JPWO2019188430A1 - 電極用バインダー、電極合剤、エネルギーデバイス用電極、エネルギーデバイス、エネルギーデバイス用樹脂、炭素材料分散液及び炭素材料分散液の製造方法 - Google Patents

電極用バインダー、電極合剤、エネルギーデバイス用電極、エネルギーデバイス、エネルギーデバイス用樹脂、炭素材料分散液及び炭素材料分散液の製造方法 Download PDF

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広喜 葛岡
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Abstract

高分子化合物と、前記高分子化合物に化学的に結合している電子伝導性の炭素材料と、を含む、電極用バインダー。

Description

本発明は、電極用バインダー、電極合剤、エネルギーデバイス用電極、エネルギーデバイス、エネルギーデバイス用樹脂、炭素材料分散液及び炭素材料分散液の製造方法に関する。
ノート型パソコン、携帯電話、PDA等の携帯情報端末の電源、電気自動車用の電源などとして、高エネルギー密度を有する非水電解液系エネルギーデバイスであるリチウムイオン二次電池が広く用いられている。
リチウムイオン二次電池の電極は一般に、以下のようにして作製される。まず、活物質、バインダー、活物質の電子伝導性を高めるための導電助剤、及び溶媒を混練してスラリー状の電極合剤を調製する。この電極合剤を転写ロール等で集電体である金属箔の片面又は両面に塗布し、溶媒を乾燥除去して合剤層を形成する。その後、合剤層をロールプレス機等で圧縮成形する工程を経て電極が作製される。
導電助剤としてはカーボンブラック等の微細な粒子状の炭素材料が広く用いられ、活物質の粒子間に導電助剤が入り込んで電子伝導性を高めるように作用する。しかしながら導電助剤として使用される炭素材料は一般に凝集力が強く、これを電極合剤中に良好に分散させるための手法が検討されている。例えば、特許文献1には、ポリビニルアルコール−ポリビニルピロリドングラフト共重合体を導電助剤の分散剤として使用することで、導電助剤の分散安定性を高めた電極形成用組成物が記載されている。
特開2015−125964号公報
特許文献1に記載の方法では、特定のポリマーを併用することで導電助剤の分散安定性を高めているが、導電助剤の分散安定性を高める手法を他にも見出すことはエネルギーデバイスの性能向上の観点から有益である。
本発明の一態様は上記事情に鑑み、導電助剤の分散安定性を向上しうる電極用バインダーを提供することを課題とする。本発明の一態様はまた、この電極用バインダーを用いる電極合剤、エネルギーデバイス用電極及びエネルギーデバイスを提供することを課題とする。本発明の一態様はまた、導電助剤の分散性及び分散安定性を向上しうるエネルギーデバイス用樹脂、エネルギーデバイス用樹脂、炭素材料分散液及び炭素材料分散液の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>高分子化合物と、前記高分子化合物に化学的に結合している電子伝導性の炭素材料と、を含む、電極用バインダー。
<2>前記高分子化合物がリチウムイオン伝導性を有する、<1>に記載の電極用バインダー。
<3>前記高分子化合物がアクリル樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載の電極用バインダー。
<4>前記炭素材料がカーボンブラックである、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の電極用バインダー。
<5><1>〜<4>のいずれか1項に記載の電極用バインダーと、活物質とを含む、電極合剤。
<6>集電体と、前記集電体の少なくとも一方の表面上に設けられ、<5>に記載の電極合剤を含む電極合剤層と、を有する、エネルギーデバイス用電極。
<7><6>に記載のエネルギーデバイス用電極を有する、エネルギーデバイス。
<8>ラジカルを発生しうる部位を有する高分子化合物を含む、エネルギーデバイス用樹脂。
<9>前記ラジカルを発生しうる部位がぺルオキシド構造である、<8>に記載のエネルギーデバイス用樹脂。
<10>前記高分子化合物がニトリル基を含有する、<8>又は<9>に記載のエネルギーデバイス用樹脂。
<11>前記高分子化合物がアクリロニトリルに由来する構造単位を含有する、<8>〜<10>のいずれか1項に記載のエネルギーデバイス用樹脂。
<12>高分子化合物と、前記高分子化合物に化学的に結合している電子伝導性の炭素材料と、溶媒とを含む、エネルギーデバイス用炭素材料分散液。
<13>前記高分子化合物の含有率が固形分全体の0.5質量%以上である、<12>に記載のエネルギーデバイス用炭素材料分散液。
<14>前記溶媒がN−メチル−2−ピロリドン及びγ−ブチルラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、<12>又は<13>に記載のエネルギーデバイス用炭素材料分散液。
<15>ラジカルを発生しうる部位を有する高分子化合物と、電子伝導性の炭素材料と、溶媒とを加熱する工程を含む、<11>〜<14>のいずれか1項に記載のエネルギーデバイス用炭素材料分散液の製造方法。
本発明の一態様によれば、導電助剤の分散性及び分散安定性を向上しうる電極用バインダーが提供される。また本発明の一態様によれば、この電極用バインダーを用いる電極合剤、エネルギーデバイス用電極及びエネルギーデバイスが提供される。また本発明の一態様によれば、導電助剤の分散性及び分散安定性を向上しうるエネルギーデバイス用樹脂、エネルギーデバイス用樹脂、炭素材料分散液及び炭素材料分散液の製造方法が提供される。
エネルギーデバイスの一例であるリチウムイオン二次電池の構成の一例を示す断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アリル」はアリル及びメタリルの少なくとも一方を意味する。
<電極用バインダー>
本開示の電極用バインダー(以下、単にバインダーともいう)は、高分子化合物(比較的少数の単量体が結合した比較的分子量が低い重合体であるオリゴマーを指すこともある。以下同様)と、前記高分子化合物に化学的に結合している電子伝導性の炭素材料(以下、単に炭素材料ともいう)と、を含む。
本開示のバインダーを用いることで、導電助剤として用いる炭素材料の分散性及び分散安定性に優れる電極合剤を作製することができる。これは、高分子化合物がバインダーとしての機能を果たすことに加え、炭素材料に高分子化合物が化学的に結合していることでその分散性及び分散安定性を高めるように作用するためと考えられる。また、高分子化合物が炭素材料に化学的に結合していることで、両成分が単に混合されている場合に比べ、高分子化合物による炭素材料の分散性及び分散安定性の向上効果がより大きいためと考えられる。
本開示のバインダーにおいて、高分子化合物と炭素材料とが「化学的に結合」している状態の具体的な態様は、特に制限されない。たとえば、共有結合、イオン結合等が挙げられる。
本開示のバインダーにおいて、高分子化合物と炭素材料とが化学的に結合している状態を作製する方法は、特に制限されない。
低温での反応性(特に、沸点の低いアクリロニトリル等を原料として用いる場合)、高分子化合物の分子量制御等の観点からは、高分子化合物と炭素材料とが化学的に結合している状態は、ラジカルを発生しうる部位を有する高分子化合物を用いて作製することが好ましい。高分子化合物のラジカルを発生しうる部位は、加熱により開裂してラジカルを発生し、これが炭素材料の表面に存在する水素原子を引き抜くと考えられる。この水素原子の引き抜き反応を推進力として、高分子化合物の分子が炭素材料に結合すると推測される。ラジカルを発生しうる部位としては、ぺルオキシド構造(−O−O−)が挙げられる。
高分子化合物が有するラジカルを発生しうる部位の数は特に制限されず、1分子中に1個であっても2個以上であってもよい。高分子化合物におけるラジカルを発生しうる部位の位置は、特に制限されない。例えば、高分子化合物の主鎖(例えば、少なくとも一方の末端付近)に存在していてもよく、側鎖に存在していてもよい。
高分子化合物と炭素材料とが化学的に結合している状態は、上述した方法以外の公知のグラフト法により行ってもよい。
グラフト法として具体的には、炭素材料の表面に存在する官能基を重合反応開始点とし、高分子化合物の原料である単量体を重合させて炭素材料の表面に化学的に結合した高分子化合物を合成する手法が挙げられる。重合方法は特に制限されず、ラジカル重合、リビングラジカル重合、アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、付加重合、縮合重合、開環重合等が挙げられる。
あるいは、炭素材料の表面に存在する官能基と反応しうる官能基を持つ高分子化合物を用いることで炭素材料の表面に高分子化合物を化学的に結合させる手法が挙げられる。例えば、主鎖の一方の末端に官能基を持つ高分子化合物(比較的分子量が低い重合体であり、重合する官能基を持ち、単量体と見なし得るマクロモノマーを指すこともある。以下同様)を炭素材料の表面に存在する官能基と反応させることで、主鎖の一方の末端が炭素材料と化学的に結合した状態の高分子化合物を得ることができる。
本開示のバインダーにおいて、高分子化合物と炭素材料の割合は、特に制限されない。例えば、高分子化合物の質量を1としたときの炭素材料の質量が0.1〜10.0の範囲であってもよく、0.5〜5.0の範囲であってもよい。
(高分子化合物)
本開示のバインダーを構成する高分子化合物の種類は、特に制限されない。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
電極用のバインダーとして使用する観点からは、高分子化合物は電解液への膨潤度合いの小さいものであることが好ましい。このような高分子化合物としては、ニトリル基を含有する高分子化合物が挙げられる。ニトリル基を含有する高分子化合物は、例えば、ニトリル基を含有する単量体(以下、ニトリル基含有単量体ともいう)と、必要に応じてその他の単量体とを重合させて得ることができる。高分子化合物は1種の単量体の重合体であっても、2種以上の単量体の重合体(共重合体)であってもよい。
−ニトリル基含有単量体−
高分子化合物の重合に用いられるニトリル基含有単量体の種類は、特に制限されない。例えば、エチレン性不飽和二重結合と、ニトリル基とを有する化合物であって、高分子化合物の側鎖にニトリル基を導入しうる化合物が挙げられる。具体的には、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリル系ニトリル基含有単量体、α−シアノアクリレート、ジシアノビニリデン等のシアン系ニトリル基含有単量体、フマロニトリル等のフマル系ニトリル基含有単量体などが挙げられる。さらには、アルキレン基等の連結基を含むニトリル基含有単量体が挙げられる。ニトリル基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中では、重合のし易さ、コストパフォーマンス、電極の柔軟性及び可とう性等の点で、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
高分子化合物の作製に使用しうる単量体としては、上述したニトリル基含有単量体のほか、オキシエチレン鎖を含有する単量体(以下、オキシエチレン鎖含有単量体ともいう)、酸性官能基を含有する単量体(以下、酸性官能基含有単量体ともいう)等が挙げられる。
−オキシエチレン鎖含有単量体−
高分子化合物の重合にオキシエチレン鎖含有単量体を用いることで、高分子化合物にリチウムイオン伝導性を付与する効果が期待できる。オキシエチレン鎖含有単量体として具体的には、下記式(I)で表される単量体が挙げられる。
Figure 2019188430
式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子又は1価の炭化水素基を示し、nは1〜50の整数を示す。
式(I)中、nは1〜50の整数であり、2〜30の整数であることが好ましく、2〜10の整数であることがより好ましい。
式(I)中、Rは、水素原子又は1価の炭化水素基であり、例えば、炭素数が1〜50である1価の炭化水素基であることが好ましく、炭素数が1〜25である1価の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数が1〜12である1価の炭化水素基であることがさらに好ましい。
が水素原子であるか、又は炭素数が1〜50である1価の炭化水素基であれば、電解液に対する十分な耐膨潤性を得ることができる傾向にある。ここで、炭化水素基としては、例えば、アルキル基及びフェニル基が挙げられる。Rは、特に、炭素数が1〜12のアルキル基又はフェニル基であることが適当である。アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状であってもよい。
で示されるアルキル基及びフェニル基は、一部の水素原子が置換基で置換されていてもよい。Rがアルキル基である場合の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、窒素原子を含む置換基、リン原子を含む置換基、芳香環などが挙げられる。Rがフェニル基である場合の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、窒素原子を含む置換基、リン原子を含む置換基、芳香環、炭素数が3〜10のシクロアルキル基などが挙げられる。
式(I)で表される単量体としては、市販品を用いても合成品を用いてもよい。市販品として入手可能な式(I)で表される単量体としては、具体的には、例えば、2−メトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートEC−A)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートMTG−A及び新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルAM−30G)、メトキシポリ(n=9)エチレングリコールアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレート130−A及び新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルAM−90G)、メトキシポリ(n=13)エチレングリコールアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルAM−130G)、メトキシポリ(n=23)エチレングリコールアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルAM−230G)、オクトキシポリ(n=18)エチレングリコールアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルA−OC−18E)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートP−200A及び新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルAMP−20GY)、フェノキシポリ(n=6)エチレングリコールアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルAMP−60G)、ノニルフェノールEO付加物(n=4)アクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートNP−4EA)、ノニルフェノールEO付加物(n=8)アクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトアクリレートNP−8EA)、メトキシジエチレングリコールメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトエステルMC及び新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルM−20G)、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトエステルMTG)、メトキシポリ(n=9)エチレングリコールメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトエステル130MA及び新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルM−90G)、メトキシポリ(n=23)エチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:NKエステルM−230G)並びにメトキシポリ(n=30)エチレングリコールメタクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名:ライトエステル041MA)が挙げられる。
これらの中では、ニトリル基含有単量体と共重合させる場合の反応性等の点から、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(一般式(I)のRが水素原子で、Rがメチル基で、nが3の化合物)がより好ましい。これらの一般式(I)で表される単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
−酸性官能基含有単量体−
高分子化合物の重合に用いる酸性官能基含有単量体は特に制限されない。例えば、エチレン性不飽和二重結合と、酸性官能基とを有する化合物であって、高分子化合物の側鎖に酸性官能基を導入しうる化合物が挙げられる。酸性官能基としてはカルボキシ基、スルホ基、ホスホ基等が挙げられ、中でもカルボキシ基が好ましい。
酸性官能基としてカルボキシ基を含有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル系カルボキシ基含有単量体、クロトン酸等のクロトン系カルボキシ基含有単量体、マレイン酸及びその無水物等のマレイン系カルボキシ基含有単量体、イタコン酸及びその無水物等のイタコン系カルボキシ基含有単量体、シトラコン酸及びその無水物等のシトラコン系カルボキシ基含有単量体、ビニル安息香酸などが挙げられる。さらには、アルキレン基等の連結基を含む酸性官能基含有単量体が挙げられる。
酸性官能基としてスルホ基を含有する単量体としては、ビニルベンゼンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれらの塩(ナトリウム塩、リチウム塩等)などが挙げられる。
酸性官能基としてホスホ基を含有する単量体としては、アシッドホスホキシエチルメタクリレート(ユニケミカル株式会社、商品名:Phosmer M)、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート(ユニケミカル株式会社、商品名:Phosmer PE)、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレート(ユニケミカル株式会社、商品名:Phosmer CL)、アシッドホスホキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート(ユニケミカル株式会社、商品名:Phosmer PP)等が挙げられる。
これらの中でも、酸性官能基としてカルボキシ基を含有する単量体が好ましく、アクリル酸又はメタクリル酸がより好ましく、アクリル酸がさらに好ましい。
高分子化合物が酸性官能基を有する場合、必要に応じて塩基性化合物と反応させて塩を形成してもよい。
−その他の単量体−
高分子化合物は、上述した単量体以外の単量体を重合して得られるものであってもよい。上述した単量体以外の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等のアルキル基を含む(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
高分子化合物がニトリル基含有単量体と、その他の単量体とを重合して得られるものである場合、ニトリル基含有単量体の割合は特に制限されないが、全単量体の50モル%以上100モル%未満であることが好ましく、80モル%以上100モル%未満であることがより好ましく、90モル%以上100モル%未満であることがさらに好ましい。
高分子化合物の分子量(炭素材料からのグラフト鎖の長さ)は特に制限されず、構成材料の選択に応じて適宜調節される。高分子化合物の分子量は、炭素材料の分散性及び分散安定性の向上効果を充分に得るためには、小さすぎないことが好ましい。一方、グラフト鎖同士の絡み合いによる炭素材料の分散性及び分散安定性の低下、グラフト鎖同士の重なり合いによる立体障害によって重合度が上がらない又はグラフト鎖が炭素材料に結合できない状態等を抑制する観点からは、大きすぎないことが好ましい。
一方、活物質の表面に固着された高分子化合物の活物質表面への被覆性、被覆安定性等の観点からは、高分子化合物の重量平均分子量は、50,000〜200,000であることが好ましく、70,000〜150,000であることがより好ましい。高分子化合物の重量平均分子量は、重合反応時の温度(温度が高いほど分子量が小さくなる傾向にある)、重合開始剤の種類、連鎖移動剤の添加等によって調節することができる。
本開示において高分子化合物の重量平均分子量は、以下のようにして測定される値である。
測定対象をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製フィルタ〔倉敷紡績株式会社、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)前処理用、クロマトディスク、型番:13N、孔径:0.45μm〕を通して不溶分を除去する。GPC〔ポンプ:L6200 Pump(株式会社日立製作所)、検出器:示差屈折率検出器L3300 RI Monitor(株式会社日立製作所)、カラム:TSKgel−G5000HXLとTSKgel−G2000HXL(計2本)(共に東ソー株式会社)を直列に接続、カラム温度:30℃、溶離液:N−メチル−2−ピロリドン、流速:1.0mL/分、標準物質:ポリスチレン〕を用い、重量平均分子量を測定する。
高分子化合物の酸価は、0mgKOH/g〜70mgKOH/gであることが好ましく、0mgKOH/g〜20mgKOH/gであることがより好ましく、0mgKOH/g〜5mgKOH/gであることがさらに好ましい。
本開示において高分子化合物の酸価は、以下のようにして測定される値である。
まず、測定対象1gを精秤した後、その測定対象にアセトンを30g添加し、測定対象を溶解する。次いで、指示薬であるフェノールフタレインを測定対象の溶液に適量添加して、0.1NのKOH水溶液を用いて滴定する。そして、滴定結果より下記式(A)により酸価を算出する(式中、Vfはフェノールフタレインの滴定量(mL)を示し、Wpは測定対象の溶液の質量(g)を示し、Iは測定対象の溶液の不揮発分の割合(質量%)を示す。)。
酸価(mgKOH/g)=10×Vf×56.1/(Wp×I) (A)
なお、測定対象の溶液の不揮発分は、測定対象の溶液をアルミパンに約1mL量り取り、160℃に加熱したホットプレート上で15分間乾燥させ、残渣重量から算出する。
−高分子化合物の合成方法−
高分子化合物を合成する方法は、特に限定されるものではない。水中沈殿重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の重合方法を適用することが可能である。樹脂合成のし易さ、回収、精製等の後処理のし易さなどの点では、水中沈殿重合及び乳化重合が好ましく、水中沈殿重合がより好ましい。他方、高分子化合物の合成に使用される単量体及び必要に応じて用いられるぺルオキシド構造を導入可能な化合物の溶解性、エネルギーデバイス用電極を作製するための溶媒への溶解工程を省略できるなどの点では、有機溶剤を溶媒とした溶液重合が好ましい。
高分子化合物を合成する際は、必要に応じて重合開始剤を使用してもよい。重合開始剤は、高分子化合物の合成に使用される単量体の総量に対し、例えば、0.001モル%〜5モル%の範囲で使用されることが好ましく、0.01モル%〜2モル%の範囲で使用されることがより好ましい。
高分子化合物を合成する際は、分子量調節等の目的で、連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、チオグリコール等のメルカプタン化合物、四塩化炭素、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらの中では、臭気が少ない等の点で、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。
高分子化合物を合成する際は、溶媒を用いてもよい。溶媒としては水及び有機溶媒が挙げられる。高分子化合物を水中沈殿重合により合成する場合は、析出する高分子化合物の粒子径の調節等のため、水と有機溶媒を併用してもよい。
水以外の溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、N,N−ジメチルエチレンウレア、N,N−ジメチルプロピレンウレア、テトラメチルウレア等のウレア類、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン類、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチルカルビトールアセテート等のエステル類、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等のグライム類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、スルホラン等のスルホン類、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類などが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物がニトリル基を多量に含む場合、充分な溶解性を得る観点からは、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を用いることが好ましい。エネルギーデバイス用電極を作製するための溶媒への溶解工程を省略する観点からは、エネルギーデバイス用電極の作製に用いる溶媒と同じ溶媒を用いてもよく、例えばN−メチル−2−ピロリドンを用いてもよい。
高分子化合物の合成条件は、特に制限されない。例えば、単量体及び必要に応じて用いられるぺルオキシド化合物を導入可能な化合物を溶媒中に導入し、重合温度を好ましくは0℃〜100℃、より好ましくは30℃〜90℃として、好ましくは1時間〜50時間、より好ましくは2時間〜12時間保持することによって行われる。
−ぺルオキシド構造を有する高分子化合物の合成方法−
ぺルオキシド構造を有する高分子化合物を合成する方法は、特に制限されない。例えば、高分子化合物の原料となる単量体と、高分子化合物にぺルオキシド構造を導入可能な化合物とを用いて合成してもよい。
高分子化合物へのぺルオキシド構造の導入のし易さの観点からは、ぺルオキシド構造を導入可能な化合物としては2つのぺルオキシド構造を有する化合物を用いることが好ましく、下記一般式(II)で表されるラジカルを発生しうる化合物を用いることがより好ましい。
Figure 2019188430
一般式(II)において式中のRは炭素数1〜10のアルキル基であり、Rは炭素数1〜10のアルキル基から1個の水素原子を除いた基である。
2つのぺルオキシド構造を有する化合物から発生した一般式(II)で表されるラジカルを用いてぺルオキシド構造が高分子化合物に導入される推定反応機構は、下記のとおりである。
一般式(II)においてRがt−ブチル基であり、Rが炭素数5のアルキル基から1個の水素原子を除いた基であるラジカルは、例えば、下記反応式(1)に示す化合物が持つ2つのぺルオキシド構造のうち一方を加熱(例えば、70℃)により開裂させて得られたラジカルを、下記反応式(2)に示すように開環させ、任意の単量体と重合させることで、一般式(II)で表されるラジカルに由来するぺルオキシド構造を有する高分子化合物を得ることができる。
Figure 2019188430

Figure 2019188430
ぺルオキシド構造を有する高分子化合物の分子が炭素材料と化学的に結合する推定反応機構は、下記のとおりである。
反応式(2)で得られたぺルオキシド構造を有する高分子化合物を炭素材料の存在下で加熱(例えば、90℃以上)すると、ぺルオキシド構造が開裂してラジカルA(t−BuO・)と、COと、下記構造式で表されるラジカルBとが発生する。そして、ラジカルAは炭素材料の炭素原子に結合している水素原子を引き抜いてt−BuOHに変化し、ラジカルBはラジカルAによって水素原子が引き抜かれた炭素原子と結合して、ラジカルBの分子と炭素材料とが化学的に結合している状態が形成されると推定される。
Figure 2019188430
高分子化合物にぺルオキシド構造を導入可能な化合物としては、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン等の分子中に2つのぺルオキシド構造を有するパーオキシケタール化合物、1−ヒドロキシシクロヘキシル−1−ヒドロキシシクロヘキシルペルオキシド等の分子中に少なくとも1個のヒドロキシペルオキシド構造を有するアルキル置換または無置換ジシクロヘキサノンペルオキシド化合物などが挙げられる。これらの化合物は上記反応式に示したように、高分子化合物の合成時と、高分子化合物を炭素材料に結合させる反応時の二段階でぺルオキシド構造が開裂するため好適に用いられる。
(炭素材料)
本開示のバインダーにおける炭素材料は、電子伝導性を有するものであれば特に制限されない。導電助剤としての諸特性の観点からは、電子伝導性を有する炭素材料としてはカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、気相成長炭素繊維、カーボンマイクロコイル、ナノダイヤモンド、グラフェンナノシート、C60フラーレン等が挙げられ、中でもカーボンブラックが好ましい。炭素材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カーボンブラックとしてはファーネスブラック(オイルファーネスブラック)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、サーマルブラック等が挙げられる。中でも電子伝導性の観点からは、ファーネスブラック及びアセチレンブラックが好ましく、電子伝導性と後述する官能基量のバランスの観点からはファーネスブラックがより好ましい。
炭素材料の電子伝導性の度合いは、例えば、下記式で表される導電性指標を参考にして把握することができる。
導電性指標=((比表面積×DBP吸収量))1/2/(1+揮発分)
上記式における比表面積は、JIS K6217−2:2001に準じて測定される窒素吸着比表面積(m/g)である。
上記式におけるDBP吸収量は、JIS K6217−2:2001に準じて測定されるDBP(ジブチルフタレート)の吸収量(cm/100g)である。
上記式における揮発分は、炭素材料を950℃で7分間加熱したときの質量減少率(%)であり、炭素材料の表面に存在する官能基量の指標である。揮発分の値が大きいほど炭素材料の表面に存在する官能基量が多いといえる。
充分な電子伝導性を確保する観点からは、炭素材料は上述した導電性指標の値が30以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、50以上であることがさらに好ましい。
炭素材料は、表面に炭素原子に結合した水素原子を有していてもよい。上述したようなラジカルを発生しうる部位を有する高分子化合物を用いる場合、発生するラジカルが炭素原子に結合した水素原子を引き抜く反応を利用して、炭素材料と高分子化合物とが化学的に結合した状態とすることができる。
炭素材料は、表面に高分子化合物又はその原料となる単量体と反応しうる官能基を有していてもよい。この官能基を利用して、炭素材料と高分子化合物とが化学的に結合した状態とすることができる。
炭素材料の表面に存在する官能基の種類は、特に制限されない。例えば、カルボキシ基、フェノール性水酸基、ラクトン基、酸無水物基、パーオキシ基(−O−O−)、パーオキシエステル基(−O−O−(C=O)−)、キノン基(C=O)等の含酸素官能基、これらの含酸素官能基を変性して得られる官能基(例えば、高分子化合物又は単量体との反応性を高めるために、フェノール性水酸基の水素原子をLi等に置換した官能基)などが挙げられる。
炭素材料の表面に存在する官能基の量は、特に制限されない。例えば、上述した揮発分の値が0.1%以上となる量であることが好ましく、0.5%以上となる量であることがより好ましい。炭素材料の表面に存在する官能基の量の上限は特に制限されないが、高分子化合物との化学的な結合に寄与しない官能基が電解液と反応するのを抑制する観点からは、例えば、揮発分が3%以下となる量であることが好ましい。
−バインダーの用途−
本開示のバインダーは、エネルギーデバイス、特に非水電解液系のエネルギーデバイスの電極の材料として好適に利用される。非水電解液系エネルギーデバイスとは、水以外の電解液を用いる蓄電又は発電デバイス(装置)をいう。エネルギーデバイスとしては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、太陽電池、燃料電池等が挙げられる。
リチウムイオン二次電池としては、電解液を用いるもののほか、電解液の代わりに固体電解質を用いる全固体電池が挙げられる。全固体電池は、安全性により優れるリチウムイオン二次電池として現在開発検討が精力的に進められている。
<電極合剤>
本開示の電極合剤は、上述したバインダーと、活物質とを含む。電極合剤に含まれる活物質の種類は特に制限されず、エネルギーデバイスの電極の材料として一般的に用いられるものから選択できる。
本開示の電極合剤は、負極の作製に用いるもの(すなわち、負極活物質を含む)であっても、正極の作製に用いるもの(すなわち、正極活物質を含む)であってもよい。活物質は、2種以上の材料(例えば、黒鉛と非晶質炭素)を複合化したものであってもよく、2種以上の材料の混合物であってもよい。
電極合剤が負極用であって負極活物質を含む場合、負極活物質として具体的には、炭素材料、ケイ素酸化物、金属リチウム、リチウム合金、金属間化合物、金属錯体、有機高分子化合物等が挙げられる。これらの中でも、炭素材料が好ましく、高エネルギー密度化の点では炭素材料とケイ素酸化物との混合物が好ましい。
炭素材料の中では、エネルギーデバイスのエネルギー密度向上の観点から、X線広角回折法における炭素六角平面の間隔(d002)が3.35Å〜3.40Åであり、c軸方向の結晶子(Lc)が100Å以上である炭素材料(黒鉛)が好ましい。
一方、エネルギーデバイスのサイクル特性及び安全性の向上の観点からは、X線広角回折法における炭素六角平面の間隔(d002)が3.50Å〜3.95Åである炭素材料(非晶質炭素)が好ましい。
電極合剤が正極用であって正極活物質を含む場合、正極活物質の種類は特に制限されない。例えば、リチウムイオン二次電池の正極活物質として常用されるものから選択してもよい。具体的には、リチウム含有金属複合酸化物、オリビン型リチウム塩、カルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。リチウム含有金属複合酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、V、B等が挙げられ、中でもMn、Al、Co、Ni、Mg等が好ましい。異種元素は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。高エネルギー密度化の点ではNiを高い比率で用いることが好ましい。
活物質の平均粒子径は、0.1μm〜60μmであることが好ましく、0.5μm〜30μmであることがより好ましい。また、活物質のBET比表面積は、0.1m/g〜10m/gであることが好ましい。
上記平均粒子径は、レーザー回折法により測定される体積平均粒子径であり、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所製SALD−3000J)を用いて測定される体積基準の粒度分布において、小径側からの積算が50%となるときの値(メジアン径(D50))とする。
上記BET比表面積は、例えば、JIS Z 8830:2013に準じて窒素吸着能から測定される値とする。
電極合剤は、液状媒体を含むものであってもよい。特に、作業性の観点からはバインダーの使用時(活物質と混合する際)に液状媒体を含んでいることが好ましい。
電極合剤の使用時における粘度は、例えば、25℃において500mPa・s〜50000mPa・sであることが好ましく、1000mPa・s〜20000mPa・sであることがより好ましく、2000mPa・s〜10000mPa・sであることがさらに好ましい。なお、粘度は回転式せん断粘度計を用いて、25℃、せん断速度1.0s−1で測定される。
電極合剤は、必要に応じてバインダー、活物質及び液状媒体以外の成分を含んでいてもよい。例えば、電解液に対する耐膨潤性を補完するための架橋成分、電極の柔軟性及び可とう性を補完するためのゴム成分、電極合剤の塗工性を向上させるための増粘剤、沈降防止剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。また、上述したバインダーに含まれる炭素材料以外の導電助剤を含んでいてもよい。電極合剤の状態は特に制限されず、保管方法、電極の形成方法等に応じて選択できる。例えば、スラリー状であってもよい。
<エネルギーデバイス用電極>
本開示のエネルギーデバイス用電極は、集電体と、前記集電体の少なくとも一方の表面上に設けられ、上述した電極合剤を含む電極合剤層と、を有する。
本開示のエネルギーデバイス用電極は、リチウムイオン二次電池(電解液系及び固体電解質系)、電気二重層キャパシタ、太陽電池、燃料電池等の電極として用いることができる。
以下に、本開示のエネルギーデバイス用電極をリチウムイオン二次電池(電解液系)の電極に適用した場合について詳細に説明するが、本開示のエネルギーデバイス用電極は下記内容に限定されるものではない。
集電体の種類は特に制限されない。例えば、リチウムイオン二次電池の分野で常用されるものから選択してもよい。
リチウムイオン二次電池の負極に用いられる集電体(負極集電体)としては、ステンレス鋼、ニッケル、銅等を含むシート、箔などが挙げられる。これらの中でも、銅を含有するシート又は箔が好ましい。シート及び箔の厚さは特に限定されず、集電体として必要な強度及び加工性を確保する観点から、例えば、1μm〜500μmであることが好ましく、2μm〜100μmであることがより好ましく、5μm〜50μmであることがさらに好ましい。
リチウムイオン二次電池の正極に用いられる集電体(正極集電体)としては、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン等を含有するシート、箔などが挙げられる。これらの中でも、アルミニウムを含有するシート又は箔が好ましい。シート及び箔の厚さは特に限定されず、集電体として必要な強度及び加工性を確保する観点から、例えば、1μm〜500μmであることが好ましく、2μm〜80μmであることがより好ましく、5μm〜50μmであることがさらに好ましい。
電極合剤層は、上述した電極合剤を用いて形成することができる。具体的には、例えば、スラリー状の電極合剤を集電体の少なくとも一方の表面上に塗布し、次いで溶媒を乾燥して除去し、必要に応じて圧延して形成することができる。
スラリー状の電極合剤の塗布は、例えば、コンマコーター等を用いて行うことができる。塗布は、対向する電極において、正極容量と負極容量との比率(負極容量/正極容量)が1以上になるように行うことが適当である。スラリー状の電極合剤の塗布量は、例えば、電極合剤層の片面当たりの乾燥質量が、5g/m〜500g/mであることが好ましく、50g/m〜300g/mであることがより好ましい。
溶媒の除去は、例えば、50℃〜150℃、好ましくは、80℃〜120℃で、1分〜20分間、好ましくは、3分〜10分間乾燥することによって行われる。
圧延は、例えばロールプレス機を用いて行われ、合剤層の密度が、負極の合剤層の場合、例えば、1g/cm〜2g/cm、好ましくは、1.2g/cm〜1.8g/cmとなるように、正極の合剤層の場合、例えば、2g/cm〜5g/cm、好ましくは、2g/cm〜4g/cmとなるようにプレスされる。
さらに、電極内の残留溶媒、吸着水の除去等のため、例えば、100℃〜150℃で1時間〜20時間真空乾燥してもよい。
<エネルギーデバイス>
本開示のエネルギーデバイスは、上述したエネルギーデバイス用電極を有する。
本開示のエネルギーデバイス用電極は、上述したバインダーを用いているため、導電助剤の分散性及び分散安定性に優れている。このため、サイクル特性等の特性に優れる傾向にある。
ある実施態様では、エネルギーデバイスは少なくとも正極が上述したエネルギーデバイス用電極である。
本開示のエネルギーデバイスとしては、リチウムイオン二次電池(電解液系及び固体電解質系)、電気二重層キャパシタ、太陽電池、燃料電池等が挙げられる。以下に、エネルギーデバイスがリチウムイオン二次電池(電解液系)の場合について詳細に説明するが、本開示のエネルギーデバイスは下記内容に限定されるものではない。
電解液系のリチウムイオン二次電池は、例えば、正極と、負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、電解液と、を備える。正極及び負極の詳細については、上述したエネルギーデバイス用電極に記載したものを参照できる。
セパレータは、正極及び負極間を電子的には絶縁しつつもイオン透過性を有し、かつ、正極側における酸化性及び負極側における還元性に対する耐性を備えるものであれば特に制限はない。このような特性を満たすセパレータの材料(材質)としては、樹脂、無機物等が用いられる。
上記樹脂としては、オレフィン系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリイミド、ナイロン等が用いられる。具体的には、電解液に対して安定で、保液性の優れた材料の中から選ぶのが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート、不織布などを用いることが好ましい。
無機物としては、アルミナ、二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩類、ガラスなどが用いられる。例えば、繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状の基材に付着させたものをセパレータとして用いることができる。
薄膜形状の基材としては、孔径が0.01μm〜1μmであり、厚さが5μm〜50μmのものが好適に用いられる。また、例えば、繊維形状又は粒子形状の上記無機物を、樹脂等の結着剤を用いて複合多孔層としたものをセパレータとして用いることができる。さらに、この複合多孔層を、正極又は負極の表面に形成し、セパレータとしてもよい。あるいは、この複合多孔層を他のセパレータの表面に形成し、多層セパレータとしてもよい。例えば、90%粒子径(D90)が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として結着させた複合多孔層を、正極の表面に形成してもよい。
電解液は、溶質(支持塩)と非水溶媒とを含み、さらに必要に応じて各種添加剤を含む。溶質は通常、非水溶媒中に溶解した状態である。電解液は、例えば、セパレータに含浸される。
溶質としては、この分野で常用されるものを使用できる。具体的には、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ホウ酸塩類、イミド塩類等が挙げられる。ホウ酸塩類としては、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等が挙げられる。イミド塩類としては、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CFSONLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム((CFSO)(CSO)NLi)、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((CSONLi)等が挙げられる。溶質は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。溶質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5モル/L〜2モル/Lとすることが好ましい。
非水溶媒としては、この分野で常用されるものを使用できる。具体的には、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステル等が挙げられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等が挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)等が挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)等が挙げられる。非水溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、電池特性をより向上できる観点から、非水溶媒はビニレンカーボネート(VC)を含有することが好ましい。非水溶媒がビニレンカーボネート(VC)を含有する場合の含有率は、非水溶媒全量に対して、0.1質量%〜2質量%であることが好ましく、0.2質量%〜1.5質量%であることがより好ましい。
リチウムイオン二次電池の構成例として、ラミネート型のリチウムイオン二次電池の構成について以下に説明する。
ラミネート型のリチウムイオン二次電池は、例えば、次のようにして作製できる。まず、正極と負極を角形に切断し、それぞれの電極にタブを溶接し正極端子及び負極端子を作製する。正極と負極との間にセパレータを介在させ積層した電極積層体を作製し、その状態でアルミニウム製のラミネートパック内に収容し、正極端子及び負極端子をアルミラミネートパックの外に出し密封する。次いで、電解液をアルミラミネートパック内に注液し、アルミラミネートパックの開口部を密封する。これにより、リチウムイオン二次電池が得られる。
リチウムイオン二次電池の構成例として、円柱状のリチウムイオン二次電池の構成について以下に図面を参照して説明する。
図1は、円柱状のリチウムイオン二次電池の断面図である。図1に示すように、リチウムイオン二次電池1は、ニッケルメッキが施されたスチール製で有底円筒状の電池容器6を有している。電池容器6には、帯状の正極板2及び負極板3がセパレータ4を介して断面渦巻状に捲回された電極群5が収容されている。セパレータ4は、例えば、幅が58mm、厚さが30μmに設定される。電極群5の上端面には、一端部を正極板2に固定されたアルミニウム製でリボン状の正極タブ端子が導出されている。正極タブ端子の他端部は、電極群5の上側に配置され正極外部端子となる円盤状の電池蓋の下面に超音波溶接で接合されている。一方、電極群5の下端面には、一端部を負極板3に固定された銅製でリボン状の負極タブ端子が導出されている。負極タブ端子の他端部は、電池容器6の内底部に抵抗溶接で接合されている。従って、正極タブ端子及び負極タブ端子は、それぞれ電極群5の両端面の互いに反対側に導出されている。なお、電極群5の外周面全周には、図示を省略した絶縁被覆が施されている。電池蓋は、絶縁性の樹脂製ガスケットを介して電池容器6の上部にカシメ固定されている。このため、リチウムイオン二次電池1の内部は密封されている。また、電池容器6内には、図示しない電解液が注液されている。
<エネルギーデバイス用樹脂>
本開示のエネルギーデバイス用樹脂は、ラジカルを発生しうる部位を有する高分子化合物を含む。
本開示のエネルギーデバイス用樹脂を用いることで、導電助剤として用いる炭素材料の分散性及び分散安定性を向上させることができる。これは、樹脂に含まれる高分子化合物が炭素材料に化学的に結合することで、従来より分散剤として使用される樹脂と炭素材料とが単に混合されている場合に比べ、炭素材料の分散性及び分散安定性の向上効果がより大きくなるためと考えられる。
高分子化合物のラジカルを発生しうる部位は、加熱により開裂してラジカルを発生し、これが炭素材料の表面に存在する炭素原子に結合した水素原子を引き抜くと考えられる。この水素原子の引き抜き反応を推進力として、高分子化合物の分子が炭素材料に結合すると推測される。ラジカルを発生しうる部位としては、ぺルオキシド構造(−O−O−)が挙げられる。
エネルギーデバイス用樹脂に含まれる高分子化合物としては、上述したバインダーに含まれる高分子化合物が挙げられ、その詳細及び好ましい態様については、上述したバインダーに含まれる高分子化合物の詳細及び好ましい態様を参照できる。電解液に対する膨潤性の観点からは、高分子化合物は、ニトリル基を含有することが好ましい。
本開示のエネルギーデバイス用樹脂は、例えば、上述した電極用バインダー又は後述するエネルギーデバイス用炭素材料分散液の原料として好適に使用できる。
<エネルギーデバイス用炭素材料分散液>
本開示のエネルギーデバイス用炭素材料分散液(以下、炭素材料分散液ともいう)は、高分子化合物と、前記高分子化合物に化学的に結合している電子伝導性の炭素材料と、溶媒とを含む。
本開示の炭素材料分散液は、炭素材料の分散性及び分散安定性に優れている。これは、炭素材料分散液に含まれる高分子化合物が炭素材料に化学的に結合していることで、従来より分散剤として使用される樹脂と炭素材料とが単に混合されている場合に比べ、炭素材料の分散性及び分散安定性の向上効果がより大きくなるためと考えられる。
炭素材料分散液に含まれる高分子化合物、炭素材料及び溶媒の詳細及び好ましい態様については、上述したバインダーに含まれる高分子化合物、炭素材料及び溶媒の詳細及び好ましい態様を参照できる。
炭素材料分散液は、高分子化合物の含有率が固形分全体の0.5質量%以上であることが好ましい。また、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン及びγ−ブチルラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
<エネルギーデバイス用炭素材料分散液の製造方法>
本開示のエネルギーデバイス用炭素材料分散液の製造方法は、ラジカルを発生しうる部位を有する高分子化合物と、電子伝導性の炭素材料と、溶媒とを加熱する工程を含む。
上記方法によれば、高分子化合物と、前記高分子化合物に化学的に結合している電子伝導性の炭素材料と、を含む炭素材料分散液を製造することができる。
加熱の温度は、ラジカルが発生しうる条件で実施されるのであれば特に制限されない。例えば、80℃以上であってもよく、85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。加熱の温度は、例えば、150℃以下であってもよい。
以下、実施例により本開示の発明をより詳細に説明するが、本開示の発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
撹拌機、温調コントローラ、冷却管及び窒素導入管を装着した0.50リットルの丸底セパラブルフラスコに、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略すことがある)を100.0g、アクリロニトリル(ニトリル基含有単量体)を100.0g加え、撹拌しながら、窒素ガスを流量0.3ミリリットルでバブリングし溶存酸素を除去し、オイルバスで系内の温度が70℃になるよう加温した。1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社、製品名:パーヘキサC−80(S))を0.45g加え、1時間毎にN−メチル−2−ピロリドンを10.0gずつ加えながら5時間撹拌を継続し、白色溶液を得た。
<比較例1>
実施例1に記載の方法と同様にして、白色溶液を得た。蓋付きガラス瓶に、得られた白色溶液を、不揮発分濃度が10%になるようNMPを加えた後、120℃で10時間加熱し、黄色溶液を得た。
(ペルオキシドの有無の評価)
実施例1及び比較例1で得られた溶液を、不揮発分濃度が10%となるようにNMPで希釈した。0.50リットルのポリ容器に、メチルエチルケトン(以下、MEKと略すことがある)を300g加え、撹拌しながら上記希釈液30gを滴下し、析出物を吸引ろ過で回収した。回収した析出物を室温で3時間乾燥させた後、室温で12時間真空乾燥し、粉末を得た。0.11リットルの蓋付きガラス瓶に、乾燥粉末0.2g、NMP10mlを加え、撹拌して乾燥粉末を溶解させた。次いで、無水酢酸10mlを加え、10分間撹拌した後、ヨウ化カリウム0.2gを加え、20分間撹拌し、溶液の色の変化を確認し、黄褐色に変化したものはペルオキシド構造「有」、黄褐色への変化がないものはペルオキシド構造「無」と評価した。
ペルオキシド構造「有」と評価した実施例1については、溶液の色が無色になるまで0.1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液を滴下し、下記式(1)を用いて、ペルオキシド構造の含有率を評価した。評価結果を表1に示す。
Figure 2019188430
表1の結果から、実施例1で作製した樹脂はペルオキシド構造を有する高分子化合物を含む樹脂(以下、樹脂Aと略すことがある)であり、比較例1で作製した樹脂はペルオキシド構造を有する高分子化合物を含まない樹脂(以下、樹脂Bと略すことがある)であることが示唆された。
Figure 2019188430
(重量平均分子量の測定)
実施例1及び比較例1で作製した溶液を不揮発分濃度が0.1%となるようにNMPで希釈し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー株式会社、HLC−8320GPC、カラム:TSK−gel(150mm長×5本連結)、溶離液:NMP(臭化リチウム0.1%含有)、流量:0.35ml/min、検出モード:RI、試料濃度:0.1%、注入量:10 μL、測定温度:40℃、検量線:標準ポリスチレン)にて樹脂A及び樹脂Bの重量平均分子量を測定した。結果を表1に示す。
<実施例2>
50mlの蓋つきガラス瓶に、実施例1で得られた白色溶液(樹脂AのNMP溶液)、炭素材料としてカーボンブラック(東海カーボン株式会社、トーカブラック#5500、以下CBと略すことがある)及びNMPを、総量25g、樹脂A:CB:NMPの質量比率が5:5:90となるように加えた。その後、スターラーチップを加え、蓋をし、90℃で10時間撹拌し、炭素材料分散液を得た。
<実施例3〜5>
樹脂A:CB:NMPの質量比率を表2に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして、炭素材料分散液を得た。
<比較例2>
50mlの蓋つきガラス瓶に、実施例1で得られた白色溶液(樹脂AのNMP溶液)、CB及びNMPを、総量25g、樹脂A:CB:NMPの質量比率が2.5:5:92.5となるように加えた。その後、スターラーチップを加え、蓋をし、室温(25℃)で10時間撹拌し、炭素材料分散液を得た。
<比較例3及び比較例4>
樹脂A:CB:NMPの質量比率を表2に示すように変更した以外は、比較例2と同様にして、炭素材料分散液を得た。
<比較例5>
50mlの蓋つきガラス瓶に、比較例1で得られた白色溶液(樹脂BのNMP溶液)、CB及びNMPを、総量25g、樹脂B:CB:NMPの質量比率が2.5:5:92.5となるよう加えた後、スターラーチップを加え、蓋をし、90℃で10時間撹拌し、炭素材料分散液を得た。
<実施例6>
撹拌機、温調コントローラ、冷却管及び窒素導入管を装着した0.50リットルの丸底セパラブルフラスコに、酢酸エチルを100.0g、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート(新中村化学工業株式会社、製品名:AM−90G)を100.0g加え、撹拌しながら、窒素ガスを流量0.3ミリリットルでバブリングし溶存酸素を除去し、オイルバスで系内の温度が70℃になるよう加温した。1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社、製品名:パーヘキサC−80(S))を0.45g加え、5時間撹拌を継続し、無色透明溶液を得た。得られた無色透明溶液20.0gにNMP15.0gを加えた後、60℃に設定したエバポレータで1時間加熱し、固形分濃度40.0質量%の樹脂(以下樹脂Cと略すことがある)のNMP溶液を得た。
上述した方法でぺルオキシド構造の有無を調べたところ、樹脂Cはぺルオキシド構造を有する高分子化合物を含むことが示唆された。
次いで、50mlの蓋つきガラス瓶に、樹脂CのNMP溶液、CB及びNMPを、総量25g、樹脂C:CB:NMPの質量比率が5:5:90となるよう加えた。その後、スターラーチップを加え、蓋をし、90℃で10時間撹拌し、炭素材料分散液を得た。
<実施例7〜9>
樹脂C:CB:NMPの比率を表2に示すように変更した以外は、実施例6と同様にして、炭素材料分散液を得た。
(炭素材料分散液の分散性評価)
炭素材料分散液の分散性評価には、その指標として分散粒径を使用した。作製直後の実施例及び比較例の炭素材料分散液を、CBの質量割合が1%となるようNMPで希釈し、ミックスローターを用いて50rpmで10分撹拌した。粒度分布測定器(大塚電子株式会社、Zeta−potential&Particlesize Analyzer、ELSZ)に付属のガラスセルに、炭素材料分散液を容量の8割程度加え、粒度分布測定器の測定部にセットし、積算回数70回の測定を実施した。得られた個数粒度分布において、粒径の小さいものから、その個数割合を積算した際に50%となるところの粒径(D50)を求めた。この粒径(D50)は、炭素材料の分散粒径に該当する。得られた分散粒径を用いて、以下の基準で分散性を評価した。結果を表2に示す。なお、Aが最も分散性に優れ、Dが最も分散性に劣ることを示す。
A:粒径(D50)が200nm未満
B:粒径(D50)が200nm以上、400nm未満
C:粒径(D50)が400nm以上、600nm未満
D:粒径(D50)が600nm以上
(炭素材料分散液の分散安定性評価)
実施例及び比較例で作製した炭素材料分散液を実質的に水平な台に1日静置した際の外観変化を観察し、以下の基準で分散安定性を評価した。結果を表2に示す。なお、Aが最も分散安定性に優れ、Cが最も分散安定性に劣ることを示す。
A:外観上の変化がなく、傾けた際に分散液全体に流動性がある。
B:外観上の変化はないが、傾けた際に分散液の下部に流動性しない塊がある。
C:分散液上部が透明であり、CBの沈降が目視で分かる。
Figure 2019188430
表2に示すように、ぺルオキシド構造を有する高分子化合物を含む樹脂A又は樹脂Cを使用し、CBと混合した後の撹拌を90℃で実施した実施例の炭素材料分散液は、撹拌を90℃で実施しなかった比較例2〜4、樹脂Aを使用しなかった比較例5の炭素材料分散液に比べて分散性及び分散安定性に優れていた。
日本国特許出願第2018−067319号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に援用されて取り込まれる。

Claims (15)

  1. 高分子化合物と、前記高分子化合物に化学的に結合している電子伝導性の炭素材料と、を含む、電極用バインダー。
  2. 前記高分子化合物がリチウムイオン伝導性を有する、請求項1に記載の電極用バインダー。
  3. 前記高分子化合物がアクリル樹脂、ポリジメチルシロキサン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の電極用バインダー。
  4. 前記炭素材料がカーボンブラックである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電極用バインダー。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電極用バインダーと、活物質とを含む、電極合剤。
  6. 集電体と、前記集電体の少なくとも一方の表面上に設けられ、請求項5に記載の電極合剤を含む電極合剤層と、を有する、エネルギーデバイス用電極。
  7. 請求項6に記載のエネルギーデバイス用電極を有する、エネルギーデバイス。
  8. ラジカルを発生しうる部位を有する高分子化合物を含む、エネルギーデバイス用樹脂。
  9. 前記ラジカルを発生しうる部位がぺルオキシド構造である、請求項8に記載のエネルギーデバイス用樹脂。
  10. 前記高分子化合物がニトリル基を含有する、請求項8又は請求項9に記載のエネルギーデバイス用樹脂。
  11. 前記高分子化合物がアクリロニトリルに由来する構造単位を含有する、請求項8〜請求項10のいずれか1項に記載のエネルギーデバイス用樹脂。
  12. 高分子化合物と、前記高分子化合物に化学的に結合している電子伝導性の炭素材料と、溶媒とを含む、エネルギーデバイス用炭素材料分散液。
  13. 前記高分子化合物の含有率が固形分全体の0.5質量%以上である、請求項12に記載のエネルギーデバイス用炭素材料分散液。
  14. 前記溶媒がN−メチル−2−ピロリドン及びγ−ブチルラクトンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項12又は請求項13に記載のエネルギーデバイス用炭素材料分散液。
  15. ラジカルを発生しうる部位を有する高分子化合物と、電子伝導性の炭素材料と、溶媒とを加熱する工程を含む、請求項11〜請求項14のいずれか1項に記載のエネルギーデバイス用炭素材料分散液の製造方法。
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