JPWO2019220771A1 - トルク発生装置 - Google Patents

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Abstract

小型化に適し大きなせん断力を得ることができる本発明のトルク発生装置は、磁性ディスクと第1ヨーク及び第2ヨークとの間に充填された磁気粘性流体と、第1の方向に沿った方向に見たときに磁性ディスクと重なるように配置されたコイルと、第1ヨーク及び第2ヨークとともに、コイルが発生する磁界の磁路を構成する第3ヨークと、を備え、磁性ディスクは、第1ヨークに対向する面と第2ヨークに対向する面との少なくともいずれか一方にトルク増大部を有し、トルク増大部は、磁性ディスクにおいて、第1の方向に垂直な径方向としての第2の方向の外周領域に設けられ、磁気粘性流体のクラスタに対するせん断力を、外周領域よりも内側の内周領域に比べて大きくさせ、第3ヨークは第1ヨークとの間に磁気ギャップを有し、磁気ギャップは、第1の方向に沿って見たときに、磁性ディスクの外周縁よりも外側、又は磁性ディスクの外周縁と重なる位置に形成されている。

Description

本発明は、磁気粘性流体を用いて回転抵抗を変化させることができるトルク発生装置に関する。
特許文献1に記載の触覚インタフェースは、ユーザと相互作用する要素と、この要素が回転するように固定される回転シャフトと、磁気粘性タイプの流体と相互作用し、上記回転シャフトに回転するように固定される要素と、上記流体中に磁界を生成するためのシステムとを備える。上記流体と相互作用する要素は、開口部が形成され、及び/又は、レリーフの及び/又は凹型のパターンが形成され、縦軸を有する、少なくとも1つの円筒状の壁を有する。この構成において、磁界が印加された場合には、磁気粘性流体内に含まれる磁気粒子鎖が、レリーフに位置して、レリーフの変位に対する障害物を形成し、相互作用要素によって粒子鎖にせん断力が加わり、これによって、小さな体積で増大した制動力を提供する。
特許文献2に記載のブレーキ力伝達装置は、回転軸に固定された磁性体のディスクと、このディスクの上下に敷かれたMR流体層と、コイルとを備え、コイルと軸方向に並ぶ位置に1枚配置されたディスクにおいて、コイルの端面をディスクに投影した領域に、空隙と磁性体のブリッジとが設けられている。この構成によって、応答性が良く、かつ、コンパクトなMR流体ブレーキやクラッチを提供する。
特許5603856号公報 特開2011−247403号公報
しかしながら、特許文献1に記載の触覚インタフェースでは、磁気粘性流体内に含まれる磁気粒子鎖が、レリーフの変位に対する障害物を形成することで、増大した制動力を得ることができるものの、密閉チャンバ、ベル形状の要素、永久磁石、コイルなどからなる構成のため、小型化を実現することは難しかった。
特許文献2に記載のブレーキ力伝達装置では、ディスクの内周側の磁界の向きと外周側の磁界の向きとを反転させるために、コイル径に対してディスク径を大きくしているため、小型化が難しかった。
そこで本発明は、磁気粘性流体を用いたトルク発生装置であって、小型化に適し、かつ、大きなせん断力を得ることができるトルク発生装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のトルク発生装置は、回転軸を中心に回転動作可能な磁性ディスクと、回転軸と平行な第1の方向において、磁性ディスクを挟んだ両側にそれぞれ配置された、第1ヨーク及び第2ヨークと、磁性ディスクと第1ヨーク及び第2ヨークとの間に充填された磁気粘性流体と、第1の方向に沿った方向に見たときに磁性ディスクと重なるように配置されたコイルと、少なくとも磁性ディスク及びコイルの外側において、磁性ディスクに近接する領域を有し、第1ヨーク及び第2ヨークとともに、コイルが発生する磁界の磁路を構成する第3ヨークと、を備え、磁性ディスクは、第1ヨークに対向する面と第2ヨークに対向する面との少なくともいずれか一方にトルク増大部を有し、トルク増大部は、磁性ディスクにおいて、第1の方向に垂直な径方向としての第2の方向の外周領域に設けられ、磁気粘性流体のクラスタに対するせん断力を、外周領域よりも内側の内周領域に比べて大きくさせ、第3ヨークは、第1ヨークとの間に磁気ギャップを有し、磁気ギャップは、第1の方向に沿って見たときに、磁性ディスクの外周縁よりも外側、又は、磁性ディスクの外周縁と重なる位置に形成されていることを特徴としている。
これにより、磁性ディスクの外周縁を除く広い範囲において、第1ヨークと第2ヨークとの間を横断する磁界成分を主方向とする磁束を通過させることができ、この磁束の方向に基づいた方向に抵抗力(トルク)を発生させることができるため、装置を大型化することなく、かつ、トルク増大部を設けない構成と比較して大きなせん断力を得ることが可能となる。
本発明のトルク発生装置において、第1ヨークは、コイルと磁性ディスクとの間に、第1の方向に沿って見たときにコイルと磁性ディスクと重なる延在部を備えることが好ましい。
これにより、磁性ディスクにおいて、内周領域だけでなく、トルク増大部を設けた外周領域にも確実に磁力線を通過させることが可能となり、大きなせん断力の生成に資することができる。
本発明のトルク発生装置において、トルク増大部は、磁性ディスクの厚さ方向に貫通させた開口部を有することが好ましい。開口部は、第2の方向を長手方向とする長孔であるとよい。
これにより、第1ヨーク及び第2ヨークとの間に磁性ディスクの開口部を通過する磁束に応じた磁性粒子のクラスタが形成され、大きな抵抗力(トルク)を生じさせることができる。
本発明のトルク発生装置において、トルク増大部は、磁性ディスクの厚さ方向における凹凸として形成されていることが好ましい。トルク増大部は、凹凸が回転軸を中心とした同心円状に設けられた構成を備えるとよい。
これにより、磁性ディスクと第1ヨーク及び第2ヨークとの間の隙間の形状に凹凸ができ、大きな抵抗力(トルク)を生じさせることができる。
本発明のトルク発生装置において、トルク増大部では、磁性ディスクの内周領域に比べて、第1ヨーク及び第2ヨークとの間の隙間が小さいことが好ましい。第1ヨーク及び第2ヨークは、磁性ディスクの内周領域に対向する領域に、磁性ディスクとの隙間を大きくする凹部を有するとよい。
トルク増大部を設けることによって、内周領域における、第1ヨーク及び第2ヨークとの間の隙間を相対的に大きくすることができ、これにより、隙間の小さい外周領域がより一層トルク増大部として大きな抵抗力(トルク)を生じさせることができる。内周領域に対向する領域の凹部によって、初期トルクを小さく抑えることが可能となる。
本発明のトルク発生装置において、回転軸と直交する面内において、磁性ディスクの外周縁と、第3ヨークの外側面との距離が一定ではないことが好ましい。第3ヨークは平面視がほぼ四角形であるとよい。
これにより、第3ヨークの角部に対応する側壁部において広い磁路が確保でき、この磁路に沿って磁界が確実に生成される。
本発明によると、小型化に適し、かつ、大きなせん断力を得ることができるトルク発生装置を提供することができる。
(A)はトルク発生装置の基本形態を上側から見た斜視図、(B)は図1(A)のトルク発生装置を下側から見た斜視図である。 図1(A)、(B)に示すトルク発生装置を上側から見た分解斜視図である。 図1(A)、(B)に示すトルク発生装置を下側から見た分解斜視図である。 (A)、(B)は、図1(A)のIV−IV’線に沿った断面図であり、(B)は励磁コイルが発生した磁界を概念的に示す図である。 (A)、(B)は、図1(A)のV−V’線に沿った断面図であり、(B)は励磁コイルが発生した磁界を概念的に示す図である。 図4(A)の一部拡大図である。 図1(A)、(B)に示すトルク発生装置の制御系統のブロック図である。 (A)は第1実施形態における磁性ディスクの構成を示す平面図、(B)は(A)の磁性ディスクの斜視図、(C)は(A)のVIII−VIII’線における断面図、(D)は第1実施形態の変形例の構成を示す断面図である。 第1実施形態の実施例1〜5に係る磁性ディスクと比較例に係る磁性ディスクを用いた場合において、コイルへの印加電流とトルク発生装置の出力トルクとの関係を示すグラフである。 (A)は第2実施形態における磁性ディスクの構成を示す平面図、(B)は(A)の磁性ディスクの斜視図、(C)は(A)のX−X’線における断面図である。 (A)は第3実施形態における磁性ディスクの構成を示す平面図、(B)は(A)の磁性ディスクの斜視図、(C)は(A)のXI−XI’線における断面図である。 (A)は第4実施形態における磁性ディスクの構成を示す平面図、(B)は(A)の磁性ディスクの斜視図、(C)は(A)のXII−XII’線における断面図である。
<基本形態>
図1〜図7を参照しつつ、トルク発生装置の基本形態について説明する。この基本形態においては、磁性ディスク120の形状を、上面124と下面125が平坦な略円板状として説明しているが、各実施形態における具体的な形状は後述する。
図1(A)は基本形態に係るトルク発生装置10を上側から見た斜視図、(B)はトルク発生装置10を下側から見た斜視図である。図2と図3はトルク発生装置10の分解斜視図である。図2は上側から見た分解斜視図、図3は下側から見た分解斜視図である。図4(A)、(B)は、図1(A)のIV−IV’線に沿った断面図であり、(B)は励磁コイル50が発生した磁界を概念的に示す説明図である。図5(A)、(B)は図1(A)のV−V’線に沿った断面図であり、(B)は励磁コイルが発生した磁界を概念的に示す図である。図6は図4(A)の一部拡大図である。図7はトルク発生装置10の制御系統を示すブロック図である。
図1(A)から図6において、説明の便宜上、中心軸11に沿って上下方向を規定しているが、実際の使用時における方向を制限するものではない。中心軸11に沿った方向を第1の方向とし、中心軸11から、中心軸11に直交する径方向を第2の方向と称する。以下の説明において、中心軸11に沿って、上側から下側を見た状態を平面視ということがある。また、図2と図3においては、一部のネジや磁気粘性流体の表示を省略している。
図1(A)、図1(B)に示すように、トルク発生装置10は、保持部20と、磁気測定部としてのホール素子52と、操作部100とを備える。操作部100は、シャフト部110と磁性ディスク120とを含み、中心軸11(回転軸)を中心として両方向に回転動作可能に保持部20に支持されている。操作部100は、支持部材140とラジアル軸受150を介して、回転可能な状態で保持部20に支持されている(図2)。さらに、図4〜図6に示すように、トルク発生装置10内に設けた隙間80には、磁気粘性流体160が満たされている。
保持部20は、第1ヨーク30、第2ヨーク40、磁界発生部としての励磁コイル50、環状部材60、及び、上部ケースとしての第3ヨーク70を含む。第1ヨーク30、第2ヨーク40、第3ヨーク70は、それぞれ別々に加工されて形成されている。ただし、第1ヨーク30、第2ヨーク40、第3ヨーク70のいずれかが組み合わされて一体に形成されていてもよい。
図2に示すように、第1ヨーク30は、円環部31と、円環部31の上面から円環部31と同心状に上側へ延びるように一体に設けられた円筒部32とを備える。円環部31と円筒部32は、平面視において、中心軸11を中心とする円形状をなしており、その外径は、円環部31よりも円筒部32の方が小さくされている。円環部31と円筒部32の外径の違いにより、円筒部32の外周面32aの外側に段差部33が形成される。また、第1ヨーク30は、中心軸11を中心とした平面視円形状の内周面34を有する。内周面34は、中心軸11に沿って円環部31と円筒部32を貫いており、その内径は、上下方向の位置に応じて変化するように設定されている。
図4(A)に示すように、第1ヨーク30の段差部33には磁界発生部としての励磁コイル50が配設される。励磁コイル50は、内周50aが円筒部32の外周面32aに沿うような円環状をなしており、外周50bは径方向において円環部31の外周面31aよりも外側に位置する。よって、励磁コイル50は、平面視において、延在部としての円環部31に重なっている。励磁コイル50は、中心軸11の周りを回るように巻き付けられた導線を含むコイルである。励磁コイル50には接続部材51が電気的に接続され、第3ヨーク70の上部から露出した接続部材51の入力部51aに対して図示しない経路で電流が供給される。励磁コイル50に電流が供給されると磁界が発生する。
第1ヨーク30の円環部31には、その外周面31aに沿って環状部材60が固定されている。この環状部材60は円環状をなしており、合成樹脂などの非磁性材料で構成される。第1ヨーク30に固定された状態の環状部材60は、平面視において、段差部33に配設された励磁コイル50と略同一の外径の円形状を有する。図6に示すように、環状部材60の下面61は、第1ヨーク30の底面35と略同一面を形成し、この面は、中心軸11に直交する方向に沿って延びる。環状部材60の径方向の厚みは、励磁コイル50が発生した磁界が、環状部材60を通じて径方向に通じることを妨げることができる厚みとなっている。また、環状部材60の径方向の厚みは上下で変化してもよい。
図2に示すように、第2ヨーク40は、円板状をなしており、第1ヨーク30の下方に配設される。第2ヨーク40は、中心軸11に沿った上下方向に直交する上面41を有する。この上面41には、中心軸11を囲んで上方に開口する環状の溝42が設けられている。溝42の中央には第2ヨーク40を上下方向に貫通する孔部43が形成されている。図6に示すように、孔部43内には上下方向に延びる支持部材(ピボット支持部材)140が挿入されており、この支持部材140は第2ヨーク40の下面44に固定された保持具141によって第2ヨーク40に固定されている。支持部材140は、上側へ開いた凹部としての受け部140aを有し、この受け部140aでシャフト部110の先端部を回転自在に受容する。
なお、ヨーク30、40の平面形状は必ずしも円形でなくてもよい。また、ヨークの分割は、上述の第1ヨーク30と第2ヨーク40のような組み合わせでなくても良く、分割位置によっては矩形状の平面形状とすることもできる。
図6に示すように、第1ヨーク30の底面35及び環状部材60の下面61と、第2ヨーク40の上面41とは、互いに略平行とされており、底面35と上面41との間に隙間80が形成されている。
図3に示すように、第3ヨーク70は、(1)励磁コイル50、第1ヨーク30、及び、環状部材60と、(2)接続部材51及びホール素子52と、(3)ラジアル軸受150、シャフト部110、及び、磁性ディスク120とを内部に収容する空間72を有する。この空間72は、内周面71によって平面視円形状に形成されており、第2ヨーク40を配置することによって下部が閉じられる。空間72は、第3ヨーク70の上壁部74と側壁部75によって囲まれている。図1(A)、(B)に示すように、第3ヨーク70は平面視略四角形である一方、空間72は上述のように平面視円形状である。このため、側壁部75の平面視形状、すなわち、第3ヨーク70の側壁部75の外側面の平面視形状は、第3ヨーク70の角部が厚く、辺部が薄くなっている。
第2ヨーク40は、第3ヨーク70の側壁部75を径方向に貫通するネジ(不図示)によって、第3ヨーク70に固定される。これによって、第2ヨーク40の外周面45が第3ヨーク70の側壁部75に接触した状態で固定され、第2ヨーク40と第3ヨーク70とが互いに磁気的に接続される(図6参照)。なお、第2ヨーク40と第3ヨーク70との固定は、ねじ以外の手段、例えば溶接によって行うこともできる。
第1ヨーク30、第2ヨーク40、第3ヨーク70を使用することで励磁コイル50が発生する磁界を閉ループにする磁路(磁気回路)が形成できる。
図4(A)、(B)に示すように、第3ヨーク70と第1ヨーク30とは、第3ヨーク70の上壁部74を上下に貫通する複数のネジ90で互いに固定されている。これにより、第1ヨーク30の上部と第3ヨーク70の上壁部74とが接触した状態で固定され、この領域において、第1ヨーク30と第3ヨーク70が磁気的に接続される。
一方、第1ヨーク30の円環部31の外周面31aには、非磁性材料からなる環状部材60が固定されており、この環状部材60の外周面が第3ヨーク70の内周面71に接している。したがって、第1ヨーク30の円環部31と第3ヨーク70の側壁部75とは、中心軸11に直交する方向において環状部材60によって離間されており磁気ギャップGが形成される。この磁気ギャップGは、中心軸11に沿った第1の方向においては、励磁コイル50の底面から第2ヨーク40の上面41まで延びている。
また、径方向としての第2の方向においては、第1ヨーク30と第2ヨーク40との隙間80内に配置された磁性ディスク120の外周縁126と第3ヨーク70の内周面71との隙間に対応している。磁気ギャップGを設けることによって、励磁コイル50が発生した磁界の磁束が、第1ヨーク30の円環部31から第3ヨーク70の側壁部75へ、また、磁性ディスク120から第3ヨーク70の側壁部75へ、中心軸11に直交する方向に沿って通過することを規制することができる。第3ヨーク70は、磁気ギャップGによって、磁性ディスク120と励磁コイル50の外側において磁性ディスク120に近接する領域が形成されている。
以上の構成において、励磁コイル50に電流を印加すると図4(B)の矢印で概略的に示す方向の流れを有する磁界が形成される。また、励磁コイル50に対して逆向きに電流を印加すると、図4(B)とは逆向きの流れの磁界が形成される。図4(B)に示す例では、中心軸11の方向に沿って第1ヨーク30から第2ヨーク40側へ磁束が磁性ディスク120を横断し、この磁束は第2ヨーク40では中心軸11から遠ざかる方向へ進み、第3ヨーク70の側壁部75では中心軸11の方向に沿って下から上へ進む。
さらに、第3ヨーク70の上壁部74では中心軸11へ近づく方向へ進み、励磁コイル50の内側に対応する領域で、上から下へ、すなわち第1ヨーク30の円筒部32側へ進み、励磁コイル50の内側では下向きに進行し、再び磁性ディスク120を横断して第2ヨーク40に至る。
このような磁路の磁界において、磁気ギャップGが形成されているために、円環部31及び磁性ディスク120から第3ヨーク70の側壁部75に磁束が通過することは規制されている。また、第2ヨーク40と第3ヨーク70の側壁部75が磁気的に接続されているため、第2ヨーク40から側壁部75を通る磁路が確保される。さらに、上述のように、側壁部75の平面視形状は、第3ヨーク70の角部が厚く、辺部が薄くなっているため、特に角部に対応する側壁部75において広い磁路が確保でき、この磁路に沿って磁界が確実に生成される(図5(B)参照)。なお、本実施形態では第3ヨーク70が平面視略四角形であるが、磁路が確保できれば平面視円形やその他の形状であってもよい。
第3ヨーク70は、中心軸11を含む領域に略円柱形の貫通孔73を有する。貫通孔73は、第3ヨーク70を上下方向に貫通している。この貫通孔73内の空間は、第1ヨーク30の内周面34に囲まれた空間と、上下方向に連通している。
次に、操作部100の構造について説明する。
図2・図3に示すように、操作軸としてのシャフト部110は、中心軸11に沿って上下に延びる棒状材であり、上側の軸部111と、軸部111よりも下側に設けられた溝部112とを有する。溝部112は、外周面に中心軸11を中心とした螺旋状の溝が設けられている。溝部112の下面中央に設けた先端部113は下に行くほど先細となる形状を有する。
図3に示すように、磁性ディスク120は、磁性材料で構成され、上下方向に直交するように配置される円形平面を有する円板状の部材である。磁性ディスク120の円形平面の中心には、上下方向に貫通する中央孔部121が設けられ、この中央孔部121を囲む位置には、磁性ディスク120を上下に貫通する複数の貫通孔部122が設けられている。磁性ディスク120は、下方から貫通孔部122内に挿通させたネジ91の軸部をシャフト部110の溝部112内に嵌め込むことによって、シャフト部110に対して固定される。
図4(A)、(B)に示すように、シャフト部110は、軸部111がラジアル軸受150によって回転自在に支持され、溝部112の下端の先端部113が磁性ディスク120の中央孔部121を通じて支持部材(ピボット支持部材)140でピボット支持される。ラジアル軸受150は第3ヨーク70及び第1ヨーク30によって、上下方向の所定位置で支持される。溝部112の溝にはOリング116が装着されている。これにより、シャフト部110は、第1ヨーク30との密着性を維持しつつ、第1ヨーク30、第2ヨーク40、及び、第3ヨーク70に対して、中心軸11を中心として回転可能に支持される。軸部111の上部は第3ヨーク70の上方に露出されており、軸部111の露出部分には、入力操作に必要な部材をシャフト部110に結合するための結合孔部114、115が設けられている。
図4〜図6に示すように、磁性ディスク120は、第1ヨーク30と第2ヨーク40との間の隙間80において、中心軸11に直交する方向に延びるように配設されている。よって、磁性ディスク120は、中心軸11に沿った方向において、励磁コイル50と互いに重複するように位置する。これにより、磁性ディスク120は、平面視において、延在部としての円環部31に重なる。ここで、磁性ディスク120と励磁コイル50は、中心軸11に沿った方向において、少なくとも一部が重複するように位置していればよい。図6に示すように、磁性ディスク120は、中心軸11に沿った第1の方向に垂直で互いに対向しあう2つの面として、上面124と下面125を有している。磁性ディスク120の上面124と第1ヨーク30の底面35との間には隙間81が存在し、また、磁性ディスク120の下面125と第2ヨーク40の上面41との間には隙間82が存在する。さらに、磁性ディスク120の外周縁126と第3ヨーク70の側壁部75とは、磁気ギャップGによって離間している。
シャフト部110を回転操作することによって磁性ディスク120が第1ヨーク30及び第2ヨーク40に対して相対的に回転するとき、磁性ディスク120の上面124と第1ヨーク30の底面35との間の上下方向の距離は、略一定に保たれ、磁性ディスク120の下面125と第2ヨーク40の上面41との間の上下方向の距離は略一定に保たれ、さらに、磁性ディスク120の外周縁126と側壁部75の内周面71との径方向の距離も略一定に維持される。
図4〜図6に示すように、磁性ディスク120の周囲の隙間80には磁気粘性流体160が満たされている。したがって、磁性ディスク120の上面124と第1ヨーク30の底面35とに上下方向を挟まれた隙間81に磁気粘性流体160が存在し、かつ、磁性ディスク120の下面125と第2ヨーク40の上面41とに上下方向を挟まれた隙間82にも磁気粘性流体160が存在する。さらに、磁性ディスク120の外周縁126と第3ヨーク70の側壁部75とに径方向に挟まれた空間(磁気ギャップG)にも磁気粘性流体160が存在する。磁性ディスク120の周囲の隙間80は、シャフト部110、Oリング116、支持部材140、第1ヨーク30、第2ヨーク40、第3ヨーク70、及び環状部材60等で封止されている。このため、磁気粘性流体160は隙間80内に確実に保持される。
ここで、隙間80の全てが磁気粘性流体160で埋められていなくてもよい。例えば、磁気粘性流体160は、上面124側と下面125側とのいずれか一方のみに存在していてもよい。また、磁気粘性流体160は、隙間80内に注入して充填するほか、磁性ディスク120の上面124や下面125、円環部31の底面35、第2ヨーク40の上面41、環状部材60の下面61、第3ヨーク70の内周面71などに塗布することによって隙間80内に配置しても良い。
磁気粘性流体160は、磁界が印加されると粘度が変化する物質であり、例えば、非磁性の液体(溶媒)中に磁性材料からなる粒子(磁性粒子)が分散された流体である。磁気粘性流体160に含まれる磁性粒子としては、例えば、カーボンを含有した鉄系の粒子やフェライト粒子が好ましい。カーボンを含有した鉄系の粒子としては、例えば、カーボン含有量が0.15%以上であることが好ましい。磁性粒子の直径は、例えば0.5μm以上が好ましく、さらには1μm以上が好ましい。磁気粘性流体160は、磁性粒子が重力で沈殿しにくくなるように、溶媒と磁性粒子を選定することが望ましい。さらに、磁気粘性流体160は、磁性粒子の沈殿を防ぐカップリング材を含むことが望ましい。
励磁コイル50に対して電流が印加されると、上述したように図4(B)に示すような磁界が発生し、磁性ディスク120においては上下方向に沿った方向のみの磁束が横断し、磁性ディスク120の内部では、径方向に沿った磁束は生じないか生じてもその磁束密度はわずかである。この磁界により、第2ヨーク40においては径方向に沿った磁力線が生じ、第3ヨーク70の側壁部75においては、磁性ディスク120における磁力線とは逆方向で上下方向に沿った方向の磁力線が生じる。さらに、第3ヨーク70の上壁部74においては、第2ヨーク40における磁力線とは逆方向であって径方向に沿った方向の磁力線が生じる。
磁気粘性流体160においては、励磁コイル50による磁界が生じていないときには、磁性粒子は溶媒内で分散されている。したがって、操作者がシャフト部110を操作すると、保持部20は、大きな抵抗力を受けずに、操作部100に対して相対的に回転する。あるいは、励磁コイル50に通電されていない状態で、ヨーク内に残留磁束があるときは、その残留磁束の密度に応じてシャフト部110に抵抗トルクが残留する。
一方、励磁コイル50に電流を印加して磁界を発生させると、磁気粘性流体160には上下方向に沿った磁界が与えられる。この磁界により、磁気粘性流体160中で分散していた磁性粒子は磁力線に沿って集まり、上下方向に沿って並んだ磁性粒子が磁気的に互いに連結され、クラスタが形成される。この状態において、中心軸11を中心とする方向にシャフト部110を回転させようとする力を与えると、連結された磁性粒子にせん断力がはたらき、これらの磁性粒子による抵抗力(トルク)が生じる。このため、磁界を発生させていない状態と比べて操作者に抵抗力を感じさせることができる。
以上述べたように、シャフト部110から径方向外側に円板状に広がった磁性ディスク120を使用しているため、シャフト部110だけの場合に比べると広い範囲に磁気粘性流体160を配置できる。さらに、磁気粘性流体160の抵抗力の大きさは、第1ヨーク30の底面35又は第2ヨーク40の上面41に上下方向を挟まれた磁気粘性流体160の配置範囲の広さに関係する。特に、シャフト部110の操作によって磁性ディスク120を回転させたときの磁気粘性流体160による抵抗力の大きさは、その回転方向に直交する面の磁気粘性流体160の面積に関係する。よって、磁気粘性流体160の配置範囲が広くなるほど、抵抗力(トルク)の制御幅を広くすることができる。
図7は、トルク発生装置10の制御系統のブロック図である。トルク発生装置10は、上述の励磁コイル50とホール素子52のほかに制御部130をさらに備える。
図4(B)に示すように、磁気測定部としてのホール素子52は、励磁コイル50に電流を印加することによって発生する磁界の磁路に配置されている。より具体的には、ホール素子52は、第3ヨーク70の上壁部74の内部のうち、励磁コイル50の上方に配置されている。この位置への配置は、上壁部74に設けた凹部内へホール素子52を挿入することによって行い、接着によって固定する。このように、励磁コイル50が発生する磁界の磁路にホール素子52を配置することによって、この磁界による磁気を正確に測定することができ、また、励磁コイル50への電流の印加を停止した後の残留磁場も正確に測定できる。なお、ホール素子52は、励磁コイル50へ電流を印加して磁性ディスク120周辺へ磁束を導いているときの磁束の変化に比例した値を検出できる場所に配置することが好ましく、例えば、第3ヨーク70の四隅の肉厚部周辺がよい。
なお、ホール素子52は、励磁コイル50が発生する磁界の磁路上であればほかの位置に配置することもできる。また、磁気測定部としては、ホール素子に限定されず、例えば磁気抵抗効果素子を用いることもできる。
制御部130は、ホール素子52によって測定される磁界の大きさに応じて、励磁コイル50に印加する電流の大きさを制御し、これによって励磁コイル50が発生する磁界の大きさを制御する。制御部130は、例えば、中央演算処理装置と記憶装置とを含み、記憶装置に記憶されたプログラムを中央演算処理装置で実行することにより制御を実行する。ホール素子52によって測定された磁界と励磁コイル50に印加する電流との関係は、計算によって逐次算出してもよいし、予め作成した対応テーブルに基づいて指定してもよく、また、これ以外の方法によって指定しても良い。このような制御によって、残留磁場をほぼゼロとすることができ、操作者に対して安定した操作感触を与えることができる。
また、残留磁場をほぼゼロとする制御に代えて、残留磁場が略一定値となるように制御することもできる。これによっても、操作者に対して安定した操作感触を与えることが可能となる。この制御においては、残留磁束密度を一定値、例えば3mT以上に保つようにすると、励磁コイル50への電流の印加を長い時間にわたって行わなかったときに重力によって磁気粘性流体160中の磁性粒子が沈殿し、操作者が受ける感触が変化してしまうことを防ぐことができる。
ここで、ホール素子52に加えて、機械的、電磁的、光学的又はその他の方法によって、保持部20と操作部100との相対的な位置を検出する検出部を設けても良い。この検出部は、例えばロータリーエンコーダーである。また、磁気測定部を設けない構成も可能である。
<第1実施形態>
図8(A)は第1実施形態における磁性ディスク170の構成を示す平面図、(B)は(A)の磁性ディスク170の斜視図、(C)は(A)のVIII−VIII’線における断面図であって、周囲の円環部31、第2ヨーク40、及び、環状部材60も同時に示している。図8(D)は第1実施形態の変形例の構成を示す断面図であって、図8(C)に対応する位置の断面図である。図9は、第1実施形態の実施例1〜5に係る磁性ディスクと比較例に係る磁性ディスクを用いた場合において、コイルへの印加電流(単位アンペア)とトルク発生装置の出力トルク(単位mNm)との関係を示すグラフである。図9において、比較例は白抜きの四角印で示し、各実施例は黒の丸印で示している。
図8(A)、(B)に示すように、磁性ディスク170は、上述の磁性ディスク120と同様に、磁性材料で構成され、全体として、上下方向(図8(A)の紙面に垂直な方向)に直交するように配置される円形平面(上面174、下面175)を有する円板状の部材である。さらに、磁性ディスク120と同様に、円形平面の中心には、上下方向に貫通する中央孔部171が設けられ、この中央孔部171を囲む位置には、磁性ディスク170を上下に貫通する複数の貫通孔部172が設けられている。
さらに、磁性ディスク170は、その円形平面の中心から外周縁176へ向かう径方向に沿って設けられた、6つの切り欠き部173を備えている。これらの切り欠き部173は、トルク増大部として、径方向としての第2の方向の外周領域において、上記円形平面の中心に関して等角度間隔に配置されており、上下方向(磁性ディスク170の厚み方向)に貫通するように設けられている。これにより、切り欠き部173は、第2の方向を長手方向とする長孔状の開口部とされている。
切り欠き部173の形成は、磁性ディスク170の円板状部材の製造と同時に行ってもよいが、円板状部材の製造の後に、レーザー加工、エッチングその他の手段によって行っても良い。また、6つの切り欠き部173は、円形平面の径方向の長さ、及び、周方向の幅が互いに同一となるように形成されている。ここで、上記外周領域とは、磁性ディスクにおいて、径方向(第2の方向)の外側を含む領域であり、中心軸11の方向において励磁コイル50を投映した領域が含まれる。
なお、上記切り欠き部173は磁性ディスク170を上下に貫通するように設けたが、磁性ディスク170を貫通させることなく有底の凹部として設けても良い。この場合の凹部は、磁性ディスク170の上面174と下面175のいずれか一方に設けても良いし、両方に設けても良い。
また、図8(D)に示すように、第1ヨーク30の円環部31と第2ヨーク40において、磁性ディスク170の内周領域、すなわち切り欠き部173が設けられていない領域に対向する領域に、凹部30a、40aをそれぞれ設けるとよい。この凹部30a、40aは、円環部31と磁性ディスク170との隙間、及び、第2ヨーク40と磁性ディスク170との隙間を大きくするように、上下に凹設されている。このような凹部30a、40aを設けることにより、次の効果(1)、(2)を得ることができる。
(1)磁性ディスク170において、外周領域に選択的又は集中的に磁束を流しやすくなるため、磁界強度を上昇させたときにトルクを増加させやすくなる。
(2)円環部31と磁性ディスク170との隙間、及び、第2ヨーク40と磁性ディスク170との隙間が大きくなることから、磁気粘性流体に起因する粘性抵抗を低下させることができる。
なお、これらの凹部は、円環部31と第2ヨーク40の一方のみに設けても良い。
(実施例)
図9に示す実施例1〜5と比較例における切り欠き部の構成は次のとおりである。ここで、実施例1〜5と比較例で用いた磁性ディスクの円形平面の外径(外周縁の直径)は45mmで共通である。また、実施例1〜5の切り欠き部は、図8(A)〜(C)に示す切り欠き部173と同様に、磁性ディスクの径方向において、外周縁から始まり、略半分の位置まで延びている点で共通している。さらにまた、実施例2、4、5は、図8(A)〜(C)に示す切り欠き部173と同様に、6つの切り欠き部が等角度間隔に設けられている。
実施例1:磁性ディスクを上下に貫通する切り欠き部を、磁性ディスクの円形平面の中心に関して等角度間隔に4つ設けた。切り欠き部の幅(磁性ディスクの周方向の幅、以下同様)は2mmとした。
実施例2:磁性ディスクを上下に貫通する切り欠き部を、磁性ディスクの円形平面の中心に関して等角度間隔に6つ設けた。切り欠き部の幅は2mmとした。
実施例3:磁性ディスクを上下に貫通する切り欠き部を、磁性ディスクの円形平面の中心に関して等角度間隔に8つ設けた。切り欠き部の幅は2mmとした。
実施例4:磁性ディスクを上下に貫通する切り欠き部を、磁性ディスクの円形平面の中心に関して等角度間隔に6つ設けた。切り欠き部の幅は1mmとした。
実施例5:磁性ディスクを上下に貫通する切り欠き部を、磁性ディスクの円形平面の中心に関して等角度間隔に6つ設けた。切り欠き部の幅は4mmとした。
比較例:磁性ディスクを上下に貫通する切り欠き部は設けなかった。
図9において、実施例1〜5は、互いに同程度とみなせる特性を示しており、また、比較例と比べて、同じ印加電流に対して大きな出力トルクが得られたことが分かる。したがって、切り欠き部を設けることにより、設けない場合(比較例)に比べて大きな抵抗力(トルク)を生じさせることができ、ブレーキトルク性能が向上することが分かった。これは、切り欠き部173を設けることで円環部31と第2ヨーク40の間の隙間の形状に凹凸が生じたことにより、例えば、(1)中心軸11を中心として磁性ディスク170を回転させたときに生じるせん断力が、磁性ディスク170の周方向において一様でなくなり、全体としてせん断力が大きくなること、(2)切り欠き部173のある部分とない部分とで磁性粒子のクラスタの長さや密度が異なること、(3)切り欠き部173のある部分とない部分とで磁力線の方向や密度が異なること、(4)切り欠き部173が磁性ディスク170の厚さ方向に貫通している場合は、切り欠き部173を通過する磁束に応じた磁性粒子のクラスタが形成され、磁性ディスク170を回転させたときにクラスタが切断されることなどに起因すると考えられる。
<第2実施形態>
図10(A)は第2実施形態における磁性ディスク180の構成を示す平面図、(B)は(A)の磁性ディスク180の斜視図、(C)は(A)のX−X’線における断面図であって、周囲の円環部31、第2ヨーク40、及び、環状部材60も同時に示している。
図10(A)、(B)に示すように、磁性ディスク180は、上述の磁性ディスク120、170と同様に、磁性材料で構成され、全体として、上下方向(図10(A)の紙面に垂直な方向)に直交するように配置される円形平面(上面184、下面185)を有する円板状の部材である。さらに、磁性ディスク120、170と同様に、円形平面の中心には、上下方向に貫通する中央孔部181が設けられ、この中央孔部181を囲む位置には、磁性ディスク180を上下に貫通する複数の貫通孔部182が設けられている。
さらに、磁性ディスク180は、その円形平面の周方向に沿って同心円状に設けられた、3つの溝部183a、183b、183cを備えている。これらの溝部183a、183b、183cは、トルク増大部として、径方向としての第2の方向の外周領域に設けられ、第2の方向において等間隔に等幅で形成されている。溝部183a、183b、183cは、第2の方向において、外周縁186から内側へ順に配置されており、それぞれが、上面184側からと、下面185側とから有底溝状に設けられている。これにより、図10(C)に示すように、トルク増大部は、上面184及び下面185に対して複数の凹凸として形成される。溝部183a、183b、183cの形成は、磁性ディスク180の円板状部材の製造と同時に行ってもよいが、円板状部材の製造の後に、レーザー加工、エッチングその他の手段によって行っても良い。
なお、上記溝部183a、183b、183cは磁性ディスク180を上面184と下面185の両方から内側へそれぞれ凹設していたが、上面184と下面185のいずれか一方のみから凹設する構成でもよい。また、溝部の本数や幅は図10(A)、(B)、(C)に示す例に限定されない。
また、第1実施形態と同様に、第1ヨーク30の円環部31と第2ヨーク40において、磁性ディスク170の内周領域に対向する領域に凹部をそれぞれ設けると、励磁コイル50に電流を供給していない状態における抵抗力(初期トルク)を小さくすることができる。
さらにまた、第1実施形態の切り欠き部173も併せて設けることも好ましい。これにより、円環部31と第2ヨーク40の間の隙間の形状にさらに凹凸を設けることができる。
第2実施形態の構成の磁性ディスク180と、溝部183a、183b、183cを設けていない磁性ディスクとについて、図9と同様に、コイルへの印加電流に対するトルク発生装置の出力トルクを測定したところ、磁性ディスク180の方が、同じ印加電流に対して大きな出力トルクが得られたことが分かった。したがって、溝部183a、183b、183cを設けることにより、設けない場合に比べて大きな抵抗力(トルク)を生じさせることができ、ブレーキトルク性能が向上することが分かった。これは、溝部183a、183b、183cを設けることで円環部31と第2ヨーク40の間の隙間の形状に凹凸が生じたことにより、例えば、(1)中心軸11を中心として磁性ディスク180を回転させたときに生じるせん断力が、磁性ディスク180の径方向において一様でなくなり、全体としてせん断力が大きくなったこと、(2)溝部183a、183b、183cのある部分とない部分とで磁性粒子のクラスタの長さや密度が異なること、(3)溝部183a、183b、183cのある部分とない部分とで磁力線の方向や密度が異なることなどに起因すると考えられる。
<第3実施形態>
図11(A)は第3実施形態における磁性ディスク190の構成を示す平面図、(B)は(A)の磁性ディスク190の斜視図、(C)は(A)のXI−XI’線における断面図であって、周囲の円環部31、第2ヨーク40、及び、環状部材60も同時に示している。
図11(A)、(B)に示すように、磁性ディスク190は、上述の磁性ディスク120、170、180と同様に、磁性材料で構成され、全体として、上下方向(図11(A)の紙面に垂直な方向)に直交するように配置される円形平面(上面194、下面195)を有する円板状の部材である。さらに、磁性ディスク120、170、180と同様に、円形平面の中心には、上下方向に貫通する中央孔部191が設けられている。
さらに、磁性ディスク190は、その円形平面の径方向内側に設けられた凹部193を備えている。この凹部193は、径方向としての第2の方向(中心から外周縁196へ向かう方向)の内周領域において、上面194及び下面195から上下方向内側へ有底状に凹設されている。ここで、図11(A)、(B)においては、凹部193が設けられていない外周領域の上面194に斜線を付して示している。これにより、図11(C)に示すように、磁性ディスク190は、外周領域と内周領域とで凹凸が形成され、凹部193よりも厚い外側領域がトルク増大部として機能する。凹部193の形成は、磁性ディスク190の円板状部材の製造と同時に行ってもよいが、円板状部材の製造の後に、レーザー加工、エッチングその他の手段によって行っても良い。
なお、上記凹部193は磁性ディスク190を上面194と下面195の両方から内側へそれぞれ凹設していたが、上面194と下面195のいずれか一方のみから凹設する構成でもよい。また、径方向における溝部のサイズは図11(A)、(B)、(C)に示す例に限定されない。
また、第1実施形態と同様に、第1ヨーク30の円環部31と第2ヨーク40において、磁性ディスク190の内周領域に対向する領域に凹部をそれぞれ設けると、励磁コイル50に電流を供給していない状態における抵抗力(初期トルク)を小さくすることができる。
さらにまた、第1実施形態の切り欠き部173を併せて設けることも好ましい。これにより、円環部31と第2ヨーク40の間の隙間の形状にさらに凹凸を設けることができる。
第3実施形態の構成の磁性ディスク190と、凹部193を設けていない磁性ディスクとについて、図9と同様に、コイルへの印加電流に対するトルク発生装置の出力トルクを測定したところ、磁性ディスク190の方が、同じ印加電流に対して大きな出力トルクが得られたことが分かった。したがって、凹部193を設けることにより、設けない場合に比べて大きな抵抗力(トルク)を生じさせることができ、ブレーキトルク性能が向上することが分かった。これは、第1実施形態と同様の理由のほか、内周領域における第1ヨーク30及び第2ヨーク40との隙間を相対的に大きくすることができ、これにより、凹部193を設けておらず、隙間の小さい外周領域(磁界集中部(図11(A)、(B)における斜線部分))において磁束密度が高まることも起因していると考えられる。
さらに、磁性ディスク190と、凹部193を設けていない磁性ディスクとを比較すると、凹部193を設けた領域において磁性ディスク190が薄くなっており、磁性ディスク190の方が初期トルクを小さくできることが分かった。
<第4実施形態>
図12(A)は第4実施形態における磁性ディスク200の構成を示す平面図、(B)は(A)の磁性ディスク200の斜視図、(C)は(A)のXII−XII’線における断面図であって、周囲の円環部31、第2ヨーク40、及び、環状部材60も同時に示している。
第4実施形態の磁性ディスク200においては、第3実施形態の凹部193と同様に、径方向(第2の方向)の内周領域に凹部203dを設けるとともに、第2実施形態の溝部183a、183b、183cと同様に、トルク増大部として、径方向(第2の方向)の外周領域に3つの有底の溝部203a、203b、203cを等間隔に設けている。
ここで、磁性ディスク200は、上述の磁性ディスク120、170、180と同様に、磁性材料で構成され、全体として、上下方向(図12(A)の紙面に垂直な方向)に直交するように配置される円形平面(上面204、下面205)を有する円板状の部材である。この円形平面の中心には、上下方向に貫通する中央孔部201が設けられ、この中央孔部201を囲む位置には、磁性ディスク200を上下に貫通する複数の貫通孔部202が設けられている。
このような構成により、溝部203a〜203cを設けることで、設けない場合に比べて大きな抵抗力(トルク)を生じさせることができ、ブレーキトルク性能が向上する。さらに、凹部203dを設けることで初期トルクを小さくできる。すなわち、上記の構成を備えることにより、電流を印加していない状態ではトルクが小さく、電流を印加したときには印加電流に対する応答性が高く効率的なトルク発生装置となる。
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。例えば、上記の実施例ではディスク外径は45mmであったが、これに限定されず、トルク装置のディスク外径はメータサイズであってもよい。ディスク外径が大きくなってもトルク発生装置を相対的に小型化できるため、本発明に係るトルク発生装置では、装置の体積当たりのブレーキトルクを大きくすることができる。
以上のように、本発明に係るトルク発生装置は、小型化に適し、かつ、大きなせん断力を得ることができる点で有用である。
10 トルク発生装置
11 中心軸
20 保持部
30 第1ヨーク
30a 凹部
31 円環部
32 円筒部
33 段差部
34 内周面
35 底面
40 第2ヨーク
40a 凹部
41 上面
42 溝
43 孔部
50 励磁コイル(磁界発生部)
51 接続部材
52 ホール素子(磁気測定部)
60 環状部材
70 第3ヨーク
71 内周面
72 空間
73 貫通孔
74 上壁部
75 側壁部
80、81、82 隙間
100 操作部
110 シャフト部(操作軸)
111 軸部(操作軸)
112 溝部
113 先端部
114、115 結合孔部
120 磁性ディスク
121 中央孔部
122 貫通孔部
124 上面
125 下面
126 外周縁
130 制御部
140 支持部材
150 ラジアル軸受
160 磁気粘性流体
170 磁性ディスク
171 中央孔部
172 貫通孔部
173 切り欠き部(開口部)
174 上面
175 下面
176 外周縁
180 磁性ディスク
181 中央孔部
182 貫通孔部
183a、183b、183c 溝部
184 上面
185 下面
186 外周縁
190 磁性ディスク
191 中央孔部
193 凹部
194 上面
195 下面
196 外周縁
200 磁性ディスク
201 中央孔部
202 貫通孔部
203a、203b、203c 溝部
203d 凹部
204 上面
205 下面
206 外周縁
G 磁気ギャップ

Claims (10)

  1. 回転軸を中心に回転動作可能な磁性ディスクと、
    前記回転軸と平行な第1の方向において、前記磁性ディスクを挟んだ両側にそれぞれ配置された、第1ヨーク及び第2ヨークと、
    前記磁性ディスクと前記第1ヨーク及び前記第2ヨークとの間に充填された磁気粘性流体と、
    前記第1の方向に沿った方向に見たときに前記磁性ディスクと重なるように配置されたコイルと、
    少なくとも前記磁性ディスク及び前記コイルの外側において、前記磁性ディスクに近接する領域を有し、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークとともに、前記コイルが発生する磁界の磁路を構成する第3ヨークと、を備え、
    前記磁性ディスクは、前記第1ヨークに対向する面と前記第2ヨークに対向する面との少なくともいずれか一方にトルク増大部を有し、
    前記トルク増大部は、前記磁性ディスクにおいて、前記第1の方向に垂直な径方向としての第2の方向の外周領域に設けられ、前記磁気粘性流体のクラスタに対するせん断力を、前記外周領域よりも内側の内周領域に比べて大きくさせ、
    前記第3ヨークは、前記第1ヨークとの間に磁気ギャップを有し、
    前記磁気ギャップは、前記第1の方向に沿って見たときに、前記磁性ディスクの外周縁よりも外側、又は、前記磁性ディスクの外周縁と重なる位置に形成されていることを特徴とするトルク発生装置。
  2. 前記第1ヨークは、前記コイルと前記磁性ディスクとの間に、前記第1の方向に沿って見たときに前記コイルと前記磁性ディスクと重なる延在部を備える請求項1に記載のトルク発生装置。
  3. 前記トルク増大部は、前記磁性ディスクの厚さ方向に貫通させた開口部を有する請求項1又は請求項2に記載のトルク発生装置。
  4. 前記開口部は、前記第2の方向を長手方向とする長孔である請求項3に記載のトルク発生装置。
  5. 前記トルク増大部は、前記磁性ディスクの厚さ方向における凹凸として形成されている請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のトルク発生装置。
  6. 前記トルク増大部は、前記凹凸が前記回転軸を中心とした同心円状に設けられた構成を備える請求項5に記載のトルク発生装置。
  7. 前記トルク増大部においては、前記磁性ディスクの内周領域に比べて、前記第1ヨーク及び前記第2ヨークとの間の隙間が小さい請求項1又は請求項2に記載のトルク発生装置。
  8. 前記第1ヨーク及び前記第2ヨークは、前記磁性ディスクの前記内周領域に対向する領域に、前記磁性ディスクとの隙間を大きくする凹部を有する請求項7に記載のトルク発生装置。
  9. 前記回転軸と直交する面内において、前記磁性ディスクの外周縁と、前記第3ヨークの外側面との距離が一定ではない請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のトルク発生装置。
  10. 前記第3ヨークは平面視がほぼ四角形である請求項9に記載のトルク発生装置。
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