を減圧可能に構成された第1減圧手段(第1減圧管1310と、第1減圧管1310に設けられた第1減圧バルブ1311)と、を備える。また、磁石ユニット100は、外槽1108の外部空間と第2保冷層1105とを連通する排出管1410と、排出管1410に設けられた第1排出バルブ1411を備えてもよい。
第2供給管1210は、その一端が液体窒素供給装置20に接続され、第2供給管1210の他端は、外槽1108の内部に挿入され第2中間槽1106の上面に接続される。第2供給管1210は、真空断熱管であることが好ましい。第2供給バルブ1211は、第2供給管1210に取り付けられる。第2供給バルブ1211は、外槽1108の外部で第2供給管1210に取り付けられてもよいし、第2断熱層1107で第2供給管1210に取り付けられてもよい。第2供給バルブ1211が外槽1108の内部で第2供給管1210に取り付けられる場合は、第2供給バルブ1211は電磁弁であることが好ましい。
第1供給管1220は、その一端が第2中間槽1106の上面に接続され、第1供給管1220の他端は内槽1102の上面に接続されてもよい。第1供給バルブ1221は、第1供給管1220のうち、第2断熱層1107に配置された部分に取り付けられてもよい。また、第1供給管1220は、第1中間槽1104と内槽1102とを接続するように設けられてもよい。このとき、第1供給バルブ1221は、第1供給管1220のうち、第1断熱層1103に配置された部分に取り付けられてもよい。また、第1供給管1220の一部は、例えば図3に示すように、外槽1108の外部に配置されており、第1供給バルブ1221は、第1供給管1220のうち外槽1108の外部に配置された部分に設けられてもよい。図3に示すように、外槽1108の外部まで延設された第1供給管1220が第1保冷層1101と第2保冷層1105とを連通する場合、第1供給管1220としては、真空断熱管が用いられることが好ましく、第1供給バルブ1221としては、高断熱性のバルブが用いられることが好ましい。第1供給バルブ1221が、第1供給管1220のうち外槽1108の外部に配置された部分に設けられることで、ユーザは、手動で第1供給バルブ1221を開閉することが可能となる。
排出管1410は、その一端が第2中間槽1106の上面に接続され、他端には外槽1108の外部空間に露出される第1排出口1412を有する。排出管1410の内径は、例えば、第1減圧管1310の外径よりも大きいことが好ましく、排出管1410と第1減圧管1310とが二重構造となる部分を有することが好ましい。また、排出管1410の内径は、上記第1中間槽1104の延在部分が設けられる場合、延在部分の外径よりも大きいことが好ましい。この場合、延在部分が設けられる位置において、排出管1410と、延在部分と、第1減圧管1310とで三重構造が形成される。延在部分の上端より上方において、排出管1410と第1減圧管1310は二重構造となる。かかる二重構造となる部分において、磁石ユニット100の外部から排出管1410へ熱が侵入した場合、その侵入した熱は第1減圧管1310に移動することができる。その結果、排出管1410のうち、外槽1108の外部空間に露出する他端から第1保冷層1101への熱の侵入を抑制することができる。また、排出管1410と第1減圧管1310とが二重構造を形成していなくても、延在部分の上方に、外部から排出管1410へ侵入した熱が第1減圧管1310に移動できるような構造であればよい。このような構造を取ることによって、第一保冷層への熱侵入が抑制され、第一保冷層の温度がより長時間安定に保たれ、バルクマグネットの温度が安定することでバルクマグネットが発生する磁場が安定する。これによりNMR用マグネットの冷却マグネットとして機能する。
第1排出バルブ1411は、排出管1410のうち、外槽1108の外部に配置された部分に取り付けられる。第1排出バルブ1411は通常は開いた状態であり、第2保冷層1105の圧力は一定に保たれる。第1排出バルブ1411は、外槽1108の内部で排出管1410に取り付けられてもよい。
第1減圧管1310は、その一端が内槽1102の上面に接続され、他端は減圧装置30に接続される。第1減圧管1310は、例えば、内槽1102の上面から上方に向かって内槽1102の外部まで延設され、内槽1102の外部に配置された第1減圧管1310の一端は、減圧装置30を構成するバッファータンクに接続される。また、第1減圧管1310のうちの外槽1108の外部に配置された部分において、第1減圧管1310が分岐し、分岐した部分の端部に外槽1108の外部に露出した第2排出口1422を有してもよい。このとき、第1減圧管1310の分岐部分と第2排出口1422との間には第2排出バルブ1421が設けられることが好ましい。第2排出口1422により、第1保冷層1101に過剰に供給された液体窒素を磁石ユニット100の外部に排出することが可能である。
磁石ユニット100は、第1保冷層1101の窒素量を検出する第1窒素量センサ1510、第1保冷層1101の温度を検出する第1温度センサ1511、第2保冷層1105の窒素量を検出する第2窒素量センサ1520、第2保冷層1105の温度を検出する第2温度センサ1521を更に備えてもよい。
第1窒素量センサ1510及び第1温度センサ1511は、第1保冷層1101に設けられる。第1窒素量センサ1510としては、公知のレベルセンサを用いることができ、例えば、静電容量型レベルセンサ、半導体検知式レベルセンサ、光ファイバ式レベルセンサ等を用いることができる。また、第1窒素量センサ1510として、複数の温度センサを用いてもよい。詳細には、第1保冷層1101の高さ方向に複数の温度センサを配置し、それぞれの温度センサが設置された位置の温度を検出することで、ユーザは第1保冷層の液体窒素量を確認することができる。第1温度センサ1511としては、既存の低温用温度センサを使用することができる。
第2窒素量センサ1520及び第2温度センサ1521は、第2保冷層1105に設けられる。第2窒素量センサ1520には、第1窒素量センサ1510と同様のものを使用することができる。第2温度センサ1521には、第1温度センサ1511と同様のものを用いることができる。
制御部200は、磁石ユニット100が備える各種バルブの開閉を制御することにより、液体窒素の供給、移送、減圧を行う。具体的には、制御部200は、第1保冷層1101及び第2保冷層1105への液体窒素の供給、第1保冷層1101の減圧、第2保冷層1105の排気を行う。制御部200は、第1窒素量センサ1510及び第2窒素量センサ1520により検出される窒素量に応じて、第2供給バルブ1211及び第1供給バルブ1221を制御することが好ましい。また、制御部200は、第1温度センサ1511で検出される第1保冷層の温度に応じて、第1減圧バルブ1311を制御してもよい。また、制御部200は、第2保冷層から気化した窒素を磁石ユニット100の外部空間に排気するように第1排出バルブ1411を制御することができる。
また、磁石ユニット100は、第1保冷層1101に第1保冷層1101の圧力を検出する第1圧力センサ1512を更に備えることが好ましい。制御部200は、第1圧力センサ1512により検出される第1保冷層1101の圧力に基づいて、第1減圧バルブ1311の開閉を制御することにより、第1保冷層1101の圧力を第1圧力に維持することが可能となる。第1保冷層1101の圧力は、第1減圧バルブ1311傍の第1減圧管1310の圧力と同じとして、第1減圧管1310の圧力を検出することで制御することもできる。
また、磁石ユニット100は、第2保冷層1105に第2保冷層1105の圧力を検出する第2圧力センサ1522を更に備えることが好ましい。制御部200は、第2圧力センサ1522により検出される第2保冷層1105の圧力に基づいて、第1排出バルブ1411の開閉を制御することで、外槽1108の外部から排出管1410を通じて第2保冷層1105に大気が流入することを防止することができる。
[1−5.NMR用磁場発生装置10の動作]
(1−5−1.着磁時の動作)
ここまで、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10の構成について詳細に説明した。続いて、図4及び図5を参照しながら、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10の動作について説明する。図4は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10の動作を説明するための模式図である。図5は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10の着磁時の動作を説明するための流れ図である。
まず、磁石ユニット100は、図4に示すように、着磁マグネット400の中空空間に設置される(S101)。このとき、磁石ユニット100は、着磁マグネット400の磁場中心位置と磁石ユニット100に備えられる酸化物超電導バルク体1100の高さ方向の中央位置とが一致するように配置される。次いで、着磁マグネット400に外部電源から電流が流れ、着磁マグネット400は励磁され、着磁マグネット400の中空空間には高強度で均一度の高い外部磁場が発生する(S103)。
次いで、第2保冷層1105に液体窒素が供給される(S105)。具体的には、制御部200は、第2供給バルブ1211及び第1排出バルブ1411を開け、第1供給バルブ1221を閉めて、外部の液体窒素供給装置20から第2供給管1210を通じて第2保冷層1105に液体窒素を供給する。第2保冷層1105に設けられた第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量に基づいて、第2供給バルブ1211は制御される。第2保冷層1105の液体窒素量が所定の量に達するまで供給された後、制御部200によって、第2供給バルブ1211は閉められる。なお、液体窒素が第1排出口1412から外部へ溢れ出た後に、第2供給バルブ1211は閉められてもよい。第2保冷層1105から気化した窒素は、排出管1410を通じて外部に排気される。なお、排出管1410に液体窒素供給装置20を接続して、排出管1410を通じて第2保冷層1105に液体窒素を供給することも可能である。しかし、排出管1410から第2保冷層1105に液体窒素を供給することで、排出管1410からの窒素ガスの放出ではなく、第2供給管1210から窒素ガスの放出を行う場合、第2供給管1210に外部から熱が侵入することで第1保冷層1101へ外部の熱が侵入し、第1保冷層1101の温度が上昇する可能性があるため、第2保冷層1105からの窒素ガスの放出は、排出管1410を通じて行うことが好ましい。
続いて、第1保冷層1101に液体窒素が供給される(S107)。具体的には、制御部200は、第1排出バルブ1411を閉めて、第2供給バルブ1211及び第1供給バルブ1221を開けることにより、第2保冷層1105から第1供給管1220を通じて第1保冷層1101に液体窒素を供給する。第2供給バルブ1211及び第1供給バルブ1221は、第1保冷層1101に設けられた第1窒素量センサ1510によって検出される第1保冷層1101の液体窒素量に基づいて制御される。第1保冷層1101の液体窒素量が所定の量に達するまで液体窒素が供給された後、制御部200によって、第2供給バルブ1211及び第1供給バルブ1221は閉められる。液体窒素供給時は、過剰量の液体窒素が第1保冷層1101に供給されたときに、第2排出口1422から過剰分の液体窒素が磁石ユニット100の外部に溢れ出るようにしてもよい。また、液体窒素供給時に、減圧装置30は第1減圧管1310から取り外され、過剰量の液体窒素が第1保冷層1101に供給されたときに、当該減圧装置30が取り外されて開放された第1減圧管1310の一端から過剰分の液体窒素が磁石ユニット100の外部に溢れ出るようにしてもよい。なお、第1保冷層1101への液体窒素供給の完了動作について、減圧装置30が取り外された第1減圧管1310の一端または第2排出口1422から液体窒素が外部へ溢れ出た後に、第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221及び第1減圧バルブ1311もしくは、第2排出バルブ1421は閉められてもよい。
続いて、第1保冷層1101が所定の圧力まで減圧される(S109)。具体的には、制御部200は、第1供給バルブ1221が閉められた状態で第1減圧バルブ1311を開け、第1保冷層1101は、減圧装置30によって第1減圧管1310を通じて1気圧未満である第1圧力に減圧される。第1保冷層1101は、第1圧力に減圧されることで温度が77.3K未満となる。第1保冷層1101は、窒素の三重点である約0.123気圧まで減圧され、温度が63.1Kの固体窒素、液体窒素及び気体窒素が共存する状態、または、第1保冷層1101は、0.123気圧未満に減圧されて、固体窒素と気体窒素が共存する状態としてもよい。ただし、第1圧力が0.123気圧未満の場合、固体窒素が生じ、この固体窒素が第1減圧管1310の内側面に付着して減圧装置30による第1保冷層1101を減圧する効率が低下する可能性がある。第1保冷層1101が第1圧力まで減圧されて冷却されることで、内槽1102の内部に収容された酸化物超電導バルク体1100は、臨界温度以下に冷却される。また、制御部200は、第1保冷層1101の温度を所定の温度以下に維持するために、数回に分けて少量ずつ液体窒素が第1保冷層1101に供給されるように第1供給バルブ1221を制御することが好ましい。
酸化物超電導バルク体1100が臨界温度以下に冷却された後、着磁マグネット400が消磁され、着磁マグネット400による外部磁場が取り除かれる(S111)。これにより、酸化物超電導バルク体1100に、着磁マグネット400により発生していた高強度で均一度が高い外部磁場が複写され、酸化物超電導バルク体1100は着磁する。
着磁後、着磁マグネット400の内部空間から磁石ユニット100は取り出される(S113)。着磁後の磁石ユニット100を着磁マグネット400の内部空間から抜き取る際は、着磁マグネット400の残留磁場を除去するために、着磁マグネット400の温度を上げて、着磁マグネット400を非超伝導状態にした後に磁石ユニット100を抜き取ることが好ましい。着磁マグネット400の温度を上げる方法には、着磁マグネット400が液体ヘリウムで冷却されている場合、液体ヘリウムを抜き取る方法が有効である。また、冷凍機伝導冷却式の着磁マグネットが着磁マグネット400として用いられる場合、冷凍機の動作を、一旦停止することが有効である。
また、酸化物超電導バルク体1100を着磁する方法として、上記の方法の他に、以下の方法を用いることもできる。第1保冷層1101及び第2保冷層1105に液体窒素を入れた状態で、磁場が発生していない着磁マグネット400の内部空間に磁石ユニット100を配置する。続いて、例えば外部から第1保冷層1101の液体窒素を加圧して第1保冷層1101が90K程度に昇温した後に着磁マグネット400を励磁することで、酸化物超電導バルク体1100を常伝導の状態で着磁マグネット400による外部磁場中に配置することもできる。外部磁場中に配置された酸化物超電導バルク体1100には、着磁マグネット400を消磁することで、外部磁場が複写されて酸化物超電導バルク体1100は着磁することができる。
上記したように、磁石ユニット100への液体窒素の供給は、第2保冷層1105へ液体窒素を供給するステップS105の後に、第1保冷層1101へ液体窒素を供給するステップS107を行うことが好ましい。先に第2保冷層1105へ液体窒素が供給されることで、磁石ユニット100の温度が低下し、酸化物超電導バルク体1100の温度も低下する。酸化物超電導バルク体1100の温度が低下した後に、低温となった酸化物超電導バルク体1100が収容される第1保冷層1101へ液体窒素が供給されることで、熱衝撃による酸化物超電導バルク体1100の割れを抑制することができる。また、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10は、上記の動作により、着磁前に第1保冷層1101に液体窒素を十分量供給しておくことが可能である。そのため、NMR用磁場発生装置10の着磁においては、着磁中に第1保冷層1101に液体窒素を補給しなくとも、着磁を完了することが可能である。故に、酸化物超電導バルク体1100の着磁が効率的に行われることになる。また、着磁中の着磁マグネット400の周囲には着磁マグネット400による強磁場が発生しているが、着磁中に第1保冷層1101への液体窒素の補給が不要となることにより、液体窒素補給のために用いられ、強磁場の影響を受ける機器や道具等を着磁マグネット400付近に配置する必要がない。その結果、着磁時の作業の不具合や事故などを抑制することが可能となる。
(1−5−2.NMR分析における液体窒素補給時の動作)
NMR分析に本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10が使用されるに伴い、第1保冷層1101及び第2保冷層1105の液体窒素は減少する。ここで、図6を参照して、NMR分析におけるNMR用磁場発生装置10の液体窒素補給時の動作について説明する。図6は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10の液体窒素補給時の動作を説明するための流れ図である。減圧されている第1保冷層への窒素の供給は、直接、外部から液体窒素を供給するのではなく、第2保冷層に蓄えられ、第1保冷層への熱の侵入を抑制するサーマルアンカーの役割をしている液体窒素を第1保冷層に供給することが、冷媒の使用効率、および作業性の面から優れている。外部の液体窒素タンクから液体窒素を直接供給する場合、液体窒素は、一旦、室温であった配管を通過することになり、冷媒である程度の距離の配管を液体窒素温度に冷却する必要があるため、液体窒素が無駄に消費されることとなる。これに対し、断熱された装置内の配管を利用して、第2保冷層から第1保冷層へ、供給される場合は、第1保冷層と第2保冷層とを繋ぐ既に冷却されたわずかな長さの配管を液体窒素が通過することになるため、液体窒素の無駄な消費は、殆どなくなる。また、第2保冷層が大気圧であり、第1保冷層が減圧されているため、バルブなどの開閉を調整することによって、簡便に液体窒素が第1保冷層に供給でき作業性も優れている。このように、本発明の構造は、冷媒の使用効率および作業性からも基本的に優れた構造と言える。
まず、第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量が所定の量未満である場合、第2保冷層1105に液体窒素が供給される(S201)。具体的には、制御部200は、第2供給バルブ1211及び第1排出バルブ1411を開け、第1供給バルブ1221を閉めて、外部の液体窒素供給装置20から第2供給管1210を通じて第2保冷層1105に液体窒素を供給する。このとき、第2保冷層1105は大気圧となる。続いて、第1保冷層1101が減圧され、減圧された第1保冷層1101に液体窒素が供給される(S203)。具体的には、制御部200は、第1供給バルブ1221を閉めて、第1減圧バルブ1311を開け、外部の減圧装置30によって第1保冷層1101を減圧する。次いで、制御部200は、第2供給バルブ1211及び第1排出バルブ1411を閉めて第1供給バルブ1221を開けることにより、第2保冷層1105から第1供給管1220を通じて第1保冷層1101に液体窒素を供給する。制御部200は、第1保冷層1101の温度が所定の設定温度未満の温度を維持するように、第1温度センサ1511で検出された第1保冷層1101の温度に基づいて液体窒素を供給することができる。例えば、制御部200は、第1保冷層1101の設定温度及び第1供給バルブ1221が動作するときの温度であるバルブ動作温度を設定することができる。バルブ動作温度は、第1保冷層1101の設定温度より低い温度である。第1温度センサ1511で検出された第1保冷層1101の温度がバルブ動作温度以上となった場合、制御部200は、第1供給バルブ1221を閉める。制御部200は、減圧装置30により第1保冷層1101が減圧されて第1保冷層1101の温度がバルブ動作温度未満に低下したときに、第1供給バルブ1221を開けることができる。制御部200は、上記の動作を行うことにより、第1保冷層1101の温度を所定の設定温度範囲に維持し、第2保冷層1105から第1供給管1220を通じて第1保冷層1101に液体窒素を供給することができる。第1保冷層1101に液体窒素が十分に供給されたことが第1窒素量センサ1510によって検出された後、制御部200は、第1供給バルブ1221を閉める。その後、制御部200は、第2圧力センサ1522によって第2保冷層1105の圧力が大気圧以上となったことを確認した後、第1排出バルブ1411を開けることができる。これにより、外槽1108の外部から排出管1410を通じて第2保冷層1105に大気が流入することを防止することができる。
第1保冷層1101の液体窒素が減少する度に、上記のS201及びS203が繰り返されることで、高強度で均一度の高い磁場を長期間維持することが可能となる。したがって、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10により、液体ヘリウムやNMR分析におけるノイズの原因となる振動を発生する冷凍機を使用することなく、簡便に均一度の高い磁場が得られる。
なお、第1保冷層1101に窒素を供給する場合、第1保冷層1101の圧力を第1圧力より低い圧力である第3圧力に減圧した後、窒素を供給することが望ましい。
本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10は、第1断熱層1103と第2断熱層1107とを有する構成としているが、図7に示す変形例のように、第1断熱層と第2断熱層は省略してもよい。この場合、第2中間槽1106の外側が外槽1108として機能することになる。
このような構造を取ることによれば、断熱層による熱移動抑制効果は低減することになるものの、第1保冷層1101が第1圧力未満に減圧されることで第1保冷層1101の温度は77K未満となる。その結果、酸化物超電導バルク体1100を臨界温度以下に冷却することができる。また、熱輻射による第一保冷層への熱侵入が抑制され、第一保冷層の温度がより長時間安定に保たれ、バルクマグネットの温度が安定することでバルクマグネットが発生する磁場が安定する。これによりNMR用マグネットの冷却マグネットとして機能する。
<2.第2の実施形態>
続いて、図8を参照しながら、第2の実施形態に係るNMR用磁場発生装置10aについて説明する。図8は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10aを説明するための模式図である。なお、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10aが適用され得るNMR装置、及びNMR用磁場発生装置10aに用いられる酸化物超電導バルク体1100は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置が適用され得る着磁システム1も、第1の実施形態で説明したものと同様のものを適用することが可能であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
[2−1.NMR用磁場発生装置10a]
本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10aは、ボア空間1600に磁場を発生させる磁石ユニット100aを少なくとも備え、必要に応じて制御部200をさらに備える。
磁石ユニット100aは、酸化物超電導バルク体1100、内槽1102、第1中間槽1104、第2中間槽1106、及び外槽1108、第1保冷層1101、第1断熱層1103、第2保冷層1105、及び第2断熱層1107は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、磁石ユニット100aは、更に外部の液体窒素供給装置20と第2保冷層1105とを連通する第2供給手段(第2供給管1210と、第2供給管1210に設けられた第2供給バルブ1211)と、第2保冷層1105と第1保冷層1101とを連通する第1供給手段と、第1保冷層1101と外部の減圧装置30とを連通する第1減圧手段(第1減圧管1310と、第1減圧管1310に設けられた第1減圧バルブ1311)と、を備え、第1供給手段は減圧された液体窒素を供給可能に構成された予備冷却室1610と予備冷却室1610に液体窒素を供給する第3供給手段を備える。更に、第2排出バルブ1421を備えることが好ましい。
また、磁石ユニット100aは、外槽1108の外部空間と第2保冷層1105とを連通する排出管1410、排出管1410に設けられた第1排出バルブ1411、第1保冷層1101の窒素量を検出する第1窒素量センサ1510、第1保冷層1101の温度を検出する第1温度センサ1511、第2保冷層1105の窒素量を検出する第2窒素量センサ1520、及び第2保冷層1105の温度を検出する第2温度センサ1521を更に備えてもよい。ここで、第2供給管1210、第2供給バルブ1211、第1供給管1220、第1供給バルブ1221、第1減圧管1310、第1減圧バルブ1311、排出管1410、第1排出バルブ1411、第2排出バルブ1421、第1窒素量センサ1510、第1温度センサ1511、第2窒素量センサ1520、及び第2温度センサ1521は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
本実施形態では、予備冷却室1610は、第1供給バルブ1221を備えた第1供給管1220を介して第1保冷層1101に連通し、第3供給バルブ1231を備えた第3供給管1230を介して第2保冷層1105に連通しする。予備冷却室1610は、第1断熱層1103または第2断熱層1107に設けられることが好ましい。第1断熱層1103または第2断熱層1107に予備冷却室1610が設けられることで、磁石ユニット100aの外部空間からの予備冷却室1610への熱の流入が抑制される。予備冷却室1610には、予備冷却室1610を減圧可能に構成された第3減圧手段(外部の減圧装置と連通する第3減圧管1320と、第3減圧管に設けられた第3減圧バルブ1321)が設けられる。なお、第3減圧管1320の一端に接続される外部の減圧装置には、減圧装置30が用いられてもよいし、減圧装置30とは別の減圧装置が用いられてもよい。ここでは、減圧装置30が着磁システム1に適用されるものとして説明する。
予備冷却室1610では、予備冷却室1610内の液体窒素が冷却される。具体的には、第3減圧管1320によって連通される減圧装置30によって、予備冷却室1610が、第1保冷層の圧力である第1圧力より高く、1気圧未満の圧力である第2圧力まで減圧される。予備冷却室1610に存在する液体窒素は、予備冷却室1610の圧力に応じた温度に冷却される。
磁石ユニット100aは、予備冷却室1610の窒素量を検出する第3窒素量センサ1530、及び予備冷却室1610の温度を検出する第3温度センサ1531を更に備えることが好ましい。
第3窒素量センサ1530及び第3温度センサ1531は、予備冷却室1610に設けられる。第3窒素量センサ1530としては、第1の実施形態で説明したレベルセンサと同様のレベルセンサを用いることができる。第3温度センサ1531としては、既存の低温用温度センサを使用することができる。
また、磁石ユニット100は、予備冷却室1610に予備冷却室1610の圧力を検出する第3圧力センサ1532を更に備えることが好ましい。制御部200は、第3圧力センサ1532により検出される予備冷却室1610の圧力に基づいて、例えば、第3減圧バルブ1321を操作し、予備冷却室1610の圧力を制御する。
制御部200は、第1の実施形態で説明した制御部と同様であるが、第1供給バルブ1221及び第3減圧バルブ1321を制御する機能を更に有する。
[2−2.NMR用磁場発生装置10aの動作]
(2−2−1.着磁時の動作)
続いて、図9を参照しながら、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10aの着磁時の動作について説明する。図9は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10aの着磁時の動作を説明するための流れ図である。図9に示したS101、S103、S109〜S113は、第1の実施形態に係るNMR用磁場発生装置10の着磁時の動作と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
S103で着磁マグネット400が励磁され、着磁マグネット400の内側の空間に外部磁場が発生した後、磁石ユニット100aの第2保冷層1105及び予備冷却室1610へ液体窒素が供給される(S105a)。具体的には、制御部200は、第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221及び第1排出バルブ1411を開け、第3供給バルブ1222を閉めて、外部の液体窒素供給装置20から第2供給管1210を通じて第2保冷層1105に液体窒素を供給し、更に第2保冷層1105から第1供給管1220を通じて予備冷却室1610に液体窒素を供給する。第2供給バルブ1211は、第2保冷層1105に設けられた第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量、及び予備冷却室1610に設けられた第3窒素量センサ1530によって検出される予備冷却室1610の液体窒素量の少なくともいずれかに基づいて制御されることが好ましい。第2保冷層1105の液体窒素量及び予備冷却室1610の液体窒素量が所定の量に達するまで液体窒素が供給された後、制御部200によって、第2供給バルブ1211は閉められる。なお、液体窒素が第1排出口1412から磁石ユニット100aの外部へ溢れ出た後に、制御部200によって第2供給バルブ1211は閉められてもよい。第2保冷層1105から気化した窒素は、排出管1410を通じて外部に排気される。
続いて、予備冷却室1610から第1保冷層1101に液体窒素が供給される(S107)。具体的には、制御部200は、第3減圧バルブ1321及び第1排出バルブ1411を閉めて、第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221及び第3供給バルブ1222を開けることにより、第2保冷層1105から第1供給管1220を通じて第1保冷層1101に液体窒素を供給する。第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221及び第3供給バルブ1222は、第1保冷層1101に設けられた第1窒素量センサ1510によって検出される第1保冷層1101の液体窒素量に基づいて制御されることが好ましい。第1保冷層1101の液体窒素量が所定の量に達するまで液体窒素が供給された後、制御部200によって、第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221及び第3供給バルブ1222は閉められる。液体窒素供給時は、過剰量の液体窒素が第1保冷層1101に供給されたときに、第2排出口1422から過剰分の液体窒素が磁石ユニット100aの外部に溢れ出るようにしてもよい。また、液体窒素供給時に、減圧装置30は第1減圧管1310から取り外され、過剰量の液体窒素が第1保冷層1101に供給されたときに、当該減圧装置30が取り外されて開放された第1減圧管1310の一端から過剰分の液体窒素が磁石ユニット100aの外部に溢れ出るようにしてもよい。なお、第1保冷層1101への液体窒素供給の完了動作について、減圧装置30が取り外された第1減圧管1310の一端または第2排出口1422から液体窒素が外部へ溢れ出た後に、第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221及び第1減圧バルブ1311もしくは、第2排出バルブ1421は閉められてもよい。
(2−2−2.NMR分析における液体窒素補給時の動作)
ここまで、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10aの着磁時の動作について説明した。続いて、図10を参照しながら、NMR分析におけるNMR用磁場発生装置10aの液体窒素補給時の動作について説明する。図10は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10aの液体窒素補給時の動作を説明するための流れ図である。図10に示したS301は、第1の実施形態に係るNMR用磁場発生装置10の液体窒素供給時の動作におけるS201と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。減圧されている第1保冷層への窒素の供給は、直接、外部から液体窒素を供給するのではなく、第2保冷層に蓄えられ、第1保冷層への熱の侵入を抑制するサーマルアンカーの役割をしている液体窒素を第1保冷層に供給することが、冷媒の使用効率、および作業性の面から優れている。外部の液体窒素タンクから液体窒素を直接供給する場合、液体窒素は、一旦、室温であった配管を通過することになり、冷媒である程度の距離の配管を液体窒素温度に冷却する必要があるため、液体窒素が無駄に消費されることとなる。これに対し、断熱された装置内の配管を利用して、第2保冷層から予備冷却室1610をへて第1保冷層へ、供給される場合は、第1保冷層から第2保冷層までを繋ぐ既に冷却されたわずかな長さの配管を液体窒素が通過することになるため、液体窒素の無駄な消費は、殆どなくなる。また、第2保冷層が大気圧であり、予備冷却室で減圧・冷却されるため、バルブなどの開閉を調整することによって、予備冷却室1610をへて簡便に液体窒素が第1保冷層に供給でき作業性も優れている。このように、本発明の構造は、冷媒の使用効率および作業性からも基本的に優れた構造と言える。
また、液体窒素補給時の実施形態1との違いは、予備冷却室1610で液体窒素が第2保冷層の温度近傍に予備冷却されているため、第2保冷層の温度の変動が抑制できる点が挙げられる。
S301の後、予備冷却室1610が所定の圧力まで減圧される(S303)。具体的には、制御部200は、第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221、第3供給バルブ1222及び第1排出バルブ1411を閉め、第3減圧管1320に設けられた第3減圧バルブ1321を開ける。制御部200は、減圧装置30によって第3減圧管1320を通じて予備冷却室1610の圧力を所定の圧力以下とした後、第3減圧バルブ1321を閉める。予備冷却室1610の圧力は、予備冷却室1610に設けられた第3圧力センサ1532によって検出されることが好ましい。予備冷却室1610の圧力は、1気圧未満の第1保冷層1101の圧力である第1圧力より高く、1気圧未満である第2圧力に減圧することが好ましい。
続いて、第2保冷層1105から予備冷却室1610に液体窒素が供給される(S305)。具体的には、制御部200は、第3供給バルブ1222を開けて、第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221、第3減圧バルブ1321及び第1排出バルブ1411を閉めることにより、第2保冷層1105から第3供給管1230を通じて予備冷却室1610に液体窒素を供給する。第2保冷層1105の液体窒素は、第2保冷層1105と予備冷却室1610との圧力差を利用して、予備冷却室1610へ移送される。予備冷却室1610に設けられた第3窒素量センサ1530によって検出される予備冷却室1610の液体窒素量に基づいて、第3供給バルブ1222は制御される。
続いて、予備冷却室1610が減圧される(S307)。具体的には、制御部200は、第3減圧バルブ1321を開けて、第1供給バルブ1221及び第3供給バルブ1222を閉めることにより、減圧装置30によって第3減圧管1320を通じて予備冷却室1610を第1圧力より高く、1気圧未満である第2圧力に減圧する。予備冷却室1610の液体窒素の温度は、予備冷却室1610の液体窒素が減圧されるに伴い低下する。
続いて、予備冷却室1610から第1保冷層1101に液体窒素が供給される(S309)。具体的には、制御部200は、第3供給バルブ1222、及び第3減圧バルブ1321を閉めて第1供給バルブ1221を開けることにより、予備冷却室1610から第1供給管1220を通じて第1保冷層1101に液体窒素を供給する。予備冷却室1610の液体窒素は、第1保冷層1101と予備冷却室1610との圧力差を利用して第1保冷層1101へ移送される。第1保冷層1101に設けられた第1窒素量センサ1510によって検出される第1保冷層1101の液体窒素量に基づいて、第1供給バルブ1221は制御される。第1保冷層1101の液体窒素量が所定の量になるまで液体窒素が供給された後、制御部200によって、第1供給バルブ1221は閉められる。制御部200は、第1保冷層1101の温度を所定の温度以上とならないようにするために、第1温度センサ1511で検出された第1保冷層1101の温度に基づいて液体窒素を供給することができる。詳細には、制御部200は、第1保冷層1101の温度が所定の設定温度範囲を維持するように、第1温度センサ1511で検出された第1保冷層1101の温度に基づいて第1供給バルブ1221を制御することができる。例えば、制御部200は、第1供給バルブ1221が動作するときの温度であるバルブ動作温度を設定することができる。第1温度センサ1511で検出された第1保冷層1101の温度がバルブ動作温度以上となった場合、制御部200は、第1供給バルブ1221を閉める。制御部200は、減圧装置30により第1保冷層1101が減圧されて第1保冷層1101の温度がバルブ動作温度未満に低下したときに、第1供給バルブ1221を開けることができる。制御部200は、上記の動作を行うことにより、第1保冷層1101の温度を所定の温度未満に維持し、予備冷却室1610から第1供給管1220を通じて第1保冷層1101に液体窒素を供給することができる。第1保冷層1101に液体窒素が十分に供給された後、制御部200は、第1供給バルブ1221を閉める。
その後、制御部200は、第1保冷層1101を第1圧力まで減圧する(S311)。具体的には、上記バルブ動作温度となるときの第1保冷層1101の圧力が第1圧力よりも高い場合、制御部200は、第1減圧バルブ1311を開けて、第1供給バルブ1221を閉めることにより、減圧装置30によって第1減圧管1310を通じて第1保冷層1101を第1圧力に減圧する。また、制御部200は、第2圧力センサ1522によって第2保冷層1105の圧力が大気圧以上となったことを確認した後、第1排出バルブ1411を開ける。上記のS301〜S311が随時繰り返されることで、高強度で均一度の高い磁場を長期間維持することが可能となる。なお、第1保冷層1101に窒素を供給する場合、第1保冷層1101の圧力を第1圧力より低い圧力である第3圧力に減圧した後、液体窒素を第1保冷層1101に供給することが好ましい。第1保冷層1101の圧力を第3圧力にすることで、液体窒素が予備冷却室1610から第1保冷層1101に供給された後の圧力を第1圧力以下にすることが可能となる。その結果、液体窒素補給後に第1保冷層1101が第1圧力まで低下することを待たずにユーザは、NMR分析が可能となる。
なお、第2保冷層1105のみに液体窒素を補給する場合は、上述したS301のみが実施されればよい。
<3.第3の実施形態>
続いて、図11を参照しながら、第3の実施形態に係るNMR用磁場発生装置10bについて説明する。図11は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10bを説明するための模式図である。なお、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10bが適用され得るNMR装置、及びNMR用磁場発生装置10bに用いられる酸化物超電導バルク体1100は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置が適用され得る着磁システム1も、第1の実施形態で説明したものと同様のものを適用することが可能であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
[3−1.NMR用磁場発生装置10b]
本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10bは、ボア空間1600に磁場を発生させる磁石ユニット100bを少なくとも備え、必要に応じて制御部200をさらに備える。
磁石ユニット100bは、酸化物超電導バルク体1100、内槽1102、第1中間槽1104、第2中間槽1106、及び外槽1108、第1保冷層1101、第1断熱層1103、第2保冷層1105、及び第2断熱層1107は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、磁石ユニット100bは、更に外部の液体窒素供給装置20と第2保冷層1105とを連通する第2供給手段(第2供給管1210と、第2供給管1210に設けられた第2供給バルブ1211)と、外部の液体窒素供給装置と第1保冷層1101とを連通する第1供給手段と第1保冷層1101と外部の減圧装置30とを連通する第1減圧手段(第1減圧管1310と、第1減圧管1310に設けられた第1減圧バルブ1311)と、を備え、第1供給手段は減圧された液体窒素を供給可能に構成された予備冷却室1610と予備冷却室1610に液体窒素を供給する第3供給手段を備える。更に、第2排出バルブ1421を備えることが好ましい。また、磁石ユニット100bは、外槽1108の外部空間と第2保冷層1105とを連通する排出管1410、排出管1410に設けられた第1排出バルブ1411、第1保冷層1101の窒素量を検出する第1窒素量センサ1510、第1保冷層1101の温度を検出する第1温度センサ1511、第2保冷層1105の窒素量を検出する第2窒素量センサ1520、及び第2保冷層1105の温度を検出する第2温度センサ1521を更に備えてもよい。ここで、第2供給管1210、第2供給バルブ1211、第1減圧管1310、第1減圧バルブ1311、排出管1410、第1排出バルブ1411、第2排出バルブ1421、第1窒素量センサ1510、第1温度センサ1511、第2窒素量センサ1520、及び第2温度センサ1521は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
本実施形態では、予備冷却室1610は、第1供給バルブ1221を備えた第1供給管1220を介して第1保冷層1101に連通し、外部の液体窒素供給装置に連通する第3供給手段(第3供給管1230と、第3供給管1230に設けられる第3供給バルブ1231)および、第3減圧手段(第3減圧管1330と、第3減圧管1330に設けられる第3減圧バルブ1331)を備える。予備冷却室1610は、第1断熱層1103または第2断熱層1107に設けられることが好ましい。第1断熱層1103または第2断熱層1107に予備冷却室1610が設けられることで、磁石ユニット100aの外部空間からの予備冷却室1610への熱の流入が抑制される。
第3供給管1230は、その一端が液体窒素供給装置20に接続され、第3供給管1230の他端は、外槽1108の内部に挿入され内槽1102の上面に接続される。第3供給管1230は、真空断熱管であることが好ましい。第4供給バルブ1231は、第3供給管1230に取り付けられる。第4供給バルブ1231は、外槽1108の外部で第3供給管1230に取り付けられてもよいし、第2断熱層1107で第3供給管1230に取り付けられてもよい。第4供給バルブ1231が外槽1108の内部で第3供給管1230に取り付けられる場合は、第4供給バルブ1231は電磁弁であることが好ましい。また、外槽1108の外部の第4供給バルブ1231には、液体窒素供給装置20から後述する予備冷却室1620に液体窒素を供給する際に取り外し可能な逆止弁が用いられてもよい。逆止弁が用いられることで、窒素ガスにより予備冷却室1620の圧力が高くなったときに、予備冷却室1620の窒素ガスが排気されるため、予備冷却室1620の圧力上昇を抑制することができる。また、逆止弁が用いられることで予備冷却室1620へ水分を含む大気が流入し、その水分が凍ることでNMR用磁場発生装置を構成する配管が閉塞することを防止することができる。予備冷却室1620に液体窒素を供給する液体窒素供給装置には、液体窒素供給装置20が用いられてもよいし、別の液体窒素供給装置が用いられてもよい。ここでは、液体窒素供給装置20が着磁システム1に適用されるものとして説明する。
磁石ユニット100bの第3供給管1230において、第4供給バルブ1231より第1保冷層1101側に、第1供給バルブ1221が設けられる。また、第3供給管1230における第4供給バルブ1231と第1供給バルブ1221との間には予備冷却室1620が設けられる。予備冷却室1620は、第1断熱層1103または第2断熱層1107に設けられることが好ましい。第1断熱層1103または第2断熱層1107に予備冷却室1620が設けられることで、磁石ユニット100bの外部空間からの予備冷却室1620への熱の流入が抑制される。予備冷却室1620には、外部の減圧装置と連通する第3減圧管1330と、第3減圧管に設けられた第3減圧バルブ1331が設けられる。なお、第3減圧管1330の一端に接続される外部の減圧装置には、減圧装置30が用いられてもよいし、別の減圧装置が用いられてもよい。ここでは、減圧装置30が着磁システム1に適用されるものとして説明する。
予備冷却室1620では、予備冷却室1620内の液体窒素が冷却される。具体的には、第3減圧管1330によって接続される外部の減圧装置30によって、予備冷却室1620は、第1保冷層の圧力である第1圧力より高く、1気圧未満の圧力まで減圧される。予備冷却室1620に存在する液体窒素は、予備冷却室1620の圧力に応じた温度に冷却される。
また、第3減圧管1330のうちの予備冷却室1620と第3減圧バルブ1331との間の部分において、第3減圧管1330が分岐し、分岐した部分の端部に外槽1108の外部に露出した第3排出口1432を有してもよい。このとき、第3減圧管1330の分岐部分と第3排出口1432との間には第3排出バルブ1431が設けられることが好ましい。
磁石ユニット100bは、予備冷却室1620の窒素量を検出する第3窒素量センサ1540、及び予備冷却室1620の温度を検出する第3温度センサ1541を更に備えることが好ましい。
第3窒素量センサ1540及び第3温度センサ1541は、予備冷却室1620に設けられる。第3窒素量センサ1540としては、第1の実施形態で説明したレベルセンサと同様のレベルセンサを用いることができる。第3温度センサ1531としては、既存の低温用温度センサを使用することができる。
また、磁石ユニット100bは、予備冷却室1620に予備冷却室1620の圧力を検出する第3圧力センサ1542を更に備えることが好ましい。制御部200は、第3圧力センサ1542により検出される予備冷却室1620の圧力に基づいて、例えば、第3減圧バルブ1331を操作し、予備冷却室1620の圧力を制御することが好ましい。
制御部200は、第1の実施形態で説明した制御部と同様であるが、第4供給バルブ1231、第1供給バルブ1221、及び第3減圧バルブ1331を制御する機能を更に有する。
[3−2.NMR用磁場発生装置10bの動作]
(3−2−1.着磁時の動作)
続いて、図12を参照しながら、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10bの着磁時の動作について説明する。図12は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10bの着磁時の動作を説明するための流れ図である。図12に示すS401、S403、S413及びS415は、第1の実施形態で説明したS101、S103、S111及びS113と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
着磁マグネット400の励磁後(S403)、制御部200は、第2供給バルブ1211及び第1排出バルブ1411を開け、外部の液体窒素供給装置20から第2供給管1210を通じて第2保冷層1105に液体窒素を供給する(S405)。第2保冷層1105に設けられた第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量に基づいて、第2供給バルブ1211は制御される。第2保冷層1105の液体窒素量が所定の量になった後、制御部200によって、第2供給バルブ1211は閉められる。液体窒素が第1排出口1412から外部へ溢れ出た後に、第2供給バルブ1211及び第1排出バルブ1411は閉められてもよい。
続いて、液体窒素供給装置20から予備冷却室1620に液体窒素が供給される(S407)。具体的には、制御部200は、第4供給バルブ1231を開けて、第1供給バルブ1221及び第3減圧バルブ1331を閉めることにより、液体窒素供給装置20から第3供給管1230を通じて予備冷却室1620に液体窒素を供給する。第4供給バルブ1231は、予備冷却室1620に設けられた第3窒素量センサ1540によって検出される予備冷却室1620の液体窒素量に基づいて制御されることが好ましい。予備冷却室1620の液体窒素量が所定の量に達するまで液体窒素が供給された後、制御部200によって、第4供給バルブ1231は閉められる。過剰量の液体窒素が予備冷却室1620に供給されたときに、第3排出口1432から過剰分の液体窒素が磁石ユニット100bの外部に溢れ出るようにしてもよい。また、液体窒素供給時に、減圧装置30は第3減圧管1330から取り外され、過剰量の液体窒素が第1保冷層1101に供給されたときに、当該減圧装置30が取り外されて開放された第3減圧管1330の一端から過剰分の液体窒素が磁石ユニット100bの外部に溢れ出るようにしてもよい。なお、予備冷却室1620への液体窒素供給の完了動作について、減圧装置30が取り外された第3減圧管1330の一端または第3排出口1432から液体窒素が外部へ溢れ出た後に、第4供給バルブ1231、第1供給バルブ1221及び第3減圧バルブ1331もしくは、第3排出バルブ1431は閉められてもよい。予備冷却室1620の液体窒素量が所定の量に達するまで液体窒素が供給された後、制御部200によって、第4供給バルブ1231及び第3排出バルブ1431は閉められる。
続いて、予備冷却室1620から第1保冷層1101に液体窒素が供給される(S409)。具体的には、制御部200は、第4供給バルブ1231及び第1供給バルブ1221を開けて、第3減圧バルブ1331及び第3排出バルブ1431を閉めることにより、予備冷却室1620から第1供給管1220を通じて第1保冷層1101に予備冷却された液体窒素を供給する。第1保冷層1101に設けられた第1窒素量センサ1510によって検出される第1保冷層1101の液体窒素量に基づいて、第1供給バルブ1221は制御されることが好ましい。第1保冷層1101の液体窒素量が所定の量に達するまで液体窒素が供給された後、制御部200によって、第1供給バルブ1221は閉められる。液体窒素供給時は、過剰量の液体窒素が第1保冷層1101に供給されたときに、第2排出口1422から過剰分の液体窒素が磁石ユニット100bの外部に溢れ出るようにしてもよい。また、液体窒素供給時に、減圧装置30は第1減圧管1310から取り外され、過剰量の液体窒素が第1保冷層1101に供給されたときに、当該減圧装置30が取り外されて開放された第1減圧管1310の一端から過剰分の液体窒素が磁石ユニット100bの外部に溢れ出るようにしてもよい。なお、第1保冷層1101への液体窒素供給の完了動作について、減圧装置30が取り外された第1減圧管1310の一端または第2排出口1422から液体窒素が外部へ溢れ出た後に、第4供給バルブ1231、第1供給バルブ1221及び第1減圧バルブ1311もしくは第2排出バルブ1421は閉められてもよい。
なお、上記では、液体窒素供給装置20から供給された液体窒素を予備冷却室1620に溜めた後に、第1保冷層1101に液体窒素を供給しているが、第1保冷層1101への液体窒素の供給は上記に限られない。例えば、第2保冷層1105に液体窒素が供給された後であれば、制御部200は、第4供給バルブ1231、第1供給バルブ1221及び第1減圧バルブ1311もしくは第2排出バルブ1421を開けて、第3減圧バルブ1331及び第3排出バルブ1431を閉めることにより、液体窒素供給装置20から第3供給管1230を通じて、予備冷却室1620及び第1保冷層1101に液体窒素を供給してもよい。
先立って説明したように、第2保冷層1105へ液体窒素を供給するステップS405の後に、第1保冷層1101へ液体窒素を供給するステップS409を行うことが好ましい。先に第2保冷層1105へ液体窒素が供給されることで、磁石ユニット100の温度が低下し、酸化物超電導バルク体1100の温度も低下する。その後、低温となった酸化物超電導バルク体1100が収容される第1保冷層1101へ液体窒素が供給されることで、熱衝撃による酸化物超電導バルク体1100の割れを抑制することができる。
(3−2−2.NMR分析における液体窒素補給時の動作)
ここまで、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10bの着磁時の動作について説明した。続いて、図13を参照しながら、NMR分析におけるNMR用磁場発生装置10bの液体窒素補給時の動作について説明する。図13は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10bの液体窒素補給時の動作を説明するための流れ図である。減圧されている第1保冷層への窒素の供給は、直接、外部から液体窒素を供給するのではなく、予備冷却室1620で一旦、液体窒素が第2保冷層の温度近傍に予備冷却されているため、第2保冷層の温度の変動が抑制できる点が挙げられる。
まず、第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量が所定の量未満である場合、第2保冷層1105に液体窒素が供給される(S501)。具体的には、制御部200は、第2供給バルブ1211及び第1排出バルブ1411を開け、外部の液体窒素供給装置20から第2供給管1210を通じて第2保冷層1105に液体窒素を供給する。第2保冷層1105に設けられた第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量に基づいて、第2供給バルブ1211は制御される。第2保冷層1105の液体窒素量が所定の量に達した後、制御部200によって、第2供給バルブ1211は閉められる。液体窒素が第1排出口1412から外部へ溢れ出た後に、第2供給バルブ1211及び第1排出バルブ1411は閉められてもよい。このとき、第2保冷層1105は大気圧となる。
続いて、予備冷却室1620に液体窒素が供給される(S503)。具体的には、制御部200は、第4供給バルブ1231及び第3排出バルブ1431を開けて、第1供給バルブ1221及び第3減圧バルブ1331を閉めることにより、液体窒素供給装置20から第3供給管1230を通じて予備冷却室1620に液体窒素を供給する。予備冷却室1620に設けられた第3窒素量センサ1540によって検出される予備冷却室1620の液体窒素量に基づいて、第4供給バルブ1231は制御される。このとき、制御部200は、第3窒素量センサ1540による液体窒素量検出の代わりに、液体窒素が第3排出口1432から外部へ溢れ出たことが確認された後に、第4供給バルブ1231及び第3排出バルブ1431は閉められてもよい。また、予め減圧装置30が第3減圧管1330から取り外された状態で、制御部200は、第4供給バルブ1231及び第3減圧バルブ1331を開けて、第1供給バルブ1221及び第3排出バルブ1431を閉めることにより、液体窒素供給装置20から第3供給管1230を通じて予備冷却室1620に液体窒素を供給し、減圧装置30が取り外された第3減圧管1330の一端から外部へ液体窒素が溢れ出た後に、第4供給バルブ1231は閉められてもよい。
次いで、予備冷却室1620が減圧される(S505)。制御部200は、第3減圧バルブ1331を開けて、第4供給バルブ1231、第1供給バルブ1221、第1減圧バルブ1311、及び第3排出バルブ1431を閉めることにより、減圧装置30によって第3減圧管1330を通じて予備冷却室1620を第1圧力より高く、1気圧未満である第2圧力に減圧し、予備冷却室1620内の液体窒素を冷却する。
続いて、予備冷却室1620から第1保冷層1101に液体窒素が供給される(S507)。具体的には、制御部200は、第4供給バルブ1231、第1減圧バルブ1311、第3減圧バルブ1331及び第3排出バルブ1431を閉めて、第1供給バルブ1221を開けることにより、予備冷却室1620から第3供給管1230を通じて第1保冷層1101に液体窒素を供給する。予備冷却室1620の液体窒素は、第1保冷層1101と予備冷却室1620との圧力差を利用して第1保冷層1101へ移送される。第1保冷層1101に設けられた第1窒素量センサ1510によって検出される第1保冷層1101の液体窒素量に基づいて、第1供給バルブ1221は制御される。第1保冷層1101の液体窒素量が所定の量になるまで液体窒素が供給された後、制御部200によって、第1供給バルブ1221は閉められる。
その後、制御部200は、第1保冷層1101を第1圧力まで減圧する(S509)。具体的には、予備冷却室1620から液体窒素が供給された後の第1保冷層1101は、圧力が第1圧力より高くなっているため、制御部200は、第1減圧バルブ1311を開けて、第1供給バルブ1221を閉めることにより、減圧装置30によって第1減圧管1310を通じて第1保冷層1101を第1圧力に減圧する。また、第2圧力センサ1522によって第2保冷層1105の圧力が大気圧以上となったことを確認した後、第1排出バルブ1411を開ける。上記のS501〜S509が繰り返されることで、高強度で均一度の高い磁場を長期間維持することが可能となる。
なお、S501において、第2保冷層1105に設けられた第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量が所定の量以上である場合、第2保冷層1105に液体窒素は供給されずにS503が実施される。
本実施形態のNMR用磁場発生装置10bによれば、予備冷却室1620で予め冷却した液体窒素を第1保冷層1101に供給できるため、液体窒素量が減少した第1保冷層1101に液体窒素を供給する前に第1保冷層1101を窒素の三重点以下の圧力に減圧せずとも、第1保冷層1101の温度を低温に維持したまま液体窒素を第1保冷層1101に供給することができる。また、第1保冷層1101の温度をユーザの所望の温度以上とならないようにするために数回に分けて少量ずつ液体窒素を第1保冷層1101に補給する作業も省略することができる。なお、外部の液体窒素供給装置20から第1保冷層1101へ供給され、予備冷却室1620で冷却された液体窒素を第1保冷層1101に補給するため、第2保冷層1105の液体窒素の減少量は、気化した窒素が排出管1410から排出される分だけとなる。
<4.第4の実施形態>
続いて、図14を参照しながら、第4の実施形態に係るNMR用磁場発生装置10cについて説明する。図14は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10cを説明するための模式図である。なお、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10cが適用され得るNMR装置、及びNMR用磁場発生装置10cに用いられる酸化物超電導バルク体1100は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置が適用され得る着磁システム1も、第1の実施形態で説明したものと同様のものを適用することが可能であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
[4−1.NMR用磁場発生装置10c]
本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10cは、ボア空間1600に磁場を発生させる磁石ユニット100cを少なくとも備え、必要に応じて制御部200をさらに備える。
磁石ユニット100cは、酸化物超電導バルク体1100、内槽1102、第1中間槽1104、第2中間槽1106、及び外槽1108、第1保冷層1101、第1断熱層1103、第2保冷層1105、及び第2断熱層1107は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、磁石ユニット100cは、更に外部の液体窒素供給装置20と第2保冷層1105とを連通する第2供給手段(第2供給管1210と、第2供給管1210に設けられた第2供給バルブ1211)と、第2保冷層1105と第1保冷層1101とを連通する第1供給手段(第1供給管1220と、第1供給管1220に設けられた第1供給バルブ1221)と、第1保冷層1101と外部の減圧装置30とを連通する第1減圧手段(第1減圧管1310と、第1減圧管1310に設けられた第1減圧バルブ1311)と、を備える。さらに、第2排出バルブ1421と、を備えることが好ましい。また、磁石ユニット100cは、外槽1108の外部空間と第2保冷層1105とを連通する排出管1410と、排出管1410に設けられた第1排出バルブ1411、第1保冷層1101の窒素量を検出する第1窒素量センサ1510、第1保冷層1101の温度を検出する第1温度センサ1511、第2保冷層1105の窒素量を検出する第2窒素量センサ1520、及び第2保冷層1105の温度を検出する第2温度センサ1521を更に備えてもよい。ここで、第2供給管1210、第2供給バルブ1211、第1供給管1220、第1供給バルブ1221、第1減圧管1310、第1減圧バルブ1311排出管1410、第1排出バルブ1411、第2排出バルブ1421、第1窒素量センサ1510、第1温度センサ1511、第2窒素量センサ1520、及び第2温度センサ1521は、第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
本実施形態では、外部の減圧装置30と第2保冷層1105とを連通する第2減圧手段(第2減圧管1340と、第2減圧管1340に設けられる第2減圧バルブ1341)が備えられる。図14では、第2減圧管1340の一端は減圧装置30のバッファータンクに接続され、第2減圧管1340の他端は、外槽1108の外部の部分と接続されている。第2減圧管1340は、このような態様に限られず、第2減圧管1340の他端が第2中間槽1106の上面と接続されていてもよい。なお、第2減圧管1340の一端に接続される外部の減圧装置には、減圧装置30が用いられてもよいし、別の減圧装置が用いられてもよい。ここでは、減圧装置30が着磁システム1に適用されるものとして説明する。
第2保冷層1105は、減圧装置30によって第2減圧管1340を通じて減圧される。これにより、第2保冷層1105の液体窒素は減圧される。
制御部200は、第1の実施形態で説明した制御部と同様であるが、第2減圧バルブ1341を制御する機能を更に有する。
[4−2.NMR用磁場発生装置10cの動作]
(4−2−1.着磁時の動作)
続いて、図15を参照しながら、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10cの動作について説明する。図15は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10cの着磁時の動作を説明するための流れ図である。図15に示したS101、S103、S107〜S113は、第1の実施形態に係るNMR用磁場発生装置10の着磁時の動作と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
第2保冷層1105へ液体窒素を供給するステップ(S105a)において、制御部200は、第2供給バルブ1211、及び第1排出バルブ1411を開け、第1供給バルブ1221、及び第2減圧バルブ1341を閉めて、外部の液体窒素供給装置20から第2供給管1210を通じて第2保冷層1105に液体窒素を供給する。第2供給バルブ1211は、第2保冷層1105に設けられた第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量に基づいて制御される。なお、液体窒素が第1排出口1412から外部へ溢れ出た後に、第2供給バルブ1211は閉められてもよい。第2保冷層1105から気化した窒素は、排出管1410を通じて外部に排気される。
(4−2−2.NMR分析における液体窒素補給時の動作)
ここまで、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10cの着磁時の動作について説明した。続いて、図16を参照しながら、NMR分析におけるNMR用磁場発生装置10cの液体窒素補給時の動作について説明する。図16は、本実施形態に係るNMR用磁場発生装置10cの液体窒素補給時の動作を説明するための流れ図である。減圧されている第1保冷層への窒素の供給は、直接、外部から液体窒素を供給するのではなく、第2保冷層に蓄えられ、第1保冷層への熱の侵入を抑制するサーマルアンカーの役割をしている液体窒素を第1保冷層に供給することが、冷媒の使用効率、および作業性の面から優れている。外部の液体窒素タンクから液体窒素を直接供給する場合、液体窒素は、一旦、室温であった配管を通過することになり、冷媒である程度の距離の配管を液体窒素温度に冷却する必要があるため、液体窒素が無駄に消費されることとなる。これに対し、断熱された装置内の配管を利用して、第2保冷層から第1保冷層へ、供給される場合は、第1保冷層と第2保冷層とを繋ぐ既に冷却されたわずかな長さの配管を液体窒素が通過することになるため、液体窒素の無駄な消費は、殆どなくなる。また、第1保冷層と第2保冷層の圧力差をバルブなどの開閉を調整することによって、簡便に液体窒素が第1保冷層に供給でき作業性も優れている。このように、本発明の構造は、冷媒の使用効率および作業性からも基本的に優れた構造と言える。
第二の実施形態との違いは、第2保冷層を予備冷却室として使用する点であり、予備冷却室を設ける必要がない点である。
まず、第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量が所定の量未満である場合、第2保冷層1105に液体窒素が供給される(S601)。具体的には、制御部200は、第2供給バルブ1211及び第1排出バルブ1411を開け、外部の液体窒素供給装置20から第2供給管1210を通じて第2保冷層1105に液体窒素を供給する。第2保冷層1105に設けられた第2窒素量センサ1520によって検出される第2保冷層1105の液体窒素量に基づいて、第2供給バルブ1211は制御される。第2保冷層1105の液体窒素量が所定の量に達した後、制御部200によって、第2供給バルブ1211は閉められる。このとき、第2保冷層1105は大気圧となる。
続いて、第2保冷層1105が減圧される(S603)。具体的には、制御部200は、第2減圧バルブ1341を開けて、第2供給バルブ1211、第1供給バルブ1221及び第1排出バルブ1411を閉めることにより、減圧装置30によって第2減圧管1340を通じて第2保冷層1105を第1圧力より高く、1気圧未満である第2圧力に減圧する。
続いて、第1保冷層1101に液体窒素が供給される(S605)。具体的には、制御部200は、第2供給バルブ1211、第2減圧バルブ1341及び第1排出バルブ1411を閉めて、第1供給バルブ1221を開けることにより、第2保冷層1105から第1供給管1220を通じて第1保冷層1101に液体窒素を供給する。第2保冷層1105の液体窒素は、第1保冷層1101と第2保冷層1105との圧力差を利用して第1保冷層1101へ移送される。第1保冷層1101に設けられた第1窒素量センサ1510によって検出される第1保冷層1101の液体窒素量に基づいて、第1供給バルブ1221は制御される。
その後、制御部200は、第1保冷層1101を第1圧力まで減圧する(S607)。具体的には、第2保冷層1105から液体窒素が供給された後の第1保冷層1101の圧力は第1圧力より高くなっているため、制御部200は、第1減圧バルブ1311を開けて、第1供給バルブ1221を閉めることにより、減圧装置30によって第1減圧管1310を通じて第1保冷層1101を第1圧力に減圧する。また、制御部200は、第2圧力センサ1522によって第2保冷層1105の圧力が大気圧以上となったことを確認した後、第1排出バルブ1411を開ける。上記のS601〜S607が繰り返されることで、高強度で均一度の高い磁場を長期間維持することが可能となる。
本実施形態のNMR用磁場発生装置10cによれば、第2保冷層1105に冷却された液体窒素が存在するため、液体窒素量が減少した第1保冷層1101に液体窒素を供給する前に第1保冷層1101を窒素の三重点以下の圧力に減圧せずとも、第1保冷層1101の温度を低温に維持したまま液体窒素を第1保冷層1101に供給することができる。また、第1保冷層1101の温度をユーザの所望の温度以上とならないようにするために数回に分けて少量ずつ液体窒素を第1保冷層1101に補給する作業も省略することができる。また、第2保冷層1105の温度がより低温に維持されているため、酸化物超電導バルク体1100への外槽1108の外部からの熱の流入を抑制することが可能となる。また、着磁完了後、第1保冷層1101に窒素を供給する場合、第1保冷層1101の圧力を第1圧力より低い圧力である第3圧力に減圧した後、窒素を供給することが望ましい。
EuBa2Cu3Oy中にEu2BaCuO5が分散した組織を有する、直径約95mm、厚さ約35mmの単結晶状のEu系酸化物超電導体から、直径88.0mm、内径46.0mm、厚さ20.0mmのリング形状に切り出した。この切り出した酸化物超電導体に肉厚7.0mmのアルミ合金製の補強リングを嵌め込み、樹脂で接着した。同様に作製した補強された酸化物超電導体を7個積層し、酸化物超電導バルク体を作製した。それぞれのEu系酸化物超電導体の結晶軸であるc軸の方向は、リング形状の軸方向に合わせた。また、リング形状の酸化物超電導体の積層方向もリングの軸を合わせて積層した。
得られた酸化物超電導バルク体は、内径42mm、外径110mmの内槽の内部に収容した。磁石ユニットは、それぞれ中空のリング形状を有し、内槽、第1中間槽、第2中間槽、及び外槽と、を有する構造とした。また、内槽の内部において酸化物超電導バルク体の周囲に第1保冷層を配置し、内槽と第1中間槽との間に第1断熱層を配置し、第1中間槽と第2中間槽との間に第2保冷層を配置し、第2中間槽と外槽との間に第2断熱層を配置した。この磁石ユニットのボア空間の直径は20mmであり、酸化物超電導バルク体を着磁する着磁マグネットの磁場中心位置に対応する高さにおける外槽の外径は149mmであった。第1保冷層には窒素量センサを配置した。
また、磁石ユニットには、外部の液体窒素供給装置と第2保冷層とを連通する第2供給管と、第2供給管に第2供給バルブと、第2保冷層と前記第1保冷層とを連通する第1供給管と、第1供給管に第1供給バルブと、第1保冷層と外部の減圧装置とを連通する第1減圧管と、第1減圧管に第1減圧バルブとを設けた。また、第2保冷層と外槽の外部空間とを連通する排出管を設け、当該排出管に第1排出バルブを設けた。
この磁石ユニットと、第2供給バルブ、第1供給バルブ及び第1減圧バルブを制御する制御部とでNMR用磁場発生装置を構成した。
上記の磁石ユニットを着磁する着磁マグネットには、磁場中心部から半径10mm球内で1.0ppmの磁場均一性を有する超電導マグネットを用いた。この超電導マグネットは直径150mmの室温ボアを有する。磁石ユニットを、超電導マグネットの室温ボア中で、磁石ユニットの酸化物超電導バルク体の中心位置と、超電導マグネットが発生させる磁場の中心が一致するように配置した。その後、超電導マグネットを励磁して、5Tの磁場を発生させた。続いて、第1保冷層及び第2保冷層に液体窒素を供給した。その後、第1保冷層の液体窒素を、外部の減圧装置を用いて第1減圧管から減圧することにより、66Kに冷却した。続いて、減圧装置で第1保冷層を減圧することにより、第1保冷層の液体窒素を66Kに液体窒素温度を維持しながら、超電導マグネットによる外部磁場を0Tまで0.02T/分の速度で減磁し、最終的に消磁した。さらに、消磁後、第1保冷層を
63.2Kになるよう減圧した。このようにして酸化物超電導バルク体を着磁した後、直径150mmの室温ボア中から冷却システム容器を抜き取った。
上記の着磁後、直径20mmの磁石ユニットのボア空間の軸上での磁場分布を測定し、平均の磁場強度に対する最大磁場強度と最小磁場強度との差分の割合を算出したところ、磁場中心部から約10mmの領域で、約1ppm磁場均一度が得られていることが分かった。
次に、第1保冷層に配置した液量センサが第1保冷層の液体窒素量が補給を必要とする液量を検出した時点で、第1保冷層をさらに減圧し、第1保冷層を固体窒素が相当量存在する状況にした。その後、制御部により、第1供給バルブを開けることで、第2保冷層から第1供給管を通じて液体窒素を所定の供給速度で第1保冷層に供給した。この時、制御部により、第1排出バルブは閉めた状態で、第1保冷層の温度が64K以下になるように第1供給バルブを調整するとともに、減圧バルブを調整した。これらの操作により第1保冷層を減圧し、第1保冷層の温度を64K以下に保ちつつ、液体窒素を第1保冷層に供給することができた。供給後さらに、第1保冷層の温度が63.2Kになるよう減圧し、NMR用磁場発生装置により、ボア空間に外部磁場を発生させた。直径20mmのボア空間の軸上での磁場分布を測定したところ、磁場中心から約10mmの領域で、約1ppm磁場均一度が得られていることが分かった。以上の結果から、上記NMR用磁場発生装置は有用であることが確認できた。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、内槽1102の内周壁と外槽1108の内周壁との間には、第1中間槽1104及び第2中間槽1106が存在しない方が好ましい。図17は、本発明に係る磁石ユニットの変更例を示した模式図である。図17では、実際の寸法比に基づいた磁石ユニット100を示している。例えば、本発明に係る磁石ユニット100は、図14に示すように、内槽1102の内周壁と外槽1108の内周壁との間に、第2保冷層1105は存在せずに断熱層が存在するように構成されることが好ましい。この断熱層は、第1保冷層1101の周りに第1断熱層1103または第2断熱層1107の少なくともいずれかが配置されるように、磁石ユニット100が構成されることで、酸化物超電導バルク体1100の温度を低温に維持したまま、ボア空間1600を大きくすることが可能となる。また、上記のように磁石ユニット100が構成されることで、より内径が小さい酸化物超電導バルク体1100を使用することが可能となる。
また、上述の実施形態では、NMR用磁場発生装置について説明をしたが、本発明の磁場発生装置はNMRの用途に限定されるものではなく、例えば、NMR信号から対象物の断面の画像を得るMRI等の用途に使用することも可能であり、広くMR(磁気共鳴)を利用する装置に適用可能である。