JPWO2019220522A1 - 酢酸の製造方法 - Google Patents

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Abstract

簡易な手段で製品酢酸中のギ酸濃度を低減できる方法を提供する。本発明の酢酸の製造方法では、酢酸の製造プロセスにおいて、下記(i)の操作条件を満たす工程及び下記(ii)の操作条件を満たす工程から選択される少なくとも1つの工程を有し、且つ1以上のプロセスについて下記(iii)及び下記(iv)から選択される少なくとも1つを満たす態様で酸素濃度を制御する。(i)水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が150℃を超える操作条件(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件(iii)気相中の酸素濃度を7体積%未満に制御する(iv)液相中の酸素濃度を7×10-5g/g未満に制御する

Description

本発明は、酢酸を製造する方法に関する。
酢酸の工業的製造法としてメタノール法カルボニル化プロセス(メタノール法酢酸プロセス)が知られている。このプロセスでは、例えば、反応槽でメタノールと一酸化炭素とを触媒の存在下で反応させて酢酸を生成させ、反応混合物を蒸発槽で蒸発させ、その蒸気相を脱低沸塔、続いて脱水塔で精製して酢酸が製品化されるか、あるいは脱水塔に引き続いて脱高沸塔やさらには製品塔を経由して酢酸が製品化される。
このような酢酸製造プロセスにおいて、反応槽でギ酸が副生する。ギ酸は製品酢酸の純度を低下させるため極力少ない方がよい。特許文献1及び2には、一酸化炭素と水との反応によりギ酸が生成すること、そのため反応媒体中の水濃度を低いレベルにコントロールすることにより製品酢酸中のギ酸濃度を低減できることが開示されている。しかしながら、反応媒体中の水濃度が低下すると触媒が不安定になりやすいという問題がある。
米国特許出願公開第2008/0293966号明細書 米国特許出願公開第2008/0293967号明細書
したがって、本発明の目的は、簡易な手段で製品酢酸中のギ酸濃度を低減できる方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、酢酸製造装置の局部腐食を有効に防止できる酢酸の製造方法、及び製品酢酸の着色を有効に抑制できる酢酸の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するため、ギ酸生成のメカニズムを探るべく鋭意検討した結果、水素及び二酸化炭素が存在している主に反応槽、蒸発槽、脱低沸塔では少なからずギ酸が生成していること、水素分圧及び二酸化炭素分圧が高いほどギ酸が生成すること、また温度が高いほどギ酸の生成は抑制されること、これらのことから、H2+CO2⇔HCOOHの平衡反応の存在が推定されること等の知見を得た。また、外部からプロセス内に導入される成分等の種々の要因でプロセス流中に酸素が混入し、メタノールと酸素の存在下ではホルムアルデヒドが生成し、さらに生成したホルムアルデヒドと酸素の存在下ではギ酸が生成すると推定されることの知見を得た。そこで、さらに検討を加え、ギ酸の生成を抑制するためには、低水素分圧、低二酸化炭素分圧、高温度に保ち、さらに低酸素分圧に保つことが望ましいこと、ギ酸を含むプロセス液を反応槽、蒸発槽、蒸留塔にリサイクルして、低水素分圧、低二酸化炭素分圧、高温度に保つことにより、ギ酸を分解できること、ギ酸は酢酸より沸点が低いため各蒸留塔の塔頂に濃縮することから、蒸留塔の塔頂液を反応系や当該蒸留塔よりも上流に位置する蒸留塔にリサイクルすることにより、ギ酸を分解できること等を見出した。本発明はこれらの知見に基づき、さらに検討を重ねて完成したものである。
すなわち、本発明は、酢酸の製造プロセスにおいて、下記(i)の操作条件を満たす工程及び下記(ii)の操作条件を満たす工程から選択される少なくとも1つの工程を有し、且つ1以上のプロセスについて下記(iii)及び下記(iv)から選択される少なくとも1つを満たす態様で酸素濃度を制御する酢酸の製造方法を提供する。
(i)水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が150℃を超える操作条件
(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件
(iii)気相中の酸素濃度を7体積%未満に制御する
(iv)液相中の酸素濃度を7×10-5g/g未満に制御する
上記(ii)において、水素分圧が1kPa(絶対圧)以下、且つ二酸化炭素分圧が2kPa(絶対圧)未満であってもよい。
本発明の酢酸の製造方法では、上記(i)の操作条件を満たす反応工程を有していてもよい。この場合、上記反応工程における反応混合液中の酢酸濃度が30質量%以上、ギ酸濃度が102質量ppm以下であってもよい。また、上記反応工程における反応混合液中の酢酸濃度が50〜90質量%、金属触媒濃度(金属換算)が200〜10000質量ppm、ヨウ化メチル濃度が1〜20質量%、イオン性ヨウ化物濃度が1〜25質量%、水濃度が0.1〜15質量%、酢酸メチル濃度が0.1〜30質量%、ギ酸濃度が102質量ppm以下であってもよい。
本発明の酢酸の製造方法では、上記(ii)の操作条件を満たす蒸発工程又は蒸留工程を有していてもよい。上記蒸発工程において、蒸発槽への仕込液中の酢酸濃度が50〜90質量%、金属触媒濃度(金属換算)が200〜10000質量ppm、ヨウ化メチル濃度が1〜20質量%、イオン性ヨウ化物濃度が1〜25質量%、水濃度が0.1〜15質量%、酢酸メチル濃度が0.1〜30質量%、ギ酸濃度が10000質量ppm以下であってもよい。また、上記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が30質量%以上、ギ酸濃度が5質量ppm以上であってもよい。また、上記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が40〜85質量%、ヨウ化メチル濃度が2〜50質量%、水濃度が0.2〜20質量%、酢酸メチル濃度が0.2〜50質量%、ギ酸濃度が5〜10000質量ppmであってもよい。さらに、上記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が80〜99.9質量%、ヨウ化メチル濃度が0.01〜16質量%、水濃度が0.05〜18質量%、酢酸メチル濃度が0.01〜16質量%、ギ酸濃度が5〜10000質量ppmであってもよい。また、上記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が99.1〜99.999質量%、ギ酸濃度が5〜9000質量ppmであってもよい。
上記(iii)において、上記気相中の一酸化炭素に対する酸素の割合は2体積%以下であることが好ましい。また、上記(iv)において、上記液相中の一酸化炭素に対する酸素の割合は2体積%以下であることが好ましい。
上記(iii)及び/又は上記(iv)において、酸素含有ガス、酸素含有化合物、及び酸素発生剤からなる群より選択された少なくとも1種の成分を導入し、上記(iii)における気相中の酸素濃度を1体積ppt以上、及び/又は、上記(iv)における液相中の酸素濃度を0.1×10-9g/g以上に制御することが好ましい。
上記(iii)及び/又は上記(iv)において、酸素濃度をヨウ化水素及びヨウ化メチルの総量1モルに対して0.25モル以下の濃度に制御することが好ましい。
本発明の酢酸の製造方法では、上記(iii)における気相及び/又は上記(iv)における液相が、反応工程、蒸発工程、又は蒸留工程における気相及び/又は液相であってもよい。
本発明の酢酸の製造方法では、酢酸の製造プロセスが、メタノールと一酸化炭素とを反応させて酢酸を生成させるカルボニル化反応工程、上記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程、及び上記蒸気流を蒸留に付して低沸成分に富むオーバーヘッド流と酢酸に富む第1酢酸流とに分離する脱低沸工程を有しているか、又は、これらの工程に加えて、さらに下記(a)〜(d)の少なくとも1つの工程を有していてもよい。
(a)上記第1酢酸流を蒸留して、水に富むオーバーヘッド流と、第1酢酸流よりも酢酸が富化された第2酢酸流とに分離する脱水工程
(b)上記第1若しくは第2酢酸流を蒸留して、高沸成分に富む缶出流と、蒸留に付す前の酢酸流よりも酢酸が富化された第3酢酸流とに分離する脱高沸工程
(c)上記第1若しくは第2若しくは第3酢酸流をイオン交換樹脂で処理して第4酢酸流を得る吸着除去工程
(d)上記第1若しくは第2若しくは第3若しくは第4酢酸流を蒸留して、蒸留に付す前の酢酸流よりも酢酸が富化された第5酢酸流を得る製品工程
この場合、上記カルボニル化反応工程が、上記(i)の操作条件を満たしていてもよい。また、上記蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程、及び製品工程から選択された少なくとも1つの工程が、上記(ii)の操作条件を満たしていてもよい。
本発明の酢酸の製造方法では、上記(i)の操作条件を満たす工程又は上記(ii)の操作条件を満たす工程における滞留時間は、1分以上であることが好ましい。
本発明の酢酸の製造方法では、上記カルボニル化反応工程、蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程、及び製品工程から選択された少なくとも1つの工程における気相及び/又は液相が、上記(iii)における気相及び/又は上記(iv)における液相であることが好ましい。
本発明の酢酸の製造方法では、ギ酸濃度が10質量ppm以上のプロセス液を、水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たす工程にリサイクルしてもよい。
本発明の酢酸の製造方法では、酢酸の製造プロセスが少なくとも1つの蒸留工程を有しており、当該少なくとも1つの蒸留工程における蒸留塔の塔頂液を上記(i)の操作条件を満たす工程及び/又は上記(ii)の操作条件を満たす工程にリサイクルしてもよい。この場合、上記蒸留塔の塔頂液のリサイクル先が反応工程及び/又は当該蒸留塔に係る蒸留工程よりも上流に位置する蒸発工程若しくは蒸留工程であってもよい。
本発明によれば、特定の操作条件を満たす工程を有するので、ギ酸の生成を抑制したり、生成したギ酸を効率よく分解できる。そのため、製品酢酸中のギ酸濃度を簡易に低減できる。
本発明の一実施形態を示す酢酸製造フロー図である。 アセトアルデヒド分離除去システムの一例を示す概略フロー図である。 アセトアルデヒド分離除去システムの他の例を示す概略フロー図である。 アセトアルデヒド分離除去システムのさらに他の例を示す概略フロー図である。 アセトアルデヒド分離除去システムのさらに他の例を示す概略フロー図である。
本発明の酢酸の製造方法では、酢酸の製造プロセスにおいて、下記(i)の操作条件を満たす工程及び下記(ii)の操作条件を満たす工程から選択される少なくとも1つの工程を有し、且つ1以上のプロセスについて下記(iii)及び下記(iv)から選択される少なくとも1つを満たす態様で酸素濃度を制御する。
(i)水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が150℃を超える操作条件
(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件
(iii)気相中の酸素濃度を7体積%未満に制御する
(iv)液相中の酸素濃度を7×10-5g/g未満に制御する
なお、上記(i)の操作条件を満たす工程における上記(i)の操作条件は、連続運転により酢酸を製造する方法においては連続運転中における操作条件であり、例えばプロセスの条件が変動することがある場合は操作条件がほぼ変動しなくなり安定した状態における操作条件である。上記(ii)を満たす操作条件、上記(iii)を満たす操作条件、上記(iv)を満たす操作条件についても同様である。
上記(i)又は(ii)の操作条件を満たす工程では、ギ酸の生成が効果的に抑制されるとともに、当該工程への供給液中のギ酸が効率よく分解される。これは、H2+CO2 ⇔ HCOOHの平衡反応が存在し、上記操作条件ではこの平衡が左にシフトするためと推測される。上記操作条件を満たす工程は、反応工程、後述の分離工程に含まれる各工程(例えば、蒸発工程、蒸留工程など)、分離工程に含まれない工程のいずれであってもよい。なお、本明細書において「蒸留工程」は、酢酸を蒸留する工程を意味し、例えば、後述の、脱低沸工程、脱水工程、脱低沸脱水工程、脱高沸工程、製品工程などが挙げられる。
なお、本明細書において、「水素分圧」、「二酸化炭素分圧」は、当該工程で用いられる装置又は設備(反応槽、蒸発槽、蒸留塔など)の気相部における当該成分の分圧を意味する。蒸留塔においては、少なくとも1つの段(例えば、缶底段、仕込段、又は最上段)の気相部での分圧が上記範囲にあればよいが、仕込段から最上段の間の各段の気相部の分圧が上記範囲にあることが好ましく、缶底段から最上段の間の各段の気相部の分圧が上記範囲にあることがさらに好ましい。また、「操作温度」とは、当該工程で用いられる装置又は設備(反応器、蒸発器、蒸留塔など)の液相部又は気相部の温度を意味する。蒸留塔においては、少なくとも1つの段(例えば、缶底段、仕込段、又は最上段)の液相部又は気相部の温度が上記範囲にあればよいが、仕込段から最上段の間の各段の液相部又は気相部の温度が上記範囲にあることが好ましく、缶底段から最上段の間の各段の液相部又は気相部の温度が上記範囲にあることがさらに好ましい。
上記(i)において、水素分圧(絶対圧)は、500kPa未満であればよいが、好ましくは400kPa以下、より好ましくは300kPa以下、さらに好ましくは200kPa以下、特に好ましくは150kPa以下である。水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、水素により触媒活性を高める観点から、水素分圧(絶対圧)を1kPa超(あるいは5kPa超)としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)は、70kPa未満であればよいが、好ましくは60kPa以下、より好ましくは50kPa以下、さらに好ましくは40kPa以下、特に好ましくは30kPa以下である。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaである。なお、二酸化炭素、水素は、メタノールカルボニル化反応の原料として用いられる一酸化炭素中に存在し、また、水性ガスシフト反応により反応槽中で発生するため、この原料一酸化炭素中の二酸化炭素、水素分圧を極度に低下させたものを用いることは経済的に劣る。よって、二酸化炭素分圧(絶対値)の下限は、2kPa(あるいは20kPa)であってもよい。操作温度は、150℃を超える温度であればよいが、例えば160℃超、好ましくは175℃超、より好ましくは178℃以上、さらに好ましくは181℃以上、特に好ましくは184℃以上である。操作温度の上限は、例えば250℃、好ましくは230℃、より好ましくは200℃である。
上記(ii)において、水素分圧(絶対圧)は、5kPa以下であればよいが、好ましくは4kPa以下、より好ましくは3kPa以下、さらに好ましくは2kPa以下、特に好ましくは1kPa以下である。水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、反応混合物中に混入することのある水素を完全に除去することは経済的に劣るため、0.0001kPa超としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)は、20kPa未満であればよいが、好ましくは18kPa以下、より好ましくは16kPa以下、さらに好ましくは14kPa以下、特に好ましくは12kPa以下である。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、反応混合物中に混入することのある二酸化炭素を完全に除去することは経済的に劣るため、0.0001kPa超としてもよい。操作温度は、100℃を超える温度であればよいが、好ましくは102℃以上、より好ましくは104℃以上、さらに好ましくは106℃以上、特に好ましくは112℃以上である。操作温度の上限は、例えば250℃、好ましくは200℃、より好ましくは175℃である。
上記(ii)において、水素分圧(絶対圧)が1kPa以下、且つ二酸化炭素分圧(絶対圧)が2kPa未満であってもよい。この場合において、水素分圧(絶対圧)の上限は、好ましくは0.9kPa、より好ましくは0.8kPaである。水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)の上限は、好ましくは1.8kPa、より好ましくは1.5kPa、さらに好ましくは1.0kPa、特に好ましくは0.5kPaである。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。
上記(i)の操作条件を満たす工程として、例えば、反応工程が挙げられる。この場合、上記反応工程における反応混合液中の酢酸濃度が30質量%以上(例えば30〜90質量%)、ギ酸濃度が102質量ppm以下(0〜102質量ppm)であることが好ましい。さらに好ましくは、上記反応工程における反応混合液中の酢酸濃度が50〜90質量%(例えば60〜80質量%)、金属触媒濃度(金属換算)が200〜10000質量ppm(例えば300〜5000質量ppm、好ましくは400〜2000質量ppm)、ヨウ化メチル濃度が1〜20質量%(例えば5〜15質量%)、イオン性ヨウ化物濃度が1〜25質量%(例えば5〜20質量%)、水濃度が0.1〜15質量%(例えば0.8〜10質量%)、酢酸メチル濃度が0.1〜30質量%(例えば1〜10質量%)、ギ酸濃度が102質量ppm以下(例えば0〜85質量ppm)である。
上記(ii)の操作条件を満たす工程として、例えば、蒸発工程又は蒸留工程が挙げられる。なお、上記蒸留工程は、後述の分離工程に含まれる工程であってもよいし、分離工程に含まれない工程であってもよい。上記(ii)の操作条件を満たす蒸発工程においては、蒸発槽への仕込液中の酢酸濃度が50〜90質量%(例えば60〜80質量%)、金属触媒濃度(金属換算)が200〜10000質量ppm(例えば300〜5000質量ppm、好ましくは400〜2000質量ppm)、ヨウ化メチル濃度が1〜20質量%(例えば5〜15質量%)、イオン性ヨウ化物濃度が1〜25質量%(例えば5〜20質量%)、水濃度が0.1〜15質量%(例えば0.8〜10質量%)、酢酸メチル濃度が0.1〜30質量%(例えば1〜10質量%)、ギ酸濃度が10000質量ppm以下(例えば0〜1000質量ppm、好ましくは10〜500質量ppm、より好ましくは15〜200質量ppm、さらに好ましくは20〜100質量ppm)であってもよい。
上記(ii)の操作条件を満たす蒸留工程においては、当該蒸留工程を行う蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が30質量%以上(例えば30〜99.999質量%)、ギ酸濃度が1質量ppm以上(例えば5質量ppm以上、好ましくは5〜10000質量ppm)であってもよい。また、上記蒸留工程においては、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が40〜85質量%(例えば50〜75質量%)、ヨウ化メチル濃度が2〜50質量%(例えば5〜30質量%)、水濃度が0.2〜20質量%(例えば1〜15質量%)、酢酸メチル濃度が0.2〜50質量%(例えば2〜30質量%)、ギ酸濃度が1質量ppm以上(例えば5〜10000質量ppm、好ましくは10〜1000質量ppm、より好ましくは10〜500質量ppm、さらに好ましくは15〜200質量ppm、特に好ましくは20〜100質量ppm)であってもよい。さらに、上記蒸留工程においては、当該蒸留工程を行う蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が80〜99.9質量%(例えば90〜99.9質量%、好ましくは93〜99質量%)、ヨウ化メチル濃度が0.01〜16質量%(例えば0.1〜8質量%、好ましくは0.2〜5質量%)、水濃度が0.05〜18質量%(例えば0.1〜8質量%、好ましくは0.2〜5質量%)、酢酸メチル濃度が0.01〜16質量%(例えば0.1〜8質量%、好ましくは0.2〜5質量%)、ギ酸濃度が1質量%以上(例えば5〜10000質量ppm、好ましくは例えば10〜1000質量ppm、より好ましくは10〜500質量ppm、さらに好ましくは15〜200質量ppm、特に好ましくは20〜100質量ppm)であってもよい。さらにまた、上記蒸留工程においては、当該蒸留工程を行う蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が99.1〜99.999質量%、ギ酸濃度が1質量%以上(例えば5〜9000質量ppm、好ましくは10〜1000質量ppm、より好ましくは10〜500質量ppm、さらに好ましくは15〜200質量ppm、特に好ましくは20〜100質量ppm)であってもよい。
また、上記(iii)又は(iv)の態様により1以上のプロセスにおける酸素濃度を制御することにより、ギ酸の生成が効果的に抑制される。これは、メタノール源(例えば、メタノール、酢酸メチル、ジメチルエーテル)に由来するメタノールやプロセス内のメタノールと酸素が反応すると、酸化反応(CH3OH+1/2O2→HCHO+H2O)によりホルムアルデヒドが生成し、生成したホルムアルデヒドはさらに酸素と反応すると、酸化反応(HCHO+1/2O2→HCOOH)が進行してギ酸が生成すると推測される。上記酸素濃度を制御するプロセスは、反応工程、後述の分離工程に含まれる各工程(例えば、蒸発工程、蒸留工程など)、分離工程に含まれない工程のいずれであってもよい。
なお、上記(iii)及び(iv)において酸素濃度を制御する気相又は液相は、酢酸製造プロセスにおける全ての気相及び液相のうちの少なくとも1つのプロセスにおける気相又は液相を意味する。例えば、上記気相は、酢酸製造プロセス中における全ての装置又は設備のうち少なくとも1つにおける気相であり、スクラバーシステムに供されるオフガスであってもよく、酢酸製造プロセス中における反応槽、蒸発槽、及び蒸留塔のうち少なくとも1つにおける気相であってもよい。また、上記気相又は液相は、蒸留塔においては、少なくとも1つの段(例えば、缶底段、仕込段、又は最上段)の気相部又は液相部での濃度が上記範囲にあればよいが、仕込段から最上段の間の各段の気相部又は液相部の濃度が上記範囲にあることが好ましく、缶底段から最上段の間の各段の気相部又は液相部の濃度が上記範囲にあることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、「プロセス」とは、酢酸製造装置における、反応、蒸発、蒸留、冷却、凝縮、分液、貯留、吸収などのプロセス単位操作を行う際の工程、又はプロセス単位操作を行うための装置若しくは設備を意味し、例えば、当該装置及び設備としては、配管、反応槽、蒸発槽、蒸留塔などが挙げられる。また、「プロセス液」とは、プロセスにおける液相を意味し、「プロセス流」とは、プロセスにおける液相又は気相を意味する。
気相中の酸素濃度は、公知の酸素濃度計、例えば、防爆形プロセス用磁気圧力式酸素分析計(商品名「MPA-51d/p」、株式会社堀場製作所製)、分離型ジルコニア式酸素濃度計(商品名「ZR402G」、「ZR22G」、横河電機株式会社製)、近赤外線を使用したレーザ式ガス分析計(商品名「SITRANS SL」シーメンス社製)などを使用して測定することができる。
液相中の酸素濃度は、公知の酸素濃度計(溶存酸素センサ)、例えば、東亜ディーケーケー株式会社製の「DO」、「OC」、「ODM」、「OBM」型、飯島電子工業株式会社製の「DO計」、水及び溶剤(メタノール)中の溶存酸素濃度も測定可能なメトラー社製の酸素濃度計、ガス中の酸素濃度を測定する横河電機株式会社製の「OX型」などを使用して測定することができる。
なお、酸素濃度が測定限界値未満の気相又は液相については、慣用の方法(例えば、酸素を吸着剤に選択的に吸着させる方法、酸素富化膜等の選択透過膜により酸素を選択的に透過させる方法、軽質成分と重質成分とに分離する蒸留方法、抽出方法など)を利用して気相又は液相から酸素が濃縮された濃縮成分を生成させ、この濃縮成分の酸素濃度を測定し、この測定値を気相又は液相中の酸素濃度に換算してもよい。
また、本明細書において、気相及び液相の各相を形成する混合物の総量は不純物も含め100%である。また、気相を形成する混合物が凝縮性成分を含むと、プロセス条件(温度及び圧力)ではガス状であっても、サンプリングにより温度が低下して常温常圧(25℃、1気圧≒0.1MPa)では凝縮性成分が液化し、プロセス条件での気相混合物の組成を正確に測定できない場合がある。そのため、気相を形成する混合物の組成は、温度25℃での気相の混合物の体積基準又は質量基準で表す。また、液相を形成する混合物(液体混合物)の組成は、質量基準で表す。
酢酸製造プロセスでは、水が供給される結果、あるいは副反応による水の生成等により水が存在する。例えば、反応工程には水が仕込まれ、脱低沸塔(スプリッターカラム)からの低沸成分に富むオーバーヘッド流を、アセトアルデヒド分離除去システムにおける脱アセトアルデヒド塔で蒸留してアセトアルデヒドに富むオーバーヘッド流を生成させ、このアセトアルデヒドに富むオーバーヘッド流の抽出(抽出塔や抽出蒸留塔など)には、水が利用される。さらに、脱水塔ではヨウ化水素を除去するためアルカリ金属水酸化物の水溶液を使用する場合がある。これらの水にも微量に酸素が溶解しており、これらの水の使用により、プロセス流中に酸素が混入する。
さらに、カルボニル化による酢酸製造プロセスにおいて、反応槽から製品塔に至る間には、各槽やホールドタンク、ポンプ、計器類(液面計、圧力計等)などの機器が配置されており、計器類にプロセス流(酢酸流など)が逆流して液化するのを防止したり、反応槽の撹拌軸からの一酸化炭素漏洩防止のため、高圧シール部等に窒素ガスがパージされる場合がある。この計器類への窒素ガスのパージに伴ってプロセス内に窒素ガスが仕込まれることになり、撹拌軸のシール部への圧封では、窒素ガスの一部がシール部を通して反応槽に洩れ込む場合がある。このような窒素ガスにも微量の酸素が含まれている。
また、プロセス内に酸素が存在すると、上述したギ酸の生成反応が進行する他、プロセス内のヨウ化水素やヨウ化メチルと反応して、酸化反応(2HI+1/2O2→I2+H2O、2CH3I+1/2O2→CH3OCH3+I2等)により、ヨウ素が遊離する。そして、生成したヨウ素が装置、設備、あるいは配管の器壁に付着又は固着すると、付着部が選択的又は局所的に腐食され、孔を生成する孔食、点腐を生じさせることを見出した。また、通常、ヨウ化水素は、雰囲気の水分濃度5質量%以下では、脱低沸塔、脱水塔、脱高沸塔、製品塔の塔頂に濃縮される。一方、ヨウ素はヨウ化水素よりも高沸点であるため、例えば蒸留塔の高沸留分(例えば、脱低沸塔のサイドカット流、脱水塔の缶出流、製品塔のサイドカット流)とともに流出し、製品酢酸にまでヨウ素が混入して、製品中のヨウ素濃度を増加させたり、茶褐色から赤褐色のヨウ素特有の着色が起きる場合があることも見出した。なお、製品酢酸中にヨウ素が混入すると、酢酸ビニル等の酢酸誘導体の製造において、触媒活性を阻害する。そのため、一般的に、製品酢酸中のヨウ素濃度は10質量ppb以下という極めて低濃度に管理する必要がある。さらに、上述のように、脱水塔などの設備にメタノールやアルカリ金属水酸化物(水酸化カリウム等)を添加し、微量のヨウ化水素を、ヨウ化メチルやヨウ化アルカリ(ヨウ化カリウム等)として除去する場合がある。このような方法でも、ヨウ化水素及び/又はヨウ化メチルからヨウ素が生成すると、ヨウ素の除去が不可能となる。脱水塔などの設備よりも下流側のプロセスでは、ヨウ化水素濃度が少なくなるものの、ヨウ素が混入したプロセス流が還元雰囲気下に曝されると、逆反応によりヨウ化水素が生成する。そのため、装置、設備、あるいは配管の器壁を耐腐食性が低い金属(例えば、低級材質SUS、ハステロイC材質等)で形成すると、ヨウ素による局部腐食ではなく、ヨウ化水素による均一的な腐食が生じる場合がある。
メタノールのカルボニル化プロセス(特に反応系)は、通常、加圧系であるため、原料及び各仕込ラインの酸素濃度を制御することにより、酢酸製造装置における各プロセス流中の酸素濃度を調整できる。例えば、一酸化炭素中の酸素濃度は、一酸化炭素製造プロセスを適正に運転することにより制御可能であり、例えば、一酸化炭素原料(石炭や天然ガス、重油、アスファルト等)に対する酸素仕込量、及び/又は水蒸気仕込量を制御して酸素により完全に部分酸化することにより制御してもよく、精製後の一酸化炭素中の酸素濃度を測定し、この測定値に基づいて使用の可否を判断してもよく、測定値に基づいて、一酸化炭素製造プロセスをフィードバック制御して一酸化炭素中の酸素濃度をコントロールしてもよく、上記測定値に基づいて、不活性ガスの導入により一酸化炭素中の酸素濃度をコントロールしてもよい。
メタノールについても、溶存酸素濃度を測定し、この測定値に基づいて使用の可否を判断してもよく、測定値に基づいて、加熱などにより溶存酸素濃度を制御してもよい。また、プロセス(反応系など)に仕込む水、水溶液(アルカリ水溶液(アルカリ金属水酸化物の水溶液)や次亜燐酸ナトリウム水溶液など)についても溶存酸素濃度を測定し、この測定値に基づいて使用の可否を判断してもよく、測定値に基づいて、加熱などにより溶存酸素濃度を制御した水又は水溶液(例えば、煮沸等により酸素濃度が低減した水又は水溶液)を使用してもよい。
さらに、プロセス内に仕込まれる気体や液体についても、上述の方法と同様にして酸素濃度を測定し、この測定値に基づいて、プロセス流の酸素濃度を制御又は管理できる。
さらには、プロセス流中への窒素ガスのパージ量を必要最小限の量とする方法、パージガスを、一酸化炭素ガスのパージや他の不活性ガスのパージへ切り替える方法等を利用して、プロセス流中の酸素濃度をコントロールしてもよい。
なお、減圧系のプロセスでは、運転圧力を保持するために気密に保ちつつ、不活性ガスを導入しながら目的の圧力に制御した後、運転を開始すると共に、真空ポンプからの排ガス中の酸素濃度を測定することにより、減圧系のプロセス流中の酸素濃度を管理してもよい。
気相及び液相の酸素濃度は、酢酸製造装置における蒸留塔や配管などの任意の箇所に設置した酸素濃度計(酸素センサー)の検出し測定値をモニタリングして連続的に監視してもよく、上記任意の箇所からサンプリングして、定期的に分析することにより監視してもよい。また、酸素濃度計の測定値と上限基準値(閾値)とを比較し、測定値が閾値に達したとき、酸素濃度の低い流体を自動的にプロセス流に導入するか、或いは導入する流体を酸素濃度の低い流体に切り替えることにより酸素濃度を制御してもよい。さらに、過度に酸素濃度が低下したとき(下限基準値としての閾値に達したとき)、酸素源をプロセス流中に導入してもよい。
上記(iii)において、気相中の酸素濃度は、7体積%未満であればよいが、好ましくは6.5体積%以下(例えば、6体積%以下)、より好ましくは5.5体積%以下(例えば、5体積%以下)、さらに好ましくは3体積%以下(例えば、1体積%以下)、特に好ましくは0.5体積%以下(例えば、0.1体積%以下)、とりわけ0.01体積%以下(例えば、0.001体積%以下、0.0001体積%以下)である。気相中の酸素濃度の下限は0体積%であるが、1体積ppt以上(例えば、100体積ppt以上)、好ましくは1体積ppb以上(例えば、100体積ppb以上)であってもよい。酸素濃度が高くなりすぎると、プロセス中でヨウ素が生成し、装置や設備が腐食する場合がある。また、酸素濃度が高くなりすぎると、プロセス中でホルムアルデヒド及びギ酸が生成し、製品酢酸中のギ酸濃度が高くなる場合がある。また、酸素濃度が低すぎる条件とすることは、原料一酸化炭素や原料メタノール、あるいはプロセス中に導入する水、及び液面計や圧力計などの計器への不活性ガス(窒素等)パージとして溶存酸素若しくは酸素の濃度を極度に低下させたものを用いる必要があるため、経済的に劣る場合がある。
上記(iv)において、液相中の酸素濃度は、7×10-5g/g未満であればよいが、好ましくは2×10-5g/g以下(例えば、1×10-5g/g以下)、より好ましくは0.5×10-5g/g以下(例えば、0.1×10-5g/g以下)、さらに好ましくは0.05×10-5g/g以下(例えば、0.01×10-5g/g以下)、特に好ましくは0.001×10-5g/g以下(例えば、0.0001×10-5g/g以下)である。液相中の酸素濃度の下限は0g/gであるが、0.1×10-9g/g以上であってもよい。なお、加圧状態のプロセス液、高温のプロセス液などの液相では、サンプリングの困難性及び酸素の気化等に起因して、酸素濃度を正確に測定できない場合がある。このような場合、温度及び/又は圧力を変化させた複数の条件下での液相中の酸素濃度を測定し、実際のプロセスの温度及び圧力での液相中の酸素濃度を推定値(実験に基づく推定値)として求めてもよく、アスペン+(プラス)(Aspen Technology, Inc.社製)を用いて、液相中の酸素濃度を計算してもよい。酸素濃度が高くなりすぎると、プロセス中でヨウ素が生成し、装置や設備が腐食する場合がある。また、酸素濃度が高くなりすぎると、プロセス中でホルムアルデヒド及びギ酸が生成し、製品酢酸中のギ酸濃度が高くなる場合がある。また、酸素濃度が低すぎる条件とすることは、原料一酸化炭素や原料メタノール、あるいはプロセス中に導入する水、及び液面計や圧力計などの計器への不活性ガス(窒素等)パージとして溶存酸素若しくは酸素の濃度を極度に低下させたものを用いる必要があるため、経済的に劣る場合がある。
上記(iii)における気相中、及び/又は、上記(iv)における液相中の一酸化炭素に対する酸素の割合は、例えば2体積%以下、好ましくは1体積%以下である。
上記(iii)及び/又は上記(iv)において酸素濃度を制御する際、酸素含有ガス、酸素含有化合物、及び酸素発生剤からなる群より選択された少なくとも1種の成分を導入し、上記(iii)における気相中の酸素濃度を1体積ppt以上、及び/又は、上記(iv)における液相中の酸素濃度を0.1×10-9g/g以上に制御することが好ましい。
なお、酸素濃度は低いほど好ましいものの、酸素濃度が低すぎると、雰囲気の還元性が強すぎて、蒸留塔や配管などの酢酸製造装置における装置又は設備の腐食速度が上昇する場合がある。そのため、上記酸素濃度を制御するため、酸素含有ガス、酸素含有化合物、及び酸素発生剤からなる群より選択された少なくとも1種の酸素源をプロセス中に導入して、プロセス流中の酸素濃度を制御してもよい。
上記酸素含有ガスとしては、例えば、空気などが挙げられる。上記酸素含有化合物としては、例えば、オゾンなどが挙げられる。上記酸素発生剤としては、例えば、過酢酸、過酸化水素などが挙げられる。これらの酸素源は1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
上記(iii)及び上記(iv)において、ヨウ素の生成を抑制する観点から、上記プロセス流中の酸素濃度は、ヨウ化水素及びヨウ化メチルの総量1モルに対して、例えば0.25モル以下(例えば、0.2モル以下)、好ましくは0.1モル以下(例えば、0.05モル以下)、より好ましくは0.01モル以下(例えば、1×10-3モル以下)、特に1×10-4モル以下(例えば、1×10-5モル以下)程度であってもよく、1×10-6モル以下(例えば、1×10-7モル以下)であってもよい。
上記プロセス流中の一酸化炭素に対する酸素の割合(O2/CO)は、例えば7体積%以下(例えば、5体積%以下)、好ましくは2体積%以下(例えば、1体積%以下)、より好ましくは0.5体積%以下(例えば、0.1体積%以下)、さらに好ましくは0.01体積%以下(例えば、0.001体積%以下)、特に好ましくは0.0001体積%以下(例えば、0.00001体積%以下)である。
上記(iv)に関し、液相中の酸素濃度は低い場合が多く、一酸化炭素に対する酸素の割合(O2/CO)は大きく変動する場合がある。液相中の一酸化炭素100質量部に対する酸素の質量割合(O2/CO)は、例えば、1000質量部以下(10倍以下)(例えば、500質量部以下)であってもよく、250質量部以下(例えば、100質量部以下)、75質量部以下(例えば、50質量部以下)、20質量部以下(例えば、10質量部以下)、5質量部以下(例えば、1質量部以下)、0.1質量部以下(例えば、0.01質量部以下)、0.001質量部以下(例えば、0.0001質量部以下)、又は0.00005質量部以下(例えば、0.00001質量部以下)であってもよい。
上記(iii)及び上記(iv)では、ヨウ素やギ酸の副生を抑制するため、プロセス中の気相又は液相は、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、及びギ酸から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。さらに、プロセス流(例えば、プロセスの気相)は、プロセスに応じて、酢酸、酢酸メチル、メタノール、水、アセトアルデヒド、当該アセトアルデヒドに由来する副生物、及びジアルキルエーテルからなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよい。上記副生物は、炭素数2以上のヨウ化アルキル、炭素数4以上のアルカナール、炭素数3以上のアルカンカルボン酸、アルカン類、及びケトン類からなる群より選択された少なくとも1種を含んでいてもよく、ジアルキルエーテルが少なくともジメチルエーテルを含んでいてもよい。
上記(iii)における気相として、例えば、反応工程、蒸発工程、又は蒸留工程における気相が挙げられる。また、上記(iv)における液相として、例えば、反応工程、蒸発工程、又は蒸留工程における液相が挙げられる。
上記(iii)及び/又は(iv)のようにして酢酸製造プロセスにおける酸素濃度を制御することにより、ヨウ素及び/又はギ酸の副生を抑制でき、ヨウ素による局部腐食、製品酢酸中の全ヨウ素濃度及び/又はギ酸濃度の増加と製品酢酸の着色という問題を解消できる有用なプロセス条件を提供できる。また、上記(iii)及び/又は(iv)の酸素濃度の制御により、製品酢酸中のヨウ素濃度を10質量ppb以下、ギ酸濃度を50質量ppm以下という極めて低濃度に管理する上でも非常に有用である。さらには、ジルコニウム等の高級な耐食性金属では、還元性条件でも、酸化性条件でも広範囲で完全耐食性を示すことが知られている。しかし、このような高級な耐食性金属でも、強い酸化性条件では腐食される場合がある。そのため、装置又は設備の材質選定によっては、ある程度の高濃度の酸素領域までは耐食性を示しても、酸素濃度によっては腐食が生じる場合がある。上記酸素濃度の制御によれば、このような腐食も抑制できる。
本発明の酢酸の製造方法においては、酢酸の製造プロセスが、メタノールと一酸化炭素とを反応させて酢酸を生成させるカルボニル化反応工程と、上記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を、1以上の蒸発槽及び/又は蒸留塔を用いて、金属触媒を含む流れと、酢酸に富む酢酸流と、上記酢酸流よりも低沸成分に富む流れとに分離する分離工程と、を有していてもよい。なお、上記分離工程は、例えば、上記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸発槽において蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程と、上記蒸気流を蒸留に付して、低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む第1酢酸流とに分離する脱低沸工程と、を有することが好ましい。
また、本発明の酢酸の製造方法は、さらに下記(a)〜(d)の少なくとも1つの工程を有していてもよい。なお、下記(a)の工程を有する場合、下記(a)の工程は上記分離工程に含まれる。
(a)上記第1酢酸流を蒸留して、水に富むオーバーヘッド流と、第1酢酸流よりも酢酸が富化された第2酢酸流とに分離する脱水工程
(b)上記第1若しくは第2酢酸流を蒸留して、高沸成分に富む缶出流と、蒸留に付す前の酢酸流よりも酢酸が富化された第3酢酸流とに分離する脱高沸工程
(c)上記第1若しくは第2若しくは第3酢酸流をイオン交換樹脂で処理して第4酢酸流を得る吸着除去工程
(d)上記第1若しくは第2若しくは第3若しくは第4酢酸流を蒸留して、蒸留に付す前の酢酸流よりも酢酸が富化された第5酢酸流を得る製品工程
なお、上記分離工程は、上記蒸発工程及び脱低沸工程に代えて、上記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を、上記金属触媒を含む流れと、上記低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む第1酢酸流とに分離する工程(蒸発脱低沸工程)を備えていてもよい。また、上記分離工程は、上記脱低沸工程及び脱水工程に代えて、上記脱水工程の機能も備えた脱低沸工程(いわゆる脱低沸脱水工程)、すなわち、上記蒸気流を蒸留に付して、低沸成分に富むオーバーヘッド流と、上記第2の酢酸流と同等の水濃度まで脱水された酢酸流とに分離する工程を備えていてもよい。よって、上記蒸発脱低沸工程は、上記脱水工程の機能も備えた工程(蒸発脱低沸脱水工程)であってもよい。脱低沸脱水工程及び蒸発脱低沸脱水工程から得られる酢酸に富む酢酸流は、上記第2酢酸流に相当する。
上記カルボニル化反応工程は、上記(i)の操作条件を満たしていてもよい。また上記蒸発工程、脱低沸工程、蒸発脱低沸工程、脱水工程、脱低沸脱水工程、蒸発脱低沸脱水工程、脱高沸工程、及び製品工程からなる群より選択された少なくとも1つの工程(好ましくは脱低沸工程、蒸発脱低沸工程、脱低沸脱水工程、蒸発脱低沸脱水工程、より好ましくは脱低沸工程と脱水工程、蒸発工程と脱低沸工程、脱低沸脱水工程、蒸発脱低沸工程、あるいは蒸発脱低沸脱水工程、さらに好ましくは蒸発工程と脱低沸工程と脱水工程)は、上記(ii)の操作条件を満たしていてもよい。また、上記蒸発工程、脱低沸工程、脱高沸工程、及び製品工程からなる群より選択された少なくとも1つの工程が上記(ii)の操作条件を満たしていてもよい。
上記プロセス流中の酸素濃度が高くなると、プロセス流にヨウ素及び/又はギ酸が生成しやすくなる。従って、上記(iii)及び(iv)において酸素濃度を制御する対象である気相又は液相が含まれるプロセスは、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、メタノール、又はホルムアルデヒドが存在しやすいプロセスであることが好ましい。従って、上記(iii)における気相及び/又は上記(iv)における液相はそれぞれ、反応工程、分離工程に含まれる各工程(蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程、蒸発脱低沸工程、脱低沸脱水工程、蒸発脱低沸脱水工程)、後述のデカンタ4における水相及び有機相、アセトアルデヒド分離除去システムにおける各工程(抽出工程、蒸留工程、抽出蒸留工程など)、高圧吸収工程、低圧吸収工程、及び放散工程からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相であることが好ましい。中でも、ヨウ化水素、ヨウ化メチル、メタノール、又はホルムアルデヒドがより存在しやすい観点から、より好ましくは反応工程(例えば、反応混合液、反応槽内の気相)、蒸発工程(特に、揮発相)、脱低沸工程(特に、脱低沸塔の塔頂)、脱低沸脱水工程、後述のデカンタ4における水相及び有機相、高圧吸収工程、及び低圧吸収工程からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相、特に好ましくは反応工程(例えば、反応混合液、反応槽内の気相)、蒸発工程(特に、揮発相)、及び脱低沸工程(特に、脱低沸塔の塔頂)からなる群より選択される1以上の工程における気相及び/又は液相が上記(iii)における気相及び/又は上記(iv)における液相である。
また、本発明の酢酸の製造方法では、上記(iii)における気相及び/又は上記(iv)における液相は、反応工程、蒸発工程、又は蒸留工程における気相及び/又は液相であってもよい。例えば、上記反応工程、蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程、及び製品工程からなる群より選択された少なくとも1つの工程における気相及び/又は液相が上記(iii)における気相及び/又は上記(iv)における液相であってもよい。
また、本発明の方法では、少なくとも1つのプロセス液中のギ酸濃度を500質量ppm以下に制御することが好ましく、より好ましくは400質量ppm以下、より好ましくは300質量ppm以下、さらに好ましくは200質量ppm以下、特に100質量ppm以下、さらに50質量ppm以下、30質量ppm以下に制御してもよい。また、上記液相中のギ酸濃度は、0質量ppm以上であるが、例えば0.1質量ppm以上(例えば1質量ppm以上)、好ましくは3質量ppm以上(例えば5質量ppm以上)、より好ましくは10質量ppm以上、さらに好ましくは15質量ppm以上、特に20質量ppm以上であってもよく、測定限界値以下であってもよい。
プロセス液中のギ酸濃度が高くなると、製品酢酸にギ酸が混入しやすくなる。従って、ギ酸濃度を制御する対象である液相が含まれるプロセスは、メタノール又はホルムアルデヒドが存在しやすいプロセスであることが好ましく、反応工程、分離工程に含まれる各工程(例えば、蒸発工程、脱低沸工程、蒸発脱低沸工程、脱低沸脱水工程、蒸発脱低沸脱水工程)、脱高沸工程、後述のデカンタ4における水相及び有機相、アセトアルデヒド分離除去システムにおける各工程(抽出工程、蒸留工程、抽出蒸留工程など)、アルカン分離工程、高圧吸収工程、低圧吸収工程、及び放散工程からなる群より選択される1以上の工程における液相であることが好ましい。中でも、メタノール又はホルムアルデヒドがより存在しやすい観点から、反応工程(例えば、反応混合液)、蒸発工程、脱低沸工程(特に、脱低沸塔の塔頂)、後述のデカンタ4における水相及び有機相、高圧吸収工程、及び低圧吸収工程からなる群より選択される1以上の工程における液相がより好ましく、反応工程(例えば、反応混合液)、蒸発工程、及び脱低沸工程(特に、脱低沸塔の塔頂)からなる群より選択される1以上の工程における液相が特に好ましい。
なお、上記(i)及び/又は(ii)の操作条件を満たす工程は、上記(iii)及び/又は(iv)を満たすよう酸素濃度が制御されたプロセスであってもよく、満たさないプロセスであってもよい。また、上記(iii)又は(iv)において、酸素濃度を制御する対象である気相又は液相が含まれるプロセスと、上記ギ酸濃度を制御する対象である液相が含まれるプロセスは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
なお、アセトアルデヒド、及びアセトアルデヒドに由来する副生物のうち過マンガン酸還元性物質試験(過マンガン酸タイム)において過マンガン酸タイムを短くする成分(アルデヒド類、炭素数2以上のヨウ化アルキル等)を単にPRC類と記載する場合がある。また、特に断りがなければ、分液により生成したアセトアルデヒドを含む水相は、軽質相又は上相と同義に用い、ヨウ化メチルを含む有機相は、重質相、ヨウ化メチル相、又は下相と同義に用いる。抽出により生成する水相を抽出液(エクストラクト)と同義に用い、有機相をラフィネートと同義に用いる。
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す酢酸製造フロー図(メタノール法カルボニル化プロセス)の一例である。この酢酸製造フローに係る酢酸製造装置は、反応槽1と、蒸発槽2と、蒸留塔3と、デカンタ4と、蒸留塔5と、蒸留塔6と、イオン交換樹脂塔7と、スクラバーシステム8と、アセトアルデヒド分離除去システム9と、コンデンサ1a,2a,3a,5a,6aと、熱交換器2bと、リボイラー3b,5b,6bと、ライン11〜56、ポンプ57と備え、酢酸を連続的に製造可能に構成されている。本実施形態の酢酸の製造方法では、反応槽1、蒸発槽2、蒸留塔3、蒸留塔5、蒸留塔6、及びイオン交換樹脂塔7において、それぞれ、反応工程、蒸発工程(フラッシュ工程)、第1蒸留工程、第2蒸留工程、第3蒸留工程、及び吸着除去工程が行われる。第1蒸留工程は脱低沸工程、第2蒸留工程は脱水工程、第3蒸留工程は脱高沸工程ともいう。なお、本発明において、工程は上記に限らず、特に、蒸留塔5、蒸留塔(脱高沸塔)6、イオン交換樹脂塔7、アセトアルデヒド分離除去システム9(脱アセトアルデヒド塔など)の設備は付帯しない場合がある。また、後述するように、イオン交換樹脂塔7の下流に製品塔を設けてもよい。
反応槽1は、反応工程を行うためのユニットである。この反応工程は、下記の化学式(1)で示される反応(メタノールのカルボニル化反応)によって酢酸を連続的に生成させるための工程である。酢酸製造装置の定常稼働状態において、反応槽1内には、例えば撹拌機によって撹拌されている反応混合物が存在する。反応混合物は、原料であるメタノール及び一酸化炭素と、金属触媒と、助触媒と、水と、製造目的である酢酸と、各種の副生成物とを含み、液相と気相とが平衡状態にある。
CH3OH + CO → CH3COOH (1)
反応混合物中の原料は、液体状のメタノール及び気体状の一酸化炭素である。メタノールは、メタノール貯留部(図示略)からライン11を通じて反応槽1に所定の流量で連続的に供給される。一酸化炭素は、一酸化炭素貯留部(図示略)からライン12を通じて反応槽1に所定の流量で連続的に供給される。一酸化炭素は必ずしも純粋な一酸化炭素でなくてもよく、例えば窒素、水素、二酸化炭素、酸素、ヘリウム等の他のガスが少量(例えば5質量%以下、好ましくは1質量%以下)含まれていてもよい。なお、触媒活性を高めるために一酸化炭素を供給するライン12に合流するライン(図示略)により水素を供給してもよく、一酸化炭素は水素との混合ガスとして反応槽1に供給される場合がある。
なお、原料であるメタノールや一酸化炭素は、化石燃料(石炭、石油等)、天然ガス等の炭素源(炭素類や炭化水素類)の酸素や空気による部分酸化、例えば、スチームメタンリファーミング(steam methane reforming,SMR)、オートサーマルリフォーミング(autothermal reforming,ATR)、パーシャルオキシデーション(partial oxidation,POX)等の部分酸化により生成したシンガス(CO、H2、CO2、微量O2)を精製して得られる。酸素による部分酸化はもちろんのこと、SMRでも、炭素源やスチーム中には酸素が含まれている。そのため、原料一酸化炭素及び原料メタノールの反応槽への導入や、ヨウ化水素をヨウ化メチルに変換して除去するためのプロセス内へのメタノールの供給又は添加等により、プロセス中に微量の酸素が混入することとなる。よって、酸素濃度が低いメタノールや一酸化炭素を原料に用いることが有用である。
このため、原料メタノールとしては、予め酸素を除去したメタノールを用いるのが好ましい。また、原料一酸化炭素は、下流の工程から得られる一酸化炭素を含む排ガス成分を反応槽にリサイクルしてもよい。このような一酸化炭素又は排ガス成分としても、予め酸素を除去した一酸化炭素又は排ガスを用いるのが好ましい。
反応混合物中の金属触媒は、メタノールのカルボニル化反応を促進するためのものであり、例えばロジウム触媒、イリジウム触媒、コバルト触媒などを使用することができる。ロジウム触媒としては、例えば、化学式[Rh(CO)22-で表されるロジウム錯体を使用することができる。イリジウム触媒としては、例えば化学式[Ir(CO)33-で表されるイリジウム錯体を使用することができる。金属触媒としては金属錯体触媒が好ましい。反応混合物中の触媒の濃度(金属換算)は、反応混合物の液相(反応混合液)全体に対して、例えば200〜10000質量ppm、好ましくは300〜5000質量ppm、より好ましくは400〜2000質量ppmである。
助触媒は、上述の触媒の作用を補助するためのヨウ化物であり、例えば、ヨウ化メチルやイオン性ヨウ化物が使用される。ヨウ化メチルは、上述の触媒の触媒作用を促進する作用を示し得る。ヨウ化メチルの濃度は、反応混合物の液相全体に対して例えば1〜20質量%(好ましくは5〜15質量%)である。イオン性ヨウ化物は、反応液中でヨウ化物イオンを生じさせるヨウ化物(特に、イオン性金属ヨウ化物)であり、上述の触媒を安定化させる作用や、副反応を抑制する作用を示し得る。イオン性ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのアルカリ金属ヨウ化物などが挙げられる。反応混合物中のイオン性ヨウ化物の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば1〜25質量%であり、好ましくは5〜20質量%である。また、例えばイリジウム触媒などを用いる場合は、助触媒として、ルテニウム化合物やオスミウム化合物を用いることもできる。これらの化合物の使用量は総和で、例えばイリジウム1モル(金属換算)に対して、0.1〜30モル(金属換算)、好ましくは0.5〜15モル(金属換算)である。
反応混合物中の水は、メタノールのカルボニル化反応の反応機構上、酢酸を生じさせるのに必要な成分であり、また、反応系の水溶性成分の可溶化のためにも必要な成分である。反応混合物中の水の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば0.1〜15質量%であり、好ましくは0.8〜10質量%、さらに好ましくは1〜6質量%、特に好ましくは1.5〜4質量%である。水濃度は、酢酸の精製過程での水の除去に要するエネルギーを抑制して酢酸製造の効率化を進めるうえでは15質量%以下が好ましい。水濃度を制御するために、反応槽1に対して所定流量の水を連続的に供給してもよい。このような触媒混合物及び水からは、加熱又は煮沸等により予め酸素を除去しておくのが好ましい。
反応混合物中の酢酸は、酢酸製造装置の稼働前に反応槽1内に予め仕込まれた酢酸、及び、メタノールのカルボニル化反応の主生成物として生じる酢酸を含む。このような酢酸は、反応系では溶媒として機能し得る。反応混合物中の酢酸の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば50〜90質量%であり、好ましくは60〜80質量%である。
反応混合物に含まれる主な副生成物としては、例えば酢酸メチルが挙げられる。この酢酸メチルは、酢酸とメタノールとの反応によって生じ得る。反応混合物中の酢酸メチルの濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば0.1〜30質量%であり、好ましくは1〜10質量%である。
反応混合物に含まれる副生成物としては、ヨウ化水素も挙げられる。このヨウ化水素は、上述のような触媒や助触媒が使用される場合、メタノールのカルボニル化反応の反応機構上、不可避的に生じることとなる。反応混合物中のヨウ化水素の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば0.01〜2質量%である。また、副生成物としては、例えば、水素、メタン、二酸化炭素、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、ジメチルエーテル、アルカン類、ギ酸、及びプロピオン酸、並びに、ヨウ化ヘキシル及びヨウ化デシルなどのヨウ化アルキル等が挙げられる。なお、本発明では、後述のアセトアルデヒド分離除去システムによりアセトアルデヒドを有効に除去できるため、連続反応であっても反応槽中のアセトアルデヒドの濃度を低減でき、アセトアルデヒド由来の副生成物の生成も著しく抑制できる。反応混合物中のアセトアルデヒド濃度は反応混合物の液相全体に対して、例えば1500質量ppm以下、10〜1000質量ppm、50〜500質量ppm、100〜400質量ppmであってもよい。
上記アセトアルデヒドに由来の副生成物としては、例えば、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド等のアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;これらのアルドール縮合生成物;ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル等のヨウ化C2-12アルキル等が挙げられる。また、ギ酸、炭素数3以上のカルボン酸(プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、さらには炭素数9以上の高級脂肪酸等の直鎖状又は分岐鎖状カルボン酸、例えば、C3-12アルカンカルボン酸等);アルキルアルコール(エタノール、ブチルアルコール、2−エチルブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、さらには炭素数9以上のアルキルアルコール、例えば、C3-12アルキルアルコール等);炭素数2以上の炭化水素類(例えば、C2-12アルカン)等が挙げられる。さらに、液相系では、メタノール又はこれらのアルキルアルコールと酢酸又は上記カルボン酸とのエステル(酢酸エチル等);ジメチルエーテル等のジアルキルエーテル等も副生する。これらの副生物の濃度は、液相系も含めプロセス全体に亘り、0.1質量ppb〜100質量ppm(例えば0.5質量ppb〜50質量ppm)、好ましくは1質量ppb〜10質量ppm(例えば、2質量ppb〜1質量ppm)程度であってもよい。
ヨウ化ヘキシル等の炭素数2以上のヨウ化アルキルの濃度は、例えば0.1質量ppb〜1質量ppm(例えば、0.5〜500質量ppb)、好ましくは1質量〜100質量ppbである。炭素数3以上のカルボン酸の濃度は、例えば0.1〜500質量ppm(例えば、1〜500質量ppm)、好ましくは3〜100質量ppmである。
ジメチルエーテルの濃度は、例えば0.5質量%以下(例えば、0.1〜1000質量ppm)、好ましくは1〜500質量ppm(例えば、2〜300質量ppm)、より好ましくは3〜200質量ppm(例えば、5〜100質量ppm)である。
さらには、アセトアルデヒドに由来する副生成物として、3−ヒドロキシアルカナール(3−ヒドロキシブタナール等)も副生する場合がある。反応混合物中の3−ヒドロキシアルカナールの濃度は、例えば100質量ppm以下(例えば、0.1質量ppb〜100質量ppm)、好ましくは0.5質量ppb〜50質量ppmである。これらの副生成物は、アセトアルデヒド濃度の2〜3乗に比例して副生する場合が多い。
また、アセトアルデヒド及びアセトアルデヒド由来の副生物は、過マンガン酸還元性物質(PRC類)を形成する。そのため、反応混合物から副生物の主たる成分であるアセトアルデヒドを分離して除去し、有用な成分(例えば、ヨウ化メチル等)は、プロセス流から回収して有効に利用するのが好ましい。なお、ヨウ化メチルを含め、ヨウ化C2-12アルキル等もPRC類に属するが、本明細書では、ヨウ化メチルはPRC類には含めない。
また、反応混合物には、装置の腐食により生じる鉄、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデンなどの金属(以下、「腐食性金属」と称する場合がある)、及びその他の金属としてコバルトや亜鉛、銅などが含まれ得る。上記腐食性金属とその他の金属とを併せて「腐食金属等」と称する場合がある。これらの副生成物や腐食金属等の不純物の総含有量は、反応混合物の液相全体に対して、例えば1質量ppm〜1質量%である。したがって、この酢酸製造プロセスにおけるプロセス液は、上記不純物をトータルで、例えば1質量ppm〜1質量%程度含みうる。なお、反応混合物中のギ酸の濃度は、反応混合物の液相全体に対して、例えば0〜102質量ppm、好ましくは0〜85質量ppm、さらに好ましくは0〜50質量ppmである。
以上のような反応混合物が存在する反応槽1内において、反応温度は例えば150〜250℃に設定され、全体圧力としての反応圧力は例えば2.0〜3.5MPa(絶対圧)に設定され、一酸化炭素分圧は、例えば0.4〜1.8MPa(絶対圧)、好ましくは0.6〜1.5MPa(絶対圧)に設定される。
装置稼働時の反応槽1内の気相部の蒸気には、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、ギ酸、及びプロピオン酸などが含まれる。この蒸気は、反応槽1内からライン13を通じて抜き取ることが可能である。蒸気の抜き取り量の調節によって、反応槽1内の圧力を制御することが可能であり、例えば、反応槽1内の圧力は一定に維持される。反応槽1内から抜き取られた蒸気は、コンデンサ1aへと導入される。
コンデンサ1aは、反応槽1からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、ギ酸、及びプロピオン酸などを含み、コンデンサ1aからライン14を通じて反応槽1へと導入され、リサイクルされる。ガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などを含み、コンデンサ1aからライン15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。なお、ライン49から排出されるガスは、後述する蒸発槽2の底部あるいは残液流リサイクルライン18,19へ導入するCO源として利用することができる。
装置稼働時の反応槽1内では、上述のように、酢酸が連続的に生成する。そのような酢酸を含む反応混合物が、連続的に、反応槽1内から所定の流量で抜き取られてライン16を通じて次の蒸発槽2へと導入される。
本発明では、上記反応槽1を用いた反応工程は、上記(i)水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が150℃を超える操作条件を満たすことが好ましい。この場合、水素分圧(絶対圧)は、500kPa未満であればよいが、好ましくは400kPa以下、より好ましくは300kPa以下、さらに好ましくは200kPa以下、特に好ましくは150kPa以下である。上記カルボニル化反応では、一酸化炭素と水との反応により水素が発生する。この水素は触媒活性を高める。そのため、上記反応槽には、必要により水素を供給してもよい。また、下流の工程で排出された気体成分(水素、一酸化炭素等を含む)を、必要により精製して反応槽にリサイクルすることにより水素を供給してもよい。このような水素としても酸素濃度の低い水素を利用するのが好ましい。従って、水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、水素分圧(絶対圧)を1kPa超(あるいは5kPa超)としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)は、70kPa未満であればよいが、好ましくは60kPa以下、より好ましくは50kPa以下、さらに好ましくは40kPa以下、特に好ましくは30kPa以下である。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、2kPa(あるいは20kPa)であってもよい。操作温度は、150℃を超える温度であればよいが、例えば160℃超、好ましくは175℃超、より好ましくは178℃以上、さらに好ましくは181℃以上、特に好ましくは184℃以上である。操作温度の上限は、例えば250℃、好ましくは230℃、より好ましくは200℃である。反応槽1を用いた反応工程が上記操作条件(i)を満たすことにより、反応槽1中でのギ酸の生成が抑制される。また、反応槽1にギ酸を含む液が導入されると、ギ酸が効率よく分解される。
上記反応槽1を用いた反応工程における気相は、上記(iii)を満たすものであってもよい。反応槽1の気相(ライン13から抜き取られた気相)中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積%)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)であってもよい。また、反応工程における気相が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、より好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、さらに好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
上記反応槽1を用いた反応工程における液相は、上記(iv)を満たすものであってもよい。反応混合物中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
反応槽1からの蒸気をコンデンサ1aからライン14を通じて反応槽1へと導入される凝縮分は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記凝縮分中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
コンデンサ1aからのガス分(ライン15に送られる非凝縮ガス)は、上記(iii)を満たすものであってもよい。上記ガス分中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積%)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)であってもよい。また、上記ガス分が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
蒸発槽2は、蒸発工程(フラッシュ工程)を行うためのユニットである。この蒸発工程は、ライン16(反応混合物供給ライン)を通じて蒸発槽2に連続的に導入される反応混合物を、部分的に蒸発させることによって蒸気流(揮発相)と残液流(低揮発相)とに分けるための工程である。反応混合物を加熱することなく圧力を減じることによって蒸発を生じさせてもよいし、反応混合物を加熱しつつ圧力を減じることによって蒸発を生じさせてもよい。蒸発工程において、蒸気流の温度は例えば100〜260℃、好ましくは120〜200℃であり、残液流の温度は例えば80〜200℃、好ましくは100〜180℃であり、槽内圧力は例えば50〜1000kPa(絶対圧)である。また、蒸発工程にて分離される蒸気流及び残液流の割合に関しては、質量比で、例えば10/90〜50/50(蒸気流/残液流)である。本工程で生じる蒸気は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、ギ酸、及びプロピオン酸などを含み、蒸発槽2内からライン17(蒸気流排出ライン)に連続的に抜き取られる。蒸発槽2内から抜き取られた蒸気流の一部はコンデンサ2aへと連続的に導入され、当該蒸気流の他の一部はライン21を通じて次の蒸留塔3へと連続的に導入される。上記蒸気流の酢酸濃度は、例えば50〜85質量%、好ましくは55〜75質量%である。本工程で生じる残液流は、反応混合物に含まれていた触媒及び助触媒(ヨウ化メチル、ヨウ化リチウムなど)や、本工程では揮発せずに残存する水、酢酸メチル、酢酸、ギ酸、及びプロピオン酸などを含み、ポンプ57を用い、連続的に蒸発槽2からライン18を通じて熱交換器2bへと導入される。熱交換器2bは、蒸発槽2からの残液流を冷却する。降温した残液流は、連続的に熱交換器2bからライン19を通じて反応槽1へと導入され、リサイクルされる。なお、ライン18とライン19とを併せて残液流リサイクルラインと称する。また、上記残液流には、触媒の沈降を抑制するために一酸化炭素を供給してもよい(図示略)。上記残液流の酢酸濃度は、例えば55〜90質量%、好ましくは60〜85質量%である。
コンデンサ2aは、蒸発槽2からの蒸気流を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、ギ酸、及びプロピオン酸などを含み、コンデンサ2aからライン22,23を通じて反応槽1へと導入され、リサイクルされる。ガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などを含み、コンデンサ2aからライン20,15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。上述の反応工程での酢酸の生成反応は発熱反応であるところ、反応混合物に蓄積する熱の一部は、蒸発工程(フラッシュ工程)において、反応混合物から生じた蒸気に移行する。この蒸気のコンデンサ2aでの冷却によって生じた凝縮分が反応槽1へとリサイクルされる。すなわち、この酢酸製造装置においては、メタノールのカルボニル化反応で生じる熱がコンデンサ2aにて効率よく除去されることとなる。
本発明では、上記蒸発槽2を用いた蒸発工程は、上記(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たすことが好ましい。この場合、水素分圧(絶対圧)は、好ましくは4kPa以下、より好ましくは3kPa以下、さらに好ましくは1kPa以下、特に好ましくは0.8kPa以下である。水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)は、好ましくは12kPa以下、より好ましくは8kPa、さらに好ましくは3kPa以下、特に好ましくは1kPa以下である。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。操作温度は、好ましくは112℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。操作温度の上限は、例えば260℃、好ましくは200℃、より好ましくは180℃(あるいは170℃若しくは160℃)である。また、このような比較的高温(及び高圧)条件下では、ヨウ化水素が生成しやすく、酸素濃度によってはヨウ素が生成しやすいが、本発明では、ヨウ化水素が生成しても、ヨウ素の生成を有効に抑制できる。
上記(ii)の操作条件を満たす蒸発工程において、蒸発槽2への仕込液中の酢酸濃度は、例えば50〜90質量%(好ましくは60〜80質量%)、金属触媒濃度(金属換算)は、例えば200〜10000質量ppm(好ましくは300〜5000質量ppm、より好ましくは400〜2000質量ppm)、ヨウ化メチル濃度は、例えば1〜20質量%(好ましくは5〜15質量%)、イオン性ヨウ化物濃度は、例えば1〜25質量%(好ましくは5〜20質量%)、水濃度は、例えば0.1〜15質量%(好ましくは0.8〜10質量%)、酢酸メチル濃度は、例えば0.1〜30質量%(好ましくは1〜10質量%)、ギ酸濃度は、例えば、10000質量ppm以下(好ましくは0〜1000質量ppm、より好ましくは10〜500質量ppm、さらに好ましくは15〜200質量ppm、特に好ましくは20〜100質量ppm)であってもよい。蒸発槽2を用いた蒸発工程が上記操作条件を満たすことにより、蒸発槽2でのギ酸の生成が抑制される。また、蒸発槽2にギ酸を含む液が導入されると、ギ酸が効率よく分解される。
上記蒸発槽2を用いた蒸発工程における気相は、上記(iii)を満たすものであってもよい。上記蒸気流(ライン17,21)中の酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、蒸発工程における気相が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
上記蒸発槽2を用いた蒸発工程における液相は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記残液流中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
蒸発槽2からの蒸気流はコンデンサ2aにて冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分離するが、上記ガス分は、さらに別のコンデンサにより冷却して凝縮液とガス分とに分離してもよく、上記2つの凝縮分を一時的に1のホールドタンクに貯留し、その後リサイクルラインを経て反応槽1にリサイクルしてもよい(図示略)。
コンデンサ2a又は上記別のコンデンサから上記ホールドタンクに供給される凝縮分は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記凝縮分中の酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
上記コンデンサ2aから上記別のコンデンサに送られるガス分及び上記別のコンデンサにて分離して得られるガス分は、上記(iii)を満たすものであってもよい。上記ガス分中の酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、上記ガス分が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
蒸留塔3は、第1蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱低沸塔に位置付けられる。第1蒸留工程は、蒸留塔3に連続的に導入される蒸気流を蒸留処理して低沸成分を分離除去する工程である。より具体的には、第1蒸留工程では、上記蒸気流を蒸留して、ヨウ化メチル及びアセトアルデヒドから選択された少なくとも一種の低沸成分に富むオーバーヘッド流と、酢酸に富む酢酸流とに分離する。蒸留塔3は、例えば、棚段塔及び充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔3として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.5〜3000である。蒸留塔3の内部において、塔頂圧力は例えば80〜160kPaG(ゲージ圧)に設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば85〜180kPaGに設定される。蒸留塔3の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での酢酸の沸点より低い温度であって90〜130℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点以上の温度であって120〜165℃(好ましくは125〜160℃)に設定される。
蒸留塔3に対しては、蒸発槽2からの蒸気流がライン21を通じて連続的に導入され、蒸留塔3の塔頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン24に連続的に抜き取られる。蒸留塔3の塔底部からは、缶出液がライン25に連続的に抜き取られる。3bはリボイラーである。蒸留塔3における塔頂部と塔底部との間の高さ位置からは、側流としての酢酸流(第1酢酸流;液体)がライン27より連続的に抜き取られる。
蒸留塔3の塔頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔3からの上記缶出液及び側流と比較して多く含み、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などを含む。この蒸気には酢酸も含まれる。このような蒸気は、ライン24を通じてコンデンサ3aへと連続的に導入される。
コンデンサ3aは、蒸留塔3からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などを含み、コンデンサ3aからライン28を通じてデカンタ4へと連続的に導入される。デカンタ4に導入された凝縮分は水相(上相)と有機相(ヨウ化メチル相;下相)とに分液される。水相には、水と、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などが含まれる。有機相には、例えば、ヨウ化メチルと、例えば、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などが含まれる。本実施形態では、水相の一部はライン29を通じて蒸留塔3に還流され、水相の他の一部は、ライン29,30,23を通じて反応槽1に導入されてリサイクルされる。有機相の一部はライン31,23を通じて反応槽1に導入されてリサイクルされる。有機相の他の一部、及び/又は、水相の他の一部は、ライン31,50、及び/又は、ライン30,51を通じてアセトアルデヒド分離除去システム9に導入される。
上記蒸留塔3を用いた脱低沸工程における気相は、上記(iii)を満たすものであってもよい。蒸留塔3の塔頂部からのオーバーヘッド流(ライン24)及びコンデンサ3aで凝縮しなかったガス分(ライン32)における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、脱低沸工程が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
上記コンデンサ3aにより凝縮された凝縮分(ライン28)は上記(iv)を満たすものであってもよい。上記凝縮分中の酸素濃度は、上記蒸留塔3の塔頂部からのオーバーヘッド流中の酸素濃度と同様である。
デカンタ4における水相及び有機相は上記(iv)を満たすものであってもよい。上記水相中及び有機相中の酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
上記第1酢酸流は上記(iv)を満たすものであってもよい。上記第1酢酸流中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
上記缶出液(ライン25)は上記(iv)を満たすものであってもよい。上記缶出液中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
なお、蒸留塔3には、蒸留塔6の塔頂部からのオーバーヘッド流、高圧吸収塔からの塔頂流の一部、低圧吸収塔からの底部流がリサイクルされていてもよい(図示略)。
本発明では、上記蒸留塔(脱低沸塔)3を用いた蒸留工程は、上記(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たすことが好ましい。この場合、水素分圧(絶対圧)は、好ましくは4kPa以下、より好ましくは3kPa以下、さらに好ましくは1kPa以下である。水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)は、好ましくは12kPa以下、より好ましくは8kPa以下、さらに好ましくは3kPa以下、特に好ましくは1kPa以下である。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。操作温度は、好ましくは112℃以上、より好ましくは114℃以上である。操作温度の上限は、例えば165℃、好ましくは160℃、より好ましくは150℃(あるいは140℃若しくは130℃)である。
上記蒸留塔(脱低沸塔)3を用いた蒸留工程が上記操作条件(ii)を満たす場合、蒸留塔3への仕込液中の酢酸濃度は30質量%以上(例えば30〜99.999質量%)、ギ酸濃度は5質量ppm以上(例えば5〜10000質量ppm)であってもよい。また、蒸留塔3への仕込液において、酢酸濃度は、好ましくは40〜85質量%(例えば50〜85質量%)、より好ましくは50〜75質量%(例えば55〜75質量%)、ヨウ化メチル濃度は、好ましくは2〜50質量%(例えば5〜30質量%)、水濃度は、好ましくは0.2〜20質量%(例えば1〜15質量%)、酢酸メチル濃度は、好ましくは0.2〜50質量%(例えば2〜30質量%)、ギ酸濃度は、好ましくは5〜10000質量ppm(例えば10〜1000質量ppm、より好ましくは10〜500質量ppm、さらに好ましくは15〜200質量ppm、特に好ましくは20〜100質量ppm)である。蒸留塔3を用いた蒸留工程が上記操作条件(ii)を満たすことにより、蒸留塔3内でのギ酸の生成が抑制されるとともに、蒸留塔3にギ酸を含む液が供給されると、ギ酸が効率よく分解される。
アセトアルデヒド分離除去システム9を用いたアセトアルデヒド分離除去工程では、有機相及び/又は水相に含まれるアセトアルデヒドを公知の方法、例えば、蒸留、抽出、又はこれらの組み合わせにより分離除去する。分離されたアセトアルデヒドはライン53を通じて装置外へ排出される。また、有機相及び/又は水相に含まれる有用成分(例えば、ヨウ化メチルなど)は、ライン52,23を通じて反応槽1へとリサイクルされて再利用される。
図2はアセトアルデヒド分離除去システムの一例を示す概略フロー図である。このフローによれば、例えば上記有機相をアセトアルデヒド分離除去工程にて処理する場合は、有機相をライン101を通じて蒸留塔(第1脱アセトアルデヒド塔)91に供給して蒸留し、アセトアルデヒドに富むオーバーヘッド流(ライン102)と、ヨウ化メチルに富む残液流(ライン103)とに分離する。上記オーバーヘッド流をコンデンサ91aにて凝縮させ、凝縮液の一部を蒸留塔91の塔頂部に還流させ(ライン104)、凝縮液の他の部分を抽出塔92に供給する(ライン105)。上記抽出塔92に供給された凝縮液はライン109から導入された水によって抽出処理される。抽出処理により得られた抽出液はライン107を通じて蒸留塔(第2脱アセトアルデヒド塔)93に供給して蒸留し、アセトアルデヒドに富むオーバーヘッド流(ライン112)と水に富む残液流(ライン113)とに分離する。そして、アセトアルデヒドに富むオーバーヘッド流をコンデンサ93aにて凝縮させ、凝縮液の一部を蒸留塔93の塔頂部に還流させ(ライン114)、凝縮液の他の部分は系外に排出する(ライン115)。また、第1脱アセトアルデヒド塔91の缶出液であるヨウ化メチルに富む残液流、抽出塔92で得られたヨウ化メチルに富むラフィネート(ライン108)、及び第2脱アセトアルデヒド塔93の缶出液である水に富む残液流は、それぞれ、ライン103,111,113を通じて反応槽1へリサイクルされるか、あるいはプロセスの適宜な箇所にリサイクルされ、再利用される。例えば、抽出塔92で得られたヨウ化メチルに富むラフィネートはライン110を通じて蒸留塔91にリサイクルすることができる。113の液は、通常、排水として外部に排出される。コンデンサ91a、93aで凝縮しなかったガス(ライン106,116)はスクラバーシステム8で吸収処理されるか、あるいは廃棄処分される。
また、図2のフローにより上記水相をアセトアルデヒド分離除去工程にて処理する場合は、例えば、水相をライン101を通じて蒸留塔(第1脱アセトアルデヒド塔)91に供給して蒸留し、アセトアルデヒドに富むオーバーヘッド流(ライン102)と、水に富む残液流(ライン103)とに分離する。上記オーバーヘッド流をコンデンサ91aにて凝縮させ、凝縮液の一部を蒸留塔91の塔頂部に還流させ(ライン104)、凝縮液の他の部分を抽出塔92に供給する(ライン105)。上記抽出塔92に供給された凝縮液はライン109から導入された水によって抽出処理される。抽出処理により得られた抽出液はライン107を通じて蒸留塔(第2脱アセトアルデヒド塔)93に供給して蒸留し、アセトアルデヒドに富むオーバーヘッド流(ライン112)と水に富む残液流(ライン113)とに分離する。そして、アセトアルデヒドに富むオーバーヘッド流をコンデンサ93aにて凝縮させ、凝縮液の一部を蒸留塔93の塔頂部に還流させ(ライン114)、凝縮液の他の部分は系外に排出する(ライン115)。また、第1脱アセトアルデヒド塔91の缶出液である水に富む残液流、抽出塔92で得られたヨウ化メチルに富むラフィネート(ライン108)、及び第2脱アセトアルデヒド塔93の缶出液である水に富む残液流は、それぞれ、ライン103,111,113を通じて反応槽1へリサイクルされるか、あるいはプロセスの適宜な箇所にリサイクルされ、再利用される。例えば、抽出塔92で得られたヨウ化メチルに富むラフィネートはライン110を通じて蒸留塔91にリサイクルすることができる。113の液は、通常、排水として外部に排出される。コンデンサ91a、93aで凝縮しなかったガス(ライン106,116)はスクラバーシステム8で吸収処理されるか、あるいは廃棄処分される。
ライン101を通じて蒸留塔91に供給される水相又は有機相は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記水相中又は有機相中の酸素濃度は、それぞれ、上記デカンタ4における水相中又は有機相中の酸素濃度と同様である。
第1脱アセトアルデヒド塔91における蒸留工程、抽出塔92における抽出工程、及び第2脱アセトアルデヒド塔93における蒸留工程における液相は、それぞれ、上記(iv)を満たすものであってもよい。第1脱アセトアルデヒド塔91の缶出液である水若しくはヨウ化メチルに富む残液流(ライン103)、抽出塔92で得られたヨウ化メチルに富むラフィネート(ライン108)、第2脱アセトアルデヒド塔93の缶出液である水に富む残液流(ライン113)、及び抽出塔92において抽出処理により得られた抽出液(ライン107)における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
第1脱アセトアルデヒド塔91に還流される凝縮液(ライン104)及び第2脱アセトアルデヒド塔93に還流される凝縮液(ライン114)は、それぞれ、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記凝縮液中の酸素濃度は、それぞれ、オーバーヘッド流(ライン102,112)中の酸素濃度と同様である。
第1脱アセトアルデヒド塔91における蒸留工程、抽出塔92における抽出工程、及び第2脱アセトアルデヒド塔93における蒸留工程は、それぞれ、上記(iii)を満たすものであってもよい。第1脱アセトアルデヒド塔91の塔頂部からのオーバーヘッド流(ライン102)、コンデンサ91aで凝縮しなかったガス分(ライン106)、第2脱アセトアルデヒド塔93の塔頂部からのオーバーヘッド流(ライン112)、及びコンデンサ93aで凝縮しなかったガス分(ライン116)における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、上記各工程が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
上記の水、酢酸(AC)、ヨウ化メチル(MeI)、及びアセトアルデヒド(AD)を少なくとも含むプロセス流に由来するアセトアルデヒドは、上記方法のほか、抽出蒸留を利用して分離除去することもできる。例えば、上記プロセス流を分液させて得られた有機相及び/又は水相(仕込液)を蒸留塔(抽出蒸留塔)に供給するとともに、蒸留塔内のヨウ化メチル及びアセトアルデヒドが濃縮される濃縮域(例えば、塔頂から仕込液供給位置までの空間)に抽出溶媒(通常、水)を導入し、上記濃縮域から降下する液(抽出液)を側流(サイドカット流)として抜き取り、この側流を水相と有機相とに分液させ、上記水相を蒸留することによりアセトアルデヒドを系外に排出することができる。なお、蒸留塔内に比較的多くの水が存在する場合は、上記抽出溶媒を蒸留塔に導入することなく、上記濃縮域から降下する液を側流として抜き取ってもよい。例えば、この蒸留塔に上記濃縮域から降下する液(抽出液)を受けることのできるユニット(チムニートレイなど)を配設し、このユニットで受けた液(抽出液)を側流として抜き取ることができる。抽出溶媒の導入位置は上記仕込液の供給位置よりも上方が好ましく、より好ましくは塔頂付近である。側流の抜き取り位置は、塔の高さ方向において、抽出溶媒の導入位置よりも下方であって、上記仕込液の供給位置よりも上方が好ましい。この方法によれば、抽出溶媒(通常、水)によって、ヨウ化メチルとアセトアルデヒドの濃縮物からアセトアルデヒドを高濃度に抽出できるとともに、抽出溶媒の導入部位とサイドカット部位との間を抽出域として利用するので、少量の抽出溶媒によりアセトアルデヒドを効率よく抽出できる。そのため、例えば、抽出蒸留による抽出液を蒸留塔(抽出蒸留塔)の塔底部から抜き取る方法と比較して蒸留塔の段数を大幅に低減できるとともに、蒸気負荷も低減できる。また、少量の抽出溶媒を用いて、上記図2の脱アルデヒド蒸留と水抽出とを組み合わせる方法よりも、水抽出液中のアセトアルデヒドに対するヨウ化メチルの割合(MeI/AD比)を小さくできるので、ヨウ化メチルの系外へのロスを抑制できる条件でアセトアルデヒドを除去可能である。上記側流中のアセトアルデヒド濃度は、上記仕込液及び缶出液(塔底液)中のアセトアルデヒド濃度よりも格段に高い。また、上記側流中のヨウ化メチルに対するアセトアルデヒドの割合は、仕込液及び缶出液中のヨウ化メチルに対するアセトアルデヒドの割合よりも大きい。なお、上記側流を分液させて得られる有機相(ヨウ化メチル相)をこの蒸留塔にリサイクルしてもよい。この場合、上記側流を分液させて得られる有機相のリサイクル位置は、塔の高さ方向において上記側流抜き取り位置よりも下方が好ましく、上記仕込液の供給位置よりも上方が好ましい。また、上記プロセス流を分液させて得られた有機相を構成する成分(例えば、酢酸メチルなど)に対する混和性溶媒をこの蒸留塔(抽出蒸留塔)に導入してもよい。上記混和性溶媒として、例えば、酢酸、酢酸エチルなどが挙げられる。上記混和性溶媒の導入位置は、塔の高さ方向において、上記側流抜き取り位置よりも下方が好ましく、上記仕込液の供給位置よりも上方が好ましい。また、上記混和性溶媒の導入位置は、上記側流を分液させて得られる有機相をこの蒸留塔にリサイクル場合はそのリサイクル位置よりも下方が好ましい。上記側流を分液させて得られる有機相を蒸留塔へリサイクルしたり、上記混和性溶媒を蒸留塔へ導入することにより、側流として抜き取られる抽出液中の酢酸メチル濃度を低下させることができ、上記抽出液を分液させて得られる水相中の酢酸メチル濃度を低減でき、もって水相へのヨウ化メチルの混入を抑制できる。
上記蒸留塔(抽出蒸留塔)の理論段は、例えば1〜100段、好ましくは2〜50段、より好ましくは3〜30段、さらに好ましくは5〜20段であり、従来の脱アセトアルデヒドに用いる蒸留塔や抽出蒸留塔の80〜100段と比較して、少ない段数で効率よくアセトアルデヒドを分離除去できる。抽出溶媒の流量と仕込液(プロセス流を分液させて得られた有機相及び/又は水相)の流量との質量割合(前者/後者)は、0.0001/100〜100/100の範囲から選択してもよいが、通常、0.0001/100〜20/100、好ましくは0.001/100〜10/100、より好ましくは0.01/100〜8/100、さらに好ましくは0.1/100〜5/100である。上記蒸留塔(抽出蒸留塔)の塔頂温度は、例えば、15〜120℃、好ましくは20〜90℃、より好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは25〜70℃である。塔頂圧力は、絶対圧力で、例えば0.1〜0.5MPa程度である。上記蒸留塔(抽出蒸留塔)の他の条件は、従来の脱アセトアルデヒドに用いる蒸留塔や抽出蒸留塔と同様であってもよい。
図3は上記の抽出蒸留を利用したアセトアルデヒド分離除去システムの一例を示す概略フロー図である。この例では、上記プロセス流を分液させて得られた有機相及び/又は水相(仕込液)を供給ライン201を通じて蒸留塔94の中段(塔頂と塔底との間の位置)に供給するとともに、塔頂付近より水をライン202を通じて導入し、蒸留塔94(抽出蒸留塔)内で抽出蒸留を行う。蒸留塔94の上記仕込液の供給位置より上方には、塔内のヨウ化メチル及びアセトアルデヒドが濃縮される濃縮域から降下する液(抽出液)を受けるためのチムニートレイ200が配設されている。この抽出蒸留においては、チムニートレイ200上の液を好ましくは全量抜き取り、ライン208を通じてデカンタ95に導入して分液させる。デカンタ95における水相(アセトアルデヒドを含む)をライン212を通じて冷却クーラー95aに導入して冷却し、水相に溶解していたヨウ化メチルを2相分離させ、デカンタ96にて分液させる。デカンタ96における水相をライン216を通じて蒸留塔97(脱アセトアルデヒド塔)に供給して蒸留し、塔頂の蒸気をライン217を通じてコンデンサ97aに導いて凝縮させ、凝縮液(主にアセトアルデヒド及びヨウ化メチル)の一部は蒸留塔97の塔頂に還流させ、残りは廃棄するか、あるいはライン220を通じて蒸留塔98(抽出蒸留塔)に供給する。蒸留塔98の塔頂付近から水をライン222を通じて導入し、抽出蒸留する。塔頂の蒸気はライン223を通じてコンデンサ98aに導いて凝縮させ、凝縮液(主にヨウ化メチル)の一部は塔頂部に還流させ、残りはライン226を通じて反応系にリサイクルするが、系外除去する場合もある。デカンタ95における有機相(ヨウ化メチル相)は、好ましくは全量をライン209,210を通じて蒸留塔94のチムニートレイ200の位置より下方にリサイクルする。デカンタ95の水相の一部、及びデカンタ96の有機相は、それぞれ、ライン213,210、ライン214,210を通じて蒸留塔94にリサイクルするが、リサイクルしない場合もある。デカンタ95の水相の一部は蒸留塔94における抽出溶媒(水)として利用してもよい。デカンタ96の水相の一部はライン210を通じて蒸留塔94にリサイクルしてもよい。場合により(例えば、上記仕込液中に酢酸メチルが含まれている場合など)、上記プロセス流を分液させて得られた有機相を構成する成分(例えば、酢酸メチルなど)に対する混和性溶媒(酢酸、酢酸エチル等)をライン215を通じて蒸留塔94に仕込み、蒸留効率を向上させることもできる。混和性溶媒の蒸留塔94への供給位置は上記仕込液供給部(ライン201の接続部)よりも上方で且つリサイクルライン210の接続部よりも下方である。蒸留塔94の缶出液は反応系にリサイクルする。蒸留塔94の塔頂の蒸気はライン203を通じてコンデンサ94aに導いて凝縮させ、凝縮液をデカンタ99で分液させ、有機相はライン206を通じて蒸留塔94の塔頂部に還流させ、水相はライン207を通じてデカンタ95に導く。蒸留塔97の缶出液(水が主成分)や蒸留塔98(抽出蒸留塔)の缶出液(少量のアセトアルデヒドを含む水)は、それぞれライン218,224を通じて系外除去するか、反応系にリサイクルする。コンデンサ94a、97a,98aで凝縮しなかったガス(ライン211,221,227)はスクラバーシステム8で吸収処理されるか、あるいは廃棄処分される。
図4は上記の抽出蒸留を利用したアセトアルデヒド分離除去システムの他の例を示す概略フロー図である。この例では、蒸留塔94の塔頂の蒸気の凝縮液をホールドタンク100に導き、その全量をライン206を通じて蒸留塔94の塔頂部に還流する。これ以外は図3の例と同様である。
図5は上記の抽出蒸留を利用したアセトアルデヒド分離除去システムのさらに他の例を示す概略フロー図である。この例では、チムニートレイ200上の液を全量抜き取り、ライン208を通じて、デカンタ95を経ることなく、直接冷却クーラー95aに導入して冷却し、デカンタ96に供給する。これ以外は図4の例と同様である。
ライン201を通じて蒸留塔94に供給される水相又は有機相は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記水相中又は有機相中の酸素濃度は、それぞれ、上記デカンタ4における水相中又は有機相中の酸素濃度と同様である。
蒸留塔94における蒸留工程、蒸留塔97における蒸留工程、及び蒸留塔98における蒸留工程における液相は、それぞれ、上記(iv)を満たすものであってもよい。蒸留塔97の缶出液(ライン218)、蒸留塔98の缶出液(ライン224)、コンデンサ94aで凝縮された凝縮液(ライン205)、デカンタ99における水相及び有機相、蒸留塔94に還流される有機相(ライン206)、デカンタ95に供給される水相(ライン207)、デカンタ95内の水相及び有機相、コンデンサ95aに供給される水相(ライン212)、デカンタ96内の水相及び有機相、蒸留塔97に供給される水相、コンデンサ97aで凝縮し蒸留塔97に還流される液相(ライン219)、蒸留塔98に供給される液相(ライン220)、コンデンサ98aで凝縮し蒸留塔98に還流される液相(ライン225)、蒸留塔94にリサイクルされ得る液相(ライン209,213,214)、蒸留塔94の缶出液(ライン204)、蒸留塔97の缶出液(ライン218)、蒸留塔98の缶出液(ライン224)における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
蒸留塔94における蒸留工程、蒸留塔97における蒸留工程、及び蒸留塔98における蒸留工程における気相は、それぞれ、上記(iii)を満たすものであってもよい。蒸留塔94の塔頂部からのオーバーヘッド流(ライン203)、コンデンサ94aで凝縮しなかったガス分(ライン211)、蒸留塔97の塔頂部からのオーバーヘッド流(ライン217)、コンデンサ97aで凝縮しなかったガス分(ライン221)、蒸留塔98の塔頂部からのオーバーヘッド流(ライン223)、及びコンデンサ98aで凝縮しなかったガス分(ライン227)における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、上記各工程が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
また、デカンタ4で分離された有機相及び/又は水相は、アルカン分離工程に導入してもよい(図示略)。アルカン分離工程では有機相及び/又は水相に含まれるアルカンを公知の方法、例えば、蒸留により分離除去する。例えば、有機相はアルカン分離工程を行うための蒸留塔(脱アルカン塔)に供給されて蒸留され、脱アルカン塔の塔頂部又は上部からのオーバーヘッド流と底部流とに分離する。アルカンを含む底部流の一部は加熱され脱アルカン塔にリサイクルされ、残部は焼却炉ユニットに供給され焼却される。一方、上記オーバーヘッド流は、アセトアルデヒド及びヨウ化メチルを含んでおり、コンデンサで冷却して凝縮されて凝縮液としてタンクに貯留され、その凝縮液の一部は脱アルカン塔に還流され、凝縮液の残部は、反応槽にリサイクルされる。
上記脱アルカン塔に供給される水相又は有機相は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記水相中又は有機相中の酸素濃度は、それぞれ、上記デカンタ4における水相中又は有機相中の酸素濃度と同様である。
上記アルカン分離工程における液相は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記脱アルカン塔の缶出液、上記脱アルカン塔からのオーバーヘッド流がコンデンサで凝縮され還流される液相、及び上記脱アルカン塔の缶出液における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
上記アルカン分離工程における気相は、上記(iii)を満たすものであってもよい。上記脱アルカン塔からのオーバーヘッド流、及び当該オーバーヘッド流を冷却するためのコンデンサで凝縮しなかったガス分は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、上記アルカン分離工程が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
上記図1において、コンデンサ3aで生じるガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などを含み、コンデンサ3aからライン32,15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。スクラバーシステム8に至ったガス分中のヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などは、スクラバーシステム8にて吸収溶媒に吸収される。ヨウ化水素は吸収溶媒中のメタノール又は酢酸メチルとの反応によってヨウ化メチルが生じる。そして、当該ヨウ化メチル等の有用成分を含有する液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン48,23を通じて反応槽1へとリサイクルされて再利用される。
蒸留塔3の塔底部から抜き取られる缶出液は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔3からの上記のオーバーヘッド流及び側流と比較して多く含み、例えば、プロピオン酸、並びに、飛沫同伴の上述の触媒や助触媒を含む。この缶出液には、酢酸、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水なども含まれる。本実施形態では、このような缶出液の一部は、ライン25,26を通じて蒸発槽2へと連続的に導入されてリサイクルされ、缶出液の他の一部は、ライン25,23を通じて反応槽1へと連続的に導入されてリサイクルされる。
蒸留塔3から側流として連続的に抜き取られる第1酢酸流は、蒸留塔3に連続的に導入される蒸気流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第1酢酸流の酢酸濃度は上記蒸気流の酢酸濃度よりも高い。第1酢酸流の酢酸濃度は、例えば90〜99.9質量%、好ましくは93〜99質量%である。また、第1酢酸流は、酢酸に加えて、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、ギ酸、及びプロピオン酸などを含みうる。なお、蒸留塔3に対するライン27の連結位置は、蒸留塔3の高さ方向において、図示されているように、蒸留塔3に対するライン21の連結位置より上方であってもよいが、蒸留塔3に対するライン21の連結位置より下方であってもよいし、蒸留塔3に対するライン21の連結位置と同じであってもよい。蒸留塔3からの第1酢酸流は、所定の流量で連続的に、ライン27を通じて次の蒸留塔5へと導入される。なお、蒸留塔3の側流として抜き取られる第1酢酸流や、蒸留塔3の塔底液あるいは蒸留塔3の塔底部の蒸気の凝縮液は、そのまま製品酢酸としてもよく、また、蒸留塔5を経ずに、蒸留塔6に直接連続的に導入することもできる。なお、第1酢酸流の一部は蒸留塔3に戻してもよい(図示略)。
ライン27を通流する第1酢酸流に、ライン55(水酸化カリウム導入ライン)を通じて、水酸化カリウムを供給ないし添加することができる。水酸化カリウムは、例えば水溶液等の溶液として供給ないし添加できる。第1酢酸流に対する水酸化カリウムの供給ないし添加によって第1酢酸流中のヨウ化水素を減少できる。具体的には、ヨウ化水素は水酸化カリウムと反応してヨウ化カリウムと水が生じる。そのことによって、ヨウ化水素に起因する蒸留塔等の装置の腐食を低減できる。なお、水酸化カリウムは本プロセスにおいてヨウ化水素が存在する適宜な場所に供給ないし添加することができる。なお、プロセス中に添加された水酸化カリウムは酢酸とも反応して酢酸カリウムを生じさせる。
第1酢酸流に供給ないし添加する上記水酸化カリウムの水溶液は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記水酸化カリウム水溶液中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
蒸留塔5は、第2蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱水塔に位置付けられる。第2蒸留工程は、蒸留塔5に連続的に導入される第1酢酸流を蒸留処理して酢酸を更に精製するための工程である。蒸留塔5は、例えば、棚段塔及び充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔5として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.1〜3000である。第2蒸留工程にある蒸留塔5の内部において、塔頂圧力は例えば10〜500kPaG、好ましくは150〜250kPaGに設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば130〜310kPaG、好ましくは160〜290kPaGに設定される。第2蒸留工程にある蒸留塔5の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって130〜175℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点以上の温度であって150〜185℃に設定される。
蒸留塔5の塔頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン33に連続的に抜き取られる。蒸留塔5の塔底部からは、缶出液がライン34に連続的に抜き取られる。5bはリボイラーである。蒸留塔5における塔頂部と塔底部との間の高さ位置から、側流(液体又は気体)がライン34に連続的に抜き取られてもよい。
蒸留塔5の塔頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔5からの上記の缶出液と比較して多く含み、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などを含む。このような蒸気は、ライン33を通じてコンデンサ5aへと連続的に導入される。
コンデンサ5aは、蒸留塔5からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、例えば水及び酢酸などを含む。凝縮分の一部は、コンデンサ5aからライン35を通じて蒸留塔5へと連続的に還流される。凝縮分の他の一部は、コンデンサ5aからライン35,36,23を通じて反応槽1へと連続的に導入され、リサイクルされる。また、コンデンサ5aで生じるガス分は、例えば一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などを含み、コンデンサ5aからライン37,15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。スクラバーシステム8に至ったガス分中のヨウ化水素は、スクラバーシステム8にて吸収溶媒に吸収され、吸収溶媒中のヨウ化水素とメタノール又は酢酸メチルとの反応によってヨウ化メチルが生じ、そして、当該ヨウ化メチル等の有用成分を含有する液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン48,23を通じて反応槽1へとリサイクルされて再利用される。
上記蒸留塔5を用いた脱水工程における気相は、上記(iii)を満たすものであってもよい。蒸留塔5の塔頂部からのオーバーヘッド流(ライン33)、及びコンデンサ6aにより凝縮されなかったガス分(ライン45)における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、脱水工程における気相が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
蒸留塔5の塔底部から抜き取られる缶出液(あるいは側流)は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔5からの上記のオーバーヘッド流と比較して多く含み、例えば、プロピオン酸、酢酸カリウム(ライン27等に水酸化カリウムを供給した場合)、並びに、飛沫同伴の上述の触媒や助触媒などを含む。この缶出液には酢酸も含まれうる。このような缶出液は、ライン34を通じて、第2酢酸流をなして次の蒸留塔6に連続的に導入されることとなる。
上記第2酢酸流(蒸留塔5の缶出液、ライン34)は上記(iv)を満たすものであってもよい。第2酢酸流中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
蒸留塔5には、第1酢酸流に含まれるヨウ化水素をヨウ化メチルに変換してライン33からのオーバーヘッド流として抜き取るため、蒸留塔5の1又は複数の箇所にメタノールを添加してもよい(図示略)。
本発明では、上記蒸留塔(脱水塔)5を用いた蒸留工程は、上記(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たすことが好ましい。この場合、水素分圧(絶対圧)は、好ましくは2kPa以下、より好ましくは1kPa以下、さらに好ましくは0.5kPa以下である。水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)は、好ましくは5kPa以下、より好ましくは2kPa以下、さらに好ましくは1kPa以下(例えば0.5kPa以下)である。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。操作温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上である。操作温度の上限は、例えば170℃、好ましくは165℃、より好ましくは160℃、さらに好ましくは155℃である。
上記蒸留塔(脱水塔)5を用いた蒸留工程が上記操作条件(ii)を満たす場合、蒸留塔5への仕込液中の酢酸濃度は30質量%以上(例えば30〜99.999質量%)、ギ酸濃度は5質量ppm以上(例えば5〜10000質量ppm)であってもよい。また、蒸留塔5への仕込液において、酢酸濃度は、好ましくは80〜99.9質量%(例えば90〜99.9質量%、特に93〜99質量%)、ヨウ化メチル濃度は、好ましくは0.01〜16質量%(例えば0.1〜8質量%、特に0.2〜5質量%)、水濃度は、好ましくは0.05〜18質量%(例えば0.1〜8質量%、特に0.2〜5質量%)、酢酸メチル濃度は、好ましくは0.01〜16質量%(例えば0.1〜8質量%、特に0.2〜5質量%)、ギ酸濃度は、好ましくは5〜10000質量ppm(例えば10〜1000質量ppm、より好ましくは10〜500質量ppm、さらに好ましくは15〜200質量ppm、特に好ましくは20〜100質量ppm)である。蒸留塔5を用いた蒸留工程が上記操作条件(ii)を満たすことにより、蒸留塔5内でのギ酸の生成が抑制されるとともに、蒸留塔5にギ酸を含む液が供給されると、ギ酸が効率よく分解される。
第2酢酸流は、蒸留塔5に連続的に導入される第1酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第2酢酸流の酢酸濃度は第1酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第2酢酸流の酢酸濃度は、第1酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて、例えば99.1〜99.99質量%である。また、第2酢酸流は、上記のように、酢酸に加えて、例えば、プロピオン酸、ヨウ化水素などを含みうる。本実施形態では、側流を抜き取る場合、蒸留塔5からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔5の高さ方向において、蒸留塔5への第1酢酸流の導入位置よりも低い。
ライン34を通流する第2酢酸流に、ライン56(水酸化カリウム導入ライン)を通じて、水酸化カリウムを供給ないし添加することができる。水酸化カリウムは、例えば水溶液等の溶液として供給ないし添加できる。第2酢酸流に対する水酸化カリウムの供給ないし添加によって第2酢酸流中のヨウ化水素を減少できる。具体的には、ヨウ化水素は水酸化カリウムと反応してヨウ化カリウムと水が生じる。そのことによって、ヨウ化水素に起因する蒸留塔等の装置の腐食を低減できる。なお、水酸化カリウム導入ラインにより水酸化カリウムを供給ないし添加した後の第2酢酸流中の酸素濃度は、上述した第2酢酸流(蒸留塔5の缶出液)中のものと同様である。
蒸留塔6は、第3蒸留工程を行うためのユニットであり、本実施形態ではいわゆる脱高沸塔に位置付けられる。第3蒸留工程は、蒸留塔6に連続的に導入される第2酢酸流を精製処理して酢酸を更に精製するための工程である。蒸留塔6は、例えば、棚段塔及び充填塔などの精留塔よりなる。蒸留塔6として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.2〜3000である。第3蒸留工程にある蒸留塔6の内部において、塔頂圧力は例えば−100〜150kPaGに設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば−90〜180kPaGに設定される。第3蒸留工程にある蒸留塔6の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって50〜150℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点より高い温度であって70〜160℃に設定される。
蒸留塔6の塔頂部からは、オーバーヘッド流としての蒸気がライン38に連続的に抜き取られる。蒸留塔6の塔底部からは、缶出液がライン39に連続的に抜き取られる。6bはリボイラーである。蒸留塔6における塔頂部と塔底部との間の高さ位置からは、側流(液体又は気体)がライン46に連続的に抜き取られる。蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6に対するライン46の連結位置は、図示されているように、蒸留塔6に対するライン34の連結位置より上方であってもよいが、蒸留塔6に対するライン34の連結位置より下方であってもよいし、蒸留塔6に対するライン34の連結位置と同じであってもよい。
蒸留塔6の塔頂部から抜き取られる蒸気は、酢酸よりも沸点の低い成分(低沸点成分)を蒸留塔6からの上記の缶出液と比較して多く含み、酢酸のほか、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール、及びギ酸などを含む。このような蒸気は、ライン38を通じてコンデンサ6aへと連続的に導入される。
コンデンサ6aは、蒸留塔6からの蒸気を、冷却して部分的に凝縮させることによって凝縮分とガス分とに分ける。凝縮分は、酢酸のほか、例えば、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、メタノール、及びギ酸などを含む。凝縮分の少なくとも一部については、コンデンサ6aからライン40を通じて蒸留塔6へと連続的に還流される。凝縮分の一部(留出分)については、コンデンサ6aからライン40,41,42を通じて、蒸留塔5へと導入される前のライン27中の第1酢酸流へとリサイクルすることが可能である。これと共に或はこれに代えて、凝縮分の一部(留出分)については、コンデンサ6aからライン40,41,43を通じて、蒸留塔3へと導入される前のライン21中の蒸気流へとリサイクルすることが可能である。また、凝縮分の一部(留出分)については、コンデンサ6aからライン40,44,23を通じて、反応槽1へリサイクルしてもよい。さらに、コンデンサ6aからの留出分の一部については、上述したように、スクラバーシステム8へと供給して当該システム内で吸収溶媒として使用することが可能である。スクラバーシステム8では、有用分を吸収した後のガス分は装置外に排出され、そして、有用成分を含む液分がスクラバーシステム8からリサイクルライン48,23を通じて反応槽1へと導入ないしリサイクルされて再利用される。加えて、コンデンサ6aからの留出分の一部については、装置内で稼働する各種ポンプ(図示略)へと図外のラインを通じて導いて当該ポンプのシール液として使用してもよい。更に加えて、コンデンサ6aからの留出分の一部については、ライン40に付設される抜き取りラインを通じて、定常的に装置外へ抜き取ってもよいし、非定常的に必要時において装置外へ抜き取ってもよい。凝縮分の一部(留出分)が蒸留塔6での蒸留処理系から除かれる場合、その留出分の量(留出量)は、コンデンサ6aで生じる凝縮液の例えば0.01〜30質量%であり、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%、より好ましくは0.5〜3質量%である。一方、コンデンサ6aで生じるガス分は、例えば、一酸化炭素、水素、メタン、二酸化炭素、窒素、酸素、ヨウ化メチル、ヨウ化水素、水、酢酸メチル、酢酸、ジメチルエーテル、メタノール、アセトアルデヒド、及びギ酸などを含み、コンデンサ6aからライン45,15を通じてスクラバーシステム8へと供給される。
上記蒸留塔6を用いた脱高沸工程における気相は、上記(iii)を満たすものであってもよい。蒸留塔6の塔頂部からのオーバーヘッド流(ライン38)中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、脱高沸工程における気相が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
蒸留塔6の塔底部からライン39を通じて抜き取られる缶出液は、酢酸よりも沸点の高い成分(高沸点成分)を蒸留塔6からの上記のオーバーヘッド流と比較して多く含み、例えばプロピオン酸、無水酢酸、酢酸カリウム(ライン34等に水酸化カリウムを供給した場合)などを含む。また、蒸留塔6の塔底部からライン39を通じて抜き取られる缶出液は、この酢酸製造装置の構成部材の内壁で生じて遊離した金属などの腐食金属等、及び腐食性ヨウ素に由来するヨウ素と当該腐食金属等との化合物も含む。このような缶出液は、本実施形態では酢酸製造装置外に排出される。
上記缶出液(ライン39)は上記(iv)を満たすものであってもよい。上記缶出液中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
蒸留塔6からライン46に連続的に抜き取られる側流は、第3酢酸流として、次のイオン交換樹脂塔7に連続的に導入されることとなる。この第3酢酸流は、蒸留塔6に連続的に導入される第2酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第3酢酸流の酢酸濃度は第2酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第3酢酸流の酢酸濃度は、第2酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて、例えば99.8〜99.999質量%である。本実施形態では、蒸留塔6からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6への第2酢酸流の導入位置よりも高い。他の実施形態では、蒸留塔6からの側流の抜き取り位置は、蒸留塔6の高さ方向において、蒸留塔6への第2酢酸流の導入位置と同じかそれよりも低い。なお、蒸留塔6は、単蒸留器(蒸発器)でも代用可能であり、また、蒸留塔5で不純物除去を十分に行えば、蒸留塔6は省略できる。
上記第3酢酸流(ライン46)は上記(iv)を満たすものであってもよい。第3酢酸流中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
本発明では、上記蒸留塔(脱高沸塔)6を用いた蒸留工程は、上記(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たすことが好ましい。この場合、水素分圧(絶対圧)は、好ましくは2kPa以下、より好ましくは1kPa以下、さらに好ましくは0.5kPa以下である。水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)は、好ましくは5kPa以下、より好ましくは2kPa以下、さらに好ましくは1kPa以下(例えば0.5kPa以下)である。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。操作温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上である。操作温度の上限は、例えば165℃、好ましくは160℃、さらに好ましくは155℃である。
上記蒸留塔(脱高沸塔)6を用いた蒸留工程が上記操作条件(ii)を満たす場合、蒸留塔6への仕込液において、酢酸濃度は、好ましくは99.1〜99.999質量%、ギ酸濃度は、好ましくは5〜9000質量ppm(例えば10〜1000質量ppm、より好ましくは10〜500質量ppm、さらに好ましくは15〜200質量ppm、特に好ましくは20〜100質量ppm)である。蒸留塔6を用いた蒸留工程が上記操作条件(ii)を満たすことにより、蒸留塔6内でのギ酸の生成が抑制されるとともに、蒸留塔6にギ酸を含む液が供給されると、ギ酸が効率よく分解される。
イオン交換樹脂塔7は、吸着除去工程を行うための精製ユニットである。この吸着除去工程は、イオン交換樹脂塔7に連続的に導入される第3酢酸流に微量含まれる主にヨウ化アルキル(ヨウ化ヘキシルやヨウ化デシルなど)を吸着除去して酢酸を更に精製するための工程である。イオン交換樹脂塔7においては、ヨウ化アルキルに対する吸着能を有するイオン交換樹脂が塔内に充填されてイオン交換樹脂床をなす。そのようなイオン交換樹脂としては、例えば、交換基であるスルホン酸基、カルボキシル基、ホスホン酸基等における脱離性のプロトンの一部が銀や銅などの金属で置換された陽イオン交換樹脂が挙げられる。吸着除去工程では、例えばこのようなイオン交換樹脂が充填されたイオン交換樹脂塔7の内部を第3酢酸流(液体)が通流し、その通流過程において、第3酢酸流中のヨウ化アルキル等の不純物がイオン交換樹脂に吸着されて第3酢酸流から除去される。吸着除去工程にあるイオン交換樹脂塔7において、内部温度は例えば18〜100℃であり、酢酸流の通液速度[樹脂容積1m3当たりの酢酸処理量(m3/h)]は、例えば3〜15m3/h・m3(樹脂容積)である。
イオン交換樹脂塔7の下端部からライン47へと第4酢酸流が連続的に導出される。第4酢酸流の酢酸濃度は第3酢酸流の酢酸濃度よりも高い。すなわち、第4酢酸流は、イオン交換樹脂塔7に連続的に導入される第3酢酸流よりも酢酸が富化されている。第4酢酸流の酢酸濃度は、第3酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて例えば99.9〜99.999質量%又はそれ以上である。本製造方法においては、この第4酢酸流を図外の製品タンクに貯留することができる。
上記第4酢酸流は、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記第4酢酸流中の酸素濃度は、上記第3酢酸流中の酸素濃度と同様である。
この酢酸製造装置においては、イオン交換樹脂塔7からの上記の第4酢酸流を更に精製するための精製ユニットとして、蒸留塔であるいわゆる製品塔ないし仕上塔が設けられてもよい。そのような製品塔が設けられる場合、当該製品塔は、例えば、棚段塔及び充填塔などの精留塔よりなる。製品塔として棚段塔を採用する場合、その理論段は例えば5〜50段であり、還流比は理論段数に応じて例えば0.5〜3000である。精製工程にある製品塔の内部において、塔頂圧力は例えば−195〜150kPaGに設定され、塔底圧力は、塔頂圧力より高く、例えば−190〜180kPaGに設定される。製品塔の内部において、塔頂温度は、例えば、設定塔頂圧力での水の沸点より高く且つ酢酸の沸点より低い温度であって50〜150℃に設定され、塔底温度は、例えば、設定塔底圧力での酢酸の沸点より高い温度であって70〜160℃に設定される。なお、製品塔ないし仕上塔は、単蒸留器(蒸発器)でも代用可能である。
製品塔を設ける場合、イオン交換樹脂塔7からの第4酢酸流(液体)の全部又は一部が、製品塔に対して連続的に導入される。そのような製品塔の塔頂部からは、微量の低沸点成分(例えば、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、ジメチルエーテル、クロトンアルデヒド、アセトアルデヒド、及びギ酸など)を含むオーバーヘッド流としての蒸気が連続的に抜き取られる。この蒸気は、所定のコンデンサにて凝縮分とガス分とに分けられる。凝縮分の一部は製品塔へと連続的に還流され、凝縮分の他の一部は反応槽1へとリサイクルされるか、系外に廃棄されるか、あるいはその両方であってもよく、ガス分はスクラバーシステム8へと供給される。製品塔の塔底部からは、微量の高沸点成分を含む缶出液が連続的に抜き取られ、この缶出液は、例えば蒸留塔6へ導入される前のライン34中の第2酢酸流へとリサイクルされる。製品塔における塔頂部と塔底部との間の高さ位置からは、側流(液体)が第5酢酸流として連続的に抜き取られる。製品塔からの側流の抜き取り位置は、製品塔の高さ方向において、例えば、製品塔への第4酢酸流の導入位置よりも低い。第5酢酸流は、製品塔に連続的に導入される第4酢酸流よりも酢酸が富化されている。すなわち、第5酢酸流の酢酸濃度は第4酢酸流の酢酸濃度よりも高い。第5酢酸流の酢酸濃度は、第4酢酸流の酢酸濃度より高い限りにおいて例えば99.9〜99.999質量%又はそれ以上である。この第5酢酸流は、例えば、図外の製品タンクに貯留される。なお、イオン交換樹脂塔7は、蒸留塔6の下流に設置する代わりに(又はそれに加えて)、製品塔の下流に設置し、製品塔出の酢酸流を処理してもよい。
上記製品塔を用いた製品工程における気相は、上記(iii)を満たすものであってもよい。上記製品塔の塔頂部からのオーバーヘッド流、及び製品塔へ還流される凝縮分における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、製品工程における気相が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
上記製品塔の塔頂部からのオーバーヘッド流から分離されたガス分は、上記(iii)を満たすものであってもよい。上記ガス分中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積%)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)であってもよい。また、上記ガス分が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
上記第5酢酸流及び上記缶出液は上記(iv)を満たすものであってもよい。上記第5酢酸流中の酸素濃度は、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
本発明では、上記蒸留塔(製品塔)を用いた蒸留工程は、上記(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たすことが好ましい。この場合、水素分圧(絶対圧)は、好ましくは2kPa以下、より好ましくは1kPa以下、さらに好ましくは0.5kPa以下である。水素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。二酸化炭素分圧(絶対圧)は、好ましくは5kPa以下、より好ましくは2kPa以下、さらに好ましくは1kPa以下(例えば0.5kPa以下)である。二酸化炭素分圧(絶対圧)の下限は0kPaであるが、0.0001kPa超としてもよい。操作温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上である。操作温度の上限は、例えば165℃、好ましくは160℃、より好ましくは155℃である。
上記蒸留塔(製品塔)を用いた蒸留工程が上記操作条件(ii)を満たす場合、蒸留塔(製品塔)への仕込液において、酢酸濃度は、好ましくは99.8〜99.999質量%、ギ酸濃度は、好ましくは5〜2000質量ppm(例えば5〜1000質量ppm、好ましくは5〜100質量ppm)である。上記蒸留塔(製品塔)を用いた蒸留工程が上記操作条件(ii)を満たすことにより、蒸留塔(製品塔)内でのギ酸の生成が抑制されるとともに、蒸留塔(製品塔)にギ酸を含む液が供給されると、ギ酸が効率よく分解される。
スクラバーシステム8では、酢酸製造プロセスで発生するガス分から有用成分(例えば、ヨウ化メチル、水、酢酸メチル、酢酸など)が分離回収される。この分離回収には、本実施形態では、ガス分中の有用成分を捕集するための吸収溶媒を使用して行う湿式法が利用される。吸収溶媒としては、少なくとも酢酸及び/又はメタノールを含む吸収溶媒が好ましい。吸収溶媒には酢酸メチルが含まれていてもよい。例えば、吸収溶媒として蒸留塔6からの蒸気の凝縮分を使用できる。分離回収には、圧力変動吸着法を利用してもよい。分離回収された有用成分(例えば、ヨウ化メチルなど)は、スクラバーシステム8からリサイクルライン48を通じて反応槽1へと導入され、リサイクルされる。有用成分を捕集した後のガスはライン49を通じて廃棄される。スクラバーシステム8での処理及びその後の反応槽1へのリサイクル及び廃棄については、他のコンデンサからスクラバーシステム8へと供給される上述のガス分についても同様である。本発明の製造方法においては、プロセスからのオフガスを、少なくとも酢酸を含む吸収溶媒で吸収処理して、一酸化炭素に富むストリームと酢酸に富むストリームとを分離するスクラバー工程を有することが好ましい。
スクラバーシステム8は、例えば、高圧でオフガスを吸収溶媒に吸収させる工程(高圧吸収工程)、低圧でオフガスを吸収溶媒に吸収させる工程、上記高圧吸収工程及び低圧吸収工程で吸収されたガス成分を放散する工程(放散工程)を備えていてもよい。
高圧吸収工程では、反応槽1からのガス分(一酸化炭素及びヨウ化メチルに富むオフガス)は、高圧吸収塔で吸収溶媒としての酢酸と接触してスクラビングし、一酸化炭素に富む塔頂流と、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水に富む底部流とに分離している。塔頂流の一部は、蒸発槽2に供給され、残部はボイラーに供給して、プロセスの熱源として利用され、又はフレアースタックやベントスタックにて大気排出される。塔頂流の残部は、焼却又は回収してもよい。底部流は放散塔に供給される。
低圧吸収工程では、脱低沸工程のコンデンサ3aで凝縮しなかったガス分と、蒸発槽2からのガス分(酢酸、ヨウ化メチル、及び酢酸メチルに富むオフガス)とが、互いに合流して混合物として、低圧吸収塔で吸収溶媒としての酢酸と接触してスクラビングし、一酸化炭素、二酸化炭素、及び窒素に富む塔頂流と、酢酸、ヨウ化メチル、及び酢酸メチルに富む底部流とに分離している。上記塔頂流は高圧吸収塔の塔頂流と合流し、混合ガスとしてボイラーに供給して、プロセスの熱源として利用され、上記底部流の一部は高圧吸収塔の底部流の一部と合流して蒸発槽2に供給され、上記底部流の残部は高圧吸収塔の底部流と合流し、混合酢酸流として放散塔に供給される。
放散工程では、上記混合酢酸流を放散塔(ストリッピング塔)で蒸留してストリッピングし、ヨウ化メチル及び酢酸に富む塔頂流(酢酸メチル、アセトアルデヒド等も含む)と、酢酸、酢酸メチル、及び水に富む底部流とに分離している。底部流の第1の部分を加熱ユニットで加熱して放散塔の下部に戻している。また、底部流の第2の部分(又は残部)は、蒸留塔6のオーバーヘッド流の凝縮液の一部と合流して混合され、この混合液の一部を、高圧吸収塔の上部にリサイクルし、上記混合液の残部を低圧吸収塔の上部にリサイクルしてもよい。上記塔頂流は、コンデンサで冷却して凝縮され、ガス分(ヨウ化メチル及び一酸化炭素に富み、二酸化炭素、メタン、酢酸エチル、アセトアルデヒド等も含むガス分)は、デカンタ4のガス分又は蒸発槽2からの蒸気流17のガス分と合流して、コンデンサで冷却して凝縮してもよい。上記塔頂流の凝縮液(ヨウ化メチル、酢酸、及び酢酸メチルに富み、水、アセトアルデヒド等も含む凝縮液)は、反応槽1にリサイクルしてもよい。
上記高圧吸収工程、低圧吸収工程、及び放散工程における気相は、それぞれ、上記(iii)を満たすものであってもよい。上記高圧吸収塔からのオーバーヘッド流、上記低圧吸収塔からのオーバーヘッド流、上記放散塔からのオーバーヘッド流、及びこれらのオーバーヘッド流のコンデンサによる冷却で凝縮しなかったガス分における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば10体積ppb〜10体積%)、好ましくは10体積ppb〜3.6体積%(例えば20体積ppb〜2体積%)、より好ましくは30体積ppb〜1体積%(例えば100体積ppb〜0.1体積ppm)、さらに好ましくは500体積ppb〜500体積ppm(例えば1〜100体積ppm)である。また、上記各工程における気相が上記(iii)を満たす場合、上記酸素濃度は、7体積%未満(例えば、1体積ppt〜5体積%)、好ましくは3.6体積%未満(例えば0.1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積ppb〜1体積%(例えば10体積ppb〜0.5体積%)、さらに好ましくは20体積ppb〜0.3体積%、特に好ましくは50体積ppb〜0.1体積%(例えば100体積ppb〜200体積ppm)である。
上記高圧吸収工程、低圧吸収工程、及び放散工程は、それぞれ、上記(iv)を満たすものであってもよい。上記高圧吸収塔の底部流、上記低圧吸収塔の底部流、上記放散塔の底部流、及び上記放散塔からのオーバーヘッド流のコンデンサで凝縮された凝縮分における酸素濃度は、それぞれ、例えば10体積%以下(例えば0.1体積ppb〜10体積%)、好ましくは0.2体積ppb〜3.6体積%(例えば1体積ppb〜2体積%)、より好ましくは1体積%未満(例えば1体積ppt〜1000体積ppm)、さらに好ましくは700体積ppm未満(例えば1体積ppt〜500体積ppm)、特に好ましくは10体積ppt〜300体積ppm(例えば100体積ppt〜100体積ppm)である。
上記実施形態においては、上述したように、上記操作条件(i)を満たす工程、上記操作条件(ii)を満たす工程における滞留時間は、それぞれ1分以上(例えば2分以上、好ましくは3分以上、より好ましくは5分以上、特に10分以上)であることが好ましい。上記滞留時間の上限は、例えば2時間、好ましくは1時間である。
また、ギ酸濃度が10質量ppm以上(例えば10〜10000質量ppm、好ましくは15〜1000質量ppm、さらに好ましくは20〜200質量ppm)のプロセス液を、(v)水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たす工程にリサイクルしてもよい。上記操作条件(v)を満たす工程としては、反応工程、蒸発工程、蒸留工程(例えば、上記脱低沸工程、脱水工程など)などが挙げられる。操作条件(v)を満たす工程には、上記操作条件(i)を満たす工程、上記操作条件(ii)を満たす工程が含まれる。ギ酸濃度が10質量ppm以上のプロセス液を操作条件(v)を満たす工程にリサイクルすることにより、上記プロセス液中に含まれるギ酸が当該工程で効率よく分解される。
さらに、少なくとも1つの蒸留工程、例えば、上記脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程、製品工程における蒸留塔の塔頂液を、上記操作条件(i)を満たす工程や上記操作条件(ii)を満たす工程にリサイクルしてもよい。上記操作条件(i)を満たす工程、上記操作条件(ii)を満たす工程として、例えば、上記反応工程、蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程などが挙げられる。この場合、当該蒸留塔の塔頂液のリサイクル先は、反応工程であるか、又は、当該蒸留塔に係る蒸留工程よりも上流に位置する蒸発工程若しくは蒸留工程(例えば、上記脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程)であることが好ましい。
上記(v)の操作条件を満たす工程にリサイクルする上記プロセス液(例えば上記少なくとも1つの蒸留工程における蒸留塔の塔頂液(デカンタにおいて分離された水相及び有機相を含む))は、酢酸濃度が5質量%以上(例えば10質量%以上)であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上(例えば30質量%以上)、さらに好ましくは40質量%以上(例えば50質量%以上)、特に好ましくは60質量%以上(例えば70質量%以上)、とりわけ80質量%以上(例えば90質量%以上である。上記酢酸濃度の上限は、99.999質量%が好ましく、99.99質量%、99.9質量%であってもよい。また、リサイクルする上記プロセス液は、仕込液中の酢酸濃度が上記範囲内である蒸留塔の塔頂液であってもよい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、「MeI」はヨウ化メチル、「MA」は酢酸メチル、「LiI」はヨウ化リチウム、「Rh」はロジウムをそれぞれ示す。液相部の組成分析において、水濃度はカールフィッシャー水分測定法、ギ酸濃度は液体クロマトグラフィー、ロジウム濃度はICP分析(又は原子吸光分析)、ヨウ化リチウム濃度については、LiをICP分析、ヨウ素を電気滴定分析、その他の成分の濃度はガスクロマトグラフィーにより測定した。気相部の各ガス成分の分圧は、全圧とガスクロマトグラフィーにより測定した各ガス成分濃度より算出した。「%」、「ppm」はそれぞれ「質量%」、「質量ppm」を意味する。
比較例1
ジルコニウム製オートクレーブ1000mlに、初期張り込み組成が表1に示すものとなるよう、MeI、MA、水、LiI、ヨウ化ロジウム(実験中は錯体触媒([Rh(CO)22-)(表中のRh濃度は金属換算)、及び酢酸を仕込み、空気置換後(空気大気圧ホールド)に、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表1に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気(窒素:酸素(体積比)=80:20)をオートクレーブに仕込み、オイルバスにて180℃に維持して30分保持した。180℃に到達した直後の全圧力は5.5MPaGであり、8分後の全圧は5.3MPaGまで低下した。冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は55ppmであった。MA濃度と水濃度はそれぞれ2.3%、1.6%に低下した。この原因は、MAが水と反応して、メタノールと酢酸が生成したこと、COと平衡で生じたメタノールとがカルボニル化反応してCOとメタノールが消費され、酢酸が生成したこと、一部メタノールが二量化して、ジメチルエーテルと水が生成したことなどの総合的な結果である。なお、水はMAの分解で減少するが、ジメチルエーテルの生成で増加もするため、濃度変化は小さかった。その他の組成に大きな変化は無かった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
比較例2
初期張り込み組成が表1に示すものとなるよう、MeI、MA、水、LiI、ヨウ化ロジウム(実験中は錯体触媒([Rh(CO)22-)(表中のRh濃度は金属換算)、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表1に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、比較例1と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は48ppmであった。MA濃度と水濃度はそれぞれ2.3%、1.6%に低下した。この原因は、比較例1において説明した通りである。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
比較例3
初期張り込み組成が表1に示すものとなるよう、MeI、MA、水、LiI、ヨウ化ロジウム(実験中は錯体触媒([Rh(CO)22-)(表中のRh濃度は金属換算)及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表1に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、比較例1と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は51ppmであった。MA濃度と水濃度はそれぞれ2.3%、1.6%に低下した。この原因は、比較例1において説明した通りである。実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
比較例4
初期張り込み組成が表1に示すものとなるよう、MeI、MA、水、LiI、ヨウ化ロジウム(実験中は錯体触媒([Rh(CO)22-)(表中のRh濃度は金属換算)、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表1に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込み、温度150℃で30分保持したこと以外は、比較例1と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は51ppmであった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
比較例5
初期張り込み組成が表1に示すものとなるよう、MeI、MA、水、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表1に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込み、温度110℃で30分保持したこと以外は、比較例1と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は47ppmであった。触媒を添加していないため、カルボニル化反応は起きず、ギ酸以外の基本的な組成の変化は無かった。MA濃度は若干低下し、水濃度はほとんど変化がなかった。MA濃度の低下は、MAが水と反応してメタノールと酢酸が生成し、生成したメタノールの一部がジメチルエーテルに変化し、水が生成した結果と考えられる。また、その他の組成に大きな変化は無かった。なお、110℃に到達した直後の全圧力は0.9MPaGであり、実験終了時の110℃における全圧も同じく0.9MPaGであった。ロジウム錯体触媒含有条件(比較例1〜3)では、COが反応で消費され、H2、CO2が多少生成するため、結果的に0.1〜0.5MPa程度の圧力低下があるのに対し、ロジウム錯体触媒がない条件では、ガスの発生がないため、ほとんど圧力低下がなかったものと考えられる。実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
比較例6
初期張り込み組成が表1に示すものとなるよう、MeI、MA、水、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表1に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、比較例5と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は42ppmであった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
比較例7
初期張り込み組成が表1に示すものとなるよう、MeI、MA、水、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表1に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、比較例5と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は45ppmであった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
比較例8
初期張り込み組成が表1に示すものとなるよう、MeI、MA、水、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表1に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込み、温度100℃で30分保持したこと以外は、比較例5と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は48ppmであった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
実施例1
初期張り込み組成が表2に示すものとなるよう、MeI、MA、水、LiI、ヨウ化ロジウム(実験中は錯体触媒([Rh(CO)22-)(表中のRh濃度は金属換算)、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表2に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、比較例1と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は45ppmであった。MA濃度と水濃度はそれぞれ2.2%、1.6%に低下した。この原因は、比較例1において説明した通りである。その他の組成に大きな変化は無かった。180℃に到達した直後の全圧力は3.9MPaGであり、実験終了時の全圧は3.4MPaGまで低下した。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
実施例2
初期張り込み組成が表2に示すものとなるよう、MeI、MA、水、LiI、ヨウ化ロジウム(実験中は錯体触媒([Rh(CO)22-)(表中のRh濃度は金属換算)、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表2に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、実施例1と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は21ppmであった。MA濃度と水濃度はそれぞれ2.3%、1.6%に低下した。この原因は、比較例1において説明した通りである。その他の組成に大きな変化は無かった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
実施例3
初期張り込み組成が表2に示すものとなるよう、MeI、MA、水、LiI、ヨウ化ロジウム(実験中は錯体触媒([Rh(CO)22-)(表中のRh濃度は金属換算)、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表2に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、実施例1と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は40ppmであった。MA濃度と水濃度はそれぞれ2.3%、1.6%に低下した。この原因は、比較例1において説明した通りである。その他の組成に大きな変化は無かった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
実施例4
温度188℃で30分保持したこと以外は、実施例1と同様の実験を行った。冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は37ppmであった。MA濃度と水濃度はそれぞれ2.0%、1.4%に低下した。この原因は、比較例1において説明した通りである。その他の組成に大きな変化は無かった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
実施例5
初期張り込み組成が表2に示すものとなるよう、MeI、MA、水、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表2に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込み、温度110℃で30分保持したこと以外は、実施例1と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は38ppmであった。触媒を添加していないため、カルボニル化反応は起きず、ギ酸以外の基本的な組成の変化は無かった。110℃に到達した直後の全圧力は1.0MPaGであり、実験終了時の110℃における全圧も同じく1.0MPaGであった。ロジウム錯体触媒含有条件(実施例1〜4)では、COが反応で消費され、H2、CO2が多少生成するため、結果的に0.5〜0.7MPa程度の圧力低下があるのに対し、ロジウム錯体触媒がない条件では、ガスの発生がないため、ほとんど圧力低下がなかったものと考えられる。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
実施例6
初期張り込み組成が表2に示すものとなるよう、MeI、MA、水、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表2に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、実施例5と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は37ppmであった。触媒を添加していないため、カルボニル化反応は起きず、ギ酸以外の基本的な組成の変化は無かった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
実施例7
初期張り込み組成が表2に示すものとなるよう、水、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表2に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、実施例5と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は35ppmであった。触媒を添加していないため、カルボニル化反応は起きず、ギ酸以外の基本的な組成の変化は無かった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、実施例7はMAが存在しないため、実験終了後のジメチルエーテルとメタノールは合計で0.1%未満であった。
実施例8
初期張り込み組成が表2に示すものとなるよう、MeI、MA、水、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表2に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込んだこと以外は、実施例5と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は21ppmであった。触媒を添加していないため、カルボニル化反応は起きず、ギ酸以外の基本的な組成の変化は無かった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、酢酸濃度は残りとしているが、その他の微量不純物は0.2%前後存在し、主として、ジメチルエーテルやメタノール等が存在していた。
実施例9
初期張り込み組成が表2に示すものとなるよう、MeI、MA、水、LiI、ヨウ化ロジウム(実験中は錯体触媒([Rh(CO)22-)(表中のRh濃度は金属換算)、ギ酸、及び酢酸を仕込み、H2分圧、CO2分圧、CO分圧、及び気相中O2濃度がそれぞれ表2に示す分圧(絶対圧)又は体積%となるよう、H2、CO2、CO、及び空気をオートクレーブに仕込み、温度145℃で10分保持したこと以外は、実施例5と同様の実験を行い、冷却後、液をサンプリングし、組成分析を行ったところ、ギ酸濃度は29ppmであった。なお、実験開始時及び実験終了時の組成分析の結果を下記表に示す。また、実施例9はMAが少なかったため、実験終了後のジメチルエーテルとメタノールは合計で0.1%程度であった。
比較例及び実施例の条件及び結果を表1及び2に示す。表1及び2において、「PH2」は水素分圧、「PCO2」は二酸化炭素分圧、「PCO」は一酸化炭素分圧、「気相中O2」は気相中の酸素濃度を示す。表中、酢酸濃度について「残り」としているが、実際には、サンプリング液に、反応混合物についての説明箇所で述べた副生成物等の不純物がトータルで1ppm〜1%含まれている場合がある。
Figure 2019220522
Figure 2019220522
[結果の考察]
比較例1と比較例2の対比より、水素分圧500kPa以上且つ二酸化炭素分圧70kPa以上である場合であっても、気相中の酸素濃度を7体積%未満とすると、ギ酸の生成量が低下することが分かる。比較例1と比較例3の対比より、気相中の酸素濃度が7体積%以上である場合であっても、水素分圧を500kPa未満且つ二酸化炭素分圧を70kPa未満とすると、ギ酸の生成量が低下することが分かる。しかし、比較例1〜4と実施例1の対比より、水素分圧500kPa未満、二酸化炭素分圧70kPa未満、温度150℃超、且つ気相中の酸素濃度7体積%未満とすることにより、水素分圧500kPa未満且つ二酸化炭素分圧70kPa未満のみとする場合、気相中の酸素濃度7体積%未満のみとする場合のいずれにも対し、ギ酸の生成量がよりいっそう低下することが分かる。なお、比較例3と比較例4の対比より、温度を150℃から180℃まで上昇させても、気相中の酸素濃度が7体積%以上となるとギ酸の生成量を抑えることができないことが分かる。
比較例5と比較例6の対比より、水素分圧5kPa超且つ二酸化炭素分圧20kPa以上である場合であっても、気相中の酸素濃度を7体積%未満とすると、ギ酸の分解が促進されていることが分かる。比較例5と比較例7の対比より、気相中の酸素濃度が7体積%以上である場合であっても、水素分圧を5kPa以下且つ二酸化炭素分圧を20kPa未満とすると、ギ酸の分解が促進されることが分かる。しかし、比較例5〜8と実施例6の対比より、水素分圧5kPa以下、二酸化炭素分圧20kPa未満、温度100℃超、且つ気相中の酸素濃度7体積%未満とすることにより、水素分圧5kPa以下且つ二酸化炭素分圧20kPa未満のみとする場合、気相中の酸素濃度7体積%未満のみとする場合のいずれにも対し、ギ酸の分解がよりいっそう促進されることが分かる。なお、比較例7と比較例8の対比より、温度を100℃から110℃まで上昇させても、ギ酸の分解がわずかしか促進されないことが分かる。
実施例1と実施例2の対比より、気相中の酸素濃度が7体積%未満の場合において、水素分圧及び二酸化炭素分圧が低いほどギ酸の生成が抑えられることが分かる。また、実施例1と実施例3の対比より、水素分圧500kPa未満、二酸化炭素分圧70kPa未満、且つ温度150℃超の場合において、気相中の酸素濃度が低いほどギ酸の生成が抑えられることが分かる。また、実施例1と実施例4の対比より、水素分圧500kPa未満、二酸化炭素分圧70kPa未満、且つ気相中の酸素濃度7体積%未満の場合において、温度が高いほどギ酸の生成が抑えられることが分かる。
実施例5〜9より、水素分圧5kPa以下、二酸化炭素分圧20kPa未満、温度100℃超、且つ気相中の酸素濃度7体積%未満の場合、組成、水素分圧、二酸化炭素分圧、温度、気相中の酸素濃度、あるいは滞留時間が異なる場合であっても、ギ酸の分解が促進されることが分かる。
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記しておく。
[1]酢酸の製造プロセスにおいて、下記(i)の操作条件を満たす工程及び下記(ii)の操作条件を満たす工程から選択される少なくとも1つの工程を有し、且つ1以上のプロセスについて下記(iii)及び下記(iv)から選択される少なくとも1つを満たす態様で酸素濃度を制御する酢酸の製造方法。
(i)水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が150℃(好ましくは175℃)を超える操作条件
(ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件
(iii)気相中の酸素濃度を7体積%未満に制御する
(iv)液相中の酸素濃度を7×10-5g/g未満に制御する
[2]上記(ii)において、水素分圧が1kPa(絶対圧)以下、且つ二酸化炭素分圧が2kPa(絶対圧)未満である[1]に記載の酢酸の製造方法。
[3]上記(i)の操作条件を満たす反応工程を有する[1]又は[2]に記載の酢酸の製造方法。
[4]上記反応工程における反応混合液中の酢酸濃度が30質量%以上、ギ酸濃度が102質量ppm以下である[3]に記載の酢酸の製造方法。
[5]上記反応工程における反応混合液中の酢酸濃度が50〜90質量%、金属触媒濃度(金属換算)が200〜10000質量ppm、ヨウ化メチル濃度が1〜20質量%、イオン性ヨウ化物濃度が1〜25質量%、水濃度が0.1〜15質量%、酢酸メチル濃度が0.1〜30質量%、ギ酸濃度が102質量ppm以下である[3]又は[4]に記載の酢酸の製造方法。
[6]上記(ii)の操作条件を満たす蒸発工程又は蒸留工程を有する[1]〜[5]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[7]上記蒸発工程において、蒸発槽への仕込液中の酢酸濃度が50〜90質量%、金属触媒濃度(金属換算)が200〜10000質量ppm、ヨウ化メチル濃度が1〜20質量%、イオン性ヨウ化物濃度が1〜25質量%、水濃度が0.1〜15質量%、酢酸メチル濃度が0.1〜30質量%、ギ酸濃度が10000質量ppm以下である[6]に記載の酢酸の製造方法。
[8]上記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が30質量%以上、ギ酸濃度が5質量ppm以上である[6]に記載の酢酸の製造方法。
[9]上記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が40〜85質量%、ヨウ化メチル濃度が2〜50質量%、水濃度が0.2〜20質量%、酢酸メチル濃度が0.2〜50質量%、ギ酸濃度が5〜10000質量ppmである[6]に記載の酢酸の製造方法。
[10]上記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が80〜99.9質量%、ヨウ化メチル濃度が0.01〜16質量%、水濃度が0.05〜18質量%、酢酸メチル濃度が0.01〜16質量%、ギ酸濃度が5〜10000質量ppmである[6]に記載の酢酸の製造方法。
[11]上記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が99.1〜99.999質量%、ギ酸濃度が5〜9000質量ppmである[6]に記載の酢酸の製造方法。
[12]上記(iii)における気相が、酢酸、酢酸メチル、メタノール、水、アセトアルデヒド、アセトアルデヒドに由来する副生物、及びジアルキルエーテルからなる群より選択された少なくとも1種を含み、上記副生物が、炭素数2以上のヨウ化アルキル、炭素数4以上のアルカナール、炭素数3以上のアルカンカルボン酸、アルカン類、及びケトン類からなる群より選択された少なくとも1種を含み、ジアルキルエーテルが少なくともジメチルエーテルを含む[1]〜[11]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[13]1以上のプロセスについて下記(iii−1)及び下記(iv−1)から選択される少なくとも1つを満たす態様で酸素濃度を制御する[1]〜[12]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件
(iii−1)気相中の酸素濃度を5体積%以下に制御する
(iv−1)液相中の酸素濃度を2×10-5g/g未満に制御する
[14]上記(iii)における気相中の一酸化炭素に対する酸素の割合が2体積%以下(好ましくは1体積%以下)、及び/又は、上記(iv)における液相中の一酸化炭素に対する酸素の割合が2体積%以下(好ましくは1体積%以下)である[1]〜[13]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[15]上記(iii)及び/又は上記(iv)において、酸素含有ガス、酸素含有化合物、及び酸素発生剤からなる群より選択された少なくとも1種の成分を導入し、上記(iii)における気相中の酸素濃度を1体積ppt以上(好ましくは1体積ppb以上)、及び/又は、上記(iv)における液相中の酸素濃度を0.1×10-9g/g以上に制御する[1]〜[14]のいずれかに1つに記載の酢酸の製造方法。
[16]上記(iii)及び/又は上記(iv)において、酸素濃度をヨウ化水素及びヨウ化メチルの総量1モルに対して0.25モル以下の濃度に制御する請求項[1]〜[15]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[17]上記(iii)における気相及び/又は上記(iv)における液相が、反応工程、蒸発工程、又は蒸留工程における気相及び/又は液相である[1]〜[16]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[18]酢酸の製造プロセスが、メタノールと一酸化炭素とを反応させて酢酸を生成させるカルボニル化反応工程、上記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程、及び上記蒸気流を蒸留に付して低沸成分に富むオーバーヘッド流と酢酸に富む第1酢酸流とに分離する脱低沸工程を有しているか、又は、これらの工程に加えて、さらに下記(a)〜(d)の少なくとも1つの工程を有している[1]〜[17]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
(a)上記第1酢酸流を蒸留して、水に富むオーバーヘッド流と、第1酢酸流よりも酢酸が富化された第2酢酸流とに分離する脱水工程
(b)上記第1若しくは第2酢酸流を蒸留して、高沸成分に富む缶出流と、蒸留に付す前の酢酸流よりも酢酸が富化された第3酢酸流とに分離する脱高沸工程
(c)上記第1若しくは第2若しくは第3酢酸流をイオン交換樹脂で処理して第4酢酸流を得る吸着除去工程
(d)上記第1若しくは第2若しくは第3若しくは第4酢酸流を蒸留して、蒸留に付す前の酢酸流よりも酢酸が富化された第5酢酸流を得る製品工程
[19]上記カルボニル化反応工程が、上記(i)の操作条件を満たす[18]に記載の酢酸の製造方法。
[20]上記蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程、及び製品工程から選択された少なくとも1つの工程が上記(ii)の操作条件を満たす[18]又は[19]に記載の酢酸の製造方法。
[21]上記カルボニル化反応工程、蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程、及び製品工程から選択された少なくとも1つの工程における気相及び/又は液相が、上記(iii)における気相及び/又は上記(iv)における液相である[18]〜[20]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[22]上記(i)の操作条件を満たす工程又は上記(ii)の操作条件を満たす工程における滞留時間が1分以上(例えば10分以上2時間以下)である[1]〜[21]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[23]ギ酸濃度が10質量ppm以上のプロセス液を、水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たす工程にリサイクルする[1]〜[22]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[24]リサイクルする上記プロセス液中の酢酸濃度が5質量%以上(例えば5〜99.999質量%)である[23]に記載の酢酸の製造方法。
[25]酢酸の製造プロセスが少なくとも1つの蒸留工程を有しており、当該少なくとも1つの蒸留工程における蒸留塔の塔頂液を上記(i)の操作条件を満たす工程及び/又は上記(ii)の操作条件を満たす工程にリサイクルする[1]〜[24]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[26]上記蒸留塔の塔頂液のリサイクル先が反応工程及び/又は当該蒸留塔に係る蒸留工程よりも上流に位置する蒸発工程若しくは蒸留工程である[25]に記載の酢酸の製造方法。
[27]上記蒸留塔の塔頂液中の酢酸濃度が5質量%以上(例えば80〜99.999質量%)である[25]又は[26]に記載の酢酸の製造方法。
[28]上記蒸留塔の塔頂液が、仕込液中の酢酸濃度が80質量%以上(例えば80〜99.999質量%)である蒸留塔の塔頂液である[25]〜[27]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[29]上記(i)において、水素分圧が1〜150kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が175℃を超え250℃以下である[1]〜[28]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
[30]上記(ii)において、二酸化炭素分圧が12kPa(絶対圧)以下、且つ操作温度が106〜250℃である[1]〜[29]のいずれか1つに記載の酢酸の製造方法。
本発明によれば、簡易な手段で製品酢酸中のギ酸濃度を低減できる。
1 反応槽
2 蒸発槽
3,5,6 蒸留塔
4 デカンタ
7 イオン交換樹脂塔
8 スクラバーシステム
9 アセトアルデヒド分離除去システム
16 反応混合物供給ライン
17 蒸気流排出ライン
18,19 残液流リサイクルライン
54 一酸化炭素含有ガス導入ライン
55,56 水酸化カリウム導入ライン
57 触媒循環ポンプ
91 蒸留塔(第1脱アセトアルデヒド塔)
92 抽出塔
93 蒸留塔(第2脱アセトアルデヒド塔)
94 蒸留塔(抽出蒸留塔)
95 デカンタ
96 デカンタ
97 蒸留塔(脱アセトアルデヒド塔)
98 蒸留塔(抽出蒸留塔)
99 デカンタ
200 チムニートレイ

Claims (20)

  1. 酢酸の製造プロセスにおいて、下記(i)の操作条件を満たす工程及び下記(ii)の操作条件を満たす工程から選択される少なくとも1つの工程を有し、且つ1以上のプロセスについて下記(iii)及び下記(iv)から選択される少なくとも1つを満たす態様で酸素濃度を制御する酢酸の製造方法。
    (i)水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が150℃を超える操作条件
    (ii)水素分圧が5kPa(絶対圧)以下、二酸化炭素分圧が20kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件
    (iii)気相中の酸素濃度を7体積%未満に制御する
    (iv)液相中の酸素濃度を7×10-5g/g未満に制御する
  2. 前記(i)の操作条件を満たす反応工程を有する請求項1に記載の酢酸の製造方法。
  3. 前記反応工程における反応混合液中の酢酸濃度が50〜90質量%、金属触媒濃度(金属換算)が200〜10000質量ppm、ヨウ化メチル濃度が1〜20質量%、イオン性ヨウ化物濃度が1〜25質量%、水濃度が0.1〜15質量%、酢酸メチル濃度が0.1〜30質量%、ギ酸濃度が102質量ppm以下である請求項2に記載の酢酸の製造方法。
  4. 前記(ii)の操作条件を満たす蒸発工程又は蒸留工程を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  5. 前記蒸発工程において、蒸発槽への仕込液中の酢酸濃度が50〜90質量%、金属触媒濃度(金属換算)が200〜10000質量ppm、ヨウ化メチル濃度が1〜20質量%、イオン性ヨウ化物濃度が1〜25質量%、水濃度が0.1〜15質量%、酢酸メチル濃度が0.1〜30質量%、ギ酸濃度が10000質量ppm以下である請求項4に記載の酢酸の製造方法。
  6. 前記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が40〜85質量%、ヨウ化メチル濃度が2〜50質量%、水濃度が0.2〜20質量%、酢酸メチル濃度が0.2〜50質量%、ギ酸濃度が5〜10000質量ppmである請求項4に記載の酢酸の製造方法。
  7. 前記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が80〜99.9質量%、ヨウ化メチル濃度が0.01〜16質量%、水濃度が0.05〜18質量%、酢酸メチル濃度が0.01〜16質量%、ギ酸濃度が5〜10000質量ppmである請求項4に記載の酢酸の製造方法。
  8. 前記蒸留工程において、蒸留塔への仕込液中の酢酸濃度が99.1〜99.999質量%、ギ酸濃度が5〜9000質量ppmである請求項4に記載の酢酸の製造方法。
  9. 前記(iii)における気相中の一酸化炭素に対する酸素の割合が2体積%以下、及び/又は、前記(iv)における液相中の一酸化炭素に対する酸素の割合が2体積%以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  10. 前記(iii)及び/又は前記(iv)において、酸素含有ガス、酸素含有化合物、及び酸素発生剤からなる群より選択された少なくとも1種の成分を導入し、前記(iii)における気相中の酸素濃度を1体積ppt以上、及び/又は、前記(iv)における液相中の酸素濃度を0.1×10-9g/g以上に制御する請求項1〜9のいずれかに1項に記載の酢酸の製造方法。
  11. 前記(iii)及び/又は前記(iv)において、酸素濃度をヨウ化水素及びヨウ化メチルの総量1モルに対して0.25モル以下の濃度に制御する請求項1〜10のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  12. 前記(iii)における気相及び/又は前記(iv)における液相が、反応工程、蒸発工程、又は蒸留工程における気相及び/又は液相である請求項1〜11のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  13. 酢酸の製造プロセスが、メタノールと一酸化炭素とを反応させて酢酸を生成させるカルボニル化反応工程、前記カルボニル化反応工程で得られた反応混合物を蒸気流と残液流とに分離する蒸発工程、及び前記蒸気流を蒸留に付して低沸成分に富むオーバーヘッド流と酢酸に富む第1酢酸流とに分離する脱低沸工程を有しているか、又は、これらの工程に加えて、さらに下記(a)〜(d)の少なくとも1つの工程を有している請求項1〜12のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
    (a)前記第1酢酸流を蒸留して、水に富むオーバーヘッド流と、第1酢酸流よりも酢酸が富化された第2酢酸流とに分離する脱水工程
    (b)前記第1若しくは第2酢酸流を蒸留して、高沸成分に富む缶出流と、蒸留に付す前の酢酸流よりも酢酸が富化された第3酢酸流とに分離する脱高沸工程
    (c)前記第1若しくは第2若しくは第3酢酸流をイオン交換樹脂で処理して第4酢酸流を得る吸着除去工程
    (d)前記第1若しくは第2若しくは第3若しくは第4酢酸流を蒸留して、蒸留に付す前の酢酸流よりも酢酸が富化された第5酢酸流を得る製品工程
  14. 前記カルボニル化反応工程が、前記(i)の操作条件を満たす請求項13に記載の酢酸の製造方法。
  15. 前記蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程、及び製品工程から選択された少なくとも1つの工程が前記(ii)の操作条件を満たす請求項13又は14に記載の酢酸の製造方法。
  16. 前記カルボニル化反応工程、蒸発工程、脱低沸工程、脱水工程、脱高沸工程、及び製品工程から選択された少なくとも1つの工程における気相及び/又は液相が、前記(iii)における気相及び/又は前記(iv)における液相である請求項13〜15のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  17. 前記(i)の操作条件を満たす工程又は前記(ii)の操作条件を満たす工程における滞留時間が1分以上である請求項1〜16のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  18. ギ酸濃度が10質量ppm以上のプロセス液を、水素分圧が500kPa(絶対圧)未満、二酸化炭素分圧が70kPa(絶対圧)未満、且つ操作温度が100℃を超える操作条件を満たす工程にリサイクルする請求項1〜17のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  19. 酢酸の製造プロセスが少なくとも1つの蒸留工程を有しており、当該少なくとも1つの蒸留工程における蒸留塔の塔頂液を前記(i)の操作条件を満たす工程及び/又は前記(ii)の操作条件を満たす工程にリサイクルする請求項1〜18のいずれか1項に記載の酢酸の製造方法。
  20. 前記蒸留塔の塔頂液のリサイクル先が反応工程及び/又は当該蒸留塔に係る蒸留工程よりも上流に位置する蒸発工程若しくは蒸留工程である請求項19記載の酢酸の製造方法。
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